説明

静電噴霧装置

【課題】噴霧ノズルから噴出する液滴の噴霧角度に応じて該液滴の帯電量が最適となるようにすることができるようにする。
【解決手段】静電噴霧装置は、薬液を無数の液滴Dにして噴出するとともに、該無数の液滴Dの噴霧角度Aを調節する噴霧角度調節手段36を有する噴霧ノズル25と、液滴Dの拡散範囲の外側に近接するように配設された環状電極26とを備え、薬液及び環状電極26の間に印加される高電圧により液滴Dを帯電させるように構成されている。そして、噴霧角度Aに対応して、噴霧ノズル25と環状電極26との相対位置を調節する噴霧ノズル−電極間相対位置調節手段37、又は、液滴−電極間相対位置調節手段、若しくは、電圧調整手段を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電気を利用して薬液等の液体を噴霧する静電噴霧装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の静電噴霧装置としては、本出願人による特許文献1記載のものを例示する。この静電噴霧装置101は、図10に示すように、導電性材料で形成された噴霧ノズル117と、該噴霧ノズル117から噴出される液滴Dの拡散範囲の外側に近接するように配設された環状電極119との間に高電圧を加えることにより、液滴Dを帯電させるように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−122091号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、噴霧ノズル117から噴出する液滴Dを効率的に帯電させるためには、液滴Dと環状電極との位置関係や、高電圧等の条件を最適に設定する必要があり、従来の静電噴霧装置101では、噴霧ノズル117から噴出する液滴Dの噴霧角度Aを固定するとともに、この固定的な噴霧角度Aのもとで、前記条件が設定されている。このため、例えば、遠くにある噴霧対象に省力で噴霧するために、噴霧角度Aを狭めることにより噴霧の到達距離を延ばしたり、近くにある噴霧対象に効率的に噴霧するために、噴霧角度Aを広げることにより噴霧の範囲を広げたりすることができないという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、第1の発明の静電噴霧装置は、
液体を無数の液滴にして噴出するとともに、該無数の液滴の噴霧角度を調節する噴霧角度調節手段を有する噴霧ノズルと、前記液滴の拡散範囲の外側に近接するように配設された電極とを備え、前記液体及び前記電極の間に印加される高電圧により前記液滴を帯電させるように構成された静電噴霧装置であって、
前記噴霧角度に対応して、前記噴霧ノズルと前記電極との相対位置を調節する噴霧ノズル−電極間相対位置調節手段を備えている。
【0006】
前記第1の発明の静電噴霧装置としては、特に限定されないが、次の態様を例示する。
(1−1)前記噴霧角度調節手段により前記噴霧角度を検出する噴霧角度検出手段を備え、前記噴霧ノズル−電極間相対位置調節手段は、該噴霧角度検出手段により検出された噴霧角度に対応して前記相対位置を調節するように構成された態様。
(1−2)前記噴霧ノズル−電極間相対位置調節手段は、該噴霧角度調節手段に連動して前記相対位置を調節するように構成された態様。
(1−3)前記噴霧ノズル−電極間相対位置調節手段は、前記相対位置を手動で調節するように構成された態様。
【0007】
第1の発明の構成によれば、前記噴霧角度に対応して、前記噴霧ノズルと前記電極との相対位置を調節する噴霧ノズル−電極間相対位置調節手段を備えているので、前記噴霧ノズルから噴出する前記液滴の前記噴霧角度に応じて該液滴の帯電量が最適となるようにすることができる。
【0008】
また、第2の発明の静電噴霧装置は、
液体を無数の液滴にして噴出するとともに、該無数の液滴の噴霧角度を調節する噴霧角度調節手段を有する噴霧ノズルと、前記液滴の拡散範囲の外側に近接するように配設された電極とを備え、前記液体及び前記電極の間に印加される高電圧により前記液滴を帯電させるように構成された静電噴霧装置であって、
前記噴霧角度に対応して、前記液滴の拡散範囲の外側に対する前記電極の相対位置を調節する液滴−電極間相対位置調節手段を備えている。
【0009】
前記第2の発明の静電噴霧装置としては、特に限定されないが、次の態様を例示する。
(2−1)前記噴霧角度調節手段により前記噴霧角度を検出する噴霧角度検出手段を備え、前記液滴−電極間相対位置調節手段は、該噴霧角度検出手段により検出された噴霧角度に対応して前記相対位置を調節するように構成された態様。
(2−2)前記液滴−電極間相対位置調節手段は、該噴霧角度調節手段に連動して前記相対位置を調節するように構成された態様。
(2−3)前記液滴−電極間相対位置調節手段は、前記相対位置を手動で調節するように構成された態様。
【0010】
第2の発明の構成によれば、前記噴霧角度に対応して、前記液滴の拡散範囲の外側に対する前記電極の相対位置を調節する液滴−電極間相対位置調節手段を備えているので、前記噴霧ノズルから噴出する前記液滴の前記噴霧角度に応じて該液滴の帯電量が最適となるようにすることができる。
【0011】
また、第3の発明の静電噴霧装置は、
液体を無数の液滴にして噴出するとともに、該無数の液滴の噴霧角度を調節する噴霧角度調節手段を有する噴霧ノズルと、前記液滴の拡散範囲の外側に近接するように配設された電極とを備え、前記液体及び前記電極の間に印加される高電圧により前記液滴を帯電させるように構成された静電噴霧装置であって、
前記噴霧角度に対応して、前記液体及び前記電極の間に印加される高電圧の量を調節する電圧調節手段を備えている。
【0012】
前記第3の発明の静電噴霧装置としては、特に限定されないが、次の態様を例示する。
(3−1)前記噴霧角度調節手段により前記噴霧角度を検出する噴霧角度検出手段を備え、前記電圧調節手段は、該噴霧角度検出手段により検出された噴霧角度に対応して前記高電圧の量を調節するように構成された態様。
(3−2)前記電圧調節手段は、該噴霧角度調節手段に連動して前記高電圧の量を調節するように構成された態様。
(3−3)前記電圧調節手段は、前記高電圧を手動で調節するように構成された態様。
【0013】
第3の発明の構成によれば、前記噴霧角度に対応して、前記液体及び前記電極の間に印加される高電圧の量を調節する電圧調節手段を備えているので、前記噴霧ノズルから噴出する前記液滴の前記噴霧角度に応じて該液滴の帯電量が最適となるようにすることができる。
【0014】
以上において、前記噴霧角度とは、噴霧ノズルから噴出する液滴の広がり角度のことをいう。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る静電噴霧装置によれば、噴霧ノズルから噴出する液滴の噴霧角度に応じて該液滴の帯電量が最適となるようにすることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1及び図2は本発明を具体化した第一実施形態の静電噴霧装置1を示している。図1は、本発明の静電噴霧装置1の全体構成を示しており、この装置は、作物の病気や虫の防除用薬液を収容し供給するための薬液供給部としての収容タンク2と、該収容タンク2から供給される薬液を加圧する薬液圧力発生部としてのポンプ3と、該薬液圧力発生部の吐出口にホース4及び薬液供給制御弁5を介して接続された手持式ノズル部9と、該手持式ノズル部9に高電圧を供給するための高電圧供給部6とを備えている。高電圧供給部6は、それを作動させるためのプッシュスイッチ6a(本例ではレバー式を採用)が手持式ノズル部9に取り付けられており、作業者が手持式ノズル部9を持つとともに、プッシュスイッチ6aを作動させるレバー6bを握っている間(プッシュスイッチ6aが押されている間)のみ高電圧供給部6が作動するようになっている。
【0017】
手持式ノズル部9は、直線状に延びる噴管11を備えている。噴管11の先端側には噴霧部21が取り付けられており、噴管11の基端側の周壁に設けられた薬液入口11aから供給された薬液が噴管11の内部を通して噴霧部21に送られるようになっている。噴管11の内部には、噴霧部21の噴霧角度Aを調節するための調節軸30が挿入されており、該調節軸30の基端は、噴管11の基端側に取り付けられた回転式グリップ部13に接続されている。調節軸30の基端側外周には雄ネジ部30aが設けられ、該雄ネジ部30aは噴管11の基端側に設けられた雌ネジ穴11bに螺合されている(第1ネジ部45)。これにより、回転式グリップ部13を回転させると、その回転方向に応じて、噴管11に対し該噴管11の長さ方向へ相対的に回転式グリップ部13及び調節軸30が移動するようになっている。
【0018】
噴霧部21は、噴管11の先端に取り付けられ薬液を無数の液滴Dにして噴出する噴霧ノズル25と、該噴霧ノズル25から噴出される液滴Dの拡散範囲の外側に近接するように配設された電極としての環状電極26と、該環状電極26を噴霧ノズル25に結合する電気絶縁性を有する電極ホルダ27とを備えている。噴霧ノズル25は、本例では導電性材料で形成されているが、これに限定されず、プラスチックやセラミックで形成されたものも適宜採用できる。この噴霧部21は、噴霧ノズル25に供給される薬液と環状電極26の間に印加される高電圧により液滴Dを帯電させるように構成されている。薬液と環状電極26の間に高電圧を印加する方法としては、特に限定されないが、薬液に接する導電性部位(噴霧ノズル25や、導電性材料で形成された収容タンク2等)や薬液中に浸けられた電極等と、環状電極26との間に高電圧を印加することを例示する。このとき、薬液に接する導電性部位や薬液中に浸けられた電極等を接地(アース)することが好ましい。
【0019】
噴霧ノズル25は、噴管11の先端にパッキン32を介してノズルキャップ33により取り付けられた噴板34を備えている。噴板34の中心には、ノズル穴34aが設けられている。噴板34の噴管内面側には、調節軸30の先端に取り付けられた中子31が配設されている。中子31の外周には斜めに溝31aが形成されており、螺旋流を形成するようになっている。また、噴管11の内周面における噴板34からやや距離をおいた部位には環状溝35が設けられている。そして、回転式グリップ部13を回転させることにより中子31を噴板34に近づけると、図2(a)に示すように中子31の外周のみから薬液が流出するため、螺旋流が強くなり、噴霧角度Aの大きな噴霧Sとなる。また、中子31を噴板34から離すと、図2(b)に示すように中子31の外周と環状溝35を薬液が流れるため、大きな流量となるとともに、螺旋流が緩やかになり、噴霧角度Aの小さな噴霧Sとなる。これが噴霧角度Aを調節する噴霧角度調節手段36である。
【0020】
電極ホルダ27は、噴管先端側が開口している略カップ状に形成されるとともに、その底壁部の中央には、噴管11を配設するための貫通穴27aが設けられている。また、電極ホルダ27の底壁部の内面側及び外面側には、導電性を有する薬液を通じて環状電極26の高電位が噴管11の基端側に伝わることを防止する漏電防止部28,28がそれぞれ設けられている。電極ホルダ27の開口には、略円環状に形成された電極カバー29が螺着されており、該電極カバー29には環状電極26が固定されている。この電極カバー29を回転させると、その回転方向に応じて、噴霧Sの噴出方向における噴霧ノズル25と環状電極26との相対位置を調節可能になっており、これが噴霧ノズル−電極間相対位置調節手段37である。そして、図2(a)に示すように噴霧角度Aの大きな噴霧Sとするときは、液滴Dの拡散範囲の外側と環状電極26の穴26aの内周とが近づきすぎないようにするために環状電極26を噴霧ノズル25に近づけ、図2(b)に示すように、噴霧角度Aの小さな噴霧Sとするときは、液滴Dの拡散範囲の外側と環状電極26の穴26aの内周とが離れすぎないようにするために環状電極26を噴霧ノズル25から遠ざけるようにする。こうすると、噴霧角度Aに応じて、液滴Dに対して効果的に静電気を帯電させることができる。
【0021】
以上のように構成された本例の静電噴霧装置1によれば、噴霧角度Aに対応して、噴霧ノズル25と環状電極26との相対位置を調節する噴霧ノズル−電極間相対位置調節手段37を備えているので、噴霧ノズル25から噴出する液滴Dの噴霧角度Aに応じて該液滴Dの帯電量が最適となるようにすることができる。
【0022】
次に、図3及び図4は本発明を具体化した第二実施形態を示している。この静電噴霧装置は、以下に示す点において、主に第一実施形態と相違している。従って、同実施形態と共通する部分については、同一符号を付することにより重複説明を省く(以下に示す他の実施形態についても同様。)。
【0023】
本例の電極ホルダ(図示略)には、環状電極26が固定的に取り付けられている。第一実施形態と同様のものとすることも可能である。
【0024】
噴霧ノズル25は、噴管11の先端に取り付けられたノズルキャップ42を備えている。ノズルキャップ42は、内筒体43と、該内筒体43の外周側に配設され、噴霧ノズル先端側が内筒体43に隙間なく接続された外筒体44とを備えている。外筒体44の内周面には雌ネジ44aが刻設されており、噴管11の先端側外周面に刻設された雄ネジ11cに螺合されている(第2ネジ部46)。内筒体43の噴管側外周面と、噴管11の先端側内周面との間はシール材としてのOリング47によりシールされている。内筒体43の噴霧ノズル先端側開口の内縁部には、その全周に渡る環状突部48が設けられており、該環状突部48により内筒体43の内側に噴板34が係止されている。調節軸30の先端側には、回転駆動部49が取り付けられており、噴板34と回転駆動部49の間には、パッキン50、中子51、及びバネ52が配設されている。中子51の外周には斜めに溝51aが形成されており、螺旋流を形成するようになっている。また、中子51の中心には貫通穴51bが形成されている。内筒体43の噴管側開口には噴霧方向に延びる切欠部43aが設けられるとともに、該切欠部43aには回転駆動部49の外周に突設された突部49aが噴霧方向へ摺動可能に嵌合しており、調節軸30の回転をノズルキャップ42に伝動するようになっている。噴管11と調節軸30との間の第1ネジ部45(図1参照)のピッチと、噴管11とノズルキャップ42との間の第2ネジ部46のピッチとは作動ネジとなっており、第2ネジ部46のピッチの方が小さく設計されており、両ネジ部45,46とも同じ方向に移動するようになっている。
【0025】
そして、図3(a)に示すように噴霧角度Aの大きな噴霧Sとするために回転式グリップ部(図示略)を回転させ調節軸30を噴霧ノズル25の噴板34に近づくように移動させると、中子中心の貫通穴51bは調節軸30により塞がれて行き、薬液は中子外周から流出されるようになり、中子外周の斜めの溝51aにより螺旋流となり噴霧角度Aは大きくなる。これに連動して噴霧ノズル25が環状電極26に近づくように自動的に移動し、液滴Dの拡散範囲の外側と環状電極26の穴26aの内周とが近づきすぎないようになる。また、図3(b)に示すように噴霧角度Aの小さな噴霧Sとするために調節軸30を噴霧ノズル25の噴板34から遠ざけるように移動させると、薬液は中子外周の溝51aからの流出もあるが中子中心の貫通穴51bからの流れが強くなり、流量が多くなるとともに、噴板34からの噴霧Sは溝51aからの流れに貫通穴51bからの流れが合流されるために噴霧角度Aは小さくなる。これに連動して噴霧ノズル25が環状電極26から遠ざかるように自動的に移動し、液滴Dの拡散範囲の外側と環状電極26の穴26aの内周とが離れすぎないようになる。こうすると、噴霧角度Aに応じて、液滴Dに対して効果的に静電気を帯電させることができる。
【0026】
本例の静電噴霧装置によっても、第一実施形態と同様の効果を得ることができる。さらに、本例によれば、噴霧角度Aに連動して噴霧ノズル25と環状電極26との相対位置が自動的に調節されるようになっているので、該相対位置を調節する手間を省くことができる。
【0027】
次に、図5は本発明を具体化した第三実施形態を示している。この静電噴霧装置61は、以下に示す点において、主に第一実施形態と相違している。
【0028】
本例の電極ホルダ27は、漏電防止部28,28と一体的に構成されており、噴管11に対して相対スライド可能に取り付けられている。噴管11の外周面と電極ホルダ27との間は、シール材としてのOリング62により、シールされている。噴管11には、それと平行に延びる駆動軸63が回転自在に支持されている。駆動軸63の噴管先端側には、雄ネジ部63aが設けられており、電極ホルダ27に設けられた雌ネジ穴64に螺入されている。また、駆動軸63の噴管基端側には、ギヤ65が取り付けられており、噴霧角度Aを調節する回転式グリップ部13に取り付けられたギヤ66に噛合されている。
【0029】
そして、噴霧角度Aの大きな噴霧Sとするために回転式グリップ部13を回転させ調節軸30を噴霧ノズル25の噴板34に近づくように移動させると、これに連動して環状電極26が噴霧ノズル25に近づくように自動的に移動し、液滴Dの拡散範囲の外側と環状電極26の穴26aの内周とが近づきすぎないようになる。また、噴霧角度Aの小さな噴霧Sとするために調節軸30を噴霧ノズル25の噴板34から遠ざけるように移動させると、これに連動して環状電極26が噴霧ノズル25から遠ざかるように自動的に移動し、液滴Dの拡散範囲の外側と環状電極26の穴26aの内周とが離れすぎないようになる。こうすると、噴霧角度Aに応じて、液滴Dに対して効果的に静電気を帯電させることができる。
【0030】
本例の静電噴霧装置61によっても、第二実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0031】
次に、図6及び図7は本発明を具体化した第四実施形態を示している。この静電噴霧装置は、以下に示す点において、主に第一実施形態と相違している。
【0032】
環状電極26は、電極ホルダ27の開口端部に、その周方向に一定間隔をおいて突設された軸72に回動自在に支持された4枚の羽根73を備えており、その先端側の面が電極ホルダ27の先端に取り付けられた電極カバー29にほぼ覆われている。電極カバー29は、電極ホルダ27に対して相対回転可能に取り付けられている。各羽根73は、それぞれ電極ホルダ27外方側に突設された接触部73aを備えるとともに、付勢手段としてのバネ74によって電極ホルダ27の外方(図7における反時計回り方向)に付勢されており、該接触部73aが電極カバー29の内周面に形成されたカム部75に接するようになっている。各カム部75は、一端側から他端側(図7における時計回り側)になるほど徐々に環状電極26の中心から遠ざかるように形成されている。これにより、電極ホルダ27に対して電極カバー29を回転させると、その回転方向に応じて、光学式カメラの絞りと同様に環状電極26の穴26aの大きさを調節することができるようになっている。これが、噴霧角度Aに対応して、液滴Dの拡散範囲の外側に対する環状電極26の相対位置を調節する液滴−電極間相対位置調節手段77である。
【0033】
そして、噴霧角度Aの大きな噴霧Sとするときは、図7(a)に示すように液滴Dの拡散範囲の外側と環状電極26の穴26aの内周とが近づきすぎないようにするために、電極カバー29を回転させて環状電極26の穴26aを拡大させ、噴霧角度Aの小さな噴霧Sとするときは、図7(b)に示すように液滴Dの拡散範囲の外側と環状電極26の穴26aの内周とが離れすぎないようにするために、電極カバー29を逆方向に回転させて環状電極26の穴26aを縮小させるようにする。こうすると、噴霧角度Aに応じて、液滴Dに対して効果的に静電気を帯電させることができる。
【0034】
なお、調節軸30の回転に連動して電極カバー29が回転するように構成することもできる。
【0035】
以上のように構成された本例の静電噴霧装置によれば、噴霧角度Aに対応して、液滴Dの拡散範囲の外側に対する環状電極26の相対位置を調節する液滴−電極間相対位置調節手段77を備えているので、噴霧ノズル25から噴出する液滴Dの噴霧角度Aに応じて該液滴Dの帯電量が最適となるようにすることができる。
【0036】
次に、図8は本発明を具体化した第五実施形態を示している。この静電噴霧装置は、以下に示す点において、主に第四実施形態と相違している。
【0037】
本例の環状電極26は、電極カバー29に固定されておらず、噴霧角度Aに対応して、穴26aの異なる環状電極26を適宜交換可能になっている。これが、噴霧角度Aに対応して、液滴Dの拡散範囲の外側に対する環状電極26の相対位置を調節する液滴−電極間相対位置調節手段77である。そして、噴霧角度Aの大きな噴霧Sとするときは、図8(a)に示すように液滴Dの拡散範囲の外側と環状電極26の穴26aの内周とが近づきすぎないようにするために穴26aの大きな環状電極26を噴霧部21に取り付け、噴霧角度Aの小さな噴霧Sとするときは、図8(b)に示すように液滴Dの拡散範囲の外側と環状電極26の穴26aの内周とが離れすぎないようにするために穴26aの小さな環状電極26を噴霧部21に取り付けるようにする。こうすると、噴霧角度Aに応じて、液滴Dに対して効果的に静電気を帯電させることができる。
【0038】
本例の静電噴霧装置によっても、第四実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0039】
次に、図9は本発明を具体化した第六実施形態を示している。この静電噴霧装置91は、以下に示す点において、主に第一実施形態と相違している。
【0040】
噴管11には、それと平行に延びる検出軸92aを備えた回転角度検出器92(例えば、ポテンショメータ等)が支持されている。検出軸92aには、ギヤ93が取り付けられており、噴霧角度Aを調節する回転式グリップ部13に取り付けられたギヤ94に噛合されている。これにより、回転式グリップ部13の回転角度を回転角度検出器92により検出するようになっている。回転角度検出器92から出力された検出信号は、制御信号発生器95に入力される。制御信号発生器95は、その入力信号に応じて高電圧供給部6を制御し、環状電極26に印加する高電圧を調節するように構成されている。これが、噴霧角度Aに対応して、薬液及び環状電極26の間に印加される高電圧の量を調節する電圧調節手段96である。
【0041】
そして、噴霧角度Aの大きな噴霧Sとするために回転式グリップ部13を回転させ調節軸30を噴霧ノズル25の噴板34に近づくように移動させると、これに連動して、液滴Dの拡散範囲の外側と環状電極26との距離が近くなり液滴Dの帯電量が過大にならないように、制御信号発生器95は高電圧供給部6からの高電圧を自動的に低めるようにする。また、噴霧角度Aの小さな噴霧Sとするために調節軸30を噴霧ノズル25の噴板34から遠ざけるように移動させると、これに連動して、液滴Dの拡散範囲の外側と環状電極26との距離が遠くなり液滴Dの帯電量が不足しないように、制御信号発生器95は高電圧供給部6からの高電圧を自動的に高めるようにする。こうすると、噴霧角度Aに応じて、液滴Dに対して効果的に静電気を帯電させることができる。
【0042】
なお、回転角度検出器92、ギヤ93,94を省き、噴霧角度Aに対応して、制御信号発生器95を手動で調節するように構成することもできる。
【0043】
本例の静電噴霧装置91によれば、噴霧角度Aに対応して、薬液及び環状電極26の間に印加される高電圧の量を調節する電圧調節手段96を備えているので、噴霧ノズル25から噴出する液滴Dの噴霧角度Aに応じて該液滴Dの帯電量が最適となるようにすることができる。
【0044】
さらに、本例によれば、噴霧角度Aに連動して薬液及び環状電極26の間に印加される高電圧の量が自動的に調節されるようになっているので、該相対位置を調節する手間を省くことができる。
【0045】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のように、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。
(1)本発明の静電噴霧装置を液肥の散布に使用すること。
(2)ノズル部9を農作業用機械の機体に支持させるように構成すること。
(3)噴霧装置では、噴霧角度Aが大きくなるほど薬液の流量が少なくなるので、噴霧角度検出手段として薬液の流量検出手段を設け、検出された薬液の流量に応じて、前記噴霧ノズル−電極間相対位置調節手段、前記液滴−電極間相対位置調節手段、又は前記電圧調節手段を制御するように構成すること。
(4)静電噴霧装置では、噴霧角度Aが大きくなるほど高電圧供給部6の消費電流が多くなるので、
噴霧角度検出手段として消費電流の検出手段を設け、検出された消費電流に応じて、前記噴霧ノズル−電極間相対位置調節手段、前記液滴−電極間相対位置調節手段、又は前記電圧調節手段を制御するように構成すること。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明を具体化した第一実施形態に係る静電噴霧装置の全体構成を示す側断面図である。
【図2】同静電噴霧装置の噴霧部の側断面図である。
【図3】本発明を具体化した第二実施形態に係る静電噴霧装置の噴霧部の要部を示す側断面図である。
【図4】同噴霧部の要部を示す斜視図である。
【図5】本発明を具体化した第三実施形態に係る静電噴霧装置の全体構成を示す側断面図である。
【図6】本発明を具体化した第四実施形態に係る静電噴霧装置の噴霧部の側断面図であり、図7のVI−VI線断面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】本発明を具体化した第五実施形態に係る静電噴霧装置の噴霧部の側断面図である。
【図9】本発明を具体化した第六実施形態に係る静電噴霧装置の全体構成を示す側断面図である。
【図10】従来の静電噴霧装置の噴霧部を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 静電噴霧装置
11 噴管
21 噴霧部
25 噴霧ノズル
26 環状電極
26a 穴
27 電極ホルダ
36 噴霧角度調節手段
37 電極間相対位置調節手段
61 静電噴霧装置
71 静電噴霧装置
77 電極間相対位置調節手段
81 静電噴霧装置
91 静電噴霧装置
96 電圧調節手段
A 噴霧角度
D 液滴
S 噴霧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を無数の液滴にして噴出するとともに、該無数の液滴の噴霧角度を調節する噴霧角度調節手段を有する噴霧ノズルと、前記液滴の拡散範囲の外側に近接するように配設された電極とを備え、前記液体及び前記電極の間に印加される高電圧により前記液滴を帯電させるように構成された静電噴霧装置であって、
前記噴霧角度に対応して、前記噴霧ノズルと前記電極との相対位置を調節する噴霧ノズル−電極間相対位置調節手段を備えた静電噴霧装置。
【請求項2】
液体を無数の液滴にして噴出するとともに、該無数の液滴の噴霧角度を調節する噴霧角度調節手段を有する噴霧ノズルと、前記液滴の拡散範囲の外側に近接するように配設された電極とを備え、前記液体及び前記電極の間に印加される高電圧により前記液滴を帯電させるように構成された静電噴霧装置であって、
前記噴霧角度に対応して、前記液滴の拡散範囲の外側に対する前記電極の相対位置を調節する液滴−電極間相対位置調節手段を備えた静電噴霧装置。
【請求項3】
液体を無数の液滴にして噴出するとともに、該無数の液滴の噴霧角度を調節する噴霧角度調節手段を有する噴霧ノズルと、前記液滴の拡散範囲の外側に近接するように配設された電極とを備え、前記液体及び前記電極の間に印加される高電圧により前記液滴を帯電させるように構成された静電噴霧装置であって、
前記噴霧角度に対応して、前記液体及び前記電極の間に印加される高電圧の量を調節する電圧調節手段を備えた静電噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−175397(P2006−175397A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373161(P2004−373161)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000100469)みのる産業株式会社 (158)
【Fターム(参考)】