青果物用緩衝体
【課題】大きさの異なる青果物であっても、予め設定された個数で青果物を一個ずつ確実に保持した状態で収納することができ、しかもその収納作業を容易迅速に行うことができる青果物用緩衝体を提供する。
【解決手段】青果物を一個ずつ収納する複数の凹部６を備え、該各凹部６が、青果物を下方から支持する底壁面７Ａと、青果物を水平方向から支持するべく、該底壁面７Ａから立ち上げられた側壁面８Ａとを備え、前記側壁面８Ａに青果物との当接により変形可能な突起９，１０，１１，１２，１３を備えた。
【解決手段】青果物を一個ずつ収納する複数の凹部６を備え、該各凹部６が、青果物を下方から支持する底壁面７Ａと、青果物を水平方向から支持するべく、該底壁面７Ａから立ち上げられた側壁面８Ａとを備え、前記側壁面８Ａに青果物との当接により変形可能な突起９，１０，１１，１２，１３を備えた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、苺、桃、プチトマト、トマト等の青果物を出荷する際に用いられる青果物用緩衝体に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、紙箱や木箱等に青果物を入れて出荷する際には、箱内に緩衝体を介して青果物を収納することによって、輸送時等において青果物の表面を傷付けることがないようにしている。
【０００３】
そして、前記緩衝体としては、軟質ポリウレタン発泡シートの表面に青果物を一個ずつ収納するための複数の凹部を形成したものが提案されている（例えば、特許文献１参照）。
【０００４】
ところで、ほぼ同じ重量の青果物を選定し、それら選定した青果物を箱詰めして出荷することが行われているが、重量がほぼ同じでも、大きさが大きく異なる青果物が存在することがある。このような場合、特許文献１の緩衝体では、青果物を収納する凹部が、青果物の大きさに応じて予め定められた形状に構成されているため、凹部よりも大きな青果物は凹部から食み出してしまう、また凹部よりも小さな青果物は凹部と青果物との間に隙間が発生してしまい、青果物を確実に凹部に保持することができない場合が発生していた。このため、青果物が箱内で移動してしまい、青果物の表面を傷付けてしまうことを十分に回避することができない。
【０００５】
そこで、大きさの異なる青果物を収納することができる緩衝体も提案されている。この緩衝体は、青果物に押されて変形するクッション性と厚みを有したシート状のものからなり、青果物の下に敷設される敷設ライン部と、この敷設ライン部の間に立ち上げられて青果物を仕切る縦壁部とが交互に設けられ、これら縦壁部間に青果物の複数個を併設して保持させることができるように構成されている。そして、大きさの異なる青果物を収納する場合には、縦壁部の高さを変更することによって、縦壁部間の間隔を変更することで青果物を載置する敷設ライン部の大きさを変更することができるようになっている（例えば、特許文献２参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】特開２００７−５５６４４号公報
【特許文献２】特許第３８５４９２８号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
上記特許文献２の構成では、青果物の大きさに合わせて敷設ライン部の大きさを変更できるものの、その変更は敷設ライン部毎にしかできず、個々の青果物に対して変更することができない。従って、大きさが多々異なるような青果物に対して敷設ライン部の大きさを調整しても、収納される全ての青果物を縦壁部間で良好に保持することができないという不都合がある。
【０００８】
また、敷設ライン部に収納できる青果物の個数が青果物の大きさによって変化してしまうため、予め設定された個数を収納することができず、使用しづらいものであった。
【０００９】
また、縦壁部の高さを変更するためには、折曲ライン部を折り曲げることになるが、青果物の大きさに合わせて縦壁部が所定高さになるように折曲ライン部を精度良く折り曲げなければならず、その折曲作業が非常に手間のかかる面倒な作業になっていた。
【００１０】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、大きさの異なる青果物であっても、予め設定された個数で青果物を一個ずつ確実に保持した状態で収納することができ、しかもその収納作業を容易迅速に行うことができる青果物用緩衝体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
本発明に係る青果物用緩衝体は、青果物を一個ずつ収納する複数の凹部を備え、該各凹部が、青果物を下方から支持する底壁面と、青果物を水平方向から支持するべく、該底壁面から立ち上げられた側壁面とを備え、前記側壁面に青果物との当接により変形可能な突起を備えたことを特徴とする。
【００１２】
本発明によれば、青果物を凹部に収納すると、青果物が凹部に備えた突起に当接し、その当接により突起が変形することで、青果物の大きさの違いを吸収しながらも、突起が青果物に当接して、青果物を一個ずつ凹部に確実に保持させた状態で収納することができ、青果物の表面が傷付けられることがない。
【００１３】
また、本発明に係る青果物用緩衝体においては、前記側壁面が、上下方向に沿う縦壁面からなり、前記突起が、該縦壁面の上下方向に沿う縦長状に構成されていてもよい。
【００１４】
かかる構成によれば、青果物の上下方向の形状に拘らず、縦長状の突起により青果物を上下方向において確実に当接させて凹部内に保持できる。
【００１５】
また、本発明に係る青果物用緩衝体においては、前記突起が、前記縦壁面の周方向に沿って所定間隔をおいて複数備えられ、それら複数の突起のうちの少なくとも一対の突起が対向するように該一対の突起を前記縦壁面に備えていてもよい。
【００１６】
かかる構成によれば、対向するように設けられた一対の突起により青果物を確実に当接して保持することができる。
【発明の効果】
【００１７】
以上の如く、本発明に係る青果物用緩衝体によれば、大きさの異なる青果物であっても、青果物を凹部に収納するだけで、凹部に備えた突起が変形することにより青果物を凹部に確実に保持した状態で収納することができることから、予め設定された個数で青果物を確実に保持した状態で収納することができるだけでなく、その収納作業も青果物を凹部に収納するだけで容易迅速に行うことができる青果物用緩衝体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１８】
【図１】本発明の一実施形態に係る青果物用緩衝体に青果物を収納して箱に入れた状態を示す正面図を示す。
【図２】同実施形態に係る青果物用緩衝体の平面図を示す。
【図３】同実施形態に係る青果物用緩衝体の一部を示す斜視図である。
【図４】同実施形態に係る青果物用緩衝体の一つの凹部に青果物を収納した状態を示し、（ａ）は小さな青果物を凹部に収納した平面図であり、（ｂ）は大きな青果物を凹部に収納した平面図を示す。
【図５】第２実施形態に係る青果物用緩衝体の一つの凹部に青果物を収納した状態を示し、（ａ）は小さな青果物を凹部に収納した平面図であり、（ｂ）は大きな青果物を凹部に収納した平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【００１９】
以下、本発明に係る青果物用緩衝体の一実施形態について、図１〜図３を参酌して説明する。
【００２０】
図１に示すように、木製（紙製またはプラスチック製でもよい）の箱本体１と、この箱本体１の上部開口部を閉じる木製（紙製またはプラスチック製でもよい）の蓋体２とからなる箱内に、長方形状の青果物用緩衝体３を介して複数の苺（青果物の一例）４を収納している。前記苺４が収納された青果物用緩衝体３には、上方から薄い紙又は薄い可撓性を有する合成樹脂フィルム等の覆い部材５が被せられている。
【００２１】
図２に示すように、前記青果物用緩衝体３には、全部で１５個の凹部６が、縦３列、横５列に配置され、各凹部６は、青果物用緩衝体３の短辺方向に対して所定角度斜めに傾いた状態で備えられ、それら１５個の凹部６に苺４を一個ずつ収納している。
【００２２】
また、前記青果物用緩衝体３は、長方形状で板状の底部７と、この底部７の上面に配置され、底部７と同一の外形寸法を有し、かつ、底部５よりも厚みが厚くなった長方形状の上側部８とで構成されている。
【００２３】
前記底部７は、その上面が偏平になっており、苺４を下方から支持する底壁面７Ａを構成している。
【００２４】
前記上側部８は、底壁面７Ａから上方に立ち上げられた複数（図では縦３列、横５列の合計１５個）の環状の側壁面８Ａが形成された枠体から構成されている。
【００２５】
そして、前記底部７の底壁面７Ａと前記上側部８の側壁面８Ａとから、苺４を一個ずつ収納する前記凹部６が形成されている。また、側壁面８Ａは上から見て苺４の外形に似たほぼ楕円形、又は長軸方向一端側の円弧の曲率と他端側の円弧の曲率とが異なった卵形に構成されている。
【００２６】
前記側壁面８Ａには、苺４との当接により変形可能な５個の突起９，１０，１１，１２，１３が備えられている。
【００２７】
また、前記側壁面８Ａは、図２及び図３に示すように、上下方向に沿う縦壁面からなり、前記突起９，１０，１１，１２，１３は、側壁面８Ａから突出側（凹部６の内方側）に先細りとなる山形状に形成され、かつ、その先端面９Ａ，１０Ａ，１１Ａ，１２Ａ，１３Ａが丸く形成され、しかも、側壁面８Ａの上下方向においてほぼ全域に渡る縦長状（棒状）に構成されている。
【００２８】
また、前記５個の突起９，１０，１１，１２，１３は、側壁面８Ａの周方向に沿って所定間隔を置いて備えられ、これら５個の突起９，１０，１１，１２，１３のうちの２個の突起９，１０がほぼ楕円形の側壁面８Ａのうちの長軸に沿った一方の側壁面８Ａに備え、これら２個の突起９，１０に対向するように他の２個の突起１１，１２がほぼ楕円形の側壁面８Ａのうちの長軸に沿った他方の側壁面８Ａに備えるとともに、残る１個の突起１３がほぼ楕円形の側壁面８Ａのうちの短軸に沿った一方（曲率半径が大きな側）の側壁面８Ａに備えている。
【００２９】
前記底部７及び前記上側部８のそれぞれは、発泡ウレタンフォームで形成され、形成された底部７の上面に上側部８を接着剤を介して一体化して、青果物用緩衝体３が構成されている。尚、前記上側部８は、まず発泡ウレタンフォームで板状体を形成し、その板状体を押し型で押し潰しながら板状体の１５箇所を打ち抜くことによって、板状体の１５箇所に側壁面８Ａ及び突起９，１０，１１，１２，１３が形成されて構成されている。
【００３０】
前記のように構成された青果物用緩衝体３に苺４を収納する場合について説明すれば、苺４の蔕４Ｈが側壁面８Ａの短軸に沿った一方（曲率半径が大きな側）の側壁面８Ａに備えた突起１３の先端に当接するように、苺４を凹部６に上方から収納させる。このとき、図４（ａ）に示すように、苺４の両側面４Ａ，４Ｂに前記２組の突起９，１０、１１，１２の先端が当接して苺４を支持した状態で凹部６内に保持される。これによって、例えば運搬時等に発生する振動を受けても、苺４が凹部６内で移動することを回避することができ、苺４の外面が傷付くことがないようにしている。尚、図４（ａ）では、苺４の蔕４Ｈ側とは反対側の先端部がどこにも当接していない状態にしているが、側壁面８Ａの短軸に沿った他方（曲率半径が小さな側）の側壁面８Ａに、突起を備えさせ、その突起に苺４の先端部を当接させてもよいし、側壁面８Ａに苺４の先端部が当接するように側壁面８Ａを変更してもよい。
【００３１】
また、前記苺４よりも大きな苺４Ｘを凹部６内に収納すると、図４（ｂ）に示すように、苺４の両側面４Ａ，４Ｂに当接する２組の突起９，１０、１１，１２の先端が側壁面８Ａ側に引っ込むように変形するとともに、苺４の蔕４Ｈ部分に当接する突起１３の先端が側壁面８Ａ側に引っ込むように変形することによって、苺４の大きさを吸収しながらも、大きな苺４を変形した突起９，１０、１１，１２，１３及び側壁面８Ａによって当接支持することができ、苺４を凹部６内に確実に保持した状態で収納することができる。そして、突起９，１０、１１，１２，１３が縦壁面８Ａの上下方向において全域に渡る縦長状に構成されていることから、苺４の配置状態や形状などに無関係に突起９，１０、１１，１２，１３を苺４に確実に当接させることができる。しかも、突起９，１０、１１，１２，１３の先端面９Ａ，１０Ａ，１１Ａ，１２Ａ，１３Ａが丸くなっているため、苺４への押圧力を可及的に小さくすることができ、苺４への損傷を最小限に抑えることができる。また、突起９，１０、１１，１２，１３が発泡ウレタンフォームで形成されていることから、苺４に当接するだけで容易に変形することができ、しかも突起９，１０、１１，１２，１３の復元力による押圧力を、苺４が損傷することがないような小さな押圧力に抑えることができる。また、発泡ウレタンフォームは通気性に優れており、特に青果物の輸送や保管に有効である。
【００３２】
尚、本発明に係る青果物用緩衝体は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【００３３】
例えば、図５（ａ），（ｂ）に示すように、側壁面８Ａに、苺４との当接により基端部を支点として揺動するように変形可能な６個の突起１４，１５，１６，１７，１８，１９が所定間隔を置いて設けられていてもよい。これら６個の突起のうちの３個の突起１４，１５，１８に対して残りの３個の突起１６，１７，１９が対向するように備えさせている。そして、突起１４，１５，１６，１７，１８，１９の先端面１４Ａ，１５Ａ，１６Ａ，１７Ａ，１８Ａ，１９Ａに当接する苺４を収納した場合には、図５（ａ）に示すように、その位置で苺４を当接支持することができる。また、前記苺４よりも大きな苺４Ｘを収納した場合には、図５（ｂ）に示すように、６個の突起１４，１５，１６，１７，１８，１９が基端部を支点として揺動し、６個の突起１４，１５，１６，１７，１８，１９の側面１４Ｂ，１５Ｂ，１６Ｂ，１７Ｂ，１８Ｂ，１９Ｂが苺４Ｘに当接することによって、苺４を凹部８に収納することができながらも、６個の突起１４，１５，１６，１７，１８，１９の復元力により苺４Ｘを凹部６内に確実に保持することができるようになっている。尚、苺４Ｘを凹部６から取り出すと、復元力により図５（ａ）に示す初期姿勢に復帰することができる。このように苺４との当接により基端部を支点として揺動するように変形可能な６個の突起１４，１５，１６，１７，１８，１９を備えさせる構成にすることによって、凹部６内での調節代を大きくすることができ、大きさが大きく異なる苺でも、寸法を良好に吸収し易い利点がある。
【００３４】
また、前記実施形態では、５個の突起を設けた場合を示したが、何個であってもよいし、また突起の形状及び大きさ並びに設置する位置は自由に変更することができる。
【００３５】
また、前記実施形態では、苺を収納する場合を示したが、桃、プチトマト、トマト等の各種の青果物を収納してもよい。また、平面視における側壁面８Ａの形状は、収納される青果物の外形に合わせて適宜変更することが好ましい。
【００３６】
また、前記実施形態では、上側部８を底部７の上面に接着剤を介して一体化することによって凹部６を備えた青果物用緩衝体を構成したが、金型を用いて凹部６を備えた青果物用緩衝体を一体成型することもできる。また、上側部８と底部７とを一体化せず別体で用いることもできる。
【００３７】
また、前記実施形態では、側壁面８Ａにのみ突起を備えさせたが、底壁面７Ａにも突起を備えさせて凹部６から青果物の一部が突出する突出量を調整できるように構成してもよい。
【００３８】
また、前記実施形態では、側壁面８Ａが上下方向に沿う縦壁面から構成したが、上端側ほど外側に位置するテーパー面から構成してもよいし、これとは逆に上端側ほど内側に位置するテーパー面から構成してもよいし、また湾曲面から構成してもよく、側壁面８Ａの構成は、自由に変更することができる。
【００３９】
また、前記実施形態では、凹部６を、青果物用緩衝体３の短辺方向に対して所定角度斜めに傾いた状態で備えさせたが、青果物用緩衝体３の短辺方向と平行又は直交するように備えさせてもよい。
【００４０】
また、前記実施形態では、発泡ウレタンフォームで青果物用緩衝体を形成したが、発泡ポリエチレンフォーム等の軟質発泡樹脂、発泡ゴム等、青果物との当接により容易に変形するものであれば、どのような材料であってもよい。
【００４１】
また、前記実施形態では、前記突起９，１０，１１，１２，１３を、側壁面８Ａの上端（上側部８の上面）から下端（底部７の底壁面７Ａ）に渡る長さに構成したが、突起９，１０，１１，１２，１３の上端が側壁面８Ａの上端に達していない構成であってもよいし、又突起９，１０，１１，１２，１３の下端が側壁面８Ａの下端に達していない構成であってもよいし、又突起９，１０，１１，１２，１３の上下端が側壁面８Ａの上下端に達していない構成であってもよい。また、前記突起９，１０，１１，１２，１３の凹部８の内方側への突出量が上下方向において同一になるように構成したが、例えば上側に向かうほど突出量が大きくなるようなテーパ形状にしたり、又下側に向かうほど突出量が大きくなるようなテーパ形状にしてもよいし、もちろん、上下方向で突出量が連続的に変化するように突起９，１０，１１，１２，１３を形成してもよいし、又、突起９，１０，１１，１２，１３の先端に、上下方向に所定間隔を置いて複数の凸部が存在する構成であってもよい。
【符号の説明】
【００４２】
１…箱本体、２…蓋体、３…青果物用緩衝体、４，４Ｘ…苺（青果物）、４Ｈ…蔕、４Ａ，４Ｂ…両側面、５…覆い部材、６…凹部、７…底部、７Ａ…底壁面、８…上側部（枠体）、８Ａ…側壁面（縦壁面）、９〜１９…突起、９Ａ〜１９Ａ…先端面
【技術分野】
【０００１】
本発明は、苺、桃、プチトマト、トマト等の青果物を出荷する際に用いられる青果物用緩衝体に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、紙箱や木箱等に青果物を入れて出荷する際には、箱内に緩衝体を介して青果物を収納することによって、輸送時等において青果物の表面を傷付けることがないようにしている。
【０００３】
そして、前記緩衝体としては、軟質ポリウレタン発泡シートの表面に青果物を一個ずつ収納するための複数の凹部を形成したものが提案されている（例えば、特許文献１参照）。
【０００４】
ところで、ほぼ同じ重量の青果物を選定し、それら選定した青果物を箱詰めして出荷することが行われているが、重量がほぼ同じでも、大きさが大きく異なる青果物が存在することがある。このような場合、特許文献１の緩衝体では、青果物を収納する凹部が、青果物の大きさに応じて予め定められた形状に構成されているため、凹部よりも大きな青果物は凹部から食み出してしまう、また凹部よりも小さな青果物は凹部と青果物との間に隙間が発生してしまい、青果物を確実に凹部に保持することができない場合が発生していた。このため、青果物が箱内で移動してしまい、青果物の表面を傷付けてしまうことを十分に回避することができない。
【０００５】
そこで、大きさの異なる青果物を収納することができる緩衝体も提案されている。この緩衝体は、青果物に押されて変形するクッション性と厚みを有したシート状のものからなり、青果物の下に敷設される敷設ライン部と、この敷設ライン部の間に立ち上げられて青果物を仕切る縦壁部とが交互に設けられ、これら縦壁部間に青果物の複数個を併設して保持させることができるように構成されている。そして、大きさの異なる青果物を収納する場合には、縦壁部の高さを変更することによって、縦壁部間の間隔を変更することで青果物を載置する敷設ライン部の大きさを変更することができるようになっている（例えば、特許文献２参照）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００６】
【特許文献１】特開２００７−５５６４４号公報
【特許文献２】特許第３８５４９２８号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【０００７】
上記特許文献２の構成では、青果物の大きさに合わせて敷設ライン部の大きさを変更できるものの、その変更は敷設ライン部毎にしかできず、個々の青果物に対して変更することができない。従って、大きさが多々異なるような青果物に対して敷設ライン部の大きさを調整しても、収納される全ての青果物を縦壁部間で良好に保持することができないという不都合がある。
【０００８】
また、敷設ライン部に収納できる青果物の個数が青果物の大きさによって変化してしまうため、予め設定された個数を収納することができず、使用しづらいものであった。
【０００９】
また、縦壁部の高さを変更するためには、折曲ライン部を折り曲げることになるが、青果物の大きさに合わせて縦壁部が所定高さになるように折曲ライン部を精度良く折り曲げなければならず、その折曲作業が非常に手間のかかる面倒な作業になっていた。
【００１０】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、大きさの異なる青果物であっても、予め設定された個数で青果物を一個ずつ確実に保持した状態で収納することができ、しかもその収納作業を容易迅速に行うことができる青果物用緩衝体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【００１１】
本発明に係る青果物用緩衝体は、青果物を一個ずつ収納する複数の凹部を備え、該各凹部が、青果物を下方から支持する底壁面と、青果物を水平方向から支持するべく、該底壁面から立ち上げられた側壁面とを備え、前記側壁面に青果物との当接により変形可能な突起を備えたことを特徴とする。
【００１２】
本発明によれば、青果物を凹部に収納すると、青果物が凹部に備えた突起に当接し、その当接により突起が変形することで、青果物の大きさの違いを吸収しながらも、突起が青果物に当接して、青果物を一個ずつ凹部に確実に保持させた状態で収納することができ、青果物の表面が傷付けられることがない。
【００１３】
また、本発明に係る青果物用緩衝体においては、前記側壁面が、上下方向に沿う縦壁面からなり、前記突起が、該縦壁面の上下方向に沿う縦長状に構成されていてもよい。
【００１４】
かかる構成によれば、青果物の上下方向の形状に拘らず、縦長状の突起により青果物を上下方向において確実に当接させて凹部内に保持できる。
【００１５】
また、本発明に係る青果物用緩衝体においては、前記突起が、前記縦壁面の周方向に沿って所定間隔をおいて複数備えられ、それら複数の突起のうちの少なくとも一対の突起が対向するように該一対の突起を前記縦壁面に備えていてもよい。
【００１６】
かかる構成によれば、対向するように設けられた一対の突起により青果物を確実に当接して保持することができる。
【発明の効果】
【００１７】
以上の如く、本発明に係る青果物用緩衝体によれば、大きさの異なる青果物であっても、青果物を凹部に収納するだけで、凹部に備えた突起が変形することにより青果物を凹部に確実に保持した状態で収納することができることから、予め設定された個数で青果物を確実に保持した状態で収納することができるだけでなく、その収納作業も青果物を凹部に収納するだけで容易迅速に行うことができる青果物用緩衝体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【００１８】
【図１】本発明の一実施形態に係る青果物用緩衝体に青果物を収納して箱に入れた状態を示す正面図を示す。
【図２】同実施形態に係る青果物用緩衝体の平面図を示す。
【図３】同実施形態に係る青果物用緩衝体の一部を示す斜視図である。
【図４】同実施形態に係る青果物用緩衝体の一つの凹部に青果物を収納した状態を示し、（ａ）は小さな青果物を凹部に収納した平面図であり、（ｂ）は大きな青果物を凹部に収納した平面図を示す。
【図５】第２実施形態に係る青果物用緩衝体の一つの凹部に青果物を収納した状態を示し、（ａ）は小さな青果物を凹部に収納した平面図であり、（ｂ）は大きな青果物を凹部に収納した平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【００１９】
以下、本発明に係る青果物用緩衝体の一実施形態について、図１〜図３を参酌して説明する。
【００２０】
図１に示すように、木製（紙製またはプラスチック製でもよい）の箱本体１と、この箱本体１の上部開口部を閉じる木製（紙製またはプラスチック製でもよい）の蓋体２とからなる箱内に、長方形状の青果物用緩衝体３を介して複数の苺（青果物の一例）４を収納している。前記苺４が収納された青果物用緩衝体３には、上方から薄い紙又は薄い可撓性を有する合成樹脂フィルム等の覆い部材５が被せられている。
【００２１】
図２に示すように、前記青果物用緩衝体３には、全部で１５個の凹部６が、縦３列、横５列に配置され、各凹部６は、青果物用緩衝体３の短辺方向に対して所定角度斜めに傾いた状態で備えられ、それら１５個の凹部６に苺４を一個ずつ収納している。
【００２２】
また、前記青果物用緩衝体３は、長方形状で板状の底部７と、この底部７の上面に配置され、底部７と同一の外形寸法を有し、かつ、底部５よりも厚みが厚くなった長方形状の上側部８とで構成されている。
【００２３】
前記底部７は、その上面が偏平になっており、苺４を下方から支持する底壁面７Ａを構成している。
【００２４】
前記上側部８は、底壁面７Ａから上方に立ち上げられた複数（図では縦３列、横５列の合計１５個）の環状の側壁面８Ａが形成された枠体から構成されている。
【００２５】
そして、前記底部７の底壁面７Ａと前記上側部８の側壁面８Ａとから、苺４を一個ずつ収納する前記凹部６が形成されている。また、側壁面８Ａは上から見て苺４の外形に似たほぼ楕円形、又は長軸方向一端側の円弧の曲率と他端側の円弧の曲率とが異なった卵形に構成されている。
【００２６】
前記側壁面８Ａには、苺４との当接により変形可能な５個の突起９，１０，１１，１２，１３が備えられている。
【００２７】
また、前記側壁面８Ａは、図２及び図３に示すように、上下方向に沿う縦壁面からなり、前記突起９，１０，１１，１２，１３は、側壁面８Ａから突出側（凹部６の内方側）に先細りとなる山形状に形成され、かつ、その先端面９Ａ，１０Ａ，１１Ａ，１２Ａ，１３Ａが丸く形成され、しかも、側壁面８Ａの上下方向においてほぼ全域に渡る縦長状（棒状）に構成されている。
【００２８】
また、前記５個の突起９，１０，１１，１２，１３は、側壁面８Ａの周方向に沿って所定間隔を置いて備えられ、これら５個の突起９，１０，１１，１２，１３のうちの２個の突起９，１０がほぼ楕円形の側壁面８Ａのうちの長軸に沿った一方の側壁面８Ａに備え、これら２個の突起９，１０に対向するように他の２個の突起１１，１２がほぼ楕円形の側壁面８Ａのうちの長軸に沿った他方の側壁面８Ａに備えるとともに、残る１個の突起１３がほぼ楕円形の側壁面８Ａのうちの短軸に沿った一方（曲率半径が大きな側）の側壁面８Ａに備えている。
【００２９】
前記底部７及び前記上側部８のそれぞれは、発泡ウレタンフォームで形成され、形成された底部７の上面に上側部８を接着剤を介して一体化して、青果物用緩衝体３が構成されている。尚、前記上側部８は、まず発泡ウレタンフォームで板状体を形成し、その板状体を押し型で押し潰しながら板状体の１５箇所を打ち抜くことによって、板状体の１５箇所に側壁面８Ａ及び突起９，１０，１１，１２，１３が形成されて構成されている。
【００３０】
前記のように構成された青果物用緩衝体３に苺４を収納する場合について説明すれば、苺４の蔕４Ｈが側壁面８Ａの短軸に沿った一方（曲率半径が大きな側）の側壁面８Ａに備えた突起１３の先端に当接するように、苺４を凹部６に上方から収納させる。このとき、図４（ａ）に示すように、苺４の両側面４Ａ，４Ｂに前記２組の突起９，１０、１１，１２の先端が当接して苺４を支持した状態で凹部６内に保持される。これによって、例えば運搬時等に発生する振動を受けても、苺４が凹部６内で移動することを回避することができ、苺４の外面が傷付くことがないようにしている。尚、図４（ａ）では、苺４の蔕４Ｈ側とは反対側の先端部がどこにも当接していない状態にしているが、側壁面８Ａの短軸に沿った他方（曲率半径が小さな側）の側壁面８Ａに、突起を備えさせ、その突起に苺４の先端部を当接させてもよいし、側壁面８Ａに苺４の先端部が当接するように側壁面８Ａを変更してもよい。
【００３１】
また、前記苺４よりも大きな苺４Ｘを凹部６内に収納すると、図４（ｂ）に示すように、苺４の両側面４Ａ，４Ｂに当接する２組の突起９，１０、１１，１２の先端が側壁面８Ａ側に引っ込むように変形するとともに、苺４の蔕４Ｈ部分に当接する突起１３の先端が側壁面８Ａ側に引っ込むように変形することによって、苺４の大きさを吸収しながらも、大きな苺４を変形した突起９，１０、１１，１２，１３及び側壁面８Ａによって当接支持することができ、苺４を凹部６内に確実に保持した状態で収納することができる。そして、突起９，１０、１１，１２，１３が縦壁面８Ａの上下方向において全域に渡る縦長状に構成されていることから、苺４の配置状態や形状などに無関係に突起９，１０、１１，１２，１３を苺４に確実に当接させることができる。しかも、突起９，１０、１１，１２，１３の先端面９Ａ，１０Ａ，１１Ａ，１２Ａ，１３Ａが丸くなっているため、苺４への押圧力を可及的に小さくすることができ、苺４への損傷を最小限に抑えることができる。また、突起９，１０、１１，１２，１３が発泡ウレタンフォームで形成されていることから、苺４に当接するだけで容易に変形することができ、しかも突起９，１０、１１，１２，１３の復元力による押圧力を、苺４が損傷することがないような小さな押圧力に抑えることができる。また、発泡ウレタンフォームは通気性に優れており、特に青果物の輸送や保管に有効である。
【００３２】
尚、本発明に係る青果物用緩衝体は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【００３３】
例えば、図５（ａ），（ｂ）に示すように、側壁面８Ａに、苺４との当接により基端部を支点として揺動するように変形可能な６個の突起１４，１５，１６，１７，１８，１９が所定間隔を置いて設けられていてもよい。これら６個の突起のうちの３個の突起１４，１５，１８に対して残りの３個の突起１６，１７，１９が対向するように備えさせている。そして、突起１４，１５，１６，１７，１８，１９の先端面１４Ａ，１５Ａ，１６Ａ，１７Ａ，１８Ａ，１９Ａに当接する苺４を収納した場合には、図５（ａ）に示すように、その位置で苺４を当接支持することができる。また、前記苺４よりも大きな苺４Ｘを収納した場合には、図５（ｂ）に示すように、６個の突起１４，１５，１６，１７，１８，１９が基端部を支点として揺動し、６個の突起１４，１５，１６，１７，１８，１９の側面１４Ｂ，１５Ｂ，１６Ｂ，１７Ｂ，１８Ｂ，１９Ｂが苺４Ｘに当接することによって、苺４を凹部８に収納することができながらも、６個の突起１４，１５，１６，１７，１８，１９の復元力により苺４Ｘを凹部６内に確実に保持することができるようになっている。尚、苺４Ｘを凹部６から取り出すと、復元力により図５（ａ）に示す初期姿勢に復帰することができる。このように苺４との当接により基端部を支点として揺動するように変形可能な６個の突起１４，１５，１６，１７，１８，１９を備えさせる構成にすることによって、凹部６内での調節代を大きくすることができ、大きさが大きく異なる苺でも、寸法を良好に吸収し易い利点がある。
【００３４】
また、前記実施形態では、５個の突起を設けた場合を示したが、何個であってもよいし、また突起の形状及び大きさ並びに設置する位置は自由に変更することができる。
【００３５】
また、前記実施形態では、苺を収納する場合を示したが、桃、プチトマト、トマト等の各種の青果物を収納してもよい。また、平面視における側壁面８Ａの形状は、収納される青果物の外形に合わせて適宜変更することが好ましい。
【００３６】
また、前記実施形態では、上側部８を底部７の上面に接着剤を介して一体化することによって凹部６を備えた青果物用緩衝体を構成したが、金型を用いて凹部６を備えた青果物用緩衝体を一体成型することもできる。また、上側部８と底部７とを一体化せず別体で用いることもできる。
【００３７】
また、前記実施形態では、側壁面８Ａにのみ突起を備えさせたが、底壁面７Ａにも突起を備えさせて凹部６から青果物の一部が突出する突出量を調整できるように構成してもよい。
【００３８】
また、前記実施形態では、側壁面８Ａが上下方向に沿う縦壁面から構成したが、上端側ほど外側に位置するテーパー面から構成してもよいし、これとは逆に上端側ほど内側に位置するテーパー面から構成してもよいし、また湾曲面から構成してもよく、側壁面８Ａの構成は、自由に変更することができる。
【００３９】
また、前記実施形態では、凹部６を、青果物用緩衝体３の短辺方向に対して所定角度斜めに傾いた状態で備えさせたが、青果物用緩衝体３の短辺方向と平行又は直交するように備えさせてもよい。
【００４０】
また、前記実施形態では、発泡ウレタンフォームで青果物用緩衝体を形成したが、発泡ポリエチレンフォーム等の軟質発泡樹脂、発泡ゴム等、青果物との当接により容易に変形するものであれば、どのような材料であってもよい。
【００４１】
また、前記実施形態では、前記突起９，１０，１１，１２，１３を、側壁面８Ａの上端（上側部８の上面）から下端（底部７の底壁面７Ａ）に渡る長さに構成したが、突起９，１０，１１，１２，１３の上端が側壁面８Ａの上端に達していない構成であってもよいし、又突起９，１０，１１，１２，１３の下端が側壁面８Ａの下端に達していない構成であってもよいし、又突起９，１０，１１，１２，１３の上下端が側壁面８Ａの上下端に達していない構成であってもよい。また、前記突起９，１０，１１，１２，１３の凹部８の内方側への突出量が上下方向において同一になるように構成したが、例えば上側に向かうほど突出量が大きくなるようなテーパ形状にしたり、又下側に向かうほど突出量が大きくなるようなテーパ形状にしてもよいし、もちろん、上下方向で突出量が連続的に変化するように突起９，１０，１１，１２，１３を形成してもよいし、又、突起９，１０，１１，１２，１３の先端に、上下方向に所定間隔を置いて複数の凸部が存在する構成であってもよい。
【符号の説明】
【００４２】
１…箱本体、２…蓋体、３…青果物用緩衝体、４，４Ｘ…苺（青果物）、４Ｈ…蔕、４Ａ，４Ｂ…両側面、５…覆い部材、６…凹部、７…底部、７Ａ…底壁面、８…上側部（枠体）、８Ａ…側壁面（縦壁面）、９〜１９…突起、９Ａ〜１９Ａ…先端面
【特許請求の範囲】
【請求項１】
青果物を一個ずつ収納する複数の凹部を備え、該各凹部が、青果物を下方から支持する底壁面と、青果物を水平方向から支持するべく、該底壁面から立ち上げられた側壁面とを備え、前記側壁面に青果物との当接により変形可能な突起を備えたことを特徴とする青果物用緩衝体。
【請求項２】
前記側壁面が、上下方向に沿う縦壁面からなり、前記突起が、該縦壁面の上下方向に沿う縦長状に構成されていることを特徴とする請求項１に記載の青果物用緩衝体。
【請求項３】
前記突起が、前記縦壁面の周方向に沿って所定間隔をおいて複数備えられ、それら複数の突起のうちの少なくとも一対の突起が対向するように該一対の突起を前記縦壁面に備えたことを特徴とする請求項１又は２に記載の青果物用緩衝体。
【請求項１】
青果物を一個ずつ収納する複数の凹部を備え、該各凹部が、青果物を下方から支持する底壁面と、青果物を水平方向から支持するべく、該底壁面から立ち上げられた側壁面とを備え、前記側壁面に青果物との当接により変形可能な突起を備えたことを特徴とする青果物用緩衝体。
【請求項２】
前記側壁面が、上下方向に沿う縦壁面からなり、前記突起が、該縦壁面の上下方向に沿う縦長状に構成されていることを特徴とする請求項１に記載の青果物用緩衝体。
【請求項３】
前記突起が、前記縦壁面の周方向に沿って所定間隔をおいて複数備えられ、それら複数の突起のうちの少なくとも一対の突起が対向するように該一対の突起を前記縦壁面に備えたことを特徴とする請求項１又は２に記載の青果物用緩衝体。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【公開番号】特開２０１２−６６３８（Ｐ２０１２−６６３８Ａ）
【公開日】平成２４年１月１２日（２０１２．１．１２）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−１４４９４８（Ｐ２０１０−１４４９４８）
【出願日】平成２２年６月２５日（２０１０．６．２５）
【出願人】（０００００２４４０）積水化成品工業株式会社 (1,335)
【出願人】（５９２１４７１９２）セキスイウレタン加工株式会社 (7)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２４年１月１２日（２０１２．１．１２）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年６月２５日（２０１０．６．２５）
【出願人】（０００００２４４０）積水化成品工業株式会社 (1,335)
【出願人】（５９２１４７１９２）セキスイウレタン加工株式会社 (7)
【Ｆターム（参考）】
[ Back to top ]