説明

静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成方法及び画像形成装置

【課題】電磁誘導加熱により均一に溶融する静電荷像現像用トナーを提供すること。
【解決手段】熱可塑性結着樹脂と、電磁誘導加熱により発熱する発熱材料と、熱伝導材料と、を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、トナーを含む現像剤により現像して、トナー像を形成する現像工程、前記トナー像を被転写体表面に転写して、転写トナー像を得る転写工程、及び、前記転写トナー像を電磁誘導加熱で加熱して定着する定着工程を含み、前記トナーが前記静電荷像現像用トナーであることを特徴とする画像形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー、静電荷像現像用トナーの製造方法、静電荷像現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁誘導加熱は任意の箇所を加熱することができることから、必要な箇所だけを加熱させることで省エネルギー化を達成できるため、盛んに研究開発されている分野のひとつである。この特性のため複写機への電磁誘導加熱の応用も幅広く、現在は定着手段の加熱に主に使用されているが、直接トナーそのものを加熱する報告もされている。その例としては、トナーの樹脂そのもの、磁性材料、導電材料などを発熱材料として加熱する例が多く報告されている。しかし、発熱材料は現像剤に対して少量しか含まれないため実際の発熱量は少なく、十分な定着エネルギーが得られないことがあるため、効率よく発熱させる必要がある。
【0003】
その方法としては、発熱効率の高い磁性材料を使用する例が挙げられる(特許文献1)。
また、マイクロ波を誘電損失により吸収発熱する材料と磁気損失発熱性材料とをトナーに含有し、誘電損失により吸収発熱する材料からの発熱によって磁気損失発熱性材料を加熱しマイクロ波吸収を向上させ、この相乗効果によりマイクロ波を効率よく定着エネルギーへと変換させる例がある(特許文献2)。
また、特許文献3には、90℃においては溶融粘度が低く、25℃においては針入度が低いワックスを含有させることで、発熱した際には溶融しやすく室温では溶融しにくくすることで定着性を確保した例も報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭57−42051号公報
【特許文献2】特開昭58−220164号公報
【特許文献3】特開2007−248819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トナーに含まれる発熱材料の量は結着樹脂と比べれば少なく、十分な定着エネルギーが得られないことがある。電磁誘導により発熱材料から発生される熱をトナー樹脂中に効率よく拡散させなければ、低融点化するような材料を樹脂に添加したとしても発熱材料付近に局所的な溶融が生じてしまう。その結果、トナー全体の溶融を考えた場合には局所的な溶融による定着ムラが生じることがある。また、その改善のため余分な加熱が必要となるという問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、電磁誘導加熱により均一に溶融する静電荷像現像用トナーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は下記の<1>〜<17>に記載の手段により解決された。
<1>熱可塑性結着樹脂と、電磁誘導加熱により発熱する発熱材料と、熱伝導材料と、を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー、
<2>前記熱伝導材料が前記熱可塑性結着樹脂よりも熱伝導率が高い、<1>に記載の静電荷像現像用トナー、
<3>前記熱伝導材料の熱伝導率が、1,000W/m・K以上である、<1>又は<2>に記載の静電荷像現像用トナー、
<4>前記熱伝導材料のアスペクト比が10以上である、<1>〜<3>いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、
<5>前記発熱材料よりも前記熱伝導材料のアスペクト比が高い、<1>〜<4>いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、
<6>前記熱伝導材料がナノチューブ又はナノワイヤーである、<1>〜<5>いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、
<7>前記熱伝導材料がカーボンナノチューブ又はSiナノワイヤーである、<1>〜<6>いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、
<8>前記発熱材料が金属酸化物粒子又は金属粒子である、<1>〜<7>いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、
<9>少なくとも結着樹脂及び着色剤を含む乳化液を凝集し凝集体を形成する凝集工程と、該凝集体を融合させ合一させる合一工程と、を有する、<1>〜<8>いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法、
<10>結着樹脂及び着色剤を、溶媒中に溶解又は分散して混合液を調製する混合工程と、前記混合液を水系媒体中に添加し、分散懸濁して、粒子形成された分散懸濁液を調製する分散懸濁工程と、前記分散懸濁液より溶媒を除去する溶媒除去工程とを、少なくとも有してなる、<1>〜<8>いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法、
<11><1>〜<8>いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーとキャリアとを含む、静電荷像現像剤、
<12>少なくとも<1>〜<8>いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーを収容している、トナーカートリッジ、
<13>現像剤保持体を備え、<1>〜<8>いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、又は、<11>に記載の静電荷像現像剤を収容するプロセスカートリッジ、
<14>潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、トナーを含む現像剤により現像して、トナー像を形成する現像工程、前記トナー像を被転写体表面に転写して、転写トナー像を得る転写工程、及び、前記転写トナー像を電磁誘導加熱で加熱して定着する定着工程を含み、前記トナーが<1>〜<8>いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、又は、前記現像剤が<11>に記載の静電荷像現像剤であることを特徴とする画像形成方法、
<15>前記電磁誘導加熱で使用する周波数が1GHz以下である、<14>に記載の画像形成方法、
<16>潜像保持体、前記潜像保持体を帯電させる帯電手段、帯電した前記潜像保持体を露光して前記潜像保持体表面に静電潜像を形成する露光手段、トナーを含む現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段、前記トナー像を前記潜像保持体から被転写体表面に転写する転写手段、及び、前記被転写体表面に転写された前記トナー像を定着する定着手段を有し、前記定着手段がトナー像を電磁誘導加熱で定着する定着手段であり、前記トナーが<1>〜<8>いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、又は、前記現像剤が<11>に記載の静電荷像現像剤であることを特徴とする画像形成装置、
<17>前記電磁誘導加熱で使用する周波数が1GHz以下である、<16>に記載の画像形成装置。
【発明の効果】
【0008】
前記<1>に記載の実施形態によれば、電磁誘導加熱により発熱する発熱材料と熱伝導材料を有していない場合に比べ、電磁誘導加熱により均一に溶融する静電荷像現像用トナーを提供することができる。
前記<2>に記載の実施形態によれば、熱伝導材料が結着樹脂よりも熱伝導率が高くない場合に比べ、強度に優れた画像が得られる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
前記<3>に記載の実施形態によれば、熱伝導材料の熱伝導率が、1,000W/m・K未満である場合に比べ、より強度に優れた画像が得られる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
前記<4>に記載の実施形態によれば、熱伝導材料のアスペクト比が10未満の場合に比べ、より強度に優れた画像が得られる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
前記<5>に記載の実施形態によれば、発熱材料よりも熱伝導材料のアスペクト比が高くない場合に比べ、より強度に優れた画像が得られる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
前記<6>に記載の実施形態によれば、熱伝導材料がナノチューブ又はナノワイヤーでない場合に比べ、より強度に優れた画像が得られる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
前記<7>に記載の実施形態によれば、熱伝導材料がカーボンナノチューブ又はSiナノワイヤーでない場合に比べ、より強度に優れた画像が得られる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
前記<8>に記載の実施形態によれば、発熱材料が金属酸化物粒子又は金属粒子でない場合に比べ、より強度に優れた画像が得られる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
前記<9>に記載の実施形態によれば、本製造方法を適用しない場合に比べ、より強度に優れた画像が得られる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
前記<10>に記載の実施形態によれば、本製造方法を適用しない場合に比べ、より強度に優れた画像が得られる静電荷像現像用トナーを提供することができる。
前記<11>に記載の実施形態によれば、本構成を有していない場合に比べ、定着ムラの発生が抑制され、画像強度に優れた静電荷像現像剤を提供することができる。
前記<12>に記載の実施形態によれば、本構成を有していない場合に比べ、定着ムラの発生が抑制され、画像強度に優れたトナーカートリッジを提供することができる。
前記<13>に記載の実施形態によれば、本構成を有していない場合に比べ、定着ムラの発生が抑制され、画像強度に優れたプロセスカートリッジを提供することができる。
前記<14>に記載の実施形態によれば、本構成を有していない場合に比べ、定着ムラの発生が抑制され、画像強度に優れた画像形成方法を提供することができる。
前記<15>に記載の実施形態によれば、本構成を有していない場合に比べ、定着ムラの発生が抑制され、画像強度に優れた画像形成方法を提供することができる。
前記<16>に記載の実施形態によれば、本構成を有していない場合に比べ、定着ムラの発生が抑制され、画像強度に優れた画像形成装置を提供することができる。
前記<17>に記載の実施形態によれば、本構成を有していない場合に比べ、定着ムラの発生が抑制され、画像強度に優れた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の画像形成装置に用いられる定着手段の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
I.静電荷像現像用トナー
本実施形態の静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)は、熱可塑性結着樹脂と、電磁誘導加熱により発熱する発熱材料と、熱伝導材料と、を含有することを特徴とする。以下、本実施形態の静電荷像現像用トナーについて説明する。
なお、「A〜B」等の数値範囲の表記は、特に断りのない限り「A以上B以下」と同義であり、数値範囲の両端の値を含むものとする。
【0011】
(熱可塑性結着樹脂)
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、熱可塑性結着樹脂を含有する。
熱可塑性結着樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のエチレン系樹脂、ポリスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)等のスチレン系樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリル等の(メタ)アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂及びこれらの共重合樹脂が挙げられるが、静電潜像現像用トナーとして用いる際の帯電安定性や現像耐久性の観点からスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂とスチレン−(メタ)アクリル系共重合樹脂及びポリエステル樹脂が好ましい。
【0012】
前記ポリエステル樹脂の重合に用いる重合性単量体としては、例えば、高分子データハンドブック:基礎編」(高分子学会編:培風館)に記載されているような重合性単量体成分が例示でき、従来公知の2価又は3価以上のカルボン酸と、2価又は3価以上のアルコールが挙げられる。これらの重合性単量体成分の具体例としては、2価のカルボン酸としては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、マロン酸、メサコニン酸等の二塩基酸、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステル、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の脂肪族不飽和ジカルボン酸などが挙げられる。3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,2,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0013】
2価のアルコールとしては、例えば、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド又は(及び)プロピレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。3価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調整等の目的で、酢酸、安息香酸等の1価の酸や、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等の1価のアルコールも使用することができる。
【0014】
前記ポリエステル樹脂は、前記の重合性単量体成分の中から任意の組合せで、例えば、「重縮合」(化学同人、1971年刊)、「高分子実験学(重縮合と重付加)」:(共立出版、1958年刊)や「ポリエステル樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社編、1988年刊)等に記載の従来公知の方法を用いて合成することができ、エステル交換法や直接重縮合法等を単独で、又は、組み合せて用いられる。
【0015】
また前記スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂及びこれらの共重合樹脂を構成する重合性単量体としては以下の単量体が挙げられる。
スチレン系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレンや、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン等のアルキル鎖を持つアルキル置換スチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン等のハロゲン置換スチレン、4−フルオロスチレン、2,5−ジフルオロスチレン等のフッ素置換スチレン等が挙げられる。
【0016】
(メタ)アクリル酸系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソヘキシル、(メタ)アクリル酸イソヘプチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ジフェニルエチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチルフェニル、(メタ)アクリル酸ターフェニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0017】
前記スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂及びこれらの共重合樹脂にカルボキシ基を含有させる場合は、カルボキシ基を有する重合性単量体とともに共重合させることによって得られる。
このような重合性単量体の具体例としては、アクリル酸、アコニット酸、アトロパ酸、アリルマロン酸、アンゲリカ酸、イソクロトン酸、イタコン酸、10−ウンデセン酸、エライジン酸、エルカ酸、オレイン酸、オルト−カルボキシケイ皮酸、クロトン酸、クロロアクリル酸、クロロイソクロトン酸、クロロクロトン酸、クロロフマル酸、クロロマレイン酸、ケイ皮酸、シクロヘキセンジカルボン酸、シトラコン酸、ヒドロキシケイ皮酸、ジヒドロキシケイ皮酸、チグリン酸、ニトロケイ皮酸、ビニル酢酸、フェニルケイ皮酸、4−フェニル−3−ブテン酸、フェルラ酸、フマル酸、ブラシジン酸、2−(2−フリル)アクリル酸、ブロモケイ皮酸、ブロモフマル酸、ブロモマレイン酸、ベンジリデンマロン酸、ベンゾイルアクリル酸、4−ペンテン酸、マレイン酸、メサコン酸、メタクリル酸、メチルケイ皮酸、メトキシケイ皮酸等が挙げられる。
【0018】
本実施形態において、前記スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂及びこれらの共重合樹脂等の熱可塑性結着樹脂の重合時に連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に制限はないが、チオール成分を有する化合物を用いることができる。具体的には、ヘキシルメルカプタン、ヘプチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ノニルメルカプタン、デシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン類が好ましく、特に分子量分布が狭く、そのため高温時のトナーの保存性が良好になる点で好ましい。
【0019】
本実施形態における前記熱可塑性結着樹脂には、必要に応じて架橋剤を添加することもある。
このような架橋剤の具体例としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族の多ビニル化合物類;フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、テレフタル酸ジビニル、ホモフタル酸ジビニル、トリメシン酸ジビニル/トリビニル、ナフタレンジカルボン酸ジビニル、ビフェニルカルボン酸ジビニル等の芳香族多価カルボン酸の多ビニルエステル類;ピリジンジカルボン酸ジビニル等の含窒素芳香族化合物のジビニルエステル類;ピロムチン酸ビニル、フランカルボン酸ビニル、ピロール−2−カルボン酸ビニル、チオフェンカルボン酸ビニル等の不飽和複素環化合物カルボン酸のビニルエステル類;ブタンジオールメタクリレート、ヘキサンジオールアクリレート、オクタンジオールメタクリレート、デカンジオールアクリレート、ドデカンジオールメタクリレート等の直鎖多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ネオペンチルグリコールジメタクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン等の分枝、置換多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類;コハク酸ジビニル、フマル酸ジビニル、マレイン酸ビニル/ジビニル、ジグリコール酸ジビニル、イタコン酸ビニル/ジビニル、アセトンジカルボン酸ジビニル、グルタル酸ジビニル、3,3’−チオジプロピオン酸ジビニル、trans−アコニット酸ジビニル/トリビニル、アジピン酸ジビニル、ピメリン酸ジビニル、スベリン酸ジビニル、アゼライン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、ドデカン二酸ジビニル、ブラシル酸ジビニル等の多価カルボン酸の多ビニルエステル類;等が挙げられる。本実施形態において、これらの架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。前記架橋剤の好ましい含有量は、重合性単量体総重量の0.05〜5重量%の範囲が好ましく、0.1〜1.0重量%の範囲がより好ましい。
【0020】
本実施形態におけるトナーに用いる樹脂のうち、重合性単量体のラジカル重合により製造することができるものはラジカル重合用開始剤を用いて重合することができる。ここで用いるラジカル重合用開始剤としては、特に制限はなく、公知のラジカル重合開始剤が用いられる。
【0021】
(発熱材料)
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、電磁誘導加熱により発熱する発熱材料を含有する。
発熱材料としては、金属、合金、金属酸化物等が挙げられ、鉄、ニッケル、コバルト、銅、イットリウム−鉄−ガーネット(YIG)、マグネタイト、ヘマタイト、コバルト添加酸化鉄、フェライト等が挙げられ、中でも本実施形態においては、強磁性体に該当するものが好ましく、鉄、ニッケル、フェライト、YIGがより好ましく、フェライトが特に好ましい。
【0022】
また、本実施形態においては、前記発熱材料の形状は、粒子状であることが好ましく、金属酸化物粒子及び金属粒子がより好ましい。発熱材料の形状が粒子状であることにより、発熱材料と樹脂との接触面積が増え発熱効率に優れる。なお、ここでいう粒子状とは、球状、回転楕円状、略球状、陥没球、粉砕物状、フレーク、小板、繊維、ウィスカ等が含まれる。中でも本実施形態においては、球状、回転楕円状、略球状、粉砕物が好ましい。
より詳細には、発熱材料のアスペクト比は10未満が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3がさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると、発熱効率が高くなるため好ましい。
なお、ここでいう発熱材料のアスペクト比は、発熱材料が球状、回転楕円体、略球状、陥没球及び粉砕物等の場合には、最大径/最小径を意味する。最大径とは、粒子の投影図の外側輪郭線上の任意の2点を、その間の長さが最大になるように選んだときの長さをいい、最小径とは、外側輪郭線上の任意の2点を、その間の長さが最小になるように選んだときの長さをいう。また、発熱材料がフレーク、小板等の板状の場合には板径/板厚を意味する。さらに、繊維、ウィスカ等の繊維状の場合には長さ/直径を意味する。
また、アスペクト比が上記の範囲内である発熱材料の体積平均粒子径は、500nm以下が好ましく、200nm以下がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、同じ発熱材と樹脂とを用いた場合、同じ重さの発熱材料ならば体積平均粒子径が小さいほうが全体の接触面積が大きくなるため含有量を少なくでき、画像、材料コストに優れる。また、3nm以上が好ましい。
発熱材料のアスペクト比及び体積平均粒子径は、例えばナノ粒子アナライザーXL−1、サブミクロン粒子アナライザーN5、レーザ回折散乱法粒度分布測定装置LS13 320、精密粒度分布測定装置Multisizer3等の装置(ベックマン・コールター(株)製)により測定することができる。
【0023】
発熱材料の含有量は、静電荷像現像用トナーの総重量を100重量%として、1〜30重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましく、1〜15重量%がさらに好ましい。上記の数値の範囲内であると、画質上の影響が少ないため好ましい。
【0024】
(熱伝導材料)
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、熱伝導材料を含有する。
本実施形態においては、熱伝導材料は、熱可塑性結着樹脂の熱伝導率よりも高い熱伝導率を有する材料であることが好ましい。
より詳細には、熱伝導材料単体での熱伝導率が10W/m・K以上であることが好ましく、100W/m・K以上がより好ましく、1,000W/m・K以上がさらに好ましい。熱伝導材料単体での熱伝導率の上限は特に制限されず、高ければ高いほど好ましいが、10,000W/m・K以下が好ましく、3,000W/m・K以下のものがより好ましい。上記の数値の範囲内であると、熱伝導材料は、熱可塑性結着樹脂の熱伝導率よりも高く、熱伝導率を向上させる効果に優れる。
なお、熱可塑性樹脂の熱伝導率の例を挙げると、ポリエチレンが0.33W/m・K、ポリプロピレンが0.12W/m・K、ポリエチレンテレフタレートが0.15W/m・K、塩化ビニルが0.13W/m・K、ABSが0.20W/m・Kのように、大きく見積もっても0.5以下W/m・Kである。一方、熱伝導材料の熱伝導率は、例えば銅が350W/m・K、カーボンナノチューブが1,400W/m・K、シリコンが148W/m・Kのように熱可塑性樹脂の熱伝導率と比較して大きい。
【0025】
熱伝導材料としては、導電性材料又は絶縁性材料のいずれであってもよい。
特に電気絶縁性が要求されない場合には、熱伝導材料としては金属系化合物や導電性炭素化号物などが好ましく用いられる。これらの中でも、熱伝導性に優れることから、グラファイト、炭素繊維などの導電性炭素材料、銅、銀、金などの各種金属を微粒子化した導電性金属粉又は各種金属を繊維状に加工した導電性金属繊維、各種フェライト類、酸化亜鉛、などの金属酸化物、シリコン単結晶よりなるシリコンナノワイヤを好ましく用いることができる。
【0026】
電気絶縁性が要求される場合には、熱伝導材料としては電気絶縁性を示す化合物が好ましく用いられる。電気絶縁性とは具体的には、好ましくは電気抵抗率1Ω・cm以上のものを指し、より好ましくは10Ω・cm以上、さらに好ましくは105Ω・cm以上のものを指す。電気抵抗率の上限には特に制限は無いが、好ましくは1018Ω・cm以下である。本発明の高熱伝導性熱可塑性樹脂組成物から得られる成形体の電気絶縁性も上記範囲にあることが好ましい。
【0027】
電気絶縁性を示す化合物としては具体的には、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化銅、亜酸化銅等の金属酸化物、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、等の金属窒化物、炭化ケイ素等の金属炭化物、炭酸マグネシウムなどの金属炭酸塩、ダイヤモンド等の絶縁性炭素材料、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物等が例示される。
また、これら熱伝導材料は天然物であってもよいし、合成されたものであってもよい。天然物の場合、産地等には特に限定はなく、適宜選択することができる。これら熱伝導材料は、1種類のみを単独で用いてもよいし、形状、平均粒子径、種類、表面処理剤等が異なる2種以上を併用してもよい。
【0028】
熱伝導材料の形状については、種々の形状のものを適応可能である。例えば粒子状、ナノ粒子、凝集粒子状、チューブ状、ナノチューブ状、ワイヤ状、ナノワイヤ状、ロッド状、針状、板状、不定形、ラグビーボール状、六面体状、大粒子と微小粒子とが複合化した複合粒子状など種々の形状が例示される。
【0029】
本実施形態においては、前記熱伝導材料のアスペクト比が10以上であることが好ましい。また、発熱材料よりもアスペクト比の高い熱伝導材料をトナーに分散させることが好ましい。アスペクト比の高い熱伝導材料を分散することにより、熱可塑性結着樹脂中での発熱材料周辺に集中する熱の偏りを抑え、より均一な熱可塑性樹脂の溶融される。
従って、本実施形態においては、熱伝導材料はチューブ状、ナノチューブ状、ワイヤ状、ナノワイヤ状又はこれらの混合物が好ましく、中でもナノチューブ状、ナノワイヤ状のものがより好ましい。
【0030】
熱伝導材料の大きさとしては、発熱材料と発熱材料との間で、熱を橋渡しできる大きさであることが好ましい。
ナノチューブ状又はナノワイヤ状の熱伝導材料の直径は1〜100nmが好ましく、1〜50nmがより好ましく、1〜10nmがさらに好ましい。。
ナノチューブ状又はナノワイヤ状の熱伝導材料の長さは0.1〜50μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましく、200〜2,000nmがさらに好ましい。
ナノチューブ状又はナノワイヤ状の熱伝導材料のアスペクト比は10〜5,000が好ましく、100〜2,000がより好ましく、200〜1,000がさらに好ましい。
上記の数値の範囲内であると、熱拡散効率がよくなるため好ましい。なお、上記直径は、例えば透過型電子顕微鏡観察により測定される値であり、長さはレーザー顕微鏡により測定される値であり、アスペクト比は、該透過型電子顕微鏡観察により測定される直径及びレーザー顕微鏡観察により測定される長さから計算される。
以下、本実施形態に好ましく用いることができるナノチューブ及びナノワイヤについて説明する。
【0031】
本発明で使用するナノチューブとしては、各種のものが使用できるが、例えば、ナノサイズの直径を有するカーボンナノチューブが例示できる。かかるナノサイズのカーボンナノチューブとしては、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、アモルファスナノスケールカーボンチューブ、遷移金属含有ナノスケールカーボンチューブ等が例示できる。本実施形態においては、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブが好ましく用いられる。
【0032】
カーボンナノチューブは、黒鉛シート(即ち、黒鉛構造の炭素原子面ないしグラフェンシート)がチューブ状に閉じた中空炭素物質である。その直径はナノメートルスケールであり、壁構造は黒鉛構造を有している。カーボンナノチューブのうち、壁構造が一枚の黒鉛シートでチューブ状に閉じたものは単層カーボンナノチューブと呼ばれ、複数枚の黒鉛シートがそれぞれチューブ状に閉じて、入れ子状になっているものは入れ子構造の多層カーボンナノチューブと呼ばれている。本実施形態においては、これら単層カーボンナノチューブ及び入れ子構造の多層カーボンナノチューブがいずれも使用される。
【0033】
本実施形態で使用するナノワイヤとしては、各種のものが使用できるが、例えば、Si、Au、Ag、Sn、SiC、TiO、VO2、WO2、RuO2、ReO2、CrO2、MoO2、Fe34等からなるナノワイヤを例示することができ、中でもSiナノワイヤーが好ましい。これらナノワイヤは、公知の方法、例えば、CVD法等に従い製造できる。
【0034】
熱伝導材料の配合量は、トナーの重量を100重量%として、1〜50重量%が好ましく、1〜20重量%がより好ましい。上記の数値の範囲内であると、電磁誘導加熱により十分に溶融し、また、トナーとしての特性やハンドリング性を損なうことがないため好ましい。
【0035】
(静電荷像現像用トナーの製造方法)
本実施形態において、静電荷像現像用トナーは、熱可塑性結着樹脂、発熱材料、熱伝導材料を含有し、さらに必要に応じて、着色剤、ワックス等、その他の成分を含有する。
本実施形態において、静電荷像現像用トナーの製法としては、混練粉砕法、乳化凝集法、懸濁法等、特に制限はないが、特に好ましいのは懸濁法、乳化凝集法である。
懸濁法とは、熱可塑性結着樹脂、発熱材料、熱伝導材料及び着色剤を、溶媒中に溶解若しくは分散して混合液を調製する混合工程、該混合液を水系媒体中に添加し、回転羽根を有する乳化機等を用いて分散懸濁して、粒子形成された分散懸濁液を調製する分散懸濁工程、該分散懸濁液より溶媒を除去する溶媒除去工程を、少なくとも有してなる静電荷像現像用トナーの製造方法である。
乳化凝集法は、粒子径が好ましくは1μm以下の熱可塑性結着樹脂粒子、発熱材料、熱伝導材料及び着色剤を分散した分散液を調製する。均一に分散された熱可塑性結着樹脂粒子、発熱材料、熱伝導材料及び着色剤はトナー粒子径に凝集させる凝集工程にて凝集させ、凝集工程を経た凝集粒子は、樹脂粒子のガラス転移温度以上の温度に加熱し凝集体を融合しトナー粒子を形成する融合工程(合一工程)に付される。熱可塑性結着樹脂粒子は乳化重合法により得た樹脂粒子であることが好ましい。
【0036】
上記凝集工程においては、熱可塑性結着樹脂粒子、発熱材料、熱伝導材料、着色剤粒子、及び、離型剤粒子の各粒子が凝集して凝集粒子を形成する。凝集粒子はヘテロ凝集等により形成され、該凝集粒子の安定化、粒度/粒度分布制御を目的として、前記凝集粒子とは極性が異なるイオン性界面活性剤や、金属塩等の1価以上の電荷を有する化合物を添加してもよい。
【0037】
前記融合工程においては、前記凝集粒子中の熱可塑性結着樹脂粒子が、そのガラス転移温度以上の温度条件で溶融し、凝集粒子は不定形からより球状へと変化する。その後、凝集物を水系媒体から分離、必要に応じて洗浄、乾燥させることによってトナー粒子を形成する。
【0038】
トナーの体積平均粒子径D50としては2〜10μm程度が好ましく用いられ、より好ましくは3〜8μmである。
またトナーの粒度分布としては狭いほうが好ましく、より具体的にはトナーの個数粒子径の小さい方から換算して16%径(D16pと略す)と84%径(D84p)の比を平方根として示したもの(GSDp)、すなわち
GSDp=(D84p/D16p0.5
で表されるGSDpが1.23以下であることが好ましい。より好ましくは1.21程度である。体積平均粒子径D50及びGSDpが上記範囲内であると、画像形成方法の転写工程における転写性が良好であるので好ましい。
【0039】
またトナーの形状係数であるSF1は110〜140の範囲が好ましく、より好ましくは120〜140である。前述のように電子写真工程における転写工程においては球形トナーほど転写されやすく、またクリーニング工程においては不定形トナーほどクリーニングが容易であるのは公知である。ここで、トナーの形状係数SF1は、キャリアの形状係数SF1と同様の方法で測定される。
【0040】
本実施形態におけるトナーの製造において、前記乳化凝集法における樹脂粒子、発熱材料、熱伝導材料、着色剤粒子及び離型剤粒子等の分散液の分散安定を目的として界面活性剤を用いることができる。
【0041】
上記界面活性剤としては、例えば硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤;などが挙げられる。これらの中でもイオン性界面活性剤が好ましく、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤がより好ましい。
【0042】
本実施形態におけるトナーにおいては、一般的にはアニオン系界面活性剤は分散力が強く、樹脂粒子、着色剤の分散に優れているため、離型剤を分散させるための界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤を用いることが有利である。
非イオン系界面活性剤は、前記アニオン系界面活性剤又はカチオン系界面活性剤と併用されるのが好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して使用してもよい。
【0043】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、ヒマシ油ナトリウム等の脂肪酸セッケン類;オクチルサルフェート、ラウリルサルフェート、ラウリルエーテルサルフェート、ノニルフェニルエーテルサルフェート等の硫酸エステル類;ラウリルスルホネート、ドデシルベンゼンスルホネート、トリイソプロピルナフタレンスルホネート、ジブチルナフタレンスルホネートなどのアルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム;ナフタレンスルホネートホルマリン縮合物、モノオクチルスルホサクシネート、ジオクチルスルホサクシネート、ラウリン酸アミドスルホネート、オレイン酸アミドスルホネート等のスルホン酸塩類;ラウリルホスフェート、イソプロピルホスフェート、ノニルフェニルエーテルホスフェート等のリン酸エステル類;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウムなどのジアルキルスルホコハク酸塩類;スルホコハク酸ラウリル2ナトリウム等のスルホコハク酸塩類;などが挙げられる。
【0044】
カチオン系界面活性剤の具体例としては、ラウリルアミン塩酸塩、ステアリルアミン塩酸塩、オレイルアミン酢酸塩、ステアリルアミン酢酸塩、ステアリルアミノプロピルアミン酢酸塩等のアミン塩類;ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、ラウリルジヒドロキシエチルメチルアンモニウムクロライド、オレイルビスポリオキシエチレンメチルアンモニウムクロライド、ラウロイルアミノプロピルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ラウロイルアミノプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムパークロレート、アルキルベンゼントリメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類;などが挙げられる。
【0045】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル類;ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート等のアルキルエステル類;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンオレイルアミノエーテル、ポリオキシエチレン大豆アミノエーテル、ポリオキシエチレン牛脂アミノエーテル等のアルキルアミン類;ポリオキシエチレンラウリン酸アミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド、ポリオキシエチレンオレイン酸アミド等のアルキルアミド類;ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンナタネ油エーテル等の植物油エーテル類;ラウリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のソルビタンエステルエーテル類;などが挙げられる。
【0046】
界面活性剤の各分散液中における含有量としては、本実施形態を阻害しない程度であればよく、好ましくは0.01〜3重量%程度の範囲であり、より好ましくは0.05〜2重量%の範囲であり、さらに好ましくは0.1〜1重量%程度の範囲である。含有量が上記の範囲内であると、各分散液が安定であるため凝集せず、また凝集時に各粒子間の安定性に差がなく、特定粒子の遊離せず、本実施形態の効果が十分得られるので好ましい。一般的には粒子径の大きい懸濁重合トナー分散物は、界面活性剤の使用量は少量でも安定である。
【0047】
また、前記懸濁重合法等に用いる前記分散安定剤としては、難水溶性で親水性の無機粉末を用いることができる。使用できる無機粉末としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウム(ヒドロキシアパタイト)、クレイ、ケイソウ土、ベントナイト等が挙げられる。これらの中でも炭酸カルシウム、リン酸三カルシウム等は粒子の粒度形成の容易さと、除去の容易さの点で好ましい。
また、常温固体の水性ポリマー等も用いることができる。具体的には、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース系化合物、ポリビニルアルコール、ゼラチン、デンプン、アラビアゴム等が使用できる。
【0048】
凝集工程においてpH変化により凝集を発生させ、粒子を調製することができる。同時に粒子の凝集を安定に、また迅速に、又は、より狭い粒度分布を持つ凝集粒子を得るため、凝集剤を添加してもよい。
凝集剤としては1価以上の電荷を有する化合物が好ましく、その化合物の具体例としては、前述のイオン性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の水溶性界面活性剤類、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸等の酸類、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸銀、硫酸銅、炭酸ナトリウム等の無機酸の金属塩、酢酸ナトリウム、蟻酸カリウム、シュウ酸ナトリウム、フタル酸ナトリウム、サリチル酸カリウム等の脂肪族酸、芳香族酸の金属塩、ナトリウムフェノレート等のフェノール類の金属塩、アミノ酸の金属塩、トリエタノールアミン塩酸塩、アニリン塩酸塩等の脂肪族、芳香族アミン類の無機酸塩類等が挙げられる。
凝集粒子の安定性、凝集剤の熱や経時に対する安定性、洗浄時の除去を考慮した場合、凝集剤としては、無機酸の金属塩が性能、使用の点で好ましい。具体的には塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硝酸アルミニウム、硝酸銀、硫酸銅、炭酸ナトリウム等の無機酸の金属塩などが挙げられる。また、ポリ塩化アルミニウムを使用することも好ましい。
【0049】
これらの凝集剤の添加量は、電荷の価数により異なるが、いずれも少量であることが好ましく、1価の場合は3重量%以下程度、2価の場合は1重量%以下程度、3価の場合は0.5重量%以下程度であることが好ましい。凝集剤の量は少ない方が好ましいため、価数の多い化合物を用いることが好ましい。
【0050】
本実施形態に使用される着色剤としては特に制限はなく公知の着色剤が挙げられ、目的に応じて適宜選択することができる。着色剤を1種単独で用いてもよいし、同系統の着色剤を2種以上混合して用いてもよい。また異系統の着色剤を2種以上混合して用いてもよい。さらに、これらの着色剤を表面処理して用いてもよい。
用いられる着色剤の具体例としては以下に示すような黒色、青色、黄色、橙色、赤色、紫色、緑色、白色系の着色剤を挙げることができる。
黒色顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、マグネタイト等の有機、無機系着色剤類、
青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC、ウルトラマリンブルー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機、無機系着色剤類、
黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、クロムイエロー、ファストイエロー、ファストイエロー5G、ファストイエロー5GX、ファストイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーメネントイエローNCG等の有機、無機系着色剤類、
橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK等の有機、無機系着色剤類が挙げられる。
【0051】
赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デイポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、エオキシンレッド、アリザリンレーキ等の有機、無機系着色剤類、
紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等の有機、無機系着色剤類、
緑色顔料としては、酸化クロム、クロムグリーン、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーンG等の有機、無機系着色剤類、
白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等を挙げることができる。
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等が挙げられる。
【0052】
着色剤は、公知の方法を用いて結着樹脂中に分散することができる。トナーが混練粉砕法によるものであれば、そのまま用いてもよく、また予め樹脂中に高濃度に分散させた後、混練時に結着樹脂とともに混練する、いわゆるマスターバッチを用いてもよく、さらには着色剤合成後に乾燥前のウェットケーキの状態で樹脂中に分散させるフラッシングを用いてもよい。
上記の着色剤は、懸濁重合法によるトナー作製にそのまま用いることができ、懸濁重合法においては、樹脂中に分散させた着色剤を重合性単量体中に溶解、又は分散させることにより、造粒粒子中に着色剤が分散される。
トナー製法が凝集合一法の場合は、着色剤を界面活性剤等の分散剤とともに機械的な衝撃等により、水系媒体中に分散することにより着色剤分散液を作製し、これを樹脂粒子等とともに凝集させトナー粒子径に造粒することによって、得られる。
機械的な衝撃等による着色剤分散の具体例としては、例えば、回転せん断型ホモジナイザーやボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等を用いて着色剤粒子の分散液を調製することができる。また、これらの着色剤は極性を有する界面活性剤を用いてホモジナイザーによって水系に分散することもある。
【0053】
着色剤は、定着時の発色性を確保するために、トナーの固体分総重量に対して、4重量%〜15重量%の範囲で添加することが好ましく、4重量%〜10重量%の範囲で添加することがより好ましい。ただし、黒色着色剤として鉄を含まない磁性体を用いる場合は、12重量%〜48重量%の範囲内で添加することが好ましく、15重量%〜40重量%の範囲で添加することがより好ましい。前記着色剤の種類を適宜選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、黒色トナー、白色トナー、緑色トナー等の各色トナーが得られる。
【0054】
本実施形態に使用されるトナーには、必要に応じて、離型剤を添加してもよい。離型剤は一般に離型性を向上させる目的で使用される。前記離型剤の具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;加熱により軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス;モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス;脂肪酸エステル、モンタン酸エステル、カルボン酸エステル等のエステル系ワックスなどが挙げられる。本実施形態において、これらの離型剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの離型剤の添加量としては、トナー粒子の全量に対して、1〜20重量%であることが好ましく、より好ましくは5〜15重量%である。上記の範囲であると離型剤添加の効果が発揮され、現像機内部においてトナー粒子が破壊されないため、離型剤のキャリアへのスペント化が生じず、また、帯電が低下しにくい。
【0055】
本実施形態に使用されるトナーは、トナー内部に内添剤を添加してもよい。内添剤は一般に定着画像の粘弾性制御の目的で使用される。前記内添剤の具体例としては、シリカ、チタニアのような無機粒子や、ポリメチルメタクリレート等の有機粒子などが挙げられ、分散性を高める目的で表面処理されていてもよい。またそれらは単独でも、2種以上の内添剤を併用してもよい。
【0056】
本実施形態に使用されるトナーには流動化剤や帯電制御剤等の外添剤を添加処理してもよい。外添剤としては、表面をシランカップリング剤などで処理したシリカ、酸化チタン、アルミナ、酸化セリウム、カーボンブラック等の無機粒子やポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂等のポリマー粒子、アミン金属塩、サリチル酸金属錯体等、公知の材料が使用できる。それらは単独でも、2種以上の外添剤を併用してもよい。
【0057】
帯電制御剤としては、公知のものを使用することができるが、アゾ系金属錯化合物、サリチル酸の金属錯化合物、極性基を含有するレジンタイプの帯電制御剤を用いることができる。湿式製法でトナーを製造する場合、イオン強度(%)の制御と廃水汚染の低減との点で、水に溶解しにくい素材を使用するのが好ましい。なお、本実施形態におけるトナーは、磁性材料を内包する磁性トナー及び磁性材料を含有しない非磁性トナーのいずれであってもよい。
【0058】
II.静電荷像現像剤
本実施形態の静電荷像現像用トナーは、静電荷像現像剤(以下、「現像剤」ともいう。)として使用される。この現像剤は、本実施形態の静電荷像現像用トナーを含有することの他は特に制限はなく、目的に応じて適宜の成分組成をとることができる。静電荷像現像用トナーを、単独で用いると一成分系の静電荷像現像剤として調製され、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の静電荷像現像剤として調製される。一成分系現像剤として、現像スリーブ又は帯電部材と摩擦帯電して、帯電トナーを形成して、静電潜像に応じて現像する方法も適用されうる。
【0059】
キャリアとしては、特に限定されないが、通常、鉄粉、フェライト、酸化鉄粉、ニッケル等の磁性体粒子;磁性体粒子を芯材としてその表面をスチレン系樹脂、ビニル系樹脂、エチレン系樹脂、ロジン系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラミン系樹脂などの樹脂やステアリン酸等のワックスで被覆し、樹脂被覆層を形成させてなる樹脂被覆キャリア;結着樹脂中に磁性体粒子を分散させてなる磁性体分散型キャリア等が挙げられる。中でも、樹脂被覆キャリアは、トナーの帯電性やキャリア全体の抵抗を樹脂被覆層の構成により制御可能となるため特に好ましい。
【0060】
二成分系の静電荷像現像剤における本実施形態の静電荷像現像用トナーとキャリアとの混合割合は、キャリア100重量部に対して、静電荷像現像用トナー2〜10重量部であることが好ましい。また、現像剤の調製方法は、特に限定されないが、例えば、Vブレンダー等で混合する方法等が挙げられる。
【0061】
III.トナーカートリッジ及びプロセスカートリッジ
本実施形態のトナーカートリッジは、少なくとも本実施形態の静電荷像現像トナーを収容しているトナーカートリッジである。本実施形態のトナーカートリッジは、本実施形態の静電荷像現像トナーを静電荷像現像剤として収納していてもよい。
また、本実施形態のプロセスカートリッジは、現像剤保持体を備え、本実施形態の静電荷像現像用トナー、又は、本実施形態の静電荷像現像剤を収容することを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0062】
本実施形態のトナーカートリッジは、画像形成装置に着脱可能であることが好ましい。すなわち、トナーカートリッジが着脱可能な構成を有する画像形成装置において、本実施形態のトナーを収納した本実施形態のトナーカートリッジが好適に使用される。
また、トナーカートリッジは、トナー及びキャリアを収納するカートリッジであってもよく、トナーを単独で収納するカートリッジとキャリアを単独で収納するカートリッジとを別体としたものでもよい。
【0063】
本実施形態のプロセスカートリッジは、画像形成装置に脱着されるものが好ましい。
また、本実施形態のプロセスカートリッジは、像保持体、像保持体表面を帯電させる帯電手段、及び、像保持体表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段よりなる群から選ばれた少なくとも1種を備えたプロセスカートリッジであることが好ましい。さらに、本実施形態のプロセスカートリッジは、その他必要に応じて、除電手段等、その他の部材を含んでもよい。
トナーカートリッジ及びプロセスカートリッジとしては、公知の構成を採用してもよく、例えば、特開2008−209489号公報、及び、特開2008−233736号公報等が参照される。
【0064】
IV.画像形成方法及び画像形成装置
本実施形態の静電荷像現像用トナー及び本実施形態の静電荷像現像剤は、通常の静電荷像現像方式(電子写真方式)の画像形成方法に使用することができるが、特に本実施形態の画像形成方法及び画像形成装置に好ましく用いられる。
【0065】
本実施形態の画像形成方法は、潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、トナーを含む現像剤により現像して、トナー像を形成する現像工程、前記トナー像を被転写体表面に転写して、転写トナー像を得る転写工程、及び、前記転写トナー像を電磁誘導加熱で加熱して定着する定着工程を含み、前記トナーが本実施形態の静電荷像現像用トナー、又は、前記現像剤が本実施形態の静電荷像現像剤であることを特徴とする。
【0066】
また、本実施形態の画像形成装置は、潜像保持体、前記潜像保持体を帯電させる帯電手段、帯電した前記潜像保持体を露光して前記潜像保持体表面に静電潜像を形成する露光手段、トナーを含む現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段、前記トナー像を前記潜像保持体から被転写体表面に転写する転写手段、及び、前記被転写体表面に転写された前記トナー像を定着する定着手段を有し、前記定着手段がトナー像を電磁誘導加熱で定着する定着手段であり、前記トナーが本実施形態の静電荷像現像用トナー、又は、前記現像剤が本実施形態の静電荷像現像剤であることを特徴とする。
なお、本実施形態の画像形成方法及び画像形成装置において、前記電磁誘導加熱で使用する周波数が1GHz以下であることが好ましい。
前記転写工程又は前記転写手段において、中間転写体を用いて2回以上転写する転写工程又は転写手段を設けてもよい。
【0067】
なお、本実施形態の画像形成装置において、前記現像手段を含む部分が、画像形成装置本体に対して脱着可能なカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。プロセスカートリッジとしては、本実施形態のプロセスカートリッジが好適に用いられる。
【0068】
前記静電潜像形成工程は、潜像保持体表面に静電潜像を形成する工程である。
前記現像工程は、現像剤担体上の現像剤層により前記静電潜像を現像してトナー画像を形成する工程である。前記現像剤層としては、前記本実施形態の静電荷像現像用トナーを含有する本実施形態の静電荷像現像剤を含んでいれば特に制限はない。
前記転写工程は、前記トナー画像を被転写体上に転写する工程である。
定着工程を除く前記各工程は、それ自体一般的な工程であり、例えば、特開昭56−40868号公報、特開昭49−91231号公報等に記載されている。
【0069】
前記定着工程は、前記転写トナー像を電磁誘導加熱で加熱して定着する定着工程である。ここでトナー像を電磁誘導加熱で定着する定着手段について説明する。
図1は、定着手段の一例を示す概略図である。定着装置25は、図1に示すように、定着フィルム26を回転させて定着する定着装置である。図1においては、定着フィルム26はエンドレスベルト状耐熱フィルムであり、フィルムの支持回転体である定着ローラ25aと、駆動ローラ25cとに懸回張設してある。また、図1に示すように、電磁誘導加熱装置27を固定支持している。
【0070】
駆動ローラ25cは定着フィルム26のテンションローラを兼ね、定着フィルム26は駆動ローラ25cの図1における時計回転方向の回転駆動によって、時計回転方向に向かって回転駆動される。この回転駆動速度は、加圧ローラ25bと定着フィルム26が接する定着ニップ領域において転写紙と定着フィルム26の速度が等しくなる速度に調節される。
【0071】
ここで、電磁誘導加熱による溶融のみによりトナー像を定着してもよいが、図1に示すように電磁誘導加熱に加えて加圧ローラ25b及び定着フィルム26によりトナー像を加圧して定着してもよい。加圧ローラ25bはシリコンゴム等の離型性のよいゴム弾性層を有するローラであることが好ましい。加圧ローラ25bは、反時計周りに回転しつつ、定着ニップ領域に対して総圧4〜10kgの圧をもって圧接させていることが好ましい。
また、定着フィルム26は、耐熱性、離型性、耐久性に優れたものが好ましい。定着フィルム26の厚みは、100μm以下、好ましくは40μm以下の薄肉のものが好ましい。例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、PFA(4フッ化エチレンバーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂)等の耐熱樹脂の単層フィルム、あるいは複合層フィルムが挙げられる。例えば20μm厚フィルムの画像当接面側にPTFE(4フッ化エチレン樹脂)、PFA等のフッ素樹脂に導電材を添加した離型性コート層を10μm厚に施したものや、フッ素ゴム、シリコンゴム等の弾性層を施したものが挙げられる。
【0072】
図1において、電磁誘導によって加熱する電磁誘導加熱装置27は、磁性体コイル27aと励磁コイル27bとから構成されている。電磁誘導加熱装置27は、励磁コイル27bに交番する電流を供給し、形成される磁束によって電磁誘導加熱により発熱する発熱材料に電流を誘導する。そして、誘導された電流により、静電荷像現像用トナーに含まれる発熱材料の抵抗に応じて発熱する現象を利用してトナー像に含まれる熱可塑性結着樹脂を溶融させ、被転写体表面に定着させることができる。
本実施形態によれば、発熱材料を電磁誘導によって誘導加熱することにより、トナー像のみを加熱溶融することができるため、熱利用の効率が高く、短時間で所定の温度まで加熱することができる。従って、画像形成装置のスタート時におけるウォーミングアップに要する時間を短縮できる。
【0073】
前記電磁誘導加熱で使用する電磁波の周波数は、1GHz以下であることが好ましく、100Hz〜1GHzであることがより好ましい。上記の数値の範囲内であると、画像形成装置が簡便であるため好ましい。
【0074】
本実施形態の画像形成工程は、さらにクリーニング工程を含むことが好ましい。前記クリーニング工程は、潜像保持体表面に残留する静電荷像現像用トナー及び静電荷像現像剤を除去する工程である。
本実施形態の画像形成方法においては、さらにリサイクル工程をも含む態様が好ましい。前記リサイクル工程は、前記クリーニング工程において回収した静電荷像現像用トナーを現像剤層に移す工程である。このリサイクル工程を含む態様の画像形成方法は、トナーリサイクルシステムタイプのコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施することができる。また、クリーニング工程を省略し、現像と同時にトナーを回収する態様のリサイクルシステムにも適用することができる。
【実施例】
【0075】
以下、本実施形態を実施例により詳細に説明するが、以下の実施例は本実施形態を何ら限定するものではない。以下、特に断りのない限り「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を意味する。
【0076】
(実施例1)
・ポリエステル樹脂(ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物・テレフタル酸を主体とする架橋ポリエステル、THF不溶分25%、酸価=10mgKOH/g、Tg=59℃、重量平均分子量5,800、熱伝導率0.14W/m・K) 42.5部
・フェライト粒子(一次粒子径0.2μm、アスペクト比0.99) 5部
・カーボンナノチューブ(HiPco、平均直径3nm、平均長さ2μm、アスペクト比666、熱伝導率1,200W/m・K、CNI社製) 2.5部
上記材料をヘンシェルミキサーにより粉体混合し、これを設定温度150℃のエクストルーダーにより熱混練した。冷却後、粗粉砕、微粉砕した後、分級して、D50=6.5μmの分級品を得た。
【0077】
得られた粒子を紙上に載せ、画像部(縦2cm×横2cm、樹脂1の使用量5mg/cm2)を作成し、電磁誘導加熱装置(5kW)を使用し5分間加熱した(周波数は480KHzとした。)。
【0078】
(評価)
<均一性評価>
均一性については、以下の基準で評価した。
○:断面SEMで観察した結果、粒子中に凝集物が確認されなかったもの
△:断面SEMで観察した結果、粒子中に凝集物が確認されたもの
【0079】
<溶融性評価>
溶融性については、以下の基準で評価した。
○:目視で一旦液状(透明)になったもの
△:粉体ではないが、液状(透明)にならなかったもの
×:粉体のままであったもの
○を合格とした。目視で一旦液状(透明)になったものには定着ムラがなかった。
【0080】
<定着強度評価>
定着強度については鉛筆硬度試験で評価を行った。評価基準を以下に示す。
◎:4Hの鉛筆で画像部が削れないもの
○:2Hの鉛筆で画像部が削れないもの
△:6Bでは削れないが2Hでは削れるもの
×:6Bで削れるもの
○及び◎を合格とした。
【0081】
(実施例2)
実施例1と同様に熱混練し、冷却した樹脂を酢酸エチルに溶解させたのち、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液を加え、ウルトラ・タラックスT25(IKA社製)を用いて6,000回転、5分間、撹拌することにより樹脂粒子分散液(D50=5.0μm)を得た。ヌッチェ式吸引濾過で固液分離し、次いで、真空乾燥を12時間行い粒子(D50=5.0μm)を得た。得られた粒子を用いて実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。
【0082】
(実施例3)
実施例2において、ポリエステル樹脂をポリスチレン樹脂(重量平均分子量4,200、熱伝導率0.46W/m・K)に変更し、実施例2と同様な手法で樹脂粒子(D50=5.3μm)を得た。得られた粒子を用いて実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。
【0083】
(実施例4)
実施例1において、フェライト粒子の代わりにイットリウム−鉄−ガーネット(YIG)(一次粒子径0.2μm、アスペクト比0.99)を材料とした以外は、実施例1と同様な手法で分級品(D50=5.2μm)を得た。得られた分級品を用いて実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。
【0084】
(実施例5)
実施例1において、カーボンナノチューブ(HiPco、CNI製)の代わりにシリコンナノワイヤー(平均直径3nm、平均長さ830nm、アスペクト比275、熱伝導率140W/m・K、E&T社製)を材料とした以外は、実施例1と同様にして分級品(D50=5.3μm)を得た。得られた分級品を用いて実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。
【0085】
(実施例6)
・ポリエステル樹脂粒子分散液 168部(樹脂42.5部)
・フェライト粒子分散液 40部(フェライト粒子5部)
・カーボンナノチューブ分散液 40部(カーボンナノチューブ2.5部)
・ポリ塩化アルミニウム 0.15部
・イオン交換水 300部
【0086】
ポリエステル樹脂粒子分散液はポリエステル樹脂のみを実施例2と同様な手法で分散して得た。フェライト粒子分散液は、ミリング処理することで得た。カーボンナノチューブ分散液は、カーボンナノチューブ(直径3nm、長さ2μm、アスペクト比666、熱伝導率1,200W/m・K、CNI社製)を1%ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム水溶液に入れ、超音波処理分散をすることで得た。
【0087】
上記配合に従って、各材料を丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で十分に混合・分散した後、加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら42℃まで加熱し、42℃で60分間保持した後、ポリエステル樹脂粒子分散液を105部(樹脂21部)追加して緩やかに撹拌した。
その後、0.5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液で系内のpHを6.0に調整した後、撹拌を継続しながら95℃まで加熱した。95℃までの昇温の間、通常の場合、系内のpHは、5.0以下まで低下するが、ここでは水酸化ナトリウム水溶液を追加滴下し、pHが5.5以下とならない様に保持した。
融合終了後、冷却し、濾過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離した。そして、40℃のイオン交換水3リットル中に再分散し、15分、300rpmで撹拌、洗浄した。この洗浄操作を5回繰り返し、ヌッチェ式吸引濾過で固液分離し、次いで、真空乾燥を12時間行い粒子(D50=5.7μm)を得た。得られた粒子を用いて実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。
【0088】
(実施例7)
実施例1において、フェライト粒子の代わりにCu nanopowder(粒子径13〜40nm、平均アスペクト比0.99、E&T社製)を材料とし同様な手法で分級品(D50=5.8μm)を得た。得られた分級品を用いて実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。
【0089】
(比較例1)
・ポリエステル樹脂(ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物・テレフタル酸を主体とする架橋ポリエステル、THF不溶分25%、酸価=10mgKOH/g、Tg=59℃) 45部
・フェライト粒子(一次粒子径0.2μm、アスペクト比0.99、ホソカワミクロン(株)製) 5部
上記材料を用いて実施例1と同様な手法で分級品(D50=5.6μm)を得た。得られた分級品を用いて実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。
【0090】
(比較例2)
・ポリエステル樹脂(ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物・テレフタル酸を主体とする架橋ポリエステル、THF不溶分25%、酸価=10mgKOH/g、Tg=59℃) 47.5部
・カーボンナノチューブ(HiPco、直径3nm、長さ2μm、アスペクト比666、熱伝導率1,200W/m・K、CNI社製) 2.5部
上記材料を用いて実施例1と同様な手法で分級品(D50=5.6μm)を得た。得られた分級品を用いて実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。
【0091】
(比較例3)
実施例1のポリエステル樹脂のみ同様な手法で分級し、分級品(D50=5.6μm)を得た。得られた分級品を用いて実施例1と同様に評価した結果を表1に示した。
【0092】
【表1】

【0093】
混練で発熱材、熱伝導材料を混ぜ合わせるよりも一旦溶解させた粒子化法の方が均一性(分散性)が高い。懸濁重合法、乳化重合法ではトナー中の凝集物が生成し難く、定着強度が更に向上する。
【0094】
熱伝導材料としては、CNTが熱伝導率の面では一番適している。しかし、CNTは合成時にアモルファスカーボンが生成してしまう可能性が高く、色によっては精製の必要がある。一方でSiナノワイヤーであれば、このような着色された副生成物ができる可能性は低く発色性では優位である。
【符号の説明】
【0095】
10 トナー像
25 定着装置
25a 定着ローラ
25b 加圧ローラ
25c 駆動ローラ
25d 分離爪
25e クリーニングローラ
25f オイル塗布部材
26 定着ベルト(定着フィルム)
27 電磁誘導加熱装置
27a 磁性体コイル
27b 励磁コイル
S 被転写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性結着樹脂と、
電磁誘導加熱により発熱する発熱材料と、
熱伝導材料と、を含有することを特徴とする
静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記熱伝導材料が前記熱可塑性結着樹脂よりも熱伝導率が高い、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記熱伝導材料の熱伝導率が、1,000W/m・K以上である、請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記熱伝導材料のアスペクト比が10以上である、請求項1〜3いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記発熱材料よりも前記熱伝導材料のアスペクト比が高い、請求項1〜4いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記熱伝導材料がナノチューブ又はナノワイヤーである、請求項1〜5いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記熱伝導材料がカーボンナノチューブ又はSiナノワイヤーである、請求項1〜6いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
前記発熱材料が金属酸化物粒子又は金属粒子である、請求項1〜7いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項9】
少なくとも結着樹脂及び着色剤を含む乳化液を凝集し凝集体を形成する凝集工程と、
該凝集体を融合させ合一させる合一工程と、を有する、請求項1〜8いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項10】
結着樹脂及び着色剤を、溶媒中に溶解又は分散して混合液を調製する混合工程と、
前記混合液を水系媒体中に添加し、分散懸濁して、粒子形成された分散懸濁液を調製する分散懸濁工程と、
前記分散懸濁液より溶媒を除去する溶媒除去工程とを、少なくとも有してなる、請求項1〜8いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項11】
請求項1〜8いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーとキャリアとを含む、静電荷像現像剤。
【請求項12】
少なくとも請求項1〜8いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナーを収容している、トナーカートリッジ。
【請求項13】
現像剤保持体を備え、請求項1〜8いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、又は、請求項11に記載の静電荷像現像剤を収容するプロセスカートリッジ。
【請求項14】
潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、
トナーを含む現像剤により現像して、トナー像を形成する現像工程、
前記トナー像を被転写体表面に転写して、転写トナー像を得る転写工程、及び、
前記転写トナー像を電磁誘導加熱で加熱して定着する定着工程を含み、
前記トナーが請求項1〜8いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、又は、前記現像剤が請求項11に記載の静電荷像現像剤であることを特徴とする
画像形成方法。
【請求項15】
前記電磁誘導加熱で使用する周波数が1GHz以下である、請求項14に記載の画像形成方法。
【請求項16】
潜像保持体、
前記潜像保持体を帯電させる帯電手段、
帯電した前記潜像保持体を露光して前記潜像保持体表面に静電潜像を形成する露光手段、
トナーを含む現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段、
前記トナー像を前記潜像保持体から被転写体表面に転写する転写手段、及び、
前記被転写体表面に転写された前記トナー像を定着する定着手段を有し、
前記定着手段がトナー像を電磁誘導加熱で定着する定着手段であり、
前記トナーが請求項1〜8いずれか1つに記載の静電荷像現像用トナー、又は、前記現像剤が請求項11に記載の静電荷像現像剤であることを特徴とする
画像形成装置。
【請求項17】
前記電磁誘導加熱で使用する周波数が1GHz以下である、請求項16に記載の画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−8162(P2011−8162A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−153682(P2009−153682)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】