説明

静止型噴霧混合器用の接続部

【課題】広い分野に利用でき操作が簡単な少なくとも2つの流動性成分を混合・噴霧する噴霧混合器用の接続部の提供。
【解決手段】接続部は、少なくとも1つの混合要素を有する管状の混合器ハウジング及び霧化スリーブを有する。混合器ハウジングが、長手方向軸線方向に成分用の出口開口部を有する遠位端まで延び、霧化スリーブが、加圧された霧化媒体用の入口通路、及び混合器ハウジングと別個の流路を形成できる複数の溝を有する内面を有する。接続部は、混合器ハウジングの遠位端領域と協働する入口領域、及び霧化スリーブと協働する出口領域を有し、入口領域と出口領域が零でない偏角αを形成し、出口領域が、入口領域から遠い端部に外輪郭が混合器ハウジング2の外輪郭と同じの末端部を有し、出口領域の末端部が、混合器ハウジングの遠位端領域が霧化スリーブと協働できるのと同じように霧化スリーブと協働することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載された、少なくとも2つの流動性成分を混合及び噴霧するための静止型噴霧混合器用の接続部に関するものである。本発明はさらに、その接続部と静止型噴霧混合器との組み合わせにも関するものである。
【背景技術】
【0002】
少なくとも2つの流動性成分を混合するための静止型混合器が、例えばEP−A−0749776及びEP−A−0815929に記載されている。これらのきわめて小型の混合器は、そうした混合器の構造が単純で材料を節約する設計であるにもかかわらず、特にシーリング・コンパウンド、2成分発泡体又は2成分接着剤などの高粘性の材料の混合にも良好な混合結果をもたらす。そうした静止型混合器は通常、使い捨て用に設計され、硬化製品にしばしば用いられるが、その場合、混合器は実用的には清浄化することができなくなる。
【0003】
そうした静止型混合器が使用されるいくつかの用途では、静止型混合器での混合後に、2つの成分を基体上に噴霧することが望ましい。このために、混合された成分は、混合器の出口で空気などの媒体の作用によって霧化され、次いで、噴霧ジェット又は噴霧ミストの形で所望の基体に付与することができる。特に、例えばポリウレタン、エポキシ樹脂などさらに高い粘性のコーティング媒体も、この技術を用いて処理することができる。
【0004】
そうした用途のための装置が、例えば米国特許第6,951,310号に開示されている。この装置には、静止型混合器用の混合要素を受け入れ、且つリング形のノズル本体がねじ込まれる雄ねじを一端に有する管状の混合器ハウジングが設けられる。ノズル本体も、同様に雄ねじを有する。その円錐面上に長手方向に延びる複数の溝を有する円錐形の噴霧器要素が、混合器ハウジングから突出する混合要素の端部上に配置される。この噴霧器要素の上でキャップが押されるが、キャップの内面も、噴霧器要素の円錐面に接触するように、同様に円錐形に設計されている。したがって溝は、噴霧器要素とキャップとの間に流路を形成する。キャップは、ノズル本体の雄ねじにねじ込まれる保持ナットによって、噴霧器要素と一緒にノズル本体に固定される。ノズル本体は、圧縮空気用の接続部を有する。動作時には、圧縮空気が噴霧器要素とキャップとの間の流路を通ってノズル本体から流出し、混合要素から放出される材料を霧化する。
【0005】
この装置が十分に機能的であることが完全に確かめられたとしても、その構造はきわめて複雑であり、設置は煩雑であり且つ/又は費用がかかる。したがって、特に装置を使い捨てにすることはあまり経済的ではない。
【0006】
ずっと単純な構成の静止型噴霧混合器が、Sulzer Mixpac AGの国際出願PCT/EP2011/057378(国際公開第2012/010337号)及びPCT/EP2011/057379(国際公開第2012/010338号)に開示されている。この噴霧混合器では、混合器ハウジング及び霧化ノズルが、それぞれ一体として作製され、流路を形成する溝が、霧化ノズルの内面又は混合器ハウジングの外面に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0749776号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0815929号明細書
【特許文献3】米国特許第6,951,310号明細書
【特許文献4】国際公開第2012/010337号
【特許文献5】国際公開第2012/010338号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、さらに広い適用分野に利用することができ、できるだけ簡単な操作が保証される、少なくとも2つの流動性成分を混合及び噴霧するための噴霧混合器を作製することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を満足する本発明の主題は、独立請求項の特徴部分によって記載されている。
【0010】
本発明によれば、少なくとも1つの混合要素を有する管状の混合器ハウジングとともに霧化スリーブを有する、少なくとも2つの流動性成分を混合及び噴霧するための静止型噴霧混合器用の接続部が提供される。混合器ハウジングは、長手方向軸線の方向に成分用の出口開口部を有する遠位端まで延び、霧化スリーブが、加圧された霧化媒体用の入口通路、並びに混合器ハウジングと共に別個の流路を形成することができる複数の溝を有する内面を有する。この接続部が、混合器ハウジングの遠位端領域と協働するための入口領域、並びに霧化スリーブと協働するための出口領域を有し、入口領域と出口領域がゼロとは異なる偏角を含み、出口領域が、入口領域から遠いほうの端部に外輪郭が混合器ハウジングの外輪郭と同じである末端部を有し、出口領域の末端部が、混合器ハウジングの遠位端領域が霧化スリーブと協働することができるのと同じ手段で、霧化スリーブと協働することができるようになっている。
【0011】
接続部によって、噴霧される面に近接するのがより難しい用途の場合に静止型噴霧混合器を使用することも、簡単な方法で可能になる。したがって、この接続部を用いて、例えば角部のまわりで噴射又は噴霧することが可能になる。これにより、そうした静止型噴霧混合器のさらに広い使用分野が開拓される。接続部の出口領域の末端部が、その外輪郭に関して混合器ハウジングの遠位端領域と同じ設計を有するため、この出口領域の末端部は、混合器ハウジングと同じく簡単に霧化スリーブと協働することが可能である。すなわち、接続部によって、同様に十分に均質な霧化、及び混合された成分が出る接続部の出口における安定した流体の流れが可能になる。
【0012】
実際的な経験により、入口領域と出口領域との間の偏角は、45〜135度の範囲、好ましくは60〜120度の範囲であれば望ましい。
【0013】
好ましい実施例では、入口領域と出口領域との間の偏角は90度であり、この形状では、多くの用途の場合に有利であることが分かっている。
【0014】
接続部の入口領域の内輪郭は、混合器ハウジングの遠位端領域に局所的に接触できるように寸法を決めることが好ましい。この手段によって接続部の確実な案内が保証され、混合器ハウジングの出口開口部と接続部との間での漏出を回避することができる。
【0015】
構造及び操作の面から特に単純であるため、入口領域が、ねじ山なしで、例えばスナップ・イン接続によって混合器ハウジングに接続可能であれば好ましい。
【0016】
同じ理由のために、出口領域が、ねじ山なしで、例えばスナップ・イン接続によって霧化スリーブに接続可能であれば好ましい。
【0017】
他の有利な手段は、出口領域が、入口領域に面するその端部に霧化スリーブに係合するように設計された端部プレートを有し、端部プレートによって、動作中の霧化媒体の漏出を防止するようにするものである。この端部プレートを用いて、接続部を霧化スリーブへの係合によって霧化スリーブに接続することができる。
【0018】
出口領域は、実質的に一定の内径を有する、混合された成分用の通路を含むことが好ましい。すなわちこの手段によって、接続部の端部の出口は混合器ハウジングの出口開口部を模したものになり、したがって出口において、混合された成分に対して出口開口部と同じ流れの関係が存在するようになる。
【0019】
さらに、端部プレートと出口領域の末端部との間に少なくとも1つの案内要素を設け、前記1つの案内要素の外径を混合器ハウジングの遠位端領域の外輪郭に合わせれば有利であることが分かっている。これにより、接続部の端部で圧力下において導入される霧化媒体に対する流れの関係が、接続部のない場合に混合器ハウジングの出口開口部に存在する流れの関係と類似する、又は同じになるようにすることができる。
【0020】
一具体例では、このために、複数のディスク形の案内要素のそれぞれが1列に配置して設けられ、それらの外径は混合器ハウジングの外径に合わせられる。すなわち、接続部の出口から特定の距離だけ離れたディスク形の案内要素が、混合器ハウジングの出口開口部から同じ距離にある場所で、混合器ハウジングと実質的に同じ外径を有する。
【0021】
他の請求項例によれば、その外径を混合器ハウジングの外径に合わせた、螺旋状の線として成形された案内要素が設けられる。
【0022】
本発明により、少なくとも2つの流動性成分を混合及び噴霧するための静止型噴霧混合器と本発明による接続部との組み合わせであって、静止型噴霧混合器が、少なくとも1つの混合要素を有する管状の混合器ハウジング並びに霧化スリーブを有し、混合器ハウジングが、長手方向軸線の方向に成分用の出口開口部を有する遠位端まで延び、霧化スリーブが、加圧された霧化媒体用の入口通路、並びに混合器ハウジングと共に別個の流路を形成することができる複数の別個の溝を有する内面を有する組み合わせがさらに提案される。
【0023】
好ましい組み合わせは、霧化スリーブが接続部のまわりで回転できるように、霧化スリーブを接続部に接続することができるものである。この手段によって、霧化媒体の供給を実質的にさらに柔軟に設計することが可能になる。
【0024】
接続部が混合器ハウジングと一体になるように、接続部が混合器ハウジングに対して成形されるような組み合わせを設計することも可能である。
【0025】
本発明のさらに有利な手段及び請求項例が、従属請求項から得られる。
【0026】
以下では、実施例及び図面を参照して、本発明をさらに詳しく説明する。図面は概略図として示され、また一部は断面において示される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】静止型噴霧混合器の一実施例の縦断面図。
【図2】図1の静止型噴霧混合器の遠位端領域の斜視断面図。
【図3】本発明による接続部の一実施例並びに静止型噴霧混合器の分解図の形の斜視図。
【図4】静止型噴霧混合器の混合器ハウジングの上に配置された、本発明による接続部の別の実施例の斜視図。
【図5】静止型噴霧混合器の混合器ハウジングの上に配置された、本発明による接続部の他の実施例の斜視図。
【図6】組み立てられた状態の静止型噴霧混合器と本発明による接続部との組み合わせの斜視図である。
【実施例】
【0028】
本発明をよく理解するために、まず図1及び図2を参照して、例えばSulzer Mixpac AGの欧州特許出願第1070141.5号に開示されるもののような静止型噴霧混合器について説明する。図1は、全体として参照番号100で示される静止型噴霧混合器の一実施例の縦断面図を示している。噴霧混合器100は、少なくとも2つの流動性成分を混合及び噴霧するように働く。図2は、静止型噴霧混合器100の遠位端領域の斜視断面図を示している。静止型噴霧混合器100のさらに詳しい説明に関しては、既に引用したSulzer Mixpac AGの2つの国際特許出願PCT/EP2011/057378(国際公開第2012/010337号)及びPCT/EP2011/057379(国際公開第2012/010338号)を参照する。
【0029】
以下では、特に実施に適した、正確に2つの成分を混合及び噴霧する場合について参照する。しかしながら、本発明を2つよりも多い成分の混合及び噴霧に用いることも可能であることが理解される。
【0030】
噴霧混合器100は、長手方向の軸線Aの方向に遠位端21まで延びる管状の一体型の混合器ハウジング2を含む。この点に関して、遠位端21とは、動作状態で混合された成分が混合器ハウジング2から出る端部を意味する。このために、遠位端21は出口開口部22を備えている。混合器ハウジング2は近位端に接続部23を有するが、近位端とは、混合される成分が混合器ハウジング2に導入される端部を意味し、混合器ハウジング2は、前記接続部によって成分用の保管容器に接続することができる。この保管容器は、例えば公知の2成分カートリッジとすること、同軸のカートリッジ若しくは並列のカートリッジとして設計すること、又は2つの成分を互いに別々に保管する2つのタンクとすることができる。接続部は、保管容器又はその出口の設計に応じて、例えばスナップ・イン接続、バイヨネット接続、ねじ付きの接続又はそれらの組み合わせとして設計される。
【0031】
2つの成分が、近位端から出口開口部22まで混合要素3を通って移動することしかできないように、少なくとも1つの静止型混合要素3が、公知の方法で混合器ハウジング2内に配置され、混合器ハウジング2の内壁に接触する。1列に配置された複数の混合要素3、又はこの実施例のように、好ましくは射出成形され、熱可塑性物質で作製された一体型の混合要素3を設けることができる。そうした静止型混合器又は混合要素3は、それ自体は当業者に十分知られており、したがって、さらに説明する必要はない。
【0032】
Sulzer Chemtech AG社(スイス)によって商標名QUADRO(登録商標)として販売されているものなどの混合器又は混合要素3が特に適切である。そうした混合要素は、例えば既に引用した文献EP−A−0749776(国際公開第2012/010337号)及びEP−A−0815929(国際公開第2012/010338号)に記載されている。Quadro(登録商標)タイプの混合要素3は、長手方向Aに垂直な長方形の断面、特に正方形の断面を有する。したがって、一体型の混合器ハウジング2も、少なくとも混合要素3を囲む領域では、長手方向の軸線Aに垂直な実質的に長方形、特に正方形の断面を有する。
【0033】
混合要素3は、混合器ハウジング2の遠位端21まで完全に延びるのではなく、混合器ハウジング2は正方形断面から円形断面への遷移によって得られる連接部25(図2参照)で終了する。したがって、流れの方向に見ると、混合器ハウジング2の内部空間はこの連接部25まで、混合要素3を受け入れるための実質的に正方形の断面を有する。この連接部25において、混合器ハウジング2の内部空間は併合し、混合器ハウジング2内の先細りする形を実現する円錐形になる。したがって、ここで内部空間は円形断面を有するようになり、遠位端21の方向に先細りし、そこで出口開口部22に通じる開始領域26を形成する。
【0034】
静止型噴霧混合器100はさらに、その端部領域に混合器ハウジング2を囲む内面を有する霧化スリーブ4を有する。霧化スリーブ4は一体として設計され、特に熱可塑性物質から射出成形されることが好ましい。霧化スリーブ4は、特に気体である加圧された霧化媒体用の入口通路41を有する。霧化媒体は圧縮空気であることが好ましい。入口通路41は、すべての周知の接続に対して、特にルアー・ロック用にも設計することができる。
【0035】
特に簡単な設置又は製造を可能にするために、霧化スリーブ4は、ねじ山のない方法で、この実施例ではスナップ・イン接続によって混合器ハウジングに接続することが好ましい。このために、混合器ハウジング2にフランジ状の隆起部24が設けられ(図2参照)、混合器ハウジング2の全周縁にわたって延びる。霧化スリーブ4の内面には周縁溝43が設けられ、隆起部24と協働するように設計される。霧化スリーブ4が混合器ハウジング2の上で押された場合、隆起部24が周縁溝43に嵌まり、霧化スリーブ4の混合器ハウジング2に対する安定した接続部を形成する。霧化媒体(ここでは圧縮空気)が、周縁溝43及び隆起部24を含むこの接続部を通って漏れることがないように、このスナップ・イン接続は封止可能に設計されることが好ましい。霧化スリーブ4の内面はさらに、入口通路41の開口部と隆起部24の間の領域で混合器ハウジング2の外面上にぴったりと位置し、これによっても、霧化媒体の漏出又は逆流を防止する封止効果が得られる。
【0036】
もちろん、混合器ハウジング2と霧化スリーブ4との間に、例えばOリングなどの追加の封止材を配置することも可能である。
【0037】
別法として、混合器ハウジング2に周縁溝を設け、霧化スリーブ4にこの周縁溝に係合する隆起部を設けることも可能である。
【0038】
霧化スリーブ4の内面に複数の溝5が設けられ、そのそれぞれが遠位端21へ延び、霧化スリーブ4と混合器ハウジング2との間に別個の流路を形成し、その流路を通って、霧化媒体が、霧化スリーブ4の入口通路41から混合器ハウジング2の遠位端21へ流れるようにすることができる。
【0039】
溝5は、湾曲させて例えば弓形として、若しくは直線として、又は湾曲部分と直線部分との組み合わせによっても設計することできる。溝5の特定の設計の可能性に関しては、既に引用した国際特許出願PCT/EP2011/057378(国際公開第2012/010337号)及びPCT/EP2011/057379(国際公開第2012/010338号)を参照する。
【0040】
霧化スリーブ4の内面は、混合器ハウジング2の遠位端領域27と協働するように設計される。溝5のそれぞれが、霧化スリーブ4の内面と混合器ハウジング2の外面との間に別個の流路を形成するように、溝5の間に設けられた霧化スリーブ4のリブ及び混合器ハウジング2の外面が、しっかりと封止する形で互いに接触する。
【0041】
さらに上流の入口通路41の開口部の領域(やはり図2参照)では、溝5の間のリブの高さが、混合器ハウジング2の外面と霧化スリーブ4の内面との間に環状の空間6が存在するように小さくなる。環状の空間6は、霧化スリーブ4の入口41と流体連通する。霧化媒体は、入口通路41から別個の流路の中まで環状の空間6を通って移動することができる。
【0042】
溝5は、霧化スリーブ4の内面全体に均一に分布させる。それは、出口開口部から出る混合された成分をできるだけ完全且つ均質に霧化することに関連して、溝5の出口開口部によって形成された圧縮空気の流れが渦を有する、すなわち、長手方向の軸線Aのまわりの螺旋状の線上での回転を有する場合に有利であることが分かっている。この渦は、圧縮空気の流れをかなり安定させる。ここでは圧縮空気である循環する霧化媒体は、渦によって安定化された、したがって、出口開口部22を出る混合された成分に対して均一に作用するジェットを発生させる。これにより、きわめて均一な且つ特に再現可能な噴霧パターンが得られる。この点において、できるだけ円錐形であり且つ渦によって安定化される圧縮空気のジェットが、特に好都合である。このきわめて均一且つ再現可能な空気の流れによって、利用に際して噴霧の損失(スプレーしぶき)が著しく小さくなる。
【0043】
遠位端21で別個の流路のそれぞれから出る個々の圧縮空気のジェット(又は霧化媒体のジェット)は、まずそれらの出口で分離した個々のジェットとして形成され、次いで一緒になり、それらの渦特性によって均一で安定した総体的なジェットを形成し、この総体的なジェットが、混合器ハウジングから出る混合された成分を霧化する。この総体的なジェットは、円錐形の広がりを有することが好ましい。
【0044】
霧化媒体の流れに渦を発生させるには、複数の手段が可能である。流路5を形成する溝5は、厳密に長手方向軸線Aによって規定される軸線方向に延びるのではなく、或いは長手方向軸線に向かって傾斜して延びるだけではなく、溝5の広がりは霧化スリーブ4の周方向の成分も有する。長手方向軸線Aに対する傾斜に加えて、溝5の広がりが、長手方向軸線Aのまわりで少なくともほぼ渦巻状、又は螺旋状の線の形になる。
【0045】
渦を発生させるための他の手段は、霧化媒体がそれを通って流路内に移動する、長手方向軸線Aに対して非対称な入口通路41を配置することである。入口通路41は、その中心軸線が長手方向軸線Aと交差しないが、長手方向軸線Aから垂直な空間を有するように配置される。この入口通路41の長手方向軸線Aに対して非対称な又は偏心した配置によって、霧化媒体、すなわちここでは圧縮空気は、環状の空間6への入口において長手方向軸線Aのまわりを回転移動する又は渦状に移動するように設定されるようになる。
【0046】
霧化媒体から出口開口部22を出る成分へのエネルギーの入力を増大させるには、流路5を、流れの方向に見るとまず狭くなり、その後広がる流れ断面を有するラバール・ノズルの原理に従って構成することが、特に有利な手段である。流れ断面をこのように狭くするには、2つの寸法、すなわち長手方向軸線Aに垂直な平面の2つの方向を利用することができる。図2では、少なくとも圧縮空気の流れの方向に対して、個々の流路が、ラバール・ノズルに典型的であるようにまず狭くなり、次いで再び広がることを理解することができる。
【0047】
霧化媒体として使用される空気には、最も狭い場所の下流で運動エネルギーをさらに作用させることも可能であり、したがって、ラバール・ノズルの原理による溝5又は流路の構成によって空気を加速させることができる。これは、ラバール・ノズルと同様に流れの方向に再び広がる流れ断面によって行われる。このため、霧化される成分にさらに高いエネルギーが入力されるようになる。さらにジェットは、このラバールの原理を実現することによって安定化される。それぞれの流路の分岐する開口部、すなわち再び広くなる開口部はさらに、ジェットの変動を回避する、又は少なくともかなり低減する明確な効果を有する。
【0048】
動作時には、この実施例は以下のように働く。静止型噴霧混合器は、その接続部23によって、例えば2成分カートリッジを備える、互いに分離した2つの成分を収容する保管容器に接続される。霧化スリーブ4の入口通路41は、霧化媒体の供給源、例えば圧縮空気の供給源に接続される。次に2つの成分が分配され、静止型噴霧混合器100の中に移動し、そこで混合要素3によって直接的に混合される。混合要素3を通って流れた後、2つの成分は均質に混合された材料として混合器ハウジング2の出口領域26を通って出口開口部22へ移動する。圧縮空気は、霧化スリーブ4の入口通路41を通り、霧化スリーブ4の内面と混合器ハウジング2の外面との間の環状の空間6に流入する。このプロセスでは非対称の配置によって与えられる渦を有するようになり、そこから流路を形成する溝5を通って、遠位端21、したがって混合器ハウジング2の出口開口部22へ移動する。ここでは渦によって安定化された圧縮空気の流れが、出口開口部22から出る混合された材料に衝突し、材料を均一に霧化し、噴霧ジェットとして処理される又は被覆される基体へ運ぶ。保管容器からの成分の分配が圧縮空気を用いて行われる、又は一部の用途では圧縮空気によって支援されるため、圧縮空気を霧化に用いることもできる。
【0049】
次に本発明によって、そうした静止型噴霧混合器と協働するように特別に設計された接続部が提案される。図3は、全体として参照番号1で示される本発明による接続部の一実施例並びに静止型噴霧混合器100の斜視図を、分解図の形で示している。接続部1は、具体的には(アダプタと同様の方法で)混合器ハウジング2の遠位端領域と霧化スリーブ4との間に配置されるように設計される。
【0050】
接続部1は、混合器ハウジング2の遠位端領域27と協働するための入口領域11、並びに霧化スリーブ4と協働するための出口領域12を含む。出口領域12は、混合された成分がそれを通って出ることができる出口14を含む。入口領域11及び出口領域12は、ゼロとは異なる偏角αを含む。これは、入口領域11がその方向に延びる軸線(ここでは混合器ハウジングの長手方向軸線A)と、出口領域12がその方向に延びる軸線Bとが、偏角αを含むことを意味する。偏角αは180°とも異なる。出口領域12は、入口領域から遠いその端部に外輪郭が混合器ハウジング2の外輪郭に等しい末端部13を有し、その結果、出口領域12の末端部13は、混合器ハウジング2の遠位端領域27と同じように霧化スリーブ4と協働することができるようになる。したがって、接続部1の出口領域12の末端部13が霧化スリーブ4と協働するとき、霧化スリーブ4と遠位端領域27との間の協働によって実現される明確な流れの機械的特性のすべてが、同じ質に維持される。これまで既に記述したものと同様の方法で、霧化媒体が同じように個々の圧縮空気のジェット(又は霧化媒体のジェット)の形でそれを通って出口端部へ移動する別個の流路が、出口領域12の末端部13と霧化スリーブ4との間の霧化スリーブ4の内面に、溝5によって形成される(図2参照)。そこでは圧縮空気のジェットが、まずそれらの出口で分離した個々のジェットとして形成され、次いでそれらの渦の負荷によって一緒になり、出口14から出る混合された成分を霧化する均一で安定した総体的なジェットになる。この総体的なジェットは、円錐形の広がりを有することが好ましい。
【0051】
したがって、出口領域12の末端部13は、混合器ハウジング2の遠位端に合ったものになる。
【0052】
接続部の助けにより、ゼロとは異なる偏角αによって、近接するのが難しい場所にも簡単な方法で噴霧を行うことができる。実際的な態様の下では、偏角αが45°〜135°の範囲内、特に60°〜120°の範囲内であれば好ましい。本明細書に記載する実施例では、偏角αは90°に等しく、それは多くの用途の場合に有利である。しかしながら、任意の他の偏角αも可能であることが理解される。
【0053】
動作のためには、接続部1の入口領域11が混合器ハウジング2の遠位端に接続され、霧化スリーブ4が接続部1の出口領域12の上に配置される。図6は、組み立てられた状態の実施例を示している。
【0054】
接続部1の入口領域11の内輪郭は、入口領域11が、混合器ハウジング2の遠位端領域27に局所的に接触するように寸法を決めることが好ましい。これにより、混合器ハウジング2から出る混合された成分が完全に接続部に流入し、混合器ハウジング2と接続部1の間で漏出が起こらないことが保証される。
【0055】
入口領域11は、混合器ハウジング2にねじ山なしで接続できることが好ましい。それは、こうすることによって特に簡単な操作が保証されるためである。入口領域11は、スナップ・イン接続を介して、したがって、図2を参照して記載した霧化スリーブ4を混合器ハウジング2に接続するのと同じ方法で、混合器ハウジングに接続されることが特に好ましい。このために、(図2の周縁溝43に対応する)周縁溝が、接続部の入口領域11の内面に(したがって、霧化スリーブ4について図2に示したものと同じ方法で)設けられ、この周縁溝は、混合器ハウジング2のフランジ状の隆起部24と協働するように設計される。入口領域11が混合器ハウジング2の上で押された場合、隆起部24が周縁溝に嵌まり、混合器ハウジング2の接続部1に対する安定した接続を形成する。このスナップ・イン接続は封止する方法として設計されることが好ましく、したがって、これによっても、混合された成分の漏出又は逆流を防止する封止効果が得られる。
【0056】
周縁溝及びそれに係合する隆起部24を介した接続部1の混合器ハウジング2への接続は、接続部1が混合器ハウジング2に対して長手方向軸線Aのまわりを回転することができ、それによって用途に対する柔軟性がさらに高められるという他の利点を有する。
【0057】
中間部1の出口領域12は、霧化スリーブ4にねじ山なしで接続できることが好ましい。好ましい接続は、スナップ・イン接続である。このために出口領域12は、入口領域11に面するその端部にディスク形の端部プレート15を有し、この端部プレートは、霧化スリーブ4の周縁溝43(図2)に封止するように、したがって、混合器ハウジング2の隆起部24について図2を参照して説明したものと同じ方法で係合することができるように設計される。この手段によって、動作中の望ましくない霧化媒体の漏出が効果的に回避される。
【0058】
端部プレート15及び周縁溝43を介した出口領域12と霧化スリーブ4との間の接続は、霧化スリーブ4が出口領域の周囲で軸線Bの方向のまわりで回転可能になり、動作時に、圧縮空気の供給又は霧化媒体の供給をすべての側方位置から行うことができるようになるという利点をさらに有する。
【0059】
出口領域12はさらに、出口14まで延び且つ実質的に一定の内径を有する、混合された成分用の中央通路16を有する。この手段によって、接続部1の出口14は混合器ハウジング2の出口開口部22に合ったものになる。この手段によって、接続部1の出口14における流れの機械的関係が、霧化スリーブが混合器ハウジング2の上に直接配置される場合と少なくともほぼ同じになることも保証される。したがって、接続部1のために噴霧プロセスの質について妥協する必要はない。
【0060】
接続部1と噴霧混合器100との組み合わせ(図6参照)の動作では、霧化媒体、例えば圧縮空気が、入口通路41を通して霧化スリーブ4に導入され、そこから端部プレート15を通る望ましくない後方への漏出が防止される接続部1の出口領域12に流入し、さらに通路16の外側に沿って末端部13へ移動し、そこで霧化スリーブ内の溝5及び末端部13によって形成された別個の流路に流入し、それを通って霧化媒体が出口14の領域内へ移動し、その領域でそこから出る混合された成分を霧化する。
【0061】
他の設計手段は、端部プレート15と出口領域12の末端部13との間に少なくとも1つの案内要素17を設け、この案内要素の外径を、混合器ハウジングの遠位端領域27の外輪郭に合わせることである。これは、(軸線Bによって定められる方向に対して)接続部1の出口14からある距離だけ離れた案内要素17が、混合器ハウジングの出口開口部22から同じ距離にある場所で、混合器ハウジング2と実質的に同じ外径を有することを意味する。この手段も、接続部1の端部において圧力下で導入される霧化媒体に対する流れの関係が、接続部1がない場合の混合器ハウジング2の出口開口部22における関係と類似する、又は同じになることに明確に寄与することができる。
【0062】
図3による実施例では、正確に1つの案内要素17が設けられる。この案内要素17はディスク形に設計され、案内要素17の接続部1の出口14からの距離と同じ距離だけ出口開口部22から離れた場所で、混合器ハウジング2と実質的に同じ外径を有する。
【0063】
本発明による接続部1の他の実施例が、図4及び図5にそれぞれ斜視図として示され、接続部1は混合器ハウジング2の上に配置されている。以下では、図3に示す実施例との相違点のみ説明し、そうでない場合には、図3の実施例に関して行った説明が、図4及び図5による実施例にも状況に応じて同様にあてはまる。
【0064】
図4による実施例では、複数の、すなわち4つのディスク形の案内要素17のそれぞれが、軸線Bによって定められる方向に対して1列に配置して設けられる。案内要素17の外径は、混合器ハウジング2の外径に合わせられる。
【0065】
図5による実施例では、螺旋状の案内要素17として設計された案内要素17が設けられる。案内要素17は螺旋状に通路17のまわりに延び、案内要素の外径は混合器ハウジング2の外径に合わせられる。
【0066】
図6は、動作のために組み合わせた状態の静止型噴霧混合器100と本発明による接続部の実施例の1つの組み合わせを、斜視図として示している。
【0067】
本発明による接続部1を、偏角αが別々のステップで又は連続的に変化できるように構成することも可能である。このために、入口領域と出口領域との間に、例えば関節式の接続部、例えばヒンジ又はボール・ソケット形軸継手を設けることができる。
【0068】
本発明による組み合わせに関する他の可能性は、接続部が混合器ハウジングと一体になるように、接続部1を混合器ハウジング2に対して成形することである。その場合、接続部1は、偏角α、すなわち例えば(混合器ハウジングの長手方向軸線Aに対して)90°だけ傾いた混合器ハウジング2の端部を形成する。技術的な製造の面から、そうした一体型の実施例を実現することは問題ではない。これは、例えば射出成形プロセスを用いて実施可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの混合要素(3)を有する管状の混合器ハウジング(2)及び霧化スリーブ(4)を有する、少なくとも2つの流動性成分を混合及び噴霧するための静止型噴霧混合器用の接続部において、
前記混合器ハウジング(2)が、長手方向軸線(A)の方向に前記成分用の出口開口部(22)を有する遠位端(21)まで延び、
前記霧化スリーブ(4)が、加圧された霧化媒体用の入口通路(41)、及び前記混合器ハウジング(2)と共に別個の流路を形成することができる複数の別個の溝(5)を有する内面を有し、
前記接続部が、前記混合器ハウジング(2)の遠位端領域(27)と協働するための入口領域(11)、及び前記霧化スリーブ(4)と協働するための出口領域(12)を有し、前記入口領域(11)と前記出口領域(12)とがゼロとは異なる偏角(α)を形成し、
前記出口領域(12)が、前記入口領域(11)から遠いほうの端部に外輪郭が前記混合器ハウジング(2)の外輪郭と同じである末端部(13)を有し、前記出口領域(12)の前記末端部(13)は、前記混合器ハウジング(2)の前記遠位端領域(27)が前記霧化スリーブ(4)と協働することができるのと同じ手段で、前記霧化スリーブ(4)と協働することができるようになっている、接続部。
【請求項2】
前記入口領域(11)と前記出口領域(12)との間の前記偏角(α)が、45〜135度の範囲、好ましくは60〜120度の範囲である請求項1に記載された接続部。
【請求項3】
前記入口領域(11)と前記出口領域(12)との間の前記偏角(α)が90度である請求項1又は請求項2に記載された接続部。
【請求項4】
前記入口領域(11)の内輪郭が、前記混合器ハウジング(2)の前記遠位端領域(27)に局所的に接触できるように寸法を決められている請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載された接続部。
【請求項5】
前記入口領域(11)が、ねじ山なしで前記混合器ハウジング(2)に接続可能である請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載された接続部。
【請求項6】
前記出口領域(12)が、ねじ山なしで前記霧化スリーブ(4)に接続可能である請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載された接続部。
【請求項7】
前記出口領域(12)が、前記入口領域(11)に面する端部に、前記霧化スリーブ(4)に係合するように設計された端部プレート(15)を有し、それにより動作中の前記霧化媒体の前記端部プレート(15)からの漏出を防止するようになっている請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載された接続部。
【請求項8】
前記出口領域(12)が、実質的に一定の内径を有する、前記混合された成分用の通路(16)を含む請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載された接続部。
【請求項9】
前記端部プレート(15)と前記出口領域(12)の前記末端部(13)との間に、外径を前記混合器ハウジング(2)の前記遠位端領域(27)の外輪郭に合わせた少なくとも1つの案内要素(17)が設けられる請求項7又は請求項8に記載された接続部。
【請求項10】
外径を前記混合器ハウジング(2)の外径に合わせた、複数のディスク形の案内要素(17)のそれぞれが1列に配置して設けられる請求項9に記載された接続部。
【請求項11】
外径を前記混合器ハウジング(2)の前記外径に合わせた、螺旋状の案内要素(17)が設けられる請求項9に記載された接続部。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載された接続部を有する、少なくとも2つの流動性成分を混合及び噴霧するための静止型噴霧混合器の組み合わせであって、
前記静止型噴霧混合器が、少なくとも1つの混合要素(3)を有する管状の混合器ハウジング(2)及び霧化スリーブ(4)を有し、前記混合器ハウジング(2)が、長手方向軸線(A)の方向に前記成分用の出口開口部(22)を有する遠位端(21)まで延び、前記霧化スリーブ(4)が、加圧された霧化媒体用の入口通路(41)、及び前記混合器ハウジング(2)と共に別個の流路を形成することができる複数の別個の溝(5)を有する内面を有する、組み合わせ。
【請求項13】
前記霧化スリーブ(4)が前記接続部(1)のまわりで回転できるように、前記霧化スリーブ(4)を前記接続部に接続することができる請求項12に記載された組み合わせ。
【請求項14】
前記接続部が前記混合器ハウジングと一体になるように、前記接続部が前記混合器ハウジング(2)に対して成形される請求項12又は請求項13に記載された組み合わせ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−240047(P2012−240047A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−98569(P2012−98569)
【出願日】平成24年4月24日(2012.4.24)
【出願人】(508105773)スルザー ミックスパック アクチェンゲゼルシャフト (14)
【Fターム(参考)】