説明

電解銅箔めっき処理装置のボトムローラーの回転方法と軸封装置

【課題】電解銅箔めっき処理装置において、ボトムローラーを銅箔の搬送と同じ速さで動くように駆動をかける方式では、搬送速度が上がると、液の巻き込みにより、銅箔のこすれ、切れが発生しやすくなる。そこで、銅箔の搬送にあわせてボトムローラーが自由に動くようにすることで、銅箔のこすれ、切れを低減し、また搬送速度を上げることができるボトムローラーを提供することにある。
【解決手段】銅箔の搬送にあわせてボトムローラーが動くようにするため、回転抵抗を極力下げる必要がある。ボトムローラーの重量を支えるために空気軸受けを用い、処理液の軸封装置にはラビリンス構造でかつ、圧縮空気の供給する非接触の軸封装置にする。またボトムローラーにセラミック軸受けを使うことで処理液との絶縁を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール状に巻き取られた電解銅箔を連続的に表面処理する処理装置内のボトムローラー回転方法と、ボトムローラー回転軸と外輪部の間から漏洩する処理液をシールする軸封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、銅箔搬送のため使用されるローラーの回転は銅箔の搬送と同じになるよう駆動をかけ、銅箔搬送のための力が銅箔の一部分に偏らないようなっている。
【0003】
処理液体中のボトムローラーは処理液が外部へ漏れないよう回転軸に接触式のシールをする方法が一般的である。またラビリンス構造を用いることでシール性能を向上させた軸封装置はあるが高い回転数を必要とされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の如く、電解銅箔を連続的に表面処理する装置は、搬送のための銅箔へかかる力が分散するように、ローラーが銅箔と同速度で駆動するように作られている。しかし、処理速度が速くなると、スプロケット等を有して外部から駆動されるボトムローラーは処理液中であるため、処理液の巻き込みによる、銅箔のたるみ、脈動などが起き、ボトムローラーと銅箔の間にこすれが生じ、銅箔のこすれ傷、切れが起きてしまう。
【0005】
ボトムローラー回転軸受け部の軸封装置は、従来接触式であり、回転抵抗が大きかったが、駆動力は外部から加えていたので回転抵抗をそれほど気にする必要はなかった。しかし本発明の場合は、銅箔の搬送にボトムローラーを従動させるため回転抵抗を極力抑える必要がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ボトムローラーに駆動をかけずに電解銅箔にめっき処理を施すことにより、高速に処理した際に起こる銅箔のこすれ傷、切れを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明は、次の(1),(2)による
【0008】
(1)の発明は、電解蒸着により製造しロール状に巻き取った銅箔に連続的にめっき処理等をするためのめっき処理装置において、処理液中に銅箔搬送のための駆動力を有しないボトムローラーを具備することを特徴とする電解銅箔めっき処理装置である。これにより処理速度が速くなった際、ボトムローラーの処理液の巻き込みによる、銅箔のたるみ、脈動などが起き、ボトムローラーと銅箔の間にこすれが生じ、銅箔のこすれ傷、切れが起きてしまう現象に対し、ボトムローラーが銅箔の搬送にあわせて動くこと(従動すること)で、銅箔のこすれ傷、切れを低減する。
【0009】
(2)の発明は、ボトムローラー回転軸の軸封装置において、前記ボトムローラーの回転軸の受け部分をセラミック構造にするとともに、
前記ボトムローラーの回転軸を受ける外輪部をラビリンス構造にした軸封装置であって、
前記ラビリンス構造の外輪部中央に圧縮空気を前記回転軸と前記外輪部との間に供給する機構をもつことを特徴とする前記電解銅箔めっき処理装置の軸封装置である。前記ボトムローラーの回転軸の受け部分である回転軸接触部分をセラミック構造にすることで処理液とボトムローラーの間の絶縁耐圧効果を高める働きを有する。そして、ラビリンス構造をした外輪部分と回転軸の間に圧縮空気を供給することで、圧縮空気により液体内へ液体を押し戻すシール作用と、圧縮空気を送ることで軸受けと外輪部が非接触になり回転抵抗が軽減されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように(1)の発明によれば、ボトムローラーが銅箔の搬送にあわせて動くことで、処理速度を上げた場合、処理液の巻き込みにより生じる銅箔のこすれ傷、切れを低減する。また処理速度を上げられることで生産性の向上が図られる。特に、より薄いために切れやすく、付加価値のより高い9μmなどの極薄の銅箔に対する電解銅箔メッキ処理に有効である。
【0011】
(2)の発明により、上記(1)の発明で発揮する効果を持つとともに、さらにシール性能向上が図られる。また、非接触による軸摩耗の減少、絶縁性向上が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施について図を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は電解銅箔めっき処理装置の概略図である。図2は図1におけるA−A矢視断面の左半分の図、図3は軸封装置の正面図と側断面図である。
【0014】
図1に示すように、銅箔本体2は、処理前のロール状に巻かれたロール状銅箔1から銅箔の流れ方向を示す矢印7に示すように引き出されていく。更に、銅箔本体2は、アッパーローラー3に巻回して通過し、処理液タンク4に満たされた処理液5aに浸されながらボトムローラー6に巻回して通過し、引き上げられ次のアッパーローラー3に巻回して通過し、次の処理液へと流れていく(5b、5c)。最終的にアッパーローラー3に巻回して通過し、処理済みのロール状に巻かれたロール状銅箔8に巻取られていく。
【0015】
図1において、処理液タンク4(処理槽)は3つ配列されていて中の処理液は5a、5b、5cで満たされている。例えば5aは前処理の洗浄処理槽、5bはめっき処理槽、5cは後処理の洗浄処理槽を示す。処理槽(処理液タンク)4の数は、銅箔本体2の処理工程に応じて増減する。
【0016】
ちなみに銅箔本体2は幅が1,350mm程度であり、厚さは9μm〜70μmである。銅箔処理の搬送速度は50m/min程度である。前記したように、処理液の槽の数は、銅箔の処理内容により異なる。処理液内は硫酸銅や硫酸などの強酸であったり、必要な処理により変化させうる。
【0017】
図2において、ボトムローラー6とセラミック軸受け11cはカラー30により固着されていて一体的に回転する。またOリングによりボトムローラー6とセラミック軸受け11cの隙間からの液漏れが防止されている。セラミック軸受け11a、11bはセラミック軸受けホルダ31によりボトムローラー6に固着されている。ボトムローラー6と被膜16も固着されていて一体的に回転する。
【0018】
処理液タンク4は軸封装置ホルダ28と軸封装置カバー29を介し、軸封装置本体21を固定している。またその間は処理液が漏れないように固着されている。処理液タンク4はベース32に固定されている。
【0019】
ボトムローラー6は耐薬品性に優れたSUS316L製であり、重量が150kgほどである。その重量は浮力をのぞくと、空気軸受け本体20で支えられる。前記空気軸受け本体20において、焼結体9は粉末焼結等により作られたものであり、微細な連続気孔が無数に空いる。第1圧縮空気入り口10より供給される圧縮空気を、焼結体9の無数の微細な連続気孔からセラミック軸受け11aに噴出することにより軸の重量を支える。同様にセラミック軸受け11bへ噴出することで軸方向へのずれを抑えている。焼結体9とセラミック軸受け11aの隙間は均一である必要があるため、球面軸受け27、球面外輪メタル26の間の摺動作用によりボトムローラー6の軸方向に合わせて空気軸受け本体20が動くようになっている。空気軸受け20は、球面軸受け27、球面外輪メタル26、軸受けホルダ25、軸受けスタンド24で支え、ベース32に固定される。図2は左半分であるが、右側も対称的に作られている。
【0020】
前記ボトムローラー6の処理液に接する部分は電気的に絶縁するために被膜16とセラミック軸受け11(11a、11b、11c)で覆われている。被膜16はナイロン11製で1mmほどの厚さである。シール部材15は耐薬品性に優れ柔軟性のあるシリコンゴムで作られている。シール部材ハウジング14は耐熱、耐薬品性に優れた硬質のバイトンゴムで作られている。
【0021】
前記ボトムローラー6の銅箔接触部17で銅箔と接触する。
【0022】
第2圧縮空気入り口12より入った圧縮空気は、軸封装置ホルダ28を介して軸封装置本体21の全周に周り、シール部材ハウジング14を通してシール部材に供給される。圧縮空気の作用により、セラミック軸受け11cとシール部材15の間に隙間を作る。その作用により回転抵抗が少なくなると共に、ラビリンス構造の形態により第2の圧縮空気は液体中の方向(処理槽4内側)へ流れる。その作用によりシール性を得ることができる。
【0023】
軸封装置ホルダ28は図3に示すように、圧縮空気がまず圧縮空気入り口12に入る。軸封装置ホルダ28によりシール部材ハウジング14の全周に圧縮空気が回り、シール部材15の空気通路15aを介し、断面鋸歯状の空気路(通気路)15bを介してセラミック軸受け11の外側面部に供給されるラビリンス構造の形態となっている。即ち、圧縮空気の作用により、セラミック軸受け11cとシール部材15の間に隙間を作る。その作用により回転抵抗が少なくなると共に、ラビリンス構造の形態により第2の圧縮空気は液体中の方向(処理槽4内側)へ流れる。その作用によりシール性を得ることができる。
【0024】
そして、第1圧縮空気入り口10、第2圧縮空気入り口12に供給される圧縮空気はそれぞれ圧縮機により送られてくる。それぞれ必要な圧力に調整された圧縮空気である。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は半導体基板等に使われる銅箔を処理する分野で利用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】電解銅箔めっき処理装置の概略図である。
【図2】図1におけるA−A矢視断面の左半分の図である。
【図3】軸封装置の正面図と側面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 処理前のロール状に巻かれたロール状銅箔
2 銅箔本体
3 アッパーローラー
4 処理液タンク
5 処理液
6 ボトムローラー
7 銅箔の流れ
8 処理済みのロール状に巻かれたロール状銅箔
9 焼結体
10 第1圧縮空気入り口
11 セラミック軸受け
12 第2圧縮空気入り口
14 シール部材ハウジング
15 シール部材
16 被膜
17 銅箔接触部
20 空気軸受け
21 軸封装置本体
24 軸受けスタンド
25 軸受けホルダ
26 球面外輪メタル
27 球面軸受け
28 軸封装置ホルダ
29 軸封装置カバー
30 カラー
31 セラミック軸受けホルダ
32 ベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解蒸着により製造しロール状に巻き取った銅箔に連続的にめっき処理等をするためのめっき処理装置において、処理液中に銅箔搬送のための駆動力を有しないボトムローラーを具備することを特徴とする電解銅箔めっき処理装置。
【請求項2】
前記ボトムローラーの回転軸の軸封装置において、前記ボトムローラーの回転軸の受け部分をセラミック構造にするとともに、前記ボトムローラーの回転軸を受ける外輪部をラビリンス構造にした軸封装置であって、前記ラビリンス構造の外輪部中央に圧縮空気を前記回転軸と前記外輪部との間に供給する機構をもつことを特徴とする軸封装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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