説明

静電フィルタ装置

【課題】従来の静電フィルタでは、電位の印加を持続すると繊維中に帯電し、粉塵の付着により誘電現象が発生して、表面電位を低下させ、捕集性能を低下させるという課題があった。よって、捕集性能の低下を検出し、捕集性能を再生できる機能を持つフィルタが要望されていた。
【解決手段】導電性を有する導電繊維1と、導電性を有する導電繊維19の表面を絶縁処理された絶縁繊維3と、導電繊維1と絶縁繊維3の導電繊維19の間に電位を印加する電圧電源4と、導電繊維1と絶縁繊維3の交差部分の静電容量を検出する静電容量検出手段5と、電圧電源4の出力値を制御する電圧制御手段10を設けることにより、粉塵の付着による繊維の表面電位の低下を検出し、電圧の出力値を上げて、捕集性能を向上させる静電フィルタ装置を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
粉塵を捕集する空気清浄の分野における集塵フィルタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の静電フィルタは、ワイヤーメッシュとして電気絶縁材のフェラメントを十字形模様に形成した静電フィルタが知られている(例えば、特許文献1参照)。以下、その静電フィルタについて図12を参照しながら説明する。
【0003】
図12に示すように、ワイヤーメッシュ101は、電気的に絶縁された導電性のワイヤー102と十字形に位置した電気的に絶縁された導電性のワイヤー103とで構成され、ワイヤー102をセットとして導電性母線104とワイヤー103をセットとして導電性母線105とで結合されている。導電性母線104と導電性母線105には、交流電圧供給源106が接続され、交流電圧供給源106より電圧が印加され、導電性のワイヤー102と導電性のワイヤー103に通電され、導電性のワイヤー102と導電性のワイヤー103の間に電位が保たれ、ワイヤーメッシュ101を通過する荷電した粒子が導電性のワイヤー102と導電性のワイヤー103に付着する。
【特許文献1】特許第2905036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の静電フィルタでは、粉塵の捕捉による集塵性能の低下、表面電位の低下、間隙閉塞、圧力損失を予測できず、メンテナンスのタイミングを予想することが困難であった。
【0005】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、粉塵の捕捉量を検出することができ、捕捉量が多い場合には、メンテナンスを促すことができる。
【0006】
また、捕捉された粉塵が分極することにより、粉塵の捕集性能が低下するという課題があった。
【0007】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、粉塵の捕捉により集塵効率が低下した場合に、それを検知し、捕捉した粒子をフィルタから脱離せしめることができる。
【0008】
また、粉塵が帯電していない場合、帯電量が低い場合には、従来の静電フィルタでは集塵効率が低いという課題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、粉塵の帯電量が低い場合にはそれを検知し、粉塵の帯電量を増加せしめて、集塵効率を高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の静電フィルタは、導電性を有する導電繊維と、導電性を有する導電繊維の表面が絶縁処理された絶縁繊維と、前記導電繊維と前記絶縁繊維の導電繊維の間に電圧を印加する電圧電源と、前記導電繊維と前記絶縁繊維の交差部分の静電容量を検出する静電容量検出手段とを備えてなるものである。
【0011】
また、他の手段は、電圧を印加する電圧電源の出力値を制御する電圧制御手段を備えてなるものである。
【0012】
また、他の手段は、電圧を印加する電圧電源の極性を切り替える極性反転手段を備えてなるものである。
【0013】
また、他の手段は、風上にコロナ放電手段を備えてなるものである。
【0014】
また、他の手段は、コロナ放電手段として針状の放電極、板状の受電極を備えてなるものである。
【0015】
また、他の手段は、コロナ放電手段の放電極が導電繊維の末端、または導電繊維の表面が絶縁処理された絶縁繊維の末端のいずれかから選択されるものである。
【0016】
また、他の手段は、コロナ放電手段の放電極が導電繊維の末端、かつ導電繊維の表面が絶縁処理された絶縁繊維の末端からなるものである。
【0017】
また、他の手段は、コロナ放電手段に放電量を調節する放電量制御手段を備えてなるものである。
【0018】
また、他の手段は、導電繊維と導電繊維の表面が絶縁処理された絶縁繊維のメンテナンスを促すメンテナンス表示手段を備えてなるものである。
【0019】
また、他の手段は、静電容量検出手段の出力値が一定の場合、コロナ放電手段を起動させるとしたものである。
【0020】
また、他の手段は、静電容量検出手段の出力値が一定値以下になった場合、電圧制御手段を起動させるとしたものである。
【0021】
また、他の手段は、静電容量検出手段の出力値が一定値以下になった場合、極性反転手段を起動させるとしたものである。
【0022】
また、他の手段は、静電容量検出手段の出力値が一定値以下になった場合、メンテナンス表示手段を起動させるとしたものである。
【0023】
また、他の手段は、静電容量検出手段の出力値が一定値以下になった場合、極性反転手段とメンテナンス表示手段を同時に起動させるとしたものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、導電性を有する導電繊維と、導電性を有する導電繊維の表面が絶縁処理された絶縁繊維と、前記導電繊維と前記絶縁繊維の導電繊維の間に電圧を印加する電圧電源と、前記導電繊維と前記絶縁繊維の交差部分の静電容量を検出する静電容量検出手段とを備えたことにより、粉塵の捕捉による性能低下を常に監視することができるという効果のある静電フィルタを提供することができる。
【0025】
また、印加する電圧電源の出力値を制御する電圧制御手段を備えたことにより、性能低下を検出した場合、印加電圧を高めて集塵効率を上げることができるという効果のある静電フィルタを提供することができる。
【0026】
また、電圧を印加する電圧電源の極性を切り替える極性反転手段を備えたことにより、捕捉された粉塵の脱離を促進するという効果のある静電フィルタを提供することができる。
【0027】
また、風上にコロナ放電手段を備えたことにより、帯電量の低い粉塵でも捕捉することができるという効果のある静電フィルタを提供することができる。
【0028】
また、コロナ放電手段が針状の放電極、板状の受電極からなることにより、さらに帯電量の低い粉塵でも捕捉することができるという効果のある静電フィルタを提供することができる。
【0029】
また、コロナ放電手段の放電極が導電繊維の末端、または導電繊維の表面が絶縁処理された絶縁繊維の末端のいずれかから選択されることにより、正の帯電を持つ粉塵、負の帯電を持つ粉塵双方の集塵効率を高めることができるという効果のある静電フィルタを提供することができる。
【0030】
また、コロナ放電手段の放電極が導電繊維の末端、かつ導電繊維の表面が絶縁処理された絶縁繊維の末端からなることにより、正の帯電を持つ粉塵または負の帯電を持つ粉塵どちらか一方の集塵効率を高めるという効果のある静電フィルタを提供することができる。
【0031】
また、コロナ放電手段に放電量を調節する放電量制御手段を備えたことにより、正の帯電を持つ粉塵、負の帯電を持つ粉塵の存在比に合わせた最適な運転で粉塵の帯電量を高めるという効果のある静電フィルタを提供することができる。
【0032】
また、導電繊維と導電繊維の表面が絶縁処理された絶縁繊維のメンテナンスを促すメンテナンス表示手段を備えたことにより、ユーザーが適切なタイミングでメンテナンスを行うことができるという効果のある静電フィルタを提供することができる。
【0033】
また、静電容量検出手段の出力値が一定の場合、コロナ放電手段を起動させることとにより、高い集塵効率が得られるという効果のある静電フィルタを提供することができる。
【0034】
また、静電容量検出手段の出力値が一定値以下になった場合、電圧制御手段を起動させることにより、高い集塵効率が得られるという効果のある静電フィルタを提供することができる。
【0035】
また、静電容量検出手段の出力値が一定値以下になった場合、極性反転手段を起動させることにより、捕捉した粉塵を脱離せしめて、ユーザーが容易にメンテナンスできるようにするという効果のある静電フィルタを提供することができる。
【0036】
また、静電容量検出手段の出力値が一定値以下になった場合、メンテナンス表示手段を起動させることにより、ユーザーが適切なタイミングでメンテナンスを行うことができるという効果のある静電フィルタを提供することができる。
【0037】
また、静電容量検出手段の出力値が一定値以下になった場合、静電容量検出手段の出力値が一定値以下になった場合、極性反転手段とメンテナンス表示手段を同時に起動させることにより、ユーザーが適切なタイミングで容易にメンテナンスを行うことができるという効果のある静電フィルタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の請求項1に記載の静電フィルタは、導電性を有する導電繊維と、導電性を有する導電繊維の表面が絶縁処理された絶縁繊維と、前記導電繊維と前記絶縁繊維の導電繊維との間に電圧を印加する電圧電源と、前記導電繊維と前記絶縁繊維の交差部分の静電容量を検出する静電容量検出手段とを備えてなるものであり、導電繊維と絶縁繊維の間の静電容量の低下を検出することで粉塵の捕捉による性能低下を監視することができるという作用を有する。
【0039】
また、本発明の請求項2に記載の静電フィルタは、電圧電源の出力値を制御する電圧制御手段を備えてなるものであり、導電繊維と絶縁繊維の間の電界強度を調節するという作用を有する。
【0040】
また、本発明の請求項3に記載の静電フィルタは、電圧電源の極性を切り替える極性反転手段を備えてなるものであり、通常と逆向きの電界を導電繊維と絶縁繊維の間に生成させるという作用を有する。
【0041】
また、本発明の請求項4に記載の静電フィルタは、風上にコロナ放電するためのコロナ放電手段を備えてなるものであり、風上でイオンを発生させ、粉塵の帯電量を増加させるという作用を有する。
【0042】
また、本発明の請求項5に記載の静電フィルタは、コロナ放電手段として、針状の放電極、板状の受電極を備えてなるものであり、イオンの発生量を増し、粉塵の帯電量をさらに増加させるという作用を有する。
【0043】
また、本発明の請求項6に記載の静電フィルタは、コロナ放電手段の放電極が導電繊維の末端、または導電繊維の表面が絶縁処理された絶縁繊維の末端のいずれかから選択されてなるものであり、正または負どちらかのイオンを生成させて、粉塵の帯電量を増加させるという作用を有する。
【0044】
また、本発明の請求項7に記載の静電フィルタは、コロナ放電手段の放電極が導電繊維の末端、かつ導電繊維の表面が絶縁処理された絶縁繊維の末端からなるものであり、正負両方のイオンを生成させて、粉塵の帯電量を増加させるという作用を有する。
【0045】
また、本発明の請求項8に記載の静電フィルタは、コロナ放電手段に放電量を調節する放電量制御手段を備えてなるものであり、イオンの発生量を調節して、粉塵の帯電量を増加させるという作用を有する。
【0046】
また、本発明の請求項9に記載の静電フィルタは、導電繊維と絶縁繊維のメンテナンスを促すメンテナンス表示手段を備えてなるものであり、ユーザーにメンテナンスのタイミングを認識させるという作用を有する。
【0047】
また、本発明の請求項10に記載の静電フィルタは、静電容量検出手段の出力値が一定の場合、コロナ放電手段を起動させてなるものであり、集塵効率が低い場合に、粉塵の帯電量を増加させるという作用を有する。
【0048】
また、本発明の請求項11に記載の静電フィルタは、静電容量検出手段の出力値が一定値以下になった場合、電圧制御手段を起動させてなるものであり、集塵効率が低い場合に、電界強度を高めて、粉塵が受けるクーロン力を増加させるという作用を有する。
【0049】
また、本発明の請求項12に記載の静電フィルタは、静電容量検出手段の出力値が一定値以下になった場合、極性反転手段を起動させてなるものであり、集塵効率が低下した場合に、逆向きの電界を生成させることで、逆向きのクーロン力を粉塵に作用させて脱離を促すという作用を有する。
【0050】
また、本発明の請求項13に記載の静電フィルタは、静電容量検出手段の出力値が一定値以下になった場合、メンテナンス表示手段を起動させてなるものであり、集塵効率が低下した場合に、ユーザーにメンテナンスのタイミングを認識させるという作用を有する。
【0051】
また、本発明の請求項14に記載の静電フィルタは、静電容量検出手段の出力値が一定値以下になった場合、極性反転手段とメンテナンス表示手段を同時に起動させてなるものであり、集塵効率が低下した場合に、逆向きの電界を生成させて、捕捉された粉塵に逆向きのクーロン力を作用させて脱離を促し、同時に、ユーザーにメンテナンスのタイミングを認識させるという作用を有する。
【0052】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0053】
(実施の形態1)
図1に、導電性を有する導電繊維1と、導電繊維19の表面が絶縁素材2で絶縁処理された絶縁繊維3と、導電繊維1と絶縁繊維3の導電繊維19の間に電圧を印加する電圧電源4と、前導電繊維と絶縁繊維の交差部分の静電容量を検出する静電容量検出手段5とを備えてなる静電フィルタ装置6を示す。
【0054】
導電繊維1および導電繊維19はアルミニウム、鉄、銅、ニクロム、ニッケル、金、銀、白金、ステンレス、カーボン、銅、銀といった素材から選択される。内部抵抗の少ない金属材料を用いるのが好ましい。
【0055】
導電繊維19の表面が絶縁処理された絶縁繊維3は、上記の導電繊維19をポリエステル、エポキシ、シリコン、ポリスチレン、ポリスチロール、塩ビ、テフロン(登録商標)、ゴム、ポリエチレンテレフタレート、フェノール樹脂といった絶縁素材2で被膜したものが好ましい。絶縁素材を被膜する方法は、コーティングや導電繊維の外側に絶縁素材をらせん状に巻き付ける紡績手法を採用しても良い。
【0056】
電圧電源4は、導電性を有する導電繊維1と絶縁繊維3との間に電位差を与えるものであり、交流/直流は問わない。また、印加電圧は絶縁繊維3の絶縁素材2が絶縁破壊を起こさない値であれば良い。
【0057】
静電容量検出手段5は、導電性を有する導電繊維1と絶縁繊維3からなる2本の電極で構成されるコンデンサの静電容量を測定するものであり、例えばLCRメータを用いることができる。
【0058】
図2に、導電性を有する導電繊維1と絶縁繊維3の接点の拡大図を示す。図2は、導電繊維1を縦糸、絶縁繊維3を横糸として十字状に構成したものであるが、図3に示す通り、導電繊維1、絶縁繊維3共に縦糸として構成したものでも良い。本発明は、導電繊維1と絶縁繊維3の導電繊維19の間に電位差を与え、生成する電界が帯電した粉塵に与えるクーロン力により粉塵を捕捉するものであり、電界強度は電位差を電極間距離で除した値であることを考慮すると、電極間距離はできるだけ狭めた方が効果的である。そうすることで、粉塵に作用するクーロン力を高めることができ、かつ粉塵のフィルタ装置への衝突確率を高めることができるため、結果的に集塵効率が上昇する。また、電極間距離が短いため印加電圧を低く設定しても電界強度を高くすることが可能となるため、消費電力の低く集塵効率の良い静電フィルタとなる。
【0059】
図4に本発明の静電フィルタ装置6を、風路7を連結し、送風機8により粉塵9を導入した概略図を示す。
【0060】
送風機8の風量は静電フィルタ装置6を通過する風速に影響を与え、風速が大きすぎる場合は、粉塵の捕捉が不可能なため、風量が調節可能なものを選択するのが好ましい。
【0061】
粉塵9は、例えば、花粉、ホコリ、タバコの煙、オイルミスト、SPM(Suspended Particulate Matter、浮遊粒子状物質)が挙げられる。これらの粉塵9は空中で正または負のどちらかに帯電しているため、電界を与えることでクーロン力が作用し、集塵が達成されることとなる。
【0062】
静電フィルタ装置6の風上側から粉塵9を送り込むと、静電フィルタ装置6に生成した電界により帯電した粉塵9にクーロン力が働き、結果的に正に帯電した粉塵は負極に、負に帯電した粉塵は正極に捕捉されることとなる。静電フィルタ装置6の導電繊維または絶縁繊維に粉塵9が捕捉されると、電極間距離が縮まると共に、電極面積が小さくなり、結果的には、静電容量は初期状態よりも小さくなる。それを静電容量検出手段5で検出することで、静電フィルタ装置6による粉塵9の捕捉状態を判断することができる。
【0063】
ここで、図4に示した静電フィルタ装置6、風路7、送風機8の構成は例えば、空気清浄機や除湿機、加湿器、換気扇やエアコン、掃除機、衣類乾燥機といった家電製品、また自動車やオートバイの排気部などに相当する。また、風路7、送風機8が無いような、例えば、工場のクリーンルームの入り口といった場所にも本発明の静電フィルタ装置6は適用可能である。この場合、人間が静電フィルタ装置6の近傍を通過した際に発生する気流により、浮遊している粉塵9が静電フィルタ装置6に近づいた結果、捕捉されることとなる。また、粉塵9として花粉を対象とした場合、例えば、住居内の玄関、リビング、クローゼット、ベッドルームといった場所に静電フィルタ装置6を設置することで、花粉を集塵して、結果的に花粉症の予防、症状の緩和に繋がる。
【0064】
(実施の形態2)
実施の形態1と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。図5に、本発明の静電フィルタ装置6に電圧電源4の出力電圧を制御する電圧制御手段10、極性を切り替える極性反転手段11を設けた例を示す。電圧制御手段10は例えば、抵抗を用いることができる。極性反転手段11は例えば、回転体を用いたスイッチングを使用することができる。
【0065】
本発明の静電フィルタ装置6の運転中に極性反転手段11を運転させると、電界が逆の向きで生成されるため、既に捕捉されている粉塵にこれまでと逆向きのクーロン力が作用する。これにより、粉塵を静電フィルタ装置6から脱離させ、回収することが可能とる。ここで、静電フィルタ装置6に捕捉されている粉塵はクーロン力以外の物理的な力も作用しているため、極性反転手段11により極性を反転させる場合には、電圧制御手段10により、集塵中の印加電圧よりも高い電圧を印加するのが好ましい。
【0066】
(実施の形態3)
実施の形態1または2と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。図6に、本発明の静電フィルタ装置6を風路7、送風機8に連結し、その風上側にコロナ放電装置12を設けた場合を示す。風路7内でコロナ放電を発生させることで、風路7内の空気が電離し、イオン13が発生する。このイオン13が粉塵9と結びつくことで、粉塵9の帯電量が増加するため、静電フィルタ装置6を通過する際に受けるクーロン力が増加し、結果的に集塵効率が上がることとなる。
【0067】
図7に、コロナ放電装置12の詳細を示す。コロナ放電装置12は、針状の放電極14と板状の受電極15、それらの間に電圧を印加するコロナ放電用電圧電源16から成り、受電極15はアースに接続されている。針状の放電極14、受電極15は金属や半導体といった電気が流れる材料であれば良い。また、放電極14と受電極15の距離はコロナ放電用電圧電源16の出力値に合わせて決定されるが、スパークが発生しないように設定する必要がある。放電極14としては、例えば、SUSなどの金属針があり、受電極15としては、例えば、SUSなどの金属板がある。
【0068】
図8に、コロナ放電装置12の放電極14が導電繊維1の末端と接続され、また、コロナ放電装置24の放電極21が絶縁繊維3の導電繊維19の末端と接続され、イオン発生量を調節する放電量制御装置17、23を備えた静電フィルタ装置6を示す。
【0069】
放電量制御装置17としては、例えば、抵抗などがある。放電極14は、例えば金属針があり、導電繊維1の末端を針状に尖らせる処理をしても良く、絶縁繊維3の末端はヤスリによって絶縁素材2の被覆を削り落とした上で、導電繊維19を針状に尖らせても良い。
【0070】
例えば、導電繊維1に正の電圧を印加し、絶縁繊維3の導電繊維19に負の電圧を印加した場合、導電繊維1の末端から放電して生成したイオン13は主にプラスであり、絶縁繊維3の導電繊維19の末端から放電して生成したイオン13は主にマイナスである。放電量制御装置17は放電極14である導電繊維1の末端から受電極15に印加、および放電量制御装置23は絶縁繊維3の導電繊維19の末端から受電極22に印加する電圧を調整する装置であり、結果的に、生成するプラス/マイナスのイオンのバランスを調整することができる。ここで、コロナ放電により生成したイオン13を粉塵9と効果的に結びつけるために、コロナ放電は風路7の中心、かつ静電フィルタ装置6に近い部位で発生させる方が好ましい。静電フィルタ装置6には、網の目のように交互に織られた導電繊維1と絶縁繊維3を保持する枠が備えられている。風路7は図示をしていないが風路枠25を骨格とした枠で囲われ、例えば、ダクト状となっている。矢印は送風される向きを示す。
【0071】
本構成においては、図8に示すように、コロナ放電用電圧電源と静電フィルタ装置6の電圧電源4を同一にまとめることが可能である。
【0072】
(実施の形態4)
実施の形態1乃至3と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。図9にメンテナンス表示手段18を備えた静電フィルタ装置6を示す。メンテナンス表示手段18は、ユーザーにメンテナンス時期を伝えるためのものであり、液晶画面などによる画像表示、あるいはスピーカなどによる音声表示等から選択される。メンテナンス表示手段18は、静電容量検出手段5と配線で接続されており、集塵中に常時計測している静電容量の値と連動して表示が切り替わる。集塵中、電極間の静電容量の値とメンテナンス表示の関係は図10のように示される。
【0073】
(実施の形態5)
実施の形態1乃至4と同一部分は同一符号を附し詳細な説明は省略する。図11に、静電容量と運転パターンの関係を示す。図5に示す導電繊維1と、絶縁繊維3と、電圧電源4と、静電容量検出手段5と、電圧制御手段10と、極性反転手段11と、コロナ放電装置12と、放電量制御装置17と、メンテナンス表示手段18を備えた静電フィルタ装置6の運転例を示す。静電フィルタ装置6が粉塵を集塵する運転を除塵運転と定義する。
【0074】
除塵運転中に、静電容量検出手段5の出力値が一定の場合、粉塵の集塵が行われていないと考えることができる。この場合、コロナ放電装置12を起動すると、粉塵の帯電量を高めることができ集塵に寄与できる。また、電圧制御手段10により、電圧電源4の出力値を高めて、導電繊維1と、絶縁繊維3の導電繊維19の間の電位差を高めることで集塵に寄与できる。
【0075】
除塵運転中に、静電容量検出手段5の出力値が初期値よりも低下した場合、集塵が効果的に行われていると考えることができる。しかし、捕捉された粉塵により、電極間の電位差が小さくなり、静電容量が低下することで、集塵は行われなくなる。この集塵が行われなくなる一定値を運転条件の境界とすべきであり、この値は粉塵の大きさや帯電量、静電フィルタ装置6を通過する空気の風速や温湿度、静電フィルタ装置6の電界強度や口径といったパラメータによって決定されるが、初期の静電容量の50%〜70%とするのが妥当である。
【0076】
除塵運転中の静電容量の検出値が、初期の静電容量の50%〜70%より低い場合、電圧制御手段10により電圧電源4の出力電圧を高めることで、電位差が増すため、集塵効率の回復を図ることができる。また、コロナ放電装置12を起動して粉塵の帯電量を高めることで集塵効率の回復を図ることができる。
【0077】
上記のような方法を行っても、静電容量検出装置5の値が変化しない、または一時的に上昇してもすぐに一定値に収束するような場合は、集塵効率の回復は不可能であるため、極性運転手段11を運転して、捕捉した粉塵の脱離を促すことができる。その後、メンテナンス表示手段18を起動して、メンテナンスを促すことで集塵効率の回復を図ることができる。
【0078】
メンテナンスの方法として、電圧電源4を停止させた上で、導電繊維1と、絶縁繊維3を取り外し、水洗いする方法が挙げられる。また、洗剤を用いて洗浄する方法も考えられる。この場合、洗剤の種類は導電繊維1と絶縁繊維3の素材に応じて決定されることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
静電フィルタに取り付けた静電容量検出手段を用いて容易に粉塵の集塵状態、フィルタの目詰まり状態が推測でき、これを空気質に関する家電や設備に取り付けることにより、ユーザーが行うメンテナンスの時期が分かりやすく、かつ省エネルギー効果の大きい集塵フィルタが提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施の形態1の静電フィルタ装置の構成を示す図
【図2】本発明の実施の形態1の静電フィルタ装置の拡大図
【図3】本発明の実施の形態1の静電フィルタ装置の第二の拡大図
【図4】本発明の実施の形態1の静電フィルタ装置を用いた粉塵の集塵を示す図
【図5】本発明の実施の形態2と5の静電フィルタ装置を用いた粉塵の集塵を示す図
【図6】本発明の実施の形態3の静電フィルタ装置を用いた粉塵の集塵を示す図
【図7】本発明の実施の形態3のコロナ放電手段の構成を示す図
【図8】本発明の実施の形態3の静電フィルタ装置を用いた粉塵の集塵を示す第二の図
【図9】本発明の実施の形態4の静電フィルタ装置を用いた粉塵の集塵を示す図
【図10】本発明の実施の形態4のメンテナンス表示と静電容量の関係を示す図
【図11】本発明の実施の形態5の静電容量と運転パターンを示す図
【図12】従来の静電フィルタの構成を示す図
【符号の説明】
【0081】
1 導電繊維
2 絶縁素材
3 絶縁繊維
4 電圧電源
5 静電容量検出手段
6 静電フィルタ装置
7 風路
8 送風機
9 粉塵
10 電圧制御手段
11 極性反転手段
12 コロナ放電装置
13 イオン
14 放電極
15 受電極
16 コロナ放電用電圧電源
17 放電量制御装置
18 メンテナンス表示手段
19 導電繊維
21 放電極
22 受電極
23 放電量制御装置
24 コロナ放電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する導電繊維と、導電性を有する導電繊維の表面が絶縁処理された絶縁繊維と、前記導電繊維と前記絶縁繊維の導電繊維の間に電圧を印加する電圧電源と、前記導電繊維と前記絶縁繊維の交差部分の静電容量を検出する静電容量検出手段とを備えてなる静電フィルタ装置。
【請求項2】
前記電圧電源の出力値を制御する電圧制御手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の静電フィルタ装置。
【請求項3】
前記電圧電源の極性を切り替える極性反転手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の静電フィルタ装置。
【請求項4】
風上にコロナ放電手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の静電フィルタ装置。
【請求項5】
コロナ放電手段として針状の放電極と、板状の受電極とを備えたことを特徴とする請求項1または4記載の静電フィルタ装置。
【請求項6】
コロナ放電手段の放電極が導電繊維の末端、または導電繊維の表面が絶縁処理された絶縁繊維の末端のいずれかから選択されることを特徴とする請求項1、4または5記載の静電フィルタ装置。
【請求項7】
コロナ放電手段の放電極が導電繊維の末端、かつ導電繊維の表面が絶縁処理された絶縁繊維の末端からなることを特徴とする請求項1、4または5記載の静電フィルタ装置。
【請求項8】
コロナ放電手段に放電量を調節する放電量制御手段を備えたことを特徴とする請求項1、4、5、6または7記載の静電フィルタ装置。
【請求項9】
導電繊維と前記導電繊維の表面が絶縁処理された絶縁繊維のメンテナンスを促すメンテナンス表示手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の静電フィルタ装置。
【請求項10】
静電容量検出手段の出力値が一定の場合、コロナ放電手段を起動させることを特徴とする請求項1、4、5、6、7または8記載の静電フィルタ装置。
【請求項11】
静電容量検出手段の出力値が一定値以下になった場合、電圧制御手段を起動させることを特徴とする請求項1または2記載の静電フィルタ装置。
【請求項12】
静電容量検出手段の出力値が一定値以下になった場合、極性反転手段を起動させることを特徴とする請求項1または3記載の静電フィルタ装置。
【請求項13】
静電容量検出手段の出力値が一定値以下になった場合、メンテナンス表示手段を起動させることを請求項1または9記載の静電フィルタ装置。
【請求項14】
静電容量検出手段の出力値が一定値以下になった場合、極性反転手段とメンテナンス表示手段を同時に起動させることを特徴とする請求項1、3または9記載の静電フィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−90205(P2009−90205A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−263107(P2007−263107)
【出願日】平成19年10月9日(2007.10.9)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】