説明

電解質測定装置、および生化学自動分析装置

【課題】本発明は、希釈液及び標準液中の細菌などの微生物を抑えることにより、安定した性能を有する電解質測定装置を提供するものである。
【解決手段】本発明、検体液のイオン濃度を検出するイオン選択性電極と、前記イオン選択性電極に供給され、電位測定に用いられる標準液および希釈液と、前記標準液を収容する標準液収容容器と、前記希釈液を収容する希釈液収容容器とを備える電解質測定装置において、前記標準液収容容器および/または前記希釈液収容容器の内部に備える光触媒と、前記光触媒に波長360〜400nmの紫外線を主に照射する光照射手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体液中のイオン分析に使用する電解質測定装置、および生化学自動分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
イオン選択性電極は液中の特定イオンの濃度を選択的に定量できる特長があり、これまでにも特定イオンのモニター、水質分析等広い分野において用いられている。
【0003】
これは、イオン選択性電極の示す電位Eと目的とする特定イオンの濃度の対数とが直線関係にあり、測定した電位から目的とするイオン濃度を容易に計算できるからである。
【0004】
近年、こうしたイオン選択性電極は医用として、特に血液中に存在するNaイオン、Kイオン、Clイオン等の各種イオンの定量に用いられるようになってきている。また、イオン選択性電極を用いた分析装置も多種類製作されている。
【0005】
イオン選択性電極を用いた測定法には検体液を希釈液で希釈し測定する希釈法と検体液を希釈無しに測定する非希釈法がある。小形緊急検査装置などを除いてほとんどの自動分析装置に搭載されている電解質測定装置では希釈法が採用されている。
【0006】
希釈法では一般的に希釈液は分析装置内にセットされ、希釈液がなくなり交換されるまで装置にセットされたままになっていることがほとんどである。
【0007】
希釈液収容容器は一度開封されると外部の大気は液希釈と接することになり、また、希釈液を分注するチューブやノズルなども希釈液と接するために、大気中やチューブ・ノズルに存在している細菌などの微生物などがチューブやノズルを介して希釈液内部に浸入し、その結果希釈液は細菌などの微生物で汚染されることがある。
【0008】
希釈液以外でも装置に長期間設置され測定に使用される試薬があれば同様に細菌などの微生物による汚染が生じる可能性がある。
【0009】
電解質測定装置ではイオン選択性電極や試薬および検体液の流路などには検体液に含まれるタンパク質や有機物、大気中からの落下細菌などが付着するため、イオン選択性電極の応答や感度の低下が生じる。
【0010】
次亜塩素酸などで流路を洗浄することで汚染を除去する方法が一般的であるが、希釈液や標準液などの試薬中に存在する細菌などの微生物に対する汚染対策はかならずしも十分とはいえない。
【0011】
近年、二酸化チタンTiO2 に代表される光半導体の微粒子による光触媒作用、特にその強い酸化触媒作用に高い注目が集められている。
【0012】
即ち、二酸化チタン等の光半導性を有する粒子状物質をそのバンドキャップエネルギ以上の光(二酸化チタンの場合は400nm以下の光、即ち、紫外線)で照射すると、価電子帯の電子が光励起されて伝導帯に移り、伝導帯には自由電子が生成すると共に、価電子帯には正の電荷を帯びた粒子(正孔)が生成する。
【0013】
これらの正孔と電子とは半導体粒子内部を運動し、時間の経過と共に再結合して消滅する。
【0014】
しかしその粒子表面に空気または水、或いはそれらの正孔や電子よりもエネルギの低い空順位を有する化合物やイオンが存在すると、その粒子表面を通してそれらの正孔と電子が化合物やイオンに移動し、その結果、正孔は粒子表面に接触する化合物やイオンを直接酸化し、或いは活性酸素の1つである水酸基ラジカルを生成する。
【0015】
また、電子による還元反応は主に酸素の還元であり、電子が付加された酸化性のある酸素種が生成される。
【0016】
こうして、光半導体微粒子は光が照射されることによって酸化性の活性表面を形成し、有機化合物の分解等に触媒として作用する(「季刊 化学総説 『光が関わる触媒化学』No.23,1994」(非特許文献1)。
【0017】
このような光半導体微粒子による酸化触媒作用は、光半導体の中でも二酸化チタンが特に高い。また、二酸化チタンは安定性や安全性にも優れている。
【0018】
そして、この二酸化チタンの微粉末を薄膜として基体表面に担持して光触媒を形成し、紫外線照射時のその高い酸化力を有機化合物等の分解に利用した種々の応用が既に知られている。
【0019】
例えば、二酸化チタンの薄膜からなる光触媒をコーティングした中空のガラスビーズは海上に流出した原油の分解剤として知られている。
【0020】
すなわち、ガラスビーズ表面に付着した原油は太陽光中の紫外線によって活性化された二酸化チタンの強い酸化触媒作用によって分解される。
【0021】
また最近では、室内空気の脱臭または消臭、殺菌(抗菌)、タバコのヤニや油膜等の汚れの分解にもその応用が試みられ、自然光または蛍光灯の光に含まれる紫外線を利用してその光触媒を活性化させ、それの酸触媒反応によって接触するメルカブタン等の臭気化合物、或いはタバコのヤニ等の有機物を分解し、または、細菌等の微生物を死滅させ、またはその繁殖を抑えるものである。
【0022】
【非特許文献1】季刊 化学総説 『光が関わる触媒化学』No.23,1994
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
上述したように、電解質測定装置のイオン選択性電極や試薬および検体液の流路などには検体液に含まれるタンパク質や有機物、大気中からの落下細菌などが付着してイオン選択性電極の応答や感度の低下が生じる。
【0024】
本発明は、上記の課題に対処して、希釈液及び標準液中の細菌などの微生物を抑えることにより、安定した性能を有する電解質測定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明、検体液のイオン濃度を検出するイオン選択性電極と、前記イオン選択性電極に供給され、電位測定に用いられる標準液および希釈液と、前記標準液を収容する標準液収容容器と、前記希釈液を収容する希釈液収容容器とを備える電解質測定装置において、前記標準液収容容器および/または前記希釈液収容容器の内部に備える光触媒と、前記光触媒に波長360〜400nmの紫外線を主に照射する光照射手段を有することを特徴とする。
【0026】
すなわち、本発明の電解質測定装置について、更に具体的に述べると、標準液および希釈液が収容される、それぞれ収容容器中に光触媒として機能する二酸化チタンの薄膜をもち、光照射手段の発光ダイオ−ドから照射される紫外線を受けて二酸化チタンの薄膜が活性化され、抗菌作用を行う。
【0027】
このため細菌などの微生物が原因と考えられるイオン選択性電極の応答低下がみられない安定したイオン選択性電極性能を長期間維持できる。
【発明の効果】
【0028】
標準液および希釈液中の細菌などの微生物が原因と考えられるイオン選択性電極の応答低下が無く、安定したイオン選択性電極性能を長期間維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
光触媒の粒子径は、十分に小さいほど「量子サイズ効果」等によって光触媒作用が高い。
【0030】
そのため、コロイドを基体表面に塗布し焼成する等の方法によって、一般に0.3μm以下、好ましくは0.2μm以下の膜厚の透明な薄膜として、またはそのような薄膜を多層化した薄膜として形成するのが好ましい。
【0031】
また、物理的蒸着法(PVD)や化学的蒸着法(CVD)等の方法によって形成することもできる。
【0032】
光触媒反応により分解あるいは酸化して除去される有害物質としては、人体や生活環境に悪影響を及ぼす物質やその可能性がある物質であり、例えば、種々の生物学的酸素要求物質、大気汚染物質などの環境汚染物質や除草剤、殺菌剤、殺虫剤、殺線虫剤などの種々の農薬、細菌、放線菌、菌類、藻類、カビ類などの微生物などが挙げられる。
【0033】
環境汚染物質としては、有機ハロゲン化合物、有機リン化合物やそれ以外の有機化合物、窒素化合物、硫黄化合物、シアン化合物、クロム化合物などの有機化合物が挙げられる。
【0034】
有機ハロゲン化合物としては、具体的には、ポリ塩化ビフェニル、フロン、トリハロメタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等が例示できる。
【0035】
有機ハロゲン化合物、有機リン化合物以外の有機物質としては、具体的には、界面活性剤や油類などの炭化水素類、アルデヒド類、メルカプタン類、アルコール類、アミン類、アミノ酸、蛋白質等が例示できる。
【0036】
また、窒素化合物としては、具体的には、アンモニア、窒素酸化物(NOX)などが例示でき、硫黄化合物としては硫黄酸化物(SOX)が例示できる。
【0037】
光触媒は触媒作用を与える希釈液及び標準液に接している必要があるため、希釈液及び標準液収容容器内に設置される。
【0038】
試薬が消費される度に新たな試薬と収容容器ごと交換されるため、試薬収容容器内に設置する場合、光触媒をその都度新しく交換する試薬収容容器に移し替える必要がある。
【0039】
希釈液及び標準液などの試薬はチューブまたはピペッタを用いて吸引されるが、チューブ方式の場合はその先端に光触媒を固定したチューブを用いると設置や試薬交換の際の作業性を損なわずに済む。
【0040】
また、ピペッタ方式の場合は光触媒を基材中に含有させたり、光触媒を含有するフィルムを基材表面に積層した物を試薬収容容器内に保持させて用いることができる。
【0041】
基材としては、陶磁器、セラミック、金属、ガラス、プラスチック、木材あるいはそれらの複合物等を例示できる。
【0042】
基材の形状はどのようなものでもよく、球状物、円柱物、円筒物、タイル、壁材、床材等の板状物などの単純形状のものでも試薬収容容器内部に設置可能ならばどのようなものでもよい。基材表面は多孔質でも緻密質でもよい。
【0043】
LEDチップである発光ダイオ−ドは、紫外線を放出できるもので、具体的にはpn接合された窒化ガリウム(GaN)系光半導体の結晶体で構成することができる。
【0044】
このpn接合された窒化ガリウム(GaN)系光半導体の結晶体は、波長360〜400nmの光(電磁波)、即ち、紫外線を放射する。この発光ダイオードは、希釈液及び標準液収容容器の内部または外部に保持され、光触媒に紫外線を照射する。
【0045】
なお、発光ダイオードに供給される電気は、本体に収納保持されたバッテリーから供給しても、電灯線から電気を引くこともできる。
【0046】
紫外線光源の種類はキセノンなどを放電媒体としたの希ガス放電灯、水銀放電灯または紫外線発光形蛍光灯ランプなどでもよく、400nm以下の短波長光が効率よく照射されるものであれば特に限定されない。
【0047】
紫外線光源は必要に応じて希釈液及び標準液収容容器の全てに配設されるのが好ましいが、紫外線照射可能であれば、間隔を空けて複数用いてもよい。
【0048】
発光ダイオードは一端側をリード線導出部として主に紫外線を発光する発光ダイオードチップをモールドしたモールド部の他端側頂部に反射手段を具備していることを特徴としている。
【0049】
発光ダイオードの、形状、大きさは特に限定されず、他に紫外線を光源側方に照射することが必要な構成にも適用可能である。
【0050】
反射手段は、光源から照射される紫外線400nm以下の光の反射に有効であれば、膜状、板状、テープ状、およびペースト状などでもよい。
【0051】
材質についても特に限定されないが、金属膜である場合は銀、アルミまたは白金を用いることが好ましい。
【0052】
発光ダイオードのpn接合された発光体はGaN、AlN、AlGaN、ZnS、MgS、MgSe系などの半導体結晶であればよく、波長が400nm以下の光を照射するものであればよい。
【0053】
発光ダイオ−ドが、波長360〜400nmのスペクトル範囲の光のみ放射するものであることが、発光効率及び電力消費の点で好ましい。
【0054】
しかし、発光ダイオ−ドの放射する光は、一般に少なくとも50nmのスペクトル範囲を有するため、波長360〜400nmのみの光を放射する発光ダイオ−ドを得ることは困難である。
【0055】
したがって、使用する発光ダイオ−ドは、波長360〜400nmの紫外線を十分に含む光を放射するものであれば、可視光である400nm以上の波長の光を含む発光ダイオ−ドでも使用することができる。
【0056】
紫外線光源は希釈液及び標準液収容容器内または収容容器外に設置される。
【0057】
キセノンなどを放電媒体としたの希ガス放電灯、水銀放電灯または紫外線発光形蛍光ランプやLEDチップ以外に、自動分析装置の場合は比色分析に使用する光度計の光源を利用することができる。
【0058】
この場合、光ファイバーなどを用いて光源からの紫外光は光触媒まで導かれ照射される。
【0059】
以下、本発明を実施例により説明する。
(実施例1)
図1は本発明の実施例に係わる電解質測定装置の構成図である。
【0060】
まず、血清収容容器に入っている血清1は血清吸引ポンプ2により所定量が希釈槽7へ送られる。
【0061】
次に、稀釈液収容容器に入っている稀釈液3は稀釈液吸引ポンプ4により所定量が希釈槽7へ送られる。希釈槽7では血清1と稀釈液3とが攪拌され、血清中の成分が稀釈された被測定液が調整される。
【0062】
また、標準液収容容器に入っている標準液5は標準液吸引ポンプ6により所定量が希釈槽7へ送られる。
【0063】
被測定液はサンプル吸引ポンプ13によりClイオン選択性電極、Naイオン選択性電極及びKイオン選択性電極ユニット8へ送られ、各イオン選択性電極と基準電極との電位差が増幅器9で増幅され、その電気信号が計算表示機構10へ送られて所定のイオン濃度測定が行なわれる。
【0064】
被測定液は測定終了後、廃液ポンプ11により、廃液タンク12へ送られる。希釈液3及び標準液5の収容容器内に光触媒14及びLEDチップ15(光照射手段)を設けてある。
【0065】
LEDチップ15から放射された紫外線は光触媒14に当たり、これを活性化する。
【0066】
そして、活性化された光触媒は、酸化力のある活性表面を形成するため、これに接触する有機化合物等を酸化分解し、また、これに接触する細菌等の微生物を死滅させ、またはその成育を阻害する。
【0067】
そのため、そのような光触媒反応によって試薬の浄化、殺菌(抗菌)等を行うことができる。
【0068】
更に、LEDチップを複数にしたものにおいては、より多くの紫外線が放射され、また、色彩を有する可視光もより多く放射されるので、光触媒の光触媒反応の能力をより高くし、また、色彩を有する可視光の発光容量を増加することができる。
(実施例2)
図2は本発明の他の実施例に係わる電解質測定装置の構成図である。
【0069】
まず、血清収容容器に入っている血清1は血清吸引ポンプ2により所定量が希釈槽7へ送られる。次に、稀釈液収容容器に入っている稀釈液3は稀釈液吸引ポンプ4により所定量が希釈槽7へ送られる。
【0070】
希釈槽7では血清1と稀釈液3とが攪拌され、血清中の成分が稀釈された被測定液が調整される。また、標準液収容容器に入っている標準液5は標準液吸引ポンプ6により所定量が希釈槽7へ送られる。
【0071】
この被測定液は、サンプル吸引ポンプ13によりClイオン選択性電極、Naイオン選択性電極及びKイオン選択性電極ユニット8へ送られ、各イオン選択性電極と基準電極との電位差が増幅器9で増幅され、その電気信号が計算表示機構10へ送られて所定のイオン濃度測定が行なわれる。
【0072】
被測定液は測定終了後、廃液タンク12へ送られる。希釈液3及び標準液5の収容容器外に光触媒14及びLEDチップ15を設けてある。
【0073】
LEDチップ15から放射された紫外線は光触媒に当たり、これを活性化する。
【0074】
そして、活性化された光触媒は、酸化力のある活性表面を形成するため、これに接触する有機化合物等を酸化分解し、また、これに接触する細菌等の微生物を死滅させまたはその成育を阻害する。
【0075】
そのため、そのような光触媒反応によって試薬の浄化、殺菌(抗菌)等を行うことができる。
【0076】
更に、LEDチップを複数にしたものにおいては、より多くの紫外線が放射され、また、色彩を有する可視光もより多く放射されるので、光触媒の光触媒反応の能力をより高くし、また、色彩を有する可視光の発光容量を増加することができる。
(実施例3)
図3は自動分析装置に搭載された本発明方法に用いられる電解質測定装置の構成図である。
【0077】
まず、血清収容容器が入っている血清1は血清吸引ポンプ2により所定量が希釈槽収容容器が入っている希釈槽7へ送られる。次に、稀釈液3は稀釈液吸引ポンプ4により所定量が希釈槽7へ送られる。
【0078】
希釈槽7では血清1と稀釈液3とが攪拌され、血清中の成分が稀釈された被測定液が調整される。また、標準液収容容器が入っている標準液5は標準液吸引ポンプ6により所定量が希釈槽7へ送られる。
【0079】
この被測定液はサンプル吸引ポンプ13によりClイオン選択性電極、Naイオン選択性電極及びKイオン選択性電極ユニット8へ送られ、各イオン選択性電極と基準電極との電位差が増幅器9で増幅され、その電気信号が計算表示機構10へ送られて所定のイオン濃度測定が行なわれる。
【0080】
被測定液は測定終了後、廃液タンク12へ送られる。希釈液3及び標準液5の収容容器外に光触媒14及び光放射体16を設けてある。光放射体16は自動分析装置の比色用分光光度計にある光源から光ファイバー160(光伝達部材)を介して導入される。
【0081】
光源は、波長360〜400nmの紫外線が含む電磁波を発生する。光放射体16は、光ファイバー160(光伝達部材)の先端に設けられている。
【0082】
光放射体16から放射された紫外線は光触媒に当たり、これを活性化する。
【0083】
そして、活性化された光触媒は、酸化力のある活性表面を形成するため、これに接触する有機化合物等を酸化分解し、また、これに接触する細菌等の微生物を死滅させまたはその成育を阻害する。
【0084】
そのため、そのような光触媒反応によって試薬の浄化、殺菌(抗菌)等を行うことができる。
【0085】
更に、LEDチップを複数にしたものにおいては、より多くの紫外線が放射され、また、色彩を有する可視光もより多く放射されるので、光触媒の光触媒反応の能力をより高くし、また、色彩を有する可視光の発光容量を増加することができる。
(実施例4)
図4は自動分析装置に搭載された本発明の他の実施例に係わるもので電解質測定装置の構成図である。
【0086】
まず、血清収容容器に入っている血清1は血清吸引ポンプ2により所定量が希釈槽7へ送られる。
【0087】
次に、稀釈液収容容器に入っている稀釈液3は稀釈液吸引ポンプ4により所定量が希釈槽7へ送られる。希釈槽7では血清1と稀釈液3とが攪拌され、血清中の成分が稀釈された被測定液が調整される。
【0088】
また、標準液収容容器に入っている標準液5は標準液吸引ポンプ6により所定量が希釈槽7へ送られる。
【0089】
この被測定液はサンプル吸引ポンプ13によりClイオン選択性電極、Naイオン選択性電極及びKイオン選択性電極ユニット8へ送られ、各イオン選択性イオン選択性電極と基準電極との電位差が増幅器9で増幅され、その電気信号が計算表示機構10へ送られて所定のイオン濃度測定が行なわれる。
【0090】
被測定液は測定終了後、廃液タンク12へ送られる。希釈液3及び標準液5の収容容器内に光触媒14及び光放射体16を設けてある。
【0091】
光放射体16は自動分析装置の比色用分光光度計にある光源から光ファイバー160(光伝達部材)を介して導入される。
【0092】
光源は、波長360〜400nmの紫外線が含む電磁波を発生する。光放射体16は、光ファイバー160(光伝達部材)の先端に設けられている。
【0093】
光放射体1616から放射された紫外線は光触媒に当たり、これを活性化する。
【0094】
そして、活性化された光触媒は、酸化力のある活性表面を形成するため、これに接触する有機化合物等を酸化分解し、また、これに接触する細菌等の微生物を死滅させまたはその成育を阻害する。
【0095】
そのため、そのような光触媒反応によって試薬の浄化、殺菌(抗菌)等を行うことができる。
【0096】
更に、LEDチップを複数にしたものにおいては、より多くの紫外線が放射され、また、色彩を有する可視光もより多く放射されるので、光触媒の光触媒反応の能力をより高くし、また、色彩を有する可視光の発光容量を増加することができる。
【0097】
図5に生化学自動分析装置の構成図を示す。
【0098】
生化学自動分析装置は、サンプル容器101、サンプルディスク102、コンピュータ103、インターフェイス104、分注プローブ105、反応容器106、反応ディスク109、分注プローブ110、試薬用ポンプ111を有する。
【0099】
さらに、生化学自動分析装置は、試薬容器112、攪拌機113、光源114、光度計115、AD変換器116、プリンタ117、CRT118、洗浄機構119、洗浄ポンプ120、入力装置121、ハードディスク122、試薬ディスク125、容器種別検出装置150、液面検出装置151を有する。
【0100】
希釈槽130にサンプル用ポンプ107にて試薬を、サンプリングプローブ127で試料を注入し吸引用ポンプ126でイオンセンサ128へ測定試料を流し、発生した電位はAD変換器129にて信号処理する。こうして測定が行なわれる。
(実施例5)
Cl イオン選択性電極、Na イオン選択性電極及びK イオン選択性電極の安定性を日立7070形生化学自動分析装置により評価した。生化学自動分析装置の概要は、図5のとおりである。
【0101】
上記の評価結果は、図6に示した。
【0102】
光触媒は二酸化チタンを使用し、紫外線光源にLEDチップを用いた場合における各イオン選択性電極のスロープ電位の経時変化を示す。
【0103】
紫外線光は自動分析装置の比色用分光光度計用光源から光ファイバーを介して希釈液及び標準液収容容器内に導入した。
【0104】
評価結果から明らかなように、何れのイオン電極も安定性の向上が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】本発明に係わる実施例1の電解質測定装置の構成図である。
【図2】本発明に係わる実施例2の電解質測定装置の構成図である。
【図3】本発明に係わる実施例3の電解質測定装置の構成図である。
【図4】本発明に係わる実施例4の電解質測定装置の構成図である。
【図5】本発明に係わる自動分析装置の模式図である。
【図6】本発明に係わる実施例5のスロープ電位の経時変化を示した図である。
【符号の説明】
【0106】
1…血清、2…血清吸引ポンプ、3…稀釈液、4…稀釈液吸引ポンプ、5…標準液、6…標準液吸引ポンプ、7…希釈槽、8…イオン選択性電極ユニット、9…増幅器、10…計算表示機構、11…廃液ポンプ、12…廃液タンク、13…サンプル吸引ポンプ、14…光触媒、15…LEDチップ、16…光放射体、101…サンプル容器、102…サンプルディスク、103…コンピュータ、104…インターフェイス、105…分注プローブ、106…反応容器、107…サンプル用ポンプ、109…反応ディスク、110…分注プローブ、111…試薬用ポンプ、112…試薬容器、113…攪拌機、114…光源、115…光度計、116…AD変換器、117…プリンタ、118…CRT、119…洗浄機構、120…洗浄ポンプ、121…入力装置、122…ハードディスク、125…試薬ディスク、126…吸引用ポンプ、127…サンプリングプローブ、128…イオンセンサ、129…AD変換器、130…希釈槽、150…容器種別検出装置、151…液面検出装置、160…光ファイバー(光伝達部材)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体液のイオン濃度を検出するイオン選択性電極と、前記イオン選択性電極に供給され、電位測定に用いられる標準液および希釈液と、前記標準液を収容する標準液収容容器と、前記希釈液を収容する希釈液収容容器とを備える電解質測定装置において、
前記標準液収容容器および/または前記希釈液収容容器の内部に備える光触媒と、前記光触媒に波長360〜400nmの紫外線を主に照射する光照射手段を有することを特徴とする電解質測定装置。
【請求項2】
請求項1記載の電解質測定装置において、
前記光照射手段を前記標準液収容容器および/または前記希釈液収容容器の内部または外部に備えたことを特徴とする電解質測定装置。
【請求項3】
電解質測定装置を含む生化学自動分析装置において、
前記電解質測定装置は、検体液のイオン濃度を検出するイオン選択性電極と、前記イオン選択性電極に供給され、電位測定に用いられる標準液および希釈液と、前記標準液を収容する標準液収容容器と、前記希釈液を収容する希釈液収容容器と、前記標準液収容容器および/または前記希釈液収容容器の内部に備える光触媒を有し、
前記生化学自動分析装置は、波長360〜400nmの紫外線が含む電磁波を発生する光源を備え、
前記光源が発生する電磁波を前記光触媒に照射するために導くところの光ファイバーを含む光伝達部材を有することを特徴とする生化学自動分析装置。
【請求項4】
請求項3記載の生化学自動分析装置において、
前記光伝達部材の先端に光放射体を設けたことを特徴とする生化学自動分析装置。
【請求項5】
請求項4記載の生化学自動分析装置において、
前記光放射体を前記標準液収容容器および/または前記希釈液収容容器の内部または外部に配置したことを特徴とする生化学自動分析装置。
【請求項6】
請求項1または2記載の電解質測定装置において、
前記光触媒が二酸化チタンであることを特徴とする電解質測定装置。
【請求項7】
請求項3〜5に記載された何れかの生化学自動分析装置において、
前記光触媒が二酸化チタンであることを特徴とする生化学自動分析装置。
【請求項8】
請求項1、2、6のいずれかに記載された電解質測定装置において、
前記光照射手段は、1以上のLEDチップまたは電灯を含むことを特徴とする電解質測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−215926(P2008−215926A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51379(P2007−51379)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】