説明

露光装置

【課題】感光材料の発色特性に応じた適切な波長の光が容易に得られる露光装置を実現する。
【解決手段】露光ヘッド25には、光源部30と液晶シャッタ31と三角プリズム32と波長選択板34が設けられている。光源部30は白色光源を備えている。光源部からの白色光は、液晶シャッタ31に画素ごとの輝度情報を有する白色の画像光に変調される。白色の画像光が三角プリズム32に入射すると波長ごとに画像光が分散する。波長選択板34にはスリット33が設けられており、必要な波長に応じてスリット33の位置が決められている。スリット33を通過した特定の波長の画像光はミラーを反射して感光材料に照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光記録媒体に画像を記録する露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インスタントフイルムを記録媒体として、画像を感光記録するインスタント写真プリンタが知られている(例えば特許文献1参照)。インスタント写真プリンタは、カラー画像を記録するためにR,G,Bの画像光をインスタントフイルムに1ラインずつ照射する露光ヘッドを備えている。従来の露光ヘッドには、白色光源と、白色光をR,G、Bの色ごとに分解するカラーフィルタと、色ごとに分解されたR光,G光,B光の光量をそれぞれ調節し画素ごとに輝度情報を有する画像光を生成する液晶シャッタとが設けられている。R,G,Bの画像光を得るためには、発光波長域の広い白色光をカラーフィルタによって色分解する方式と、発光波長域の狭いR光,G光,B光を発光する三種類の発光ダイオードを使用する方式とが知られている。
【特許文献1】特開2005−288962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、露光ヘッドから照射される各色の画像光は、その波長が感光記録媒体の発色波長と一致している必要があり、これが不十分であると不要な発色によって混色が発生し、画像の品質を低下させることになる。このため、従来の露光ヘッドは、使用する感光記録媒体の種類を変更する場合、白色光を色分解する方式ではカラーフィルタを透過波長域の異なるものに交換し、三色の光源を用いる方式では各光源を発光波長の異なるものに交換する必要がある。すなわち、感光記録媒体を新規に開発し、使用する感光記録媒体の種類を変更すると、そのたびにカラーフィルタや光源を新規に開発しなければならず、多大な時間とコストを費やす必要が生じるという問題点がある。
【0004】
本発明は、上記問題点を考慮してなされたものであり、発色特性の異なる感光記録媒体を使用しても混色や発色不良の発生を容易に防止できる露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の露光装置は、感光記録媒体を感光させる光を放出する光源と、光源からの光を波長ごとに分散させる光分散手段と、分散された光から特定の波長の光を取り出すための開口部を有する波長選択手段とを備え、前記開口部により取り出された光を前記感光記録媒体に照射することを特徴とする。
【0006】
前記開口部はスリットであることを特徴とする。
【0007】
前記波長選択手段は複数のスリットを有し、各スリットの位置に応じて異なる波長の光が取り出されることを特徴とする。
【0008】
前記光分散手段は、光の入射面と出射面とが非平行であるプリズムからなることを特徴とする。
【0009】
前記光源と前記プリズムとの間には光源から放出される光の量を画素単位で調節する光量調節手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
前記光源は白色光源であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光源からの光を波長ごとに分散し、分散した光を波長選択手段の開口部を通過させ、所定の波長の光のみを取り出すことができるから、カラーフィルタが不要であり、感光記録媒体の発色層の発色波長に応じた光源を設ける必要がない。白色光源等の発光波長分布の広い光源を用いていれば、波長選択手段の開口部の位置を変えることで取り出す光の波長を変えることができるから、発色特性の異なる感光記録媒体に同じ光源を用いて感光記録が行える。すなわち、感光記録媒体の種類に応じて混色を発生させる可能性のある光を容易に除去することができるから、コストや手間をかけずに高画質の記録が行える露光装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1において、インスタント写真プリンタ10は、フイルムパック12が装填されるパック装填室13を備えている。パック装填室13には複数枚のインスタントフイルム11が収納されている。パック装填室13には開閉蓋14が設けられている。開閉蓋14にはフイルム押圧突起17が設けられており、フイルム押圧突起17はフイルムパック12の背面に形成された押圧開口16に進入する。フイルム押圧突起17は、インスタントフイルム11を背後から押圧し、インスタントフイルム11をフイルムパック12の前面に向かって押し付ける。フイルム押圧突起17は、その先端部17aがバネにより付勢されており、フイルムパック12の内部のインスタントフイルム11の残り枚数に応じて突出量が変化する。
【0013】
フイルム掻き出し爪20は、フイルムパック12の最も前側に位置しているインスタントフイルム11を引っ掛けてフイルム送出口21からフイルムパック12の外部に送り出す。フイルム掻き出し爪20は、インスタントフイルム11を搬送ローラ対22に向かって搬送する。搬送ローラ対22は、インスタントフイルム11に設けられた現像液ポッド11aの裂開を防ぐために、一方の原動ローラ22aが棒状であり、他方の従動ローラ22bがインスタントフイルム11の両側端部のみに当接する円板を有する構造である。
【0014】
原動ローラ22aはモータ(図示なし)の駆動力を受けて回転する。従動ローラ22bは、原動ローラ22aに向かってバネ付勢され、フイルムパック12の外部に送り出されてきたインスタントフイルム11を原動ローラ22aとの間で挟持する。従動ローラ22bは、インスタントフイルム11との摩擦によって従動回転し、その回転量からインスタントフイルム11が搬送された距離が測定される。
【0015】
搬送ローラ対22よりも搬送方向下流側には、インスタントフイルム11の現像液を展開する展開ローラ対23が設けられている。展開ローラ対23はインスタントフイルム11を強い圧力で挟み込み、現像液ポッド11aを裂開する。現像液ポッド11aが裂開すると、内蔵された現像液がインスタントフイルム11の内部に流れ出す。展開ローラ対23は、流れ出した現像液を均一に展開しながら、インスタントフイルム11を搬送する。
【0016】
露光ヘッド25は、フイルムパック12と搬送ローラ対22との間の位置で、インスタントフイルム11の感光面にライン状の画像光を照射し、1ラインずつ露光を行って画像を記録する。露光ヘッド25は、その場に静止した状態で画像光を照射し、インスタントフイルム11が1ライン分搬送されるごとに画像光を次のラインの光に切り替える。露光ヘッド25からはR,G,Bの三色の光が画像光として照射される。露光ヘッド25は、インスタントフイルム11の搬送と同期して三色の画像光を同時に照射し、1画面分のカラー画像をインスタントフイルム11に記録する。露光ヘッド25によって記録された画像は、展開ローラ対23が現像液を展開した後に一定時間が経過すると可視化される。
【0017】
図2において、露光ヘッド25は、白色光を発する光源部30と、白色光の濃度を画素ごとに調節する液晶シャッタ31と、液晶シャッタ31を透過した白色の光を波長ごとに分散させる三角プリズム32と、分散した光から特定の波長の光を抽出するためのスリット33を有する波長選択板34を備えている。光源部30は、白色光を発光する複数の白色発光ダイオードによって構成されている。複数の白色発光ダイオードはインスタントフイルム11の幅方向にライン状に配列されている。
【0018】
液晶シャッタ31は、白色光を画素ごとに変調し、白色光から輝度情報を有する画像光を生成する。液晶シャッタ31は、R用画像光を生成する液晶アレイ31Rと、G用画像光を生成する液晶アレイ31Gと、B用画像光を生成する液晶アレイ31Bとからなる三列の液晶アレイによって構成されている。光源部30からの白色光は、三列の液晶アレイを透過することで、インスタントフイルム11の幅方向に長い三列のライン状の画像光に変換される。
【0019】
三角プリズム32は、光学ガラスを材料として三角柱状に形成されたプリズムである。三角プリズム32は、その入射面32aが、液晶シャッタ31を透過した三列の画像光の入射方向と一定の傾斜角度をなすように設けられている。三角プリズム32に入射した三列の画像光は、三角プリズム32の入射面32aで屈折する。三角プリズム32は、波長ごとの屈折率差が大きいガラスを材料としており、三角プリズム32に入射した三ラインの画像光がそれぞれ色ごとに分散する。波長の長いR光は屈折の度合いが小さく、波長の短いB光は屈折の度合いが大きいため、三角プリズム32に入射した三列の白色の画像光は、それぞれ色ごとに拡散し、ライン状の光から所定面積の光束に変化する。入射面32aにおいて屈折及び分散した光は出射面32bでさらに屈折し、さらに拡散する。
【0020】
波長選択板34は、三角プリズム32の出射面32bと平行に設けられている。なお、入射面32aから出射面32bの間で画像光の分散する範囲が十分に広ければ、波長選択板34を出射面32bに密着して設けることができる。波長選択板34には複数のスリット33が形成されている。スリット33の数は、必要とする画像光の色の種類と同じ数である。波長選択板34には、R用画像光を分散させた光から赤色成分の光を取り出すスリットと、G用画像光から緑色成分の光を取り出すスリットと、B用画像光から青色光成分の光を取り出すスリットが形成されている。
【0021】
図3において、スリット33を形成する位置とスリット33の幅は、分散した画像光から取り出す光の波長域によって決まる。例えば、図中実線で示す曲線がインスタントフイルム11のR,G,Bの各発色層の発色感度特性を示す曲線であるとき、最も発色感度の高い曲線のピークを含む領域の光が得られるようにスリット33の位置と幅が決められている。また、複数の発色層を発色させてしまう可能性のある混色領域A1の範囲の光が除外されるようにスリット33の位置と幅が決められている。
【0022】
図2において、スリット33を通過して得られた赤色画像光、緑色画像光、青色画像光は、反射面が平坦なミラー35R、ミラー35G、ミラー35Bによって反射され、露光ヘッド25の画像光照射口36からインスタントフイルム11に向かって照射される。各色のライン状の画像光は、インスタントフイルム11の感光面上の同じ位置で合成され、1ライン分のカラー画像光としてインスタントフイルム11を感光させる。なお、光路を進行する過程で各色の画像光が拡散し、ライン状の光が得られにくくなる場合には、ミラー35R〜ミラー35Bを凹面鏡にすることで光束を絞り込むことができる。
【0023】
次にインスタント写真プリンタ10の作用について説明する。インスタント写真プリンタ10には、外部からプリントの対象となる画像が画像データとして送信される。画像データは画素ごとの輝度情報及び色情報を有しており、画像の各色の輝度情報は液晶シャッタ31の液晶アレイ31R〜液晶アレイ31Bに送られる。フイルム掻き出し爪20は、インスタントフイルム11をフイルム送出口21からフイルムパック12の外部に送り出す。
【0024】
フイルム掻き出し爪20がインスタントフイルム11の先端を搬送ローラ対22の位置まで送り出すと、搬送ローラ対22がインスタントフイルム11を挟持し、インスタントフイルム11を搬送する。インスタントフイルム11の搬送距離が一定距離に達すると、インスタントフイルム11の感光面が露光ヘッド25の真下の位置に到達する。光源部30は白色発光ダイオードを点灯し、白色光を放出する。液晶シャッタ31では、液晶アレイ31R〜液晶アレイ31Bが駆動し、光源部30からの白色光が三ラインの白色の画像光に変調される。
【0025】
液晶アレイ31R〜液晶アレイ31Bをそれぞれ透過して得られた三ラインの白色の画像光は、入射面32aの異なる位置から三角プリズム32に入射する。各画像光は、波長ごとに異なる屈折率で屈折するため、ライン状の画像光は色ごとに分散した光束に変化する。分散した各画像光は、出射面32bを透過し、波長選択板34に到達する。波長選択板34では、所定の位置に形成された複数のスリット33の作用により、R用画像光から赤色画像光が抽出され、G用画像光から緑色画像光が抽出され、B用画像光から青色画像光が抽出される。抽出された各色の画像光は、スリット33によってライン状の光になり、インスタントフイルム11に混色を生じさせない波長域の光である。
【0026】
波長選択板34を通過した各色のライン状の画像光は、ミラー35R〜ミラー35Bによりインスタントフイルム11の感光面上の同じ位置に照射され、インスタントフイルム11に1ライン分の画像が感光記録される。インスタントフイルム11が1ライン分搬送されると、露光ヘッド25から次のラインの画像光が照射される。このようにしてインスタントフイルム11の搬送と画像光の照射が1ラインずつ実行される。
【0027】
インスタントフイルム11が展開ローラ対23の位置に到達すると、展開ローラ対23は現像液ポッド11aを裂開する。展開ローラ対23は、インスタントフイルム11を搬送しながら現像液を展開し、露光ヘッド25によって画像光が露光された部分に現像液が展開される。露光ヘッド25は1画面分の露光を行い、露光された面の全体に現像液が展開される。展開ローラ対23はインスタントフイルム11を外部に排出する。露光ヘッド25によって記録された画像は、一定時間が経過するとインスタントフイルム11にカラー画像として出現する。
【0028】
なお、上記実施形態では、光分散手段として三角プリズムを用いているが、例えばプリズムの底面の形状は三角形に限られず、三角プリズムの光が通過しない部分を省略した多角計の底面を有するプリズムを用いることもできる。また、プリズムの材料として分散の大きいガラスを用いた場合には平行平面板を用いることができる。プリズムは1つに限らず、必要とする光の種類ごとに小さいプリズムを複数個設けてもよい。
【0029】
上記実施形態では、光源として発光ダイオードを用いているが、これに限らず有機EL発光素子や蛍光灯を用いることもできる。光源は、白色光源に限らず、発光波長の分布が必要な波長の光を含むものであれば、必要とする光の種類に応じて複数の単色光源を設けてもよい。また、光源とプリズムとの間に液晶シャッタを設けることに限らず、スリットを通過した光を液晶シャッタに入射させ、画像光を生成してもよい。スリットによって光が回折する場合には、レンズによって光を集光してもよい。波長選択手段が板状の部材によって構成される場合、板の厚さよりもスリットの幅が小さくなる時には、取り出すべき光がスリットを通過できなくなることを防ぐためにプリズムの出射面から光が出射する方向とスリットの中心軸とが平行になるようにスリットを板の厚さ方向に対して斜めに形成してもよい。
【0030】
露光ヘッド25は、液晶シャッタ31を三列の液晶アレイ31R〜31Bによって構成し、三色のライン光を同時に感光材料に照射しているが、液晶アレイを一列にし、三色のライン光を順次に露光してもよい。この場合、必要な色のライン光を通過させ、不要な色のライン光を遮断させる可動式の遮光板を設けることで、各色のライン光を順次に照射することができる。また、ミラー35R〜ミラー35Bを回動させ、反射角度を変更できる可動ミラーとして構成し、必要な色の光のみを感光材料に照射すればよい。本発明は、インスタントフイルムを露光する露光ヘッドに限らず、印画紙や写真フイルムなどのその他の感光材料に画像を記録する露光装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】インスタント写真プリンタの概略構成図である。
【図2】露光ヘッドの断面図である。
【図3】インスタントフイルムの発色感度特性曲線と、露光に使用する光の波長域の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0032】
10 インスタント写真プリンタ
11 インスタントフイルム
11a 現像液ポッド
12 フイルムパック
13 パック装填室
14 開閉蓋
16 押圧開口
17 フイルム押圧突起
17a 先端部
20 フイルム掻き出し爪
21 フイルム送出口
22 搬送ローラ対
23 展開ローラ対
25 露光ヘッド
30 光源部
31 液晶シャッタ
31R,31G,31B 液晶アレイ
32 三角プリズム
32a 入射面
32b 出射面
33 スリット
34 波長選択板
35R,35G,35B ミラー
36 画像光照射口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光記録媒体を感光させる光を放出する光源と、光源からの光を波長ごとに分散させる光分散手段と、分散された光から特定の波長の光を取り出すための開口部を有する波長選択手段とを備え、前記開口部により取り出された光を前記感光記録媒体に照射することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記開口部はスリットであることを特徴とする請求項1記載の露光装置。
【請求項3】
前記波長選択手段は複数のスリットを有し、各スリットの位置に応じて異なる波長の光が取り出されることを特徴とする請求項2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記光分散手段は、光の入射面と出射面とが非平行であるプリズムからなることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の露光装置。
【請求項5】
前記光源と前記プリズムとの間には光源から放出される光の量を画素単位で調節する光量調節手段を備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の露光装置。
【請求項6】
前記光源は白色光源であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−248866(P2007−248866A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72946(P2006−72946)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】