静電容量式センサシート
【課題】透明電極が紫外線により劣化するのを抑えた静電容量式センサシートを提供する。
【解決手段】静電容量式センサシート1は、透明基板部10と、透明基板部10に接触して配置された透明電極20と、透明電極20よりも低い電気抵抗を有し、透明電極20に検出信号を印加する信号ライン30と、を備え、透明基板部20は、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下である。
【解決手段】静電容量式センサシート1は、透明基板部10と、透明基板部10に接触して配置された透明電極20と、透明電極20よりも低い電気抵抗を有し、透明電極20に検出信号を印加する信号ライン30と、を備え、透明基板部20は、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式センサシート、より詳しくは、透明電極を備える静電容量式センサシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報端末などにおけるユーザーインターフェイスを改善するために、使用者の指などが触れたことを検出するセンサシートの様々な構成が検討されている。たとえば、特許文献1に記載された透明導電シートは、透明樹脂フィルムなどの透明基材と、π共役系導電性高分子、ポリアニオンおよび特定の重合性化合物を含む透明導電層とを積層させて構成されている。
また、特許文献2に記載された導電性ナノファイバーシートは、樹脂製のフィルムで形成された基体シートと、導電性ナノファイバーを含み基体シート上に形成された導電パターン層とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−128289号公報
【特許文献2】特開2010−153210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の透明導電シートにおける透明導電層、および特許文献2の導電性ナノファイバーシートにおける導電パターン層などといった透明な導電体(透明電極)には、一般的に透明な導電性高分子が用いられている。これらの導電性高分子は有機物であることから、紫外線に当たると抵抗値が上昇したり、透過率が低下したりして劣化するという問題がある。
【0005】
また、近年は、抵抗膜方式、静電容量式、赤外線センサ式などの多くの種類のセンサシートが開発されている。これらの種類の中でも、静電容量式のセンサシートはセンサシートに指が軽く触れただけでも検出することができ、さらにセンサシートの表面をスライドする動きを容易に検出することができるという利点があり、開発が進められている。
静電容量式センサシートには透明電極が備えられていて、この透明電極においても特許文献1の透明導電シートと同様な問題が生じている。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、透明電極が紫外線により劣化するのを抑えた静電容量式センサシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の静電容量式センサシートは、透明基板部と、前記透明基板部に接触して配置された透明電極と、前記透明電極よりも低い電気抵抗を有し、前記透明電極に検出信号を印加する信号ラインと、を備え、前記透明基板部は、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下であることを特徴としている。
【0008】
また、上記の静電容量式センサシートにおいて、前記透明基板部は、前記透明電極に接触して設けられたベース層と、前記ベース層における前記透明電極とは反対側の面上に設けられ、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下である耐紫外線層と、を有することがより好ましい。
また、上記の静電容量式センサシートにおいて、前記透明基板部は、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下である1つの層で構成されていることがより好ましい。
また、上記の静電容量式センサシートにおいて、前記透明電極のうち前記透明基板部とは反対側の面の少なくとも一部を覆う保護層をさらに備え、前記保護層は、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の静電容量式センサシートによれば、透明電極が紫外線により劣化するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の静電容量式センサシートの平面図である。
【図2】図1中の切断線A−Aの断面図である。
【図3】本発明の実施形態の変形例における静電容量式センサシートの要部断面図である。
【図4】耐紫外線フィルムおよび一般のPETフィルムの透過率の測定結果を示す図である。
【図5】カーボンアーク灯が発する光および太陽光の波長に対する分光放射照度を示す図である。
【図6】カーボンアーク灯を照射したときの経過時間に対して抵抗値が変化する様子を示す図である。
【図7】カーボンアーク灯を照射したときの経過時間に対して可視光線の透過率が変化する様子を示す図である。
【図8】キセノンランプが発する光および太陽光の波長に対する分光放射照度を示す図である。
【図9】キセノンランプを照射したときの経過時間に対して抵抗値が変化する様子を示す図である。
【図10】キセノンランプを照射したときの経過時間に対して可視光線の透過率が変化する様子を示す図である。
【図11】LEDが発する光の相対発光強度を示す図である。
【図12】LEDを照射したときの経過時間に対して抵抗値が変化する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る静電容量式センサシート(以下、単に「センサシート」と称する。)の一実施形態を、図1から図12を参照しながら説明する。このセンサシートは、たとえば液晶ディスプレイのタッチ型入力装置として使用されるものである。
図1および図2に示すように、本実施形態のセンサシート1は、透明基板部10と、透明基板部10に接触して配置された透明電極20と、透明電極20に検出信号を印加する信号ライン30と、透明電極20のうち透明基板部10とは反対側の面を覆うカバーフィルム(保護層)40とを備えている。
透明基板部10は、透明電極20に接触して設けられたベースフィルム(ベース層)11と、ベースフィルム11における透明電極20とは反対側の面上に設けられた耐紫外線フィルム(耐紫外線層)12とを有している。
なお、図1〜3においては、図面を見やすくするため、各構成要素の厚さや寸法の比率は適宜異ならせてある。
【0012】
ベースフィルム11は、光透過性を有する絶縁性材料で形成されたフィルム状、シート状もしくは板状の部材である。ベースフィルム11の材料としては、PET、ポリカーボネート、アクリル系樹脂などの硬質材料や、熱可塑性ポリウレタン、熱硬化性ポリウレタン、シリコーンゴムなどの弾性材料からなるものを好適に用いることができる。
【0013】
耐紫外線フィルム12としては、たとえば、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤や紫外線劣化防止剤、紫外線反射剤などを含有する公知の材料や材料自身が紫外線カット性能を有するPENなどの材料を用いることができる。PENの具体的な材料としては、例えば帝人デュポン(株)製のフィルムであるテオネックスQ51(登録商標)、テオネックスQ65(登録商標)などを用いることができる。
なお、ここで言う紫外線とは、波長が200nm以上380nm以下の電磁波(近紫外線)のことを意味する。耐紫外線フィルム12において、紫外線の最大透過率は、0%以上50%以下であることが好ましく、0%以上30%以下であることがより好ましい。また、ここで言う最大透過率とは、各波長に対する透過率の中で値の最も大きいもののことを意味する。
ベースフィルム11と耐紫外線フィルム12との間には粘着層13が設けられ、粘着層13はベースフィルム11と耐紫外線フィルム12とを接合している。
【0014】
透明電極20は、ITO(酸化インジウムスズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ポリチオフェン、ポリアニリンなどの透明性を有する導電性ポリマーなどの光透過性を有する導電性材料を用いて、印刷や塗布などにより透明基板部10上に矩形状に形成されている。
具体的な材料としては、たとえば、ポリチオフェン系の導電性インク(たとえば、信越ポリマー(株)製、製品名SEPLEGYDA(登録商標))などを好適に用いることができる。このほか、若干透明性は劣るが、金、銀、銅、ITOなどの金属材料や金属酸化物を含む薄膜、金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブを含有したインクなどを使用して透明電極20が形成されてもよい。
【0015】
信号ライン30は、透明電極20よりも低い電気抵抗を有する。信号ライン30の一部は、透明基板部10の周縁部まで延びており、端部に金やカーボンなどからなる接続パッド33が設けられている。接続パッド33は、上述のカバーフィルム40に覆われておらず、図示しない検出回路との接続に使用される。
信号ライン30は、透明電極20と接続される電極接続部31と、電極接続部31と接続パッド33とを接続する引出し部32とを有する。電極接続部31は、平面視矩形状の透明電極20の4辺(外周部)のうち、隣接する2辺と接続するように配置されている。信号ライン30は、銀インク、カーボンインク、金属膜などの導電性の高い材料を用いた印刷、塗布、成膜などの方法により形成することができる。
【0016】
本実施形態では、カバーフィルム40は、透明電極20を覆うように、透明電極20と同形状の矩形状に形成されている。カバーフィルム40は、ベースフィルム11と同じ材料で形成することができる。
透明電極20とカバーフィルム40とは、粘着層50により接合されている。
【0017】
次に、以上のように構成されたセンサシート1において、信号ライン30が上述の検出回路に接続されたときの動作について説明する。センサシート1は、耐紫外線フィルム12側が箱状に形成されたパネルPの内面に取り付けられ、パネルP内には、LEDを有する発光部Qが配置されているとする。パネルPは、本体部P1が可視光線および紫外線の両方を遮蔽する材料で形成され、窓部P2が可視光線および紫外線の両方を透過する材料で形成されている。
検出回路からは、信号ライン30を介して検出信号としての所定の電圧が所定の周期で透明電極20に印加される。使用者の指などが、パネルPのうち厚さ方向において透明電極20と重なる部位に触れると、透明電極20と使用者の体との間に生じる静電容量が変化し、検出信号の波形が変化する。検出回路は、当該変化を検出することにより、透明電極20が形成されている領域に導電体が接触したことを検出する。
【0018】
発光部Qから発せられた可視光線であるバックライトL1は、センサシート1を透過してパネルPの窓部P2からパネルPの外側に発せられる。使用者は、窓部P2においてバックライトL1を視認することができる。
一方で、外光中の紫外線L2は、パネルPの外側から窓部P2を通してパネルPの内側に入射するが、センサシート1の外側となる部分に耐紫外線フィルム12が配置されているため、紫外線L2の一部は耐紫外線フィルム12で吸収または反射され、透明電極20に達する紫外線L2が減少する。このため、透明電極20が紫外線L2により劣化するのが抑えられる。
使用者は、透明電極20の劣化が抑えられることで電気特性などの機能や視認性が良好となっているバックライトL1の表示を確認しながら、指などによりパネルPを介してセンサシート1の透明電極20に指示(信号)を与える。
【0019】
以上説明したように、本実施形態のセンサシート1によれば、透明基板部10側から入射した紫外線の一部は、透明基板部10の耐紫外線フィルム12により吸収または反射される。したがって、透明基板部10側から入射した紫外線が透明電極20に達し、透明電極20が劣化するのを抑えることができる。
また、センサシート1はカバーフィルム40を備えているため、透明電極20が傷ついたりするのを保護することができる。
【0020】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。
たとえば、図3に示すセンサシート2のように、センサシート1において、透明基板部10に代えて、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下であって1つの層からなる透明基板(透明基板部)60を備えてもよい。
このように構成することで、センサシート2を構成する部品数を低減させ製造コストを抑えるとともに、センサシート2を薄くすることができる。
カバーフィルムを紫外線の最大透過率が0%以上50%以下であるフィルムとしてもよい。この場合は、カバーフィルム側がパネルに貼り付けられる。カバーフィルムをこのように構成することで、カバーフィルム側から入射する紫外線をカバーフィルムで吸収又は反射することができる。
【0021】
前記実施形態のセンサシート1では、透明電極20が紫外線により劣化するのを抑えるために、さらに下記のような様々な構成とすることができる。
たとえば、紫外線を吸収または反射するインクをベースフィルム11に印刷したり、ベースフィルムをこのインクでコーティングしたりしてもよい。
粘着層13に、紫外線を吸収または反射する材料を含有させてもよい。
また、前述のパネルPに紫外線を吸収または反射する材料を含有させてもよい。
紫外線を吸収または反射するインクをカバーフィルムに印刷したり、カバーフィルムをこのインクでコーティングしたりしてもよい。このように構成することで、カバーフィルム40側から入射する紫外線により、透明電極20が劣化するのを抑えることができる。粘着層50に、紫外線を吸収または反射する材料を含有させても同様の効果を奏することができる。
【0022】
(実験結果)
以下では、本発明のセンサシート1の性能を確認した実験結果について説明する。
耐紫外線フィルム12として、下記の2つのサンプルを用いた。
サンプル1:テイジンテトロンフィルム、HB3(登録商標、帝人デュポンフィルム(株)製)、厚さ50μm。
サンプル2:超耐候PET25−O−F1(日栄化工(株)製)、厚さ25μm。
これらのサンプルにおける紫外線の透過率の測定結果を図4に示す。図4のグラフの横軸はサンプルに照射した電磁波の波長、縦軸は波長に対する電磁波の透過率である。なお、比較例として、一般のPETフィルム(厚さ50μm、以下、「サンプルA」と称する。)も測定した。サンプル1、サンプル2およびサンプルAの測定結果を、それぞれ実線、点線および2点鎖線で示す。
サンプル1およびサンプル2においては、波長が200nm以上380nm以下である紫外線の最大透過率は40%以下であり、比較例のサンプルAでは最大透過率は80%以上となっている。
【0023】
ベースフィルム11、透明電極20、粘着層13および粘着層50、そしてカバーフィルム40として、下記のものを用いた。
ベースフィルム11:ルミラー、S10(登録商標、東レ(株)製)、厚さ75μm。
透明電極20:SEPLEGYDA(登録商標、信越ポリマー(株)製)を塗布して乾燥させた後、所定のパターンに形成したもの。
粘着層13および粘着層50:、3M、高透明性接着剤転写テープ8172J(登録商標、住友スリーエム(株)製)、厚さ50μm。
カバーフィルム40:PET製の厚さ25μmの樹脂フィルム。
【0024】
<実験結果1>
耐紫外線フィルム12に上記サンプル1を用いて、センサシート1のカーボンアーク灯に対する促進耐環境試験を行った。
図5に、光源に用いたカーボンアーク灯が発する光および太陽光の、波長に対する分光放射照度を示す。図5中、カーボンアーク灯が発する光を太い実線で、太陽光を細い実線で示している。この図から、カーボンアーク灯が発する光は、紫外線の波長域において太陽光と分光放射照度が似ている一方で、可視光線の波長域において太陽光より分光放射照度が低いことが分かる。
なお、実験に用いたカーボンアーク灯の300nm以上700nm以下の波長に対する全波長照度は255W/m2であり、このうち300nm以上400nm以下の波長領域の照度は、78.5W/m2である。
【0025】
図6に、透明電極20の所定の2点間での経過時間に伴う抵抗値の変化を示す。
図6のグラフの横軸は実験開始からの経過時間、縦軸は透明電極20の抵抗値である。本発明のセンサシート1の実験結果を丸印で示す。比較例として、センサシート1において耐紫外線フィルム12に代えて、上述の高透明性接着剤転写テープ8172Jに用いられているPET製のセパレータ(剥離シート)を用いたセンサシート(以下、「比較例のセンサシート」と称する。)で同様の実験を行った。この場合の実験結果を、三角印、四角印および菱形印で示す。三角印、四角印および菱形印は同一の仕様で行った実験結果を示すものであり、実験のバラツキにより結果に差が生じている。
図6に示すように、実験開始当初は、センサシート1、および比較例のセンサシートの抵抗値はともに約4kΩで差はなかった。実験開始から400時間、610時間が経過したときには、本発明のセンサシート1の抵抗値はそれぞれ約6kΩ、約40kΩとなったのに対し、比較例のセンサシートは実験開始から400時間が経過したときに約2,000〜55,000kΩとなった。なお、実験開始から610時間が経過したときの比較例のセンサシートにおける抵抗値は、大きすぎて測定できなかった。
実験開始から400時間で、本発明のセンサシート1では抵抗値が約1.5倍に増加したのに対して、比較例のセンサシートでは約7,000倍に増加している。
【0026】
図7に、透明電極20の経過時間に伴う可視光線の透過率の変化を示す。この図における凡例は、図6と同様である。
実験開始当初は、センサシート1、および比較例のセンサシートの透過率はともに約74〜75%でほとんど差はなかった。実験開始から400時間、610時間が経過したときには、本発明のセンサシート1の透過率はそれぞれ約75%、約74%となったのに対し、比較例のセンサシートはそれぞれ約70〜71%、約66%と大きく低下した。
図6および図7に示す実験結果から、本発明のセンサシート1では、太陽光中の紫外線に対して、透明電極20の抵抗値の上昇と透過率の低下が抑えられることが分かった。
【0027】
<実験結果2>
耐紫外線フィルム12に上記サンプル1およびサンプル2を用いて、センサシート1のキセノンランプに対する促進耐環境試験を行った。
図8に、光源に用いたキセノンランプが発する光および太陽光の、波長に対する分光放射照度を示す。図8中、キセノンランプ(全波長照度が180W/m2)が発する光を太い実線で、キセノンランプ(全波長照度が60W/m2)が発する光を細い実線で、太陽光を点線で示している。この図から、キセノンランプが発する光は、紫外線および可視光線(たとえば、380nm以上800nm以下の波長)の波長域において太陽光と分光放射照度が似ていることが分かる。
なお、実験は、ASTM G155−1規格にしたがうとともに、キセノンランプにおいて、340nmの波長の照度が0.35W/m2で保持されるように制御して行った。
【0028】
図9に、透明電極20の所定の2点間での経過時間に伴う抵抗値の変化を示す。
図9のグラフの横軸は実験開始からの経過時間、縦軸は透明電極20の抵抗値である。サンプル1を用いた試験結果を白丸印で示し、サンプル2を用いた試験結果を黒丸印で示す。比較例として、上述の比較例のセンサシートで同様の実験を行った。この場合の実験結果を、三角印および四角印で示す。三角印および四角印は、同一の仕様で行った実験結果を示すものである。
図9に示すように、実験開始当初は、センサシート1、および比較例のセンサシートの抵抗値はともに約3〜4kΩでほとんど差はなかった。実験開始から400時間が経過したときには、本発明のセンサシート1の抵抗値はサンプル1、サンプル2を用いた場合ともに約7〜10kΩとなったのに対し、比較例のセンサシートは約13〜1,100kΩとなった。
実験開始から400時間で、本発明のセンサシート1では抵抗値が約2.5倍に増加したのに対して、比較例のセンサシートでは約150倍に増加している。
【0029】
図10に、透明電極20の経過時間に伴う可視光線の透過率の変化を示す。この図における凡例は、図9と同様である。
実験開始当初は、センサシート1、および比較例のセンサシートの透過率はともに約75〜76%でほとんど差はなかった。実験開始から400時間が経過したときには、本発明のセンサシート1の透過率はサンプル1、サンプル2を用いた場合ともに約72〜73%となったのに対し、比較例のセンサシートは約70〜71%となった。
図9および図10に示す実験結果から、本発明のセンサシート1では、太陽光とほぼ等しい分光放射照度に対して、透明電極20の抵抗値の上昇と透過率の低下が抑えられることが分かった。
【0030】
<実験結果3>
耐紫外線フィルム12に上記サンプル1を用いて、センサシート1の可視光線に対する促進耐環境試験を行った。
図11に、光源に用いた可視光線を発するLEDの相対発光強度を示す。LEDが発する光は可視光線のみで、紫外線は発していないことが分かる。
図12に、透明電極20の所定の2点間での経過時間に伴う抵抗値の変化を示す。実験開始当初は777Ωだった抵抗値が、実験開始から50時間後に813Ωまで上昇するが、その後に抵抗値は漸減し、150時間後に803Ωまで下がっている。
本発明のセンサシート1は、実験開始から50時間で抵抗値が初期値に対して約5%増加しただけで、その後は、実験開始から150時間で抵抗値が初期値に対して約3%増加した値まで低下している。
図12に示す実験結果から、本発明のセンサシート1に可視光線を照射しても、透明電極20の抵抗値はほとんど変化しないことが分かる。
すなわち、本発明のセンサシート1において透明電極20の抵抗値が増加する原因は、透明電極20が紫外線を照射されることである。センサシートに紫外線の最大透過率が0%以上50%以下である耐紫外線フィルム12や透明基板60を備えることで、透明電極20の抵抗値の上昇と透過率の低下を効果的に抑えられることが分かった。
【符号の説明】
【0031】
1、2 センサシート(静電容量式センサシート)
10 透明基板部
11 ベースフィルム(ベース層)
12 耐紫外線フィルム(耐紫外線層)
20 透明電極
30 信号ライン
40 カバーフィルム(保護層)
60 透明基板(透明基板部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電容量式センサシート、より詳しくは、透明電極を備える静電容量式センサシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、情報端末などにおけるユーザーインターフェイスを改善するために、使用者の指などが触れたことを検出するセンサシートの様々な構成が検討されている。たとえば、特許文献1に記載された透明導電シートは、透明樹脂フィルムなどの透明基材と、π共役系導電性高分子、ポリアニオンおよび特定の重合性化合物を含む透明導電層とを積層させて構成されている。
また、特許文献2に記載された導電性ナノファイバーシートは、樹脂製のフィルムで形成された基体シートと、導電性ナノファイバーを含み基体シート上に形成された導電パターン層とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−128289号公報
【特許文献2】特開2010−153210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の透明導電シートにおける透明導電層、および特許文献2の導電性ナノファイバーシートにおける導電パターン層などといった透明な導電体(透明電極)には、一般的に透明な導電性高分子が用いられている。これらの導電性高分子は有機物であることから、紫外線に当たると抵抗値が上昇したり、透過率が低下したりして劣化するという問題がある。
【0005】
また、近年は、抵抗膜方式、静電容量式、赤外線センサ式などの多くの種類のセンサシートが開発されている。これらの種類の中でも、静電容量式のセンサシートはセンサシートに指が軽く触れただけでも検出することができ、さらにセンサシートの表面をスライドする動きを容易に検出することができるという利点があり、開発が進められている。
静電容量式センサシートには透明電極が備えられていて、この透明電極においても特許文献1の透明導電シートと同様な問題が生じている。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、透明電極が紫外線により劣化するのを抑えた静電容量式センサシートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の静電容量式センサシートは、透明基板部と、前記透明基板部に接触して配置された透明電極と、前記透明電極よりも低い電気抵抗を有し、前記透明電極に検出信号を印加する信号ラインと、を備え、前記透明基板部は、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下であることを特徴としている。
【0008】
また、上記の静電容量式センサシートにおいて、前記透明基板部は、前記透明電極に接触して設けられたベース層と、前記ベース層における前記透明電極とは反対側の面上に設けられ、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下である耐紫外線層と、を有することがより好ましい。
また、上記の静電容量式センサシートにおいて、前記透明基板部は、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下である1つの層で構成されていることがより好ましい。
また、上記の静電容量式センサシートにおいて、前記透明電極のうち前記透明基板部とは反対側の面の少なくとも一部を覆う保護層をさらに備え、前記保護層は、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下であることがより好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の静電容量式センサシートによれば、透明電極が紫外線により劣化するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態の静電容量式センサシートの平面図である。
【図2】図1中の切断線A−Aの断面図である。
【図3】本発明の実施形態の変形例における静電容量式センサシートの要部断面図である。
【図4】耐紫外線フィルムおよび一般のPETフィルムの透過率の測定結果を示す図である。
【図5】カーボンアーク灯が発する光および太陽光の波長に対する分光放射照度を示す図である。
【図6】カーボンアーク灯を照射したときの経過時間に対して抵抗値が変化する様子を示す図である。
【図7】カーボンアーク灯を照射したときの経過時間に対して可視光線の透過率が変化する様子を示す図である。
【図8】キセノンランプが発する光および太陽光の波長に対する分光放射照度を示す図である。
【図9】キセノンランプを照射したときの経過時間に対して抵抗値が変化する様子を示す図である。
【図10】キセノンランプを照射したときの経過時間に対して可視光線の透過率が変化する様子を示す図である。
【図11】LEDが発する光の相対発光強度を示す図である。
【図12】LEDを照射したときの経過時間に対して抵抗値が変化する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る静電容量式センサシート(以下、単に「センサシート」と称する。)の一実施形態を、図1から図12を参照しながら説明する。このセンサシートは、たとえば液晶ディスプレイのタッチ型入力装置として使用されるものである。
図1および図2に示すように、本実施形態のセンサシート1は、透明基板部10と、透明基板部10に接触して配置された透明電極20と、透明電極20に検出信号を印加する信号ライン30と、透明電極20のうち透明基板部10とは反対側の面を覆うカバーフィルム(保護層)40とを備えている。
透明基板部10は、透明電極20に接触して設けられたベースフィルム(ベース層)11と、ベースフィルム11における透明電極20とは反対側の面上に設けられた耐紫外線フィルム(耐紫外線層)12とを有している。
なお、図1〜3においては、図面を見やすくするため、各構成要素の厚さや寸法の比率は適宜異ならせてある。
【0012】
ベースフィルム11は、光透過性を有する絶縁性材料で形成されたフィルム状、シート状もしくは板状の部材である。ベースフィルム11の材料としては、PET、ポリカーボネート、アクリル系樹脂などの硬質材料や、熱可塑性ポリウレタン、熱硬化性ポリウレタン、シリコーンゴムなどの弾性材料からなるものを好適に用いることができる。
【0013】
耐紫外線フィルム12としては、たとえば、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤や紫外線劣化防止剤、紫外線反射剤などを含有する公知の材料や材料自身が紫外線カット性能を有するPENなどの材料を用いることができる。PENの具体的な材料としては、例えば帝人デュポン(株)製のフィルムであるテオネックスQ51(登録商標)、テオネックスQ65(登録商標)などを用いることができる。
なお、ここで言う紫外線とは、波長が200nm以上380nm以下の電磁波(近紫外線)のことを意味する。耐紫外線フィルム12において、紫外線の最大透過率は、0%以上50%以下であることが好ましく、0%以上30%以下であることがより好ましい。また、ここで言う最大透過率とは、各波長に対する透過率の中で値の最も大きいもののことを意味する。
ベースフィルム11と耐紫外線フィルム12との間には粘着層13が設けられ、粘着層13はベースフィルム11と耐紫外線フィルム12とを接合している。
【0014】
透明電極20は、ITO(酸化インジウムスズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)、ポリチオフェン、ポリアニリンなどの透明性を有する導電性ポリマーなどの光透過性を有する導電性材料を用いて、印刷や塗布などにより透明基板部10上に矩形状に形成されている。
具体的な材料としては、たとえば、ポリチオフェン系の導電性インク(たとえば、信越ポリマー(株)製、製品名SEPLEGYDA(登録商標))などを好適に用いることができる。このほか、若干透明性は劣るが、金、銀、銅、ITOなどの金属材料や金属酸化物を含む薄膜、金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブを含有したインクなどを使用して透明電極20が形成されてもよい。
【0015】
信号ライン30は、透明電極20よりも低い電気抵抗を有する。信号ライン30の一部は、透明基板部10の周縁部まで延びており、端部に金やカーボンなどからなる接続パッド33が設けられている。接続パッド33は、上述のカバーフィルム40に覆われておらず、図示しない検出回路との接続に使用される。
信号ライン30は、透明電極20と接続される電極接続部31と、電極接続部31と接続パッド33とを接続する引出し部32とを有する。電極接続部31は、平面視矩形状の透明電極20の4辺(外周部)のうち、隣接する2辺と接続するように配置されている。信号ライン30は、銀インク、カーボンインク、金属膜などの導電性の高い材料を用いた印刷、塗布、成膜などの方法により形成することができる。
【0016】
本実施形態では、カバーフィルム40は、透明電極20を覆うように、透明電極20と同形状の矩形状に形成されている。カバーフィルム40は、ベースフィルム11と同じ材料で形成することができる。
透明電極20とカバーフィルム40とは、粘着層50により接合されている。
【0017】
次に、以上のように構成されたセンサシート1において、信号ライン30が上述の検出回路に接続されたときの動作について説明する。センサシート1は、耐紫外線フィルム12側が箱状に形成されたパネルPの内面に取り付けられ、パネルP内には、LEDを有する発光部Qが配置されているとする。パネルPは、本体部P1が可視光線および紫外線の両方を遮蔽する材料で形成され、窓部P2が可視光線および紫外線の両方を透過する材料で形成されている。
検出回路からは、信号ライン30を介して検出信号としての所定の電圧が所定の周期で透明電極20に印加される。使用者の指などが、パネルPのうち厚さ方向において透明電極20と重なる部位に触れると、透明電極20と使用者の体との間に生じる静電容量が変化し、検出信号の波形が変化する。検出回路は、当該変化を検出することにより、透明電極20が形成されている領域に導電体が接触したことを検出する。
【0018】
発光部Qから発せられた可視光線であるバックライトL1は、センサシート1を透過してパネルPの窓部P2からパネルPの外側に発せられる。使用者は、窓部P2においてバックライトL1を視認することができる。
一方で、外光中の紫外線L2は、パネルPの外側から窓部P2を通してパネルPの内側に入射するが、センサシート1の外側となる部分に耐紫外線フィルム12が配置されているため、紫外線L2の一部は耐紫外線フィルム12で吸収または反射され、透明電極20に達する紫外線L2が減少する。このため、透明電極20が紫外線L2により劣化するのが抑えられる。
使用者は、透明電極20の劣化が抑えられることで電気特性などの機能や視認性が良好となっているバックライトL1の表示を確認しながら、指などによりパネルPを介してセンサシート1の透明電極20に指示(信号)を与える。
【0019】
以上説明したように、本実施形態のセンサシート1によれば、透明基板部10側から入射した紫外線の一部は、透明基板部10の耐紫外線フィルム12により吸収または反射される。したがって、透明基板部10側から入射した紫外線が透明電極20に達し、透明電極20が劣化するのを抑えることができる。
また、センサシート1はカバーフィルム40を備えているため、透明電極20が傷ついたりするのを保護することができる。
【0020】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の構成の変更なども含まれる。
たとえば、図3に示すセンサシート2のように、センサシート1において、透明基板部10に代えて、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下であって1つの層からなる透明基板(透明基板部)60を備えてもよい。
このように構成することで、センサシート2を構成する部品数を低減させ製造コストを抑えるとともに、センサシート2を薄くすることができる。
カバーフィルムを紫外線の最大透過率が0%以上50%以下であるフィルムとしてもよい。この場合は、カバーフィルム側がパネルに貼り付けられる。カバーフィルムをこのように構成することで、カバーフィルム側から入射する紫外線をカバーフィルムで吸収又は反射することができる。
【0021】
前記実施形態のセンサシート1では、透明電極20が紫外線により劣化するのを抑えるために、さらに下記のような様々な構成とすることができる。
たとえば、紫外線を吸収または反射するインクをベースフィルム11に印刷したり、ベースフィルムをこのインクでコーティングしたりしてもよい。
粘着層13に、紫外線を吸収または反射する材料を含有させてもよい。
また、前述のパネルPに紫外線を吸収または反射する材料を含有させてもよい。
紫外線を吸収または反射するインクをカバーフィルムに印刷したり、カバーフィルムをこのインクでコーティングしたりしてもよい。このように構成することで、カバーフィルム40側から入射する紫外線により、透明電極20が劣化するのを抑えることができる。粘着層50に、紫外線を吸収または反射する材料を含有させても同様の効果を奏することができる。
【0022】
(実験結果)
以下では、本発明のセンサシート1の性能を確認した実験結果について説明する。
耐紫外線フィルム12として、下記の2つのサンプルを用いた。
サンプル1:テイジンテトロンフィルム、HB3(登録商標、帝人デュポンフィルム(株)製)、厚さ50μm。
サンプル2:超耐候PET25−O−F1(日栄化工(株)製)、厚さ25μm。
これらのサンプルにおける紫外線の透過率の測定結果を図4に示す。図4のグラフの横軸はサンプルに照射した電磁波の波長、縦軸は波長に対する電磁波の透過率である。なお、比較例として、一般のPETフィルム(厚さ50μm、以下、「サンプルA」と称する。)も測定した。サンプル1、サンプル2およびサンプルAの測定結果を、それぞれ実線、点線および2点鎖線で示す。
サンプル1およびサンプル2においては、波長が200nm以上380nm以下である紫外線の最大透過率は40%以下であり、比較例のサンプルAでは最大透過率は80%以上となっている。
【0023】
ベースフィルム11、透明電極20、粘着層13および粘着層50、そしてカバーフィルム40として、下記のものを用いた。
ベースフィルム11:ルミラー、S10(登録商標、東レ(株)製)、厚さ75μm。
透明電極20:SEPLEGYDA(登録商標、信越ポリマー(株)製)を塗布して乾燥させた後、所定のパターンに形成したもの。
粘着層13および粘着層50:、3M、高透明性接着剤転写テープ8172J(登録商標、住友スリーエム(株)製)、厚さ50μm。
カバーフィルム40:PET製の厚さ25μmの樹脂フィルム。
【0024】
<実験結果1>
耐紫外線フィルム12に上記サンプル1を用いて、センサシート1のカーボンアーク灯に対する促進耐環境試験を行った。
図5に、光源に用いたカーボンアーク灯が発する光および太陽光の、波長に対する分光放射照度を示す。図5中、カーボンアーク灯が発する光を太い実線で、太陽光を細い実線で示している。この図から、カーボンアーク灯が発する光は、紫外線の波長域において太陽光と分光放射照度が似ている一方で、可視光線の波長域において太陽光より分光放射照度が低いことが分かる。
なお、実験に用いたカーボンアーク灯の300nm以上700nm以下の波長に対する全波長照度は255W/m2であり、このうち300nm以上400nm以下の波長領域の照度は、78.5W/m2である。
【0025】
図6に、透明電極20の所定の2点間での経過時間に伴う抵抗値の変化を示す。
図6のグラフの横軸は実験開始からの経過時間、縦軸は透明電極20の抵抗値である。本発明のセンサシート1の実験結果を丸印で示す。比較例として、センサシート1において耐紫外線フィルム12に代えて、上述の高透明性接着剤転写テープ8172Jに用いられているPET製のセパレータ(剥離シート)を用いたセンサシート(以下、「比較例のセンサシート」と称する。)で同様の実験を行った。この場合の実験結果を、三角印、四角印および菱形印で示す。三角印、四角印および菱形印は同一の仕様で行った実験結果を示すものであり、実験のバラツキにより結果に差が生じている。
図6に示すように、実験開始当初は、センサシート1、および比較例のセンサシートの抵抗値はともに約4kΩで差はなかった。実験開始から400時間、610時間が経過したときには、本発明のセンサシート1の抵抗値はそれぞれ約6kΩ、約40kΩとなったのに対し、比較例のセンサシートは実験開始から400時間が経過したときに約2,000〜55,000kΩとなった。なお、実験開始から610時間が経過したときの比較例のセンサシートにおける抵抗値は、大きすぎて測定できなかった。
実験開始から400時間で、本発明のセンサシート1では抵抗値が約1.5倍に増加したのに対して、比較例のセンサシートでは約7,000倍に増加している。
【0026】
図7に、透明電極20の経過時間に伴う可視光線の透過率の変化を示す。この図における凡例は、図6と同様である。
実験開始当初は、センサシート1、および比較例のセンサシートの透過率はともに約74〜75%でほとんど差はなかった。実験開始から400時間、610時間が経過したときには、本発明のセンサシート1の透過率はそれぞれ約75%、約74%となったのに対し、比較例のセンサシートはそれぞれ約70〜71%、約66%と大きく低下した。
図6および図7に示す実験結果から、本発明のセンサシート1では、太陽光中の紫外線に対して、透明電極20の抵抗値の上昇と透過率の低下が抑えられることが分かった。
【0027】
<実験結果2>
耐紫外線フィルム12に上記サンプル1およびサンプル2を用いて、センサシート1のキセノンランプに対する促進耐環境試験を行った。
図8に、光源に用いたキセノンランプが発する光および太陽光の、波長に対する分光放射照度を示す。図8中、キセノンランプ(全波長照度が180W/m2)が発する光を太い実線で、キセノンランプ(全波長照度が60W/m2)が発する光を細い実線で、太陽光を点線で示している。この図から、キセノンランプが発する光は、紫外線および可視光線(たとえば、380nm以上800nm以下の波長)の波長域において太陽光と分光放射照度が似ていることが分かる。
なお、実験は、ASTM G155−1規格にしたがうとともに、キセノンランプにおいて、340nmの波長の照度が0.35W/m2で保持されるように制御して行った。
【0028】
図9に、透明電極20の所定の2点間での経過時間に伴う抵抗値の変化を示す。
図9のグラフの横軸は実験開始からの経過時間、縦軸は透明電極20の抵抗値である。サンプル1を用いた試験結果を白丸印で示し、サンプル2を用いた試験結果を黒丸印で示す。比較例として、上述の比較例のセンサシートで同様の実験を行った。この場合の実験結果を、三角印および四角印で示す。三角印および四角印は、同一の仕様で行った実験結果を示すものである。
図9に示すように、実験開始当初は、センサシート1、および比較例のセンサシートの抵抗値はともに約3〜4kΩでほとんど差はなかった。実験開始から400時間が経過したときには、本発明のセンサシート1の抵抗値はサンプル1、サンプル2を用いた場合ともに約7〜10kΩとなったのに対し、比較例のセンサシートは約13〜1,100kΩとなった。
実験開始から400時間で、本発明のセンサシート1では抵抗値が約2.5倍に増加したのに対して、比較例のセンサシートでは約150倍に増加している。
【0029】
図10に、透明電極20の経過時間に伴う可視光線の透過率の変化を示す。この図における凡例は、図9と同様である。
実験開始当初は、センサシート1、および比較例のセンサシートの透過率はともに約75〜76%でほとんど差はなかった。実験開始から400時間が経過したときには、本発明のセンサシート1の透過率はサンプル1、サンプル2を用いた場合ともに約72〜73%となったのに対し、比較例のセンサシートは約70〜71%となった。
図9および図10に示す実験結果から、本発明のセンサシート1では、太陽光とほぼ等しい分光放射照度に対して、透明電極20の抵抗値の上昇と透過率の低下が抑えられることが分かった。
【0030】
<実験結果3>
耐紫外線フィルム12に上記サンプル1を用いて、センサシート1の可視光線に対する促進耐環境試験を行った。
図11に、光源に用いた可視光線を発するLEDの相対発光強度を示す。LEDが発する光は可視光線のみで、紫外線は発していないことが分かる。
図12に、透明電極20の所定の2点間での経過時間に伴う抵抗値の変化を示す。実験開始当初は777Ωだった抵抗値が、実験開始から50時間後に813Ωまで上昇するが、その後に抵抗値は漸減し、150時間後に803Ωまで下がっている。
本発明のセンサシート1は、実験開始から50時間で抵抗値が初期値に対して約5%増加しただけで、その後は、実験開始から150時間で抵抗値が初期値に対して約3%増加した値まで低下している。
図12に示す実験結果から、本発明のセンサシート1に可視光線を照射しても、透明電極20の抵抗値はほとんど変化しないことが分かる。
すなわち、本発明のセンサシート1において透明電極20の抵抗値が増加する原因は、透明電極20が紫外線を照射されることである。センサシートに紫外線の最大透過率が0%以上50%以下である耐紫外線フィルム12や透明基板60を備えることで、透明電極20の抵抗値の上昇と透過率の低下を効果的に抑えられることが分かった。
【符号の説明】
【0031】
1、2 センサシート(静電容量式センサシート)
10 透明基板部
11 ベースフィルム(ベース層)
12 耐紫外線フィルム(耐紫外線層)
20 透明電極
30 信号ライン
40 カバーフィルム(保護層)
60 透明基板(透明基板部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板部と、
前記透明基板部に接触して配置された透明電極と、
前記透明電極よりも低い電気抵抗を有し、前記透明電極に検出信号を印加する信号ラインと、
を備え、
前記透明基板部は、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下であることを特徴とする静電容量式センサシート。
【請求項2】
前記透明基板部は、
前記透明電極に接触して設けられたベース層と、
前記ベース層における前記透明電極とは反対側の面上に設けられ、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下である耐紫外線層と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の静電容量式センサシート。
【請求項3】
前記透明基板部は、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下である1つの層で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量式センサシート。
【請求項4】
前記透明電極のうち前記透明基板部とは反対側の面の少なくとも一部を覆う保護層をさらに備え、
前記保護層は、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の静電容量式センサシート。
【請求項1】
透明基板部と、
前記透明基板部に接触して配置された透明電極と、
前記透明電極よりも低い電気抵抗を有し、前記透明電極に検出信号を印加する信号ラインと、
を備え、
前記透明基板部は、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下であることを特徴とする静電容量式センサシート。
【請求項2】
前記透明基板部は、
前記透明電極に接触して設けられたベース層と、
前記ベース層における前記透明電極とは反対側の面上に設けられ、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下である耐紫外線層と、
を有することを特徴とする請求項1に記載の静電容量式センサシート。
【請求項3】
前記透明基板部は、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下である1つの層で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の静電容量式センサシート。
【請求項4】
前記透明電極のうち前記透明基板部とは反対側の面の少なくとも一部を覆う保護層をさらに備え、
前記保護層は、紫外線の最大透過率が0%以上50%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の静電容量式センサシート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−133673(P2012−133673A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−286551(P2010−286551)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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