説明

静電気除去方法及び静電気除去装置

【課題】安全にかつ確実に静電気を除去できる静電気除去装置と静電気除去方法を提供すること。
【解決手段】静電気除去装置10は、本体ケース1と本体ケース1内に配置するエックス線照射部12と、エックス線照射部12の入口付近に装着される電極13とを備えている。エックス線照射部12からエックス線を照射することにより、円錐形の弱プラズマ環境Wを形成する。電極13をアースEに接続して0ボルトを維持する。弱プラズマ環境W内に静電気を帯びた対象物質15を配置すると、対象物質15に帯電する電荷が、0ボルトの電極13に引き寄せられることにより、対象物質15から静電気を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弱プラズマ環境内において、非接触で、電荷を帯びた対象物の電荷を電極側に引き寄せることによって、静電気を除去する静電気除去方法及び静電気除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、各種の場所、例えば、ホテルのドアノブや車両のドア等に手を接触させると静電気により電撃を受けることがある。これ等の現象は、何らかの摩擦により人体に静電気が帯電し、導体に手を触れる際に静電気を放電することによって発生する。これを防止するために、各種の改良がなされている。例えば、特許文献1では、絶縁材料からなる中空状のケースに静電気入力電極と静電気出力電極とを、抵抗を介して離隔して配置した静電気除去具が提案されている。この静電気除去具は、非接触式放電電極と、接触式放電電極とを並列して配置させたものであり、帯電した使用者が静電気入力電極に触れながら、静電気出力電極をドアの金具付近に近づけることによりコロナ放電を発生させて徐々に放電し、さらに、接触式静電気出力電極がアースに触れることにより、完全に放電して静電気を除去している。
【0003】
また、特許文献2では、弱プラズマ環境下において、非接触でプラス電荷又はマイナス電荷を調節させるものが開示されている。この技術は、除菌・除塵・脱臭の効果につながるマイナスイオン強化空気の供給を中心とする空気の浄化システムとして知られているものである。つまり、エックス線の照射域に配置した適宜な形状をした電極への印加電圧の極性と高低を調節することにより、エックス線の電離作用により生じた同量のプラスイオン、マイナスイオンのうち、電極と逆性のイオンを連鎖反応的に電極に吸着し、エックス線の照射域全体に電極と同性のイオンの多い状態を作り出すものである。これを利用することにより、空気清浄化装置や、静電気除去装置を提供することができることとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−45695公報
【特許文献2】特許第3049542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、静電気を帯びた物質から静電気を除去するためには、静電気を確実に除去する必要があり、また、安全に行う必要があった。特許文献1に記載された内容は、非接触で静電気除去具を物質に近づけてコロナ放電を発生させた後、接触させて電荷を逃がすようにしていた。静電気除去具を物質に接触させる際に、手に触れることがあり、電撃を受ける可能性があった。また、特許文献2の技術は、電極にプラス又はマイナスの電荷を印加したものであり、エックス線の照射域をプラス電荷又はマイナス電荷に偏らせることが目的である。そのために、仮に、対象物がプラスに帯電している場合、プラスの電荷を印加した電極を用いればさらにプラスの電荷を与え、逆に、対象物がプラスに帯電している場合に、マイナスの電荷を印加した電極を用いれば、一旦は0ボルトにすることができるが、その後マイナスの電荷を与え続けることになり、いわゆる逆帯電の現象を起こすことになり、静電気を確実には除去することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、静電気を帯びた対象物質から確実に静電気を除去することができる静電気除去方法及び静電気除去装置を提供することを目的とする。
【0007】
本発明に係る静電気除去方法における請求項1記載の発明は、静電気を帯びた物質の周りの環境を、弱プラズマ環境に形成し、前記プラズマ環境内に0ボルトの電極を配設することにより、前記物質に帯電された電荷を前記電極に引き寄せて、前記物質から静電気を除去することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明に係る静電気除去装置における請求項2記載の発明は、弱プラズマ環境を形成する弱プラズマ環境形成手段と、弱プラズマ環境内に配置されて0ボルトを維持する電極とを備え、静電気を帯びた物質に対して、弱プラズマ環境を形成して、前記静電気を帯びた物質から電荷を移動させて除去させるように構成することを特徴とするものである。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項2の発明に係るものであって、前記弱プラズマ環境形成手段として、エックス線が照射可能に形成されていることを特徴としている。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記電極がアースに接続されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の請求項1の静電気除去方法によれば、弱プラズマ環境内に配設されて電荷を帯びた物質は、弱プラズマ環境内に配設された電極が0ボルトであるから、その間に電位差が生じ、帯電する電荷は、0ボルトの電極に引き寄せられて、電極側に移動する。これによって、手に触れることがなく非接触で対象物質から静電気が除去されることから、静電気除去作業を安全に行うことができる。
【0012】
請求項2の構成の静電気除去装置によれば、弱プラズマ環境形成手段と0ボルトの電極を備えて構成されている。電荷を帯びた物質は、0ボルトの電極に対して電位差が生じることとなって、帯電する電荷は0ボルトの電極に引き寄せられて移動する。そのため、物質から静電気が除去される。したがって、電極が0ボルトであることから、常に、電極側に対象物質に帯びた電荷を移動させることになり、非接触で確実に静電気除去作業を行うことができる。
【0013】
請求項3の構成によれば、弱プラズマ環境形成手段として、エックス線を照射する照射源を備えるものであり、エックス線を照射することにより、本来、絶縁である空気中に弱プラズマ環境を形成することができる。弱プラズマ環境を形成することにより、電荷が移動できることとなり、0ボルトの電極に、物質に帯電されている電荷を引き寄せることができる。これによって、帯電されている物質から電荷を移動することになって、静電気を除去することができる。非接触で弱プラズマ環境を形成して電荷を移動させるため、静電気の除去を安全に確実に行うことができる。
【0014】
請求項4の構成によれば、0ボルトを保持する電極が、アースに接続されているから、0ボルトの電極に引き寄せられる電荷は、常に地中に移動することになる。そのため、連続的に発生する電荷、例えば、導電性材料からなるプーリーにより回転するベルト等では、連続的な摩擦により発生する静電気に対して、常に、発生する電荷を、地中に向かって移動させることになり連続的に発生する静電気を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による静電気除去装置を示す簡略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明における静電気除去方法及び静電気除去装置の実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、実施形態の静電気除去装置10を示すものであり、弱プラズマ環境をエックス線で形成するものである。静電気除去装置10の本体ケース11内には、エックス線を照射するエックス線照射部12と、エックス線の照射範囲内におけるエックス線照射部12の入口付近に配置されて本体ケース11に装着された電極13と、を備えている。電極13はアースEに接続されて0ボルトになっている。実施形態の場合、エックス線を照射するために図示しない真空管が配置されている。エックス線を照射するとその周りに弱プラズマ環境Wが形成される。エックス線を照射して形成される弱プラズマ環境Wの範囲は、図1において、2点鎖線で示すように、円錐形の範囲内に形成される。この範囲内に、プラス電荷又はマイナス電荷の静電気を帯びた対象物質15が配置されている。対象物質15は、図例においては、円板状に形成されているが、導体であれば、その大きさや形状を問うものではない。例えば、ドアノブであったり、塗装を行う車体であったり、さらには、連続回転するベルト又はプーリーであったりする。
【0017】
次に、上述のように構成された静電気除去装置10の作用について説明する。
【0018】
エックス線は、上述のように、その照射範囲内に弱プラズマ環境Wを形成するものであり、ここで形成された弱プラズマ環境Wにおいては、正・負のイオンが同量の空気塊を形成するものであり、この弱プラズマ環境W内で電荷(プラス電荷又はマイナス電荷)が移動できるものである。
【0019】
弱プラズマ環境W内に配置された0ボルトの電極13は、アースEに接続されて常に0ボルトを維持している。電極13が0ボルトであるということは、弱プラズマ環境W内に配置された対象物質15に電荷が帯電している場合に、対象物質15と電極13との間に電位差が生じるため、対象物質15の電荷が0ボルトの電極13に向かって引き寄せられることになる。したがって、対象物質15から静電気が除去されることとなる。
【0020】
また、電極13が0ボルトであるということは、見かけ上、プラス電荷とマイナス電荷が同量に存在しているということもできる。つまり、弱プラズマ環境W内に、プラス電荷又はマイナス電荷を帯電した対象物質15が配置されると、例えば、対象物質15が正(プラス電荷)の極性を有するものであれば、その電極13に対して、逆性の電荷、つまり、負(マイナス電荷)が引き寄せられて電極13が中性になろうとする。また、対象物質15が負(マイナス電荷)であれば、その電極13に対して、逆性の電荷、つまり、正(プラス電荷)が引き寄せられて電極13が中性になろうとする。したがって、正・負の電荷のいずれかが帯電された対象物質15は、いずれにおいても、プラス又はマイナスのいずれかの電荷が電極13に引き寄せられて、静電気を除去することができる。
【0021】
さらに、電極13はアースEに接続されているので、帯電された対象物質15から、電荷が0ボルトの電極13に向かって連続に引き寄せられても、電荷は地中内に移動することになり、常に、0ボルトを維持する状態となる。また、対象物質15がプラス電荷又はマイナス電荷を連続して発生しても対象物質15から逆性の電荷を連続的に引き寄せることが可能であることから、ベルトコンベアで発生するような連続した帯電にも好適に使用できるものとなる。
【0022】
上述のように、実施形態の静電気除去方法または静電気除去装置10では、非接触手段、例えば、エックス線を照射して、エックス線の照射範囲内に弱プラズマ環境Wを形成する。この弱プラズマ環境W内で0ボルトの電極13を配置し、帯電された対象物質15を配置すると、対象物質15に帯電されている電荷が0ボルトの電極に引き寄せられて、対象物質15から静電気が除去される。したがって、人体に接触させることなく、静電気を除去できることから、例えば、ドアノブ等を安全に確実に掴むことができたり、塗装する車両にゴミ等を付着させたりしない。
【0023】
なお、弱プラズマ環境を形成するものは、エックス線を照射することによるものでなくてもよい。
【符号の説明】
【0024】
10、静電気除去装置
12、エックス線照射部
13、電極
15、対象物質
W、弱プラズマ環境
E、アース


【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電気を帯びた物質の周りの環境を、弱プラズマ環境に形成し、前記プラズマ環境内に0ボルトの電極を配設することにより、前記物質に帯電された電荷を前記電極に引き寄せて、前記物質から静電気を除去することを特徴とする静電気除去方法。
【請求項2】
弱プラズマ環境を形成する弱プラズマ環境形成手段と、弱プラズマ環境内に配置されて0ボルトを維持する電極とを備え、静電気を帯びた物質に対して、弱プラズマ環境を形成して、前記静電気を帯びた物質から電荷を除去させるように構成することを特徴とする静電気除去装置。
【請求項3】
前記弱プラズマ環境形成手段として、エックス線が照射可能に形成されていることを特徴とする請求項2記載の静電気除去装置。
【請求項4】
前記電極がアースに接続されていることを特徴とする請求項2又は3記載の静電気除去装置。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−262777(P2010−262777A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111118(P2009−111118)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(509125051)
【Fターム(参考)】