説明

電解水生成装置

【課題】水質にかかわらずスケールが付着しにくく衛生的で使い勝手のよい電解水生成装置1を提供する。
【解決手段】電解水生成装置1は、水を貯留する貯留部2と、貯留部2内の水を軟水化する軟水化部4と、軟水化部4により軟水化された水を加熱する加熱部3と、加熱部3により加熱された水を電気分解して電解水を生成する電解槽7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原水を電解槽で電気分解して電解水を生成する電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の安全な水や健康に対する関心の高まりに伴って、水道水等の原水を電解槽内で電気分解することでアルカリイオン水と酸性イオン水を生成する電解水生成装置が一般家庭にも広く普及するに至っている。この種の電解水生成装置の中には、生成した電解水を貯水部に貯留するタイプのものがある。例えば、特許文献1に開示される電解水生成装置は、貯水部と電解槽との間で水を電気駆動ポンプにより循環させながら電解水(アルカリイオン水)を生成し、生成した電解水を貯水部に貯留する。これにより、貯水部の水を複数回電解槽に通過させることができるので、電解槽に一度しか水を通過させることができない構造に比べて電解槽を小型化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−131547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来の電解水生成装置によれば、水を循環させることにより小型でも電解水のpH値を十分高められる。しかしながら、電気分解でアルカリ度は上昇し、また、循環によるポンプ部の発熱や電気分解による発熱で水温は上昇するため、通水路内に滞留する電解水は、スケールが付着する条件(pH値や温度)が整った水の性状となっている。硬度成分の高い水を使用した場合はさらにスケールが付着しやすくなる。電解槽内の電極板、貯留槽、ポンプをはじめとする通水路内にスケールが付着すると、流水循環量の著しい低下を招く問題がある。
【0005】
また、浄水カートリッジを搭載することにより、遊離残留塩素が除去された電解処理水が貯留槽あるいは通水路内に滞留されることとなる。これにより、雑菌が増殖傾向にあるので腐敗等の影響が懸念される。そのため、使用者は貯留槽の電解水をやかんや湯沸かし器などの加熱器具により熱湯処理した後に飲用しなければならないなどの不便さを強いられる。それら加熱器具においてもスケールが付着しやすくなるという問題がある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、水質にかかわらずスケールが付着しにくく衛生的で使い勝手のよい電解水生成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、第1の発明は、電解水生成装置において、水を貯留する貯留部と、前記貯留部内の水を軟水化する軟水化部と、前記軟水化部により軟水化された水を加熱する加熱部と、前記加熱部により加熱された水を電気分解して電解水を生成する電解槽とを備えたことを特徴とする。
【0008】
また、第2の発明は、軟水化時間、保温温度、電解強度のうちの少なくとも1つを設定する操作部と、前記操作部により設定された内容に基づいて前記軟水化部、前記加熱部、前記電解槽のうちの少なくとも1つを制御する制御部とを備えたことを特徴とする。
【0009】
また、第3の発明は、前記制御部が、前記軟水化部により水が軟水化される際、前記加熱部に水を所定温度まで加熱させることを特徴とする。
【0010】
また、第4の発明は、前記軟水化部が、着脱式のカートリッジタイプであり、前記制御部が、前記操作部から洗浄モードが指定されたとき、または前記軟水化部の取り外しをセンサーで検知したとき、前記軟水化部から前記貯留部への通水路を電磁弁で閉じることを特徴とする。
【0011】
また、第5の発明は、前記電解槽からの排水である温水酸性水を前記貯留部に還流させる通水路を設け、前記軟水化部をダミーカートリッジまたは通水菅に交換して前記温水酸性水を循環させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、貯留部内の水を軟水化した後に加熱して電気分解することで温水電解水を生成するようにしているので、水質にかかわらずスケールが付着しにくく衛生的で使い勝手のよい電解水生成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態における電解水生成装置の構成図である。
【図2】第2実施形態における電解水生成装置の構成図である。
【図3】第3実施形態における電解水生成装置の構成図である。
【図4】第4実施形態における電解水生成装置の構成図である。
【図5】第4実施形態におけるカートリッジの着脱構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における電解水生成装置1の構成図である。この電解水生成装置1は、例えば湯沸しポット型の装置として実現される。貯留部2は、水や湯を貯留する貯留槽であり、ここでは、水道水や井戸水、河川水などの原水を貯留しているものとする。貯留部2の上部には空気の取り入れ口2aが形成され、底面は加熱ヒータ等の加熱部3により加熱されるようになっている。水温度検知部2bは、貯留部2に貯留されている水の温度を検知する。軟水化部4は、水の硬度成分を低減させて軟水化させる装置であり、例えば2つの活性炭層4a、4bにイオン交換樹脂層4cが挟み込まれた構造となっている。軟水化部4から上方に向けて伸びた通水路5には逆流防止弁6が設けられている。電解槽7は、陰極7aを備えた陰極室と陽極7bを備えた陽極室とに隔膜7cで2分されている。陰極室にはアルカリイオン水が、陽極室には酸性イオン水がそれぞれ電解水として生成される。陰極室で生成されたアルカリ水は吐水口7dから得られ、陽極室で生成された酸性水は排出口7eから排出される。操作部8は、使用者の操作を受け付けるためのボタン群や表示部等である。制御部9は、操作部8により受け付けられた操作内容に基づいて各部を制御するマイクロコンピュータ等である。制御部9内に示す符号C1は電解制御、符号C2は軟水化制御、符号C3は加熱制御を意味している。電磁弁A〜Dは、通水路5を開閉するための弁である。通水路5内の水は、ポンプPによって循環するようになっている。
【0016】
以下、第1実施形態における電解水生成装置1の動作を説明する。まず、制御部9は、電磁弁AとCを開き、電磁弁BとDを閉じ、ポンプPをONにし、加熱部3をOFFにする(軟水化制御C2)。これにより、常温の水が貯留部2と軟水化部4との間で循環し、水の硬度成分が低減されることになる。次いで、制御部9は、電磁弁BとCを開き、電磁弁AとDを閉じ、ポンプPをONにし、加熱部3をONにし、貯留部2の水が沸騰する前にポンプPをOFFにする(加熱制御C3)。これにより、貯留部2に貯留されている水が循環しながら均一に加熱されることになる。この加熱制御C3では、電磁弁A〜Dを閉じ、ポンプPをOFFにするようにしてもよい。その後、制御部9は、例えば給湯ボタンが押下されると、電磁弁BとDを開き、電磁弁AとCを閉じ、ポンプPをONにする(電解制御C1)。これにより、貯留部2に貯留されている温水が電解槽7に流れ、電解槽7で電解水が生成されて、温水のアルカリ水が吐水口7dから得られることになる。
【0017】
以上のように、第1実施形態によれば、貯留部2内の水を軟水化した後に加熱して電気分解することで温水電解水を生成するようにしているので、水質にかかわらずスケールが付着しにくく衛生的で使い勝手のよい電解水生成装置1を提供することができる。すなわち、硬度成分の高い水を使用した場合でも、軟水化した水を貯留するようにしているので、貯留した水の性状を低い硬度に保つことができる。また、使用時のみ電気分解すればよいので、アルカリ度も低く抑えられる。さらに、温水で貯留するようにしているので、衛生性を保つことができ、やかんや湯沸かし器などの加熱器具により温めなおす必要がない。
【0018】
(第2実施形態)
図2は、第2実施形態における電解水生成装置1の構成図である。第1実施形態と異なる点は、制御部9による電解制御C1´、軟水化制御C2´、加熱制御C3´の内容を使用者が自由に調整することができる点である。すなわち、操作部8は、軟水化時間、保温温度、電解強度のうちの少なくとも1つを設定することができる。また、制御部9は、操作部8により設定された内容に基づいて軟水化部4、加熱部3、電解槽7のうちの少なくとも1つを制御するようになっている。
【0019】
以下、第2実施形態における電解水生成装置1の動作を説明する。まず、使用者は、操作部8において希望の軟水化時間(硬度レベル)、保温温度、電解強度(pHレベル)を設定する。これにより、制御部9は、操作部8により設定された軟水化時間だけ軟水化する(軟水化制御C2´)。また、貯留部2の水を沸騰させた後、操作部8により設定された保温温度で保温する(加熱制御C3´)。さらに、操作部8により設定された電解強度の電解水を生成する(電解制御C1´)。その他の点は、前記第1実施形態と同様である。
【0020】
以上のように、第2実施形態によれば、希望の軟水化時間と保温温度と電解強度を設定することができるので、希望の硬度と水温とpHレベルの電解水を生成することができる。これにより、硬度成分の高い水をまったくゼロにすることがないので、嗜好性に応じて硬度と水温とpHレベルを自由に調整することができ、使い勝手が非常に優れる。
【0021】
(第3実施形態)
図3は、第3実施形態における電解水生成装置1の構成図である。第2実施形態と異なる点は、制御部9の制御内容として軟水化温度制御C4が追加された点である。すなわち、制御部9は、軟水化部4が水を軟水化している処理中に、加熱部3に水を所定温度まで加熱させるようになっている。
【0022】
以下、第3実施形態における電解水生成装置1の動作を説明する。まず、制御部9は、電磁弁AとCを開き、電磁弁BとDを閉じ、ポンプPをONにし、加熱部3をON/OFFさせて水温を40℃まで加熱する(軟水化制御C2´)。以降の加熱制御C3´と電解制御C1´は前記第2実施形態と同様である。
【0023】
軟水化制御C2´で水温が40℃を超えないように制御するようにしたのは、加温し過ぎるとイオン交換樹脂の樹脂臭味が水をまずくするためである。また、軟水化部4内の活性炭に吸着されたトリハロメタンなどの塩素系有機化合物が脱着して水を汚染してしまうためである。
【0024】
以上のように、第3実施形態によれば、軟水化処理の段階で水温をおおよそ40℃まで加熱するようにしているので、イオン交換樹脂臭味や不純物等による水の汚染を防止することができるとともに、湯沸かし時間を大幅に短縮することができる。この効果は、冬場などの原水水温が低い場合は極めて大きく、使い勝手が非常によくなる。
【0025】
(第4実施形態)
図4は、第4実施形態における電解水生成装置1の構成図である。本実施形態では、電解槽7で生成された温水酸性水により通水路5内を洗浄することができる(水循環洗浄制御C5)。すなわち、軟水化部4は、着脱式のカートリッジタイプであり、後述するカートリッジ接続部40と着脱可能な構造となっている。そして、電解槽7からの排水である温水酸性水を貯留部2に還流させる通水路を設け、軟水化部4をダミーカートリッジ10に交換して温水酸性水を循環させる。ダミーカートリッジ10は、洗浄時において通水路の役割りを果たすものである。ダミーカートリッジ10に代えて通水管を採用することもできる。
【0026】
図5は、第4実施形態におけるカートリッジ接続部40の着脱構造を示す図である。この図に示すように、カートリッジ接続部40はカートリッジ流出部42とカートリッジ流入部43を備え、カートリッジタイプの軟水化部4やダミーカートリッジ10を着脱可能な構造になっている。図中の符号41,44はOリング、符号45はスプリングである。
【0027】
カートリッジ接続部40にカートリッジ4(10)を取り付ける場合は、まず、図中の(1)に示すように、カートリッジ4(10)の一方端をカートリッジ流入部43に挿入する。次いで、図中の(2)に示す向きにカートリッジ4(10)を押し込む。最後に、図中の(3)に示すように、カートリッジ4(10)の他方端をカートリッジ流出部42に挿入する。カートリッジ接続部40からカートリッジ4(10)を取り外す手順は、取り付ける場合と逆の手順、すなわち(3)→(2)→(1)の順である。
【0028】
制御部9は、カートリッジ接続部40から軟水化部4が取り外される際、軟水化部4から貯留部2への通水路5を電磁弁Aで閉じるようになっている。電磁弁Aを閉じるタイミングは、操作部8から洗浄モードが指定されたときでもよいし、軟水化部4の取り外しをセンサーで検知したときでもよい。これにより、貯留部2の水が放流されることを防止することができるので、軟水化部4を取り外した状態でも、貯留部2に貯留されている温水を使用して電解水を生成することが可能である。
【0029】
以下、第4実施形態における電解水生成装置1の動作を説明する。まず、使用者は、軟水化した水が貯留部2に貯留されている状態で洗浄モードを指定し、軟水化部4を取り外してダミーカートリッジ10に付け替える。制御部9は、軟水化部4がダミーカートリッジ10に付け替えられると、電磁弁BとCを開き、電磁弁AとDを閉じ、ポンプPをONにし、加熱部3をON/OFFさせて水温を40℃まで加熱する。水温を40℃まで加熱する理由については後述する。その後、電磁弁BとDを開き、電磁弁AとCを閉じ、ポンプをONにし、電解をONにし、三方切り替え弁11を貯留部2側に切り替える。これにより、所定量の温水酸性水を貯留部2に還流することができる。さらに、制御部9は、電磁弁A〜Cを開き、電磁弁Dを閉じ、ポンプPをONにする。これにより、温水酸性水を循環させて通水路5を洗浄することができる。洗浄時間は一定時間としてもよいし、操作部8から指定するようにしてもよい。洗浄後はポンプPをOFFにし、貯留部2に貯留されている洗浄水をドレンより放流する。三方切り替え弁11は、制御部9によって洗浄モードを指定したときのみ温水酸性水を貯留部2に還流するように切り替え制御することができる電磁弁で配置構成してもよい。
【0030】
電気分解して得られる酸性水は抗菌効果の高い次亜塩素酸イオン成分を含有しているが、高温の状態では次亜塩素酸イオンが抗菌効果の低い塩素イオンに分解されてしまうので、洗浄水としての有効性を損なってしまう恐れがある。そのため、中程度の温水つまり40℃程度の温水に維持すれば、より洗浄効果を高めることができる。ここでは、40℃程度の温水に維持することとしているが、最適な水温は25℃〜40℃程度である。すなわち、水温を高めることにより溶質の水に対する溶解度は増加する。汚れ成分も水温の低い水と比較すると水温の高い水に溶け込みやすい。そのため、25℃〜40℃程度の温水であれば、常温の水と比べて優れた洗浄効果を得ることができる。
【0031】
以上のように、第4実施形態によれば、着脱式のカートリッジタイプの軟水化部4が取り外される際、電磁弁Aを閉じるようにしている。これにより、貯留部2の水が放流されることを防止することができるので、軟水化部4を取り外した状態でも、貯留部2に貯留されている温水を使用して電解水を生成することが可能である。
【0032】
また、第4実施形態によれば、電解槽7からの排水である温水酸性水を貯留部2に還流させる通水路を設け、軟水化部4をダミーカートリッジ10に交換して温水酸性水を循環させるようにしているので、特別な薬品を用いなくても通水路5内を洗浄することができる。冬場などの原水水温が低い場合は、温水による洗浄効果が高く特に効果的である。これにより、電解水生成装置1を長期間使用しなかったことで通水路5に水が滞留している場合でも、温水酸性水を循環させて衛生的に使用することが可能である。
【0033】
なお、以上では好適な実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、軟水化処理では貯留部2と軟水化部4との間で水が循環することとしているが、軟水化部4に一度しか水を通過させない構造とすることも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 電解水生成装置
2 貯留部
3 加熱部
4 軟水化部
5 通水路
7 電解槽
8 操作部
9 制御部
10 ダミーカートリッジ
A、B、C、D 電磁弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を貯留する貯留部と、
前記貯留部内の水を軟水化する軟水化部と、
前記軟水化部により軟水化された水を加熱する加熱部と、
前記加熱部により加熱された水を電気分解して電解水を生成する電解槽と、
を備えたことを特徴とする電解水生成装置。
【請求項2】
軟水化時間、保温温度、電解強度のうちの少なくとも1つを設定する操作部と、
前記操作部により設定された内容に基づいて前記軟水化部、前記加熱部、前記電解槽のうちの少なくとも1つを制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載の電解水生成装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記軟水化部が水を軟水化している処理中に、前記加熱部に水を所定温度まで加熱させることを特徴とする請求項2記載の電解水生成装置。
【請求項4】
前記軟水化部は、着脱式のカートリッジタイプであり、
前記制御部は、前記操作部から洗浄モードが指定されたとき、または前記軟水化部の取り外しをセンサーで検知したとき、前記軟水化部から前記貯留部への通水路を電磁弁で閉じる
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電解水生成装置。
【請求項5】
前記電解槽からの排水である温水酸性水を前記貯留部に還流させる通水路を設け、前記軟水化部をダミーカートリッジまたは通水菅に交換して前記温水酸性水を循環させることを特徴とする請求項4記載の電解水生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−101172(P2012−101172A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251579(P2010−251579)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】