説明

電解水生成装置

【課題】より使用環境に応じた的確な洗浄パターンで洗浄を行うことのできる電解水生成装置を提供する。
【解決手段】電解水生成装置は、陽極と陰極の少なくとも一対の電極2a,2bを備える電解槽2と、電極2a,2bへの通電を制御する制御部4と、電極2a,2bに付着したスケールを防止するための洗浄頻度、洗浄時間、洗浄強度のうちの少なくとも1つからなる複数の洗浄パターンを記憶する記憶部5と、記憶部5に記憶された複数の洗浄パターンのいずれかを選択する操作部6とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解水を生成する電解水生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電極間に発生する電圧や電極間に流れる電流をスケールが付着する前の初期状態と比較し、その差が所定以上になったときに洗浄手段を作動して電極面に付着しているスケール物質を除去する整水機が知られている(特許文献1参照)。このような整水機によれば、スケールの付着、析出の程度が水質や地域等によって異なる場合でも、的確な条件で洗浄し、電極の過洗浄もしくは洗浄不足による劣化、機能の低下を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−254561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の整水機は、スケールがある程度付着した状態になってから洗浄するため、洗浄するまでは電解効率が低下し、安定した性能がでないという問題があった。
【0005】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、より使用環境に応じた的確な洗浄パターンで洗浄を行うことのできる電解水生成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、電解水を生成する電解水生成装置であって、陽極と陰極の少なくとも一対の電極を備える電解槽と、前記電極への通電を制御する制御部と、前記電極に付着したスケールを防止するための洗浄頻度、洗浄時間、洗浄強度のうちの少なくとも1つからなる複数の洗浄パターンを記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された複数の洗浄パターンのいずれかを選択する選択部とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明において、電解水生成時の前記電極間の電圧値または電流値を検出する検出部を備え、前記制御部は、前記検出部の検知値に応じて前記記憶部に記憶された複数の洗浄パターンのいずれかを選択してもよい。
【0008】
また、本発明において、前記記憶部は、電解水生成時の電流値または電圧値の初期値を記憶し、前記制御部は、洗浄後における前記検出部の検出値が前記初期値に比べて電圧が高い場合または電流が少ない場合、前記記憶部に記憶された複数の洗浄パターンのうち現在の洗浄パターンより一段階強力な洗浄パターンを次回の洗浄パターンとして選択してもよい。
【0009】
また、本発明において、前記制御部は、洗浄後における前記検出部の検出値が前記初期値に比べて電圧が高い場合または電流が少ない場合、その検出値および初期値に基づいて洗浄頻度、洗浄時間、洗浄強度のいずれかを算出して新たな洗浄パターンを選択してもよい。
【0010】
また、本発明において、前記制御部は、異なる複数の電圧で電解するモードを備えている場合、電解水生成時における印加電圧の強さに応じて洗浄パターンを選択してもよい。
【0011】
また、本発明において、前記電極間に流れる電流値と通水量または通水時間とを掛け合わせた値である電極使用度を演算する演算部を備え、前記制御部は、前記演算部により演算された電極使用度が所定の値に達した場合に洗浄を行ってもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、記憶部に記憶された複数の洗浄パターンのいずれかが選択されるので、より使用環境に応じた的確な洗浄パターンで洗浄を行うことのできる電解水生成装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態における電解水生成装置の構成図である。
【図2】第1実施形態における記憶部に記憶された洗浄パターンの一例を示す図である。
【図3】第1実施形態における操作部の一例を示す図である。
【図4】第2実施形態における電解水生成装置の構成図である。
【図5】第2実施形態における記憶部に記憶された洗浄パターンの一例を示す図である。
【図6】第2実施形態における電解水生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】第3実施形態における電解水生成装置の動作を示すフローチャートである。
【図8】第5実施形態における電解水生成装置の構成図である。
【図9】第5実施形態における記憶部に記憶された洗浄パターンの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態における電解水生成装置の構成図である。この図に示すように、電解槽2は、陰極2aを備えた陰極室と陽極2bを備えた陽極室とに隔膜2cで2分されている。原水導入口1から電解槽2に水を流入して陰極2aと陽極2bに電圧を印加すると、陰極室にはアルカリ水が生成され、陽極室には酸性水が生成される。このように生成されたアルカリ水はアルカリ水吐水口3aから排出され、酸性水は酸性水排出口3bから排出されるようになっている。制御部4は、電極2a,2bへの通電の制御等、各処理を制御するマイクロコンピュータ等である。記憶部5は、複数の洗浄パターンを記憶するメモリ等である。操作部6は、記憶部5に記憶された複数の洗浄パターンのいずれかを選択するための操作ボタン群等である。表示部7は、操作内容等を表示する液晶ディスプレイ等である。
【0016】
このような電解水生成装置では、極性を反転して電圧を印加することで、電極2a,2bへのスケール等の付着を防止することができる。スケール等の付着度合いは水質により変わるため、予め複数の洗浄パターンを内部ソフトに組み込んでおく。これにより、ユーザーは、機器を使用する地域の環境に合わせて洗浄パターンを選択することができる。洗浄パターンとしては、洗浄頻度を変えるものや、洗浄時間を変えるもの、洗浄強度(例えば洗浄時における印加電圧値)を変えるものがある。硬度が高い場合ほどスケールが付着しやすいため、洗浄頻度を多くしたり、洗浄時間を長くしたり、洗浄時における印加電圧値を高くするのが好ましい。これにより、より使用環境に応じた的確な洗浄パターンで洗浄を行い、スケールの付着を防ぐことができる。
【0017】
図2は、記憶部5に記憶された洗浄パターンの一例を示す図である。この図に示すように、記憶部5は、複数の洗浄パターンを記憶している。具体的には、図2(a)に示すように、「10回通水ごと」「5回通水ごと」「毎回」という3つの洗浄頻度パターンを記憶している。また、図2(b)に示すように、「5秒間」「10秒間」「15秒間」という3つの洗浄時間パターンを記憶している。さらに、図2(c)に示すように、「10V」「20V」「30V」という3つの印加電圧パターンを記憶している。ここでは、洗浄頻度、洗浄時間、洗浄強度の条件すべてについて3つの洗浄パターンを記憶することとしているが、これに限定されるものではない。たとえば、洗浄時間についてのみ3つの洗浄パターンを記憶するようにしてもよい。また、洗浄パターンの数も複数であればよく、3つに限定されるものではない。
【0018】
図3は、操作部6の一例を示す図である。この図に示すように、操作部6は、戻るボタン6aと、選択ボタン6bと、決定ボタン6cとを備えている。選択ボタン6bを押すと、洗浄パターンが切り替わり、決定ボタン6cを押すと、選択中の洗浄パターンを決定することができる。このように決定(選択)された洗浄パターンは、表示部7に表示したりブザー音を鳴らしたりすることで、ユーザーに通知することができる。もちろん、操作部6の形状はこれに限定されるものではなく、たとえば、それぞれの洗浄パターンに対応する複数のボタンが設けられていてもよい。また、どの洗浄モードが選択されているか操作部6近傍のLEDに表示するようにしてもよい。
【0019】
以上のように、第1実施形態における電解水生成装置によれば、記憶部5に記憶された複数の洗浄パターンのいずれかが選択されるので、より使用環境に応じた的確な洗浄パターンで洗浄を行うことができる。これにより、硬度が高い場合はスケールの付着を防止させることができ、また、過剰な洗浄を防いで電極の消耗を防止することができるため、電極寿命を延ばすことが可能となる。
【0020】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態における電解水生成装置の構成図である。この電解水生成装置は、図4に示すように、電解水生成時の電極2a,2b間の電圧値または電流値を検出する検出部8を備えている。そして、制御部4は、検出部8の検知値に応じて記憶部5に記憶された複数の洗浄パターンのいずれかを選択する。具体的には、電極2a,2b間にかける電圧と流れる電流から導電率もしくは電解質濃度を推定する。そして、図5に示すように、推定した導電率を予め記憶しておいた洗浄パターンテーブルにあてはめ、洗浄パターンを決定する。
【0021】
また、記憶部5は、電解水生成時の電流値または電圧値の初期値を記憶してもよい。ここでいう初期値とは、使用開始時における値という意味である。これにより、制御部4は、洗浄後における検出部8の検出値が初期値に比べて電圧が高い場合または電流が少ない場合、記憶部5に記憶された複数の洗浄パターンのうち現在の洗浄パターンより一段階強力な洗浄パターンを次回の洗浄パターンとして選択するようになっている。
【0022】
図6は、第2実施形態における電解水生成装置の動作を示すフローチャートである。まず、通水を開始して例えば2秒未満の間に電極2a,2b間の電流値aまたは電圧値αを検出し、洗浄パターンXを決定する(S1→S2→S3→S4)。また、洗浄終了後に電極2a,2b間の電流値bまたは電圧値βを検出する(S5→S6→S7)。ここで、電流値a>電流値bの場合、または電圧値β>電圧値αの場合は、現在の洗浄パターンXより一段階強力な洗浄パターンX+1を次回の洗浄パターンとして決定する(S8→S9)。一方、電流値a<電流値bの場合、または電圧値β<電圧値αの場合は、現在の洗浄パターンXを引き続き次回の洗浄パターンとして決定する(S8→S10)。あるいは、現在の洗浄パターンXより一段階弱い洗浄パターンX−1を次回の洗浄パターンとして決定してもよい(S8→S10)。
【0023】
以上のように、第2実施形態における電解水生成装置によれば、第1実施形態と同様、より使用環境に応じた的確な洗浄パターンで洗浄を行うことができる。また、自動的に洗浄パターンが選択されるので、ユーザーの手を煩わせることがない。さらに、季節等で硬度が変動した場合でも対応することができる。
【0024】
(第3実施形態)
第3実施形態における電解水生成装置の構成図は、第2実施形態(図4)と同じである。本実施形態における制御部4は、図7に示すように、洗浄後における検出部8の検出値が初期値に比べて電圧が高い場合または電流が少ない場合、その検出値および初期値に基づいて洗浄頻度、洗浄時間、洗浄強度のいずれかを算出し(S21)、新たな洗浄パターンを選択するようになっている(S22)。
【0025】
すなわち、通水初期の電極2a,2b間にかける電圧と流れる電流から電極2a,2b間の抵抗値を測定し、記憶部5に記憶しておく。そして、洗浄終了後にも同じ電圧で電極2a,2b間の抵抗値を測定し、通水初期の値と比較する。ここで、通水初期の値より電解効率が悪ければ、新たな洗浄パターンを算出し、その洗浄パターンを選択する。
【0026】
たとえば、制御部4は、洗浄後における電流値が初期電流値より低い場合は、両者の比から低下した比率を算出し、その比率に相当する時間を加算した洗浄時間を算出する。より具体的に説明すると、洗浄後における電流値が初期電流値の80%であった場合は、100%/80%=1.25であり、洗浄時間を前回の1.25倍にする。そして、その条件を新たな洗浄パターンとして選択し、次回の洗浄時にはその洗浄パターンで洗浄を行う。なお、洗浄後における電流値が初期電流値と同じ場合は、実行した洗浄パターンを記憶しておき、次の洗浄時にはその洗浄パターンで洗浄を行うようになっている。
【0027】
以上のように、第3実施形態における電解水生成装置によれば、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。しかも、検出値等に基づいて新たな洗浄パターンを算出するようにしているので、使用環境に応じた最適な洗浄パターンで洗浄を実行させることが可能となる。
【0028】
(第4実施形態)
第4実施形態における電解水生成装置の構成図は、第2実施形態(図4)と同じである。本実施形態における制御部4は、異なる複数の電圧で電解するモードを備えている場合、電解水生成時における印加電圧の強さに応じて洗浄パターンを選択するようになっている。
【0029】
すなわち、スケールの付着具合は、電解水生成時に流れる電流の値で変わり、電流が大きければ大きいほど付着しやすくなる。したがって、印加する電圧が異なる複数の電解モードを備えた電解水生成装置においては、制御部4は、予め記憶部5に記憶された洗浄パターンの中から、直前に使用された電解モードに応じた洗浄パターンを選択する。
【0030】
以上のように、第4実施形態における電解水生成装置によれば、電解モードによって洗浄パターンを選択することができる。すなわち、原水の水質と流れる電流に応じて洗浄パターンを選択することができるので、安定した電解性能を発揮させることが可能となり、過剰な洗浄を行う必要がない。
【0031】
(第5実施形態)
図8は、第5実施形態における電解水生成装置の構成図である。この電解水生成装置は、図8に示すように、電極2a,2b間に流れる電流値と通水量または通水時間とを掛け合わせた値である電極使用度を演算する演算部9を備えている。そして、制御部4は、演算部9により演算された電極使用度が所定の値に達した場合に洗浄を行う。
【0032】
すなわち、スケールの付着具合は、電極2a,2b間に流れる電流値、通水量、または通水時間に影響される。電流値が高くなるほどスケールが付着しやすく、通水する量が多くなるほど、または通水する時間が長くなるほどスケールが付着しやすい。したがって、電流値と通水量または通水時間とを掛け合わせた値を電極使用度と設定し、これが水質に応じて設定した電極使用度に達したら洗浄を行う。
【0033】
また、洗浄の際に印加する電圧と洗浄時間に関して、導電率が高い場合は、電圧値が小さくても電流は多く流れるので、洗浄時に印加する電圧は小さな値でよい。また、洗浄時間は長いほど効果があるので、導電率が高い場合は、導電率が低い場合より長い時間洗浄を行えば効果的である。したがって、図9に示すように、推定した導電率ごとに水質に応じた区分を分け、区分ごとに洗浄モードの印加電圧と洗浄時間を設定する。そして、電極使用度が予め設定した所定値に達したら洗浄を行う。洗浄を行う電極使用度の値を一定にし、印加電圧または洗浄時間を水質によって変えてもよいし、洗浄を行う電極使用度の値を水質によって変えてもよい。
【0034】
以上のように、第5実施形態における電解水生成装置によれば、電極の使用状況に応じて洗浄を行うので、安定した電解性能を発揮させることができ、過剰な洗浄を行う必要がない。
【0035】
なお、以上では好適な実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、電解槽2は少なくとも一対の電極を備えていればよく、その構成は適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0036】
2a,2b 電極
2 電解槽
4 制御部(選択部)
5 記憶部
6 操作部(選択部)
8 検出部
9 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解水を生成する電解水生成装置であって、
陽極と陰極の少なくとも一対の電極を備える電解槽と、
前記電極への通電を制御する制御部と、
前記電極に付着したスケールを防止するための洗浄頻度、洗浄時間、洗浄強度のうちの少なくとも1つからなる複数の洗浄パターンを記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された複数の洗浄パターンのいずれかを選択する選択部と、
を備えることを特徴とする電解水生成装置。
【請求項2】
電解水生成時の前記電極間の電圧値または電流値を検出する検出部を備え、
前記制御部は、前記検出部の検知値に応じて前記記憶部に記憶された複数の洗浄パターンのいずれかを選択することを特徴とする請求項1記載の電解水生成装置。
【請求項3】
前記記憶部は、電解水生成時の電流値または電圧値の初期値を記憶し、
前記制御部は、洗浄後における前記検出部の検出値が前記初期値に比べて電圧が高い場合または電流が少ない場合、前記記憶部に記憶された複数の洗浄パターンのうち現在の洗浄パターンより一段階強力な洗浄パターンを次回の洗浄パターンとして選択することを特徴とする請求項2記載の電解水生成装置。
【請求項4】
前記制御部は、洗浄後における前記検出部の検出値が前記初期値に比べて電圧が高い場合または電流が少ない場合、その検出値および初期値に基づいて洗浄頻度、洗浄時間、洗浄強度のいずれかを算出して新たな洗浄パターンを選択することを特徴とする請求項3記載の電解水生成装置。
【請求項5】
前記制御部は、異なる複数の電圧で電解するモードを備えている場合、電解水生成時における印加電圧の強さに応じて洗浄パターンを選択することを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項に記載の電解水生成装置。
【請求項6】
前記電極間に流れる電流値と通水量または通水時間とを掛け合わせた値である電極使用度を演算する演算部を備え、
前記制御部は、前記演算部により演算された電極使用度が所定の値に達した場合に洗浄を行うことを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の電解水生成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−179567(P2012−179567A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44983(P2011−44983)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】