説明

静電噴霧装置

【課題】帯電した液体を使用者へ噴霧する静電噴霧装置において、比較的に簡便な方法で液体をノズルの流出端へ搬送できるようにする。
【解決手段】タンク(71)内へ空気を供給することで該タンク(71)の液体の圧力を大きくして液体をタンク(71)からノズル(72)の流出端(72c)へ搬送する空気ポンプ(41)(41)を静電噴霧装置に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電噴霧装置に関し、特に静電噴霧装置の運転制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、容器に貯留された液体を噴霧する液体噴霧装置が知られている。そして、これらの液体噴霧装置の中には、特許文献1に示すように、ノズルの先端(流出端)に形成される電界を利用して帯電した液体を使用者へ噴霧する静電噴霧装置がある。
【0003】
この特許文献1の静電噴霧装置は、袋状の容器を収縮させて容器内の液体をノズルの流出端へ搬送する。この状態で、ノズルの流出端の液体に高電圧が印加されると、ノズルの流出端と対向電極との間に電界が形成される。これにより、ノズルの流出端で帯電された液体が引きちぎられて噴霧粒子となり、この噴霧粒子が拡散する。拡散した噴霧粒子は、所定の噴霧対象へ供給される。なお、特許文献1では、化粧水を噴霧粒子とし、この噴霧粒子を噴霧対象としての使用者の顔面等へ付着させるようにしている。
【0004】
ところで、従来の静電噴霧装置では、上記容器内の液体の量が減っても該容器を一定の力で押圧できるようにするために定荷重ゼンマイを用いている。これにより、静電噴霧装置から噴霧される液体の噴霧量を一定にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−022891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記定荷重ゼンマイの押圧力が常に一定であるため、液体の温度変化及び液体の種類によって液体の粘度が変わってしまうと、上記静電噴霧装置から噴霧される液体の噴霧量が変化してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、帯電した液体を使用者へ噴霧する静電噴霧装置において、使用者へ噴霧される液体の噴霧量を一定に保つようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、液体を貯留する容器(71)と、該容器(71)の内外を連通するノズル(72)と、該容器(71)の液体に所定電圧を印加する電圧印加部(50)と、上記容器(71)内へ空気を供給することで該容器(71)の液体の圧力を大きくして該液体を上記容器(71)から上記ノズル(72)の流出端(72c)へ搬送する搬送部(41)とを備えた静電噴霧装置を前提としている。
【0009】
そして、上記静電噴霧装置において、上記容器(71)内の圧力を検出する圧力検出部(43)と、上記容器(71)の液体の粘度uに応じて圧力目標値Psを設定する圧力設定部(4)と、上記圧力検出部(43)の検出値Pが上記圧力設定部(4)の圧力目標値Psとなるように、上記搬送部(41)の運転を制御する圧力調整部(5)とを備えていることを特徴としている。
【0010】
第1の発明では、上記搬送部(41)において、上記容器(71)内へ空気を供給すると上記容器(71)内の圧力が上がり、上記容器(71)内の液圧が大きくなる。すると、上記容器(71)の液体がノズル(72)の流入端(72d)から流入して該ノズル(72)の流出端(72c)まで搬送される。このように、上記容器(71)へ供給される空気の圧力で液体を搬送する。
【0011】
そして、上記容器(71)の液体の粘度に基づいて上記容器(71)内の圧力目標値Psが設定され、上記容器(71)の圧力Pが圧力目標値Psとなるように上記搬送部(41)の運転が調整される。
【0012】
上記容器(71)における液体の粘度が現在よりも高くなると、液体の流動抵抗が大きくなるので、上記容器(71)内の圧力が一定のままだと、上記ノズル(72)の流出端(72c)への液体の搬送量が不足する。この場合には、上記圧力設定部(4)が、上記搬送部(41)の圧力目標値Psを現在よりも大きな値に設定する。すると、上記搬送部(41)の出力が上がり、上記容器(71)の圧力が上昇する。これにより、上記ノズル(72)の流出端(72c)への液体の搬送量が増え、上記ノズル(72)の流出端(72c)への液体の搬送不足が補われる。
【0013】
一方、液体の粘度が現在よりも低くなると、液体の流動抵抗が小さくなるので、上記容器(71)内の圧力が一定のままだと、上記ノズル(72)の流出端(72c)への液体の搬送量が過剰になる。この場合には、上記圧力設定部(4)が、上記搬送部(41)の圧力目標値Psを現在よりも小さな値に設定する。すると上記搬送部(41)の出力が低下して、上記容器(71)の圧力が下がる。これにより、上記ノズル(72)の流出端(72c)への液体の搬送量が減り、上記ノズル(72)の流出端(72c)への過剰な液体の搬送が抑えられる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、上記容器(71)の液体の粘度uに応じて上記電圧印加部(50)の印加電圧Vを調整する電圧調整部(6)を備えていることを特徴としている。
【0015】
第2の発明では、上記容器(71)の液体の粘度に基づいて印加電圧値Vが演算され、この印加電圧値Vになるように上記電圧印加部(50)が調整される。
【0016】
上記容器(71)における液体の粘度が現在よりも高くなると、液体の流動抵抗が大きくなるので、上記電圧印加部(50)の印加電圧値Vが一定のままだと、上記ノズル(72)の流出端(72c)の電界強度が変化せず、上記ノズル(72)の流出端(72c)から糸状に流出する液体の量が不足する。この場合には、上記電圧調整部(6)が、上記電圧印加部(50)の印加電圧量を大きくする。すると、上記ノズル(72)の流出端(72c)の電界強度が強くなり、上記ノズル(72)の流出端(72c)から流出する液体の量が不足するのを抑えることができるようになる。
【0017】
一方、上記容器(71)における液体の粘度が現在よりも低くなると、液体の流動抵抗が小さくなるので、上記電圧印加部(50)の印加電圧値Vが一定のままだと、上記ノズル(72)の流出端(72c)の電界強度が変化せず、上記ノズル(72)の流出端(72c)から糸状に流出する液体の量が過剰になる。この場合には、上記電圧調整部(6)が、上記電圧印加部(50)の印加電圧値Vを小さくする。すると、上記ノズル(72)の流出端(72c)の電界強度が弱くなり、上記ノズル(72)の流出端(72c)から過剰に流出する液体の量を抑えることができるようになる。
【0018】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記容器(71)の液体の粘度uを直接検出する粘度検出部(33)を備え、上記圧力設定部(4)は、上記粘度検出部(33)の検出値に応じて圧力目標値Psを設定するように構成されていることを特徴としている。
【0019】
第3の発明では、上記液体の粘度を直接的に検知し、その検出値に基づいて上記圧力目標値Psを設定している。
【0020】
第4の発明は、第1又は第2の発明において、上記容器(71)の液体の温度を検出する温度検出部(29)と、上記温度検出部(34)から液体の粘度uを演算する演算部(3)とを備え、上記圧力設定部(4)は、上記演算部(3)の演算値に応じて圧力目標値Psを設定するように構成されていることを特徴としている。
【0021】
第4の発明では、上記液体の粘度を直接的に検知せずに、上記液体の温度から粘度を演算している。そして、この演算した粘度に基づいて上記圧力目標値Psを設定している。
【0022】
第5の発明は、第2の発明において、上記容器(71)の液体の粘度uを直接検出する粘度検出部(33)を備え、上記電圧調整部(6)は、上記粘度検出部(33)の検出値に応じて上記電圧印加部(50)の印加電圧Vを調整することを特徴としている。
【0023】
第5の発明では、上記液体の粘度を直接的に検知し、その検出値に基づいて上記印加電圧値Vを調整している。
【0024】
第6の発明は、第2の発明において、上記容器(71)の液体の温度を検出する温度検出部(29)と、上記温度検出部(34)から液体の粘度uを演算する演算部(3)とを備え、上記電圧調整部(6)は、上記演算部(3)の演算値に応じて上記電圧印加部(50)の印加電圧Vを調整することを特徴としている。
【0025】
第6の発明では、上記液体の粘度を直接的に検知せずに、上記液体の温度から粘度を演算している。そして、この演算した粘度に基づいて上記印加電圧値Vを調整している。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、上記容器(71)へ供給される空気の圧力で上記容器(71)の液体を上記ノズル(72)の流出端(72c)へ搬送することができる。これにより、従来とは違い、上記容器(71)を変形させる必要がなく、比較的に簡便な方法で液体を搬送することができる。
【0027】
また、上記容器(71)の液体の粘度に基づいて、上記容器(71)の圧力を調整することできる。上記容器(71)の液体の粘度が高くなると上記容器(71)の圧力を上げ、上記容器(71)の液体の粘度が低くなると上記容器(71)の圧力を下げる。
【0028】
これにより、液体の粘度の変化にかかわらず、上記ノズル(72)の流出端(72c)への液体の搬送量を常に一定にすることができ、上記静電噴霧装置の噴霧量を一定に保つことができる。
【0029】
また、上記第2の発明によれば、上記容器(71)の液体の粘度に基づいて、上記ノズル(72)の流出端(72c)の電界強度を調整することができる。上記容器(71)の液体の粘度が高くなると上記電圧印加部(50)の印加電圧値Vを高くし、上記容器(71)の液体の粘度が低くなると上記電圧印加部(50)の印加電圧値Vを低くする。
【0030】
これにより、液体の粘度の変化にかかわらず、上記ノズル(72)の流出端(72c)から流出する液体の量を常に一定にすることができ、上記静電噴霧装置の噴霧量を一定に保つことができる。
【0031】
また、上記第3の発明によれば、上記粘度検出部(33)により、上記液体の粘度を正確に検出することができ、この検出した粘度に基づいて上記圧力目標値Psを確実に設定することができる。
【0032】
また、上記第4の発明によれば、上記液体の粘度を粘度センサ等で直接的に検出する必要がなく、上記粘度センサよりも比較的に安価な温度センサ等で上記液体の温度を検出し、この検出した温度に基づいて上記圧力目標値Psを設定することができる。
【0033】
また、上記第5の発明によれば、上記粘度検出部(33)により、上記液体の粘度を正確に検出することができ、この検出した粘度に基づいて上記印加電圧値Vを確実に調整することができる。
【0034】
また、上記第6の発明によれば、上記液体の粘度を粘度センサ等で直接的に検出する必要がなく、上記粘度センサよりも比較的に安価な温度センサ等で上記液体の温度を検出し、この検出した温度に基づいて上記印加電圧値Vを調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施形態に係る静電噴霧装置の全体を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る静電噴霧装置を示す縦断面図である。
【図3】実施形態に係る静電噴霧装置のシステム構成を示す図である。
【図4】実施形態に係る静電噴霧装置の上部を示す斜視図である。
【図5】実施形態に係る静電噴霧装置のトップカバーの内部構造を示す図である。
【図6】実施形態に係る静電噴霧装置の内部構造を示す斜視図である。
【図7】実施形態に係る搬送ユニットの構成を示す図である。
【図8】実施形態に係る噴霧カートリッジを示す縦断面図である。
【図9】実施形態に係る噴霧カートリッジの正面図である。
【図10】実施形態に係る静電噴霧装置のポンプ容量制御の制御フロー図である。
【図11】実施形態に係る静電噴霧装置の印加電圧制御の制御フロー図である。
【図12】実施形態の変形例に係る静電噴霧装置のシステム構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0037】
本実施形態に係る静電噴霧装置(1)は、ヒアルロン酸等を含んだ液体を使用者に対して噴霧するものである。まず、静電噴霧装置(1)について説明した後に、上記静電噴霧装置(1)の運転制御を行うコントローラ(2)について説明する。
【0038】
〈静電噴霧装置〉
この静電噴霧装置(1)は、図1〜図3に示すように、ケーシング(10)と、該ケーシング(10)に着脱自在に装着される噴霧カートリッジ(70)と、ケーシング(10)内に収容される搬送ユニット(40)と、液体に対して電圧を印加する高電圧電源ユニット(電圧印加部)(50)と、電源となるアダプタ(18)とを備えている。
【0039】
上記ケーシング(10)は、縦長に形成された有底円筒状の部材である。ケーシング(10)は、デザインカバー(10a)と、底カバー(10b)と、トップカバー(11)とから構成されている。尚、本実施形態では、液体の噴霧方向を前面側とし、噴霧方向の背後方向を背面側としている。
【0040】
上記デザインカバー(10a)は、筒状に形成されてケーシング(10)の側方部を形成するカバーである。デザインカバー(10a)は、上下に開口端が形成されている。上記底カバー(10b)は、ケーシング(10)の下部の開口端を塞ぐものである。
【0041】
上記トップカバー(11)は、デザインカバー(10a)の上部の開口端を塞ぐものである。トップカバー(11)は、図4に示すように、その上面が背面側から前面側へ向かって斜め下方向へ傾斜して形成されている。そして、トップカバー(11)の概ね前面側には、噴霧カートリッジ(70)のノズル(72)を露出させるための噴霧開口部(14)が形成されている。噴霧開口部(14)の周縁部には、スライド可能なシャッタ(13)が取り付けられている。このシャッタ(13)は、図5に示すように、前面側にスライドさせると閉じ、背面側にスライドさせると開くように構成されている。
【0042】
また、トップカバー(11)には、噴霧動作のON/OFFを行う動作スイッチ(15)が設けられている。シャッタ(13)が背面側(シャッタ(13)を開く方向)に移動することでシャッタ(13)の側部(13a)が動作スイッチ(15)を下方に押すことで動作スイッチ(15)がONになる。つまり、シャッタ(13)は動作スイッチ(15)のON/OFFを切り換えるためのプッシャを構成している。動作スイッチ(15)がONになると、後述するコントローラ(2)が静電噴霧装置(1)の噴霧動作を開始させる。また、背面側に移動したシャッタ(13)は、下側からバネ(図示なし)によって付勢され、トップカバー(11)に保持されている。
【0043】
一方、シャッタ(13)が前面側(シャッタ(13)を閉じる方向)に移動することで、シャッタ(13)の側部(13a)が動作スイッチ(15)から離間して動作スイッチ(15)がOFFになる。動作スイッチ(15)がOFFになると、コントローラ(2)が静電噴霧装置(1)の噴霧動作を停止させる。すなわち、本実施形態の静電噴霧装置(1)は、使用者がシャッタ(13)をスライドさせることで噴霧動作のON/OFFを制御できるように構成されている。
【0044】
上記トップカバー(11)とデザインカバー(10a)との間には、周方向に亘って帯状の対向電極(12)が設けられている。この対向電極(12)は、ノズル(72)の流出端(72c)との間で電界を発生させるためのものである。本実施形態の静電噴霧装置(1)は、ノズル(72)の流出端(72c)の電荷を帯びた液体と対向電極(12)の間の電位差で発生する電界によってノズル(72)の流出端(72c)から吐出される液体を糸状に絞り込んで液糸(リガメント)を形成している。
【0045】
図6に示すように、上記デザインカバー(10a)の背面側には、上部機械室(28)に対応する高さ位置に、噴霧カートリッジ(70)を着脱させるための背面開口部(16)が形成されている。背面開口部(16)は略矩形状に形成され、その周縁部にはデザインカバー(10a)に着脱自在なリアカバー(17)が取り付けられている。
【0046】
上記ケーシング(10)は、その内部に下側ベース(21)と上側ベース(22)と仕切板(23)とを備えている。まず、下側ベース(21)はケーシング(10)内の底部寄りに設けられている。また、上側ベース(22)はケーシング(10)の長手方向の概ね中央に設けられている。各ベース(21,22)は、水平方向に延びてケーシング(10)内を上下に区画している。また、上記仕切板(23)は、下側ベース(21)と上側ベース(22)との間に亘って設けられ、ケーシング(10)の内部における、下側ベース(21)と上側ベース(22)との間の空間を前後に区画している。
【0047】
上記下側ベース(21)と上側ベース(22)との間には、中央機械室(24)が区画されている。そして、中央機械室(24)は、上述した仕切板(23)により、前面側の第1中央機械室(25)と背面側の第2中央機械室(26)とに区画されている。また、下側ベース(21)の下方に下部機械室(27)が区画され、上側ベース(22)の上方に上部機械室(28)が区画されている。
【0048】
上記下部機械室(27)には、温湿度センサ(29)と、人検知センサ(30)と、USB基板(31)とが収容されている。
【0049】
上記温湿度センサ(29)は、静電噴霧装置(1)の設置された部屋の温湿度を検知するセンサである。この温湿度センサ(29)は、後述するコントローラ(2)に接続され、検知した温湿度データは随時、コントローラ(2)に送られている。
【0050】
上記人検知センサ(30)は、静電噴霧装置(1)の噴霧対象となる使用者の有無を検知するためのものである。人検知センサ(30)は、例えば焦電型赤外線センサに構成されている。人検知センサ(30)は、下部機械室(27)内の前面側に収容されている。そして、人検知センサ(30)は、そのセンサ面をケーシング(10)の開口を介して前面側の斜め上方向を向くように配置されている。また、人検知センサ(30)のセンサ面の下半分は、マスク部材でマスクされている。これにより、検知範囲が静電噴霧装置(1)の前面側の上部に限定され、人の有無の検知精度を向上させることができる。人検知センサ(30)は、後述するコントローラ(2)に接続され、検知データは随時、コントローラ(2)に送られている。
【0051】
上記USB基板(31)は、USB(ユニバーサル・シリアル・バス、以下同じ)のコネクタ(19)が挿入されるものである。このUSB基板(31)は、下部機械室(27)の底部に配置されている。USB基板(31)には、USBのコネクタ(19)が接続される接続部(32)を備えている。
【0052】
本実施形態に係る静電噴霧装置(1)は、家庭用の交流電源(いわゆるコンセント)から供給される100Vの交流電圧を、アダプタ(18)で5Vの直流電圧に変換し、これを液体搬送ユニット(40)や高電圧電源ユニット(50)の電源として使用している。具体的には、アダプタ(18)と静電噴霧装置(1)とは、USBケーブルを介してUSBのコネクタ(19)が接続部(32)に挿入されることで接続されている。尚、静電噴霧装置(1)の電源としては上記アダプタ(18)に限られず、例えばパソコン等のUSBや自動車中のシガーソケット等を電源としてもよい。
【0053】
上記搬送ユニット(40)は、図3及び図7に示すように、空気ポンプ(搬送部)(41)と圧力センサ(43)と空気管(42)とを備えている。
【0054】
上記空気ポンプ(41)は、上記噴霧カートリッジ(70)のタンク(容器)(71)内へ空気を供給することで該タンク(71)の液体の圧力を大きくして該液体を上記タンク(71)から上記ノズル(72)の流出端(72c)へ搬送するものである。この空気ポンプ(41)は、ダイアフラム型のもので構成され、下部機械室(27)内に収容されている。下部機械室(27)内では、空気ポンプ(41)は下側ベース(21)の下部にポンプホルダ(図示なし)によって固定されている。
【0055】
この空気ポンプ(41)の吸気口は該空気ポンプ(41)の外部に開口し、空気ポンプ(41)の排気口は上記空気管(42)の一端に連通している。この空気ポンプ(41)が運転を開始すると、該空気ポンプ(41)の吸気口から吸い込まれた空気が上記空気管(42)を通じてタンク(71)へ供給され、該タンク(71)内の圧力が上がる。そして、空気ポンプ(41)が運転を停止すると、タンク(71)内の空気が上記空気管(42)を通じて空気ポンプ(41)へ逆流し、この逆流した空気は空気ポンプ(41)を通じて外部へ排出される。これにより、タンク(71)内の圧力は徐々に大気圧まで下がる。
【0056】
上記空気管(42)は、空気ポンプ(41)の空気をタンク(71)内に送るためのものである。空気管(42)は、下部機械室(27)から上部機械室(28)まで延びるチューブに構成されている。空気管(42)の一端は、上述したように空気ポンプ(41)に接続されている。又、空気管(42)の他端は、タンク(71)の吸入口(79)に接続されている。
【0057】
上記圧力センサ(43)は、上記タンク(71)内の圧力を検出するものである。この圧力センサ(43)は、後述する制御基板(61)に設けられている。又、この圧力センサ(43)の圧力検知口は上記空気管(42)の途中に開口している。この圧力センサ(43)は、後述するコントローラ(2)に接続されており、検知した圧力データは随時コントローラ(2)に送られる。
【0058】
上記高電圧電源ユニット(50)は、図3に示すように、電極部材(84)を介してタンク(71)内の液体に正、又は負極性の高電圧を印加するためのものである。この高電圧電源ユニット(50)は、出力部(51)と接地部(55)とを備えている。
【0059】
上記出力部(51)は、上記アダプタ(18)から供給された電圧(+5V)を高電圧に昇圧して出力させるためのものである。この出力部(51)は、第1中央機械室(25)内に収容された基板(52)上にトランジスタ(図示なし)、トランス(53)、及びダイオード等の電子機器を備えて構成されている。そして、出力部(51)は、アダプタ(18)から供給された電圧(+5V)を+3kVから+5kVの間、又は−4kVから−7kVの間の高電圧に昇圧させる。そして、出力部(51)は、その出力端子に高圧ライン(54)の他端が接続され、高圧ライン(54)及び電極部材(84)を介してタンク(71)内の液体に高電圧が印加されるよう構成されている。尚、出力部(51)は出力させる電圧の極性を切換可能に構成されている。上記接地部(55)は、接地され、出力部(51)に対するグランドを構成している。接地部(55)は、接地ライン(56)を介して対向電極(12)に接続されている。
【0060】
上記噴霧カートリッジ(70)は、図8及び図9に示すように、貯留した液体に電荷を付与して噴霧させるためのものである。この噴霧カートリッジ(70)は、タンク(71)と電極部材(84)とノズル(72)とノズルベース(74)と把手部(86)とで構成され、各構成部材は、分離不能(不可分)に一体形成されている。すなわち、タンク(71)内の液体が少なくなったり、無くなった場合は、全ての構成部材が同時に交換される。
【0061】
上記タンク(71)は、液体を内部に貯留するための容器である。具体的に、タンク(71)は、略矩形状の箱体に形成されて噴霧カートリッジ(70)の下部を構成している。このタンク(71)は、その底部が背面側に向かって下方に傾斜する底板(71b)に形成されている。このため、タンク(71)は背面側に最深部が形成される。これにより、ケーシング(10)が転倒した場合にも、タンク(71)内の液体は再び最深部に集まる。
【0062】
上記ノズルベース(74)は、ノズル(72)を保持するための部材である。ノズルベース(74)は、略円筒状に形成され、タンク(71)の首部材(71a)を介してタンク(71)と一体に形成されている。上記ノズルベース(74)は、内側凹部(75)と外側凹部(82)とが形成されている。
【0063】
上記内側凹部(75)は、ノズルベース(74)の内側端に形成された凹部である。内側凹部(75)は、底部の中央に軸方向の内側に突出した保持部(77)が形成されている。保持部(77)には、ノズル(72)が挿通される貫通孔(78)が形成されている。そして、保持部(77)の周囲には、チャンバ(81)が取り付けられている。このチャンバ(81)は、内側凹部(75)の内壁(76)と保持部(77)との間の隙間(85)の一部を埋めるものである。上記隙間(85)の一部をチャンバ(81)が埋めることで、タンク(71)内の液体が隙間(85)に侵入するのを防止している。また、内側凹部(75)の内壁(76)には、空気管(42)の他端が接続される吸入口(79)が形成されている。
【0064】
上記外側凹部(82)は、ノズルベース(74)の外側端に形成された凹部である。外側凹部(82)の内壁(83)は、ノズル(72)の露出部(72b)を覆うように形成されている。そして、外側凹部(82)の底部には、貫通孔(78)と連通する開口が形成されている。
【0065】
上記外側凹部(82)は、その内壁(83)がノズル(72)の流出端(72c)と一定の距離を保つことで、ノズル(72)の露出部(72b)の周りに空気層を形成している。この空気層は絶縁材として機能し、これによって、ノズル(72)の流出端(72c)に安定した電界が形成される。そして、ノズル(72)の流出端(72c)は外側凹部(82)の内壁(83)の先端から突出するように形成されている。
【0066】
上記ノズル(72)は、柔軟な樹脂製の細管状に形成されたノズルである。ノズル(72)は外径が0.3mmから0.4mmの間に形成され、内径が0.1mmから0.2mmの間で形成されている。ノズル(72)は、ノズルベース(74)の貫通孔(78)に挿通されて取り付けられ、先端が外側凹部(82)の内壁(83)の先端より突出して外部に開口する一方、基端側(72a)は、タンク(71)内の最深部の近傍まで延びて液体に連通している。このノズル(72)の基端側(72a)は、本発明に係るノズル延伸部を構成している。このノズル(72)の流入端(72d)がタンク(71)内の最深部まで延びることでタンク(71)内の液体を最後まで使用することができる。
【0067】
上記電極部材(84)は、金属製の棒状に形成された部材である。電極部材(84)は、一端がタンク(71)内の底部に挿通されて液体内に浸漬されている。また、電極部材(84)の他端は、タンク(71)の外部まで延びて配置され、高圧ライン(54)の一端が接続されている。つまり、電極部材(84)は、高電圧電源ユニット(50)の出力部(51)と電気的に接続され、タンク(71)内の液体に高電圧を印加するように構成されている。
【0068】
以上のように、噴霧カートリッジ(70)は、空気ポンプ(41)の空気によってタンク(71)内の液体をノズル(72)へ搬送する一方、タンク(71)内の液体に高電圧を印加してノズル(72)の流出端(72c)に電界を形成することで、ノズル(72)の流出端(72c)から液体を連続して霧状に噴射している。
【0069】
この噴霧カートリッジ(70)は、タンク(71)内の液体が無くなるか、少なくなると交換される。噴霧カートリッジ(70)を取り出す際は、静電噴霧装置(1)を停止し、ケーシング(10)からリアカバー(17)を取り外し、カートリッジホルダ(70a)ごと噴霧カートリッジ(70)を取り出す。噴霧カートリッジ(70)を取り付ける際は、カートリッジホルダ(70a)に噴霧カートリッジ(70)を取り付けた状態で背面開口部(16)から上部機械室(28)内に収容してケーシング(10)に取り付ける。
【0070】
〈コントローラ〉
上記コントローラ(2)は、図3に示すように、静電噴霧装置(1)の運転動作を制御するものである。この運転動作の中には、上記空気ポンプ(41)のポンプ容量制御及び上記高電圧電源ユニット(50)の印加電圧制御が含まれる。このポンプ容量制御及び印加電圧制御については、詳しく後述する。
【0071】
上記コントローラ(2)は、第2中央機械室(26)に収容された制御基板(61)上に第1及び第2演算部(3,7)と圧力設定部(4)と圧力調整部(5)と電圧調整部(6)とを備えている。そして、コントローラ(2)には、圧力センサ(43)、人検知センサ(30)、温湿度センサ(29)、及び動作スイッチ(15)が接続されている。
【0072】
上記第1演算部(3)は、上記温湿度センサ(29)で検出した温度Tに基づいて液体の粘度uを演算する。ここで、本実施形態の静電噴霧装置(1)では、液体の温度調節を行わないので、静電噴霧装置の周囲温度と液体の温度とは実質的に同じであるとし、上記温湿度センサ(29)の温度値Tを液体の温度とみなしている。又、上記第1演算部(3)の演算は、液体の物性における温度と粘度との関係に基づいて行われる。つまり、上記温度値Tが高くなるほど粘度値uが低い値になり、上記温度値Tが低くなるほど粘度値uが高い値になる。尚、この第1演算部(3)は、使用する液体の種類に応じて温度から粘度を演算することが可能に構成されている。
【0073】
上記第2演算部(7)は、上記第1演算部(3)で演算された液体の粘度uに基づいて上記高電圧電源ユニット(50)の印加電圧値Vを演算する。この第2演算部(7)では、上記ノズル(72)の流出端(72c)から糸状に流出される液体の量が、該液体の粘度にかかわらず一定となるように印加電圧値Vが演算される。
【0074】
上記圧力設定部(4)は、上記第1演算部(3)の演算値uに基づいて圧力目標値Psを設定する。ここで、この圧力設定部(4)では、上記ノズル(72)の流出端(72c)へ送られる液体の量が、該液体の粘度にかかわらず一定となるように圧力目標値Psを設定する。
【0075】
上記圧力調整部(5)は、上記空気ポンプ(41)の運転動作を制御して上記タンク(71)内の圧力を調整するものである。この圧力調整部(5)では、上記タンク(71)内の圧力が圧力目標値Psとなるように上記空気ポンプ(41)の運転動作を制御する。
【0076】
上記空気ポンプ(41)を起動させると、該上記空気ポンプ(41)を通じて上記タンク(71)内へ空気が供給される。これにより、上記タンク(71)内の圧力が上昇する。一方、上記空気ポンプ(41)を停止すると上記空気ポンプ(41)を通じて上記タンク(71)内の空気が排出される。これにより、上記タンク(71)内の圧力が低下する。
【0077】
又、上記空気ポンプ(41)の起動時には必要に応じて容量制御を行って上記タンク(71)内の圧力を調整する。この空気ポンプ(41)の容量制御は、上記空気ポンプ(41)に対するデューティ値Dの変更により行われる。
【0078】
具体的には、上記空気ポンプ(41)に対して周期的に印加される高電圧及び低電圧のうち高電圧の印加時間を変化させる。デューティ値Dを上げると、高電圧の印加時間が増えて上記空気ポンプ(41)の容量が大きくなり、上記タンク(71)内の圧力が上がる。一方、デューティ値Dを下げると、高電圧の印加時間が減って上記空気ポンプ(41)の容量が小さくなり、上記タンク(71)内の圧力が下がる。
【0079】
上記電圧調整部(6)は、上記第2演算部(7)で演算された印加電圧値Vになるように、上記高電圧電源ユニット(50)を調整する。
【0080】
−運転動作−
〈静電噴霧装置の動作〉
上記本実施形態の静電噴霧装置(1)の動作について説明する。この静電噴霧装置(1)では、液体が液糸(リガメント)状態で噴出され、液滴に分裂し、拡散されて使用者に到達する。この静電噴霧装置(1)は、噴霧カートリッジ(70)がケーシング(10)内に収容された状態で運転可能な状態となる。
【0081】
まず、使用者が手動でシャッタ(13)をケーシング(10)の背面方向にスライドさせて開けると、シャッタ(13)が動作スイッチ(15)を押してON状態となる。動作スイッチ(15)がON状態となると、コントローラ(2)が空気ポンプ(41)を駆動させる。空気ポンプ(41)は空気管(42)からタンク(71)内へ空気を導入する。タンク(71)内では、空気圧が高くなり、タンク(71)内の液体が空気に押されてノズル(72)の流入端(72d)から内部に流入する。そして、ノズル(72)の内部に流入した液体はノズル(72)の流出端(72c)まで搬送される。
【0082】
一方で、動作スイッチ(15)がON状態になると、コントローラ(2)の電圧調整部(6)は、高電圧電源ユニット(50)の出力部(51)から高電圧を出力する。高電圧は、電極部材(84)を介してタンク(71)内の液体に印加される。
【0083】
そして、ノズル(72)の流出端(72c)では、電荷を帯びた液体と対向電極(12)との間に電位差が生じ、電界が発生する。ノズル(72)の流出端(72c)の液体は、電界に引っ張られて液糸(リガメント)状態で噴出され、その後、概ね数十μmから300μm程度の大きさの液滴に分裂する。液体には電荷が付与されているため、分裂によって互いに斥力が生じて液滴は拡散する。拡散した液滴は、グランドとなる使用者に向かって飛散し、使用者の顔面に付着する。
【0084】
また、コントローラ(2)は、動作スイッチ(15)がON状態であっても、人検知センサ(30)からの検知データに基づいて噴霧動作を制御することもできる。具体的には、人検知センサ(30)が使用者の無しを検知すると、電圧調整部(6)の高電圧の出力を停止する一方、空気ポンプ(41)の運転を停止する。さらに、再び人検知センサ(30)が使用者の有りを検知すると、電圧調整部(6)の高電圧の出力を開始する一方、空気ポンプ(41)の運転を開始する。これによって、使用者がいない状況での無駄な噴霧を確実に防止することができる。
【0085】
〈ポンプ容量制御〉
次に、上記コントローラ(2)が行うポンプ容量制御について説明する。ポンプ容量制御の制御フロー図を図10に示す。このポンプ容量制御は、上記空気ポンプ(41)の起動によって開始される。
【0086】
まず、ステップST1aでは、上記温湿度センサ(29)から入力された現在の温度値Tに基づいて上記空気ポンプ(41)のデューティ値Dの初期値が設定される。上記空気ポンプ(41)の起動時は、この初期値で運転される。
【0087】
次に、ステップST2aでは、上記第1演算部(3)において、上記温湿度センサ(29)から入力された現在の温度値Tを液体の温度とみなし、この温度に基づいて液体の現在の粘度値uが演算される。そして、この粘度値uが上記圧力設定部(4)へ出力されて、ステップST3aが行われる。
【0088】
ステップST3aでは、上記圧力設定部(4)において、この粘度値uに基づいて容器(71)内の圧力目標値Psが設定される。ここで、この圧力設定部(4)では、上記ノズル(72)の流出端(72c)へ送られる液体の量が、該液体の粘度にかかわらず一定となるように圧力目標値Psを設定する。
【0089】
具体的に、液体の粘度が高くなると流動抵抗が大きくなるので、上記タンク(71)の圧力が一定のままだと、上記ノズル(72)の流出端(72c)への液体の搬送量が不足する。この場合には、上記圧力設定部(4)が上記圧力目標値Psを現在よりも大きな値に設定する。逆に、液体の粘度が低くなると流動抵抗が小さくなるので、上記タンク(71)の圧力が一定のままだと、上記ノズル(72)の流出端(72c)への液体の搬送量が過剰になる。この場合には、上記圧力設定部(4)が上記圧力目標値Psを小さく設定する。そして、ステップST3aの処理が終了すると、次のステップST4aへ移る。
【0090】
ステップST4aでは、上記圧力調整部(5)において、上記圧力センサ(43)から入力された圧力値Pが上記圧力目標値Psよりも高いか否かが判定される。この圧力値Pが上記圧力目標値Psよりも大きい場合にはステップST5aへ移り、そうでなければステップST6aへ移る。
【0091】
ステップST5aでは、上記圧力調整部(5)において、上記空気ポンプ(41)のデューティ値Dが低い値に変更される。これにより、上記容器(71)の圧力が下がり、上記圧力センサ(43)の圧力値Pが上記圧力目標値Psへ近づく。そして、ステップST5aからステップST8aへ移る。
【0092】
一方、ステップST6aでは、上記圧力調整部(5)において、上記圧力センサ(43)から入力された圧力値Pが上記圧力目標値Psよりも低いか否かが判定される。この圧力値Pが上記圧力目標値Psよりも低い場合にはステップST7aへ移り、そうでなければステップST8aへ移る。ここで、ステップST6aからステップST8aへ移る場合には、上記圧力値Pが上記圧力目標値Psである場合に限られる。
【0093】
ステップST7aでは、上記圧力調整部(5)において、上記空気ポンプ(41)のデューティ値Dが高い値に変更される。これにより、上記容器(71)の圧力が上がり、上記圧力センサ(43)の圧力値Pが上記圧力目標値Psへ近づく。そして、ステップST7aからステップST8aへ移る。
【0094】
ステップST8aでは、上記コントローラ(2)から上記空気ポンプ(41)へ停止信号が入力されているか否かが判定される。停止信号が入力されていなければ、ステップST8aからステップST2aへ移り、上述した処理が繰り返される。一方、停止信号が入力されれば上記コントローラ(2)のポンプ容量制御は終了する。
【0095】
このポンプ容量制御では、例えば上記静電噴霧装置の周囲温度の変化によって液体の温度が変化した場合でも、容器(71)からノズル(72)の流出端(72c)へ搬送される液体の量を常に一定に保つことができる。
【0096】
〈印加電圧制御〉
次に、印加電圧制御について説明する。この印加電圧制御の制御フロー図を図11に示す。この印加電圧制御は、上記高電圧電源ユニット(50)の起動によって開始される。
【0097】
まず、ステップST1bでは、上記第1演算部(3)において、上記温湿度センサ(29)から入力された現在の温度値Tに基づいて液体の現在の粘度値uが演算される。そして、この粘度値uが上記第2演算部(7)へ出力されて、ステップST2bが行われる。
【0098】
ステップST2bでは、上記第2演算部(7)において、上記第1演算部(3)から入力された粘度値uに基づいて上記高電圧電源ユニット(50)の印加電圧値Vが演算される。この粘度値u及び印加電圧値Vの関係は比例関係であり、液体の粘度値uが高くなるほど上記高電圧電源ユニット(50)の印加電圧値Vが大きくなり、液体の粘度値uが低くなるほど上記高電圧電源ユニット(50)の印加電圧値Vが小さくなる。
【0099】
つまり、液体の粘度が高くなると流動抵抗が大きくなるので、上記高電圧電源ユニット(50)の入力が一定のままだと、上記ノズル(72)の流出端(72c)から流出する液体の量が不足する。この場合には、上記電圧調整部(6)が上記印加電圧値Vを大きく設定する。これにより、上記ノズル(72)の流出端(72c)の電界が強くなって、ノズル(72)の流出端(72c)の液体への引張力が大きくなり、上記ノズル(72)の流出端(72c)から流出する液体の量が不足するのを抑えることができるようになる。
【0100】
逆に、液体の粘度が低くなると流動抵抗が小さくなるので、上記高電圧電源ユニット(50)の出力が一定のままだと、上記ノズル(72)の流出端(72c)から流出する液体の量が過剰になる。この場合には、上記電圧調整部(6)が上記印加電圧値Vを小さく設定する。これにより、上記ノズル(72)の流出端(72c)の電界が弱くなって、ノズル(72)の流出端(72c)の液体への引張力が小さくなり、上記ノズル(72)の流出端(72c)から流出する液体の量が過剰になるのを抑えることができるようになる
上記第2演算部(7)において、粘度値uと印加電圧値Vの関係を比例関係とすることで、ノズル(72)の流出端(72c)の電界によって引っ張られる液体の量が、該液体の粘度にかかわらず一定となるような印加電圧値Vを演算することができるようになる。この印加電圧値Vが上記高電圧電源ユニット(50)へ出力されて、ステップST3bにおいて、上記高電圧電源ユニット(50)における印加電圧の変更が行われる。以上の処理は、上記高電圧電源ユニット(50)の動作が停止するまで連続的に行われる。
【0101】
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、上記タンク(71)へ供給される空気の圧力で上記タンク(71)の液体を上記ノズル(72)の流出端(72c)へ搬送することができる。これにより、従来とは違い、上記タンク(71)を変形させる必要がなく、比較的に簡便な方法で液体を搬送することができる。
【0102】
又、本実施形態によれば、上記タンク(71)の液体の粘度に基づいて、上記タンク(71)の圧力を調整することできる。上記タンク(71)の液体の粘度が高くなると上記タンク(71)の圧力を上げ、上記タンク(71)の液体の粘度が低くなると上記タンク(71)の圧力を下げる。これにより、液体の粘度の変化にかかわらず、上記ノズル(72)の流出端(72c)への液体の搬送量を常に一定にすることができ、上記静電噴霧装置(1)の噴霧量を一定に保つことができる。
【0103】
又、本実施形態によれば、上記液体の粘度を粘度センサ等で直接的に検出する必要がなく、上記粘度センサよりも比較的に安価な温湿度センサ(29)で上記液体の温度を検出し、この検出した温度に基づいて上記圧力目標値Psを設定することができる。このように、比較的に安価な方法で上記圧力目標値Psを設定することができる。
【0104】
又、本実施形態によれば、上記タンク(71)の液体の粘度に基づいて、上記ノズル(72)の流出端(72c)の電界強度を調整することができる。上記タンク(71)の液体の粘度が高くなると上記高電圧電源ユニット(50)の印加電圧値Vを高くし、上記タンク(71)の液体の粘度が低くなると上記高電圧電源ユニット(50)の印加電圧値Vを低くする。これにより、液体の粘度の変化にかかわらず、上記ノズル(72)の流出端(72c)から流出する液体の量を常に一定にすることができ、上記静電噴霧装置(1)の噴霧量を一定に保つことができる。
【0105】
又、本実施形態によれば、上記液体の粘度を粘度センサ等で直接的に検出する必要がなく、上記粘度センサよりも比較的に安価な温湿度センサ(29)で上記液体の温度を検出し、この検出した温度に基づいて上記印加電圧値Vを調整することができる。このように、比較的に安価な方法で上記印加電圧値Vを調整することができる。
【0106】
−実施形態の変形例−
上記実施形態では、液体の粘度を検知する際に上記温湿度センサ(29)を用いていたが、この変形例では、図12に示すように、粘度センサ(粘度検出部)(33)を用いている。これにより、液体の粘度を正確に検知することができる。この結果、上記コントローラ(2)におけるポンプ容量制御及び印加電圧制御の制御性を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上説明したように、本発明は、静電噴霧装置に関し、特に静電噴霧装置の運転制御について有用である。
【符号の説明】
【0108】
1 静電噴霧装置
2 コントローラ
3 第1演算部
4 圧力設定部
5 圧力調整部
6 電圧調整部
7 第2演算部
10 ケーシング
12 対向電極
29 温湿度センサ
40 搬送ユニット
41 空気ポンプ(搬送部)
43 圧力センサ
50 高電圧電源ユニット(電圧印加部)
70 噴霧カートリッジ
71 タンク(容器)
72 ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留する容器(71)と、該容器(71)の内外を連通するノズル(72)と、該容器(71)の液体に所定電圧を印加する電圧印加部(50)と、上記容器(71)内へ空気を供給することで該容器(71)の液体の圧力を大きくして該液体を上記容器(71)から上記ノズル(72)の流出端(72c)へ搬送する搬送部(41)とを備えた静電噴霧装置であって、
上記容器(71)内の圧力を検出する圧力検出部(43)と、
上記容器(71)の液体の粘度uに応じて圧力目標値Psを設定する圧力設定部(4)と、
上記圧力検出部(43)の検出値Pが上記圧力設定部(4)の圧力目標値Psとなるように、上記搬送部(41)の運転を制御する圧力調整部(5)とを備えていることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項2】
請求項1において
上記容器(71)の液体の粘度uに応じて上記電圧印加部(50)の印加電圧Vを調整する電圧調整部(6)を備えていることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
上記容器(71)の液体の粘度uを直接検出する粘度検出部(33)を備え、
上記圧力設定部(4)は、上記粘度検出部(33)の検出値に応じて圧力目標値Psを設定するように構成されていることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、
上記容器(71)の液体の温度を検出する温度検出部(29)と、
上記温度検出部(34)から液体の粘度uを演算する演算部(3)とを備え、
上記圧力設定部(4)は、上記演算部(3)の演算値に応じて圧力目標値Psを設定するように構成されていることを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項5】
請求項2において、
上記容器(71)の液体の粘度uを直接検出する粘度検出部(33)を備え、
上記電圧調整部(6)は、上記粘度検出部(33)の検出値に応じて上記電圧印加部(50)の印加電圧Vを調整することを特徴とする静電噴霧装置。
【請求項6】
請求項2において、
上記容器(71)の液体の温度を検出する温度検出部(29)と、
上記温度検出部(34)から液体の粘度uを演算する演算部(3)とを備え、
上記電圧調整部(6)は、上記演算部(3)の演算値に応じて上記電圧印加部(50)の印加電圧Vを調整することを特徴とする静電噴霧装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−86173(P2012−86173A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235872(P2010−235872)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】