説明

静電容量式入力装置

【課題】携帯情報端末などに用いられる入力装置について、複数種類の入力操作が指先で感覚的かつ確実に行え、装置の薄型化にも資するようにする。
【解決手段】静電容量の変化に基づいて平面上の位置を検出するためのタッチ電極32aを上面に有するとともに、下面には前記タッチ電極32aのためのグランド電極32bを有するタッチ基板部32を備える。そして、このタッチ基板部32の下方に隙間51をあけて、前記グランド電極32bに対向する変位電極33aを備える。この変位電極33aは、前記グランド電極32bとの間の距離の縮まりによる静電容量の変化に基づいて押圧を検出する。厚み方向に一部を共通にして重なる方向検出部Iと押圧検出部IIを備え、これらにより多様な入力操作を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば携帯電話やPC(Personal Computer)、PDA(Personal Digital Assistants)、テレビ、ビデオ等の電子機器に用いられるような静電容量式入力装置に関し、より詳しくは、複数種類の入力操作が指で感覚的または直感的に行えるような静電容量式入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数種類の入力操作が行える入力装置としては、下記特許文献1に開示されたものがある。これは、入力検出面での位置指示具の指示位置の座標を検出する位置座標検出装置と、前記入力検出面への位置指示具の押圧力を検出する押圧力検出装置を有する入力装置である。
【0003】
そして、前記位置座標検出装置は光学式、前記押圧力検出装置は静電容量式のセンサで構成されている。
【0004】
しかし、2種類の検出装置で検出原理が異なると、これらを違うICで制御することが必要になることがある。この場合にはコストがかかり、小型化にも支障をきたすことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−347807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような問題は、位置座標検出装置と押圧力検出装置の2種類の検出装置を、直感的に操作できて入力操作に確実に反応する同じ静電容量式のセンサで構成することで解消される。
【0007】
そのためには、図14(a)に示したように、基板101の上面に設けられたタッチ電極102と、前記基板101の下面に設けられた第1グランド電極103で前記入力座標検出装置に相当する位置検出部104を構成し、相互に離間された変位電極105と第2グランド電極106で前記押圧力検出装置に相当する押圧検出部107を構成して、これらを、絶縁層108を介して上下に積層する構成が考えられる。
【0008】
なお、図14中、109はキートップ、110はばね、111は基板である。また、絶縁膜などの主要でない部位については図示を省略している。
【0009】
しかし、前記押圧検出部107の感度を確保するためには、変位電極105の初期の静電容量を小さくしておく必要がある。このためには、前記変位電極105と前記第1グランド電極103との間の距離を離すべく、前記絶縁層108の厚さを厚くしなければなない。しかし、図14(a)の構成では、グランド電極103,106が2つ必要なうえに前記絶縁層108が厚いので、入力装置を薄く構成することができない。
【0010】
このため、図14(b)に示したように、グランド電極を1つ省略する構成を考えることができる。
【0011】
すなわち、基板101の上面にタッチ電極102を有し、前記基板101の下面に変位電極105を有するとともに、この変位電極105の下方に隙間をあけてグランド電極112を対向させる構成である。この構成によれば、タッチ電極102とグランド電極112によって指の位置検出ができるとともに、変位電極105とグランド電極112の間の距離の縮みにより押圧検出ができる。
【0012】
しかしながら、このような構成では、前記タッチ電極102と、このタッチ電極102のためでもある前記グランド電極112との間に、変位電極105が存在するので、指で押圧したときには変位電極105とグランド電極111との間の距離が縮むとともに、タッチ電極102とグランド電極112との間の距離も縮む。このため、位置検出の静電容量の変化が不安定になる。この結果、精度が得られないことになり、入力操作に確実に反応するという静電容量式の利点を享受できない。
【0013】
そこで、この発明は、複数種類の入力操作が感覚的かつ確実に行え、装置の薄型化にも資するようにすることを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そのための手段は、静電容量の変化に基づいて平面上の位置を検出するためのタッチ電極を上面に有するとともに、下面には前記タッチ電極のためのグランド電極を有するタッチ基板部と、前記グランド電極に対向させて前記タッチ基板部の下方に隙間を隔てて設けられ、前記グランド電極との間の距離の縮まりによる静電容量の変化に基づいて押圧を検出するための変位電極とを備えた静電容量式入力装置である。
【0015】
前記タッチ電極に指などが接近したり接触したりすると前記タッチ電極の静電容量が変化し、この変化に基づいて平面上での位置が検出される。このとき前記タッチ電極と前記グランド電極の間の距離は一定であるので、静電容量値の変化は安定する。
【0016】
また、前記タッチ電極側から押圧されて、前記グランド電極と変位電極の間の距離が縮まると、前記変位電極の静電容量が変化し、この変化に基づいて押圧が検出される。
【0017】
つまり、位置と押圧の検出動作の干渉はなく、少なくとも2種類の入力操作が指などの動きで可能である。
【0018】
また、2種類の入力操作は静電容量の変化に基づくので、制御は1つのICで行い得る。
【0019】
この発明は、前記グランド電極と前記変位電極との間が、ばねで離間方向に付勢された静電容量式入力装置であってもよい。この場合、前記ばねは、前記タッチ電極と前記グランド電極と前記変位電極を備える変位基板部の一部を湾曲して形成されたものでもよい。
【0020】
前記ばねが付勢力を発揮している状態を初期状態とすることにより、前記ばねが、指などが接触した時のガタツキを抑え、操作感触を向上する。
【0021】
好ましくは、前記グランド電極と前記変位電極との間に、導電性を有する弾性部材からなる板ばねが介装されるとともに、該板ばねが前記グランド電極と電気的に接続された静電容量式入力装置であるとよい。
前記板ばねが前記のばねと同様に操作感触を向上するほか、長期間にわたって所望の付勢力を発揮し、薄型化にも資する。
【0022】
さらに、この発明は、前記変位電極の下方に、押圧されることによりON・OFF切換するスイッチが設けられた静電容量式入力装置であってもよい。
前記スイッチの切換で、たとえば決定機能などの他の機能を発揮する。
【0023】
好ましくは、前記スイッチがドームスイッチで構成されるとともに、該ドームスイッチのための電極が、前記変位電極を上面に有する変位基板部の下面に形成された静電容量式入力装置であるとよい。
前記電極が前記変位電極を有する変位基板部の下面に形成されているので、前記ドームスイッチはドーム形状の頂部を下にして取り付けられることになる。このため、基板等の部品点数を抑えられ、薄型化にも資する。
【0024】
さらにまた、前記グランド電極と変位電極の間の距離が縮まったときに駆動して、押圧されていることを報知する報知手段が設けられた静電容量式入力装置であってもよい。
【0025】
前記報知手段は、振動を生じる振動器や音を発生する電子音発生器などで構成できる。報知手段は、押圧状態であることを知らせ、使用者にフィードバック感を付与する。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、この発明によれば、複数種類の入力操作が感覚的かつ確実に行える。また、装置の薄型化も実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の要部の縦断面構造を示す模式図。
【図2】入力装置の上面側から見た外観を示す斜視図。
【図3】入力装置の下面側から見た外観を示す斜視図。
【図4】入力装置を備えた携帯情報端末の斜視図。
【図5】入力装置の上面側から見た分解斜視図。
【図6】入力装置の下面側から見た分解斜視図。
【図7】入力装置の要部の縦断面図。
【図8】携帯情報端末の構成を示すブロック図。
【図9】入力装置による動作例を示す説明図。
【図10】入力装置による検出状態を示す説明図。
【図11】他の例に係る入力装置の要部の縦断面図。
【図12】他の例に係る入力装置の下面側から見た斜視図。
【図13】他の例に係る入力装置を備えた携帯情報端末の斜視図。
【図14】従来技術から考えられる入力装置の構造を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
この発明を実施するための一形態を、以下図面を用いて説明する。
図1は、静電容量式入力装置11(以下、「入力装置」という。)の要部の縦断面構造を示す模式図であり、図2は、入力装置11の上面側から見た外観を示す斜視図、図3はその下面側から見た外観を示す斜視図である。このような入力装置11は、例えば図4に示したような携帯情報端末21の入力装置11として使用される。
【0029】
まず、携帯情報端末21について簡単に説明する。
図4に示した携帯情報端末21は、薄い直方体状に形成され、正面の一部を除くほとんどの部分に長方形をなす表示器22を有する。そして、正面における前記表示器22が形成されていない部分に、前記入力装置11と、その他の操作スイッチ23が備えられている。入力装置11は、平面視円形をなす入力部12を携帯情報端末21の表面に露出した状態で備えられる。なお、入力部12の形状は、楕円形、四角形等でもよく、必ずしも円形に限定されるものではない。
【0030】
この入力装置11は、複数種類の入力操作がユーザの指A(図1参照)の動作で感覚的に行える構成である。複数種類の入力操作とは、たとえば、表示器22のカーソルを移動させる操作と、ページ捲りや決定など、その他の操作である。
【0031】
次に、このような操作を可能にするための入力装置11の構成について説明する。
入力装置11は、図5、図6に示したように、1本のFPC(Frexible Printed Circuits)からなる本体部材31を有する。この本体部材31は、先端側から順にタッチ基板部32と、押圧基板部33と、制御基板部34を有する。そして、前記タッチ基板部32と前記押圧基板部33の間と、この押圧基板部33と前記制御基板部34との間には、屈曲可能なケーブル35,36部が設けられるとともに、前記制御基板部34からも屈曲可能なケーブル部37が延設されている。本体部材31は、FPCのほか、メンブレン印刷配線板等でも構成できる。また、前記ケーブル部35,36,37は、可撓性を有し、柔軟に屈曲する。
【0032】
前記タッチ基板部32と押圧基板部33は、前記入力部12を構成する部分で、これらは、前記ケーブル部35で折り返して重ね合わせたような状態で金属製の保持部材41に保持される。
【0033】
前記タッチ基板部32は、平面視略円形に形成され、図1に示したように、上面に、静電容量の変化に基づいて平面上の位置を検出するための複数のタッチ電極32aを有し、下面には、前記タッチ電極32aのためのグランド電極32bを有する。これらタッチ電極32aとグランド電極32bとの間の距離は一定に保たれている。なお、図示例のタッチ電極32aは、図5に示したように4極であり、円を描いてめぐるように配設された4個のタッチ電極32aa,32ab,32ac,32adを有するが、2個以上の電極を有するものであれば、個数も配置も自由に設定できる。
【0034】
また、このタッチ基板部32の上下両面は絶縁膜32cで被覆されるが、図6に示したように、タッチ基板部32の下面の一部には、前記グランド電極32bに電気的に接続されたアース接点32dが突設されている。
【0035】
前記押圧基板部33は、平面視略方形状に形成されている。そして、上面には、図1に示したように、前記グランド電極32bに対して隙間51を隔てて対向し、前記グランド電極32bとの間の距離の縮まりによる静電容量の変化に基づいて押圧を検出するための変位電極33aを有する。また、押圧基板部33の下面には、メタルドームスイッチ61のための環状の電極62と円形の電極63が同心状態で配設されている。この押圧基板部33においても、上下両面の所望位置には絶縁膜33cが被覆される。
【0036】
前記制御基板部34には、図3、図6に示したように、集積回路(IC)34aなどの必要な電子部品が搭載されている。
【0037】
このような本体部材31は、前記グランド電極32bと前記変位電極33aとの間を離間方向に付勢するばねとしての板ばね71と、前記変位電極33aの下方に設けられて押圧されることにより変形してON・OFF切換するスイッチとしての前記メタルドームスイッチ61を組み付けて、前記保持部材41に保持される。
【0038】
前記板ばね71は、導電性を有する金属板を打ち抜いて形成されたものである。形状は略方形状であり、2本の弾発脚部72が切り起こしで形成されている。2本の弾発脚部72は平行に形成され、相反する方向に延びている。なお、板ばね71は導電性を有する弾性部材からなるものであればよく、必ずしも金属製のものに限定されるものではない。
【0039】
この板ばね71は、両面粘着テープ81により前記タッチ基板部32の下面に固定される。この固定時には、タッチ基板部32の下面の前記アース接点32dを板ばね71に接触させる。板ばね71がタッチ基板部32に固定されることにより、前記2本の弾発脚部72の先端は、前記押圧基板部33の上面に当接することになる。
【0040】
また、前記板ばね71の外周縁には、前記本体部材31を前記保持部材41に保持したときに、保持部材41に対して位置決めするための適宜の凸部73を有する。
【0041】
前記メタルドームスイッチ61は、前記押圧基板部33の下面に設けられた2つの電極62,63とドーム型接点64で構成されている。このため、ドーム型接点64は、頂部64aが下に向くように取り付けられる。この頂部64aは、前記保持部材41の内底面に形成された突部42に当接する。
【0042】
また、ドーム型接点64は、図7に示したように2枚のシート65,66で保持されるが、これらのシート65,66のうちドーム型接点64を覆うシート65におけるドーム型接点64の頂部64aに対応する部位には穴部65aが形成されている。この穴部65aは、入力装置11の全体の厚みを薄くするためのものである。このような穴部65aがあることにより、前記頂部64aは、前記保持部材41の突部42に直接当接する。なお、図5中、66aはドーム型接点64が変形したときの空気抜きのための空気抜き穴である。
【0043】
前記保持部材41は、金属板をプレス加工して、前記押圧基板部33と前記板ばね71が入る大きさの皿状に形成されている。そして、内底面の中央には、上方に膨出する前記突起42を有する。
【0044】
また、保持部材41の外周縁には周壁43が立設されており、この周壁43は、その内側面の一部が前記板ばね71の外周縁の凸部73の端面を押さえて、板ばね71の位置決めができる形状に形成される。さらに、保持部材41の四隅部分には、前記周壁43から折り曲げ片44が立設されている。この折り曲げ片44を内側に折り曲げることで、前記本体部材31等が保持される。このとき、前記板ばね71が付勢力を発揮した状態になるように保持を行う。
【0045】
前記本体部材31等を保持部材41に保持すると、図7に示したようになる。
【0046】
また、前記タッチ基板部32の上には、絶縁性を有するキートップ82が設けられる。このキートップ82は両面粘着テープ83で固定されている。
【0047】
このようなキートップ82のほかシート材(図示せず)を用いてもよく、さらには、機器の筐体(図示せず)をキートップ82代わりに利用してもよい。
【0048】
図8は、前記のように構成された入力装置11を備えた携帯情報端末21の構成を示すブロック図である。
【0049】
携帯情報端末21は、前記のように入力装置11と操作スイッチ23と表示器22を有するとともに、電源部24と記憶部25などが備えられている。そして、これらは、制御部26に接続されている。前記入力装置11にあっては、ローパスフィルタ27を介して制御部26に接続される。
【0050】
前記入力装置11は、前記のようにタッチ電極32aと変位電極33aを有し、前記タッチ電極32aは、円を描いてめぐるように配設された前記4個のタッチ電極32aa,32ab,32ac,32adで構成されている。そして、これらタッチ電極32aと変位電極33aは前記集積回路34aに接続され、この集積回路34aが前記ローパスフィルタ27に接続される。
【0051】
前記集積回路34aは、各タッチ電極32aa,32ab,32ac,32adで検出する静電容量値と、変位電極33aで検出する静電容量値をデジタル信号に変換する。
【0052】
前記ローパスフィルタ27は、前記入力装置11から瞬間的な通電による信号を受け取った場合に、この信号をカットして検知しないようにし、それ以上の長い時間の通電による信号のみを制御部26に伝達する。これにより、衝突等によって入力装置11が瞬間的に押下操作された場合に誤作動しないようにしている。
【0053】
前記操作スイッチ23は、ユーザの操作に基づく信号を制御部26に伝達する。
【0054】
前記電源部24は、各部に電力を供給する。
【0055】
前記表示器22は、制御部26の制御信号に従って画像を表示する。この画像には、メニュー画像や記憶部25に保存した画像などがある。
【0056】
前記記憶部25は、制御部26の制御信号に従ってデータの読み書きを行う。このデータには、メニュー画面などを表示するプログラムなどがある。
【0057】
前記制御部26は、プログラムを格納したROMおよび動作に必要なデータを記憶するRAMを内蔵している。
【0058】
前記入力装置11に対する入力操作に基づいた前記制御部26による制御動作の一例を、図9と図10を用いて次に説明する。
前記入力装置11は、タッチ電極32aと変位電極33aの静電容量値の変化により、ユーザの指Aのタッチ位置と、それによる押し込み荷重を検出する。各電極32aa,32ab,32ac,32ad,33aのそれぞれの静電容量値の変化ΔCa,ΔCb,ΔCc,ΔCd,ΔCeは、
各タッチ電極32aa,32ab,32ac,32adで検出する静電容量値をそれぞれCa,Cb,Cc,Cdとし、変位電極33aで検出する静電容量値をCeとして、
非タッチ時の電極32aa,32ab,32ac,32adの静電容量値をそれぞれCa0,Cb0,Cc0,Cd0として、変位電極33aで検出する静電容量値をCe0とすると、
ΔCa=Ca−Ca0
ΔCb=Cb−Cb0
ΔCc=Cc−Cc0
ΔCd=Cd−Cd0
ΔCe=Ce−Ce0
の演算式で算出される。
【0059】
つまり、前記集積回路34aを介して入力された信号と、予め記憶した非タッチ時の静電容量値のデータに基づいて、前記制御部26が前記演算をして、静電容量の変化を算出する。
【0060】
そして、この結果に基づいて、制御部26はさらに、タッチ位置X、Yと、押し込み荷重Zを算出する。タッチ位置Xは左右方向(タッチ電極32ab,32acとタッチ電極32aa,32adが対峙する方向)、タッチ位置Yは上下方向(タッチ電極32aa,32abとタッチ電極32ac,32adが対峙する方向)であり、それぞれ、
X=(ΔCa+ΔCd)−(ΔCb+ΔCc)
Y=(ΔCa+ΔCb)−(ΔCc+ΔCd)
の演算式で算出できる。
【0061】
また、押し込み荷重Zは、変位電極33aの静電容量値の変化量ΔCeで求められる。すなわち、Z=ΔCeである。
【0062】
このようにして算出された各部の静電容量値の変化から、タッチ位置や押し込み深さを検出し、制御部26は、プログラムに基づいて必要な制御動作を行う。
【0063】
具体的には、ユーザの指Aが入力部12表面のキートップ82に閾値を超えない程度に軽く触れた(例えば1Nより小さい力で触れた)状態で、図9(a)に示したように、タッチ電極32aを左から右に撫でるように移動すると、各タッチ電極32aa,32ab,32ac,32adの静電容量値の変化ΔCa,ΔCb,ΔCc,ΔCdは図10(a)に示したようにそれぞれ変化する。この結果、タッチ位置X,Yの情報が得られる。
【0064】
この情報から、指Aの移動方向が判断され、制御部26は、入力された信号に基づいて、図9(a)に示したように、前記表示器22に表示されたメニュー画面などでカーソル22aを予め定められた基準位置から、指Aで指示された方向に移動する制御を行う。
【0065】
同様の状態で図9(b)に示したように、左斜め下から右斜め上に向けて撫でるように移動したときも、各タッチ電極32aa,32ab,32ac,32adの静電容量値の変化ΔCa,ΔCb,ΔCc,ΔCdは、図10(b)に示したように変化し、この結果、タッチ位置X,Yの情報が得られる。
【0066】
この情報から、指Aの移動方向が検出され、制御部26は、入力された信号に基づいて、図9(b)に示したように、前記表示器22に表示されたメニュー画面などでカーソル22aを予め定められた基準位置から、指Aで指示された斜め方向に移動する制御を行う。
【0067】
ユーザの指Aが前記の場合よりも閾値を超える程度に強く触れて(例えば1N以上の力で触れて)から弾くようにして急に離すような動作、具体的には、図9(c)に示したように、指Aで本のページを捲るような動作をすると、指Aの接触を前記タッチ電極32aの静電容量の変化に基づいて検出するとともに、その押圧を前記変位電極33aの静電容量の変化に基づいて検出する。そして、押圧が検出されている状態において前記タッチ電極32aの静電容量の変化に基づいて指Aの移動方向を検出する。各部の静電容量値の変化ΔCa,ΔCb,ΔCc,ΔCd,ΔCeは、図10(c)のように変化を示す。
【0068】
そして、制御部26は、各部の静電容量値の変化ΔCa,ΔCb,ΔCc,ΔCd,ΔCeに基づくタッチ位置X,Yと押し込み荷重Zの情報に従って、図9(c)に示したように、前記表示器22に表示されたメニュー画面などで現在表示されている画面を、指Aで指示された方向の次の画面に、画面を移動する制御を行う。
【0069】
ユーザの指Aが強く触れて、押し込むような動作をすると、前記メタルドームスイッチ61のドーム型接点64の変形によるON動作に基づいて、メニュー画面などにおいてカーソル22aで選択されたメニューなどを決定する信号を制御部26に伝達する。このとき制御部26は、入力されたON信号に基づいて、図9(d)に示したように、前記表示器22に表示されたメニュー画面などに表示されカーソル22aで選択されているメニューなどを決定すべく、その部分の外観を変化させるとともに、各部の必要な制御動作を行う。決定に際しては、ドーム型接点64が変形するので、クリック感が得られる。
【0070】
このようにして入力操作が行えるので、カーソル移動のほか、ページ捲り或いはページ移動、決定の操作が、1つの入力装置11で行える。つまり、図1に示したように、方向検出部I、押圧検出部II、押し込み検出部IIIを厚み方向に有し、これらにより多様な入力操作ができる。しかも、カーソル移動もページ捲りも、決定も、指Aで実際にその動作を行うように感覚的かつ確実に行える。
【0071】
また、前記タッチ電極32aと前記グランド電極32bはタッチ基板部32の上面と下面に分けて形成され、それらの間の距離は一定であるので、タッチ電極32aの静電容量の変化を安定させることができる。
【0072】
しかも、キートップ82が押圧されて前記タッチ基板部32のグランド電極32bが前記変位電極33aに近づいて、前記グランド電極32bと変位電極33aの間の距離が縮まると、前記変位電極33aの静電容量が変化して、この変化に基づいて押圧が検出される。この結果、タッチ電極32aのみで検出して行う動作とは別のページ捲りなどの動作ができるが、このときに、タッチ電極32aとグランド電極32bの距離が一定であるので、位置と押圧の検出動作に干渉が起こることを防止でき、操作の確実性、信頼性を確保することができる。
【0073】
そのうえ、このような別の動作を行うための検出原理には、同じ静電容量を採用しているので、前記制御基板部34に備える集積回路34aは一つで足りる。このため、製造コストを低減できる。
【0074】
加えて、別の動作を行うための検出に用いられるグランド電極32bを共通にするとともに、グランド電極32bと変位電極33aの位置や向きと、メタルドームスイッチ61の向きを工夫しているので、前記方向検出部Iと前記押圧検出部IIと前記押し込み検出部IIIが厚み方向に効率よく収まり、入力装置11の厚さを薄くすることができる。ドーム型接点64の頂部64aを露出させたことも、入力装置11の薄型化に貢献する。
【0075】
また、本体部材31は、タッチ基板部32と押圧基板部33の間に前記板ばね71有し、この板ばね71の付勢力を発揮させた状態にして保持されるので、初期状態でのガタツキを抑えることができる。この結果、指Aが触れたときのガタツキがなく、操作感覚が良好となる。
【0076】
しかも、板ばね71は金属製であるので、線形弾性領域で使用でき、耐久性を得られる。また、板ばね71を用いているため、板ばね71自体を薄く形成できるとともに、前記のような切り起こした弾性脚部72を有するので、入力装置11の厚さを薄くすることに貢献できる。
【0077】
さらに、導電性の板ばね71を用いているので、押圧力と距離の関係を直線的に表現できる。このため、押圧力と静電容量も直線的に表すことができ、制御が容易である。また、導電性の板ばね71を用いているが、この板ばね71はアース接点32dによって前記グランド電極32bと接続されているので、板ばね71に電荷がたまることはなく、検出精度を確保できる。
【0078】
しかも、金属製の板ばね71は、FPCよりも加工精度が高いので、前記本体部材31を保持部材41に保持するときに、保持部材41に対する位置決めが、本体部材31で位置決めする場合に比して正しく行える。
【0079】
また、前記変位基板部33aの下方には、メタルドームスイッチ61が設けられており、前記のように、更に別の動作を行うことができるので、入力装置11としての機能を拡大できる。
【0080】
そのうえ、メタルドームスイッチ61を用いているので、明確なクリック感が得られ、前記のように選択した事項を決定する動作に好適である。明確なクリック感は、タッチ基板部32に前記板ばね71が接着により一体化されていてメタルドームスイッチ61のドーム型接点64の変形によりONする際には、板ばね71がばねとしての役目を終えて剛体となることにより、さらに良好なものとなる。
【0081】
また、メタルドームスイッチ61は、前記押圧基板部33を利用して、ドーム型接点64の頂部64aを下に向けて取り付けられるので、重なり合う部品数を低減できる。このため、さらなる薄型化に貢献する。
【0082】
以下、その他の形態について説明する。この説明において、前記の構成と同一または同等の部位については同一の符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0083】
図11は、前記グランド電極32bと前記変位電極33aとの間のばねを、前記本体部材31を構成するFPCの一部を湾曲して形成した例を示す。すなわち、前記本体部材31のタッチ基板部32と押圧基板部33との間のケーブル部35が半円弧状に湾曲されて弾性を有する第1ばね部75が形成される。また、前記タッチ基板部32の先端側に、先端部76aが前記押圧基板部33の上面に接して前記第1ばね部75と対向する、半円弧状に湾曲した第2ばね部76が形成されている。第1ばね部75と第2ばね部76では、FPCを構成する導電体(図示せず)が、主として弾発力を発揮する。
【0084】
このように構成された入力装置11では、別体の前記ばね部材71が不要であるので、部品点数を低減し、コストの低減を図ることができる。また、第1ばね部75と第2ばね部76は相対向する位置に形成されているので、弾性変位、つまり、前記グランド電極32bと前記変位電極33aとの間の距離の縮まりは安定して行われる。
【0085】
図12は、前記グランド電極32bと変位電極33aの間の距離が縮まったときに駆動して、押圧されていることを報知する報知手段として振動器91が設けられた入力装置11である。
【0086】
報知手段は、振動を生じる振動器91や音を発生する電子音発生器などで構成できるが、指Aの動作による入力操作が感覚的なものであることから、前記振動器91によるものが好ましい。振動器91の発する振動により、ユーザは、フィードバック感により押圧していることを実感でき、より感覚的で正確な操作が可能となる。
【0087】
振動器91は、図12に示したように保持部材41の底面など、適宜の部位に取り付けられる。このように専用の振動器91を備えるほか、携帯情報端末21(図4参照)に備えられている振動器(図示せず)を流用してもよい。
【0088】
図13は、平面上における直線方向(X方向)の位置を検出できるように、2個以上のタッチ電極32aを一方向に並べて構成した入力装置11を備えた携帯情報端末21の例を示している。
【0089】
このように構成した入力装置11でも、前記と同様に、複数種類の入力操作が感覚的かつ確実に行える。また、装置の小型化も実現できる。
【0090】
この発明の構成と、前記一形態の構成との対応において、
この発明のばねは、前記構成の板ばね71、第1ばね部75、第2ばね部76に対応し、
スイッチ、ドームスイッチは、前記メタルドームスイッチ61に対応し、
報知手段は、振動器91に対応するも、
この発明は、前記構成のみに限定されるもではなく、その他の形態を採用することができる。
【0091】
たとえば、入力装置による入力操作による動作は、前記例以外のものでもよく、タッチ電極32aの静電容量の変化により座標を指定するように制御してもよい。
【0092】
また、メタルドームスイッチ61を省略してもよい。メタルドームスイッチ61に代えて、例えばタクトスイッチ(アルプス電気(株)の登録商標)やメンブレンスイッチ、感圧スイッチ等の各種スイッチを用いることもできる。
【0093】
さらに、入力は指以外で行えるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0094】
11…静電容量式入力装置
32…タッチ基板部
32a…タッチ電極
32b…グランド電極
32d…アース接点
33…押圧基板部
33a…変位電極
51…隙間
61…メタルドームスイッチ
62,63…電極
64…ドーム型接点
71…板ばね
75…第1ばね部
76…第2ばね部
91…振動器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電容量の変化に基づいて平面上の位置を検出するためのタッチ電極を上面に有するとともに、下面には前記タッチ電極のためのグランド電極を有するタッチ基板部と、
前記グランド電極に対向させて前記タッチ基板部の下方に隙間を隔てて設けられ、前記グランド電極との間の距離の縮まりによる静電容量の変化に基づいて押圧を検出するための変位電極とを備えた
静電容量式入力装置。
【請求項2】
前記グランド電極と前記変位電極との間が、ばねで離間方向に付勢された
請求項1に記載の静電容量式入力装置。
【請求項3】
前記グランド電極と前記変位電極との間に、導電性を有する弾性部材からなる板ばねが介装されるとともに、
該板ばねが前記グランド電極と電気的に接続された
請求項1に記載の静電容量式入力装置。
【請求項4】
前記ばねが、前記タッチ電極と前記グランド電極と前記変位電極を備える基板の一部を湾曲して形成された
請求項2に記載の静電容量式入力装置。
【請求項5】
前記変位電極の下方に、押圧されることによりON・OFF切換するスイッチが設けられた
請求項1から請求項4のうちのいずれか一項に記載の静電容量式入力装置。
【請求項6】
前記スイッチがドームスイッチで構成されるとともに、
該ドームスイッチのための電極が、前記変位電極を上面に有する変位基板部の下面に形成された
請求項5に記載の静電容量式入力装置。
【請求項7】
前記グランド電極と変位電極の間の距離が縮まったときに駆動して、押圧されていることを報知する報知手段が設けられた
請求項1から請求項6のうちのいずれか一項に記載の静電容量式入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−248439(P2011−248439A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118224(P2010−118224)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】