説明

静電容量型ポインティングデバイス

【課題】指を導電体とする静電容量変化の影響を少なくし、スライド方向とスライド量を正確に検出する静電容量型ポインティングデバイスを提供すること。
【解決手段】下部電極12aを有する固定部材12に対して、上部電極13bを有する操作部材13をスライド移動させて上部電極13bと下部電極12a間の静電容量の変化を検出する静電容量型ポインティングデバイス11について、操作部材13は、キートップ13cでなる操作部と、その操作部の周囲に上部電極13bとを備え、固定部材12は、中心部を円形に切り欠くとともに複数に分割されてなる下部電極12aを備えるものとした。指と上部電極13b、下部電極12aとを重なりにくくして、上部電極13bと下部電極12aに対する指の影響を少なくできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機、PDAなどの携帯情報端末や、リモコン、AV機器、ゲーム機などの各種電子機器に用いられるスライド操作用のポインティングデバイスに関し、特に、操作側と固定側の両電極間における静電容量の変化を検出する静電容量型ポインティングデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器は年々多機能化し、スイッチによる入力操作においても、単一の機能選択にとどまらず、表示画面の切替え操作や表示画面上におけるカーソルの移動操作が行われるようになっている。すなわち、単なる押圧操作に限らず、押圧操作方向に対する交差方向の360°スライド操作が行われるようになってきている。このスライド操作を行うスイッチには、静電容量の変化や磁気の変化などでスライド操作の移動方向や移動距離を検出する方式のポインティングデバイスがある。これらポインティングデバイスのうち電極間における静電容量の変化を検出する静電容量型は、磁石とホール素子で磁気の変化を検出する磁気型より薄型化が容易と考えられるが、携帯電話機などでは採用されていない。
【0003】
このような静電容量型ポインティングデバイスには、例えば、特開平7−49325号公報や特開平7−84718号公報に記載されているように、円形状の上部電極と4分割された下部電極とが、それぞれ上側基板と下側基板に設けられ対峙している。そして操作者は上部電極を設けた上側基板を指で水平方向へスライド移動させると、ポインティングデバイスの厚み方向における上部電極と下部電極との重なり部分が変化して、上部電極と4分割の各下部電極との間に発生する静電容量がそれぞれ変化する。これら静電容量の変化量から、上側基板の移動方向(スライド方向)と移動距離(スライド量)を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−49325号公報
【特許文献2】特開平7−84718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、操作者の指も導電体の一種であるため、スライド操作する指によって上部電極と下部電極との間に生じる静電容量が変わってしまい、スライド操作した上側基板のスライド方向とスライド量を正確に検出し難いという問題がある。
このような指による静電容量の影響を少なくするために、上部電極(上側基板)の操作面側を導電層で覆い、この導電層をグランドに接続してシールド層とする方法がある。しかしながら、スライド移動する導電層を常にグランドに接続させることが難しい。さらにスライド移動する導電層と下部電極との重なった部分がセンサーとして動作してしまうため、スライド方向とスライド量を正確に検出し難く、実用性に乏しい。
【0006】
以上のような従来技術を背景としてなされたのが本発明である。すなわち、本発明の目的は、薄型のスライド操作スイッチでありながら、導電体である指の影響を少なくし、スライド方向とスライド量を正確に検出する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく以下の構成を提供する。
すなわち、下部電極を有する固定部材に対して、上部電極を有する操作部材をスライド移動させて上部電極と下部電極間の静電容量の変化を検出する静電容量型ポインティングデバイスについて、操作部材は、キートップでなる操作部と、その操作部の周囲に上部電極とを備え、固定部材は、中心部を円形に切り欠くとともに複数に分割されてなる下部電極を備えることを特徴とする静電容量型ポインティングデバイスを提供する。
【0008】
下部電極を有する固定部材に対して、上部電極を有する操作部材をスライド移動させて上部電極と下部電極間の静電容量の変化を検出する静電容量型ポインティングデバイスについて、操作部材は、キートップでなる操作部と、その操作部の周囲に上部電極とを備えるものとしたため、スライド操作のために指が触れるキートップから上部電極が離れている。そのため、静電容量変化を検出する際の導電体としての指の影響を減らすことができる。
また、下部電極を有する固定部材に対して、上部電極を有する操作部材をスライド移動させて上部電極と下部電極間の静電容量の変化を検出する静電容量型ポインティングデバイスについて、固定部材は、中心部を円形に切り欠くとともに複数に分割されてなる下部電極を備えることとしたため、下部電極は、スライド操作のために指が触れるキートップの中心を下部電極に向かって投影した中心部が切り欠いてあり存在しない。そのため、静電容量変化を検出する際の導電体としての指の影響を減らすことができる。
換言すれば、下部電極を、中央に円形状の切欠を形成する断続的な円環形状とすることができ、このようにすれば、上部電極と下部電極での重なり方向で、指と下部電極との重なりを無くすか、少なくすることができ、下部電極に対する指の影響を減らすことができる。
そして、こうした上部電極と下部電極を備えるため、スライド操作した操作部のスライド方向とスライド量を正確に検出することができる。
また、上部電極は、操作部の周囲に備えられていることから、中心部分が切欠の形状となっている。このためキートップを透光性にすれば、固定部材側に設けた照光源からの光を、上部電極の中心部分(切欠)を通してキートップへ入射させることができ、照光式のキートップとすることも可能となる。
【0009】
このポインティングデバイスについては、上部電極が導電性のゴム状弾性体でなり、操作部材は上部電極の下側を被覆して下部電極と対向するスライドシートをさらに備える静電容量型ポインティングデバイスとすることができる。
【0010】
上部電極が導電性のゴム状弾性体でなるものとしたため、操作部材自体の形状の一部を導電性のゴム状弾性体で構成できる。そのため、上部電極で操作部材の形状の一部を担うことができ、操作部材に対して金属板でなる上部電極を固着したり、導電インキを印刷したりすることを行って、操作部材に別途、上部電極を設ける必要がない。よって、部品点数の削減と、製造工程の短縮化が実現できる。
また、上部電極をゴム状弾性体で形成したため、導電性インキで形成するような場合に比べて、上部電極を適宜な肉厚に形成することができる。適宜な肉厚に形成し上部電極の中心部に空間を設ければ、下部電極と指との間の非導電性が高まり下部電極に対する指の影響を少なくすることができる。
さらに、操作部材は上部電極の下側を被覆して下部電極と対向するスライドシートをさらに備えるため、スライド操作時に、操作部材と固定部材との摩擦を軽減することができ、スライド操作荷重を小さくすることができる。よってスムーズなスライド操作を実現することができ、操作者は良好なスライド操作感を得ることができる。
そしてまた、ゴム状弾性体でなる上部電極の裏面にスライドシートを備えることにより、スライド操作時における上部電極の撓み、変形を抑えることができる。上部電極をゴム状弾性体で形成することで、外部電極が他部材と接触すれば摩擦抵抗が増加し、撓み、変形して正確な静電容量変化を生じにくいという問題が生じるが、スライドシートを設けることで、外部電極が直接、他部材と接触することを防止してスライド性を高めるとともに、スライドシートの剛性によって外部電極を変形し難くすることができる。
【0011】
上記静電容量型ポインティングデバイスについて、操作部材が、上部電極に連なる蛇腹状のベローズ部と、キートップの外側に位置する外装部材に対して固着する固定部とをさらに備え、該ベローズ部と固定部、さらに上部電極とを導電性のゴム状弾性体で一体に形成してなるものとすることができる。
【0012】
操作部材に、上部電極に連なる蛇腹状のベローズ部を設けたため、スライド操作によってベローズ部を変形させた後、指を放せばベローズ部の付勢力によって操作部材を初期位置に戻すことができる。
操作部材に、キートップの外側に位置する外装部材に対して固着する固定部を設けたため、操作部材を外装部材に固着することができる。これによりスライド移動する操作部材を電子機器に固定することができ、スライド操作しない場合の初期位置を確定することができる。
そして、ベローズ部と固定部、さらに上部電極とを導電性のゴム状弾性体で一体に形成したため、固定部の固着する外装部材を通じてアースを取ることができる。よって上部電極と下部電極との間に生じる静電容量を安定的にすることができる。
【0013】
また、操作部材が、前記固定部の形状を保持する金属板を備える静電容量型ポインティングデバイスとすることができる。
操作部材が、前記固定部の形状を保持する金属板を備えるため、薄型化される操作部材の形状を安定的に保持することができる。
また、固定部の形状を保持することで、スライド操作時の想定外の固定部の変形を防止し、ベローズ部に変形を委ねることができるため、操作者に対して均質なスライド操作感を付与することができる。加えて、ベローズ部を必要以上に固定部側へ変形させることを防止し、スライド操作によって変形したベローズ部を元の形状に戻し易くすることができる。よってスライド操作後の操作部を初期位置に戻し易くすることができ、繰り返されるスライド操作を正確に検出することができる。
さらに、この金属板を通じて回路基板や外装部材との間にアースを取ることができ、上部電極と下部電極との間に生じる静電容量を安定的にすることができる。
【0014】
操作部材が、キートップとスライドシートとの間に皿バネをさらに備え、固定部材が、下部電極の中央に、押下検出用電極をさらに備える静電容量型ポインティングデバイスとすることができる。
操作部材が、キートップとスライドシートとの間に皿バネを備えるものとし、固定部材が、下部電極の中央に、押下検出用電極を備えるものとしたため、スライド量の検出とは別に、キートップの押圧操作(押下操作)の有無を検知する機能を備えることができる。
すなわち、キートップを押下しない場合における皿バネと押下検出用電極との間隔と、キートップを押下した場合における座屈した皿バネと押下検出用電極との間隔の、両者の間隔の差異による静電容量変化を検出し、キートップの押下操作を検出することができる。
さらに、皿バネを操作部材に設けたため、スライド操作に伴って皿バネもスライドするため、スライド操作を行う任意の位置で押下して皿バネを座屈させることができる。そのため、固定部材側に皿バネを設けた場合に、その皿バネのある位置でのみ押下操作を検出しうる構造と比較して、スライド操作したあらゆる位置で押下操作を検出できる点で優れている。さらに押下しながら操作部材をスライド操作することが可能となり、所謂ドラッグ操作も実現することができる。
【0015】
押下検出用電極の広がり面積(大きさ)は、キートップをスライド操作した後でもその押下位置で皿バネと重なるような大きさに形成することが好ましい。キートップのスライド移動位置によっては、そのスライド操作時の押下位置に押下検出用電極が存在しない場合が存在すると、押下検出用電極の有無によって静電容量変化が大きく異なるため、押下操作を検出し難くなるからである。
なお、押下検出用電極の大きさがスライド操作位置全てをカバーする場合には、スライド操作の間に、指と皿バネと押下検出用電極が重なるため、皿バネと押下検出用電極との間に生じる静電容量が指によって変化するが、皿バネと押下検出用電極との間隔が小さく、皿バネの座屈に伴う静電容量の変化が大きいため、押圧操作の検出に影響を及ぼすことは少ない。
皿バネは、その全体を導電部にできる金属皿バネが好ましいが、樹脂でなる樹脂皿バネを用いることもできる。樹脂皿バネの場合は、その中央に導電部を固着して設ければよい。またキートップに導電部を設けることで、樹脂皿バネに設ける導電部の代替とすることができる。
【0016】
さらに、皿バネの中央に対向する部位にスライドシートに透孔を設け、該透孔内にスルーホール電極を設ける静電容量型ポインティングデバイスとすることができる。
皿バネの中央に対向する部位にスライドシートに透孔を設け、該透孔内にスルーホール電極を設けたため、押下操作時にスルーホール電極と押下検出用電極とを接触させることができ、押下検出用電極と皿バネとのみかけ上の間隔を、スライドシートの厚み分だけ少なくすることができる。
すなわち、スルーホール電極を設けた方が、押圧操作前後における皿バネと押下検出用電極との間の静電容量の変化量を大きく変化させることができ、キートップの押圧操作の有無を検出し易くすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の静電容量型ポインティングデバイスによれば、操作者の指を導電体として認識することによるスライド検出精度の低下を抑制し、スライド操作によるスライド方向とスライド量を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の静電容量型ポインティングデバイスを示す平面図。
【図2】図1のSA−SA線断面図。
【図3】第1実施形態の静電容量型ポインティングデバイスにおける下部電極を示す説明図。
【図4】第1実施形態の静電容量型ポインティングデバイスにおける上部電極を示す説明図。
【図5】第2実施形態の静電容量型ポインティングデバイスを示す図2相当断面図。
【図6】第2実施形態の静電容量型ポインティングデバイスにおける下部電極を示す説明図。
【図7】第2実施形態の静電容量型ポインティングデバイスにおける下部電極の変形例を示す説明図。
【図8】第3実施形態の静電容量型ポインティングデバイスを示す図2相当断面図。
【図9】第4実施形態の静電容量型ポインティングデバイスを示す図2相当断面図。
【図10】各実施形態に共通する静電容量型ポインティングデバイスの変形例を示す図2相当断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明について図面を参照してさらに詳しく説明する。なお、各実施形態で共通する構成については同一の符号を付して重複説明を省略し、さらに共通する材質、作用、効果、製造方法などについても重複説明を省略する。
【0020】
第1実施形態〔図1〜図4〕
第1実施形態の静電容量型ポインティングデバイス11を図1〜図4に示す。図1は静電容量型ポインティングデバイス11の平面図であり、図2は静電容量型ポインティングデバイス11のSA−SA線断面図、図3は静電容量型ポインティングデバイス11における下部電極の説明図、図4は静電容量型ポインティングデバイス11における上部電極の説明図である。
本実施形態の静電容量型ポインティングデバイス11は、固定部材12と操作部材13とトップカバー14とを備えている。
【0021】
固定部材12は、静電容量型ポインティングデバイス11のベースとなる部分であり、電子機器の中にあって固定されている。本実施形態では、下部電極12aと押下検出用電極12bとを備えている「回路基板」が固定部材12である。
【0022】
下部電極12aは、後述する操作部材13の上部電極13bとの間に静電容量を生じる電極であり、操作部材13の上部電極13bがスライド移動した際に静電容量が変化する。この下部電極12aは、図3で示すように、中心角が90°に4分割されている断続的な円環形状であって、中心部が円形に切り欠いた形状となっている。下部電極12aにおける円環形状の外径は上部電極13bの内径より大きく上部電極13bと下部電極12aとの重なり方向、換言すれば、この静電容量型ポインティングデバイスを平面視した場合における操作部材の固定部材への投影上(以下同様)で、下部電極12aは上部電極13bに覆われる大きさである。また、下部電極12aの内径は操作部材13におけるキートップ13cの外径よりやや大きく投影上でそのキートップ13cと重ならない大きさに形成されている。なお、図3では、上部電極13bを二点鎖線で示している。
【0023】
押下検出用電極12bは、操作部材13の金属皿バネ13eとの間に静電容量を生じる電極であり、操作部13cを押下した際に静電容量が変化する。この押下検出用電極12bは、図3で示すように、下部電極12aの中央に形成されている円形状の切欠内に位置し、円形状に形成されている。押下検出用電極12bにおける円形状の外径は金属皿バネ13eの外径より大きく、投影上でその金属皿バネ13eと重なる大きさであり、さらに操作部13cがスライド移動した際にも金属皿バネ13eと重なる大きさに形成されている。なお、図3では、金属皿バネ13eを二点鎖線で示している。
下部電極12aや押下検出用電極12bは、導電インキや金属等で形成している。
【0024】
操作部材13は、静電容量型ポインティングデバイス11のスライド方向やスライド量を入力する部材であり、さらに本実施形態では押圧入力もできる部材である。この操作部材13は、スライドシート13a、上部電極13b、「操作部」としてのキートップ13c、キートップ13cを固定する固定シート13d、金属皿バネ13e、上部電極13bの外側にベローズ部13f、ベローズ部13fの外側に固定部13gを備えている。
【0025】
スライドシート13aは、回路基板12上の下部電極12aや押下検出用電極12bと接触して、キートップ13cのスライド操作の際に下部電極12a上や押下検出用電極12b上を擦れる部材であり、樹脂フィルムによって円板形状に形成されている。このスライドシート13aの操作面側には、外縁側に上部電極13bが固着され、中央に金属皿バネ13gが操作面側に湾曲して固定されている。
上部電極13bは、前述したように下部電極12aとの間に静電容量を生じる電極であり、キートップ13cをスライド操作した際にキートップ13cと一体に移動して静電容量が変化する。この上部電極13bは導電性のゴム状弾性体でなり、キートップ13cの周囲に、キートップとは別に円環形状に形成されている。そしてスライドシート13aに対しては固着面に空気が入らぬように一体成形によって固着されている。なお、図4では、上部電極13bに対する回路基板12と下部電極12aと押下検出用電極12bの配置を二点鎖線で示している。
【0026】
キートップ13cは、スライド操作や押圧操作の際に指を当てる「操作部」であり、硬質樹脂で円盤形状に形成されている。このキートップ13cの操作面側はスライド操作の際に操作者の指が滑り難いように環状リブ13hが設けられ、裏面側には押圧操作の際に金属皿バネ13eを押圧する押し子部13kが設けられている。このようなキートップ13cの裏面側には押し子部13kを貫通させるようにして固定シート13dが固定されている。円盤形状のキートップ13cの中心は上部電極13bの軸心上に配置されている。
固定シート13dは、キートップ13cを上部電極13bと一体にする部材であり、樹脂フィルムによって円環形状に形成されている。この固定シート13dの中央には前述したようにキートップ13cの押し子部13kが貫通しており、外縁は両面テープ13mを介して上部電極13bに固着されている。
金属皿バネ13eは、前述したように押下検出用電極12bとの間に静電容量を生じる電極である。金属皿バネ13eはキートップ13cを押圧操作した際に押し子部13kによって押圧され、座屈して金属皿バネ13eの中央と押下検出用電極12bとの間の距離が近づき静電容量が変化する。この金属皿バネ13eは図4で示すように、上部電極13bにおける内側の中央に配置されている。
【0027】
ベローズ部13fは、スライド移動したキートップ13cを初期位置に戻す部位であり、ゴム状弾性体によって上部電極13bの外側周囲に周状に拡がる蛇腹形状に形成されている。
固定部13gは、操作部材13をトップカバー14に固定する部位であり、ゴム状弾性体によってベローズ部13fの外側に形成されている。この固定部13gの操作面側が両面テープ13mを介してトップカバー14の裏面に固着している。本実施形態では、上部電極13bとベローズ部13fと固定部13gとが導電性のゴム状弾性体で一体に形成されている。
【0028】
上部電極13bとベローズ部13fと固定部13gとを形成するゴム状弾性体の材質には、熱硬化性エラストマーや熱可塑性エラストマーを用いることができる。なかでも、温度依存性が小さく反発弾性が高いシリコーンゴムが好ましい。
スライドシート13aや固定シート13dを形成する樹脂フィルムの材質としては、耐熱性と剛性を有している樹脂を用いる。なかでも、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルム、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルムなどが好ましい。
キートップ13cの材質には、固定シート13dと一体形成できるポリカーボネート(PC)樹脂などの硬質樹脂の他、ステンレス、アルミ、真鍮などの金属を用いることができる。本実施形態では、ゴム状弾性体でなる上部電極13bによってキートップ13cと下部電極12aとの間に空間が形成されていると共に、投影上でキートップ13cと下部電極12aが重ならないため、導電体である金属をキートップ13cとして利用することができる。
【0029】
トップカバー14は静電容量型ポインティングデバイス11における回路基板12の操作面側を覆う「外装部材」である。このトップカバー14は樹脂フィルムでなり、操作部材13のキートップ13cが露出する円形の透孔14aが形成されている。
【0030】
静電容量型ポインティングデバイス11の製造方法についてその一例を説明する。
先ず、円板形状のスライドシート13aの外縁側に接着層を形成する。そしてこのスライドシート13aを上部電極13bとベローズ部13fと固定部13gとを成形する金型にインサートした後、導電性のゴム組成物を投入して、スライドシート13aと上部電極13bとベローズ部13fと固定部13gとを一体形成する。その後金属皿バネ13eをスライドシート13aに固定し、上部電極13bと固定部13gの操作面側に両面テープ13mを貼着する。次に、円環形状の固定シート13dをキートップ13cを成形する金型にインサートした後、キートップ13cを成形して、固定シート13dとキートップ13cとを一体形成する。そして固定シート13dを上部電極13bの両面テープ13mに貼着して、操作部材13を得る。
そして、操作部材13における固定部13gの両面テープ13mをトップカバー14に貼着する。その後、操作部材13と一体のトップカバー14と、下部電極12aと押下検出用電極12bとを設けた回路基板12と、を組付して、静電容量型ポインティングデバイス11を得る。
【0031】
キートップの中心に相当する位置に上部電極13bも下部電極12aも存在しないため、キートップ13cを指で触っても、上部電極13bや下部電極12aに対する指の影響を少なくすることができる。よって、スライド操作したキートップ13cのスライド方向とスライド量を正確に検出することができる。
静電容量型ポインティングデバイス11によれば、操作部材13の裏面側にスライドシート13aを有するため、下部電極12aが設けられた回路基板12との摩擦を軽減することができ、スライド操作荷重を小さくすることができる。よってスムーズなスライド操作を実現することができ、操作者は良好なスライド操作感を得ることができる。 また、導電性のゴム状弾性体でなる上部電極13bの裏面にスライドシート13aを設けたため、スライドシート13aの剛性によって上部電極13bを変形し難くすることができ、上部電極13bと下部電極12aの間隔を一定に保つことができる。よってスライド操作の際のスライド操作位置を正確に検出することができる。
【0032】
金属皿バネ13eと押下検出用電極12bを設けたため、金属皿バネ13eと押下検出用電極12bとの間の静電容量変化を検出してキートップ13cの押圧操作の有無を出力することができる。
【0033】
第2実施形態〔図5〜図7〕
第2実施形態の静電容量型ポインティングデバイス21を図5〜図7に示す。図5は静電容量型ポインティングデバイス21の断面図であり、図6は静電容量型ポインティングデバイス21における下部電極の説明図である。図7は、図6とは別の下部電極の説明図である。
静電容量型ポインティングデバイス21は、操作部材に金属皿バネを設けておらず、また、固定部材となる回路基板22に押下検出用電極を設けていない。即ち、第1実施形態の静電容量型ポインティングデバイス11と異なり、キートップの押圧操作の有無を検出する機能を有していない。
【0034】
静電容量型ポインティングデバイス21は、操作部材23として、スライドシート13a、上部電極13b、「操作部」としてのキートップ23c、キートップ23cを固定する固定シート13d、ベローズ部13f、固定部13gを備えている。
しかしながら、皿バネが無いため、キートップ23cは一体となった押し子部23kを有しており、この押し子部23kがキートップ23cを支柱のように支えている。
また、固定部材22には、図6で示すように、下部電極22aを備えるが、円環形状の内径が小さく略円形状に電極が形成されている。なお、図6では、上部電極13bを二点鎖線で示している。
【0035】
下部電極22aに代えて、図7で示す形状の下部電極12aとすることができる。
この下部電極12aは、その内径がキートップ23cの外径よりやや大きく投影上でキートップ23cと面積が重ならない大きさに形成されている。
下部電極12aでは、投影上で下部電極12aと指の重なりを少なくすることができ、下部電極12aに対する指の影響を少なくして、キートップ23cのスライド方向とスライド量を正確に検出することができる。
【0036】
静電容量型ポインティングデバイス21製造方法についてその一例を説明する。
先ず、スライドシート13aと上部電極13bとベローズ部13fと固定部13gとを一体形成し、上部電極13bと固定部13gの操作面側に両面テープ13mを貼着する。次に、円環形状の固定シート13dをキートップ23cを成形する金型にインサートして、固定シート13dとキートップ23cとを一体形成する。その後固定シート13dを上部電極13bの両面テープ13mに貼着して、操作部材23を得る。そして、操作部材23における固定部13gの両面テープ13mをトップカバー14に貼着する。その後、操作部材23と一体のトップカバー14と、下部電極22aを設けた回路基板22と、を組付して、静電容量型ポインティングデバイス21を得る。
【0037】
静電容量型ポインティングデバイス21によれば、キートップ23cの中心位置に上部電極13bが無い円環形状に形成されているため、上部電極13bに対する指の影響を少なくすることができ、スライド操作したキートップ23cのスライド方向とスライド量を正確に検出することができる。
【0038】
第3実施形態〔図8〕
第3実施形態の静電容量型ポインティングデバイス31を図8に示す。図8は静電容量型ポインティングデバイス31の断面図である。
静電容量型ポインティングデバイス31は、操作部材33と回路基板12である固定部材12とを導通させる構造を備えている。
【0039】
固定部材12である回路基板12には、下部電極12aと押下検出用電極12bの他にアース電極12cが設けられている。このアース電極12cは、操作部材33における固定部33gとの対向面に位置している。
【0040】
操作部材33は、スライドシート13a、上部電極13b、キートップ13c、固定シート13d、金属皿バネ13e、ベローズ部13f、ベローズ部13fの外側に固定部33gを備えており、さらに金属板33pを備えている。
金属板33pは、固定部33gの形状を保持する部材であり、本実施形態では固定部33gの操作面側に配置し、上部電極13bやベローズ部13fに接触しないように、環形状に形成されている。この環形状の内縁は固定部33gの内形よりやや大きい円形状であり、外縁は固定部33gの外形よりやや小さい形状に形成されている。なお、この金属板33pには面内に適宜な形状の切欠を設けて軽量化することができる。また金属板33pを操作面側から樹脂フィルムで覆って固定部33gに固定し、固定部33gから離脱し難くすることができる。
金属板33pの材質には、腐食し難く薄肉化が容易な金属を用いることができる。例えば、ステンレス、真鍮、アルミなどが例示できる。
なお、本実施形態では金属板33pを用いているが、アースを取ることを考えずに操作部材33の補強を考えるのであれば、金属板33pの変わりに樹脂板を用いることができる。
【0041】
固定部33gには、肉厚を貫通する透孔33nが設けられており、この透孔33p内には、金属板33pとアース電極12cとを電気的に接続するコネクタ35が設けられている。
コネクタ35は、金属板33pとアース電極12cとを電気的に接続する部材であり、柱形状に形成されている。このコネクタ35は上下面に露出するゴム状弾性体の導電部35aと、その導電部35aの側面を覆うゴム状弾性体の絶縁部35bから形成されている。なお、コネクタ35の替わりにアース電極12c上に設けた金属ピンを用いることもできる。
【0042】
静電容量型ポインティングデバイス31の製造方法についてその一例を説明する。
先ず、スライドシート13aと上部電極13bとベローズ部13fと固定部33gとを一体形成し、固定部33gの操作面側に型抜きした金属板33pを配置した後、上部電極13bと固定部33gの操作面側に両面テープ13mを貼着する。次に、固定シート13dとキートップ13cとを一体形成する。その後固定シート13dを上部電極13bの両面テープ13mに貼着して、操作部材33を得る。そして、操作部材33における固定部33gの両面テープ13mをトップカバー14に貼着する。その後、コネクタ35を固定部33gの透孔33nに挿入しながら、操作部材33と一体のトップカバー14と、回路基板12と、を組付して、静電容量型ポインティングデバイス31を得る。
【0043】
静電容量型ポインティングデバイス31によれば、金属板33pを備えるため、ベローズ部13fを外側から拘束して、スライド操作後のキートップ13cを初期位置に戻し易くすることができ、繰り返されるスライド操作を正確に検出することができる。
また、金属板33pをアース電極12cに接続しているため、操作部材33に静電気を溜め難くすることができ、上部電極13bと下部電極12aとの間に生じる静電容量に対して、影響を与え難くすることができる。
【0044】
第4実施形態〔図9〕
第4実施形態の静電容量型ポインティングデバイス41を図9に示す。図9は静電容量型ポインティングデバイス41の断面図である。
静電容量型ポインティングデバイス41では、スライドシート43aにスルーホール電極43rを設けている。
【0045】
静電容量型ポインティングデバイス41は、操作部材43と固定部材12を備えている。
操作部材43は、スライドシート43a、上部電極13b、キートップ13c、固定シート13d、金属皿バネ13e、ベローズ部13f、固定部13gを備えている。
スライドシート43aは、第1実施形態におけるスライドシート13aと異なり、金属皿バネ13eの中央位置に肉厚を貫通する貫通孔43qが設けられている。そして、その貫通孔43q内にはスルーホール電極43rが形成されている。
【0046】
静電容量型ポインティングデバイス41の製造方法についてその一例を説明する。
先ず、スルーホール電極43rを設けたスライドシート43aと上部電極13bとベローズ部13fと固定部33gとを一体形成し、上部電極13bと固定部33gの操作面側に両面テープ13mを貼着する。次に、固定シート13dとキートップ13cとを一体形成する。その後固定シート13dを上部電極13bの両面テープ13mに貼着して、操作部材43を得る。そして、操作部材43における固定部33gの両面テープ13mをトップカバー14に貼着する。その後、操作部材43と一体のトップカバー14と、回路基板12と、を組付して、静電容量型ポインティングデバイス41を得る。
【0047】
静電容量型ポインティングデバイス41によれば、スライドシート43aにスルーホール電極43rを有するため、押下検出用電極12bの位置を、スライドシート43aの厚み方向で、図9で示す長さ“t”だけ、みかけ上金属皿バネ13eの頂点に近づけることができ、スルーホール電極の無いスライドシートに比べ、金属皿バネ13eと押下検出用電極12bとの静電容量の変化量を大きくすることができる。それにより、キートップ13cの押圧操作を検出し易くすることができる。
【0048】
以上の各実施形態の静電容量型ポインティングデバイス11,21,31,41について、共通の変形例を説明する。なお、静電容量型ポインティングデバイス11を代表例に挙げて説明する。
【0049】
各実施形態の共通の変形例〔図10〕
第1実施形態の静電容量型ポインティングデバイス11では、上部電極13bとベローズ部13fと固定部13gとを導電性のゴム状弾性体で一体に形成する例を示したが、上部電極13bは導電性のゴム状弾性体とするが、ベローズ部13fと固定部13gとを絶縁性のゴム状弾性体で形成し、導電性のゴム状弾性体と絶縁性のゴム状弾性体とを一体に形成することができる。こうした静電容量型ポインティングデバイス51を図10で示す。
導電性のゴム状弾性体は、絶縁性のゴムに導電粒子を均一分散して形成するので、導電粒子の添加によってゴム材料本来の耐久性や反発弾性を発揮でなくなることがある。しかし、ベローズ部13fを絶縁性のゴム状弾性体で形成すれば、ベローズ部13fの耐久性や反発弾性をゴム材料本来の特性とすることができ、スライド操作によって変形したベローズ部13fを元の形状に戻し易くすることができる。よってスライド操作後のキートップ13cを初期位置に戻し易くすることができ、繰り返されるスライド操作を正確に検出することができる。
【0050】
上記各実施形態は本願発明の静電容量型ポインティングデバイスの例示であり、矛盾が生じない限度において、上記各実施形態で示した構成要素は他の実施形態で示した構成要素に適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0051】
11 静電容量型ポインティングデバイス(第1実施形態)
12 固定部材(回路基板)
12a 下部電極
12b 押下検出用電極
12c アース電極
13 操作部材
13a スライドシート
13b 上部電極
13c キートップ(操作部)
13d 固定シート
13e 金属皿バネ
13f ベローズ部
13g 固定部
13h 環状リブ
13k 押し子部
13m 両面テープ
14 トップカバー(外装部材)
14a 透孔
21 静電容量型ポインティングデバイス(第2実施形態)
22 固定部材(回路基板)
22a 下部電極
23 操作部材
23c キートップ(操作部)
23k 押し子部
31 静電容量型ポインティングデバイス(第3実施形態)
33 操作部材
33g 固定部
33n 透孔
33p 金属板
35 コネクタ
35a 導電部
35b 絶縁部
41 静電容量型ポインティングデバイス(第4実施形態)
43 操作部材
43a スライドシート
43q 貫通孔
43r スルーホール電極
51 静電容量型ポインティングデバイス(各実施形態の共通の変形例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部電極を有する固定部材に対して、上部電極を有する操作部材をスライド移動させて上部電極と下部電極間の静電容量の変化を検出する静電容量型ポインティングデバイスにおいて、
操作部材は、キートップでなる操作部と、その操作部の周囲に上部電極とを備え、
固定部材は、中心部を円形に切り欠くとともに複数に分割されてなる下部電極を備えることを特徴とする静電容量型ポインティングデバイス。
【請求項2】
上部電極が導電性のゴム状弾性体でなり、操作部材は上部電極の下側を被覆して下部電極と対向するスライドシートをさらに備える請求項1記載の静電容量型ポインティングデバイス。
【請求項3】
操作部材が、上部電極に連なる蛇腹状のベローズ部と、キートップの外側に位置する外装部材に対して固着する固定部とをさらに備え、該ベローズ部と固定部、さらに上部電極とを導電性のゴム状弾性体で一体に形成してなる請求項2記載の静電容量型ポインティングデバイス。
【請求項4】
操作部材が、前記固定部の形状を保持する金属板を備える請求項3記載の静電容量型ポインティングデバイス。
【請求項5】
操作部材が、キートップとスライドシートとの間に皿バネをさらに備え、
固定部材が、下部電極の中央に、押下検出用電極をさらに備える請求項2〜請求項4何れか1項記載の静電容量型ポインティングデバイス。
【請求項6】
皿バネの中央に対向する部位にスライドシートに透孔を設け、該透孔内にスルーホール電極を設ける請求項5記載の静電容量型ポインティングデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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