説明

霧化装置及びその霧化装置を具備した貯蔵装置

【課題】貯蔵空間内に浮遊している細菌など微生物と接触することで、水に微生物等の繁殖し、除菌効果が不十分な状態で、霧化装置によって微生物を含んだミスト水を貯蔵空間内に、貯留中に増殖した微生物が生きたまま放出される可能性があるという課題を有していた。
【解決手段】本発明の冷蔵庫は、液体を溜める貯水部42を有し、貯水部42に間隔を設けて互いに対向した位置にイオン化傾向の異なる第1の電極48aと第2の電極48bを配置し、第1の電極48aと第2の電極48bを短絡する短絡部48cを設けた除菌ユニットを組み込んだ霧化装置を配置したもので、簡易な構成で、電力を使用せず、安全性および持続性が高く、低コストを実現し、内部の水に対する微生物の増殖を抑制および除菌を可能とし、冷蔵庫の貯蔵空間(野菜室)に安全なミストを噴霧することで高湿に維持し、野菜の鮮度を長期に渡って保持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯蔵室空間内に収納した野菜等の生鮮物に霧化した水を供給する超音波式の霧化装置、および前記霧化装置を設置した冷蔵庫等の貯蔵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、家庭用冷蔵庫では、密閉された野菜専用容器を設けて、野菜を適正な温度に冷却するとともに、野菜専用容器内を高湿化し、また、容器内にミスト化した水を噴霧して、野菜等の鮮度を長期に渡って保存するといった冷蔵庫が提案されている。
【0003】
ミストを噴霧する場合の従来の加湿の方法として、超音波霧化器を使用するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図8は、特許文献1に記載された超音波霧化装置を設けた冷蔵庫の野菜室の縦断面図である。また、図9は、その超音波霧化装置の要部を示す拡大斜視図である。
【0005】
図8に示すように、野菜室は冷蔵庫本体1を構成する本体ケース3の下部に配置され、その前面開口は、開閉自在に引き出される引出し扉5により閉止されるようになっている。また、野菜室は仕切り板4によりその上方の冷蔵室(図示せず)と仕切られている。
【0006】
引出し扉5の内面には固定ハンガ6が固定され、この固定ハンガ6に野菜等の食品を収納する野菜ケース2が搭載されている。野菜ケース2の上面開口は、蓋7により封止されるようになっている。また、野菜ケース2の内部には解凍室8が設けられ、この解凍室8には、超音波霧化装置9が備えられている。
【0007】
また、図9に示すように、超音波霧化装置9には、霧の吹出し口10と貯水容器11と湿度センサー12とホース受け13が備えられている。貯水容器11は、ホース受け13により除霜水ホース14(図8)に接続されている。除霜水ホース14には、その一部に除霜水を清浄するための浄化フィルター15が備えられている。
【0008】
以上のように構成された冷蔵庫において、以下その動作について説明する。
【0009】
熱交換冷却器(図示せず)より冷却された冷却空気は、野菜ケース2及び蓋7の周囲を流通する。この冷却空気の流れにより、野菜ケース2が冷却され、内部に収納された食品が冷やされる。また、冷蔵庫運転時に冷却器から発生する除霜水は、除霜水ホース14を通過する時に浄化フィルター15によって浄化されて、超音波霧化装置9の貯水容器11に供給される。
【0010】
次に湿度センサー12によって、庫内湿度が90%以下と検知されると、超音波霧化装置9が加湿を開始し、野菜ケース2内の野菜等を新鮮に保持するための適度な湿度に調湿することができる。
【0011】
一方、湿度センサー12によって庫内湿度が90%以上であると検知された場合、超音波霧化装置9は過度な加湿を停止する。
【0012】
その結果、超音波霧化装置9により、野菜室内をすばやく加湿することができ、野菜室内は常に高湿度となり、野菜等の蒸散作用が抑制され、野菜等の鮮度を保持することができる。
【0013】
また、超音波霧化装置9への水供給方法としては、別の形態で構成されたものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0014】
図10は、特許文献2に記載される超音波霧化装置を設けた冷蔵庫の野菜室周辺の構成を示す縦断面図である。また、図11は超音波霧化装置及びカバーの縦断面図である。
【0015】
図10に示すように、冷蔵庫の本体1は断熱箱体で構成されており、この本体1内の上下方向の中間部分には、引出し式の野菜ケース2を具備した野菜室が設けられている。本体1内の野菜室の上方には、冷蔵室(一部のみ図示)が仕切板16を介して配置されている。野菜室は、冷蔵室よりやや高温で高湿度となるように構成されている。また、本体1内の野菜室の下方には、断熱仕切壁17を介して製氷室(一部のみ図示)と温度切替室(図示しない)が左右に並べて配設され、更にその下方に冷凍室(図示しない)が配設されている。
【0016】
冷蔵空間は、背面に配設された冷蔵用冷却器18とファン(図示しない)を具備したダクトから冷気を循環させることにより、また、冷凍空間は、背面に配設された冷凍用冷却器とファンを具備したダクト(いずれも図示しない)から冷気を循環させることにより、それぞれ設定温度に保持されるように制御される。
【0017】
野菜室内の上部には、野菜ケース2の上面開口部を覆うカバー19が設けられている。このカバー19は、野菜室扉2aにより野菜室の開口部を閉塞した状態のときに、野菜容器2の上面開口部を覆うもので、これにより、野菜容器2内を半密閉状態とするように構成されている。
【0018】
カバー19は、例えばアルミ板等の金属板で構成されており、そして、カバー19の最深部20の下面には、図10、図11に示すように、霧化装置9が配設されている。この霧化装置9は、貯水タンク21と、給水芯22と、超音波振動子23と、ばね24とを備えて構成されている。貯水タンク21は、浅底の円形容器状に形成されている。
【0019】
給水芯22は、棒状のフェルト繊維で形成されており、貯水タンク21の底部の中心部を貫通するように設けられ、その上部が貯水タンク21内の水に浸漬されている。給水芯22の下端面には、超音波振動子23が、ばね24により常に給水芯22に当接するように保持されている。超音波振動子23は、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウム等の圧電素子にニッケルやステンレスの耐食性の電極を形成してなるディスク型振動子で構成されている。
【0020】
そして、超音波振動子23の平滑な表面に生成されたミスト状の水分微粒子が、野菜ケース2内に供給されることにより、野菜ケース2内が高湿度の雰囲気に保持されるように構成されている。
【0021】
以上のように構成された冷蔵庫において、以下その動作について説明する。
【0022】
野菜室、即ち、野菜ケース2及びカバー19の外側は、循環する冷気により冷却されている。そして、野菜容器2及びカバー19の内部には、野菜が収納されていると共に、霧化装置9によりミストが供給されているので、該内部は高湿度の雰囲気となっている。
【0023】
このため、金属板製のカバー19の内面部には、結露が発生する。そして、水滴は、カバー19の傾斜面部に沿って下方へ移動し、最深部20の下面に達した後、霧化装置9の貯水タンク21内に滴下する。
【0024】
これにより、カバー19の内面部に結露した水分は、霧化装置9の貯水タンク13内に導かれて貯留される。
【0025】
また、貯水タンク21内の水は、給水芯22に含浸され、超音波振動子23に付着する。そして、超音波振動子23の振動によりミスト化されて、野菜ケース2内へ供給される。
【0026】
これにより、野菜ケース2内は、高湿度に保持されるようになっている。
【0027】
さらに、除菌ユニットを具備した加湿装置が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平6−257933号公報
【特許文献2】特開2006−162195号公報
【特許文献3】特開2004−93108号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来の構成では、冷却器から発生する除霜水が、除霜水ホース14を通過する時に浄化フィルター15によって浄化されるものの、浄化フィルター15を通過した後、霧化されるまでの経路内で、貯蔵空間内に浮遊している細菌等の微生物と接触することがあり、その結果、霧化される水に微生物等が繁殖する可能性がある。
【0029】
したがって、超音波方式等の霧化装置9によって、微生物を含んだミスト水を貯蔵空間内に散布することがあり、ややもすると貯留中に増殖した微生物が生きたまま放出される可能性があった。
【0030】
また、上記特許文献2に記載された構成では、結露によって生じた水滴が、カバー19の傾斜面部に沿って下方へ移動し、最深部20の下面に達した後、霧化装置9の貯水タンク11内に滴下され、貯留される。したがって、上記特許文献1と同様に、貯蔵空間内に浮遊している細菌等の微生物と接触することで、水に微生物等が繁殖する可能性があり、また、微生物を含んだミスト水を貯蔵空間内に散布する、あるいは、貯留中に増殖した微生物が生きたまま放出される可能性があった。
【0031】
さらに、上記微生物の繁殖対策として水が貯留される、または、通過する部分の構成部材に、抗菌性材料を添加または塗布することにより、微生物の増殖を抑制することも考えられる。
【0032】
しかし、この場合の抗菌効果は、抗菌性材料が添加または塗布された部材表面においてのみ発揮されるものであるため、噴霧される水全体に対しては不十分なものであり、貯留部および霧化装置9の内部を流動する水における微生物の増殖を抑制する効果は低い。
【0033】
また、上記特許文献3に記載の加湿装置は、電極を上下に配置する構成であるため、最低でもその上下間隔分の貯水量が必要であり、かかる構成は、自ずと大型化となるもので、冷蔵庫等の貯蔵装置への組込みには適さない。さらに、高湿化促進に送風手段を必要とし、冷蔵庫等の貯蔵装置に適用すると、該室内が乾燥することもあって、冷蔵庫等の貯蔵装置での適用には何らかの改善策が求められるものである。
【0034】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、貯水部内の水に対する微生物の増殖を抑制および除菌を可能とする霧化装置を、簡易な構成とすることができ、特に、電力を必要とせず、もしくは少量の電力消費とし、また、安全性および持続性が高く、さらに、低コストで除菌あるいは微生物の増殖抑制が実現できるようにするものである。
【0035】
また、上記霧化装置を使用することにより、野菜室等の貯蔵空間に安全なミストを噴霧し、該貯蔵空間を高湿に維持し、野菜等の生鮮食品の鮮度を長期に渡って保持する、あるいは貯蔵空間内を無菌環境もしくはそれに近い環境に維持できる貯蔵装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0036】
上記従来の課題を解決するために本発明の霧化装置は、水を溜める貯水部と、前記貯水部の水を霧化する霧化部と、前記貯水部内の水の除菌あるいは微生物の増殖抑制を行う除菌ユニットを具備し、前記除菌ユニットを、間隔を設けて互いに対向した位置に配置され、かつ前記貯水部内の水に浸漬されたイオン化傾向の異なる第1の電極と第2の電極と、前記第1の電極と第2の電極を短絡する短絡部を具備する構成としたものである。
【0037】
また、本発明の貯蔵装置は、上記霧化装置の霧化作用によって貯蔵室内を、除菌された高湿の環境に維持できるようにしたものである。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、除菌ユニットの組込みにより、長期に亘って霧化する水を衛生的に維持し、また霧化され、飛散する水(ミスト)も除菌あるいは無菌状態であり、その結果、安全性の高い噴霧が行えるものである。
【0039】
さらに、前述の霧化に際し、振動式あるいは超音波式の霧化装置を用いることができ、その結果、簡易な構成とすることができる。また、除菌あるいは微生物の増殖抑制に際し、電力を必要とせず、もしくは少量の電力消費とし、また、安全性および持続性が高く、低コストで実現することができる。
【0040】
また、本発明によれば、上記霧化装置の霧化作用によって貯蔵室内を、除菌された高湿の環境に維持することができ、野菜等の生鮮を含む湿度維持を要する物品の保存を安定して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
請求項1に記載の発明は、水を溜める貯水部と、前記貯水部の水を霧化する霧化部と、前記貯水部内の水の除菌あるいは微生物の増殖抑制を行う除菌ユニットを具備し、前記除菌ユニットを、間隔を設けて互いに対向した位置に配置され、かつ前記貯水部内の水に浸漬されたイオン化傾向の異なる第1の電極と第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極を短絡する短絡部を具備したものである。
【0042】
かかる構成とすることにより、長期に亘って霧化する水を衛生的に維持し、また霧化され、飛散する水(ミスト)も除菌あるいは無菌状態であり、その結果、安全性の高い噴霧が行えるものである。また、霧化する水の除菌あるいは微生物の増殖抑制に際し、簡易な構成で、電力を必要とせず、安全性および持続性が高く、低コストで実現することができる。
【0043】
請求項2に記載の発明は、前記第1の電極および前記第2の電極のそれぞれの一部を、前記貯水部の水内に浸漬したものである。
【0044】
かかる構成とすることにより、前記第1、第2の電極は、溜められた水の水面に対して、垂直で互いに間隔を設けて対向した位置に配置されるため、常時霧化する水(貯留水)に接触することとなり、除菌あるいは微生物の増殖抑制作用を一層確実なものとすることができる。
【0045】
請求項3に記載の発明は、前記貯水部に水を供給する供給部を設け、前記除菌ユニットを、前記供給部から霧化部に至る水経路において、前記供給部と前記霧化部の間に配置したものである。
【0046】
かかる構成とすることにより、霧化部よりミストが噴霧される直前まで除菌作用を発揮することができる。
【0047】
請求項4に記載の発明は、前記短絡部を、前記貯水部の水位面より上方に設けたものである。
【0048】
かかることにより、貯留されている水を介して、第1の電極、第2の電極、短絡部で電気的回路を構成することができ、除菌あるいは微生物の増殖抑制効果を十分に発揮することができる。
【0049】
請求項5に記載の発明は、前記貯水部の一部に、排水口を設けたもので、該排水口によって貯水部に溜められる水量(水位)を制御することができ、その結果、貯水部の水位(水量)を管理することができ、さらに安全に電気的回路を形成することができるとともに、除菌あるいは微生物の増殖抑制効果を十分に発揮することができる。
【0050】
請求項6に記載の発明は、前記除菌ユニットを、前記供給部の下方に設け、前記電極の下端を、前記霧化部より下側に配置したものである。
【0051】
かかることにより、供給された水を、除菌してからミストを発生させる霧化部へ供給することができ、衛生的なミスト(霧)を安定して生成することができる。
【0052】
請求項7に記載の発明は、前記第1の電極と前記第2の電極の間隔を30mm以下としたもので、かかることにより、イオン化傾向の差によってイオン化した電子の流れをよくすることができ、除菌あるいは微生物の増殖抑制効果を向上させることができる。
【0053】
請求項8に記載の発明は、前記霧化部に、超音波振動式を用いたもので、かかることにより、微細なミストを生成することができ、野菜等の生鮮物に好ましい高湿環境を形成することができる。
【0054】
請求項9に記載の発明は、開閉用の蓋もしくは扉を具備し、内部に物品等を収納保存する箱体と、前記箱体内へ水を霧化状態で供給する霧化装置を具備し、前記霧化装置を、請求項1から8のいずれか一項に記載の霧化装置とした貯蔵装置とするものである。
【0055】
したがって、箱体内へは、衛生的なミストが供給されるため、箱体内を衛生的でかつ高湿の環境に維持することができ、雑菌等による収納物品の汚染・損傷を抑制し、安定して保存する期間の長期化をはかることができる。
【0056】
以下、本発明の実施の形態について、貯蔵装置の一例として冷蔵庫を例に、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0057】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の縦断面図である。図2は、本発明の実施の形態1における冷蔵庫の野菜室の縦断面図である。図3は、本発明の実施の形態1における図2のA矢視図である。図4は、本発明の実施の形態1における図3のB−B線による断面図である。図5は、本発明の実施の形態1における図3のC矢視図である。
【0058】
図1、図2において、冷蔵庫31は、断熱性を有する箱体32と、箱体32内を複数の貯蔵室に区画する仕切り33a、33b、33cと、前記各貯蔵室に対応し、断熱性を有する扉34a、34b、34c、34dを具備している。仕切り33a、33b、33cは、必要に応じて断熱材によって構成される。また、仕切り33a、33b、33cによる区画の結果、前記各貯蔵室は、上から冷蔵室35、切替室または製氷室等の多目的室36、野菜室37、冷凍室38の順の配置となっている。
【0059】
野菜室37は、その内部に野菜室容器37aが設置され、その空間の中に食品を収納し、湿度約80%RH以上(食品収納時)、4〜6℃に冷却されている。また、野菜室37の背面には、風路39と該野菜室37を区画するための庫内仕切り40が備えられている。庫内仕切り40には、後述する霧化装置41が設けられている。
【0060】
庫内仕切り40と本体外壁32との間には、前述の風路39が形成されており、該風路39は、冷蔵庫31内に区画された各貯蔵室を冷却するためのもので、圧縮機50、凝縮器(図示せず)、膨張弁やキャピラリチューブ等の減圧装置(図示せず)、冷却器51、およびそれらの構成部品を循環する回路に連結する配管、さらには、該回路内に封入された冷媒等で構成された冷凍サイクルにおいて、冷却器51で生成された冷気を、各貯蔵室に搬送、もしくは各貯蔵室から熱交換された空気を冷却器51へ搬送するために設けられている。ここで、庫内仕切り40には、野菜室37に対応して超音波振動装置を含んだ霧化装置41が組み込まれている。
【0061】
次に、図2、図3、図4、図5により、霧化装置41および該霧化装置41に水を供給する構成について説明する。
【0062】
野菜室37の中には、霧化装置41に水を供給するための水回収部52が設けられている。水回収部52は、野菜室37の上部に配置された仕切り33bの底部に設置され、アルミやステンレス等の高熱伝導性金属もしくは樹脂で構成された冷却板53と、その下部に配置され、冷却板53で結露した液体を受け、結露回収した水を霧化装置41へ供給する供給部(注水口)47を設けた水回収カバー54を具備している。
【0063】
ここで、冷却板53の一面には、例えばニクロム線で構成された加熱ヒータや面状発熱体、PTCヒータ等の加熱手段55が熱伝導可能に設けられており、さらに、冷却板53の温度を検出する温度検知手段56が設けられている。そして、温度検知手段56の検知温度に応じて加熱手段55の通電率を決定することにより、冷却板53の温度制御を行う。したがって、冷却板53の表面温度を所定の範囲に維持することができ、冷却板53への結露状態を安定させ、適量の結露水を生成して霧化装置41に供給することができる。
【0064】
霧化装置41は、供給部47からの水滴を溜める貯水部42と、貯水部42内に一定の水位(水量)を維持するべく、貯水部42底面より所定の高さの位置に設けられた噴霧口49と、貯水部42に溜められた水が該水の表面張力作用を利用して先端に付着するように貯水部42に取付けられた霧化部41aと、霧化部41aへの水の付着を助成する如く、霧化部41a先端近傍に配置されて霧化部41aとの間に表面張力を生成するガイド部43(図3)を具備している。
【0065】
ここで、噴霧口49は、前述の如く貯水部42内に一定量の水を保持するべく、過剰の水を排水する機能をも備えており、本発明の排水口を兼ねるものである。
【0066】
また、霧化装置41には、後述する除菌ユニット48が設けられており、貯水部42内の水の除菌あるいは微生物の増殖抑制を行う。
【0067】
さらに、霧化部41aには、振動部44、第1の電極部45a、圧電素子46、さらに第2の電極部45bを順次配置したランジュバン型の超音波振動装置が採用され、振動部44に付着した水は、主に噴霧口49側へ霧化したミストを噴出するように、その角度等を調整して取付けられている。本実施の形態1においては、前述の霧化部41aの配置方向を軸とした場合、その軸が水面WF(図3)と平行もしくはやや上向き(仰角)となるように設定されている。
【0068】
霧化部41aを構成する振動部44は、切削加工や焼結加工、鋳型等により底面部(圧電素子46取付け側)よりも先端部(霧化面)44Fが、その面積が小さくなるように段差を有するように加工されているため、凸の形状となっており、先端部44Fの面は、図3に示す如く円となっている。換言すると、本実施の形態1における振動部44の形状は、異なる径の円柱を同軸上に配置した形状となっているが、円柱(圧電素子46取付け側)と断面矩形の角柱を同軸上に配置した形状であってもよい。
【0069】
いずれにしても、振動部44の凸形状は、大径部(圧電素子46側)と小径部(先端部)の断面積比が、約1/5以下となるように形成されており、小径部(先端部)の側面形状は、圧電素子46の発振周波数に依存して形成されている。
【0070】
そして、振動部44、第1の電極部45a、圧電素子部46、第2の電極部45bは、その順に配列され、各接続間には、エポキシやシリコン系の接着剤で接着固定され、圧電素子46で発振させる振動が振動部44の先端である霧化面44Fで最大振幅となるように増幅される構成としている。
【0071】
また、振動部44は、熱伝導性の高い材質が好ましく、例えばアルミニウム、チタン、ステンレス等の金属が挙げられる。特に、軽量で、熱伝導性が高く、超音波伝達時における振幅の増幅性能の点から勘案すると、アルミニウムを主成分とする材料を選択することが好ましい。また、長寿命化の点では、ステンレスを主成分とするものを選択することが望ましい。
【0072】
さらに、霧化部41aの取付けについて詳述すると、霧化部41aは、貯水部42の外側からその振動部44の先端が貯水部42の内側に露出するように固定されている。さらに、貯水部42より外側に露出した構成部品(電極、圧電素子、電気接続部等)は、全体にシリコン樹脂やエポキシ樹脂、アクリル樹脂等でコーティングされ、防塵、防水構造が施されている。かかるコーティングについては、特に、超音波伝達時における振幅の増幅性能の点から、柔軟性があるシリコン樹脂を主成分とするものを選択することが好ましい。シリコン樹脂等でコーティングを行うことで、振動部44、第1の電極部45a、圧電素子部46、第2の電極部45bとの結合部への湿気や液体の侵入を防ぎ、接着剤の劣化を防ぐことが可能となり、霧化装置41の長期信頼性が確保できる。
【0073】
図3、図4において、霧化装置41の構成部品である除菌ユニット48は、第1の電極48aと、第2の電極48bと、第1、第2の電極48a、48bを短絡接続する短絡部48cを主要構成としている。第1、第2の電極48a、48bは、イオン化傾向の異なる材料で形成されており、そして、例えばスペーサや位置決め部品等を用いて間隔を設けて互いに対向するように予め固定されている。そして、その状態で貯水部42内へ、水面WFに対して垂直にし、常時貯水部42内の水に所定の部分が浸漬するように配置されている。
【0074】
また、振動部44と電極48aおよび48bは、それぞれ水との接触部において水の表面張力が作用する状態にあるが、電極部48a、48bで形成される表面張力が霧化に影響しないように一定以上の間隔を設けて配置されている。
【0075】
ここで、第1の電極48aと第2の電極48bとの間隔は、30mm以下であれば実用的な除菌性能が発揮され、さらに性能を向上させるためには、500μmから6mmの範囲で配置することが好ましい。また、振動部44と電極48aおよび48bとの間隔は、20mm以上であれば電極部48aおよび48bで形成される表面張力が噴霧に対して影響を及ぼさなくなることが確認できた。
【0076】
一方、20mm以下の間隔で配置するためには、振動部44と電極48aおよび48bの間に、電極部48aおよび48bで形成される表面張力を阻害する壁(図示せず)を設けることも可能である。
【0077】
短絡部48cは、貯水部42内の水と接触しない高さで第1の電極48aと第2の電極48bを短絡接続している。したがって、噴霧口49は、その下辺が短絡部48cより下側となるように設定されており、その水位を維持することで、短絡部48cが液体に接触しないようにしている。
【0078】
本実施の形態1においては、噴霧口49が排水口を兼ねた構成としているが、別途排水口62(図3)を設けることも可能である。かかる場合は、短絡部48cより下側に設けられ、噴霧口49の下辺と排水口62の下辺が略同一高さに設けられていればよい。
【0079】
ここで、各電極の材料としては、例えば第1の電極48aを構成する材料の単極電位を、第2の電極48bを構成する材料の単極電位より高いものとする。(表1)に本発明で使用可能な電極材料と水または水溶液中におけるその単極電位を示す。
【0080】
【表1】

【0081】
第1の電極48aと第2の電極48bの組み合わせとしては、単極電位の異なる材料であればよいが、除菌効果をより確実なものにするためは、第1の電極48aと第2の電極48bの電位差が1.0V程度の組み合わせとすることが望ましい。
【0082】
本実施の形態1においては、安価でかつ入手しやすい材料として、第1の電極48aに銅(Cu)、第2の電極48bに亜鉛(Zn)とする組み合わせを選択した。また、それぞれの電極が必ずしも純金属である必要はなく、合金を用いることも可能である。さらに、絶縁基材に選定金属の蒸着等によるコーティングで形成することも可能である。
【0083】
また、電極の構造および/または形状については、除菌効果を損なわないものであればよい。例えば、第1の電極48aと第2の電極48bを水中に浸漬させると、単極電位の高い第1の電極48aから単極電位の低い第2の電極48bに微生物が移動することから、第1の電極48aは水の流れ性等を考慮して多孔体状、あるいはメッシュ状とすることは可能である。
【0084】
さらに、第2の電極48bについても同様な形状としても良いが、移動してくる微生物を確実に捕らえるためには、板状が好ましい。また、第2の電極48bはイオン化するため、電極が溶出するので、電極の厚みまたは大きさは、寿命を考慮して、第1の電極48aより第2の電極48bを厚く、または大きくすることが好ましい。また、電極の長寿命化の観点から、必要な除菌性能を確保するために短絡部48cにおいて、例えば、電気抵抗体等を用いて、電極の溶出スピードを変えて長寿命化をはかることも可能である。
【0085】
また、供給部47と振動部44の間に除菌ユニット48を設けているので、結露回収された水は、効率よく除菌され、その除菌された液体が振動部44から噴霧される構成となる。したがって、除菌ユニット48は、供給部47から離れた位置に設けられていても、水が貯留され、除菌ユニット48に浸浸していれば、除菌効果を発揮できるので良いが、供給部47の直後で、振動部44の直前に配置されていることが、除菌・微生物の増殖抑制効果がより期待できることに加えて、霧化装置41をコンパクトに構成する点からも好ましい。
【0086】
さらに、貯水部42に抗菌剤を練りこんだ材料や表面にコーティングした材料といった抗菌機能を付加することで、霧化装置41内の貯留水内での微生物の増殖をより抑制することができる。
【0087】
水回収部52から結露回収された水が霧化装置41の上部に設けた供給部47から貯水部42に供給され、所定の水量となると、除菌ユニット48により液中の微生物が除去された水が振動部44側に供給されることになる。その供給は、ガイド部43と振動部44との間に表面張力が作用し、振動部44の先端面44Fに水が付着する。その状態で霧化部41aが通電されると、振動部44の振動によりキャピラリー波が発生し、付着した水が数μmから数十μmに微粒子化されてミスト(霧)となる。
【0088】
霧化された水は、ミストとなって噴霧口49から野菜室37内へ噴霧され、該野菜室37が高湿環境となるように作用する。
【0089】
以上のように構成された冷蔵庫31について、以下その動作を説明する。
【0090】
まず、野菜室37に保存されている野菜や果物の中には、通常、購入帰路時での蒸散あるいは保存中の蒸散によってやや萎れかけた状態のものが含まれ、その保存環境は、通常外気温度の変動や扉開閉の影響、冷凍サイクルの運転状態により変動し、さらに厳しくなる。
【0091】
そこで、霧化装置41を一定間隔、例えば1分間ON、9分間OFFのようなインターバルで動作し、貯水部47内の水を霧化させ、その霧化量を調整しながら野菜室37にミストを供給することにより、野菜室37内は、すばやく加湿された環境となる。
【0092】
例えば、冷蔵庫31の野菜室37を想定したとき、庫内(野菜室37内)の温度はほぼ3℃〜5℃に維持されており、また庫内湿度は80%程度に維持されている。そのときの露点温度は1.8℃以下であり、この温度以下であれば野菜室37内の水蒸気は凝縮し、液体となる。つまり、冷却板53の表面温度を露点温度以下にすることにより、冷却板53表面で該室内の水分が結露し、水滴となる。具体的には、冷却板53に設置されている冷却板温度検知手段56により表面の温度状態を把握し、予め演算された露点温度以下になるように加熱手段である加熱ヒータ55をON/OFF制御し、冷却板53に結露させる。特にここでは図示しないが、庫内(野菜室37内)に庫内温度検知手段や庫内湿度検知手段等があれば、演算により厳密に露点温度をその庫内環境下の変化に応じて割り出すことができる。また、仮に冷却板53の表面で氷や霜となった場合でも、冷却板制御手段(図示せず)において融解温度まで冷却板53の表面温度を上昇させることで、適度に水を回収することができる。
【0093】
すなわち、野菜室37内の空気の水分を冷却板53に結露させ、冷却板53に付着した水滴を成長させる。やがて、水滴は自重により水回収カバー54に滴下し、水回収カバー54を流れて、霧化装置41の上部に設けた供給部47から貯水部42に流入する。このように貯水部42に流入した時点で除菌ユニット48により水中の微生物が物理的に除去される。
【0094】
そして、除菌された水が振動部44側に供給されることにより、ガイド部43と振動部44との間の表面張力作用によって振動部44の先端面44Fに液体が付着し、振動部44の振動によりキャピラリー波が発生し、水は数μmから数十μmに微粒子化され、ミストとなって噴霧される。
【0095】
本実施の形態1においては、ミスト発生させる水を野菜室37内の空気から結露として回収するものとしているので、霧化装置41に供給される水分は、安定しているとはいえない。このような状態で少ない貯留水(低水位の状態)の場合でも、除菌ユニット48の効果を発揮させるために、第1の電極48aと第2の電極48bが貯められた液体の液面に垂直で互いに間隔を設けて対向した位置に配置している。したがって、除菌ユニット48は、常時貯留水に接触し、除菌もしくは微生物の増殖抑制効果を発揮することができる。
【0096】
この状態で高圧・発振回路により高電圧(例えば300〜400V)を所定の周波数(例えば80k〜210kHz)で電極部45a、電極部45bに印加すると、圧電素子46は振動を起こし、供給された水を、霧状にして振動部44の先端面44Fから放出し、噴霧口49を通過したミストが野菜室37内を高湿化する。また、噴霧口49を通過しなかったミストは、分級され、即ち、噴霧口49周辺の壁を伝って貯水部42へ戻り、再び霧化に供される。分級されるミストは、主に振動部44の先端およびそれ以外から発生した粒子径の大きい霧である。
【0097】
ここで、除菌ユニット48の具体的な動作原理は以下の通りである。
【0098】
イオン化傾向の異なる第1の電極48aと第2の電極48bを、霧化装置41に設けた貯水部42の滞留中の水に浸浸させると、第1の電極48aと第2の電極48bとの間に電位差が発生する。
【0099】
このとき、第1の電極48aの一端と第2の電極48bの一端とを水面より上方に設けた短絡部48cで短絡させると、第1の電極48aと第2の電極48bとが帯電し、イオン化傾向の大きい第1の電極48aが−(マイナス)極となり、イオン化傾向の小さい第2の電極48bが+(プラス)極となる。微生物は、細胞組織構造上、電解質中において通常は−(マイナス)に帯電するため、イオン化傾向の小さい第2の電極48bの表面側に移動する。
【0100】
また、微生物が第2の電極48bの表面に移動し、集積されると、第2の電極48b表面から溶出する金属イオンの影響により増殖能力を失う。また、第2の電極48bの表面で電荷を失うという電気的影響により、微生物の細胞壁が破壊される。または、微生物が集積され、各微生物の固体間の距離が極端に縮まって、通常の生育環境が形成できなくなることから、酸素や栄養素の摂取が不十分もしくは不可能となり、微生物は増殖能を失い、不活化する。
【0101】
以上のように、本実施の形態1においては、衛生的なミストの発生が、簡易な構成で、電力を使用せず、安全性および持続性が高い低コストの霧化装置41より得られるものである。
【0102】
また、その霧化装置41を使用して冷蔵庫31の貯蔵空間(野菜室37)に衛生的なミストを噴霧することで、該空間を高湿に維持し、野菜の鮮度を長期に渡って保持することができる。
【0103】
また、本実施の形態1では、除菌ユニット48の第1の電極48aおよび第2の電極48bを、少なくともその一部が貯水部42に貯められた水の水面WFに対して、垂直で互いに間隔を設けて対向した位置となるように配置しているため、常時貯水部42内の水に対して、微生物の増殖抑制もしくは除菌効果を発揮することができる。
【0104】
また、本実施の形態1では、除菌ユニット48を、供給部47と霧化部41aの間の経路内に配置しているため、ミストが噴霧される直前まで十分に除菌作用を発揮することができる。
【0105】
さらに、除菌ユニット48の短絡部48cを、貯水部42の水面WFより上方に設置したため、水を介して第1の電極48a、第2の電極48b、短絡部48cで確実に電気的回路を構成できるので、除菌効果を十分に発揮することができる。
【0106】
また、除菌ユニット48の電極の下端が霧化部41より下側に位置しているので、水を除菌してから霧化部41aへ供給することができるため、衛生的な霧を安定して供給することができる。
【0107】
そして、除菌ユニット48の第1の電極と第2の電極の間隔を30mm以下とすることにより、イオン化傾向の差によってイオン化した電子の流れをよくすることができ、除菌効果を向上させることができる。
【0108】
また、超音波方式の霧化装置41であるため、衛生的、かつ微細なミストを貯蔵空間内に噴霧することができ、その結果、貯蔵空間内をより高湿に維持し易くなる。
【0109】
また、本実施の形態1では、振動部44に表面張力で液体を供給して、霧化させる構成としているので、振動部44に液体を供給するための吸水材等の消耗・変形部材を用いる必要が無く、その結果長期に亘って安定した霧化作用が得られ、また保守点検も長期に亘り部品交換等が伴わない簡易なものとなる。
【0110】
また、噴霧口49による分級作用により、質の高いきめ細かな霧を噴霧することが可能となり、貯蔵物を過剰水分の付着で損傷することも抑制できる。
【0111】
なお、本実施の形態1において、霧化させる水は、水回収部52で結露回収した水としたが、冷蔵庫31内に設けた、例えば、通常の冷蔵庫に設置されている製氷用の水を、該製氷用給水タンクから霧化装置41に分岐させた経路から供給することも可能である。もしくは霧化装置41に供給するための専用タンクを設けてもよい。これにより水が十分に供給されるので、必要なときに常時水を適量に霧化させることができる。さらに、冷蔵庫31の各貯蔵室を冷却するための冷凍サイクルを構成している冷却器51の除霜時に生じる除霜水を利用することも可能である。
【0112】
いずれの給水方法を利用しても、霧化装置41に組み込んだ除菌ユニット48によって、霧化させる水を十分に除菌することができ、微生物を含んだミストを噴霧することが抑制できる。
【0113】
なお、本実施の形態1において、除菌ユニット48にイオン化傾向の差を利用した異種金属で構成するユニットで説明したが、除菌効果を有するユニットとして、構成上多少複雑化し、少量の電力を要する構成となるが、例えば、積極的に電極に通電して水の電気分解を行い、次亜塩素酸を含有する電解水を生成して、除菌するユニットとすることも可能である。
【0114】
また、貯留水に除菌効果を有する亜鉛イオンや銀イオンを積極的に添加するユニットとすることも可能である。
【0115】
さらに、本実施の形態1において、貯水部42に排水口62を設けることで、短絡部48cが液体に接触することを抑えられる構造としているが、水位の上限を検出するための水位センサーを用い、給水ポンプの運転を制御する構成としても良い。
【0116】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2における冷蔵庫の霧化装置の断面図である。ここで、実施の形態1と同一の構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0117】
図6において、霧化装置41は、貯水部42と、霧化部41bと、供給部47、除菌ユニット48を具備した構成である。また、霧化部41bは、実施の形態1と同様に振動部44、電極部(図示せず)、圧電素子(図示せず)を具備したランジュバン型の超音波振動装置で、さらに、貯水部42に貯留している水を、毛細管現象で吸い上げ、振動部44の先端面44Fに供給する給水材60を設けた構成としている。霧化装置41は、霧化噴射の方向が貯水部42に貯められた水面WFと略平行もしくは若干上向きとなるように設置されている。
【0118】
換言すると、実施の形態2の霧化装置41は、実施の形態1で説明した振動部44への水の供給方法が異なるもので、実施の形態1においては、ガイド部43の近接した配置により、先端面44Fへ表面張力作用で水が付着するように構成したが、本実施の形態2においては、吸水性を有する給水材60の吸水作用(毛細管現象による吸水)によって先端面44Fへ水を付着させるように構成している。その他の構成は、実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
【0119】
霧化装置41の構成部品である除菌ユニット48も実施の形態1と同様に構成され、貯水部42において、イオン化傾向の異なる第1の電極48aと第2の電極48bを、例えばスペーサや位置決め部等により間隔を設けて互いに対向して配置し、そして、第1の電極48aと第2の電極48bを水と接触しない貯水部42の上方の位置で短絡させる短絡部48cを設けた構成としている。
【0120】
本実施の形態2の構成は、水経路で鑑みると、供給部47と給水材60の間に除菌ユニット48を設けているので、結露回収された水は、効率よく除菌され、その除菌された水が、給水材60を通して振動部44へ供給され、ここから噴霧される。ここで、給水材60は、棒状のフェルト材、多孔質材料、細管で構成されたもの等、毛細管現象を利用した吸水性を有するものである。
【0121】
また、供給部47が除菌ユニット48から離れた位置に設けられていても、貯水部42に水が貯留され、除菌ユニット48(電極48a、48b)の少なくとも一部がその水に浸浸していれば、除菌効果を発揮することができ、特に、供給部47の直後で、振動部44の直前に配置されていることが、除菌・微生物の増殖抑制効果および霧化装置41のコンパクト化からも好ましい。
【0122】
さらに、霧(ミスト)が通過する噴霧口49は、実施の形態1と同様に振動部44の先端面44F(霧化面)で霧化された水が噴射される方向に設けられており、その形状を矩形としている。かかる形状は、単に水を所定量溜める壁として作用するもので、実施の形態1と異なり、水面WFの高さを所定の高さに精度よく維持する機能を有していないため、円形さらには任意の形状とすることができる。
【0123】
以上のように構成された霧化装置41を具備する冷蔵庫31について、以下その動作を説明する。なお、この動作については、図2を用いて説明する。
【0124】
野菜室37内の水蒸気(水分)は、冷却板53に結露し、時間の経過とともに成長して水滴となる。そして、自重により水回収カバー54に滴下し、水回収カバー54を流れて供給部47から貯水部42に給水される。このとき貯水部42の水に生息する微生物は、除菌ユニット48により物理的に除去される。そして、除菌された水は、給水材60を伝って振動部44の先端面44Fに付着する。振動部44では、振動素子の振動によりキャピラリー波が発生し、これにより水は数μmから数十μmの粒子に微粒子化され、霧(ミスト)となって噴霧口49から噴射される。
【0125】
前述の霧化を詳述すると、振動部44の先端面44Fに水が付着した状態で、高圧・発振回路(図示せず)により高電圧(例えば300〜400V)を所定の周波数(例えば80k〜210kHz)で電極部に印加すると、圧電素子(図示せず)は振動を起こし、先端面44Fに付着した水を霧状にして振動部44の先端面から放出し、噴霧口49を通過させて、貯蔵空間を高湿化する。
【0126】
また、噴霧口49を通過する際に、粒子径の大きい霧、もしくは所定(略前方)以外の方向へ飛散する霧は、噴霧口49の周縁によって遮られ、所謂分級作用によって野菜室37内には噴射されず、貯水部42へ戻されて再び霧化に利用される。
【0127】
上述の霧化作用は、結露回収された水が霧化装置41の上部に設けた供給部47から貯水部42に給水され、除菌ユニット48により液中の微生物が物理的に除去された水が振動部44側に供給されるもので、従来課題としていた微生物等による給水材60の目詰まり、および、これに起因した寿命の低下と、頻繁な給水材60の交換が解決でき、給水材60の寿命を長くし、交換頻度を少なくして保守・点検の簡素化をはかることができる。
【0128】
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3における冷蔵庫の霧化装置の断面図である。ここで、実施の形態1および2と同一の構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0129】
図7において、霧化装置41は、貯水部42、霧化部である圧電素子61、供給部47、除菌ユニット48を具備した構成である。また、前記霧化部は、ディスク型の超音波振動装置を用いている。霧化装置41は、その片面を直接または間接的に貯水部42の底面と接触するように取付けており、その結果、霧化の方向は、貯水部42の水面WFに対して略垂直方向となる。
【0130】
実施の形態2で説明したランジュバン型の超音波振動装置を用いた霧化装置41は、霧化の方向が貯水部42の水面WFと略平行方向に噴霧される構成であるが、実施の形態3のディスク型超音波振動装置を用いた霧化装置41は、霧化の方向が貯水部42の水面WFに対して一旦は略垂直方向に噴霧される。その他の構成は、実施の形態1と同じであるので説明を省略する。
【0131】
図7において、霧化装置41の構成部品である除菌ユニット48も実施の形態1と同様に構成され、貯水部42において、イオン化傾向の異なる第1の電極48aと第2の電極48bを、例えばスペーサや位置決め部等により間隔を設けて互いに対向して配置し、そして、第1の電極48aと第2の電極48bを水と接触しない貯水部42の上方の位置で短絡させる短絡部48cを設けた構成としている。
【0132】
本実施の形態3の構成においても、水経路で鑑みると、供給部47と霧化装置41の間に除菌ユニット48を設けているので、水回収部52の供給部47から貯水部42に結露回収された水は効率よく除菌され、その除菌された水は、貯水部42の底面に設置された霧化装置41の動作によりミスト化される。即ち、圧電素子61の振動が貯留水に伝達され、その振動によって水面WFに液柱を形成し、水面WFから液柱が突出したところで液柱の一部が数μmから数十μmに微粒子化され、ミストとして貯蔵室内に噴霧される。
【0133】
ここで、除菌ユニット48は、液体供給部47から離れた位置に設けられているが、電極48a、48bの少なくとも一部が貯水部42に貯留された水に浸浸していれば、除菌効果を発揮することができる。除菌ユニット48は、供給部47の直後で、振動部44の直前に配置されていることが、除菌・微生物の増殖抑制効果および霧化装置41のコンパクト化からも好ましい。
【0134】
上記霧化装置41を具備した冷蔵庫31についても、供給部47と霧化装置41の間に除菌ユニット48を設けているので、水回収部52から貯水部42に結露回収された水が効率よく除菌(微生物の増殖抑制)され、その除菌された水は、貯水部42の底面に設置された霧化装置41の片面からの振動伝達により、水面WFに液柱を形成し、水面WFから液柱が突出したところで数μmから数十μmの微粒子となり、ミストとして野菜室37内に噴霧される。
【0135】
したがって、本実施の形態3においても、野菜室37を衛生的に保つことができる。
【産業上の利用可能性】
【0136】
以上のように、本発明にかかる霧化装置は、噴霧する水(液体)を衛生的なものとしているため、除菌室の加湿装置、もしくは家庭用または業務用冷蔵庫等の貯蔵装置に実施できることはもちろん、野菜等の生鮮食品を対象とする低温流通等の用途、さらにはインキュベータ等の如く貯蔵室内を一定の湿度環境に維持する医療用機器等の用途にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0137】
【図1】本発明の実施の形態1における冷蔵庫の縦断面図
【図2】同実施の形態1における冷蔵庫の野菜室の縦断面図
【図3】同実施の形態1における図2のA矢視図
【図4】同実施の形態1における図3のB−B線による断面図
【図5】同実施の形態1における図3のC矢視図
【図6】本発明の実施の形態2における冷蔵庫の霧化装置の断面図
【図7】本発明の実施の形態3における冷蔵庫の霧化装置の断面図
【図8】従来例を示す超音波霧化装置を設けた冷蔵庫の野菜室の縦断面図
【図9】従来例を示す超音波霧化装置の要部を示す拡大斜視図
【図10】従来例を示す超音波霧化装置を設けた冷蔵庫の野菜室周辺の構成を示す縦断面図
【図11】従来例を示す超音波霧化装置およびカバーの縦断面図
【符号の説明】
【0138】
31 冷蔵庫
41 霧化装置
41a 霧化部
41b 霧化部
42 貯水部
44 振動部
47 供給部
48 除菌ユニット
48a 第1の電極
48b 第2の電極
48c 短絡部
49 噴霧口(排水口)
62 排水口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を溜める貯水部と、前記貯水部の水を霧化する霧化部と、前記貯水部内の水の除菌もしくは微生物の増殖抑制を行う除菌ユニットを具備し、前記除菌ユニットを、間隔を設けて互いに対向した位置に配置され、かつ前記貯水部内の水に浸漬されたイオン化傾向の異なる第1の電極と第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極を短絡する短絡部を具備した霧化装置。
【請求項2】
前記第1の電極および前記第2の電極のそれぞれの一部を、前記貯水部の水内に浸漬した霧化装置。
【請求項3】
前記貯水部に水を供給する供給部を設け、前記除菌ユニットを、前記供給部から霧化部に至る水経路において、前記供給部と前記霧化部の間に配置した請求項1または2に記載の霧化装置。
【請求項4】
前記短絡部を、前記貯水部の水位面より上方に設けた請求項1から3のいずれか一項に記載の霧化装置。
【請求項5】
前記貯水部の一部に、排水口を設けた請求項1から4のいずれか一項に記載の霧化装置。
【請求項6】
前記除菌ユニットを、前記供給部の下方に設け、前記電極の下端を、前記霧化部より下側に配置した請求項1から5のいずれか一項に記載の霧化装置。
【請求項7】
前記第1の電極と前記第2の電極の間隔を30mm以下とした請求項1から6のいずれか一項に記載の霧化装置。
【請求項8】
前記霧化部に、超音波振動式を用いた請求項1から7のいずれか一項に記載の霧化装置。
【請求項9】
開閉用の蓋もしくは扉を具備し、内部に物品等を収納保存する箱体と、前記箱体内へ水を霧化状態で供給する霧化装置を具備し、前記霧化装置を、請求項1から8のいずれか一項に記載の霧化装置とした貯蔵装置。

【図1】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−637(P2009−637A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−164621(P2007−164621)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】