説明

静的破砕工法

【課題】
穿孔と静的破砕材との間に空洞や空隙を生じるような場合であって、破砕作業を効率良く行うことを可能とする静的破砕工法を提供すること。
【解決手段】
破砕対象物に穿孔1を設け、該穿孔内に膨張性破砕材を充填し、該破砕材の膨張により破砕対象物を破砕する静的破砕工法において、穿孔内に配置される底板と、該底板より面積が大きくかつ穿孔外に配置される天板と、両者を連結する連結手段とからなる補助具を備えると共に、膨張性破砕材を透水性のある袋体内に収容した静的破砕材40と、該静的破砕材に吸水し、膨張性破砕材を含むスラリー60を該静的破砕材に付着させ、該スラリー又は膨張性破砕材を含む他のスラリー50を該穿孔内に注入した後、該静的破砕材を該穿孔1内に装填することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静的破砕工法に関し、詳しくは、破砕対象物に穿孔を設け、該穿孔内に膨張性破砕材を充填し、該破砕材の膨張により破砕対象物を破砕する静的破砕工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塩害や長期使用による老朽化による補修または改修が必要な道路や橋梁等のコンクリート面を破砕して補修する方法として、ピックハンマやブレーカ等を用いる方法やウォータージェット工法等の、機械的に衝撃振動を加えコンクリート面を破砕する方法が採用されている。前記破砕方法は振動を伴う作業であり、コンクリート等の粉塵が発生し作業環境が悪化する等の問題があり、更に、橋梁等の構造物の下方面あるいは垂直面の破砕作業は、非常な労力を必要としている。またウォータージェットによるはつり作業は装置が大規模なものとなり、後片付けに手間がかかる上、コストが高い。特に、水中におけるコンクリート構造物の破砕には、作業面で大変な手間がかかっている。
また、これらの方法は機械的な衝撃振動が発生するため、コンクリート補修の必要部分のみではなく不必要部分の内部に亀裂が生じる可能性や、鉄筋等の補強部材に損傷を与える可能性があるという問題があった。
【0003】
これに対し、セメント等の膨張材を破砕材として用いてコンクリート等の構造体を静的に破砕する方法が、提案されている。特許文献1乃至特許文献3においては、特に、破砕対象物に充填された破砕材の吹き出し防止や、破砕材の膨張圧力を有効に利用するため、破砕対象物に設けられた穿孔内において、破砕材を天板と底板とからなる2つの板状体の間に保持する構成が開示されている。
【特許文献1】特開昭60−85193号公報
【特許文献2】特開昭61−36463号公報
【特許文献3】特開平9−234389号公報
【0004】
図1は、従来の破砕材の保持の様子を示したものである。図1のように、穿孔1の内部に、底板3と天板4を棒状又は紐状のつなぎ材である連結手段で構成される補助具を配置すると共に、該底板3と該天板4との間に、膨張性破砕材2を配置する。この構成により、該破砕材2が膨張することにより、上下方向の圧力は、底板3及び天板4により抑圧され、穿孔口からの破砕材の吹き出しが効果的に抑制される。しかも、この底板3及び天板4の作用により、内部圧力は、穿孔部の穿孔方向に対する垂直な方向(図1の横方向)に主に作用することとなり、破砕対象物を容易に破砕することが可能となる。この際の穿孔1の内壁等に作用する圧力の状態を、図2に示す。
【0005】
しかしながら、従来のものは、膨張性破砕材の上方向の圧力により天板4が浮き上がるのを防止するため、底板と天板との各面積を同じに構成しており、しかも、膨張性破砕材を底板3と天板4とにより、漏れが無いよう保持する必要があり、図1に示すように天板の位置が、穿孔1の内部に配置されていた。しかも、破砕対象物に穿孔1を形成する場合には、角欠けや穿孔機の軸ぶれなどにより、穿孔口に欠け部6が生じ易く、天板4の位置は、より一層、穿孔1の内部に配置されることとなっていた。
【0006】
このような従来の補助具を利用する場合には、穿孔1の内部における穿孔方向に対し垂直な方向の圧力分布を見ると、図2の10に示すように、穿孔方向の中央部分を中心とする圧力分布10となり、穿孔口付近(欠け部6近傍)には、殆ど膨張圧が付与されていないこととなる。
【0007】
上記問題を解決するため、本出願人は、以下の特許文献4及び5において、破砕対象物に穿孔を設け、該穿孔内に膨張性破砕材を充填し、該破砕材の膨張により破砕対象物を破砕する静的破砕工法に用いる静的破砕用補助具において、穿孔内に配置される底板と、該底板より面積が大きくかつ穿孔外に配置される天板と、両者を連結する連結手段とを有することを特徴とする静的破砕用補助具を提案した。
【特許文献4】特願2004−292859号(出願日:平成16年10月5日)
【特許文献5】特願2005−92990号(出願日:平成17年3月28日)
【0008】
図3及び図4は、特に、特許文献5に開示される技術を説明する図であり、図3のように、破砕対象物に設けられた穿孔1に対し、穿孔1の下面7から離れた位置に底板3が配置されている。連結用具23の上部には、天板20が固定手段21により連結され、天板20と底板3との間には、膨張性破砕材が穿孔内部に充填されている。
【0009】
天板は、底板の面積より大きく、好ましくは、穿孔1の口部の面積より大きな面積を有するよう構成すると共に、該天板20を穿孔1外に配置することで、穿孔1の欠け部6が発生している穿孔口部付近にも、十分な膨張性破砕材を充填配置できる。そして、破砕材の膨張圧力は、天板20により、上方圧力が抑えられ、穿孔口の周辺に対して、従来のものより格段に強い破砕力を発生させることが可能となる。参考までに、穿孔方向に対して垂直な方向の圧力分布22を、図3に模式的示す。
【0010】
図3のように、本発明では、底板の面積より天板の面積が大きくなるため、破砕材の膨張で底板に加わる下方の力より、天板に加わる上方の力が大きくなり、天板が浮き上がることが懸念されるが、実際には、破砕材の横方向の膨張により、破砕材と穿孔1の内壁面との摩擦力が増加するため、天板の浮き上がりは、殆ど無いことが確認されている。
【0011】
このように、穿孔の口部付近にも破砕材の膨張圧力を効果的に付与することで、破砕対象物の表面側へのクラック発生を加速することができ、結果として破砕スピードを上げることができる。
【0012】
図4は、袋体25の内部に不図示の膨張性破砕材を収容し、静的破砕用補助具を取り付けた概略図である。
具体的には、袋体25内に、連結手段である連結用具23を取り付けた底板3を挿入し、該袋体を静的破砕材で満たす。袋体25の開口は、ヒートシールなど適切な締結手段により閉塞し、袋体25から突出する連結用具23には、天板20、固定手段26及び連結用具を引っ張るための牽引手段24が取り付けられる。
膨張性破砕材を、不織布や繊維状のネットなどのように透水性のある袋体に収容し、カプセル状に小分けして用いる方法が、簡便であり、作業者への安全性も高い。
【0013】
他方、図4に示すような、静的破砕用補助具を取り付け膨張性破砕材を透水性のある袋体内に収容した静的破砕材を、穿孔内に挿入した際に、図5に示すように、穿孔1の孔の深さが静的破砕材40の長さより深い場合や、穿孔時のドリルの先端形状に対応して穿孔の最深部が円錐状となっている場合には、静的破砕材40を穿孔1内に装填しても、穿孔内に空洞30を生じる。このような空洞30は、破砕対象物の表面だけで無く内部も効率良く破壊したい場合には、大きな問題となる。さらに、底板と穿孔の内壁との間に隙間が多い場合には、膨張した膨張性破砕材が空洞内に入り込み、十分な膨張圧を発現できない。
【0014】
また、静的破砕材40の該補助具を操作し、天板と底板との距離を短くし膨張性破砕材の充填率を上げる場合、充填率が部分的にしか上昇せず、図5のように空隙31を生じることがある。特に、静的破砕材の長さが長くなるに従い、この傾向は顕著なものとなる。このような空隙31は、膨張性破砕材が膨張する際に、十分な膨張圧を発現させる上での大きな障害となっている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、上記問題を解決し、穿孔と静的破砕材との間に空洞や空隙を生じるような場合であって、破砕作業を効率良く行うことを可能とする静的破砕工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、破砕対象物に穿孔を設け、該穿孔内に膨張性破砕材を充填し、該破砕材の膨張により破砕対象物を破砕する静的破砕工法において、穿孔内に配置される底板と、該底板より面積が大きくかつ穿孔外に配置される天板と、両者を連結する連結手段とからなる補助具を備えると共に、膨張性破砕材を透水性のある袋体内に収容した静的破砕材と、該静的破砕材に吸水させ、膨張性破砕材を含むスラリーを該穿孔内に注入した後、該静的破砕材を該穿孔内に装填することを特徴とする。
【0017】
請求項2に係る発明は、破砕対象物に穿孔を設け、該穿孔内に膨張性破砕材を充填し、該破砕材の膨張により破砕対象物を破砕する静的破砕工法において、穿孔内に配置される底板と、該底板より面積が大きくかつ穿孔外に配置される天板と、両者を連結する連結手段とからなる補助具を備えると共に、膨張性破砕材を透水性のある袋体内に収容した静的破砕材と、該静的破砕材に吸水させ、膨張性破砕材を含むスラリーを該静的破砕材に付着した後、該静的破砕材を該穿孔内に装填することを特徴とする。
【0018】
請求項3に係る発明は、破砕対象物に穿孔を設け、該穿孔内に膨張性破砕材を充填し、該破砕材の膨張により破砕対象物を破砕する静的破砕工法において、穿孔内に配置される底板と、該底板より面積が大きくかつ穿孔外に配置される天板と、両者を連結する連結手段とからなる補助具を備えると共に、膨張性破砕材を透水性のある袋体内に収容した静的破砕材と、該静的破砕材に吸水し、膨張性破砕材を含むスラリーを該静的破砕材に付着させ、該スラリー又は膨張性破砕材を含む他のスラリーを該穿孔内に注入した後、該静的破砕材を該穿孔内に装填することを特徴とする。
【0019】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の静的破砕工法において、該スラリーの膨張開始時間は、該静的破砕材の膨張開始時間より遅いことを特徴とする。
【0020】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の静的破砕工法において、該スラリーは、添加される増粘剤により粘性が調整されていることを特徴とする。
【0021】
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の静的破砕工法において、穿孔内に注入されるスラリーは、穿孔が横穴状態でも流出しない程度の粘性及び自己形状保持性を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明により、穿孔内に配置される底板と、該底板より面積が大きくかつ穿孔外に配置される天板と、両者を連結する連結手段とからなる補助具を備えると共に、膨張性破砕材を透水性のある袋体内に収容した静的破砕材と、該静的破砕材に吸水させ、膨張性破砕材を含むスラリーを該穿孔内に注入した後、該静的破砕材を該穿孔内に装填するため、静的破砕材と穿孔の内壁との間に膨張性破砕材を含むスラリーが入り込み、穿孔内の膨張性破砕材の充填率を高め、膨張性破砕材の膨張圧を適正に発現させることが可能となる。特に、図5に示すような穿孔内の空洞30に膨張性破砕材を充填する方法としては、本発明を効果的に適用することが可能である。
【0023】
請求項2に係る発明により、穿孔内に配置される底板と、該底板より面積が大きくかつ穿孔外に配置される天板と、両者を連結する連結手段とからなる補助具を備えると共に、膨張性破砕材を透水性のある袋体内に収容した静的破砕材と、該静的破砕材に吸水させ、膨張性破砕材を含むスラリーを該静的破砕材に付着した後、該静的破砕材を該穿孔内に装填するため、静的破砕材と穿孔の内壁との間に膨張性破砕材を含むスラリーが入り込み、穿孔内の膨張性破砕材の充填率を高め、膨張性破砕材の膨張圧を適正に発現させることが可能となる。特に、図5に示すような穿孔内の空隙31に膨張性破砕材を充填する方法としては、本発明を効果的に適用することが可能である。
【0024】
請求項3に係る発明により、穿孔内に配置される底板と、該底板より面積が大きくかつ穿孔外に配置される天板と、両者を連結する連結手段とからなる補助具を備えると共に、膨張性破砕材を透水性のある袋体内に収容した静的破砕材と、該静的破砕材に吸水し、膨張性破砕材を含むスラリーを該静的破砕材に付着させ、該スラリー又は膨張性破砕材を含む他のスラリーを該穿孔内に注入した後、該静的破砕材を該穿孔内に装填するため、静的破砕材と穿孔の内壁との間に膨張性破砕材を含むスラリーが入り込み、穿孔内の膨張性破砕材の充填率を高め、膨張性破砕材の膨張圧を適正に発現させることが可能となる。特に、図5に示すような穿孔内の空洞30や空隙31に膨張性破砕材を充填する方法としては、本発明を効果的に適用することが可能である。
【0025】
請求項4に係る発明により、スラリーの膨張開始時間は、静的破砕材の膨張開始時間より遅いため、静的破砕材が最初に膨張し、穿孔口付近を強固に密閉する状態となる。その後、穿孔内部、特に図5に示す空洞30に注入されたスラリーが膨張しても、穿孔口付近は静的破砕材が蓋をしているため、スラリーは穿孔内部で膨張が進行し、破砕対象物を効率的に破壊することが可能となる。また、スラリーの一部が穿孔口から吹き出すことも防止され、極めて安全に作業を行うことができる。
また、静的破砕材が最初に膨張を開始するため、静的破砕材の周囲に付着したスラリーは、穿孔の内壁側に押し出され、益々空隙をスラリーが充填することとなる。このため、膨張性破砕材の膨張圧を効果的に発現させ、効率よく破砕作業を行うことが可能となる。
【0026】
請求項5に係る発明により、スラリーは、下向きの穿孔の場合、粘度調整はなくても使用可能であるが、添加される増粘剤により粘性が調整されていることが好ましい。膨張性破砕材に対する水分量を一定に保ちながらスラリーの粘性が調整でき、充填作業中のスラリーの液ダレ防止や、充填後の穿孔口からスラリーの流出などを効果的に抑制することが可能となる。
【0027】
請求項6に係る発明により、穿孔内に注入されるスラリーは、穿孔が横穴状態でも流出しない程度の粘性及び自己形状保持性を備えていることにより、穿孔を横穴に形成しても膨張性破砕材による破砕作業を可能とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明に係る静的破砕工法について以下の好適例により説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明の静的破砕工法は、破砕対象物に穿孔を設け、該穿孔内に膨張性破砕材を充填し、該破砕材の膨張により破砕対象物を破砕する静的破砕工法において、穿孔内に配置される底板と、該底板より面積が大きくかつ穿孔外に配置される天板と、両者を連結する連結手段とからなる補助具を備えると共に、膨張性破砕材を透水性のある袋体内に収容した静的破砕材と、該静的破砕材に吸水させると共に、以下の2つの方法のいずれか又は両方を組合わせて、該静的破砕材を該穿孔内に装填することを特徴とする。
(1)膨張性破砕材を含むスラリーを予め穿孔内に注入すること。
(2)膨張性破砕材を含むスラリーを吸水した静的破砕材に付着させること。
【0029】
本発明の静的破砕工法により、図6に示すように、穿孔内の空洞30や空隙31に膨張性破砕材を含むスラリー50や51を充填することができ、より効果的に膨張性破砕材の膨張力を発現させることが可能となる。
特に、空洞30にスラリー50を充填するには、上記(1)のスラリー注入方法が効果的であり、空隙31にスラリー51を充填するには、上記(2)の静的破砕材にスラリーを付着させる方法が効果的である。
【0030】
図7は、上記(1)及び(2)を組合わせた静的破砕工法の例を示す図であり、予め吸水させた静的破砕材40を、膨張性破砕材に水を添加して調製したスラリー60に浸し、静的破砕材40にスラリー60を付着させる(図7(a)参照)。次に、破砕対象物に設けられた穿孔に、膨張性破砕材を含むスラリー50を注入し、その後、スラリー60が付着した静的破砕材を穿孔内に装填する。スラリー50及び60は同じスラリーを使用しても良いが、後述する膨張開始時間や粘性等を考慮して、異なるスラリーを調製し使用することも可能である。
【0031】
静的破砕材としては、膨張性破砕材を不織布や繊維状のネットなどのように透水性のある袋体に収容したものでも良いが、破砕対象物の表面から亀裂を発生させ、効率よく破砕作業を行うため、また、充填した膨張性破砕材が穿孔口から噴出しないようにするためには、特許文献4又は5に示すように、例えば図4のような静的破砕用補助具を具備した静的破砕材を用いることが好ましい。
【0032】
次に、静的破砕材及びスラリーの膨張開始時間について説明する。
本発明の静的破砕工法では、スラリーの膨張開始時間は、静的破砕材の膨張開始時間より遅くすることが好ましい。これにより、静的破砕材が最初に膨張し、穿孔口付近を強固に密閉する効果や、静的破砕材の周囲に付着したスラリーを穿孔の内壁側に押しスラリーの充填率を高める効果などが期待できる。
なお、穿孔内のスラリーは、このように静的破砕材と併用して用いる場合には、静的破砕材の反応熱により加熱されるため、通常のスラリーのみによる破砕工法と比較し、充填作業後から破砕が開始するまで時間を短くすることが可能となる。
【0033】
膨張開始時間の調整は、膨張性破砕材に混入する反応促進剤の分量や、静的破砕材に水を含ませる際の水温などにより、容易に調整することが可能である。
【0034】
次に、スラリーの粘性調整について説明する。
スラリーは、増粘剤を添加することにより粘性が調整でき、例えば、膨張性破砕材を十分に反応させるため、膨張性破砕材に対する水分量を一定に保ちながら、増粘剤の種類や添加量を調製することにより、スラリーの粘性をコントロールすることができる。
例えば、この粘性調整により、充填作業中に静的破砕材に付着したスラリーが液ダレしたり、穿孔に注入したスラリーが穿孔口から流出するなどの弊害を抑制することが可能となる。
【0035】
増粘剤としては、メチルセルロースなどが使用できる。
特に、穿孔内に注入されるスラリーは、穿孔が横穴状態でも流出しない程度の粘性及び自己形状保持性を備えていることにより、穿孔を横穴に形成しても膨張性破砕材による破砕作業を効率的に行うことができる。このような増粘剤の添加量は、0.5〜3.0%程度が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上の説明のように、本発明によれば、穿孔と静的破砕材との間に空洞や空隙を生じるような場合であって、破砕作業を効率良く行うことを可能とする静的破砕工法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】従来の静的破砕用補助具を利用した破砕工法を示す図である。
【図2】図1の破砕材による内部圧力の状態を示す模式図である。
【図3】特許文献5に係る静的破砕用補助具を用いた場合の破砕材による内部圧力状態を示す模式図である。
【図4】特許文献5における膨張性破砕材を収容した袋体に静的破砕用補助具を装着した状態を示す図である。
【図5】静的破砕材を用いた場合の従来の問題を説明する図である。
【図6】本発明に係る静的破砕工法により静的破砕材等が充填された様子を示す図である。
【図7】本発明に係る静的破砕工法の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0038】
1 破砕対象物に形成された穿孔
2 膨張性破砕材
3 底板
4,20 天板
5,23 連結用具
6 欠け部
10,22 圧力分布
25 袋体
21,26 固定手段
30 空洞
31 空隙
40 静的破砕材
50,51,60 スラリー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕対象物に穿孔を設け、該穿孔内に膨張性破砕材を充填し、該破砕材の膨張により破砕対象物を破砕する静的破砕工法において、
穿孔内に配置される底板と、該底板より面積が大きくかつ穿孔外に配置される天板と、両者を連結する連結手段とからなる補助具を備えると共に、膨張性破砕材を透水性のある袋体内に収容した静的破砕材と、
該静的破砕材に吸水させ、
膨張性破砕材を含むスラリーを該穿孔内に注入した後、該静的破砕材を該穿孔内に装填することを特徴とする静的破砕工法。
【請求項2】
破砕対象物に穿孔を設け、該穿孔内に膨張性破砕材を充填し、該破砕材の膨張により破砕対象物を破砕する静的破砕工法において、
穿孔内に配置される底板と、該底板より面積が大きくかつ穿孔外に配置される天板と、両者を連結する連結手段とからなる補助具を備えると共に、膨張性破砕材を透水性のある袋体内に収容した静的破砕材と、
該静的破砕材に吸水させ、
膨張性破砕材を含むスラリーを該静的破砕材に付着した後、該静的破砕材を該穿孔内に装填することを特徴とする静的破砕工法。
【請求項3】
破砕対象物に穿孔を設け、該穿孔内に膨張性破砕材を充填し、該破砕材の膨張により破砕対象物を破砕する静的破砕工法において、
穿孔内に配置される底板と、該底板より面積が大きくかつ穿孔外に配置される天板と、両者を連結する連結手段とからなる補助具を備えると共に、膨張性破砕材を透水性のある袋体内に収容した静的破砕材と、
該静的破砕材に吸水し、膨張性破砕材を含むスラリーを該静的破砕材に付着させ、
該スラリー又は膨張性破砕材を含む他のスラリーを該穿孔内に注入した後、該静的破砕材を該穿孔内に装填することを特徴とする静的破砕工法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の静的破砕工法において、該スラリーの膨張開始時間は、該静的破砕材の膨張開始時間より遅いことを特徴とする静的破砕工法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の静的破砕工法において、該スラリーは、添加される増粘剤により粘性が調整されていることを特徴とする静的破砕工法。
【請求項6】
請求項5に記載の静的破砕工法において、穿孔内に注入されるスラリーは、穿孔が横穴状態でも流出しない程度の粘性及び自己形状保持性を備えていることを特徴とする静的破砕工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−38086(P2007−38086A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−223602(P2005−223602)
【出願日】平成17年8月2日(2005.8.2)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】