説明

露光装置及び遮光板

【課題】セルレイアウトが異なる基板を露光する際にも、高効率且つ低コストでパネルを露光できる露光装置及びこの露光装置に使用される遮光板を提供する。
【解決手段】露光用マスク20は、表示パネルに対応するパターン領域20aが複数個配列されている。マイクロレンズアレイ22は、スキャン方向に垂直の方向に2個のマイクロレンズアレイチップ22aが、その一部がこのスキャン方向に垂直の方向に相互に重なるように設けられている。遮光板30は、マイクロレンズアレイチップ22aの一部を遮光するものであり、遮光板30の開口部は、一方のマイクロレンズアレイチップ22aが2個のパターン領域20aのみを露光し、他方のマイクロレンズアレイチップ22aが他の3個のパターン領域20aのみを露光するように、マイクロレンズアレイチップの光透過を規制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロレンズアレイを使用した露光装置及びこの露光装置に使用される遮光板に関し、特に、セルレイアウトが異なる基板を高効率で露光できる露光装置及びこの露光装置に使用される遮光板に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話及び携帯型情報端末等の機器に搭載される液晶表示装置は、テレビジョン等の大型の液晶表示装置と異なり、パネルが小型になると共に、パネルはより高精細であることが要求される。
【0003】
このような携帯型機器の液晶表示パネルを製造する際に使用される露光装置は、従来、高精細の露光のために、半導体装置の露光に使用されているステッパが使用されている。
【0004】
従来、ステッパにより携帯機器用の小型の液晶表示パネルを露光する際には、マスクのパターンを透過した光を、縮小光学系に透過された後、基板に照射する。この際、露光対象の基板は、例えば1.5m角の大型の基板であり、露光の際には、1又は複数枚の個別基板となる領域ごとに複数回露光される。そして、複数回の露光により個別基板となる領域の全てが露光された基板は、分割されて、複数枚のガラス基板が製造される。
【0005】
しかしながら、このステッパにおいては、1個の対物レンズにより露光される領域の大きさが決まっているため、1枚のガラス基板上に複数枚のパネルを作製する際、その対物レンズの露光領域の境界が、パネルの内部に位置する場合が生じる。そうすると、そのパネルにおいては、露光領域の境界を挟んで両側の領域が別のショットで露光されることになり、境界において、配線等の位置がずれてしまうという問題点がある。このため、この境界においては、配線パターンを太くしたり、端部を傾斜して形成してその傾斜部で重ねあわせる等の所謂「つぎ」の処理を行う必要がある。また、この「つぎ」の処理を施しても、この「つぎ」を施した部分が直線上に連なって、縞が生じてしまうことがあり、そうすると、この縞が生じたパネルについては、製品とならず、廃棄せざるを得ない。更に、露光パターンがこの「つぎ」の処理が困難なパターンの場合にも、露光領域の境界のパネルについては、製品とせずに廃棄することが必要になる。
【0006】
而して、マイクロレンズアレイを使用した露光装置も提案されている(特許文献1及び2)。しかしながら、従来のマイクロレンズアレイを使用した露光装置は、テレビジョン等の大型液晶表示装置用のパネルを露光するものであり、それをそのまま、携帯機器用の液晶表示装置に適用すると、携帯機器用の液晶表示パネルの場合は、パネルが小さく、また種々の大きさがあるため、製造効率が悪いという問題点がある。
【0007】
図10は、従来のマイクロレンズアレイを使用した露光装置を示す模式図である。図10に示す従来の露光装置においては、一定の位置に保持されたマスク20の下方に露光対象の基板40が配置されている。マスク20には、基板40の各パネルとなる領域(図10におけるセル40a)のレイアウトに対応して、夫々のセル40aに露光すべきパターンが形成された複数個のパターン領域20aが設けられている。このマスク20と基板40との間に、マイクロレンズアレイホルダ21に支持されたマイクロレンズアレイ22を挿入し、光源からの露光光15を出射させながら、マイクロレンズアレイ22を光源と共に1方向(第1方向1)に移動させ、マスク20のパターン領域20aを露光光15でスキャンしていく。そうすると、マスク20の各パターン領域20aを透過した露光光は、マイクロレンズアレイ22の各マイクロレンズアレイチップ22aに透過され、マイクロレンズアレイチップ22aにより、各パターンの正立等倍像が基板40上に順次結像されていく。
【0008】
図11は、図10に示す従来の露光装置において、セルレイアウトに対応したマイクロレンズアレイの構成を示す図である。図11に示すように、従来の露光装置においては、基板40のセルレイアウトに対応したマスク20,200が使用され、マイクロレンズアレイ220,221もセルレイアウトに対応したものが使用される。即ち、マイクロレンズアレイ220,221には、夫々複数個のマイクロレンズアレイチップ22b,22c又はマイクロレンズアレイチップ22dが設けられており、各マイクロレンズアレイチップが第1方向1に直交する第2方向2に配置されることにより、夫々パターン領域20a,20bに対応している。
【0009】
各マイクロレンズアレイチップは、その端部が、マスク20,200のスキャン方向(第1方向1)に直交する方向(第2方向2)に並ぶ複数個のパターン領域20a,20b間の領域に位置するように配置されている。即ち、従来の露光装置においては、マイクロレンズアレイチップ22b,22c,22d同士の継ぎ目において、各マイクロレンズアレイチップ同士が第1方向1に重なるように配置された場合、基板40には、2枚のマイクロレンズアレイチップにより、過露光の領域が形成され、それ以外の場合には、未露光の領域が残されるため、この領域は、パネルに使用することができない。よって、セルの幅が小さい場合(図11(a))とセルの幅が大きい場合(図11(b))とでは、マイクロレンズアレイ220,221を共用することができず、セルのレイアウトにより、マスクだけではなく、マイクロレンズアレイも使い分けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−102149号公報
【特許文献2】特開2008−197226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように、携帯機器用の液晶表示パネルのように、高精細が要求されると共に、小型のパネルの場合、従来のステッパを使用すると、露光パターンの「つぎ」が必要となり、マイクロレンズアレイを使用すると、製造効率が悪いという問題点がある。
【0012】
また、マイクロレンズアレイを使用した露光装置においては、マスクには、基板の各セルのレイアウトに対応するパターンが形成されており、更に、マイクロレンズアレイは、各マイクロレンズアレイチップを第2方向2に並ぶ1以上のセルに対応させ、その端部を第2方向2に並ぶ複数個のセル間の領域に位置するように配置する必要があることから、セルのレイアウトにより、マイクロレンズアレイを使い分ける必要がある。従って、セルレイアウトが異なる基板を露光する場合には、マスクと同時にマイクロレンズアレイも取り換える必要があり、製造効率が更に低下するという問題点がある。更に、個々のマイクロレンズアレイは非常に高価であるため、パネルの製造コストも増大するという問題点がある。
【0013】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、セルレイアウトが異なる基板を露光する際にも、高効率且つ低コストでパネルを露光できる露光装置及びこの露光装置に使用される遮光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る露光装置は、露光光を発光する光源と、この光源からの露光光が入射され露光すべきパターンが複数個のパネルに対応して夫々形成された複数個のパターン領域を有するマスクと、このマスクを透過した露光光が入射され前記マスクのパターンの正立等倍像を基板上に結像させるマイクロレンズアレイと、このマイクロレンズアレイを支持するホルダと、このホルダに取り付けられ前記マイクロレンズアレイの光透過領域を規制する遮光板と、前記光源と前記マイクロレンズアレイとの位置関係を固定した状態で、前記マスク及び前記基板を前記光源及び前記マイクロレンズアレイに対して相対的に移動させて前記露光光を前記基板上で第1方向にスキャンする駆動装置と、前記駆動装置及び前記光源を制御する制御装置と、
を有し、
前記マイクロレンズアレイは、前記第1方向に直交する第2方向に複数個のマイクロレンズアレイチップがその一部が相互に前記第1方向に重なるように配置されて構成され、
前記遮光板は、各前記マイクロレンズアレイチップが1又は複数個の前記パターン領域に対応し、各前記パターン領域が1個のマイクロレンズアレイチップにのみ対応するように、前記マイクロレンズアレイチップを振り分けた場合に、マイクロレンズアレイチップにおける光透過が不要な領域を遮光し、光透過が必要な領域に開口部を有するものであることを特徴とする。
露光光としては、水銀ランプ光等が使用される。なお、本発明におけるパネルとは、液晶表示パネルの画素領域及びその周辺領域を意味し、マスクに形成される露光用パターンは、画素領域のパターン及びその周辺領域の回路パターンを含むものである。
【0015】
本発明に係る露光装置において、例えば、前記マイクロレンズアレイに対し、前記開口部の前記第2方向の長さが異なる複数個の遮光板が用意され、前記パターン領域の大きさに応じて、前記複数個の遮光板のうちの一つが選択されて使用される。
【0016】
本発明に係る遮光板は、複数個のパターン領域を有するマスクを透過した露光光が入射され、前記マスクのパターンの正立等倍像を基板上に結像させる複数個のマイクロレンズアレイチップが配列されたマイクロレンズアレイに対し、このマイクロレンズアレイを支持するホルダに取り付けられ、前記マイクロレンズアレイの光透過領域を規制する遮光板であって、
前記複数個のマイクロレンズアレイチップは、その一部が相互に前記マイクロレンズアレイチップの配列方向に垂直の方向に重なるように配置されており、
前記遮光板は、
各前記マイクロレンズアレイチップが1又は複数個の前記パターン領域に対応し、各前記パターン領域が1個のマイクロレンズアレイチップにのみ対応するように、前記マイクロレンズアレイチップを振り分けた場合に、マイクロレンズアレイチップにおける光透過が不要な領域を遮光し、光透過が必要な領域に開口部を有するものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の露光装置によれば、マイクロレンズアレイの複数個のマイクロレンズアレイチップをその一部が相互に重なるように大きく設けておき、マイクロレンズアレイ用ホルダに取り付けられる遮光板の開口部の形状及び位置を、パターン領域に合わせて設定することにより、マスクに形成されたパターン領域、即ち、露光すべき表示パネルの大きさが、変更になっても、この遮光板を別のものに変更するだけで、マイクロレンズアレイ自体は、そのまま使用しても、パターン領域に応じて、そのパターン領域の間の隙間領域に、マイクロレンズアレイチップにおける露光光の透過領域の端部を位置させることができる。よって、マイクロレンズアレイチップの端部の過露光及び未露光を防止することができると共に、マイクロレンズアレイの交換は不要であるので、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本発明の実施形態に係るマイクロレンズアレイ及び遮光板を示す平面図、(b)は遮光板を設置したマイクロレンズアレイとマスクのパターン領域との位置関係を示す図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るマイクロレンズアレイを使用した露光装置を示す斜視図である。
【図3】マスクステージとマイクロレンズアレイを示す斜視図である。
【図4】マスクステージ全体を示す斜視図である。
【図5】遮光板を設置したマイクロレンズアレイを示す図であり、(a)は平面図、(b)は図5(a)のA−A断面図である。
【図6】スキャン露光工程における露光光とマスクとの関係を示す図である。
【図7】スキャン露光工程における露光光とマイクロレンズアレイとの関係を示す図である。
【図8】図7の次の工程を示す図である。
【図9】(a)及び(b)は、セルレイアウトが異なる基板を露光する場合におけるマイクロレンズアレイ及び遮光板を示す図である。
【図10】従来のマイクロレンズアレイを使用した露光装置を示す模式図である。
【図11】図10に示す従来の露光装置において、セルレイアウトに対応したマイクロレンズアレイの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。図1(a)は本発明の実施形態に係るマイクロレンズアレイ及び遮光板を示す平面図、図1(b)は遮光板を設置したマイクロレンズアレイとマスクのパターン領域との位置関係を示す図である。図2は本発明の第1実施形態に係るマイクロレンズアレイを使用した露光装置を示す斜視図、図3は同じくマスクステージとマイクロレンズアレイを示す斜視図、図4はマスクステージ全体を示す斜視図である。本実施形態に係る露光装置は、図2に示すように、ガラス基板40を、スキャン方向(第1方向)1及びこのスキャン方向1に直交する方向(第2方向2)に移動させることができるX−Yステージ11の上に基板ステージ12が第1方向1に移動可能に設置されている。このX−Yステージ11及び基板ステージ12の上方に、架台13が設置されており、この架台13上に、一例として、4個の光源14が固定設置されている。これらの光源14は、例えば、高圧水銀ランプ光源であり、波長が280乃至340nmの紫外光の露光光15を、下方に向けて照射する。この露光光15の照射領域は、図4に示すように矩形である。
【0020】
この露光光15の光源14の下方には、図3に示すように、マスクステージ18が配置されている。架台13には、第2方向2に延びる第1ガイド16が懸架されており、この第1ガイド16に第1方向1に延びる第2ガイド17が懸架されている。第1ガイド16は架台13上に固定されており、第2ガイド17は第2方向2に延びる第1ガイド16上に第2方向2に移動可能に支持されている。そして、4個のマスクステージ18は相互にその位置関係を保持したまま、第1方向1に延びる第2ガイド17上に第1方向1に移動可能に支持されている。このマスクステージ18には、矩形の開口が形成されており、この開口にマスク20が支持されている。従って、マスク20は、第1ガイド16及び第2ガイド17により、第1方向1に対して、スキャンすることができ、第2方向2に対して、シフトすることができる。
【0021】
このマスク20の下方には、マイクロレンズアレイホルダ21が設置されており、このホルダ21の開口部内に、マイクロレンズアレイチップ22aが複数個支持されており、複数個のマイクロレンズアレイチップ22aからなるマイクロレンズアレイ22が構成されている。マイクロレンズアレイチップ22aは、夫々、多数のマイクロレンズが形成されており、各マイクロレンズにより、マスク20のパターンの正立等倍像が、マイクロレンズアレイ22の下方に配置される基板40上に結像されるようになっている。
【0022】
本実施形態においては、露光装置には、マスクステージ18に支持されたマスク20と、基板ステージ12上の基板40とを、光源14及びマイクロレンズアレイ22に対して、相対的に同時一体的に第1方向1にスキャンする駆動装置が設けられている。また、基板ステージ12上の基板40は、基板ステージ12を第2方向2に移動させることにより、光源14、マスク20及びマイクロレンズアレイ22に対して、第2方向2にシフト可能に構成されている。なお、基板ステージ12の第2方向2への移動は、手動で行っても、基板40のシフト用に駆動装置を設け、この駆動装置により行ってもよい。本実施形態においては、複数個のマイクロレンズアレイチップ22aは、第2方向2に配列されてホルダ21に支持されており、ホルダ21は架台13上に固定されている。従って、光源14からの露光光15がマイクロレンズアレイ22により基板40上に集光される状態を保持して、マスク20と基板40とが第1方向1に移動することにより、基板40が露光光15によりスキャンされ、マスクのパターン領域20aに形成されたパターンが基板40上に露光されて転写される。
【0023】
第1の駆動装置によるマスク20及び基板40に対する光源14及びマイクロレンズアレイ22の相対的第1方向1へのスキャンは、図示しない制御装置により制御されている。そして、露光装置は、制御装置により駆動装置及び光源を制御して露光光をスキャンした後、基板40が第2方向2にシフトされると、再度、制御装置により駆動装置及び光源を制御して露光光をスキャンすることを繰り返す。これにより、第1方向1への露光光のスキャンと第2方向2への基板40のシフトとが順次行われて、基板のパターン形成用領域が順次露光されていく。
【0024】
マスクステージ18に保持されるマスク20の大きさは、例えば、第2方向2の幅が400mmである。そして、マスク20には、露光すべきパターンが複数個のパネルに対応して形成されたパターン領域20aが設けられている。本実施形態においては、パターン領域20aが第1方向1に連続的又は所定ピッチ(図示例)で複数個配置されてパターン列20c,20dが形成されており、このパターン列が第2方向2に所定ピッチで複数列配列されている。そして、各パターン領域20aは、夫々、基板上に形成する各パネルに対応し、複数個のパターン領域20aが基板40上のセル40aのレイアウトに対応して配置されている。
【0025】
本実施形態においては、図1(a)に示すように、マイクロレンズアレイ22は、2個のマイクロレンズアレイチップ22aにより構成されており、各マイクロレンズアレイチップ22aは、相互に、その一部が第1方向1に重なるように配置されている。従って、マイクロレンズアレイ22が基板40(図8参照)に対して相対的に第1方向1に走査されたときに、第1方向1に配置された各パターン列20c,20dは、2個のマイクロレンズアレイチップ22aの双方又はいずれか一方に対応している。
【0026】
図1(a)に示すように、本実施形態のマイクロレンズアレイ22は、マイクロレンズアレイチップ22a同士の一部が第1方向に重なるように配置されているため、ある特定のパターン列20dの透過光の一部は、後述する遮光板30が設けられていないと、双方のマイクロレンズアレイチップ22aに入射される。よって、このパターン列20dにより形成されるパネルは、一部が2回露光されて過露光となり、残部が通常の1回露光となる。このような露光ムラが生じたパネルは、使用することができない。よって、これを回避するために、本実施形態においては、図1(b)に示すように、マイクロレンズアレイチップ22aにおける光透過が不要な領域を遮光する遮光板30が設けられている。即ち、遮光板30には、遮光部30a及び開口部30bが設けられており、パターン領域20aが1個のマイクロレンズアレイチップ22aにのみ対応するように、マイクロレンズアレイ22aを振り分けた場合に、マイクロレンズアレイチップ22aにおける光透過が不要な領域を遮光部30aにより遮光し、マイクロレンズアレイチップ22aにおける光透過が必要な領域に開口部30bを設けて透過光を透過させる。即ち、遮光部30bは、マスクの各パターン領域の透過光が2以上のマイクロレンズアレイチップ22aに入射されないように、各パターン列に対応していない側のマイクロレンズアレイチップ22aへの露光光を遮光する。
【0027】
図5は、遮光板を設置したマイクロレンズアレイを示す図であり、図5(a)は平面図、図5(b)は図5(a)のA−A断面図である。図5に示すように、マイクロレンズアレイ22は、枠状のマイクロレンズアレイホルダ21の内側に2個のマイクロレンズアレイチップ22aが固定されて構成されている。各マイクロレンズアレイチップ22aは、4枚の部材により構成されており、各部材は、ガラス基板の表面及び/又は裏面に凸レンズのマイクロレンズを2次元的に配置して形成されている。このマイクロレンズアレイチップ22aに平行光を透過させることにより、基板上に、マスクのパターンが正立等倍像で結像される。図5(b)に示すように、遮光板30は、マスク20のパターン20aの大きさに対応するように、遮光部30a及び開口部30bが所定の形状で設けられており、マイクロレンズアレイ22の上方にて、その周縁部がマイクロレンズアレイホルダ21に固定されている。これにより、本実施形態においては、遮光部30aにより遮光され、開口部30bを透過した露光光が、マイクロレンズアレイ22に入射する。なお、本実施形態においては、マイクロレンズアレイチップ22aは4枚の部材により構成されているが、本発明はマイクロレンズアレイチップ22aを構成する部材の数により限定されない。例えば、マイクロレンズアレイチップ22aは、8枚等の部材を使用することもできる。
【0028】
遮光板30は、例えば厚さが100μm程度のステンレス鋼であり、本実施形態においては、図5(b)に示すように、マイクロレンズアレイホルダ21に設けられた溝に嵌め込むことにより特定の位置で固定されるように構成されている。これにより、マイクロレンズアレイチップ22aに対する遮光位置の精度が向上する。なお、遮光板30を固定する際には、例えばマイクロレンズアレイホルダ21に接着により貼り付けてもよい。
【0029】
次に、上述の如く構成されたマイクロレンズアレイを使用した露光装置の動作について説明する。レジスト膜が形成されたガラス基板40は、基板ステージ12上に搬送されてきて、4個のマスクステージ18に支持されたマスク20と正対する位置に設定される。そして、ガイド16,17並びに基板ステージ12及びX−Yステージ11により、基板40とマスク20とは一定の位置関係を保持して、駆動装置により同時に駆動される。
【0030】
本実施形態においては、図4に示すように、4個のマスクステージ18に夫々マスク20が保持されており、4個の光源14からの4個の露光光15は、各マスク20に入射し、露光光15の矩形の照射領域は、その幅方向の長さが、マスク20の第2方向2(スキャン方向に直交する方向)の全域の長さに対応するようになっている。この露光光15は、図6に示すように、マスク20及び基板40が、同時一体的に第1方向1に露光光15に対して相対的に移動することにより、露光光15は、マスク20を白抜き矢印にて示すスキャン方向(第1方向)にスキャンする。
【0031】
図7は、マスク20を取り除いた状態を示す斜視図である。この図7に示すように、マスク20の各パターン領域20aを透過した露光光15は、その矩形の照射領域が、マイクロレンズアレイホルダ21の開口部内に支持された2個のマイクロレンズアレイチップ22aのいずれかのマイクロレンズ形成領域内にある。そして、この露光光15と、マイクロレンズアレイ22とは、その位置関係が固定されており、マスク20及び基板40が一体的に同時に移動する間に、図8に示すように、露光光15が白抜き矢印にて示すスキャン方向にマスク20及び基板40に対して相対的にスキャンされ、マイクロレンズアレイ22は、マスク20を透過してきた露光光15を基板40上に結像させる。これにより、基板40上に、マスク20のパターンが、正立等倍像として転写され、帯状の露光パターン41が5列レジスト上に形成される。
【0032】
本実施形態においては、マイクロレンズアレイ22には、2個のマイクロレンズアレイチップ22aが設けられており、マイクロレンズアレイチップ22a同士は、その一部が相互に第1方向に重なるように配置されている。しかし、本実施形態においては、マイクロレンズアレイホルダ21に遮光板30が固定されており、これにより、パターン領域20aが1個のマイクロレンズアレイチップ22aにのみ対応するように、マイクロレンズアレイ22aを振り分け、マイクロレンズアレイチップ22aにおける光透過が不要な領域を遮光部30aにより遮光し、マイクロレンズアレイチップ22aにおける光透過が必要な領域に開口部30bを設けて透過光を透過させ、遮光部30bは、マスクの各パターン領域の透過光が2以上のマイクロレンズアレイチップ22aに入射されないように、各パターン列に対応していない側のマイクロレンズアレイチップ22aへの露光光を遮光する。そして、ガラス基板40上のレジスト膜に対する1回のスキャン動作により、5枚のパネルを同時に露光することができ、露光動作を高効率化することができる。また、このとき、各パネルについては、その内部にマイクロレンズアレイチップ22aの継ぎ目は存在しないため、露光パターンにおいて、従来の所謂「つぎ」の処理を行う必要はなく、過露光の領域も存在しないため、露光パターンに露光ムラが発生することはない。
【0033】
マスクは、通常、幅が400mm程度であるが、このような長寸のマイクロレンズアレイを製造しようとすると、コストが高くなる。マイクロレンズアレイは、通常、150mm程度の長さ(幅)のチップ状のものが、単位長あたりの相対的な製造コストは低い。よって、複数枚のマイクロレンズアレイチップをつなぎ合わせて、マスク幅に対応するマイクロレンズアレイを構成するか、又は、マイクロレンズアレイホルダ21に例えば長さが150mmのマイクロレンズアレイチップを設け、このマイクロレンズアレイチップが存在しない領域のマスク部分には、Cr膜を形成して、露光光の透過を遮断するという作業が必要である。後者の場合は、ガラス基板40に使用しない領域(パネルとならない領域)が生じてしまうので、無駄である。そこで、複数枚のマイクロレンズアレイチップを第2方向に配列して、夫々マスク幅に対応した複数枚のマイクロレンズアレイチップによりマイクロレンズアレイを構成することが好ましい。このとき、本実施形態のように、各マイクロレンズアレイチップ22aを、相互に、その一部が第1方向1に重なるように配置し、遮光板30によりその光透過領域の一部を遮光して、第1方向1に複数個配置されて形成されたマスク20の各パターン列にいずれかのマイクロレンズアレイチップ22aが対応するように構成すれば、所謂「つぎ」がパネルの露光パターン41内に存在せず、しかも可及的に多数及び他種類のパネルを一度に露光処理できるため、効率的である。
【0034】
本実施形態においては、図9(a)に示すように、2個のマイクロレンズアレイチップ22aを使用し、遮光板30により、マイクロレンズアレイチップ22aの一部を遮光して第2方向2に並ぶ5個のパターン領域20aを透過した光がいずれかのマイクロレンズアレイチップ22aに入射するようにしたものであるが、図9(b)のように、セルレイアウトが異なる基板40に対応したマスク200を使用する場合においては、遮光板30を変更するだけで、マイクロレンズアレイ22を共用化できる。即ち、図9(b)に示すマスク200には、第2方向2に4個のパターン領域20bが形成されており、各パターン領域20bは、図9(a)のマスク20における各パターン領域20aよりも第2方向2の大きさが大きい。このような場合に、露光装置には、予め、パターン領域の大きさが異なるマスクに対応させて、開口部30bの第2方向2の長さが異なる複数個の遮光板を用意しておき、パターン領域の大きさに応じて、複数個の遮光板のうちの一つを選択して使用することができる。即ち、図9(b)に示すマスク200の場合においては、パターン領域20bの大きさに対応する遮光板31を選択して使用する。このように、パターン領域の大きさが異なるマスクを使用する場合においても、開口部30bの第2方向2の長さが異なる遮光板を使用することにより、マイクロレンズアレイチップ22aにおける露光光の透過領域の端部をパターン領域の間の隙間領域に位置させることができ、マイクロレンズアレイチップ22aの端部の過露光及び未露光を防止することができる。そして、異なるセルレイアウトのパネルを露光する際においても、マイクロレンズアレイ22を交換することなく露光できるので、高い製造効率でパネルを露光できる。また、セルレイアウトに対応して異なるマイクロレンズを設ける必要もないため、パネルの製造コストの増大も防止できる。
【0035】
なお、本実施形態における遮光板30は、マスク20からマイクロレンズアレイ22への入射光を遮光するように構成されているが、遮光板30はマイクロレンズアレイ22を透過した露光光を遮光するように構成されていてもよい。また、本発明においては、遮光板は、マスク20のパターン領域20aの透過光が2以上のマイクロレンズアレイチップ22aを透過して基板に照射されないように遮光部30a及び開口部30bが設けられている限り、上記態様に限定されることはない。例えば、遮光板30は、マイクロレンズアレイホルダ21に固定されていなくてもよい。
【0036】
また、本実施形態のマイクロレンズアレイ22は、2個のマイクロレンズアレイチップ22aにより構成されているが、本発明においては、マイクロレンズアレイ22は、3個以上の複数個のマイクロレンズアレイチップ22aがその一部が相互に第1方向に重なるように配置されて構成され、マスク20の各パターン領域20aを透過した露光光の全てが、第1方向に重なるように配置されたマイクロレンズアレイチップ22aのいずれかに透過されるように構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明によれば、異なるセルレイアウトに対応させてマスクを交換する際に、遮光板を変更するだけで、マイクロレンズアレイの交換は不要であり、セルレイアウトが異なる基板の露光において極めて有用である。
【符号の説明】
【0038】
1:第1方向(スキャン方向)、2:第2方向(スキャン方向に直交する方向)、11:X−Yステージ、12:基板ステージ、13:架台、14:光源、15:露光光、16:第1ガイド、17:第2ガイド、18:マスクステージ、20:マスク、20a,20b:パターン領域、20c,20d:パターン列、21:マイクロレンズアレイホルダ、22:マイクロレンズアレイ、22a:マイクロレンズアレイチップ、30,31:遮光板、30a:遮光部、30b:開口部、40:基板、41:露光パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光光を発光する光源と、この光源からの露光光が入射され露光すべきパターンが複数個のパネルに対応して夫々形成された複数個のパターン領域を有するマスクと、このマスクを透過した露光光が入射され前記マスクのパターンの正立等倍像を基板上に結像させるマイクロレンズアレイと、このマイクロレンズアレイを支持するホルダと、このホルダに取り付けられ前記マイクロレンズアレイの光透過領域を規制する遮光板と、前記光源と前記マイクロレンズアレイとの位置関係を固定した状態で、前記マスク及び前記基板を前記光源及び前記マイクロレンズアレイに対して相対的に移動させて前記露光光を前記基板上で第1方向にスキャンする駆動装置と、前記駆動装置及び前記光源を制御する制御装置と、
を有し、
前記マイクロレンズアレイは、前記第1方向に直交する第2方向に複数個のマイクロレンズアレイチップがその一部が相互に前記第1方向に重なるように配置されて構成され、
前記遮光板は、各前記マイクロレンズアレイチップが1又は複数個の前記パターン領域に対応し、各前記パターン領域が1個のマイクロレンズアレイチップにのみ対応するように、前記マイクロレンズアレイチップを振り分けた場合に、マイクロレンズアレイチップにおける光透過が不要な領域を遮光し、光透過が必要な領域に開口部を有するものであることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記マイクロレンズアレイに対し、前記開口部の前記第2方向の長さが異なる複数個の遮光板が用意され、前記パターン領域の大きさに応じて、前記複数個の遮光板のうちの一つが選択されて使用されることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
複数個のパターン領域を有するマスクを透過した露光光が入射され、前記マスクのパターンの正立等倍像を基板上に結像させる複数個のマイクロレンズアレイチップが配列されたマイクロレンズアレイに対し、このマイクロレンズアレイを支持するホルダに取り付けられ、前記マイクロレンズアレイの光透過領域を規制する遮光板であって、
前記複数個のマイクロレンズアレイチップは、その一部が相互に前記マイクロレンズアレイチップの配列方向に垂直の方向に重なるように配置されており、
前記遮光板は、
各前記マイクロレンズアレイチップが1又は複数個の前記パターン領域に対応し、各前記パターン領域が1個のマイクロレンズアレイチップにのみ対応するように、前記マイクロレンズアレイチップを振り分けた場合に、マイクロレンズアレイチップにおける光透過が不要な領域を遮光し、光透過が必要な領域に開口部を有するものであることを特徴とする遮光板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−242454(P2012−242454A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−109765(P2011−109765)
【出願日】平成23年5月16日(2011.5.16)
【出願人】(500171707)株式会社ブイ・テクノロジー (283)
【Fターム(参考)】