説明

静電荷像現像用キャリア及びその製造方法、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成方法、並びに、画像形成装置

【課題】画像濃度均一性、及び、印刷物の外観に優れ、低温低湿環境で印刷した後さらに高温高湿環境下に放置した場合においても画像濃度均一性に優れる静電荷像現像用キャリアを提供すること。
【解決手段】マグネシウム元素を1.0〜14.0重量%含むフェライト粒子を有し、前記フェライト粒子中のマグネシウム元素の平均分布比Dが1.1〜2.0であることを特徴とする静電荷像現像用キャリア。
ただし、前記フェライト粒子の断面全体中のFe含有量とMg含有量との重量比(Mg/Fe)をW1とし、前記フェライト粒子の断面における粒子の外接円の1つの直径上で前記外接円の中心から半径の1/2の長さとなる2つの点を2つの対向する頂点とした正方形中のFe含有量とMg含有量との重量比(Mg/Fe)をW2としたとき、D’=W1/W2と定義し、50個以上の粒子のD’の平均値を平均分布比Dとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用キャリア及びその製造方法、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、画像形成方法、並びに、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法等のように、静電潜像を経て画像情報を可視化する方法は、現在各種の分野で広く利用されている。前記電子写真法においては、帯電工程、露光工程等を経て感光体(像保持体)表面の静電潜像をトナーを含む現像剤により現像し、転写工程、定着工程等を経て前記静電潜像が可視化される。
現像剤には、トナー及びキャリアからなる二成分現像剤と、磁性トナーなどのようにトナー単独で用いられる一成分現像剤とがある。その中でも二成分現像剤は、キャリアが現像剤の撹拌・搬送・帯電などの機能を分担し、現像剤として機能分離されているため、制御性がよいなどの特徴があり、現在広く用いられている。
【0003】
また、キャリアとしては、例えば、特許文献1〜4に記載されているものが知られている。
特許文献1には、芯材粒子の表面に樹脂被覆層が形成されてなる樹脂被覆キャリアと、トナーとを有してなり、前記樹脂被覆キャリアの樹脂被覆層中に、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムおよび炭酸マグネシウムからなる群より選ばれた少なくとも1種のマグネシウム化合物が含有されていることを特徴とする負帯電性現像剤が開示されている。
特許文献2には、樹脂被覆キャリアの表面部分においてマグネシウム原子の含有率が2.0〜25.0(原子個数%)の範囲にあることを特徴とする静電荷像現像用キャリアが開示されている。
特許文献3には、主構成成分が鉄・酸素・マグネシウムで、該マグネシウムを0.5〜10重量%含有するコア材が樹脂被覆されている電子写真用キャリアであって、飽和磁化が55〜85(Am2/kg)、残留磁化が3(Am2/kg)以下、保磁力が4(kA/m)以下であり、且つ飽和磁化をσs(Am2/kg)とし、体積基準粒度分布1%粒径をx1(μm)としたとき、σsとx1が下記式を満足することを特徴とする電子写真用キャリアが開示されている。
(1/σs)×750≦x1
特許文献4には、少なくともマグネシウム元素を含有するフェライトよりなるコア粒子の表面に樹脂を被覆してなるキャリアにおいて、該コア粒子は異形化率が5個数%以下であり、且つ、コア粒子表面の最大グレイン径が2μm以上5μm以下であることを特徴とするキャリアが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−301245号公報
【特許文献2】特開平10−142842号公報
【特許文献3】特開2001−154416号公報
【特許文献4】特開2008−96977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、画像濃度均一性、及び、印刷物の外観に優れ、低温低湿環境で印刷した後さらに高温高湿環境下に放置した場合においても画像濃度均一性に優れる静電荷像現像用キャリアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記課題は、以下の<1>〜<6>に記載の手段によって解決された。
<1>マグネシウム元素を1.0〜14.0重量%含むフェライト粒子を有し、前記フェライト粒子中のマグネシウム元素の平均分布比Dが1.1〜2.0であることを特徴とする静電荷像現像用キャリア、
ただし、前記フェライト粒子の断面全体中の鉄元素含有量Feとマグネシウム元素含有量Mgとの重量比(Mg/Fe)をW1とし、前記フェライト粒子の断面における粒子の外接円の1つの直径上で前記外接円の中心から半径の1/2の長さとなる2つの点を2つの対向する頂点とした正方形中の鉄元素含有量Feとマグネシウム元素含有量Mgとの重量比(Mg/Fe)をW2としたとき、D’=W1/W2と定義し、50個以上の粒子のD’の平均値を平均分布比Dとする、
<2>鉄化合物及びマグネシウム化合物を含むキャリア材料を800℃以上1,000℃以下で焼成する仮焼成工程、前記仮焼成工程の後、焼成したキャリア材料を1,000℃を越え1,400℃以下で焼成する本焼成工程、及び、前記本焼成工程の後、前記本焼成工程での焼成温度より低い温度で焼成する追加焼成工程、を含む上記<1>に記載の静電荷像現像用キャリアの製造方法、
<3>上記<1>に記載の静電荷像現像用キャリア、又は、上記<2>に記載の製造方法により製造された静電荷像現像用キャリアと、静電荷像現像用トナーとを含む静電荷像現像剤、
<4>上記<3>に記載の静電荷像現像剤を収納すると共に、像保持体表面上に形成された静電潜像を前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、像保持体、前記像保持体表面を帯電させるための帯電手段、及び、前記像保持体表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備えるプロセスカートリッジ、
<5>像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、前記像保持体表面に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程、前記像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程、及び、前記被転写体表面に転写されたトナー像を定着する定着工程、を含み、前記現像剤として上記<3>に記載の静電荷像現像剤を用いる画像形成方法、
<6>像保持体と、前記像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記像保持体を露光して前記像保持体表面に静電潜像を形成させる露光手段と、トナーを含む現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、前記トナー像を前記像保持体から被転写体表面に転写する転写手段と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を有し、前記現像剤として上記<3>に記載の静電荷像現像剤を用いる画像形成装置。
【発明の効果】
【0007】
前記<1>に記載の発明によれば、画像濃度均一性、及び、印刷物の外観に優れ、低温低湿環境で印刷した後さらに高温高湿環境下に放置した場合においても画像濃度均一性に優れる静電荷像現像用キャリアを提供することができる。
前記<2>に記載の発明によれば、画像濃度均一性、及び、印刷物の外観に優れ、低温低湿環境で印刷した後さらに高温高湿環境下に放置した場合においても画像濃度均一性に優れる静電荷像現像用キャリアを簡便に製造することができる静電荷像現像用キャリアの製造方法を提供することができる。
前記<3>に記載の発明によれば、画像濃度均一性、及び、印刷物の外観に優れ、低温低湿環境で印刷した後さらに高温高湿環境下に放置した場合においても画像濃度均一性に優れる静電荷像現像剤を提供することができる。
前記<4>に記載の発明によれば、画像濃度均一性、及び、印刷物の外観に優れ、低温低湿環境で印刷した後さらに高温高湿環境下に放置した場合においても画像濃度均一性に優れるプロセスカートリッジを提供することができる。
前記<5>に記載の発明によれば、画像濃度均一性、及び、印刷物の外観に優れ、低温低湿環境で印刷した後さらに高温高湿環境下に放置した場合においても画像濃度均一性に優れる画像形成方法を提供することができる。
前記<6>に記載の発明によれば、画像濃度均一性、及び、印刷物の外観に優れ、低温低湿環境で印刷した後さらに高温高湿環境下に放置した場合においても画像濃度均一性に優れる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】フェライト粒子中のマグネシウム元素の分布比D’の測定方法に関する概略模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明において、「A〜B」との記載は、AからBの間の範囲だけでなく、その両端であるA及びBも含む範囲を表す。例えば、「A〜B」が数値範囲であれば、「A以上B以下」又は「B以上A以下」を表す。
【0010】
(静電荷像現像用キャリア)
本発明の静電荷像現像用キャリア(以下、単に「キャリア」ともいう。)は、マグネシウム元素を1.0〜14.0重量%含むフェライト粒子を有し、前記フェライト粒子中のマグネシウム元素の平均分布比Dが1.1〜2.0であることを特徴とする。
ただし、前記フェライト粒子の断面全体中の鉄元素含有量Feとマグネシウム元素含有量Mgとの重量比(Mg/Fe)をW1とし、前記フェライト粒子の断面における粒子の外接円の1つの直径上で前記外接円の中心から半径の1/2の長さとなる2つの点を2つの対向する頂点とした正方形中の鉄元素含有量Feとマグネシウム元素含有量Mgとの重量比(Mg/Fe)をW2としたとき、D’=W1/W2と定義し、50個以上の粒子のD’の平均値を平均分布比Dとする。
【0011】
マグネシウムと鉄とからなるフェライトにおいては、マグネシウム量が多くなるとトナーへのマイナス帯電付与能力が高くなる。また同時に、電気抵抗も高くなる。しかし、自身に磁気モーメントを持たないマグネシウムが多くなると、飽和磁化が低くなってしまう。また、マグネシウム量を減らした場合、飽和磁化は高くなるが、構成がマグネタイトに近づき、抵抗が低くなると同時に、マグネシウムによる帯電付与効果が少なくなってしまう。そのため、帯電性低下によるトナーかぶり、低磁化、低抵抗によるキャリア飛散を要因とする色筋などの画像ディフェクトが生じてしまい、従来、マグネシウムフェライトをキャリアとして用いることは困難であった。
マグネシウムを用いたフェライト粒子をキャリアとして用いる場合には、Mn、Co、Ni、Cuなどの元素を加え、磁化と抵抗とのバランス取りを行うことが必要であった。
【0012】
本発明者等が詳細な検討を行った結果、マグネシウムフェライトのフェライト粒子中のマグネシウムの分布を制御することで、これらの問題を解決することが可能であることを見いだした。
フェライト粒子中のマグネシウム量を表面側に多く分布させ、中心付近はマグネシウム量を少なくすることで、磁化、抵抗、帯電性のバランスを高度に取ることができると推定される。
その理由としては、以下のようなことが考えられる。
トナーとキャリアとの帯電は、両者表面の接触から生じ、粒子表面の構成が帯電に強く影響する。そのため、マグネシウム量が表面に多いと、帯電性が向上する。一方で、中心付近のマグネシウム量を少なくすることで、全体のマグネシウム量は少なくなり、飽和磁化は低くならず、良好である。
また、マグネシウムによる帯電性の効果は、マイナス帯電性付与に加え、環境による変化が少ないことが挙げられる。一般にマンガンフェライトや銅−亜鉛フェライトなどは帯電性が低く、リチウムなどのイオン化傾向の高い元素を用いた場合でも、水との親和性が高く、高温高湿下での帯電性が落ちていまい、マグネシウムのような効果は出にくいと考えられる。
キャリアの樹脂被覆層に酸化マグネシウムなどのマグネシウム化合物を入れた場合、十分な帯電付与を得ることが困難である。これは、フェライトが大きなイオン結晶体であるのに対し、マグネシウム化合物は微粒子が単独で存在しており、また粒子内での電荷の移動も少ないためである。
【0013】
また、従来のマグネシウムフェライトの問題点として、割れやすいことが挙げられる。マグネシウムフェライトは結晶化がはやく、割れやすいフェライト粒子になりやすい。しかし、マグネシウムの分布が表面に集まると、表面近傍の結晶化が内部よりも遅くなり、結晶の連続面が小さくなる。結果、割れにくくなり、強度が上がると推定される。また、同時に結晶が連続せず、結晶の境界面が増えることで抵抗は低くらなずに良好である。
【0014】
このように、表面付近にマグネシウム量が多く、中心付近にマグネシウム量が少ないフェライト粒子、すなわち、フェライト粒子中のマグネシウム元素の平均分布比Dが1.1〜2.0であると、マグネシウムフェライトの良さである帯電性を保ちながら、電気抵抗、飽和磁化、強度を高いレベルでバランスをとることができると推定され、その結果、本発明のキャリアは、画像濃度均一性、及び、印刷物の外観に優れ、低温低湿環境で印刷した後さらに高温高湿環境下に放置した場合においても画像濃度均一性に優れると推定される。
【0015】
<フェライト粒子>
本発明に用いることができるフェライト粒子は、マグネシウム元素を1.0〜14.0重量%含み、かつ、フェライト粒子中のマグネシウム元素の平均分布比Dが1.1〜2.0である。
【0016】
フェライト粒子中のマグネシウム元素の平均分布比Dは、例えば、蛍光X線を用いて測定し算出することができる。蛍光X線測定においては、マグネシウム含有量が既知のサンプルを数種用意し、検量線を作成し、その後、測定サンプルを測定し、検量線からその含有量を計算することが好ましい。
具体的には、次のような測定方法を好ましく例示できる。
エポキシ樹脂などの包埋剤でキャリアを包埋し、ダイヤモンドナイフなどで包埋品の表面をカットする。キャリアの断面が十分に確保できる場所まで、カットを続け、測定用サンプルとする。次に、エネルギー分散型X線分析装置(EMAX、(株)堀場製作所製)にて、フェライト粒子の断面全体中の鉄元素含有量Feとマグネシウム元素含有量Mgとの重量比(Mg/Fe)W1を測定し、また、図1に示すように、フェライト粒子の断面10における粒子の外接円12の1つの直径14上で前記外接円12の中心16から半径の1/2の長さとなる2つの点18a及び18bを2つの対向する頂点とした正方形20中の鉄元素含有量Feとマグネシウム元素含有量Mgとの重量比(Mg/Fe)W2を測定する。測定した各フェライト粒子において、D’=W1/W2を算出し、さらに50個以上のフェライト粒子のD’の平均値を求め、平均分布比Dを算出する。
なお、フェライト粒子の断面10における粒子の外接円12の1つの直径14は、任意の位置の直径を選択することができる。
測定するフェライト粒子の断面10は、粒子の中心付近で切断されている断面であることが好ましい。また、測定するフェライト粒子は、その表面に後述する被覆樹脂層を有していてもよい。
【0017】
本発明に用いることができるフェライト粒子中のマグネシウム元素の平均分布比Dは、1.1〜2.0であり、1.1〜1.8であることが好ましく、1.3〜1.7であることがより好ましい。
【0018】
フェライトは、一般的に下記式で表される。
(MO)X(Fe23Y
式中、Mは、Mgを主体とするが、Li、Ca、Mn、Sr、Sn、Cu、Zn、Ba、Fe、Ti、Ni、Al、Co及びMoよりなる群から選ばれた少なくとも1種又は数種を組み合わせることも可能である。また、X、Yは重量mol比を示し、かつ条件X+Y=100を満たす。
また、本発明に用いることができるフェライト粒子は、Fe、Mg及びO以外に、Li、Ca、Mn、Sr、Ti、Al、Siよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含んでいることが好ましく、Ti、Si、Ca、Mn及びSrよりなる群から選ばれた少なくとも1種の元素を含んでいることがより好ましい。
【0019】
本発明に用いることができるフェライト粒子のマグネシウム元素の含有量は、1.0〜14.0重量%であり、1.0〜12.0重量%であることが好ましく、2.0〜7.0重量%であることがより好ましい。
【0020】
本発明に用いることができるフェライト粒子は、表面付近にマグネシウム量が多く、中心付近にマグネシウム量が少ないフェライト粒子であるが、粒子の中心部から表面にかけてマグネシウム元素の含有量が連続的に多くなっていくフェライト粒子であることが好ましい。
本発明のキャリアの体積平均粒径としては、10〜500μmであることが好ましく、20〜120μmであることがより好ましく、30〜100μmであることがさらに好ましく、30〜80μmであることが特に好ましい。
また、本発明に用いることができるフェライト粒子の体積平均粒径としては、10〜500μmであることが好ましく、20〜120μmであることがより好ましく、30〜100μmであることがさらに好ましく、30〜80μmであることが特に好ましい。
【0021】
本発明のキャリアは、前記フェライト粒子をそのままであっても、前記フェライト粒子に樹脂を被覆した被覆粒子であってもよい。
被覆樹脂としては、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、モノクロロトリフルオロエチレン、トリフルオロエチレンなどのビニル系フッ素含有モノマーの共重合体;スチレン、クロロスチレン、メチルスチレンなどのスチレン類;(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニルなどのα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ジメチルアミノエチルメタクリレートなどの含窒素アクリル類;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル類;2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどのビニルピリジン類;ビニルエーテル類;ビニルケトン類;エチレン、モノクロロエチレン、プロピレン、ブタジエン等のオレフィン類;メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーンなどのシリコーン類などの単独重合体、又は、共重合体を使用することができ、さらに、ビスフェノール、グリコール等を含むポリエステル類を使用することもできる。また、上記の被覆樹脂を2種以上混合して使用することもできる。
これらの中でも、被覆樹脂としては、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸メチル共重合体が好ましく例示できる。
【0022】
被覆樹脂の被覆量は、キャリアの総重量に対し、0.2〜5.0重量%であることが好ましく、1.0〜3.5重量%であることがより好ましい。
【0023】
被覆樹脂層には、抵抗を制御するためなどの目的で、必要に応じて導電粉を含んでもよい。
導電粉として具体的には例えば、金、銀、銅等の金属粒子;カーボンブラック;ケッチェンブラック;アセチレンブラック;酸化チタン、酸化亜鉛等の半導電性酸化物粒子;酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム粉末等の表面を酸化スズ、カーボンブラック、金属等で覆った粒子;などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
導電粉としては、金属又は金属化合物でないことが好ましく、製造安定性、コスト、導電性等が良好である点で、カーボンブラック粒子であることがより好ましい。
カーボンブラックの種類としては、特に制限はないが、ジブチルフタレート(DBP)吸油量が50ml/100g以上250ml/100g以下であるカーボンブラックが、製造安定性に優れて好ましい。
【0025】
導電粉の体積平均粒子径は、0.5μm以下のものが好ましく、0.05μm以上0.5μm以下のものがより好ましく、0.05μm以上0.35μm以下のものがさらに好ましい。体積平均粒子径が0.5μm以下であると、導電粉が被覆樹脂層から脱落しにくく、安定した帯電性が得られる。
【0026】
導電粉の体積平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700:(株)堀場製作所製)を用いて測定する。
測定法としては、界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液50ml中に測定試料を2g加え、超音波分散機(1,000Hz)にて2分間分散して、試料を作製し、測定する。
得られたチャンネルごとの体積平均粒子径を、体積平均粒子径の小さい方から累積し、累積50%になったところを体積平均粒子径とする。
導電粉の体積電気抵抗は、101Ω・cm以上1011Ω・cm以下であることが好ましく、103Ω・cm以上109Ω・cm以下がより好ましい。
また、導電粉の体積電気抵抗は、芯材の体積電気抵抗と同様にして測定する。
【0027】
導電粉の含有量は、被覆樹脂層全体に対し、1容量%以上50容量%以下が好ましく、3容量%以上20容量%以下がより好ましい。含有量が50容量%以下であると、キャリア抵抗が低下せず、現像像へのキャリア付着などによる画像欠損を抑制できる。一方、含有量が1容量%以上であると、キャリアの電気抵抗が適度な値であり、現像時、キャリアが現像電極として十分に働き、特に黒のベタ画像を形成した際にエッジ効果を抑制できる等、ソリッド画像の再現性に優れる。
【0028】
また、被覆樹脂層は、他に樹脂粒子を含有してもよい。
樹脂粒子としては、例えば、熱可塑性樹脂粒子、熱硬化性樹脂粒子等が挙げられる。これらの中でも、比較的硬度を上げることが容易な観点から熱硬化性樹脂が好ましく、トナーに負帯電性を付与する観点からは、N原子を含有する含窒素樹脂による樹脂粒子が好ましい。なお、これらの樹脂粒子は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
樹脂粒子の体積平均粒子径としては、0.1μm以上2.0μm以下が好ましく、0.2μm以上1.0μm以下がより好ましい。樹脂粒子の平均粒径が0.1μm以上であると、被覆樹脂層における樹脂粒子の分散性に優れる。一方、2.0μm以下であると、被覆樹脂層から樹脂粒子の脱落が生じにくく、本来の効果を十分発揮できる。
樹脂粒子の体積平均粒子径は、導電粉の体積平均粒子径と同様な測定を行うことによって求めることができる。
樹脂粒子の含有量は、被覆樹脂層全体に対し、1重量%以上50重量%以下であることが好ましく、1重量%以上30重量%以下であることがより好ましく、1重量%以上20重量%以下であることがさらに好ましい。樹脂粒子の含有率が1重量%以上であると、樹脂粒子の効果が十分得られ、50重量%以下であると、被覆樹脂層からの脱落が生じにくく、安定した帯電性が得られる。
被覆樹脂層は、ワックスや帯電制御剤などの公知の添加剤を含有していてもよい。
また、被覆樹脂層は、単層に限られず、2層以上の構成であってもよい。
【0029】
(静電荷像現像用キャリアの製造方法)
本発明の静電荷像現像用キャリアの製造方法は、鉄化合物及びマグネシウム化合物を含むキャリア材料を準備する準備工程、前記キャリア材料を800℃以上1,000℃以下で焼成する仮焼成工程、前記仮焼成工程の後、焼成したキャリア材料を粉砕する粉砕工程、前記粉砕工程の後、粉砕したキャリア材料を造粒する造粒工程、前記造粒工程の後、造粒したキャリア材料を1,000℃を越え1,400℃以下で焼成する本焼成工程、及び、前記本焼成工程の後、前記本焼成工程での焼成温度より低い温度で焼成する追加焼成工程、を含む製造方法であることが好ましい。
【0030】
<準備工程>
本発明の静電荷像現像用キャリアの製造方法は、鉄化合物及びマグネシウム化合物を含むキャリア材料を800℃以上1,000℃以下で焼成する仮焼成工程を含むことが好ましい。
キャリア材料としては、特に制限はなく、公知の材料を用いることができる。例えば、酸化物、水酸化物、炭酸塩などが例示できる。
これらの中でも、Fe23とMgO又はMg(OH)2とを少なくとも用いることが好ましく、Fe23と、MgO又はMg(OH)2と、TiO2、SrCO3又はCaCO3とを用いることがより好ましい。
鉄化合物及びマグネシウム化合物、また、必要に応じてその他の元素を含む化合物の使用量は、所望のフェライト組成に応じて、適宜調整することができる。
前記仮焼成工程における焼成温度は、800℃以上1,000℃以下であり、850℃以上1,000℃以下であることが好ましく、900℃以上1,000℃以下であることがより好ましい。
前記仮焼成工程における焼成時間としては、キャリア材料の組成や、焼成温度、乾燥の程度などにもよるが、0.5〜48時間であることが好ましく、1〜12時間であることがより好ましい。
前記仮焼成工程、前記本焼成工程、及び、前記追加焼成工程の焼成は、公知の装置を用いて行うことができ、例えば、電気炉やロータリーキルン等が挙げられる。
前記仮焼成工程の前においては、キャリア材料を粉砕し、混合しておくことが好ましい。また、前記仮焼成工程の前においては、粉砕混合したキャリア材料を、スプレードライヤーなどを使用して造粒し、乾燥させることがより好ましい。
【0031】
また、本発明の静電荷像現像用キャリアの製造方法においては、仮焼成を1回のみおこなっても、複数回行ってもよいが、2回行うことが好ましい。
本発明の静電荷像現像用キャリアの製造方法は、キャリア材料を800℃以上1,000℃以下で焼成する仮焼成1工程、及び、前記仮焼成1工程の後、焼成したキャリア材料を粉砕する粉砕1工程、前記粉砕1工程の後、粉砕したキャリア材料を造粒する造粒1工程、前記造粒1工程の後、造粒したキャリア材料を800℃以上1,000℃以下で焼成する仮焼成2工程を含むことがより好ましい。
前記仮焼成1工程、及び、前記仮焼成2工程における焼成温度は、800℃以上1,000℃以下であるが、前記仮焼成1工程における焼成温度より前記仮焼成2工程における焼成温度のほうが高いことが好ましい。
前記仮焼成1工程と前記仮焼成2工程との間に行ってもよい前記粉砕1工程においては、焼成したキャリア材料の体積平均粒径が0.5〜5μmになるまで粉砕することが好ましい。
【0032】
<本焼成工程>
本発明の静電荷像現像用キャリアの製造方法は、前記仮焼成工程の後、焼成したキャリア材料を1,000℃を越え1,400℃以下で焼成する本焼成工程を含むことが好ましい。
前記本焼成工程における焼成温度は、1,000℃を越え1,400℃以下であり、1,150℃を越え1,400℃であることが好ましく、1,200〜1,350℃であることがより好ましい。
前記本焼成工程における焼成時間としては、キャリア材料の組成や、焼成温度、乾燥の程度などにもよるが、1〜24時間であることが好ましく、2〜12時間であることがより好ましい。
【0033】
<追加焼成工程>
本発明の静電荷像現像用キャリアの製造方法は、前記本焼成工程の後、前記本焼成工程での焼成温度より低い温度で焼成する追加焼成工程を含むことが好ましい。
前記追加焼成工程における焼成温度は、前記本焼成工程での焼成温度より低い温度であればよいが、800℃以上1,400℃未満であることが好ましく、900℃以上1,250℃未満であることがより好ましく、1,100℃以上1,200℃未満であることが更に好ましい。
前記本焼成工程における焼成時間としては、キャリア材料の組成や、焼成温度などにもよるが、0.5〜24時間であることが好ましく、1〜6時間であることがより好ましい。
また、前記本焼成工程と前記追加焼成工程とは、連続して行うことが好ましい。
【0034】
<粉砕工程、及び、造粒工程>
本発明の静電荷像現像用キャリアの製造方法は、前記仮焼成工程の後、焼成したキャリア材料を粉砕する粉砕工程、前記粉砕工程の後、粉砕したキャリア材料を造粒する造粒工程、及び、前記造粒工程の後、造粒したキャリア材料を1,000℃を越え1,400℃以下で焼成する本焼成工程を含むを含むことが好ましい。
前記粉砕工程においては、公知の装置を用いることができ、例えば、湿式ボールミル等を好ましく挙げることができる。
前記造粒工程においては、公知の装置を用いることができ、例えば、スプレードライヤー等を好ましく挙げることができる。
前記粉砕工程においては、焼成したキャリア材料の体積平均粒径が1〜10μmになるまで粉砕することが好ましく、体積平均粒径が2〜8μmになるまで粉砕することがより好ましい。
また、前記造粒工程の後、造粒したキャリア材料を乾燥する乾燥工程を含むことが好ましい。
【0035】
<被覆工程>
また、本発明の静電荷像現像用キャリアの製造方法は、前記追加焼成工程を経て得られたフェライト粒子の表面に樹脂を被覆する被覆工程を含むことが好ましい。
フェライト粒子の表面に樹脂を被覆する方法としては、前記被覆樹脂、及び、必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に加えた被覆樹脂層形成用液により被覆する方法が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して適宜選択すればよい。
具体的な樹脂被覆方法としては、フェライト粒子を被覆樹脂層形成用液中に浸漬する浸漬法、被覆樹脂層形成用液をキャリアの芯材表面に噴霧するスプレー法、フェライト粒子を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆樹脂層形成用液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でフェライト粒子と被覆樹脂層形成用液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法が挙げられる。
【0036】
被覆樹脂層形成用液に用いる溶剤としては、樹脂のみを溶解することが可能なものであれば、特に制限はなく、公知の溶剤の中から選択することができる。具体的には例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;これらの混合物などが挙げられる。
【0037】
(静電荷像現像現像剤)
本発明の静電荷像現像現像剤(「現像剤」ともいう。)は、本発明の静電荷像現像用キャリアと静電荷像現像用トナーとを含んでいればよい。
本発明の静電荷像現像現像剤における本発明の静電荷像現像用キャリアと静電荷像現像用トナーとの混合比(重量比)は、トナー:キャリア=1:99〜20:80の範囲であることが好ましく、3:97〜12:88の範囲であることがより好ましい。
キャリアとトナーとの混合方法としては、特に制限はなく、例えば、Vブレンダー等の公知の装置や方法により混合することができる。
【0038】
<静電荷像現像用トナー>
本発明に用いることができる静電荷像現像用トナー(「トナー」ともいう。)は、特に規定されるものではないが、トナーとしては、特に制限はなく、公知のトナーを用いることができる。トナーとしては例えば、結着樹脂と着色剤を有する着色トナーを挙げることができる。その他にも、結着樹脂と赤外線吸収剤を有する赤外線吸収トナーなどを用いることも可能である。
本発明に用いることができるトナーとしては、トナー母粒子と外部添加剤(外添剤)とからなる外添トナーであることが、流動性、帯電特性を制御するために好ましい。
【0039】
〔トナー母粒子〕
本発明に用いることができるトナーのトナー母粒子は、結着樹脂と着色剤を含有し、必要に応じて離型剤、シリカ及び帯電制御剤も含有するものであることが好ましい。
【0040】
結着樹脂としては、スチレン、クロロスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;等の単独重合体及び共重合体を例示することができ、代表的な結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン等を挙げることができる。さらに、ポリエステル、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリアミド、変性ロジン、パラフィンワックス等を挙げることができる。これらの中では、特にスチレン−アクリル酸アルキル共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキル共重合体、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0041】
また、トナーに用いられる結着樹脂には、必要に応じて結晶性樹脂を用いてもよい。結晶性を持つ樹脂であれば特に制限はなく、具体的には、結晶性ポリエステル樹脂、結晶性ビニル系樹脂が挙げられるが、定着時の紙への接着性や帯電性、及び好ましい範囲での融点調整の観点から結晶性ポリエステル樹脂が好ましい。また、適度な融点をもつ脂肪族系の結晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。
【0042】
前記結晶性ビニル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸セチル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸ベヘニル等の長鎖アルキル、アルケニルの(メタ)アクリル酸エステルを用いたビニル系樹脂が挙げられる。なお、本明細書において、“(メタ)アクリル”なる記述は、“アクリル”及び“メタクリル”のいずれか、又は、その両方を含むことを意味するものである。
【0043】
一方、前記結晶性ポリエステル樹脂は、酸(ジカルボン酸)成分とアルコール(ジオール)成分とから合成されるものであり、本発明において、「酸由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を指し、「アルコール由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。本発明において、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。具体的には、昇温速度10℃/minで測定した際の吸熱ピークの半値幅が15℃以内であることを意味する。
また、前記結晶性ポリエステル主鎖に対して他成分を共重合したポリマーの場合、他成分が50重量%以下の場合、この共重合体も結晶性ポリエステルと呼ぶ。
【0044】
−酸由来構成成分−
前記酸由来構成成分は、脂肪族ジカルボン酸が望ましく特に直鎖型のカルボン酸が望ましい。直鎖型のカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸、など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられる。中でも、炭素数6〜10のものが結晶融点や帯電性の観点から好ましい。結晶性を高めるためには、これら直鎖型のジカルボン酸を、酸構成成分の95mol%以上用いることが好ましく、98mol%以上用いることがより好ましい。なお、低級アルキルとは、炭素数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表す。
【0045】
その他の酸由来構成成分としては、特に限定はなく、例えば、「高分子データハンドブック:基礎編」(高分子学会編:培風館)に記載されているようなモノマー成分である、従来公知の2価又のカルボン酸と、2価のアルコールがある。これらのモノマー成分の具体例としては、2価のカルボン酸としては、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の二塩基酸、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。
これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0046】
前記酸由来構成成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸由来構成成分のほか、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分等の構成成分が含まれているのが好ましい。
前記スルホン酸基を持つジカルボン酸は、顔料等の着色剤の分散を良好にできる点で有効である。また樹脂全体を水に乳化又は懸濁して、トナー母粒子を微粒子に作製する際に、スルホン酸基があれば、後述するように、界面活性剤を使用しないで乳化或いは懸濁が可能となる場合があるので好ましい。このようなスルホン酸基を持つジカルボン酸としては、例えば、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、スルホコハク酸ナトリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩等が好ましい。前記スルホン酸基を持つジカルボン酸の含有量は0.1〜2.0mol%であることが好ましく、0.2〜1.0mol%であることが好ましい。含有量が2.0mol%以下であると、帯電性が良好である。なお、本発明において「構成mol%」とは、ポリエステル樹脂における各構成成分(酸由来構成成分、アルコール由来構成成分)をそれぞれ1単位(mol)したときの百分率を指す。
【0047】
−アルコール由来構成成分−
アルコール由来構成成分としては脂肪族ジアルコール(脂肪酸ジオール)が好ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオールなどが挙げられる。中でも、炭素数6〜10のものが結晶融点や帯電性の観点から好ましい。結晶性を高めるためには、これら直鎖型のジアルコール(ジオール)を、アルコール構成成分の95mol%以上用いることが好ましく、98mol%以上用いることがより好ましい。
その他の二価のジアルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド及び/又はプロピレンオキシド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調整等の目的で、酢酸、安息香酸等の1価の酸や、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の一価のアルコールや、ベンゼントリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステル、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど三価のアルコールも使用することができる。
【0049】
前記ポリエステル樹脂は、前記のモノマー成分の中から任意の組合せで、例えば、「重縮合」(化学同人)、「高分子実験学(重縮合と重付加)」(共立出版)や「ポリエステル樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社編)等に記載の従来公知の方法を用いて合成することができ、エステル交換法や直接重縮合法等を単独で、又は、組み合わせて用いることができる。前記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のmol比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、直接重縮合の場合は通常1/1程度、エステル交換法の場合は、エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノールなど真空下で脱留可能なモノマーを過剰に用いる場合が多い。前記ポリエステル樹脂の製造は、通常、重合温度180〜250℃の間でおこなわれ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。モノマーが、反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーとそのモノマーと重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と供に重縮合させるとよい。
【0050】
前記ポリエステル樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物、マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物、亜リン酸化合物、リン酸化合物、及び、アミン化合物等が挙げられ、具体的には、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、オクチル酸ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。この中で、帯電性の観点からスズ系触媒、チタン系触媒が好ましく、中でも、ジブチルスズオキシドが好ましく用いられる。
【0051】
結晶性ポリエステル樹脂の融点は50〜120℃であることが好ましく、60〜100℃であることがより好ましい。融点が50℃以上であると、トナーの保存性や、定着後のトナー画像の保存性に優れる。また、120℃以下であると、十分な低温定着性を得ることができる。
なお、本発明において、前記結晶性ポリエステル樹脂の融点の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時のJIS K−7121に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めることができる。なお、結晶性の樹脂には、複数の融解ピークを示す場合があるが、本発明においては、最大のピークをもって融点とみなす。
【0052】
また、トナーの着色剤としては、例えば、マグネタイト、フェライト等の磁性粉、カーボンブラック、ランプブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、ウルトラマリンブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオキサレート等の種々の顔料、又は、アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、チオインジコ系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアジン系、チアゾール系、キサンテン系等の各種染料を単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
また、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等を例示することができる。
【0053】
トナーに対する前記着色剤の含有量としては、トナー結着樹脂100重量部に対して、1〜30重量部の範囲であることが好ましいが、また、必要に応じて表面処理された着色剤を使用したり、顔料分散剤を使用することも有効である。前記着色剤の種類を適宜選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー等を得ることができる。
【0054】
また、トナーには、必要に応じて離型剤や帯電制御剤が添加されてもよい。
離型剤の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;エステルワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス;ミツロウのような動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物系ワックス;石油系ワックス;及びそれらの変性物等を使用することができる。
離型剤の添加量は、トナー全量に対して50重量%以下の範囲で添加することが好ましい。
【0055】
帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤を用いることができる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度の制御と廃水汚染の低減との点で、水に溶解しにくい素材を使用するのが好ましい。なお、本発明におけるトナーは、磁性材料を内包する磁性トナー及び磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
【0056】
トナー母粒子の製造は、例えば、結着樹脂と、着色剤、及び必要に応じて離型剤、帯電制御剤等とを混練、粉砕、分級する混練粉砕法;混練粉砕法にて得られた粒子を機械的衝撃力又は熱エネルギーにて形状を変化させる方法;結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された分散液と、着色剤、及び必要に応じて離型剤、帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化重合凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と、着色剤、及び必要に応じて離型剤、帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂と着色剤、及び必要に応じて離型剤、帯電制御剤等の溶液とを水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法;等が使用できる。また上記方法で得られたトナー母粒子をコアにして、さらに凝集粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造を持たせる製造方法を行ってもよい。
【0057】
以上のようにして製造したトナー母粒子の粒径は、体積平均粒径で2〜8μmの範囲であることが好ましく、3〜7μmの範囲であることがより好ましい。体積平均粒径が2μm以上であると、トナーの流動性が良好であり、また、キャリアから十分な帯電能が付与されるので、背景部へのカブリの発生や濃度再現性の低下を生じ難いので好ましい。また、体積平均粒径が8μm以下であると、微細なドットの再現性、階調性、粒状性の改善効果が良好であり、高画質画像を得ることができるので好ましい。
したがって、上述したトナーの体積平均粒径を有することによって、写真や絵画、パンフレット等の画像面積の大きく、濃度階調がある原稿の繰り返し複写においても微細な潜像のドットに対して、忠実な再現性が期待できるので好ましい。
【0058】
トナー母粒子は、現像性・転写効率の向上、高画質化の観点から擬似球形であることが好ましい。トナー母粒子の球形化度は、下記式(1)の形状係数SF1を用いて表すことができるが、本発明に用いられるトナー母粒子の係数係数ML2/Aの平均値(平均形状係数)は、145未満であることが好ましく、115以上140未満の範囲であることがより好ましく、120以上140未満の範囲であることがさらに好ましい。
【0059】
【数1】

【0060】
上記式において、MLは各々のトナー母粒子の最大長を表し、Aは各々のトナー母粒子の投影面積を表す。
形状係数SF1の平均値が140未満であると、良好な転写効率が得られ、高画質であるので好ましい。
なお、前記形状係数SF1の平均値(平均形状係数)は、250倍に拡大した1,000個のトナー像を光学顕微鏡から画像解析装置(LUZEX III、(株)ニレコ製)に取り込み、その最大長及び投影面積から、個々の粒子について前記SF1の値を求め平均したものである。
【0061】
本発明に用いられるトナー母粒子は、特に製造方法により限定されるものではなく、公知の方法を使用することができる。
【0062】
〔外添剤〕
本発明におけるトナーの外部添加剤(外添剤)は特に限定されないが、少なくとも1種は、粉体流動性、帯電制御等の機能を担う、1次粒径が平均粒径で7〜40nmの小径無機酸化物であることが好ましい。小径無機酸化物としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタン酸化物(酸化チタン、メタチタン酸等)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カーボンブラック等を挙げることができる。
これらのうち、特にシリカ粒子、酸化チタン粒子が好ましい。
特に、体積平均粒径が15〜40nmの酸化チタンを用いることが、透明性に影響を与えず、良好な帯電性、環境安定性、流動性、耐ケーキング性、安定した負帯電性・画質維持性が得られる点で好ましい。
【0063】
また、外添剤は、表面が予め疎水化処理されていることが好ましい。この疎水化処理により分散性が高くなり、トナーの粉体流動性改善のほか、帯電の環境依存性、耐キャリア汚染性に対してより効果的であるので好ましい。
また、小径無機微粒子については、表面処理することにより、分散性が高くなり、粉体流動性を上げる効果が大きくなるので好ましい。表面処理としては、具体的に、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、メチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等による疎水化処理が好ましく用いられる。
【0064】
さらに、当該小径無機酸化物に、付着力低減や帯電制御のため、体積平均粒径が20〜300nmの大径無機酸化物を添加することが好ましい。これらの大径無機酸化物微粒子としては、シリカ、酸化チタン、メタチタン酸、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナ、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化クロム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム等の微粒子が挙げられる。これらの中では、滑剤粒子や酸化セリウムを添加したトナーの精密な帯電制御を行う観点から、シリカ、酸化チタン、メタチタン酸から選ばれるものを用いること望ましい。
【0065】
また、特にフルカラー画像などの高転写効率が要求される画像においては、上記シリカは、真比重が1.3〜1.9であり、体積平均粒径が40〜300nmである単分散球形シリカであることが好ましく、体積平均粒径が80〜300nmである単分散球形シリカであることがより好ましい。真比重を1.9以下に制御することにより、トナー母粒子からの剥がれを抑制することができるので好ましい。また、真比重を1.3以上に制御することにより、凝集分散を抑制することができるので好ましい。当該単分散球形シリカの真比重は、1.4〜1.8の範囲であることがより好ましい。
【0066】
前記単分散球形シリカの平均粒径が80nm以上であると、トナーと感光体との非静電的付着力の低減に有効である。特に、現像機内のストレスによる単分散球形シリカのトナー母粒子への埋没が少なく、良好な現像性、転写向上効果を得ることができる。また、300nm以下であると、トナー母粒子から脱離しにくく、非静電的付着力の低減に有効であり、さらに、接触部位への移行が少なく、帯電阻害、画質欠損等の二次障害を引き起こすことがない。
当該単分散球形シリカの平均粒径は、100〜200nmであることがより好ましい。
【0067】
前記単分散球形シリカは、単分散かつ球形であるため、トナー母粒子表面に均一に分散し、安定したスペーサー効果を得ることができる。上記単分散の定義としては、凝集体を含め平均粒径に対する標準偏差で議論することができ、標準偏差として体積平均粒径D50×0.22以下であることが好ましい。また、球形の定義としては、Wadellの球形化度で議論することができ、球形化度が0.6以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。
なお、球形化度は、Wadellの球形化度は下記式より求めた。
球形化度=(実際の粒子と同じ体積を有する球の表面積)/(実際の粒子の表面積)
【0068】
上記式において、分子(=実際の粒子と同じ体積を有する球の表面積)は、平均粒径から計算により求めた。また、分母(=実際の粒子の表面積)は、(株)島津製作所製、粉体比表面積測定装置SS−100型を用い、BET比表面積より代用させた。
【0069】
シリカが好ましい理由としては、屈折率が1.5前後であり、粒径を大きくしても光散乱による透明度の低下、特にOHP表面への画像採取時のPE値(光透過性の指標)等に影響を及ぼさないことが挙げられる。
前記小径無機酸化物の添加量は、トナー母粒子100重量部に対し、0.5〜2.0重量部の範囲であることが好ましい。また、前記大径無機酸化物を添加する場合、該大粒径無機酸化物の添加量は、トナー母粒子100重量部に対し、1.0〜5.0重量部であることが好ましい。
【0070】
さらに外添剤として滑剤粒子を使用することもできる。
滑剤粒子としてグラファイト、二硫化モリブデン、滑石、脂肪酸、高級アルコール、脂肪族アルコール、脂肪酸金属塩等の固体潤滑剤や、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪族アミド類;カルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス;ミツロウのような動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス;及びそれらの変性物を併用してもよい。
これら滑剤粒子の形状係数SF1は、優れたクリーニング性を得るために、140以上であることがより好ましい。
【0071】
また、外添剤として、研磨剤を使用することもできる。
研磨剤としては、公知の無機酸化物を使用することができる。例えば、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、酸化マグネシウム、アルミナ、炭化ケイ素、酸化亜鉛、シリカ、酸化チタン、窒化ホウ素、ピロリン酸カルシウム、ジルコニア、チタン酸バリウム、チタン酸カルシウム、炭酸カルシウム等を挙げることができる。また、これらの複合材料を用いてもよい。
【0072】
トナー母粒子は、擬似球形であることが転写効率とクリーニング性の両立から好ましく、前記無機酸化物を添加した効果も、不定形のトナー母粒子の場合より優れたものとなる。すなわち、トナー母粒子に同一量の無機酸化物を添加した場合、不定形のトナー母粒子の場合に比べ、擬似球形トナー母粒子のトナーの粉体流動性はかなり高いものとなり、その結果、トナー帯電量として同程度であっても、擬似球形トナー母粒子のトナーは高い現像性、転写性を示すこととなる。
トナーは、例えば、前記トナー母粒子及び前記外部添加剤をヘンシェルミキサー又はVブレンダー等で混合することによって製造することができる。また、トナー母粒子を湿式にて製造する場合は、湿式にて外添することも可能である。
【0073】
(画像形成方法)
本発明の画像形成方法は、像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、前記像保持体表面に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程、前記像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程、及び、前記被転写体表面に転写されたトナー像を定着する定着工程、を含み、前記現像剤として本発明の静電荷像現像剤を用いる方法であることが好ましい。また、必要に応じて潜像保持体表面に残ったトナーをクリーニングするクリーニング工程とを含んでもよい。
【0074】
前記潜像形成工程とは、潜像保持体の表面を、帯電手段により一様に帯電した後、レーザー光学系やLEDアレイなどで像保持体に露光し、静電潜像を形成する工程である。前記帯電手段としては、コロトロン、スコロトロンなどの非接触方式の帯電機、及び、潜像保持体表面に接触させた導電性部材に電圧を印加することにより、像保持体表面を帯電させる接触方式の帯電機が挙げられ、いかなる方式の帯電機でもよい。しかし、オゾンの発生量が少なく、環境に優しく、かつ耐刷性に優れるという効果を発揮するという観点から、接触帯電方式の帯電機が好ましい。前記接触帯電方式の帯電機においては、導電性部材の形状はブラシ状、ブレード状、ピン電極状、ローラ状等のいずれでもよいが、ローラ状部材が好ましい。本発明の画像形成方法は、潜像形成工程においてなんら特別の制限を受けるものではない。
【0075】
前記現像工程とは、像保持体表面に、少なくともトナーを含む現像剤層を表面に形成させた現像剤保持体を接触若しくは近接させて、前記像保持体表面の静電潜像にトナーの粒子を付着させ、像保持体表面にトナー画像を形成する工程である。現像方式は、既知の方式を用いて行うことができるが、本発明に用いられる二成分現像剤による現像方式としては、カスケード方式、磁気ブラシ方式などがある。本発明の画像形成方法は、現像方式に関し、特に制限を受けるものではない。
【0076】
前記転写工程とは、像保持体表面に形成されたトナー画像を、被記録体に直接転写、或いは中間転写体に一度転写した画像を被転写体に再度転写して転写画像を形成する工程である。
像保持体からのトナー画像を紙等に転写する転写装置としては、コロトロンが利用できる。コロトロンは用紙を均一に帯電する手段としては有効であるが、被転写体である用紙に所定の電荷を与えるために、数kVという高圧を印加しなければならず、高圧電源を必要とする。また、コロナ放電によってオゾンが発生するため、ゴム部品や像保持体の劣化を引き起こすので、弾性材料からなる導電性の転写ロールを像保持体に圧接して、用紙にトナー画像を転写する接触転写方式が好ましい。本発明の画像形成方法においては、転写装置に関し、特に制限を受けるものではない。
【0077】
前記定着工程とは、被記録体表面に転写されたトナー画像を定着装置にて定着する工程である。定着装置としては、ヒートロールを用いる加熱定着装置が好ましく用いられる。加熱定着装置は、円筒状芯金の内部に加熱用のヒータランプを備え、その外周面に耐熱性樹脂被膜層あるいは耐熱性ゴム被膜層により、いわゆる離型層を形成した定着ローラと、この定着ローラに対し圧接して配置され、円筒状芯金の外周面あるいはベルト状基材表面に耐熱弾性体層を形成した加圧ローラあるいは加圧ベルトと、で構成される。未定着トナー画像の定着プロセスは、定着ローラと加圧ローラあるいは加圧ベルトとの間に未定着トナー画像が形成された被記録体を挿通させて、トナー中の結着樹脂、添加剤等の熱溶融による定着を行う。本発明の画像形成方法においては、定着方式については特に制限を受けるものではない。
【0078】
前記クリーニング工程とは、ブレード、ブラシ、ロール等を像保持体表面に直接接触させ、像保持体表面に付着しているトナー、紙粉、ゴミなどを除去する工程である。
最も一般的に採用されている方式として、ポリウレタン等のゴム製のブレードを潜像保持体に圧接させるブレードクリーニング方式である。これに対し、内部に磁石を固定配置し、その外周に回転可能な円筒状の非磁性体のスリーブを設け、そのスリーブ表面に磁性キャリアを保持させてトナーを回収する磁気ブラシ方式や、半導電性の樹脂繊維や動物の毛をロール状に回転可能にし、トナーと反対極性のバイアスをそのロールに印加してトナーを除去する方式でもよい。前者の磁気ブラシ方式では、クリーニングの前処理用コロトロンを設置してもよい。本発明の画像形成方法においては、クリーニング方式については少なくともブレードを有するクリーニング工程である。
【0079】
なお、本発明の画像形成方法において、フルカラー画像を作製する場合には、複数の像保持体がそれぞれ各色の現像剤保持体を有しており、その複数の像保持体及び現像剤保持体それぞれによる潜像形成工程、現像工程、転写工程及びクリーニング工程からなる一連の工程により、同一の被記録体表面に前記工程ごとの各色トナー画像が順次積層形成され、その積層されたフルカラーのトナー画像を、定着工程で熱定着する画像形成方法が好ましく用いられる。そして、前記電子写真用現像剤を、前記画像形成方法に用いることにより、例えば、小型、カラー高速化に適したタンデム方式においても、安定した現像、転写、定着性能を得ることができる。
【0080】
トナー画像を転写する被転写体(被記録体)としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。定着後における画像表面の平滑性をさらに向上させるには、前記被転写体の表面もできるだけ平滑であることが好ましく、例えば、普通紙の表面を樹脂等でコーティングしたコート紙、印刷用のアート紙等を好適に使用することができる。
【0081】
(画像形成装置)
本発明の画像形成装置は、像保持体と、前記像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記像保持体を露光して前記像保持体表面に静電潜像を形成させる露光手段と、トナーを含む現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、前記トナー像を前記像保持体から被転写体表面に転写する転写手段と、前記被転写体表面に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を有し、前記現像剤として本発明の静電荷像現像剤を用いる装置であることが好ましい。
前記転写手段では、中間転写体を用いて2回以上の転写を行ってもよい。
【0082】
前記像保持体、及び、前記の各手段は、前記の画像形成方法の各工程で述べた構成を好ましく用いることができる。
前記の各手段は、いずれも画像形成装置において公知の手段が利用できる。また、本発明で用いる画像形成装置は、前記した構成以外の手段や装置等を含むものであってもよい。また、本発明の画像形成装置は前記した手段のうちの複数を同時に行ってもよい。
【0083】
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、本発明の静電荷像現像剤を収納すると共に、像保持体表面上に形成された静電潜像を前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、像保持体、前記像保持体表面を帯電させるための帯電手段、及び、前記像保持体表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備えるプロセスカートリッジであることが好ましい。
【0084】
本発明のプロセスカートリッジは、画像形成装置に脱着されることが好ましい。
また、本発明のプロセスカートリッジは、その他必要に応じて、除電手段等、その他の部材を含んでもよい。
本発明のプロセスカートリッジは、公知の構成を採用してもよく、例えば、特開2008−209489号公報、及び、特開2008−233736号公報等を参照することができる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明を何ら限定するものではない。 なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」はすべて「重量部」を意味する。
【0086】
(各種特性の測定方法)
まず、実施例、比較例で用いたキャリア等の物性測定方法について説明する。
【0087】
<キャリア中にフェライト粒子おけるMgの元素含有量>
キャリアのフェライト粒子のマグネシウム元素量は、蛍光X線法により測定される。
蛍光X線による測定方法について説明する。
試料の前処理は、フェライト粒子を加圧成型器でで10t、1分間の加圧成型を行い、(株)島津製作所の蛍光X線(SRF−1500)を使用し、測定条件は管電圧49KV、管電流90mA、測定時間30分で測定した。
マグネシウム含有量が既知のサンプルを数種用意して測定して、検量線を作成し、その後、測定サンプルを測定し、検量線からその含有量を計算した。
【0088】
<キャリア中のフェライト粒子における平均分布比D>
エポキシ樹脂でキャリアを包埋し、ダイヤモンドナイフで包埋品の表面をカットした。キャリアの断面が十分に確保できる場所まで、カットを続け、測定用サンプルとした。次に、エネルギー分散型X線分析装置(EMAX、(株)堀場製作所製)にて、フェライト粒子の断面全体中の鉄元素含有量Feとマグネシウム元素含有量Mgとの重量比(Mg/Fe)W1を測定し、また、フェライト粒子の断面における粒子の外接円の1つの直径上で前記外接円の中心から半径の1/2の長さとなる2つの点を2つの対向する頂点とした正方形中の鉄元素含有量Feとマグネシウム元素含有量Mgとの重量比(Mg/Fe)W2を測定した。測定した各フェライト粒子において、D’=W1/W2を算出し、さらに50個以上のフェライト粒子のD’の平均値を求め、平均分布比Dを算出した。
【0089】
<融点及びガラス転移温度の測定>
融点及びガラス転移温度の測定は、「DSC−20」(セイコー電子工業(株)製)を使用し、試料10mgを一定の昇温速度(10℃/min)で加熱して測定した。
結晶性樹脂の融点の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時のJIS K−7121:87に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めた。
なお、結晶性樹脂には、複数の融解ピークを示す場合があるが、本発明においては、最大のピークをもって融点とみなした。
また、非結晶性樹脂のガラス転移温度は、ASTM D3418−82に規定された方法(DSC法)で測定した値である。
【0090】
<重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定>
本発明の静電荷象現像用トナーにおいて、特定の分子量分布は、以下の条件で行ったものである。GPCは「HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)製)装置」を用い、カラムは「TSKgel、SuperHM−H(東ソー(株)製6.0mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min.、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、IR検出器を用いて実験を行った。また、検量線は、東ソー(株)製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作製した。
【0091】
<粒子の平均粒径の測定>
粒子の体積平均粒径測定には、コールターマルチサイザー−II型(ベックマン・コールター社製)を用いた。この場合、50μmのアパーチャーを用いて測定した。測定した粒子の粒径は、特に断りのない場合、体積平均粒径を表すものとする。
測定法としては分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液2ml中に測定試料を1.0mg加える。これを前記電解液100ml中に添加して試料を懸濁した電解液を作製した。
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザー−II型により、アパーチャー径として50μmアパーチャーを用いて1〜30μmの粒子の粒度分布を測定して体積平均分布、個数平均分布を求める。測定する粒子数は50000であった。
粒子の粒径がおよそ5μm以下の場合は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(LA−700、(株)堀場製作所製)を用いて測定した。
さらに、粒径がナノメーターオーダーの場合は、BET式の比表面積測定装置(Flow SorbII2300、(株)島津製作所製)を用いて測定した。
【0092】
(芯材1(フェライト粒子1)の作製)
Fe23 1,000部、Mg(OH)2 100部、CaCO3 20部を混合し、湿式ボールミルで25時間混合/粉砕してスプレードライヤーにより造粒、乾燥した後ロータリーキルンを用いて900℃、7時間の仮焼成1を行った。こうして得られた仮焼成1物を、湿式ボールミルで2時間粉砕し、平均粒径を2.0μmとした後、さらにスプレードライヤーにより造粒、乾燥した後ロータリーキルンを用いて1,000℃、6時間の仮焼成2を行った。こうして得られた仮焼成2物を、湿式ボールミルで5時間粉砕し、平均粒径を5.6μmとした後、さらにスプレードライヤーにより造粒、乾燥した後、電気炉で温度1,300℃とし、5時間の本焼成を行った後に温度を1,150℃に落とし、4時間の追加焼成を行った。追加焼成の後、解砕工程、分級工程を経て、平均粒径35μmのMgフェライト粒子1を調製した。
【0093】
(芯材2〜11(フェライト粒子2〜11)の作製)
表1及び表2の条件に変更した以外は、芯材1の調製と同様な方法で、平均粒径35μmの芯材2〜11をそれぞれ得た。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
(コート液1の調製)
・スチレン−アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体(84.5:0.5:15(モル比)、重量平均分子量4万) 36重量部
・カーボンブラック VXC72(キャボット社製) 4重量部
・トルエン 250重量部
・イソプロピルアルコール 50重量部
上記成分とガラスビーズ(粒径:1mm、トルエンと同量)とを関西ペイント(株)製サンドミルに投入し、回転速度1,200rpmで30分間撹拌し、固形分11%のコート液1を調製した。
【0097】
(コート液2の調製)
・スチレン−アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体(84.5:0.5:15(モル比)、重量平均分子量4万) 36重量部
・酸化マグネシウム(体積平均粒径0.7μm) 8重量部
・トルエン 300重量部
・イソプロピルアルコール 50重量部
上記成分とガラスビーズ(粒径:1mm、トルエンと同量)とを関西ペイント(株)製サンドミルに投入し、回転速度1,200rpmで30分間撹拌し、固形分11%のコート液2を調製した。
【0098】
(キャリア1〜11の作製)
真空脱気型ニーダーに芯材1を2,000重量部入れ、さらにコート液1を380重量部入れ、撹拌しながら、60℃にて1気圧に対し−200mmHgの真空度まで減圧し20分混合した後、昇温/減圧させ90℃/1気圧に対し−720mmHgの真空度で30分間撹拌乾燥させ、被覆樹脂層を有するキャリア粒子を得た。次に75μmメッシュの篩分網で篩分を行い、キャリア1を得た。
また、表3の条件に変更した以外は、キャリア1の調製と同様な方法で、キャリア2〜11をそれぞれ得た。
得られたキャリア1〜11の芯材中のマグネシウム含有量(重量%)と、キャリア粒子断面におけるマグネシウム分布比Dとをそれぞれ表4に示す。
【0099】
【表3】

【0100】
【表4】

【0101】
(着色剤粒子分散液1)
・シアン顔料:銅フタロシアニン、C.I.Pigment Blue 15:3(大日精化工業(株)製) 50重量部
・アニオン性界面活性剤:ネオゲンSC(第一工業製薬(株)製) 5重量部
・イオン交換水 200重量部
上記を混合し、IKA社製ウルトラタラックスにより5分間、さらに超音波バスにより10分間分散し、固形分21%の着色剤粒子分散液1を得た。(株)堀場製作所製粒度測定器LA−700にて体積平均粒径を測定したところ、160nmであった。
【0102】
(離型剤粒子分散液1)
・パラフィンワックス:HNP−9(日本精鑞(株)製) 19重量部
・アニオン性界面活性剤:ネオゲンSC(第一工業製薬(株)製) 1重量部
・イオン交換水 80重量部
上記を耐熱容器中で混合し、90℃に昇温して30分、撹拌を行った。次いで、容器底部より溶融液をゴーリンホモジナイザーへと流通し、5MPaの圧力条件のもと、3パス相当の循環運転を行った後、圧力を35MPaに昇圧し、さらに3パス相当の循環運転を行った。こうしてできた乳化液を前記耐熱溶液中で40℃以下になるまで冷却し、離型剤粒子分散液1を得た。(株)堀場製作所製粒度測定器LA−700にて体積平均粒径を測定したところ、240nmであった。
【0103】
(樹脂粒子分散液1)
<油層>
・スチレン(和光純薬工業(株)製) 30重量部
・アクリル酸n−ブチル(和光純薬工業(株)製) 10重量部
・β−カルボキシエチルアクリレート(ローディア日華(株)製) 1.3重量部
・ドデカンチオール(和光純薬工業(株)製) 0.4重量部
<水層1>
・イオン交換水 17重量部
・アニオン性界面活性剤(ダウファックス、ダウケミカル社製) 0.4重量部
<水層2>
・イオン交換水 40重量部
・アニオン性界面活性剤(ダウファックス、ダウケミカル社製) 0.05重量部
・ペルオキソ二硫酸アンモニウム(和光純薬(株)製) 0.4重量部
上記の油層成分と水層1の成分をフラスコに入れて撹拌混合し単量体乳化分散液とした。反応容器に上記水層2の成分を投入し、容器内を窒素で十分に置換し、撹拌をしながらオイルバスで反応系内が75℃になるまで加熱した。反応容器内に上記の単量体乳化分散液を3時間かけて徐々に滴下し、乳化重合を行った。滴下終了後更に75℃で重合を継続し、3時間後に重合を終了させ、樹脂粒子分散液1を得た。
【0104】
(トナー1の作製)
・樹脂粒子分散液1 150重量部
・着色剤粒子分散液1 30重量部
・離型剤粒子分散液1 40重量部
・ポリ塩化アルミニウム 0.4重量部
上記の成分をステンレス製フラスコ中でIKA社製のウルトラタラックスを用い十分に混合、分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら48℃まで加熱した。48℃で80分保持した後、ここに上記と同じ樹脂粒子分散液を緩やかに70重量部追加した。
その後、濃度0.5mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用いて系内のpHを6.0に調整した後、ステンレス製フラスコを密閉し、撹拌軸のシールを磁力シールして攪拌を継続しながら97℃まで加熱して3時間保持した。反応終了後、降温速度を1℃/分で冷却し、ヌッチェ式吸引濾過により固液分離を行った。これをさらに40℃のイオン交換水3,000重量部を用いて再分散し、15分間300rpmで撹拌・洗浄した。この洗浄操作をさらに5回繰り返し、ヌッチェ式吸引濾過によりNo.5Aのろ紙を用いて固液分離を行った。次いで真空乾燥を12時間継続してトナー母粒子を得た。
このトナーに、ヘキサメチルジシラザン(以下、「HMDS」と略す場合がある。)で表面疎水化処理した一次粒子平均粒径40nmのシリカ(SiO2)粒子と、メタチタン酸とイソブチルトリメトキシシランの反応生成物である一次粒子平均粒径20nmのメタチタン酸化合物粒子とを、それぞれの着色粒子の表面に対する被覆率が40%となるように添加し、ヘンシェルミキサーで混合し、トナー1を作製した。
【0105】
(実施例1〜6、及び、比較例1〜5)
表4に示したキャリアとトナー1とが100:6の重量比になるように混合し、現像剤をそれぞれ得た。得られた現像剤を用いて、下記の評価をそれぞれ行った。
表5に評価結果を示す。
【0106】
<現像剤の評価方法>
富士ゼロックス(株)製DocuCentreColor400改造機に、得られた現像剤を仕込み、10℃、10%RHの環境下で、5cm×10cmのソリッドパッチを20,000枚印刷した。この際、連続印刷とせず、1枚ごとに現像器を停止させた後に次の印刷を行うようにした。1枚目の印刷物と20,000枚目の印刷物との濃度をX−rite社製の反射濃度計X−rite404を用いて測定し、1枚目の濃度をC1、20,000枚目の濃度をC2とした。
次に、現像器をはずし、32℃、88%RHの環境下で4日間放置し、放置後、同様に5cm×10cmのソリッドパッチを5枚印刷した。5枚目の印刷物の濃度をC5とした。
ストレス印刷による濃度変化についての評価基準は、C2/C1濃度変化率が5%未満である場合を◎、5〜10%である場合を○、10%を超える場合を×とした。
放置による濃度変化についての評価基準は、C5/C1濃度変化率が5%未満である場合を◎、5〜10%である場合を○、10%を超える場合を×とした。
印刷物の外観についての評価基準は、20,000枚目の印刷物の外観に異常なしである場合を◎、筋が数本見られる場合を○、全面に筋の発生が見られる場合を×とした。
なお、C2/C1濃度変化率、及び、C5/C1濃度変化率は、以下のように求めた。
・C2/C1濃度変化率=ΔC2/C1×100[%](ΔC2=|C1−C2|)
・C5/C1濃度変化率=ΔC5/C1×100[%](ΔC5=|C1−C5|)
【0107】
【表5】

【符号の説明】
【0108】
10:フェライト粒子の断面
12:フェライト粒子の断面10における粒子の外接円
14:外接円12の直径
16:外接円12の中心
18a,18b:外接円12の直径14上で外接円12の中心16から半径の1/2の長さとなる点
20:点18a及び点18bを2つの対向する頂点とした正方形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム元素を1.0〜14.0重量%含むフェライト粒子を有し、
前記フェライト粒子中のマグネシウム元素の平均分布比Dが1.1〜2.0であることを特徴とする
静電荷像現像用キャリア。
ただし、前記フェライト粒子の断面全体中の鉄元素含有量Feとマグネシウム元素含有量Mgとの重量比(Mg/Fe)をW1とし、前記フェライト粒子の断面における粒子の外接円の1つの直径上で前記外接円の中心から半径の1/2の長さとなる2つの点を2つの対向する頂点とした正方形中の鉄元素含有量Feとマグネシウム元素含有量Mgとの重量比(Mg/Fe)をW2としたとき、D’=W1/W2と定義し、50個以上の粒子のD’の平均値を平均分布比Dとする。
【請求項2】
鉄化合物及びマグネシウム化合物を含むキャリア材料を800℃以上1,000℃以下で焼成する仮焼成工程、
前記仮焼成工程の後、焼成したキャリア材料を1,000℃を越え1,400℃以下で焼成する本焼成工程、及び、
前記本焼成工程の後、前記本焼成工程での焼成温度より低い温度で焼成する追加焼成工程、
を含む請求項1に記載の静電荷像現像用キャリアの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の静電荷像現像用キャリア、又は、請求項2に記載の製造方法により製造された静電荷像現像用キャリアと、静電荷像現像用トナーとを含む静電荷像現像剤。
【請求項4】
請求項3に記載の静電荷像現像剤を収納すると共に、
像保持体表面上に形成された静電潜像を前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、
像保持体、前記像保持体表面を帯電させるための帯電手段、及び、前記像保持体表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を備える
プロセスカートリッジ。
【請求項5】
像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、
前記像保持体表面に形成された静電潜像をトナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程、
前記像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体表面に転写する転写工程、及び、
前記被転写体表面に転写されたトナー像を定着する定着工程、を含み、
前記現像剤として請求項3に記載の静電荷像現像剤を用いる
画像形成方法。
【請求項6】
像保持体と、
前記像保持体を帯電させる帯電手段と、
帯電した前記像保持体を露光して前記像保持体表面に静電潜像を形成させる露光手段と、
トナーを含む現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、
前記トナー像を前記像保持体から被転写体表面に転写する転写手段と、
前記被転写体表面に転写されたトナー像を定着する定着手段と、を有し、
前記現像剤として請求項3に記載の静電荷像現像剤を用いる
画像形成装置。

【図1】
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