説明

静電特性測定装置及び静電特性測定方法

【課題】粉体被接触材料である試料体を小型化しつつ、粉体及び試料体の種類によらず、粉体と試料体との間における静電特性を測定する。
【解決手段】静電特性測定装置1は、回転モータ5により試料体4を回転させて、試料体4の試料層20の水平な表面20aにスクリューフィーダ7により粉体21を供給する。そして、静電特性測定装置1は、回転する試料体4に供給されて、試料体4の試料層20の表面20aと摩擦接触を繰り返しながら遠心力により表面20aから飛散した粉体21の電荷量を電荷量測定装置8により測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体と粉体被接触材料である試料体との間における静電特性を測定する静電特性測定装置及び静電特性測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真分野などのさまざまな分野において、粉体とこの粉体と接触する粉体被接触材料との間における帯電現象を有効に活用している。あるいは、逆に帯電現象が、所定の特性、機能または期待される特性、機能などに対して悪影響を及ぼす要因として問題になることがある。そして、粉体と粉体被接触材料との間における帯電のしやすさ、帯電のしにくさ(ここでは、これらをまとめて静電特性と称す)を把握するために、粉体または粉体被接触材料の電荷量を測定する装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、傾斜状態で保持された粉体接被触材料の試料板に粉体を流しかけて、試料板に接触した後に落下した粉体の電荷量、または、試料板の電荷量を測定する、いわゆるカスケード法を用いた装置が知られている。なお、特許文献1では試料板は、導電性基板上に粉体被接触材料である試料層を形成して構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3686658号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のカスケード法を用いた装置のように、粉体を試料板に流しかけて、試料板の斜面を転がすだけでは、粉体と試料層の種類によっては粉体の転がる距離(時間)が短いため、両者の間において帯電が生じにくい場合があった。また、粉体の種類や湿度などの環境条件によって、試料板に供給された粉体が多数集まってだまになっている状態では、だまの内部に位置する粉体については試料層と接触して帯電しにくい。さらに、だまの表面を形成する粉体についても試料層との接触面積が小さくなり帯電しにくい。このように、粉体と試料板との間において帯電が生じにくい場合には、試料板の斜面の長さを長くし、粉体の転がる距離(時間)を長くすれば、両者の間において帯電を生じさせることが可能かもしれないが、試料板が大型化してしまう。また、試料板を帯電させてその帯電量を測定しようとすると、試料板に大量の粉体を流しかけなければ測定などに必要な十分な電荷量を得るのは困難である。
【0006】
そこで、本発明の目的は、粉体被接触材料である試料体を小型化しつつ、粉体及び試料体の種類によらず、粉体と試料体との間における静電特性を測定する静電特性測定装置及び静電特性測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の静電特性測定装置は、水平な表面を有する粉体被接触材料である試料体と、粉体を前記試料体の前記表面に供給する粉体供給部と、前記試料体を前記表面と直交する軸を中心として回転させる回転駆動手段と、前記回転駆動手段によって回転する前記試料体に接触した粉体、または、前記試料体の電荷量を測定する電荷量測定手段と、を備えている。
【0008】
本発明の静電特性測定装置によると、回転する試料体の表面に供給された粉体は表面との間で摩擦接触を繰り返す。そして、粉体は、試料体の表面を摩擦帯電しながら遠心力で移動する。したがって、カスケード法のように試料体の斜面を粉体が単に転がる場合に比べて、試料体との接触回数が増大して、粉体と試料体との間に生まれる電荷量が増加する。また、例えば、粉体の種類や湿度などの環境条件によって、粉体が多数集まってだまになっている状態で試料体の表面に供給されたとしても、回転する試料体に接触した衝撃と遠心力とで、だまになった粉体をばらばらに崩すことができる。したがって、崩れた各粉体に対して摩擦帯電による電荷量が増加する。これにより、粉体及び試料体の種類によらず、粉体と試料体とを帯電させやくなり、試料体を小型化することができる。また、試料体の帯電量を測定する場合において粉体の供給量を減らすことができる。
【0009】
また、前記電荷量測定手段は、前記回転駆動手段によって前記試料体が回転することで前記表面から飛散した粉体を捕捉する捕捉部材を有しており、前記捕捉部材に捕捉された粉体の電荷量を測定することが好ましい。
【0010】
これによると、試料体の表面に供給された粉体は、試料体が回転することにより、表面と摩擦接触を繰り返しながら、遠心力の作用で表面から飛散する。そして、この飛散した粉体を捕捉して電荷量を測定することで、試料体の表面と摩擦接触して摩擦帯電した粉体の電荷量を測定することができる。
【0011】
そして、前記捕捉部材は、粉体を吸引する吸引口を有しており、前記吸引口は、前記表面と平行な面において前記試料体の外側に配置され、前記試料体の回転中心となる前記軸を向いていることが好ましい。
【0012】
これによると、試料体が回転することにより遠心力が作用して表面から飛散した粉体を吸引捕捉しやすい。
【0013】
そして、前記吸引口は、前記表面から離隔しており、前記表面と前記吸引口との間には、空隙が設けられていることが好ましい。
【0014】
例えば、多数の粉体が集まってだまになっている状態では、だまを形成する各粉体は表面との接触面積が小さく、あまり帯電しておらず、電荷量が少ないと推測される。そこで、吸引口が表面から離隔しており、表面と吸引口との間に空隙が設けられていることで、だまになった粉体については、重量が重く、吸引口まで飛散せずに表面から落下して、吸引口から吸引されにくい。これにより、試料体の表面に供給された多量の粉体のうち電荷量が多い粉体だけを捕捉しやすい。したがって、複数種類の粉体を測定する場合に、複数種類の粉体の電荷量の差が大きくなって、複数種類の粉体について静電特性(帯電のしやすさ、帯電のしにくさ)の違いを把握しやすい。
【0015】
また、前記粉体供給部から前記表面への粉体の供給量を調整する供給量調整手段をさらに備えていることが好ましい。
【0016】
これによると、粉体及び試料体の帯電のしやすさ、または帯電のしにくさに応じて、表面への粉体の供給量を調整することができる。また、所定時間における粉体の供給量を増やせば、試料体を所望の帯電量に帯電させるまでに要する時間を短縮することができる。
【0017】
本発明の静電特性測定方法は、水平な表面を有する試料体を前記表面と直交する軸を中心として回転させる回転工程と、前記回転工程の間に、回転する前記試料体の前記表面に粉体を供給する粉体供給工程と、前記粉体供給工程の後に、回転する前記試料体に接触した粉体、または、前記試料体の電荷量を測定する電荷量測定工程と、を備えている。
【0018】
本発明の静電特性測定方法によると、回転する試料体の表面に供給された粉体は表面との間で摩擦接触を繰り返す。そして、粉体は、試料体の表面を摩擦帯電しながら遠心力で移動する。したがって、カスケード法のように試料体の斜面を粉体が単に転がる場合に比べて、試料体との接触回数が増大して、粉体と試料体との間に生まれる電荷量が増加する。また、例えば、粉体の種類や湿度などの環境条件によって、粉体が多数集まってだまになっている状態で試料体の表面に供給されたとしても、回転する試料体に接触した衝撃と遠心力とで、だまになった粉体をばらばらに崩すことができる。したがって、崩れた各粉体に対して摩擦帯電による電荷量が増加する。これにより、粉体及び試料体の種類によらず、粉体と試料体とを帯電させやくなり、試料体を小型化することができる。また、試料体の帯電量を測定する場合において粉体の供給量を減らすことができる。
【発明の効果】
【0019】
回転する試料体の表面に供給された粉体は表面との間で摩擦接触を繰り返す。そして、粉体は、試料体の表面を摩擦帯電しながら遠心力で移動する。したがって、カスケード法のように試料体の斜面を粉体が単に転がる場合に比べて、試料体との接触回数が増大して、粉体と試料体との間に生まれる電荷量が増加する。また、例えば、粉体の種類や湿度などの環境条件によって、粉体が多数集まってだまになっている状態で試料体の表面に供給されたとしても、回転する試料体に接触した衝撃と遠心力とで、だまになった粉体をばらばらに崩すことができる。したがって、崩れた各粉体に対して摩擦帯電による電荷量が増加する。これにより、粉体及び試料体の種類によらず、粉体と試料体とを帯電させやくなり、試料体を小型化することができる。また、試料体の帯電量を測定する場合において粉体の供給量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態に係る静電特性測定装置の概略構成図である。
【図2】粉体の電荷量の測定時における静電特性測定装置の概略構成図である。
【図3】粉体の電荷量を測定する工程について説明するフローチャートである。
【図4】回転する試料体の表面に供給された粉体の移動について説明する試料体(試料層)の平面図である。
【図5】変形例1における静電特性測定装置の概略構成図である。
【図6】変形例2における静電特性測定装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1に示すように、静電特性測定装置1は、カバー部材2と、試料取付台3に着脱自在に取り付けられる、導電性部材19上に試料層20を密接して形成した試料体4と、試料体4を回転させる回転モータ5(回転駆動手段)と、多量の粉体21を収容した供給ケース6(粉体供給部)と、供給ケース6から試料層20への粉体21の供給量を調整するスクリューフィーダ7(供給量調整手段)と、粉体21の電荷量を測定する電荷量測定装置8と、試料層20から落下した粉体21を受容する粉体受容部9と、を有している。なお、試料体4は一部を試料膜とするものの他、全体を粉体被接触材料そのものにより構成してもよい。
【0022】
カバー部材2は、鉛直方向に延びた筒状をしており、試料取付台3、試料体4、回転モータ5、供給ケース6及びスクリューフィーダ7などが収容される。これにより、回転する試料体4に供給されて飛散する粉体21がカバー部材2の外にばらまかれるのを防止している。また、カバー部材2は、内面に帯電防止のための界面活性剤をコーティングした透明なプラスチックなどの樹脂材料により形成されていることが好ましい。カバー部材2が透明であることによって、装置のセッティングや測定の様子を確認できる利点がある。あるいはこのような利点はなくなるが、鉛直方向に延びた筒状のカバー部材2は、金属膜を内面にコーティングした樹脂材料、または金属製材料によりカバー部材2を構成してもよい。このようなカバー部材2により、収容された装置全体をシールドし、且つ、回転する試料体4に供給されて飛散する粉体21がカバー部材2の外にばらまかれるのを防止することできる。
【0023】
試料体4は、カバー部材2の中央に配置されており、支持部材11、回転モータ5、回転軸10、試料取付台3を通じてグランド電位に接地されている。試料体4は、ここでは導電性部材19と、導電性部材19の表面に密着して形成された試料層20とから構成されている。試料層20は、粉体21との間における帯電のしやすさ、または帯電のしにくさ(これらをまとめて静電特性と称す)を測定したい材料を導電性部材19の上面にコーティングしたものであり、その表面20aが水平になっている。コーティング方法としては、導電性部材19の上面に材料を塗布乾燥する方法や、あらかじめ層を形成して、その層を密着させる方法などが挙げられる。
【0024】
そして、試料体4は、試料取付台3、回転軸10を介して回転モータ5に連結されており、回転モータ5が駆動することで、回転軸10を中心に高速回転する。すると、試料層20の表面20aは、水平面内を高速回転する。回転モータ5は、支持部材11により支持されている。そして、支持部材11に対する回転モータ5の高さを調整することで、試料層20の表面20aの高さを適宜調整することができる。
【0025】
スクリューフィーダ7は、支持部材12により支持されて、その供給口7aが試料層20の表面20aの上方に位置しており、試料層20の外縁よりも回転中心に近い位置に粉体21を供給する。そして、スクリューフィーダ7は、回転数を調整することで、供給ケース6から送られる粉体21の量を調整して、供給口7aから表面20aへの粉体21の供給量を適宜調整することができる。
【0026】
電荷量測定装置8は、カバー部材2内に収容された吸引式のファラデーケージ13(ノズル吸引口13aにより粉体を吸い込み、吸い込んだ粉体を捕捉するフィルターを備えているファラデーケージ)と、カバー部材2の外側に配置され、ファラデーケージ13とチューブ・同軸ケーブル14を通じて連結された電荷量測定器15と、を有している。電荷量測定器15は吸引ポンプとクーロンメータ、その他制御回路を内蔵したものである。
【0027】
ファラデーケージ13は、支持部材11により支持されている。そして、ファラデーケージ13のノズル吸引口13aは、試料層20の表面20aから離隔して、試料体4の回転中心となる回転軸10の方向に向いている。また、試料層20の表面20aとファラデーケージ13のノズル吸引口13aとの間には、空隙が設けられている。電荷量測定器15は、ノズル吸引口13aより吸引されファラデーケージ13のフィルターで捕獲された粉体21の電荷量を測定する。
【0028】
粉体受容部9は、試料体4の下方に配置されており、上方に開口した箱状をしている。そして、粉体受容部9の底部の面積は、試料体4よりも大きくなっており、鉛直方向から見て、粉体受容部9は試料体4を包含している。さらに、試料体4の上面、すなわち試料層20の表面20aとファラデーケージ13のノズル吸引口13aとの間に設けられた空隙は、鉛直方向に関して、粉体受容部9と重なっている。すなわち、試料層20の表面20aから空隙を介して落下した粉体21は、粉体受容部9に受容される。
【0029】
粉体21としては、例えば、レーザプリンタや複写機で使用されるトナー、粉体塗料、小麦粉、金属粉、樹脂粉などさまざまな粉体が挙げられる。そして、静電特性測定装置1は、粉体21と試料層20とを接触させたときの、粉体21の電荷量を測定することで、粉体21と試料層20との間における帯電のしやすさ、または帯電のしにくさ(静電特性)を測定する。
【0030】
次に、静電特性測定装置1による粉体21の電荷量の測定方法について、図2〜図4を参照して説明する。図3に示すように、まず、回転モータ5を駆動して、試料体4の高速回転(本実施形態では、試料体4は例えば直径約20mmで、回転速度は例えば12000rpm)を開始する(S1:回転工程)。その後、スクリューフィーダ7により所定量(例えば、数g/mini)の粉体21を試料層20の表面20aに流しかけて供給する(S2:粉体供給工程)。
【0031】
すると、図2に示すように、試料層20の表面20aに供給された粉体21は、回転軸10を中心に試料層20が高速回転することで、試料層20との間で摩擦接触を繰り返して、粉体21と試料層20は摩擦帯電する。また、粉体21は、試料層20の回転によって遠心力が作用して試料層20の表面20aの外側に向かって移動する。より具体的には、図4に示すように、試料層20が矢印A方向に示す時計周り方向に回転すると、粉体21は、試料層20の表面20aと摩擦接触を繰り返しながら、遠心力が作用して矢印B方向に移動して、試料層20の表面20aの外側に飛散する。したがって、例えば、粉体21が単に矢印B方向に転がる場合と比べて、本実施形態における粉体21は、試料層20の回転方向に摩擦接触により回転しながら、矢印B方向に移動するため、試料層20との接触回数が増大する。
【0032】
そして、図3に戻って、試料層20の表面20aから飛散した粉体21の一部がファラデーケージ13のノズル吸引口13aから吸引されて、電荷量測定器15により吸引された粉体21の電荷量を測定する(S3:電荷量測定工程)。なお、試料層20の表面20aから飛散し、ファラデーケージ13に吸引されなかった粉体21については、落下して粉体受容部9に受容される。また、試料層20の回転数、スクリューフィーダ7からの粉体21の供給量、表面20aとファラデーケージ13のノズル吸引口13aとの距離、及び、ノズル吸引口13aからの吸引力は、粉体21と試料層20との間の静電特性を精度よく測定できるように適宜設定すればよい。また、特に試料層20の回転数、表面20aとファラデーケージ13のノズル吸引口13aとの距離は、これらをパラメータとしてそれぞれの環境時の帯電量を測定して帯電特性を評価するようにしてもよい。
【0033】
本実施形態における静電特性測定装置1によると、試料体4において、回転する試料層20の表面20aに供給された粉体21は試料層20との間で摩擦接触を繰り返す。そして、粉体21と試料層20は摩擦帯電しながら遠心力で移動する。したがって、カスケード法のように試料層20と粉体21とが単に接触して接触帯電する場合に比べて、試料層20との接触回数が増大して、粉体21及び試料層20の種類によらず、粉体21と試料層20との電荷量が増加する。これにより、粉体21と試料層20とを帯電させやくなり、試料体4を小型化することができる。
【0034】
また、例えば、粉体21の種類や湿度などの環境条件によって、スクリューフィーダ7から多数の粉体21が集まってだまになっている状態で試料層20の表面20aに供給されたとしても、カスケード法のように試料層20と粉体21とが単に接触する場合に比べて、回転する試料層20に接触した衝撃と遠心力とで、だまになった粉体21をばらばらに崩すことができる。したがって、崩れた各粉体21に対して摩擦帯電によって電荷量を増加させることができる。
【0035】
ここで、粉体被接触材料は、一定の帯電特性を保って面積の広い層を形成するのは困難であり、たとえ形成することができたとしても膨大なコストがかかる。したがって、このような大型な層を形成することが困難な材料を試料層20とする場合に、本実施形態にように試料体4を小型化することができるのは非常に有用である。
【0036】
また、ファラデーケージ13のノズル吸引口13aが、試料層20の表面20aと平行な面において試料体4の外側に配置され、試料体4の回転中心を向いている。これにより、試料体4が回転することにより遠心力が作用して試料層20の表面20aから飛散した粉体21を吸引捕捉しやすい。
【0037】
さらに、例えば、多数の粉体21が集まってだまになっている状態では、だまを形成する各粉体21は表面20aとの接触面積が小さく、あまり帯電しておらず、電荷量が少ないと推測される。そこで、ファラデーケージ13のノズル吸引口13aが表面20aから離隔しており、表面20aとノズル吸引口13aとの間に空隙が設けられていることで、だまになった粉体21については、重量が重く、ノズル吸引口13aまで飛散せずに表面20aから落下して、ノズル吸引口13aから吸引されにくい。また、試料体4からより遠くまで飛散した粉体21ほど、試料体4の縁部に近い位置から飛散していると推測される。そして、試料体4の縁部まで移動した粉体21ほど、試料層20の表面20aとの接触回数が多く、より電荷量が増大している。これにより、ファラデーケージ13により試料層20の表面20aに供給された多量の粉体21のうち電荷量が多い粉体21だけを捕捉しやすい。したがって、複数種類の粉体21を測定する場合に、複数種類の粉体21の電荷量の差が大きくなって、複数種類の粉体21について静電特性(帯電のしやすさ、帯電のしにくさ)の違いを把握しやすい。
【0038】
加えて、粉体21及び試料層20の帯電しやすさに応じて、スクリューフィーダ7により表面20aへの粉体21の供給量を調整することができる。
【0039】
また、スクリューフィーダ7により粉体21が試料体4の外縁よりも回転中心により近い位置に供給されることで、試料層20の表面20aの外側に粉体21が飛散するまでの間に、粉体21と表面20aとの接触回数が増加するため、より電荷量を増大させることができる。
【0040】
次に、上述した実施形態に種々の変形を加えた変更形態について説明する。ただし、上述した実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0041】
本実施形態では、電荷量測定器15は、ファラデーケージ13により吸引した粉体21の電荷量を測定していたが、回転する試料体4から飛散または/及び落下して粉体受容部9に受容された粉体21の電荷量を測定してもよい(変形例1)。図5は落下する粉体を受容する場合を示し、粉体受容部9は、導電性材料により形成されて、周囲と絶縁されて、ファラデーケージを構成しており、同軸ケーブル30により電荷量測定器15に接続される。あるいは例えば図示しないが、試料体4の外周に、ファラデーケージを構成する、内側に開口する断面コの字の環状粉体受容部を、試料体4から水平方向に所定距離を置いて配置し、試料体4から飛散してくる粉体を受容して粉体の電荷量を測定するようにしてもよい。
【0042】
また、本実施形態においては、粉体21と試料体4との間における静電特性を測定するために、粉体21の電荷量を測定していたが、試料体4の電荷量を測定してもよい(変形例2)。この場合、図6に示すように、試料体4は試料取付台3と電気的接続されるとともに、試料取付台3は、周囲と絶縁されて、同軸ケーブル40により電荷量測定器15に接続される。このとき、回転する試料層20の表面20aに供給された粉体21と表面20aとは十分摩擦帯電しているので、試料層20の帯電量が測定できる。また、所定時間における粉体21の供給量を増やせば、試料層20を所定量に帯電させさせるまでに要する時間を短縮することができる。
【0043】
さらに、本実施形態においては、スクリューフィーダ7により供給ケース6から供給される粉体21の供給量を調整していたが、供給ケース6の開口部付近にシャッター部材が設けられて、このシャッター部材の開閉をポンプなどにより制御することで、供給ケース6から供給される粉体21の供給量を調整してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 静電特性測定装置
3 試料取付台
4 試料体
5 回転モータ
6 スクリューフィーダ
7 電荷量測定装置
13 ファラデーケージ
15 電荷量測定器
19 導電性部材
20 試料層
20a 表面
21 粉体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な表面を有する粉体被接触材料である試料体と、
粉体を前記試料体の前記表面に供給する粉体供給部と、
前記試料体を前記表面と直交する軸を中心として回転させる回転駆動手段と、
前記回転駆動手段によって回転する前記試料体に接触した粉体、または、前記試料体の電荷量を測定する電荷量測定手段と、を備えていることを特徴とする静電特性測定装置。
【請求項2】
前記電荷量測定手段は、前記回転駆動手段によって前記試料体が回転することで前記表面から飛散した粉体を捕捉する捕捉部材を有しており、前記捕捉部材に捕捉された粉体の電荷量を測定することを特徴とする請求項1に記載の静電特性測定装置。
【請求項3】
前記捕捉部材は、粉体を吸引する吸引口を有しており、
前記吸引口は、前記表面と平行な面において前記試料体の外側に配置され、前記試料体の回転中心となる前記軸を向いていることを特徴とする請求項2に記載の静電特性測定装置。
【請求項4】
前記吸引口は、前記表面から離隔しており、
前記表面と前記吸引口との間には、空隙が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の静電特性測定装置。
【請求項5】
前記粉体供給部から前記表面への粉体の供給量を調整する供給量調整手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の静電特性測定装置。
【請求項6】
水平な表面を有する試料体を前記表面と直交する軸を中心として回転させる回転工程と、
前記回転工程の間に、回転する前記試料体の前記表面に粉体を供給する粉体供給工程と、
前記粉体供給工程の後に、回転する前記試料体に接触した粉体、または、前記試料体の電荷量を測定する電荷量測定工程と、を備えていることを特徴とする静電特性測定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−92394(P2013−92394A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233065(P2011−233065)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(593122789)ユーテック株式会社 (118)
【Fターム(参考)】