説明

静電潜像現像用トナー、及び画像形成方法

【課題】導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備え、潜像担持部における導電性基体の感光層側の表面から潜像担持部の最表面までの距離が30μm以下である画像成形装置において、潜像担持部の絶縁破壊を防止でき、長期間にわたって画像濃度の低下等の画像欠陥の発生を抑制でき、且つ、1成分現像剤としても2成分現像剤としても使用可能な静電潜像現像用トナーを提供すること。また、潜像担持部の絶縁破壊を防止でき、長期間にわたって画像濃度の低下等の画像欠陥の発生を抑制できる、前述の画像形成装置による画像形成方法を提供すること。
【解決手段】少なくとも、レーザ回折法により測定される体積基準の粒度分布において、粒子径1μ以上の範囲に形成される頻度値のピークの頻度値が5%以下であるシリカ粒子を含む静電潜像現像用トナーを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備え、潜像担持部における導電性基体の感光層側の表面から潜像担持部の最表面までの距離が30μm以下である画像成形装置において使用される、静電潜像現像用トナー、及び前述の画像形成装置による画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電子写真法又は静電記録法等では、光導電性感光体又は誘電体等からなる潜像担持部をコロナ帯電等により帯電させた後に、帯電した潜像担持部上にレーザ、LED等により露光して形成した静電潜像を、トナー等の現像剤を用いて可視化するか、静電潜像を反転現像することにより可視化して高品質な画像が形成される。
【0003】
従来、かかる画像形成方法において用いられる潜像担持部として、有機光導電体(OPC)やセレンからなる感光層を備える潜像担持部が一般的に使用されている。しかし、近年、画像形成装置の耐久性の向上の要求に応じて、アモルファスシリコンからなる感光層を備える潜像担持部の使用が検討されている。潜像担持部は被印刷物や、後述する弾性ブレード等と摺擦されることによって磨耗するが、アモルファスシリコンは耐摩耗性に極めて優れるため、潜像担持部の磨耗の観点からは画像形成装置の高耐久化を実現できる。具体的には、アモルファスシリコンの磨耗による膜厚の減少速度は有機光導電体の1/100以下である。
【0004】
しかし、アモルファスシリコンからなる感光層を備える潜像担持部は、極めて生産性に劣るという欠点を有する。アモルファスシリコンからなる感光層は、CVD法等の気相成長法によって導電性基体上に製膜されるが、所定の厚さを有する感光層を形成するためには著しく長い時間が必要である。また、気相成長法では、連続的に潜像担持部を製造できず、バッチ式が適用されるため、必然的に潜像担持部の生産性が低下する。
【0005】
アモルファスシリコンからなる感光層を備える潜像担持部のかかる欠点に鑑み、アモルファスシリコンの薄膜化による潜像担持部の生産性の向上が図られている。この場合、感光層の薄膜化による、磨耗による耐久性の低下が懸念されるが、アモルファスシリコンを潜像担持部として用いる場合、その優れた耐摩耗性によって耐久性に問題のない潜像担持部を製造できる。
【0006】
このように、アモルファスシリコンの薄膜を感光層として備える潜像担持部は、生産性の問題が解消されたことに加え、得られる画像の解像度が膜厚が厚い場合と比較して優れているため、その使用が広がっている。
【0007】
また、トナー像を紙等の被印刷物の表面に転写した後、アモルファスシリコンからなる感光層を備える潜像担持部の表面に残留したトナーは、クリーニング部により除去される。かかるクリーニング部としては、可動部が少ない単純な構造であり、画像形成装置を小型化できることから弾性ブレードが広く使用されている。
【0008】
トナー像を紙等の被印刷物に転写した後にアモルファスシリコンからなる感光層を備える潜像担持部の表面に残留したトナーの殆どは、弾性ブレードによって潜像担持部の表面から除去される。しかし、弾性ブレードによっても、残留したトナーは完全に除去しきれず、トナー粒子、磁性粉、樹脂片、シリカ粒子等の外添剤等が、弾性ブレードと潜像担持部との圧接部分である弾性ブレードの先端部分に滞留してしまう。そして、潜像担持部表面の弾性ブレード近傍に滞留している滞留物が、弾性ブレード、及びアモルファスシリコンからなる感光層、及び滞留物同士と長期間にわたり摩擦され続けた場合、許容される帯電量以上に過帯電してしまうチャージアップ現象が生じてしまう。
【0009】
かかるチャージアップ現象が生じた場合、滞留物の帯電量がアモルファスシリコンからなる感光層の耐圧値を超えてしまうことにより、潜像担持部表面の極微小領域への放電(リーク現象)が起こり、感光層の絶縁破壊が生じやすい。このため、弾性ブレードと、薄膜のアモルファスシリコンを感光層として備える潜像担持部とを具備する画像形成装置においては、感光層の絶縁破壊により、潜像担持部表面に修復不可能な欠陥が生じやすい問題がある。前述の通り、チャージアップ現象は弾性ブレードの先端で生じやすく、このため、感光層の絶縁破壊も弾性ブレードの先端部分の稜線部で特に発生しやすい。また、画像形成装置に備えられた現像装置内の現像剤にチャージアップ現象が生じた場合、経時的な画像濃度の低下が生じる問題もある。
【0010】
また、絶縁破壊による潜像担持部表面の欠陥の発生は、潜像担持部の表面の針耐圧(V)に大きく影響される。ここで、アモルファスシリコンからなる感光層の膜厚と針耐圧との関係を示す図1によれば、針耐圧は、膜厚の減少に伴い低下し、例えば、膜厚30μm以下では、針耐圧が約2kV以下となることが分かる。このように、膜厚30μm以下のアモルファスシリコンからなる感光層を備える潜像担持部は、極めて絶縁破壊されやすい。
【0011】
このため、アモルファスシリコンからなる薄膜の感光層を備える潜像担持部と、弾性ブレードとを組み合わせて備える画像形成装置における、チャージアップ現象を抑制する方法について種々の方法が提案されている。具体的には、各頂点及び稜線が曲面状であり、特定の平均粒子径を有し、特定の体積固有抵抗値を示す磁性粉を結着樹脂中に含有する磁性トナーを使用する方法(特許文献1)や、遊離磁性粉を含むトナーを用いる方法(特許文献2)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−206530号公報
【特許文献2】特開2003−149857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、特許文献1に記載の方法は、1成分磁性現像剤に関する方法であり、2成分現像剤、特に磁性粉による色濁りをきらうカラー現像剤に適用できない。また、特許文献2に記載の方法では、遊離した磁性粉は現像スリーブや潜像担持部への付着が懸念される。この場合、ごく微量でも磁性粉の付着が発生すると、それを核として付着が成長し、致命的な画像欠陥を引き起こすことがよく知られている。また、特許文献1と同様に、特許文献2に記載の方法は、磁性粉による色濁りをきらうカラー現像剤には適用できない。
【0014】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備え、潜像担持部における導電性基体の感光層側の表面から潜像担持部の最表面までの距離が30μm以下である画像成形装置において、潜像担持部の絶縁破壊を防止でき、長期間にわたって画像濃度の低下等の画像欠陥の発生を抑制できる、1成分現像剤としても2成分現像剤としても使用可能な静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。また、本発明は、潜像担持部の絶縁破壊を防止でき、長期間にわたって画像濃度の低下等の画像欠陥の発生を抑制できる、前述の画像形成装置による画像形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、少なくとも、レーザ回折法により測定される体積基準の粒度分布において、粒子径1μm以上の範囲に形成される頻度値のピークの頻度値が5%以下であるシリカ粒子を含む静電潜像現像用トナーを用いることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0016】
(1) 導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備え、前記潜像担持部は、前記導電性基体の感光層側の表面から前記潜像担持部の最表面までの距離が30μm以下である、画像形成装置において使用される静電潜像現像用トナーであって、
少なくとも外添剤としてシリカ粒子を含有し、前記シリカ粒子は、レーザ回折法により測定される体積基準の粒度分布において、粒子径1μm以上の範囲に形成される頻度値のピークの頻度値が5%以下である、静電潜像現像用トナー。
【0017】
(2) 前記シリカ粒子が疎水性シリカ粒子である、(1)記載の静電潜像現像用トナー。
【0018】
(3) 前記潜像担持部がアモルファスシリコンドラムである、(1)記載の静電潜像現像用トナー。
【0019】
(4) 導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備え、前記潜像担持部は、前記導電性基体の感光層側の表面から前記潜像担持部の最表面までの距離が30μm以下である画像形成装置において、少なくとも外添剤としてシリカ粒子を含有し、前記シリカ粒子は、レーザ回折法により測定される体積基準の粒度分布において、粒子径1μm以上の範囲に形成される頻度値のピークの頻度値が5%以下である、静電潜像現像用トナーを用いて画像を形成する、画像形成方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部を備え、潜像担持部が弾性ブレードを有するクリーニング部を備え、潜像担持部における導電性基体の感光層側の表面から潜像担持部の感光層側の表面までの距離が30μm以下である画像成形装置において、潜像担持部の絶縁破壊を防止でき、長期間にわたって画像濃度の低下等の画像欠陥の発生を抑制できる、1成分現像剤としても2成分現像剤としても使用可能な静電潜像現像用トナーを提供できる。また、本発明によれば、潜像担持部の絶縁破壊を防止でき、長期間にわたって画像濃度の低下等の画像欠陥の発生を抑制できる、前述の画像形成装置による画像形成方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】アモルファスシリコンからなる感光層の膜厚と針耐圧との関係を示す図である。
【図2】画像形成装置の概略構成を示す断面図である。
【図3】実施例2、実施例3、比較例1、及び比較例3〜5で使用したシリカ粒子の粒子径分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨を限定するものではない。
【0023】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態は、静電潜像現像用トナー(以下、トナーともいう)に関する。第1実施形態にかかる静電潜像現像用トナーは、
導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備え、潜像担持部における導電性基体の感光層側の表面から潜像担持部の最表面までの距離が30μm以下である、画像形成装置において使用される。かかる構成の画像形成装置は、潜像担持部の絶縁破壊や画像濃度の低下等の画像欠陥が生じやすいが、本発明のトナーによれば、潜像担持部の絶縁破壊が防止され、画像欠陥の発生が抑制される。
【0024】
本発明の静電潜像現像用トナーは、結着樹脂に対して、レーザ回折法により測定される体積基準の粒度分布において、粒子径1μm以上の範囲に形成される頻度値のピークの頻度値が5%以下であるシリカ粒子を必須に含有し、必要に応じ、着色剤、電荷制御剤、離型剤、及び、シリカ粒子の他の外添剤等から選択されるトナー成分を含んでいてもよい。
【0025】
以下、本発明の静電潜像現像用トナーについて、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、離型剤、トナー母粒子の製造方法、外添剤、及び外添処理について順に説明する。
【0026】
[静電潜像現像用トナー]
〔結着樹脂〕
静電潜像現像用トナーの粒子を構成する結着樹脂は、従来からトナー粒子の結着樹脂として用いられている樹脂であれば特に制限されない。結着樹脂の具体例としては、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合体、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ビニルエーテル系樹脂、N−ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらの樹脂の中でも、トナー中の着色剤に対する分散性、トナーの帯電性、用紙に対する定着性の面から、ポリスチレン系樹脂、及びポリエステル系樹脂が好ましい。以下、ポリスチレン系樹脂、及びポリエステル系樹脂について説明する。
【0027】
ポリスチレン系樹脂は、スチレンの単独重合体でもよく、スチレンと共重合可能な他の共重合モノマーとの共重合体でもよい。共重合モノマーの具体例としては、p−クロルスチレン;ビニルナフタレン;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフィン類;塩化ビニル、臭化ビニル、弗化ビニル等のハロゲン化ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ドテシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、α−クロルアクリル酸メチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸エステル;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、アクリルアミド等の他のアクリル酸誘導体;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロール、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリデン等のN−ビニル化合物等が挙げられる。これらの共重合モノマーは、2種以上を組み合わせてスチレン単量体と共重合できる。
【0028】
ポリエステル系樹脂は、アルコール成分とカルボン酸成分との縮重合ないし共縮重合によって得られるものを使用することができる。ポリエステル系樹脂を合成する際に用いられる成分としては、以下のアルコール成分やカルボン酸成分が挙げられる。
【0029】
2価又は3価以上のアルコール成分の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のジオール類;ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等のビスフェノール類;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の3価以上のアルコール類が挙げられる。
【0030】
2価又は3価以上のカルボン酸成分の具体例としては、マレイン酸、フマール酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、あるいはn−ブチルコハク酸、n−ブテニルコハク酸、イソブチルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、イソドデシルコハク酸、イソドデセニルコハク酸等のアルキル又はアルケニルコハク酸等の2価カルボン酸;1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等の3価以上のカルボン酸等が挙げられる。これらの2価又は3価以上のカルボン酸成分は、酸ハライド、酸無水物、低級アルキルエステル等のエステル形成性の誘導体として用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素原子数1から6のアルキル基を意味する。
【0031】
結着樹脂がポリエステル樹脂である場合の、ポリエステル樹脂の軟化点は、80〜150℃であることが好ましく、90〜140℃がより好ましい。
【0032】
結着樹脂としては、定着性が良好であることから熱可塑性樹脂を用いることが好ましいが、熱可塑性樹脂単独で使用するだけでなく、熱可塑性樹脂に架橋剤や熱硬化性樹脂を添加することができる。結着樹脂内に一部架橋構造を導入することにより、定着性を低下させることなく、トナーの保存安定性、形態保持性、耐久性等を向上させることができる。
【0033】
熱可塑性樹脂と共に使用できる熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂やシアネート系樹脂が好ましい。好適な熱硬化性樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリアルキレンエーテル型エポキシ樹脂、環状脂肪族型エポキシ樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。これらの熱硬化性樹脂は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0034】
結着樹脂のガラス転移点(Tg)は、50〜65℃が好ましく、50〜60℃がより好ましい。結着樹脂のガラス転移点が低すぎる場合、画像形成装置の現像部の内部でトナー同士が融着したり、保存安定性の低下により、トナー容器の輸送時や倉庫等での保管時にトナー同士が一部融着したりする場合がある。また、ガラス転移点が高すぎる場合、結着樹脂の強度が低下し、潜像担持部にトナーが付着しやすい。ガラス転移点が高すぎる場合、トナーの低温定着性が低下する傾向がある。
【0035】
なお、結着樹脂のガラス転移点は、示差走査熱量計(DSC)を用いて、比熱の変化点から求めることができる。より具体的には、測定装置としてセイコーインスツルメンツ株式会社製示差走査熱量計DSC−6200を用い、吸熱曲線を測定することで求めることができる。測定試料10mgをアルミパン中に入れ、リファレンスとして空のアルミパンを使用し、測定温度範囲25〜200℃、昇温速度10℃/minで常温常湿下にて測定して得られた吸熱曲線よりガラス転移点を求めることができる。
【0036】
〔着色剤〕
トナーに含まれる着色剤は、トナー粒子の色に合わせて、公知の顔料や染料を用いることができる。トナーに添加する好適な着色剤の具体例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ランプブラック、アニリンブラック等の黒色顔料;黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレーキ等の黄色顔料;赤口黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジGK等の橙色顔料;ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B等の赤色顔料;マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等の紫色顔料;紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC等の青色顔料;クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等の緑色顔料;亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等の白色顔料;バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等の体質顔料が挙げられる。これらの着色剤は、トナーを所望の色相に調整する目的等で2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0037】
着色剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的には、結着樹脂100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、3〜7質量部がより好ましい。
【0038】
〔電荷制御剤〕
電荷制御剤は、帯電レベルや、所定の帯電レベルに短時間で帯電可能か否かの指標となる帯電立ち上がり特性を向上させ、耐久性や安定性に優れたトナーを得る目的で使用される。トナーを正帯電させて現像を行う場合、正帯電性の電荷制御剤が使用され、トナーを負帯電させて現像を行う場合、負帯電性の電荷制御剤が使用される。
【0039】
電荷制御剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来よりトナーに使用されている電荷制御剤から適宜選択できる。正帯電性の電荷制御剤の具体例としては、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、オルトオキサジン、メタオキサジン、パラオキサジン、オルトチアジン、メタチアジン、パラチアジン、1,2,3−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,3,5−トリアジン、1,2,4−オキサジアジン、1,3,4−オキサジアジン、1,2,6−オキサジアジン、1,3,4−チアジアジン、1,3,5−チアジアジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、1,2,4,6−オキサトリアジン、1,3,4,5−オキサトリアジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等のアジン化合物;アジンファストレッドFC、アジンファストレッド12BK、アジンバイオレットBO、アジンブラウン3G、アジンライトブラウンGR、アジンダークグリ−ンBH/C、アジンディ−プブラックEW、及びアジンディーブラック3RL等のアジン化合物からなる直接染料;ニグロシン、ニグロシン塩、ニグロシン誘導体等のニグロシン化合物;ニグロシンBK、ニグロシンNB、ニグロシンZ等のニグロシン化合物からなる酸性染料;ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩類;アルコキシル化アミン;アルキルアミド;ベンジルメチルヘキシルデシルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの正帯電性の電荷制御剤の中では、より迅速な立ち上がり性が得られる点で、ニグロシン化合物が特に好ましい。これらの正帯電性の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0040】
4級アンモニウム塩、カルボン酸塩、又はカルボキシル基を官能基として有する樹脂も正帯電性の電荷制御剤として使用できる。より具体的には、4級アンモニウム塩を有するスチレン系樹脂、4級アンモニウム塩を有するアクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、4級アンモニウム塩を有するポリエステル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン系樹脂、カルボン酸塩を有するアクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボン酸塩を有するポリエステル系樹脂、カルボキシル基を有するポリスチレン系樹脂、カルボキシル基を有するアクリル系樹脂、カルボキシル基を有するスチレン−アクリル系樹脂、カルボキシル基を有するポリエステル系樹脂等の1種又は2種以上が挙げられる。これらの樹脂の分子量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、オリゴマーであってもポリマーであってもよい。
【0041】
正帯電性の電荷制御剤として使用できる樹脂の中では、帯電量を所望の範囲内の値に容易に調節することができる点から、4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系共重合樹脂がより好ましい。4級アンモニウム塩を官能基として有するスチレン−アクリル系共重合樹脂において、スチレン単位と共重合させる好ましいアクリル系コモノマーの具体例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸iso−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸iso−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸iso−ブチル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0042】
また、4級アンモニウム塩としては、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ジアルキル(メタ)アクリルアミド、又はジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドから第4級化の工程を経て誘導される単位が用いられる。ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートの具体例としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、ジアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としてはジメチルメタクリルアミドが挙げられ、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドの具体例としては、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドが挙げられる。また、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシ基含有重合性モノマーを重合時に併用することもできる。
【0043】
負帯電性の電荷制御剤の具体例としては、例えば、有機金属錯体、キレート化合物等が挙げられる。有機金属錯体、及びキレート化合物としては、アルミニウムアセチルアセトナートや鉄(II)アセチルアセトナート等のアセチルアセトン金属錯体、及び、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸クロム等のサリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩が好ましく、サリチル酸系金属錯体又はサリチル酸系金属塩がより好ましい。これらの負帯電製の電荷制御剤は、2種以上を組み合わせて使用できる。
【0044】
正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。正帯電性又は負帯電性の電荷制御剤の使用量は、典型的には、トナー全量を100質量部とした場合に、1.5〜15質量部が好ましく、2.0〜8.0質量部がより好ましく、3.0〜7.0質量部が特に好ましい。電荷制御剤の使用量が過少である場合、所定の極性にトナーを安定して帯電させ難いため、画像濃度の低下や、画像濃度の維持性が低下しやすくなる(画像濃度を長期にわたって維持することが困難になる)。また、かかる場合、電荷制御剤が均一に分散し難く、カブリや潜像担持部の汚染が起こりやすくなる。電荷制御剤の使用量が過多である場合、耐環境性の悪化による、高温高湿下での帯電不良、及び画像不良や、潜像担持部の汚染等が起こりやすくなる。
【0045】
〔離型剤〕
本発明のトナーは、定着性や耐オフセット性を向上させる目的で、離型剤を含んでいてもよい。トナーに添加する離型剤の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。離型剤としてはワックスが好ましく、ワックスの例としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フッ素樹脂系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、エステルワックス、モンタンワックス、ライスワックス等が挙げられる。これらのワックスは2種以上を組み合わせて使用できる。かかる離型剤をトナーに添加することにより、オフセットや像スミアリング(画像をこすった際の画像周囲の汚れ)の発生をより効率的に抑制することができる。
【0046】
離型剤の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。具体的な離型剤の使用量は、トナー全量を100質量部とした場合に、1〜5質量部が好ましい。離型剤の使用量が過少である場合、オフセットや像スミアリングの発生の抑制について所望の効果が得られない場合があり、離型剤の使用量が過多である場合、トナー同士の融着によって保存安定性が低下する場合がある。
【0047】
〔トナー母粒子の製造方法〕
本発明のトナーの調製に用いられるトナー母粒子の製造方法は、結着樹脂と、以上説明した、着色剤、電荷制御剤、離型剤等の成分とを混合機等により混合後し、次いで、押出機等の混練機により溶融混練した後に、混練物を冷却し、これを粉砕・分級して得られる。トナー母粒子の平均粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、一般的には、5〜10μmが好ましい。
【0048】
〔外添剤〕
本発明の静電潜像現像用トナーは、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させることにより得られる。本発明では、外添剤として、レーザ回折法により測定される体積基準の粒度分布において、粒子径1μm以上の範囲に形成される頻度値のピークの頻度値が5%以下であるシリカ粒子を必須に用いる。
【0049】
粒子径1μm以上の範囲に形成される頻度値のピークの頻度値を5%以下とすることにより、クリーニング部の弾性ブレードの先端付近に滞留した、転写残の廃棄トナー中の凝集したシリカ粒子への過度の電荷の蓄積が抑制される。その結果、リーク現象が発生しにくく、アモルファスシリコンからなる感光層の絶縁破壊の発生が防止されるため、画像欠陥である黒点画像も発生しにくくなる。
【0050】
また、シリカ粒子の粒子径1μm以上の範囲の頻度の累積値は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、60%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。粒子径1μm以上の範囲の頻度の累積値がかかる範囲である場合、潜像保持体の絶縁破壊の防止により、黒点等の画像欠陥の発生をより抑制しやすくなる。
【0051】
シリカ粒子の粒子径分布は、例えばLA−950(株式会社堀場製作所製)等のレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定できる。具体的な測定方法は、以下の通りである。
【0052】
(粒子径分布測定方法)
試料0.1gを測り取り、溶媒としてメタノールを100ml使用し、メタノールが入っているサンプルホルダーに試料を少しずつ入れ、撹拌する。メタノール中の試料を超音波浴にて分散、撹拌し、試料の懸濁液を循環ポンプで循環させて、レーザ照射部に注入する。次いで、光源としてHe−Neレーザを使用し、照射されたレーザのビーム径をビーム拡大器で拡大してレーザ照射部に照射し、回折光を集光レンズを通して検出器で検出する。検出された回折光は、AD変換器にて電気信号に変換され、装置制御・演算部にて電気信号を処理して、粒度分布を算出する。
【0053】
シリカ粒子の粒度分布を所望の範囲に調整する方法は特に限定されない。所望の粒子径のシリカの好適な調製方法としては、例えば、以下の1)〜3)の方法が挙げられる。
1)粒子径1μm以上の粒子を分級により減らす方法。
2)分級により粒子径1μm以上の粒子を減らしたシリカ粒子を、粒度分布が調整されていないシリカ粒子に混合する方法。
3)従来知られる解砕装置を用いてシリカ粒子を解砕した後、必要に応じて分級装置により分級する方法。
これらの方法の中では、所望の粒子径のシリカ粒子の回収率が高い点で、3)の方法がより好ましい。解砕装置としては、例えばIDS−2(日本ニューマチック工業株式会社製)等のジェットミルを用いることができる。また、分級装置としては、例えばDSX−2(日本ニューマチック工業株式会社製)等の気流式分級機を用いることができる。
【0054】
シリカ粒子のトナー母粒子への添加量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。シリカ粒子の添加量は、典型的には、トナー母粒子100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。かかる範囲の量でシリカを使用する場合、流動性、保存安定性、クリーニング性に優れるトナーを得やすい。
【0055】
シリカ粒子は、疎水化処理剤で表面処理された疎水化シリカとして用いることができる。疎水化処理されたシリカを用いる場合、高温高湿条件下での帯電量の低下が抑制され、流動性に優れるトナーを得やすい。疎水化処理剤としては、例えば、アミノシランカップリング剤を用いることができる。アミノシランカップリング剤の具体例としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。疎水化効果を補う為に、アミノシランカップリング剤と、アミノシランカップリング剤以外の疎水化処理剤とを併用できる。アミノシランカップリング剤以外の疎水化処理剤としては、疎水化効果、及びトナーの流動性の改良効果に優れることから、ヘキサメチルジシラザンを用いるのが好ましい。
【0056】
シリコーンオイルもまた、シリカ粒子の疎水化処理剤として使用できる。シリコーンオイルの種類は、所望の疎水化効果が得られる限り、特に限定されず、従来から疎水化処理剤として用いられている種々のシリコーンオイルを使用できる。シリコーンオイルとしては、直鎖シロキサン構造を有するものが好ましく、非反応性シリコーンオイル、反応性シリコーンオイルの何れも使用できる。シリコーンオイルの具体例としては、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、クロロフェニルシリコーンオイル、アルキルシリコーンオイル、クロロシリコーンオイル、ポリオキシアルキレン変性シリコーンオイル、脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、メチル水素シリコーンオイル、シラノール基含有シリコーンオイル、アルコキシ基含有シリコーンオイル、アセトキシ基含有シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、カルボン酸変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0057】
シリカ粒子の疎水化処理の方法としては、シリカ粒子を高速で撹拌しながら、疎水化処理剤であるアミノシラン、シリコーンオイル等を滴下又は噴霧する方法、撹拌されている疎水化処理剤の有機溶剤溶液中にシリカ粒子を添加する方法が挙げられる。疎水化処理後に加熱することにより疎水化処理されたシリカ粒子が得られる。疎水化処理剤を滴下又は噴霧する場合、疎水化処理剤は、そのまま、又は、有機溶剤等により希釈して用いることができる。
【0058】
〔外添処理〕
トナー母粒子を外添剤により処理することにより、本発明の静電潜像現像用トナーが製造される。外添剤によるトナー母粒子の処理方法は特に限定されず、従来知られる方法に従ってトナー母粒子を処理できる。具体的には、外添剤の粒子がトナー母粒子に埋め込まれないように処理条件を調整し、ヘンシェルミキサーやナウターミキサー等の混合機によって、外添剤による処理が行われる。
【0059】
このようにして調製された静電潜像現像用トナーは、そのまま1成分現像剤として使用できる。また、静電潜像現像用トナーを所望のキャリアと混合して2成分現像剤として使用することもできる。2成分現像剤を調製する場合、磁性キャリアを用いるのが好ましい。
【0060】
本発明の静電潜像現像用トナーを2成分現像剤とする場合の好適なキャリアとしては、キャリア芯材が樹脂により被覆されたものが挙げられる。キャリア芯材の具体例としては、鉄、酸化処理鉄、還元鉄、マグネタイト、銅、ケイ素鋼、フェライト、ニッケル、コバルト等の粒子や、これらの材料とマンガン、亜鉛、アルミニウム等との合金の粒子、鉄−ニッケル合金、鉄−コバルト合金等の粒子、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化銅、酸化マグネシウム、酸化鉛、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、チタン酸マグネシウム、チタン酸バリウム、チタン酸リチウム、チタン酸鉛、ジルコン酸鉛、ニオブ酸リチウム等のセラミックスの粒子、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、ロッシェル塩等の高誘電率物質の粒子、樹脂中に上記磁性粒子を分散させた樹脂キャリア等が挙げられる。
【0061】
キャリア芯材を被覆する樹脂の具体例としては、(メタ)アクリル系重合体、スチレン系重合体、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体、オレフィン系重合体(ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、セルロース樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等)、フェノール樹脂、キシレン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリアセタール樹脂、アミノ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0062】
キャリアの粒子径は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、電子顕微鏡により測定される粒子径で、20〜200μmが好ましく、30〜150μmがより好ましい。
【0063】
キャリアの見掛け密度は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。見掛け密度は、キャリアの組成や表面構造によって異なるが、典型的には、2.4×10〜3.0×10kg/cmが好ましい。
【0064】
本発明の静電潜像現像用トナーを2成分現像剤として用いる場合、トナーの含有量は、2成分現像剤の質量に対して、1〜20質量%が好ましく、3〜15質量%が好ましい。2成分現像剤におけるトナーの含有量をかかる範囲とすることにより、適度な画像濃度を維持し、トナー飛散の抑制によって画像形成装置内部の汚染や転写紙等へのトナーの付着を抑制できる。
【0065】
[第2実施形態]
本発明の、第2実施形態は、導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備え、前記潜像担持部は、前記導電性基体の感光層側の表面から前記潜像担持部の最表面までの距離が30μm以下である画像形成装置において、第1実施形態にかかる静電潜像現像用トナーを用いて画像を形成する、画像形成方法に関する。以下、本発明の第2実施形態にかかる、画像形成方法について説明する。
【0066】
第2実施形態にかかる画像形成方法において用いる画像形成装置は、導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備え、潜像担持部における導電性基体の感光層側の表面から潜像担持部の最表面までの距離が30μm以下である限り特に限定されないが、後述するような、複数色のトナーを用いるタンデム方式のカラー画像形成装置が好ましい。ここでは、タンデム方式のカラー画像形成装置による画像形成方法について説明する。
【0067】
なお、以下に説明するタンデム方式のカラー画像形成装置は、各表面上にそれぞれ異なった各色のトナーによるトナー像を形成させるために、所定方向に並設された、複数の潜像担持部と、各潜像担持部に対向して配置され、表面にトナーを担持して搬送し、搬送されたトナーを、各潜像担持部の表面にそれぞれ供給する現像ローラを備えた複数の現像部とを備え、現像部において、本発明の静電潜像現像用トナーを供給する。
【0068】
図2は、第2実施形態にかかる画像形成方法において用いる、好適な画像形成装置の構成を示す概略図である。ここでは、画像形成装置として、カラープリンタ1を例に挙げて説明する。
【0069】
このカラープリンタ1は、図2に示すように、箱型の機器本体1aを有している。この機器本体1a内には、用紙Pを給紙する給紙部2と、この給紙部2から給紙された用紙Pを搬送しながら当該用紙Pに画像データ等に基づくトナー像を転写する画像形成部3と、この画像形成部3で用紙P上に転写された未定着トナー像を用紙Pに定着する定着処理を施す定着部4とが設けられている。さらに、機器本体1aの上面には、定着部4で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部5が設けられている。
【0070】
給紙部2は、給紙カセット121、ピックアップローラ122、給紙ローラ123,124,125、及びレジストローラ対126を備えている。給紙カセット121は、機器本体1aから挿脱可能に設けられ、各サイズの用紙Pを貯留する。ピックアップローラ122は、給紙カセット121の図2に示す左上方位置に設けられ、給紙カセット121に貯留されている用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラ123,124,125は、ピックアップローラ122によって取り出された用紙Pを用紙搬送路に送り出す。レジストローラ126は、給紙ローラ123,124,125によって用紙搬送路に送り出された用紙Pを一時待機させた後、所定のタイミングで画像形成部3に供給する。
【0071】
また、給紙部2は、機器本体1aの図2に示す左側面に取り付けられる不図示の手差しトレイとピックアップローラ127とをさらに備えている。このピックアップローラ127は、手差しトレイに載置された用紙Pを取り出す。ピックアップローラ127によって取り出された用紙Pは、給紙ローラ123,125によって用紙搬送路に送り出され、レジストローラ126によって、所定のタイミングで画像形成部3に供給される。
【0072】
画像形成部3は、画像形成ユニット7と、この画像形成ユニット7によってその表面(接触面)にコンピュータ等から電送された画像データに基づくトナー像が1次転写される中間転写ベルト31と、この中間転写ベルト31上のトナー像を給紙カセット121から送り込まれた用紙Pに2次転写させるための2次転写ローラ32とを備えている。
【0073】
画像形成ユニット7は、上流側(図2では右側)から下流側に向けて順次配設されたブラック用ユニット7Kと、イエロー用ユニット7Yと、シアン用ユニット7Cと、マゼンタ用ユニット7Mとを備えている。各ユニット7K,7Y,7C及び7Mは、それぞれの中央位置に像担持体であるドラム型の潜像担持部37が矢符(時計回り)方向に回転可能に配置されている。そして、各潜像担持部37の周囲には、帯電部39、露光部38、現像部71、クリーニング部8、及び除電器等が、回転方向上流側から順に各々配置されている。
【0074】
帯電部39は、矢符方向に回転されている潜像担持部37の周面を均一に帯電させる。帯電部39は、潜像担持部37の周面を均一に帯電させることができれば特に制限されず、非接触方式であっても接触方式であってもよい。帯電部の具体例としては、コロナ帯電装置、帯電ローラ、帯電ブラシ等が挙げられる。
【0075】
潜像担持部37の表面電位(帯電電位)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。本発明の静電潜像現像用トナーは、導電性基体の感光層側の表面から潜像担持部37の感光層側の表面までの距離が30μm以下である、感光層が薄く、帯電能力の低い潜像担持部37と組み合わせて使用される。このため、現像性と潜像担持部37の帯電能力とのバランスを考慮すると、表面電位は+200〜+500Vであるのが好ましく、+200V〜+300Vであるのがより好ましい。表面電位が低すぎる場合、現像電界が不十分となり、画像濃度を確保し難くなる。表面電位が高すぎる場合、感光層の膜厚によっては帯電能力が不足、潜像担持部37の絶縁破壊、オゾンの発生量が増加等の問題が起こりやすくなる。
【0076】
潜像担持部37は、ドラム状の導電性基体上にアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている。アモルファスシリコンからなる感光層は、例えば、グロー放電分解法、スパッタリング法、ECR法、蒸着法等の気相成長法によって形成することができる。アモルファスシリコンからなる感光層を形成する際には、感光層に、Hやハロゲン元素を含有させることができる。また、感光層の特性を調整するために、C、N、O等の元素を含有させたり、周期表(長周期型)の13族元素や15族元素を感光層に含有させたりしてもよい。
【0077】
アモルファスシリコンからなる感光層を構成する材料は、アモルファスシリコンであれば特に限定されない。好適なアモルファスシリコン材料としては、アモルファスSi、アモルファスSiC、アモルファスSiO、アモルファスSiON等が挙げられる。これらのアモルファスシリコン材料の中では、高抵抗であり、帯電特性、耐摩耗性、耐環境性に優れることからアモルファスSiCがより好ましい。また、アモルファスシリコン材料としてアモルファスSiCを用いる場合、アモルファスSi(1−X)(Xは0.3以上1未満)が好ましく、アモルファスSi(1−X)(Xは0.5以上0.95以下)がより好ましい。かかる組成のアモルファスSiCは、1012〜1013Ωcmと極めて高い抵抗値を示すため、潜像担持部37の潜像電荷の流れを抑制でき、静電潜像の維持能力に優れる潜像担持部37が得られる。また、かかる組成のアモルファスSiCを用いることにより、耐湿性に優れる潜像担持部37が得られる。
【0078】
感光層は、導電性基体上に形成されたキャリア素子層の上に形成してもよい。また、感光層の表面には表面保護層を設けてもよい。潜像担持部37としては、導電性基体、キャリア阻止層、感光層、表面保護層の順に積層されたものが特に好適に使用される。
【0079】
表面保護層を設ける場合、帯電部39による放電時の、アモルファスシリコンかなる感光層の表面での、放電生成物や水分子等を吸着しやすい酸化物の皮膜の形成を抑制できる。また、表面保護層を設けることにより、潜像担持部37の、絶縁耐圧の向上、及び繰り返し使用時の耐摩耗性の向上を図れる。表面保護層の材料としては、アモルファスSiC、アモルファスSiO、アモルファスSiN、アモルファスSiON、アモルファスSiCON等の無機絶縁材料が挙げられる。
【0080】
表面保護層の膜厚は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、20000Å以下が好ましく、5000〜15000Åがより好ましい。表面保護層の膜厚をかかる範囲とすることで、耐圧性能が劣化し難い潜像担持部37を優れた効率で生産できる。
【0081】
キャリア阻止層を設ける場合、現像時に、アモルファスシリコンからなる感光層へのキャリアの注入を阻止して露光部と非露光部との静電コントラストを高めることにより、画像の濃度向上、地肌カブリの低減を図れる。キャリア阻止層の材料としては、アモルファスSiC、アモルファスSiO、アモルファスSiN、アモルファスSiON、アモルファスSiCON等の無機絶縁材料や、ポリエチレンテレフタレート、パリレン(登録商標)、ポリ四フッ化エチレン、ポリイミド、ポリフッ化エチレンプロピレン、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、酢酸セルロール樹脂等の有機絶縁材料が挙げられる。
【0082】
キャリア阻止層の膜厚は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、0.01〜5μmが好ましく、0.1〜3μmがより好ましい。キャリア阻止層が薄すぎる場合には、所望のキャリア阻止効果を得にくく、キャリア阻止層が厚すぎる場合には、製膜に長時間を要し、潜像担持部37の生産性が低下するおそれがある。
【0083】
潜像担持部37は、導電性基体の感光層側の表面から潜像担持部37の最表面までの距離が30μm以下であるものを用いる。潜像担持部37をかかる構成とすることにより、潜像担持部37の製造コストを低減できると共に、高解像度の画像を形成できる。なお、潜像担持体の最表面とは、表面保護層が形成されている場合は表面保護層の表面であり、表面保護層が形成されていない場合は感光層の表面である。また、導電性基体の感光層側の表面から潜像担持部37の最表面までの距離とは、キャリア阻止層、感光層、及び表面保護層の厚さの合計である。
【0084】
潜像担持部37の、導電性基体の感光層側の表面から潜像担持部37の感光層側の表面までの距離の下限は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されないが、10μm以上が好ましい。距離が短すぎる場合には、潜像担持部37の帯電性能が不十分であったり、露光に用いるレーザ光の乱反射により、ハーフパターンに干渉縞が生じたりする場合がある。
【0085】
露光部38は、いわゆるレーザ走査ユニットであり、帯電部39によって均一に帯電された潜像担持部37の周面に、上位装置であるパーソナルコンピュータ(PC)から入力された画像データに基づくレーザ光を照射し、潜像担持部37上に画像データに基づく静電潜像を形成する。現像部71は、静電潜像が形成された潜像担持部37の周面に本発明の静電潜像現像用トナーを供給することで、画像データに基づくトナー像を形成させる。現像部71の構成は、現像剤の種類、及び現像方式によって適宜変更される。現像部71により潜像担持部37の周面に形成されたトナー像は、中間転写ベルト31に1次転写される。
【0086】
中間転写ベルト31へのトナー像の1次転写が終了した後、潜像担持部37の周面に残留しているトナーをクリーニング部8により清掃する。クリーニング部8は、弾性ブレード81を備え、弾性ブレード81により潜像担持部37の周面に残留するトナーを除去する。弾性ブレードはウレタン系スポンジやエチレン−プロピレン系ゴム等により構成される。第2実施形態の画像形成方法では、第1実施形態にかかるトナーを用いているため、画像形成装置が弾性ブレード81を有するクリーニング8を備えていても、薄膜のアモルファスシリコンからなる感光層を備える潜像担持部の表面における、弾性ブレード81先端付近での絶縁破壊が防止される。
【0087】
除電器は、1次転写が終了した後、潜像担持部37の周面を除電する。クリーニング部8及び除電器によって清浄化処理された潜像担持部37の周面は、新たな帯電処理のために帯電部39へ向かい、新たな帯電処理が行われる。
【0088】
中間転写ベルト31は、無端状のベルト状回転体であって、表面(接触面)側が各潜像担持部37の周面にそれぞれ当接するように駆動ローラ33、従動ローラ34、バックアップローラ35、及び1次転写ローラ36等の複数のローラに架け渡されている。また、中間転写ベルト31は、各潜像担持部37と対向配置された1次転写ローラ36によって潜像担持部37に押圧された状態で、複数のローラによって無端回転するように構成されている。駆動ローラ33は、不図示のステッピングモータ等の駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト31を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラ34、バックアップローラ35、及び1次転写ローラ36は、回転自在に設けられ、駆動ローラ33による中間転写ベルト31の無端回転に伴って従動回転する。これらのローラ34,35,36は、駆動ローラ33の主動回転に応じて中間転写ベルト31を介して従動回転すると共に、中間転写ベルト31を支持する。
【0089】
1次転写ローラ36は、1次転写バイアス(トナーの帯電極性とは逆極性)を中間転写ベルト31に印加する。そうすることによって、各潜像担持部37上に形成されたトナー像は、各潜像担持部37と1次転写ローラ36との間で、駆動ローラ33の駆動により矢符(反時計回り)方向に周回する中間転写ベルト31に重ね塗り状態で順次転写(1次転写)される。
【0090】
2次転写ローラ32は、トナー像と逆極性の2次転写バイアスを用紙Pに印加する。そうすることによって、中間転写ベルト31上に1次転写されたトナー像は、2次転写ローラ32とバックアップローラ35との間で用紙Pに2次転写され、これによって、用紙Pにカラーの転写画像(未定着トナー像)が転写される。
【0091】
定着部4は、画像形成部3で用紙Pに転写された転写画像に定着処理を施すものであり、通電発熱体により加熱される加熱ローラ41と、この加熱ローラ41に対向配置され、周面が加熱ローラ41の周面に押圧当接される加圧ローラ42とを備えている。
【0092】
そして、画像形成部3で2次転写ローラ32により用紙Pに転写された転写画像は、当該用紙Pが加熱ローラ41と加圧ローラ42との間を通過する際の加熱及び加圧による定着処理で用紙Pに定着される。そして、定着処理の施された用紙Pは、排紙部5へ排紙されるようになっている。また、本実施形態のカラープリンタ1では、定着部4と排紙部5との間の適所に搬送ローラ対6が配設されている。
【0093】
排紙部5は、カラープリンタ1の機器本体1aの頂部が凹没されることによって形成され、この凹没した凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ51が形成されている。
【0094】
カラープリンタ1は、以上のような画像形成動作によって、用紙P上に画像形成を行う。そして、上記の構成のタンデム方式の画像形成装置により、第1実施形態にかかる静電潜像現像用トナーを用いて現像を行う場合、弾性ブレード81を備え、導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部37を具備するという、非常に潜像担持部37でのチャージアップ現象が生じやすい構成であるにもかかわらず、潜像担持部37の絶縁破壊を防止でき、長期間にわたり高品質の画像を形成できる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は実施例により何ら限定されるものではない。
【0096】
〔実施例1〜3、及び比較例1〜5〕
<ポリエステル樹脂製造例>
実施例、及び比較例において結着樹脂として使用するポリエステル樹脂を以下の処方に従い製造した。
ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物1,960g、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物780g、ドデセニル無水コハク酸257g、テレフタル酸770、及び酸化ジブチル錫4gを反応容器に仕込んだ。窒素雰囲気下で235℃まで昇温し、同温度で8時間反応を行った後、8.3kPaに減圧して同温度で1時間反応を行った。次いで、反応生成物を180℃まで冷却した後、無水トリメリット酸を添加してポリエステル樹脂の酸価を所望の値に調整した。その後、10℃/時間の速度で210℃まで昇温し、同温度で反応を行い、ポリエステル樹脂Aを得た。
【0097】
〔トナー母粒子製造〕
ポリエステル樹脂A87質量部、離型剤(エステルワックスWEP−3:日油株式会社製)5質量部、正帯電性電荷制御剤(ボントロンP−51(4級アンモニウム塩):オリヱント化学工業株式会社製)3質量部、及びカーボンブラック(MA−100:三菱化学株式会社製)5質量部を、ヘンシェルミキサーにて混合した。得られた混合物を2軸押出機にて溶融混練した後に冷却し、ハンマーミルにて粗粉砕した。粗粉砕された粉体を機械式粉砕機にてさらに微粉砕した後に、気流式分級機により分級し、体積平均粒径7.0μmのトナー母粒子を得た。
【0098】
〔シリカ粒子調製〕
ジェットミルIDS−2型(日本ニューマチック工業株式会社製)を用いて、未解砕シリカ粒子(RA−90、日本アエロジル株式会社製)を表1に示す粒度になるように解砕して、外添剤として用いるシリカ粒子を調製した。具体的には、投入量3kg/h、粉砕Air圧力0.5MPa(G)の条件下でシリカ粒子を解砕して、1μm以上のピーク値の頻度が0.5%である実施例1で用いたシリカ粒子を得た。実施例2、実施例3、及び比較例1〜5で用いたシリカ粒子も、未解砕シリカ粒子の投入量、粉砕Air圧を調整する他は、実施例1で用いたシリカ粒子と同様に調製した。得られたシリカ粒子の粒子径分布を、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA−950、株式会社堀場製作所製)を用いて測定した。得られたシリカ粒子の、1μm以上の範囲に形成される頻度値のピークの頻度値、を表1に記す。実施例2、実施例3、比較例1、及び比較例3〜5で使用したシリカ粒子の粒子径分布のグラフを図3に示す。
【0099】
〔2成分現像剤調製〕
トナー母粒子の質量に対して、1.5質量%の所望の粒子径、及び粒子径分布に調整されたシリカ粒子と、0.5質量%の酸化チタン(ST−100、チタン工業株式会社製)とを添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、シリカ粒子及び酸化チタンをトナー母粒子の表面に付着させて静電潜像現像用トナーを調製した。キャリアと、キャリア(フェライトキャリア(平均粒子径45μm、パウダーテック株式会社製))の質量に対して8質量%の静電潜像現像用トナーとを、ボールミルにより30分間混合して、2成分現像剤を調製した。
【0100】
上記の処方により得られた2成分現像剤を用いて、潜像担持部をクリーニングする弾性ブレードを備える京セラミタ株式会社製ページプリンタ(FS−C5400DN)を用いて、初期画像、及び印字率0.1%で10万枚印字を行う耐久試験後の耐久後画像の画像特性の評価を行った。また、1000枚印字後に、全面白紙画像を出力し、白紙画像の目視観察により、潜像担持部の絶縁破壊の状態を評価した。さらに、初期と耐久試験後のトナーの帯電量の測定をし、トナーの帯電特定を評価した。現像剤の調製に用いたシリカの1μm以上のピーク値の頻度(%)を表1に示し、現像剤の帯電特性、画像特性、及び絶縁破壊の評価結果を表2に示す。なお、実施例1〜3、及び比較例1〜3では膜厚14μmのアモルファスシリコンドラムを潜像担持部として用い、比較例4では、単層型の有機光導電体(OPC)ドラムを潜像担持部として用い、比較例5では、膜厚50μmのアモルファスシリコンドラムを潜像担持部として用いた。また、比較例4、及び比較例5では、潜像担持部の絶縁破壊のみ評価した。
【0101】
実施例1〜3、及び比較例1〜5の2成分現像剤の各特性の評価方法を以下に記す。
【0102】
<帯電特性>
上記、初期の2成分現像剤中のトナーの帯電量(μC/g)を初期帯電量とした。また、上記ページプリンタを用いて、10万枚連続通紙(印字率0.1%)を行った後の2成分現像剤中のトナーの帯電量を耐久試験後の帯電量とした。初期、及び耐久試験後の2成分現像剤中のトナーの帯電量はTRek社製帯電量測定装置(Q/M Meter 210HS)を用いて測定し、その際の質量変化から、現像剤1gあたりの帯電量(μC/g)を求めた。
【0103】
<画像特性>
常温常湿環境(20℃、65%RH)にて初期時に上記ページプリンタにより画像評価パターンを印字して初期画像とし、その後、印字率0.1%で10万枚連続通紙を行い、再度画像評価パターンを印字して耐久後画像とし、それぞれソリッド画像の画像濃度をマクベス反射濃度計(RD914)を用いて測定した。画像濃度1.30以上を良と判定し、画像濃度1.30未満を不良と判定した。
【0104】
<潜像担持部絶縁破壊の状態>
上記ページプリンタを用いて、印字率0.1%で1、000枚印字した後に、白紙画像(A4紙)を出力し、潜像担持部上の絶縁破壊により発生する直径0.1mm以上の黒点の数を目視観察により確認し、下記基準をもとに判定を行った。
○:黒点の数が0個
△:黒点の数が1個以上10個未満
×:黒点の数が10個以上
【0105】
【表1】

【0106】
【表2】

【0107】
実施例1〜3によれば、外添剤のシリカ粒子の粒子径1μm以上の範囲でのピーク値における頻度が5%以下である場合、2成分現像剤中のトナーの初期帯電量と耐久試験後の帯電量に大きな変化はなく、耐久試験後でも画像濃度の低下、及び潜像担持部の絶縁破壊が生じないことが分かる。
【0108】
一方、比較例1〜3によれば、シリカ粒子の粒子径1μm以上の範囲でのピーク値における頻度が5%を超える場合、何れも、耐久試験後の帯電量の増加、及び画像濃度の低下と、潜像担持部の絶縁破壊が生じることが分かる。また、比較例1〜3では、1μm以上の範囲でのピーク値における頻度値の増加に伴い、耐久試験後の帯電量の増加、及び画像濃度の低下が著しくなることが分かる。
【0109】
比較例4、及び5によれば、アモルファスシリコンからなる感光層の膜厚が厚い潜像担持部や有機光導電体(OPC)ドラムからなる潜像担持部を用いる場合、シリカ粒子の粒子径1μm以上の範囲でのピーク値における頻度が10%を超えるような現像剤を用いても潜像担持部の絶縁破壊が生じないことが分かる。これらの結果から、針耐圧の高い、アモルファスシリコンからなる感光層の膜厚が厚い潜像担持部や有機光導電体(OPC)ドラムからなる潜像担持部では、そもそも絶縁破壊が起こり難いといえる。
【符号の説明】
【0110】
1 カラープリンタ
1a 機器本体
2 給紙部
3 画像形成部
37 潜像担持部
38 露光部
39 帯電部
4 定着部
6 搬送ローラ
5 排紙部
7 画像形成ユニット
71 現像部
8 クリーニング部
81 弾性ブレード
P 用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備え、前記潜像担持部は、前記導電性基体の感光層側の表面から前記潜像担持部の最表面までの距離が30μm以下である、画像形成装置において使用される静電潜像現像用トナーであって、
少なくとも外添剤としてシリカ粒子を含有し、前記シリカ粒子は、レーザ回折法により測定される体積基準の粒度分布において、粒子径1μm以上の範囲に形成される頻度値のピークの頻度値が5%以下である、静電潜像現像用トナー。
【請求項2】
前記シリカ粒子が疎水性シリカ粒子である、請求項1記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項3】
前記潜像担持部がアモルファスシリコンドラムである、請求項1記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項4】
導電性基体上に少なくともアモルファスシリコンからなる感光層が形成されている潜像担持部と、弾性ブレードを有するクリーニング部とを備え、前記潜像担持部は、前記導電性基体の感光層側の表面から前記潜像担持部の最表面までの距離が30μm以下である画像形成装置において、少なくとも外添剤としてシリカ粒子を含有し、前記シリカ粒子は、レーザ回折法により測定される体積基準の粒度分布において、粒子径1μm以上の範囲に形成される頻度値のピークの頻度値が5%以下である、静電潜像現像用トナーを用いて画像を形成する、画像形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−155107(P2012−155107A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13513(P2011−13513)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】