説明

静電容量型加速度検出装置及びそのキャリブレーション方法

【課題】重錘体に対向して配置された検出電極間の静電容量を正確に検出して感度の調整とオフセットの調整とを行うキャリブレーション機能を備えること。
【解決手段】容量電圧変換回路403は、一方の検出電極と重錘体間の容量及び他方の検出電極と重錘体間の容量を電圧に変換する機能と、一方の検出電極と重錘体間の容量と他方の検出電極と重錘体間の容量との差を電圧に変換する機能とを備える。EEPROM410は、感度補正値とオフセット補正値とを保存する。可変ゲインアンプ404は、容量電圧変換回路403からの出力を感度補正値に基づいて調節する。オフセット補正回路406は、復調回路405からの出力をオフセット補正値に基づいて調節する。デジタルインターフェイス408は、EEPROM410へ感度補正値とオフセット補正値との書き込みを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーロン力を用いた感度の調整とオフセットの調整とを行うキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置及びそのキャリブレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電極間距離の変化を利用して物理量を検出する装置及びその動作試験方法については良く知られている。例えば、2枚の基板を対向させて配置し、それぞれの基板上に電極を形成した単純な構造の検出装置が知られている。この検出装置においては、加速度などの物理量に基づいて一方の基板を変位させ、この変位により両基板上に形成した電極間距離を変化させ、これを両電極間の静電容量の変化として検出している。また、この検出装置は、一方の基板に重錘体を接合しておき、この重錘体に作用した加速度に基づいて基板を変位させれば、作用した加速度を検出する加速度検出装置として使用できるものである。
【0003】
通常、何らかの物理量の検出装置を製品化する場合、この検出装置が正しい検出信号を出力するか否かの動作試験を行う必要が生じる。従来、このような動作試験は、検出対象となる物理量を実際にその検出装置に作用させ、そのときの検出信号を調べるという方法が採られている。例えば、加速度の検出装置であれば、実際に所定の大きさの加速度を所定の方向から検出装置に作用させ、そのときの検出信号が、与えた加速度に応じた正しいものになっているか否かを判定する。
【0004】
この種の加速度検出装置として、例えば、特許文献1及び2のものが提案されている。特許文献1に記載の加速度検出装置は、直交3軸方向(X軸、Y軸、Z軸)の加速度測定が可能な加速度センサの電気的特性を測定する際に、各検出軸方向に重力加速度を印加するための加速度発生装置及びこれを用いた加速度センサ測定装置に関するものである。
【0005】
また、特許文献2に記載の加速度検出装置は、互いに直交する3軸の加速度成分を検出して加速度成分信号を出力する3軸加速度センサと、3軸加速度センサが装着され、装着された3軸加速度センサの加速度検出信号を測定する測定板と、測定板を回転支持する支持板と、支持板を回転させる主回転軸とを備えたものである。
【0006】
しかしながら、このような動作試験を行うには、専用の試験設備が必要になり、試験作業も煩雑で時間のかかるものとなる。特に、専用の試験設備で試験できる数量が限定され、生産性の低下を招くことになる。したがって、このような従来の試験方法は、大量生産される装置に対する動作試験としては不適当であるという問題があった。
【0007】
そこで、例えば、特許文献3のような加速度センサの検査装置及びその動作試験方法が提案されている。この特許文献3のものは、外力の作用により変位しうるように支持された変位電極と、この変位電極に対向する位置において装置筐体に固定された固定電極と、これら両電極の間の距離の変化を電気信号として取り出す検出手段とを備え、外力に対応した加速度を電気信号として検出する加速度検出装置の動作試験方法であって、両電極の間に所定の電圧を印加し、この印加電圧に基づいて発生するクーロン力により変位電極を変位させた状態において、両電極の一方の電極に所定の大きさをもった時間的変動成分を有する電気信号を与え、このときに他方の電極に伝達される変動成分の大きさを、印加電圧と比較することにより、この検出装置の動作を試験するようにした、電極間距離の変化を利用して加速度を検出する加速度検出装置の動作試験方法である。
【0008】
さらに、これ以外の電極間距離の変化を利用して物理量を検出する装置及びその動作試験方法、つまり、試験電極に電圧をかけてクーロン力で変位させ、印加電圧の大きさと変位量(容量変化)を比較して動作試験を行うものとしては、例えば、特許文献4及び5が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−002914号公報
【特許文献2】特開2007−322337号公報
【特許文献3】特開2002−221463号公報
【特許文献4】国際公開WO1992/17759号公報
【特許文献5】特開2000−146729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した検査装置及びその動作試験方法では、基本的に故障検出などの大まかな動作試験しかできないという問題があった。これは、加速度センサで感度やオフセットのばらつきに対して較正を行う場合、加速度センサの形状のばらつきにより、リファレンスにするクーロン力自体もばらつくため、感度及びオフセットを正確に較正できないためである。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、変位可能な重錘体と、この重錘体に対向して配置された検出電極間の静電容量を正確に検出して感度の調整とオフセットの調整とを行うキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置及びそのキャリブレーション方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、変位可能な重錘体と、該重錘体に対向して設けられ、該重錘体の変位によって一方の検出電極と該重錘体との容量は増加し、他方の検出電極と該重錘体との容量は減少する一対の検出電極を複数備える静電容量型加速度センサを有し、感度及びオフセットを調整する静電容量型加速度検出装置において、前記静電容量型加速度センサが備える前記複数の一対の検出電極から一対の検出電極を選択する電極選択手段と、該電極選択手段により選択された前記一対の検出電極の前記一方の検出電極及び前記他方の検出電極と前記重錘体間の容量を検出する容量検出手段と、前記電極選択手段により選択された前記一対の検出電極の前記一方の検出電極及び前記他方の検出電極に電圧を印加する電圧印加手段と、前記容量検出手段により検出された容量と前記検出電極に印加された電圧とから求められる感度補正値とオフセット補正値とを保持する記憶手段と、該記憶手段によって保持された補正値に応じて感度調整を行う感度調整手段と、前記記憶手段によって保持された補正値によりオフセット調整を行うオフセット調整手段とを備えていることを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記静電容量型加速度センサが、前記重錘体の厚みの等しい複数の静電容量型加速度センサからなることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記電圧印加手段が、電圧発生源を備え、該電圧発生源が生成する電圧を前記検出電極に印加することを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1,2又は3に記載の発明において、前記電圧印加手段が、外部から供給される電圧を前記検出電極に印加することを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、容量検出手段が、前記選択された一対の検出電極のうち、前記一方の検出電極と前記重錘体間の容量を電圧に変換する機能と、前記他方の検出電極と前記重錘体間の容量を電圧に変換する機能と、前記一方の検出電極と前記重錘体間の容量と前記他方の検出電極と前記重錘体間の容量との差を電圧に変換する機能とを備えていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明において、容量検出手段が、2つの容量を個別に検出するシングルエンド容量電圧変換回路と、該シングルエンド容量電圧変換回路からの出力電圧の差を出力する差動増幅回路と、前記シングルエンド容量電圧変換回路からの出力と前記差動増幅回路からの出力とから一つの出力を選択するセレクタとから構成されていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、前記感度調整手段に、寄生容量除去手段を付加したことを特徴とする。
【0019】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の発明において、前記静電容量型加速度センサが、櫛歯型のX軸用静電容量型加速度センサと、櫛歯型のY軸用静電容量型加速度センサと、シーソー型のZ軸用静電容量型加速度センサとを一体的に構成した静電容量型3軸加速度センサであることを特徴とする。
【0020】
また、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の発明において、前記櫛歯型のX軸用静電容量型加速度センサの重錘体と前記櫛歯型のY軸用静電容量加速度センサの重錘体とが同一であることを特徴とする。
【0021】
また、請求項10に記載の発明は、変位可能な重錘体と、該重錘体に対向して設けられ、該重錘体の変位によって一方の検出電極と該重錘体との容量は増加し、他方の検出電極と該重錘体との容量は減少する一対の検出電極を複数備える静電容量型加速度センサを有し、該一対の容量の差を検出する静電容量型加速度検出装置における感度及びオフセットの調整を行うキャリブレーション方法において、前記重錘体に対向する一方の検出電極に基準電圧を印加して他方の検出電極と重錘体間の容量を検出するステップと、前記一方の検出電極に前記基準電圧と異なる電圧を印加して前記他方の検出電極と前記重錘体間の容量を検出するステップと、前記検出された容量から感度補正値を求めて感度調整を行うステップと、前記一方の検出電極と前記重錘体間の検出された容量と、前記他方の検出電極と前記重錘体間の検出された容量との容量差を検出するステップと、前記検出された容量差からオフセット補正値を求めてオフセット補正を行うステップとを有することを特徴とする。
【0022】
また、請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の発明において、前記感度調整を行うステップが、前記検出された容量から寄生容量を除去して感度補正値を求めることを特徴とする。
【0023】
また、請求項12に記載の発明は、請求項10又は11に記載の発明において、前記感度調整を行うステップが、前記感度補正値に重力とクーロン力との違いを係数として掛けた値を前記感度補正値として使用することを特徴とする。
【0024】
また、請求項13に記載の発明は、請求項10,11又は12に記載の発明において、前記オフセット補正を行うステップが、複数個の静電容量型加速度センサから得られる容量値の分布から前記感度補正値を求めることを特徴とする。
【0025】
また、請求項14に記載の発明は、請求項10,11又は12に記載の発明において、前記感度調整を行うステップが、複数個の静電容量型加速度センサから得られる重力に対する容量変化と、電圧による容量変化との関係から前記感度補正値を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、変位可能な重錘体と、この重錘体に対向して設けられ、重錘体の変位によって一方の検出電極と該重錘体との容量は増加し、他方の検出電極と重錘体との容量は減少する一対の検出電極を複数備える静電容量型加速度センサを有し、感度及びオフセットを調整する静電容量型加速度検出装置において、静電容量型加速度センサが備える複数の一対の検出電極から一対の検出電極を選択する電極選択手段と、この電極選択手段により選択された一対の検出電極の一方の検出電極及び他方の検出電極と重錘体間の容量を検出する容量検出手段と、電極選択手段により選択された一対の検出電極の一方の検出電極及び他方の検出電極に電圧を印加する電圧印加手段と、容量検出手段により検出された容量と検出電極に印加された電圧とから求められる感度補正値とオフセット補正値とを保持する記憶手段と、この記憶手段によって保持された補正値に応じて感度調整を行う感度調整手段と、記憶手段によって保持された補正値によりオフセット調整を行うオフセット調整手段とを備えているので、感度の調整とオフセットの調整とを行うキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置及びそのキャリブレーション方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る静電容量型加速度センサを説明するための構成図で、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A’線断面図、(c)は(a)のB−B’線断面図である。
【図2】本発明に係る他の静電容量型加速度センサを説明するための構成図で、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A’線断面図、(c)は電極の上面図である。
【図3】本発明に係る静電容量型加速度センサを説明するための構成図で、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A’線断面図である。
【図4】本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置を説明するためのブロック図である。
【図5】図4で説明した容量電圧変換回路の構成例を説明した回路図である。
【図6】本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置に用いられるX,Y軸方向検出用の静電容量型加速度センサの感度調整方法を説明するための原理図である。
【図7】本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置に用いられるZ軸方向検出用の静電容量型加速度センサの感度調整方法を説明するための原理図である。
【図8】複数の静電容量型加速度センサに対する容量値の分布図である。
【図9】重力に対する容量変化と電圧による容量変化の関係を表す分布図で、(a)は、重錘体の厚みtがばらつき、dはほぼ一定である場合の例、(b)は、重錘体の厚みtがほぼ一定で、ギャップdがばらつく場合の例を示している。
【図10】本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置におけるキャリブレーション方法を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図11A】図4に示した本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置を用いた感度及びオフセットの補正方法の具体的な工程図(その1)である。
【図11B】図4に示した本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置を用いた感度及びオフセットの補正方法の具体的な工程図(その2)である。
【図11C】図4に示した本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置を用いた感度及びオフセットの補正方法の具体的な工程図(その3)である。
【図11D】図4に示した本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置を用いた感度及びオフセットの補正方法の具体的な工程図(その4)である。
【図11E】図4に示した本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置を用いた感度及びオフセットの補正方法の具体的な工程図(その5)である。
【図11F】図4に示した本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置を用いた感度及びオフセットの補正方法の具体的な工程図(その6)である。
【図11G】図4に示した本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置を用いた感度及びオフセットの補正方法の具体的な工程図(その7)である。
【図11H】図4に示した本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置を用いた感度及びオフセットの補正方法の具体的な工程図(その8)である。
【図11I】図4に示した本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置を用いた感度及びオフセットの補正方法の具体的な工程図(その9)である。
【図11J】図4に示した本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置を用いた感度及びオフセットの補正方法の具体的な工程図(その10)である。
【図11K】図4に示した本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置を用いた感度及びオフセットの補正方法の具体的な工程図(その11)である。
【図11L】図4に示した本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置を用いた感度及びオフセットの補正方法の具体的な工程図(その12)である。
【図11M】図4に示した本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置を用いた感度及びオフセットの補正方法の具体的な工程図(その13)である。
【図11N】図4に示した本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置を用いた感度及びオフセットの補正方法の具体的な工程図(その14)である。
【図11O】図4に示した本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置を用いた感度及びオフセットの補正方法の具体的な工程図(その15)である。
【図12】本発明に係る静電容量型加速度センサの他の実施例を説明するための構成図で、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A’線断面図、(c)は(a)のB−B’線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0029】
図1(a)及至(c)は、本発明に係る静電容量型加速度センサを説明するための構成図で、図1(a)は上面図、図1(b)は図1(a)のA−A’線断面図、図1(c)は図1(a)のB−B’線断面図である。
【0030】
この静電容量型加速度センサは、櫛歯型の静電容量型加速度センサ10であって、変位可能な重錘体16と、重錘体16に結合した櫛歯可動電極17a及至17fと、櫛歯可動電極17a及至17fを挟んで対向して配置された固定電極13a及至13fと固定電極14a及至14fと、重錘体16に結合した梁部材12a及至12dと、梁部材12a,12cと結合した固定アンカー11aと、梁部材12b,12dと結合した固定アンカー11bと、固定アンカー11a,11bを支持する基板15とを備え、櫛歯可動電極17a及至17fと一方の検出電極(固定電極13a及至13f)との間の静電容量変化と、可動電極17a及至17fと他方の検出電極(固定電極14a及至14f)との間の静電容量変化を検出するように構成されている。なお、符号Lは、固定電極に対向する櫛歯可動電極の領域を示し、dは固定電極と櫛歯可動電極との間隔を示している。
【0031】
このような櫛歯型の静電容量型加速度センサ10に対して、動作試験機能を有する静電容量型加速度検出装置が構成でき、クーロン力によって生じる重錘体16の櫛型可動電極17a及至17fと、固定電極13a及至13fまたは固定電極14a及至14fとの間に生じる容量変化により高精度の動作試験を行うことができる。
【0032】
図2(a)及至(c)は、本発明に係る他の静電容量型加速度センサを説明するための構成図で、図2(a)は斜視図、図2(b)は図2(a)のA−A’線断面図、図2(c)は電極の上面図である。
【0033】
この静電容量型加速度センサは、シーソー型の静電容量型加速度センサ20であって、変位可能な重錘体26と、この重錘体26に結合した梁部材22a及至22bと、この梁部材22a及至22bとに結合した固定アンカー21と、この固定アンカー21を支持する基板25と、この基板上に配置され重錘体26と対向する左側検出固定電極23と、固定アンカー21を挟んで重錘体26に対向する右側検出固定電極24とを備え、重錘体26と左側検出固定電極23との静電容量変化と、重錘体26と右側検出固定電極24との静電容量変化を検出するように構成されている。なお、符号L1は固定アンカー21の中心位置から固定電極の一端間の距離、L2は固定アンカー21の中心位置から固定電極の他端間の距離、WEは固定電極の幅を示している。
【0034】
図3(a),(b)は、本発明に係る静電容量型加速度センサを説明するための構成図で、図3(a)は上面図、図3(b)は図3(a)のA−A’線断面図である。
【0035】
この静電容量型加速度センサは、図1に示した櫛歯型の静電容量型加速度センサ10をX軸用に配置した櫛歯型の静電容量型加速度センサ10Xと、図1に示した櫛歯型の静電容量型加速度センサ10をY軸用に配置した櫛歯型の静電容量型加速度センサ10Yと、図2に示したシーソー型の静電容量型加速度センサ20をZ軸用に配置したシーソー型の静電容量型加速度センサ20Zを一体的に構成した静電容量型3軸加速度センサ30である。
【0036】
つまり、X軸方向の加速度を検出するための静電容量型加速度センサ10Xと、Y軸方向の加速度を検出するための静電容量型加速度センサ10Yと、Z軸方向の加速度を検出するための静電容量型加速度センサ20Zとが、同一平面上に構成されており、静電容量型3軸加速度センサを構成する3つの重錘体16X,16Y,26Zの厚み全てが等しく構成されている。なお、符号31は枠、32は基板、tは重錘体26Zの厚さを示している。
【0037】
このような構成により、X軸方向の加速度は、X軸用の静電容量型加速度センサ10Xにおける重錘体16Xに結合した櫛歯可動電極と固定電極間の容量変化により検出し、Y軸方向の加速度は、Y軸用の静電容量型加速度センサ10Yにおける重錘体16Yに結合した櫛歯可動電極と固定電極間の容量変化により検出し、Z軸方向の加速度は、Z軸用の静電容量型加速度センサ20Zにおける重錘体26Zと左右の固定電極との静電容量変化を検出する。
【0038】
図4は、本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置を説明するためのブロック図である。静電容量型3軸加速度センサ30は、X,Y軸方向加速度検出用の櫛歯型の静電容量加速度センサ10X,10Yと、Z軸方向加速度検出用のシーソー型の静電容量型加速度センサ20Zを備えている。静電容量型加速度センサ10X,10Yは、それぞれ、一方の櫛歯可動電極と固定電極とからなる一方の検出電極と、他方の櫛歯可動電極と固定電極とからなる他方の検出電極とを備えている。同様に、静電容量型加速度センサ20Zは、一方の検出電極と他方の検出電極とを備えている。なお、キャリブレーション機能とは、感度の調整とオフセットの調整とを行うものである。より具体的には、感度の調整とは、一定加速度に対する静電容量変化の大きさのばらつきが個々の静電容量型加速度センサに生じている場合でも、個々の静電容量型加速度検出装置の出力が一定となるよう調整を行うことである。また、オフセットの調整とは、静電容量型加速度センサに加速度が加わっていない場合に、静電容量型加速度検出装置の出力が0となるよう調整を行うことである。
【0039】
マルチプレクサ(電極選択手段)401は、X,Y,Z軸方向加速度検出用の3つの静電容量型加速度センサのうちの一つに属する検出電極一対を選択する。容量電圧変換回路(容量検出手段)403は、マルチプレクサ401で選ばれた一対の検出電極のうち、一方の検出電極と重錘体間の容量を電圧に変換する機能と、他方の検出電極と重錘体間の容量を電圧に変換する機能と、一方の検出電極と重錘体間の容量と他方の検出電極と重錘体間の容量との差を電圧に変換する機能とを備えている。
【0040】
なお、具体的な回路図は、後述する図5に記載されている。また、X,Y,Z軸それぞれに個別の容量電圧変換回路を持つ場合と比べて、このようにマルチプレクサ401と単一の容量電圧変換回路403を用いて、時分割でX,Y,Z軸方向加速度を測定する場合、同一の容量電圧変換回路を用いるため、X,Y,Z軸間の相対的な測定誤差を低減できる。
【0041】
電圧源402は、マルチプレクサ401で選ばれた検出電極に加えるための電圧を発生するためのものである。EEPROM410は、感度補正値とオフセット補正値とを書き込み保存するためのメモリである。可変ゲインアンプ(感度調整手段)404は、容量電圧変換回路403からの出力を感度補正値に基づいて調節するためのものである。なお、感度調整するに際しては、検出電極と重錘体の対向部の容量以外に、検出電極と重錘体の上下面等、検出電極と重錘体の対向部以外とに生じる寄生容量、及び、静電容量型加速度センサと回路を接続する配線に生じる寄生容量があり、これらの寄生容量の影響を除去することが望ましい。そのためには、シミュレーションにより前もって寄生容量の影響を見積もり、これを加味して感度補正値を求める必要がある。加えて、後述する重力とクーロン力との差異から生じる影響を除去することが望ましい。そのためには、寄生容量の影響と同様にして、シミュレーションにより前もって影響を見積もり、これを加味して感度補正値を求める必要がある。このように求めた感度補正値にもとづいて可変ゲインアンプ404を調整することにより、寄生容量の影響及び重力とクーロン力との差異から生じる影響を除去することができる。つまり、可変ゲインアンプ404を寄生容量除去手段及び重力とクーロン力との差異から生じる影響除去手段として用いることができる。
【0042】
発振回路409は、静電容量型3軸加速度センサ30が備える3つの重錘体に対して高周波電圧を加えるためのものである。復調回路405は、高周波に変調されている可変ゲインアンプ404からの出力を直流に復調するためのものである。オフセット補正回路(オフセット調整手段)406は、復調回路405からの出力をオフセット補正値に基づいて調節するためのものである。アナログデジタル変換器407は、復調回路405からの出力電圧をデジタル値に変換するためのものである。
【0043】
デジタルインターフェイス408は、アナログデジタル変換回路出力を、演算処理機能を有する外部装置に送信すると共に、外部装置からの命令を受信し、EEPROM410へ感度補正値とオフセット補正値との書き込みを行うためのものである。加えて、可変ゲインアンプ404とオフセット補正回路406に対して感度補正値とオフセット補正値とに基づいて設定を行うためのものである。
【0044】
なお、演算処理機能を有する外部装置としては、静電容量型加速度検出装置の検査を行うための半導体テスタや、携帯電話等の電子機器に搭載され静電容量型加速度検出装置を制御するマイクロコントローラが考えられる。
【0045】
このような構成により、どのようにしてキャリブレーション機能を実現するかについては、後述する図11に基づいて詳細に説明する。つまり、このようなキャリブレーションを行った後、本発明の静電容量型加速度検出装置は、マルチプレクサ401のある状態のもとで一方及び他方の検出電極間の容量差を測定し、X,Y,Z軸方向の加速度検出を行うことができ、その出力は、デジタルインターフェイス408から容量値として取り出すことができる。
【0046】
図5は、図4で説明した容量電圧変換回路の構成例を説明した回路図である。この容量電圧変換回路403は、2つの容量を個別に検出するシングルエンド容量電圧変換回路51a,51bと、シングルエンド容量電圧変換回路51a,51bからの出力電圧の差を出力する差動増幅回路52と、シングルエンド容量電圧変換回路51a,51bからの出力と差動増幅回路52からの出力とから一つの出力を選択するセレクタ53とから構成されている。
【0047】
このような構成により、上述したように、容量電圧変換回路403は、マルチプレクサ401で選ばれた一対の検出電極のうち、一方の検出電極と重錘体間の容量を電圧に変換する機能と、他方の検出電極と重錘体間の容量を電圧に変換する機能と、一方の検出電極と重錘体間の容量と他方の検出電極と重錘体間の容量との差を電圧に変換する機能とを備えている。
【0048】
図6(a)乃至(e)は、本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置に用いられるX,Y軸方向検出用の静電容量型加速度センサの感度調整方法を説明するための原理図である。なお、ここでは、X軸方向加速度検出用の櫛歯型の静電容量型加速度センサ10Xについての感度調整方法について説明する。符号60Lは一方の検出電極で、図1における13a乃至13fに対応し、60Rは他方の検出電極で、図1における14a乃至14fに対応している。
【0049】
まず、図6(a)は、重力加速度による容量変化を検出する通常の加速度検出状態を示している。質量Mを有する重錘体16Xに加わる重力M・gと、重力M・gによる容量変化とから、力あたりの容量変化kg[F/N]を次のように表すことができる。
【0050】
【数1】

【0051】
ここで、CLXは一方の検出電極60Lと重錘体16X間の容量、CRXは他方の検出電極60Rと重錘体16X間の容量を表す。
【0052】
一方、重力の代わりにクーロン力を用いても力あたりの容量変化kc[F/N]を求めることができる。図6(b)及至(e)を用いてこれを説明する。まず、図6(b)で示すように、一方の検出電極60Lに基準電圧VCOMを加えた状態で、他方の検出電極60Rと重錘体16X間の容量CRX0を検出する。次に、図6(c)で示すように、一方の検出電極60Lに電圧VDDを加えた状態で、他方の検出電極60Rと重錘体16X間の容量CRXdを検出する。VDDを加えた他方の検出電極60Rと重錘体16X間に働くクーロン力FCLは、次のように表すことができる。
【0053】
【数2】

【0054】
Sは検出電極と重錘体が重なり合う面積を表し、dは、検出電極と重錘体間のギャップを表し、Nは、静電容量型加速度センサ10Xの固定電極と可動電極の組数を表し、Lは固定電極と可動電極とが重なり合う長さを表す。
【0055】
次に、図6(d)で示すように、他方の検出電極60Rに基準電圧VCOMを加えた状態で、一方の検出電極60Lと重錘体16X間の容量CLX0を検出する。次に、図6(e)で示すように、他方の検出電極60Rに電圧VDDを加えた状態で、一方の検出電極60Lと重錘体16X間の容量CLXdを検出する。VDDを加えた他方の検出電極60Rと重錘体16X間に働くクーロン力FCRは、次のように表すことができる。
【0056】
【数3】

【0057】
ここで、加えた力FCLとFCLによる容量変化(CRXd−CRX0)と、加えた力FCRとFCRによる容量変化(CLXd−CLX0)とからクーロン力による力あたりの容量変化kc[F/N]を次のように表すことができる。
【0058】
【数4】

【0059】
cとkgが等しい場合、錘の質量Mがわかっていれば、重力Mgによる容量変化、つまり、静電容量型加速度センサ10Xの感度を、kcを使って次のように予測することができる。
【0060】
【数5】

【0061】
また、ここで、数式5に数式2、3を代入することにより、次の式を得ることができる。
【0062】
【数6】

【0063】
Aは錘の面積、ρSiは錘の密度を表す。
【0064】
また、検出容量と、検出電極と重錘体間のギャップdとの間には、次の関係がある。
【0065】
【数7】

【0066】
数式7を数式6に代入することにより、次の式を得ることができる。
【0067】
【数8】

【0068】
数式6の場合、感度は、検出電極と重錘体間のギャップdの二乗に比例しており、dのばらつきが予測感度の誤差となる。一方、数式8の場合、感度は、重錘体の厚みtの二乗に比例しており、tのばらつきが、予測感度の誤差となる。ばらつきの要因に応じて数式6又は数式8を用いて感度を予測し、感度補正値を求める。
【0069】
なお、数式8を用いて感度を予測する場合、容量CLX0とCRX0には、クーロン力と無関係な寄生容量Cpが含まれており、これが誤差要因のひとつなっている。そこで、シミュレーションにより、Cpを求め、測定したCLX0とCRX0とからCpを除いた値を、クーロン力を求める際に用いることにより誤差を低減できる。または、CLX0とCRX0の値に対応するクーロン力をシミュレーションから直接求めても良い。
【0070】
また、静電容量型加速度センサ10Xの形状が、typcal値で形成されており、重錘体の厚みtやギャップdにばらつきがない場合でも、重力から求まる感度とクーロン力から求まる感度には、誤差が存在する。一つの原因として、重力は、重錘体と重錘体に結合してバネとして働く梁部材にも加わるが、クーロン力は、検出電極と重錘体との間にしか加わらないためである。この誤差については、クーロン力から求めた感度と重力から求まる感度との差をシミュレーションにより求めることにより、補正係数を算出し、予測感度の誤差を低減する。
【0071】
なお、Y軸方向加速度検出用の櫛歯型の静電容量型加速度センサ10Yについての感度調整方法も同様である。
【0072】
図7(a)至及(e)は、本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置に用いられるZ軸方向検出用の静電容量型加速度センサの感度調整方法を説明するための原理図である。ここでは、シーソー型の静電容量型加速度センサ20Zの感度調整方法について説明する。
【0073】
まず、図7(a)は、重力加速度による容量変化を検出する通常の加速度検出状態を示している。質量Mを有し、重心が固定アンカー21からRの距離にある重錘体26Zに加わる重力によるトルクMgRにより、固定アンカー21の回りに重錘体26Zが回転する。これにより、検出電極と重錘体26Z間の容量が変化する。このトルクMgRと、トルクMgRから生じる容量変化とから、トルクあたりの容量変化kTg[F/(N・m)]を次のように表すことができる。
【0074】
【数9】

【0075】
ここで、CLZは、左側検出電極23L(図2における検出電極23に対応)と重錘体26Z間の容量、CRZは、右側検出電極24R(図2における検出電極24に対応)と重錘体26Z間の容量を表す。
【0076】
一方、重力の代わりにクーロン力を用いてもトルクあたりの容量変化kTg[F/(N・m)]を求めることができる。図7(b)及至(e)を用いてこれを説明する。まず、図7(b)で示すように、右側検出電極24Rに基準電圧VCOMを加えた状態で、左側検出電極23Lと重錘体26Z間の容量CLZ0を検出する。次に、図7(c)で示すように、右側検出電極24Rに電圧VDDを加えた状態で、左側検出電極23Lと重錘体26Z間の容量CLZdを検出する。VDDを加えた右側検出電極24Rと重錘体26Z間に働くクーロン力によるトルクTCLは、次のように表すことができる。
【0077】
【数10】

【0078】
1は、固定アンカー21の中心から電極の固定アンカー側の端までの距離を表し、L2は、固定アンカー21の中心から固定電極のもう一方の端までの距離を表し、WEは電極の幅を表す。
【0079】
次に、図7(d)で示すように、左側検出電極23Lに基準電圧VCOMを加えた状態で、右側検出電極24Rと重錘体26Z間の容量CRZ0を検出する。さらに、図7(e)で示すように、左側検出電極23Lに電圧VDDを加えた状態で、右側検出電極24Rと重錘体26Z間の容量CRZdを検出する。VDDを加えた左側検出電極23Lと重錘体26Z間に働くクーロン力によるトルクTCRは、次のように表すことができる。
【0080】
【数11】

【0081】
ここで、加えたトルクTCLとTCLによる容量変化(CRXd−CRX0)と、加えたトルクTCRとTCRによる容量変化(CLXd−CLX0)とからトルクあたりの容量変化kTc[F/(N・m)]を次の式から求めることができる。
【0082】
【数12】

【0083】
TcとkTgが等しい場合、錘の質量Mがわかっていれば、重力によるトルクMgRによる容量変化、つまり静電容量型加速度センサの感度を、kTcを使って次のように予測することができる。
【0084】
【数13】

【0085】
数式13に数式10、11を代入することにより次の式を得ることができる。
【0086】
【数14】

【0087】
Aは重錘体の面積、ρSiは重錘体の密度を表す。
【0088】
また、静電容量型加速度センサ10X,10Yと静電容量型加速度センサ20Zの重錘体の厚みが等しい場合、数式7の関係からtを求め、数式14に代入することにより、次の式を得ることができる。
【0089】
【数15】

【0090】
数式14の場合、感度の式は、重錘体の厚みtに比例しており、tのばらつきが感度の誤差となる。一方、数式15の場合、感度は静電容量型加速度センサ10X,10Yの検出電極と重錘体間のギャップdに比例しており、dのばらつきが、予測感度の誤差となる。ばらつき要因に応じて数式14又は15を用いて感度を予測し、感度補正値を求める。
【0091】
なお、数式14又は15を用いて感度を予測する場合、容量CLZ0とCRZ0には、クーロン力と無関係な寄生容量Cpが含まれており、これが誤差要因のひとつなっている。そこで、シミュレーションにより、Cpを求め、測定したCLZ0とCRZ0とからCpを除いた値を、クーロン力を求める際に用いることにより誤差を低減できる。または、CLZ0とCRZ0の値に対応するクーロン力をシミュレーションから直接求めても良い。
【0092】
また、静電容量型加速度センサ10X,10Yの形状が、typcal値で形成されており、重錘体の厚みtやギャップdにばらつきがない場合でも、重力から求まる感度とクーロン力から求まる感度には、誤差が存在する。一つの原因として、重力は、重錘体と重錘体に結合してバネとして働く梁部材にも加わるが、クーロン力は、検出電極と重錘体との間にしか加わらないためである。この誤差については、クーロン力から求めた感度と重力から求まる感度との差をシミュレーションにより求めることにより、補正係数を算出し、予測感度の誤差を低減する。
【0093】
なお、図3で示すように、静電容量型加速度センサ10X,10Yで数式6を用いて感度予測を行う場合、静電容量型加速度センサ20Zでは数式15を使用する。または、静電容量型加速度センサ10X,10Yで数式8を用いて感度予測を行う場合、静電容量型加速度センサ20Zでは数式14を使用する。これにより、静電容量型加速度センサ10X,10Yと20Zとの間で誤差要因が同じとなり、予測感度の相対誤差を低減することができる。
【0094】
次に、複数個の静電容量型加速度センサに対する容量測定により重錘体の厚みtを予測し、感度補正の予測精度を向上させる方法について説明する。
【0095】
ロット間とウエハー間を含めた場合に重錘体の厚みtのばらつきが大きいとしても、単一のウエハーを考えた場合、tのばらつきは小さいと考えられる。ウエハー上の複数の静電容量型加速度センサ10X,10Yに対して容量測定を行い、図8で示すような容量値の分布を得た。出現する容量の分布は、検出電極と重錘体間のギャップdのばらつきが主要因として生じると考えられ、容量の最頻値はギャップdのtypical値dtypにおける容量C(dtyp)と考えられる。
一方、C(dtyp)とdtypとの間には、次の関係がある。
【0096】
【数16】

【0097】
この数式16からウエハー上に形成されている重錘体の厚みtを求めることができる。また、このような単純な式ではなく、シミュレーションからCとtとの関係を求め、tの精度を高めることもできる。このように求めたtを数式8及び数式14に適用し、感度の予測精度を高めることができる。つまり、感度調整を行うことは、複数個の静電容量型加速度センサから得られる容量値の分布から感度補正値を求めることを意味している。
【0098】
実際にプロセスが固定された条件の下では、重力に対する容量変化dCgと電圧による容量変化dC(3.3V)の関係を表す分布は、狭く直線に近くなっている。分布の要因のうちの一つとして、図9(a)は、重錘体の厚みtがばらつき、dはほぼ一定である場合の例である。図9(b)は、重錘体の厚みtがほぼ一定で、ギャップdがばらつく場合の例である。図9(a)及び(b)で示されるような分布においては、電圧による容量変化の測定値から重力に対する容量変化を一対一で求めることができるため、高い精度で感度を予測し、感度補正を行うことができる。つまり、感度調整を行うことは、複数個の静電容量型加速度センサから得られる重力に対する容量変化と、電圧による容量変化との関係から感度補正値を求めることを意味している。
【0099】
図10は、本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置におけるキャリブレーション方法を説明するためのフローチャートを示す図で、図11A乃至図11Oは、図4に示した本発明に係るキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置を用いた感度及びオフセットの補正方法の具体的な工程図である。
【0100】
まず、静電容量型加速度検出装置30に備えられたX、Y軸方向加速度検出用の櫛歯型の静電容量型加速度センサ10X,10Y及びZ軸方向加速度検出用のシーソー型の静電容量型加速度センサ20Zを水平状態にする(ステップS1)。次に、Y軸方向加速度検出用の櫛歯型の静電容量型加速度センサ10Xをマルチプレクサ401で選択する(ステップS2)。
【0101】
次に、選択された静電容量型加速度センサ10Xの一方の検出電極をマルチプレクサ401を介して容量電圧変換器403に接続し、他方の検出電極をマルチプレクサ401を介して基準電圧VCOMに接続し、一方の検出電極と重錘体間の容量CLXOを測定する(ステップS3;図11A)。
【0102】
次に、基準電圧VCOMに接続されていた他方の検出電極をマルチプレクサ401を介して電圧VDDに接続し、一方の検出電極をマルチプレクサ401を介して電極容量電圧変換器403に接続し、検出電極と重錘体間の容量CLXdを測定する(ステップS4;図11B)。
【0103】
次に、電極容量電圧変換器403に接続されていた一方の検出電極をマルチプレクサ401を介して基準電圧VCOMに接続し、他方の検出電極をマルチプレクサ401を介して電極容量電圧変換器403に接続し、他方の検出電極と重錘体間の容量CRXOを測定する(ステップS5;図11C)。
【0104】
次に、基準電圧VCOMに接続されていた一方の検出電極をマルチプレクサ401を介して電圧VDDに接続し、他方の検出電極をマルチプレクサ401を介して電極容量電圧変換器403に接続し、他方の検出電極と重錘体間の容量CRXdを測定する(ステップS6;図11D)。
【0105】
次に、測定した容量が、ある閾値以内であるかどうかを判断し(ステップS7)、閾値以内でなければ不良品として処分する。つまり、求めた容量CLX0、CLXd、CLY0、CLYd、CLZ0、CLZdが、ある閾値以内であるかどうかで良品・不良品判定を行う。
【0106】
次に、閾値以内であれば、X,Y,Z軸の全てのセンサに関して容量測定が終了したかどうかを判断し(ステップS8)、終了していなければステップS2に戻り、ステップ3以降の処理を繰り返す。つまり、Y軸方向加速度検出用の櫛歯型の静電容量型加速度センサ10Y及びZ軸方向加速度検出用のシーソー型の静電容量型加速度センサ20Zについても上記ステップS3乃至ステップS7を繰り返す(図11E乃至図11L)。
【0107】
次に、容量測定が全て終了したならば、測定した容量から寄生容量を取り除く(ステップS9)。つまり、求めた容量、CLX0、CLXd、CLY0、CLYd、CLZ0、CLZdから寄生容量を取り除く。
【0108】
次に、寄生容量を除去した容量から数式8と数式14を用いてX,Y,Z軸センサの感度を求める(ステップS10)。次に、感度を重力とクーロン力との違いから生じた補正値で誤差を補正する(ステップS11)。次に、求めた感度を元に感度補正値を求め、可変ゲインアンプ404を調節する(ステップS12)。
【0109】
次に、再び、X軸方向加速度検出用の櫛歯型の静電容量型加速度センサ10Xをマルチプレクサ401で選択する(ステップS13)。次に、一対の検出電極を容量電圧変換器403に接続し、一方の検出電極と重錘体間の容量と、他方の検出電極と重錘体間の容量差(CLXO−CRXO)を測定する(ステップS14;図11M)。
【0110】
次に、測定した容量差からオフセットを求める(ステップS15)。次に、X,Y,Z軸の全てのセンサに関して容量測定が終了したかどうかを判断し(ステップS16)、終了していなければステップS13に戻ってステップ14及び15の処理を繰り返す。つまり、Y軸方向加速度検出用の櫛歯型の静電容量型加速度センサ10Y及びZ軸方向加速度検出用のシーソー型の静電容量型加速度センサ20Zについても上記ステップS14及び15を繰り返す(図11N及び図11O)。
【0111】
次に、求めた容量差を元にオフセット補正回路406を調整する(ステップS17)。次に、求めた感度補正値と、オフセット補正値とをEEPROM410に保存する(ステップS18)。
【0112】
このようなキャリブレーションを行った後、本発明の静電容量型加速度検出装置は、図11M及至図11Oで示したにマルチプレクサ401の状態で両検出電極間の容量差を測定し、X,Y,Z軸方向の加速度検出を行うことができる。
【0113】
図12(a)及至(c)は、本発明に係る静電容量型加速度センサの他の実施例を説明するための構成図で、図12(a)は上面図、図12(b)は図12(a)のA−A’線断面図、図12(c)は図12(a)のB−B’線断面図である。
【0114】
この静電容量型加速度センサは、図3に示したX軸用に配置した櫛歯型の静電容量型加速度センサ10Xと、Y軸用に配置した櫛歯型の静電容量型加速度センサ10Yとを一体化したことによりXY軸兼用の櫛歯型の静電容量型加速度センサ120を実現したものである。つまり、櫛歯型のX軸用静電容量型加速度センサの重錘体と櫛歯型のY軸用静電容量加速度センサの重錘体とが同一であることを意味している。
【0115】
したがって、この場合の本発明の静電容量型加速度検出装置は、XY軸兼用の櫛歯型の静電容量型加速度センサ120と、Z軸用に配置したシーソー型の静電容量型加速度センサ20Zを一体的に構成した静電容量型3軸加速度センサとなる。
【0116】
上述したようにこの静電容量型加速度センサは、櫛歯型の静電容量型加速度センサ120であって、変位可能な重錘体129と、重錘体129に結合した櫛歯可動電極127a及至127dと櫛歯可動電極128a及至128dと、櫛歯可動電極127a及至127dを挟んで対向して配置された固定電極123a及至123dと固定電極124a及至124dと、櫛歯可動電極128a及至128dを挟んで対向して配置された固定電極125a及至125dと固定電極126a及至126dと、重錘体129に結合した梁部材122a及至122dと、梁部材122aと結合した固定アンカー121aと、梁部材122bと結合した固定アンカー121bと、梁部材122cと結合した固定アンカー121cと、梁部材122dと結合した固定アンカー121dと、固定アンカー121a及至121dを支持する基板130を備え、X軸方向の加速度を検出するに際しては、櫛歯可動電極128a及至128dと一方の検出電極(固定電極125a及至125d)との間の静電容量変化と、可動電極128a及至128dと他方の検出電極(固定電極126a及至126d)との間の静電容量変化を検出し、Y軸方向の加速度を検出するに際しては、櫛歯可動電極127a及至127dと一方の検出電極(固定電極123a及至123d)との間の静電容量変化と、可動電極127a及至127dと他方の検出電極(固定電極124a及至124d)との間の静電容量変化を検出するように構成されている。
【0117】
図3に示したX軸用に配置された静電容量型加速度センサ10XとY軸用に配置された静電容量型加速度センサ10Yとを図12に示したXY軸用加速度センサに置き換えても、図4に示したような感度の調整とオフセットの調整とを行うキャリブレーション機能を備えた静電容量型加速度検出装置を実現することができることは明らかである。
【符号の説明】
【0118】
10 櫛歯型の静電容量型加速度センサ
10X X軸用櫛歯型の静電容量型加速度センサ
10Y Y軸用櫛歯型の静電容量型加速度センサ
11a,11b 固定アンカー
12a及至12d 梁部材
13a及至13f,14a及至14f 固定電極
15 基板
16,26 重錘体
16X,16Y,26X 重錘体
17a及至17f 櫛歯可動電極
20 シーソー型の静電容量型加速度センサ
20Z Z軸用シーソー型の静電容量型加速度センサ
21 固定アンカー
22a及至22b 梁部材
23 左側検出固定電極
24 右側検出固定電極
25 基板
30 静電容量型3軸加速度センサ
51a,51b シングルエンド容量電圧変換回路
52 差動増幅回路
53 セレクタ
60L 一方の検出電極
60R 他方の検出電極
120 櫛歯型の静電容量型加速度センサ
121a,121b,121c,121d 固定アンカー
122a及至122d 梁部材
123a及至123d,124a及至124d,125a及至125d,126a及至126d 固定電極
127a及至127d,128a及至128d 櫛歯可動電極
129 重錘体
130 基板
401 マルチプレクサ
402 電圧源
403 容量電圧変換回路
404 可変ゲインアンプ
405 復調回路
406 オフセット補正回路
407 アナログデジタル変換器
408 デジタルインターフェイス
409 発振回路
410 EEPROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変位可能な重錘体と、該重錘体に対向して設けられ、該重錘体の変位によって一方の検出電極と該重錘体との容量は増加し、他方の検出電極と該重錘体との容量は減少する一対の検出電極を複数備える静電容量型加速度センサを有し、感度及びオフセットを調整する静電容量型加速度検出装置において、
前記静電容量型加速度センサが備える前記複数の一対の検出電極から一対の検出電極を選択する電極選択手段と、
該電極選択手段により選択された前記一対の検出電極の前記一方の検出電極及び前記他方の検出電極と前記重錘体間の容量を検出する容量検出手段と、
前記電極選択手段により選択された前記一対の検出電極の前記一方の検出電極及び前記他方の検出電極に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記容量検出手段により検出された容量と前記検出電極に印加された電圧とから求められる感度補正値とオフセット補正値とを保持する記憶手段と、
該記憶手段によって保持された補正値に応じて感度調整を行う感度調整手段と、
前記記憶手段によって保持された補正値によりオフセット調整を行うオフセット調整手段と
を備えていることを特徴とする静電容量型加速度検出装置。
【請求項2】
前記静電容量型加速度センサが、前記重錘体の厚みの等しい複数の静電容量型加速度センサからなることを特徴とする請求項1に記載の静電容量型加速度検出装置。
【請求項3】
前記電圧印加手段が、電圧発生源を備え、該電圧発生源が生成する電圧を前記検出電極に印加することを特徴とする請求項1又は2に記載の静電容量型加速度検出装置。
【請求項4】
前記電圧印加手段が、外部から供給される電圧を前記検出電極に印加することを特徴とする請求項1,2又は3に記載の静電容量型加速度検出装置。
【請求項5】
容量検出手段が、前記選択された一対の検出電極のうち、前記一方の検出電極と前記重錘体間の容量を電圧に変換する機能と、前記他方の検出電極と前記重錘体間の容量を電圧に変換する機能と、前記一方の検出電極と前記重錘体間の容量と前記他方の検出電極と前記重錘体間の容量との差を電圧に変換する機能とを備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の静電容量型加速度検出装置。
【請求項6】
容量検出手段が、2つの容量を個別に検出するシングルエンド容量電圧変換回路と、該シングルエンド容量電圧変換回路からの出力電圧の差を出力する差動増幅回路と、前記シングルエンド容量電圧変換回路からの出力と前記差動増幅回路からの出力とから一つの出力を選択するセレクタとから構成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の静電容量型加速度検出装置。
【請求項7】
前記感度調整手段に、寄生容量除去手段を付加したことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の静電容量型加速度検出装置。
【請求項8】
前記静電容量型加速度センサが、櫛歯型のX軸用静電容量型加速度センサと、櫛歯型のY軸用静電容量型加速度センサと、シーソー型のZ軸用静電容量型加速度センサとを一体的に構成した静電容量型3軸加速度センサであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の静電容量型加速度検出装置。
【請求項9】
前記櫛歯型のX軸用静電容量型加速度センサの重錘体と前記櫛歯型のY軸用静電容量加速度センサの重錘体とが同一であることを特徴とする請求項8に記載の静電容量型加速度検出装置。
【請求項10】
変位可能な重錘体と、該重錘体に対向して設けられ、該重錘体の変位によって一方の検出電極と該重錘体との容量は増加し、他方の検出電極と該重錘体との容量は減少する一対の検出電極を複数備える静電容量型加速度センサを有し、該一対の容量の差を検出する静電容量型加速度検出装置における感度及びオフセットの調整を行うキャリブレーション方法において、
前記重錘体に対向する一方の検出電極に基準電圧を印加して他方の検出電極と重錘体間の容量を検出するステップと、
前記一方の検出電極に前記基準電圧と異なる電圧を印加して前記他方の検出電極と前記重錘体間の容量を検出するステップと、
前記検出された容量から感度補正値を求めて感度調整を行うステップと、
前記一方の検出電極と前記重錘体間の検出された容量と、前記他方の検出電極と前記重錘体間の検出された容量との容量差を検出するステップと、
前記検出された容量差からオフセット補正値を求めてオフセット補正を行うステップと
を有することを特徴とする静電容量型加速度検出装置におけるキャリブレーション方法。
【請求項11】
前記感度調整を行うステップが、前記検出された容量から寄生容量を除去して感度補正値を求めることを特徴とする請求項10に記載の静電用容量型加速度検出装置におけるキャリブレーション方法。
【請求項12】
前記感度調整を行うステップが、前記感度補正値に重力とクーロン力との違いを係数として掛けた値を前記感度補正値として使用することを特徴とする請求項10又は11に記載の静電用容量型加速度検出装置におけるキャリブレーション方法。
【請求項13】
前記感度調整を行うステップが、複数個の静電容量型加速度センサから得られる容量値の分布から前記感度補正値を求めることを特徴とする請求項10,11又は12に記載の静電用容量型加速度検出装置におけるキャリブレーション方法。
【請求項14】
前記感度調整を行うステップが、複数個の静電容量型加速度センサから得られる重力に対する容量変化と、電圧による容量変化との関係から前記感度補正値を求めることを特徴とする請求項10,11又は12に記載の静電用容量型加速度検出装置におけるキャリブレーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図11F】
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【図11G】
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【図11H】
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【図11I】
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【図11J】
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【図11K】
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【図11L】
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【図11M】
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【図11N】
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【図11O】
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【図12】
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