説明

露光装置

【課題】 精度が高く、露光時間も短縮できる露光装置を提供する。
【解決手段】 露光テーブル1を上昇させ、フィルムマスク2と基板90を接触させ、密閉空間40を形成し、減圧ポンプ60により減圧し、フィルムマスク2と基板90の1次密着を行う。次に導入孔52から1kpa以上20kpa以下の範囲の加圧空気を導入し、フィルムマスク2とガラス30の間に加圧空間25を形成し、フィルムマスク2と基板90を更に密着させ、2次密着を行う。1次密着で、フィルムマスク2と基板90は既に密着した状態であるため、導入孔52からの空気の導入量は微少で良く、加圧による膨出量も微少であり、短時間で導入が完了し、フィルムマスク2の膨張による変形などの弊害がない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プリント配線基板用の露光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線基板は、近年露光装置を用いて製造されており、フォトレジストなどの感光材料を塗布した基板表面に所定のパターンを該露光装置により感光焼き付けし、その後エッチング工程により基板上にパターンを形成するフォトリソグラフィ法が用いられている。
この露光装置において、パターン原画が描かれた原版として樹脂フィルムマスクが主として用いられ、このフィルムマスクをガラス製のマスクホルダに保持して用いることが一般的である。また該フィルムマスクと基板との密着性を高めるため、両者の間を真空に引いて密着させる所謂真空密着方法が採用されることが多い。
この真空密着方式では、基板表面が平らな場合有効であるが、基板表面に凹凸やうねりがあると、基板に対してマスクが追従せず装着不良となることがある。
そのため、真空密着後にフィルムマスクとマスクホルダとの間を大気開放して、基板に対してフィルムマスクを追従させる試み(特許文献1)や、真空密着前に予めフィルムマスクの背面側に空気を導入し加圧しておく方法(特許文献2)などが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−333555号公報
【特許文献2】特開平8−50357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のフィルムマスクとマスクホルダの間を大気開放する方法の場合、圧力が不足であるため十分なフィルムマスクの密着は得られない問題があった。また、大気圧という一定の圧力しか使用できず、圧力を変えることにより種々の条件に応じて最良の密着性を得ることが難しい問題があった。
一方特許文献2の真空密着前に予めフィルムマスクの背面側を加圧しておく構成の場合、加圧に時間がかかりフィルムを密着させる工程の長時間化を招く問題がある。また、フィルムマスクの伸びなどの変形が生じる可能性もあるなどの問題があった。
本発明は上記従来技術の問題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の露光装置は露光される基板を載置する露光テーブルと、露光される基板に露光すべきパターンを描いたフィルムマスクと、該フィルムマスクを前記露光テーブル側の面において、フィルムマスクの周囲を密着させ、フィルムマスクとの間に流体を導入可能に支持するマスクホルダと、前記露光テーブルとマスクホルダを近接させる動力装置と、前記近接により、前記露光テーブルとマスクホルダとの間をシールして、前記基板とフィルムマスクとを収納する密閉空間を形成するシール装置と、前記密閉空間を減圧し、前記フィルムマスクと基板とを1次的に密着させる1次密着手段と、前記減圧手段による一次密着後に前記フィルムマスクと前記マスクホルダの間に所定の圧力で流体を導入し、前記フィルムマスクと基板とを更に密着させる2次密着手段と、を有することを特徴とする。
上記構成において、1次密着手段によりフィルムマスクと基板が密着した状態で2次密着手段による流体の導入がなされるため、流体の導入量が少なく、導入時間を大幅に短縮できる。しかも、密着した状態でフィルムマスクを加圧するため、フィルムマスクの伸びや変形などが生じにくい。
また、導入する流体の所定の圧力を変えることにより、種々の条件に対応して最良の密着性を得ることが可能である。
前記所定の圧力としては、1kpa以上20kpa以下とする。1kpa以下であると十分な密着効果が得られず、また20kpa以上であるとガラスの破損などの危険があるためである。
また、更に好ましくは2kpa以上10kpa以下の範囲内で選択する。前記したように流体の圧力は種々の条件に応じて選択されるが、2kpa以上10kpa以下の範囲内で最も良好な密着性を得ることが可能である。
また1kpa以上20kpa以下の圧力を一定に保つ調圧装置を更に備えるのが望ましい。
【発明の効果】
【0006】
本発明の露光装置によれば、導入する流体の圧力を変えることにより条件に応じてフィルムマスクと基板の密着性を最良のものとすることが可能になるため、精度の高い露光が可能である。また流体の導入による密着も短時間で行えるため露光時間も短縮でき、フィルムマスクの伸びや変形なども生じにくい等の効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明のプリント配線基板を製造用の露光装置の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1において、フォトレジストを施されたプリント配線用の基板90は露光テーブル1上に載置される。露光テーブル1はXY方向に移動可能で、また上下方向の昇降可能である。更に水平方向回動可能になっている。これらの移動、昇降及び回動機構については説明を省略する。
【0008】
回路パターンが描かれたフィルムマスク2は基板90に対向して設けられており、このフィルムマスク2と基板90とを密着させ、光源9からの露光により回路パターンを基板90に焼き付けるようなっている。
【0009】
なお、図1では露光テーブル1と基板90は上下方向に配設されているが、これに限定されるものではなく、逆であっても良いし、或いは露光テーブル1と基板90を垂直に立てて配設する構造も可能である。
また、基板90を移動させるのではなく露光テーブル1を移動させることも可能であり、更に両者を移動させるように構成することも可能である。
【0010】
フィルムマスク2はマスクホルダ3の基板90側に保持されている。マスクホルダ3は中央部にガラス30を有し、光源9からの光をガラス30で透過してフィルムマスク2に描かれたパターンを基板90上に焼き付けるように構成されている。
フィルムマスク2はその周囲の密着部20において、マスクホルダ3に密着しており、フィルムマスク2とマスクホルダ3(ガラス30)との間に流体を導入できるようになっている。
【0011】
フィルムマスク2とマスクホルダ3の間には加圧装置5により所定の圧力の空気を導入できるようになっている。前記密着部20の内側に導入孔52が開口しており、該導入孔52は調圧装置51を介してエアー源50と接続している。調圧装置51により所定の圧力の空気が導入孔52からガラス30とフィルムマスク2の間に導入される。フィルムマスク2は密着部20においてマスクホルダ3に密着しており、中心部側は密閉空間になっており、該導入された空気により基板90方向に膨出し、加圧空間25を形成するように構成されている。
【0012】
加圧装置5は制御装置8により制御されており、所定の圧力の空気をガラス30とフィルムマスク2の間に導入し、該圧力を所定時間維持するように構成されている。
導入する空気の圧力は、前記したように1kpa以上20kpa以下好ましくは2kpa以上10kpa以下の範囲内で選択する。
該圧力は加圧装置5により露光が終了するまで維持されるように構成されている。
【0013】
露光テーブル1の周囲にはシール部材4が設けられており、露光テーブル1とマスクホルダ3の間の空間を密閉空間40とするように構成されている。即ち、露光テーブル1をマスクホルダ3方向に上昇させると、シール部材4がマスクホルダ3と接触し、露光テーブル1とマスクホルダ3の間をシールして密閉空間40を形成するようになっている。
【0014】
露光テーブル1には減圧装置6が接続しており、減圧孔61が密閉空間40内に開口している。減圧孔61は減圧ポンプ60に接続しており、減圧ポンプ60の駆動により密閉空間40が減圧されるように構成されている。減圧装置6も制御装置8により制御されている。
【0015】
以上の構成において、露光テーブル1上に基板90が載置されると、露光テーブル1をXY及びθ方向に移動して基板90とフィルムマスク2の位置合わせを行う。次に露光テーブル1を上昇させ、シール部材4とマスクホルダ3を接触させて密閉空間40を形成し、同時にフィルムマスク2と基板90を接触させ、更に減圧装置6を制御して減圧ポンプ60を駆動させて、密閉空間40を減圧する。この減圧によりフィルムマスク2と基板90の1次密着が行われる。
図3は1次密着の状態を模式的に示すものである。基板90に凹部91などがあると、密閉空間40の減圧だけでは凹部91部分においてフィルムマスク2が密着しない。
【0016】
次に、加圧装置5を稼働して、図2に示すように、導入孔52から所定圧の空気を導入し、フィルムマスク2とガラス30の間に加圧空間25を形成し、フィルムマスク2と基板90を更に密着させる。これを2次密着とする。図4は2次密着の状態を模式的に示すもので、凹部91にもフィルムマスク2が追随して密着する。
1次密着で、フィルムマスク2と基板90は既に密着した状態であるため、導入孔52からの空気の導入量は極めて微少で良く、短時間で導入が完了する。また、フィルムマスク2が密着した状態であるため、加圧による膨出量も微小であり、加圧空間25の容積も微小である。そのためフィルムマスク2の膨張による変形などの弊害がない。
【0017】
制御装置8は調圧装置51を制御して加圧空間25の圧力を維持し、フィルムマスク2の密着状態を維持する。
なお、基板90の表面の状態など種々の条件に応じて調圧装置51を制御して導入する空気の圧力を調整可能であり、条件に応じた最適な2次密着を実現することが可能である。
【0018】
図2の状態で、光源9からの光により露光を行い、加圧装置5と減圧装置6の駆動を停止し、露光テーブル1を下降させて基板90を取り出し、次工程に送り、露光を終了する。
【0019】
図5に他の実施形態を示す。この実施形態では、加圧フィルム7を用いており、加圧フィルム7をマスクホルダ3に密着部20において貼着し、フィルムマスク2を加圧フィルム7上に装着する構成になっている。
この構成の場合、フィルムマスク2の周囲をマスクホルダ3に密着させる必要がないため、フィルムマスク2の装着及び取り外しが容易になり、交換が簡単になる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態を示す概略図。
【図2】本発明の一実施形態の動作を示す説明図。
【図3】本発明の一実施形態の動作を示す説明図。
【図4】本発明の一実施形態の動作を示す説明図。
【図5】本発明の他の実施形態を示す概略図。
【符号の説明】
【0021】
1:露光テーブル、2:フィルムマスク、3:マスクホルダ、4:シール部材、5:加圧装置、6:減圧装置、7:加圧フィルム、8:制御装置、9:光源、20:密着部、25:加圧空間、30:ガラス、40:密閉空間、50:エアー源、51:調圧装置、52:導入孔、60:減圧ポンプ、61:減圧孔、90:基板、91:凹部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光される基板を載置する露光テーブルと、
露光される基板に露光すべきパターンを描いたフィルムマスクと、
該フィルムマスクを前記露光テーブル側の面において、フィルムマスクの周囲を密着させ、フィルムマスクとの間に流体を導入可能に支持するマスクホルダと、
前記露光テーブルとマスクホルダを近接させる動力装置と、
前記近接により、前記露光テーブルとマスクホルダとの間をシールして、前記基板とフィルムマスクとを収納する密閉空間を形成するシール装置と、
前記密閉空間を減圧し、前記フィルムマスクと基板とを1次的に密着させる1次密着手段と、
前記減圧手段による一次密着後に前記フィルムマスクと前記マスクホルダの間に所定の圧力で流体を導入し、前記フィルムマスクと基板とを更に密着させる2次密着手段と、
を有することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記所定の圧力が、1kpa以上20kpa以下である、
請求項1の露光装置。
【請求項3】
前記2次密着手段が、1kpa以上20kpa以下の所定の圧力の流体を導入し、該圧力を一定に保つ調圧装置を更に備えた、
請求項1の露光装置。
【請求項4】
前記フィルムマスクとマスクホルダの間に設けられた、フィルムマスクを基板に対して押し付けるための加圧用フィルム、を更に備えた、
請求項1の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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