霊長類におけるフィロウイルス感染に対する予防ワクチンの開発
【課題】エボラウイルス等のフィロウイルスに対する免疫応答を誘発し、その感染により引き起こされる疾患を予防する方法を提供する。
【解決手段】ビリオン糖タンパク質をコードする特定の塩基配列、又は該塩基配列と少なくとも95〜100%の同一性を有する塩基配列であって、発現を指示する塩基配列を含む、発現ベクターを用いる。
【解決手段】ビリオン糖タンパク質をコードする特定の塩基配列、又は該塩基配列と少なくとも95〜100%の同一性を有する塩基配列であって、発現を指示する塩基配列を含む、発現ベクターを用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は包括的に、ウイルスワクチン、特にフィロウイルスワクチンに、ならびにフィロウイルスに対する免疫応答またはフィロウイルスの感染により引き起こされる疾患を誘発する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エボラウイルス、及び遺伝的に関連するマールブルグウイルスは、北米、欧州およびアフリカにおけるヒトおよび霊長類の高致死性出血熱の大発生に関連するフィロウイルスである(非特許文献1または2)。エボラウイルスは、4つのサブタイプ(例えばザイール、スーダン、レストンおよび象牙海岸エピソード(episode)に記載されたもの)からなるマイナス鎖(negative-stranded)RNAウイルスである(非特許文献3)。いくつかのサブタイプが定義されているが、しかしこれらのウイルスの遺伝子構成は類似しており、それぞれ7つの線状アレイ遺伝子(linearly arrayed genes)を含有する。ウイルスタンパク質の1つであるエンベロープ糖タンパク質は2つの代替的形態で存在し、その2つの形態とは、ウイルスゲノムによりコードされる未知の機能を有する50〜70キロダルトン(kDa)の分泌タンパク質と、ウイルス進入を媒介するRNAエディティング(editing)により生成される130kDaの膜貫通糖タンパク質である(非特許文献1または3)。その他の構造遺伝子産物としては、核タンパク質(NP)、マトリックスタンパク質VP24およびVP40、推定非構造タンパク質VP30およびVP35、ならびにウイルスポリメラーゼが挙げられる(非特許文献1で検討されている)。そのRNA配列の自発突然変異は天然で起きるが、しかし他のRNAウイルス内よりも、エボラサブタイプ内では低ヌクレオチド多型性であると思われ(非特許文献3)、これは免疫感作がこの疾患に対する防御に有用であり得ることを示唆する。しかしながら伝統的な能動的および受動的免疫感作アプローチを用いたエボラウイルスに対する防御的免疫応答を誘発する従来の試みは、霊長類では成功していない(非特許文献1、4または5)。したがって、フィロウイルスに対する免疫応答またはフィロウイルス感染により引き起こされる疾患を誘発するためのワクチンを提供することが望まれている。さらに上記のワクチンを製造し、用いる方法を提供することが望まれている。
【非特許文献1】Peters, C.J. et al. in : Fields Virology, eds. Fields, B.N. et al. 1161-1176, Philadelphia, Lippincott-Raven, 1996
【非特許文献2】Peters, C.J. et al. 1994 Semin Virol 5: 147-154
【非特許文献3】Sanchez, A. et al. 1996 PNAS USA 93: 3602-3607
【非特許文献4】Clegg, J.C.S. et al. 1997 New Generation Vaccines, eds. : Levine, M.M. et al. 749-765, New York, NY. Marcel Dekker, Inc.
【非特許文献5】Jahrling, P.B. et al. 1996 Arch Virol Suppl 11: 135-140
【発明の開示】
【0003】
エボラウイルスにより引き起こされる出血熱の大発生は、このヒト病原体の顕著な特徴である高死亡率と関連付けられる。最高致死率は、今日までに同定された4つの株のうちの1つであるザイールサブタイプと関連付けられる(Feldmann, H. et al. 1994 Virology 199: 469-473 ;Sanchez, A. et al. 1996 PNAS USA 93: 3602-3607)。その急速な進行は、天然免疫を発現する機会をほとんど与えず、現在、有効な抗ウイルス療法は存在しない。したがって予防接種は、感染を予防し、伝染を制限するための有望な手段を提供する。本明細書に、霊長類におけるエボラウイルス感染に対する非常に有効なワクチン戦略を記載する。DNA免疫感作、およびウイルスタンパク質をコードするアデノウイルスベクターによる追加免疫の組合せは、カニクイマカクザルにおいて細胞性および体液性免疫を生じた。致死用量のエボラ・ザイールウイルスの高病原性野生型1976マインガ(Mayi
nga)株を用いた攻撃誘発(challenge)は、対照において均一感染を引き起こし、それらのカニクイマカクザルは1週間未満で瀕死状態および死に至った。対照的に、予防接種された動物は全て、6ヶ月より長い間無症候性であり、最初の攻撃誘発後、検出可能なウイルスは認められなかった。これらの知見は、霊長類におけるエボラウイルス感染に対する予防ワクチンを開発することができることを実証している。
【0004】
【表1】
【0005】
【表2−1】
【表2−2】
【0006】
[発明の詳細な説明]
薬学的に許容可能な賦形剤中で、対照配列に作動可能的に連結された、フィロウイルス構造タンパク質をコードする核酸分子を含むフィロウイルスワクチンが提供される。一実施形態では、核酸分子は膜貫通形態のウイルス糖タンパク質(GP)をコードする。別の実施形態では、核酸分子は分泌形態のウイルス糖タンパク質(SGP)をコードする。さ
らに別の実施形態では、核酸分子はウイルス核タンパク質(NP)をコードする。
【0007】
本発明はさらに、GP、SGPおよびNP以外のフィロウイルス構造タンパク質(例えば、フィロウイルスに対する免疫応答またはフィロウイルス感染により引き起こされる疾患を誘発するその他の構造遺伝子産物)をコードする核酸分子を含むワクチンを包含する。本発明のワクチンの核酸分子は、任意のエボラウイルス株(例えばザイール、スーダン、象牙海岸およびレストン株)の構造遺伝子産物をコードする。遺伝的に関連するマールブルグウイルス株の構造遺伝子産物をコードする核酸分子も用いられ得る。さらに本発明の核酸分子は修飾され得る。例えば本明細書中に記述された核酸分子は、修飾発現タンパク質が病原体または疾患に対する免疫応答を誘発する限り、突然変異化され得る。例えば核酸分子は、発現タンパク質が細胞に低毒性であるよう、突然変異化され得る。本発明は、核酸分子の組合せを含むワクチンも包含する。例えばザイール、スーダンおよび象牙海岸エボラ株のGP、SGPおよびNPをコードする核酸分子が任意の組合せで、1つのワクチン組成物中に組合され得るが、これらに限定されない。
【0008】
本発明は、フィロウイルス感染により引き起こされる疾患に対して被験体を免疫感作するための方法であって、免疫有効量のフィロウイルスワクチンを被験体に投与することを含む方法も提供する。薬学的組成物の調製を含めた、フィロウイルスワクチンの製造および使用方法も、本発明により提供される。
【0009】
エボラウイルスの分泌およびビリオン糖タンパク質の生化学的分析
エボラ(EBO)ウイルスは、フィロウイルス(Filoviridae)の成員であり、ヒトおよび/または非ヒト霊長類において重篤な、しばしば致命的な形態の出血熱疾患を引き起こす。フィロウイルスの糖タンパク質(GP)遺伝子は、マイナス鎖RNAゲノムの3’末端から(7つのうちの)4番目の遺伝子である。ある程度まで特性化されたEBOウイルスは全て、構造GPよりむしろ分泌非構造糖タンパク質(SGP)の発現を生じる、同一の非従来型のGP遺伝子構成を有する。SGPは単一フレーム(0フレーム)でコードされるが、一方、GPは2つのフレーム(0および−1フレーム)でコードされる。GPの発現は、単一の追加のアデノシンの挿入(一連の7つのアデノシンに付加される)を生じる転写エディティング事象を介して2つのフレームが連結される場合に起こる。
【0010】
図44を参照すると、EBOウイルスのザイール種に関しては、SGP(364総残基)およびGP(676総残基)のN末端295残基(シグナル配列を含む)は同一であるが、それらのC末端配列の長さおよび構成は独特である。タイプ1膜貫通タンパク質であるGPは、感染ビリオンの表面に見出され、感受性細胞へのウイルスの結合および進入において付着構造で機能する。全種のEBOウイルスに関するGP予測アミノ酸配列の比較は、N末端およびC末端領域における一般的保存を示し(各々、総配列の約3分の1)、高可変性中区分により分離される。このタンパク質は、高度にグリコシル化され、多量のN−およびO−連結グリカンを含有し、マールブルグ(MBG)ウイルス(別の種類のフィロウイルス)に関しては、三量体を形成することが示されている。GPの膜貫通アンカー配列(残基650〜672)に対する直N末端は、フィロウイルスにおいて高度に保存されるモチーフ(残基585〜609)である。この配列は、in vitroで免疫抑制性であることが示されている腫瘍形成性レトロウイルスの糖タンパク質中の一モチーフと高度の相同性を有する。一部重複するこのモチーフは、他のウイルスの表面糖タンパク質に関して予測される構造と同様に、三量体のアセンブリーにおける分子間コイルドコイルの形成において機能すると考えられる七価基反復配列(53残基;位置541〜593)である。この配列に対する直(immediately)N末端は、サブチリシン/ケキシン様転換酵素フリンに関する推定上の多塩基切断部位が直ぐ後に続く予測融合ペプチドである。フリンによる切断は、特異的阻害剤を使用して間接的に実証されており、配列RRTR↓の最後のアルギニン(オープンリーディングフレーム(ORF)の開始からの位置501
)で起こると予測される。SGPの役割はほとんど定義されていないが、しかしSGPは好中球と結合し、一方GPは内皮細胞と結合することが近年の研究により示された。SGPとGPの異なる結合パターンは、同一のN末端アミノ酸配列(〜280残基)を有するにもかかわらず、これらの糖タンパク質は構造的に互いに全く異なることを示唆する。
【0011】
図45を参照すると、エボラウイルスのザイール種により発現される糖タンパク質は、切断、オリゴマー化およびその他の構造特性に関して分析され、それらの機能をより明確に定義した。295N末端残基を共有する50〜70kDaの分泌糖タンパク質および150kDaのビリオン/構造糖タンパク質(それぞれSGPおよびGP)は、シグナラーゼによりN末端近くで切断される。フリンにより媒介される傾向が高い多塩基部位(RRTRR↓)(配列番号51)で、GPで起きる二次切断事象は、ジスルフィド結合により連結される2つの糖タンパク質(GP1およびGP2)を生じる。このフリン切断部位は、全てのエボラウイルスのGP中で同一位置に存在し(R[R/K]X[R/K]R↓)、しかしながら1つはマールブルグウイルスウイルスに関して(R[R/K]KR↓)異なる位置で予測される。架橋試験の結果に基づいて、エボラビリオンペプロマーはGP1−GP2へテロダイマーの三量体から成り、そしてそれらの構造的な面はレトロウイルス(HIV−1およびHIV−2のようなレンチウイルスを含む)、パラミクソウイルスおよびインフルエンザウイルスのものに類似することを研究者は確定することができた。SGPは、ほとんどもっぱらジスルフィド結合により連結されるホモダイマーの形態で、感染細胞から分泌されることも研究者は確定した。
【0012】
図46を参照すると、エボラウイルス病原性の主要ウイルス決定因子を特定した;ザイール型エボラウイルスのビリオン糖タンパク質(GP)の合成は、in vitroおよびin vivoでのヒト内皮細胞における細胞傷害作用を誘導した。この作用は、ウイルスの7つの遺伝子産物のうちの1つであるこのI型膜貫通糖タンパク質のセリン−トレオニンに富むムチン様ドメインにマップされた。移植されたヒトまたはブタ血管へのGPの遺伝子移入は、48時間以内に内皮細胞の大損失を引き起こし、血管透過性の重大な増大をもたらした。GPのムチン様領域の欠失は、タンパク質の発現または機能に影響を及ぼさずに、これらの作用を消失させた。非ヒト霊長類においては疾患を引き起こすがヒトにおいては引き起こさないレストン株ウイルス由来のGPは、ヒト血管の血管系を崩壊させなかった。これに対比して、ザイール型GPは非ヒト霊長類およびヒトの両方の血管において内皮細胞崩壊および細胞傷害を誘導し、ムチンドメインがこの作用のために必要とされた。これらの知見は、GPのムチンドメインがエボラ病原性のウイルス決定因子であり、感染中の出血に関与すると思われることを示す。
【0013】
核酸分子
本明細書中に示されているように、本発明の核酸分子は、クローニングにより得られるかまたは合成的に生産されるRNAまたはDNAの形態であり得る。DNAは、二本鎖または一本鎖であり得る。一本鎖DNAまたはRNAは、センス鎖としても既知であるコード鎖であり得るし、あるいはアンチセンス鎖としても言及される非コード鎖であり得る。
【0014】
「単離」核酸分子(単数または複数)とは、そのネイティブ環境から取り出された核酸分子、DNAまたはRNAを意図する。例えばベクター中に含入される組換えDNA分子は、本発明の目的のために単離されたと考えられる。単離DNA分子のさらなる例としては、異種宿主細胞中に保持される組換えDNA分子または溶液中の精製(部分的または実質的な)DNA分子が挙げられる。単離RNA分子としては、本発明のDNA分子のin
vivoまたはin vitroRNA転写体が挙げられる。本発明の単離核酸分子としてはさらに、合成的に生産されたこのような分子が挙げられる。
【0015】
本発明の核酸分子としては、野生型フィロウイルス構造遺伝子産物をコードするオープ
ンリーディングフレーム(ORF)を含むDNA分子、ならびに上記のものとは実質的に異なる配列であるが、遺伝コードの縮重のために、依然として野生型フィロウイルス構造遺伝子産物のORFをコードする配列を含むDNA分子が挙げられる。もちろん遺伝コードは、当該技術分野で既知である。
【0016】
本発明はさらに、本明細書中に記載された核酸分子の断片を対象とする。野生型フィロウイルス構造遺伝子産物をコードするORFのヌクレオチド配列を有する核酸分子の断片とは、少なくとも約15nt.長、さらに好ましくは少なくとも約20nt.長、さらに好ましくは少なくとも約30nt.長、さらに好ましくは少なくとも約40nt.長の断片を意図する。もちろんより長い断片、50、100、150、200、250、300、350、400、450または500nt.長も、野生型フィロウイルス構造遺伝子産物をコードするORFのヌクレオチド配列のほとんど(全てではないとしても)に対応する断片であり、本発明により意図される。例えば少なくとも20nt.長の断片とは、野生型フィロウイルス構造遺伝子産物のORFのヌクレオチド配列からの20またはそれ以上の連続塩基を含む断片を意図する。
【0017】
本発明の好ましい核酸断片としては、フィロウイルス構造タンパク質のエピトープ保有部分をコードする核酸分子が挙げられる。特に本発明のこのような核酸断片としては、フィロウイルス構造タンパク質のエピトープ保有ドメインをコードする核酸分子が挙げられるが、この場合、ドメインはGP/SGP同一性ドメイン、ムチン様ドメイン、フリン切断部位、融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカードメインおよび細胞内ドメインならびにそれらの任意の組合せ、例えば膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカルボキシ末端のトランケーション(truncation)を有するフィロウイルスの糖タンパク質;七価基反復ドメイン、膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカルボキシ末端のトランケーションを有するフィロウイルスの糖タンパク質;融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカルボキシ末端のトランケーションを有するフィロウイルスの糖タンパク質;フリン切断部位、融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカルボキシ末端のトランケーションを有するフィロウイルスの糖タンパク質;ムチン様ドメイン、フリン切断部位、融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカルボキシ末端のトランケーションを有するフィロウイルスの糖タンパク質である。別の例は、ムチン様ドメイン、フリン切断部位、融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカードメインまたは細胞内ドメインを欠失するためのアミノ、内部またはカルボキシ欠失を有するフィロウイルスの糖タンパク質である。
【0018】
別の態様において、本発明は、上記の本発明の核酸分子中のポリヌクレオチドの一部分と、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む核酸分子を提供する。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、50%ホルムアミド、5xSSC(750mMのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハート液、10%硫酸デキストランおよび20μg/ml変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中で、42℃で一晩インキュベートし、その後、0.1xSSC中約65℃でフィルターを洗浄することを意味する。
【0019】
ポリヌクレオチドの「一部分」とハイブリダイズするポリヌクレオチドとは、少なくとも約15ヌクレオチド(nt.)、さらに好ましくは少なくとも約20nt.、さらに好ましくは少なくとも約30nt.、さらに好ましくは約30〜70nt.の参照ポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)を意味する。
【0020】
「少なくとも20nt.長」のポリヌクレオチドの一部分とは、例えば参照ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列からの20またはそれ以上の連続ヌクレオチドを意味する。もちろん、ポリA配列あるいはT(またはU)残基の相補的ストレッチのみとハイブリダイズするポリヌクレオチドは、ポリAストレッチまたはその相補体(例えば特に任意の二本鎖cDNAクローン)を含有する任意の核酸分子とハイブリダイズするため、本発明の核酸の一部分とハイブリダイズするために用いられる本発明のポリヌクレオチドには含まれない。
【0021】
本明細書中に示されるように、フィロウイルス構造遺伝子産物をコードする本発明の核酸分子としては、全長ポリペプチドのアミノ酸配列を単独でコードするもの、全長ポリペプチドおよび付加的配列に関するコード配列、例えばリーダーまたは分泌配列、例えばプレ−またはプロ−またはプレプロ−タンパク質配列をコードするもの、付加的非コード配列(例えばイントロンおよび非コード5’および3’配列が挙げられるが、これらに限定されない)とともに上記の付加的コード配列を伴うかまたは伴わない全長ポリペプチドのコード配列、例えば転写、mRNAプロセシング、例えばスプライシングおよびポリアデニル化シグナル、例えばリボソーム結合およびmRNAの安定性において機能する転写化非翻訳化配列;ならびに付加的アミノ酸をコードする付加的コード配列、例えば付加的官能基を提供するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本発明はさらに、フィロウイルス構造遺伝子産物の一部分、類似体または誘導体をコードする、本発明の核酸分子の変異体に関する。変異体は、天然対立遺伝子変異体のように、天然に生じ得る。「対立遺伝子変異体」とは、生物体のゲノム上の所定の遺伝子座を占める遺伝子のいくつかの代替的形態のうちの1つを意味する(Genes II, Lewin, B., ed., John Wiley & Sons, 1985 New York)。非天然変異体は、当該技術分野で既知の突然変異誘発技法を用いて生産され得る。
【0023】
このような変異体としては、1つまたは複数のヌクレオチドを包含し得る、ヌクレオチド置換、欠失または付加により生産されるものが挙げられる。変異体は、コード領域、非コード領域またはその両方で変更され得る。コード領域における変更は、保存的または非保存的アミノ酸置換、欠失または付加を生じ得る。これらの中で特に好ましいのは、フィロウイルス構造遺伝子産物またはその一部分の特性および活性を変更しないサイレント置換、付加および欠失である。保存的置換もこの点において特に好ましい。
【0024】
本発明のさらなる実施形態としては、野生型フィロウイルス構造遺伝子産物またはその断片のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列あるいはそれと相補的なヌクレオチド配列と、少なくとも95%同一の、さらに好ましくは少なくとも96%、97%、98%または99%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含む核酸分子が挙げられる。
【0025】
フィロウイルス構造遺伝子産物をコードする参照ヌクレオチド配列と、例えば少なくとも95%「同一」であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとは、エボラウイルス構造遺伝子産物をコードする参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチド当たり、ポリヌクレオチド配列が5つまでの点突然変異を含み得ることを除いて、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であることを意味する。言い換えれば、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るためには、参照配列中のヌクレオチドの5%までが欠失されるかまたは別のヌクレオチドで置換され得るか、あるいは参照配列中の全ヌクレオチドの数の5%までの数のヌクレオチドが参照配列中に挿入され得る。参照配列のこれらの突然変異は、参照ヌクレオチド配列の5’または3’末端位置で、あるいは参照配列中のヌクレオチド間に独立して、あるいは参照配列内の1つまたは複数の連続基中に点在されるそれらの末端位置間のいずれで
も起こり得る。
【0026】
実際的問題として、任意の特定の核酸分子が参照ヌクレオチド配列と、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一であるか否かは、既知のコンピュータープログラム、例えばBestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, Wis. 53711)を用いて従来通りに確定され得る。Bestfitは、Smith and Waterman, 1981 Advances in Applied Mathematics 2: 482-489の局所的相同性アルゴリズムを用いて、2つの配列間の相同性の最良セグメントを見つけ出す。Bestfitまたは任意のその他の配列アラインメントプログラムを用いて、特定の配列が、例えば本発明の参照配列と95%同一であるか否かを確定する場合、パラメーターは、もちろん、同一性のパーセンテージが参照ヌクレオチド配列の全長に亘って算定され、参照配列中のヌクレオチドの総数の5%までの相同性におけるギャップが許されるように設定される。
【0027】
本発明の出願は、エボラ、マールブルグまたはラッサウイルスポリペプチド活性を有するポリペプチドをコードする、本願の配列表中に示された核酸配列と、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一の核酸分子を対象とする。「エボラ、マールブルグまたはラッサウイルスポリペプチド活性を有するポリペプチド」とは、特定の生物学的アッセイにおいてエボラ、マールブルグまたはラッサウイルスポリペプチド活性を示すポリペプチドを意味する。例えば、GP、SGPまたはNPタンパク質活性は、適切な免疫学的アッセイにより、免疫学的特質における変化に関して測定され得る。
【0028】
もちろん、遺伝コードの縮重のために、本願の配列表中に示された核酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一の配列を有する多数の核酸分子が、「エボラ、マールブルグまたはラッサウイルスポリペプチド活性を有する」ポリペプチドをコードすると当業者は容易に理解するであろう。実際、これらのヌクレオチド配列の縮重変異体は全て同一ポリペプチドをコードするため、これは上記の比較アッセイを実施するまでもなく、当業者には明らかである。縮重変異体でないこのような核酸分子に関しては、合理的な数(a reasonable number)が、エボラ、マールブルグまたはラッサウイルスポリペプチド活性を有するポリペプチドをコードすることが当該技術分野においてさらに理解されるであろう。これは、タンパク質機能に有意な影響を与えるとはあまり考えられないかまたは考えられないアミノ酸置換(例えばある脂肪族アミノ酸を第二の脂肪族アミノ酸に置換すること)に、当業者は十分に気づくためである。
【0029】
例えば、表現型性サイレントアミノ酸置換の作製方法に関する指針は、Bowie, J.U. et
al. 1990 Science 247: 1306-1310に記載されており、その記載では、タンパク質は意外にもアミノ酸置換に寛容であると著者等は示している。
【0030】
ポリペプチドおよび断片
本発明はさらに、野生型フィロウィルス構造遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)によりコードされるアミノ酸配列を有するフィロウイルスポリペプチド、あるいはその一部分を含むペプチドまたはポリペプチド(例えばSGP)を提供する。
【0031】
フィロウイルスポリペプチドのいくつかのアミノ酸配列は、タンパク質の構造または機能の有意の作用を伴わずに変更され得ると当該技術分野では理解される。配列におけるこのような差異が意図される場合、活性を確定するタンパク質に重要な領域が存在するということを思い起こすべきである。
【0032】
したがって本発明はさらに、実質的フィロウイルスポリペプチド活性を示し、あるいは
下記のタンパク質部分のようなフィロウイルスタンパク質の領域を含む、フィロウイルスポリペプチドの変異を包含する。このような突然変異体としては、欠失、挿入、逆位、反復および型置換が挙げられる。上記のように、アミノ酸変化が表現型性サイレントであるかどうかを考えるに関する指針は、Bowie, J.U. et al. 1990 Science 247: 1306-1310に見出され得る。
【0033】
したがって、本発明のポリペプチドの断片、誘導体または類似体は、(i)1つまたは複数のアミノ酸残基が、保存または非保存アミノ酸残基(好ましくは保存アミノ酸残基)で置換され、このような置換アミノ酸残基が遺伝コードによりコードされるものであり得るかまたはあり得ないもの、あるいは(ii)1つまたは複数のアミノ酸残基が置換基を含むもの、あるいは(iii)付加的アミノ酸が成熟ポリペプチドに融合されたもの、例えばIgG Fc融合領域ペプチド、あるいはリーダーまたは分泌配列、あるいは成熟ポリペプチドまたはプロタンパク質配列の精製に用いられる配列であり得る。このような断片、誘導体および類似体は、本明細書中の教示から当業者の範囲内であると考えられる。
【0034】
上記のように、好ましくは性質の変化が僅かなものであり、例えばタンパク質のフォールディングまたは活性に有意な影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換である(表A参照)。
【0035】
【表3】
【0036】
もちろん、当業者が作製するアミノ酸置換の数は、上記したものを含めた多数の因子に依存している。概して、任意の所定のフィロウイルスポリペプチドに関するアミノ酸置換の数は、50、40、30、20、10、5または3より少ない。
【0037】
機能に不可欠な本発明のフィロウイルスポリペプチド中のアミノ酸は、当該技術分野で
既知の方法により、例えば部位特異的突然変異誘発またはアラニン走査突然変異誘発により同定され得る(Cunningham & Wells 1989 Science 244: 1081-1085)。後者の手法は、分子中の全ての残基に単一アラニン突然変異を導入する。その結果生じた突然変異体分子は次に、生物学的活性、例えば免疫学的特質の変化に関して試験される。
【0038】
本発明のポリペプチドは、便宜上、単離形態で提供される。「単離ポリペプチド」とは、そのネイティブ環境から取り出されたポリペプチドを意味する。したがって組換え宿主細胞内に生産されるかおよび/または含有されるポリペプチドは、本発明の目的のために単離されたと考えられる。「単離ポリペプチド」とは、組換え宿主細胞またはネイティブ供給源から、部分的にまたは実質的に精製されたポリペプチドも意味する。例えば、組換えにより生産されたバージョンのフィロウイルスポリペプチドは、Smith and Johnson 1988 Gene 67: 31-40に記載された一段階法により実質的に精製され得る。
【0039】
本発明のポリペプチドとしては、野生型フィロウイルス構造遺伝子産物またはその一部分のアミノ酸配列を有するポリペプチド、あるいは本願の配列表に示された核酸配列によりコードされるポリペプチド;ならびに上記したものと少なくとも95%同一、さらに好ましくは少なくとも96%、97%、98%または99%同一であるポリペプチドを含むポリペプチドが挙げられる。
【0040】
フィロウイルスポリペプチドの参照アミノ酸配列と、少なくとも例えば95%「同一の」アミノ酸配列を有するポリペプチドとは、フィロウイルスポリペプチドの参照アミノ酸の各100アミノ酸当たり、ポリヌクレオチド配列が5つまでのアミノ酸変更を含み得ることを除いて、ポリペプチドのアミノ酸配列が参照配列と同一であることを意味する。言い換えれば、参照アミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るためには、参照配列中のアミノ酸残基の5%までが欠失されるかまたは別のアミノ酸で置換され得るか、あるいは参照配列中の全アミノ酸残基のうちの5%までの数のアミノ酸が参照配列中に挿入され得る。参照配列のこれらの変更は、参照アミノ酸配列のアミノ末端またはカルボキシ末端位置で起こり得るし、あるいは参照配列中の残基の間に独立してまたは参照配列内の1つまたは複数の連続基中に点在される、それらの末端位置間のいずれの位置ででも起こり得る。
【0041】
実際的問題として、任意の特定のポリペプチドが参照アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一であるか否かは、既知のコンピュータープログラム、例えばBestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, Wis. 53711)を用いて慣用的に確定され得る。Bestfitまたは任意のその他の配列アラインメントプログラムを用いて、特定の配列が、例えば本発明の参照配列と95%同一であるか否かを確定する場合、パラメーターは、もちろん、同一性のパーセンテージが参照アミノ酸配列の全長に亘って算定され、参照配列中のアミノ酸残基の総数の5%までの相同性におけるギャップが許されるように設定される。
【0042】
別の態様では、本発明は、少なくとも30個のアミノ酸、さらに好ましくは少なくとも50個のアミノ酸を有する、本明細書中に記載されたポリペプチドの一部分を提供する。本発明の好ましい一部分としては、フィロウイルス構造タンパク質のエピトープ保有部分を含むポリペプチドが挙げられる。特に、本発明の好ましい一部分としては、フィロウイルス構造タンパク質のエピトープ保有ドメインを含むポリペプチドが挙げられるが、この場合、ドメインはGP/SGP同一性ドメイン、ムチン様ドメイン、フリン切断部位、融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカードメインおよび細胞内ドメインならびにそれらの任意の組合せである。
該組み合わせとは、例えば膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカル
ボキシ末端のトランケーションを有するフィロウイルスの糖タンパク質;七価基反復ドメイン、膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカルボキシ末端のトランケーションを有するフィロウイルスの糖タンパク質;融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカルボキシ末端のトランケーションを有するフィロウイルスの糖タンパク質;フリン切断部位、融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカルボキシ末端のトランケーションを有するフィロウイルスの糖タンパク質;ムチン様ドメイン、フリン切断部位、融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカルボキシ末端のトランケーションを有するフィロウイルスの糖タンパク質である。別の例は、ムチン様ドメイン、フリン切断部位、融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカードメインまたは細胞内ドメインを欠失するための、アミノ、内部またはカルボキシ欠失を有するフィロウイルスの糖タンパク質である。
【0043】
本発明のポリペプチドは、任意の慣用的手段により生産され得る(Houghten, R.A. 1985 PNAS USA 82: 5131-5135)。「同時多重ペプチド合成(SMPS)」法は、米国特許第4,631,211号(Houghten等(1986))に記載されている。
【0044】
本発明は、本発明の核酸分子を含むベクター、組換えベクターで遺伝子操作された宿主細胞、および組換え技法によるフィロウイルスポリペプチドまたはその断片の産生にも関する。
【0045】
本発明は、初回免疫組成物の投与により誘導された免疫応答が、追加免疫組成物の投与により追加免疫される、「初回免疫および追加免疫」免疫感作レジメンに関する。本発明は、種々の異なる種類の初回免疫組成物のうちのいずれかを用いて初回免疫した後に、複製欠陥アデノウイルスベクターを用いて有効な追加免疫を達成することができるという本発明者らの実験的実証に基づいている。本発明は、下記の実験が示すように、種々の異なる初回免疫組成物のうちのいずれかを用いて、抗原に対して初回免疫された免疫応答に、追加免疫を提供するための有効な手段であることが明らかにされた複製欠陥アデノウイルスを用いる。
【0046】
ヒト血清型5由来の複製欠陥アデノウイルスは、Grahamと同僚等により生(live)ウイルスベクターとして開発された(Graham & Prevec 1995 Mol Biotechnol 3: 207-20; Bett et al. 1994 PNAS USA 91: 8802-6)。アデノウイルスは、約3600bpの線状二本鎖DNAゲノムを含有する非エンベロープ型ウイルスである。組換えウイルスは、ウイルス複製を可能にする許容細胞株中で、アデノウイルスゲノムプラスミドと、強力な真核生物プロモーターとともに当該遺伝子を含むシャトルベクターとの間の、in vitro組換えにより構築され得る。高ウイルス力価が許容細胞株から得られるが、その結果生じるウイルスは、広範囲の細胞型を感染し得るが、許容株以外のいかなる細胞中でも複製せず、したがって安全な抗原送達系である。組換えアデノウイルスは、多数の抗原、例えばダニ媒介性脳炎ウイルスNS1タンパク質(Jacobs et al. 1992 J Virol 66: 2086-95)および麻疹ウイルス核タンパク質(Fooks et al. 1995 Virology 210: 456-65)に対する防御的免疫応答を誘発することが示されている。
【0047】
驚くべきことに、下記の実験的研究は、本発明の実施形態の使用により、抗原を発現する組換え複製欠陥アデノウイルスが、DNAワクチンにより初回免疫された免疫応答を追加免疫することが可能になることを実証する。複製欠陥アデノウイルスは、筋肉内免疫感作後に免疫応答を誘導することが見出された。初回免疫/追加免疫予防接種レジメンでは、複製欠陥アデノウイルスは、異なる組換えウイルスまたは組換えにより産生された抗原により追加免疫され得る応答を、初回免疫し得るものとしても予見される。
【0048】
プラスミドDNAで免疫感作され、複製欠陥アデノウイルスで追加免疫された非ヒト霊長類は、攻撃誘発に対して防御された。組換え複製欠陥アデノウイルスおよびプラスミドDNAはともに、ヒトにとって安全なワクチンである。有益なことに、用いられる予防接種レジメンにおいて、免疫応答(例えば、ヒトにおける)を誘導するのに適した一般的免疫感作レジメンを構成する初回免疫および追加免疫の両方のために、筋肉内免疫感作が用いられ得ることを本発明者が見出した。
【0049】
本発明は、種々の態様および実施形態において、抗原または抗原をコードする核酸の前投与により初回免疫された抗原に対する免疫応答を追加免疫するために、抗原をコードする複製欠陥アデノウイルスベクターを用いる。
【0050】
本発明の一般的態様は、抗原に対する免疫応答を追加免疫するための複製欠陥アデノウイルスベクターの使用を提供する。
【0051】
本発明の一態様は、個体において抗原に対する免疫応答を追加免疫する方法であって、核酸からの発現により個体において抗原を産生し、それにより個体に以前に初回免疫された抗原に対する免疫応答を追加免疫するために、調節配列に作動可能的に連結された抗原をコードする核酸を含む複製欠陥アデノウイルスベクターを個体に提供することを含む方法を提供する。
【0052】
抗原に対する免疫応答は、遺伝子免疫感作により、感染因子による感染により、または組換えにより産生された抗原により初回免疫され得る。
【0053】
本発明のさらなる態様は、個体における抗原に対する免疫応答を誘導する方法であって、抗原または抗原をコードする核酸を含む初回免疫組成物を個体に投与し、次に核酸からの発現により個体において抗原を生産するための、調節配列に作動可能的に連結された抗原をコードする核酸を含む複製欠陥アデノウイルスベクターを含む追加免疫組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0054】
さらなる態様は、抗原に対する免疫応答を追加免疫するために哺乳類へ投与するための薬剤の製造における、開示されたような複製欠陥アデノウイルスベクターの使用を提供する。このような薬剤は一般に、抗原を含む初回免疫組成物を前投与した後に投与するための薬剤である。
【0055】
初回免疫組成物は、任意のウイルスベクター、例えばアデノウイルスまたはアデノウイルス以外のもの、例えばワクシニアウイルスベクター(例えば修飾ウイルスアンカラ(Ankara)(MVA)(Mayr et al. 1978 Zentralbl Bakteriol 167: 375-90; Sutter and Moss 1992 PNAS USA 89: 10847-51; Sutter et al. 1994 Vaccine 12: 1032-40)またはNYVAC(Tartaglia et al. 1992 Virology 118: 217-32)等の複製欠陥株)、鳥痘(avipox)ベクター(例えばALVACとして既知の株(Kanapox、Paoletti et al. 1994 Dev Biol Stand 1994 82: 65-9)等の鶏痘(fowlpox)またはカナリア痘(canarypox))、あるいはヘルペスウイルスベクターを含み得る。
【0056】
初回免疫組成物は、抗原をコードするDNAを含み、このようなDNAは好ましくは、哺乳類細胞中で複製することができない環状プラスミドの形態である。任意の選択可能マーカーは、臨床的に用いられる抗生物質に対して耐性を有するべきでないため、例えばカナマイシン耐性がアンピシリン耐性よりも好ましい。抗原発現は、哺乳類細胞中で活性であるプロモーター、例えばサイトメガロウイルス極初期(CMVIE)プロモーターにより駆動されるべきである。
【0057】
本発明の種々の態様の特定の実施形態では、初回免疫組成物の投与の後に、一次および二次追加免疫組成物による追加免疫が続き、一次および二次追加免疫組成物は、例えば以下に例示されるように、同一でもまたは互いに異なっていてもよい。さらなる追加免疫組成物が、本発明から逸脱することなく用いられ得る。一実施形態では、三重免疫感作レジメンは、DNAを用い、次に一次追加免疫組成物としてアデノウイルス(Ad)を用い、次に二次追加免疫組成物としてMVAを用い、その後任意に、さらなる(三次)追加免疫組成物を投与してもよく、あるいは同一または異なるベクターの一方または両方を追加免疫投与してもよい。別のオプションは、DNA、次にMVA、次にAd、任意にその後、同一または異なるベクターの他方または両方の追加免疫投与である。
【0058】
それぞれの初回免疫組成物および追加免疫組成物中に含まれる抗原(しかしながら多数の追加免疫組成物が用いられる)は同一である必要はないが、エピトープを共有すべきである。抗原は標的病原体または細胞中の完全抗原またはその断片に対応し得る。ペプチドエピトープまたはエピトープの人工紐(string)が用いられて、抗原中の不必要なタンパク質配列、および単数または複数のベクター中のコード配列がより効率的に切断される。1つまたは複数の付加的エピトープ、例えばTヘルパー細胞により認識されるエピトープ、特に異なるHLA型の個体中で認識されるエピトープが包含され得る。
【0059】
複製欠陥アデノウイルスベクター内では、コード抗原の発現のための調節配列はプロモーターを含む。「プロモーター」とは、下流に(すなわち、二本鎖DNAのセンス鎖上で3’方向に)作動可能的に連結されるDNAの輸送が開始され得るヌクレオチドの配列を意味する。「作動可能的に連結される」とは、プロモーターから開始される転写のために適切に配置され、配向された同一核酸分子の一部として連結されることを意味する。プロモーターに作動可能的に連結されるDNAは、プロモーターの「転写開始調節下」にある。その他の調節配列(例えばターミネーター断片、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、内部リボソーム進入部位(IRES)およびその他の配列)が、当業者の知識および技量により、適宜含まれ得る(例えばMolecular Cloning: a Laboratory Manual, 2nd edition, Sambrook et al. 1989 Cold Spring Harbor Laboratory Press参照)。核酸構築物の調製、突然変異誘発、シーケンシング、細胞中へのDNAの導入および遺伝子発現ならびにタンパク質の分析における、核酸の操作のための多数の既知の技術およびプロトコールは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons, 1994に詳細に記載されている。
【0060】
本発明の態様および実施形態に用いるための適切なプロモーターとしては、イントロンAを伴うかまたは伴わないサイトメガロウイルス極初期(CMVIE)プロモーター、ならびに哺乳類細胞中で活性である任意のその他のプロモーターが挙げられる。
【0061】
初回免疫組成物および追加免疫組成物のいずれかまたは両方が、アジュバントまたはサイトカイン、例えばα−インターフェロン、γ−インターフェロン、血小板由来増殖因子(PDGF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(gCSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、上皮増殖因子(EGF)、IL−1、IL−2、IL−4、IL−6、IL−8、IL−10およびIL−12またはそのコード核酸を含み得る。
【0062】
追加免疫組成物の投与は一般に、初回免疫組成物の投与後、数週間目または数ヶ月目、好ましくは約2〜3週目または4週目、または8週目、または16週目、または20週目、または24週目、または28週目または32週目に実施される。
【0063】
好ましくは、初回免疫組成物、追加免疫組成物、または初回免疫および追加免疫組成物
の両方の投与は、筋肉内免疫感作である。
【0064】
アデノウイルスワクチンまたはプラスミドDNAの筋肉内投与は、ウイルスまたはプラスミドDNAの懸濁液を注射するための針を用いて実施され得る。代替的に、冷蔵を必要とせずに個別調製用量を製造することができるウイルスまたはプラスミドDNA懸濁液(例えばBiojector(商標)を使用)、あるいはワクチンを含有する凍結乾燥粉末(例えばPowderjectの技法および製品による)を投与するための無針注射用具(device)を使用してもよい。これは、アフリカの地方において必要とされるワクチンにとっては大きな利点となろう。
【0065】
アデノウイルスは、ヒト免疫感作における優れた安全性記録を有するウイルスである。組換えウイルスは簡単に生成され、それらは大量に再現的に製造され得る。したがって組換え複製欠陥アデノウイルスの筋肉内投与は、免疫応答により制御され得る疾患に対するヒトの予防的または治療的予防接種に非常に適している。
【0066】
個体は、抗原の送達および抗原に対する免疫応答の発生が、有益であるかまたは治療的に有益な作用を有するような疾患または障害を有し得る。
【0067】
おそらく、投与は、感染または症状の発生前に、病原体または疾患に対する免疫応答を発生させるという予防的目標を有する。
【0068】
本発明に従って治療または予防され得る疾患および障害としては、免疫応答が予防的または治療的役割を果たし得るものが挙げられる。
【0069】
本発明に従って投与される構成成分は、薬学的組成物中に処方され得る。これらの組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤または当業者に既知のその他の物質を含み得る。このような物質は無毒性であるべきであり、そして活性成分の効力を妨げるべきでない。担体またはその他の物質の厳密な性質は、投与経路(例えば静脈内、皮膚または皮下、粘膜内(例えば腸)、鼻内、筋肉内または腹腔内経路)によって変わり得る。
【0070】
上述のように、投与は好ましくは皮内、皮下または筋肉内である。
【0071】
液体薬学的組成物は一般に、液体担体、例えば水、鉱油(petroleum)、動物または植物油、鉱物油(mineral oil)または合成油を含む。生理食塩水、デキストロースまたはその他の糖類溶液またはグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが含まれ得る。
【0072】
静脈内注射、皮膚注射または皮下注射、あるいは疾患部位への注射のために、活性成分は、発熱物質無含有であって、適切なpH、等張性および安定性を有する、非経口的に許容可能な水溶液の形態である。当業者は、例えば等張性ビヒクル(例えば塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、乳酸化リンガー注射液)を用いて適切な溶液を調製し得る。防腐剤、安定剤、緩衝剤、酸化防止剤および/またはその他の添加剤が、必要に応じて含まれ得る。
【0073】
徐放性処方物が用いられ得る。
【0074】
複製欠陥アデノウイルス粒子の産生、およびこのような粒子を組成物中へ任意に処方した後、粒子は個体(特にヒトまたはその他の霊長類)に投与され得る。
【0075】
投与は、別の哺乳類、例えば齧歯類、例えばマウス、ラットもしくはハムスター、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ウシ、ロバ、イヌまたはネコに対しても実施され得る。
【0076】
投与は、好ましくは「予防的有効量」または「治療的有効量」(但し、場合によっては、予防は治療であると考えられ得る)で実施され、これは、個体に対する利益を示すのに十分である。実際に投与される量、ならびに投与される速度および時間経過は、治療されるものの性質および重症度によって異なる。治療の処方、例えば投薬量に関する決定等は、一般医およびその他の医師の、あるいは獣医学的状況では獣医の責任の範囲内であり、典型的には治療される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法、ならびに医師に既知のその他の因子を考慮する。上記の技法およびプロトコールの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. ed., 1980に見出され得る。
【0077】
好ましい一レジメンでは、DNAが10μg〜50mg/注射の用量で、その後、アデノウイルス(好ましくは筋肉内に)が5×107〜1×1012粒子/注射の用量で投与される。
【0078】
組成物は、所望により、活性成分を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有し得るキット、パックまたはディスペンサー中にあり得る。例えばキットは、金属またはプラスチック箔、例えばブリスターパックを含み得る。キット、パックまたはディスペンサーは、投与のための使用説明書が添付され得る。
【0079】
組成物は、治療される症状によって、単独でまたは他の治療と組合せて、同時にまたは順番に投与され得る。
【0080】
非ヒト哺乳類への送達は、治療目的である必要はないが、実験的に、例えば当該抗原に対する免疫応答、例えば疾患に対する防御のメカニズムの研究に用いるためであり得る。
【0081】
本発明のさらなる態様および実施形態は、上記の開示および以下の実験的例示(例として包含されるが、それらに限定されない)を、添付の図面を参照して考慮すれば、当業者には明らかである。
【0082】
霊長類におけるエボラウイルス感染に対する予防ワクチンの開発
遺伝子免疫感作は、体液性および細胞性免疫活性化経路の両方に影響を及ぼし、ヒト病原体による感染に対して防御することが示されている(Tang, D.C. et al. 1992 Nature 356: 152-154; Ulmer, J.B. et al. 1993 Science 259: 1745-1749; Wang, B. et al. 1993 PNAS USA 90: 4156-4160;Sedegah, M. et al. 1994 PNAS USA 91: 9866-9870)。プラスミドワクチンの有効性は、宿主細胞タンパク質合成および免疫原の内因性提示に起因し、おそらくはプラスミドDNA自体の免疫刺激作用によるものと考えられる(Kreig, A.M. et al. 1995 Nature 374: 546-549; Sato, Y. et al. 1996 Science 273: 352-354)。DNAワクチンは、エボラウイルス抗原に対する特異的免疫応答を誘発し、齧歯類において致死的感染するエボラウイルスによる攻撃誘発(Connolly, B.M. et al. 1999 J Infect Dis 179: S203-S217; Bray, M. et al. 1998 J Infect Dis 178: 651-661)に対してモルモット(Xu, L. et al. 1998 Nat Med 4: 7-42)およびマウス(Vanderzanden, L. et al. 1998 Virology 246: 134-144)を防御することが示されている。細胞媒介性および体液性免疫応答の両方が誘発されたが、抗体力価は、エボラウイルスのザイールサブタイプからのタンパク質をコードするプラスミドで免疫感作された動物における防御の程度と関連付けられた。
【0083】
広範に有効なワクチンは、ヒト感染において単離される多エボラサブタイプ(ザイール
、スーダンおよび象牙海岸)に対する免疫を提供する必要があるが、多価ワクチンは、単一サブタイプワクチンに関して実証された特異的免疫応答を弱め得る。この問題に対処するために、オリジナルのエボラ・ザイールDNAワクチン単独の効力を、エボラウイルスのスーダンおよび象牙海岸サブタイプからのDNAと組合せて使用した場合の効力とを比較して分析した。従来の研究(Xu, L. et al. 1998 Nat Med 4: 7-42)の場合と同様に、ザイールサブタイプビリオン糖タンパク質GP(Z)をコードする単一プラスミドによる免疫感作は、モルモットにおいて実質的なウイルス特異的抗体応答を発生し、防御免疫を付与した(表1)。エボラ核タンパク質NPを発現するプラスミドの封入は、エボラGP(Z)に対する抗体力価に影響を及ぼさず、その防御効力を低減することもなかった。NP、ならびにエボラ糖タンパク質の3つのサブタイプ(ザイール、象牙海岸およびスーダンGP(Z、IC、S)+NP)を含むワクチン構成成分のさらなる拡大は、単一プラスミドワクチンに匹敵する前攻撃誘発免疫応答を生じた。さらに、エボラザイール型ウイルスによる感染からの完全防御が、多価ワクチンを投与されたモルモットにおいて達成された(表I、被験体13〜16)。既往抗体はウイルス攻撃誘発によっては誘導されなかったが、これはワクチンそれ自体が、ウイルスを効率的に除去するのに十分な免疫応答を提供したことを示す。これらの知見により、齧歯類モデルにおける多価プラスミド免疫感作は、糖タンパク質(GP)特異的抗体産生およびその防御的効力を実質的に低減しないことが示された。
【0084】
【表4】
【0085】
エボラウイルス感染の齧歯類モデルにおける防御は抗体力価と関連付けられ、効率的な体液性応答はヒト疾患に置ける臨床結果に影響を及ぼし得るため(Baize, S. et al. 1999 Nat Med 5: 423-426; Maruyama, T. et al. 1999 J Virol 73: 6024-6030)、霊長類において試験されたワクチンに対する強力な体液性応答を誘発することが重要であると本発明者らは考えたが、細胞媒介性免疫は同等に誘導され、防御に寄与すると思われる(Xu, L. et al. 1998 Nat Med 4: 37-42)。近年、DNA初回免疫とその後のウイルスベクターの投与というレジメンは、DNA単独を用いたワクチンと比較して、免疫応答を増強することが実証された(Sedegah, M. et al. 1998 PNAS USA 95: 7648-7653; Hanke, T. et
al. 1998 Vaccine 16: 439-445; Robinson, H.L. et al. 1999 Nat Med 5: 526-534; Schneider, J. et al. 1998 Nat Med 4: 397-402)。組換え複製欠陥アデノウイルスは高力価になり、抗原提示細胞に感染し、強力な免疫応答を誘導し得る(Davis, A.R. et al. 1985 PNAS USA 82: 7560-7564; Natuk, R.J. et al. 1992 PNAS USA 89: 7777-7781; Xiang, Z.Q. et al. 1996 Virology 219: 220-227)。アデノウイルスはマウスにおける追加免疫作用を示した(Xiang, Z.Q. et al. 1999 J Immunol 162: 6716-6723)が、DNAおよびアデノウイルスの組合せは、感染性攻撃誘発モデルにおける効力に関して試験されておらず、霊長類におけるこの手法の成功は未だ報告されていない。したがって、本発明者らは、高レベルGP発現を指示する組換えアデノウイルスベクターADV−GP(Z)を開発し、修飾初期免疫−追加免疫戦略が、裸DNA単独を用いて得られたエボラウイルスに対する抗体応答を増大するか否かを試験するために、このベクターを用いた。マウスにDNAおよびアデノウイルスベクターを、単独でまたは組合せて注射し、細胞媒介性応答および体液性免疫応答を評価した。DNA免疫感作単独の場合と比較して、DNAおよびその後のアデノウイルス追加免疫を注射したマウスにおいて、抗体力価が10倍〜100倍増加することが見出された(図47)。同様に細胞傷害性T細胞応答の増大がこの組合せを用いて観察された。ADV−GP(Z)単独による免疫感作は、DNA初回免疫、アデノウイルス追加免疫感作した場合と、抗体力価が有意に異ならなかった。これらのデータは、マウスにおけるエボラGP DNAワクチンの免疫原性が組換えアデノウイルスによる追加免疫によって改良されたこと、及びこの戦略が非ヒト霊長類における免疫応答を増大するための有用なアプローチを提示し得ることを示唆する。
【0086】
齧歯類モデルはワクチン戦略の開発において有用であったが、一方、ヒトから直接単離されたエボラウイルスは先ず、マウスまたはモルモットにおいて致死性感染するために、齧歯類における逐次的な多継代により適合されなければならない(Connolly, B.M. et al. 1999 J Infect Dis 179: S203-S217; Bray, M. et al. 1998 J Infect Dis 178: 651-661)。エボラ感染の霊長類モデルは、ヒト疾患および免疫防御に関してより強力な予測値を有すると考えられる。したがって、二方式性DNA/ADVワクチンならびにモルモットにおける防御と相関した多プラスミド戦略を用いて、非ヒト霊長類における試験を本発明者らは実施した。カニクイマカクザル(Macaca fascicularis)に、4週間間隔で裸DNAベクターを3回注射し(図48A)、数ヶ月の安静(免疫応答を追加免疫することができると示されることが知られている(Letvin, N.L. et al. 1997 PNAS USA 94: 9378-9383))後、ザイール糖タンパク質のみを発現する組換えアデノウイルスで追加免疫した(図48A)。対照動物には空ベクター(プラスミドDNAおよびADV−ΔE1組換えアデノウイルス)を投与し、予防接種動物にはNPおよびエボラGPの3つのサブタイプを含有する多構成成分DNAワクチン(pGP/NP)とその後のADV−GP(Z)を投与した。予測した通り、抗エボラ血清抗体は対照動物では検出されなかったが、エボラワクチン投与動物では、抗原特異的抗体応答が、12週目、すなわち3回目のDNA注射の1ヵ月後に検出された(図48B)。組換えアデノウイルスにより追加免疫した後、抗体力価は、DNA単独で観察されたレベルの10〜20倍に増大した。最終免疫感作の3ヵ月後に、抗体レベルは依然として高かったが、但し、一動物(被験体8)に関しては、わずかに力価が下がった(5×104から1.3×104)。
【0087】
次にエボラ抗原に対する霊長類細胞性応答を、in vitroリンパ球増殖アッセイを用いて検査した。対照サルでは、3H−チミジン取り込みにより測定された抗原特異的リンパ球増殖は、適正化非刺激細胞と等価であり、各動物に関して約1.0の増殖指数を生じた(48C)。これに対比して、多価ワクチンで免疫を受けた動物からの末梢血単核球(PBMC)は、9〜20倍の刺激増大を示したが、このことは、細胞レベルでのエボラ抗原に対する活発な免疫応答を実証する。CD4−陽性リンパ球の枯渇は、ワクチン接種サルからのPBMCの抗原刺激性増殖性応答を、対照動物で観察されたレベルにまで低減させた(図48D)。しかしながらCD8−陽性リンパ球の枯渇は、エボラ抗原特異的リンパ球増殖に影響を及ぼさなかった。したがって、高抗体力価に必要とされるT細胞助力(help)を提供するリンパ球のCD4−陽性サブセットは、ワクチン誘導性細胞免疫応答に寄与している。
【0088】
この予防接種レジメンの防御効力を確定するために、エボラウイルスのザイールサブタイプからの致死用量の野生型マインガ株を用いてサルを攻撃誘発した。対照サルでは、血液化学知見から肝臓酵素の増大が示された(図49A、図49B)が、このような増大はエボラウイルス感染に特徴的である(Fisher-Hoch, S.P. et al. 1985 J Infect Dis 152: 887-894)。このような増大はワクチン接種被験体においては観察されなかった。血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の上昇は、対照動物の全てにおけるウイルス血症の劇的増大と関連した(図49C)。これに対比して、予防接種サルにおいては、ウイルス負荷の実質的増大は観察されなかった。疾患進行の動態は、対照動物の間では同様で、疾患発生率はこの群においては100%であった。5日目〜6日目に3匹は死亡し、最後のサルは、瀕死状態で、7日目に安楽死させられた。これに対比して、DNA−アデノウイルスワクチンの組み合わせで免疫を受けたサル4匹のうち4匹が、エボラウイルスによる致死性攻撃誘発を生き残り、4匹の被験体中3匹において滅菌免疫が達成された。残りの動物は、ウイルス抗原のわずかな一過性増大を示した。しかしながら長期間の後、予防接種動物はすべて、感染の徴候または症状を示さず、ウイルス抗原のELISA検出(図49A)および培養ウイルスの終点滴定分析により測定した場合、感染後6ヶ月以上、検出可能なウイルス血症は認められなかった。10日目に一過性の低レベルのウイルス血症を示したワクチンレシピエント(被験体8)は、17日までに検出不可能レベルになった。
【0089】
エボラウイルスの天然レザバー(reservoir)は未知であるので、将来的大発生を防止するための従来の公衆衛生対策の可能性は制限され、したがってヒトにおけるワクチンおよび治療薬の開発の緊急性が増大する。霊長類は、エボラウイルス感染の致死作用に対して免疫感作され、そして滅菌免疫が異種初回免疫−追加免疫戦略を用いて達成され得ることを本発明の知見は実証する。多様な地理的単離物からのエボラウイルス構造タンパク質を発現する多構成成分遺伝子ワクチンは、強力な抗原特異的免疫応答を発生し、ヒト感染における最高死亡数に関連するこのウイルスのサブタイプであるエボラ・ザイールの致死用量を用いた攻撃誘発後に免疫感作霊長類を生存させた。この試験の結果は、T細胞媒介性および体液性免疫が、齧歯類における従来の試験と同様に、非ヒト霊長類におけるウイルスクリアランス(clearance)に寄与することを示唆する(Xu, L. et al. 1998 Nat Med 4: 37-42; Wilson, J. et al. 2000 Science 287: 1664-1666)。2つの免疫パラメーターである抗体力価(1:75,000対<1:100、P=0.001)および細胞性増殖応答(約12倍対1.4倍、P=0.0014)は、免疫防御との非常に有意な相関関係を示した。ヒトにおけるエボラウイルス感染からの免疫防御との相関関係を調べる試験は、ウイルスの攻撃性ならびに必然的に高レベルの生物安全性束縛(biosafety containment)により妨げられる。ここに提示された霊長類免疫のモデルを用いて、エボラウイルス感染からの免疫防御のメカニズムを明らかにし、免疫ベースの抗ウイルス療法を進展させ、そしてこの病原体に対する、さらには出血熱のその他の感染性原因に対するヒトワクチンを開発することが、目下考えられている。
【0090】
エボラ、マールブルグおよびラッサ構築物の説明
VRC6000
VRC6000(pVR1012−GP(Z))。ザイールサブタイプのエボラ糖タンパク質を発現する主鎖pVR1012(#450)。配向は、BamHI/EcoRI/EcoRV/EcoRI/BglIIである。
VRC6001
VRC6001(pVR1012x/s−GP(Z))。その他の説明なし。これは6000と同一であるが、pVR1012主鎖へのSfi制限部位の付加を伴う。
VRC6002
VRC6002(pVR1012−GP(Z)デルタMUC)。GP(Z)のムチン様ドメインが欠失された。主鎖pVR1012GP(Z)中の530bpがEarI(2844)からBfaI(3374)まで欠失された。この突然変異体は、エボラ受容体と結合し得る。
VRC6003
VRC6003(pVR1012−GP(Z)デルタMUCデルタFUR)。GP(Z)のムチン様ドメインおよびフリン切断部位が欠失された。主鎖pVR1012GP(Z)中の593bpがEarI(2844)からEarI(3437)まで欠失された。本タンパク質は、pVR1012−GP(Z)デルタMUCと同様の特性を有する。
VRC6004
VRC6004(pVR1012−GP(Z)デルタGP2)。GP(Z)中のGP2領域の大多数が欠失された。主鎖pVR1012−GP(Z)からの430bpがBclI(3414)からBspEI(3844)まで欠失された。TM(膜貫通)領域が保持された。
VRC6005
VRC6005(pVR1012−GP(Z)デルタGP2デルタC末端A)。これは、GP2のC末端欠失である。267bpがpVR1012−GP(Z)主鎖のMscI(3623)からBspMI(3890)まで欠失された。
VRC6006
VRC6006(pVR1012−GP(Z)デルタGP2デルタC末端B)。これは、GP2のC末端のより小さな欠失である。主鎖pVR1012−GP(Z)の110bpがBstXI(3780)からBspMI(3890)まで欠失された。
VRC6007
VRC6007(pVR1012−GP(Z)デルタGP2デルタFUS)。GP(Z)のGP2中の融合ペプチドが、PCRを用いて、この突然変異で欠失された。主鎖pVR1012−GP(Z)からの47bpが、3508から3555まで欠失された。
VRC6008
VRC6008(pVR1012−GP(Z)デルタTM)。この突然変異体においては、GP(Z)のTM領域がトランケートされた。停止コドン(TGA)がBspMI部位(3889)の下流に付加された。このタンパク質は分泌され、三量体を形成しない。
VRC6052
VRC6052(pVR1012−GP(Z)デルタsGP)。SGP/GP相同領域の大多数が欠失された。主鎖pVR1012−GP(Z)からの687bpが、HincII(2083)からHincII(2270)まで欠失された。
VRC6101
VRC6101(pVR1012x/sエボラGP(R)(dTM))。本ベクターは、その膜貫通および細胞内ドメインを伴わずにエボラ糖タンパク質(レストンサブタイプ)を発現する。PCRを用いて、停止コドンがGP(R)のa.a.650の下流に生成され、その後にXbaI部位が続いた。このタンパク質は分泌されることができ、GP
(R)(dTM)と称される。
VRC6110
VRC6110(pAdAptエボラGP(R)(dTM))。その膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを伴わずにエボラ糖タンパク質(レストンサブタイプ)を発現するアデノウイルスシャトルベクター。PCRを用いることで、停止コドンがGP(レストン)のa.a.651の下流に生成され、その後にXbaI部位が続いた。結果として得られる組換えアデノウイルスは、GP(R)(dTM)と呼ばれる651a.a.分泌糖タンパク質を発現する。
VRC6200
VRC6200(pVR1012−GP(S))。スーダンサブタイプのエボラ糖タンパク質を発現する主鎖pVR1012(#450)。配向は、EcoRI/EcoRV/BamHI/BamHI/BamHI/XbaIである。
VRC6201
VRC6201(pVR1012x/sエボラGP(S))。1012主鎖へのSfi部位の付加を伴う以外は6200と同一であり、その他の説明はない。
VRC6202
VRC6202(pVR1012−GP(S)デルタTM)。この突然変異体においては、GP(S)のTM領域がトランケートされた。停止コドン(TGA)がBspMI部位(xxx)の下流に付加された。このタンパク質は分泌され、三量体を形成しない。
VRC6300
VRC6300(pVR1012−GP(IC))。象牙海岸サブタイプのエボラ糖タンパク質を発現する主鎖pVR1012(#450)。配向は、EcoRI/EcoRV/BamHI/BamHI/BamHI/XbaIである。
VRC6301
VRC6301(pVR1012x/s−GP(IC))。1012主鎖へのSfi部位の付加を伴う以外は6300と同一であるが、その他の説明はない。
VRC6302
VRC6302(pVR1012−GP(IC)デルタTM)。この突然変異体においては、GP(IC)のTM領域がトランケートされた。停止コドン(TGA)がBspMI部位の下流に付加された。このタンパク質は分泌され、三量体を形成しない。
VRC6303
VRC6303(pVR1012x/sエボラGP(IC)(dTM))。膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを伴わずにエボラ糖タンパク質(象牙海岸サブタイプ)を発現するpVR2000ベースのベクター。PCRを用いることで、停止コドンがGP(R)のa.a.650の下流に生成され、その後にBglII部位が続いた。本ベクターは、650a.a.分泌糖タンパク質(a.a.1〜a.a.650)を発現する。
VRC6310
VRC6310(pAdAptエボラGP(IC)(dTM))。その膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを伴わずにエボラ糖タンパク質(サブタイプ象牙海岸)を発現するアデノウイルスシャトルベクター。PCRを用いることで、停止コドンがGP(IC)のa.a.651の下流に生成された。結果として得られる組換えアデノウイルスは、GP(IC)(dTM)と呼ばれる651a.a.分泌糖タンパク質を発現する。
VRC6351
VRC6351(pVR1012x/s−sGP(IC))。その他の説明なし。
VRC6400
VRC6400(pVR1012−NP)。象牙海岸サブタイプのエボラ核タンパク質を発現する主鎖pVR1012(#450)。
VRC6401
VRC6401(pVR1012x/s−NP)。1012主鎖へのSfi部位の付加を伴う以外は6400と同一であり、その他の説明はない。
VRC6500
VRC6500(pVR1012−VP35)。主鎖はpVR1012(#450)である。挿入物は、pGEM 3Zf(+)VP35(#1213)からクローン化されたエボラからのVP35である。
VRC6600
VRC6600(pAD/CMV−GP(dTM)(Z−CITE−S))。その他の説明なし。
VRC6601
VRC6601(pAdAptエボラGP(S))。その他の説明なし。
VRC6602
VRC6602(pAdAptエボラGP(S)(dTM))。その膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを伴わずにエボラ糖タンパク質(スーダンサブタイプ)を発現するアデノウイルスシャトルベクター。停止コドンがGP(S)のa.a.650の下流に融合された。結果として得られる組換えアデノウイルスは、GP(S)(dTM)と呼ばれる654a.a.分泌糖タンパク質を発現する。
VRC6603
VRC6603(pAdAptエボラGP(Z))。その他の説明なし。
VRC6604
VRC6604(pAdAptエボラGP(Z)(dTM))。その膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを伴わずにエボラ糖タンパク質(サブタイプザイール)を発現するアデノウイルスシャトルベクター。停止コドンがGP(Z)のa.a.651の下流に融合された。結果として得られる組換えアデノウイルスは、GP(Z)(dTM)と呼ばれる655a.a.分泌糖タンパク質を発現する。
VRC6701
VRC6701(pVR1012−マールブルグ)。マールブルグ糖タンパク質(GP)オープンリーディングフレーム、Musoke株。マールブルグをVRC6700(Xba/PvuII)からの主鎖#450(Bam(blunt)/XbaI)中にクローン化した。
VRC6702
VRC6702(pVR1012x/sマールブルグGP(dTM))。本ベクターは、その膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを伴わずにマールブルグウイルス糖タンパク質を発現する。PCRを用いることで、停止コドンがGP(マールブルグ)のa.a.650の下流に生成され、その後にBglII部位が続いた。このタンパク質は分泌され、GP(マールブルグ)(dTM)と呼ばれる。
VRC6710
VRC6710(pAdAptマールブルグGP(dTM))。膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを伴わずにマールブルグウイルス糖タンパク質を発現するアデノウイルスシャトルベクター(pVRC1290)。PCRを用いることで、ターミネーターコドンがa.a.650の下流に生成され、その後にBglII部位が続いた。結果として得られる組換えアデノウイルスは650a.a.分泌タンパク質(a.a.1〜a.a.650)を発現する。
VRC6800
VRC6800(pVR1012x/sラッサGP)。その他の説明なし。
VRC6801
VRC6801(pVR1012x/sラッサGP(dTM))。その他の説明なし。
VRC6810
VRC6810(pAdAptラッサGP)。その他の説明なし。
VRC6811
VRC6811(pAdAptラッサGP(dTM))。その他の説明なし。
【実施例1】
【0091】
ベクター構築。
エボラ・ザイール糖タンパク質(GP)、分泌GP(SGP)および核タンパク質(NP)を発現するDNAベクターの構築は、Xu, L. et al. 1998 Nat Med 4: 37-42に記載されている。GPスーダンおよび象牙海岸発現ベクターを同様に構築した。要するに、以下のプライマー:5’ATC TTC AGG ATC TCG CCA TGG A3’(スーダンGP遺伝子;NcoI>ATG;配列番号44)、5’GAT ATT CAA CAA AGC AGC TTG CAG3’(スーダンGP遺伝子;C末端GP停止;配列番号45)、5’CTA ATC ACA GTC ACC ATG GGA3’(象牙海岸GP遺伝子;NcoI>ATG;配列番号46)、5’AAA GTA TGA TGC TAT ATT AGT TCA3’(象牙海岸GP遺伝子;C末端GP停止;配列番号47)を用いて、感染細胞RNAの、RNAの逆転写後のポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)産物から、GPオープンリーディングフレームを生成し、TAクローンPCR2.1スーダンおよびPCR2.1象牙海岸を得た。XbaI/HindIIIを用いて、スーダン糖タンパク質をプラスミドPC2.1から消化し、クレノウ(Klenow)処理して、p1012のXbaI部位にクローン化した(Xu, L. et al. 1998 Nat Med 4: 37-42)。EcoRIを用いて、象牙海岸GPをプラスミドPC2.1から消化し、クレノウ処理して、p1012のXbaI部位にクローン化した(Xu, L. et al. 1998 Nat Med 4: 37-42)。
【0092】
ADV−GPを作製するために、GP(Z)のBamHI/EcoRI断片をpGEM−3Zf(−)−GPから消化して、クレノウ処理し、HindIII/XbaI/Kle/CIP処理pRc/CMVプラスミド中に挿入した。その結果生じたプラスミド(PRC/CMV−GP(Z))をNruI/DraIIIで消化し、クレノウ処理した。CMVエンハンサー、GP(Z)DNAおよびウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを含有するNruI/DraIII/Kle断片を、アデノウイルスシャトルプラスミドpAdBgIIIのBglII部位に挿入した(Ohno, T. et al. 1994 Science 265: 781-784)。第一世代dl309ベースAd5ベクターであるアデノウイルスは、E1に欠失を含み、ベクターを複製欠陥体およびE3における部分欠失/置換体にさせたが、これは、それぞれ14.7kD、14.5kDおよび10.4kDの相対分子量を有するE3タンパク質に関するコード配列を崩壊する。ザイールGPを発現する組換えアデノウイルスADV−GP(Z)を、以前に報告された方法(Aoki, K. et al. 1999 Mol Med 5: 224-231)にしたがって作製した。投与されるアデノウイルスの用量、1010プラーク形成単位(PFU)/動物(約3×109PFU/kg)は、ヒト遺伝子療法試験において安全に用いられる範囲内である。
【0093】
動物試験および安全性。
Covance (Princeton, NJ)から入手した3歳、体重2〜3kgの8匹のカニクイマカクザル(cynomolgus macaques)(Macaca fascicularis)を、免疫感作および攻撃誘発実験のために用いた。血液検体を得るため、そしてワクチンを投与するために、ケタマインでサルを麻酔した。「実験室動物の管理および使用のための指針(Guide for the Care and
Use of Laboratory Animals (DHEW No. NIH 86-23)」に従って、動物を1匹ずつ収容し、定期的エンリッチメントを施した。エボラウイルス攻撃誘発直前から実験終了まで、動物を最大閉じ込め実験室(BSL−4)中に保持し、給餌し、毎日検査した。瀕死状態と思われた一動物を安楽死させ、その後、病理検査のために剖検した。さらに、単一無症候性予防接種動物を、病理学的およびウイルス学的分析のために安楽死させた。
【0094】
マウス免疫感作。
エボラザイールGPまたはNPを発現するDNAおよびアデノウイルスベクターを、サイトメガロウイルスエンハンサーおよびプロモーターの制御下で、遺伝子発現を用いて、前記と同様に構築した(Xu, L. et al. 1998 Nat Med 4: 37-42; Ohno, T. et al. 1994 Science 265: 781-784)。0、14および28日目に、100μgのDNA(pGPまたはp1012プラスミド対照)または108PFUのアデノウイルス(ADV−GPまたはADV−ΔE1対照ウイルス)を用いて、マウスを筋肉内免疫感作し、28日目に血液を採取した。42日目に、DNAまたはアデノウイルスを用いてマウスに筋肉内追加免疫を施して、力価を56日目に再び測定した。精製ビリオン由来のエボラウイルス抗原の調製物を被覆し、膜関連タンパク質(GP、VP40およびVP24)を濃化した96ウエルプレートを用いて、ELISA IgG力価を確定した(Ksiazek, T.G. et al. 1992 J Clin Microbiol 30: 947-950)。ヤギ抗ヒトIgG(H+L)−ホースラディッシュペルオキシダーゼ接合体およびABTS/ペルオキシド(基質/指示薬)を用いて、特異的抗原結合を検出した。
【0095】
マカク(Macaque)ザル免疫感作。
DNA免疫感作のために、GP(ザイール)[GP(Z)]、GP(象牙海岸)[pGP(IC)]、GP(スーダン)[pGP(S)]、ならびに混合物[pGP/NP]として投与されるNP(ザイール)[GP(Z)]を発現するそれぞれのDNA(1mg)を、あるいは空[pGP(Z)]対照プラスミド4mgを、動物の三角筋に両側投与した(2mg/一側)。0および4週目の免疫感作はIM注射により、8週目はBiojectorにより行った。アデノウイルス追加免疫のために、動物に1010PFUのADV−GP(ザイールサブタイプ)またはADV−ΔE1(空ベクター)を、2用量に分けて三角筋に両側投与した。32週目に、ハンクス緩衝化塩溶液1ml中の約6PFUのエボラウイルス(ザイール1976年単離物;マインガ株)を全動物に腹腔内注射した(Kiley,
M.P. et al. 1980 J Gen Virol 49: 333-341)。ウイルスを患者血液から直接単離し、ベロ細胞中での1回継代後に用いた。
【0096】
対照(プラスミド:ADV−ΔE1)および免疫感作(pGP/NP:ADV−GP(Z))サルに関して、上記と同様にELISA IgG力価を確定した。各被験体に関する希釈の相互終点は、12週目および24週目であった。記載どおりに(Ksiazek, T.G. et al. 1992 J Clin Microbiol 30: 947-950)、ELISAにより血清抗体レベルを測定した。
【0097】
4、8および20週目、並びに24週目の免疫感作の1〜3日前に、対照(プラスミド:ADV−ΔE1)または免疫感作(pGP/NP:ADV−GP(Z))動物から血液を採取した。血液をパーコール勾配上で分離して、富リンパ球集団を得た。記載どおりに(Xu, L. et al. 1998 Nat Med 4: 37-42)エボラ分泌糖タンパク質(SGP)または空プラスミドでトランスフェクトされた細胞からの上清を用いて、in vitroで5日間、リンパ球を刺激し、3H−チミジン取り込みにより増殖を測定した。増殖指数は、SGPを投与したウエル中の増殖を、対照上清を投与したウエル中の増殖で割ることによって算定された。
【0098】
マカクザルにおけるウイルス検出。
サル血漿の連続希釈液からVP40タンパク質を捕捉することにより、記載どおりに(Ksiazek, T.G. et al. 1992 J Clin Microbiol 30: 947-950)、循環エボラウイルス抗原の存在を検出した。抗VP40mAbを被覆した96ウエルプレートを用いて、抗原を捕捉し、検出はウサギ抗エボラウイルス血清を用いた。
【実施例2】
【0099】
エボラGP(ザイール)およびNP(ザイール)のアミノ酸配列は、GenBank:
GP(ザイール)、GenBank寄託番号P87666;NP(ザイール)、GenBank寄託番号NC_002549から入手し、一方、GP(スーダン/Gulu)は、CDCから入手した。次に、哺乳類の好ましいコドンを用いて、アミノ酸配列をDNA配列に逆翻訳した。25bp重複を有する連続75bpオリゴ体を調製して、全遺伝子を網羅した。次にPCRを用いて、好ましいコドンを含有する無傷哺乳類遺伝子中にオリゴ体をアセンブルした。設計において、GP(ザイール)(a.a.648〜676)およびGP(スーダン/Gulu)(a.a.648〜676)の予測膜貫通ドメインの前に、この領域がこれらの合成的作製遺伝子から排除されるよう、停止コドンを導入した。欠失も、両構築物中の4a.a.細胞質領域の損失をもたらした。エボラGP(ザイール)配列の最終シーケンシングは、実験室GP配列からの10の多岐アミノ酸を明示した。これを本発明者らの動物試験に用い、部位特異的突然変異誘発により、これらを補正した。XbaI/SalIにより、p1012x/s中にこれらの挿入物をクローン化した。
【0100】
CMV/R−GP(S/G)(ΔTM)/hの構築
エボラGP(スーダン/Gulu)遺伝子から欠失されたコドン修飾膜貫通ドメインを、SalI/KpnIを用いてp1012(x/s)−GP(S/G)(ΔTM)/hから切り出し、SalI/KpnI消化CMV/R/MCSプラスミド中に挿入した。
【0101】
CMV/R GP(Z)(ΔTM)/hの構築
エボラGP(ザイール)遺伝子から欠失されたコドン修飾膜貫通ドメインを、p1012x/s−GP(Z)(dTM)/h SalI/BglII部位から切り出し、CMV/RプラスミドのSalI/BglII部位にクローン化した。
【0102】
CMV/RエボラNPの構築
ザイールサブタイプのエボラ核タンパク質を発現するVRC6400(pVR1012−NP)からのNotI−KpnI断片を切り出し、CMV/RプラスミドのNotI/KpnI部位にクローン化した。
【実施例3】
【0103】
改良型非ウイルス哺乳類発現ベクター
本発明は、現在使用されているベクターよりも高レベルのタンパク質発現を発生させる改良型哺乳類発現ベクターを提供する。
【0104】
最初に、各々異なるエンハンサーを含有する3つの新規のベクターを開発し、試験した。RSVエンハンサー、マウスユビキチンエンハンサー(mUBB)およびCMVエンハンサー(Xu et al. 1998 Nat Med 4: 37-42)を各々、HTLV−1R領域と組合せて(Takebe et al. 1988 Mol Cell Biol 8: 466-472)、別個のベクターを作製した。これら3つのベクターを、CMV翻訳エンハンサーおよびイントロンと組合せたCMVエンハンサーを含有する主鎖(CMVint)(これは現時点で最も有効なベクターである)と比較した場合、CMV/Rを含有するベクターを用いた発現は、CMV/intと比較して5〜10倍増大されることをin vitroデータは示し、そして免疫学的試験は、CMVintと比較して有意に高いCD4およびCD8T細胞応答の誘導を示した。この新規のベクターを用いた場合、in vivoおよびin vitroの両方の応答が顕著に高くなった。他の2つのベクターはいずれも、同程度の結果を生じなかった。
【0105】
本発現ベクターは、それが特異的エンハンサー/プロモーターと組合せて特異的翻訳エンハンサーを用いることにより、DNAワクチンに関する高レベルの発現および免疫原性強化を付与するという点で独特である。ヒトにおけるこれらのワクチンの効力が充分でなく、遺伝子的改良により、この技術をヒトに使用可能にするための重要なプラットホームとして役立ち得るため、これは特に重要である。発現ベクターカセットは、他の遺伝子ベ
ースのワクチンにも同様に、または真核生物発現ベクターからの組換えタンパク質の生産のためにも用いられ得る。本発明は、広範な種々の疾患(例えばHIVおよびその他のウイルス疾患および癌)のための遺伝子ワクチンの製造および遺伝子療法に有用である。
【0106】
図50 修飾CMV発現ベクター、CMV/Rの発現増強
リン酸カルシウムを用いて、0.5ugの対応するプラスミドを有する6ウエル組織培養皿中で、
(A)ベクター単独(レーン1)、CMVint−gp−145(dCFI)(レーン2)、CMV/R−gp145(dCFI)(レーン3)、または
(B)mUBB−gp145(dCFI)(レーン4)、mUBB/R−gp145(dCFI)(レーン5)
を用いて、マウス線維芽細胞3T3細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を収穫し、溶解緩衝液(50mMのHEPES、150mMのNaCl、1%NP−40、ミニ完全プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche))中で溶解した。各試料の総タンパク質10μgを、SDS−PAGEを用いて4〜15%勾配ゲル上で分離し、その後、タンパク質を移して、ウエスタンブロット分析した。ヒトHIV−IgG(1:5000)を一次抗体として用いて、HRP−接合ヤギ抗ヒトIgG(1:5000)を二次抗体として用いた。ECLウエスタンブロット現像系を用いて、膜を現像した。矢印は、HIV Env gp145(ΔCFI)ポリタンパク質に関する特異的帯域を示す。
【0107】
図51 マウスにおける修飾CMV発現ベクター、CMV/Rの免疫原性増強
各群のマウス5匹を、0、2および6週目に、50μgの指定プラスミドDNAで免疫感作した。最後の注射後10日目に、各マウスから脾臓細胞を収穫し、対照ペプチドのプール(15mer)またはHIV Envペプチドのプール(15mer)を用いて6時間刺激した。PE−抗マウスCD3、PerCP−抗マウスCD4、APC−抗マウスCD8、FITC−抗マウスIFN−γおよびFITC−抗マウスTNF−αを含有する抗体のカクテルを用いて、刺激脾臓細胞を染色した。フローサイトメトリーにより試料を分析した。CD3/CD4/IFN−γ/TNF−αおよびCD3/CD8/IFN−γ/TNF−α陽性細胞数を、FloJoソフトウエア(Treestar)を用いて測定した。
【0108】
CMVエンハンサー/プロモーター、R領域(HTVL−1)、CMV IEスプライシング受容体配列
【0109】
【表5】
【0110】
1〜741:CMVエンハンサー/プロモーター
742〜972:HTLV−1 R領域
973〜1095:CMV/IEスプライシング受容体
【0111】
本発明を明確にし、理解させるために、多少詳細に説明してきたが、本発明の真の範囲を逸脱しない限り、形態および詳細における種々の変更が成され得ると当業者は理解するであろう。図面、表および添付物、ならびに上記で言及した特許、出願および出版物は全て、参照により本明細書中に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】VRC6000(pVR1012−GP(Z))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図2】VRC6001(pVR1012x/s−GP(Z))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図3】VRC6002(pVR1012−GP(Z)デルタMUC)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図4】VRC6003(pVR1012−GP(Z)デルタMUCデルタFUR)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図5】VRC6004(pVR1012−GP(Z)デルタGP2)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図6】VRC6005(pVR1012−GP(Z)デルタGP2デルタC末端A)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図7】VRC6006(pVR1012−GP(Z)デルタGP2デルタC末端B)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図8】VRC6007(pVR1012−GP(Z)デルタGP2デルタFUS)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図9】VRC6008(pVR1012−GP(Z)デルタTM)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図10】VRC6052(pVR1012−GP(Z)デルタSGP)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図11】VRC6101(pVR1012x/sエボラGP(R)(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図12】VRC6110(pAdAptエボラGP(R)(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図13】VRC6200(pVR1012−GP(S))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図14】VRC6201(pVR1012x/sエボラGP(S))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図15】VRC6202(pVR1012−GP(S)デルタTM)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図16】VRC6300(pVR1012−GP(IC))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図17】VRC6301(pVR1012x/s−GP(IC))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図18】VRC6302(pVR1012−GP(IC)デルタTM)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図19】VRC6303(pVR1012x/sエボラGP(IC)(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図20】VRC6310(pAdAptエボラGP(IC)(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図21】VRC6351(pVR1012x/s−SGP(IC))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図22】VRC6400(pVR1012−NP)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図23】VRC6401(pVR1012x/s−NP)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図24】VRC6500(pVR1012−VP35)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図25】VRC6600(pAD/CMV−GP(dTM)(Z−CITE−S))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図26】VRC6601(pAdAptエボラGP(S))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図27】VRC6602(pAdAptエボラGP(S)(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図28】VRC6603(pAdAptエボラGP(Z))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図29】VRC6604(pAdAptエボラGP(Z)(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図30】VRC6701(pVR1012−マールブルグ)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図31】VRC6702(pVR1012x/sマールブルグGP(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図32】VRC6710(pAdAptマールブルグGP(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図33】VRC6800(pVR1012x/sラッサGP)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図34】VRC6801(pVR1012x/sラッサGP(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図35】VRC6810(pAdAptラッサGP))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図36】VRC6811(pAdAptラッサGP(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図37】CMV/RエボラGP(Z)デルタTM/h(最適化されたコドン)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図38】pVR1012エボラGP(Z,P87666)デルタTM/h(最適化されたコドン)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図39】CMV/RエボラGP(S/Gulu)デルタTM/h(最適化されたコドン)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図40】CMV/RエボラGP(S,Q66798)デルタTM/h(最適化されたコドン)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図41】VRC6802、pVR1012x/sラッサデルタTM/h(最適化されたコドン)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図42】VRC6703、pVR1012x/sマールブルグデルタTM/h(最適化されたコドン)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図43】CMV/RエボラNP構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図44】重要な構造的特徴を示すエボラウイルス(1976年に単離されたザイール種)の、分泌糖タンパク質(SGP)分子および糖タンパク質(GP)分子の概略図である。SGPおよびGPの白色N末端領域は同一(共有)配列に対応するが、一方、黒色C末端は、GPまたはSGP分子に独特の配列を同定する。SGPおよびGPの両方に関する共通シグナラーゼ切断部位、ならびにGP0(GPの非切断形態)(↓)に関するフリン切断部位は、N末端シーケンシングにより確定された。システイン残基(S)、予測N連結グリコシル化部位(Y形突出部)、予測融合ペプチド、七価基反復配列および膜貫通アンカー配列も示されている。エボラウイルスでは、これらの構造の位置は保存され、それらの配列は非常に類似しており、あるいはN連結グリコシル化部位の場合には、GPの中央領域で少なくとも濃縮される。シグナラーゼ切断部位は配列番号48であり、フリン切断部位は配列番号49であり、融合ペプチドは配列番号50である。
【図45】構造GPの概略図である。非確定ジスルフィド結合(クエスチョンマークで示されている)により連結されたGP1−GP2へテロ二量体の予測配向が示される。示されている分子内ジスルフィド結合は、レトロウイルスの糖タンパク質構造との類似性に基づいた従来の予測から得られる。アミノ酸配列のその他の特徴に関しては、図44を参照されたい。
【図46】エボラウイルスの糖タンパク質による細胞変性作用の誘導および細胞変性の分子決定因子のマッピングを示す。
【図47】異なるDNA/アデノウイルス初期免疫−追加免疫の組合せにより生成されるエボラ特異的抗体応答を示す。データは、マウスの各群に関する相互終点希釈の平均および標準偏差を表すエラーバーグラフである。
【図48】カニクイマカクザルのDNA−アデノウイルス免疫感作を示す。 A)DNAおよび/またはアデノウイルス注射、ならびにエボラウイルスのザイールサブタイプの野生型マインガ(Mayinga)株を用いた攻撃誘発に関する免疫感作スケジュール。 B)血清中のエボラ特異的抗体のELISA力価。血清を、12週目(中白棒)および24週での免疫感作の2日前(中黒棒)に採取した。 C)免疫感作後のエボラ分泌糖タンパク質(SGP)に対するリンパ増殖性応答。バーは、各被験体に関する4つの血液試料全ての平均増殖倍数度(fold-proliferation)を示す。誘導のベースラインレベルが実験間で変化したため、標準偏差は示されていない。しかしながら、8匹の動物全てからのPBMCを各時点に関して同一実験内でアッセイし、図に示される平均は任意の単一時点に関して得られた結果の代表である。 D)リンパ球サブセットの枯渇後のバルクPBMC中のエボラSGPに対するリンパ増殖性応答。24週目のPBMCを、指示抗体で被覆されたDynal磁気ビーズで処理して、CD4+またはCD8+細胞サブセットを枯渇させた。枯渇後に残存する細胞を、細胞数入力のために正規化し、実施例に記載したように刺激した。結果を、2つの対照(被験体2および3)サルおよび2つの予防接種(被験体6および7)サルに関して示す。
【図49】DNA−アデノウイルス免疫感作後のエボラウイルスによる致死的攻撃誘発に対するカニクイマカクザルの防御を示す。 A、B)エボラウイルスによる攻撃誘発後のサルにおける肝臓酵素レベル。ピッコロ(Piccolo)(登録商標)分析器(Abaxis, Inc., Sunnyvale, CA)用の一般化学12試薬ディスクを用いた標準推奨手法により、非ヒト霊長類血清中の肝臓酵素(アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST))レベルを測定した。4つの免疫感作(中黒記号)および4つの対照(中白記号)サルに関する結果を示す。 C)エボラウイルス感染後のサルにおける血漿ウイルス血症。十字印は対照動物における死亡時を表す(5日目(被験体1)および6日目(被験体2および4))。一の対照動物(被験体3)は、7日目に瀕死状態になったので、安楽死させられた。感染に対して耐性であった一の予防接種動物(被験体5)を、組織の組織学的実験のために10日目に安楽死させた。17日まで、検出可能なウイルス血症を有した動物はなく、観察期間中(6ヶ月)、無ウイルス血症であった。データは、各サルに関する血清の相互終点希釈である。4つの免疫感作(中黒記号)サルおよび4つの対照(中白記号)サルに関する結果を示す。
【図50】修飾CMV発現ベクター、CMV/Rの発現増強を示す。
【図51】マウスにおける修飾CMV発現ベクター、CMV/Rの免疫原性増強を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は包括的に、ウイルスワクチン、特にフィロウイルスワクチンに、ならびにフィロウイルスに対する免疫応答またはフィロウイルスの感染により引き起こされる疾患を誘発する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エボラウイルス、及び遺伝的に関連するマールブルグウイルスは、北米、欧州およびアフリカにおけるヒトおよび霊長類の高致死性出血熱の大発生に関連するフィロウイルスである(非特許文献1または2)。エボラウイルスは、4つのサブタイプ(例えばザイール、スーダン、レストンおよび象牙海岸エピソード(episode)に記載されたもの)からなるマイナス鎖(negative-stranded)RNAウイルスである(非特許文献3)。いくつかのサブタイプが定義されているが、しかしこれらのウイルスの遺伝子構成は類似しており、それぞれ7つの線状アレイ遺伝子(linearly arrayed genes)を含有する。ウイルスタンパク質の1つであるエンベロープ糖タンパク質は2つの代替的形態で存在し、その2つの形態とは、ウイルスゲノムによりコードされる未知の機能を有する50〜70キロダルトン(kDa)の分泌タンパク質と、ウイルス進入を媒介するRNAエディティング(editing)により生成される130kDaの膜貫通糖タンパク質である(非特許文献1または3)。その他の構造遺伝子産物としては、核タンパク質(NP)、マトリックスタンパク質VP24およびVP40、推定非構造タンパク質VP30およびVP35、ならびにウイルスポリメラーゼが挙げられる(非特許文献1で検討されている)。そのRNA配列の自発突然変異は天然で起きるが、しかし他のRNAウイルス内よりも、エボラサブタイプ内では低ヌクレオチド多型性であると思われ(非特許文献3)、これは免疫感作がこの疾患に対する防御に有用であり得ることを示唆する。しかしながら伝統的な能動的および受動的免疫感作アプローチを用いたエボラウイルスに対する防御的免疫応答を誘発する従来の試みは、霊長類では成功していない(非特許文献1、4または5)。したがって、フィロウイルスに対する免疫応答またはフィロウイルス感染により引き起こされる疾患を誘発するためのワクチンを提供することが望まれている。さらに上記のワクチンを製造し、用いる方法を提供することが望まれている。
【非特許文献1】Peters, C.J. et al. in : Fields Virology, eds. Fields, B.N. et al. 1161-1176, Philadelphia, Lippincott-Raven, 1996
【非特許文献2】Peters, C.J. et al. 1994 Semin Virol 5: 147-154
【非特許文献3】Sanchez, A. et al. 1996 PNAS USA 93: 3602-3607
【非特許文献4】Clegg, J.C.S. et al. 1997 New Generation Vaccines, eds. : Levine, M.M. et al. 749-765, New York, NY. Marcel Dekker, Inc.
【非特許文献5】Jahrling, P.B. et al. 1996 Arch Virol Suppl 11: 135-140
【発明の開示】
【0003】
エボラウイルスにより引き起こされる出血熱の大発生は、このヒト病原体の顕著な特徴である高死亡率と関連付けられる。最高致死率は、今日までに同定された4つの株のうちの1つであるザイールサブタイプと関連付けられる(Feldmann, H. et al. 1994 Virology 199: 469-473 ;Sanchez, A. et al. 1996 PNAS USA 93: 3602-3607)。その急速な進行は、天然免疫を発現する機会をほとんど与えず、現在、有効な抗ウイルス療法は存在しない。したがって予防接種は、感染を予防し、伝染を制限するための有望な手段を提供する。本明細書に、霊長類におけるエボラウイルス感染に対する非常に有効なワクチン戦略を記載する。DNA免疫感作、およびウイルスタンパク質をコードするアデノウイルスベクターによる追加免疫の組合せは、カニクイマカクザルにおいて細胞性および体液性免疫を生じた。致死用量のエボラ・ザイールウイルスの高病原性野生型1976マインガ(Mayi
nga)株を用いた攻撃誘発(challenge)は、対照において均一感染を引き起こし、それらのカニクイマカクザルは1週間未満で瀕死状態および死に至った。対照的に、予防接種された動物は全て、6ヶ月より長い間無症候性であり、最初の攻撃誘発後、検出可能なウイルスは認められなかった。これらの知見は、霊長類におけるエボラウイルス感染に対する予防ワクチンを開発することができることを実証している。
【0004】
【表1】
【0005】
【表2−1】
【表2−2】
【0006】
[発明の詳細な説明]
薬学的に許容可能な賦形剤中で、対照配列に作動可能的に連結された、フィロウイルス構造タンパク質をコードする核酸分子を含むフィロウイルスワクチンが提供される。一実施形態では、核酸分子は膜貫通形態のウイルス糖タンパク質(GP)をコードする。別の実施形態では、核酸分子は分泌形態のウイルス糖タンパク質(SGP)をコードする。さ
らに別の実施形態では、核酸分子はウイルス核タンパク質(NP)をコードする。
【0007】
本発明はさらに、GP、SGPおよびNP以外のフィロウイルス構造タンパク質(例えば、フィロウイルスに対する免疫応答またはフィロウイルス感染により引き起こされる疾患を誘発するその他の構造遺伝子産物)をコードする核酸分子を含むワクチンを包含する。本発明のワクチンの核酸分子は、任意のエボラウイルス株(例えばザイール、スーダン、象牙海岸およびレストン株)の構造遺伝子産物をコードする。遺伝的に関連するマールブルグウイルス株の構造遺伝子産物をコードする核酸分子も用いられ得る。さらに本発明の核酸分子は修飾され得る。例えば本明細書中に記述された核酸分子は、修飾発現タンパク質が病原体または疾患に対する免疫応答を誘発する限り、突然変異化され得る。例えば核酸分子は、発現タンパク質が細胞に低毒性であるよう、突然変異化され得る。本発明は、核酸分子の組合せを含むワクチンも包含する。例えばザイール、スーダンおよび象牙海岸エボラ株のGP、SGPおよびNPをコードする核酸分子が任意の組合せで、1つのワクチン組成物中に組合され得るが、これらに限定されない。
【0008】
本発明は、フィロウイルス感染により引き起こされる疾患に対して被験体を免疫感作するための方法であって、免疫有効量のフィロウイルスワクチンを被験体に投与することを含む方法も提供する。薬学的組成物の調製を含めた、フィロウイルスワクチンの製造および使用方法も、本発明により提供される。
【0009】
エボラウイルスの分泌およびビリオン糖タンパク質の生化学的分析
エボラ(EBO)ウイルスは、フィロウイルス(Filoviridae)の成員であり、ヒトおよび/または非ヒト霊長類において重篤な、しばしば致命的な形態の出血熱疾患を引き起こす。フィロウイルスの糖タンパク質(GP)遺伝子は、マイナス鎖RNAゲノムの3’末端から(7つのうちの)4番目の遺伝子である。ある程度まで特性化されたEBOウイルスは全て、構造GPよりむしろ分泌非構造糖タンパク質(SGP)の発現を生じる、同一の非従来型のGP遺伝子構成を有する。SGPは単一フレーム(0フレーム)でコードされるが、一方、GPは2つのフレーム(0および−1フレーム)でコードされる。GPの発現は、単一の追加のアデノシンの挿入(一連の7つのアデノシンに付加される)を生じる転写エディティング事象を介して2つのフレームが連結される場合に起こる。
【0010】
図44を参照すると、EBOウイルスのザイール種に関しては、SGP(364総残基)およびGP(676総残基)のN末端295残基(シグナル配列を含む)は同一であるが、それらのC末端配列の長さおよび構成は独特である。タイプ1膜貫通タンパク質であるGPは、感染ビリオンの表面に見出され、感受性細胞へのウイルスの結合および進入において付着構造で機能する。全種のEBOウイルスに関するGP予測アミノ酸配列の比較は、N末端およびC末端領域における一般的保存を示し(各々、総配列の約3分の1)、高可変性中区分により分離される。このタンパク質は、高度にグリコシル化され、多量のN−およびO−連結グリカンを含有し、マールブルグ(MBG)ウイルス(別の種類のフィロウイルス)に関しては、三量体を形成することが示されている。GPの膜貫通アンカー配列(残基650〜672)に対する直N末端は、フィロウイルスにおいて高度に保存されるモチーフ(残基585〜609)である。この配列は、in vitroで免疫抑制性であることが示されている腫瘍形成性レトロウイルスの糖タンパク質中の一モチーフと高度の相同性を有する。一部重複するこのモチーフは、他のウイルスの表面糖タンパク質に関して予測される構造と同様に、三量体のアセンブリーにおける分子間コイルドコイルの形成において機能すると考えられる七価基反復配列(53残基;位置541〜593)である。この配列に対する直(immediately)N末端は、サブチリシン/ケキシン様転換酵素フリンに関する推定上の多塩基切断部位が直ぐ後に続く予測融合ペプチドである。フリンによる切断は、特異的阻害剤を使用して間接的に実証されており、配列RRTR↓の最後のアルギニン(オープンリーディングフレーム(ORF)の開始からの位置501
)で起こると予測される。SGPの役割はほとんど定義されていないが、しかしSGPは好中球と結合し、一方GPは内皮細胞と結合することが近年の研究により示された。SGPとGPの異なる結合パターンは、同一のN末端アミノ酸配列(〜280残基)を有するにもかかわらず、これらの糖タンパク質は構造的に互いに全く異なることを示唆する。
【0011】
図45を参照すると、エボラウイルスのザイール種により発現される糖タンパク質は、切断、オリゴマー化およびその他の構造特性に関して分析され、それらの機能をより明確に定義した。295N末端残基を共有する50〜70kDaの分泌糖タンパク質および150kDaのビリオン/構造糖タンパク質(それぞれSGPおよびGP)は、シグナラーゼによりN末端近くで切断される。フリンにより媒介される傾向が高い多塩基部位(RRTRR↓)(配列番号51)で、GPで起きる二次切断事象は、ジスルフィド結合により連結される2つの糖タンパク質(GP1およびGP2)を生じる。このフリン切断部位は、全てのエボラウイルスのGP中で同一位置に存在し(R[R/K]X[R/K]R↓)、しかしながら1つはマールブルグウイルスウイルスに関して(R[R/K]KR↓)異なる位置で予測される。架橋試験の結果に基づいて、エボラビリオンペプロマーはGP1−GP2へテロダイマーの三量体から成り、そしてそれらの構造的な面はレトロウイルス(HIV−1およびHIV−2のようなレンチウイルスを含む)、パラミクソウイルスおよびインフルエンザウイルスのものに類似することを研究者は確定することができた。SGPは、ほとんどもっぱらジスルフィド結合により連結されるホモダイマーの形態で、感染細胞から分泌されることも研究者は確定した。
【0012】
図46を参照すると、エボラウイルス病原性の主要ウイルス決定因子を特定した;ザイール型エボラウイルスのビリオン糖タンパク質(GP)の合成は、in vitroおよびin vivoでのヒト内皮細胞における細胞傷害作用を誘導した。この作用は、ウイルスの7つの遺伝子産物のうちの1つであるこのI型膜貫通糖タンパク質のセリン−トレオニンに富むムチン様ドメインにマップされた。移植されたヒトまたはブタ血管へのGPの遺伝子移入は、48時間以内に内皮細胞の大損失を引き起こし、血管透過性の重大な増大をもたらした。GPのムチン様領域の欠失は、タンパク質の発現または機能に影響を及ぼさずに、これらの作用を消失させた。非ヒト霊長類においては疾患を引き起こすがヒトにおいては引き起こさないレストン株ウイルス由来のGPは、ヒト血管の血管系を崩壊させなかった。これに対比して、ザイール型GPは非ヒト霊長類およびヒトの両方の血管において内皮細胞崩壊および細胞傷害を誘導し、ムチンドメインがこの作用のために必要とされた。これらの知見は、GPのムチンドメインがエボラ病原性のウイルス決定因子であり、感染中の出血に関与すると思われることを示す。
【0013】
核酸分子
本明細書中に示されているように、本発明の核酸分子は、クローニングにより得られるかまたは合成的に生産されるRNAまたはDNAの形態であり得る。DNAは、二本鎖または一本鎖であり得る。一本鎖DNAまたはRNAは、センス鎖としても既知であるコード鎖であり得るし、あるいはアンチセンス鎖としても言及される非コード鎖であり得る。
【0014】
「単離」核酸分子(単数または複数)とは、そのネイティブ環境から取り出された核酸分子、DNAまたはRNAを意図する。例えばベクター中に含入される組換えDNA分子は、本発明の目的のために単離されたと考えられる。単離DNA分子のさらなる例としては、異種宿主細胞中に保持される組換えDNA分子または溶液中の精製(部分的または実質的な)DNA分子が挙げられる。単離RNA分子としては、本発明のDNA分子のin
vivoまたはin vitroRNA転写体が挙げられる。本発明の単離核酸分子としてはさらに、合成的に生産されたこのような分子が挙げられる。
【0015】
本発明の核酸分子としては、野生型フィロウイルス構造遺伝子産物をコードするオープ
ンリーディングフレーム(ORF)を含むDNA分子、ならびに上記のものとは実質的に異なる配列であるが、遺伝コードの縮重のために、依然として野生型フィロウイルス構造遺伝子産物のORFをコードする配列を含むDNA分子が挙げられる。もちろん遺伝コードは、当該技術分野で既知である。
【0016】
本発明はさらに、本明細書中に記載された核酸分子の断片を対象とする。野生型フィロウイルス構造遺伝子産物をコードするORFのヌクレオチド配列を有する核酸分子の断片とは、少なくとも約15nt.長、さらに好ましくは少なくとも約20nt.長、さらに好ましくは少なくとも約30nt.長、さらに好ましくは少なくとも約40nt.長の断片を意図する。もちろんより長い断片、50、100、150、200、250、300、350、400、450または500nt.長も、野生型フィロウイルス構造遺伝子産物をコードするORFのヌクレオチド配列のほとんど(全てではないとしても)に対応する断片であり、本発明により意図される。例えば少なくとも20nt.長の断片とは、野生型フィロウイルス構造遺伝子産物のORFのヌクレオチド配列からの20またはそれ以上の連続塩基を含む断片を意図する。
【0017】
本発明の好ましい核酸断片としては、フィロウイルス構造タンパク質のエピトープ保有部分をコードする核酸分子が挙げられる。特に本発明のこのような核酸断片としては、フィロウイルス構造タンパク質のエピトープ保有ドメインをコードする核酸分子が挙げられるが、この場合、ドメインはGP/SGP同一性ドメイン、ムチン様ドメイン、フリン切断部位、融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカードメインおよび細胞内ドメインならびにそれらの任意の組合せ、例えば膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカルボキシ末端のトランケーション(truncation)を有するフィロウイルスの糖タンパク質;七価基反復ドメイン、膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカルボキシ末端のトランケーションを有するフィロウイルスの糖タンパク質;融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカルボキシ末端のトランケーションを有するフィロウイルスの糖タンパク質;フリン切断部位、融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカルボキシ末端のトランケーションを有するフィロウイルスの糖タンパク質;ムチン様ドメイン、フリン切断部位、融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカルボキシ末端のトランケーションを有するフィロウイルスの糖タンパク質である。別の例は、ムチン様ドメイン、フリン切断部位、融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカードメインまたは細胞内ドメインを欠失するためのアミノ、内部またはカルボキシ欠失を有するフィロウイルスの糖タンパク質である。
【0018】
別の態様において、本発明は、上記の本発明の核酸分子中のポリヌクレオチドの一部分と、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む核酸分子を提供する。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、50%ホルムアミド、5xSSC(750mMのNaCl、75mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5xデンハート液、10%硫酸デキストランおよび20μg/ml変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中で、42℃で一晩インキュベートし、その後、0.1xSSC中約65℃でフィルターを洗浄することを意味する。
【0019】
ポリヌクレオチドの「一部分」とハイブリダイズするポリヌクレオチドとは、少なくとも約15ヌクレオチド(nt.)、さらに好ましくは少なくとも約20nt.、さらに好ましくは少なくとも約30nt.、さらに好ましくは約30〜70nt.の参照ポリヌクレオチドとハイブリダイズするポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)を意味する。
【0020】
「少なくとも20nt.長」のポリヌクレオチドの一部分とは、例えば参照ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列からの20またはそれ以上の連続ヌクレオチドを意味する。もちろん、ポリA配列あるいはT(またはU)残基の相補的ストレッチのみとハイブリダイズするポリヌクレオチドは、ポリAストレッチまたはその相補体(例えば特に任意の二本鎖cDNAクローン)を含有する任意の核酸分子とハイブリダイズするため、本発明の核酸の一部分とハイブリダイズするために用いられる本発明のポリヌクレオチドには含まれない。
【0021】
本明細書中に示されるように、フィロウイルス構造遺伝子産物をコードする本発明の核酸分子としては、全長ポリペプチドのアミノ酸配列を単独でコードするもの、全長ポリペプチドおよび付加的配列に関するコード配列、例えばリーダーまたは分泌配列、例えばプレ−またはプロ−またはプレプロ−タンパク質配列をコードするもの、付加的非コード配列(例えばイントロンおよび非コード5’および3’配列が挙げられるが、これらに限定されない)とともに上記の付加的コード配列を伴うかまたは伴わない全長ポリペプチドのコード配列、例えば転写、mRNAプロセシング、例えばスプライシングおよびポリアデニル化シグナル、例えばリボソーム結合およびmRNAの安定性において機能する転写化非翻訳化配列;ならびに付加的アミノ酸をコードする付加的コード配列、例えば付加的官能基を提供するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本発明はさらに、フィロウイルス構造遺伝子産物の一部分、類似体または誘導体をコードする、本発明の核酸分子の変異体に関する。変異体は、天然対立遺伝子変異体のように、天然に生じ得る。「対立遺伝子変異体」とは、生物体のゲノム上の所定の遺伝子座を占める遺伝子のいくつかの代替的形態のうちの1つを意味する(Genes II, Lewin, B., ed., John Wiley & Sons, 1985 New York)。非天然変異体は、当該技術分野で既知の突然変異誘発技法を用いて生産され得る。
【0023】
このような変異体としては、1つまたは複数のヌクレオチドを包含し得る、ヌクレオチド置換、欠失または付加により生産されるものが挙げられる。変異体は、コード領域、非コード領域またはその両方で変更され得る。コード領域における変更は、保存的または非保存的アミノ酸置換、欠失または付加を生じ得る。これらの中で特に好ましいのは、フィロウイルス構造遺伝子産物またはその一部分の特性および活性を変更しないサイレント置換、付加および欠失である。保存的置換もこの点において特に好ましい。
【0024】
本発明のさらなる実施形態としては、野生型フィロウイルス構造遺伝子産物またはその断片のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするヌクレオチド配列あるいはそれと相補的なヌクレオチド配列と、少なくとも95%同一の、さらに好ましくは少なくとも96%、97%、98%または99%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含む核酸分子が挙げられる。
【0025】
フィロウイルス構造遺伝子産物をコードする参照ヌクレオチド配列と、例えば少なくとも95%「同一」であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとは、エボラウイルス構造遺伝子産物をコードする参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチド当たり、ポリヌクレオチド配列が5つまでの点突然変異を含み得ることを除いて、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列と同一であることを意味する。言い換えれば、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るためには、参照配列中のヌクレオチドの5%までが欠失されるかまたは別のヌクレオチドで置換され得るか、あるいは参照配列中の全ヌクレオチドの数の5%までの数のヌクレオチドが参照配列中に挿入され得る。参照配列のこれらの突然変異は、参照ヌクレオチド配列の5’または3’末端位置で、あるいは参照配列中のヌクレオチド間に独立して、あるいは参照配列内の1つまたは複数の連続基中に点在されるそれらの末端位置間のいずれで
も起こり得る。
【0026】
実際的問題として、任意の特定の核酸分子が参照ヌクレオチド配列と、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一であるか否かは、既知のコンピュータープログラム、例えばBestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, Wis. 53711)を用いて従来通りに確定され得る。Bestfitは、Smith and Waterman, 1981 Advances in Applied Mathematics 2: 482-489の局所的相同性アルゴリズムを用いて、2つの配列間の相同性の最良セグメントを見つけ出す。Bestfitまたは任意のその他の配列アラインメントプログラムを用いて、特定の配列が、例えば本発明の参照配列と95%同一であるか否かを確定する場合、パラメーターは、もちろん、同一性のパーセンテージが参照ヌクレオチド配列の全長に亘って算定され、参照配列中のヌクレオチドの総数の5%までの相同性におけるギャップが許されるように設定される。
【0027】
本発明の出願は、エボラ、マールブルグまたはラッサウイルスポリペプチド活性を有するポリペプチドをコードする、本願の配列表中に示された核酸配列と、少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一の核酸分子を対象とする。「エボラ、マールブルグまたはラッサウイルスポリペプチド活性を有するポリペプチド」とは、特定の生物学的アッセイにおいてエボラ、マールブルグまたはラッサウイルスポリペプチド活性を示すポリペプチドを意味する。例えば、GP、SGPまたはNPタンパク質活性は、適切な免疫学的アッセイにより、免疫学的特質における変化に関して測定され得る。
【0028】
もちろん、遺伝コードの縮重のために、本願の配列表中に示された核酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一の配列を有する多数の核酸分子が、「エボラ、マールブルグまたはラッサウイルスポリペプチド活性を有する」ポリペプチドをコードすると当業者は容易に理解するであろう。実際、これらのヌクレオチド配列の縮重変異体は全て同一ポリペプチドをコードするため、これは上記の比較アッセイを実施するまでもなく、当業者には明らかである。縮重変異体でないこのような核酸分子に関しては、合理的な数(a reasonable number)が、エボラ、マールブルグまたはラッサウイルスポリペプチド活性を有するポリペプチドをコードすることが当該技術分野においてさらに理解されるであろう。これは、タンパク質機能に有意な影響を与えるとはあまり考えられないかまたは考えられないアミノ酸置換(例えばある脂肪族アミノ酸を第二の脂肪族アミノ酸に置換すること)に、当業者は十分に気づくためである。
【0029】
例えば、表現型性サイレントアミノ酸置換の作製方法に関する指針は、Bowie, J.U. et
al. 1990 Science 247: 1306-1310に記載されており、その記載では、タンパク質は意外にもアミノ酸置換に寛容であると著者等は示している。
【0030】
ポリペプチドおよび断片
本発明はさらに、野生型フィロウィルス構造遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)によりコードされるアミノ酸配列を有するフィロウイルスポリペプチド、あるいはその一部分を含むペプチドまたはポリペプチド(例えばSGP)を提供する。
【0031】
フィロウイルスポリペプチドのいくつかのアミノ酸配列は、タンパク質の構造または機能の有意の作用を伴わずに変更され得ると当該技術分野では理解される。配列におけるこのような差異が意図される場合、活性を確定するタンパク質に重要な領域が存在するということを思い起こすべきである。
【0032】
したがって本発明はさらに、実質的フィロウイルスポリペプチド活性を示し、あるいは
下記のタンパク質部分のようなフィロウイルスタンパク質の領域を含む、フィロウイルスポリペプチドの変異を包含する。このような突然変異体としては、欠失、挿入、逆位、反復および型置換が挙げられる。上記のように、アミノ酸変化が表現型性サイレントであるかどうかを考えるに関する指針は、Bowie, J.U. et al. 1990 Science 247: 1306-1310に見出され得る。
【0033】
したがって、本発明のポリペプチドの断片、誘導体または類似体は、(i)1つまたは複数のアミノ酸残基が、保存または非保存アミノ酸残基(好ましくは保存アミノ酸残基)で置換され、このような置換アミノ酸残基が遺伝コードによりコードされるものであり得るかまたはあり得ないもの、あるいは(ii)1つまたは複数のアミノ酸残基が置換基を含むもの、あるいは(iii)付加的アミノ酸が成熟ポリペプチドに融合されたもの、例えばIgG Fc融合領域ペプチド、あるいはリーダーまたは分泌配列、あるいは成熟ポリペプチドまたはプロタンパク質配列の精製に用いられる配列であり得る。このような断片、誘導体および類似体は、本明細書中の教示から当業者の範囲内であると考えられる。
【0034】
上記のように、好ましくは性質の変化が僅かなものであり、例えばタンパク質のフォールディングまたは活性に有意な影響を及ぼさない保存的アミノ酸置換である(表A参照)。
【0035】
【表3】
【0036】
もちろん、当業者が作製するアミノ酸置換の数は、上記したものを含めた多数の因子に依存している。概して、任意の所定のフィロウイルスポリペプチドに関するアミノ酸置換の数は、50、40、30、20、10、5または3より少ない。
【0037】
機能に不可欠な本発明のフィロウイルスポリペプチド中のアミノ酸は、当該技術分野で
既知の方法により、例えば部位特異的突然変異誘発またはアラニン走査突然変異誘発により同定され得る(Cunningham & Wells 1989 Science 244: 1081-1085)。後者の手法は、分子中の全ての残基に単一アラニン突然変異を導入する。その結果生じた突然変異体分子は次に、生物学的活性、例えば免疫学的特質の変化に関して試験される。
【0038】
本発明のポリペプチドは、便宜上、単離形態で提供される。「単離ポリペプチド」とは、そのネイティブ環境から取り出されたポリペプチドを意味する。したがって組換え宿主細胞内に生産されるかおよび/または含有されるポリペプチドは、本発明の目的のために単離されたと考えられる。「単離ポリペプチド」とは、組換え宿主細胞またはネイティブ供給源から、部分的にまたは実質的に精製されたポリペプチドも意味する。例えば、組換えにより生産されたバージョンのフィロウイルスポリペプチドは、Smith and Johnson 1988 Gene 67: 31-40に記載された一段階法により実質的に精製され得る。
【0039】
本発明のポリペプチドとしては、野生型フィロウイルス構造遺伝子産物またはその一部分のアミノ酸配列を有するポリペプチド、あるいは本願の配列表に示された核酸配列によりコードされるポリペプチド;ならびに上記したものと少なくとも95%同一、さらに好ましくは少なくとも96%、97%、98%または99%同一であるポリペプチドを含むポリペプチドが挙げられる。
【0040】
フィロウイルスポリペプチドの参照アミノ酸配列と、少なくとも例えば95%「同一の」アミノ酸配列を有するポリペプチドとは、フィロウイルスポリペプチドの参照アミノ酸の各100アミノ酸当たり、ポリヌクレオチド配列が5つまでのアミノ酸変更を含み得ることを除いて、ポリペプチドのアミノ酸配列が参照配列と同一であることを意味する。言い換えれば、参照アミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るためには、参照配列中のアミノ酸残基の5%までが欠失されるかまたは別のアミノ酸で置換され得るか、あるいは参照配列中の全アミノ酸残基のうちの5%までの数のアミノ酸が参照配列中に挿入され得る。参照配列のこれらの変更は、参照アミノ酸配列のアミノ末端またはカルボキシ末端位置で起こり得るし、あるいは参照配列中の残基の間に独立してまたは参照配列内の1つまたは複数の連続基中に点在される、それらの末端位置間のいずれの位置ででも起こり得る。
【0041】
実際的問題として、任意の特定のポリペプチドが参照アミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一であるか否かは、既知のコンピュータープログラム、例えばBestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, Wis. 53711)を用いて慣用的に確定され得る。Bestfitまたは任意のその他の配列アラインメントプログラムを用いて、特定の配列が、例えば本発明の参照配列と95%同一であるか否かを確定する場合、パラメーターは、もちろん、同一性のパーセンテージが参照アミノ酸配列の全長に亘って算定され、参照配列中のアミノ酸残基の総数の5%までの相同性におけるギャップが許されるように設定される。
【0042】
別の態様では、本発明は、少なくとも30個のアミノ酸、さらに好ましくは少なくとも50個のアミノ酸を有する、本明細書中に記載されたポリペプチドの一部分を提供する。本発明の好ましい一部分としては、フィロウイルス構造タンパク質のエピトープ保有部分を含むポリペプチドが挙げられる。特に、本発明の好ましい一部分としては、フィロウイルス構造タンパク質のエピトープ保有ドメインを含むポリペプチドが挙げられるが、この場合、ドメインはGP/SGP同一性ドメイン、ムチン様ドメイン、フリン切断部位、融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカードメインおよび細胞内ドメインならびにそれらの任意の組合せである。
該組み合わせとは、例えば膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカル
ボキシ末端のトランケーションを有するフィロウイルスの糖タンパク質;七価基反復ドメイン、膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカルボキシ末端のトランケーションを有するフィロウイルスの糖タンパク質;融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカルボキシ末端のトランケーションを有するフィロウイルスの糖タンパク質;フリン切断部位、融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカルボキシ末端のトランケーションを有するフィロウイルスの糖タンパク質;ムチン様ドメイン、フリン切断部位、融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカーおよび細胞内ドメインを欠失するためのカルボキシ末端のトランケーションを有するフィロウイルスの糖タンパク質である。別の例は、ムチン様ドメイン、フリン切断部位、融合ペプチドドメイン、七価基反復ドメイン、膜貫通アンカードメインまたは細胞内ドメインを欠失するための、アミノ、内部またはカルボキシ欠失を有するフィロウイルスの糖タンパク質である。
【0043】
本発明のポリペプチドは、任意の慣用的手段により生産され得る(Houghten, R.A. 1985 PNAS USA 82: 5131-5135)。「同時多重ペプチド合成(SMPS)」法は、米国特許第4,631,211号(Houghten等(1986))に記載されている。
【0044】
本発明は、本発明の核酸分子を含むベクター、組換えベクターで遺伝子操作された宿主細胞、および組換え技法によるフィロウイルスポリペプチドまたはその断片の産生にも関する。
【0045】
本発明は、初回免疫組成物の投与により誘導された免疫応答が、追加免疫組成物の投与により追加免疫される、「初回免疫および追加免疫」免疫感作レジメンに関する。本発明は、種々の異なる種類の初回免疫組成物のうちのいずれかを用いて初回免疫した後に、複製欠陥アデノウイルスベクターを用いて有効な追加免疫を達成することができるという本発明者らの実験的実証に基づいている。本発明は、下記の実験が示すように、種々の異なる初回免疫組成物のうちのいずれかを用いて、抗原に対して初回免疫された免疫応答に、追加免疫を提供するための有効な手段であることが明らかにされた複製欠陥アデノウイルスを用いる。
【0046】
ヒト血清型5由来の複製欠陥アデノウイルスは、Grahamと同僚等により生(live)ウイルスベクターとして開発された(Graham & Prevec 1995 Mol Biotechnol 3: 207-20; Bett et al. 1994 PNAS USA 91: 8802-6)。アデノウイルスは、約3600bpの線状二本鎖DNAゲノムを含有する非エンベロープ型ウイルスである。組換えウイルスは、ウイルス複製を可能にする許容細胞株中で、アデノウイルスゲノムプラスミドと、強力な真核生物プロモーターとともに当該遺伝子を含むシャトルベクターとの間の、in vitro組換えにより構築され得る。高ウイルス力価が許容細胞株から得られるが、その結果生じるウイルスは、広範囲の細胞型を感染し得るが、許容株以外のいかなる細胞中でも複製せず、したがって安全な抗原送達系である。組換えアデノウイルスは、多数の抗原、例えばダニ媒介性脳炎ウイルスNS1タンパク質(Jacobs et al. 1992 J Virol 66: 2086-95)および麻疹ウイルス核タンパク質(Fooks et al. 1995 Virology 210: 456-65)に対する防御的免疫応答を誘発することが示されている。
【0047】
驚くべきことに、下記の実験的研究は、本発明の実施形態の使用により、抗原を発現する組換え複製欠陥アデノウイルスが、DNAワクチンにより初回免疫された免疫応答を追加免疫することが可能になることを実証する。複製欠陥アデノウイルスは、筋肉内免疫感作後に免疫応答を誘導することが見出された。初回免疫/追加免疫予防接種レジメンでは、複製欠陥アデノウイルスは、異なる組換えウイルスまたは組換えにより産生された抗原により追加免疫され得る応答を、初回免疫し得るものとしても予見される。
【0048】
プラスミドDNAで免疫感作され、複製欠陥アデノウイルスで追加免疫された非ヒト霊長類は、攻撃誘発に対して防御された。組換え複製欠陥アデノウイルスおよびプラスミドDNAはともに、ヒトにとって安全なワクチンである。有益なことに、用いられる予防接種レジメンにおいて、免疫応答(例えば、ヒトにおける)を誘導するのに適した一般的免疫感作レジメンを構成する初回免疫および追加免疫の両方のために、筋肉内免疫感作が用いられ得ることを本発明者が見出した。
【0049】
本発明は、種々の態様および実施形態において、抗原または抗原をコードする核酸の前投与により初回免疫された抗原に対する免疫応答を追加免疫するために、抗原をコードする複製欠陥アデノウイルスベクターを用いる。
【0050】
本発明の一般的態様は、抗原に対する免疫応答を追加免疫するための複製欠陥アデノウイルスベクターの使用を提供する。
【0051】
本発明の一態様は、個体において抗原に対する免疫応答を追加免疫する方法であって、核酸からの発現により個体において抗原を産生し、それにより個体に以前に初回免疫された抗原に対する免疫応答を追加免疫するために、調節配列に作動可能的に連結された抗原をコードする核酸を含む複製欠陥アデノウイルスベクターを個体に提供することを含む方法を提供する。
【0052】
抗原に対する免疫応答は、遺伝子免疫感作により、感染因子による感染により、または組換えにより産生された抗原により初回免疫され得る。
【0053】
本発明のさらなる態様は、個体における抗原に対する免疫応答を誘導する方法であって、抗原または抗原をコードする核酸を含む初回免疫組成物を個体に投与し、次に核酸からの発現により個体において抗原を生産するための、調節配列に作動可能的に連結された抗原をコードする核酸を含む複製欠陥アデノウイルスベクターを含む追加免疫組成物を投与することを含む方法を提供する。
【0054】
さらなる態様は、抗原に対する免疫応答を追加免疫するために哺乳類へ投与するための薬剤の製造における、開示されたような複製欠陥アデノウイルスベクターの使用を提供する。このような薬剤は一般に、抗原を含む初回免疫組成物を前投与した後に投与するための薬剤である。
【0055】
初回免疫組成物は、任意のウイルスベクター、例えばアデノウイルスまたはアデノウイルス以外のもの、例えばワクシニアウイルスベクター(例えば修飾ウイルスアンカラ(Ankara)(MVA)(Mayr et al. 1978 Zentralbl Bakteriol 167: 375-90; Sutter and Moss 1992 PNAS USA 89: 10847-51; Sutter et al. 1994 Vaccine 12: 1032-40)またはNYVAC(Tartaglia et al. 1992 Virology 118: 217-32)等の複製欠陥株)、鳥痘(avipox)ベクター(例えばALVACとして既知の株(Kanapox、Paoletti et al. 1994 Dev Biol Stand 1994 82: 65-9)等の鶏痘(fowlpox)またはカナリア痘(canarypox))、あるいはヘルペスウイルスベクターを含み得る。
【0056】
初回免疫組成物は、抗原をコードするDNAを含み、このようなDNAは好ましくは、哺乳類細胞中で複製することができない環状プラスミドの形態である。任意の選択可能マーカーは、臨床的に用いられる抗生物質に対して耐性を有するべきでないため、例えばカナマイシン耐性がアンピシリン耐性よりも好ましい。抗原発現は、哺乳類細胞中で活性であるプロモーター、例えばサイトメガロウイルス極初期(CMVIE)プロモーターにより駆動されるべきである。
【0057】
本発明の種々の態様の特定の実施形態では、初回免疫組成物の投与の後に、一次および二次追加免疫組成物による追加免疫が続き、一次および二次追加免疫組成物は、例えば以下に例示されるように、同一でもまたは互いに異なっていてもよい。さらなる追加免疫組成物が、本発明から逸脱することなく用いられ得る。一実施形態では、三重免疫感作レジメンは、DNAを用い、次に一次追加免疫組成物としてアデノウイルス(Ad)を用い、次に二次追加免疫組成物としてMVAを用い、その後任意に、さらなる(三次)追加免疫組成物を投与してもよく、あるいは同一または異なるベクターの一方または両方を追加免疫投与してもよい。別のオプションは、DNA、次にMVA、次にAd、任意にその後、同一または異なるベクターの他方または両方の追加免疫投与である。
【0058】
それぞれの初回免疫組成物および追加免疫組成物中に含まれる抗原(しかしながら多数の追加免疫組成物が用いられる)は同一である必要はないが、エピトープを共有すべきである。抗原は標的病原体または細胞中の完全抗原またはその断片に対応し得る。ペプチドエピトープまたはエピトープの人工紐(string)が用いられて、抗原中の不必要なタンパク質配列、および単数または複数のベクター中のコード配列がより効率的に切断される。1つまたは複数の付加的エピトープ、例えばTヘルパー細胞により認識されるエピトープ、特に異なるHLA型の個体中で認識されるエピトープが包含され得る。
【0059】
複製欠陥アデノウイルスベクター内では、コード抗原の発現のための調節配列はプロモーターを含む。「プロモーター」とは、下流に(すなわち、二本鎖DNAのセンス鎖上で3’方向に)作動可能的に連結されるDNAの輸送が開始され得るヌクレオチドの配列を意味する。「作動可能的に連結される」とは、プロモーターから開始される転写のために適切に配置され、配向された同一核酸分子の一部として連結されることを意味する。プロモーターに作動可能的に連結されるDNAは、プロモーターの「転写開始調節下」にある。その他の調節配列(例えばターミネーター断片、ポリアデニル化配列、エンハンサー配列、マーカー遺伝子、内部リボソーム進入部位(IRES)およびその他の配列)が、当業者の知識および技量により、適宜含まれ得る(例えばMolecular Cloning: a Laboratory Manual, 2nd edition, Sambrook et al. 1989 Cold Spring Harbor Laboratory Press参照)。核酸構築物の調製、突然変異誘発、シーケンシング、細胞中へのDNAの導入および遺伝子発現ならびにタンパク質の分析における、核酸の操作のための多数の既知の技術およびプロトコールは、例えば、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel et al. eds., John Wiley & Sons, 1994に詳細に記載されている。
【0060】
本発明の態様および実施形態に用いるための適切なプロモーターとしては、イントロンAを伴うかまたは伴わないサイトメガロウイルス極初期(CMVIE)プロモーター、ならびに哺乳類細胞中で活性である任意のその他のプロモーターが挙げられる。
【0061】
初回免疫組成物および追加免疫組成物のいずれかまたは両方が、アジュバントまたはサイトカイン、例えばα−インターフェロン、γ−インターフェロン、血小板由来増殖因子(PDGF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、顆粒球コロニー刺激因子(gCSF)、腫瘍壊死因子(TNF)、上皮増殖因子(EGF)、IL−1、IL−2、IL−4、IL−6、IL−8、IL−10およびIL−12またはそのコード核酸を含み得る。
【0062】
追加免疫組成物の投与は一般に、初回免疫組成物の投与後、数週間目または数ヶ月目、好ましくは約2〜3週目または4週目、または8週目、または16週目、または20週目、または24週目、または28週目または32週目に実施される。
【0063】
好ましくは、初回免疫組成物、追加免疫組成物、または初回免疫および追加免疫組成物
の両方の投与は、筋肉内免疫感作である。
【0064】
アデノウイルスワクチンまたはプラスミドDNAの筋肉内投与は、ウイルスまたはプラスミドDNAの懸濁液を注射するための針を用いて実施され得る。代替的に、冷蔵を必要とせずに個別調製用量を製造することができるウイルスまたはプラスミドDNA懸濁液(例えばBiojector(商標)を使用)、あるいはワクチンを含有する凍結乾燥粉末(例えばPowderjectの技法および製品による)を投与するための無針注射用具(device)を使用してもよい。これは、アフリカの地方において必要とされるワクチンにとっては大きな利点となろう。
【0065】
アデノウイルスは、ヒト免疫感作における優れた安全性記録を有するウイルスである。組換えウイルスは簡単に生成され、それらは大量に再現的に製造され得る。したがって組換え複製欠陥アデノウイルスの筋肉内投与は、免疫応答により制御され得る疾患に対するヒトの予防的または治療的予防接種に非常に適している。
【0066】
個体は、抗原の送達および抗原に対する免疫応答の発生が、有益であるかまたは治療的に有益な作用を有するような疾患または障害を有し得る。
【0067】
おそらく、投与は、感染または症状の発生前に、病原体または疾患に対する免疫応答を発生させるという予防的目標を有する。
【0068】
本発明に従って治療または予防され得る疾患および障害としては、免疫応答が予防的または治療的役割を果たし得るものが挙げられる。
【0069】
本発明に従って投与される構成成分は、薬学的組成物中に処方され得る。これらの組成物は、薬学的に許容可能な賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤または当業者に既知のその他の物質を含み得る。このような物質は無毒性であるべきであり、そして活性成分の効力を妨げるべきでない。担体またはその他の物質の厳密な性質は、投与経路(例えば静脈内、皮膚または皮下、粘膜内(例えば腸)、鼻内、筋肉内または腹腔内経路)によって変わり得る。
【0070】
上述のように、投与は好ましくは皮内、皮下または筋肉内である。
【0071】
液体薬学的組成物は一般に、液体担体、例えば水、鉱油(petroleum)、動物または植物油、鉱物油(mineral oil)または合成油を含む。生理食塩水、デキストロースまたはその他の糖類溶液またはグリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールが含まれ得る。
【0072】
静脈内注射、皮膚注射または皮下注射、あるいは疾患部位への注射のために、活性成分は、発熱物質無含有であって、適切なpH、等張性および安定性を有する、非経口的に許容可能な水溶液の形態である。当業者は、例えば等張性ビヒクル(例えば塩化ナトリウム注射液、リンガー注射液、乳酸化リンガー注射液)を用いて適切な溶液を調製し得る。防腐剤、安定剤、緩衝剤、酸化防止剤および/またはその他の添加剤が、必要に応じて含まれ得る。
【0073】
徐放性処方物が用いられ得る。
【0074】
複製欠陥アデノウイルス粒子の産生、およびこのような粒子を組成物中へ任意に処方した後、粒子は個体(特にヒトまたはその他の霊長類)に投与され得る。
【0075】
投与は、別の哺乳類、例えば齧歯類、例えばマウス、ラットもしくはハムスター、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ウシ、ロバ、イヌまたはネコに対しても実施され得る。
【0076】
投与は、好ましくは「予防的有効量」または「治療的有効量」(但し、場合によっては、予防は治療であると考えられ得る)で実施され、これは、個体に対する利益を示すのに十分である。実際に投与される量、ならびに投与される速度および時間経過は、治療されるものの性質および重症度によって異なる。治療の処方、例えば投薬量に関する決定等は、一般医およびその他の医師の、あるいは獣医学的状況では獣医の責任の範囲内であり、典型的には治療される障害、個々の患者の状態、送達部位、投与方法、ならびに医師に既知のその他の因子を考慮する。上記の技法およびプロトコールの例は、Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th edition, Osol, A. ed., 1980に見出され得る。
【0077】
好ましい一レジメンでは、DNAが10μg〜50mg/注射の用量で、その後、アデノウイルス(好ましくは筋肉内に)が5×107〜1×1012粒子/注射の用量で投与される。
【0078】
組成物は、所望により、活性成分を含有する1つまたは複数の単位剤形を含有し得るキット、パックまたはディスペンサー中にあり得る。例えばキットは、金属またはプラスチック箔、例えばブリスターパックを含み得る。キット、パックまたはディスペンサーは、投与のための使用説明書が添付され得る。
【0079】
組成物は、治療される症状によって、単独でまたは他の治療と組合せて、同時にまたは順番に投与され得る。
【0080】
非ヒト哺乳類への送達は、治療目的である必要はないが、実験的に、例えば当該抗原に対する免疫応答、例えば疾患に対する防御のメカニズムの研究に用いるためであり得る。
【0081】
本発明のさらなる態様および実施形態は、上記の開示および以下の実験的例示(例として包含されるが、それらに限定されない)を、添付の図面を参照して考慮すれば、当業者には明らかである。
【0082】
霊長類におけるエボラウイルス感染に対する予防ワクチンの開発
遺伝子免疫感作は、体液性および細胞性免疫活性化経路の両方に影響を及ぼし、ヒト病原体による感染に対して防御することが示されている(Tang, D.C. et al. 1992 Nature 356: 152-154; Ulmer, J.B. et al. 1993 Science 259: 1745-1749; Wang, B. et al. 1993 PNAS USA 90: 4156-4160;Sedegah, M. et al. 1994 PNAS USA 91: 9866-9870)。プラスミドワクチンの有効性は、宿主細胞タンパク質合成および免疫原の内因性提示に起因し、おそらくはプラスミドDNA自体の免疫刺激作用によるものと考えられる(Kreig, A.M. et al. 1995 Nature 374: 546-549; Sato, Y. et al. 1996 Science 273: 352-354)。DNAワクチンは、エボラウイルス抗原に対する特異的免疫応答を誘発し、齧歯類において致死的感染するエボラウイルスによる攻撃誘発(Connolly, B.M. et al. 1999 J Infect Dis 179: S203-S217; Bray, M. et al. 1998 J Infect Dis 178: 651-661)に対してモルモット(Xu, L. et al. 1998 Nat Med 4: 7-42)およびマウス(Vanderzanden, L. et al. 1998 Virology 246: 134-144)を防御することが示されている。細胞媒介性および体液性免疫応答の両方が誘発されたが、抗体力価は、エボラウイルスのザイールサブタイプからのタンパク質をコードするプラスミドで免疫感作された動物における防御の程度と関連付けられた。
【0083】
広範に有効なワクチンは、ヒト感染において単離される多エボラサブタイプ(ザイール
、スーダンおよび象牙海岸)に対する免疫を提供する必要があるが、多価ワクチンは、単一サブタイプワクチンに関して実証された特異的免疫応答を弱め得る。この問題に対処するために、オリジナルのエボラ・ザイールDNAワクチン単独の効力を、エボラウイルスのスーダンおよび象牙海岸サブタイプからのDNAと組合せて使用した場合の効力とを比較して分析した。従来の研究(Xu, L. et al. 1998 Nat Med 4: 7-42)の場合と同様に、ザイールサブタイプビリオン糖タンパク質GP(Z)をコードする単一プラスミドによる免疫感作は、モルモットにおいて実質的なウイルス特異的抗体応答を発生し、防御免疫を付与した(表1)。エボラ核タンパク質NPを発現するプラスミドの封入は、エボラGP(Z)に対する抗体力価に影響を及ぼさず、その防御効力を低減することもなかった。NP、ならびにエボラ糖タンパク質の3つのサブタイプ(ザイール、象牙海岸およびスーダンGP(Z、IC、S)+NP)を含むワクチン構成成分のさらなる拡大は、単一プラスミドワクチンに匹敵する前攻撃誘発免疫応答を生じた。さらに、エボラザイール型ウイルスによる感染からの完全防御が、多価ワクチンを投与されたモルモットにおいて達成された(表I、被験体13〜16)。既往抗体はウイルス攻撃誘発によっては誘導されなかったが、これはワクチンそれ自体が、ウイルスを効率的に除去するのに十分な免疫応答を提供したことを示す。これらの知見により、齧歯類モデルにおける多価プラスミド免疫感作は、糖タンパク質(GP)特異的抗体産生およびその防御的効力を実質的に低減しないことが示された。
【0084】
【表4】
【0085】
エボラウイルス感染の齧歯類モデルにおける防御は抗体力価と関連付けられ、効率的な体液性応答はヒト疾患に置ける臨床結果に影響を及ぼし得るため(Baize, S. et al. 1999 Nat Med 5: 423-426; Maruyama, T. et al. 1999 J Virol 73: 6024-6030)、霊長類において試験されたワクチンに対する強力な体液性応答を誘発することが重要であると本発明者らは考えたが、細胞媒介性免疫は同等に誘導され、防御に寄与すると思われる(Xu, L. et al. 1998 Nat Med 4: 37-42)。近年、DNA初回免疫とその後のウイルスベクターの投与というレジメンは、DNA単独を用いたワクチンと比較して、免疫応答を増強することが実証された(Sedegah, M. et al. 1998 PNAS USA 95: 7648-7653; Hanke, T. et
al. 1998 Vaccine 16: 439-445; Robinson, H.L. et al. 1999 Nat Med 5: 526-534; Schneider, J. et al. 1998 Nat Med 4: 397-402)。組換え複製欠陥アデノウイルスは高力価になり、抗原提示細胞に感染し、強力な免疫応答を誘導し得る(Davis, A.R. et al. 1985 PNAS USA 82: 7560-7564; Natuk, R.J. et al. 1992 PNAS USA 89: 7777-7781; Xiang, Z.Q. et al. 1996 Virology 219: 220-227)。アデノウイルスはマウスにおける追加免疫作用を示した(Xiang, Z.Q. et al. 1999 J Immunol 162: 6716-6723)が、DNAおよびアデノウイルスの組合せは、感染性攻撃誘発モデルにおける効力に関して試験されておらず、霊長類におけるこの手法の成功は未だ報告されていない。したがって、本発明者らは、高レベルGP発現を指示する組換えアデノウイルスベクターADV−GP(Z)を開発し、修飾初期免疫−追加免疫戦略が、裸DNA単独を用いて得られたエボラウイルスに対する抗体応答を増大するか否かを試験するために、このベクターを用いた。マウスにDNAおよびアデノウイルスベクターを、単独でまたは組合せて注射し、細胞媒介性応答および体液性免疫応答を評価した。DNA免疫感作単独の場合と比較して、DNAおよびその後のアデノウイルス追加免疫を注射したマウスにおいて、抗体力価が10倍〜100倍増加することが見出された(図47)。同様に細胞傷害性T細胞応答の増大がこの組合せを用いて観察された。ADV−GP(Z)単独による免疫感作は、DNA初回免疫、アデノウイルス追加免疫感作した場合と、抗体力価が有意に異ならなかった。これらのデータは、マウスにおけるエボラGP DNAワクチンの免疫原性が組換えアデノウイルスによる追加免疫によって改良されたこと、及びこの戦略が非ヒト霊長類における免疫応答を増大するための有用なアプローチを提示し得ることを示唆する。
【0086】
齧歯類モデルはワクチン戦略の開発において有用であったが、一方、ヒトから直接単離されたエボラウイルスは先ず、マウスまたはモルモットにおいて致死性感染するために、齧歯類における逐次的な多継代により適合されなければならない(Connolly, B.M. et al. 1999 J Infect Dis 179: S203-S217; Bray, M. et al. 1998 J Infect Dis 178: 651-661)。エボラ感染の霊長類モデルは、ヒト疾患および免疫防御に関してより強力な予測値を有すると考えられる。したがって、二方式性DNA/ADVワクチンならびにモルモットにおける防御と相関した多プラスミド戦略を用いて、非ヒト霊長類における試験を本発明者らは実施した。カニクイマカクザル(Macaca fascicularis)に、4週間間隔で裸DNAベクターを3回注射し(図48A)、数ヶ月の安静(免疫応答を追加免疫することができると示されることが知られている(Letvin, N.L. et al. 1997 PNAS USA 94: 9378-9383))後、ザイール糖タンパク質のみを発現する組換えアデノウイルスで追加免疫した(図48A)。対照動物には空ベクター(プラスミドDNAおよびADV−ΔE1組換えアデノウイルス)を投与し、予防接種動物にはNPおよびエボラGPの3つのサブタイプを含有する多構成成分DNAワクチン(pGP/NP)とその後のADV−GP(Z)を投与した。予測した通り、抗エボラ血清抗体は対照動物では検出されなかったが、エボラワクチン投与動物では、抗原特異的抗体応答が、12週目、すなわち3回目のDNA注射の1ヵ月後に検出された(図48B)。組換えアデノウイルスにより追加免疫した後、抗体力価は、DNA単独で観察されたレベルの10〜20倍に増大した。最終免疫感作の3ヵ月後に、抗体レベルは依然として高かったが、但し、一動物(被験体8)に関しては、わずかに力価が下がった(5×104から1.3×104)。
【0087】
次にエボラ抗原に対する霊長類細胞性応答を、in vitroリンパ球増殖アッセイを用いて検査した。対照サルでは、3H−チミジン取り込みにより測定された抗原特異的リンパ球増殖は、適正化非刺激細胞と等価であり、各動物に関して約1.0の増殖指数を生じた(48C)。これに対比して、多価ワクチンで免疫を受けた動物からの末梢血単核球(PBMC)は、9〜20倍の刺激増大を示したが、このことは、細胞レベルでのエボラ抗原に対する活発な免疫応答を実証する。CD4−陽性リンパ球の枯渇は、ワクチン接種サルからのPBMCの抗原刺激性増殖性応答を、対照動物で観察されたレベルにまで低減させた(図48D)。しかしながらCD8−陽性リンパ球の枯渇は、エボラ抗原特異的リンパ球増殖に影響を及ぼさなかった。したがって、高抗体力価に必要とされるT細胞助力(help)を提供するリンパ球のCD4−陽性サブセットは、ワクチン誘導性細胞免疫応答に寄与している。
【0088】
この予防接種レジメンの防御効力を確定するために、エボラウイルスのザイールサブタイプからの致死用量の野生型マインガ株を用いてサルを攻撃誘発した。対照サルでは、血液化学知見から肝臓酵素の増大が示された(図49A、図49B)が、このような増大はエボラウイルス感染に特徴的である(Fisher-Hoch, S.P. et al. 1985 J Infect Dis 152: 887-894)。このような増大はワクチン接種被験体においては観察されなかった。血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の上昇は、対照動物の全てにおけるウイルス血症の劇的増大と関連した(図49C)。これに対比して、予防接種サルにおいては、ウイルス負荷の実質的増大は観察されなかった。疾患進行の動態は、対照動物の間では同様で、疾患発生率はこの群においては100%であった。5日目〜6日目に3匹は死亡し、最後のサルは、瀕死状態で、7日目に安楽死させられた。これに対比して、DNA−アデノウイルスワクチンの組み合わせで免疫を受けたサル4匹のうち4匹が、エボラウイルスによる致死性攻撃誘発を生き残り、4匹の被験体中3匹において滅菌免疫が達成された。残りの動物は、ウイルス抗原のわずかな一過性増大を示した。しかしながら長期間の後、予防接種動物はすべて、感染の徴候または症状を示さず、ウイルス抗原のELISA検出(図49A)および培養ウイルスの終点滴定分析により測定した場合、感染後6ヶ月以上、検出可能なウイルス血症は認められなかった。10日目に一過性の低レベルのウイルス血症を示したワクチンレシピエント(被験体8)は、17日までに検出不可能レベルになった。
【0089】
エボラウイルスの天然レザバー(reservoir)は未知であるので、将来的大発生を防止するための従来の公衆衛生対策の可能性は制限され、したがってヒトにおけるワクチンおよび治療薬の開発の緊急性が増大する。霊長類は、エボラウイルス感染の致死作用に対して免疫感作され、そして滅菌免疫が異種初回免疫−追加免疫戦略を用いて達成され得ることを本発明の知見は実証する。多様な地理的単離物からのエボラウイルス構造タンパク質を発現する多構成成分遺伝子ワクチンは、強力な抗原特異的免疫応答を発生し、ヒト感染における最高死亡数に関連するこのウイルスのサブタイプであるエボラ・ザイールの致死用量を用いた攻撃誘発後に免疫感作霊長類を生存させた。この試験の結果は、T細胞媒介性および体液性免疫が、齧歯類における従来の試験と同様に、非ヒト霊長類におけるウイルスクリアランス(clearance)に寄与することを示唆する(Xu, L. et al. 1998 Nat Med 4: 37-42; Wilson, J. et al. 2000 Science 287: 1664-1666)。2つの免疫パラメーターである抗体力価(1:75,000対<1:100、P=0.001)および細胞性増殖応答(約12倍対1.4倍、P=0.0014)は、免疫防御との非常に有意な相関関係を示した。ヒトにおけるエボラウイルス感染からの免疫防御との相関関係を調べる試験は、ウイルスの攻撃性ならびに必然的に高レベルの生物安全性束縛(biosafety containment)により妨げられる。ここに提示された霊長類免疫のモデルを用いて、エボラウイルス感染からの免疫防御のメカニズムを明らかにし、免疫ベースの抗ウイルス療法を進展させ、そしてこの病原体に対する、さらには出血熱のその他の感染性原因に対するヒトワクチンを開発することが、目下考えられている。
【0090】
エボラ、マールブルグおよびラッサ構築物の説明
VRC6000
VRC6000(pVR1012−GP(Z))。ザイールサブタイプのエボラ糖タンパク質を発現する主鎖pVR1012(#450)。配向は、BamHI/EcoRI/EcoRV/EcoRI/BglIIである。
VRC6001
VRC6001(pVR1012x/s−GP(Z))。その他の説明なし。これは6000と同一であるが、pVR1012主鎖へのSfi制限部位の付加を伴う。
VRC6002
VRC6002(pVR1012−GP(Z)デルタMUC)。GP(Z)のムチン様ドメインが欠失された。主鎖pVR1012GP(Z)中の530bpがEarI(2844)からBfaI(3374)まで欠失された。この突然変異体は、エボラ受容体と結合し得る。
VRC6003
VRC6003(pVR1012−GP(Z)デルタMUCデルタFUR)。GP(Z)のムチン様ドメインおよびフリン切断部位が欠失された。主鎖pVR1012GP(Z)中の593bpがEarI(2844)からEarI(3437)まで欠失された。本タンパク質は、pVR1012−GP(Z)デルタMUCと同様の特性を有する。
VRC6004
VRC6004(pVR1012−GP(Z)デルタGP2)。GP(Z)中のGP2領域の大多数が欠失された。主鎖pVR1012−GP(Z)からの430bpがBclI(3414)からBspEI(3844)まで欠失された。TM(膜貫通)領域が保持された。
VRC6005
VRC6005(pVR1012−GP(Z)デルタGP2デルタC末端A)。これは、GP2のC末端欠失である。267bpがpVR1012−GP(Z)主鎖のMscI(3623)からBspMI(3890)まで欠失された。
VRC6006
VRC6006(pVR1012−GP(Z)デルタGP2デルタC末端B)。これは、GP2のC末端のより小さな欠失である。主鎖pVR1012−GP(Z)の110bpがBstXI(3780)からBspMI(3890)まで欠失された。
VRC6007
VRC6007(pVR1012−GP(Z)デルタGP2デルタFUS)。GP(Z)のGP2中の融合ペプチドが、PCRを用いて、この突然変異で欠失された。主鎖pVR1012−GP(Z)からの47bpが、3508から3555まで欠失された。
VRC6008
VRC6008(pVR1012−GP(Z)デルタTM)。この突然変異体においては、GP(Z)のTM領域がトランケートされた。停止コドン(TGA)がBspMI部位(3889)の下流に付加された。このタンパク質は分泌され、三量体を形成しない。
VRC6052
VRC6052(pVR1012−GP(Z)デルタsGP)。SGP/GP相同領域の大多数が欠失された。主鎖pVR1012−GP(Z)からの687bpが、HincII(2083)からHincII(2270)まで欠失された。
VRC6101
VRC6101(pVR1012x/sエボラGP(R)(dTM))。本ベクターは、その膜貫通および細胞内ドメインを伴わずにエボラ糖タンパク質(レストンサブタイプ)を発現する。PCRを用いて、停止コドンがGP(R)のa.a.650の下流に生成され、その後にXbaI部位が続いた。このタンパク質は分泌されることができ、GP
(R)(dTM)と称される。
VRC6110
VRC6110(pAdAptエボラGP(R)(dTM))。その膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを伴わずにエボラ糖タンパク質(レストンサブタイプ)を発現するアデノウイルスシャトルベクター。PCRを用いることで、停止コドンがGP(レストン)のa.a.651の下流に生成され、その後にXbaI部位が続いた。結果として得られる組換えアデノウイルスは、GP(R)(dTM)と呼ばれる651a.a.分泌糖タンパク質を発現する。
VRC6200
VRC6200(pVR1012−GP(S))。スーダンサブタイプのエボラ糖タンパク質を発現する主鎖pVR1012(#450)。配向は、EcoRI/EcoRV/BamHI/BamHI/BamHI/XbaIである。
VRC6201
VRC6201(pVR1012x/sエボラGP(S))。1012主鎖へのSfi部位の付加を伴う以外は6200と同一であり、その他の説明はない。
VRC6202
VRC6202(pVR1012−GP(S)デルタTM)。この突然変異体においては、GP(S)のTM領域がトランケートされた。停止コドン(TGA)がBspMI部位(xxx)の下流に付加された。このタンパク質は分泌され、三量体を形成しない。
VRC6300
VRC6300(pVR1012−GP(IC))。象牙海岸サブタイプのエボラ糖タンパク質を発現する主鎖pVR1012(#450)。配向は、EcoRI/EcoRV/BamHI/BamHI/BamHI/XbaIである。
VRC6301
VRC6301(pVR1012x/s−GP(IC))。1012主鎖へのSfi部位の付加を伴う以外は6300と同一であるが、その他の説明はない。
VRC6302
VRC6302(pVR1012−GP(IC)デルタTM)。この突然変異体においては、GP(IC)のTM領域がトランケートされた。停止コドン(TGA)がBspMI部位の下流に付加された。このタンパク質は分泌され、三量体を形成しない。
VRC6303
VRC6303(pVR1012x/sエボラGP(IC)(dTM))。膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを伴わずにエボラ糖タンパク質(象牙海岸サブタイプ)を発現するpVR2000ベースのベクター。PCRを用いることで、停止コドンがGP(R)のa.a.650の下流に生成され、その後にBglII部位が続いた。本ベクターは、650a.a.分泌糖タンパク質(a.a.1〜a.a.650)を発現する。
VRC6310
VRC6310(pAdAptエボラGP(IC)(dTM))。その膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを伴わずにエボラ糖タンパク質(サブタイプ象牙海岸)を発現するアデノウイルスシャトルベクター。PCRを用いることで、停止コドンがGP(IC)のa.a.651の下流に生成された。結果として得られる組換えアデノウイルスは、GP(IC)(dTM)と呼ばれる651a.a.分泌糖タンパク質を発現する。
VRC6351
VRC6351(pVR1012x/s−sGP(IC))。その他の説明なし。
VRC6400
VRC6400(pVR1012−NP)。象牙海岸サブタイプのエボラ核タンパク質を発現する主鎖pVR1012(#450)。
VRC6401
VRC6401(pVR1012x/s−NP)。1012主鎖へのSfi部位の付加を伴う以外は6400と同一であり、その他の説明はない。
VRC6500
VRC6500(pVR1012−VP35)。主鎖はpVR1012(#450)である。挿入物は、pGEM 3Zf(+)VP35(#1213)からクローン化されたエボラからのVP35である。
VRC6600
VRC6600(pAD/CMV−GP(dTM)(Z−CITE−S))。その他の説明なし。
VRC6601
VRC6601(pAdAptエボラGP(S))。その他の説明なし。
VRC6602
VRC6602(pAdAptエボラGP(S)(dTM))。その膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを伴わずにエボラ糖タンパク質(スーダンサブタイプ)を発現するアデノウイルスシャトルベクター。停止コドンがGP(S)のa.a.650の下流に融合された。結果として得られる組換えアデノウイルスは、GP(S)(dTM)と呼ばれる654a.a.分泌糖タンパク質を発現する。
VRC6603
VRC6603(pAdAptエボラGP(Z))。その他の説明なし。
VRC6604
VRC6604(pAdAptエボラGP(Z)(dTM))。その膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを伴わずにエボラ糖タンパク質(サブタイプザイール)を発現するアデノウイルスシャトルベクター。停止コドンがGP(Z)のa.a.651の下流に融合された。結果として得られる組換えアデノウイルスは、GP(Z)(dTM)と呼ばれる655a.a.分泌糖タンパク質を発現する。
VRC6701
VRC6701(pVR1012−マールブルグ)。マールブルグ糖タンパク質(GP)オープンリーディングフレーム、Musoke株。マールブルグをVRC6700(Xba/PvuII)からの主鎖#450(Bam(blunt)/XbaI)中にクローン化した。
VRC6702
VRC6702(pVR1012x/sマールブルグGP(dTM))。本ベクターは、その膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを伴わずにマールブルグウイルス糖タンパク質を発現する。PCRを用いることで、停止コドンがGP(マールブルグ)のa.a.650の下流に生成され、その後にBglII部位が続いた。このタンパク質は分泌され、GP(マールブルグ)(dTM)と呼ばれる。
VRC6710
VRC6710(pAdAptマールブルグGP(dTM))。膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインを伴わずにマールブルグウイルス糖タンパク質を発現するアデノウイルスシャトルベクター(pVRC1290)。PCRを用いることで、ターミネーターコドンがa.a.650の下流に生成され、その後にBglII部位が続いた。結果として得られる組換えアデノウイルスは650a.a.分泌タンパク質(a.a.1〜a.a.650)を発現する。
VRC6800
VRC6800(pVR1012x/sラッサGP)。その他の説明なし。
VRC6801
VRC6801(pVR1012x/sラッサGP(dTM))。その他の説明なし。
VRC6810
VRC6810(pAdAptラッサGP)。その他の説明なし。
VRC6811
VRC6811(pAdAptラッサGP(dTM))。その他の説明なし。
【実施例1】
【0091】
ベクター構築。
エボラ・ザイール糖タンパク質(GP)、分泌GP(SGP)および核タンパク質(NP)を発現するDNAベクターの構築は、Xu, L. et al. 1998 Nat Med 4: 37-42に記載されている。GPスーダンおよび象牙海岸発現ベクターを同様に構築した。要するに、以下のプライマー:5’ATC TTC AGG ATC TCG CCA TGG A3’(スーダンGP遺伝子;NcoI>ATG;配列番号44)、5’GAT ATT CAA CAA AGC AGC TTG CAG3’(スーダンGP遺伝子;C末端GP停止;配列番号45)、5’CTA ATC ACA GTC ACC ATG GGA3’(象牙海岸GP遺伝子;NcoI>ATG;配列番号46)、5’AAA GTA TGA TGC TAT ATT AGT TCA3’(象牙海岸GP遺伝子;C末端GP停止;配列番号47)を用いて、感染細胞RNAの、RNAの逆転写後のポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)産物から、GPオープンリーディングフレームを生成し、TAクローンPCR2.1スーダンおよびPCR2.1象牙海岸を得た。XbaI/HindIIIを用いて、スーダン糖タンパク質をプラスミドPC2.1から消化し、クレノウ(Klenow)処理して、p1012のXbaI部位にクローン化した(Xu, L. et al. 1998 Nat Med 4: 37-42)。EcoRIを用いて、象牙海岸GPをプラスミドPC2.1から消化し、クレノウ処理して、p1012のXbaI部位にクローン化した(Xu, L. et al. 1998 Nat Med 4: 37-42)。
【0092】
ADV−GPを作製するために、GP(Z)のBamHI/EcoRI断片をpGEM−3Zf(−)−GPから消化して、クレノウ処理し、HindIII/XbaI/Kle/CIP処理pRc/CMVプラスミド中に挿入した。その結果生じたプラスミド(PRC/CMV−GP(Z))をNruI/DraIIIで消化し、クレノウ処理した。CMVエンハンサー、GP(Z)DNAおよびウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルを含有するNruI/DraIII/Kle断片を、アデノウイルスシャトルプラスミドpAdBgIIIのBglII部位に挿入した(Ohno, T. et al. 1994 Science 265: 781-784)。第一世代dl309ベースAd5ベクターであるアデノウイルスは、E1に欠失を含み、ベクターを複製欠陥体およびE3における部分欠失/置換体にさせたが、これは、それぞれ14.7kD、14.5kDおよび10.4kDの相対分子量を有するE3タンパク質に関するコード配列を崩壊する。ザイールGPを発現する組換えアデノウイルスADV−GP(Z)を、以前に報告された方法(Aoki, K. et al. 1999 Mol Med 5: 224-231)にしたがって作製した。投与されるアデノウイルスの用量、1010プラーク形成単位(PFU)/動物(約3×109PFU/kg)は、ヒト遺伝子療法試験において安全に用いられる範囲内である。
【0093】
動物試験および安全性。
Covance (Princeton, NJ)から入手した3歳、体重2〜3kgの8匹のカニクイマカクザル(cynomolgus macaques)(Macaca fascicularis)を、免疫感作および攻撃誘発実験のために用いた。血液検体を得るため、そしてワクチンを投与するために、ケタマインでサルを麻酔した。「実験室動物の管理および使用のための指針(Guide for the Care and
Use of Laboratory Animals (DHEW No. NIH 86-23)」に従って、動物を1匹ずつ収容し、定期的エンリッチメントを施した。エボラウイルス攻撃誘発直前から実験終了まで、動物を最大閉じ込め実験室(BSL−4)中に保持し、給餌し、毎日検査した。瀕死状態と思われた一動物を安楽死させ、その後、病理検査のために剖検した。さらに、単一無症候性予防接種動物を、病理学的およびウイルス学的分析のために安楽死させた。
【0094】
マウス免疫感作。
エボラザイールGPまたはNPを発現するDNAおよびアデノウイルスベクターを、サイトメガロウイルスエンハンサーおよびプロモーターの制御下で、遺伝子発現を用いて、前記と同様に構築した(Xu, L. et al. 1998 Nat Med 4: 37-42; Ohno, T. et al. 1994 Science 265: 781-784)。0、14および28日目に、100μgのDNA(pGPまたはp1012プラスミド対照)または108PFUのアデノウイルス(ADV−GPまたはADV−ΔE1対照ウイルス)を用いて、マウスを筋肉内免疫感作し、28日目に血液を採取した。42日目に、DNAまたはアデノウイルスを用いてマウスに筋肉内追加免疫を施して、力価を56日目に再び測定した。精製ビリオン由来のエボラウイルス抗原の調製物を被覆し、膜関連タンパク質(GP、VP40およびVP24)を濃化した96ウエルプレートを用いて、ELISA IgG力価を確定した(Ksiazek, T.G. et al. 1992 J Clin Microbiol 30: 947-950)。ヤギ抗ヒトIgG(H+L)−ホースラディッシュペルオキシダーゼ接合体およびABTS/ペルオキシド(基質/指示薬)を用いて、特異的抗原結合を検出した。
【0095】
マカク(Macaque)ザル免疫感作。
DNA免疫感作のために、GP(ザイール)[GP(Z)]、GP(象牙海岸)[pGP(IC)]、GP(スーダン)[pGP(S)]、ならびに混合物[pGP/NP]として投与されるNP(ザイール)[GP(Z)]を発現するそれぞれのDNA(1mg)を、あるいは空[pGP(Z)]対照プラスミド4mgを、動物の三角筋に両側投与した(2mg/一側)。0および4週目の免疫感作はIM注射により、8週目はBiojectorにより行った。アデノウイルス追加免疫のために、動物に1010PFUのADV−GP(ザイールサブタイプ)またはADV−ΔE1(空ベクター)を、2用量に分けて三角筋に両側投与した。32週目に、ハンクス緩衝化塩溶液1ml中の約6PFUのエボラウイルス(ザイール1976年単離物;マインガ株)を全動物に腹腔内注射した(Kiley,
M.P. et al. 1980 J Gen Virol 49: 333-341)。ウイルスを患者血液から直接単離し、ベロ細胞中での1回継代後に用いた。
【0096】
対照(プラスミド:ADV−ΔE1)および免疫感作(pGP/NP:ADV−GP(Z))サルに関して、上記と同様にELISA IgG力価を確定した。各被験体に関する希釈の相互終点は、12週目および24週目であった。記載どおりに(Ksiazek, T.G. et al. 1992 J Clin Microbiol 30: 947-950)、ELISAにより血清抗体レベルを測定した。
【0097】
4、8および20週目、並びに24週目の免疫感作の1〜3日前に、対照(プラスミド:ADV−ΔE1)または免疫感作(pGP/NP:ADV−GP(Z))動物から血液を採取した。血液をパーコール勾配上で分離して、富リンパ球集団を得た。記載どおりに(Xu, L. et al. 1998 Nat Med 4: 37-42)エボラ分泌糖タンパク質(SGP)または空プラスミドでトランスフェクトされた細胞からの上清を用いて、in vitroで5日間、リンパ球を刺激し、3H−チミジン取り込みにより増殖を測定した。増殖指数は、SGPを投与したウエル中の増殖を、対照上清を投与したウエル中の増殖で割ることによって算定された。
【0098】
マカクザルにおけるウイルス検出。
サル血漿の連続希釈液からVP40タンパク質を捕捉することにより、記載どおりに(Ksiazek, T.G. et al. 1992 J Clin Microbiol 30: 947-950)、循環エボラウイルス抗原の存在を検出した。抗VP40mAbを被覆した96ウエルプレートを用いて、抗原を捕捉し、検出はウサギ抗エボラウイルス血清を用いた。
【実施例2】
【0099】
エボラGP(ザイール)およびNP(ザイール)のアミノ酸配列は、GenBank:
GP(ザイール)、GenBank寄託番号P87666;NP(ザイール)、GenBank寄託番号NC_002549から入手し、一方、GP(スーダン/Gulu)は、CDCから入手した。次に、哺乳類の好ましいコドンを用いて、アミノ酸配列をDNA配列に逆翻訳した。25bp重複を有する連続75bpオリゴ体を調製して、全遺伝子を網羅した。次にPCRを用いて、好ましいコドンを含有する無傷哺乳類遺伝子中にオリゴ体をアセンブルした。設計において、GP(ザイール)(a.a.648〜676)およびGP(スーダン/Gulu)(a.a.648〜676)の予測膜貫通ドメインの前に、この領域がこれらの合成的作製遺伝子から排除されるよう、停止コドンを導入した。欠失も、両構築物中の4a.a.細胞質領域の損失をもたらした。エボラGP(ザイール)配列の最終シーケンシングは、実験室GP配列からの10の多岐アミノ酸を明示した。これを本発明者らの動物試験に用い、部位特異的突然変異誘発により、これらを補正した。XbaI/SalIにより、p1012x/s中にこれらの挿入物をクローン化した。
【0100】
CMV/R−GP(S/G)(ΔTM)/hの構築
エボラGP(スーダン/Gulu)遺伝子から欠失されたコドン修飾膜貫通ドメインを、SalI/KpnIを用いてp1012(x/s)−GP(S/G)(ΔTM)/hから切り出し、SalI/KpnI消化CMV/R/MCSプラスミド中に挿入した。
【0101】
CMV/R GP(Z)(ΔTM)/hの構築
エボラGP(ザイール)遺伝子から欠失されたコドン修飾膜貫通ドメインを、p1012x/s−GP(Z)(dTM)/h SalI/BglII部位から切り出し、CMV/RプラスミドのSalI/BglII部位にクローン化した。
【0102】
CMV/RエボラNPの構築
ザイールサブタイプのエボラ核タンパク質を発現するVRC6400(pVR1012−NP)からのNotI−KpnI断片を切り出し、CMV/RプラスミドのNotI/KpnI部位にクローン化した。
【実施例3】
【0103】
改良型非ウイルス哺乳類発現ベクター
本発明は、現在使用されているベクターよりも高レベルのタンパク質発現を発生させる改良型哺乳類発現ベクターを提供する。
【0104】
最初に、各々異なるエンハンサーを含有する3つの新規のベクターを開発し、試験した。RSVエンハンサー、マウスユビキチンエンハンサー(mUBB)およびCMVエンハンサー(Xu et al. 1998 Nat Med 4: 37-42)を各々、HTLV−1R領域と組合せて(Takebe et al. 1988 Mol Cell Biol 8: 466-472)、別個のベクターを作製した。これら3つのベクターを、CMV翻訳エンハンサーおよびイントロンと組合せたCMVエンハンサーを含有する主鎖(CMVint)(これは現時点で最も有効なベクターである)と比較した場合、CMV/Rを含有するベクターを用いた発現は、CMV/intと比較して5〜10倍増大されることをin vitroデータは示し、そして免疫学的試験は、CMVintと比較して有意に高いCD4およびCD8T細胞応答の誘導を示した。この新規のベクターを用いた場合、in vivoおよびin vitroの両方の応答が顕著に高くなった。他の2つのベクターはいずれも、同程度の結果を生じなかった。
【0105】
本発現ベクターは、それが特異的エンハンサー/プロモーターと組合せて特異的翻訳エンハンサーを用いることにより、DNAワクチンに関する高レベルの発現および免疫原性強化を付与するという点で独特である。ヒトにおけるこれらのワクチンの効力が充分でなく、遺伝子的改良により、この技術をヒトに使用可能にするための重要なプラットホームとして役立ち得るため、これは特に重要である。発現ベクターカセットは、他の遺伝子ベ
ースのワクチンにも同様に、または真核生物発現ベクターからの組換えタンパク質の生産のためにも用いられ得る。本発明は、広範な種々の疾患(例えばHIVおよびその他のウイルス疾患および癌)のための遺伝子ワクチンの製造および遺伝子療法に有用である。
【0106】
図50 修飾CMV発現ベクター、CMV/Rの発現増強
リン酸カルシウムを用いて、0.5ugの対応するプラスミドを有する6ウエル組織培養皿中で、
(A)ベクター単独(レーン1)、CMVint−gp−145(dCFI)(レーン2)、CMV/R−gp145(dCFI)(レーン3)、または
(B)mUBB−gp145(dCFI)(レーン4)、mUBB/R−gp145(dCFI)(レーン5)
を用いて、マウス線維芽細胞3T3細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を収穫し、溶解緩衝液(50mMのHEPES、150mMのNaCl、1%NP−40、ミニ完全プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche))中で溶解した。各試料の総タンパク質10μgを、SDS−PAGEを用いて4〜15%勾配ゲル上で分離し、その後、タンパク質を移して、ウエスタンブロット分析した。ヒトHIV−IgG(1:5000)を一次抗体として用いて、HRP−接合ヤギ抗ヒトIgG(1:5000)を二次抗体として用いた。ECLウエスタンブロット現像系を用いて、膜を現像した。矢印は、HIV Env gp145(ΔCFI)ポリタンパク質に関する特異的帯域を示す。
【0107】
図51 マウスにおける修飾CMV発現ベクター、CMV/Rの免疫原性増強
各群のマウス5匹を、0、2および6週目に、50μgの指定プラスミドDNAで免疫感作した。最後の注射後10日目に、各マウスから脾臓細胞を収穫し、対照ペプチドのプール(15mer)またはHIV Envペプチドのプール(15mer)を用いて6時間刺激した。PE−抗マウスCD3、PerCP−抗マウスCD4、APC−抗マウスCD8、FITC−抗マウスIFN−γおよびFITC−抗マウスTNF−αを含有する抗体のカクテルを用いて、刺激脾臓細胞を染色した。フローサイトメトリーにより試料を分析した。CD3/CD4/IFN−γ/TNF−αおよびCD3/CD8/IFN−γ/TNF−α陽性細胞数を、FloJoソフトウエア(Treestar)を用いて測定した。
【0108】
CMVエンハンサー/プロモーター、R領域(HTVL−1)、CMV IEスプライシング受容体配列
【0109】
【表5】
【0110】
1〜741:CMVエンハンサー/プロモーター
742〜972:HTLV−1 R領域
973〜1095:CMV/IEスプライシング受容体
【0111】
本発明を明確にし、理解させるために、多少詳細に説明してきたが、本発明の真の範囲を逸脱しない限り、形態および詳細における種々の変更が成され得ると当業者は理解するであろう。図面、表および添付物、ならびに上記で言及した特許、出願および出版物は全て、参照により本明細書中に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】VRC6000(pVR1012−GP(Z))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図2】VRC6001(pVR1012x/s−GP(Z))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図3】VRC6002(pVR1012−GP(Z)デルタMUC)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図4】VRC6003(pVR1012−GP(Z)デルタMUCデルタFUR)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図5】VRC6004(pVR1012−GP(Z)デルタGP2)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図6】VRC6005(pVR1012−GP(Z)デルタGP2デルタC末端A)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図7】VRC6006(pVR1012−GP(Z)デルタGP2デルタC末端B)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図8】VRC6007(pVR1012−GP(Z)デルタGP2デルタFUS)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図9】VRC6008(pVR1012−GP(Z)デルタTM)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図10】VRC6052(pVR1012−GP(Z)デルタSGP)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図11】VRC6101(pVR1012x/sエボラGP(R)(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図12】VRC6110(pAdAptエボラGP(R)(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図13】VRC6200(pVR1012−GP(S))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図14】VRC6201(pVR1012x/sエボラGP(S))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図15】VRC6202(pVR1012−GP(S)デルタTM)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図16】VRC6300(pVR1012−GP(IC))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図17】VRC6301(pVR1012x/s−GP(IC))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図18】VRC6302(pVR1012−GP(IC)デルタTM)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図19】VRC6303(pVR1012x/sエボラGP(IC)(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図20】VRC6310(pAdAptエボラGP(IC)(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図21】VRC6351(pVR1012x/s−SGP(IC))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図22】VRC6400(pVR1012−NP)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図23】VRC6401(pVR1012x/s−NP)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図24】VRC6500(pVR1012−VP35)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図25】VRC6600(pAD/CMV−GP(dTM)(Z−CITE−S))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図26】VRC6601(pAdAptエボラGP(S))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図27】VRC6602(pAdAptエボラGP(S)(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図28】VRC6603(pAdAptエボラGP(Z))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図29】VRC6604(pAdAptエボラGP(Z)(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図30】VRC6701(pVR1012−マールブルグ)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図31】VRC6702(pVR1012x/sマールブルグGP(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図32】VRC6710(pAdAptマールブルグGP(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図33】VRC6800(pVR1012x/sラッサGP)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図34】VRC6801(pVR1012x/sラッサGP(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図35】VRC6810(pAdAptラッサGP))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図36】VRC6811(pAdAptラッサGP(dTM))構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図37】CMV/RエボラGP(Z)デルタTM/h(最適化されたコドン)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図38】pVR1012エボラGP(Z,P87666)デルタTM/h(最適化されたコドン)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図39】CMV/RエボラGP(S/Gulu)デルタTM/h(最適化されたコドン)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図40】CMV/RエボラGP(S,Q66798)デルタTM/h(最適化されたコドン)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図41】VRC6802、pVR1012x/sラッサデルタTM/h(最適化されたコドン)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図42】VRC6703、pVR1012x/sマールブルグデルタTM/h(最適化されたコドン)構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図43】CMV/RエボラNP構築物地図を示す(表2のエボラ/マールブルグ/ラッサプラスミドおよび組換えアデノウイルス参照)。
【図44】重要な構造的特徴を示すエボラウイルス(1976年に単離されたザイール種)の、分泌糖タンパク質(SGP)分子および糖タンパク質(GP)分子の概略図である。SGPおよびGPの白色N末端領域は同一(共有)配列に対応するが、一方、黒色C末端は、GPまたはSGP分子に独特の配列を同定する。SGPおよびGPの両方に関する共通シグナラーゼ切断部位、ならびにGP0(GPの非切断形態)(↓)に関するフリン切断部位は、N末端シーケンシングにより確定された。システイン残基(S)、予測N連結グリコシル化部位(Y形突出部)、予測融合ペプチド、七価基反復配列および膜貫通アンカー配列も示されている。エボラウイルスでは、これらの構造の位置は保存され、それらの配列は非常に類似しており、あるいはN連結グリコシル化部位の場合には、GPの中央領域で少なくとも濃縮される。シグナラーゼ切断部位は配列番号48であり、フリン切断部位は配列番号49であり、融合ペプチドは配列番号50である。
【図45】構造GPの概略図である。非確定ジスルフィド結合(クエスチョンマークで示されている)により連結されたGP1−GP2へテロ二量体の予測配向が示される。示されている分子内ジスルフィド結合は、レトロウイルスの糖タンパク質構造との類似性に基づいた従来の予測から得られる。アミノ酸配列のその他の特徴に関しては、図44を参照されたい。
【図46】エボラウイルスの糖タンパク質による細胞変性作用の誘導および細胞変性の分子決定因子のマッピングを示す。
【図47】異なるDNA/アデノウイルス初期免疫−追加免疫の組合せにより生成されるエボラ特異的抗体応答を示す。データは、マウスの各群に関する相互終点希釈の平均および標準偏差を表すエラーバーグラフである。
【図48】カニクイマカクザルのDNA−アデノウイルス免疫感作を示す。 A)DNAおよび/またはアデノウイルス注射、ならびにエボラウイルスのザイールサブタイプの野生型マインガ(Mayinga)株を用いた攻撃誘発に関する免疫感作スケジュール。 B)血清中のエボラ特異的抗体のELISA力価。血清を、12週目(中白棒)および24週での免疫感作の2日前(中黒棒)に採取した。 C)免疫感作後のエボラ分泌糖タンパク質(SGP)に対するリンパ増殖性応答。バーは、各被験体に関する4つの血液試料全ての平均増殖倍数度(fold-proliferation)を示す。誘導のベースラインレベルが実験間で変化したため、標準偏差は示されていない。しかしながら、8匹の動物全てからのPBMCを各時点に関して同一実験内でアッセイし、図に示される平均は任意の単一時点に関して得られた結果の代表である。 D)リンパ球サブセットの枯渇後のバルクPBMC中のエボラSGPに対するリンパ増殖性応答。24週目のPBMCを、指示抗体で被覆されたDynal磁気ビーズで処理して、CD4+またはCD8+細胞サブセットを枯渇させた。枯渇後に残存する細胞を、細胞数入力のために正規化し、実施例に記載したように刺激した。結果を、2つの対照(被験体2および3)サルおよび2つの予防接種(被験体6および7)サルに関して示す。
【図49】DNA−アデノウイルス免疫感作後のエボラウイルスによる致死的攻撃誘発に対するカニクイマカクザルの防御を示す。 A、B)エボラウイルスによる攻撃誘発後のサルにおける肝臓酵素レベル。ピッコロ(Piccolo)(登録商標)分析器(Abaxis, Inc., Sunnyvale, CA)用の一般化学12試薬ディスクを用いた標準推奨手法により、非ヒト霊長類血清中の肝臓酵素(アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)およびアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST))レベルを測定した。4つの免疫感作(中黒記号)および4つの対照(中白記号)サルに関する結果を示す。 C)エボラウイルス感染後のサルにおける血漿ウイルス血症。十字印は対照動物における死亡時を表す(5日目(被験体1)および6日目(被験体2および4))。一の対照動物(被験体3)は、7日目に瀕死状態になったので、安楽死させられた。感染に対して耐性であった一の予防接種動物(被験体5)を、組織の組織学的実験のために10日目に安楽死させた。17日まで、検出可能なウイルス血症を有した動物はなく、観察期間中(6ヶ月)、無ウイルス血症であった。データは、各サルに関する血清の相互終点希釈である。4つの免疫感作(中黒記号)サルおよび4つの対照(中白記号)サルに関する結果を示す。
【図50】修飾CMV発現ベクター、CMV/Rの発現増強を示す。
【図51】マウスにおける修飾CMV発現ベクター、CMV/Rの免疫原性増強を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号52の塩基配列、又は該塩基配列と少なくとも95、96、97、98、99もしくは100%の同一性を有する塩基配列であって発現を指示する塩基配列を含む、発現ベクター。
【請求項2】
前記同一性が少なくとも95%である、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項3】
前記同一性が少なくとも96%である、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項4】
前記同一性が少なくとも97%である、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項5】
前記同一性が少なくとも98%である、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項6】
前記同一性が少なくとも99%である、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項7】
前記同一性が100%である、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項1】
配列番号52の塩基配列、又は該塩基配列と少なくとも95、96、97、98、99もしくは100%の同一性を有する塩基配列であって発現を指示する塩基配列を含む、発現ベクター。
【請求項2】
前記同一性が少なくとも95%である、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項3】
前記同一性が少なくとも96%である、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項4】
前記同一性が少なくとも97%である、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項5】
前記同一性が少なくとも98%である、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項6】
前記同一性が少なくとも99%である、請求項1に記載の発現ベクター。
【請求項7】
前記同一性が100%である、請求項1に記載の発現ベクター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【公開番号】特開2006−81549(P2006−81549A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280131(P2005−280131)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【分割の表示】特願2003−531968(P2003−531968)の分割
【原出願日】平成14年9月24日(2002.9.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(300008988)アメリカ合衆国 (4)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【分割の表示】特願2003−531968(P2003−531968)の分割
【原出願日】平成14年9月24日(2002.9.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(300008988)アメリカ合衆国 (4)
【Fターム(参考)】
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