説明

静電容量型センサの感度測定装置及びその測定方法

【課題】従来よりも簡便に感度を測定することができ、製造コストを低減することができる静電容量型センサの感度測定装置及びその測定方法を提供すること。
【解決手段】コンデンサマイクロホンの感度測定装置100は、マイクカプセル10の振動膜11a側に設けられた加圧容器101と、加圧容器101内の圧力を加減圧する加圧器102と、加圧器102を駆動するポンプ103と、加圧容器101内の圧力を測定する圧力計104と、マイクカプセル10に接続された電源105と、マイクカプセル10の静電容量を測定する容量計106と、各装置の制御及び各種データを収集するPC107とを備え、加圧容器101内の圧力Pを変化させることによって、マイクカプセル10の振動膜11aに対し圧力を加減し、圧力に対する静電容量の変化量から感度を測定する構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量の変化量を検知して動作する静電容量型センサの感度測定装置及びその測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコン半導体を主材料として半導体加工技術又はマイクロマシン加工技術により製造される静電容量型センサが知られている。この静電容量型センサは、圧力や加速度等の変化を静電容量の変化に変換して検知するものである。例えば、静電容量型センサには、音を検知するシリコンマイクロホン、圧力を検知する静電容量型圧力センサ、加速度を検知する静電容量型加速度センサ等がある。以下、シリコンマイクロホンを例に挙げ、本発明に係る背景技術を説明する。
【0003】
従来のシリコンマイクロホンは、単結晶シリコンの振動膜と固定電極板とからなる対向電極を有し、図6に示すようなマイクカプセル50を備えている(例えば、特許文献1参照)。マイクカプセル50は、シリコンウェハを加工して形成されたシリコン基板51に設けられた振動膜51aと、空隙を介して振動膜51aと対向する固定電極板52と、振動膜51aと固定電極板52とを電気的に絶縁させるための絶縁膜53とを備えている。振動膜51a及び固定電極板52は、それぞれ、外部装置と電気的に接続するための電極54及び55を有している。
【0004】
マイクカプセル50は、音圧に応じて振動膜51aが振動することにより、振動膜51aと固定電極板52との間の静電容量が変化し、外部装置により静電容量の変化量が検出されることによって、音圧が電気信号に変換される。
【0005】
従来、シリコンマイクロホンの感度を評価するには、個々のマイクカプセルを増幅回路に接続してパッケージに収め、マイクカプセルの静電容量の変化が電圧として出力される構成として、例えば音響無響室のような測定用の部屋において、標準スピーカの音を入力したときの出力電圧を測定する方法が採られている。
【特許文献1】特開2002−27595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来のシリコンマイクロホンのマイクカプセルは、前述のように、マイクロマシン加工技術を用いてシリコンウェハ上に一括して作製され、その数は数百個〜数千個と膨大になるので、マイクカプセルの感度の測定工程が煩雑になり、製造コストが増大するという課題があった。
【0007】
また、同一のシリコンウェハ内で良品、不良品を選別する際には、不良品に用いるものも含めて増幅回路やパッケージが必要になるので、製造コストが増大するという課題があった。この課題の対策として、増幅回路やパッケージを共通化することによって製造コストの増大を抑えることが考えられる。例えば、シリコンウェハ上でパッケージし、マイクカプセルを順次切り替えながら1つの増幅回路に接続して測定することも考えられるが、マイクカプセルの位置によっては、マイクカプセルから増幅回路に至る配線が長くなってしまい、著しく感度が低下し、測定が困難になってしまうという課題が生じる。さらに、この構成では、シリコンウェハ上で音が回折するので、実際のマイクにするときと比べて音場が著しく異なってしまい、正しい感度データが得られないという課題が生じる。
【0008】
本発明は、前述のような事情に鑑みてなされたものであり、従来よりも簡便に感度を測定することができ、製造コストを低減することができる静電容量型センサの感度測定装置及びその測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の静電容量型センサの感度測定装置は、外力に応じて変位する可動電極板と、該可動電極板に対向配置された固定電極板とを備えた静電容量型センサの感度測定装置であって、前記可動電極板に対し圧力を加減する加減圧手段と、前記可動電極板と前記固定電極板との間の静電容量を測定する静電容量測定手段と、前記圧力に対する前記静電容量の変化量から前記静電容量型センサの感度を測定する感度測定手段とを備えた構成を有している。
【0010】
この構成により、本発明の静電容量型センサの感度測定装置は、可動電極板に対し圧力を加減し、圧力に対する静電容量の変化量から感度を測定するので、従来よりも簡便に感度を測定することができ、製造コストを低減することができる。
【0011】
また、本発明の静電容量型センサの感度測定装置は、前記可動電極板と前記固定電極板との間に電圧を印加する電圧印加手段を備え、前記感度測定手段は、前記電圧を印加した状態又は前記電圧を印加しない状態のいずれかで前記静電容量型センサの感度を測定するものである構成を有している。
【0012】
この構成により、本発明の静電容量型センサの感度測定装置は、電圧を印加する場合と印加しない場合とにおいて、静電容量や、音圧に対する静電容量の変化量が異なる場合、電圧を印加した状態で静電容量を測定することができるので、使用状況を考慮した正しい感度を得ることができる。
【0013】
さらに、本発明の静電容量型センサの感度測定装置は、開口部を有する加圧容器と、前記可動電極板を前記加圧容器の内部側に配置して前記静電容量型センサを前記開口部に密閉状態に取り付ける密閉取付手段と、前記加圧容器内の圧力を測定する圧力計とを備え、前記加減圧手段は、前記加圧容器内の圧力を加減することによって前記可動電極板に対し圧力を加減するものである構成を有している。
【0014】
この構成により、本発明の静電容量型センサの感度測定装置は、加圧容器内の圧力を加減することによって可動電極板に対し圧力を加減し、圧力に対する静電容量の変化量から感度を測定するので、従来よりも簡便に感度を測定することができ、製造コストを低減することができる。
【0015】
さらに、本発明の静電容量型センサの感度測定装置は、前記密閉取付手段は、複数の静電容量型センサを前記開口部に密閉状態に取り付けるものであり、前記複数の静電容量型センサのうち測定対象とするものを選択するセンサ選択手段を備え、前記静電容量測定手段は、選択された静電容量型センサにおける静電容量を測定するものである構成を有している。
【0016】
この構成により、本発明の静電容量型センサの感度測定装置は、複数の静電容量型センサの静電容量を一括して測定できるので、従来よりも簡便に感度を測定することができ、製造コストを低減することができる。
【0017】
さらに、本発明の静電容量型センサの感度測定装置は、前記複数の静電容量型センサは、半導体加工技術又はマイクロマシン加工技術を用いて同一の半導体ウェハ上に一括して形成されたものであり、前記密閉取付手段は、前記半導体ウェハを前記開口部に密閉状態に取り付けるものである構成を有している。
【0018】
この構成により、本発明の静電容量型センサの感度測定装置は、半導体ウェハ上に一括して形成された多数の静電容量型センサの静電容量を一括して測定できるので、従来よりも簡便に感度を測定することができ、製造コストを低減することができる。
【0019】
さらに、本発明の静電容量型センサの感度測定装置は、前記半導体ウェハは、前記可動電極板が形成された面の反対側の面に前記可動電極板の電極及び前記固定電極板の電極を備え、前記静電容量測定手段は、前記可動電極板の電極及び前記固定電極板の電極にそれぞれ電気的に接続されるプローブを備えた構成を有している。
【0020】
この構成により、本発明の静電容量型センサの感度測定装置は、半導体ウェハ上に一括して形成された多数の静電容量型センサの静電容量を、プローブを用いて容易に測定することができるので、従来よりも簡便に感度を測定することができ、製造コストを低減することができる。
【0021】
さらに、本発明の静電容量型センサの感度測定装置は、前記静電容量型センサの感度データを出力するコンピュータを備え、前記コンピュータは、前記加減圧手段の動作を制御する加減圧制御手段と、前記加圧容器内の圧力データを前記圧力計から受信する圧力データ受信手段と、前記センサ選択手段の動作を制御するセンサ選択制御手段と、選択された静電容量型センサにおける静電容量のデータを前記静電容量測定手段から受信する静電容量データ受信手段とを備えた構成を有している。
【0022】
この構成により、本発明の静電容量型センサの感度測定装置は、コンピュータを用いて自動で静電容量を測定することができるので、従来よりも簡便に感度を測定することができ、製造コストを低減することができる。
【0023】
本発明の静電容量型センサの感度測定方法は、外力に応じて変位する可動電極板と、該可動電極板に対向配置された固定電極板とを備えた静電容量型センサの感度測定方法であって、前記可動電極板に対し圧力を加減して前記可動電極板と前記固定電極板との間の静電容量を測定する工程と、前記圧力に対する前記静電容量の変化量から前記静電容量型センサの感度を測定する工程とを含む構成を有している。
【0024】
この構成により、本発明の静電容量型センサの感度測定方法は、可動電極板に対し圧力を加減し、圧力に対する静電容量の変化量から感度を測定するので、従来よりも簡便に感度を測定することができ、製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、従来よりも簡便に感度を測定することができ、製造コストを低減することができるという効果を有する静電容量型センサの感度測定装置及びその測定方法を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の実施の形態を説明する前に、静電容量型センサの1つであるコンデンサマイクロホンの感度測定方法について説明する。図7は、通常のコンデンサマイクロホンの測定方法を示す図であって、コンデンサマイクロホンのマイクカプセルをコンデンサの記号で表している。
【0027】
図7において、コンデンサマイクロホンのマイクカプセル61は、振動膜61a及び固定電極板61bを有する。マイクカプセル61の固定電極板61bには高抵抗62を介して電源63が接続され、電圧Vが印加されている。このとき、音圧Pにより生じる振動膜61aの変位をwで示す。マイクカプセル61の電圧をVとすると、コンデンサマイクロホンの感度Sは[数1]で定義される(文献「"電気音響振動学"、p.152、西巻、コロナ社」)。
【0028】
【数1】

【0029】
従来のコンデンサマイクロホンの測定法では、マイクカプセル61に、直流カットのコンデンサ64と増幅回路65とを接続し、マイクカプセル61の電圧変化を出力として取り出せるようにして、例えば音響無響室において標準スピーカにより音圧を加え、そのときの電圧出力を測定することで、[数1]により感度を評価していた。
【0030】
ここで、[数1]を[数2]のように変形する。
【0031】
【数2】

【0032】
[数2]においては、音圧が加わっていない状態におけるマイクカプセル61の空隙長をwとし、マイクカプセル61の空隙内の電界は一様であると仮定している。
【0033】
また、マイクカプセル61の静電容量の値をCとすると、静電容量Cは[数3]で表される。ただし、Aは振動膜61aの面積、εは真空の誘電率を示す。
【0034】
【数3】

【0035】
ここで、|dC/dP|という値を計算すると[数4]が得られる。
【0036】
【数4】

【0037】
[数2]及び[数4]から感度Sは[数5]で表される。
【0038】
【数5】

【0039】
[数5]により、感度Sは、マイクカプセルの静電容量Cと、音圧Pに対する静電容量Cの変化量|dC/dP|と、マイクカプセルに印加する電圧Vとによって表されることが分かる。このうち電圧Vは既知であるため、マイクカプセルの静電容量Cと、音圧Pに対する静電容量Cの変化量とが分かれば感度Sが求まることになる。そこで、これらの値を測定する装置及び方法を以下、本発明の実施の形態として図面を用いて説明する。
【0040】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態では、本発明に係る静電容量型センサの感度測定装置を、コンデンサマイクロホンの感度測定装置に適用した例を挙げて説明する。
【0041】
図1(a)は、本実施の形態におけるコンデンサマイクロホンの感度測定装置を概念的に示す図であって、マイクカプセルをコンデンサの記号で表している。
【0042】
図1(a)に示すように、本実施の形態におけるコンデンサマイクロホンの感度測定装置100は、マイクカプセル10の振動膜11a側に設けられた加圧容器101と、加圧容器101内の圧力を加減圧する加圧器102と、加圧器102を駆動するポンプ103と、加圧容器101内の圧力を測定する圧力計104と、マイクカプセル10に接続された電源105と、マイクカプセル10の静電容量を測定する容量計106と、各装置の制御及び各種データを収集するパーソナルコンピュータ(以下「PC」という。)107とを備えている。
【0043】
図1(b)は、マイクカプセル10の断面及び加圧容器101の部分断面を概念的に示す図である。マイクカプセル10は、フレーム11に設けられた振動膜11aと、固定電極板12と、振動膜11aと固定電極板12との間に設けられたスペーサ13とを備えている。なお、振動膜11aは、本発明に係る可動電極板を構成する。
【0044】
加圧容器101の容器底部101aには、貫通孔が形成されている。マイクカプセル10のフレーム11の上部には密封材101bが設けられ、容器底部101aの貫通孔を覆うように、マイクカプセル10が加圧容器101に固定されている。ここで、振動膜11aが加圧容器101の内側にあり、固定電極板12が外気と接している。密封材101bとしては、例えば、オーリングのようなパッキンや樹脂製のシール材を用いることができる。なお、密封材101bは、本発明に係る密閉取付手段を構成する。
【0045】
加圧器102は、例えばシリンダを備え、加圧容器101内の圧力Pを変化させられるようになっている。ポンプ103は、加圧器102及びPC107に接続され、PC107からの制御信号によって加圧容器101に対し加圧又は減圧を行うようになっている。なお、加圧器102及びポンプ103は、本発明に係る加減圧手段を構成する。また、PC107からの制御信号によらず、加圧又は減圧を手動で行う構成としてもよい。
【0046】
圧力計104は、加圧容器101内の圧力Pを測定し、PC107からの制御信号に基づき、測定データをPC107に出力するようになっている。
【0047】
電源105は、マイクカプセル10の固定電極板12側に電圧Vを印加するようになっている。なお、電源105は、本発明に係る電圧印加手段を構成する。
【0048】
容量計106は、マイクカプセル10の振動膜11a及び固定電極板12にそれぞれ接続され、マイクカプセル10の静電容量Cを測定するようになっている。また、容量計106は、測定した静電容量Cの測定データをPC107に出力するようになっている。なお、容量計106は、本発明に係る静電容量測定手段を構成する。
【0049】
PC107は、例えば、CPU、RAM、ROM、インターフェース(GPIB、RS232、USB等)、ディスクドライブ、ディスプレイ、プリンタ等を備え、各装置と接続されている。なお、PC107は、本発明に係る感度測定手段を構成する。
【0050】
ここで、PC107は、加減圧手段としての加圧器102及びポンプ103の動作を制御する加減圧制御手段と、加圧容器101内の圧力データを圧力計104から受信する圧力データ受信手段と、静電容量型センサにおける静電容量のデータを前記静電容量測定手段から受信する静電容量データ受信手段としての機能を有する。そして、PC107は、接続された装置の動作を制御するプログラムに従って静電容量の測定データを取得することができるようになっている。
【0051】
本実施の形態におけるコンデンサマイクロホンの感度測定装置100は、前述のように構成され、加圧容器101内の圧力Pを変化させながらマイクカプセル10の静電容量Cを測定する。測定結果の例を図2に示す。この測定結果により、静電容量Cと、圧力Pに対する静電容量Cの変化量(図2に示した測定結果における近似直線の傾きとして求める)とが得られるため、これらのデータ及び電圧Vにより[数5]から感度が得られる。
【0052】
マイクカプセル10に印加する電圧Vについては、電圧を印加する場合と印加しない場合とにおいて、静電容量Cや、音圧Pに対する静電容量Cの変化量|dC/dP|が異なる場合は、電圧を印加した状態で静電容量Cを測定する方が、正しい感度を得るためには好ましい。一方、同電圧を印加する場合と印加しない場合とで、静電容量Cや、音圧Pに対する静電容量Cの変化量|dC/dP|が変わらないとみなせる場合は、電圧を印加する必要はなく、測定系の構成をより簡素にできる。
【0053】
容量計106としては、微小な静電容量を測定する必要があるため、例えば高精度なキャパシタンスブリッジを用いる微小容量計を用いるのが好ましい。測定において、容量計106からマイクカプセル10に至る配線が静電容量成分を有するが、高精度な微小容量計では、測定前に校正を行うことで、配線容量の影響を排除して、マイクカプセル10の静電容量Cを正確に測定することができる。
【0054】
以上のように、本実施の形態におけるコンデンサマイクロホンの感度測定装置100によれば、マイクカプセル10の振動膜11aに対し圧力を加減し、圧力に対する静電容量の変化量から感度を測定する構成としたので、従来の測定のように、専用の増幅回路やパッケージは不要であり、例えば音響無響室で標準スピーカの音を入力するといった難しい測定を行う必要もなく、時間・コストがかからず簡便に感度を求めることができる。
【0055】
したがって、本実施の形態におけるコンデンサマイクロホンの感度測定装置100は、従来よりも簡便に感度を測定することができ、製造コストを低減することができる。
【0056】
なお、前述の実施の形態において、コンデンサマイクロホンの感度測定装置を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、静電容量の変化量を検知して動作する静電容量型センサの感度測定装置に適用できるものであり、同様の効果が得られるものである。
【0057】
(第2の実施の形態)
図3及び図4は、本発明の第2の実施の形態における感度測定装置を概念的に示した図である。本実施の形態は、複数のマイクカプセルについて感度を評価するものであり、シリコンマイクロホンの感度測定装置を例に挙げて説明する。なお、第1の実施の形態と同様な構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
図3に示すように、本実施の形態におけるシリコンマイクロホンの感度測定装置200は、加圧容器201と、加圧器102と、ポンプ103と、圧力計104と、複数のマイクカプセル20に電気的に接続されたスイッチ素子202と、容量計203と、PC204とを備えている。ここで、複数のマイクカプセル20は、シリコンウェハ30上に一括して形成されている。
【0059】
加圧容器201の容器底面201aには貫通孔が形成されており、この貫通孔を覆うように、円盤状のシリコンウェハ30が密封材201bを介して容器底面201aに接続され、各マイクカプセル20の静電容量Cが測定できるようになっている。密封材201bとしては、例えば、オーリングのようなパッキンや樹脂製のシール材を用いることができる。なお、密封材201bは、本発明に係る密閉取付手段を構成する。
【0060】
詳細には、シリコンマイクロホンの感度測定装置200は、図4に示すように構成されている。図4(a)は、マイクカプセル20の固定電極板22側から見た図であり、図4(b)は、シリコンウェハ30の断面及び加圧容器201の部分断面を概念的に示す図である。なお、図示を簡略化するため、図4ではマイクカプセル20の個数を2行×2列=4個の構成として示している。
【0061】
図4(b)に示すように、マイクカプセル20は、振動膜21と、貫通孔22aが形成された固定電極板22と、振動膜21と固定電極板22との間に設けられたスペーサ23と、振動膜21に接続された電極24と、固定電極板22上に形成された電極25とを備えている。なお、振動膜21は、本発明に係る可動電極板を構成する。
【0062】
また、図4(a)及び(b)に示すように、シリコンウェハ30の一方の面上であってマイクカプセル20の振動膜21側に形成された電極24にはプローブ205が電気的に接続され、マイクカプセル20の固定電極板22上に形成された電極25にはマイクカプセル20毎に複数のプローブ206がそれぞれ電気的に接続されている。ここで、プローブ205は、容量計203(図3参照)のアース側に接続され、複数のプローブ206は、それぞれ、スイッチ素子202(図3参照)に接続されている。これによって、プローブ205とプローブ206との間の静電容量値を測定することで、マイクカプセル20の静電容量Cを得ることができる。
【0063】
なお、図4に示した構成のマイクカプセル20では、振動膜21はシリコンウェハ30と同電位であり、固定電極板22の周囲に振動膜21側の電極24があることを想定しているが、本発明はこれに限定されず、振動膜及び固定電極板の構造や、電極の構造や配置等に応じて、プローブが接触する位置を様々に変更できる。
【0064】
また、電気的な接続を行う方法としては、プローブ205及び206を用いる以外にも、例えば、バンプを用いる方法や、金やアルミ等のワイヤーを用いる方法がある。ただし、この電気的接続によりマイクカプセル20への物理的なダメージが少ないものが望ましい。また、容量計203への入力は、例えば、マイクカプセル20の全数分をパラレル信号で入力する方法や、スイッチ素子202によりパラレル信号をシリアル信号に変換してから入力し順次測定する方法がある。
【0065】
図3に戻り、スイッチ素子202は、例えばマルチプレクサで構成され、PC204及び容量計203に接続され、PC204からの制御信号に従って、測定対象とするマイクカプセル20と容量計203とを接続するようになっている。なお、スイッチ素子202は、本発明に係るセンサ選択手段を構成する。
【0066】
容量計203は、電圧Vを出力する電源(図示省略)を内部に備え、PC204からの制御信号に従って、マイクカプセル20に電圧Vを印加した状態又は印加しない状態のいずれかでマイクカプセル20の静電容量Cを測定し、測定データをPC204に出力するようになっている。なお、容量計203は、本発明に係る静電容量測定手段及び電圧印加手段を構成する。
【0067】
PC204は、第1の実施の形態における機能に加え、センサ選択手段としてのスイッチ素子202の動作を制御するセンサ選択制御手段としての機能を有する。なお、PC204は、本発明に係る感度測定手段を構成する。
【0068】
次に、シリコンウェハ30上に一括して形成された多数のマイクカプセル20を自動で測定する方法の一例を、図3及び図5を用いて説明する。
【0069】
まず、PC204により、加圧器102及びポンプ103を、加圧容器101内の圧力がP1となるよう制御する。次に、加圧容器101内の圧力を圧力Plで固定し、全てのマイクカプセル20を測定する。
【0070】
具体的には、例えば図5(a)に示すように、PC204の制御により、スイッチ素子202にマイクカプセルM1を選択させ、マイクカプセルM1の圧力Plにおける静電容量Cllを容量計203で測定する。続いて、スイッチ素子202にマイクカプセルM2を選択させ、マイクカプセルM2の圧力Plにおける静電容量C21を容量計203で測定する。以下、スイッチ素子202によりマイクカプセル20を順次選択させ、圧力Plにおける各静電容量Cを測定する。
【0071】
次に、PC204により、加圧容器201の圧力をP2にし、スイッチ素子202にマイクカプセルMlを選択させ、マイクカプセルM1の圧力P2における静電容量C12を容量計203で測定する。次に、スイッチ素子202にマイクカプセルM2を選択させ、マイクカプセルM2の圧力P2における静電容量C22を容量計203で測定する。以下同様に、マイクカプセル20及び圧力Pを切り替えながら全てのマイクカプセル20について測定を行う。
【0072】
図5(a)に示す測定データから、個々のマイクカプセル20について、静電容量Cと、圧力Pに対する静電容量Cの変化量との関係が求められる。静電容量値と圧力との関係の例を図5(b)に示す。図5(b)に示したグラフは、所定のプログラムによってPC204に自動で作成させることが可能である。このグラフにおける近似直線の傾きからマイクカプセル20を用いるシリコンマイクロホンの感度が求められる。また、PC204により、個々のマイクカプセル20の感度データを自動で出力させることが可能である。
【0073】
以上のように、本実施の形態におけるシリコンマイクロホンの感度測定装置200によれば、複数のマイクカプセル20の振動膜21に対し同時に圧力を加減し、圧力に対する静電容量の変化量から感度を測定する構成としたので、マイクカプセル20が数百から数千といった膨大な量になる場合でも、全数又は多数のマイクカプセル20の感度を測定することが可能になる。また、同一のシリコンウェハ内で良品や不良品の選別をする際には、この容量測定のみで選別ができるため、不良品に対するこれ以降の実装や評価の工程を一切行う必要がなく、時間とコストの大幅な短縮が可能となる。
【0074】
したがって、本実施の形態におけるシリコンマイクロホンの感度測定装置200は、従来よりも簡便に感度を測定することができ、製造コストを低減することができる。
【0075】
なお、前述の実施の形態において、シリコンマイクロホンのマイクカプセルを感度測定の対象として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、金属、セラミック、樹脂等の素材を用いるコンデンサマイク、ECM(エレクトレットコンデンサマイク)等を測定対象としてもよい。測定対象がシリコンマイクロホンのマイクカプセルではない場合、マイクカプセル等の素子が一括して形成されていなくても、個々に形成されたマイクロホン素子を治具や支持用の基板等に複数配置し、その治具や基板を前述のシリコンウェハと同様にセットすることにより、一括で測定を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本発明に係る静電容量型センサの感度測定装置及びその測定方法は、従来よりも簡便に感度を測定することができ、製造コストを低減することができるという効果を有し、特に、複数のマイクカプセルについて感度を評価する目的に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係るコンデンサマイクロホンの感度測定装置の第1の実施の形態における構成を概念的に示すブロック図
【図2】本発明に係るコンデンサマイクロホンの感度測定装置の第1の実施の形態において、静電容量Cと、圧力Pに対する静電容量Cの変化量との関係を示す図
【図3】本発明に係るシリコンマイクロホンの感度測定装置の第2の実施の形態における構成を概念的に示すブロック図
【図4】本発明に係るシリコンマイクロホンの感度測定装置の第2の実施の形態において、シリコンウェハ周辺の構成を概念的に示す図
【図5】本発明に係るシリコンマイクロホンの感度測定装置の第2の実施の形態において、マイクカプセルを自動で測定する方法の一例を説明するための図
【図6】従来のシリコンマイクロホンが備えるマイクカプセルを示す図
【図7】コンデンサマイクロホンの測定方法を示す図
【符号の説明】
【0078】
10 コンデンサマイクロホンのマイクカプセル
11 フレーム
11a 振動膜(可動電極板)
12 固定電極板
13 スペーサ
20 シリコンマイクロホンのマイクカプセル
21 振動膜(可動電極板)
22 固定電極板
22a 貫通孔
23 スペーサ
24 電極(可動電極板の電極)
25 電極(固定電極板の電極)
30 シリコンウェハ(半導体ウェハ)
100 コンデンサマイクロホンの感度測定装置
101、201 加圧容器
101a、201a 容器底部
101b、201b 密封材(密閉取付手段)
102 加圧器(加減圧手段)
103 ポンプ(加減圧手段)
104 圧力計
105 電源(電圧印加手段)
106 容量計(静電容量測定手段)
107、204 PC(コンピュータ、感度測定手段)
200 シリコンマイクロホンの感度測定装置
202 スイッチ素子(センサ選択手段)
203 容量計(静電容量測定手段、電圧印加手段)
205、206 プローブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外力に応じて変位する可動電極板と、該可動電極板に対向配置された固定電極板とを備えた静電容量型センサの感度測定装置であって、
前記可動電極板に対し圧力を加減する加減圧手段と、
前記可動電極板と前記固定電極板との間の静電容量を測定する静電容量測定手段と、
前記圧力に対する前記静電容量の変化量から前記静電容量型センサの感度を測定する感度測定手段とを備えたことを特徴とする静電容量型センサの感度測定装置。
【請求項2】
前記可動電極板と前記固定電極板との間に電圧を印加する電圧印加手段を備え、
前記感度測定手段は、前記電圧を印加した状態又は前記電圧を印加しない状態のいずれかで前記静電容量型センサの感度を測定するものであることを特徴とする請求項1に記載の静電容量型センサの感度測定装置。
【請求項3】
開口部を有する加圧容器と、前記可動電極板を前記加圧容器の内部側に配置して前記静電容量型センサを前記開口部に密閉状態に取り付ける密閉取付手段と、前記加圧容器内の圧力を測定する圧力計とを備え、
前記加減圧手段は、前記加圧容器内の圧力を加減することによって前記可動電極板に対し圧力を加減するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の静電容量型センサの感度測定装置。
【請求項4】
前記密閉取付手段は、複数の静電容量型センサを前記開口部に密閉状態に取り付けるものであり、
前記複数の静電容量型センサのうち測定対象とするものを選択するセンサ選択手段を備え、
前記静電容量測定手段は、選択された静電容量型センサにおける静電容量を測定するものであることを特徴とする請求項3に記載の静電容量型センサの感度測定装置。
【請求項5】
前記複数の静電容量型センサは、半導体加工技術又はマイクロマシン加工技術を用いて同一の半導体ウェハ上に一括して形成されたものであり、
前記密閉取付手段は、前記半導体ウェハを前記開口部に密閉状態に取り付けるものであることを特徴とする請求項4に記載の静電容量型センサの感度測定装置。
【請求項6】
前記半導体ウェハは、前記可動電極板が形成された面の反対側の面に前記可動電極板の電極及び前記固定電極板の電極を備え、
前記静電容量測定手段は、前記可動電極板の電極及び前記固定電極板の電極にそれぞれ電気的に接続されるプローブを備えたことを特徴とする請求項5に記載の静電容量型センサの感度測定装置。
【請求項7】
前記静電容量型センサの感度データを出力するコンピュータを備え、
前記コンピュータは、
前記加減圧手段の動作を制御する加減圧制御手段と、
前記加圧容器内の圧力データを前記圧力計から受信する圧力データ受信手段と、
前記センサ選択手段の動作を制御するセンサ選択制御手段と、
選択された静電容量型センサにおける静電容量のデータを前記静電容量測定手段から受信する静電容量データ受信手段とを備えたことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1項に記載の静電容量型センサの感度測定装置。
【請求項8】
外力に応じて変位する可動電極板と、該可動電極板に対向配置された固定電極板とを備えた静電容量型センサの感度測定方法であって、
前記可動電極板に対し圧力を加減して前記可動電極板と前記固定電極板との間の静電容量を測定する工程と、
前記圧力に対する前記静電容量の変化量から前記静電容量型センサの感度を測定する工程とを含むことを特徴とする静電容量型センサの感度測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−260884(P2009−260884A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−110251(P2008−110251)
【出願日】平成20年4月21日(2008.4.21)
【出願人】(000004352)日本放送協会 (2,206)
【Fターム(参考)】