露光された熱転写集合体の分離方法
放射線誘起熱転写プロセス中でドナー要素を使用する方法において、ドナー要素およびレシーバー要素を含む集合体が提供され、ここでドナー要素は、支持層と、一方の面が支持層に隣接し他方の面がレシーバー要素に隣接する転写層とを有している。集合体を放射線に像様露光して転写層の一部分がレシーバー要素に転写された後、ドナー要素をレシーバー要素から分離する前に支持層とレシーバー要素の間の相対的移動が提供される。利点としては、エッジ真直度の改善、画像幅の予測可能性、熱物質転写の改善およびカラーフィルタの改善が含まれる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線誘起熱転写プロセス中でドナー要素を使用する方法において、ドナー要素およびレシーバー要素を含む集合体が提供されている方法に関する。ドナー要素は、支持層と、一方の面が支持層に隣接し、かつ他方の面がレシーバー要素に隣接する転写層とを有している。集合体はその後、放射線に像様露光され、それにより転写層の一部分がレシーバー要素に転写される。
【背景技術】
【0002】
画像形成方法は、露光された部域と画像形成されていない部域の間の意図された場所で鮮明な境界を伴って画像を生成する場合に最も望ましい。放射線誘起熱転写画像形成、特にレーザー誘起熱転写画像形成においては、画像形成された部域と画像形成されていない部域の間の境界または分離は、ドナー要素とレシーバー要素の画像形成可能な集合体の、画像形成と分離の2つのステップの進行中かまたは2つのステップ間に生成され得る。
【0003】
PatelらによるImation Corp.に対する米国特許第5,935,758号明細書「Laser induced film transfer system」は、例えば真空ホールドダウンかあるいは米国特許第5,475,418号明細書の中で記述された円筒形レンズ装置を用いて、2つの要素を密に対面接触した状態に集合させることおよび適切なレーザーにより走査することが関与する吸収体を含むドナーからレセプタへと材料を像様に転写するための手順について開示している。アセンブリは、用いられる吸収体に応じて、一般的に用いられるレーザーのいずれかによって画像形成され得るが、ダイオードレーザーおよびYAGレーザーなどの近赤外光放射レーザーによるアドレスが好ましい。
【0004】
公知の走査用装置例えば、フラットベッドスキャナ、外部ドラムスキャナまたは内部ドラムスキャナのいずれを使用してもよい。これらの装置においては、画像形成すべきアセンブリは、ドラムまたはベッドに、例えば真空ホールドダウンなどによりしっかりと固定されており、レーザービームはドナーレセプタアセンブリのIR吸収層上の1つのスポット例えば直径約20マイクロメートルのスポットに集束される。このスポットは、画像形成させるべき部域全体にわたって走査され、その間に電子的に記憶された画像情報に応じてレーザー出力が変調させられる。2つ以上のレーザーが、同時にドナーレセプタアセンブリの異なる部域を走査してよく、必要に応じて2つ以上のレーザーの出力は光学的に単一のより高い強度のスポットへと組合わされてよい。レーザーアドレスは、通常はドナー側に由来するが、レセプタがレーザー放射に対し透明である場合、レセプタ側に由来してもよい。
【0005】
ドナーとレセプタを剥離すると、レセプタ上に単色画像が現出する。このプロセスを異なる色のドナーシートを用いて1回以上反復して、共通のレセプタ上に多色画像を構築してもよい。
【0006】
Polaroid Corporationに対するErnest W.Ellisによる米国特許第5,633,113号明細書「MASS TRANSFER IMAGING MEDIA AND METHODS OF MAKING AND USING THE SAME」では、ドナーおよびレセプタ要素を収容するための開口端部分を有するポリエステルエンクロージャまたはパウチを含む画像形成アセンブリが開示されている。エンクロージャにドナーおよびレセプタ要素が装填された後、エンクロージャを空にしてドナーおよびレセプタ要素を強制的に互いに接触させるために真空チャンバ内でその両側で真空が吸引される。エンクロージャが真空下で画像形成され開放されてから、真空圧縮により一緒に保持されていたドナーおよびレセプタ要素は、容易に取外し分離することができる。その後、レセプタを後硬化などにより加工することができる。
【0007】
ドナーおよびレセプタ要素を1つの一体ユニットの形で接合することを目的とし、ドナー要素とレセプタ要素の間に真空が維持されている別のアプローチは、真空チャンバ内で両方を集合させることであり、ここでこれらは互いに重複する対面関係に置かれる。真空が加えられた後、ドナー要素とレセプタ要素の間の界面に存在するあらゆる空気が排出された状態となり、加圧装置の適用などによって、互いに接触させられている噛合面の一方または両方の上の接着層などの適切な手段によって、ドナー要素とレセプタ要素の間に存在する真空を維持するべく境界エッジを封止することができる。ドナー要素の画像形成後、ドナー/レセプタ要素を、例えばその間の結合を破断することなどによって分離することが可能である。
【0008】
本件特許出願人に対するCasparらによる米国特許第6,294,308号明細書「THERMAL IMAGING PROCESS AND PRODUCTS USING IMAGE RIGIDIFICATION」は、熱画像形成可能な層を含むドナー要素とレシーバー要素とのレーザー加工可能な集合体を像様露光し、それにより熱画像形成可能な層の露光された部域が1つのパターンでレシーバー要素上に転写されることを開示している。レーザービームとレーザー加工可能な集合体は、互いに対し常に動いており、それにより集合体の各々の細かい部域は必要に応じてレーザーにより個別にアドレスされることになる。これは一般に、回転可能なドラム上にレーザー加工可能な集合体を取付けることによって達成される。フラットベッドレコーダを使用することもできる。
【0009】
プロセス中の次のステップは、レシーバー要素からドナー要素を分離することである。通常これは、単に2つの要素を剥離することによって行なわれる。一般にこれにはごくわずかな剥離力しか必要でなく、これは単にドナー支持体をレシーバー要素から分離することによって達成される。これは、任意の従来の分離技術を用いて行なうことができ、手作業であってもまたは作業員の介入の無い自動式であってもよい。
【0010】
分離の結果、熱画像形成可能な層の転写された露光された部域を含むレーザーによって生成された画像が、レシーバー要素上に現出することになる。
【0011】
Jon Casparによる米国特許出願公開第20050158652号明細書「THERMAL IMAGING PROCESS AND PRODUCTS MADE THEREFROM」は、ほぼ不動のレシーバー要素からドナー要素を剥離することによって、画像形成されたレーザー加工可能な集合体を、使用されたドナー要素とレシーバー要素へと分離する具体的方法を開示している。剥離は、手作業かまたはガイド上でドナー要素を操作することによって行なうことができる。使用可能な具体的ガイドは、ロッドである。あらゆる剥離方向を使用することができる。
【0012】
富士写真フィルム株式会社に対する小口らによる米国特許第5,578,824号明細書は、ラミネート加工手段によって加えられる熱および/または圧力の下で均一の接着力で受像材料に接着された薄い剥離可能なフィルムを担持する支持体を有するドナーシートについて開示している。熱エネルギーを像様に(例えばレーザーにより)適用し、ドナーシート内の薄いフィルムの結合力を像様に低下させ、それによりドナーシート内の薄いフィルムと支持体の間の結合力がドナーシート内の薄いフィルムと受像材料の間の接着力より小さくなるようにする。ドナーシートは、剥離/転写手段によって、不均等な剥離をひき起こすことなく受像材料から剥離され、拘束力が像様に削減された薄いフィルムは、ドナーシートから受像材料上に移され、転写により薄いフィルムの画像を形成する。
【0013】
受像材料は、剥離ローラーなどの加圧手段によって加えられる圧力により、ドナーシートから剥離され得、それにより薄いフィルムの非加熱部域は、不均等さをひき起こすことなく受像材料から剥離され、同時に薄いフィルムの加熱された部域は受像材料上に転写され、それによりこの受像材料上に画像を形成させる。
【0014】
加熱モードにおいて露光ヘッドに対する露光の時点で形成された潜像を有するドナーシートは、1つの機構によって受像材料から剥離され、それと同時に、ドナーシート上の潜像はこの機構によってそれが剥離されるにつれて現像され、受像材料上に転写される。剥離機構は、剥離ローラー、この剥離ローラーと接触する2つの分割ローラー、ローラーのセグメント間そして剥離ローラーに沿って各々備えられている櫛刃ガイドプレート、およびこれらの部品がユニタリアセンブリとして内部に取付けられているブラケット、を含み得る。剥離ローラーはアームによって軸方向に支持され、受像材料を保持するドラムにそれが接近したりそこから離れたりできるような形で支点を中心として旋回する。剥離ローラーには同様に、受像材料とドナーシートとの積層品がドラム上で運ばれるにつれてこれを押圧するための加圧手段が、アームを介して備えられている。
【0015】
加熱モードにおける露光に起因する熱エネルギーが像様に適用される結果としての薄層の結合力の減少に応答して、上に潜像が形成されているドナーシートは、それが結合されている受像材料と積層品を形成する。アームが支点を中心として旋回してブラケットが積層品に近づき櫛刃ガイドプレートが受像材料内の受像層とドナーシート内の薄層の間に挿入された時点で、同時に積層品は、ドナーシートに押しつけられる剥離ローラーによって圧縮される。ドナーシートおよび受像材料のいずれか一方の接合長さを他方の接合長と異なるものにしておけば、櫛刃ガイドプレートを2枚のシート間に容易に挿入することができる。その後、ドラムを回転させる一方で、剥離ローラー、分割ローラーも同時に回転させ、それによりドナーシートの先端が、剥離ローラーと分割ローラーの各々の間に保持すべき櫛刃ガイドプレートに沿って移動する。これによりドナーシートは、剥離ローラーと分割ローラーの各々との間での輸送のために保持されている間剥離ローラーで圧縮され、受像材料から剥離される。それによりドナーシートを、剥離ローラーで圧縮されている部域において一定速度で剥離することができる。その結果、剥離力を一定のレベルで維持することができ、「スティックスリップ」などの振動や剥離ムラも発生しない。さらなる利点としては、受像材料上に及ぼされる剥離力が剥離作業中に変動することはなく、したがって、受像材料はドラム上の固定位置でズレを生じることは全くなく、見当精度が低下する可能性もない。それにより画質、解像度およびコントラストが高く、なおかつ剥離ムラおよび見当合ズレが無い単色ハーフトーン画像を生成することができる。
【0016】
Minnesota Mining and Manufacturing Companyに対するJeffrey C.Changによる米国特許第5,695,907号明細書「LASER ADDRESSABLE THERMAL TRANSFER IMAGING ELEMENT AND METHOD」では、(i)(a)光−熱変換層;(b)カラー転写層;および(c)赤外線吸収体および熱可塑性材料を含む熱転写可能な赤外線感応性接着剤トップコートの順で各層が被着されている基板を含む熱カラー転写要素、および(ii)熱転写要素の接着剤トップコートと密に接触しているレセプタ、を含む画像形成系が開示されている。
【0017】
レーザー誘起熱転写方法を用いて平行なただし別々のライン画像を生成するために系をレーザー画像形成し、熱カラー転写要素からレセプタを分離した後、レセプタ上に結果として得られた画像は、倍率200倍のミクロ検査の下で、105ミクロンのライン幅そして画像形成されたラインのいずれの側にもフラグメント化したパターンの兆候が全く無い鮮明なラインエッジを有していた。
【0018】
「Laser induced thermal imaging (LITI) apparatus」という名称のTae−Min Kangらによる米国特許出願公開第2006/0081332号明細書は、チャック上に下部基板を配置するステップ;転写層が下部基板に面するような形で少なくとも光−熱変換(LTHC)層および転写層を含む上部層を配置するステップ;上部基板より上の空間内の空気圧を上部基板より下の空気内の空気圧よりも高い圧力まで上昇させることにより上部基板を下部基板に密に接着させるステップ;そして下部基板に接着させられた上部基板上にレーザービームを照射することによって転写層の少なくとも一部分を下部基板上へ転写させるステップを含む、レーザー誘起熱画像形成(LITI)装置、ラミネータ、およびこの装置を用いたLITI方法について開示している。関連する方法はさらに、下部構造のまわりに配置した少なくとも1つの第2の下部換気孔をチャックに備えるステップ、および転写層を転写した後に第2の下部換気孔を通して圧縮ガスを射出することにより下部基板から上部基板を離脱させるステップを含む。
【0019】
Samsung SDIに対するJang−hyuk Kwonらによる米国特許第6,242,140号明細書(2001年6月5日)は、均等なエネルギー分布をもつレーザービームを用いた熱転写によるカラーフィルタの製造方法について開示している。この方法には、フォトリソグラフィによる基板上の黒色マトリクスパターンの形成が含まれている。
【0020】
「Method of fabricating color filter substrate for liquid crystal display device」という名称のLG Philips LCD Co.,Ltd.,に譲渡されたChangらによる米国特許第6,682,862号明細書は、液晶ディスプレー装置のためのカラーフィルタ基板の製造方法を開示している。熱物質転写方法は、基板上に黒色マトリクスを形成するステップ;カラー転写フィルムを基板に接着するステップ;カラー転写フィルム上にレーザーヘッドを配置するステップ;カラー転写フィルムを反復的に走査するステップ;およびカラーフィルタパターンが、黒色マトリクスの内側に画定されたカラーフィルタパターン領域内にとどまるような形でカラー転写フィルムを除去するステップを含む。反復される走査の各々一回についてのエンドラインは、黒色マトリクス上に位置設定される。
【0021】
レーザー誘起物質転写プロセスは、サーマルプリントヘッドプロセスに比べて加熱時間が非常に短いという利点を有する。しかしながら、レーザー誘起システム内で生成される結果としての画像は、フラグメント化されているか、解像が不完全であるか、予測不能な幅を有する可能性があり、また粗いラインエッジを有する可能性がある。したがって、特殊なドナー要素もレシーバー要素も必要とせず、画質、解像度またはラインエッジ忠実度を犠牲にすることなく、放射線(特にレーザー)アドレス可能なシステムの速度および効率を生かす熱転写システムに対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、画像を形成するため放射線誘起熱転写プロセス中でドナー要素を使用する方法において、ドナー要素およびレシーバー要素の集合体を提供するステップを含み、ここでドナー要素は、支持層と、一方の面が支持層に隣接し、他方の面がレシーバー要素に隣接する転写層を含んでいる方法に関する。集合体は放射線に像様露光され、それにより転写層の一部分がレシーバー要素に転写されて転写された層が形成される。ドナー要素は次にレシーバー要素から分離され、このようにしてレシーバー要素上に画像を現出させるが、同様に支持層とレシーバー要素の間に相対的移動を提供することにより、露光ステップの後そして分離ステップの前に集合体を処理する中間ステップが実施される。
【0023】
相対的移動は、露光されたドナー要素上に残っている転写層とレシーバー要素に転写された転写層の間のコネクタに影響を及ぼし、それにより(使用された)ドナー要素と画像形成されたレシーバー要素が分離された時点でコネクタは主として一方のまたは他方の要素上にとどまり、フラグメント化されないようになっていると思われる。
【0024】
好ましい移動は、レシーバー要素表面とドナー要素表面の間のせん断タイプの移動である。処理移動を付与するためには、ローラー、制動ローラーまたは従動ローラーを使用すると有利である。
【0025】
本発明は同様に、使用されたドナー要素、画像形成されたレシーバー要素、カラーフィルタおよびプルーフなどの有用な物を作ることを目的としたこれらの方法および関係する方法の使用をも含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】真空テーブル上のレシーバー要素の立面図である。レシーバーは、画素を画定するカラーフィルタ黒色マトリクスを担持するガラスシートであり、これらの画素の3分の1は青色カラーフィルタ転写層により被覆されており、その3分の1は赤色カラーフィルタ転写層により被覆されている。
【図2】図1のレシーバー要素の列を通る横断面図である。
【図3】図1および図2のレシーバー要素と緑色カラーフィルタ熱転写層を有するドナー要素の集合体の一部分の横断面図である。
【図4】黒色マトリクスの一部分の上および黒色マトリクスにより画定された画素の上のレシーバー要素上に緑色カラーフィルタ転写層を提供するべく、画像形成すべき部域に隣接して青色カラーフィルタ転写層によって一部被覆されている黒色マトリクスの一部分をとり囲む領域を示す、図3の横断面図である。
【図5A】露光後の図4の集合体の横断面図である。
【図5B】露光後の図4の集合体の横断面図である。
【図6A】図5Bの集合体の考えられる分離モードの横断面図である。
【図6B】図5Bの集合体の考えられる分離モードの横断面図である。
【図6C】図5Bの集合体の考えられる分離モードの横断面図である。
【図6D】図5Bの集合体の考えられる分離モードの横断面図である。
【図6E】図5Bの集合体の考えられる分離モードの横断面図である。
【図6F】図5Bの集合体の考えられる分離モードの横断面図である。
【図7】緑色画像形成されたレシーバー要素から使用された緑色転写層ドナー要素を剥離させる立面図である。
【図8A】分離中の集合体および処理中の集合体の横断面図である。
【図8B】分離中の集合体および処理中の集合体の横断面図である。
【図8C】分離中の集合体および処理中の集合体の横断面図である。
【図9】粘着テープの適用および除去による、移動を付与できる物体による、およびローラーによる画像形成された集合体の処理を示す斜視図である。
【図10】集合体と接触したローラーの横断面図である。
【図11】1つが平滑なエッジを伴いもう1つが粗いエッジを伴う2種のカラーフィルタストライプが適用された場合の製造中の3色カラーフィルタの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の発明においては、放射線誘起熱転写プロセスにおいて用いられる集合体を露光し分離する周知のステップに対し、新しい処理ステップが付加されている。この処理ステップは、公知の分離方法中に発生する破断に比べて、未露光転写層と露光された転写層の間の転写層のコネクタの破断を規則化するように作用する。一実施形態においては、露光された転写層の近くでコネクタを破断することにより真直ぐな画像エッジおよび予測可能な画像幅が達成される。
【0028】
本発明の一実施形態においては、放射線に対する集合体の露光に起因するレシーバー要素上の転写された層および露光後に集合体の支持層と共にドナー要素上に残っている層の間に位置設定され、かつこれら両方に連結されている転写層材料からなるコネクタは、レシーバー要素からドナー要素を分離した時点でコネクタの大部分の体積がドナー要素と共に保持されるような形で、レシーバー要素上の転写された層に近い場所で、破断、フラグメント化、分割、せん断、分離またはその他の形で改変される。
【0029】
一実施形態においては、この処理は、支持層をレシーバー要素を基準に平行に移動させることによって実施される。一実施形態においては、この処理は、支持層をレシーバー要素から離れる方向に移動させることによって実施される。一実施形態においては、この処理は、支持層をレシーバー要素に向かって移動させることによって実施される。一実施形態では、処理ステップは、支持層に対し実質的に平行な方向に沿ってレシーバー要素との関係における第1の位置から第2の位置まで第1の距離だけ支持層の位置を移動させ、それに続いて、第1の位置から第1の距離よりも短い第2の距離のところにある第3の位置まで支持層を復帰させる移動を行なうことによって実施される。別の実施形態において、処理ステップは、レシーバー要素を基準に第1の位置から第2の位置までレシーバー要素から離れる方向に沿って支持層の位置を移動させ、それに続いて、レシーバー要素を基準に第2の位置から第3の位置までレシーバー要素に向かう方向に沿って支持層の位置を移動させることによって実施される。別の実施形態において、処理ステップは、レシーバー要素を基準に第1の位置から第2の位置までレシーバー要素に向かう方向に沿って支持層の位置を移動させ、それに続いて、レシーバー要素を基準に第2の位置から第3の位置までレシーバー要素から離れる方向に沿って支持層の位置を移動させることによって実施される。
【0030】
複数のステップからなる以下の方法の一実施形態においては、ステップが個別で独立したものであることを理解すべきである。ステップ間の時間は、分単位以上であり得るが、便宜上、典型的には秒単位以下、例えば少なくとも20、10、5、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01または0.001秒である。個別の場所における各ステップについての経過時間はかなり短いものであり得る。例えば、秒速2メートルで移動する10ミクロンのビーム長をもつレーザーでの照射は、露光ステップにおいて一点0.000005秒のレーザー照射時間を与える。各場所で一度に露光を達成するため一列のレーザーなどによって集合体全体にわたって各ステップを一度に実行することができ、あるいは、露光のための移動するレーザーヘッドまたは処理または分離のためのローラーなどによって集合体の一部分ずつを、各ステップ毎に時間差で実施することもできる。各ステップの持続時間は長い場合も短い場合もある。例えば、ある分離手段(例えば、ドナー要素を巻き上げてそれをレシーバー要素から除去する、秒速1メートルで移動でき、かつ1cmの長さにわたり集合体と接触し得るローラー)では、接触時間は、分離ステップの開始と所与の場所での分離ステップの完了の間に約0.01秒という分離時間を所与の点において達成することができる。一方、集合体全体をおよそ1平方メートル分離するためには、約1秒かかると思われる。
【0031】
ドナー要素(少なくとも支持層および転写層を含む)とレシーバー要素の集合体の露光による熱転写画像形成は、転写層のコネクタを形成することができる。コネクタは、ドナー要素に結びつけられそれと接触している未露光の転写層とレシーバー要素に結びつけられそれと接触している露光された転写層との間に広がっている。転写層のコネクタ部分は相対する表面を有し、これらの面はいずれもドナー要素表面のいずれともレシーバー要素表面のいずれとも直接隣接していない。
【0032】
レシーバー要素に最も近いコネクタ表面は、以前は、支持層から離れる方向で転写層の最も外側の層であったが、以下これをレシーバー側表面と呼ぶものとする。レシーバー要素から最も遠いコネクタ表面は、(露光するまたは画像形成する)放射線に対する露光の結果ドナー要素から転写層が分離されて形成された表面であり、以下これをドナー側表面と呼ぶものとする。
【0033】
コネクタのドナー側表面は、ドナー要素上の転写層の未転写部分に面することがあり得、そうでなければドナー要素は、露光ステップによる完全な転写のために、ドナー要素のその場所に存在する転写層を全く有していないこともあり得る。この状況は、転写層の厚み全体がドナー要素から完全に分離されてしまっている(接着タイプの欠陥)転写層から形成され得る転写層、あるいはドナー要素から部分的に分離されてしまっている(凝集タイプの欠陥)転写層から形成され得る、必ずしも転写された層と接触しているわけではない転写層または関係する材料の残渣(例えば露光ステップの熱により改変された転写層)が後に残った転写された層の状況と類似している。
【0034】
これらのコネクタおよびそれらの画質に対する効果は、公知の技術分野においてはほとんど指摘されていないことから、これらのコネクタの形成および破断について論述することは、公知の技術および図面中の方法に関して適切である。
【0035】
従来のレーザー誘起熱転写方法の1つの例示的な比較用実施形態としては、従来の液晶ディスプレーに適した3色(青、緑そして赤色)フィルタの一部分の製造がある。カラーフィルタ上への第3のカラーフィルタセットすなわち緑色カラーフィルタの追加について以下で記述する。緑色フィルタは、すでに青色ドナー要素および赤色ドナー要素を用いた先行する熱転写画像形成に起因して隣接する画素上に赤色および青色カラーフィルタを有するガラスレシーバー要素上の画素に追加される。単一の画素セットが緑色転写層の追加を待ち受けている。この熱転写方法では、図1にある通り、レシーバー要素(10)を保持する平坦な真空テーブル(25)、赤色および青色および無色の画素を伴うカラーフィルタを使用することができる。この例示においては、後続する例示中と同様、垂直方向および水平方向の測定値は、一部のケースにおいて大幅に異なり一定の縮尺で描画するのが不都合であることから、つねに一定縮尺で例示されてはいない。特許請求の範囲を他の実現可能な寸法へ応用する可能性については制限されておらず、本文中では典型的な例示的寸法を示している。
【0036】
図1は、真空テーブルがレシーバー要素と後で導入されるドナー要素の両方に作用できるようにするため、真空テーブルの排気された平担な水平部分の充分内側に平担なガラス支持層の4つのエッジが入っている状態で、真空テーブル(25)上に載り、このテーブルによりしっかりと水平に保持された、例えば厚み700ミクロン、長さ920mmそして幅730mmの平担なガラス支持層(20)を含むレシーバー要素(10)を示している。当然のことながら、その他のレシーバサイズおよび真空テーブルサイズを使用することもできる。真空テーブル側から見てガラス支持層の相対する側には、黒色マトリクスが存在しない透明なウィンドウ(40)を画定する厚み約1ミクロンのカラーフィルタ有機黒色マトリクス(30)が存在する。最終液晶ディスプレー内の各々のアドレス可能なフルカラー正方形部域につき3つずつ存在するように配置されたほぼ矩形のウィンドウは、例えば、およそ幅30ミクロンである黒色マトリクスの部分によって表わされる幅約144ミクロン、長さ約492ミクロンのガラス表面の透明な領域である。黒色マトリクスのおおよそ正方形のノッチが各ウィンドウに侵入して、その後液晶ディスプレーの薄膜トランジスタを収容し、各ウィンドウを基本的に6面形状にする。最終的には、ディスプレーの各々のおよそ522ミクロンの方眼部域は、フルカラーセル内部に単一の赤色、緑色および青色フィルタウィンドウを含む。各セルは、セルの各ウィンドウに供給された別々に制御される強度の白色光をそれぞれ赤色、緑色または青色の光にろ過することによって、都合の良い検分距離でほぼどのような色、つまり灰色、黒色または白色にでも見せることができる。最終的なカラーフィルタは、例えば整列した液晶の回転による偏光の減衰が関与する周知の技術により各ウィンドウに対し変動する強度の白色光を提供する、例えば液晶ディスプレーなどのディスプレーに内蔵させることができる。この寸法のガラス(時としてGeneration4.5ガラスと呼ばれる)は、各々青色ウィンドウ、赤色ウィンドウおよび緑色ウィンドウを有する幅、長さ共522ミクロンの1366×768のアドレス可能なフルカラー部域を各々伴う2つのカラーフィルタを収容できる。
【0037】
図1のレシーバー要素は、前の熱転写画像形成に起因してすでに青色カラーフィルタウィンドウおよび赤色カラーフィルタウィンドウを担持する。例えば、ウィンドウ(c)の1列、すなわち短エッジが突合わさり長エッジが別の列に隣接して1本のライン内に列様に隣接して配置されている左から2番目のものから始めて3個毎のウィンドウ列は、すでにウィンドウを被覆する青色カラーフィルタのパターン(50、水平方向の網掛け)を有する。青色カラーフィルタストライプは、薄膜トランジスタのための正方形のノッチを画定する黒色マトリクス上全体、そして列内のウィンドウの上部および下部短辺を分離する黒色マトリクス上全体を通過する。青色カラーフィルタのストライプは、ウィンドウの長エッジを画定する黒色マトリクスに部分的に重複して青色カラーフィルタストライプの配置における製造上の不確実性を補償し、隣接する非青色ストライプによる重複のスペ―スを残している。各々の青色カラーフィルタストライプは、厚みが約2ミクロンで幅が約154ミクロンであり、列様方向における黒色マトリクス自体とほぼ同じ長さ、つまり約401mmの長さを有する。154ミクロンという幅は、黒色マトリクスにより閉塞されていない幅144ミクロンのガラスウィンドウ被覆率、および各々の長エッジ上の黒色マトリクスの幅5ミクロンのストリップの被覆率を補償している。1ウィンドウ列上の各々の青色ストライプは、左に向かっての1つの長辺上の隣り合せのウィンドウ列上の類似の赤色ストライプ(60、斜線網掛け)と隣接し、かつ右側にまだカラーフィルタ機能化を有していないもう一方の長辺上の列様のウィンドウラインに隣接している。矩形青色ストライプおよび赤色ストライプの長エッジおよび短エッジは両方共、好ましくは黒色マトリクス上に位置設定され、好ましくは互いに重複しない。
【0038】
図2は、切断場所2における図1のレシーバー要素の一部分の切取り断面の拡大図を示している。図2は、黒色マトリクス(30)を支持する近傍のガラス支持層(20)、黒色マトリクスの一部を被覆する青色カラーフィルタ転写層(50)のストライプパターンを有するレシーバー要素、そして黒色マトリクスが存在しないガラスの一部分により画定されたウィンドウセットの間の関係を示している。左側には、黒色マトリクスの一部分を被覆する赤色カラーフィルタ転写層(60)のストライプおよび黒色マトリクスが存在しないガラスの一部分によって画定されるウィンドウセットの隣接するパターンがある。反対側で右に隣接しているのは、黒色マトリクスが存在せず緑色転写された層を追加すべきガラスの一部分によって画定されるウィンドウセットである(40)。これらの図は例示的なものであり、相対的寸法は示された特徴の間で大幅に変動し(例えば厚み700ミクロンのガラス、厚み1ミクロンの黒色マトリクス、厚み2ミクロンの青色カラーフィルタ層、幅154ミクロンのウィンドウ、幅30ミクロンの黒色マトリクス被覆の厚み1.2ミクロンなど)、縮尺は、図の中で忠実に保たれていない。図1および2の中で示されているタイプの適切なレシーバー要素はカラーフィルタ製造のために使用されるものである。1例としては、幅730mm、長さ920mmそして厚み0.7mmのサイズのGeneration4.5と呼ばれるガラス片が含まれる。このガラスは、1360×765のカラー要素の「16×9」のディスプレーを収容できる1366の水平カラー要素と768の垂直カラー要素のWXGA配置で各々フォーマットされた「32インチ」と呼ばれる2つのLCD TVディスプレーカラーフィルタを収容できる。各辺に522ミクロンの正方形のカラー要素を伴って、WXGAの対角長さは818mmまたは32.2インチを超え、幅は713mmを超え、長さは400mmを超える。2つのディスプレー長は、間、上下に予備のスペースを伴って、920mmのガラス長により収容される。各々の単一のカラーウィンドウは、(小さい薄膜トランジスタの切り欠きを除いて)およそ幅144ミクロンおよび長さ492ミクロンのウィンドウを画定するおよそ幅30ミクロンの黒色マスクを伴い174×522ミクロンである。
【0039】
一実施形態においては、すでにレシーバー要素上にあるカラーフィルタストライプは、長さがおよそ401mmであり、後続する露光ステップは、各々の分離した黒色マトリクス上に長さ401mmの緑色カラーフィルタ転写層材料の3番目と最後のストライプセットを配置する。
【0040】
図3は、画像形成に適した集合体を提供するためのレシーバー要素(10)上のドナー要素の集合体(360)を示す。レシーバー要素の平担なガラス支持体(20)、黒色マトリクス(30)、青色カラーフィルタストライプ(50)および赤色カラーストライプ(60)はドナー要素によって被覆されている。ドナー要素は、レシーバー要素よりも長さおよび幅が大きく、それによりレシーバー要素を完全にとり囲む真空テーブルの一部分と重複し接触する。この図の中のドナー要素は、(a)厚み50ミクロンのポリエチレンテレフタレートフィルム支持層(70)、およびそれが隣接して担持する(b)結合剤ポリマー、緑色顔料および赤外線吸収性染料を含む厚み2ミクロンの転写層(80)を含む。転写層は、ドナー要素支持層とレシーバー要素の間に位置づけされ、レシーバー要素は青色ストライプと赤色ストライプの少なくとも一部の部域およびレシーバー要素のまわりの真空テーブル、そして任意には青色ストライプまたは緑色ストライプにより被覆されていない場合の黒色マトリクスそして任意にはガラスと接触する。レシーバー要素を被覆することにとどまらずドナー要素とのこの整列状態で、真空テーブルは、レシーバー要素とドナー要素の間の空間内の空気を抜き、ドナーのポリエチレンテレフタレートフィルム支持層上の空気圧がドナー要素をレシーバー要素上に押し下げ、一般にドナー要素とレシーバー要素を固定された接触位置に保持する。相対的位置は、力により改変され得るが、再整列には耐えることができる。一実施形態において、ドナー要素は、数多くの部域または大部分の部域で黒色マトリクスおよびガラス支持層の上に懸吊されている一方で、図3に例示されている通り、ポリエチレンテレフタレートフィルムの剛性、青色カラーフィルタ層ストライプと赤色カラーフィルタ層ストライプの間の比較的短い距離そして、カラーフィルタ層および黒色マトリクス層の高さに起因して、青色カラーフィルタ層および赤色カラーフィルタ層と接触する。
【0041】
図4は、青色転層が黒色マトリクス(30)上にある場所では集合体のドナー要素に結びつけられた緑色転写層(80)がレシーバー要素の青色転写層(50)と接触するものの、緑色転写層は上から懸吊され、ポリウレンタンテレフタレート支持層の剛性および赤色および青色転写層の隣り合うストライプにより提供される高低間隔に起因して黒色マトリクス自体とは接していない、一実施形態を示している。黒色マトリクス(30)が透明なウィンドウを画定している場所では緑色転写層は同様に上から懸吊されていて、ガラス(20)とは接触しない。
【0042】
1つの比較用実施形態においては、真空テーブル上に保持された集合体は、各エッジが黒色マトリクス上にあり、1つの長エッジが青色ストライプに隣接し、1つの側面が赤色ストリップに隣接している状態で各々幅154ミクロンの768の転写層緑色ストライプのパターンをレシーバー要素上に導入するべく、高速走査式赤外線レーザーを用いたドナー要素の照明により、放射線に対し選択的に露光される。
【0043】
図5Aは、青色ストライプ近くでの緑色ドナー要素の露光の考えられる1つの成果を示す。すなわち、画像(80B)に対応する転写層は、未露光転写層(80A)から破断し、レシーバー要素に結びつけられた転写された層を露光の帰結としてドナー要素上の転写層から分離した状態にすることができる。緑色転写層を転写するべく黒色マトリクス(30)上の青色転写層(50)がドナー要素の照明部域と突合わさっている黒色マトリクスの領域内で露光したこの結果は、図5Aに示されている。不完全に転写された緑色転写層(80C)の残留物が、露光された部域内に残っている。
【0044】
緑色転写層(80)を転写するために図の右側で支持層(590)上のドナー要素を照明するのに赤外線レーザーを使用し、左側に未転写未露光転写層の一部分(80A)、右側に転写された層の一部分(80B)そしてこの場合露光後にドナー要素上に残留する不完全に転写された転写層(80C)を残すことができる。レシーバー要素上の転写された層とドナー要素上の未転写および不完全転写された層の間にクリーンな分離ができる。転写されたおよび未転写転写層は、転写層材料によって連結されていない。
【0045】
図5Bは、同じ部域(590)上で集合体を露光した場合の別の考えられる成果を示す。ドナー要素支持層を通した部域(590)上のレーザーによる照明は、レシーバー要素までの緑色転写層の移動を生成して転写された層(80B)を提供し、露光された部域と露光されていない部域の間または近くの遷移領域内では、ドナー要素からの転写層の分離および緑色転写層の伸長(ただし破断ではない)がこの移動に随伴して、転写層材料のコネクタ(80D)を形成する。転写層のコネクタは、レシーバー要素と接触している転写された層を、ドナー要素と接触している未転写層に連結する。露光の結果として、緑色転写された層(80B)は黒色マトリクスおよびガラスと接触していてこれらに結びつけられ、コネクタを通して以外もはやドナー要素に結びつけられていない状態となる。画像が現われないはずの部域全体にわたり有効なレーザー照明を意図的に欠如させていることから、緑色転写層(80A)は基本的に乱されずに残り、黒色マトリクスまたはガラスと接触せずにドナー要素と接触し結びついた状態にとどまる。図5Bにおいては、部域80Aと部域80Bの間の遷移領域、すなわち部域80Dの中で、緑色転写層の厚みの大部分とドナー要素の接触は失われるが、緑色転写層が移動してレシーバー要素と接触することはない。部域D(80D)中の緑色転写層は、ドナー要素に結びつけられた未変化の緑色転写層(80A)とレシーバー要素上の画像に結びつけられた緑色転写層(80B)の間のコネクタを形成する。
【0046】
一実施形態においては、かかる選択的露光の後、集合体を完全な状態に維持する力、例えば真空テーブルの真空は作用状態に残され、それによりドナー要素とレシーバー要素を互いに接触状態に維持する力は減少しない。一実施形態において集合体を完全な状態に保つこの力は、処理ステップを通してそして処理ステップ後一定期間にわたり、また分離ステップ中でも一部、維持され得る。
【0047】
別の比較用実施形態においては、かかる選択的露光の後、真空テーブルの真空は停止され、レシーバー要素とドナー要素の間の大気圧は周囲圧力まで上昇できる。ドナー要素とレシーバー要素の間の空気圧はドナー要素の反対側の空気圧と同じになることから、ドナー要素はレシーバー要素から比較的容易に除去されて露光された集合体は分解される。画像形成されたレシーバー要素は、液晶ディスプレーに適したRGBカラーフィルタを含む。
【0048】
露光後の集合体内のレシーバー要素からドナー要素を分離すると、使用されたドナー要素および画像形成されたレシーバー要素が提供される。分離は、露光後に熱転写集合体に適用される周知のステップである。
【0049】
分離は、図5B中に示されている2つの要素の間の緑色転写層のコネクタを破断することができる。コネクタにおけるおよびコネクタに対し遠隔的なコネクタの破断または分離に考えられるいくつかの様式は、分離が非常にわずかしか進んでいない場合として図6に示されている。コネクタの顕著な部分がドナー要素かレシーバー要素のいずれかに付着されている場合、この顕著な部分をフラップと呼ぶものとする。
【0050】
図6Aでは、レシーバー要素に結びつけられた緑色転写された層(80C)の近くで単一の破断が起こり、転写層材料のフラップ(80FD)はドナー要素に結びつけられた緑色転写層(80A)に付着した状態にとどまる(ドナー要素フラップ)。図6Bでは、使用されたドナー要素に結びつけられた緑色転写層(80A)の近くで単一の破断が起こり、転写層(80FR)のコネクタセグメントは、レシーバー要素に結びつけられた緑色転写層(80C)に付着した状態にとどまる(レシーバー要素フラップ)。別の場所での単一破断、そして多重破断の可能性が考えられる。図6Cでは、転写層のコネクタの分離した部分が使用されたドナー要素上の転写層(80FD)および画像形成されたレシーバー要素上の転写層(80FR)の両方に連結された状態にとどまるような形で、単一破断が発生した。図6Dに示された緑色転写層のコネクタ内の多重破断の場合、緑色転写層のフラグメント(80F)が形成し後にレシーバー要素上に落下するかまたは静電気力によりドナー要素またはレシーバー要素のいずれかに対し付着した状態となる可能性がある。
【0051】
図6Eは、ドナー要素に結びつけられ典型的にはレシーバー要素上の画像の一部となるように意図されていなかった転写層の未露光部域の内部で緑色転写層内に破断が発生する望ましくない条件を例示している。部域80A’内での層間剥離により、未露光部域内での一部の緑色転写層は、ドナー要素との接触によるその結びつきを失い、緑色転写層(80B)の未破断コネクタを通した連結によってレシーバー要素と結びついた状態となる可能性があり、もとのコネクタから考えられるフラップよりも大きいメガフラップを作ることになる(レシーバー要素メガフラップ)。図6Fに示されている緑色転写層の画像形成された部域内の類似の破断様式が、露光によりレシーバー要素に結びつけられた露光された部域内の緑色転写層の一部を、ドナー要素メガフラップ内の緑色転写層(80MFD)の未破断コネクタを通して分離した使用されたドナー要素と連結された状態に残すことができる。
【0052】
使用されたドナー要素に結びつけられたすでに分離された緑色転写層と画像形成されたレシーバー要素に結びつけられたすでに分離された緑色転写層の間に全くコネクタをもたない図5Aの集合体の分離は、各要素に結びつけられた緑色転写層の量の変化無く、かつフラップ形成無く進行すると予想できる。
【0053】
図7は、露光された集合体を使用されたドナー要素と画像形成されたレシーバー要素へと分離するプロセスの一実施形態を例示する。図7は、画像形成されたレシーバー要素からドナー要素が、前面または底面から裏面または上面まで剥離されつつある剥離プロセスを示す。図7の前面において、被覆されていない画像形成されたレシーバー要素(100)(先のレシーバー要素10に追加された緑色ストライプが加わったものに相当)には、赤色転写層(60)、青色転写層(50)および緑色転写層(180)によって別々に被覆されたウィンドウ列が含まれている。被覆されていない画像形成されたレシーバー要素の上には、画像形成されたレシーバー要素上でフィルタを形成する緑色転写層の部分が欠如した使用された緑色転写層(280)および支持層(70)を含む分離した使用された緑色転写層ドナー要素(1360)の対応する部分がある。画像形成されたレシーバー要素は、所定の位置に固定された状態に画像形成されたレシーバー要素を保持するのに役立つ作動中の真空テーブル(25)上にとどまる。ドナー要素がレシーバー要素に接触しているだけである界面において、分離が起こる。この界面において、真空テーブルがドナー要素とレシーバー要素の間に作り出した真空は、環境大気圧によって取って代わられる。集合体の未分離部分内への環境大気の幾分かの浸透を想定することができる。
【0054】
集合体を露光し分離する従来公知の方法は、レシーバー要素上に形成された画像のエッジの異なる場所において図6中に例示されているさまざまな様式で、コネクタの形成およびコネクタの破断を導く可能性がある。フラップの有無、およびフラップサイズの変動そして使用されたドナー要素および画像形成されたレシーバー要素の両方の上のフラグメントの存在は、画質低下の原因となるエッジの質および予測不能な画像サイズ変動の源である。処理無しの場合の分離は、図6に示されている多種の破断の組合せであって、粗いラインエッジを与える可能性がある。
【0055】
一実施形態においては、露光ステップにおけるコネクタの形成と分離ステップにおけるいずれかの未破断コネクタの破断の間に処理ステップが介在して、制御された形でコネクタを破断または亀裂形成させる。破断または亀裂形成は、亀裂形成または破断した場所でコネクタを分離させる分離ステップによって現出されるか、または亀裂または破断部によって誘導される。処理の一実施形態においては、大多数のコネクタが図6Aにあるように、転写された層の近くおよびレシーバー要素の近くで破断され(または亀裂形成されかつ後に分離中の破断の原因となり)、分離時点でドナー要素上に最も有意なフラップを残す。この処理の成果は、レシーバー要素上の画像に何れか有意なフラップが付着しても、結果として得られる画像のサイズが増大しないために、「内向き(inboard)」と呼ぶことができる。
【0056】
別の実施形態においては、大多数のコネクタが、図6Bにあるように、未転写未露光転写層の近くおよびドナー要素の近くで破断され(または亀裂形成されかつ後に分離中に破断の原因となり)、レシーバー要素上に最も有意なフラップを残す。この処理の成果は、レシーバー要素上の画像へ有意なフラップが付着することにより結果として得られる画像のサイズが増大することから、「外向き(outboard)」と呼ぶことができる。
【0057】
図8Aおよび図8Bでは、各々真空テーブル上で露光された集合体について実施される、先行技術の場合のようなローラーを用いた分離方法を図8Aに、そしてローラーを用いた処理ステップを含む本発明の一実施形態を図8Bに示している。図8Cは、真空ドラム上に保持された露光された集合体について実施される処理方法の一実施形態を示す。
【0058】
先行技術の図8Aにおいて、露光後で処理無しの使用されたドナー要素(1360)は、車軸(150)を有するローラー(140)によって左側でなおもレシーバー要素(100)に保持されるようになるまで、図の右側で集合体の一部分で持ち上げられている。ローラーの左側のレシーバー要素(100)およびドナー要素の一部分は、真空テーブル(110)の区分上に、それが及ぼす吸引力V(V1、V2、V3、V4、V5)によって保持される。V1およびV2あたりの真空テーブルの周辺の吸引は、ドナー要素とレシーバーの間から大気を除去するのに役立つが、V4およびV5周辺で要素間にこの真空は不在である。車軸(150)を伴うローラー(140)は、回転Rの結果として左へと走行している。図8Aの場合、ドナー要素とレシーバー要素の分離は、ローラーがそれらを一緒に保持する点まで集合体をひき離す上向きの力Tがドナー要素に加わることを理由として発生する。これにより、分離を徐々に行なうことができる。ドナー要素は、真空テーブルがドナー要素の下(F1)および集合体の下(F2)において大気圧Fよりも低い減圧を作り出すことに起因する力によって、ローラーの左側でレシーバー要素上に保持される。ローラーの右側では、それ自体力(F3)により真空テーブル上に保持されているレシーバー要素とドナー要素を合わせて引く力は、全く残っていない。
【0059】
図8B中の処理ステップの一実施形態においては、ドナー要素上の上向きの力Tは不在である。真空テーブルによってドナー要素およびレシーバー要素を合わせる力は、基本的に処理の前後で同じであり、ローラーの左側および右側の部域上の力にそれぞれ対応する。しかしながら、集合体上を転動するローラーは、レシーバー要素を基準にドナー要素を移動させ、それによりドナー要素に結びつけられた転写層とレシーバー要素に結びつけられた転写された層を連結する転写層のあらゆるコネクタ上に力を発生させることができる。力は、コネクタの転写層材料に亀裂を形成させるかまたは転写層材料を破断させるのに充分なほど有意なものであり得る。コネクタが処理中に1つの場所でのみ亀裂を形成させる場合には、その後の分離ステップ中にコネクタの破断が亀裂に沿ってまたは亀裂に誘導されて発生し得る。
【0060】
処理ステップにおけるローラーは、分離ステップにおいて使用されるローラーを推進するのに典型的に用いられるようなあらゆる力によって集合体を横断して推進され得る。一実施形態においては、ローラーは、スキッドやジャンプすることなく、集合体の表面に沿うのと同じ距離をローラーの表面に沿って網羅するように回転する。別の実施形態においては、ローラーは、集合体の表面に沿うのとは異なる距離をローラーの表面に沿って網羅するように回転し、この差異にはスキッドまたはジャンプで対応している。
【0061】
処理ステップにおいてローラーは、集合体と接触状態にありながら回転自在であるか、または、集合体に対してテンションを受けることができる。典型的には、ローラーと集合体の間で或る一定の速度および或る一定の下向き接触圧力で集合体上でローラーを移動させるために装置が用いられる。典型的には、ローラーは、集合体の支持層側と接触するが、特にレシーバー要素が可撓性である場合に、レシーバー要素側に接触することもできる。
【0062】
分離中、例えば使用されたドナー要素をローラー上へ巻き取ることによって、ローラーの回転速度を増大させることを目的とするように導かれた駆動力を用いたテンショニングを典型的に使用し、ローラー上の使用されたドナー要素の重なり部分をシワ無くすべての場所で接触状態に保つ。
【0063】
処理中、実質的に支持層に平行な方向に沿ってレシーバー要素を基準に、第1の位置から第2の位置までの支持層の位置の移動させるために、テンショニングを用いることができる。テンショニングには、(接触したまま集合体全体を移動する回転自在なローラーによって達成されると思われる)ローラーの回転に抵抗する制動力、または集合体上の移動により生成される回転の方向におけるローラーの回転を助長する駆動力が関与し得る。
【0064】
処理作業を提供するローラーが順方向に移動し、制動機構がローラーに対し制動力を加えた時点で、ローラーを順方向に移動させるのに必要な力は増大し、ローラーと良好に接触する支持層は、理想的にはいかなる正味移動もなく、ローラーと遭遇した時点で順方向に移動し、ローラーが移動し続けるにつれて逆方法に移動する。
【0065】
制動は、いくつもの方法で提供され得る。例えば、ローラー車軸とローラー本体の間に転がり軸受を有するローラーにおいては、転がり軸受を保持する案内溝をより小さくなるように調整でき、転がり軸受をさらに大きくすることができ、または、案内溝内に高粘度の潤滑剤を使用することもできる。ローラーと車軸の間にディスクブレーキを設置することができる。その他の方法も当業者にとっては周知である。
【0066】
処理作業を提供するローラーが順方向に移動し、駆動機構がローラーに対し駆動力を加えた時点で、ローラーを順方向に移動させるのに必要な力が減少するか、またはローラーが順方向に加速するのを妨げるための力を提供することが必要となり、ローラーと良好に接触する支持層は、理想的にはいかなる正味移動もなく、ローラーと遭遇した時点でレシーバー要素を基準に逆方法に移動し、ローラーが移動し続けるにつれて順方向に移動する。
【0067】
駆動力は、当該技術分野において周知のいくつもの方法でローラーに導入可能である。ローラー車軸上にモーターを取付け、ローラーと摩擦接触状態でゴムホイールを回転させることを通してローラーに力を伝達させることができる。クラッチ、モーターへの出力の変動またはホイールとローラー間の接触の滑りが、ローラーに供給される力の量を修正または制限し得る。
【0068】
処理用ローラーに対し駆動力または制動力を導入することで、ローラーの外周が走行する距離およびローラーの軸が走行する距離に変化を生み出すことができる。この変化は、支持層に伝達され、支持層の平面内で、レシーバー要素との関係における支持層の相対的移動を生み出す。
【0069】
例えば、ローラーが任意の画像形成部域の外側でレシーバー要素と接触した状態でドナー層の一部分の上を走行している場合、ローラーは支持層に対して平行な力で順方向に強制され得、ローラーの軸およびローラーの外周は、同じ時速で集合体を横断する。制動動作がローラーの周囲に加わると、ローラーの回転は減速されるが、集合体上の軸の速度は一定に保つことができる(必要に応じて順方向の力を調整することにより)。ローラー軸およびローラー外周の相対的移動のこの変化は、ローラーと良好な接触状態にある支持層の順方向(軸の走行方向)へのシフトをひき起こす可能性があり、これはレシーバー要素上の転写された層とドナー要素上の転写層の間のコネクタの破断に起因して、レシーバー要素まで不完全にしか伝達されない可能性がある。
【0070】
レシーバー層上の支持層の相対的移動は、制動されたローラーが接近してその区分上を通過するにつれて、集合体の各区分に伝達される。ローラーが各区分上を通過しそこから離れるにつれて、復元移動が起こる。正味移動は、コネクタの制動などの効果によりひき起こされる任意のわずかな移動を除いて、本質的にゼロである。
【0071】
図8Cは、集合体が円筒形真空ドラム上に保持されている処理ステップの一実施形態を示す。この処理は図8Bのものと類似している。ただし、ローラー(140)は1つの場所に保持され得、回転自在であるかまたは制動または駆動を受けることができ、真空ドラムはローラー(Rd)と接触した状態で回転可能である。
【0072】
支持層とレシーバー要素の間の相対的移動をひき起こすべく、例えば実質的に支持層に対して平行な方向に沿ってレシーバー要素を基準に第1の位置から第2の位置まで支持層の位置を移動させるべく集合体に対してローラーが伝達する力の量は、典型的には悪影響無く変動させることができる。例示を目的として、ローラーが少なくとも5N/m、少なくとも10N/m、少なくとも20N/m、少なくとも40N/m、少なくとも100N/m、少なくとも200N/mそして少なくとも500N/mの荷重の中から選択される正規化された面内せん断荷重を集合体上に発生させるように、制動力または駆動力をローラー内に提供することが有用である。ローラーと集合体の間にはいかなるスキッド、チャタリングまたはスリップも起こらないことが通常好ましい。
【0073】
処理と分離は、全く異なるものである。分離は処理に後続し、使用されたドナー要素と画像形成されたレシーバー要素を、それまでは互いに接しているかまたは近接していた部域間にいかなる相互作用も起こらなくなる距離まで離れるように移動させる。分離が終了すると、分離部域内で使用されたドナー要素と画像形成されたレシーバー要素の間には、無傷の完全なコネクタは全く存在せず、使用されたドナー要素および画像形成されたレシーバー要素は接触せず、分離部域内での力によって、合わせて保持されていない。
【0074】
分離はまた、ドナー要素とレシーバー要素の間の接触部域の内部でこれらの要素の接触を解除するプロセスでもあり、接触がもはや存在しない部域内では、ドナー要素およびレシーバー要素は、これらの要素のいずれかまたは両方に対し作用しそれらを元通り接触状態に戻すことのできる力が全く無い状態に置かれる。
【0075】
一実施形態では、処理ステップは、レシーバー要素との関係における支持層の第1の距離だけの最初の行程とそれに続くレシーバー要素との関係における支持層の第2の距離だけの戻り行程をひき起こし、露光後で処理の前に支持層とレシーバー要素の原初の位置から第3の距離のところに支持層を残し、ここで戻り行程の完了時点で、支持層は第1の行程の完了時点に比べレシーバー要素を基準にその原初の位置により近いところにある(この第3の距離は第1の距離よりも小さい)。別の実施形態においては、第3の距離は第1の距離よりも小さく、第3の距離は第2の距離よりも小さい。別の実施形態においては、第3の距離は、第1の距離よりも小さく、第3の距離は第2の距離よりも小さく、第1の距離は第2の距離以上である。
【0076】
露光された集合体の分離のために公知の技術において使用されている方法が、ドナー要素に結びつけられた転写層とレシーバー要素に結びつけられた転写層の間の破断場所に対するそれらの効果に関してむしろ無制御であるということが認識されている。露光された部域と未露光部域の間のコネクタが熱転写画像形成において共通であることが認識されていることから、コネクタの無制御破断の影響は集合体の分離の後に見られ、ほとんどがコネクタの破断に起因するものとして理解できる。急速な無制御無作為破断は、露光された部域と未露光部域の間にさまざまなサイズのエッジを与え、これには、コネクタの粉砕によって形成された破片が随伴し得る。これらのエッジは、平滑となるように意図されている場合に、粗いかまたは起伏がある状態で出現する。
【0077】
分離の前または真空が喪失する前、またはドナー要素がレシーバー要素から離れるように大きく移動する前に集合体を処理することで、制御された形でコネクタを破断するための、1回または複数回の機会を得ることが可能となる。制御された方法の2つのタイプは、混乱を受けていない転写層の近くでの破断、および転写された層の近くでの破断(フラップがそれに結びつけられた要素の複雑性を増すことから、レシーバー要素が使用されたドナーよりも高価である場合に好ましい実施形態)である。
【0078】
熱転写画像形成の1つの形態におけるコネクタの幅(転写された層から未転写の転写層へ向かうその距離)は、厚さ2〜3ミクロンの転写層の約150ミクロン幅のストライプの転写について、約6ミクロンであり得る。それにより、コネクタ単独の破断場所(非コネクタ場所での破断を含まず)の変動により、2つのエッジを有するストライプの幅が12ミクロン変動し得る。このような変動は、1つのウィンドウ上に正確に心出しされていないカラーフィルタストライプが、ウィンドウのガラス領域を被覆せず、液晶ディスプレー内のウィンドウを通して白色光が透過されるストライプを残すと考えられること、または、カラーストライプが予想外に大量の黒色マスクを被覆すると同時に、先行する画像形成からの黒色マトリクス上の隣接する、異なるカラーフィルタストライプの少なくともエッジ部分をも被覆し、カラーフィルタストライプを重複させることに起因してカラーフィルタ上に予想外に高い領域を与えること、のどちらかを意味する可能性がある。コネクタが多数の場所で破断し、使用されたドナー要素および画像形成されたのレシーバー要素の両方共の破片が分離の動揺によって別のウィンドウ場所まで運ばれて無くなった状態となった時点で、転写層材料の破片が形成し得る。
【0079】
一実施形態において、275mm/秒で走行する図8Aにあるような直径80mmのガイドローラーを用いたドナー要素の分離は、最高毎秒275,000ミクロンというレシーバー要素からの見かけの出発速度をドナー要素に与える。かかる条件下で、未分離の転写層に沿って伝播する破断の場所が6ミクロン以上変動し、さらには場合によって転写層をドナー要素に対するその付着から解除するかまたは転写層をレシーバー要素に対するその付着から解除すると予想することには合理性がある。分離ライン(ローラーのニップによって画定されるライン)の接近角度が変動する場合には、転写層に沿って伝播する破断の場所が変動しうると予想することもできると思われる。真空テーブルが及ぼす力が分離と同時に解除されるにせよ(未分離の集合体上では真空が維持される一方で、剥離エッジにおいては真空が破断されることによって)、大気圧が低下した領域を満たすため集合体内に空気が急進することによって力が作り出される可能性も高い。これらの力はコネクタを破断するかまたは急速な分離によって形成されたコネクタのフラグメントを散乱させることも考えられる。
【0080】
発明力ある実施形態においては、露光された集合体は、(典型的にはレシーバー要素に近いものの、その場所には限定されない)具体的な1つの相対的な場所において、制御された形でコネクタを破断、亀裂形成または脆弱化させることによる集合体の分離の前に処理される。この処理には、分離ステップによる分解の時点でドナー層に結びつけられた転写層とレシーバー要素に結びつけられた転写層の間の破断が主に1つの相対的場所にくるような形で、集合体を操作することが関与する。一実施形態においては、破断は、主に使用されたドナー要素に結びつけられた転写層の近くにあり、転写層のコネクタは、フラップとして画像形成されたレシーバー要素に結びつけられた転写層に付着した状態にとどまる。別のより好ましい実施形態においては、破断は主に画像形成されたレシーバー要素に結びつけられた転写層の近くにあり、転写層のコネクタは、フラップとして使用されたドナー要素に結びつけられた転写層に付着した状態にとどまる。
【0081】
図9は、真空テーブル(25)上に真空によって保持されさまざまな形で処理されている集合体(900)を示す。処理を実施する機器には、ローラー(910)、バー(940)そして取外し可能な粘着テープの2つの例(950Aおよび950B)が含まれる。集合体は、転写層(80)がレシーバー要素の少なくとも一部分と接触している状態で、レシーバー要素を被覆する最上部の支持層(70)とレシーバー要素を完全にとり囲む真空テーブルの一部分を伴って、ドナー要素(360)を通して認識可能である。処理には、露光された集合体の使用されたドナー要素支持層を横断してローラー(910)を移動させるステップが含まれる。図示したローラーは、重力により下に保持され、右側から見て時計回りに回転しながら前から後に移動されている。別の実施形態においては、重力以外の力によってローラーを集合体と接触した状態に保持することができる。どの力が使用されるにせよ、少なくとも一部の場所で、レシーバー要素に向かって支持層を移動させるだけで充分である。その他の実施形態においては、ローラーが走行速度と同一の速度で自在に回転している必要はなく、例えば集合体上をローラーが移動するにつれて支持層上にせん断または研磨力(buffing force)を提供する車軸(930)上の歯車(920)を通して、回転速度を設定することができる。不等な順方向動作および回転速度は、集合体にせん断動作を付与し、支持層に対し実質的に平行な方向に沿ってレシーバー要素を基準に第1の位置から第2の位置まで支持層の位置を移動させることができる。
【0082】
さまざまな実施形態において、支持層と接触しているローラー表面は、接着性またはコンプライアント(compliant)、またはその両方である。使用されたドナー要素支持層を横断してローラーを移動させることで、先に露光された集合体内で使用されたドナー要素と画像形成されたレシーバー要素を固定した関係に保持している力(例えば真空テーブルに起因する力)は瞬間的に変化し、集合体の小さい部域に真空テーブルのみに起因する原初の力が復元され支持層およびレシーバー要素がそれらの以前の関係または異なる関係に復元される前に、処理中の所与の瞬間において集合体のこの部域内で要素が相互に移動することができる。これらの変化は、例えばコネクタを破断させるか、亀裂形成させるかまたはその他の形でそれらを分離のために準備し特定の場所にフラップを作り出させることによって、これらのコネクタに影響を及ぼす。
【0083】
図10は、露光された集合体上を転動するコンプライアントな接着性ローラーの一実施形態を示す。ガラス(20)、黒色マトリクス(30)および青色フィルタ層(50)を含むレシーバー要素および支持層(70)を含むドナー要素は、少なくとも3つの状態すなわち、前の図に示されているように、図の左側にある混乱を受けていないもとの未撹乱転写層、図の右側にあるレシーバー要素黒色マトリクスおよびガラスに結びつけられた転写された層、およびこれら2つの間のコネクタの間に位置づけされている転写層(80)を共有している。集合体の上を通過しているのは、ローラー(220)であり、これは図示されている通り回転Mrによって移動し、右から左(Mf)へ集合体の上を通過する。ローラーは、未撹乱半径Roを有する円筒であり、Roより小さい半径Riをもつ内部組成物の内部コア(240)および内部組成物と同じかまたは異なるコンプライアントかつ/または接着性の組成物の、R0−R1以下の厚みRcをもつ少なくとも1つの外部層を含む。接着性外部表面(250)は、コンプライアントな厚い層(230)と同じかまたは異なる材料であり得る(この例では、接着剤は、ローラーの半径を変更すると思われる厚みを有するものとして示されるが、この論述のためには、無視できる厚みをもつものとして考慮すべきである)。ローラーが集合体に接触するにつれて、これは重力または閉鎖力により接点に押圧され、これにより変形するか、または転動動作および接着剤の粘着力により変形するかもしれない。ローラーの変形は、前進するローラーが最初に集合体に接触する入口部域(Re)および出口部域(Rx)において、例えば膨れに起因するRoより大きな半径を含み得る。ローラーのより短い半径は、例えば圧縮または膨れに起因して、入口と出口の間に見出され得る(Rs<Ro)。
【0084】
入口部域と出口部域におけるローラーの半径の増加は、RsなどのRoよりも短かい半径で入口と出口の間で圧縮された材料の膨れによってひき起こされ得る。出口部域における半径の増加は、支持層からのローラーの分離を遅延させるローラーの接着特性(ドナー要素から徐々にひき離されるこのドナー要素に接着したローラーの伸張)が原因であり得る。ローラーの回転がローラーとドナー要素の距離を増大させる一方で、このようにドナー要素に対し接着するローラー表面の付着により、支持層がローラーに追従するにつれて真空テーブル上に固定されたレシーバー要素から支持層をひき離すことができる。接着性ローラーを解除した時点で、支持層は真空テーブル上に固定したレシーバー要素に向かって移動できる。
【0085】
ローラーを順方向に押す力または支持層に伝達されているその他の力に起因して、ローラーと接触し始めた時点の不動のレシーバー要素を基準に、ローラーの走行方向にローラーが支持層を押すことも同様に可能である。
【0086】
短い方の半径Rsは、重力またはローラーを集合体のドナー要素支持層と接触するように押すその他の力によってひき起こされるローラーの変形を原因としている可能性がある。レシーバー要素に向かう支持層の移動は、短い方の直径Rsへの変形と同時に発生し得る。ローラーが移動し続けるにつれて、半径は再び増加し、支持層はレシーバー要素から離れるように移動できる。
【0087】
異なる時点における支持層と密なカップリング接触状態にあるローラーの異なる半径は、レシーバー要素を基準に支持層を移動させることのできる力を支持層に作り出すことができる。支持層に対するローラー移動のカップリングは、転写層を通したレシーバー要素に対するドナー要素のカップリングが不完全なため、レシーバー要素に対する支持層のカップリングよりも大きいものであり得る。レシーバー要素に対する支持層のカップリングは、要素同士、例えば青色転写層に対する緑色転写層のあらゆる接触、またはコネクタを介した連結によるものであり得る。そうでなければ例えば介入するいかなる黒色マトリクスまたはカラーフィルタ層も接触していない状態でガラス上に転写層が懸吊されている場合などのように、1つの場所で実際の接触が全く無いためその場所にこのカップリングが不在であってもよい。
【0088】
低圧縮領域(Reなどの長半径)から高圧縮領域(Rsなどの短半径)までの集合体の1点を通過するローラーの移動は、レシーバー要素に向かう支持層の移動をひき起こすことができる。レシーバー要素との関係における支持層のこの接近移動はコネクタに応力を与え、破断の原因となる可能性がある。
【0089】
高圧縮領域(圧縮によりひき起こされる短半径)から低圧縮領域(圧縮を軽減することによりひき起こされる長半径)までの集合体の1点を通過するローラーの移動は、レシーバー要素から離れる方向に支持層の移動をひき起こすことができる。レシーバー要素との関係における支持層のこの外向きの移動は、支持層がレシーバー要素に向かって移動した後、ローラーが影響を及ぼす直前のドナー要素とレシーバー要素の分離点および位置づけに向かうもののこれを超えない復元移動であり得る。
【0090】
Rx>Roでありローラーが支持層に接着した場合、ローラーは、ローラー材料の膨れが無くなるにつれてレシーバー要素から離れるように支持層を上昇させることができる。これは、ローラーが支持層と接触する前の原初の分離点および位置づけとの関係におけるレシーバー要素に対する支持層の外向きの移動であり得る。レシーバー要素に対する支持層の外向き(離れる方向)の移動は両方のタイプ共、コネクタに応力を加え、破断をひき起こし得る。
【0091】
これらの半径の変更およびコンプライアント層移動を介してローラーにより生成される力は、レシーバー要素および転写層に面する支持層の表面に対して平行に支持層を移動させ得る。この方向は、純粋にレシーバー要素に向かうかまたはこれから離れる支持層の移動に直交する。この方向は、典型的には、集合体の上のレーザーヘッドの相対的移動が画定する方向の平面に対して平行である。これらの力を認識する一つの方法は、膨れに起因するローラー材料の移動を理解することである。膨れは、ローラー材料を、ローラーの半径距離が最小になる点から離れるように移動させる。この移動は、支持層を拭うかまたは擦るのに類似した力を作り出し、これら全てがレシーバー層を基準に、閉鎖方向または分離方向に対し垂直で、支持層に平行な方向に、第1の位置から第2の位置まで支持層を移動させる。集合体せん断移動と呼ばれるこの移動は、コネクタに応力を加え、破断をひき起こし得る。
【0092】
コネクタは、転写された層のエッジと転写層のエッジの間に見られる。典型的には、転写された層エッジと転写層エッジは平行であり、2つのエッジに対する接線方向が、支持層に対し平行な可能性のある複数の方向からなる平面内に存在する。第1の位置から第2の位置までの移動が大部分の場合に2つのエッジに対する接線方向に平行である場合、その移動を、エッジ様集合体せん断(EAS)移動と呼ぶことができる。第1の位置から第2の位置までの移動が大部分の場合2つのエッジに対する接線方向に対し垂直であり、かつ転写層と転写された層の間の距離が増大しその後コネクタが全体に伸張されるようになっている場合、この移動を、コネクタ伸張性集合体せん断(CSAS)移動と呼ぶことができる。第1の位置から第2の位置までの移動が大部分の場合2つのエッジに対する接線方向に対して垂直であり、かつそれにより転写層と転写された層の間の距離が減少しその後コネクタが全体に圧縮されるようになっている場合、この移動をコネクタ圧縮性集合体せん断(CCAS)移動と呼ぶことができる。単一の集合体内のコネクタ収集物は数多くのエッジ配向性を含み得ることから、通常3つのタイプ全ておよび混合タイプの集合体せん断移動が、処理ステップによりひき起こされる。一実施形態においては、転写層および転写された層のエッジは大部分の場合、平行な一方向に整列され、集合体せん断移動は、大部分の場合この方向である。例えば、カラーフィルタ材料の長列を適用するために各ドナー要素が用いられるカラーフィルタにおいては、列の最長エッジが平行に整列され、この方向は大部分の場合、第1の位置から第2の位置への方向を画定する。この方向は、転写層を転写したレーザーヘッドの主移動と同じであり得、あるいは、方向は反対であり得、そうでなければ方向は、処理ステップのアラインメントに対する露光ステップのアラインメントの最も一般的な関係において、垂直であり得る。
【0093】
一実施形態においては、集合体を処理するためのローラーの転動は、例えば真空テーブルの排気を用いて、大部分のまたは全てのドナー要素がレシーバー要素と密に整列されているかまたは接触した状態に維持されるように集合体に力が加えられている間に実施される。別の実施形態においては、集合体全体を処理するのに必要な時間中の或る時点で、処理された集合体の一部分に対して、分離方法が適用される。
【0094】
一実施形態においては、処理および分離のために、2つの全く異なるローラーが使用される。処理用ローラーは、接着性でコンプライアントな表面を含むことができ、分離用ローラーは、非コンプライアント表面を含むことができる。図9中に示された別の処理実施形態においては、粘着テープ(950A、950B)が集合体の露光されたドナー要素の支持層表面の一部域の上に適用され、その後剥離により除去され得る。図9においては、各テープについて、粘着テープの自由端部が右から左へ(950A)または後ろから前へ(950B)移動させられて露光された集合体上のテープの湾曲エッジにおいて新たな力が作り出されるにつれて、剥離角度はほぼ180度となる。これらの力は、主としてせん断力であり、支持層の位置を、支持層に対し実質的に平行な方向に沿ってレシーバー要素を基準に第1の位置から第2の位置まで移動させる。
【0095】
一実施形態においては、粘着テープの除去は、例えば真空テーブルの排気を用いて、ドナー要素の大部分または全てがレシーバー要素と密に整列された状態または接触した状態に維持されるように集合体に力が加えられている間に実施される。
【0096】
図9に示されているさらに別の実施形態においては、バー(940)が処理を提供する。別の実施形態においては、バーは、露光された集合体の支持層と摩擦性または接着性またはコンプライアント接触状態にあり得、それによりバーの移動は支持層に結びつけられる。支持層と接触するバーの表面上の接着剤に起因する接着性接触は、真空テーブルにより所定の位置に保たれたレシーバー要素から離れる方向への支持層の移動を提供するべく、集合体から離れるようなバーの上向きの動作を支持層に伝えることができるようにする。
【0097】
コンプライアント接触は、各々の表面を一緒に迎合させ、2つの間の界面において滑りに抵抗する高い摩擦結合を提供することによって、バーの移動と対応する支持層の移動との結びつきを増大させるのに役立つ。これにより特に、せん断移動をバーから支持層まで伝えることが可能になる。
【0098】
バーに対して上向きの移動を提供する力は、図9中、Fuと記されている。バーを、クレーン(図示せず)などの吊り上げ機構に挟持させて、上向きの移動を提供することができる。
【0099】
下向きの力Fd、右向きの力Fr、左向きの力Fl、逆方向の力Fbおよび順方向の力Ffを加えて、バーおよび結びつけられた支持層を指示された方向へ移動させることができ、ここでこの移動は、真空テーブルまたは慣性力により拘束されたレシーバー要素との関係におけるものである。上述の力は、ハンマーによる打撃またはモーターの使用などのあらゆる好適な手段によって適用可能である。
【0100】
いかなる理論によっても束縛されないものの、本発明の有用性は、急速で無制限であり得る場合の分離の間に破断または破砕を発生させるのではなく、コネクタを破断または破砕するときに用いられる制御された力に起因するものであり得る。典型的には分離ステップにおいて、ドナー要素およびレシーバー要素を基本的に固定した配置に保持する力は、除去されるかまたは克服され、2つの要素の間の排気は、気体(典型的には空気)に置き換えられる。分離および気体流用のコネクタ上の新しい力および分離に関与する距離は、おそらくは、破片を生成し得る多数の位置においてコネクタを破断するのにきわめて充分なものである。
【0101】
処理中にレシーバー要素を基準に支持層の非常に小さいと推定される変位を導入することによって、単一の予測可能な場所でコネクタの破断を発生させることができ、単一の亀裂を伝播させて、その他の亀裂が形成し伝播する前に応力を軽減させることができる。
【0102】
一実施形態においては、集合体は、レシーバー要素の剛性(例えば剛性真空テーブル上の厚み500ミクロンのガラス)、および、ドナー要素とレシーバー要素の間の体積が(真空テーブルにより供給される相対真空により)排気された時にドナー要素を下に押圧するドナー要素支持層上の空気圧などの、ドナー要素をレシーバー要素と接触した状態に保つ力によって、露光および処理中比較的不動の状態に保たれる。しかしながら、Polaroid Corporationに対するErnest W.Ellisによる米国特許第5,633,113号明細書「Mass Transfer Imaging Media and Methods of Making and Using the Same」に記載のものなどの代替的集合体も、本発明に適切である考えられることが想定されている。例えば、露光された集合体を有するエンクロージャ、パウチまたはエンベロープを、それらを押圧またはせん断することのできるプレスまたは装置内に置いて、真空テーブル上のものの場合と同じ運動を集合体内にひき起こすことが可能であると思われる。
【0103】
一実施形態において、分離ステップは、使用されたドナー要素転写層をレシーバー要素との接触から完全に除去する。一実施形態においては、処理は、レシーバー要素との関係における支持層の平行な移動を用いて実施される。別の実施形態においては、平行な移動よりもむしろ、レシーバー要素との関係における支持層の分離移動または圧縮移動が実施される。さらに別の実施形態においては、平行および垂直移動の要素をもつ移動が実施され、この移動は、距離成分に分解された場合、垂直よりも平行に近い。別の実施形態においては、処理には、連続して実施される2つの移動、すなわちレシーバー要素に向かう支持層の移動に先行してレシーバー要素から離れるような支持層の移動が含まれる。一実施形態においては、離れる移動と向かう移動は両方共、完了時点において合計距離で10ミクロン未満であり;別の実施形態においては、100ミクロン未満;別の実施形態においては1ミリメートル未満である。レシーバー要素との関係における支持層の相対的移動のこのような実施形態全てにおいて、支持層の全ての部域が同時に相対的移動を行なう必要性は要求されていない。実際、集合体は一度に1つの部域ずつ処理することが好ましい。このようにして、支持層をレシーバー要素から離れるようにおよびそれに向かって移動させることにより一度に一個の集合体を処理する方法は、レシーバー要素に向かう移動が無く、大きく離れる移動を実施する分離動作とは異なるものである。
【0104】
一実施形態においては、例えば露光された部域を完全に網羅するバーによって、一瞬間において露光された部域全体にわたり処理が実施される。このようなケースにおいて処理の開始と分離の開始の間の時間は、「処理−分離間時間」と呼ばれる。
【0105】
一実施形態においては、処理は、露光された集合体の一部域全体にわたり徐々に実施される。1つの部域が処理を受けている時、まだ分離されていないものの過去の一時点で処理されたその他の近傍の部域、そしてまだ処理されていないものの将来の1時点において処理されるその他の近傍の部域が存在するために、漸進的な処理を認識することができる。漸進的処理の場合、1部域の処理の開始と1部域の分離の開始を離隔する時間は、処理−分離間時間と呼ばれる。
【0106】
処理を受けている部域の近傍に処理された未分離部域と未処理で未分離の部域が存在することは、分離に起因する集合体の各部域の混乱を最小限におさえながら処理が実施されることを表わす本発明の好ましい一実施形態である。処理を受けている部域の近傍に処理された未分離部域と未処理未分離部域が存在することを記述するために、我々は、転写層に最も近い支持層の表面に沿って測定された、処理中の部域と分離中の部域の間の最短距離を用いる。これは、「処理−分離間距離」と呼ばれる。
【0107】
例えば、平担な真空テーブル上で、幅0.4cm長さ1メートルの作用面積をもつ直径80mmの付属する非コンプライアンス分離用ローラーの軸から100mmだけ離隔された回転軸を有し、幅1cm長さ1メートルの作用面積を有する直径80mm、長さ1メートルの接着性でコンプライアントな処理用ローラーを用いて、集合体を処理し、それにより処理途中で、処理中の部域を分離中の部域から少なくとも93mm離隔させることが可能であると思われる。
【0108】
本発明は、0.01、0.1、0.5、1、3、10、30、および60秒のうちの少なくとも1つよりも長い処理−分離間時間を有する方法に対して適用可能である。本発明は、0.01、0.1、0.5、1、3、10、30および60センチメートルのうちの少なくとも1つよりも大きい処理−分離間距離を有する方法に対して適用可能である。
【0109】
本発明の方法を使用できる分野は、例えば、液晶ディスプレーに適した3色フィルタなどのカラーフィルタの製造向けの分野である。カラーフィルタの製造において有用な別個の方法および材料は、例えばYoun−Gyoung Changらによる米国特許第6,682,862号明細書およびG.Andrewsらに対する米国特許第6,645,681号明細書の中に記されている。3色カラーフィルタの第3の色の応用例が以下に示されている。赤色および青色ドナー要素フィルムおよびその他のドナー要素フィルムおよびレシーバー要素と共に類似の技術を使用することもできる。
【0110】
本明細書および特許請求の範囲に関して、「放射線」という用語は、従来通り電磁放射線を意味するために用いられる。例えば、放射線は、電磁スペクトルの紫外線(UV)、赤外線(IR)または可視光線(VIS)であり得る。UVおよびIR放射線はさらに、深、中、遠または近放射線として特徴づけできる。ランプまたはレーザーが、放射線ビームを供給できる。マスクを用いて集合体上に選択的に放射線を露光することができる。本発明は、例えば多数の制御可能なレーザービームを有するレーザーヘッドなどにより、3つ以上のフィーチャの露光が同時に起こる実施形態を企図している。多数のフィーチャを同時に露光することのできる露光用ヘッド用には、レーザーが特に好ましく、したがって、記述および例示目的でこれを使用する。一実施形態においては、多数の赤外線発光ダイオードレーザーが、集合体を横断して走査することのできる多重ビーム露光用ヘッドを提供する。一実施形態では、露光用ヘッドは、主として832nm前後で発光するおよそ200の突合わせビーム(abutted beams)を有し、各ビームは、走査方向に対し垂直な幅20ミクロンの矩形領域を照明でき、それにより、集合体上を移動させられた時点で同時に数多くのフィーチャを書込みながら4mmの集合体バンドまたはストライプを走査できる。典型的には、照明を受ける部域と転写を受ける部域の間にはほぼ1対1という公知の関係が存在する。未照明部域に縁どられた隣接する照明されたビームセットによって転写される幅が、局所的幅を画定する。多重ビーム露光用ヘッドの走査は、毎秒0.1、1、2、5および10メートルまたはその間などの任意の適切な速度で発生し得る。露光速度および持続時間は、1つの部域またはフィーチャの局所的長さを画定する。光のビームは、線形光弁などの任意の従来技術によって変調され得る。Gelbartは、米国特許第5,517,359号明細書中で適切な装置について記述している。
【0111】
本明細書および特許請求の範囲に関して、「熱転写」という用語は従来通りに用いられている。熱転写の様式は、照射タイプ、転写層内の材料のタイプなどによって変動し得、典型的には1つ以上の機序を介して発生し、それらのうちの1つ以上のものは、露光条件、ドナーの構成などに応じて転写中に強調度が増減され得る。以下の熱転写様式は、本発明を限定するものではなく、本発明の考えられる実施形態を例示することだけを目的として示されている。
【0112】
推測される1つの熱転写機序としては、熱メルト・スティック(thermal melt−stick)転写があり、これによると、転写層とドナー要素の残りの部分間の界面における局在化した加熱が、選択された場所におけるドナーに対する熱転写層の接着を低下させることができる。熱転写層の選択された部分は、ドナー要素が除去された時点で転写層の選択された部分がレシーバー要素上に残るような形で、ドナーに対してよりもレシーバー要素に対してより強力に接着できる。推測される別の熱転写機序としては、アブレーション転写があり、これによると、ドナー要素から転写層の一部分をアブレーションにより除去するために局在化された加熱を使用し、それによりアブレーションを受けた材料をレセプタに向かって導くことができる。さらに別の推測される熱転写機序としては、昇華があり、これによると転写層内に分散した材料(例えば染料)をドナー要素内で発生した熱によって昇華させることができる。昇華した材料の一部分は、レセプタ上に凝縮し得る。染料拡散熱転写も可能であり、この場合、染料はドナー要素の転写層からレシーバー要素まで、転写層の大規模な転写無く拡散する。
【0113】
熱転写は、レーザー誘起フィルム転写(LIFT)および、複数の転写材料が存在する場合ならびに1つの材料層が転写層を形成する場合に利用される、マルチ−LIFTと呼ばれる機序を利用することができる。かかるシステムは、米国特許第5,935,758号明細書(Patelら)および米国特許第6,899,988号明細書(Kidnieら)の中で報告された。LIFTまたはマルチ−LIFTシステムを用いて、ドナー要素からレシーバー要素まで、例えば結合剤、着色剤および添加剤のうちの1つなどの転写層の離散的ドットを転写することによって、ハーフトーン画像を形成させることができる。ドットは、溶融または軟化したフィルムから形成され得、密度またはエッジ解像力に関して比較的鮮明である明確で一般的に連続したエッジを有する。換言すると、ドットはその部域全体にわたり、比較的均等な厚みをもって形成される。染料転写法には、結合剤無しの着色剤の転写が関与し得、アブレーションといった一部の物質転写法は、転写材料の一部分を推進できるが、少なくとも部分的に結合剤を分解する。
【0114】
熱物質転写プロセスが本発明の実施形態において有用である。熱物質転写プロセスには、転写層の一質量または体積が全体的組成に有意な変化無しにレシーバー要素まで移動する熱転写プロセスが含まれる。理想化された熱物質転写は、転写層の体積全体をドナー要素の一部域から移動すると思われるが、実用的には、転写層の残渣がドナー要素上にとどまっている場合および露光の熱プロセスが部分的分解または架橋などの転写層の幾分かの変化をひき起こす場合も許容できる。したがって、熱物質転写には、少なくともアブレーション転写、レーザー誘起フィルム転写および溶融転写が包含されるが、染料拡散転写および昇華転写は除外される。
【0115】
露光の間、熱転写ドナー要素を、(典型的に、熱メルト・スティック転写機序の場合がそうであると考えられるように)レシーバー要素と密に接触させることができ、あるいは(アブレーション転写機序または転写材料昇華機序の場合そうであり得るように)レシーバー要素から熱転写ドナー要素まで幾分か距離をとることができる。
【0116】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「放射線誘起熱転写プロセス」という用語は、従来通りに使用される。例えば、近赤外線レーザーによって生成される放射線を用いて、集合体の支持層の全てではないが一部の部域を照明し、本明細書の他の場所で論述されている通り転写層を転写させる。露光は、「放射線誘起熱転写プロセス」をひき起こし、支持層を通してかまたはレシーバー要素を通して適切に行なわれる。
【0117】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「画像」という用語は従来通りに使用される。画像はバイレベルかまたは連続階調(コントーン)であり得る。一実施形態では、本発明の有用性はバイレベル画像形成にまで拡がっている。バイレベル画像形成においては、画像形成された部域内でレシーバー要素上に被着される転写層の百分率は相対的に100%に近く、成功した画像形成出力範囲全体にわたりほぼ恒常である。この百分率は基本的に、連続階調画像形成の場合のように露光出力の変化により0%〜100%まで連続的に変動するわけではない。バイレベル画像形成は、線画、ハーフトーン画像形成および製造例えばカラーフィルタ生産に適切である。バイレベル画像形成における有用性で知られる集合体露光の機序としては、溶融転写、アブレーション転写およびレーザー誘起フィルム転写が含まれる。
【0118】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「ドナー要素」という用語は、従来通りに使用される。例えば、ドナー要素は、支持層およびレシーバー要素に「提供され」得る転写層を含む。ドナー要素は典型的に、放射線を吸収し、放射線をより直接的に転写をひき起こす熱へと変換する少なくとも1つの構成要素を含んでいる。
【0119】
ドナー要素からレシーバー要素への光誘起材料転写用の画像形成可能な集合体の中で、レシーバー要素と共に使用するためのドナー要素には、標準的に多数の層が含まれている。層は、支持層、光−熱変換(LTHC)層および転写層を含み得るが、これらに限定されない。典型的には、50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムなどの支持層に、光−熱変換層前駆体がその後コーティングされる。次にこの前駆体は、水および/または溶剤を除去するため乾燥により最終的な光−熱変換層に変換され、その後、転写層前駆体が支持層の反対側の光−熱変換層上にコーティングされ、乾燥により転写層へと変換される。
【0120】
ドナー要素の層内に吸収されるレーザー光などの放射線の量を増加させるために、ドナー要素内に吸光剤を含み入れることができる。この吸光剤は、数多くの形態を取ることができるが、典型的には画像形成のために用いられるレーザー光の効率の良い吸収体である。効率の良い吸収体は少量で使用でき、選択的吸光体は、ドナー要素そして特に転写層の色または透明度などのその他の光学的特性と干渉する確率が低い。
【0121】
典型的には、吸光剤は、好ましくは画像形成用レーザー光の中に見出されるような電磁スペクトルの赤外線、可視光線および/または紫外線領域内の光を吸収する。吸光剤は、典型的には、選択された画像形成用レーザー光を高レベルで吸収し、一実施形態においては0.2〜3の範囲内そして別の実施形態では0.5〜2の範囲内の画像形成用レーザー光波長で吸光度を提供する。吸光度は、a)(典型的には最短方向における)層を通して透過された光の強度および、b)層に対する入射光の強度の比の対数(十進法)の絶対値である。例えば、1という吸光度は、入射光強度の10%の透過に対応し、0.4超の吸光度は、入射光強度の約40%未満の透過に対応する。
【0122】
適切な光吸収材料としては、例えば染料(例えば可視染料、紫外染料、赤外染料、蛍光染料および光偏光染料)、顔料、金属、金属化合物、金属フィルムおよびその他の適切な吸収材料が含まれ得る。適切な吸光剤の例としては、カーボンブラック、グラファイト、金属酸化物、金属硫化物、有機化合物例えばシアニン系、ポリメチン系、アズレニウム系、スクアリリウム系、チオピリリウム系、ナフトキノン系またはアントラキノン系染料;およびフタロシアニン系、アゾ系またはチオアミド系有機金属錯体が含まれ得る。シアニン染料は、赤外線領域内で高い吸収係数を示すことから、好ましくは赤外線レーザー照明と共に使用され、光−熱変換材料として用いられる場合、レーザー光吸収層の厚みを薄くすることができ、その結果、ドナー要素の画像形成感度をさらに改善することができる。
【0123】
吸光剤は、転写層内または別の層、例えば転写層と支持層の間の層の中に存在し得る。吸光剤を含む転写層から分離した層は、レーザー光での画像形成中、吸光剤が光を吸収し熱を発生させることから、光−熱変換層と呼ぶことができるが、レーザー照明の画像形成された領域内の画像形成された転写層の中に見出される吸収体とは対照的に、実質的または完全に転写され得ない。
【0124】
本発明においては、支持層と転写層は、光−熱変換層をはさむことができる。ドナー要素は任意にその他の層、例えば、支持層と転写層の間に配置された層(例えば中間層)、転写層の反対側の支持層上に配置された層(例えば帯電防止層)、および支持層の反対側の転写層上に配置された層(例えば接着剤層)を含んでいてよい。接着剤層は熱物質転写により転写されると考えられ、そのような場合、接着剤層は転写層が多数の異なる層からなっている状態で転写層の一部とみなされると考えられる。かかる多層転写層は周知である。
【0125】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「支持層」という用語は、従来通りに使用される。支持層は、例えば製造中、画像形成可能な集合体を作る際に、および集合体の露光の後画像形成されたレシーバー要素から使用されたドナー要素を分離する際に、ドナー要素をその機能層と共に取扱う実用的手段を提供することができる。このような態様においては、支持層は従来通りであり、露光中に実質的に変化し得る(例えば、作成、移動、分解、溶融など)層のための基板として作用する。露光の副作用として、支持層も変化を受けるかもしれないが、これらの変化によって、その他の層を担持する上での支持層の有用性が無くなるわけではない。
【0126】
支持層はポリマーフィルムであり得る。ポリマーフィルムの1つの適切なタイプは、ポリエステルフィルム、例えばポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートフィルムである。しかしながら、特定の利用分野のための充分な機械的および熱的安定性、そして任意には特定の波長での高い光透過性を含めた充分な光学特性を有するその他のフィルムを使用することができる。支持層のための適切なポリマーの例としては、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリビニル樹脂、またはポリエステルが含まれる。一実施形態においては、支持層のために合成線状ポリエステルが使用される。
【0127】
支持層として有用な合成線状ポリエステルは、1つ以上のジカルボン酸またはその低アルキル(最高6個の炭素原子)ジエステル、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5−、2,6−または2,7−ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、ヘキサヒドロ−テレフタル酸または1,2−ビス−p−カルボキシフェノキシエタン(任意には、ピバリン酸などのモノカルボン酸を伴う)を、1つ以上のグリコール、特に脂肪族または脂環式グリコール、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールと縮合させることにより得ることができる。芳香族ジカルボン酸が好適である。脂肪族グリコールが好適である。ヒドロキシカルボン酸モノマー、例えばω−ヒドロキシアルカン酸(典型的にはC3〜C12)、例えばヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸または2−ヒドロキシナフタレン−6−カルボン酸に由来する単位を含有するポリエステルまたはコポリエステルを使用してもよい。一実施形態においては、ポリエステルは、ポリエチレンフタレートおよびポリエチレンナフタレートから選択される。
【0128】
支持層は、上述のフィルム形成材料の1つ以上の個別層を含んでいてよい。それぞれの層のポリマー材料は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、支持層は、1、2、3、4または5層以上の層を含んでいてよく、典型的多重層構造は、AB、ABA、ABC、ABAB、ABABAまたはABCBAタイプのものであってよい。
【0129】
支持層の形成は、従来の技術によって行われてよい。支持層の形成は押出し加工によって実施されるのが好適である。一般的には、プロセスは、溶融ポリマー層を押出し加工するステップ、押出物を急冷するステップ、および急冷した押出物を少なくとも1つの方向に配向するステップを含んでいてよい。
【0130】
支持層は何度でも配向しまたは配向解除でき、例えば一軸配向または二軸配向してよい。配向は、例えばチューブ成形プロセスまたは平担フィルムプロセスなど、配合フィルムを生産するための当該技術分野において公知のあらゆるプロセスによって実施してよい。二軸配向は、フィルム平面内で2つの互いに直交する方向に延伸して機械的および物理的特性の満足のいく組合せを達成することによって実施され得る。
【0131】
支持層は典型的には薄くコーティング可能であり、それにより均等なコーティングを適切に適用し後続する層中に濃縮させることができるようになっており、最終的な多層ドナー要素はシートまたはロール形状で適切に取扱うことができる。支持層組成物は同様に、典型的には、露光中の光−熱変換層の加熱にも関わらず安定した状態にとどまる材料から選択される。支持層の典型的厚みは、約0.005〜約0.5mmの範囲内、例えば約15μm、約25μm、約50μm、約100μmまたは約250μmの厚みのフィルムであってよいが、より厚いまたは薄い支持層を使用してもよい。支持層の幅および長さの寸法は、画像形成すべきレシーバー要素の寸法および取扱い上の便宜に合わせて選択され、例えば幅約0.1〜約5m、長さ約0.1〜約10,000mである。
【0132】
ドナー要素用支持層としては、金属蒸着フィルムを使用することができる。具体例としては、ポリエチレンテレフタレートまたはポリオレフィンフィルムを含む単層または多層フィルムがある。有用なポリエチレンテレフタレートフィルムとしては、MELINEX(登録商標)473(厚み100μm)、MELINEX(登録商標)6442(厚み100μm)、MELINEX(登録商標)LJX111(厚み25μm)およびMELINEX(登録商標)453(厚み50μm)があり、任意にはCP Films(Martinsville, VA)製金属クロムで50%の可視光線透過率まで金属蒸着されている。金属層を、転写層側または転写層の反対側に配向することができる。上述のような金属層は、転写層側に配向された場合に熱転写をひき起こすべく放射線吸収体および発熱体として作用することができる。
【0133】
例えば、全て本明細書に参照により援用されているMizunoらの米国特許第6,228,543号明細書にあるような中間層または剥離層、Ellisらの米国特許第5,171,650号明細書中にあるような動的剥離層、またはCasparらの米国特許第6,569,585号明細書にあるような放出層などのその他の従来通りの層を、本発明のドナー要素中に使用することもできる。
【0134】
支持層は、通常光−熱変換層または転写層に到達する前に支持層に衝突する露光用放射線に対し適度な透過性を有し、通常は例えば露光用波長で約90%以上の光線透過率を有する支持層である。支持層は単層または多重層であり得る。同様に、光反射を削減するため、一般的には支持層の外側に反射防止層を形成させてもよい。
【0135】
本仕様書および特許請求の範囲に関連して、「転写層」という用語は、従来通り使用される。転写層は、転写可能な材料を保持するのに役立つ。典型的なドナー要素においては、少なくとも1つの層が転写層内に含み入れられており、2つ以上の層で転写層を作り上げることができる。転写層は内部側面と外部側面を有する。前記転写層の外部側面は、放射線による像様転写のため画像形成可能な集合体のレシーバー要素に隣接して設置される。転写層は、選択的に転写され得る結合剤を伴ってまたは伴わずに1つ以上の層内に配置されている任意の適切な1つのまたは複数の材料を含み得る。転写は、任意の適当な転写機序によって1ユニットとして、複数の部分に分かれて、または部分的に行なうことができる。転写は、集合体の中で吸収体により吸収され得る露光用放射線に集合体を露光した時に発生し、放射線の電磁エネルギーの少なくとも一部分が熱に変換される。像様転写においては、転写される材料が、転写層の全物質である必要はない。単一の部分内の転写層の他の構成要素をドナー要素に保持させたまま、一部の構成要素をレシーバー要素に対し選択的に転写してもよい(例えば、染料を保持する耐熱性架橋ポリマーマトリクスを未転写のままにとどめて、昇華可能な染料を転写してよい)。
【0136】
転写層は、レシーバー要素に対する転写のためおよび画像形成されたレシーバー要素またはドナー要素上で必要な機能を遂行するため機能性を維持できる任意の厚みをもつものであってよい。転写層の典型的厚みは、約0.1μm〜約20μm;例えば0.2、0.5、0.8、1、2、4、6、8、10、15または20μmであってよい。
【0137】
転写層は、有機、無機、有機金属または重合体材料を含む多数の構成要素を含んでいてよい。転写層としておよび/または転写層内に取込まれた材料としてドナー要素から選択的にパターニングされ得る材料の例としては、着色剤(例えば結合剤中に分散させた顔料および/または染料)、偏光子、液晶材料、粒子(例えば液晶ディスプレー用のスペーサ、磁気粒子、絶縁粒子、伝導性粒子)、発光物質(例えば蛍光体および/または有機エレクトロルミネセンス物質)、発光デバイス(例えばエレクトロルミネセンスデバイス)中に取込んでよい非発光材料)、疎水性材料(例えばインクジェットレセプタ用の区画バンク(patition bank))、親水性材料、多層スタック(例えば有機エレクトロルミネセンスデバイスなどの多層デバイス構造)、微細構造またはナノ構造層、エッチ−レジスト、金属、金属構成要素を有する材料、ポリマー、接着剤、結合剤、およびバイオ材料、およびその他の適当な材料またはかかる材料の組合せが含まれる。
【0138】
転写層は、支持層または支持層に隣接するその他の適切なドナー要素上にコーティングすることによって適用可能である。転写層またはその前駆物質は、バーコーティング、グラビアコーティング、押出しコーティング、蒸着、ラミネート加工、およびその他のこのような技術などの、任意の適切な材料コーティング用技術により適用してよい。コーティングに先立って、またはその後またはそれと同時に、架橋可能な転写層材料またはその一部分を、材料に応じて例えば加熱、放射線露光および/または化学硬化剤に対する露光により架橋してよい。
【0139】
一実施形態においては、転写層は、ディスプレーの利用分野において有用である材料を含んでいる。本発明にしたがった熱転写は、フォトリソグラフィベースのパターニング技術の場合に比べて少ない加工ステップを用いて高い精度および正確さでレシーバー要素上に1つ以上の材料をパターニングするために実施され得、したがって、ディスプレー製造などの利用分野で特に有用であり得る。例えば、レシーバー要素への熱転写時点で、同じ要領でパターニングされ得るまたはされ得ないその他の要素と組合せた状態でまたは単独で、転写された材料がカラーフィルタ、黒色マトリクス、スペーサ、バリヤ、隔壁、偏光子、位相差層、波長板、有機導体または半導体、無機導体または半導体、有機エレクトロルミネセンス層、蛍光体層、有機エレクトロルミネセンスデバイス、有機トランジスタおよび、ディスプレー内で有用であり得るその他のこのような要素、デバイスまたはその一部分を形成するような形で、転写層を作ることができる。
【0140】
特定の実施形態においては、転写層は、着色剤を含み得る。例えば、顔料または染料を着色剤として用いてよい。一実施形態においては、優れた色持続度および透明度を有する顔料、例えばNPIRI Raw Materials Data Handbook、第4巻(顔料)中で開示されている顔料が使用される。適切な透明着色料の例としては、Ciba−Geigy Cromphtal Red A2B(登録商標)、Dainich−Seika ECY−204(登録商標)、Zeneca Monastral Green 6Y−CL(登録商標)およびBASF Heliogen Blue L6700(登録商標)が含まれる。その他の適切な透明着色料としては、Sun RS Magenta 234−007(登録商標)、Hoechst GS Yellow GG 11−1200(登録商標)、Sun GS Cyan 249−0592(登録商標)、Sun RS Cyan 248−061、Ciba−Geigy BS Magenta RT−333D(登録商標)、Ciba−Geigy Microlith Yellow 3G−WA(登録商標)、Ciba−Geigy Microlith Yellow 2R−WA(登録商標)、Ciba−Geigy Microlith Blue YG−WA(登録商標)、Ciba−Geigy Microlith Black C−WA(登録商標)、Ciba−Geigy Microlith Violet RL−WA(登録商標)、Ciba−Geigy Microlith Red RBS−WA(登録商標)、Heucotech Aquis II(登録商標)シリーズのいずれか、Heucosperse Aquis IIIシリーズのいずれかなどが含まれる。本発明において着色剤として使用できる別の部類の顔料は、Ciba Geigyから入手可能なものなどのさまざまな潜在顔料である。熱画像形成による着色料の転写は、米国特許第5,521,035号明細書;5,695,907号明細書;および5,863,860号明細書の中で開示されており、本明細書に参照により援用されている。
【0141】
一部の実施形態においては、転写層は、有機エレクトロルミネセンスディスプレーおよびデバイスまたは蛍光体ベースのディスプレーおよびデバイスなどの電子放出ディスプレーにおいて有用である1つ以上の材料を含むことができる。例えば、転写層は、架橋発光ポリマーまたは架橋電荷輸送材料、ならびに架橋されているか否かに関わらずその他の有機導体または半導体材料を含むことができる。ポリマーである有機発光ダイオード(OLED)については、最終的OLEDデバイスの安定性を増強するべく有機層のうちの1つ以上のものを架橋することが望ましいことがある。熱転写に先立ちOLEDデバイスのために1つ以上の有機層を架橋することも望ましいことがある。転写前の架橋は、より安定したドナー媒体、OLEDデバイス内でのより優れた転写および/またはより優れた性能特性を導くと考えられるフィルムの形態に対するより優れた制御を提供することができ、かつ/または1つまたは複数のデバイス層内の架橋が熱転写に先立って実施される場合により容易に調製され得るOLEDデバイスおよび/または独特のOLEDデバイスの構築を可能にすることができる。
【0142】
発光ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ−パラ−フェニレン(PPP)およびポリフルオレン(PF)がある。本発明の転写層内で有用であり得る架橋可能な発光材料の具体例としては、Liら、Synthetic Metabs、第84号、437〜438頁(1997年)中で開示されている青色発光ポリ(メタクリレート)コポリマー、Chenら、Synthetic Metals、第107号、203〜207頁(1999年)中で開示されている架橋可能なトリフェニルアミン誘導体(TPA)、Klarnerら、Chem.Mat.第11号、1800〜1805頁(1999年)中で開示されている架橋可能なオリゴおよびポリ(ジアルキルフルオレン)、FarahおよびPietro、Polymer Bulletin、第43号、135〜142頁(1999年)中で開示されている部分架橋ポリ(N−ビニルカルバゾール−ビニルアルコール)コポリマー、およびHiraokaら、Polymers for Advanced Technologies、第8号、465〜470頁(1997年)中で開示されている酸素架橋ポリシランが含まれる。
【0143】
本発明の転写層内で有用であり得るOLEDデバイスのための架橋可能な転写層材料の具体例としては、シラン官能化トリアリールアミン、Bellmannら、Chem.Mater、第10号、1668〜1678頁(1998年)中で開示されているペンダントトリアリールアミンを伴うポリ(ノルボルネン)、Bayerlら、Macromol.Rapid Commun.第20号、224〜228頁(1999年)中で開示されているビス官能化ホール輸送トリアリールアミン、米国特許第6,030,550号明細書中で開示されているさまざまな架橋導電性ポリアニリンおよびその他のポリマー、国際公開第97/33193号パンフレット中で開示されている架橋可能なポリアリールポリアミン、および特開平9−255774号公報中で開示されている架橋可能なトリフェニルアミン含有ポリエーテルケトンが含まれている。
【0144】
本発明の転写層中で使用される発光、電荷輸送または電荷注入材料は同様に、熱転写の前または後に中に取込まれるドーパントを有していてもよい。ドーパントは、発光特性、電荷輸送特性および/またはその他のこのような特性を改変させるかまたは増強するために、有機発光ダイオード(OLED)用の材料中に取込まれてよい。
【0145】
発光ディスプレーおよびデバイスの利用分野のためのドナーシートからレシーバー要素への材料の熱転写は、米国特許第5,998,085号明細書および6,114,088号明細書中および国際公開第00/41893号パンフレットの中で開示されている。
【0146】
転写層は任意には、さまざまな添加物を含むことができる。適切な添加物としては、吸光剤、例えばIR吸収剤、UV吸収剤または可視光線吸収剤;分散剤、界面活性剤、安定剤、可塑化剤、架橋剤およびコーティング助剤が含まれ得る。転写層は同様に、染料、可塑化剤、UV安定化剤、フィルム形成添加剤および接着剤を含めた(ただしこれらに限定されない)さまざまな添加物も含んでいてよい。転写層のための適切な吸光剤およびそれらの使用条件は、光学的光−熱変換層についての項で論述されているものと同じである。
【0147】
結合剤を伴う転写層では、結合剤の任意のポリマーが、熱に曝されている間に達する温度で望ましくないほどに自己酸化、分解又は崩壊することがなく、それにより転写層の露光された部域が損傷を受けないのが典型的である。適切な結合剤の例としては、スチレンと(メタ)アクリレートエステルおよび酸のコポリマー、例えばスチレン/メチル−メタクリレートおよびスチレン/メチル−メタクリレート/アクリル酸、スチレンとオレフィンモノマーのコポリマー、例えばスチレン/エチレン/ブチレン、およびスチレンとアクリロニトリルのコポリマーを含めたスチレンポリマーおよびコポリマー;フルオロポリマー;エチレンおよび一酸化炭素とのものを含めた(メタ)アクリル酸および対応するエステルのポリマーおよびコポリマー;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリウレタン;ポリエーテル;およびポリエステルが含まれる。上述のポリマーのためのモノマーは、置換されているかまたは未置換であり得る。ポリマーの混合物も同様に使用可能である。その他の適切な結合剤としては、塩化ビニルポリマー、酢酸ビニルポリマー、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル−クロトン酸コポリマー、スチレン無水マレイン半エステル樹脂、(メタ)アクリレートポリマーおよびコポリマー、ポリ(ビニルアセタール)、無水物およびアミンで修飾されたポリ(ビニル)アセタール)、ヒドロキシアルキルセルロース樹脂およびスチレンアクリル樹脂が含まれる。
【0148】
本発明の一実施形態においては、ドナー要素は、厚み約50ミクロンのポリエチレンテレフタレートの支持層に水性担体中の転写層をコーティングしたものであり、乾燥されておよそ2.5ミクロンの転写層厚みを提供する。水性担体中の適切な転写層は、カルボン酸含有量が3.6mM/gで約10,000原子質量単位の重量平均分子量をもつ37〜55乾燥重量部分の第1のスチレン−アクリルコポリマー;1.5〜4:1の顔料対結合剤重量比をもち30〜55乾燥部分の1つ以上の顔料分散;カルボン酸含有量が3.6mM/gで重量平均分子量約4000の0〜6乾燥部分の第2のスチレン−アクリルコポリマー;6〜10乾燥部分のカルボン酸架橋剤;1〜1.5乾燥部分の近IR吸収性顔料2−[2−[2−クロロ−3[2−(1,3−ジヒドロ−1,1ジメチル−3−(4−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−2H−ベンズ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−クロロヘキセン−1−イル]エテニル]−1,1−ジメチル−3−(スルホブチル)−1H−ベンズ[e]インドリウム、内塩、遊離酸、ピーク吸光度約850nMのH.W.Sands and Co.(Jupiter,Florida)製のCAS#[162411−28−1];0.5部分の界面活性剤および0.5部分の消泡剤で作製されていた。
【0149】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「レシーバー要素」という用語は、従来通りに使用される。レシーバー要素は、露光パターンにしたがって転写層から材料の転写を受入れる物体である。レシーバー要素は、任意の物体、典型的にはシート状の物体、例えば単一層、または多層要素で構成されていてよい。レシーバーが転写された画像を保持することができること、そして適正な寸法上の安定性を有することという点を除いて、レシーバー内での利用に適した材料に対する特別な制限はない。レシーバー要素は、寸法的に安定したシート材料または剛性の物体を含むことができる。集合体は、レシーバー要素が充分に透明である場合、この要素を通して露光され得る。レシーバー要素のための透明なフィルムの例としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリ(ビニルアルコール−コ−アセタール)、ポリエチレンまたはセルロースエステル、例えば酢酸セルロースが含まれる。不透明なレシーバー要素材料の例としては、例えば、二酸化チタンなどの白色顔料で充填されたポリエチレンテレフタレート、アイボリーペーパーまたはTyvek(登録商標)スパンボンデッドポリオレフィンなどの合成紙が含まれる。校正用の利用分野のためには紙製支持体が典型的で好適であり、一方医療用ハードコピーおよびカラーフィルタアレイの利用分野のためにはポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル支持体が典型的で好適である。レシーバー要素の中では、粗面化された支持体も同じく使用してよい。ガラス板またはガラスカラーフィルタ基板などの剛性物体も、レシーバー要素となり得る。レシーバー要素には、レシーバー層、変形可能層、剥離層、およびレシーバー支持層などの層の1つ以上の例が含まれ得る。その他の有用なレシーバー要素構成要素も同様に、1996年7月9日付けの米国特許第5,534,387号明細書中で開示されている。
【0150】
レシーバー要素は、ディスプレーの利用分野に適したあらゆるタイプの基板またはディスプレー要素または前駆体であってよい。液晶ディスプレーまたは発光ディスプレーなどのディスプレー内で使用するのに適したレシーバー要素としては、可視光を実質的に透過する剛性または可撓性基板が含まれる。剛性レシーバー要素の例としては、ガラス、インジウム−酸化錫コーティングされたガラス、低温ポリシリコン(LTPS)および剛性プラスチックが含まれる。適切な可撓性基板としては、実質的に透明で透過性のあるポリマーフィルム、反射性フィルム、非複屈折フィルム、半透過型フィルム、偏光フィルム、多層光学フィルムなどが含まれる。適切なポリマー基板としては、ポリエステルベース(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアセタールなど)、セルロースエステルベース(例えば三酢酸セルロース、酢酸セルロース)およびさまざまな画像形成技術において支持体として使用されるその他の従来のポリマーフィルムが含まれる。約2〜約200ミル(すなわち0.05〜5mm)の透明なポリマーフィルムベースが好まれる。
【0151】
ガラスレシーバー要素について、典型的厚みは約0.2〜2.0mmである。約1.0mm以下の厚みまたはさらには0.7mm以下の厚みをもつガラス基板を使用することが往々にして望ましい。より薄い基板は、結果としてより薄く軽量のディスプレーをもたらす。しかしながら一部の加工、取扱いそして組立て条件は、より厚い基板を使用することを示唆するかもしれない。例えば、一部の組立て条件は、基板の間に配置されたスペーサの位置を固定するためにディスプレーアセンブリの圧縮を必要とするかもしれない。より軽量のディスプレーのための薄い基板、そして取扱いおよび加工の際の高い信頼性のための厚い基板という競合関係のバランスを保って、特定のディスプレー寸法のための好ましい構造を達成することができる。
【0152】
レシーバー要素がポリマーフィルムである場合、それが組込まれる予定のディスプレーの作動との干渉を実質的に防止するべくフィルムを非複屈折にすることが好ましいかもしれず、そうでなければ、所望の光学的効果を達成するようにフィルムを複屈折フィルムとすることが好ましいかもしれない。例示的非複屈折レシーバー要素は、溶液流延されるポリエステルである。これらの典型的な例は、9,9−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−フッ素およびイソフタル酸、テレフタル酸またはその混合物から誘導される反復する共重合単位からなるかまたは本質的にこれらからなるポリマーから誘導されたものであり、このポリマーは、均一なフィルムを形成できるようにオリゴマー(すなわち約8000以下の分子量を有する化学種)含有量が充分低いものである。このポリマーは、本明細書に参照により援用されている米国特許第5,318,938号明細書中で熱転写レシーバー要素内の1つの構成要素として開示されている。別の部類の非複屈折基板は、非晶質ポリオレフィン(例えば、日本ゼオン株式会社からZEONEXという商品名で販売されているもの)である。例示的な複屈折ポリマーレシーバー要素としては、全て本明細書に参照により援用されている米国特許第5,882,774号明細書および5,828,488号明細書中、および国際公開第95/17303号パンフレット中で開示されているものなどの多層偏光子またはミラーが含まれる。
【0153】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「集合体」という用語は、従来通りに使用されている。例えば、集合体はレシーバー要素およびそれと隣接して転写層と整列されたドナー要素を含む。ドナー要素とレシーバー要素は接触させられるかまたは間欠的に接触させられ、典型的には集合体内の力により合わせて保持されている。
【0154】
集合体を形成するべくドナー要素(10)とレシーバー要素(40)を合わせて保持するためには真空および/または圧力を使用できる。真空テーブルが、集合体を形成しそれを露光用に位置づけするための適切な方法を提供する。一実施形態においては、レシーバー要素は真空テーブル上に設置され、より広く長いドナー要素が、レシーバー要素を完全に被覆し真空テーブル上に重複するように位置づけされる。真空テーブルは、ドナー要素とレシーバー要素の間の大気圧が低くなりこれらが合わせて引き付けられるまでこれらの要素の間の空気を吸引する。真空が気泡を引き出すレシーバー要素の外部エッジまで捕捉された気泡を押しやるために、ローラーを使用することができる。典型的には、この排出により、転写層の外部表面およびレシーバー要素の外部表面は、例えばマスクまたは標的が介入するのでないかぎり、接触することになる。要素の各表面が平滑である場合、この接触は広い部域にわたり密で連続的であり得る。いずれかの表面が充分平滑でない場合、接触は間欠的になり得る。例えば、いずれかの要素上に粗面化された表面を存在させることで気泡の捕捉を回避することができ、粗面化により連続的接触を防止することができる。以前に画像形成されたレシーバー要素は、以前の画像形成に由来する転写層の突出した部域を有することによって、ドナー要素がレシーバー要素のトポグラフィに完全に適合するのを防ぐことができる。ウィンドウ要素を画定するブラックマスクを担持するガラス基板のカラーフィルタアレイなどの元来平面でないレシーバー要素も同様に、ドナー要素がレシーバー要素のトポグラフィに完全に適合しないようにすることができる。
【0155】
1つの変形形態として、集合体は周囲で溶融により一緒に保持され得る。別の変形形態においては、ドナー要素とレシーバー要素を一緒にテープで固定することによって集合体を一緒に保持することができ、次に集合体を画像形成装置にテープで固定するかまたはピン/狭持システムを使用することができる。さらに別の変形形態としては、ドナーをレシーバー要素に対しラミネート加工して集合体を形成することができる。集合体は、適切にはレーザー露光を容易にするようにドラム上に取付けることができる。当業者であれば、フラットベッド、内部ドラム、キャプスタン駆動などのさまざまなアーキテクチャも本発明と共に使用できることを認識する。
【0156】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「露光(する)」という用語は、従来通りに使用される。例えば、画像形成には、露光の一形態が関与する。光は、電磁放射線としての性質を有し露光に用いられる放射線の一形態である。露光のための放射線の使用は、以上で示されている。
【0157】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「分離(する)」という用語は、従来通りに使用される。例えば、使用されたドナー要素全体が画像形成されたレシーバー要素から分離される場合、レシーバー要素とドナー要素の転写層の接触はことごとく失なわれる。集合体を一緒に保持する力は、分離中に除去されるか克服される。分離の後、典型的には異なる場所に多数の異なる転写層を設置して、原初のレシーバー要素の官能化を続行するため、典型的には新しいドナー要素を用いて新しい集合体を形成することが可能である。
【0158】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「処理(する)」という用語は、分離に先立って行なわれる露光された集合体の発明力ある操作について用いられている。処理は、集合体全体またはその一部分の処理、または集合体全体の一部分毎の処理を包含し得る。一実施形態においては、一集合体のいくつかの部分の処理は、他の部分がすでに処理されてはいるものの分離されておらず、またさらにその他の部分がすでに処理されかつ分離されており、またいくつかのさらにその他の部分が処理無く分離されている一方で、不完全あるいは未開始であってもよい。
【0159】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「相対的移動」という用語は、従来通りに使用される。例えば、支持層およびレシーバー要素が相対的移動を行なう場合、これらは異なる量の移動かまたは異なる方向への移動を行なう。量の差は、例えば0.01ミクロン、0.1ミクロン、1ミクロン、3ミクロンまたは10ミクロン未満と小さいものであり得、方向の差異は例えば0.001ラジアン、0.01ラジアン、または0.1ラジアンといった小さいものであり得る。
【0160】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、基準に対し「実質的に平行」という用語は、従来通りに使用される。実質的に平行というのは、例えば支持層(レシーバー要素に隣接する支持層表面を意味する)などの基準に対して平行な1つのベクトルとこのベクトルに垂直な任意の別のベクトルとを含む多くとも2つの直交する方向ベクトルへと分解される場合、この1つのベクトルが直交する他方のベクトルと大きさが同じかまたはより大きいものである方向を意味する。
【0161】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「接着性」および「接着性表面」という用語は、従来通りに使用される。接着性表面は、好ましくは一時的にかつ残渣を残すことなく、接触した物体に貼り付く。表面は単純な試験により接着性とみなされる。すなわち、接着性表面を担持する画定されたローラーにポリエチレンテレフタレートストリップを接着させ、規定の条件下で接着性表面からストリップを除去し、除去のための時間が閾値を上回った場合、その表面は接着性である。本明細書にあるようには容易に試験できない材料については、試験可能な適切な材料に対する試験できない材料の相対的接着力に関して簡便な比較を行ない、集合体の支持層に対しいずれがより頑強にまたは同等に頑強に接着するか、したがって適切であるために同等またはそれ以上の接着力を有するかを判定することができる。
【0162】
接着剤の存在および粘性を実証するための試験は、23℃(73°F)前後の温度でかつ40パーセント前後の相対湿度で実施される。接着剤は、1〜40cmの直径をもつローラー上で得られる。ローラー、つまり例えばローラーがその外部表面上に接着剤を担持し、不動化されたローラーの1つの円形端部をストリップの存在について観察することができるような形で水平に整列される。接着力を試験するために、未処理の側面を有するポリエチレンテレフタレートのストリップが用いられる。このストリップは、厚み50ミクロン(2ミル)×幅25mm×長さ560mmである。1つの25mmエッジのストリップを、水平ローラー上の観察される端部の近く、観察される円形端部の12時位置に置き、この25mmエッジが、固定したローラーの従来の回転軸に対して平行で、それによりストリップをローラー上に、反時計まわりに一回(長さ方向にまっすぐ、らせん状になったり円周上に多数回重なりあったりせずに)巻回させることができるようにする。ストリップはローラーのまわりに1回だけ巻回されて、ローラーの観察される端部の、見る人の観点から見て12時の位置で開始し11、10、9、・・・2時および1時の位置を網羅し、12時位置に戻って、全ての位置においてローラーに接着する。ストリップのゆるんだ端部は、接着した部分を引っ張ることなく元に折り返されて、17gのおもり(例えば小さな金属結合剤クリップ)を用いてストリップの端部で加重される。ストリップの懸垂する加重未接着部分は、自由に垂下する前に、例えば1、2および3時の位置で接着されたストリップの外側に接着できるように位置づけされる。
【0163】
接着性試験は、引きつりや揺動なく垂下するストリップの自重および加重によりストリップの加重位置が自由にかつ滑らかに垂下することを可能にし、それにより、不動のローラーからストリップの剥離を開始し、12時の位置から、1、2、3、4、5、6、7時の位置といった順で被覆解除する。開始(12時つまり最高位置の被覆解除)から6時(最下)位置の被覆解除までの時間(例えば秒単位)は、生の接着性値を測定する。被覆解除は、6時位置が被覆解除された後も続行する。
【0164】
被覆解除された半円周長についての生の時間は、同じ平均速度で50mmの長さを被覆解除するのに必要な時間に変換されて、別段の指示のないかぎり秒単位で表わされる接着性時間として試験結果を提供する。換言すると、接着性の最終値は、ローラーの円周が10cmであるとすれば生の値と同じである。換言すると、実際のローラーと正比例する速度で長さ5cmの接着剤を被覆解除するために展開したかのように値を報告するために、調和を行なう。直径8cmで円周25.13cmのローラーがポリエチレンテレフタレートストリップを12時位置から6時位置まで展開するために80.0秒という生の接着性値を有する場合、報告された(正規化された)接着性は31.8秒である。
【0165】
被覆解除のより長い時間値は、より大きな接着性を表わす。50mmに調和させて、12時から6時まで被覆解除するための時間が2秒より長い場合に、表面は充分接着性があるとみなされる。一部の実施形態においては、時間は、3、5、10、20、60、90、120、200および400秒を含む選抜された時間よりも長く、これらの各々の値は、接着性表面の別の実施形態を構成する。ローラーが非接着性である場合、ストリップは、2秒以内、典型的には1秒以内で12時から6時の位置までほどかれる。大部分の場合において、材料の無接着力は、検査により明らかであり、試験は全く必要でないが、ボーダーラインケースでは、試験を適用してもよい。
【0166】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「コンプライアント」という用語は、ASTM D2240−00によって定義される通りのショアA硬度スケール上で90以下の硬度を有し、必要な場合にローラー上で測定を行なうことを可能にする材料を記述するために用いられる。本発明をかかる実施形態に限定することなく、デュロメータの値が低くなれば集合体の支持層と処理装置の摩擦接触は改善され、処理装置の移動と支持層の移動へのカップリングが改善されるものと推測される。しかしながら、本発明が機能するためにそれが必要とされるわけではない。好ましいおよびより好ましいデュロメータ読取り値には、80未満、70未満、60未満、50未満、40未満、30未満、20未満および10未満が含まれる。
【0167】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「接着性のコンプライアント表面」という用語は、従来通りに使用される。接着性のコンプライアント表面は、本明細書においてコンプライアント材料について指摘された最大のショアAスケールコンプライアンス(ショアAスケール上で90未満)を有し、接着性(2秒超の接着性展開時間)である。好ましいのは、60未満のショアAデュロメータおよび10秒超の接着性展開時間を有する接着性のコンプライアント処理機、特にローラーである。
【0168】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「ローラー」という用語は、従来通りに使用される。ローラーは典型的には円筒形であり、その湾曲した表面上で集合体と接触する。ローラーは典型的にはその中心軸によって操作される。ローラーは回転自在であるかまたは駆動されてよい。
【0169】
従動ローラーは、集合体に対し容易にせん断移動を提供できる。駆動は、駆動の開始中に瞬間的に、またはスキッドが発生する状態での駆動中に連続的に、集合体を横断しての移動に由来する自在に回転する速度よりも高いまたは低い回転速度を生成することができる。ローラーは、閉鎖力無しで「軽い触れ」または正の力(「押圧」)、または負の力(例えばローラーが集合体に接着しているものの集合体から離れる方向の吊り上げ力を受けている場合)を伴って集合体と接触できる。
【0170】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「無色」および「有色」という用語は、従来通りに使用される。色とは、観察者に到達しうる可視光が、可視「白色」光と比べてさまざまに変化した分布を意味する。物体からの光が観察者に全くまたは無視できるほどにしか届かない場合、物体は黒色と呼ばれる。周囲の「白色」光と同じ相対量のさまざまな波長をもつ物体から強度の低減した光が観察者に達する場合、その物体または光は無色または灰色であると言われる。物体からの光が周囲の「白色」光とさまざまな可視波長での相対強度に関し異なっている場合、その物体または光は有色であると言われる。例えば、物体から観察者に達した唯一の光が可視スペクトルの長い波長に由来する場合、その物体または光は赤色であると言われる。
【0171】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「透明(な)」という用語は、従来通りに使用される。透明(な)とは、実質的散乱なく物体を通して少なくとも一部の可視光の透過を可能にする品質を意味する。透明な物体は有色でもあり得る。実質的散乱が発生する場合、その物体は、半透明または不透明と呼ぶことができる。
【0172】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「黒色マトリクス」という用語は、従来通りに使用される。カラーフィルタにおいて、黒色マトリクスは、光が存在する場合それを遮断し、典型的に、透明なそして任意には有色の基板上で使用される。黒色マトリクスは、有色透明フィルタが追加される前または後にカラーフィルタに付加され得る。一実施形態において、黒色マトリクスは、フルカラーセルまたは単色画素由来の光が別のセルまたは画素に漏出するのを防ぐ一助となる。クロムまたは酸化クロムなどの金属または金属酸化物コーティングまたは任意には結合剤中のカーボンブラックなどの顔料を黒色マトリクス材料として使用することができ、マトリクスの画定は、フォトリソグラフィまたは熱転写により実施可能である。
【実施例】
【0173】
以下に記すのは、本発明の利点を例示することを目的とした本発明の実施形態の例および比較例である。明細書には変形実施形態が示されこれらは当業者にとっては容易に明らかとなるものであることから、本発明はこれらの実施形態に限定されないということを理解すべきである。
【0174】
これらの例のための適切な一部完成したカラーフィルタレシーバー要素は、「第4世代」の長さ920mm×幅730mm×厚み0.07mmのガラスレシーバー基板(Corning Glass Company(Corning,NY))であり、各々結合剤とカーボンブラック顔料を含むおよそ幅713mm×長さ401mm×厚み0.001mmの2つの黒色マトリクスを伴う。黒色マトリクスは、ガラスが露出したほぼ矩形の開口部の矩形パターンを有し、このパターンは、幅方向に(列を横断して)1366×3=4098個の開口部と長さ方向に(行を横断して)768個の開口部、つまり合計3,147,264個の開口部を有する。各々のほぼ矩形の開口部は、およそ長さ0.492mm×幅0.144mmであり、これらは幅または長さがおよそ0.03mmの黒色マトリクスの部分によって、隣接する開口部と分離されている。部分的に仕上げられたカラーフィルタの1つのタイプにおいては、開口部3列毎に(4098のうち1366の列)、およそ長さ401mm×幅0.154mm×厚み0.002mmの青色顔料入りポリマーのストライプで被覆されており、このストライプは、隣接列間を約0.005mmだけ分離する黒色マトリクス上に重複し、同じ列内の開口部を分離する黒色マトリクスの部分を完全に被覆している。これらの青色ストライプは、これらの実施例では青色顔料およびポリマーを含む転写層の熱転写を使用して、ガラス支持体および黒色マトリクス上に設置されたが、フォトリソグラフィ技術などのその他の方法を青色層追加のために使用することもできたはずである。類似の赤色ストライプセットが、一方の側面で青色ストライプに直接隣接する別の1366本の列を被覆することができる。これらの実施例では2つ以上の実際のレシーバー要素設計が使用されたが、いかなる差異も本発明にとっては重要な意味を持たない。
【0175】
使用されたドナー要素は、ポリマー結合剤、近赤外線吸光性顔料および顔料を含む厚み約0.002mmの有色顔料入り(多くの場合緑色であるが青色または赤色での結果は不変である)転写層を一方の面上に有する少なくとも長さ1000mm×少なくとも幅800mm×厚み約0.05mmのポリエチレンテレフタレートフィルム支持層であった。近赤外吸収性顔料および結合剤を含む薄い(0.0005mm未満)の光−熱変換層は、支持層と転写層の間で任意である。
【0176】
水平に置かれた平面の真空テーブルは、青色顔料入りポリマー転写された層および任意の赤色顔料入りポリマー転写された層が有色転写層と接触した状態で、集合体の部分的に完成した適切なカラーフィルタレシーバー要素を整列させ、部分的に完成した適切なカラーフィルタレシーバー要素を真空テーブルと有色ドナー要素との間にはさんで、保持した。レシーバー要素のコーティングされていない平坦なガラス表面が、真空テーブル上に置かれる。真空テーブルは、約10,000Pa(0.1気圧)以下の少ない空気圧を維持することができた。レシーバー要素の全周囲上で、より長くより幅広のドナー要素は真空テーブルと直接接触し、それにより空気を2つの要素の間から吸引することができるようにして、レシーバー要素の青色顔料入りポリマー層および有色転写層の少なくとも一部分を接触させた。
【0177】
集合体の像様露光では、集合体の所与の部域内で約4ミリセカンドの露光時間の間、1平方センチメートルあたり約450mJの強度で小さい突合わさったレーザービーム画素からおよそ830mmのレーザー放射を発出しながら、集合体より上の一定距離で、青色顔料入りポリマーストライプの長エッジに平行な方向でおよそ毎秒1メートルで集合体に対して移動するレーザーヘッドが利用された。走査と走査の間で、レーザーヘッドは、幅広で長い集合体の必要なすべての放射線露光がより短く狭いレーザーヘッドにより達成されるように、集合体に対して適切な量だけ平行移動させられた。
【0178】
走査は、青色ストライプによって被覆されたウィンドウの列と、(存在する場合には)赤色ストライプによって被覆されたウィンドウの列との間にわたり、各ウィンドウ列上に1つずつのストライプで、有色(緑色または赤色)顔料入り転写層のストライプをレシーバー要素と結びついた状態へと転写するのに役立った。ウィンドウ列全体にわたる有色ストライプと隣接したウィンドウを画定する黒色マトリクスの整列は、対応するウィンドウ列上での青色ストライプと全く類似するものであった。
【0179】
レーザー放射は、集合体においてドナー要素のポリエチレンテレフタレート支持層を通って、本質的に支持層に対して垂直に、緑色(または赤色など)の転写層に向かって導かれた。
【0180】
これらの実施例の中で用いられた集合体の1つの分離方法は、真空が備わった巻取りローラー(「ローラー式剥離」と呼ばれる方法)であった。ローラー(長さおよそ226cm(89インチ)、直径8cm(3インチ)は、真空によってローラーに対し支持層を保持する目的でその円周の1つの場所においてその幅に沿って間隔を置いた複数行の吸引孔を含んでいた。(別段の記述がないかぎり、これらの実施例中で用いられるローラーは全て、長さがおよそ226cm(87インチ)で、直径が8cm(3インチ)である)。
【0181】
ローラーは、使用されたドナー要素の800mmの幅に沿ってレシーバー要素から離れて真空テーブルの反対側で画像形成されたドナー要素のポリエチレンテレフタレートフィルム支持層と接触するように降下させられ、それにより、ローラーの吸引孔が支持層を保持するようになっていた。その後、ローラーは、レシーバー要素に向かってその上を転動されて画像形成されたレシーバー要素から使用されたドナー要素を持ち上げ、それをローラーのまわりに巻回させ、それにより最終的には使用されたドナー要素が2周回以上ローラーの上に巻回された状態になる。転動方向は、ストライプの長いエッジおよびレーザーヘッドが速く移動する方向に対して平行であった。
【0182】
この転動の大部分の間(レシーバー要素が完全に被覆解除された後ドナー要素が真空テーブルから巻き取られる最終点近くを除いて)、真空テーブルはなおも、使用されたドナー要素と画像形成されたレシーバー要素の間から空気を除去していた。集合体の上にあるドナー要素上の大気圧に由来する結果としてもたらされた力は、ドナー要素とレシーバー要素の間の分離を閉じる傾向をもち、ローラーが要素を分離するまで、横向き移動または分離させる移動などのあらゆる移動に抵抗する摩擦によって一般に互いに固定された状態に要素を保った。
【0183】
真空テーブルの連続使用は同様に、分離中にローラーがレシーバー要素を横断してドナー要素全体をローラーに向かって引っ張るのを防いだ。使用されたドナー要素はそれにより使用されたドナー要素がローラーに向かってレシーバー要素を横断して移動した場合に起こり得たようにレシーバー要素を横断するローラーの走行よりも速くではなく、この走行と同期的にローラー上に巻き付いた。
【0184】
画像形成されたレシーバー要素から使用されたドナー要素を分離する第2の方法は、剥離による手作業での除去であった。この場合、真空テーブル上に保持された使用されたドナー要素のエッジは、上向きに曲げられた。エッジの連続的上昇によって、分離線が画像形成されたレシーバー要素に向かってそして最終的にはこの画像形成されたレシーバー要素全体にわたり移動することになる。この分離線は、レーザーヘッドの高速走行方向に対して可能なかぎり平行に走行するように作製された。
【0185】
分離した画像形成されたレシーバー要素のマクロ検査のためには、白色光の強く幅広の平行短ビームでのグレージング照明は使用されなかった。適切な光源は、Advanced Illumination Company(Rochester,VT)製のLine Light(36インチ、DC24ボルト、型式LL17436−WHI24)である。相対する方向からまたは異なる方向から照明するために、2つの光を使用することができる。この検査では、転写された顔料入り層の高さの不規則性が、異なる色の強さとして観察される。有色層がフラップなどのために張出している場合、照明、反射および散乱のせいで、その色の強い部域が見える。典型的には、第1層について見られる均一な高さ(多くの場合青色層)は、これらの部域に均一で(青色)、さほど強くない外観を与える。ただし、レシーバー要素の緑色部域は、緑色転写層がレシーバー要素から突き出しグレージング光を上向きに反射するか否かに応じて、異なる強度を示し得る。レシーバー要素は、緑色転写層のコネクタがレシーバー要素に結びつけられた緑色転写層の近くで破断し、粗く上昇したエッジが存在しない場合、低強度の緑色を示す。その部域内のストライプエッジは青色ストライプエッジに類似し、顕微鏡下で調べると非常に真直ぐである。レシーバー部域の緑色部域は、緑色転写層のコネクタがドナー要素に結びつけられた緑色転写層により近いところおよびこの緑色転写層で破断し、白色光により照明される上に向いたエッジを有するレシーバー要素上の緑色転写層のより幅広のストライプを残す場合に、高強度の緑色を示す。
【0186】
マクロ的には、低強度の緑色および高強度の緑色の部域は、突然に遷移して、混合領域よりもむしろ全く異なる明確な境界を有し得る。多数の色に反射エッジが存在する場合に目が検出する色は、目が異なる色に対し異なる感度を有することから、変動し得る。上向きエッジの存在は通常その色を直ちにはっきり見えるようにする。ミクロ的には、高強度の緑色の部域は、付着したコネクタのエッジを有する幅広ラインおよび付着したコネクタをもたない幅狭ラインの混合を示す。低強度緑色の部域は、付着したコネクタをもたない幅狭ラインをほぼ排他的に示す。
【0187】
各々の評価において、集合体内のドナー要素から転写されるカラーストライプのエッジ(緑色または赤色)が指摘され、転写層からレシーバー要素上への転写された材料に最小限のフラップしか付着されていないはるかに優れたエッジを示すことが多い青色カラーストライプを特に基準にして評定される。
【0188】
以下の各実施例では、レシーバー要素として、適切な透明ウィンドウ全体にわたり1色(青色)または2色(青色と赤色)のフィルタ層をすでに含む上述のものときわめて類似した黒色マトリクスおよびガラスを含む適切な部分的に完成したカラーフィルタが使用され、レシーバー要素上にまだない別の色のドナー要素(それぞれ赤色または緑色)が使用された。全ウィンドウの3分の1(残りの適切なウィンドウの半分かまたは全て)を網羅するカラーフィルタストライプのパターンを定めるために、集合体の露光が実施された。露光後の集合体の処理および分離が、以下に記録した通りに実施された。
【0189】
比較例1
この例は、処理ステップ無しの露光および分離の結果を示している。
【0190】
使用された集合体は、青色フィルタおよび赤色フィルタでの熱物質転写により官能化された有機黒色マスクを伴うカラーフィルタガラス板のレシーバー要素と、緑色フィルタを転写するのに適した緑色顔料入り転写層を伴うドナー要素であった。集合体は、像様露光され、使用されたドナーをローラーのまわりに巻回されている間に毎秒27.5cmの前進速度で移動する直径8cmのローラーを用いてローラー剥離することによって、緑色フィルタ画像形成されたレシーバー要素と使用されたドナー要素に分離された。分離ステップの間、真空テーブルは集合体から空気を除去し続けた。使用されたドナー要素が画像形成されたレシーバー要素から離れるように持ち上げられて分離が進むにつれて、真空は集合体を下へと漸進的に破断していった。
【0191】
分離後の画像形成されたレシーバー要素のマクロ検査(別段規定のないかぎりあらゆるケースにおいてグレージング照明を用いる)は、マクロ評定を1として(1=不良;散乱した低強度緑色部域はほぼ全くまたは全く無し、10=優良:全てまたはほぼ全ての低強度の緑色部域を伴う)、わずかな無作為散乱低強度緑色部域を伴って大方が高強度の緑色部域を示した。画像形成されたレシーバー要素のミクロ検査は、ミクロ評定を1として(1=不良;破片および混合エッジ、10=優良、レシーバー要素上にコネクタまたは破片無し)、粗いエッジを示す、部域のエッジにフラップを有するおよび有さない緑色転写層の画像形成された部域の無作為な分布を示した。
【0192】
コネクタが主にドナー要素上にあった画像のエッジの割合は、20%未満という低いものであると推定された。
【0193】
実施例2
この実施例は、コンプライアントで接着性のローラーを用いた露光、処理および分離の結果を示す。
【0194】
使用された集合体は、青色フィルタおよび赤色フィルタでの熱物質転写により官能化された有機黒色マスクを伴うカラーフィルタガラス板のレシーバー要素と、緑色フィルタを転写するのに適した緑色顔料入り転写層を伴うドナー要素であった。処理には、直径8cmのローラーが用いられ、このローラーは、2mの距離にわたり毎秒5cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動され、その間、真空テーブル上の集合体内には約10,000Paの見かけの大気圧が維持された。
【0195】
直径8cmのローラーは、内径5cm、外径6cmの中空鋼製円筒で構成されていた。中空鋼製円筒は、「スーパーポリウレタン」と呼ばれる厚み1cmの弾力性のある接着性材料で被覆された。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は20であった。接着性測定値(12時から6時まで被覆解除するための時間)は、およそ130秒であった。ローラーの重量はおよそ21kg(46ポンド)であり、長さはおよそ226cm(89インチ)である。Polymag Tek Inc.(Rochester,NY)がローラーを供給した。
【0196】
ローラーは、およそ21キロパスカル(3psi)の集合体に向かう下向きの力と共に順方向に移動させられた。処理の完了後、分離を開始する前に10秒超の間、集合体は排気されている真空テーブルの上にとどまった。比較例1にあるように、分離を実施した。
【0197】
分離後の画像形成されたレシーバーのマクロ品質は、8と評定され(1=不良、10=優良)、きわめて一貫性のあるものであった;強い緑色の部域は最小限しか見られなかった;観察された強い緑色部域としては、画像形成された部域のエッジから2cm以内のものがいくつかあった。画像形成されたレシーバーのミクロ検査から、フラップを有するエッジに比べてフラップの無い緑色転写層の画像形成された部域の分布が大幅に増大したことがわかった。
【0198】
実施例3
この実施例は、真空テーブルの上に不動化されたレシーバー要素との関係におけるドナー要素の支持層の移動を示している。有効な移動は、支持層に対して実質的に平行な方向に沿ってレシーバー要素を基準に第1の位置から第2の位置まで支持層の位置を移動させることによって実施されるせん断移動であることがわかった。この移動は、画像のエッジに対して平行かまたは垂直に実施された場合に特に有効であった。
【0199】
画像形成された集合体は、レシーバー要素として有機黒色マトリクスを伴う青色転写層の画像形成されたカラーフィルタガラス基板と赤色顔料入り転写層ドナー要素とから作製された。集合体は、露光用装置の真空テーブル上で作製された。集合体は、真空テーブル上に保持されている間、レーザーヘッドを用いて露光された。真空テーブルは、画像形成および処理の間、集合体内におよそ10,000Paの低下させた圧力を維持した。
【0200】
処理は、集合体のドナー層の支持層上におもりを置き、おもりの側面を打撃して支持層の表面に沿っておもりを移動させることによって実施された。これは、摩擦によりレシーバー要素を基準に支持層を移動させるのに役立った。別に、金属おもりを用いて露光された集合体の数多くの黒色マスキングされた部域を処理した。処理中、真空は画像形成された集合体上に維持された。
【0201】
おもりは、2.54cm(1インチ)×18cm(7 1/8インチ)×18cm(7 1/8インチ)の直方体の鋼であり、約7.1K(18ポンド)の重さであった。おもりは、集合体のドナー要素の支持層上に、矩形面(2.54×18cm)で設置された。次に、集合体と接触する面に対し90度の角度のおもりの矩形面を、3.2kg(8ポンド)のハンマーで打撃して、集合体を横断しておもりを駆動した。典型的に、おもりは約1cm移動し、集合体を横断して幾分かスキッドした。おもりは、集合体の未処理部域上での別々の実験において、レシーバー要素上の有色画像の長エッジに対し平行に、および長エッジに対して垂直に、そしてレーザーヘッドが最初に長エッジに平行に移動した方向での赤色転写層の露光されたストライプの長エッジに対し平行であるのが0度であるものとして、45度および135度の角度で整列された。別々の実験において、おもりは、重さを推進するため第1の一方の端部で打撃され、その後、未処理区分上で平行な位置に置かれ、反対のかつ平行な方向に重さを推進するため第2の反対側の端部上で打撃された。各実験において、おもりは設置され、一回打撃され、次に分離ステップの開始から少なくとも5分間、処理部域から離れるように持ち上げられた。打撃無しのおもりの対照設置および除去は、おもりのエッジからかけ離れて最も小さいものであるはるかに小さな効果を示した。
【0202】
16の別々の部域を処理した後、比較例1の場合のように、巻取りローラーによる剥離により集合体を分離した。集合体の露光および処理時間全体の間、そして剥離ステップの完了まで、レシーバー要素を1つの位置に保持するため、そしてレシーバー要素の近くまたはレシーバー要素と接触した状態にドナー要素を引っ張るため、真空テーブルによる集合体の排気を使用した。
【0203】
分離された画像形成されたレシーバー要素のグレージング照明は、未処理であった部域の中で赤色/紫色を明確に示し、処理された部域の一部においては非常に顕著な強い青色を示した。青色は、一部の部域で行なわれた処理用ステップの望ましい効果である赤色フラップの相対的不在を表わす。
【0204】
集合体に接触する金属矩形が画像の基調をなすラインエッジおよび画像を作るのに用いられたレーザーの移動方向に対し平行または垂直であった部域のグレージング照明は、大量の強い青色の部域を示し、これはグレージング光の照明を受けている赤色上昇フラップの不在を表わしていた。金属矩形がラインエッジに対し45度または135度をなしていた部域は、はるかに少ない青色部域を示した。とりわけ、金属矩形がラインエッジに対し45度を成していた一部のケースにおいては、金属のエッジの場所は青色であった。これは、金属の位置づけが、正確に金属表面対集合体表面ではなく、金属エッジ対集合体表面であり、したがってエッジにおけるレシーバー要素に向かってのドナー要素の初期圧縮が、後に、金属面の傾動または立直しまたは金属全体の除去によって軽減されたことに起因しているかもしれない。
【0205】
この実施例中で行なわれる処理タイプとしては、おもり上へのハンマーの打撃が摩擦により支持層に対しせん断移動を伝達することに起因する、支持層に対し実質的に平行な方向に沿ったレシーバー要素との関係における第1の位置から第2の位置への支持層の位置の移動;およびレシーバー要素に向かう方向に沿ったレシーバー要素との関係における第1の位置から第2の位置への支持層の位置の移動とそれに続く、レシーバー要素から離れる方向に沿ったレシーバー要素との関係における第2の位置から第3の位置への支持層の位置の移動が含まれる。
【0206】
図11は、フラップを示すレシーバー要素の領域についてのグレージング照明により明るい外観を示すカラーフィルタの一部の中に顕微鏡によって典型的に見える赤色フラップの量を示している。図11は、ガラスを通して見たウィンドウ(40)を画定する黒色マトリクス(30)を示しており、そのうち3分の1は青色透明転写材料(50)のストライプで列様に被覆されており、隣り合う3分の1のストライプは赤色透明転写材料(60)により被覆されている。写真からのこの透写図は、2つの部分的に見えるウィンドウの間のおよびこれをとり囲む黒色マトリクスを被覆する有意な明らかなフラップの無い青色ストライプを示しており、各々の完全なウィンドウはおおよそ矩形であり、1つの上に見える薄膜トランジスタの設置のために指定された部域を被覆する黒色マトリクスの矩形の嵌入を伴っている。各々の赤色ストライプ(60a、b)は、この赤色ストライプの本体からの大部分の部域内または時折外に延びる強い赤色のフラップ(130)の付加フラグメントと共に、隣接するウィンドウと分離用黒色マトリクスの列と類似の被覆を示している。このフラップの存在または不在は、エッジに、顕微鏡によって容易に観察できる粗い外観を与えている。しかしながら、ラインエッジに対し平行または垂直な金属の設置により処理されたレシーバー要素の領域においては、赤色および青色のラインエッジは、顕微鏡による外観に関して非常に類似しており、赤色エッジは特に、フラップの兆候をほぼ全く示さず、非常に真直ぐであることを示していた。処理によりラインエッジが改善した時にマクロ的外観が改善する場合は、ミクロ的外観においても同様の改善が発生する。
【0207】
実施例4
この実施例では、真空テーブルによって保持されたレシーバー要素を基準に支持層の移動を生み出すために粘着テープが使用された。実験は、金属プレートを用いる先の実施例と類似していたが、処理ステップは粘着テープの適用と除去によって行なわれた。
【0208】
使用したテープはTyco Adhesives(Franklin,Kentucky)製のPolyken 781スプライシングテープであった。この青色テープは、幅5cm(2インチ)、厚み0.11mmであった。それはポリエステルフィルム担体上にシリコーンゴム接着剤を施した単一コーティングテープである。このテープはせん断強度が高く、非常に優れた接着力をもつテープである。鋼に対する接着は、PSTC−1試験方法(Pressure Sensitive Tape Council (Northbrook,IL))により385N/mである。
【0209】
画像形成された集合体は、有機黒色マスクレシーバー要素を伴う青色転写層画像形成されたカラーフィルタガラス基板および赤色顔料入り転写層ドナー要素で構成されていた。集合体を真空テーブル上に保持し、レーザーヘッドを用いて露光した。別途、粘着テープの区分を用いて露光された集合体の数多くの黒色マスキングされた部域を処理した。
【0210】
露光された部域全体にわたり集合体上に、露光されたストライプの長エッジに対してテープの長エッジをさまざまに配向して(露光されたストライプはレーザーヘッドの高速走行方向に対し平行である)、テープを設置した。上の金属おもりの場合と同様に、さまざまな配向を、赤色ストライプの長エッジの長さに沿って;赤色ストライプの長エッジに対し垂直に;そして赤色ストライプの長エッジに対し45度および135度を成して、整列させた。各々のケースにおいて、別々に適用したテープを、反対方向に剥離させ、各処理を2回くり返した。
【0211】
各ケースにおいて、テープを集合体の支持層と接触した状態にしっかりと設置し、少なくとも15秒放置した。次にテープの短エッジを上方に剥離し、次に短エッジを完全に逆方法に曲げ(180度の屈曲)テープを引っ張り、それにより剥がされたテープの伸長してゆくエッジが、集合体の支持層になおも接着している残留テープの短縮してゆくエッジと平行でかつ当初ほぼこれに触れているようにしながら残りを剥離することによって、テープが被覆している処理部域から離れるようにテープをもち上げた。
【0212】
数多くの別々の部域を処理した後、比較例1にあるような巻取りローラーにより剥離することによって集合体を分離した。集合体が作製されてから剥離ステップが完了するまで、レシーバー要素を1つの位置に保持するためそしてドナー要素をレシーバー要素近くにまたはレシーバー要素と接触した状態に引っ張るために、真空テーブルによる排気を使用した。
【0213】
分離された画像形成されたレシーバー要素のグレージング照明は、未処理であった部域内で赤色/紫色を、そして処理された部域の一部においては非常に顕著な強い青色を明確に示した。
【0214】
集合体に接触する金属矩形が画像の基調をなすラインエッジおよび画像を作るのに用いられたレーザーの移動方向に対し平行または垂直であった部域のグレージング照明は、大量の強い青色の部域を示し、これはグレージング光の照明を受けている赤色上昇フラップの不在を表わしていた。金属矩形がラインエッジに対し45度または135度をなしていた部域は、赤色の優勢に比べてはるかに少ない青色部域を示した。
【0215】
この実施例中で行なわれる処理タイプとしては、部分的に剥離するのに必要な力をレシーバー要素との関係における支持層の移動へと伝達することにより、せん断移動を支持層に伝達する180度でのテープの戻し剥離に起因する、支持層に対し実質的に平行な方向に沿ったレシーバー要素との関係における第1の位置から第2の位置への支持層の位置の移動;およびレシーバー要素に向かう方向に沿ったレシーバー要素との関係における第1の位置から第2の位置への支持層の位置の移動と、それに続く、テープ適用中のレシーバー要素から離れる方向に沿ったレシーバー要素との関係における第2の位置から第3の位置への支持層の位置の移動が含まれる。
【0216】
テープにより処理されていない部域内の赤色エッジの外観は、図11の外観と類似していた。ミクロ検査は、実施例3のものと類似した結果を示した。
【0217】
実施例5
実施例5は、支持層からの粘着テープの除去が、支持層に対し平行ではなくむしろ支持層の表面から90度を成してテープを引っ張り上げることによって行なわれたという点を除いて、実施例4と同じ要領で実施された。この除去はすなわち、処理に、レシーバー要素から離れるような支持層の動作と、それに続く、テープ除去が所与の場所で完了した後のレシーバー要素に向かって支持層が復帰する移動が関与している、ということを意味している。
【0218】
処理された領域内の最終的分離されたレシーバー要素の外観は、グレージング照明による非常に顕著な変化を示し、これは、いかなる処理も行なわれなかった部域内に比べて、照明されている赤色エッジフラップが少ないことを表わしていた。ミクロ検査は、顕微鏡で見えるフラップを無くするために180度でのテープ除去の方が90度でのテープ除去よりも優れていることを示した。
【0219】
実施例6
この実施例は、処理に用いられるコンプライアントローラーでの露光、処理および分離の結果を示している。
【0220】
使用された集合体は青色フィルタおよび赤色フィルタでの熱物質転写により官能化された有機黒色マスクを伴うカラーフィルタガラス板のレシーバー要素、および緑色フィルタを転写するのに適した緑色顔料入り転写層を伴うドナー要素であった。
【0221】
処理には、直径8cmのローラーが用いられ、このローラーは、2mの距離にわたり毎秒5cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動され、その間、真空テーブル上の集合体内には約10,000Paの見かけの大気圧が維持された。直径8cmのローラーは、内径5cm、外径6cmの中空鋼製円筒で構成されていた。ローラーの内部円筒には重みづけ材料が満たされていた。中空鋼製円筒は、厚み1cmの緑色ポリウレタンで被覆された。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は23であった。接着性測定値は1秒であった;このローラーは接着性ではなかった。ローラーの重量はおよそ41kg(91ポンド)であり、長さはおよそ226cm(89インチ)である。ローラーは、Finzer Roller Inc,(Des plaines,IL)によって供給された。
【0222】
ローラーは、およそ21KPa(3psi)の下向きの力を集合体上に維持しながら順方向に移動させられた。処理の完了後、分離を開始する前に、集合体は10秒超の間、排気されている真空テーブルの上にとどまった。比較例1にあるように、分離を実施した。
【0223】
分離後の画像形成されたレシーバー要素のマクロ品質は、7と評定された。比較例中に比べはるかに少ない緑色部域が見られた;画像形成されたレシーバー要素のミクロ検査から、エッジフラップを有するエッジに比べてフラップがわずかにかまたは全くの無い緑色転写層の画像形成された部域の分布が大幅に増大したことがわかった。
【0224】
実施例7
この実施例は、赤色ドナー要素と青色コーティングされたカラーフィルタレシーバー要素の集合体を処理するために用いられる接着性ローラーを用いた露光、処理および分離の結果を示す。
【0225】
処理には、直径8cmのローラーが用いられ、このローラーは、2mの距離にわたり毎秒15cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動され、その間、真空テーブル上の集合体内には約10,000Paの見かけの大気圧が維持された。直径8cmのローラーは、幾分か高いデュロメータ値を有する、表面に接着性を付与した、粘着テープの使用によって修正された、先の実施例6の場合と同じローラーであった。ローラー円筒の15cm(6インチ)の長さのほぼ中央を、接着性ある面を外に向けて、一定長の3M粘着テープで包んだ(幅約1.9cmの「Scotch Magic」オフィステープ、カタログ番号810、3M Company (St.Paul,MN))。テープを一定の角度で傾け、各周回が先の周回のわずかな部分(約30%)と重複し、外部表面が接着性を有している状態で1〜2周が重なるテープの螺旋が得られるようになっている。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は100以上であった。接着性測定値は10秒よりはるかに大きかった。
【0226】
処理の完了後、分離が開始する前に10秒超の間、集合体は排気されている真空テーブル上にとどまった。比較例1にあるように分離を実施した。
【0227】
処理中にテープの接着剤側が転動した画像形成されたレシーバー要素のマクロ品質は、分離後6と評定された。ローラーの粘着テープでコーティングされた部分により処理されなかったレシーバー要素の部域、または集合体内で転写された色について、比較例中に比べはるかに少ない強い赤色の部域が見られた。改善した部域の規則性は、一部にはらせん形になった粘着テープ内の不規則性に起因して、むしろ低レベルであった。未処理の部域(粘着テープを有するローラー部分による処理無し)は、1(不良)と評定された。粘着テープの厚みが、粘着テープのない部域において集合体から離れるようにローラーを上昇させたということが考えられる。画像形成されたレシーバー要素のミクロ検査は、接着性ローラーで処理された部域内のエッジにフラップを有するエッジに比べて、ほとんどまたは全くフラップをもたない赤色転写層の画像形成された部域の分布が大幅に増大したことを示した。
【0228】
実施例8
この実施例は、処理用の接着性の非コンプライアントローラーを用いた露光、処理および分離の結果を示している。別段の規定のないかぎり、使用される条件は、粘着テープを用いた先の実施例の場合と同じであった。
【0229】
処理には、直径8cmのローラーが用いられ、このローラーは、2mの距離にわたり毎秒15cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動され、その間、真空テーブル上の集合体内には約10,000Paの見かけの大気圧が維持された。直径8cmのローラーは、両面テープの螺旋で包まれた外径8cmの中空鋼製円筒で構成されていた。
【0230】
両面テープは、ローラーに接着される面に、ASTM D−3330でテストされた場合1.6N/10mmというステンレス鋼に対する接着性を有する永久感圧性アクリル系400接着剤、および、ローラーの外に面する他方の面に、ASTM D−3330でテストされた場合0.5N/10mmというステンレス鋼に対する接着性を有する再剥離性アクリル系1000接着剤(POST−IT NOTEの場合のようなもの)を有する、幅約5cm(2インチ)の薄いポリエステル担体フィルムを含む「除去可能、再配置可能なテープ」と呼ばれる3Mブランドの高/低粘着両面塗布テープであった。このテープは「3M 400/1000両面粘着テープ」と呼ばれている。このテープは、最も近いエッジ間の幅が約1cmの、重複の無い螺旋の形で適用された。
【0231】
外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は100であった。接着性測定値は5秒超であった。ローラーの長さはおよそ226cm(89インチ)であった。
【0232】
処理の完了後、分離が開始する前に10秒超の間、集合体は排気されている真空テーブル上にとどまった。比較例1にあるように分離を実施した。
【0233】
分離後の画像形成されたレシーバー要素のマクロ品質は、9と評定された。ローラーの接着性の非コンプライアント部分により処理された大きな部域にわたり、比較例中のものに比べ最少量の強い赤色部域しか見られなかった。粘着テープ無しで処理された部域(テープのエッジの間)は、1と評定された。
【0234】
実施例9
この例は、処理用に用いられるコンプライアントで接着性のローラーおよびコンプライアントで非接着性のローラーの両方を用いた露光、処理および分離の結果を示している。
【0235】
処理には、最初に直径8cmのローラーが用いられ、このローラーは、2mの距離にわたり毎秒22.5cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動され、その間、真空テーブル上の集合体内には約10,000Paの見かけの大気圧が維持された。直径8cmのローラーは、外径4.8cmの中実鋼製円筒で構成されていた。中実鋼製円筒は、厚み1.6cmのゴムで被覆された。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は21であった。接着性測定値は2秒超であった。ローラーの重量はおよそ36kg(80ポンド)であり、長さはおよそ226cm(89インチ)である。
【0236】
次に、処理には直径8cmの第2ローラーが用いられ、このローラーは、2mの距離にわたり毎秒22.5cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動され、その間、真空テーブル上の集合体内には約10,000Paの見かけの大気圧が維持された。直径8cmの第2のローラーは、厚み8mmのゴムで被覆された中空円筒で構成されていた。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は37.5であった。接着性測定値は1秒以下であった。ローラーの長さはおよそ226cm(89インチ)である。
【0237】
ローラーは、集合体上で下向きの力を維持しながら順方向に移動させられた。ローラーは互いに定距離をおいて保持された。処理の完了後、分離が開始する前に10秒超の間、集合体は排気されている真空テーブルの上にとどまった。比較例1にあるように、分離を実施した。
【0238】
分離後の画像形成されたレシーバー要素のマクロ品質は、7と評定された。比較例中のものに比べて、はるかに少ない緑色の部域しか見られなかったが、最低限の緑色領域同様に強い緑色の領域も明らかに見られた。画像形成されたレシーバー要素のミクロ検査から、フラップを有するエッジに比べてフラップがわずかにかまたは全くの無い緑色転写層の画像形成された部域の分布が大幅に増大したことがわかった。
【0239】
比較例10
この比較例は、処理および分離を同時に行なうために使用されるコンプライアントで接着性のローラーを用いた露光、処理および分離の結果を示す。
【0240】
同時に行なうこの処理および分離には、単一の担体上に固定された関係で2本のローラーを伴う、先の実施例の装置が使用される。この比較例においては、第1のローラーは集合体と接触し、集合体上を移動する。次のローラーは、使用されたドナー要素を巻き上げるのに使用され、画像形成されたレシーバー要素より5cm上に位置づけされる。使用されたドナー要素の巻き上げ中の第2のローラー上のテンションは、第1のローラーが集合体の所与の幅から離れて移動するにつれて画像形成されたレシーバー要素から使用されたドナー要素を分離させるのに役立つ。それにより、分離および処理は完全に第1のローラーで達成される。
【0241】
直径8cmの第1ローラーは、2mの距離にわたり毎秒15cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動し、その間真空テーブル上の集合体内には約10,000Paの見かけの大気圧が維持された。直径8cmのローラーは、外径4.8cmのカーボンファイバコアで構成されていた。カーボンファイバコアは、厚み1.6cmのゴムで被覆されていた。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は19であった。接着性測定値は2秒超であった。ローラーの重量は11kg(25ポンド)であり、長さは約226cm(89インチ)である。
【0242】
直径8cmの第2のローラーは、厚み8mmのゴムで被覆された中空円筒で構成されていた。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は37.5であった。接着性測定値は1秒以下であった。ローラーの長さはおよそ226cm(89インチ)である。
【0243】
ローラーは、集合体上に下向きの力を維持しながら順方向に移動させられた。ローラーは、互いに一定距離をおいて保持された。第2のローラーは、集合体の出口点で第1のローラーからの使用されたドナー要素を巻き上げるために作用した。
【0244】
分離後の画像形成されたレシーバー要素のマクロ品質は、2と評定された。画像形成されたレシーバー要素のほぼ全ての部域が、第1の比較例の場合よりも強い緑色部域が見られることを示した。画像形成されたレシーバーのミクロ検査は、フラップを有するエッジと強い緑色の部域の間の1対1の対応を示した。
【0245】
実施例11
この実施例は、集合体の支持層全体にわたり、ゴムパッドを用いてこする処理が行なわれた場合の露光、処理および分離の結果を示している。
【0246】
処理では、American Roller Company(WI)により供給されたネオプレンゴムのパッドが使用された。高摩擦ネオプレンゴムは、約10cm×10cm×2.8mm(4インチ×4インチ×0.110インチ)のシートとして供給された。シートを2回半分に折り畳み、約2.5cm×2.5cm×1.1cmパッドの4層厚みのパッドを形成した。接着性測定値は、ショアAスケール上で50であった。
【0247】
有機黒色マスクを伴う青色ストライプ入りのガラス製カラーフィルタレシーバー要素および赤色透明の転写層を伴うドナー要素の集合体を露光した後、真空テーブル上の集合体内に真空圧力が維持されている間、約50mm/秒の速度で10cmの距離だけ集合体の支持層を横断してパッドを手作業でスキッドさせることによって、処理を行なった。手作業での処理は、湿ったスポンジを用いてテーブルをきれいに拭うのと同様の中位の力で実施した。集合体の別々の部域の処理は、レシーバー層上に有色転写層のストライプの主要エッジを確立した露光の間のレーザーヘッドの第1の順方向の移動に対して異なるスキッド角度で行なわれた。24の別々の部域が、0、45、90、135および180度を含めたスキッド角度で処理された。
【0248】
処理の完了後、分離が開始する前に10秒超の間、集合体は排気されている真空テーブル上にとどまった。比較例1にあるように分離を実施した。
【0249】
分離後の処理された部域内の画像形成されたレシーバー要素のマクロ品質は、4と評定された。スキッドによる処理無しの部域は、1と評定された。処理を受けなかった部域と比べて、処理を受けた部域には決定的な差異が存在した。すなわち、処理された部域が示す強い赤色部域はより少なく、これは、ドナー要素からの赤色転写材料のフラップが少ないことを表わしている。処理された面積の規則性は、角度に応じて変化したが、全て、処理無しの場合に比べ改善を示した。
【0250】
実施例12
この実施例は、処理のための第1の接着性コンプライアントローラーおよび分離用に使用される第2のコンプライアントローラーを用いた露光、処理および分離の結果を示している。第1のローラーおよび第2のローラーは、固定された関係で集合体上を同時に移動させられ、それにより、0.5秒未満のスパンで単一の点における処理および分離を行なう。
【0251】
使用された集合体は青色フィルタおよび赤色フィルタでの熱物質転写により官能化された有機黒色マスクを伴うカラーフィルタガラス板のレシーバー要素、および緑色フィルタを転写するのに適した緑色顔料入り転写層を伴うドナー要素であった。
【0252】
処理には、直径8cmのローラーが用いられ、このローラーは、毎秒22.5cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動され、その間、真空テーブル上の集合体内には10,000Paという低い見かけの減圧が維持された。直径8cmのローラーは、外径4.8cmの中実鋼製円筒で構成されていた。鋼製円筒は、厚み1.6cmの接着性黒色ゴムで被覆されていた。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTMD2240−00に定める通りのAスケール)は21と推定された。接着性測定値は5秒であった。ローラーの重量は36kg(80ポンド)であり、長さはおよそ226cm(89インチ)である。American Roller Company(Union Grove,Wisconsin)がローラーを供給した。
【0253】
処理用ローラーを移動させるために用いられる取付け金具も同様に、独立して回転され集合体から上昇されるかまたは集合体まで下降され得、分離に用いられる第2のローラーを、固定された離隔距離に保持した。ローラーを保持するために使用される金物は、集合体を横断する金物およびローラーの移動の間、いずれかのローラーまたは両方のローラーが集合体と接触している状態で機能させることができた。ローラーは、その外部表面の最小離隔距離が約5.0cmのギャップとなるように位置づけされた。この実施例においては、第2のローラーは、第1の処理用ローラーの後に第2のローラーが支持層と接触した状態で集合体上を転動されるにつれて、第2のローラーのまわりに使用されたドナー要素を回転させ巻回させることにより、使用されたドナー要素を除去するために用いられた。使用されたドナー要素を第2のローラーまたは使用されたドナーの先行するいずれかの周回と接触した状態に保つために、第2のローラーの穏やかな回転テンショニングが用いられた。
【0254】
第2のローラーは、8mmのゴムコーティングを伴う内部中空円筒形ローラーで構成され、直径8cmで中空であった。第2のローラーのゴムコーティングのショアAデュロメータ読取り値は37.5であった。接着性測定値は約1秒であった。
【0255】
ローラーは、各ローラーに起因する集合体上の下向きの力を維持しながら、順方向に移動させられた。移動中真空テーブルを用いて空気を除去した。第2のローラーが使用されたドナー要素を画像形成されたレシーバー要素との接触から部分的に除去するにつれて、真空は部分的に解除された。第2のローラー上の下向きの力および第2のローラーのコンプライアンスは、集合体上の2本のローラーの接点間の集合体内の空間への空気の浸潤を最小限におさえるような傾向を有していた。処理用ローラーと分離用ローラーの配置が近いことから、処理と分離の間の時間は0.5秒未満であった。
【0256】
分離後の画像形成されたレシーバー要素のマクロ品質は、5と評定された。画像形成されたレシーバーの一部の部域内には、強い緑色の部域が最小限しか存在せず、画像形成されたレシーバーのその他の部域内には、強い緑色が明白であった。画像形成されたレシーバーのミクロ検査は、強い緑色の部域およびフラップを有するエッジの間と同様に強い緑色の無い部域およびフラップ無しの部域の間の1対1の対応を示した。
【0257】
実施例13
この実施例は、集合体上の第1のパスにおける処理のための単一の第1の接着性コンプライアントローラーを用いた露光、処理および分離の結果を示す。第2の処理は、単一の第1の接着性コンプライアントローラーにより第2のパスにおいて行なわれる。後続する1本の第2のローラーは、第1のローラーから基本的に恒常な量の時間および距離だけ離隔されて、分離を実施した。第2のローラーは、基本的に第1のローラーから一定の距離だけ後ろにあり、使用されたドナー要素を第2のローラーのまわりに巻回させることにより使用されたドナー要素を巻き取るように作用し、集合体と接触するように上昇下降させることができる。第1のローラーおよび第2のローラーは、互いに一定の距離をおきながら、第2のパスの間、集合体上を同時に移動させられた。
【0258】
処理には、直径8cmの単一の第1のローラーが用いられ、このローラーは、毎秒7.5cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動され、その間、真空テーブル上の集合体内には10,000Paという低い見かけの減圧が維持された。直径8cmのローラーは、外径4.8cmの中実鋼製円筒で構成されていた。鋼製円筒は、厚み1.6cmの接着性黒色ゴムで被覆されていた。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は21と推定された。接着性測定値は5秒であった。ローラーの重量は36kg(80ポンド)であり、長さはおよそ226cm(89インチ)である。American Roller Company(Union Grove,Wisconsin)がローラーを供給した。
【0259】
処理用ローラーを移動させるために用いられる取付け金具も同様に、分離に用いられる第2のローラーを保持した。ローラーを保持するために使用される金物は、集合体を横断する金物およびローラーの移動の間、いずれかのローラーまたは両方のローラーが集合体と接触している状態で機能させることができた。ローラーの外部表面の最小離隔距離は約5.0cmのギャップであった。この実施例においては、第2のローラーは、使用されたドナー要素を除去するために用いられ、第1の処理用ローラーの後に第2のローラーを支持層と接触した状態で集合体上を転動させて、第2のローラーのまわりに使用されたドナー要素を巻回させた。
【0260】
第2のローラーは、8mmのゴムコーティングを伴う内部中空円筒形ローラーで構成され、直径8cmで中空であった。第2のローラーのゴムコーティングのショアAデュロメータ読取り値は37.5であった。接着性測定値は1秒であった。
【0261】
第1の処理用パスの後の集合体上の第2のパスにおいて、ローラーは、各ローラーに起因するかまたは第1のローラーのみに起因する集合体上の下向きの力を維持しながら、順方向に移動させられた。第2のパスは、第1のパスと同じ方向に実施された。第2のパスの移動中真空テーブルにより空気を除去した。第2のローラーが使用されたドナー要素を画像形成されたレシーバー要素との接触から除去するにつれて、またはより早期に第2のローラーが上昇した時点で解除された。下降した時点で第2のローラー上の下向きの力および第2のローラーのコンプライアンスは、集合体上の2本のローラーの接点間の集合体内の空間への空気の浸潤を最小限におさえるような傾向を有していた。処理用ローラーと分離用ローラーの配置が近いことから、第1のローラーによる接触と第2のローラーによる接触の間の時間は、短いものであった。
【0262】
第1のローラーの第1のパスによる処理が完了した後、第2のパスは、第1および第2のローラーの組合せを用いて、およそ60秒後に実施された。第2のパスの開始時点で、両方のローラーは、集合体上に降ろされ、およそ15秒の時間が経過する間、第2のローラー上の吸引孔は支持層と接触し、その真空圧に起因する使用されたドナー要素支持層の接着を構築することができた。第2のローラーが支持層を把持することができるよう充分な真空圧が形成された後、両方のローラーは次に、第2のローラーが集合体と接触しながら支持層を巻き上げている状態で集合体上の下向きの力を維持している一方で、25.0cm/秒の速度で順方向に回転しながら約7.6cm(3インチ)移動させられ、それにより分離が行なわれた。次に、両方のローラーは、約5秒間停止させられ、この時間中に、第2のローラーが集合体から持ち上げられ使用されたドナー要素を画像形成されたレシーバー要素から運び去り、それにより第1のローラーに向かって狭くなっているギャップが開いた。両方のローラーは次に、第1のローラーが集合体上を転動し、第2のローラーが支持層を巻き上げている状態で、2mの距離の間、25.0cm/秒の速度で再び順方向に移動させられた。
【0263】
分離後の画像形成されたレシーバーのマクロ品質が評定された。分離ステップ中、両方のローラーが降りていた画像形成されたレシーバーの初期部分については、3という評定が与えられた。第2のパス中、第1のローラーが下降し第2のローラーが上昇していた画像形成されたレシーバーの残りについては、7という評定が与えられた(1=不良、10=優良)。画像形成されたレシーバーと2つのローラーが接触している状態で分離を受けた画像形成されたレシーバーの領域においては、比較的多くの強い緑色部域が存在した。画像形成されたレシーバーのミクロ検査は、強い緑色の部域およびフラップを有するエッジの間と、同様に強い緑色の無い部域およびフラップ無しの部域の間の1対1の対応を示した。
【0264】
実施例14
この実施例は、分離ステップのために使用される2本のローラーシステムを用いた露光および分離の結果を示す。第1のローラーは、集合体上を転動するコンプライアントで接着性のローラーであり、ここで使用されたドナー要素は、ドナー要素およびレシーバー要素が第1のローラーの効果により退出するにつれて、画像形成されたレシーバー要素から離隔する。第2のローラーは、使用されたドナー要素を巻取る非コンプライアントで非接着性のローラーである。第2のローラーは、画像形成されたレシーバー要素より上に上昇させられ、それにより、使用されたドナー要素および画像形成されたレシーバー要素は、典型的には、第1のローラーと第2のローラーの間にたるんだ使用されたドナー要素がある場合にそれを巻取るのに必要な第2のローラーのテンショニングに起因する第1のローラーの出口のつまみ点において使用されたドナー要素と画像形成されたレシーバー要素が接触している場所から、一定の距離だけ互いに接触しない状態に保持されるようになっていた。第1のローラーにおいて分離が発生することを理由として、使用されたドナー要素および画像形成されたレシーバー要素が第1のローラーと第2のローラーの間の距離の大部分または全てについて接触していない例においては、処理は起こらない。2つの別々のローラーのこの形態は、2本のローラー間の使用されたドナー要素のテンショニング、および処理されたドナーと画像形成されたレシーバーが第1のローラーのつまみ点を退出するにつれてこれらの間の調整可能な角度を達成する画像形成されたレシーバー要素より上への第2のドナーの上昇、などの変数の調整を可能にするために有用であった。
【0265】
第1のローラーは、8cmの直径を有し、外部に16mmのゴムコーティングを伴う炭素繊維のコアで構成されていた。合計重量は11kg(25ポンド)であった。第1のローラーのゴムコーティングのショアAデュロメータ読取り値は19であった。第2の直径8cmのローラーは、8mmのゴムコーティングを伴う中空円筒で構成されていた。第2のローラーのゴムコーティングのショアAデュロメータ読取り値は37.5であった。
【0266】
第1のローラーは、真空テーブル上で集合体内に真空圧が維持されている間、2mの距離にわたり15.0cm/秒で集合体のドナー要素の支持層上を転動される。第1のローラーは、ローラーの重量により及ぼされる下向きの力を維持しながら、順方向に移動させられた。第1のローラーと同じ装置によって保持された第2のローラーは、集合体から50mmだけ上昇されながら、順方向に移動させられた。転動が起こるにつれて、使用されたドナー要素と画像形成されたレシーバー要素の間の真空は第1のローラーの場所で破断し、直ちに分離が発生した。第2のローラーは、分離後使用されたドナー要素を巻き上げる。
【0267】
分離後の画像形成されたレシーバーのマクロ品質は、2と評定され(1=不良、10=優良)、画像形成されたレシーバーのほぼ全ての部域が強い緑色を示していた。画像形成されたレシーバーのミクロ検査は、強い緑色の部域およびフラップを有するエッジの間で1対1の対応を示した。
【0268】
実施例15
この実施例は、回転トルクが適用された状態またはされない状態でコンプライアントで接着性あるローラーによって処理が提供されている、集合体の露光、処理および分離の結果を示す。処理用ローラーに対して適用される回転トルクの増加は、集合体の支持層上の力の増大をひき起こし、支持層および力に対して実質的に平行な方向に沿ったレシーバー要素との関係における第1の位置から第2の位置までの支持層の位置の移動の増加をひき起こし、フラップの部域減少を改善させる。
【0269】
本実施例の中で記述している3つの別々のケースの各々において使用された集合体は、青色フィルタおよび赤色フィルタでの熱物質転写により官能化された有機黒色マスクを伴うカラーフィルタガラス板のレシーバー要素と、緑色フィルタを転写するのに適した緑色顔料入り転写層を伴うドナー要素であった。処理には、直径8cmのローラーが用いられ、このローラーは、2mの距離にわたり毎秒5cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動され、その間、真空テーブル上の集合体内には約10,000Paの見かけの大気圧が維持された。
【0270】
直径8cmのローラーは、内径5cm、外径6cmの中空鋼製円筒で構成されていた。中空鋼製円筒は、「スーパーポリウレタン」と呼ばれる厚み1cmの弾力性のある接着性材料で被覆された。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は20であった。接着性測定値(12時から6時まで被覆解除するための時間)は、およそ130秒であった。ローラーの重量はおよそ21kg(46ポンド)であり、長さはおよそ226cm(89インチ)である。ローラーは、Polymag Tek Inc.(Rochester,NY)によって供給された。
【0271】
ローラーは、およそ21キロパスカル(3psi)の集合体に向かう下向きの力と共に順方向に移動させられた。処理の完了後、分離が開始する前に10秒超の間集合体は排気されている真空テーブルの上にとどまった。比較例1にあるように、分離を実施した。
【0272】
この実施例のケース1においては、処理用ローラーは、集合体上を移動する間回転自在であり、それによりローラーを保持する装置と同じ距離をほぼ摩擦無く回転移動する。ローラーは、玉軸受を用いてその車軸上に取付けられた。ローラーは、集合体上に係合されていない場合、集合体上でのその走行と類似の速度で手により回転させることができ、かなり長時間にわたり回転し続け、ローラーとそれを保持する装置の間の回転摩擦が低いことを実証している。
【0273】
同一の要領で作製され露光された別の集合体を使用するこの実施例のケース2においては、処理用ローラーは制動によるさらに大きな回転トルクに付された。回転トルクは、処理ローラーと車軸の間に規定量の摩擦を伴って車軸とローラーの両方に各々が触れるエラストマスリーブをローラーの車軸上に設置することによって導入された。ローラーの装置がローラーを順方向に移動させるにつれて、制動を受けたローラーはこれにより、無制動の回転自在なローラーが行なうよりも真空テーブル上に固定されたレシーバー要素を基準にさらに大きい距離だけ支持層を順方向に移動させる傾向をもっていた。
【0274】
ローラーの回転抗力を克服するのに必要な力を測定し、これはケース2における回転トルクの約0.45ニュートン・メートル(4インチポンド)に相当することがわかった。これは、約7.4N/m(0.042 ポンド/インチ)という正規化された面内せん断荷重を意味している。
【0275】
同一の要領で作製され露光された別の集合体を使用するこの実施例のケース3においては、処理用ローラーは制動によるさらに一層大きな回転トルクに付された。回転トルクは、処理ローラーと車軸の間に規定量の摩擦を伴って車軸とローラーの両方に触れるエラストマスリーブをローラーの車軸上に設置することによって、そして処理ローラーの表面を機械的に擦ることによって導入された。ローラー装置がローラーを順方向に移動させるにつれて、制動を受けたローラーはこれにより、無制動の回転自在なローラーが行なうよりもまたはケース2のローラーが行なうよりも真空テーブル上に固定されたレシーバー要素を基準にさらに大きい距離だけ支持層を順方向に移動させる傾向をもっていた。
【0276】
第3のケースにおいてローラーの回転抗力を克服するのに必要な力を測定し、これは回転トルクの約3.6ニュートン・メートル(32インチポンド)に相当することがわかった。これは、約59N/m(0.338 ポンド/インチ)という正規化された面内せん断荷重を意味している。
【0277】
分離後の第1のケースにおける画像形成されたレシーバーのマクロ品質は、7と評定され、第2のケースにおける画像形成されたレシーバーは8と評定され、第3のケースにおける画像形成されたレシーバーは9と評定され(1=不良、10=優良)、画像形成されたレシーバーの全ての部域は強い緑色をほとんど示さなかった(そして強い緑色は漸進的に少なくなった)。画像形成されたレシーバーのミクロ検査は、強い緑色の部域およびフラップを有するエッジの間に1対1の対応を示した。制動を漸進的に増大させると、転写される材料のエッジの真直度が改善され、画像形成されたレシーバー要素上の転写された材料上で目立つフラップの量は減少する、ということは容易に理解できた。
【0278】
実施例16
この実施例は、非コンプライアントで接着性のローラーによって提供される処理を用いた、集合体の露光、処理および分離の結果を示す。
【0279】
処理には、直径6cm、長さ86インチの中実鋼製ローラーが使用された。コンプライアントなローラーを提供するためのエラストマ材料は、鋼製ローラー全体にわたり一切使用されなかった。ローラーに、幅4インチの3M 400/1000両面粘着テープを、接着性の低い方の層を外に向けた状態で、らせん状に巻回させた。この巻回は、両面粘着テープのエッジがローラーの長さに沿って1/2インチだけ重複し、集合体の一部が外部の鋼部分に露出されることが一切ないように行なわれた。ローラーのデュロメータ測定値は、ショアAスケール上で100以上であった。
【0280】
処理は、真空テーブル上の集合体内に真空圧が維持されている間、2mの距離について150mm/秒の速度で露光された集合体のドナー要素全体にわたりローラーを転動させることによって実施された。
【0281】
処理の完了後、分離が開始する前に10秒超の間、集合体は排気されている真空テーブル上にとどまった。比較例1にあるように分離を実施した。
【0282】
マクロ品質を、接着剤処理を受けた画像形成されたレシーバーの部域(集合体を横断して一定角度で重複する粘着テープの2層を有する比較的薄いバンドおよび、ローラーがより厚みを有するものであり各回転毎に接触することになった部域)と、接着剤処理を受けなかった部域(集合体より上に上昇した状態に残された単一巻回部域)について比較した。接着剤処理を受けた部域は、明らかに目に見えており、ローラー上の両面テープの螺旋巻回パターンを追従していた。らせん接着剤の巻回を用いた処理を受けた画像形成されたレシーバーの部分は8と評定され、一貫して強い赤色部域が最小限にしか見られなかったが、一方接着剤処理を全く受けなかった部分は1と評定され(1=不良、10=優良)、一貫して強い赤色が見られた。
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線誘起熱転写プロセス中でドナー要素を使用する方法において、ドナー要素およびレシーバー要素を含む集合体が提供されている方法に関する。ドナー要素は、支持層と、一方の面が支持層に隣接し、かつ他方の面がレシーバー要素に隣接する転写層とを有している。集合体はその後、放射線に像様露光され、それにより転写層の一部分がレシーバー要素に転写される。
【背景技術】
【0002】
画像形成方法は、露光された部域と画像形成されていない部域の間の意図された場所で鮮明な境界を伴って画像を生成する場合に最も望ましい。放射線誘起熱転写画像形成、特にレーザー誘起熱転写画像形成においては、画像形成された部域と画像形成されていない部域の間の境界または分離は、ドナー要素とレシーバー要素の画像形成可能な集合体の、画像形成と分離の2つのステップの進行中かまたは2つのステップ間に生成され得る。
【0003】
PatelらによるImation Corp.に対する米国特許第5,935,758号明細書「Laser induced film transfer system」は、例えば真空ホールドダウンかあるいは米国特許第5,475,418号明細書の中で記述された円筒形レンズ装置を用いて、2つの要素を密に対面接触した状態に集合させることおよび適切なレーザーにより走査することが関与する吸収体を含むドナーからレセプタへと材料を像様に転写するための手順について開示している。アセンブリは、用いられる吸収体に応じて、一般的に用いられるレーザーのいずれかによって画像形成され得るが、ダイオードレーザーおよびYAGレーザーなどの近赤外光放射レーザーによるアドレスが好ましい。
【0004】
公知の走査用装置例えば、フラットベッドスキャナ、外部ドラムスキャナまたは内部ドラムスキャナのいずれを使用してもよい。これらの装置においては、画像形成すべきアセンブリは、ドラムまたはベッドに、例えば真空ホールドダウンなどによりしっかりと固定されており、レーザービームはドナーレセプタアセンブリのIR吸収層上の1つのスポット例えば直径約20マイクロメートルのスポットに集束される。このスポットは、画像形成させるべき部域全体にわたって走査され、その間に電子的に記憶された画像情報に応じてレーザー出力が変調させられる。2つ以上のレーザーが、同時にドナーレセプタアセンブリの異なる部域を走査してよく、必要に応じて2つ以上のレーザーの出力は光学的に単一のより高い強度のスポットへと組合わされてよい。レーザーアドレスは、通常はドナー側に由来するが、レセプタがレーザー放射に対し透明である場合、レセプタ側に由来してもよい。
【0005】
ドナーとレセプタを剥離すると、レセプタ上に単色画像が現出する。このプロセスを異なる色のドナーシートを用いて1回以上反復して、共通のレセプタ上に多色画像を構築してもよい。
【0006】
Polaroid Corporationに対するErnest W.Ellisによる米国特許第5,633,113号明細書「MASS TRANSFER IMAGING MEDIA AND METHODS OF MAKING AND USING THE SAME」では、ドナーおよびレセプタ要素を収容するための開口端部分を有するポリエステルエンクロージャまたはパウチを含む画像形成アセンブリが開示されている。エンクロージャにドナーおよびレセプタ要素が装填された後、エンクロージャを空にしてドナーおよびレセプタ要素を強制的に互いに接触させるために真空チャンバ内でその両側で真空が吸引される。エンクロージャが真空下で画像形成され開放されてから、真空圧縮により一緒に保持されていたドナーおよびレセプタ要素は、容易に取外し分離することができる。その後、レセプタを後硬化などにより加工することができる。
【0007】
ドナーおよびレセプタ要素を1つの一体ユニットの形で接合することを目的とし、ドナー要素とレセプタ要素の間に真空が維持されている別のアプローチは、真空チャンバ内で両方を集合させることであり、ここでこれらは互いに重複する対面関係に置かれる。真空が加えられた後、ドナー要素とレセプタ要素の間の界面に存在するあらゆる空気が排出された状態となり、加圧装置の適用などによって、互いに接触させられている噛合面の一方または両方の上の接着層などの適切な手段によって、ドナー要素とレセプタ要素の間に存在する真空を維持するべく境界エッジを封止することができる。ドナー要素の画像形成後、ドナー/レセプタ要素を、例えばその間の結合を破断することなどによって分離することが可能である。
【0008】
本件特許出願人に対するCasparらによる米国特許第6,294,308号明細書「THERMAL IMAGING PROCESS AND PRODUCTS USING IMAGE RIGIDIFICATION」は、熱画像形成可能な層を含むドナー要素とレシーバー要素とのレーザー加工可能な集合体を像様露光し、それにより熱画像形成可能な層の露光された部域が1つのパターンでレシーバー要素上に転写されることを開示している。レーザービームとレーザー加工可能な集合体は、互いに対し常に動いており、それにより集合体の各々の細かい部域は必要に応じてレーザーにより個別にアドレスされることになる。これは一般に、回転可能なドラム上にレーザー加工可能な集合体を取付けることによって達成される。フラットベッドレコーダを使用することもできる。
【0009】
プロセス中の次のステップは、レシーバー要素からドナー要素を分離することである。通常これは、単に2つの要素を剥離することによって行なわれる。一般にこれにはごくわずかな剥離力しか必要でなく、これは単にドナー支持体をレシーバー要素から分離することによって達成される。これは、任意の従来の分離技術を用いて行なうことができ、手作業であってもまたは作業員の介入の無い自動式であってもよい。
【0010】
分離の結果、熱画像形成可能な層の転写された露光された部域を含むレーザーによって生成された画像が、レシーバー要素上に現出することになる。
【0011】
Jon Casparによる米国特許出願公開第20050158652号明細書「THERMAL IMAGING PROCESS AND PRODUCTS MADE THEREFROM」は、ほぼ不動のレシーバー要素からドナー要素を剥離することによって、画像形成されたレーザー加工可能な集合体を、使用されたドナー要素とレシーバー要素へと分離する具体的方法を開示している。剥離は、手作業かまたはガイド上でドナー要素を操作することによって行なうことができる。使用可能な具体的ガイドは、ロッドである。あらゆる剥離方向を使用することができる。
【0012】
富士写真フィルム株式会社に対する小口らによる米国特許第5,578,824号明細書は、ラミネート加工手段によって加えられる熱および/または圧力の下で均一の接着力で受像材料に接着された薄い剥離可能なフィルムを担持する支持体を有するドナーシートについて開示している。熱エネルギーを像様に(例えばレーザーにより)適用し、ドナーシート内の薄いフィルムの結合力を像様に低下させ、それによりドナーシート内の薄いフィルムと支持体の間の結合力がドナーシート内の薄いフィルムと受像材料の間の接着力より小さくなるようにする。ドナーシートは、剥離/転写手段によって、不均等な剥離をひき起こすことなく受像材料から剥離され、拘束力が像様に削減された薄いフィルムは、ドナーシートから受像材料上に移され、転写により薄いフィルムの画像を形成する。
【0013】
受像材料は、剥離ローラーなどの加圧手段によって加えられる圧力により、ドナーシートから剥離され得、それにより薄いフィルムの非加熱部域は、不均等さをひき起こすことなく受像材料から剥離され、同時に薄いフィルムの加熱された部域は受像材料上に転写され、それによりこの受像材料上に画像を形成させる。
【0014】
加熱モードにおいて露光ヘッドに対する露光の時点で形成された潜像を有するドナーシートは、1つの機構によって受像材料から剥離され、それと同時に、ドナーシート上の潜像はこの機構によってそれが剥離されるにつれて現像され、受像材料上に転写される。剥離機構は、剥離ローラー、この剥離ローラーと接触する2つの分割ローラー、ローラーのセグメント間そして剥離ローラーに沿って各々備えられている櫛刃ガイドプレート、およびこれらの部品がユニタリアセンブリとして内部に取付けられているブラケット、を含み得る。剥離ローラーはアームによって軸方向に支持され、受像材料を保持するドラムにそれが接近したりそこから離れたりできるような形で支点を中心として旋回する。剥離ローラーには同様に、受像材料とドナーシートとの積層品がドラム上で運ばれるにつれてこれを押圧するための加圧手段が、アームを介して備えられている。
【0015】
加熱モードにおける露光に起因する熱エネルギーが像様に適用される結果としての薄層の結合力の減少に応答して、上に潜像が形成されているドナーシートは、それが結合されている受像材料と積層品を形成する。アームが支点を中心として旋回してブラケットが積層品に近づき櫛刃ガイドプレートが受像材料内の受像層とドナーシート内の薄層の間に挿入された時点で、同時に積層品は、ドナーシートに押しつけられる剥離ローラーによって圧縮される。ドナーシートおよび受像材料のいずれか一方の接合長さを他方の接合長と異なるものにしておけば、櫛刃ガイドプレートを2枚のシート間に容易に挿入することができる。その後、ドラムを回転させる一方で、剥離ローラー、分割ローラーも同時に回転させ、それによりドナーシートの先端が、剥離ローラーと分割ローラーの各々の間に保持すべき櫛刃ガイドプレートに沿って移動する。これによりドナーシートは、剥離ローラーと分割ローラーの各々との間での輸送のために保持されている間剥離ローラーで圧縮され、受像材料から剥離される。それによりドナーシートを、剥離ローラーで圧縮されている部域において一定速度で剥離することができる。その結果、剥離力を一定のレベルで維持することができ、「スティックスリップ」などの振動や剥離ムラも発生しない。さらなる利点としては、受像材料上に及ぼされる剥離力が剥離作業中に変動することはなく、したがって、受像材料はドラム上の固定位置でズレを生じることは全くなく、見当精度が低下する可能性もない。それにより画質、解像度およびコントラストが高く、なおかつ剥離ムラおよび見当合ズレが無い単色ハーフトーン画像を生成することができる。
【0016】
Minnesota Mining and Manufacturing Companyに対するJeffrey C.Changによる米国特許第5,695,907号明細書「LASER ADDRESSABLE THERMAL TRANSFER IMAGING ELEMENT AND METHOD」では、(i)(a)光−熱変換層;(b)カラー転写層;および(c)赤外線吸収体および熱可塑性材料を含む熱転写可能な赤外線感応性接着剤トップコートの順で各層が被着されている基板を含む熱カラー転写要素、および(ii)熱転写要素の接着剤トップコートと密に接触しているレセプタ、を含む画像形成系が開示されている。
【0017】
レーザー誘起熱転写方法を用いて平行なただし別々のライン画像を生成するために系をレーザー画像形成し、熱カラー転写要素からレセプタを分離した後、レセプタ上に結果として得られた画像は、倍率200倍のミクロ検査の下で、105ミクロンのライン幅そして画像形成されたラインのいずれの側にもフラグメント化したパターンの兆候が全く無い鮮明なラインエッジを有していた。
【0018】
「Laser induced thermal imaging (LITI) apparatus」という名称のTae−Min Kangらによる米国特許出願公開第2006/0081332号明細書は、チャック上に下部基板を配置するステップ;転写層が下部基板に面するような形で少なくとも光−熱変換(LTHC)層および転写層を含む上部層を配置するステップ;上部基板より上の空間内の空気圧を上部基板より下の空気内の空気圧よりも高い圧力まで上昇させることにより上部基板を下部基板に密に接着させるステップ;そして下部基板に接着させられた上部基板上にレーザービームを照射することによって転写層の少なくとも一部分を下部基板上へ転写させるステップを含む、レーザー誘起熱画像形成(LITI)装置、ラミネータ、およびこの装置を用いたLITI方法について開示している。関連する方法はさらに、下部構造のまわりに配置した少なくとも1つの第2の下部換気孔をチャックに備えるステップ、および転写層を転写した後に第2の下部換気孔を通して圧縮ガスを射出することにより下部基板から上部基板を離脱させるステップを含む。
【0019】
Samsung SDIに対するJang−hyuk Kwonらによる米国特許第6,242,140号明細書(2001年6月5日)は、均等なエネルギー分布をもつレーザービームを用いた熱転写によるカラーフィルタの製造方法について開示している。この方法には、フォトリソグラフィによる基板上の黒色マトリクスパターンの形成が含まれている。
【0020】
「Method of fabricating color filter substrate for liquid crystal display device」という名称のLG Philips LCD Co.,Ltd.,に譲渡されたChangらによる米国特許第6,682,862号明細書は、液晶ディスプレー装置のためのカラーフィルタ基板の製造方法を開示している。熱物質転写方法は、基板上に黒色マトリクスを形成するステップ;カラー転写フィルムを基板に接着するステップ;カラー転写フィルム上にレーザーヘッドを配置するステップ;カラー転写フィルムを反復的に走査するステップ;およびカラーフィルタパターンが、黒色マトリクスの内側に画定されたカラーフィルタパターン領域内にとどまるような形でカラー転写フィルムを除去するステップを含む。反復される走査の各々一回についてのエンドラインは、黒色マトリクス上に位置設定される。
【0021】
レーザー誘起物質転写プロセスは、サーマルプリントヘッドプロセスに比べて加熱時間が非常に短いという利点を有する。しかしながら、レーザー誘起システム内で生成される結果としての画像は、フラグメント化されているか、解像が不完全であるか、予測不能な幅を有する可能性があり、また粗いラインエッジを有する可能性がある。したがって、特殊なドナー要素もレシーバー要素も必要とせず、画質、解像度またはラインエッジ忠実度を犠牲にすることなく、放射線(特にレーザー)アドレス可能なシステムの速度および効率を生かす熱転写システムに対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、画像を形成するため放射線誘起熱転写プロセス中でドナー要素を使用する方法において、ドナー要素およびレシーバー要素の集合体を提供するステップを含み、ここでドナー要素は、支持層と、一方の面が支持層に隣接し、他方の面がレシーバー要素に隣接する転写層を含んでいる方法に関する。集合体は放射線に像様露光され、それにより転写層の一部分がレシーバー要素に転写されて転写された層が形成される。ドナー要素は次にレシーバー要素から分離され、このようにしてレシーバー要素上に画像を現出させるが、同様に支持層とレシーバー要素の間に相対的移動を提供することにより、露光ステップの後そして分離ステップの前に集合体を処理する中間ステップが実施される。
【0023】
相対的移動は、露光されたドナー要素上に残っている転写層とレシーバー要素に転写された転写層の間のコネクタに影響を及ぼし、それにより(使用された)ドナー要素と画像形成されたレシーバー要素が分離された時点でコネクタは主として一方のまたは他方の要素上にとどまり、フラグメント化されないようになっていると思われる。
【0024】
好ましい移動は、レシーバー要素表面とドナー要素表面の間のせん断タイプの移動である。処理移動を付与するためには、ローラー、制動ローラーまたは従動ローラーを使用すると有利である。
【0025】
本発明は同様に、使用されたドナー要素、画像形成されたレシーバー要素、カラーフィルタおよびプルーフなどの有用な物を作ることを目的としたこれらの方法および関係する方法の使用をも含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】真空テーブル上のレシーバー要素の立面図である。レシーバーは、画素を画定するカラーフィルタ黒色マトリクスを担持するガラスシートであり、これらの画素の3分の1は青色カラーフィルタ転写層により被覆されており、その3分の1は赤色カラーフィルタ転写層により被覆されている。
【図2】図1のレシーバー要素の列を通る横断面図である。
【図3】図1および図2のレシーバー要素と緑色カラーフィルタ熱転写層を有するドナー要素の集合体の一部分の横断面図である。
【図4】黒色マトリクスの一部分の上および黒色マトリクスにより画定された画素の上のレシーバー要素上に緑色カラーフィルタ転写層を提供するべく、画像形成すべき部域に隣接して青色カラーフィルタ転写層によって一部被覆されている黒色マトリクスの一部分をとり囲む領域を示す、図3の横断面図である。
【図5A】露光後の図4の集合体の横断面図である。
【図5B】露光後の図4の集合体の横断面図である。
【図6A】図5Bの集合体の考えられる分離モードの横断面図である。
【図6B】図5Bの集合体の考えられる分離モードの横断面図である。
【図6C】図5Bの集合体の考えられる分離モードの横断面図である。
【図6D】図5Bの集合体の考えられる分離モードの横断面図である。
【図6E】図5Bの集合体の考えられる分離モードの横断面図である。
【図6F】図5Bの集合体の考えられる分離モードの横断面図である。
【図7】緑色画像形成されたレシーバー要素から使用された緑色転写層ドナー要素を剥離させる立面図である。
【図8A】分離中の集合体および処理中の集合体の横断面図である。
【図8B】分離中の集合体および処理中の集合体の横断面図である。
【図8C】分離中の集合体および処理中の集合体の横断面図である。
【図9】粘着テープの適用および除去による、移動を付与できる物体による、およびローラーによる画像形成された集合体の処理を示す斜視図である。
【図10】集合体と接触したローラーの横断面図である。
【図11】1つが平滑なエッジを伴いもう1つが粗いエッジを伴う2種のカラーフィルタストライプが適用された場合の製造中の3色カラーフィルタの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の発明においては、放射線誘起熱転写プロセスにおいて用いられる集合体を露光し分離する周知のステップに対し、新しい処理ステップが付加されている。この処理ステップは、公知の分離方法中に発生する破断に比べて、未露光転写層と露光された転写層の間の転写層のコネクタの破断を規則化するように作用する。一実施形態においては、露光された転写層の近くでコネクタを破断することにより真直ぐな画像エッジおよび予測可能な画像幅が達成される。
【0028】
本発明の一実施形態においては、放射線に対する集合体の露光に起因するレシーバー要素上の転写された層および露光後に集合体の支持層と共にドナー要素上に残っている層の間に位置設定され、かつこれら両方に連結されている転写層材料からなるコネクタは、レシーバー要素からドナー要素を分離した時点でコネクタの大部分の体積がドナー要素と共に保持されるような形で、レシーバー要素上の転写された層に近い場所で、破断、フラグメント化、分割、せん断、分離またはその他の形で改変される。
【0029】
一実施形態においては、この処理は、支持層をレシーバー要素を基準に平行に移動させることによって実施される。一実施形態においては、この処理は、支持層をレシーバー要素から離れる方向に移動させることによって実施される。一実施形態においては、この処理は、支持層をレシーバー要素に向かって移動させることによって実施される。一実施形態では、処理ステップは、支持層に対し実質的に平行な方向に沿ってレシーバー要素との関係における第1の位置から第2の位置まで第1の距離だけ支持層の位置を移動させ、それに続いて、第1の位置から第1の距離よりも短い第2の距離のところにある第3の位置まで支持層を復帰させる移動を行なうことによって実施される。別の実施形態において、処理ステップは、レシーバー要素を基準に第1の位置から第2の位置までレシーバー要素から離れる方向に沿って支持層の位置を移動させ、それに続いて、レシーバー要素を基準に第2の位置から第3の位置までレシーバー要素に向かう方向に沿って支持層の位置を移動させることによって実施される。別の実施形態において、処理ステップは、レシーバー要素を基準に第1の位置から第2の位置までレシーバー要素に向かう方向に沿って支持層の位置を移動させ、それに続いて、レシーバー要素を基準に第2の位置から第3の位置までレシーバー要素から離れる方向に沿って支持層の位置を移動させることによって実施される。
【0030】
複数のステップからなる以下の方法の一実施形態においては、ステップが個別で独立したものであることを理解すべきである。ステップ間の時間は、分単位以上であり得るが、便宜上、典型的には秒単位以下、例えば少なくとも20、10、5、2、1、0.5、0.1、0.05、0.01または0.001秒である。個別の場所における各ステップについての経過時間はかなり短いものであり得る。例えば、秒速2メートルで移動する10ミクロンのビーム長をもつレーザーでの照射は、露光ステップにおいて一点0.000005秒のレーザー照射時間を与える。各場所で一度に露光を達成するため一列のレーザーなどによって集合体全体にわたって各ステップを一度に実行することができ、あるいは、露光のための移動するレーザーヘッドまたは処理または分離のためのローラーなどによって集合体の一部分ずつを、各ステップ毎に時間差で実施することもできる。各ステップの持続時間は長い場合も短い場合もある。例えば、ある分離手段(例えば、ドナー要素を巻き上げてそれをレシーバー要素から除去する、秒速1メートルで移動でき、かつ1cmの長さにわたり集合体と接触し得るローラー)では、接触時間は、分離ステップの開始と所与の場所での分離ステップの完了の間に約0.01秒という分離時間を所与の点において達成することができる。一方、集合体全体をおよそ1平方メートル分離するためには、約1秒かかると思われる。
【0031】
ドナー要素(少なくとも支持層および転写層を含む)とレシーバー要素の集合体の露光による熱転写画像形成は、転写層のコネクタを形成することができる。コネクタは、ドナー要素に結びつけられそれと接触している未露光の転写層とレシーバー要素に結びつけられそれと接触している露光された転写層との間に広がっている。転写層のコネクタ部分は相対する表面を有し、これらの面はいずれもドナー要素表面のいずれともレシーバー要素表面のいずれとも直接隣接していない。
【0032】
レシーバー要素に最も近いコネクタ表面は、以前は、支持層から離れる方向で転写層の最も外側の層であったが、以下これをレシーバー側表面と呼ぶものとする。レシーバー要素から最も遠いコネクタ表面は、(露光するまたは画像形成する)放射線に対する露光の結果ドナー要素から転写層が分離されて形成された表面であり、以下これをドナー側表面と呼ぶものとする。
【0033】
コネクタのドナー側表面は、ドナー要素上の転写層の未転写部分に面することがあり得、そうでなければドナー要素は、露光ステップによる完全な転写のために、ドナー要素のその場所に存在する転写層を全く有していないこともあり得る。この状況は、転写層の厚み全体がドナー要素から完全に分離されてしまっている(接着タイプの欠陥)転写層から形成され得る転写層、あるいはドナー要素から部分的に分離されてしまっている(凝集タイプの欠陥)転写層から形成され得る、必ずしも転写された層と接触しているわけではない転写層または関係する材料の残渣(例えば露光ステップの熱により改変された転写層)が後に残った転写された層の状況と類似している。
【0034】
これらのコネクタおよびそれらの画質に対する効果は、公知の技術分野においてはほとんど指摘されていないことから、これらのコネクタの形成および破断について論述することは、公知の技術および図面中の方法に関して適切である。
【0035】
従来のレーザー誘起熱転写方法の1つの例示的な比較用実施形態としては、従来の液晶ディスプレーに適した3色(青、緑そして赤色)フィルタの一部分の製造がある。カラーフィルタ上への第3のカラーフィルタセットすなわち緑色カラーフィルタの追加について以下で記述する。緑色フィルタは、すでに青色ドナー要素および赤色ドナー要素を用いた先行する熱転写画像形成に起因して隣接する画素上に赤色および青色カラーフィルタを有するガラスレシーバー要素上の画素に追加される。単一の画素セットが緑色転写層の追加を待ち受けている。この熱転写方法では、図1にある通り、レシーバー要素(10)を保持する平坦な真空テーブル(25)、赤色および青色および無色の画素を伴うカラーフィルタを使用することができる。この例示においては、後続する例示中と同様、垂直方向および水平方向の測定値は、一部のケースにおいて大幅に異なり一定の縮尺で描画するのが不都合であることから、つねに一定縮尺で例示されてはいない。特許請求の範囲を他の実現可能な寸法へ応用する可能性については制限されておらず、本文中では典型的な例示的寸法を示している。
【0036】
図1は、真空テーブルがレシーバー要素と後で導入されるドナー要素の両方に作用できるようにするため、真空テーブルの排気された平担な水平部分の充分内側に平担なガラス支持層の4つのエッジが入っている状態で、真空テーブル(25)上に載り、このテーブルによりしっかりと水平に保持された、例えば厚み700ミクロン、長さ920mmそして幅730mmの平担なガラス支持層(20)を含むレシーバー要素(10)を示している。当然のことながら、その他のレシーバサイズおよび真空テーブルサイズを使用することもできる。真空テーブル側から見てガラス支持層の相対する側には、黒色マトリクスが存在しない透明なウィンドウ(40)を画定する厚み約1ミクロンのカラーフィルタ有機黒色マトリクス(30)が存在する。最終液晶ディスプレー内の各々のアドレス可能なフルカラー正方形部域につき3つずつ存在するように配置されたほぼ矩形のウィンドウは、例えば、およそ幅30ミクロンである黒色マトリクスの部分によって表わされる幅約144ミクロン、長さ約492ミクロンのガラス表面の透明な領域である。黒色マトリクスのおおよそ正方形のノッチが各ウィンドウに侵入して、その後液晶ディスプレーの薄膜トランジスタを収容し、各ウィンドウを基本的に6面形状にする。最終的には、ディスプレーの各々のおよそ522ミクロンの方眼部域は、フルカラーセル内部に単一の赤色、緑色および青色フィルタウィンドウを含む。各セルは、セルの各ウィンドウに供給された別々に制御される強度の白色光をそれぞれ赤色、緑色または青色の光にろ過することによって、都合の良い検分距離でほぼどのような色、つまり灰色、黒色または白色にでも見せることができる。最終的なカラーフィルタは、例えば整列した液晶の回転による偏光の減衰が関与する周知の技術により各ウィンドウに対し変動する強度の白色光を提供する、例えば液晶ディスプレーなどのディスプレーに内蔵させることができる。この寸法のガラス(時としてGeneration4.5ガラスと呼ばれる)は、各々青色ウィンドウ、赤色ウィンドウおよび緑色ウィンドウを有する幅、長さ共522ミクロンの1366×768のアドレス可能なフルカラー部域を各々伴う2つのカラーフィルタを収容できる。
【0037】
図1のレシーバー要素は、前の熱転写画像形成に起因してすでに青色カラーフィルタウィンドウおよび赤色カラーフィルタウィンドウを担持する。例えば、ウィンドウ(c)の1列、すなわち短エッジが突合わさり長エッジが別の列に隣接して1本のライン内に列様に隣接して配置されている左から2番目のものから始めて3個毎のウィンドウ列は、すでにウィンドウを被覆する青色カラーフィルタのパターン(50、水平方向の網掛け)を有する。青色カラーフィルタストライプは、薄膜トランジスタのための正方形のノッチを画定する黒色マトリクス上全体、そして列内のウィンドウの上部および下部短辺を分離する黒色マトリクス上全体を通過する。青色カラーフィルタのストライプは、ウィンドウの長エッジを画定する黒色マトリクスに部分的に重複して青色カラーフィルタストライプの配置における製造上の不確実性を補償し、隣接する非青色ストライプによる重複のスペ―スを残している。各々の青色カラーフィルタストライプは、厚みが約2ミクロンで幅が約154ミクロンであり、列様方向における黒色マトリクス自体とほぼ同じ長さ、つまり約401mmの長さを有する。154ミクロンという幅は、黒色マトリクスにより閉塞されていない幅144ミクロンのガラスウィンドウ被覆率、および各々の長エッジ上の黒色マトリクスの幅5ミクロンのストリップの被覆率を補償している。1ウィンドウ列上の各々の青色ストライプは、左に向かっての1つの長辺上の隣り合せのウィンドウ列上の類似の赤色ストライプ(60、斜線網掛け)と隣接し、かつ右側にまだカラーフィルタ機能化を有していないもう一方の長辺上の列様のウィンドウラインに隣接している。矩形青色ストライプおよび赤色ストライプの長エッジおよび短エッジは両方共、好ましくは黒色マトリクス上に位置設定され、好ましくは互いに重複しない。
【0038】
図2は、切断場所2における図1のレシーバー要素の一部分の切取り断面の拡大図を示している。図2は、黒色マトリクス(30)を支持する近傍のガラス支持層(20)、黒色マトリクスの一部を被覆する青色カラーフィルタ転写層(50)のストライプパターンを有するレシーバー要素、そして黒色マトリクスが存在しないガラスの一部分により画定されたウィンドウセットの間の関係を示している。左側には、黒色マトリクスの一部分を被覆する赤色カラーフィルタ転写層(60)のストライプおよび黒色マトリクスが存在しないガラスの一部分によって画定されるウィンドウセットの隣接するパターンがある。反対側で右に隣接しているのは、黒色マトリクスが存在せず緑色転写された層を追加すべきガラスの一部分によって画定されるウィンドウセットである(40)。これらの図は例示的なものであり、相対的寸法は示された特徴の間で大幅に変動し(例えば厚み700ミクロンのガラス、厚み1ミクロンの黒色マトリクス、厚み2ミクロンの青色カラーフィルタ層、幅154ミクロンのウィンドウ、幅30ミクロンの黒色マトリクス被覆の厚み1.2ミクロンなど)、縮尺は、図の中で忠実に保たれていない。図1および2の中で示されているタイプの適切なレシーバー要素はカラーフィルタ製造のために使用されるものである。1例としては、幅730mm、長さ920mmそして厚み0.7mmのサイズのGeneration4.5と呼ばれるガラス片が含まれる。このガラスは、1360×765のカラー要素の「16×9」のディスプレーを収容できる1366の水平カラー要素と768の垂直カラー要素のWXGA配置で各々フォーマットされた「32インチ」と呼ばれる2つのLCD TVディスプレーカラーフィルタを収容できる。各辺に522ミクロンの正方形のカラー要素を伴って、WXGAの対角長さは818mmまたは32.2インチを超え、幅は713mmを超え、長さは400mmを超える。2つのディスプレー長は、間、上下に予備のスペースを伴って、920mmのガラス長により収容される。各々の単一のカラーウィンドウは、(小さい薄膜トランジスタの切り欠きを除いて)およそ幅144ミクロンおよび長さ492ミクロンのウィンドウを画定するおよそ幅30ミクロンの黒色マスクを伴い174×522ミクロンである。
【0039】
一実施形態においては、すでにレシーバー要素上にあるカラーフィルタストライプは、長さがおよそ401mmであり、後続する露光ステップは、各々の分離した黒色マトリクス上に長さ401mmの緑色カラーフィルタ転写層材料の3番目と最後のストライプセットを配置する。
【0040】
図3は、画像形成に適した集合体を提供するためのレシーバー要素(10)上のドナー要素の集合体(360)を示す。レシーバー要素の平担なガラス支持体(20)、黒色マトリクス(30)、青色カラーフィルタストライプ(50)および赤色カラーストライプ(60)はドナー要素によって被覆されている。ドナー要素は、レシーバー要素よりも長さおよび幅が大きく、それによりレシーバー要素を完全にとり囲む真空テーブルの一部分と重複し接触する。この図の中のドナー要素は、(a)厚み50ミクロンのポリエチレンテレフタレートフィルム支持層(70)、およびそれが隣接して担持する(b)結合剤ポリマー、緑色顔料および赤外線吸収性染料を含む厚み2ミクロンの転写層(80)を含む。転写層は、ドナー要素支持層とレシーバー要素の間に位置づけされ、レシーバー要素は青色ストライプと赤色ストライプの少なくとも一部の部域およびレシーバー要素のまわりの真空テーブル、そして任意には青色ストライプまたは緑色ストライプにより被覆されていない場合の黒色マトリクスそして任意にはガラスと接触する。レシーバー要素を被覆することにとどまらずドナー要素とのこの整列状態で、真空テーブルは、レシーバー要素とドナー要素の間の空間内の空気を抜き、ドナーのポリエチレンテレフタレートフィルム支持層上の空気圧がドナー要素をレシーバー要素上に押し下げ、一般にドナー要素とレシーバー要素を固定された接触位置に保持する。相対的位置は、力により改変され得るが、再整列には耐えることができる。一実施形態において、ドナー要素は、数多くの部域または大部分の部域で黒色マトリクスおよびガラス支持層の上に懸吊されている一方で、図3に例示されている通り、ポリエチレンテレフタレートフィルムの剛性、青色カラーフィルタ層ストライプと赤色カラーフィルタ層ストライプの間の比較的短い距離そして、カラーフィルタ層および黒色マトリクス層の高さに起因して、青色カラーフィルタ層および赤色カラーフィルタ層と接触する。
【0041】
図4は、青色転層が黒色マトリクス(30)上にある場所では集合体のドナー要素に結びつけられた緑色転写層(80)がレシーバー要素の青色転写層(50)と接触するものの、緑色転写層は上から懸吊され、ポリウレンタンテレフタレート支持層の剛性および赤色および青色転写層の隣り合うストライプにより提供される高低間隔に起因して黒色マトリクス自体とは接していない、一実施形態を示している。黒色マトリクス(30)が透明なウィンドウを画定している場所では緑色転写層は同様に上から懸吊されていて、ガラス(20)とは接触しない。
【0042】
1つの比較用実施形態においては、真空テーブル上に保持された集合体は、各エッジが黒色マトリクス上にあり、1つの長エッジが青色ストライプに隣接し、1つの側面が赤色ストリップに隣接している状態で各々幅154ミクロンの768の転写層緑色ストライプのパターンをレシーバー要素上に導入するべく、高速走査式赤外線レーザーを用いたドナー要素の照明により、放射線に対し選択的に露光される。
【0043】
図5Aは、青色ストライプ近くでの緑色ドナー要素の露光の考えられる1つの成果を示す。すなわち、画像(80B)に対応する転写層は、未露光転写層(80A)から破断し、レシーバー要素に結びつけられた転写された層を露光の帰結としてドナー要素上の転写層から分離した状態にすることができる。緑色転写層を転写するべく黒色マトリクス(30)上の青色転写層(50)がドナー要素の照明部域と突合わさっている黒色マトリクスの領域内で露光したこの結果は、図5Aに示されている。不完全に転写された緑色転写層(80C)の残留物が、露光された部域内に残っている。
【0044】
緑色転写層(80)を転写するために図の右側で支持層(590)上のドナー要素を照明するのに赤外線レーザーを使用し、左側に未転写未露光転写層の一部分(80A)、右側に転写された層の一部分(80B)そしてこの場合露光後にドナー要素上に残留する不完全に転写された転写層(80C)を残すことができる。レシーバー要素上の転写された層とドナー要素上の未転写および不完全転写された層の間にクリーンな分離ができる。転写されたおよび未転写転写層は、転写層材料によって連結されていない。
【0045】
図5Bは、同じ部域(590)上で集合体を露光した場合の別の考えられる成果を示す。ドナー要素支持層を通した部域(590)上のレーザーによる照明は、レシーバー要素までの緑色転写層の移動を生成して転写された層(80B)を提供し、露光された部域と露光されていない部域の間または近くの遷移領域内では、ドナー要素からの転写層の分離および緑色転写層の伸長(ただし破断ではない)がこの移動に随伴して、転写層材料のコネクタ(80D)を形成する。転写層のコネクタは、レシーバー要素と接触している転写された層を、ドナー要素と接触している未転写層に連結する。露光の結果として、緑色転写された層(80B)は黒色マトリクスおよびガラスと接触していてこれらに結びつけられ、コネクタを通して以外もはやドナー要素に結びつけられていない状態となる。画像が現われないはずの部域全体にわたり有効なレーザー照明を意図的に欠如させていることから、緑色転写層(80A)は基本的に乱されずに残り、黒色マトリクスまたはガラスと接触せずにドナー要素と接触し結びついた状態にとどまる。図5Bにおいては、部域80Aと部域80Bの間の遷移領域、すなわち部域80Dの中で、緑色転写層の厚みの大部分とドナー要素の接触は失われるが、緑色転写層が移動してレシーバー要素と接触することはない。部域D(80D)中の緑色転写層は、ドナー要素に結びつけられた未変化の緑色転写層(80A)とレシーバー要素上の画像に結びつけられた緑色転写層(80B)の間のコネクタを形成する。
【0046】
一実施形態においては、かかる選択的露光の後、集合体を完全な状態に維持する力、例えば真空テーブルの真空は作用状態に残され、それによりドナー要素とレシーバー要素を互いに接触状態に維持する力は減少しない。一実施形態において集合体を完全な状態に保つこの力は、処理ステップを通してそして処理ステップ後一定期間にわたり、また分離ステップ中でも一部、維持され得る。
【0047】
別の比較用実施形態においては、かかる選択的露光の後、真空テーブルの真空は停止され、レシーバー要素とドナー要素の間の大気圧は周囲圧力まで上昇できる。ドナー要素とレシーバー要素の間の空気圧はドナー要素の反対側の空気圧と同じになることから、ドナー要素はレシーバー要素から比較的容易に除去されて露光された集合体は分解される。画像形成されたレシーバー要素は、液晶ディスプレーに適したRGBカラーフィルタを含む。
【0048】
露光後の集合体内のレシーバー要素からドナー要素を分離すると、使用されたドナー要素および画像形成されたレシーバー要素が提供される。分離は、露光後に熱転写集合体に適用される周知のステップである。
【0049】
分離は、図5B中に示されている2つの要素の間の緑色転写層のコネクタを破断することができる。コネクタにおけるおよびコネクタに対し遠隔的なコネクタの破断または分離に考えられるいくつかの様式は、分離が非常にわずかしか進んでいない場合として図6に示されている。コネクタの顕著な部分がドナー要素かレシーバー要素のいずれかに付着されている場合、この顕著な部分をフラップと呼ぶものとする。
【0050】
図6Aでは、レシーバー要素に結びつけられた緑色転写された層(80C)の近くで単一の破断が起こり、転写層材料のフラップ(80FD)はドナー要素に結びつけられた緑色転写層(80A)に付着した状態にとどまる(ドナー要素フラップ)。図6Bでは、使用されたドナー要素に結びつけられた緑色転写層(80A)の近くで単一の破断が起こり、転写層(80FR)のコネクタセグメントは、レシーバー要素に結びつけられた緑色転写層(80C)に付着した状態にとどまる(レシーバー要素フラップ)。別の場所での単一破断、そして多重破断の可能性が考えられる。図6Cでは、転写層のコネクタの分離した部分が使用されたドナー要素上の転写層(80FD)および画像形成されたレシーバー要素上の転写層(80FR)の両方に連結された状態にとどまるような形で、単一破断が発生した。図6Dに示された緑色転写層のコネクタ内の多重破断の場合、緑色転写層のフラグメント(80F)が形成し後にレシーバー要素上に落下するかまたは静電気力によりドナー要素またはレシーバー要素のいずれかに対し付着した状態となる可能性がある。
【0051】
図6Eは、ドナー要素に結びつけられ典型的にはレシーバー要素上の画像の一部となるように意図されていなかった転写層の未露光部域の内部で緑色転写層内に破断が発生する望ましくない条件を例示している。部域80A’内での層間剥離により、未露光部域内での一部の緑色転写層は、ドナー要素との接触によるその結びつきを失い、緑色転写層(80B)の未破断コネクタを通した連結によってレシーバー要素と結びついた状態となる可能性があり、もとのコネクタから考えられるフラップよりも大きいメガフラップを作ることになる(レシーバー要素メガフラップ)。図6Fに示されている緑色転写層の画像形成された部域内の類似の破断様式が、露光によりレシーバー要素に結びつけられた露光された部域内の緑色転写層の一部を、ドナー要素メガフラップ内の緑色転写層(80MFD)の未破断コネクタを通して分離した使用されたドナー要素と連結された状態に残すことができる。
【0052】
使用されたドナー要素に結びつけられたすでに分離された緑色転写層と画像形成されたレシーバー要素に結びつけられたすでに分離された緑色転写層の間に全くコネクタをもたない図5Aの集合体の分離は、各要素に結びつけられた緑色転写層の量の変化無く、かつフラップ形成無く進行すると予想できる。
【0053】
図7は、露光された集合体を使用されたドナー要素と画像形成されたレシーバー要素へと分離するプロセスの一実施形態を例示する。図7は、画像形成されたレシーバー要素からドナー要素が、前面または底面から裏面または上面まで剥離されつつある剥離プロセスを示す。図7の前面において、被覆されていない画像形成されたレシーバー要素(100)(先のレシーバー要素10に追加された緑色ストライプが加わったものに相当)には、赤色転写層(60)、青色転写層(50)および緑色転写層(180)によって別々に被覆されたウィンドウ列が含まれている。被覆されていない画像形成されたレシーバー要素の上には、画像形成されたレシーバー要素上でフィルタを形成する緑色転写層の部分が欠如した使用された緑色転写層(280)および支持層(70)を含む分離した使用された緑色転写層ドナー要素(1360)の対応する部分がある。画像形成されたレシーバー要素は、所定の位置に固定された状態に画像形成されたレシーバー要素を保持するのに役立つ作動中の真空テーブル(25)上にとどまる。ドナー要素がレシーバー要素に接触しているだけである界面において、分離が起こる。この界面において、真空テーブルがドナー要素とレシーバー要素の間に作り出した真空は、環境大気圧によって取って代わられる。集合体の未分離部分内への環境大気の幾分かの浸透を想定することができる。
【0054】
集合体を露光し分離する従来公知の方法は、レシーバー要素上に形成された画像のエッジの異なる場所において図6中に例示されているさまざまな様式で、コネクタの形成およびコネクタの破断を導く可能性がある。フラップの有無、およびフラップサイズの変動そして使用されたドナー要素および画像形成されたレシーバー要素の両方の上のフラグメントの存在は、画質低下の原因となるエッジの質および予測不能な画像サイズ変動の源である。処理無しの場合の分離は、図6に示されている多種の破断の組合せであって、粗いラインエッジを与える可能性がある。
【0055】
一実施形態においては、露光ステップにおけるコネクタの形成と分離ステップにおけるいずれかの未破断コネクタの破断の間に処理ステップが介在して、制御された形でコネクタを破断または亀裂形成させる。破断または亀裂形成は、亀裂形成または破断した場所でコネクタを分離させる分離ステップによって現出されるか、または亀裂または破断部によって誘導される。処理の一実施形態においては、大多数のコネクタが図6Aにあるように、転写された層の近くおよびレシーバー要素の近くで破断され(または亀裂形成されかつ後に分離中の破断の原因となり)、分離時点でドナー要素上に最も有意なフラップを残す。この処理の成果は、レシーバー要素上の画像に何れか有意なフラップが付着しても、結果として得られる画像のサイズが増大しないために、「内向き(inboard)」と呼ぶことができる。
【0056】
別の実施形態においては、大多数のコネクタが、図6Bにあるように、未転写未露光転写層の近くおよびドナー要素の近くで破断され(または亀裂形成されかつ後に分離中に破断の原因となり)、レシーバー要素上に最も有意なフラップを残す。この処理の成果は、レシーバー要素上の画像へ有意なフラップが付着することにより結果として得られる画像のサイズが増大することから、「外向き(outboard)」と呼ぶことができる。
【0057】
図8Aおよび図8Bでは、各々真空テーブル上で露光された集合体について実施される、先行技術の場合のようなローラーを用いた分離方法を図8Aに、そしてローラーを用いた処理ステップを含む本発明の一実施形態を図8Bに示している。図8Cは、真空ドラム上に保持された露光された集合体について実施される処理方法の一実施形態を示す。
【0058】
先行技術の図8Aにおいて、露光後で処理無しの使用されたドナー要素(1360)は、車軸(150)を有するローラー(140)によって左側でなおもレシーバー要素(100)に保持されるようになるまで、図の右側で集合体の一部分で持ち上げられている。ローラーの左側のレシーバー要素(100)およびドナー要素の一部分は、真空テーブル(110)の区分上に、それが及ぼす吸引力V(V1、V2、V3、V4、V5)によって保持される。V1およびV2あたりの真空テーブルの周辺の吸引は、ドナー要素とレシーバーの間から大気を除去するのに役立つが、V4およびV5周辺で要素間にこの真空は不在である。車軸(150)を伴うローラー(140)は、回転Rの結果として左へと走行している。図8Aの場合、ドナー要素とレシーバー要素の分離は、ローラーがそれらを一緒に保持する点まで集合体をひき離す上向きの力Tがドナー要素に加わることを理由として発生する。これにより、分離を徐々に行なうことができる。ドナー要素は、真空テーブルがドナー要素の下(F1)および集合体の下(F2)において大気圧Fよりも低い減圧を作り出すことに起因する力によって、ローラーの左側でレシーバー要素上に保持される。ローラーの右側では、それ自体力(F3)により真空テーブル上に保持されているレシーバー要素とドナー要素を合わせて引く力は、全く残っていない。
【0059】
図8B中の処理ステップの一実施形態においては、ドナー要素上の上向きの力Tは不在である。真空テーブルによってドナー要素およびレシーバー要素を合わせる力は、基本的に処理の前後で同じであり、ローラーの左側および右側の部域上の力にそれぞれ対応する。しかしながら、集合体上を転動するローラーは、レシーバー要素を基準にドナー要素を移動させ、それによりドナー要素に結びつけられた転写層とレシーバー要素に結びつけられた転写された層を連結する転写層のあらゆるコネクタ上に力を発生させることができる。力は、コネクタの転写層材料に亀裂を形成させるかまたは転写層材料を破断させるのに充分なほど有意なものであり得る。コネクタが処理中に1つの場所でのみ亀裂を形成させる場合には、その後の分離ステップ中にコネクタの破断が亀裂に沿ってまたは亀裂に誘導されて発生し得る。
【0060】
処理ステップにおけるローラーは、分離ステップにおいて使用されるローラーを推進するのに典型的に用いられるようなあらゆる力によって集合体を横断して推進され得る。一実施形態においては、ローラーは、スキッドやジャンプすることなく、集合体の表面に沿うのと同じ距離をローラーの表面に沿って網羅するように回転する。別の実施形態においては、ローラーは、集合体の表面に沿うのとは異なる距離をローラーの表面に沿って網羅するように回転し、この差異にはスキッドまたはジャンプで対応している。
【0061】
処理ステップにおいてローラーは、集合体と接触状態にありながら回転自在であるか、または、集合体に対してテンションを受けることができる。典型的には、ローラーと集合体の間で或る一定の速度および或る一定の下向き接触圧力で集合体上でローラーを移動させるために装置が用いられる。典型的には、ローラーは、集合体の支持層側と接触するが、特にレシーバー要素が可撓性である場合に、レシーバー要素側に接触することもできる。
【0062】
分離中、例えば使用されたドナー要素をローラー上へ巻き取ることによって、ローラーの回転速度を増大させることを目的とするように導かれた駆動力を用いたテンショニングを典型的に使用し、ローラー上の使用されたドナー要素の重なり部分をシワ無くすべての場所で接触状態に保つ。
【0063】
処理中、実質的に支持層に平行な方向に沿ってレシーバー要素を基準に、第1の位置から第2の位置までの支持層の位置の移動させるために、テンショニングを用いることができる。テンショニングには、(接触したまま集合体全体を移動する回転自在なローラーによって達成されると思われる)ローラーの回転に抵抗する制動力、または集合体上の移動により生成される回転の方向におけるローラーの回転を助長する駆動力が関与し得る。
【0064】
処理作業を提供するローラーが順方向に移動し、制動機構がローラーに対し制動力を加えた時点で、ローラーを順方向に移動させるのに必要な力は増大し、ローラーと良好に接触する支持層は、理想的にはいかなる正味移動もなく、ローラーと遭遇した時点で順方向に移動し、ローラーが移動し続けるにつれて逆方法に移動する。
【0065】
制動は、いくつもの方法で提供され得る。例えば、ローラー車軸とローラー本体の間に転がり軸受を有するローラーにおいては、転がり軸受を保持する案内溝をより小さくなるように調整でき、転がり軸受をさらに大きくすることができ、または、案内溝内に高粘度の潤滑剤を使用することもできる。ローラーと車軸の間にディスクブレーキを設置することができる。その他の方法も当業者にとっては周知である。
【0066】
処理作業を提供するローラーが順方向に移動し、駆動機構がローラーに対し駆動力を加えた時点で、ローラーを順方向に移動させるのに必要な力が減少するか、またはローラーが順方向に加速するのを妨げるための力を提供することが必要となり、ローラーと良好に接触する支持層は、理想的にはいかなる正味移動もなく、ローラーと遭遇した時点でレシーバー要素を基準に逆方法に移動し、ローラーが移動し続けるにつれて順方向に移動する。
【0067】
駆動力は、当該技術分野において周知のいくつもの方法でローラーに導入可能である。ローラー車軸上にモーターを取付け、ローラーと摩擦接触状態でゴムホイールを回転させることを通してローラーに力を伝達させることができる。クラッチ、モーターへの出力の変動またはホイールとローラー間の接触の滑りが、ローラーに供給される力の量を修正または制限し得る。
【0068】
処理用ローラーに対し駆動力または制動力を導入することで、ローラーの外周が走行する距離およびローラーの軸が走行する距離に変化を生み出すことができる。この変化は、支持層に伝達され、支持層の平面内で、レシーバー要素との関係における支持層の相対的移動を生み出す。
【0069】
例えば、ローラーが任意の画像形成部域の外側でレシーバー要素と接触した状態でドナー層の一部分の上を走行している場合、ローラーは支持層に対して平行な力で順方向に強制され得、ローラーの軸およびローラーの外周は、同じ時速で集合体を横断する。制動動作がローラーの周囲に加わると、ローラーの回転は減速されるが、集合体上の軸の速度は一定に保つことができる(必要に応じて順方向の力を調整することにより)。ローラー軸およびローラー外周の相対的移動のこの変化は、ローラーと良好な接触状態にある支持層の順方向(軸の走行方向)へのシフトをひき起こす可能性があり、これはレシーバー要素上の転写された層とドナー要素上の転写層の間のコネクタの破断に起因して、レシーバー要素まで不完全にしか伝達されない可能性がある。
【0070】
レシーバー層上の支持層の相対的移動は、制動されたローラーが接近してその区分上を通過するにつれて、集合体の各区分に伝達される。ローラーが各区分上を通過しそこから離れるにつれて、復元移動が起こる。正味移動は、コネクタの制動などの効果によりひき起こされる任意のわずかな移動を除いて、本質的にゼロである。
【0071】
図8Cは、集合体が円筒形真空ドラム上に保持されている処理ステップの一実施形態を示す。この処理は図8Bのものと類似している。ただし、ローラー(140)は1つの場所に保持され得、回転自在であるかまたは制動または駆動を受けることができ、真空ドラムはローラー(Rd)と接触した状態で回転可能である。
【0072】
支持層とレシーバー要素の間の相対的移動をひき起こすべく、例えば実質的に支持層に対して平行な方向に沿ってレシーバー要素を基準に第1の位置から第2の位置まで支持層の位置を移動させるべく集合体に対してローラーが伝達する力の量は、典型的には悪影響無く変動させることができる。例示を目的として、ローラーが少なくとも5N/m、少なくとも10N/m、少なくとも20N/m、少なくとも40N/m、少なくとも100N/m、少なくとも200N/mそして少なくとも500N/mの荷重の中から選択される正規化された面内せん断荷重を集合体上に発生させるように、制動力または駆動力をローラー内に提供することが有用である。ローラーと集合体の間にはいかなるスキッド、チャタリングまたはスリップも起こらないことが通常好ましい。
【0073】
処理と分離は、全く異なるものである。分離は処理に後続し、使用されたドナー要素と画像形成されたレシーバー要素を、それまでは互いに接しているかまたは近接していた部域間にいかなる相互作用も起こらなくなる距離まで離れるように移動させる。分離が終了すると、分離部域内で使用されたドナー要素と画像形成されたレシーバー要素の間には、無傷の完全なコネクタは全く存在せず、使用されたドナー要素および画像形成されたレシーバー要素は接触せず、分離部域内での力によって、合わせて保持されていない。
【0074】
分離はまた、ドナー要素とレシーバー要素の間の接触部域の内部でこれらの要素の接触を解除するプロセスでもあり、接触がもはや存在しない部域内では、ドナー要素およびレシーバー要素は、これらの要素のいずれかまたは両方に対し作用しそれらを元通り接触状態に戻すことのできる力が全く無い状態に置かれる。
【0075】
一実施形態では、処理ステップは、レシーバー要素との関係における支持層の第1の距離だけの最初の行程とそれに続くレシーバー要素との関係における支持層の第2の距離だけの戻り行程をひき起こし、露光後で処理の前に支持層とレシーバー要素の原初の位置から第3の距離のところに支持層を残し、ここで戻り行程の完了時点で、支持層は第1の行程の完了時点に比べレシーバー要素を基準にその原初の位置により近いところにある(この第3の距離は第1の距離よりも小さい)。別の実施形態においては、第3の距離は第1の距離よりも小さく、第3の距離は第2の距離よりも小さい。別の実施形態においては、第3の距離は、第1の距離よりも小さく、第3の距離は第2の距離よりも小さく、第1の距離は第2の距離以上である。
【0076】
露光された集合体の分離のために公知の技術において使用されている方法が、ドナー要素に結びつけられた転写層とレシーバー要素に結びつけられた転写層の間の破断場所に対するそれらの効果に関してむしろ無制御であるということが認識されている。露光された部域と未露光部域の間のコネクタが熱転写画像形成において共通であることが認識されていることから、コネクタの無制御破断の影響は集合体の分離の後に見られ、ほとんどがコネクタの破断に起因するものとして理解できる。急速な無制御無作為破断は、露光された部域と未露光部域の間にさまざまなサイズのエッジを与え、これには、コネクタの粉砕によって形成された破片が随伴し得る。これらのエッジは、平滑となるように意図されている場合に、粗いかまたは起伏がある状態で出現する。
【0077】
分離の前または真空が喪失する前、またはドナー要素がレシーバー要素から離れるように大きく移動する前に集合体を処理することで、制御された形でコネクタを破断するための、1回または複数回の機会を得ることが可能となる。制御された方法の2つのタイプは、混乱を受けていない転写層の近くでの破断、および転写された層の近くでの破断(フラップがそれに結びつけられた要素の複雑性を増すことから、レシーバー要素が使用されたドナーよりも高価である場合に好ましい実施形態)である。
【0078】
熱転写画像形成の1つの形態におけるコネクタの幅(転写された層から未転写の転写層へ向かうその距離)は、厚さ2〜3ミクロンの転写層の約150ミクロン幅のストライプの転写について、約6ミクロンであり得る。それにより、コネクタ単独の破断場所(非コネクタ場所での破断を含まず)の変動により、2つのエッジを有するストライプの幅が12ミクロン変動し得る。このような変動は、1つのウィンドウ上に正確に心出しされていないカラーフィルタストライプが、ウィンドウのガラス領域を被覆せず、液晶ディスプレー内のウィンドウを通して白色光が透過されるストライプを残すと考えられること、または、カラーストライプが予想外に大量の黒色マスクを被覆すると同時に、先行する画像形成からの黒色マトリクス上の隣接する、異なるカラーフィルタストライプの少なくともエッジ部分をも被覆し、カラーフィルタストライプを重複させることに起因してカラーフィルタ上に予想外に高い領域を与えること、のどちらかを意味する可能性がある。コネクタが多数の場所で破断し、使用されたドナー要素および画像形成されたのレシーバー要素の両方共の破片が分離の動揺によって別のウィンドウ場所まで運ばれて無くなった状態となった時点で、転写層材料の破片が形成し得る。
【0079】
一実施形態において、275mm/秒で走行する図8Aにあるような直径80mmのガイドローラーを用いたドナー要素の分離は、最高毎秒275,000ミクロンというレシーバー要素からの見かけの出発速度をドナー要素に与える。かかる条件下で、未分離の転写層に沿って伝播する破断の場所が6ミクロン以上変動し、さらには場合によって転写層をドナー要素に対するその付着から解除するかまたは転写層をレシーバー要素に対するその付着から解除すると予想することには合理性がある。分離ライン(ローラーのニップによって画定されるライン)の接近角度が変動する場合には、転写層に沿って伝播する破断の場所が変動しうると予想することもできると思われる。真空テーブルが及ぼす力が分離と同時に解除されるにせよ(未分離の集合体上では真空が維持される一方で、剥離エッジにおいては真空が破断されることによって)、大気圧が低下した領域を満たすため集合体内に空気が急進することによって力が作り出される可能性も高い。これらの力はコネクタを破断するかまたは急速な分離によって形成されたコネクタのフラグメントを散乱させることも考えられる。
【0080】
発明力ある実施形態においては、露光された集合体は、(典型的にはレシーバー要素に近いものの、その場所には限定されない)具体的な1つの相対的な場所において、制御された形でコネクタを破断、亀裂形成または脆弱化させることによる集合体の分離の前に処理される。この処理には、分離ステップによる分解の時点でドナー層に結びつけられた転写層とレシーバー要素に結びつけられた転写層の間の破断が主に1つの相対的場所にくるような形で、集合体を操作することが関与する。一実施形態においては、破断は、主に使用されたドナー要素に結びつけられた転写層の近くにあり、転写層のコネクタは、フラップとして画像形成されたレシーバー要素に結びつけられた転写層に付着した状態にとどまる。別のより好ましい実施形態においては、破断は主に画像形成されたレシーバー要素に結びつけられた転写層の近くにあり、転写層のコネクタは、フラップとして使用されたドナー要素に結びつけられた転写層に付着した状態にとどまる。
【0081】
図9は、真空テーブル(25)上に真空によって保持されさまざまな形で処理されている集合体(900)を示す。処理を実施する機器には、ローラー(910)、バー(940)そして取外し可能な粘着テープの2つの例(950Aおよび950B)が含まれる。集合体は、転写層(80)がレシーバー要素の少なくとも一部分と接触している状態で、レシーバー要素を被覆する最上部の支持層(70)とレシーバー要素を完全にとり囲む真空テーブルの一部分を伴って、ドナー要素(360)を通して認識可能である。処理には、露光された集合体の使用されたドナー要素支持層を横断してローラー(910)を移動させるステップが含まれる。図示したローラーは、重力により下に保持され、右側から見て時計回りに回転しながら前から後に移動されている。別の実施形態においては、重力以外の力によってローラーを集合体と接触した状態に保持することができる。どの力が使用されるにせよ、少なくとも一部の場所で、レシーバー要素に向かって支持層を移動させるだけで充分である。その他の実施形態においては、ローラーが走行速度と同一の速度で自在に回転している必要はなく、例えば集合体上をローラーが移動するにつれて支持層上にせん断または研磨力(buffing force)を提供する車軸(930)上の歯車(920)を通して、回転速度を設定することができる。不等な順方向動作および回転速度は、集合体にせん断動作を付与し、支持層に対し実質的に平行な方向に沿ってレシーバー要素を基準に第1の位置から第2の位置まで支持層の位置を移動させることができる。
【0082】
さまざまな実施形態において、支持層と接触しているローラー表面は、接着性またはコンプライアント(compliant)、またはその両方である。使用されたドナー要素支持層を横断してローラーを移動させることで、先に露光された集合体内で使用されたドナー要素と画像形成されたレシーバー要素を固定した関係に保持している力(例えば真空テーブルに起因する力)は瞬間的に変化し、集合体の小さい部域に真空テーブルのみに起因する原初の力が復元され支持層およびレシーバー要素がそれらの以前の関係または異なる関係に復元される前に、処理中の所与の瞬間において集合体のこの部域内で要素が相互に移動することができる。これらの変化は、例えばコネクタを破断させるか、亀裂形成させるかまたはその他の形でそれらを分離のために準備し特定の場所にフラップを作り出させることによって、これらのコネクタに影響を及ぼす。
【0083】
図10は、露光された集合体上を転動するコンプライアントな接着性ローラーの一実施形態を示す。ガラス(20)、黒色マトリクス(30)および青色フィルタ層(50)を含むレシーバー要素および支持層(70)を含むドナー要素は、少なくとも3つの状態すなわち、前の図に示されているように、図の左側にある混乱を受けていないもとの未撹乱転写層、図の右側にあるレシーバー要素黒色マトリクスおよびガラスに結びつけられた転写された層、およびこれら2つの間のコネクタの間に位置づけされている転写層(80)を共有している。集合体の上を通過しているのは、ローラー(220)であり、これは図示されている通り回転Mrによって移動し、右から左(Mf)へ集合体の上を通過する。ローラーは、未撹乱半径Roを有する円筒であり、Roより小さい半径Riをもつ内部組成物の内部コア(240)および内部組成物と同じかまたは異なるコンプライアントかつ/または接着性の組成物の、R0−R1以下の厚みRcをもつ少なくとも1つの外部層を含む。接着性外部表面(250)は、コンプライアントな厚い層(230)と同じかまたは異なる材料であり得る(この例では、接着剤は、ローラーの半径を変更すると思われる厚みを有するものとして示されるが、この論述のためには、無視できる厚みをもつものとして考慮すべきである)。ローラーが集合体に接触するにつれて、これは重力または閉鎖力により接点に押圧され、これにより変形するか、または転動動作および接着剤の粘着力により変形するかもしれない。ローラーの変形は、前進するローラーが最初に集合体に接触する入口部域(Re)および出口部域(Rx)において、例えば膨れに起因するRoより大きな半径を含み得る。ローラーのより短い半径は、例えば圧縮または膨れに起因して、入口と出口の間に見出され得る(Rs<Ro)。
【0084】
入口部域と出口部域におけるローラーの半径の増加は、RsなどのRoよりも短かい半径で入口と出口の間で圧縮された材料の膨れによってひき起こされ得る。出口部域における半径の増加は、支持層からのローラーの分離を遅延させるローラーの接着特性(ドナー要素から徐々にひき離されるこのドナー要素に接着したローラーの伸張)が原因であり得る。ローラーの回転がローラーとドナー要素の距離を増大させる一方で、このようにドナー要素に対し接着するローラー表面の付着により、支持層がローラーに追従するにつれて真空テーブル上に固定されたレシーバー要素から支持層をひき離すことができる。接着性ローラーを解除した時点で、支持層は真空テーブル上に固定したレシーバー要素に向かって移動できる。
【0085】
ローラーを順方向に押す力または支持層に伝達されているその他の力に起因して、ローラーと接触し始めた時点の不動のレシーバー要素を基準に、ローラーの走行方向にローラーが支持層を押すことも同様に可能である。
【0086】
短い方の半径Rsは、重力またはローラーを集合体のドナー要素支持層と接触するように押すその他の力によってひき起こされるローラーの変形を原因としている可能性がある。レシーバー要素に向かう支持層の移動は、短い方の直径Rsへの変形と同時に発生し得る。ローラーが移動し続けるにつれて、半径は再び増加し、支持層はレシーバー要素から離れるように移動できる。
【0087】
異なる時点における支持層と密なカップリング接触状態にあるローラーの異なる半径は、レシーバー要素を基準に支持層を移動させることのできる力を支持層に作り出すことができる。支持層に対するローラー移動のカップリングは、転写層を通したレシーバー要素に対するドナー要素のカップリングが不完全なため、レシーバー要素に対する支持層のカップリングよりも大きいものであり得る。レシーバー要素に対する支持層のカップリングは、要素同士、例えば青色転写層に対する緑色転写層のあらゆる接触、またはコネクタを介した連結によるものであり得る。そうでなければ例えば介入するいかなる黒色マトリクスまたはカラーフィルタ層も接触していない状態でガラス上に転写層が懸吊されている場合などのように、1つの場所で実際の接触が全く無いためその場所にこのカップリングが不在であってもよい。
【0088】
低圧縮領域(Reなどの長半径)から高圧縮領域(Rsなどの短半径)までの集合体の1点を通過するローラーの移動は、レシーバー要素に向かう支持層の移動をひき起こすことができる。レシーバー要素との関係における支持層のこの接近移動はコネクタに応力を与え、破断の原因となる可能性がある。
【0089】
高圧縮領域(圧縮によりひき起こされる短半径)から低圧縮領域(圧縮を軽減することによりひき起こされる長半径)までの集合体の1点を通過するローラーの移動は、レシーバー要素から離れる方向に支持層の移動をひき起こすことができる。レシーバー要素との関係における支持層のこの外向きの移動は、支持層がレシーバー要素に向かって移動した後、ローラーが影響を及ぼす直前のドナー要素とレシーバー要素の分離点および位置づけに向かうもののこれを超えない復元移動であり得る。
【0090】
Rx>Roでありローラーが支持層に接着した場合、ローラーは、ローラー材料の膨れが無くなるにつれてレシーバー要素から離れるように支持層を上昇させることができる。これは、ローラーが支持層と接触する前の原初の分離点および位置づけとの関係におけるレシーバー要素に対する支持層の外向きの移動であり得る。レシーバー要素に対する支持層の外向き(離れる方向)の移動は両方のタイプ共、コネクタに応力を加え、破断をひき起こし得る。
【0091】
これらの半径の変更およびコンプライアント層移動を介してローラーにより生成される力は、レシーバー要素および転写層に面する支持層の表面に対して平行に支持層を移動させ得る。この方向は、純粋にレシーバー要素に向かうかまたはこれから離れる支持層の移動に直交する。この方向は、典型的には、集合体の上のレーザーヘッドの相対的移動が画定する方向の平面に対して平行である。これらの力を認識する一つの方法は、膨れに起因するローラー材料の移動を理解することである。膨れは、ローラー材料を、ローラーの半径距離が最小になる点から離れるように移動させる。この移動は、支持層を拭うかまたは擦るのに類似した力を作り出し、これら全てがレシーバー層を基準に、閉鎖方向または分離方向に対し垂直で、支持層に平行な方向に、第1の位置から第2の位置まで支持層を移動させる。集合体せん断移動と呼ばれるこの移動は、コネクタに応力を加え、破断をひき起こし得る。
【0092】
コネクタは、転写された層のエッジと転写層のエッジの間に見られる。典型的には、転写された層エッジと転写層エッジは平行であり、2つのエッジに対する接線方向が、支持層に対し平行な可能性のある複数の方向からなる平面内に存在する。第1の位置から第2の位置までの移動が大部分の場合に2つのエッジに対する接線方向に平行である場合、その移動を、エッジ様集合体せん断(EAS)移動と呼ぶことができる。第1の位置から第2の位置までの移動が大部分の場合2つのエッジに対する接線方向に対し垂直であり、かつ転写層と転写された層の間の距離が増大しその後コネクタが全体に伸張されるようになっている場合、この移動を、コネクタ伸張性集合体せん断(CSAS)移動と呼ぶことができる。第1の位置から第2の位置までの移動が大部分の場合2つのエッジに対する接線方向に対して垂直であり、かつそれにより転写層と転写された層の間の距離が減少しその後コネクタが全体に圧縮されるようになっている場合、この移動をコネクタ圧縮性集合体せん断(CCAS)移動と呼ぶことができる。単一の集合体内のコネクタ収集物は数多くのエッジ配向性を含み得ることから、通常3つのタイプ全ておよび混合タイプの集合体せん断移動が、処理ステップによりひき起こされる。一実施形態においては、転写層および転写された層のエッジは大部分の場合、平行な一方向に整列され、集合体せん断移動は、大部分の場合この方向である。例えば、カラーフィルタ材料の長列を適用するために各ドナー要素が用いられるカラーフィルタにおいては、列の最長エッジが平行に整列され、この方向は大部分の場合、第1の位置から第2の位置への方向を画定する。この方向は、転写層を転写したレーザーヘッドの主移動と同じであり得、あるいは、方向は反対であり得、そうでなければ方向は、処理ステップのアラインメントに対する露光ステップのアラインメントの最も一般的な関係において、垂直であり得る。
【0093】
一実施形態においては、集合体を処理するためのローラーの転動は、例えば真空テーブルの排気を用いて、大部分のまたは全てのドナー要素がレシーバー要素と密に整列されているかまたは接触した状態に維持されるように集合体に力が加えられている間に実施される。別の実施形態においては、集合体全体を処理するのに必要な時間中の或る時点で、処理された集合体の一部分に対して、分離方法が適用される。
【0094】
一実施形態においては、処理および分離のために、2つの全く異なるローラーが使用される。処理用ローラーは、接着性でコンプライアントな表面を含むことができ、分離用ローラーは、非コンプライアント表面を含むことができる。図9中に示された別の処理実施形態においては、粘着テープ(950A、950B)が集合体の露光されたドナー要素の支持層表面の一部域の上に適用され、その後剥離により除去され得る。図9においては、各テープについて、粘着テープの自由端部が右から左へ(950A)または後ろから前へ(950B)移動させられて露光された集合体上のテープの湾曲エッジにおいて新たな力が作り出されるにつれて、剥離角度はほぼ180度となる。これらの力は、主としてせん断力であり、支持層の位置を、支持層に対し実質的に平行な方向に沿ってレシーバー要素を基準に第1の位置から第2の位置まで移動させる。
【0095】
一実施形態においては、粘着テープの除去は、例えば真空テーブルの排気を用いて、ドナー要素の大部分または全てがレシーバー要素と密に整列された状態または接触した状態に維持されるように集合体に力が加えられている間に実施される。
【0096】
図9に示されているさらに別の実施形態においては、バー(940)が処理を提供する。別の実施形態においては、バーは、露光された集合体の支持層と摩擦性または接着性またはコンプライアント接触状態にあり得、それによりバーの移動は支持層に結びつけられる。支持層と接触するバーの表面上の接着剤に起因する接着性接触は、真空テーブルにより所定の位置に保たれたレシーバー要素から離れる方向への支持層の移動を提供するべく、集合体から離れるようなバーの上向きの動作を支持層に伝えることができるようにする。
【0097】
コンプライアント接触は、各々の表面を一緒に迎合させ、2つの間の界面において滑りに抵抗する高い摩擦結合を提供することによって、バーの移動と対応する支持層の移動との結びつきを増大させるのに役立つ。これにより特に、せん断移動をバーから支持層まで伝えることが可能になる。
【0098】
バーに対して上向きの移動を提供する力は、図9中、Fuと記されている。バーを、クレーン(図示せず)などの吊り上げ機構に挟持させて、上向きの移動を提供することができる。
【0099】
下向きの力Fd、右向きの力Fr、左向きの力Fl、逆方向の力Fbおよび順方向の力Ffを加えて、バーおよび結びつけられた支持層を指示された方向へ移動させることができ、ここでこの移動は、真空テーブルまたは慣性力により拘束されたレシーバー要素との関係におけるものである。上述の力は、ハンマーによる打撃またはモーターの使用などのあらゆる好適な手段によって適用可能である。
【0100】
いかなる理論によっても束縛されないものの、本発明の有用性は、急速で無制限であり得る場合の分離の間に破断または破砕を発生させるのではなく、コネクタを破断または破砕するときに用いられる制御された力に起因するものであり得る。典型的には分離ステップにおいて、ドナー要素およびレシーバー要素を基本的に固定した配置に保持する力は、除去されるかまたは克服され、2つの要素の間の排気は、気体(典型的には空気)に置き換えられる。分離および気体流用のコネクタ上の新しい力および分離に関与する距離は、おそらくは、破片を生成し得る多数の位置においてコネクタを破断するのにきわめて充分なものである。
【0101】
処理中にレシーバー要素を基準に支持層の非常に小さいと推定される変位を導入することによって、単一の予測可能な場所でコネクタの破断を発生させることができ、単一の亀裂を伝播させて、その他の亀裂が形成し伝播する前に応力を軽減させることができる。
【0102】
一実施形態においては、集合体は、レシーバー要素の剛性(例えば剛性真空テーブル上の厚み500ミクロンのガラス)、および、ドナー要素とレシーバー要素の間の体積が(真空テーブルにより供給される相対真空により)排気された時にドナー要素を下に押圧するドナー要素支持層上の空気圧などの、ドナー要素をレシーバー要素と接触した状態に保つ力によって、露光および処理中比較的不動の状態に保たれる。しかしながら、Polaroid Corporationに対するErnest W.Ellisによる米国特許第5,633,113号明細書「Mass Transfer Imaging Media and Methods of Making and Using the Same」に記載のものなどの代替的集合体も、本発明に適切である考えられることが想定されている。例えば、露光された集合体を有するエンクロージャ、パウチまたはエンベロープを、それらを押圧またはせん断することのできるプレスまたは装置内に置いて、真空テーブル上のものの場合と同じ運動を集合体内にひき起こすことが可能であると思われる。
【0103】
一実施形態において、分離ステップは、使用されたドナー要素転写層をレシーバー要素との接触から完全に除去する。一実施形態においては、処理は、レシーバー要素との関係における支持層の平行な移動を用いて実施される。別の実施形態においては、平行な移動よりもむしろ、レシーバー要素との関係における支持層の分離移動または圧縮移動が実施される。さらに別の実施形態においては、平行および垂直移動の要素をもつ移動が実施され、この移動は、距離成分に分解された場合、垂直よりも平行に近い。別の実施形態においては、処理には、連続して実施される2つの移動、すなわちレシーバー要素に向かう支持層の移動に先行してレシーバー要素から離れるような支持層の移動が含まれる。一実施形態においては、離れる移動と向かう移動は両方共、完了時点において合計距離で10ミクロン未満であり;別の実施形態においては、100ミクロン未満;別の実施形態においては1ミリメートル未満である。レシーバー要素との関係における支持層の相対的移動のこのような実施形態全てにおいて、支持層の全ての部域が同時に相対的移動を行なう必要性は要求されていない。実際、集合体は一度に1つの部域ずつ処理することが好ましい。このようにして、支持層をレシーバー要素から離れるようにおよびそれに向かって移動させることにより一度に一個の集合体を処理する方法は、レシーバー要素に向かう移動が無く、大きく離れる移動を実施する分離動作とは異なるものである。
【0104】
一実施形態においては、例えば露光された部域を完全に網羅するバーによって、一瞬間において露光された部域全体にわたり処理が実施される。このようなケースにおいて処理の開始と分離の開始の間の時間は、「処理−分離間時間」と呼ばれる。
【0105】
一実施形態においては、処理は、露光された集合体の一部域全体にわたり徐々に実施される。1つの部域が処理を受けている時、まだ分離されていないものの過去の一時点で処理されたその他の近傍の部域、そしてまだ処理されていないものの将来の1時点において処理されるその他の近傍の部域が存在するために、漸進的な処理を認識することができる。漸進的処理の場合、1部域の処理の開始と1部域の分離の開始を離隔する時間は、処理−分離間時間と呼ばれる。
【0106】
処理を受けている部域の近傍に処理された未分離部域と未処理で未分離の部域が存在することは、分離に起因する集合体の各部域の混乱を最小限におさえながら処理が実施されることを表わす本発明の好ましい一実施形態である。処理を受けている部域の近傍に処理された未分離部域と未処理未分離部域が存在することを記述するために、我々は、転写層に最も近い支持層の表面に沿って測定された、処理中の部域と分離中の部域の間の最短距離を用いる。これは、「処理−分離間距離」と呼ばれる。
【0107】
例えば、平担な真空テーブル上で、幅0.4cm長さ1メートルの作用面積をもつ直径80mmの付属する非コンプライアンス分離用ローラーの軸から100mmだけ離隔された回転軸を有し、幅1cm長さ1メートルの作用面積を有する直径80mm、長さ1メートルの接着性でコンプライアントな処理用ローラーを用いて、集合体を処理し、それにより処理途中で、処理中の部域を分離中の部域から少なくとも93mm離隔させることが可能であると思われる。
【0108】
本発明は、0.01、0.1、0.5、1、3、10、30、および60秒のうちの少なくとも1つよりも長い処理−分離間時間を有する方法に対して適用可能である。本発明は、0.01、0.1、0.5、1、3、10、30および60センチメートルのうちの少なくとも1つよりも大きい処理−分離間距離を有する方法に対して適用可能である。
【0109】
本発明の方法を使用できる分野は、例えば、液晶ディスプレーに適した3色フィルタなどのカラーフィルタの製造向けの分野である。カラーフィルタの製造において有用な別個の方法および材料は、例えばYoun−Gyoung Changらによる米国特許第6,682,862号明細書およびG.Andrewsらに対する米国特許第6,645,681号明細書の中に記されている。3色カラーフィルタの第3の色の応用例が以下に示されている。赤色および青色ドナー要素フィルムおよびその他のドナー要素フィルムおよびレシーバー要素と共に類似の技術を使用することもできる。
【0110】
本明細書および特許請求の範囲に関して、「放射線」という用語は、従来通り電磁放射線を意味するために用いられる。例えば、放射線は、電磁スペクトルの紫外線(UV)、赤外線(IR)または可視光線(VIS)であり得る。UVおよびIR放射線はさらに、深、中、遠または近放射線として特徴づけできる。ランプまたはレーザーが、放射線ビームを供給できる。マスクを用いて集合体上に選択的に放射線を露光することができる。本発明は、例えば多数の制御可能なレーザービームを有するレーザーヘッドなどにより、3つ以上のフィーチャの露光が同時に起こる実施形態を企図している。多数のフィーチャを同時に露光することのできる露光用ヘッド用には、レーザーが特に好ましく、したがって、記述および例示目的でこれを使用する。一実施形態においては、多数の赤外線発光ダイオードレーザーが、集合体を横断して走査することのできる多重ビーム露光用ヘッドを提供する。一実施形態では、露光用ヘッドは、主として832nm前後で発光するおよそ200の突合わせビーム(abutted beams)を有し、各ビームは、走査方向に対し垂直な幅20ミクロンの矩形領域を照明でき、それにより、集合体上を移動させられた時点で同時に数多くのフィーチャを書込みながら4mmの集合体バンドまたはストライプを走査できる。典型的には、照明を受ける部域と転写を受ける部域の間にはほぼ1対1という公知の関係が存在する。未照明部域に縁どられた隣接する照明されたビームセットによって転写される幅が、局所的幅を画定する。多重ビーム露光用ヘッドの走査は、毎秒0.1、1、2、5および10メートルまたはその間などの任意の適切な速度で発生し得る。露光速度および持続時間は、1つの部域またはフィーチャの局所的長さを画定する。光のビームは、線形光弁などの任意の従来技術によって変調され得る。Gelbartは、米国特許第5,517,359号明細書中で適切な装置について記述している。
【0111】
本明細書および特許請求の範囲に関して、「熱転写」という用語は従来通りに用いられている。熱転写の様式は、照射タイプ、転写層内の材料のタイプなどによって変動し得、典型的には1つ以上の機序を介して発生し、それらのうちの1つ以上のものは、露光条件、ドナーの構成などに応じて転写中に強調度が増減され得る。以下の熱転写様式は、本発明を限定するものではなく、本発明の考えられる実施形態を例示することだけを目的として示されている。
【0112】
推測される1つの熱転写機序としては、熱メルト・スティック(thermal melt−stick)転写があり、これによると、転写層とドナー要素の残りの部分間の界面における局在化した加熱が、選択された場所におけるドナーに対する熱転写層の接着を低下させることができる。熱転写層の選択された部分は、ドナー要素が除去された時点で転写層の選択された部分がレシーバー要素上に残るような形で、ドナーに対してよりもレシーバー要素に対してより強力に接着できる。推測される別の熱転写機序としては、アブレーション転写があり、これによると、ドナー要素から転写層の一部分をアブレーションにより除去するために局在化された加熱を使用し、それによりアブレーションを受けた材料をレセプタに向かって導くことができる。さらに別の推測される熱転写機序としては、昇華があり、これによると転写層内に分散した材料(例えば染料)をドナー要素内で発生した熱によって昇華させることができる。昇華した材料の一部分は、レセプタ上に凝縮し得る。染料拡散熱転写も可能であり、この場合、染料はドナー要素の転写層からレシーバー要素まで、転写層の大規模な転写無く拡散する。
【0113】
熱転写は、レーザー誘起フィルム転写(LIFT)および、複数の転写材料が存在する場合ならびに1つの材料層が転写層を形成する場合に利用される、マルチ−LIFTと呼ばれる機序を利用することができる。かかるシステムは、米国特許第5,935,758号明細書(Patelら)および米国特許第6,899,988号明細書(Kidnieら)の中で報告された。LIFTまたはマルチ−LIFTシステムを用いて、ドナー要素からレシーバー要素まで、例えば結合剤、着色剤および添加剤のうちの1つなどの転写層の離散的ドットを転写することによって、ハーフトーン画像を形成させることができる。ドットは、溶融または軟化したフィルムから形成され得、密度またはエッジ解像力に関して比較的鮮明である明確で一般的に連続したエッジを有する。換言すると、ドットはその部域全体にわたり、比較的均等な厚みをもって形成される。染料転写法には、結合剤無しの着色剤の転写が関与し得、アブレーションといった一部の物質転写法は、転写材料の一部分を推進できるが、少なくとも部分的に結合剤を分解する。
【0114】
熱物質転写プロセスが本発明の実施形態において有用である。熱物質転写プロセスには、転写層の一質量または体積が全体的組成に有意な変化無しにレシーバー要素まで移動する熱転写プロセスが含まれる。理想化された熱物質転写は、転写層の体積全体をドナー要素の一部域から移動すると思われるが、実用的には、転写層の残渣がドナー要素上にとどまっている場合および露光の熱プロセスが部分的分解または架橋などの転写層の幾分かの変化をひき起こす場合も許容できる。したがって、熱物質転写には、少なくともアブレーション転写、レーザー誘起フィルム転写および溶融転写が包含されるが、染料拡散転写および昇華転写は除外される。
【0115】
露光の間、熱転写ドナー要素を、(典型的に、熱メルト・スティック転写機序の場合がそうであると考えられるように)レシーバー要素と密に接触させることができ、あるいは(アブレーション転写機序または転写材料昇華機序の場合そうであり得るように)レシーバー要素から熱転写ドナー要素まで幾分か距離をとることができる。
【0116】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「放射線誘起熱転写プロセス」という用語は、従来通りに使用される。例えば、近赤外線レーザーによって生成される放射線を用いて、集合体の支持層の全てではないが一部の部域を照明し、本明細書の他の場所で論述されている通り転写層を転写させる。露光は、「放射線誘起熱転写プロセス」をひき起こし、支持層を通してかまたはレシーバー要素を通して適切に行なわれる。
【0117】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「画像」という用語は従来通りに使用される。画像はバイレベルかまたは連続階調(コントーン)であり得る。一実施形態では、本発明の有用性はバイレベル画像形成にまで拡がっている。バイレベル画像形成においては、画像形成された部域内でレシーバー要素上に被着される転写層の百分率は相対的に100%に近く、成功した画像形成出力範囲全体にわたりほぼ恒常である。この百分率は基本的に、連続階調画像形成の場合のように露光出力の変化により0%〜100%まで連続的に変動するわけではない。バイレベル画像形成は、線画、ハーフトーン画像形成および製造例えばカラーフィルタ生産に適切である。バイレベル画像形成における有用性で知られる集合体露光の機序としては、溶融転写、アブレーション転写およびレーザー誘起フィルム転写が含まれる。
【0118】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「ドナー要素」という用語は、従来通りに使用される。例えば、ドナー要素は、支持層およびレシーバー要素に「提供され」得る転写層を含む。ドナー要素は典型的に、放射線を吸収し、放射線をより直接的に転写をひき起こす熱へと変換する少なくとも1つの構成要素を含んでいる。
【0119】
ドナー要素からレシーバー要素への光誘起材料転写用の画像形成可能な集合体の中で、レシーバー要素と共に使用するためのドナー要素には、標準的に多数の層が含まれている。層は、支持層、光−熱変換(LTHC)層および転写層を含み得るが、これらに限定されない。典型的には、50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムなどの支持層に、光−熱変換層前駆体がその後コーティングされる。次にこの前駆体は、水および/または溶剤を除去するため乾燥により最終的な光−熱変換層に変換され、その後、転写層前駆体が支持層の反対側の光−熱変換層上にコーティングされ、乾燥により転写層へと変換される。
【0120】
ドナー要素の層内に吸収されるレーザー光などの放射線の量を増加させるために、ドナー要素内に吸光剤を含み入れることができる。この吸光剤は、数多くの形態を取ることができるが、典型的には画像形成のために用いられるレーザー光の効率の良い吸収体である。効率の良い吸収体は少量で使用でき、選択的吸光体は、ドナー要素そして特に転写層の色または透明度などのその他の光学的特性と干渉する確率が低い。
【0121】
典型的には、吸光剤は、好ましくは画像形成用レーザー光の中に見出されるような電磁スペクトルの赤外線、可視光線および/または紫外線領域内の光を吸収する。吸光剤は、典型的には、選択された画像形成用レーザー光を高レベルで吸収し、一実施形態においては0.2〜3の範囲内そして別の実施形態では0.5〜2の範囲内の画像形成用レーザー光波長で吸光度を提供する。吸光度は、a)(典型的には最短方向における)層を通して透過された光の強度および、b)層に対する入射光の強度の比の対数(十進法)の絶対値である。例えば、1という吸光度は、入射光強度の10%の透過に対応し、0.4超の吸光度は、入射光強度の約40%未満の透過に対応する。
【0122】
適切な光吸収材料としては、例えば染料(例えば可視染料、紫外染料、赤外染料、蛍光染料および光偏光染料)、顔料、金属、金属化合物、金属フィルムおよびその他の適切な吸収材料が含まれ得る。適切な吸光剤の例としては、カーボンブラック、グラファイト、金属酸化物、金属硫化物、有機化合物例えばシアニン系、ポリメチン系、アズレニウム系、スクアリリウム系、チオピリリウム系、ナフトキノン系またはアントラキノン系染料;およびフタロシアニン系、アゾ系またはチオアミド系有機金属錯体が含まれ得る。シアニン染料は、赤外線領域内で高い吸収係数を示すことから、好ましくは赤外線レーザー照明と共に使用され、光−熱変換材料として用いられる場合、レーザー光吸収層の厚みを薄くすることができ、その結果、ドナー要素の画像形成感度をさらに改善することができる。
【0123】
吸光剤は、転写層内または別の層、例えば転写層と支持層の間の層の中に存在し得る。吸光剤を含む転写層から分離した層は、レーザー光での画像形成中、吸光剤が光を吸収し熱を発生させることから、光−熱変換層と呼ぶことができるが、レーザー照明の画像形成された領域内の画像形成された転写層の中に見出される吸収体とは対照的に、実質的または完全に転写され得ない。
【0124】
本発明においては、支持層と転写層は、光−熱変換層をはさむことができる。ドナー要素は任意にその他の層、例えば、支持層と転写層の間に配置された層(例えば中間層)、転写層の反対側の支持層上に配置された層(例えば帯電防止層)、および支持層の反対側の転写層上に配置された層(例えば接着剤層)を含んでいてよい。接着剤層は熱物質転写により転写されると考えられ、そのような場合、接着剤層は転写層が多数の異なる層からなっている状態で転写層の一部とみなされると考えられる。かかる多層転写層は周知である。
【0125】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「支持層」という用語は、従来通りに使用される。支持層は、例えば製造中、画像形成可能な集合体を作る際に、および集合体の露光の後画像形成されたレシーバー要素から使用されたドナー要素を分離する際に、ドナー要素をその機能層と共に取扱う実用的手段を提供することができる。このような態様においては、支持層は従来通りであり、露光中に実質的に変化し得る(例えば、作成、移動、分解、溶融など)層のための基板として作用する。露光の副作用として、支持層も変化を受けるかもしれないが、これらの変化によって、その他の層を担持する上での支持層の有用性が無くなるわけではない。
【0126】
支持層はポリマーフィルムであり得る。ポリマーフィルムの1つの適切なタイプは、ポリエステルフィルム、例えばポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレンナフタレートフィルムである。しかしながら、特定の利用分野のための充分な機械的および熱的安定性、そして任意には特定の波長での高い光透過性を含めた充分な光学特性を有するその他のフィルムを使用することができる。支持層のための適切なポリマーの例としては、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリビニル樹脂、またはポリエステルが含まれる。一実施形態においては、支持層のために合成線状ポリエステルが使用される。
【0127】
支持層として有用な合成線状ポリエステルは、1つ以上のジカルボン酸またはその低アルキル(最高6個の炭素原子)ジエステル、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,5−、2,6−または2,7−ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、ヘキサヒドロ−テレフタル酸または1,2−ビス−p−カルボキシフェノキシエタン(任意には、ピバリン酸などのモノカルボン酸を伴う)を、1つ以上のグリコール、特に脂肪族または脂環式グリコール、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノールと縮合させることにより得ることができる。芳香族ジカルボン酸が好適である。脂肪族グリコールが好適である。ヒドロキシカルボン酸モノマー、例えばω−ヒドロキシアルカン酸(典型的にはC3〜C12)、例えばヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、p−ヒドロキシ安息香酸、m−ヒドロキシ安息香酸または2−ヒドロキシナフタレン−6−カルボン酸に由来する単位を含有するポリエステルまたはコポリエステルを使用してもよい。一実施形態においては、ポリエステルは、ポリエチレンフタレートおよびポリエチレンナフタレートから選択される。
【0128】
支持層は、上述のフィルム形成材料の1つ以上の個別層を含んでいてよい。それぞれの層のポリマー材料は、同じであっても異なっていてもよい。例えば、支持層は、1、2、3、4または5層以上の層を含んでいてよく、典型的多重層構造は、AB、ABA、ABC、ABAB、ABABAまたはABCBAタイプのものであってよい。
【0129】
支持層の形成は、従来の技術によって行われてよい。支持層の形成は押出し加工によって実施されるのが好適である。一般的には、プロセスは、溶融ポリマー層を押出し加工するステップ、押出物を急冷するステップ、および急冷した押出物を少なくとも1つの方向に配向するステップを含んでいてよい。
【0130】
支持層は何度でも配向しまたは配向解除でき、例えば一軸配向または二軸配向してよい。配向は、例えばチューブ成形プロセスまたは平担フィルムプロセスなど、配合フィルムを生産するための当該技術分野において公知のあらゆるプロセスによって実施してよい。二軸配向は、フィルム平面内で2つの互いに直交する方向に延伸して機械的および物理的特性の満足のいく組合せを達成することによって実施され得る。
【0131】
支持層は典型的には薄くコーティング可能であり、それにより均等なコーティングを適切に適用し後続する層中に濃縮させることができるようになっており、最終的な多層ドナー要素はシートまたはロール形状で適切に取扱うことができる。支持層組成物は同様に、典型的には、露光中の光−熱変換層の加熱にも関わらず安定した状態にとどまる材料から選択される。支持層の典型的厚みは、約0.005〜約0.5mmの範囲内、例えば約15μm、約25μm、約50μm、約100μmまたは約250μmの厚みのフィルムであってよいが、より厚いまたは薄い支持層を使用してもよい。支持層の幅および長さの寸法は、画像形成すべきレシーバー要素の寸法および取扱い上の便宜に合わせて選択され、例えば幅約0.1〜約5m、長さ約0.1〜約10,000mである。
【0132】
ドナー要素用支持層としては、金属蒸着フィルムを使用することができる。具体例としては、ポリエチレンテレフタレートまたはポリオレフィンフィルムを含む単層または多層フィルムがある。有用なポリエチレンテレフタレートフィルムとしては、MELINEX(登録商標)473(厚み100μm)、MELINEX(登録商標)6442(厚み100μm)、MELINEX(登録商標)LJX111(厚み25μm)およびMELINEX(登録商標)453(厚み50μm)があり、任意にはCP Films(Martinsville, VA)製金属クロムで50%の可視光線透過率まで金属蒸着されている。金属層を、転写層側または転写層の反対側に配向することができる。上述のような金属層は、転写層側に配向された場合に熱転写をひき起こすべく放射線吸収体および発熱体として作用することができる。
【0133】
例えば、全て本明細書に参照により援用されているMizunoらの米国特許第6,228,543号明細書にあるような中間層または剥離層、Ellisらの米国特許第5,171,650号明細書中にあるような動的剥離層、またはCasparらの米国特許第6,569,585号明細書にあるような放出層などのその他の従来通りの層を、本発明のドナー要素中に使用することもできる。
【0134】
支持層は、通常光−熱変換層または転写層に到達する前に支持層に衝突する露光用放射線に対し適度な透過性を有し、通常は例えば露光用波長で約90%以上の光線透過率を有する支持層である。支持層は単層または多重層であり得る。同様に、光反射を削減するため、一般的には支持層の外側に反射防止層を形成させてもよい。
【0135】
本仕様書および特許請求の範囲に関連して、「転写層」という用語は、従来通り使用される。転写層は、転写可能な材料を保持するのに役立つ。典型的なドナー要素においては、少なくとも1つの層が転写層内に含み入れられており、2つ以上の層で転写層を作り上げることができる。転写層は内部側面と外部側面を有する。前記転写層の外部側面は、放射線による像様転写のため画像形成可能な集合体のレシーバー要素に隣接して設置される。転写層は、選択的に転写され得る結合剤を伴ってまたは伴わずに1つ以上の層内に配置されている任意の適切な1つのまたは複数の材料を含み得る。転写は、任意の適当な転写機序によって1ユニットとして、複数の部分に分かれて、または部分的に行なうことができる。転写は、集合体の中で吸収体により吸収され得る露光用放射線に集合体を露光した時に発生し、放射線の電磁エネルギーの少なくとも一部分が熱に変換される。像様転写においては、転写される材料が、転写層の全物質である必要はない。単一の部分内の転写層の他の構成要素をドナー要素に保持させたまま、一部の構成要素をレシーバー要素に対し選択的に転写してもよい(例えば、染料を保持する耐熱性架橋ポリマーマトリクスを未転写のままにとどめて、昇華可能な染料を転写してよい)。
【0136】
転写層は、レシーバー要素に対する転写のためおよび画像形成されたレシーバー要素またはドナー要素上で必要な機能を遂行するため機能性を維持できる任意の厚みをもつものであってよい。転写層の典型的厚みは、約0.1μm〜約20μm;例えば0.2、0.5、0.8、1、2、4、6、8、10、15または20μmであってよい。
【0137】
転写層は、有機、無機、有機金属または重合体材料を含む多数の構成要素を含んでいてよい。転写層としておよび/または転写層内に取込まれた材料としてドナー要素から選択的にパターニングされ得る材料の例としては、着色剤(例えば結合剤中に分散させた顔料および/または染料)、偏光子、液晶材料、粒子(例えば液晶ディスプレー用のスペーサ、磁気粒子、絶縁粒子、伝導性粒子)、発光物質(例えば蛍光体および/または有機エレクトロルミネセンス物質)、発光デバイス(例えばエレクトロルミネセンスデバイス)中に取込んでよい非発光材料)、疎水性材料(例えばインクジェットレセプタ用の区画バンク(patition bank))、親水性材料、多層スタック(例えば有機エレクトロルミネセンスデバイスなどの多層デバイス構造)、微細構造またはナノ構造層、エッチ−レジスト、金属、金属構成要素を有する材料、ポリマー、接着剤、結合剤、およびバイオ材料、およびその他の適当な材料またはかかる材料の組合せが含まれる。
【0138】
転写層は、支持層または支持層に隣接するその他の適切なドナー要素上にコーティングすることによって適用可能である。転写層またはその前駆物質は、バーコーティング、グラビアコーティング、押出しコーティング、蒸着、ラミネート加工、およびその他のこのような技術などの、任意の適切な材料コーティング用技術により適用してよい。コーティングに先立って、またはその後またはそれと同時に、架橋可能な転写層材料またはその一部分を、材料に応じて例えば加熱、放射線露光および/または化学硬化剤に対する露光により架橋してよい。
【0139】
一実施形態においては、転写層は、ディスプレーの利用分野において有用である材料を含んでいる。本発明にしたがった熱転写は、フォトリソグラフィベースのパターニング技術の場合に比べて少ない加工ステップを用いて高い精度および正確さでレシーバー要素上に1つ以上の材料をパターニングするために実施され得、したがって、ディスプレー製造などの利用分野で特に有用であり得る。例えば、レシーバー要素への熱転写時点で、同じ要領でパターニングされ得るまたはされ得ないその他の要素と組合せた状態でまたは単独で、転写された材料がカラーフィルタ、黒色マトリクス、スペーサ、バリヤ、隔壁、偏光子、位相差層、波長板、有機導体または半導体、無機導体または半導体、有機エレクトロルミネセンス層、蛍光体層、有機エレクトロルミネセンスデバイス、有機トランジスタおよび、ディスプレー内で有用であり得るその他のこのような要素、デバイスまたはその一部分を形成するような形で、転写層を作ることができる。
【0140】
特定の実施形態においては、転写層は、着色剤を含み得る。例えば、顔料または染料を着色剤として用いてよい。一実施形態においては、優れた色持続度および透明度を有する顔料、例えばNPIRI Raw Materials Data Handbook、第4巻(顔料)中で開示されている顔料が使用される。適切な透明着色料の例としては、Ciba−Geigy Cromphtal Red A2B(登録商標)、Dainich−Seika ECY−204(登録商標)、Zeneca Monastral Green 6Y−CL(登録商標)およびBASF Heliogen Blue L6700(登録商標)が含まれる。その他の適切な透明着色料としては、Sun RS Magenta 234−007(登録商標)、Hoechst GS Yellow GG 11−1200(登録商標)、Sun GS Cyan 249−0592(登録商標)、Sun RS Cyan 248−061、Ciba−Geigy BS Magenta RT−333D(登録商標)、Ciba−Geigy Microlith Yellow 3G−WA(登録商標)、Ciba−Geigy Microlith Yellow 2R−WA(登録商標)、Ciba−Geigy Microlith Blue YG−WA(登録商標)、Ciba−Geigy Microlith Black C−WA(登録商標)、Ciba−Geigy Microlith Violet RL−WA(登録商標)、Ciba−Geigy Microlith Red RBS−WA(登録商標)、Heucotech Aquis II(登録商標)シリーズのいずれか、Heucosperse Aquis IIIシリーズのいずれかなどが含まれる。本発明において着色剤として使用できる別の部類の顔料は、Ciba Geigyから入手可能なものなどのさまざまな潜在顔料である。熱画像形成による着色料の転写は、米国特許第5,521,035号明細書;5,695,907号明細書;および5,863,860号明細書の中で開示されており、本明細書に参照により援用されている。
【0141】
一部の実施形態においては、転写層は、有機エレクトロルミネセンスディスプレーおよびデバイスまたは蛍光体ベースのディスプレーおよびデバイスなどの電子放出ディスプレーにおいて有用である1つ以上の材料を含むことができる。例えば、転写層は、架橋発光ポリマーまたは架橋電荷輸送材料、ならびに架橋されているか否かに関わらずその他の有機導体または半導体材料を含むことができる。ポリマーである有機発光ダイオード(OLED)については、最終的OLEDデバイスの安定性を増強するべく有機層のうちの1つ以上のものを架橋することが望ましいことがある。熱転写に先立ちOLEDデバイスのために1つ以上の有機層を架橋することも望ましいことがある。転写前の架橋は、より安定したドナー媒体、OLEDデバイス内でのより優れた転写および/またはより優れた性能特性を導くと考えられるフィルムの形態に対するより優れた制御を提供することができ、かつ/または1つまたは複数のデバイス層内の架橋が熱転写に先立って実施される場合により容易に調製され得るOLEDデバイスおよび/または独特のOLEDデバイスの構築を可能にすることができる。
【0142】
発光ポリマーの例としては、ポリ(フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ−パラ−フェニレン(PPP)およびポリフルオレン(PF)がある。本発明の転写層内で有用であり得る架橋可能な発光材料の具体例としては、Liら、Synthetic Metabs、第84号、437〜438頁(1997年)中で開示されている青色発光ポリ(メタクリレート)コポリマー、Chenら、Synthetic Metals、第107号、203〜207頁(1999年)中で開示されている架橋可能なトリフェニルアミン誘導体(TPA)、Klarnerら、Chem.Mat.第11号、1800〜1805頁(1999年)中で開示されている架橋可能なオリゴおよびポリ(ジアルキルフルオレン)、FarahおよびPietro、Polymer Bulletin、第43号、135〜142頁(1999年)中で開示されている部分架橋ポリ(N−ビニルカルバゾール−ビニルアルコール)コポリマー、およびHiraokaら、Polymers for Advanced Technologies、第8号、465〜470頁(1997年)中で開示されている酸素架橋ポリシランが含まれる。
【0143】
本発明の転写層内で有用であり得るOLEDデバイスのための架橋可能な転写層材料の具体例としては、シラン官能化トリアリールアミン、Bellmannら、Chem.Mater、第10号、1668〜1678頁(1998年)中で開示されているペンダントトリアリールアミンを伴うポリ(ノルボルネン)、Bayerlら、Macromol.Rapid Commun.第20号、224〜228頁(1999年)中で開示されているビス官能化ホール輸送トリアリールアミン、米国特許第6,030,550号明細書中で開示されているさまざまな架橋導電性ポリアニリンおよびその他のポリマー、国際公開第97/33193号パンフレット中で開示されている架橋可能なポリアリールポリアミン、および特開平9−255774号公報中で開示されている架橋可能なトリフェニルアミン含有ポリエーテルケトンが含まれている。
【0144】
本発明の転写層中で使用される発光、電荷輸送または電荷注入材料は同様に、熱転写の前または後に中に取込まれるドーパントを有していてもよい。ドーパントは、発光特性、電荷輸送特性および/またはその他のこのような特性を改変させるかまたは増強するために、有機発光ダイオード(OLED)用の材料中に取込まれてよい。
【0145】
発光ディスプレーおよびデバイスの利用分野のためのドナーシートからレシーバー要素への材料の熱転写は、米国特許第5,998,085号明細書および6,114,088号明細書中および国際公開第00/41893号パンフレットの中で開示されている。
【0146】
転写層は任意には、さまざまな添加物を含むことができる。適切な添加物としては、吸光剤、例えばIR吸収剤、UV吸収剤または可視光線吸収剤;分散剤、界面活性剤、安定剤、可塑化剤、架橋剤およびコーティング助剤が含まれ得る。転写層は同様に、染料、可塑化剤、UV安定化剤、フィルム形成添加剤および接着剤を含めた(ただしこれらに限定されない)さまざまな添加物も含んでいてよい。転写層のための適切な吸光剤およびそれらの使用条件は、光学的光−熱変換層についての項で論述されているものと同じである。
【0147】
結合剤を伴う転写層では、結合剤の任意のポリマーが、熱に曝されている間に達する温度で望ましくないほどに自己酸化、分解又は崩壊することがなく、それにより転写層の露光された部域が損傷を受けないのが典型的である。適切な結合剤の例としては、スチレンと(メタ)アクリレートエステルおよび酸のコポリマー、例えばスチレン/メチル−メタクリレートおよびスチレン/メチル−メタクリレート/アクリル酸、スチレンとオレフィンモノマーのコポリマー、例えばスチレン/エチレン/ブチレン、およびスチレンとアクリロニトリルのコポリマーを含めたスチレンポリマーおよびコポリマー;フルオロポリマー;エチレンおよび一酸化炭素とのものを含めた(メタ)アクリル酸および対応するエステルのポリマーおよびコポリマー;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリウレタン;ポリエーテル;およびポリエステルが含まれる。上述のポリマーのためのモノマーは、置換されているかまたは未置換であり得る。ポリマーの混合物も同様に使用可能である。その他の適切な結合剤としては、塩化ビニルポリマー、酢酸ビニルポリマー、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、酢酸ビニル−クロトン酸コポリマー、スチレン無水マレイン半エステル樹脂、(メタ)アクリレートポリマーおよびコポリマー、ポリ(ビニルアセタール)、無水物およびアミンで修飾されたポリ(ビニル)アセタール)、ヒドロキシアルキルセルロース樹脂およびスチレンアクリル樹脂が含まれる。
【0148】
本発明の一実施形態においては、ドナー要素は、厚み約50ミクロンのポリエチレンテレフタレートの支持層に水性担体中の転写層をコーティングしたものであり、乾燥されておよそ2.5ミクロンの転写層厚みを提供する。水性担体中の適切な転写層は、カルボン酸含有量が3.6mM/gで約10,000原子質量単位の重量平均分子量をもつ37〜55乾燥重量部分の第1のスチレン−アクリルコポリマー;1.5〜4:1の顔料対結合剤重量比をもち30〜55乾燥部分の1つ以上の顔料分散;カルボン酸含有量が3.6mM/gで重量平均分子量約4000の0〜6乾燥部分の第2のスチレン−アクリルコポリマー;6〜10乾燥部分のカルボン酸架橋剤;1〜1.5乾燥部分の近IR吸収性顔料2−[2−[2−クロロ−3[2−(1,3−ジヒドロ−1,1ジメチル−3−(4−ジメチル−3−(4−スルホブチル)−2H−ベンズ[e]インドール−2−イリデン)エチリデン]−1−クロロヘキセン−1−イル]エテニル]−1,1−ジメチル−3−(スルホブチル)−1H−ベンズ[e]インドリウム、内塩、遊離酸、ピーク吸光度約850nMのH.W.Sands and Co.(Jupiter,Florida)製のCAS#[162411−28−1];0.5部分の界面活性剤および0.5部分の消泡剤で作製されていた。
【0149】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「レシーバー要素」という用語は、従来通りに使用される。レシーバー要素は、露光パターンにしたがって転写層から材料の転写を受入れる物体である。レシーバー要素は、任意の物体、典型的にはシート状の物体、例えば単一層、または多層要素で構成されていてよい。レシーバーが転写された画像を保持することができること、そして適正な寸法上の安定性を有することという点を除いて、レシーバー内での利用に適した材料に対する特別な制限はない。レシーバー要素は、寸法的に安定したシート材料または剛性の物体を含むことができる。集合体は、レシーバー要素が充分に透明である場合、この要素を通して露光され得る。レシーバー要素のための透明なフィルムの例としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリ(ビニルアルコール−コ−アセタール)、ポリエチレンまたはセルロースエステル、例えば酢酸セルロースが含まれる。不透明なレシーバー要素材料の例としては、例えば、二酸化チタンなどの白色顔料で充填されたポリエチレンテレフタレート、アイボリーペーパーまたはTyvek(登録商標)スパンボンデッドポリオレフィンなどの合成紙が含まれる。校正用の利用分野のためには紙製支持体が典型的で好適であり、一方医療用ハードコピーおよびカラーフィルタアレイの利用分野のためにはポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル支持体が典型的で好適である。レシーバー要素の中では、粗面化された支持体も同じく使用してよい。ガラス板またはガラスカラーフィルタ基板などの剛性物体も、レシーバー要素となり得る。レシーバー要素には、レシーバー層、変形可能層、剥離層、およびレシーバー支持層などの層の1つ以上の例が含まれ得る。その他の有用なレシーバー要素構成要素も同様に、1996年7月9日付けの米国特許第5,534,387号明細書中で開示されている。
【0150】
レシーバー要素は、ディスプレーの利用分野に適したあらゆるタイプの基板またはディスプレー要素または前駆体であってよい。液晶ディスプレーまたは発光ディスプレーなどのディスプレー内で使用するのに適したレシーバー要素としては、可視光を実質的に透過する剛性または可撓性基板が含まれる。剛性レシーバー要素の例としては、ガラス、インジウム−酸化錫コーティングされたガラス、低温ポリシリコン(LTPS)および剛性プラスチックが含まれる。適切な可撓性基板としては、実質的に透明で透過性のあるポリマーフィルム、反射性フィルム、非複屈折フィルム、半透過型フィルム、偏光フィルム、多層光学フィルムなどが含まれる。適切なポリマー基板としては、ポリエステルベース(例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリカーボネート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニル樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアセタールなど)、セルロースエステルベース(例えば三酢酸セルロース、酢酸セルロース)およびさまざまな画像形成技術において支持体として使用されるその他の従来のポリマーフィルムが含まれる。約2〜約200ミル(すなわち0.05〜5mm)の透明なポリマーフィルムベースが好まれる。
【0151】
ガラスレシーバー要素について、典型的厚みは約0.2〜2.0mmである。約1.0mm以下の厚みまたはさらには0.7mm以下の厚みをもつガラス基板を使用することが往々にして望ましい。より薄い基板は、結果としてより薄く軽量のディスプレーをもたらす。しかしながら一部の加工、取扱いそして組立て条件は、より厚い基板を使用することを示唆するかもしれない。例えば、一部の組立て条件は、基板の間に配置されたスペーサの位置を固定するためにディスプレーアセンブリの圧縮を必要とするかもしれない。より軽量のディスプレーのための薄い基板、そして取扱いおよび加工の際の高い信頼性のための厚い基板という競合関係のバランスを保って、特定のディスプレー寸法のための好ましい構造を達成することができる。
【0152】
レシーバー要素がポリマーフィルムである場合、それが組込まれる予定のディスプレーの作動との干渉を実質的に防止するべくフィルムを非複屈折にすることが好ましいかもしれず、そうでなければ、所望の光学的効果を達成するようにフィルムを複屈折フィルムとすることが好ましいかもしれない。例示的非複屈折レシーバー要素は、溶液流延されるポリエステルである。これらの典型的な例は、9,9−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−フッ素およびイソフタル酸、テレフタル酸またはその混合物から誘導される反復する共重合単位からなるかまたは本質的にこれらからなるポリマーから誘導されたものであり、このポリマーは、均一なフィルムを形成できるようにオリゴマー(すなわち約8000以下の分子量を有する化学種)含有量が充分低いものである。このポリマーは、本明細書に参照により援用されている米国特許第5,318,938号明細書中で熱転写レシーバー要素内の1つの構成要素として開示されている。別の部類の非複屈折基板は、非晶質ポリオレフィン(例えば、日本ゼオン株式会社からZEONEXという商品名で販売されているもの)である。例示的な複屈折ポリマーレシーバー要素としては、全て本明細書に参照により援用されている米国特許第5,882,774号明細書および5,828,488号明細書中、および国際公開第95/17303号パンフレット中で開示されているものなどの多層偏光子またはミラーが含まれる。
【0153】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「集合体」という用語は、従来通りに使用されている。例えば、集合体はレシーバー要素およびそれと隣接して転写層と整列されたドナー要素を含む。ドナー要素とレシーバー要素は接触させられるかまたは間欠的に接触させられ、典型的には集合体内の力により合わせて保持されている。
【0154】
集合体を形成するべくドナー要素(10)とレシーバー要素(40)を合わせて保持するためには真空および/または圧力を使用できる。真空テーブルが、集合体を形成しそれを露光用に位置づけするための適切な方法を提供する。一実施形態においては、レシーバー要素は真空テーブル上に設置され、より広く長いドナー要素が、レシーバー要素を完全に被覆し真空テーブル上に重複するように位置づけされる。真空テーブルは、ドナー要素とレシーバー要素の間の大気圧が低くなりこれらが合わせて引き付けられるまでこれらの要素の間の空気を吸引する。真空が気泡を引き出すレシーバー要素の外部エッジまで捕捉された気泡を押しやるために、ローラーを使用することができる。典型的には、この排出により、転写層の外部表面およびレシーバー要素の外部表面は、例えばマスクまたは標的が介入するのでないかぎり、接触することになる。要素の各表面が平滑である場合、この接触は広い部域にわたり密で連続的であり得る。いずれかの表面が充分平滑でない場合、接触は間欠的になり得る。例えば、いずれかの要素上に粗面化された表面を存在させることで気泡の捕捉を回避することができ、粗面化により連続的接触を防止することができる。以前に画像形成されたレシーバー要素は、以前の画像形成に由来する転写層の突出した部域を有することによって、ドナー要素がレシーバー要素のトポグラフィに完全に適合するのを防ぐことができる。ウィンドウ要素を画定するブラックマスクを担持するガラス基板のカラーフィルタアレイなどの元来平面でないレシーバー要素も同様に、ドナー要素がレシーバー要素のトポグラフィに完全に適合しないようにすることができる。
【0155】
1つの変形形態として、集合体は周囲で溶融により一緒に保持され得る。別の変形形態においては、ドナー要素とレシーバー要素を一緒にテープで固定することによって集合体を一緒に保持することができ、次に集合体を画像形成装置にテープで固定するかまたはピン/狭持システムを使用することができる。さらに別の変形形態としては、ドナーをレシーバー要素に対しラミネート加工して集合体を形成することができる。集合体は、適切にはレーザー露光を容易にするようにドラム上に取付けることができる。当業者であれば、フラットベッド、内部ドラム、キャプスタン駆動などのさまざまなアーキテクチャも本発明と共に使用できることを認識する。
【0156】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「露光(する)」という用語は、従来通りに使用される。例えば、画像形成には、露光の一形態が関与する。光は、電磁放射線としての性質を有し露光に用いられる放射線の一形態である。露光のための放射線の使用は、以上で示されている。
【0157】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「分離(する)」という用語は、従来通りに使用される。例えば、使用されたドナー要素全体が画像形成されたレシーバー要素から分離される場合、レシーバー要素とドナー要素の転写層の接触はことごとく失なわれる。集合体を一緒に保持する力は、分離中に除去されるか克服される。分離の後、典型的には異なる場所に多数の異なる転写層を設置して、原初のレシーバー要素の官能化を続行するため、典型的には新しいドナー要素を用いて新しい集合体を形成することが可能である。
【0158】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「処理(する)」という用語は、分離に先立って行なわれる露光された集合体の発明力ある操作について用いられている。処理は、集合体全体またはその一部分の処理、または集合体全体の一部分毎の処理を包含し得る。一実施形態においては、一集合体のいくつかの部分の処理は、他の部分がすでに処理されてはいるものの分離されておらず、またさらにその他の部分がすでに処理されかつ分離されており、またいくつかのさらにその他の部分が処理無く分離されている一方で、不完全あるいは未開始であってもよい。
【0159】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「相対的移動」という用語は、従来通りに使用される。例えば、支持層およびレシーバー要素が相対的移動を行なう場合、これらは異なる量の移動かまたは異なる方向への移動を行なう。量の差は、例えば0.01ミクロン、0.1ミクロン、1ミクロン、3ミクロンまたは10ミクロン未満と小さいものであり得、方向の差異は例えば0.001ラジアン、0.01ラジアン、または0.1ラジアンといった小さいものであり得る。
【0160】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、基準に対し「実質的に平行」という用語は、従来通りに使用される。実質的に平行というのは、例えば支持層(レシーバー要素に隣接する支持層表面を意味する)などの基準に対して平行な1つのベクトルとこのベクトルに垂直な任意の別のベクトルとを含む多くとも2つの直交する方向ベクトルへと分解される場合、この1つのベクトルが直交する他方のベクトルと大きさが同じかまたはより大きいものである方向を意味する。
【0161】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「接着性」および「接着性表面」という用語は、従来通りに使用される。接着性表面は、好ましくは一時的にかつ残渣を残すことなく、接触した物体に貼り付く。表面は単純な試験により接着性とみなされる。すなわち、接着性表面を担持する画定されたローラーにポリエチレンテレフタレートストリップを接着させ、規定の条件下で接着性表面からストリップを除去し、除去のための時間が閾値を上回った場合、その表面は接着性である。本明細書にあるようには容易に試験できない材料については、試験可能な適切な材料に対する試験できない材料の相対的接着力に関して簡便な比較を行ない、集合体の支持層に対しいずれがより頑強にまたは同等に頑強に接着するか、したがって適切であるために同等またはそれ以上の接着力を有するかを判定することができる。
【0162】
接着剤の存在および粘性を実証するための試験は、23℃(73°F)前後の温度でかつ40パーセント前後の相対湿度で実施される。接着剤は、1〜40cmの直径をもつローラー上で得られる。ローラー、つまり例えばローラーがその外部表面上に接着剤を担持し、不動化されたローラーの1つの円形端部をストリップの存在について観察することができるような形で水平に整列される。接着力を試験するために、未処理の側面を有するポリエチレンテレフタレートのストリップが用いられる。このストリップは、厚み50ミクロン(2ミル)×幅25mm×長さ560mmである。1つの25mmエッジのストリップを、水平ローラー上の観察される端部の近く、観察される円形端部の12時位置に置き、この25mmエッジが、固定したローラーの従来の回転軸に対して平行で、それによりストリップをローラー上に、反時計まわりに一回(長さ方向にまっすぐ、らせん状になったり円周上に多数回重なりあったりせずに)巻回させることができるようにする。ストリップはローラーのまわりに1回だけ巻回されて、ローラーの観察される端部の、見る人の観点から見て12時の位置で開始し11、10、9、・・・2時および1時の位置を網羅し、12時位置に戻って、全ての位置においてローラーに接着する。ストリップのゆるんだ端部は、接着した部分を引っ張ることなく元に折り返されて、17gのおもり(例えば小さな金属結合剤クリップ)を用いてストリップの端部で加重される。ストリップの懸垂する加重未接着部分は、自由に垂下する前に、例えば1、2および3時の位置で接着されたストリップの外側に接着できるように位置づけされる。
【0163】
接着性試験は、引きつりや揺動なく垂下するストリップの自重および加重によりストリップの加重位置が自由にかつ滑らかに垂下することを可能にし、それにより、不動のローラーからストリップの剥離を開始し、12時の位置から、1、2、3、4、5、6、7時の位置といった順で被覆解除する。開始(12時つまり最高位置の被覆解除)から6時(最下)位置の被覆解除までの時間(例えば秒単位)は、生の接着性値を測定する。被覆解除は、6時位置が被覆解除された後も続行する。
【0164】
被覆解除された半円周長についての生の時間は、同じ平均速度で50mmの長さを被覆解除するのに必要な時間に変換されて、別段の指示のないかぎり秒単位で表わされる接着性時間として試験結果を提供する。換言すると、接着性の最終値は、ローラーの円周が10cmであるとすれば生の値と同じである。換言すると、実際のローラーと正比例する速度で長さ5cmの接着剤を被覆解除するために展開したかのように値を報告するために、調和を行なう。直径8cmで円周25.13cmのローラーがポリエチレンテレフタレートストリップを12時位置から6時位置まで展開するために80.0秒という生の接着性値を有する場合、報告された(正規化された)接着性は31.8秒である。
【0165】
被覆解除のより長い時間値は、より大きな接着性を表わす。50mmに調和させて、12時から6時まで被覆解除するための時間が2秒より長い場合に、表面は充分接着性があるとみなされる。一部の実施形態においては、時間は、3、5、10、20、60、90、120、200および400秒を含む選抜された時間よりも長く、これらの各々の値は、接着性表面の別の実施形態を構成する。ローラーが非接着性である場合、ストリップは、2秒以内、典型的には1秒以内で12時から6時の位置までほどかれる。大部分の場合において、材料の無接着力は、検査により明らかであり、試験は全く必要でないが、ボーダーラインケースでは、試験を適用してもよい。
【0166】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「コンプライアント」という用語は、ASTM D2240−00によって定義される通りのショアA硬度スケール上で90以下の硬度を有し、必要な場合にローラー上で測定を行なうことを可能にする材料を記述するために用いられる。本発明をかかる実施形態に限定することなく、デュロメータの値が低くなれば集合体の支持層と処理装置の摩擦接触は改善され、処理装置の移動と支持層の移動へのカップリングが改善されるものと推測される。しかしながら、本発明が機能するためにそれが必要とされるわけではない。好ましいおよびより好ましいデュロメータ読取り値には、80未満、70未満、60未満、50未満、40未満、30未満、20未満および10未満が含まれる。
【0167】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「接着性のコンプライアント表面」という用語は、従来通りに使用される。接着性のコンプライアント表面は、本明細書においてコンプライアント材料について指摘された最大のショアAスケールコンプライアンス(ショアAスケール上で90未満)を有し、接着性(2秒超の接着性展開時間)である。好ましいのは、60未満のショアAデュロメータおよび10秒超の接着性展開時間を有する接着性のコンプライアント処理機、特にローラーである。
【0168】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「ローラー」という用語は、従来通りに使用される。ローラーは典型的には円筒形であり、その湾曲した表面上で集合体と接触する。ローラーは典型的にはその中心軸によって操作される。ローラーは回転自在であるかまたは駆動されてよい。
【0169】
従動ローラーは、集合体に対し容易にせん断移動を提供できる。駆動は、駆動の開始中に瞬間的に、またはスキッドが発生する状態での駆動中に連続的に、集合体を横断しての移動に由来する自在に回転する速度よりも高いまたは低い回転速度を生成することができる。ローラーは、閉鎖力無しで「軽い触れ」または正の力(「押圧」)、または負の力(例えばローラーが集合体に接着しているものの集合体から離れる方向の吊り上げ力を受けている場合)を伴って集合体と接触できる。
【0170】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「無色」および「有色」という用語は、従来通りに使用される。色とは、観察者に到達しうる可視光が、可視「白色」光と比べてさまざまに変化した分布を意味する。物体からの光が観察者に全くまたは無視できるほどにしか届かない場合、物体は黒色と呼ばれる。周囲の「白色」光と同じ相対量のさまざまな波長をもつ物体から強度の低減した光が観察者に達する場合、その物体または光は無色または灰色であると言われる。物体からの光が周囲の「白色」光とさまざまな可視波長での相対強度に関し異なっている場合、その物体または光は有色であると言われる。例えば、物体から観察者に達した唯一の光が可視スペクトルの長い波長に由来する場合、その物体または光は赤色であると言われる。
【0171】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「透明(な)」という用語は、従来通りに使用される。透明(な)とは、実質的散乱なく物体を通して少なくとも一部の可視光の透過を可能にする品質を意味する。透明な物体は有色でもあり得る。実質的散乱が発生する場合、その物体は、半透明または不透明と呼ぶことができる。
【0172】
本明細書および特許請求の範囲に関連して、「黒色マトリクス」という用語は、従来通りに使用される。カラーフィルタにおいて、黒色マトリクスは、光が存在する場合それを遮断し、典型的に、透明なそして任意には有色の基板上で使用される。黒色マトリクスは、有色透明フィルタが追加される前または後にカラーフィルタに付加され得る。一実施形態において、黒色マトリクスは、フルカラーセルまたは単色画素由来の光が別のセルまたは画素に漏出するのを防ぐ一助となる。クロムまたは酸化クロムなどの金属または金属酸化物コーティングまたは任意には結合剤中のカーボンブラックなどの顔料を黒色マトリクス材料として使用することができ、マトリクスの画定は、フォトリソグラフィまたは熱転写により実施可能である。
【実施例】
【0173】
以下に記すのは、本発明の利点を例示することを目的とした本発明の実施形態の例および比較例である。明細書には変形実施形態が示されこれらは当業者にとっては容易に明らかとなるものであることから、本発明はこれらの実施形態に限定されないということを理解すべきである。
【0174】
これらの例のための適切な一部完成したカラーフィルタレシーバー要素は、「第4世代」の長さ920mm×幅730mm×厚み0.07mmのガラスレシーバー基板(Corning Glass Company(Corning,NY))であり、各々結合剤とカーボンブラック顔料を含むおよそ幅713mm×長さ401mm×厚み0.001mmの2つの黒色マトリクスを伴う。黒色マトリクスは、ガラスが露出したほぼ矩形の開口部の矩形パターンを有し、このパターンは、幅方向に(列を横断して)1366×3=4098個の開口部と長さ方向に(行を横断して)768個の開口部、つまり合計3,147,264個の開口部を有する。各々のほぼ矩形の開口部は、およそ長さ0.492mm×幅0.144mmであり、これらは幅または長さがおよそ0.03mmの黒色マトリクスの部分によって、隣接する開口部と分離されている。部分的に仕上げられたカラーフィルタの1つのタイプにおいては、開口部3列毎に(4098のうち1366の列)、およそ長さ401mm×幅0.154mm×厚み0.002mmの青色顔料入りポリマーのストライプで被覆されており、このストライプは、隣接列間を約0.005mmだけ分離する黒色マトリクス上に重複し、同じ列内の開口部を分離する黒色マトリクスの部分を完全に被覆している。これらの青色ストライプは、これらの実施例では青色顔料およびポリマーを含む転写層の熱転写を使用して、ガラス支持体および黒色マトリクス上に設置されたが、フォトリソグラフィ技術などのその他の方法を青色層追加のために使用することもできたはずである。類似の赤色ストライプセットが、一方の側面で青色ストライプに直接隣接する別の1366本の列を被覆することができる。これらの実施例では2つ以上の実際のレシーバー要素設計が使用されたが、いかなる差異も本発明にとっては重要な意味を持たない。
【0175】
使用されたドナー要素は、ポリマー結合剤、近赤外線吸光性顔料および顔料を含む厚み約0.002mmの有色顔料入り(多くの場合緑色であるが青色または赤色での結果は不変である)転写層を一方の面上に有する少なくとも長さ1000mm×少なくとも幅800mm×厚み約0.05mmのポリエチレンテレフタレートフィルム支持層であった。近赤外吸収性顔料および結合剤を含む薄い(0.0005mm未満)の光−熱変換層は、支持層と転写層の間で任意である。
【0176】
水平に置かれた平面の真空テーブルは、青色顔料入りポリマー転写された層および任意の赤色顔料入りポリマー転写された層が有色転写層と接触した状態で、集合体の部分的に完成した適切なカラーフィルタレシーバー要素を整列させ、部分的に完成した適切なカラーフィルタレシーバー要素を真空テーブルと有色ドナー要素との間にはさんで、保持した。レシーバー要素のコーティングされていない平坦なガラス表面が、真空テーブル上に置かれる。真空テーブルは、約10,000Pa(0.1気圧)以下の少ない空気圧を維持することができた。レシーバー要素の全周囲上で、より長くより幅広のドナー要素は真空テーブルと直接接触し、それにより空気を2つの要素の間から吸引することができるようにして、レシーバー要素の青色顔料入りポリマー層および有色転写層の少なくとも一部分を接触させた。
【0177】
集合体の像様露光では、集合体の所与の部域内で約4ミリセカンドの露光時間の間、1平方センチメートルあたり約450mJの強度で小さい突合わさったレーザービーム画素からおよそ830mmのレーザー放射を発出しながら、集合体より上の一定距離で、青色顔料入りポリマーストライプの長エッジに平行な方向でおよそ毎秒1メートルで集合体に対して移動するレーザーヘッドが利用された。走査と走査の間で、レーザーヘッドは、幅広で長い集合体の必要なすべての放射線露光がより短く狭いレーザーヘッドにより達成されるように、集合体に対して適切な量だけ平行移動させられた。
【0178】
走査は、青色ストライプによって被覆されたウィンドウの列と、(存在する場合には)赤色ストライプによって被覆されたウィンドウの列との間にわたり、各ウィンドウ列上に1つずつのストライプで、有色(緑色または赤色)顔料入り転写層のストライプをレシーバー要素と結びついた状態へと転写するのに役立った。ウィンドウ列全体にわたる有色ストライプと隣接したウィンドウを画定する黒色マトリクスの整列は、対応するウィンドウ列上での青色ストライプと全く類似するものであった。
【0179】
レーザー放射は、集合体においてドナー要素のポリエチレンテレフタレート支持層を通って、本質的に支持層に対して垂直に、緑色(または赤色など)の転写層に向かって導かれた。
【0180】
これらの実施例の中で用いられた集合体の1つの分離方法は、真空が備わった巻取りローラー(「ローラー式剥離」と呼ばれる方法)であった。ローラー(長さおよそ226cm(89インチ)、直径8cm(3インチ)は、真空によってローラーに対し支持層を保持する目的でその円周の1つの場所においてその幅に沿って間隔を置いた複数行の吸引孔を含んでいた。(別段の記述がないかぎり、これらの実施例中で用いられるローラーは全て、長さがおよそ226cm(87インチ)で、直径が8cm(3インチ)である)。
【0181】
ローラーは、使用されたドナー要素の800mmの幅に沿ってレシーバー要素から離れて真空テーブルの反対側で画像形成されたドナー要素のポリエチレンテレフタレートフィルム支持層と接触するように降下させられ、それにより、ローラーの吸引孔が支持層を保持するようになっていた。その後、ローラーは、レシーバー要素に向かってその上を転動されて画像形成されたレシーバー要素から使用されたドナー要素を持ち上げ、それをローラーのまわりに巻回させ、それにより最終的には使用されたドナー要素が2周回以上ローラーの上に巻回された状態になる。転動方向は、ストライプの長いエッジおよびレーザーヘッドが速く移動する方向に対して平行であった。
【0182】
この転動の大部分の間(レシーバー要素が完全に被覆解除された後ドナー要素が真空テーブルから巻き取られる最終点近くを除いて)、真空テーブルはなおも、使用されたドナー要素と画像形成されたレシーバー要素の間から空気を除去していた。集合体の上にあるドナー要素上の大気圧に由来する結果としてもたらされた力は、ドナー要素とレシーバー要素の間の分離を閉じる傾向をもち、ローラーが要素を分離するまで、横向き移動または分離させる移動などのあらゆる移動に抵抗する摩擦によって一般に互いに固定された状態に要素を保った。
【0183】
真空テーブルの連続使用は同様に、分離中にローラーがレシーバー要素を横断してドナー要素全体をローラーに向かって引っ張るのを防いだ。使用されたドナー要素はそれにより使用されたドナー要素がローラーに向かってレシーバー要素を横断して移動した場合に起こり得たようにレシーバー要素を横断するローラーの走行よりも速くではなく、この走行と同期的にローラー上に巻き付いた。
【0184】
画像形成されたレシーバー要素から使用されたドナー要素を分離する第2の方法は、剥離による手作業での除去であった。この場合、真空テーブル上に保持された使用されたドナー要素のエッジは、上向きに曲げられた。エッジの連続的上昇によって、分離線が画像形成されたレシーバー要素に向かってそして最終的にはこの画像形成されたレシーバー要素全体にわたり移動することになる。この分離線は、レーザーヘッドの高速走行方向に対して可能なかぎり平行に走行するように作製された。
【0185】
分離した画像形成されたレシーバー要素のマクロ検査のためには、白色光の強く幅広の平行短ビームでのグレージング照明は使用されなかった。適切な光源は、Advanced Illumination Company(Rochester,VT)製のLine Light(36インチ、DC24ボルト、型式LL17436−WHI24)である。相対する方向からまたは異なる方向から照明するために、2つの光を使用することができる。この検査では、転写された顔料入り層の高さの不規則性が、異なる色の強さとして観察される。有色層がフラップなどのために張出している場合、照明、反射および散乱のせいで、その色の強い部域が見える。典型的には、第1層について見られる均一な高さ(多くの場合青色層)は、これらの部域に均一で(青色)、さほど強くない外観を与える。ただし、レシーバー要素の緑色部域は、緑色転写層がレシーバー要素から突き出しグレージング光を上向きに反射するか否かに応じて、異なる強度を示し得る。レシーバー要素は、緑色転写層のコネクタがレシーバー要素に結びつけられた緑色転写層の近くで破断し、粗く上昇したエッジが存在しない場合、低強度の緑色を示す。その部域内のストライプエッジは青色ストライプエッジに類似し、顕微鏡下で調べると非常に真直ぐである。レシーバー部域の緑色部域は、緑色転写層のコネクタがドナー要素に結びつけられた緑色転写層により近いところおよびこの緑色転写層で破断し、白色光により照明される上に向いたエッジを有するレシーバー要素上の緑色転写層のより幅広のストライプを残す場合に、高強度の緑色を示す。
【0186】
マクロ的には、低強度の緑色および高強度の緑色の部域は、突然に遷移して、混合領域よりもむしろ全く異なる明確な境界を有し得る。多数の色に反射エッジが存在する場合に目が検出する色は、目が異なる色に対し異なる感度を有することから、変動し得る。上向きエッジの存在は通常その色を直ちにはっきり見えるようにする。ミクロ的には、高強度の緑色の部域は、付着したコネクタのエッジを有する幅広ラインおよび付着したコネクタをもたない幅狭ラインの混合を示す。低強度緑色の部域は、付着したコネクタをもたない幅狭ラインをほぼ排他的に示す。
【0187】
各々の評価において、集合体内のドナー要素から転写されるカラーストライプのエッジ(緑色または赤色)が指摘され、転写層からレシーバー要素上への転写された材料に最小限のフラップしか付着されていないはるかに優れたエッジを示すことが多い青色カラーストライプを特に基準にして評定される。
【0188】
以下の各実施例では、レシーバー要素として、適切な透明ウィンドウ全体にわたり1色(青色)または2色(青色と赤色)のフィルタ層をすでに含む上述のものときわめて類似した黒色マトリクスおよびガラスを含む適切な部分的に完成したカラーフィルタが使用され、レシーバー要素上にまだない別の色のドナー要素(それぞれ赤色または緑色)が使用された。全ウィンドウの3分の1(残りの適切なウィンドウの半分かまたは全て)を網羅するカラーフィルタストライプのパターンを定めるために、集合体の露光が実施された。露光後の集合体の処理および分離が、以下に記録した通りに実施された。
【0189】
比較例1
この例は、処理ステップ無しの露光および分離の結果を示している。
【0190】
使用された集合体は、青色フィルタおよび赤色フィルタでの熱物質転写により官能化された有機黒色マスクを伴うカラーフィルタガラス板のレシーバー要素と、緑色フィルタを転写するのに適した緑色顔料入り転写層を伴うドナー要素であった。集合体は、像様露光され、使用されたドナーをローラーのまわりに巻回されている間に毎秒27.5cmの前進速度で移動する直径8cmのローラーを用いてローラー剥離することによって、緑色フィルタ画像形成されたレシーバー要素と使用されたドナー要素に分離された。分離ステップの間、真空テーブルは集合体から空気を除去し続けた。使用されたドナー要素が画像形成されたレシーバー要素から離れるように持ち上げられて分離が進むにつれて、真空は集合体を下へと漸進的に破断していった。
【0191】
分離後の画像形成されたレシーバー要素のマクロ検査(別段規定のないかぎりあらゆるケースにおいてグレージング照明を用いる)は、マクロ評定を1として(1=不良;散乱した低強度緑色部域はほぼ全くまたは全く無し、10=優良:全てまたはほぼ全ての低強度の緑色部域を伴う)、わずかな無作為散乱低強度緑色部域を伴って大方が高強度の緑色部域を示した。画像形成されたレシーバー要素のミクロ検査は、ミクロ評定を1として(1=不良;破片および混合エッジ、10=優良、レシーバー要素上にコネクタまたは破片無し)、粗いエッジを示す、部域のエッジにフラップを有するおよび有さない緑色転写層の画像形成された部域の無作為な分布を示した。
【0192】
コネクタが主にドナー要素上にあった画像のエッジの割合は、20%未満という低いものであると推定された。
【0193】
実施例2
この実施例は、コンプライアントで接着性のローラーを用いた露光、処理および分離の結果を示す。
【0194】
使用された集合体は、青色フィルタおよび赤色フィルタでの熱物質転写により官能化された有機黒色マスクを伴うカラーフィルタガラス板のレシーバー要素と、緑色フィルタを転写するのに適した緑色顔料入り転写層を伴うドナー要素であった。処理には、直径8cmのローラーが用いられ、このローラーは、2mの距離にわたり毎秒5cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動され、その間、真空テーブル上の集合体内には約10,000Paの見かけの大気圧が維持された。
【0195】
直径8cmのローラーは、内径5cm、外径6cmの中空鋼製円筒で構成されていた。中空鋼製円筒は、「スーパーポリウレタン」と呼ばれる厚み1cmの弾力性のある接着性材料で被覆された。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は20であった。接着性測定値(12時から6時まで被覆解除するための時間)は、およそ130秒であった。ローラーの重量はおよそ21kg(46ポンド)であり、長さはおよそ226cm(89インチ)である。Polymag Tek Inc.(Rochester,NY)がローラーを供給した。
【0196】
ローラーは、およそ21キロパスカル(3psi)の集合体に向かう下向きの力と共に順方向に移動させられた。処理の完了後、分離を開始する前に10秒超の間、集合体は排気されている真空テーブルの上にとどまった。比較例1にあるように、分離を実施した。
【0197】
分離後の画像形成されたレシーバーのマクロ品質は、8と評定され(1=不良、10=優良)、きわめて一貫性のあるものであった;強い緑色の部域は最小限しか見られなかった;観察された強い緑色部域としては、画像形成された部域のエッジから2cm以内のものがいくつかあった。画像形成されたレシーバーのミクロ検査から、フラップを有するエッジに比べてフラップの無い緑色転写層の画像形成された部域の分布が大幅に増大したことがわかった。
【0198】
実施例3
この実施例は、真空テーブルの上に不動化されたレシーバー要素との関係におけるドナー要素の支持層の移動を示している。有効な移動は、支持層に対して実質的に平行な方向に沿ってレシーバー要素を基準に第1の位置から第2の位置まで支持層の位置を移動させることによって実施されるせん断移動であることがわかった。この移動は、画像のエッジに対して平行かまたは垂直に実施された場合に特に有効であった。
【0199】
画像形成された集合体は、レシーバー要素として有機黒色マトリクスを伴う青色転写層の画像形成されたカラーフィルタガラス基板と赤色顔料入り転写層ドナー要素とから作製された。集合体は、露光用装置の真空テーブル上で作製された。集合体は、真空テーブル上に保持されている間、レーザーヘッドを用いて露光された。真空テーブルは、画像形成および処理の間、集合体内におよそ10,000Paの低下させた圧力を維持した。
【0200】
処理は、集合体のドナー層の支持層上におもりを置き、おもりの側面を打撃して支持層の表面に沿っておもりを移動させることによって実施された。これは、摩擦によりレシーバー要素を基準に支持層を移動させるのに役立った。別に、金属おもりを用いて露光された集合体の数多くの黒色マスキングされた部域を処理した。処理中、真空は画像形成された集合体上に維持された。
【0201】
おもりは、2.54cm(1インチ)×18cm(7 1/8インチ)×18cm(7 1/8インチ)の直方体の鋼であり、約7.1K(18ポンド)の重さであった。おもりは、集合体のドナー要素の支持層上に、矩形面(2.54×18cm)で設置された。次に、集合体と接触する面に対し90度の角度のおもりの矩形面を、3.2kg(8ポンド)のハンマーで打撃して、集合体を横断しておもりを駆動した。典型的に、おもりは約1cm移動し、集合体を横断して幾分かスキッドした。おもりは、集合体の未処理部域上での別々の実験において、レシーバー要素上の有色画像の長エッジに対し平行に、および長エッジに対して垂直に、そしてレーザーヘッドが最初に長エッジに平行に移動した方向での赤色転写層の露光されたストライプの長エッジに対し平行であるのが0度であるものとして、45度および135度の角度で整列された。別々の実験において、おもりは、重さを推進するため第1の一方の端部で打撃され、その後、未処理区分上で平行な位置に置かれ、反対のかつ平行な方向に重さを推進するため第2の反対側の端部上で打撃された。各実験において、おもりは設置され、一回打撃され、次に分離ステップの開始から少なくとも5分間、処理部域から離れるように持ち上げられた。打撃無しのおもりの対照設置および除去は、おもりのエッジからかけ離れて最も小さいものであるはるかに小さな効果を示した。
【0202】
16の別々の部域を処理した後、比較例1の場合のように、巻取りローラーによる剥離により集合体を分離した。集合体の露光および処理時間全体の間、そして剥離ステップの完了まで、レシーバー要素を1つの位置に保持するため、そしてレシーバー要素の近くまたはレシーバー要素と接触した状態にドナー要素を引っ張るため、真空テーブルによる集合体の排気を使用した。
【0203】
分離された画像形成されたレシーバー要素のグレージング照明は、未処理であった部域の中で赤色/紫色を明確に示し、処理された部域の一部においては非常に顕著な強い青色を示した。青色は、一部の部域で行なわれた処理用ステップの望ましい効果である赤色フラップの相対的不在を表わす。
【0204】
集合体に接触する金属矩形が画像の基調をなすラインエッジおよび画像を作るのに用いられたレーザーの移動方向に対し平行または垂直であった部域のグレージング照明は、大量の強い青色の部域を示し、これはグレージング光の照明を受けている赤色上昇フラップの不在を表わしていた。金属矩形がラインエッジに対し45度または135度をなしていた部域は、はるかに少ない青色部域を示した。とりわけ、金属矩形がラインエッジに対し45度を成していた一部のケースにおいては、金属のエッジの場所は青色であった。これは、金属の位置づけが、正確に金属表面対集合体表面ではなく、金属エッジ対集合体表面であり、したがってエッジにおけるレシーバー要素に向かってのドナー要素の初期圧縮が、後に、金属面の傾動または立直しまたは金属全体の除去によって軽減されたことに起因しているかもしれない。
【0205】
この実施例中で行なわれる処理タイプとしては、おもり上へのハンマーの打撃が摩擦により支持層に対しせん断移動を伝達することに起因する、支持層に対し実質的に平行な方向に沿ったレシーバー要素との関係における第1の位置から第2の位置への支持層の位置の移動;およびレシーバー要素に向かう方向に沿ったレシーバー要素との関係における第1の位置から第2の位置への支持層の位置の移動とそれに続く、レシーバー要素から離れる方向に沿ったレシーバー要素との関係における第2の位置から第3の位置への支持層の位置の移動が含まれる。
【0206】
図11は、フラップを示すレシーバー要素の領域についてのグレージング照明により明るい外観を示すカラーフィルタの一部の中に顕微鏡によって典型的に見える赤色フラップの量を示している。図11は、ガラスを通して見たウィンドウ(40)を画定する黒色マトリクス(30)を示しており、そのうち3分の1は青色透明転写材料(50)のストライプで列様に被覆されており、隣り合う3分の1のストライプは赤色透明転写材料(60)により被覆されている。写真からのこの透写図は、2つの部分的に見えるウィンドウの間のおよびこれをとり囲む黒色マトリクスを被覆する有意な明らかなフラップの無い青色ストライプを示しており、各々の完全なウィンドウはおおよそ矩形であり、1つの上に見える薄膜トランジスタの設置のために指定された部域を被覆する黒色マトリクスの矩形の嵌入を伴っている。各々の赤色ストライプ(60a、b)は、この赤色ストライプの本体からの大部分の部域内または時折外に延びる強い赤色のフラップ(130)の付加フラグメントと共に、隣接するウィンドウと分離用黒色マトリクスの列と類似の被覆を示している。このフラップの存在または不在は、エッジに、顕微鏡によって容易に観察できる粗い外観を与えている。しかしながら、ラインエッジに対し平行または垂直な金属の設置により処理されたレシーバー要素の領域においては、赤色および青色のラインエッジは、顕微鏡による外観に関して非常に類似しており、赤色エッジは特に、フラップの兆候をほぼ全く示さず、非常に真直ぐであることを示していた。処理によりラインエッジが改善した時にマクロ的外観が改善する場合は、ミクロ的外観においても同様の改善が発生する。
【0207】
実施例4
この実施例では、真空テーブルによって保持されたレシーバー要素を基準に支持層の移動を生み出すために粘着テープが使用された。実験は、金属プレートを用いる先の実施例と類似していたが、処理ステップは粘着テープの適用と除去によって行なわれた。
【0208】
使用したテープはTyco Adhesives(Franklin,Kentucky)製のPolyken 781スプライシングテープであった。この青色テープは、幅5cm(2インチ)、厚み0.11mmであった。それはポリエステルフィルム担体上にシリコーンゴム接着剤を施した単一コーティングテープである。このテープはせん断強度が高く、非常に優れた接着力をもつテープである。鋼に対する接着は、PSTC−1試験方法(Pressure Sensitive Tape Council (Northbrook,IL))により385N/mである。
【0209】
画像形成された集合体は、有機黒色マスクレシーバー要素を伴う青色転写層画像形成されたカラーフィルタガラス基板および赤色顔料入り転写層ドナー要素で構成されていた。集合体を真空テーブル上に保持し、レーザーヘッドを用いて露光した。別途、粘着テープの区分を用いて露光された集合体の数多くの黒色マスキングされた部域を処理した。
【0210】
露光された部域全体にわたり集合体上に、露光されたストライプの長エッジに対してテープの長エッジをさまざまに配向して(露光されたストライプはレーザーヘッドの高速走行方向に対し平行である)、テープを設置した。上の金属おもりの場合と同様に、さまざまな配向を、赤色ストライプの長エッジの長さに沿って;赤色ストライプの長エッジに対し垂直に;そして赤色ストライプの長エッジに対し45度および135度を成して、整列させた。各々のケースにおいて、別々に適用したテープを、反対方向に剥離させ、各処理を2回くり返した。
【0211】
各ケースにおいて、テープを集合体の支持層と接触した状態にしっかりと設置し、少なくとも15秒放置した。次にテープの短エッジを上方に剥離し、次に短エッジを完全に逆方法に曲げ(180度の屈曲)テープを引っ張り、それにより剥がされたテープの伸長してゆくエッジが、集合体の支持層になおも接着している残留テープの短縮してゆくエッジと平行でかつ当初ほぼこれに触れているようにしながら残りを剥離することによって、テープが被覆している処理部域から離れるようにテープをもち上げた。
【0212】
数多くの別々の部域を処理した後、比較例1にあるような巻取りローラーにより剥離することによって集合体を分離した。集合体が作製されてから剥離ステップが完了するまで、レシーバー要素を1つの位置に保持するためそしてドナー要素をレシーバー要素近くにまたはレシーバー要素と接触した状態に引っ張るために、真空テーブルによる排気を使用した。
【0213】
分離された画像形成されたレシーバー要素のグレージング照明は、未処理であった部域内で赤色/紫色を、そして処理された部域の一部においては非常に顕著な強い青色を明確に示した。
【0214】
集合体に接触する金属矩形が画像の基調をなすラインエッジおよび画像を作るのに用いられたレーザーの移動方向に対し平行または垂直であった部域のグレージング照明は、大量の強い青色の部域を示し、これはグレージング光の照明を受けている赤色上昇フラップの不在を表わしていた。金属矩形がラインエッジに対し45度または135度をなしていた部域は、赤色の優勢に比べてはるかに少ない青色部域を示した。
【0215】
この実施例中で行なわれる処理タイプとしては、部分的に剥離するのに必要な力をレシーバー要素との関係における支持層の移動へと伝達することにより、せん断移動を支持層に伝達する180度でのテープの戻し剥離に起因する、支持層に対し実質的に平行な方向に沿ったレシーバー要素との関係における第1の位置から第2の位置への支持層の位置の移動;およびレシーバー要素に向かう方向に沿ったレシーバー要素との関係における第1の位置から第2の位置への支持層の位置の移動と、それに続く、テープ適用中のレシーバー要素から離れる方向に沿ったレシーバー要素との関係における第2の位置から第3の位置への支持層の位置の移動が含まれる。
【0216】
テープにより処理されていない部域内の赤色エッジの外観は、図11の外観と類似していた。ミクロ検査は、実施例3のものと類似した結果を示した。
【0217】
実施例5
実施例5は、支持層からの粘着テープの除去が、支持層に対し平行ではなくむしろ支持層の表面から90度を成してテープを引っ張り上げることによって行なわれたという点を除いて、実施例4と同じ要領で実施された。この除去はすなわち、処理に、レシーバー要素から離れるような支持層の動作と、それに続く、テープ除去が所与の場所で完了した後のレシーバー要素に向かって支持層が復帰する移動が関与している、ということを意味している。
【0218】
処理された領域内の最終的分離されたレシーバー要素の外観は、グレージング照明による非常に顕著な変化を示し、これは、いかなる処理も行なわれなかった部域内に比べて、照明されている赤色エッジフラップが少ないことを表わしていた。ミクロ検査は、顕微鏡で見えるフラップを無くするために180度でのテープ除去の方が90度でのテープ除去よりも優れていることを示した。
【0219】
実施例6
この実施例は、処理に用いられるコンプライアントローラーでの露光、処理および分離の結果を示している。
【0220】
使用された集合体は青色フィルタおよび赤色フィルタでの熱物質転写により官能化された有機黒色マスクを伴うカラーフィルタガラス板のレシーバー要素、および緑色フィルタを転写するのに適した緑色顔料入り転写層を伴うドナー要素であった。
【0221】
処理には、直径8cmのローラーが用いられ、このローラーは、2mの距離にわたり毎秒5cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動され、その間、真空テーブル上の集合体内には約10,000Paの見かけの大気圧が維持された。直径8cmのローラーは、内径5cm、外径6cmの中空鋼製円筒で構成されていた。ローラーの内部円筒には重みづけ材料が満たされていた。中空鋼製円筒は、厚み1cmの緑色ポリウレタンで被覆された。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は23であった。接着性測定値は1秒であった;このローラーは接着性ではなかった。ローラーの重量はおよそ41kg(91ポンド)であり、長さはおよそ226cm(89インチ)である。ローラーは、Finzer Roller Inc,(Des plaines,IL)によって供給された。
【0222】
ローラーは、およそ21KPa(3psi)の下向きの力を集合体上に維持しながら順方向に移動させられた。処理の完了後、分離を開始する前に、集合体は10秒超の間、排気されている真空テーブルの上にとどまった。比較例1にあるように、分離を実施した。
【0223】
分離後の画像形成されたレシーバー要素のマクロ品質は、7と評定された。比較例中に比べはるかに少ない緑色部域が見られた;画像形成されたレシーバー要素のミクロ検査から、エッジフラップを有するエッジに比べてフラップがわずかにかまたは全くの無い緑色転写層の画像形成された部域の分布が大幅に増大したことがわかった。
【0224】
実施例7
この実施例は、赤色ドナー要素と青色コーティングされたカラーフィルタレシーバー要素の集合体を処理するために用いられる接着性ローラーを用いた露光、処理および分離の結果を示す。
【0225】
処理には、直径8cmのローラーが用いられ、このローラーは、2mの距離にわたり毎秒15cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動され、その間、真空テーブル上の集合体内には約10,000Paの見かけの大気圧が維持された。直径8cmのローラーは、幾分か高いデュロメータ値を有する、表面に接着性を付与した、粘着テープの使用によって修正された、先の実施例6の場合と同じローラーであった。ローラー円筒の15cm(6インチ)の長さのほぼ中央を、接着性ある面を外に向けて、一定長の3M粘着テープで包んだ(幅約1.9cmの「Scotch Magic」オフィステープ、カタログ番号810、3M Company (St.Paul,MN))。テープを一定の角度で傾け、各周回が先の周回のわずかな部分(約30%)と重複し、外部表面が接着性を有している状態で1〜2周が重なるテープの螺旋が得られるようになっている。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は100以上であった。接着性測定値は10秒よりはるかに大きかった。
【0226】
処理の完了後、分離が開始する前に10秒超の間、集合体は排気されている真空テーブル上にとどまった。比較例1にあるように分離を実施した。
【0227】
処理中にテープの接着剤側が転動した画像形成されたレシーバー要素のマクロ品質は、分離後6と評定された。ローラーの粘着テープでコーティングされた部分により処理されなかったレシーバー要素の部域、または集合体内で転写された色について、比較例中に比べはるかに少ない強い赤色の部域が見られた。改善した部域の規則性は、一部にはらせん形になった粘着テープ内の不規則性に起因して、むしろ低レベルであった。未処理の部域(粘着テープを有するローラー部分による処理無し)は、1(不良)と評定された。粘着テープの厚みが、粘着テープのない部域において集合体から離れるようにローラーを上昇させたということが考えられる。画像形成されたレシーバー要素のミクロ検査は、接着性ローラーで処理された部域内のエッジにフラップを有するエッジに比べて、ほとんどまたは全くフラップをもたない赤色転写層の画像形成された部域の分布が大幅に増大したことを示した。
【0228】
実施例8
この実施例は、処理用の接着性の非コンプライアントローラーを用いた露光、処理および分離の結果を示している。別段の規定のないかぎり、使用される条件は、粘着テープを用いた先の実施例の場合と同じであった。
【0229】
処理には、直径8cmのローラーが用いられ、このローラーは、2mの距離にわたり毎秒15cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動され、その間、真空テーブル上の集合体内には約10,000Paの見かけの大気圧が維持された。直径8cmのローラーは、両面テープの螺旋で包まれた外径8cmの中空鋼製円筒で構成されていた。
【0230】
両面テープは、ローラーに接着される面に、ASTM D−3330でテストされた場合1.6N/10mmというステンレス鋼に対する接着性を有する永久感圧性アクリル系400接着剤、および、ローラーの外に面する他方の面に、ASTM D−3330でテストされた場合0.5N/10mmというステンレス鋼に対する接着性を有する再剥離性アクリル系1000接着剤(POST−IT NOTEの場合のようなもの)を有する、幅約5cm(2インチ)の薄いポリエステル担体フィルムを含む「除去可能、再配置可能なテープ」と呼ばれる3Mブランドの高/低粘着両面塗布テープであった。このテープは「3M 400/1000両面粘着テープ」と呼ばれている。このテープは、最も近いエッジ間の幅が約1cmの、重複の無い螺旋の形で適用された。
【0231】
外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は100であった。接着性測定値は5秒超であった。ローラーの長さはおよそ226cm(89インチ)であった。
【0232】
処理の完了後、分離が開始する前に10秒超の間、集合体は排気されている真空テーブル上にとどまった。比較例1にあるように分離を実施した。
【0233】
分離後の画像形成されたレシーバー要素のマクロ品質は、9と評定された。ローラーの接着性の非コンプライアント部分により処理された大きな部域にわたり、比較例中のものに比べ最少量の強い赤色部域しか見られなかった。粘着テープ無しで処理された部域(テープのエッジの間)は、1と評定された。
【0234】
実施例9
この例は、処理用に用いられるコンプライアントで接着性のローラーおよびコンプライアントで非接着性のローラーの両方を用いた露光、処理および分離の結果を示している。
【0235】
処理には、最初に直径8cmのローラーが用いられ、このローラーは、2mの距離にわたり毎秒22.5cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動され、その間、真空テーブル上の集合体内には約10,000Paの見かけの大気圧が維持された。直径8cmのローラーは、外径4.8cmの中実鋼製円筒で構成されていた。中実鋼製円筒は、厚み1.6cmのゴムで被覆された。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は21であった。接着性測定値は2秒超であった。ローラーの重量はおよそ36kg(80ポンド)であり、長さはおよそ226cm(89インチ)である。
【0236】
次に、処理には直径8cmの第2ローラーが用いられ、このローラーは、2mの距離にわたり毎秒22.5cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動され、その間、真空テーブル上の集合体内には約10,000Paの見かけの大気圧が維持された。直径8cmの第2のローラーは、厚み8mmのゴムで被覆された中空円筒で構成されていた。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は37.5であった。接着性測定値は1秒以下であった。ローラーの長さはおよそ226cm(89インチ)である。
【0237】
ローラーは、集合体上で下向きの力を維持しながら順方向に移動させられた。ローラーは互いに定距離をおいて保持された。処理の完了後、分離が開始する前に10秒超の間、集合体は排気されている真空テーブルの上にとどまった。比較例1にあるように、分離を実施した。
【0238】
分離後の画像形成されたレシーバー要素のマクロ品質は、7と評定された。比較例中のものに比べて、はるかに少ない緑色の部域しか見られなかったが、最低限の緑色領域同様に強い緑色の領域も明らかに見られた。画像形成されたレシーバー要素のミクロ検査から、フラップを有するエッジに比べてフラップがわずかにかまたは全くの無い緑色転写層の画像形成された部域の分布が大幅に増大したことがわかった。
【0239】
比較例10
この比較例は、処理および分離を同時に行なうために使用されるコンプライアントで接着性のローラーを用いた露光、処理および分離の結果を示す。
【0240】
同時に行なうこの処理および分離には、単一の担体上に固定された関係で2本のローラーを伴う、先の実施例の装置が使用される。この比較例においては、第1のローラーは集合体と接触し、集合体上を移動する。次のローラーは、使用されたドナー要素を巻き上げるのに使用され、画像形成されたレシーバー要素より5cm上に位置づけされる。使用されたドナー要素の巻き上げ中の第2のローラー上のテンションは、第1のローラーが集合体の所与の幅から離れて移動するにつれて画像形成されたレシーバー要素から使用されたドナー要素を分離させるのに役立つ。それにより、分離および処理は完全に第1のローラーで達成される。
【0241】
直径8cmの第1ローラーは、2mの距離にわたり毎秒15cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動し、その間真空テーブル上の集合体内には約10,000Paの見かけの大気圧が維持された。直径8cmのローラーは、外径4.8cmのカーボンファイバコアで構成されていた。カーボンファイバコアは、厚み1.6cmのゴムで被覆されていた。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は19であった。接着性測定値は2秒超であった。ローラーの重量は11kg(25ポンド)であり、長さは約226cm(89インチ)である。
【0242】
直径8cmの第2のローラーは、厚み8mmのゴムで被覆された中空円筒で構成されていた。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は37.5であった。接着性測定値は1秒以下であった。ローラーの長さはおよそ226cm(89インチ)である。
【0243】
ローラーは、集合体上に下向きの力を維持しながら順方向に移動させられた。ローラーは、互いに一定距離をおいて保持された。第2のローラーは、集合体の出口点で第1のローラーからの使用されたドナー要素を巻き上げるために作用した。
【0244】
分離後の画像形成されたレシーバー要素のマクロ品質は、2と評定された。画像形成されたレシーバー要素のほぼ全ての部域が、第1の比較例の場合よりも強い緑色部域が見られることを示した。画像形成されたレシーバーのミクロ検査は、フラップを有するエッジと強い緑色の部域の間の1対1の対応を示した。
【0245】
実施例11
この実施例は、集合体の支持層全体にわたり、ゴムパッドを用いてこする処理が行なわれた場合の露光、処理および分離の結果を示している。
【0246】
処理では、American Roller Company(WI)により供給されたネオプレンゴムのパッドが使用された。高摩擦ネオプレンゴムは、約10cm×10cm×2.8mm(4インチ×4インチ×0.110インチ)のシートとして供給された。シートを2回半分に折り畳み、約2.5cm×2.5cm×1.1cmパッドの4層厚みのパッドを形成した。接着性測定値は、ショアAスケール上で50であった。
【0247】
有機黒色マスクを伴う青色ストライプ入りのガラス製カラーフィルタレシーバー要素および赤色透明の転写層を伴うドナー要素の集合体を露光した後、真空テーブル上の集合体内に真空圧力が維持されている間、約50mm/秒の速度で10cmの距離だけ集合体の支持層を横断してパッドを手作業でスキッドさせることによって、処理を行なった。手作業での処理は、湿ったスポンジを用いてテーブルをきれいに拭うのと同様の中位の力で実施した。集合体の別々の部域の処理は、レシーバー層上に有色転写層のストライプの主要エッジを確立した露光の間のレーザーヘッドの第1の順方向の移動に対して異なるスキッド角度で行なわれた。24の別々の部域が、0、45、90、135および180度を含めたスキッド角度で処理された。
【0248】
処理の完了後、分離が開始する前に10秒超の間、集合体は排気されている真空テーブル上にとどまった。比較例1にあるように分離を実施した。
【0249】
分離後の処理された部域内の画像形成されたレシーバー要素のマクロ品質は、4と評定された。スキッドによる処理無しの部域は、1と評定された。処理を受けなかった部域と比べて、処理を受けた部域には決定的な差異が存在した。すなわち、処理された部域が示す強い赤色部域はより少なく、これは、ドナー要素からの赤色転写材料のフラップが少ないことを表わしている。処理された面積の規則性は、角度に応じて変化したが、全て、処理無しの場合に比べ改善を示した。
【0250】
実施例12
この実施例は、処理のための第1の接着性コンプライアントローラーおよび分離用に使用される第2のコンプライアントローラーを用いた露光、処理および分離の結果を示している。第1のローラーおよび第2のローラーは、固定された関係で集合体上を同時に移動させられ、それにより、0.5秒未満のスパンで単一の点における処理および分離を行なう。
【0251】
使用された集合体は青色フィルタおよび赤色フィルタでの熱物質転写により官能化された有機黒色マスクを伴うカラーフィルタガラス板のレシーバー要素、および緑色フィルタを転写するのに適した緑色顔料入り転写層を伴うドナー要素であった。
【0252】
処理には、直径8cmのローラーが用いられ、このローラーは、毎秒22.5cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動され、その間、真空テーブル上の集合体内には10,000Paという低い見かけの減圧が維持された。直径8cmのローラーは、外径4.8cmの中実鋼製円筒で構成されていた。鋼製円筒は、厚み1.6cmの接着性黒色ゴムで被覆されていた。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTMD2240−00に定める通りのAスケール)は21と推定された。接着性測定値は5秒であった。ローラーの重量は36kg(80ポンド)であり、長さはおよそ226cm(89インチ)である。American Roller Company(Union Grove,Wisconsin)がローラーを供給した。
【0253】
処理用ローラーを移動させるために用いられる取付け金具も同様に、独立して回転され集合体から上昇されるかまたは集合体まで下降され得、分離に用いられる第2のローラーを、固定された離隔距離に保持した。ローラーを保持するために使用される金物は、集合体を横断する金物およびローラーの移動の間、いずれかのローラーまたは両方のローラーが集合体と接触している状態で機能させることができた。ローラーは、その外部表面の最小離隔距離が約5.0cmのギャップとなるように位置づけされた。この実施例においては、第2のローラーは、第1の処理用ローラーの後に第2のローラーが支持層と接触した状態で集合体上を転動されるにつれて、第2のローラーのまわりに使用されたドナー要素を回転させ巻回させることにより、使用されたドナー要素を除去するために用いられた。使用されたドナー要素を第2のローラーまたは使用されたドナーの先行するいずれかの周回と接触した状態に保つために、第2のローラーの穏やかな回転テンショニングが用いられた。
【0254】
第2のローラーは、8mmのゴムコーティングを伴う内部中空円筒形ローラーで構成され、直径8cmで中空であった。第2のローラーのゴムコーティングのショアAデュロメータ読取り値は37.5であった。接着性測定値は約1秒であった。
【0255】
ローラーは、各ローラーに起因する集合体上の下向きの力を維持しながら、順方向に移動させられた。移動中真空テーブルを用いて空気を除去した。第2のローラーが使用されたドナー要素を画像形成されたレシーバー要素との接触から部分的に除去するにつれて、真空は部分的に解除された。第2のローラー上の下向きの力および第2のローラーのコンプライアンスは、集合体上の2本のローラーの接点間の集合体内の空間への空気の浸潤を最小限におさえるような傾向を有していた。処理用ローラーと分離用ローラーの配置が近いことから、処理と分離の間の時間は0.5秒未満であった。
【0256】
分離後の画像形成されたレシーバー要素のマクロ品質は、5と評定された。画像形成されたレシーバーの一部の部域内には、強い緑色の部域が最小限しか存在せず、画像形成されたレシーバーのその他の部域内には、強い緑色が明白であった。画像形成されたレシーバーのミクロ検査は、強い緑色の部域およびフラップを有するエッジの間と同様に強い緑色の無い部域およびフラップ無しの部域の間の1対1の対応を示した。
【0257】
実施例13
この実施例は、集合体上の第1のパスにおける処理のための単一の第1の接着性コンプライアントローラーを用いた露光、処理および分離の結果を示す。第2の処理は、単一の第1の接着性コンプライアントローラーにより第2のパスにおいて行なわれる。後続する1本の第2のローラーは、第1のローラーから基本的に恒常な量の時間および距離だけ離隔されて、分離を実施した。第2のローラーは、基本的に第1のローラーから一定の距離だけ後ろにあり、使用されたドナー要素を第2のローラーのまわりに巻回させることにより使用されたドナー要素を巻き取るように作用し、集合体と接触するように上昇下降させることができる。第1のローラーおよび第2のローラーは、互いに一定の距離をおきながら、第2のパスの間、集合体上を同時に移動させられた。
【0258】
処理には、直径8cmの単一の第1のローラーが用いられ、このローラーは、毎秒7.5cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動され、その間、真空テーブル上の集合体内には10,000Paという低い見かけの減圧が維持された。直径8cmのローラーは、外径4.8cmの中実鋼製円筒で構成されていた。鋼製円筒は、厚み1.6cmの接着性黒色ゴムで被覆されていた。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は21と推定された。接着性測定値は5秒であった。ローラーの重量は36kg(80ポンド)であり、長さはおよそ226cm(89インチ)である。American Roller Company(Union Grove,Wisconsin)がローラーを供給した。
【0259】
処理用ローラーを移動させるために用いられる取付け金具も同様に、分離に用いられる第2のローラーを保持した。ローラーを保持するために使用される金物は、集合体を横断する金物およびローラーの移動の間、いずれかのローラーまたは両方のローラーが集合体と接触している状態で機能させることができた。ローラーの外部表面の最小離隔距離は約5.0cmのギャップであった。この実施例においては、第2のローラーは、使用されたドナー要素を除去するために用いられ、第1の処理用ローラーの後に第2のローラーを支持層と接触した状態で集合体上を転動させて、第2のローラーのまわりに使用されたドナー要素を巻回させた。
【0260】
第2のローラーは、8mmのゴムコーティングを伴う内部中空円筒形ローラーで構成され、直径8cmで中空であった。第2のローラーのゴムコーティングのショアAデュロメータ読取り値は37.5であった。接着性測定値は1秒であった。
【0261】
第1の処理用パスの後の集合体上の第2のパスにおいて、ローラーは、各ローラーに起因するかまたは第1のローラーのみに起因する集合体上の下向きの力を維持しながら、順方向に移動させられた。第2のパスは、第1のパスと同じ方向に実施された。第2のパスの移動中真空テーブルにより空気を除去した。第2のローラーが使用されたドナー要素を画像形成されたレシーバー要素との接触から除去するにつれて、またはより早期に第2のローラーが上昇した時点で解除された。下降した時点で第2のローラー上の下向きの力および第2のローラーのコンプライアンスは、集合体上の2本のローラーの接点間の集合体内の空間への空気の浸潤を最小限におさえるような傾向を有していた。処理用ローラーと分離用ローラーの配置が近いことから、第1のローラーによる接触と第2のローラーによる接触の間の時間は、短いものであった。
【0262】
第1のローラーの第1のパスによる処理が完了した後、第2のパスは、第1および第2のローラーの組合せを用いて、およそ60秒後に実施された。第2のパスの開始時点で、両方のローラーは、集合体上に降ろされ、およそ15秒の時間が経過する間、第2のローラー上の吸引孔は支持層と接触し、その真空圧に起因する使用されたドナー要素支持層の接着を構築することができた。第2のローラーが支持層を把持することができるよう充分な真空圧が形成された後、両方のローラーは次に、第2のローラーが集合体と接触しながら支持層を巻き上げている状態で集合体上の下向きの力を維持している一方で、25.0cm/秒の速度で順方向に回転しながら約7.6cm(3インチ)移動させられ、それにより分離が行なわれた。次に、両方のローラーは、約5秒間停止させられ、この時間中に、第2のローラーが集合体から持ち上げられ使用されたドナー要素を画像形成されたレシーバー要素から運び去り、それにより第1のローラーに向かって狭くなっているギャップが開いた。両方のローラーは次に、第1のローラーが集合体上を転動し、第2のローラーが支持層を巻き上げている状態で、2mの距離の間、25.0cm/秒の速度で再び順方向に移動させられた。
【0263】
分離後の画像形成されたレシーバーのマクロ品質が評定された。分離ステップ中、両方のローラーが降りていた画像形成されたレシーバーの初期部分については、3という評定が与えられた。第2のパス中、第1のローラーが下降し第2のローラーが上昇していた画像形成されたレシーバーの残りについては、7という評定が与えられた(1=不良、10=優良)。画像形成されたレシーバーと2つのローラーが接触している状態で分離を受けた画像形成されたレシーバーの領域においては、比較的多くの強い緑色部域が存在した。画像形成されたレシーバーのミクロ検査は、強い緑色の部域およびフラップを有するエッジの間と、同様に強い緑色の無い部域およびフラップ無しの部域の間の1対1の対応を示した。
【0264】
実施例14
この実施例は、分離ステップのために使用される2本のローラーシステムを用いた露光および分離の結果を示す。第1のローラーは、集合体上を転動するコンプライアントで接着性のローラーであり、ここで使用されたドナー要素は、ドナー要素およびレシーバー要素が第1のローラーの効果により退出するにつれて、画像形成されたレシーバー要素から離隔する。第2のローラーは、使用されたドナー要素を巻取る非コンプライアントで非接着性のローラーである。第2のローラーは、画像形成されたレシーバー要素より上に上昇させられ、それにより、使用されたドナー要素および画像形成されたレシーバー要素は、典型的には、第1のローラーと第2のローラーの間にたるんだ使用されたドナー要素がある場合にそれを巻取るのに必要な第2のローラーのテンショニングに起因する第1のローラーの出口のつまみ点において使用されたドナー要素と画像形成されたレシーバー要素が接触している場所から、一定の距離だけ互いに接触しない状態に保持されるようになっていた。第1のローラーにおいて分離が発生することを理由として、使用されたドナー要素および画像形成されたレシーバー要素が第1のローラーと第2のローラーの間の距離の大部分または全てについて接触していない例においては、処理は起こらない。2つの別々のローラーのこの形態は、2本のローラー間の使用されたドナー要素のテンショニング、および処理されたドナーと画像形成されたレシーバーが第1のローラーのつまみ点を退出するにつれてこれらの間の調整可能な角度を達成する画像形成されたレシーバー要素より上への第2のドナーの上昇、などの変数の調整を可能にするために有用であった。
【0265】
第1のローラーは、8cmの直径を有し、外部に16mmのゴムコーティングを伴う炭素繊維のコアで構成されていた。合計重量は11kg(25ポンド)であった。第1のローラーのゴムコーティングのショアAデュロメータ読取り値は19であった。第2の直径8cmのローラーは、8mmのゴムコーティングを伴う中空円筒で構成されていた。第2のローラーのゴムコーティングのショアAデュロメータ読取り値は37.5であった。
【0266】
第1のローラーは、真空テーブル上で集合体内に真空圧が維持されている間、2mの距離にわたり15.0cm/秒で集合体のドナー要素の支持層上を転動される。第1のローラーは、ローラーの重量により及ぼされる下向きの力を維持しながら、順方向に移動させられた。第1のローラーと同じ装置によって保持された第2のローラーは、集合体から50mmだけ上昇されながら、順方向に移動させられた。転動が起こるにつれて、使用されたドナー要素と画像形成されたレシーバー要素の間の真空は第1のローラーの場所で破断し、直ちに分離が発生した。第2のローラーは、分離後使用されたドナー要素を巻き上げる。
【0267】
分離後の画像形成されたレシーバーのマクロ品質は、2と評定され(1=不良、10=優良)、画像形成されたレシーバーのほぼ全ての部域が強い緑色を示していた。画像形成されたレシーバーのミクロ検査は、強い緑色の部域およびフラップを有するエッジの間で1対1の対応を示した。
【0268】
実施例15
この実施例は、回転トルクが適用された状態またはされない状態でコンプライアントで接着性あるローラーによって処理が提供されている、集合体の露光、処理および分離の結果を示す。処理用ローラーに対して適用される回転トルクの増加は、集合体の支持層上の力の増大をひき起こし、支持層および力に対して実質的に平行な方向に沿ったレシーバー要素との関係における第1の位置から第2の位置までの支持層の位置の移動の増加をひき起こし、フラップの部域減少を改善させる。
【0269】
本実施例の中で記述している3つの別々のケースの各々において使用された集合体は、青色フィルタおよび赤色フィルタでの熱物質転写により官能化された有機黒色マスクを伴うカラーフィルタガラス板のレシーバー要素と、緑色フィルタを転写するのに適した緑色顔料入り転写層を伴うドナー要素であった。処理には、直径8cmのローラーが用いられ、このローラーは、2mの距離にわたり毎秒5cmで集合体のドナー要素の支持層上を転動され、その間、真空テーブル上の集合体内には約10,000Paの見かけの大気圧が維持された。
【0270】
直径8cmのローラーは、内径5cm、外径6cmの中空鋼製円筒で構成されていた。中空鋼製円筒は、「スーパーポリウレタン」と呼ばれる厚み1cmの弾力性のある接着性材料で被覆された。外部材料のショアデュロメータ(別段の規定のないかぎりASTM D2240−00に定める通りのAスケール)は20であった。接着性測定値(12時から6時まで被覆解除するための時間)は、およそ130秒であった。ローラーの重量はおよそ21kg(46ポンド)であり、長さはおよそ226cm(89インチ)である。ローラーは、Polymag Tek Inc.(Rochester,NY)によって供給された。
【0271】
ローラーは、およそ21キロパスカル(3psi)の集合体に向かう下向きの力と共に順方向に移動させられた。処理の完了後、分離が開始する前に10秒超の間集合体は排気されている真空テーブルの上にとどまった。比較例1にあるように、分離を実施した。
【0272】
この実施例のケース1においては、処理用ローラーは、集合体上を移動する間回転自在であり、それによりローラーを保持する装置と同じ距離をほぼ摩擦無く回転移動する。ローラーは、玉軸受を用いてその車軸上に取付けられた。ローラーは、集合体上に係合されていない場合、集合体上でのその走行と類似の速度で手により回転させることができ、かなり長時間にわたり回転し続け、ローラーとそれを保持する装置の間の回転摩擦が低いことを実証している。
【0273】
同一の要領で作製され露光された別の集合体を使用するこの実施例のケース2においては、処理用ローラーは制動によるさらに大きな回転トルクに付された。回転トルクは、処理ローラーと車軸の間に規定量の摩擦を伴って車軸とローラーの両方に各々が触れるエラストマスリーブをローラーの車軸上に設置することによって導入された。ローラーの装置がローラーを順方向に移動させるにつれて、制動を受けたローラーはこれにより、無制動の回転自在なローラーが行なうよりも真空テーブル上に固定されたレシーバー要素を基準にさらに大きい距離だけ支持層を順方向に移動させる傾向をもっていた。
【0274】
ローラーの回転抗力を克服するのに必要な力を測定し、これはケース2における回転トルクの約0.45ニュートン・メートル(4インチポンド)に相当することがわかった。これは、約7.4N/m(0.042 ポンド/インチ)という正規化された面内せん断荷重を意味している。
【0275】
同一の要領で作製され露光された別の集合体を使用するこの実施例のケース3においては、処理用ローラーは制動によるさらに一層大きな回転トルクに付された。回転トルクは、処理ローラーと車軸の間に規定量の摩擦を伴って車軸とローラーの両方に触れるエラストマスリーブをローラーの車軸上に設置することによって、そして処理ローラーの表面を機械的に擦ることによって導入された。ローラー装置がローラーを順方向に移動させるにつれて、制動を受けたローラーはこれにより、無制動の回転自在なローラーが行なうよりもまたはケース2のローラーが行なうよりも真空テーブル上に固定されたレシーバー要素を基準にさらに大きい距離だけ支持層を順方向に移動させる傾向をもっていた。
【0276】
第3のケースにおいてローラーの回転抗力を克服するのに必要な力を測定し、これは回転トルクの約3.6ニュートン・メートル(32インチポンド)に相当することがわかった。これは、約59N/m(0.338 ポンド/インチ)という正規化された面内せん断荷重を意味している。
【0277】
分離後の第1のケースにおける画像形成されたレシーバーのマクロ品質は、7と評定され、第2のケースにおける画像形成されたレシーバーは8と評定され、第3のケースにおける画像形成されたレシーバーは9と評定され(1=不良、10=優良)、画像形成されたレシーバーの全ての部域は強い緑色をほとんど示さなかった(そして強い緑色は漸進的に少なくなった)。画像形成されたレシーバーのミクロ検査は、強い緑色の部域およびフラップを有するエッジの間に1対1の対応を示した。制動を漸進的に増大させると、転写される材料のエッジの真直度が改善され、画像形成されたレシーバー要素上の転写された材料上で目立つフラップの量は減少する、ということは容易に理解できた。
【0278】
実施例16
この実施例は、非コンプライアントで接着性のローラーによって提供される処理を用いた、集合体の露光、処理および分離の結果を示す。
【0279】
処理には、直径6cm、長さ86インチの中実鋼製ローラーが使用された。コンプライアントなローラーを提供するためのエラストマ材料は、鋼製ローラー全体にわたり一切使用されなかった。ローラーに、幅4インチの3M 400/1000両面粘着テープを、接着性の低い方の層を外に向けた状態で、らせん状に巻回させた。この巻回は、両面粘着テープのエッジがローラーの長さに沿って1/2インチだけ重複し、集合体の一部が外部の鋼部分に露出されることが一切ないように行なわれた。ローラーのデュロメータ測定値は、ショアAスケール上で100以上であった。
【0280】
処理は、真空テーブル上の集合体内に真空圧が維持されている間、2mの距離について150mm/秒の速度で露光された集合体のドナー要素全体にわたりローラーを転動させることによって実施された。
【0281】
処理の完了後、分離が開始する前に10秒超の間、集合体は排気されている真空テーブル上にとどまった。比較例1にあるように分離を実施した。
【0282】
マクロ品質を、接着剤処理を受けた画像形成されたレシーバーの部域(集合体を横断して一定角度で重複する粘着テープの2層を有する比較的薄いバンドおよび、ローラーがより厚みを有するものであり各回転毎に接触することになった部域)と、接着剤処理を受けなかった部域(集合体より上に上昇した状態に残された単一巻回部域)について比較した。接着剤処理を受けた部域は、明らかに目に見えており、ローラー上の両面テープの螺旋巻回パターンを追従していた。らせん接着剤の巻回を用いた処理を受けた画像形成されたレシーバーの部分は8と評定され、一貫して強い赤色部域が最小限にしか見られなかったが、一方接着剤処理を全く受けなかった部分は1と評定され(1=不良、10=優良)、一貫して強い赤色が見られた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を形成するための放射線誘起熱転写プロセス中でドナー要素を使用する方法において、
ドナー要素およびレシーバー要素の集合体を提供するステップであって、ドナー要素が、
支持層および、
一方の面が支持層に隣接して配置され、もう他方の面がレシーバー要素に隣接して配置されている転写層、
を含むステップと;
集合体を放射線に対し像様露光し、それにより像様露光された転写層の少なくとも一部分がレシーバー要素に転写されて、転写された層を形成するステップと;
レシーバー要素からドナー要素を分離し、それによりレシーバー要素上に画像を現出させるステップと;
を含む方法において、
露光ステップの後および分離ステップの前に、支持層とレシーバー要素の間に相対的移動を提供することによって集合体を処理するステップを含む方法。
【請求項2】
処理ステップが、支持層に対し実質的に平行な方向に沿ってレシーバー要素を基準に第1の位置から第2の位置まで支持層の位置を移動させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
移動ステップが、転写層の一方の面と反対側にある支持層の表面を、接着表面、コンプライアント表面またはその組合せからなる群から選択される処理表面と接触させることによって実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
接触ステップが、処理表面を上に有するローラーを支持層上で移動させることによって実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
制動機構と駆動機構からなる群から選択されるテンショニング装置をローラーが含んでいる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ローラーが、支持層に対し1メートルあたり5ニュートン超の面内せん断荷重を加える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
分離ステップが始まる少なくとも0.1秒前に処理ステップが完了する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
分離ステップが始まる少なくとも3秒前に処理ステップが完了する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
分離ステップが始まる少なくとも15秒前に処理ステップが完了する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
レシーバー要素が、有色透明材料と接触する不透明マトリクスと接触する無色透明材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
露光ステップの完了時点で転写された層が、転写層から形成されたコネクタによって、転写層に連結され、
− さらに、処理ステップがコネクタを破断して、転写層に連結されたドナー要素フラップおよび転写された層に連結されたレシーバー要素フラップのうちの少なくとも1つを提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
レシーバー要素フラップの体積がドナー要素フラップよりも小さい、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
処理が、集合体の異なる部域について異なる時間に実施され、
集合体の少なくとも1つの処理された部域および少なくとも1つの処理すべき部域が存在する時点で、処理された部域内に、処理すべき全ての部域から少なくとも1cm離隔した未分離部域が存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
未分離部域が、処理すべき全ての部域から少なくとも3cm離隔している、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
未分離部域が、処理すべき全ての部域から少なくとも10cm離隔している、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
処理ステップが、レシーバー要素を基準に第1の位置から第2の位置までレシーバー要素から離れる方向に沿って支持層の位置を移動させ、次いで、レシーバー要素を基準に第2の位置から第3の位置までレシーバー要素に向かう方向に沿って支持層の位置を移動させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
処理ステップが、レシーバー要素を基準に第1の位置から第2の位置までレシーバー要素に向かう方向に沿って支持層の位置を移動させ、次いで、レシーバー要素を基準に第2の位置から第3の位置までレシーバー要素から離れる方向に沿って支持層の位置を移動させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法により作製されたカラーフィルタ。
【請求項19】
請求項16に記載の方法により作製されたカラーフィルタ。
【請求項20】
請求項17に記載の方法により作製されたカラーフィルタ。
【請求項1】
画像を形成するための放射線誘起熱転写プロセス中でドナー要素を使用する方法において、
ドナー要素およびレシーバー要素の集合体を提供するステップであって、ドナー要素が、
支持層および、
一方の面が支持層に隣接して配置され、もう他方の面がレシーバー要素に隣接して配置されている転写層、
を含むステップと;
集合体を放射線に対し像様露光し、それにより像様露光された転写層の少なくとも一部分がレシーバー要素に転写されて、転写された層を形成するステップと;
レシーバー要素からドナー要素を分離し、それによりレシーバー要素上に画像を現出させるステップと;
を含む方法において、
露光ステップの後および分離ステップの前に、支持層とレシーバー要素の間に相対的移動を提供することによって集合体を処理するステップを含む方法。
【請求項2】
処理ステップが、支持層に対し実質的に平行な方向に沿ってレシーバー要素を基準に第1の位置から第2の位置まで支持層の位置を移動させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
移動ステップが、転写層の一方の面と反対側にある支持層の表面を、接着表面、コンプライアント表面またはその組合せからなる群から選択される処理表面と接触させることによって実施される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
接触ステップが、処理表面を上に有するローラーを支持層上で移動させることによって実施される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
制動機構と駆動機構からなる群から選択されるテンショニング装置をローラーが含んでいる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ローラーが、支持層に対し1メートルあたり5ニュートン超の面内せん断荷重を加える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
分離ステップが始まる少なくとも0.1秒前に処理ステップが完了する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
分離ステップが始まる少なくとも3秒前に処理ステップが完了する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
分離ステップが始まる少なくとも15秒前に処理ステップが完了する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
レシーバー要素が、有色透明材料と接触する不透明マトリクスと接触する無色透明材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
露光ステップの完了時点で転写された層が、転写層から形成されたコネクタによって、転写層に連結され、
− さらに、処理ステップがコネクタを破断して、転写層に連結されたドナー要素フラップおよび転写された層に連結されたレシーバー要素フラップのうちの少なくとも1つを提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
レシーバー要素フラップの体積がドナー要素フラップよりも小さい、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
処理が、集合体の異なる部域について異なる時間に実施され、
集合体の少なくとも1つの処理された部域および少なくとも1つの処理すべき部域が存在する時点で、処理された部域内に、処理すべき全ての部域から少なくとも1cm離隔した未分離部域が存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
未分離部域が、処理すべき全ての部域から少なくとも3cm離隔している、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
未分離部域が、処理すべき全ての部域から少なくとも10cm離隔している、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
処理ステップが、レシーバー要素を基準に第1の位置から第2の位置までレシーバー要素から離れる方向に沿って支持層の位置を移動させ、次いで、レシーバー要素を基準に第2の位置から第3の位置までレシーバー要素に向かう方向に沿って支持層の位置を移動させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
処理ステップが、レシーバー要素を基準に第1の位置から第2の位置までレシーバー要素に向かう方向に沿って支持層の位置を移動させ、次いで、レシーバー要素を基準に第2の位置から第3の位置までレシーバー要素から離れる方向に沿って支持層の位置を移動させることによって実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法により作製されたカラーフィルタ。
【請求項19】
請求項16に記載の方法により作製されたカラーフィルタ。
【請求項20】
請求項17に記載の方法により作製されたカラーフィルタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2011−504145(P2011−504145A)
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−530055(P2010−530055)
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/079764
【国際公開番号】WO2009/052069
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【国際出願番号】PCT/US2008/079764
【国際公開番号】WO2009/052069
【国際公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】
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