説明

電解液流通型電池システム

【課題】自己放電を抑制することができる電解液流通型電池システムを提供する。
【解決手段】電池セルと、電解液を貯蔵する電解液タンクと、電池セルと電解液タンクとの間で電解液の流路を構成する循環経路と、循環経路に電解液を循環させる循環ポンプとを備える電解液流通型電池システムである。このシステムは、1〜30セルまでの数の前記電池セルを直列に接続した電池ユニット2と、この電池ユニット2の電圧を当該ユニット2の電圧よりも高電圧の交流として出力する昇圧手段(昇圧変換手段50)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レドックスフロー電池(以下、RF電池と呼ぶことがある)システムなどの電解液流通型電池システムに関する。特に、シャント電流による自己放電を抑制できる電解液流通型電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
瞬低・停電対策や負荷平準化を目的とした大容量の蓄電池として、RF電池が利用されている。図5に示すように、RF電池1は、電池セル10を備える。電池セル10は、イオンを透過することができる隔膜101で正極セル102と負極セル103とに区画され、正極セル102には正極電極104が、負極セル103には負極電極105がそれぞれ内蔵されている。また、RF電池1は、正極用及び負極用にそれぞれ、電解液21,22を貯蔵する電解液タンク20と、電解液21,22を電解液タンク20と電池セル10(正極セル102、負極セル103)との間で循環させるための循環経路30と、循環経路30に電解液を循環させる循環ポンプ40とを備える。循環経路30は、電解液を電解液タンク20から電池セル10(正極セル102、負極セル103)に送る往路配管31と、電解液を電池セル10(正極セル102、負極セル103)から電解液タンク20に戻す復路配管32とを有する。
【0003】
RF電池1では、電解液タンク20と電池セル10とを連通するように往路配管31が接続され、電解液タンク20と電池セル10とを連通するように復路配管32が接続されている。そして、正極側及び負極側のそれぞれにおいて、循環ポンプ40が起動されることで、電解液タンク20から往路配管31を介して電解液21,22が電池セル10に送られる。電池セル10に供給された電解液21,22は、電池セル10の下方から内部を通って上方に排出され、復路配管32を介して電解液タンク20に戻されて循環する。電池セル10内では、電池反応(充放電反応)が行われる。図5中の電池セル10内の実線矢印は充電反応を、破線矢印は放電反応をそれぞれ示す。なお、ここでのRF電池1は、正負極の電解液21,22にバナジウムイオン水溶液を用いた場合を例に挙げている。
【0004】
RF電池は、所望の電圧を得るべく、複数の電池セルを積層させることで直列に接続したセルスタックと呼ばれる形態でRF電池システムの一部として利用されることが多い。図6に示すように、セルスタック200は、双極板201を有するセルフレーム202、正極電極104、隔膜101、負極電極105、双極板201を有するセルフレーム202を順に繰り返し積層した構造となっている。このセルスタック200では、両側に一対のエンドプレート210を配置し、ボルトなどの締付部材220で両エンドプレート210を締め付けることで構成されている。
【0005】
このようなセルスタックを用いたRF電池システムでは、上記のセルスタックを単独で利用したり、或いは複数のセルスタックを直列に接続して構成される電池ユニットと呼ばれる形態として利用されることがある(特許文献1参照)。この場合、電池システムとして求められる高電圧を確保するため、例えば、直列される複数の電池セルの合計数は80〜100セル程度、その合計電圧は100〜150V程度とされる。そして、この合計電圧を有する電池ユニットに対してインバータ(交流/直流変換器)が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-207620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、セルスタックの電解液は、通常、電解液タンクから全電池セルに並列に供給される構成になっている。ところで、電池の電圧を高めるために、電池セルの直列数を増加させる場合には、各電池セル間の電解液、或いはセルスタック間をつなぐ配管内の電解液を通じてシャント電流などの自己放電電流が増加することがある。
【0008】
このシャント電流を減少させる方策の一つとして、セルスタック内の電解液の流路やセルスタック同士をつなぐ電解液の配管を細く又は長くし、流路内の電解液の抵抗を高くすることが挙げられる。しかし、このような方策は、(1)流路の細径化に伴って電解液の流れが阻害されることを補償するため、循環ポンプの出力を増大させたり、(2)流路の細径化・長尺化に伴って電池セルの構造を複雑化させたり、(3)長尺の配管を設置するスペースを確保する必要がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、簡易な構成にて、シャント電流による自己放電を抑制できる電解液流通型電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、シャント電流を減少させるべく、上述した電解液流路の細径化や長尺化とは異なる方策を鋭意検討した結果、直列される電池セルの数を調整することで上記の目的を達成できるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明の電解液流通型電池システムは、電池セルと、電解液を貯蔵する電解液タンクと、前記電池セルと前記電解液タンクとの間で電解液の流路を構成する循環経路と、前記循環経路に前記電解液を循環させる循環ポンプとを備える。このシステムは、1〜30セルまでの数の前記電池セルを直列に接続した電池ユニットと、この電池ユニットの電圧を当該ユニットの電圧よりも高電圧に昇圧して出力する昇圧変換手段とを備える。
【0012】
シャント電流は、積層した電池セルの合計電圧が高い場合に生じやすい。そのため、上記の構成によれば、直列に接続される電池セルの数を限定することで、シャント電流を低減することができる。このシャント電流の低減は、電解液の流路を細くしたり長くすることなく実現できるため、電池セルの構造の複雑化、電池システムの大型化や、循環ポンプの出力増加を必要としない。一方で、電解液流通型電池システムとして求められる所定の高電圧は、昇圧手段を用いることで、従来の電解液流通型電池システムと同等以上に確保することができる。
【0013】
本発明の電解液流通型電池システムの一形態として、前記昇圧手段は、電池ユニットの出力を当該ユニットの電圧よりも高電圧の交流に変換出力する昇圧変換手段であることが挙げられる。
【0014】
この構成によれば、直流である電池ユニットの出力を交流に変換することで、電池ユニットの出力を交流の電力系統に出力することができる。
【0015】
本発明の電解液流通型電池システムの一形態として、一つの前記昇圧手段(昇圧変換手段)に対して複数の前記電池ユニットが並列に接続されていることが挙げられる。
【0016】
この構成によれば、複数の電池ユニットを並列に備えることで、電解液流通型電池システムとして十分な電力を確保することができる。
【0017】
本発明の電解液流通型電池システムの一形態として、昇圧変換手段を、DC/DCコンバータと、DC/ACインバータとを備える構成とすることが挙げられる。このDC/DCコンバータは、電池ユニットから出力される直流を高電圧の直流に昇圧する。前記DC/ACインバータは、DC/DCコンバータで高電圧に昇圧された直流を高電圧の交流に変換する。
【0018】
この構成によれば、DC/DCコンバータにより、低電圧の電池ユニットの直流を所定の高電圧の直流に昇圧し、さらにDC/ACインバータにより、高電圧の直流を高電圧の交流として変換出力することができる。そのため、この電解液流通型電池システムから所定の高電圧の交流を出力することができる。
【0019】
本発明の電解液流通型電池システムの一形態として、昇圧変換手段を、DC/ACインバータと、トランスとを備える構成とすることが挙げられる。このDC/ACインバータは、電池ユニットから出力される直流を交流に変換する。前記トランスは、DC/ACインバータで変換された交流を高電圧の交流に昇圧する。
【0020】
この構成によれば、DC/ACインバータにより低電圧の電池ユニットの直流を低電圧の交流に変換し、さらにトランスにより低電圧の交流を所定の高電圧の交流に変換出力することができる。そのため、この電解液流通型電池システムから所定の高電圧の交流を出力することができる。
【0021】
本発明の電解液流通型電池システムの一形態として、前記電池ユニットと前記昇圧手段(昇圧変換手段)との組合せを複数組並列に接続したことが挙げられる。
【0022】
一つの昇圧手段(昇圧変換手段)に対して多数の電池ユニットを並列に接続する場合、大型の昇圧手段(昇圧変換手段)が必要な場合がある。上記の構成によれば、昇圧手段(昇圧変換手段)と電池ユニットを複数備えることで、一つ当たりの昇圧手段(昇圧変換手段)のサイズを小型化することができ、電池システム全体としての低コスト化に寄与できる。また、複数の昇圧手段(昇圧変換手段)を個別に制御することで、上記組合せ単位毎に充電・放電・停止を制御できる。
【0023】
上述の本発明の電解液流通型電池システムに利用できる電解液としては、以下の(1)〜(5)のいずれかが挙げられる。
(1) 正極電解液は、マンガンイオンを含有し、負極電解液は、チタンイオン、バナジウムイオン、クロムイオン、亜鉛イオン、及びスズイオンから選択される少なくとも一種の金属イオンを含有する。
(2) 正極電解液は、マンガンイオン及びチタンイオンの双方を含有し、負極電解液は、チタンイオン、バナジウムイオン、クロムイオン、亜鉛イオン、及びスズイオンから選択される少なくとも一種の金属イオンを含有する。
(3) 正極電解液及び負極電解液は、マンガンイオン及びチタンイオンの双方を含有する。
(4) 正極電解液及び負極電解液は、バナジウムイオンを含有する。
(5) 正極電解液は、鉄イオンを含有し、負極電解液は、チタンイオン、バナジウムイオン、クロムイオン、亜鉛イオン、及びスズイオンから選択される少なくとも一種の金属イオンを含有する。
【0024】
これらの電解液は、いずれも好ましい電解液流通型電池システムを構成することができる。特に、上記(1),(2)の電解液として、正極活物質にマンガンイオン、負極活物質に上記列挙したチタンイオンやバナジウムイオンなどを用いることで、高い起電力が得られる。上記(3)の電解液として、正極活物質にマンガンイオン、負極活物質にチタンイオンを用いることで、高い起電力が得られる。更に、上記(2),(3)の電解液において正極活物質をマンガンイオンとし、別途チタンイオンを含有することで、高い起電力が得られる上に、電池抵抗の増加につながる析出物の発生を効果的に抑制することができる。上記(5)の電解液としては、正極電解液が鉄イオンを含有し、負極電解液がクロムイオンを含有する構成が好適である。
【発明の効果】
【0025】
本発明の電解液流通型電池システムによれば、簡易な構成にて、シャント電流を抑制しながら、電池システムとして求められる高電圧を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態1に係る本発明RF電池システムの概略構成図である。
【図2】実施形態2に係る本発明RF電池システムの概略構成図である。
【図3】実施形態3に係る本発明RF電池システムの概略構成図である。
【図4】実施形態4に係る本発明RF電池システムの概略構成図である。
【図5】RF電池の動作原理を示す説明図である。
【図6】セルスタックの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、実施形態に係る電解液流通型電池システムを、RF電池システムを例として説明する。各実施形態の説明において、基本的に従来と共通する構成であるRF電池やセルスタックの構成について述べる際は、図5、図6を参照する。各図において同一符号は、同一名称物を示す。
【0028】
(実施形態1)
実施形態1に係るRF電池システムを図1に基づいて説明する。このRF電池システムは、電池ユニット2及び昇圧変換手段50を備え、この昇圧変換手段50を介して電池ユニット2の電力を母線100へ所定の電圧の交流で出力し、母線100からの電力を電池ユニット2へ所定の電圧の直流で入力できるように構成されている。母線100は、例えば電力系統の一部を構成する。本例では、単一の電池ユニット2に対して単一の昇圧変換手段50を組み合わせた構成である。本例のシステムの特徴の一つは、電池ユニット2を構成する電池セルの数を限定し、さらにこの電池ユニット2に昇圧変換手段50を組み合わせた点にある。
【0029】
<電池ユニット>
電池ユニット2の基本的構成は図5、6に示す従来のRF電池1と同様である。即ち、電池ユニット2は、一つの電池セル10(図5)、或いは複数の電池セルを積層したセルスタック200(図6)の形態で構成される。電池セル10は、正極電解液が流通される正極電極104と、負極電解液が流通される負極電極105と、両電極104,105の間に介在される隔膜(代表的にはイオン交換膜)101とを有する。一方、セルスタック200は、各極電極104,105が表裏に配置される双極板201を有するフレーム202と上記電池セル10とが交互に積層され、各電池セルは電気的に直列に接続されている。電池セル、セルスタックのいずれであっても、各極電極104,105に供給する各極電解液を貯留する各極電解液タンク20(図5)と、電池セル10(セルスタック200)と各極電解液タンク20とに接続されて電解液の流路となる循環経路30(図5)とを備える。電解液としては、バナジウムイオンなどの金属イオンを活物質に含有する硫酸溶液などが用いられる。この電解液は、各極電解液タンク20から循環ポンプ40で電池セル10(セルスタック200)に供給して電池反応に供される。セルスタック200に各極の電解液を供給する場合、各電池セル10には並列に各極の電解液21,22が供給される。なお、本例では正極セル102と負極セル103の各々に正極電解液21、負極電解液22が供給される構成を示しているが、いずれか一方の電極セルにのみ電解液を供給する構成を採ることもできる。
【0030】
ここで、電池ユニット2を構成する電池セル10の数は1〜30とする。シャント電流は、電解液を共通し、かつ直列に接続される電池セル10の数が多いと発生し易くなる。特に、電池セル10の数が30セルを超えると顕著にシャント電流が生じる。そのため、本例では一つの電池ユニット2の電池セル10の数を30以下としている。より好ましい電池セル10の数は25以下、さらに好ましい電池セル10の数は20以下である。電池ユニット2を構成する電池セル10の最少数は1であるが、通常、複数の電池セル10、例えば5以上、特に10以上の電池セル10を直列に接続して利用することが実用的である。電池ユニット2の電圧は、電池セル10の数を30以下としたため、一般に50V以下程度である。単一の電池ユニット2の電圧を50V以下とすることで、シャント電流の発生を効果的に低減できる。単一の電池ユニット2の電圧は、40V以下、さらには30V以下としてもよい。
【0031】
<昇圧変換手段>
上述のように、電池ユニット2の電池セル数を限定すれば、電池ユニット2の電圧も制約され、負荷側に供給される所定の高電圧を得ることは難しい。そのため、この電池ユニット2の電圧は、昇圧変換手段50により昇圧される。昇圧変換手段50は、電池ユニット2の低電圧の直流を高電圧の交流として母線100に変換出力する機能を有する。勿論、電池ユニット2の充電時、母線100の高電圧の交流は、降圧変換手段の機能も兼ねる昇圧変換手段50により、低電圧の直流に変換されて電池ユニット2に入力される。
【0032】
より具体的には、昇圧変換手段50は、DC/DCコンバータ51とDC/ACインバータ52とを備える。DC/DCコンバータ51は、電池ユニット2に接続されて、電池ユニット2から出力される低電圧の直流を高電圧の直流に昇圧する。一方、DC/ACインバータ52は、母線100とDC/DCコンバータと51の間に接続され、DC/DCコンバータ51で高電圧に昇圧された直流を高電圧の交流に変換する。この昇圧と変換により、電池ユニット2の低電圧の直流を高電圧の交流として母線100に出力(放電)することができる。
【0033】
逆に、母線100からの電力を電池ユニット2に入力(充電)する場合、母線100の高電圧の交流を整流器(図示略)で高電圧の直流に整流し、その高電圧の直流をDC/DCコンバータ51で降圧して低電圧の直流として電池ユニット2に入力させる。この整流器は、DC/ACインバータ52の一部として構成してもよい。さらには、DC/DCコンバータ51をDC/ACインバータ52に内蔵させることもできる。
【0034】
<作用効果>
上記の電池システムによれば、電池ユニットを構成する電池セルの数を限定することで電池ユニットの電圧を低く抑え、それによりシャント電流を低減することができる。このシャント電流の低減は、電解液の流路の細径化や長尺化を伴うことなく実現できる。そのため、電解液流路を形成する電池セルの構造を複雑にしたり、ポンプ出力を増大させる必要もない。
【0035】
また、この電池システムによれば、電池ユニットに昇圧変換手段を組み合わせることで、低い電池ユニットの電圧を所定の高電圧の交流に昇圧変換して、母線に出力することができる。
【0036】
さらに、この電池システムは、風力、太陽電池などの自然エネルギーを用いた発電機と組み合わせて、その発電機の出力平滑化などに利用することができる。これら発電機は、出力変動が大きく、さらには組み合わされる電池システムに長い待機時間が求められることがある。そのような特性の発電機に対しても、本例の電池システムはシャント電流による自己放電が少ないため、好適に利用できる。
【0037】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係るRF電池システムを図2に基づいて説明する。本例のシステムは、昇圧変換手段に対して接続される電池ユニットの数が実施形態1のシステムと異なり、他の構成は基本的に実施形態1のシステムと共通である。以下、主に相違点を説明する。
【0038】
本例のシステムでは、一つの昇圧変換手段50に対して、複数の電池ユニット2が並列に接続されている。各電池ユニット2を構成する電池セル10の数が30以下である点や、昇圧変換手段50の構成は実施形態1と同様である。電池ユニット2の数は特に制限されないが、実用的には、2〜30程度である。各電池ユニット2を構成する電池セル10の数は全て同じとすることが好ましい。これにより、各電池ユニット2間での電圧の相違を無くすことができる。
【0039】
本例のシステムによれば、実施形態1と同様の作用効果に加え、複数の電池ユニットを並列に昇圧変換手段に接続することで、母線に出力するのに十分な電力を確保することができる。
【0040】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係るRF電池システムを図3に基づいて説明する。本例のシステムは、昇圧変換手段の構成が実施形態2のシステムと異なり、他の構成は基本的に実施形態2のシステムと共通である。以下、主に相違点を説明する。
【0041】
本例の昇圧変換手段50は、DC/ACインバータ52とトランス53とを備える。DC/ACインバータ52は、電池ユニット2に接続されて、電池ユニット2から出力される低電圧の直流を低電圧の交流に変換出力する。一方、トランス53は、母線100とDC/ACコンバータ52との間に接続され、DC/ACインバータ52から出力される低電圧の交流を高電圧の交流に昇圧して出力する。この変換と昇圧により、電池ユニット2の低電圧の直流を高電圧の交流として母線100に出力(放電)することができる。
【0042】
逆に、母線100からの電力を電池ユニット2に入力(充電)する場合、母線100の高電圧の交流をトランス53で低電圧の交流に変換し、その低電圧の交流を整流器(図示略)で低電圧の直流として電池ユニット2に入力させる。この整流器は、DC/ACインバータ52の一部として構成してもよい。
【0043】
本例の場合も、実施形態2と同様の作用効果を期待できる。また、実施形態2で必要だったDC/DCコンバータが不要になることから、システムの制御が簡単になり、その信頼性向上、低コスト化が期待できる。
【0044】
(実施形態4)
さらに、実施形態4に係るRF電池システムを図4に基づいて説明する。本例のシステムは、電池ユニット及び昇圧変換手段の組合せの数が実施形態2のシステムと異なり、他の構成は基本的に実施形態2のシステムと共通である。以下、主に相違点を説明する。
【0045】
実施形態2では、電池ユニット2及び昇圧変換手段50の組合せの数が一つだったが、本例では複数としている。そして、これら複数の組合せ70(図4では破線表示)は、母線100に対して並列に接続している。なお、本例では、昇圧変換手段50としてDC/DCコンバータ51とDC/ACインバータ52を用いているが、その代わりに、実施形態3と同様に、DC/ACインバータ52とトランス53を用いてもよい。
【0046】
本例の構成においても、実施形態2と同様の作用効果を奏することができる。また、一つの組合せを構成する電池ユニットの数を調整する、例えば少なくすることで、個々の組合せに接続される昇圧変換手段は小型のものを利用でき、電池システム全体の低コスト化が期待できる。また、複数の昇圧変換手段を個別に制御することで、上記組合せ単位毎に充電・放電・停止を制御できる。例えば、(1)一部の組合せに対してメンテナンスが必要なとき、その組合せの運転を停止させたり、(2)一部の組合せに充電が必要な場合、その組合せのみ充電運転させたり、(3)要求される電池システムの出力に応じて、一部の組合せの運転を停止させたりすることができる。
【0047】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、電解液の種類をバナジウム系電解液以外の電解液に変更してもよい。具体的には、上述したMn/Ti系電解液などとすることができる。その他、一つ以上の電池ユニットに対して一つのDC/DCコンバータ(昇圧手段)を接続し、電池ユニットの出力を高電圧の直流として、直流の系統に出力することができる。その場合、DC/ACコンバータを省略すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の電解液流通型電池システムは、自然エネルギーを利用した発電機の出力変動の平滑化、余剰電力の貯蔵、負荷平準化などを図ることを目的とした大容量蓄電池に好適に利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 電解液流通型電池(レドックスフロー電池)
2 電池ユニット
10 電池セル
101 隔膜 102 正極セル 103 負極セル
104 正極電極 105 負極電極
20 電解液タンク
21 (正極)電解液 22 (負極)電解液
30 循環経路
31 往路配管 32 復路配管
40 循環ポンプ
50 昇圧変換手段
51 DC/DCコンバータ 52 DC/ACインバータ 53 トランス
70 組合せ
100 母線
200 セルスタック
201 双極板 202 セルフレーム
210 エンドプレート 220 締結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セルと、
電解液を貯蔵する電解液タンクと、
前記電池セルと前記電解液タンクとの間で電解液の流路を構成する循環経路と、
前記循環経路に前記電解液を循環させる循環ポンプとを備える電解液流通型電池システムであって、
1〜30セルまでの数の前記電池セルを直列に接続した電池ユニットと、
この電池ユニットの電圧を当該ユニットの電圧よりも高電圧に昇圧して出力する昇圧手段とを備えることを特徴とする電解液流通型電池システム。
【請求項2】
前記昇圧手段は、電池ユニットの出力を当該ユニットの電圧よりも高電圧の交流に変換出力する昇圧変換手段であることを特徴とする請求項1に記載の電解液流通型電池システム。
【請求項3】
一つの前記昇圧手段に対して複数の前記電池ユニットが並列に接続されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の電解液流通型電池システム。
【請求項4】
前記昇圧変換手段は、
前記電池ユニットから出力される直流を高電圧の直流に昇圧するDC/DCコンバータと、
このDC/DCコンバータで高電圧に昇圧された直流を高電圧の交流に変換するDC/ACインバータとを備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の電解液流通型電池システム。
【請求項5】
前記昇圧変換手段は、
前記電池ユニットから出力される直流を交流に変換するDC/ACインバータと、
このDC/ACインバータで変換された交流を高電圧の交流に昇圧するトランスとを備えることを特徴とする請求項2又は3に記載の電解液流通型電池システム。
【請求項6】
前記電池ユニットと前記昇圧変換手段との組合せを複数組並列に接続したことを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項に記載の電解液流通型電池システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−164495(P2012−164495A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−23372(P2011−23372)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】