説明

静電容量式液状態検知センサ

【課題】 外筒電極にスリットを設けギャップ間の圧力を外部に逃がし、且つ、スリット形成に伴う強度低下を抑制した静電容量式液状態検知センサを提供する。
【解決手段】 内部電極と所定の間隔を隔てて配置される外筒電極10には、先端部11から後端部12にかけての母線(一点鎖線Aで示す)に沿って、複数のスリット14,15,16が、それぞれ独立に形成されている。各スリット14,15,16間にはスリットが形成されない中間スリット非形成領域17,18が位置している。スリット14,15,16により、外筒電極10の内部と外部との間での液体の循環作用が同電極10の軸線方向に対して確保されるので、ギャップ間に存在する液体の氷結時の体積膨張に伴う圧力を外部に逃がすことができる。また、中間スリット非形成領域17,18の存在により、外筒電極10の強度が良好に維持されるので、外筒電極10の変形が有効に防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体収容容器内に収容される液体の状態を検知する静電容量式液状態検知センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼル自動車から排出される排気ガスには、一酸化炭素(CO)および炭化水素(HC)以外に窒素酸化物(NOx)が含まれている。そこで、近年、この有害な窒素酸化物(NOx)を無害なガスに還元することが行われている。例えば、ディーゼル自動車の排気ガス排出用のマフラーの途中にNOx選択還元(SCR)触媒を設置し、別途車両に設けたタンクに還元剤溶液として尿素水を入れ、この尿素水を上記触媒へ噴射するようにして、NOxをN2等の無害なガスに還元するシステムが提案されている。このシステムでは、尿素水が無くなった場合にはNOx還元反応を促すことができずにNOxの大量な排出を起こすため、尿素水を収容するタンクに、収容される尿素水の水位(液位)を測定するセンサを設け、尿素水の残量が規定量以下となった場合に警報を発する等の措置が講じられている。
【0003】
この水位を測定するためのセンサの一例として、静電容量式液状態検知センサが知られている。この静電容量式液状態検知センサは、導体からなる細長い筒状の外筒電極と、その外筒電極内にて軸線方向に沿って設けられた内部電極との間(以下、「ギャップ間」という。)で静電容量を測定するものである。尿素水のように導電性を有する液体の水位の測定に用いる静電容量式液状態検知センサでは、外筒電極と内部電極との間でのショート防止のために、内部電極の外表面上には絶縁膜が形成される。そして、外筒電極の軸線方向が液体の水位の上下方向となるように、静電容量式液状態検知センサがタンクにセットされる。導電性の液体を使用している場合には、液体に浸漬していない部分の静電容量は、ギャップ間の空気層および内部電極の絶縁膜の厚みに依存する。一方、液体に浸漬している部分の静電容量は、導電性の液体が外筒電極と同電位となるため絶縁膜の厚みに依存し、前者よりも静電容量が大きくなる。このため、液体に浸漬している部分が増えるほど測定される静電容量が大きくなることとなり、水位として検知することができる。
【0004】
こうした静電容量式液状態検知センサでは、液体がギャップ間に流入出しやすいように、センサの先端側(外筒電極の先端側)を開放状に形成したり、閉塞した場合でも孔を設けたりしている(例えば、特許文献1参照)。さらに、従来の静電容量式液状態検知センサでは、外筒電極の側壁にその先端から後端まで延びるスリットを設けることで、外筒電極の一端側が異物等により詰まった場合でも、ギャップ間で液体の流入出が円滑に行われるようにしている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平7−318395号公報
【特許文献2】実開昭63−101815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ディーゼル自動車が寒冷地等で使用される場合など、液体のタンクが、例えば−30℃〜−40℃といった環境に曝されることがある。このような場合に、静電容量式液状態検知センサのギャップ間に入り込んでいる液体が急冷され、ギャップ間に存在する液体が、外筒電極の軸線方向に沿ってみたときの先端側と後端側との双方向から氷結を開始することがある。ところで、特許文献1のように、外筒電極と内部電極との間に形成されるギャップ間がほぼ閉空間であって、このギャップ間に存在する液体が上記先端側と後端側との双方向から氷結を開始した場合には、液体氷結時の体積膨張に伴い発生する圧力が、ギャップ間に存在する液体の中間側に向けて逃げることになる。しかし、ギャップ間が閉空間に形成されているが故に上記圧力の逃げ場がなく、氷結による大きな体積膨張を生じてしまう。その結果、ギャップ間に存在する液体が氷結すると、上記圧力上昇や大きな体積膨張に起因して外筒電極や内部電極に変形が生じてしまうことがあった。特に、内部電極が柱状(中実状)である場合などには、内部電極の強度が高いため、外筒電極に変形が生じやすくなっていた。
【0006】
また、こうした場合に、外筒電極にスリットが設けられている静電容量式液状態検知センサであれば、スリットを介して外筒電極の外部と、ギャップ間との間で液体の循環作用を確保することができるので、液体氷結時の体積膨張に伴い上昇する圧力を効果的に外筒電極の外部に逃すことができる。しかし、スリットによって上記圧力を外部に逃したとしても、液体氷結時の体積膨張は依然として少なからずギャップ間に生ずる。そのため、特許文献2のように、スリットが外筒電極の全長にわたって形成されていると、外筒電極自身の強度が低下する傾向にあり、小さな体積膨張によっても外筒電極の変形が生じてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、外筒電極にスリットを設けギャップ間の圧力を効果的に外部に逃がし、且つ、スリットの形成に伴う強度低下を防止することができる静電容量式液状態検知センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明の静電容量式液状態検知センサは、導体からなる筒状の外筒電極と、前記外筒電極内で前記外筒電極の軸線方向に沿って設けられた導体からなる筒状または柱状の内部電極と、前記外筒電極および前記内部電極の後端側で、前記外筒電極と前記内部電極とを非接触の状態で支持する基部とを備える静電容量式液状態検知センサであって、前記外筒電極は、当該外筒電極の全長よりも短い長さで前記軸線方向に沿って開口するスリットを複数有し、複数の前記スリットは、第1スリットと、第2スリットを含み、前記第1スリットの先端は前記第2スリットの先端よりも先端側に位置し、前記第1スリットの後端は前記第2スリットの後端よりも先端側に位置する関係を満たすことを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係る発明の静電容量式液状態検知センサは、請求項1に記載の発明の構成に加え、複数の前記スリットは、いずれの先端も前記外筒電極の先端より後端側に位置していることを特徴とする。
【0010】
また、請求項3に係る発明の静電容量式液状態検知センサは、請求項1または2に記載の発明の構成に加え、複数の前記スリットは、いずれの後端も前記外筒電極の後端より先端側に位置していることを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る発明の静電容量式液状態検知センサは、請求項1乃至3のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記外筒電極の外周面における少なくとも一の母線上に、複数の前記スリットが位置していることを特徴とする。
【0012】
また、請求項5に係る発明の静電容量式液状態検知センサは、請求項4に記載の発明の構成に加え、前記外筒電極の外周面における複数の異なる母線上に、各々複数の前記スリットが位置していることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6に係る発明の静電容量式液状態検知センサは、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記第1スリットの後端は、前記第2スリットの先端よりも先端側に位置する関係を満たしており、前記外筒電極のうち、前記第1スリットの後端と前記第2スリットの先端との間には、全周にわたってスリットが存在しない中間スリット非形成領域が位置していることを特徴とする。
【0014】
また、請求項7に係る発明の静電容量式液状態検知センサは、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記スリットを少なくとも1つ以上含むようにして前記外筒電極の中心軸線に直交する断面をとったときに、前記スリットの開口幅の合計寸法は、前記外筒電極の外周に対して3%以上の大きさを有することを特徴とする。
【0015】
また、請求項8に係る発明の静電容量式液状態検知センサは、請求項7に記載の発明の構成に加え、前記内部電極の外周面上には絶縁膜が形成され、前記断面をとったときに、前記スリットの開口幅の合計寸法は、前記外筒電極の外周に対して10%以下の大きさを有することを特徴とする。
【0016】
また、請求項9に係る発明の静電容量式液状態検知センサは、請求項1乃至8のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記内部電極の外周面上には絶縁膜が形成されており、前記スリットの前記軸線方向に直交する向きの開口幅は、いずれも5mm以下であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項10に係る発明の静電容量式液状態検知センサは、請求項1乃至9のいずれかに記載の発明の構成に加え、前記液体は尿素水であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明の静電容量式液状態検知センサでは、複数のスリットが、第1スリットと、第2スリットとを含みつつ、第1スリットの先端が第2スリットの先端よりも先端側に位置し、第1スリットの後端が第2スリットの後端よりも先端側に位置する関係を満たしている点が、最も注目すべき点である。外筒電極がこのような関係を満たすスリットを有することにより、外筒電極の外部の液体とギャップ間の液体との循環作用を、複数のスリットを設けながらも、外筒電極の軸線方向に対して付与することができる。よって、ギャップ間に存在する液体が急冷されて氷結することがあっても、液体氷結時の体積膨張に伴いギャップ間の先端側および後端側から中間側に向けて上昇する圧力を、スリットを介して外筒電極の外部に逃がすことができる。
【0019】
また、本発明では、外筒電極の全長にわたって開口するスリットを設けることなく、上記関係を満たすスリットを含む複数のスリットを設けることで液体の循環作用を外筒電極の軸線方向に対して付与させているので、ギャップ間に存在する液体が氷結により少なからず体積膨張を生じた場合でも、外筒電極のうちスリットとスリットとの間に位置する部位(領域)が補強部として機能し、外筒電極の変形が生じにくい。さらに、外筒電極の軸線方向に対する液体の循環作用を促すための開口を外筒電極に形成するにあたって、外筒電極の軸線方向に沿って開口する細長形状のスリットを複数形成するようにしたので、円形の孔を外筒電極の長手方向に沿って多数形成する場合と比較して、その形成作業が容易となり、製造効率に優れる静電容量式液状態検知センサを提供することができる。
【0020】
従って、本願発明の静電容量式液状態検知センサでは、ギャップ間の液体が氷結する場合にも、内部電極と外筒電極との間隙(ギャップ寸法)が広がるのを有効に抑制することができ、外筒電極と内部電極との間の静電容量を長期間に亘って高精度に測定することができる。
【0021】
また、請求項2に係る発明の静電容量式液状態検知センサでは、複数のスリットの各先端が、外筒電極の先端よりも後端側に位置しているので、全周にわたってスリットが存在しないスリット非形成領域(先端側スリット非形成領域)が外筒電極の先端に連なるようにして設けられることになる。これにより、外筒電極の先端側の強度を増すことができ、ギャップ間に存在する液体の氷結に伴う外筒電極の変形を有効に抑制することができる。
【0022】
また、請求項3に係る発明の静電容量式液状態検知センサでは、複数のスリットの各後端が、外筒電極の後端よりも先端側に位置しているので、全周にわたってスリットが存在しないスリット非形成領域(後端側スリット非形成領域)が外筒電極の後端に連なるようにして設けられることになる。これにより、外筒電極の後端側の強度を増すことができ、ギャップ間に存在する液体の氷結に伴う外筒電極の変形を有効に抑制することができる。さらに、外筒電極の後端側は内側電極の後端側と共に基部に支持されるため、本センサを振動がかかる用途(例えば、車両用途)に用いた場合、外筒電極の後端寄り部位に振動に起因した応力が集中し易い傾向にあるが、外筒電極に上記後端側スリット非形成領域を設けることで、外筒電極の後端側の強度が増し、センサ自体の耐振性が向上させることができる。
【0023】
また、請求項4に係る発明の静電容量式液状態検知センサでは、スリットが外筒電極の外周面の少なくとも一の母線上に複数形成されているので、外筒電極の外部の液体とギャップ間の液体との循環作用を、外筒電極の軸線方向に対して効果的にもたらすことができる。これにより、液体氷結時の体積膨張に伴ってギャップ間の先端側および後端側から中間側に向けて上昇する圧力を、外筒電極の外部に効果的に逃がすことができる。
【0024】
また、請求項5に係る発明の静電容量式液状態検知センサでは、外筒電極の外周面における複数の異なる母線上に、各々複数のスリットが形成されているので、液体氷結時の体積膨張に伴ってギャップ間の先端側および後端側から中間側に向けて上昇する圧力を、外筒電極の周方向の複数箇所から外部に効率良く逃すことができる。
【0025】
さらに、請求項6に係る発明の静電容量式液状態検知センサでは、外筒電極のうち、第1スリットの後端と第2スリットの先端との間に、全周にわたりスリットが存在しない中間スリット非形成領域が介在している。これにより、外筒電極の軸線方向における中間部位に、全周にわたりスリットが存在しない領域が配置されることになるため、ギャップ間に存在する液体が少なからず体積膨張を生じた場合でも、外筒電極の変形をより効果的に抑制することができる。
【0026】
また、請求項7に係る発明の静電容量式液状態検知センサでは、スリットを少なくとも1つ以上含む外筒電極の中心軸線に直交する断面において、外筒電極の外周の3%以上を占める部位にスリットが形成されているので、液体氷結時の体積膨張に伴い上昇する圧力を有効に逃がすことができる。
【0027】
さらに、請求項8に係る発明の静電容量式液状態検知センサでは、スリットを少なくとも1つ以上含む外筒電極の中心軸線に直交する断面において、スリットの開口幅の合計寸法を、外筒電極の外周の10%以下に制限しているので、例えば外筒電極の外部にて氷結した液体の氷塊といった絶縁膜に接触して当該絶縁膜を傷付けるような大きさの固形物がスリットを通過しにくく、絶縁膜の保護を有効に図ることができる。
【0028】
さらに、請求項9に係る発明の静電容量式液状態検知センサでは、前記スリットの前記軸線方向に直交する向きの開口幅を5mm以下に制限しているので、外筒電極の外部にて氷結した液体の氷塊といった絶縁膜に接触して当該絶縁膜を傷付けるような大きさの固形物が、スリットを介して外筒電極の内部に入り込むのを防ぐことができ、絶縁膜の保護を有効に図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を具体化した静電容量式液状態検知センサの一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、図1〜図3を参照して、静電容量式液状態検知センサの一例としての液体レベルセンサ1について説明する。図1は、液体レベルセンサ1の縦断面図である。図2は、外筒電極10の斜視図である。図3は、液体レベルセンサ1の先端部付近の分解斜視図である。
【0030】
本実施の形態の液体レベルセンサ1は、ディーゼル自動車の排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)の還元に使用される尿素水を収容したタンク(図示外)に取り付けられ、液体の状態の検知、つまりは尿素水の水位を測定するために利用されるものである。
【0031】
図1に示すように、液体レベルセンサ1は、円筒形状を有する外筒電極10と、その外筒電極10の内部にて、外筒電極10の軸線方向に沿って設けられた内部電極20と、外筒電極10および内部電極20を互いに非接触の状態で支持する基部40とから構成される。
【0032】
外筒電極10は導電性の金属材料からなり、図2に示すように、長細い円筒形状を有する。液体レベルセンサ1の先端側(図1における下側)にあたる外筒電極10の先端部11(図2における上側)には、後述する内部電極20のブッシュ30(図1参照)の抜け防止のための開口部13が設けられている。そして、開口部13の設けられた位置における外筒電極10の母線(図中一点鎖線Aで示す。)に沿って、細幅のスリット14,15,16が、先端部11側から順に後端部12(液体レベルセンサ1の基部40側の端部)に向かって、それぞれが独立に形成されている。スリット14,15,16はそれぞれが略同形状で等間隔に1本の母線上に沿って断続的に配置され、各スリット14,15,16間には全周にわたりスリットが存在しない筒状形態の中間スリット非形成領域17,18が位置している。さらに、先端部11および後端部12にも、それぞれの端面から連なって、全周にわたりスリットが存在しない筒状形態の先端側スリット非形成領域71および後端側スリット非形成領域72が設けられている。そして、これら各スリット14,15,16は、外筒電極10の外周面上で周方向に等間隔となる3本の母線上に、それぞれ形成されている。また、外筒電極10の後端部12には、スリット14,15,16が形成された各母線とは異なる母線上に、1つの空気抜き孔19が形成されている。
【0033】
このように本実施の形態の液体レベルセンサ1では、外筒電極10に設けられる複数(具体的には、9つ)のスリット14,15,16において、1つのスリット14と1つのスリット15を選択したときに、一方のスリット14の開口先端が他方のスリット15の開口先端よりも先端側(図2における上側)に位置し、一方のスリット14の開口後端が他方のスリット16の開口後端よりも先端側(図2における上側)に位置する関係を満たしている。この場合、一方のスリット14が、特許請求の範囲における「第1スリット」に相当し、他方のスリット15が、特許請求の範囲における「第2スリット」に相当することになる。なお、複数のスリット14,15,16において、スリット14とスリット16を選択してみたとき、もしくはスリット15とスリット16を選択したときにも、上述の関係を満たしている。
【0034】
次に、図1に示すように、外筒電極10は、後端部12が金属製の基部40の電極支持部41の外周に係合した状態で溶接されている。基部40は尿素水を収容したタンク(図示外)に液体レベルセンサ1を固定するための台座として機能し、そのための取り付け孔(図示外)を鍔部42に有する。また、基部40の鍔部42を挟んで電極支持部41の反対側には、外筒電極10および内部電極20が外部回路(図示外)との電気的な接続を行えるようにするための中継用の回路基板60などを収容する収容部43が形成されている。なお、回路基板60は収容部43の内壁面の四隅より突出する基板載置部(図示外)上に載置されている。外部回路との接続は、収容部43を覆って保護し、鍔部42に固定されるカバー45の側部に固定されるコネクタ62を介して行われ、コネクタ62の外部接続端子(図示外)と回路基板60の配線とが配線ケーブル61によって接続されている。
【0035】
基部40の電極支持部41には、収容部43内に貫通する孔46が穿設されており、この孔46内に、内部電極20が固定される。本実施の形態の内部電極20は中実で円柱状をした導電性の金属棒であり、外筒電極10の全長とほぼ同じ長さを有する。内部電極20の先端部21側(図1における下側であり、液体レベルセンサ1の先端側)の端部は面取りされている。この内部電極20の外周面上には、例えばPFAからなる絶縁膜23(図4参照)が形成されている。また、後端部22側(図1における上側)には、内部電極20を基部40に固定するため、パイプガイド55とインナーケース50が係合されている。パイプガイド55は、内部電極20の後端部22の端縁寄りに接合された環状のガイド部材である。
【0036】
また、インナーケース50は内部電極20と外筒電極10とが確実に絶縁されるように、内部電極20を位置決め支持する筒状の絶縁性を有する樹脂製部材であり、先端側が基部40の電極支持部41の孔46に係合する。インナーケース50には径方向外側に向かって突出する鍔部51が形成されており、インナーケース50が電極支持部41に係合される際には収容部43側から電極支持部41の内周に挿通される。そして、鍔部51が収容部43内の底面に当接することで、電極支持部41の内周をインナーケース50が通り抜けることが防止されている。内部電極20もまたインナーケース50の内周側を収容部43側から挿通されるが、パイプガイド55が鍔部51に当接することで、インナーケース50に対して抜け防止される。
【0037】
さらに、インナーケース50の外周と内周とには、それぞれ、第1Oリング53と第2Oリング54とが設けられている。第1Oリング53は、インナーケース50の外周と基部40の孔46との間の隙間を密閉し、第2Oリング54は、インナーケース50の内周と内部電極20の後端部22の内周との間の隙間を密閉している。これにより、液体レベルセンサ1がタンク(図示外)に取り付けられた際に、タンク内とタンク外とが収容部43を介して連通しないようにその気密性が保たれている。なお、基部40の鍔部42において液体レベルセンサ1の先端側の面には図示外の板状のゴム部材が嵌められ、第1Oリング53,第2Oリング54と同様に、タンクへの取り付け時に、タンクの内外の気密性が保たれる。
【0038】
そして、内部電極20の基部40への組み付けの際には、2枚の押さえ板56,57によって、パイプガイド55がインナーケース50の鍔部51に対して押圧される。押さえ板57は、パイプガイド55との間に押さえ板56を挟み、パイプガイド55を押圧した状態で、ネジ58によって収容部43内に固定される。これにより、パイプガイド55に接合された内部電極20が電極支持部41に固定されることとなる。押さえ板56,57には中央に孔が設けてあり、内部電極20の電極取りだし用リード線59が挿通され、回路基板60に接合されている。回路基板60からはグランド側の電極が、詳細は図示しないが、基部40に接続されており、このため外筒電極10がグランド側に電気的に接続される。
【0039】
また、基部40の電極支持部41にて支持された内部電極20は、その先端部21が、外筒電極10の先端部11と非接触の状態となるようにゴム製のブッシュ30により、保持されている。図1,図3に示すように、ブッシュ30は、外径が外筒電極10の内周と略一致する円筒形状の胴部32の一端側に、テーパー状にすぼまった先端部31が形成されている。先端部31は、胴部32側の端が胴部32の外径よりも大きく構成された鍔部34として形成されており、外筒電極10に胴部32が嵌められた際のストッパーとして機能する。
【0040】
ブッシュ30の胴部32の内周には、内部電極20の先端部21を位置決め保持するためのリブ36が複数本周方向に対して分散して列設されている。そして、先端部31には、胴部32の内周側に接続する孔33が開口されており、胴部32の内周で内部電極20が保持された状態でも、リブ36の隙間を介してブッシュ30の内側と外側とが連通するように構成されている。これにより、孔33を介してタンクに収容された尿素水が外筒電極10と内部電極20との間に形成されるギャップ(間隙)に入り込むことが可能となる。また、胴部32の外周には、外筒電極10の開口部13に係合して、ブッシュ30の抜け防止として機能する突起部35が設けられている。このようなブッシュ30に保持される内部電極20は、外筒電極10との接触が防止される。
【0041】
ところで前述したように、外筒電極10の外周面の一の母線上のスリット14,15,16は、その母線上において連なって形成されており、各スリット間には、全周にわたりスリットが形成されていない中間スリット非形成領域17,18が位置している。すなわち、外筒電極10の母線上にて外筒電極10の先端部11から後端部12にかけて連続するスリットは形成されず、スリット間の強度が筒状形態の中間スリット非形成領域17,18により確保されている。本実施の形態では、外筒電極10にスリット14,15,16を設けたことで、タンク(図示外)内の尿素水がギャップ間に流入出しやすくなり、ギャップ間と外筒電極10の外部との間における尿素水の循環作用が外筒電極10の軸線方向に対して良好にもたらされる。このため、寒冷地などで尿素水が氷結した際にも、スリット14,15,16の全てないしいずれかを介して、尿素水氷結時の体積膨張に伴い上昇する圧力を外部に分散させることができるので、上記圧力上昇に起因した外筒電極10の変形を抑制することができる。
【0042】
また、上記循環作用によって上昇した圧力を外部に逃したとしても、尿素水氷結時の体積膨張は依然として少なからずギャップ間に生ずるが、上記の中間スリット非形成領域17,18の存在により、一つのスリットあたりの長さが抑えられる。従って、複数のスリット14,15,16を形成したにも関わらず中間スリット非形成領域17,18の存在によって外筒電極10の強度が維持され、外筒電極10の上記体積膨張に伴った撓みが抑制されるので、外筒電極10の変形を効果的に抑制することができる。なお、このように外筒電極10の変形を効果的に抑制するためには、外筒電極10の外周面の一の母線上に形成される各スリット14,15,16同士の間隔(換言すれば、上記母線上における各中間スリット非形成領域17,18の長さ)を、母線上に沿ってみたときに5mm以上形成し、また、外筒電極10の肉厚を0.5mm以上に形成することが、外筒電極10の強度を良好に確保する上で好ましい。
【0043】
また、外筒電極10の先端部11に、外筒電極10の先端側の端面より連なる先端側スリット非形成領域71を設けたことで、各母線上のスリット14によって分断される部位同士を接続して補強することができ、外筒電極10の強度を増すことができる。さらに、外筒電極10の後端部12に、外筒電極10の後端側の端面より連なる後端側スリット非形成領域72を設けたことで、外筒電極10の強度をさらに増すことができる。そして、この後端側スリット非形成領域72を設けることで、液体レベルセンサ1を車両に取り付けて使用した際に、同センサ1に振動がかかりその振動に起因した応力が外筒電極10の後端部12に及んでも、その応力に耐えられる程度の強度を確保できるので、同センサ1の耐振性を向上させることができる。
【0044】
次に、本実施の形態の液体レベルセンサ1により、液体の水位などの状態(本実施の形態では尿素水のレベル)を検知する原理について、図4を参照して説明する。図4は、外筒電極10と内部電極20との間(ギャップ間)に満たされた尿素水の水面近傍の拡大断面図である。この液体レベルセンサ1は、尿素水を収容したタンク(図示外)に、外筒電極10および内部電極20を、その軸線方向を尿素水の水位の高低方向に沿うように配置した状態で組み付けられる。そして、ギャップ間(外筒電極10と内部電極20との間)の静電容量を測定することで、両者間に存在する尿素水が、外筒電極10の軸線方向にどれだけの水位まで存在しているかを検出することができる。これは周知のように、電位の異なる2点間において、静電容量の大きさがその2点間の距離に反比例することに基づく。
【0045】
すなわち、図4に示すように、尿素水で満たされていない部分におけるギャップ間で電位差の生じる部位の距離は、距離Bで示す、両者間の空気層と絶縁膜23との合計の厚み分の距離となる。一方、尿素水が満たされた部位におけるギャップ間で電位差の生じる部位の距離は、尿素水が導電性なので外筒電極10と尿素水との電位が等しくなることから、距離Cで示す、絶縁膜23の厚み分の距離となる。つまり、尿素水が満たされている部位は、満たされていない部位よりも電位差の生じる部位間の距離がより近いため、静電容量が大きい。このことから、ギャップ間に電圧を印加した場合、尿素水が満たされている部分が多くなるに従って、静電容量がより大きくなる距離Cである部分の割合が増える。ここで周知のように、静電容量の大きさが、互いに対向する電位の異なる部位の面積に比例することから、液体レベルセンサ1の全体として検出される静電容量は、尿素水の水位が高くなるに従って大きくなる。
【0046】
こうした液体の水位を測定するにあたって、内部電極20の外周面上に形成された絶縁膜23の厚みが薄いほど、外筒電極10と内部電極20との間に印加する電圧が低くても大きな静電容量を得ることができる。絶縁膜23は傷等により絶縁性が失われる場合があるため、本実施の形態の液体レベルセンサ1では、尿素水中に氷塊などの固形物が存在した場合でも、その固形物が外筒電極10と内部電極20との間に入り込まないように、外筒電極10に形成したスリット14,15,16の幅(開口幅)に制限を設けている。以下、図5を参照して、スリット14,15,16の幅について説明する。図5は、外筒電極10の中心軸線と直交する方向におけるスリット14,15,16のいずれかの形成部位の断面図である。
【0047】
図5に示すように、外筒電極10には、外周面の周方向に対して等間隔に配置された3本の母線上に、スリット14,15,16がそれぞれ形成されている。図5では、外筒電極10の断面における外周に沿った方向において、スリット14,15,16の幅を、幅Dとして示している。また同様に、外筒電極10の軸線断面における外周に沿った方向において、スリット14,15,16が形成されていない部分の幅を、幅Eとして示している。すなわち、全ての幅Dと全ての幅Eとを合計した長さが、外筒電極10の外周の長さに相当する。
【0048】
本実施の形態では、スリット14,15,16の幅Dの合計を、外筒電極10の外周の長さ(幅Dと幅Eの合計)の10%以下となるように設定している。このような大きさにスリット14,15,16の幅を設定することで、例えば不純物や氷結した尿素水の塊などの固形物が尿素水中に含まれるとき、その固形物がスリット14,15,16を通過しにくくなるため、絶縁膜23を傷等から保護することができる。なお、スリット14,15,16の幅Dが、外筒電極10の外周の長さの10%未満であっても、小さな固形物がスリット14,15,16を通過する場合がある。しかし、この幅のスリット14,15,16を通過できる大きさの固形物が内部電極20の絶縁膜23に衝突しても、十分な質量がないため絶縁膜23を傷付けることは少なく、絶縁性に影響を与え難い。
【0049】
なお、本実施の形態では、各スリット14,15,16の軸線方向に直交する向きの幅(開口幅)Eを2.5mmに設定している。このように、各スリット14,15,16の幅Eを5mm以下に設定することで、外筒電極10の外部にて氷結した尿素水の氷塊といった絶縁膜23に接触してこの絶縁膜23を傷付けるような大きさの固形物が、各スリット14,15,16を介して外筒電極10の内側に入り込むのを防ぐことができる。従って、絶縁膜23の保護をより有効に図ることができる。
【0050】
また、本実施の形態の液体レベルセンサ1のスリット14,15,16は、寒冷地などにおける使用の際に、ギャップ間に存在する尿素水の氷結に伴う圧力上昇により外筒電極10に変形が生じないように形成されている。詳細には、ギャップ間に入り込んでいる尿素水が急冷されることがあると、ギャップ間に存在する尿素水が、外筒電極10の先端部11側と後端部12側との双方向から氷結を開始することがある。すると、ギャップ間に存在する尿素水の中間側に向けて氷結に伴う圧力上昇を生ずる。しかし、スリット14,15,16が形成されていることによって、外筒電極10の内部と外部との間での循環作用が確保されるので、上記圧力を効果的に外筒電極10の外部に逃すことができる。このような効果を発揮するには、スリット14,15,16の幅Dの合計が、外筒電極10の外周の3%以上であることが望ましい。
【0051】
[実施例1]
ここで、スリットの幅や母線上における分割数(同じ母線上で連なったスリットの数)と、外筒電極の強度との関係について、上記の効果が得られるか否かを確認するため、評価試験を行った。その結果を図6の表に示す。図6は、スリットの幅や母線上における分割数と、外筒電極の強度との関係についての評価試験の結果を示す表である。
【0052】
この評価試験を行うにあたって、内部電極には、SUS304からなる中実で円柱状の金属棒を用いた。また、外筒電極には、円筒状で外径が30mm、肉厚が1mm、全長が300mmのSUS304からなる金属筒に、後述する12種類の条件に基づくスリットを形成したものをそれぞれ用意した。そして、各種類ごとに2本ずつサンプルを作製し、ギャップ間を水で満たした状態で急冷して氷結させ、その後、解凍してから外筒電極の状態について評価を行った。
【0053】
外筒電極は、以下の3つの条件に基づき組み合わせ、12種類用意した。まず、スリットが形成される外筒電極の外周面上の母線数については、1本、2本(外筒電極の中心軸線と直交する断面から見て180度ごと)、3本(同様に120度ごと)、4本(同様に90度ごと)のものを組み合わせた。次に、スリットの個々の幅(図5における幅Dに相当)は、1.0mmのもの、2.5mmのもの、5.0mmのものを組み合わせた。そして、スリットの長さは、120mmで2本が配置されたものとし、スリット同士の間に位置する補強部の長さは、10mmとした。また、比較例1として、外筒電極の先端から後端まで連なるスリット(開口幅2.5mm)を1本設けたものを用意し、比較例2として、外筒電極の全長よりも短い長さ(120mm)の2本のスリット(開口幅2.5mm)を、外筒電極の先端から連なる形で、かつ外筒電極の外周面上の異なる母線上に形成したものを用意した。なお、比較例2の2本のスリットの後端の位置は、外筒電極の軸線方向において同一の位置となるように調整した。
【0054】
図6に示すように、スリットが形成される外筒電極の外周面上の母線数が1本である場合、スリットの幅が1.0mm(全周におけるスリットの幅の割合が1.1%)あるいは2.5mm(同2.7%)とした場合に、外筒電極に極僅かな変形が生じたり、スリットの縁部に一部変形が生じたりし、評価結果は「△」となった。同条件でスリットの幅を5.0mm(同5.3%)とした場合には、スリットの縁部に一部変形が生じ、評価結果は「○」となった。
【0055】
また、スリットが形成される外筒電極の外周面上の母線数を2本とした場合、スリットの幅が1.0mm(全周におけるスリットの幅の割合が2.1%)とした場合に、外筒電極に極僅かな変形が生じたり、スリットの縁部に一部変形が生じたりし、評価結果は「△」となった。同条件でスリットの幅を2.5mm(同5.3%)あるいは5.0mm(同10.6%)とした場合には、スリットの縁部に一部変形が生じ、評価結果は「○」となった。
【0056】
さらに、スリットが形成される外筒電極の外周面上の母線数を3本とした場合、スリットの幅に関わらず、外筒電極の変形は生じず、問題は全くないとして、評価結果が「☆」となった。なお、本実施例では、スリットの幅が1.0mm、2.5mm、5.0mmである場合に、全周におけるスリットの幅の割合がそれぞれ、3.2%、8.0%、15.9%となった。また、スリットが形成される外筒電極の外周面上の母線数を4本とした場合も同様に、スリットの幅に関わらず問題は全く生じず、評価結果が「☆」となった。なお、本実施例では、スリットの幅が1.0mm、2.5mm、5.0mmである場合に、全周におけるスリットの幅の割合がそれぞれ、4.2%、10.6%、21.2%となった。
【0057】
一方、外筒電極の先端から後端まで連なるスリットを1本設けた比較例1、並びに外筒電極の先端から連なるスリット2本設けた比較例2については、共に外筒電極に大きな変形が生じ、評価結果が「×」となった。
【0058】
上記評価試験の結果より、外筒電極10の外周面上の母線に沿って、複数のスリットを形成しつつ、スリット同士の間に補強部を設けた構造では、スリットが形成される外筒電極の外周面上の母線数に関わらず、外筒電極に大きな変形が生じ、評価結果が「×」となるものはなかった。このことから、細長い外筒電極の外周面上の母線に沿って複数のスリットを形成しつつ、スリット同士の間に全周にわたりスリットが存在しない中間スリット非形成領域を設けた構造については、外筒電極と内部電極との間(ギャップ間)の液体が氷結する場合にも外筒電極の変形が大きく生じるのを防ぐことができる。従って、内部電極と外筒電極とのギャップ寸法が広がるのを有効に抑制することができ、ひいては上記ギャップ間の静電容量を長期に亘って高精度に測定することができる静電容量式液状態検知センサを提供することができる。
【0059】
また、上記評価試験の結果より、外筒電極の外周におけるスリットの幅の割合が少なくとも3%以上であれば、スリットの縁部に多少の変形は認められるものの、外筒電極に変形は生じないことがわかった。なお、本実施例ではスリットの長さによる外筒電極の変形性の影響は無かったが、外筒電極の長さが本実施例で使用したもの(300mm)より長いものを使用すれば、スリットの長さによる撓みの影響が生ずるため、スリットの分割数を増やし、補強部として機能する中間スリット非形成領域を設けることが望ましい。また、スリットが形成される外筒電極の外周面上の母線数を3本以上とすれば、外筒電極に対する変形の影響が生じないこともわかった。ここで母線数を3本とすると、外筒電極の中心軸線と直交する断面においてスリットの位置が外周の120度ごとに配置されるので配置バランスがよく、外筒電極の強度を良好に確保した形で、液体氷結時の体積膨張に伴い上昇する圧力を、周方向の方向性に依存されることなく効果的に外部へ逃すことが可能となる。
【0060】
なお、本発明は各種の変形が可能なことはいうまでもない。例えば、本実施の形態では、内部電極20を中実の円柱状の金属棒としたが、円柱状に限らず、角柱状であっても中空の円筒状や角筒状であってもよい。また、外筒電極10は円筒状に限らず、角筒状であってもよい。
【0061】
また、本実施の形態では、液体の状態を検知する対象の液体として尿素水を例に説明したが、これに限らず、導電性の液体であれば、内部電極20の外周面上に絶縁膜23を施すことで、液体の状態を検知することができる。また、非導電性の液体であれば、内部電極20の外周面上には絶縁膜23の形成を行わなくともよい。これは、空気の誘電率と、非導電性の液体の誘電率との間で差があるので、本実施の形態と同様に、外筒電極10と内部電極20との間の静電容量の測定を行えば、その静電容量に変化が生ずるからである。
【0062】
また、検知される液体の状態とは水位(液位)に限らず、例えば液体の濃度、劣化度、異物の混入度などであってもよい。
【0063】
さらに、本実施の形態では、外筒電極10の3本の母線(図中一点鎖線Aで示す。)に沿って、細幅のスリット14,15,16をそれぞれ形成した構造を示したが、外筒電極への複数のスリットの配置位置はこれに限定されない。例えば、図7に示すように、外筒電極80の軸線方向に沿って螺旋状に複数のスリット85を設けても良い。なお、図7に示した外筒電極80の先端部81および後端部82においても、上記実施の形態の外筒電極10と同様に、それぞれの端面から連なり、且つスリットが存在しない筒状形態の先端側スリット非形成領域83および後端側スリット非形成領域84が設けられている。また、別の形態として、図8に示すように、外筒電極90の軸線方向に沿って千鳥状に複数のスリット95を設けても良い。なお、図8に示した外筒電極90の先端部91および後端部92においても、上記実施の形態の外筒電極10と同様に、それぞれの端面から連なり、且つスリットが存在しない筒状形態の先端側スリット非形成領域93および後端側スリット非形成領域94が設けられている。但し、図8,9に示した外筒電極80,90のいずれの形態においても、複数のスリット85(95)は、任意の2つを選択したときに、一方のスリット85(95)の開口先端が他方のスリット85(95)の開口先端よりも先端側に位置し、一方のスリット85(95)の開口後端が他方のスリット85(95)の開口後端よりも先端側に位置する関係を満たすように形成されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0064】
電位の異なる2部材間の静電容量を測定することで液体の状態を検知することができる静電容量式液状態検知センサに適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】液体レベルセンサ1の縦断面図である。
【図2】外筒電極10の斜視図である。
【図3】液体レベルセンサ1の先端部付近の分解斜視図である。
【図4】外筒電極10と内部電極20との間(ギャップ間)に満たされた尿素水の水面近傍の拡大断面図である。
【図5】外筒電極10の中心軸線と直交する方向におけるスリット14,15,16のいずれかの形成部位の断面図である。
【図6】スリットの幅や母線上における分割数と、外筒電極の強度との関係についての評価試験の結果を示す表である。
【図7】外筒電極10とはスリットの配列(形成部位)が異なる形態の外筒電極80の斜視図である。
【図8】外筒電極10とはスリットの配列(形成部位)が異なる形態の外筒電極90の斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
1 液体レベルセンサ
10,80,90 外筒電極
11,81,91 先端部
12,82,92 後端部
14,15,16,85,95 スリット
17,18 中間スリット非形成領域
20 内部電極
23 絶縁膜
40 基部
71 先端側スリット非形成領域
72 後端側スリット非形成領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体からなる筒状の外筒電極と、前記外筒電極内で前記外筒電極の軸線方向に沿って設けられた導体からなる筒状または柱状の内部電極と、前記外筒電極および前記内部電極の後端側で、前記外筒電極と前記内部電極とを非接触の状態で支持する基部とを備える静電容量式液状態検知センサであって、
前記外筒電極は、当該外筒電極の全長よりも短い長さで前記軸線方向に沿って開口するスリットを複数有し、
複数の前記スリットは、第1スリットと、第2スリットとを含み、前記第1スリットの先端は前記第2スリットの先端よりも先端側に位置し、前記第1スリットの後端は前記第2スリットの後端よりも先端側に位置する関係を満たすことを特徴とする静電容量式液状態検知センサ。
【請求項2】
複数の前記スリットは、いずれの先端も前記外筒電極の先端より後端側に位置していることを特徴とする請求項1に記載の静電容量式液状態検知センサ。
【請求項3】
複数の前記スリットは、いずれの後端も前記外筒電極の後端より先端側に位置していることを特徴とする請求項1または2に記載の静電容量式液状態検知センサ。
【請求項4】
前記外筒電極の外周面における少なくとも一の母線上に、複数の前記スリットが位置していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の静電容量式液状態検知センサ。
【請求項5】
前記外筒電極の外周面における複数の異なる母線上に、各々複数の前記スリットが位置していることを特徴とする請求項4に記載の静電容量式液状態検知センサ。
【請求項6】
前記第1スリットの後端は、前記第2スリットの先端よりも先端側に位置する関係を満たしており、前記外筒電極のうち、前記第1スリットの後端と前記第2スリットの先端との間には、全周にわたってスリットが存在しない中間スリット非形成領域が位置していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の静電容量式液状態検知センサ。
【請求項7】
前記スリットを少なくとも1つ以上含むようにして前記外筒電極の中心軸線に直交する断面をとったときに、前記スリットの開口幅の合計寸法は、前記外筒電極の外周に対して3%以上の大きさを有することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の静電容量式液状態検知センサ。
【請求項8】
前記内部電極の外周面上には絶縁膜が形成され、前記断面をとったときに、前記スリットの開口幅の合計寸法は、前記外筒電極の外周に対して10%以下の大きさを有することを特徴とする請求項7に記載の静電容量式液状態検知センサ。
【請求項9】
前記内部電極の外周面上には絶縁膜が形成されており、前記スリットの前記軸線方向に直交する向きの開口幅は、いずれも5mm以下であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の静電容量式液状態検知センサ。
【請求項10】
前記液体は尿素水であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の静電容量式液状態検知センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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