説明

静電荷像現像用トナーとその製造方法及び静電荷像現像剤と画像形成方法

【課題】優れた低温定着性を有し、さらに良好な耐熱保管性とトナー破砕性を両立する静電荷像現像用トナー及び現像剤、画像形成方法を提供する。
【解決手段】非結晶性樹脂及び着色剤を含有するコア層と、該コア層を被覆するシェル層を有するコアシェル構造の静電荷現像用トナーであって、前記シェル層が結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性樹脂を含有する複合樹脂粒子を含む静電荷像現像用トナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナーとその製造方法、及びそれを用いた静電荷像現像剤並びに画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年エネルギーの消費量の低減要求の高まりに伴い、静電荷像現像方式による画像形成装置においては、その中で大きな使用電力を占める定着工程の省電力化を図る必要に迫られている。
【0003】
それには静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ということもある)の定着温度をより低温化させる必要があり、これにより前記省電力化の他に定着条件の拡大、いわゆるウォームアップタイムの短時間化、定着部材の長寿命化が可能等、省電力化以外にも大きなメリットがある。
【0004】
一方、トナーの定着温度を低くする手段としては、トナー用樹脂(結着樹脂)のガラス転移点を低くする技術が一般的に用いられている。しかし、ガラス転移点をあまりに低くし過ぎると、粉体の凝集が起り易くなり、トナーの保管時や現像器内において、トナーブロッキングが発生してしまうという問題があった。また可塑剤を用いることによっても、定着温度を下げることはできるが、同様にトナーのブロッキングが発生するという問題があった。
【0005】
低温定着化とトナー保存性とを両立させるためには、トナーのガラス転移点を高温に保ったまま、高温領域でトナーの粘度が急速に低下するいわゆるシャープメルト性をもたせることが必要である。しかしながら、トナーに使用される樹脂は、通常ある程度ガラス転移点、分子量等に幅を持つため、シャープメルト性を得るためには、樹脂の組成と分子量とを極めて均一にする必要がある。均一性の高い樹脂を得るためには、特殊な製法を用いたり、樹脂をクロマトグラフィ等で処理をする必要が生じ、コストが高くならざるをえず、また均一性の高い樹脂の作製に際して不要な樹脂(廃棄物)が生じ、環境保護の観点からも好ましくない。
【0006】
一方、ブロッキング防止、および、低温定着性を両立させる手段として、結晶性樹脂を結着樹脂として用いる方法が古くから知られている。しかし、結晶性樹脂は、混練粉砕法では粉砕が困難で収率が低い為、製造の観点から実用性に欠しいという問題があった。また、製造上の実用性を確保できた場合でも、定着温度を下げることは可能であるが、必ずしも十分な耐オフセット性を得ることはできない。また結晶性樹脂は一般に樹脂強度が低く、十分な定着後の画像強度を得られないという問題があった。
【0007】
上記問題を解決する手段として、非結晶性樹脂をコア粒子に含み、その表面を結晶性ポリエステル樹脂で被覆したトナーが提案されている(例えば、特許文献1)。しかし、結晶性ポリエステル樹脂は硬いが脆いため、現像器内の撹拌によりトナーが破砕され易く、特に高速機においてはトナーの破砕が起こり、問題となっていた。
【0008】
又、低融点結晶性樹脂と非結晶性樹脂を混合し、相溶化度を制御することで低温定着性を獲得する技術が提案されている(例えば、特許文献2)。しかし、結晶性樹脂と非結晶性樹脂の相溶化が進行することで混合樹脂の可塑化をおこし、十分な耐熱保管性が確保できず、トナーのブロッキング性が悪化するという問題が生じる。特に海外への輸送状況や海外での使用条件を考慮すると、60℃程度での耐熱保管性の保障は必要となってくる。
【0009】
結局、結晶性樹脂を用いたトナーでは、結晶性樹脂の利点である低温定着性は確保できるものの、耐熱保管性及びトナー破砕性は十分満足できるものではなかった。それ故、これら諸特性を両立させるトナーが必要とされているが、いまだ提供されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−57660号公報
【特許文献2】特開2004−206081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記した如く、低温定着性に加えて十分な耐熱保管性とトナー破砕性を確保し、さらに、その他の諸特性も高いレベルを保持した優れたトナーを提供することが成されていない。
【0012】
本発明の目的は、優れた低温定着性を有し、さらに良好な耐熱保管性とトナー破砕性を兼ね備えた静電荷像現像用トナー及び現像剤、画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の発明者による詳細な検討の結果、本発明の目的は、下記構成を採ることにより達成されることがわかった。
【0014】
(1)
非結晶性樹脂及び着色剤を含有するコア層と、該コア層を被覆するシェル層を有するコアシェル構造の静電荷現像用トナーであって、
シェル層が結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性樹脂を含有する複合樹脂粒子から造られたことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【0015】
(2)
前記複合樹脂粒子をミニエマルション重合で作製することを特徴とする(1)に記載の静電荷像現像用トナー。
【0016】
(3)
前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量が静電荷像現像用トナー全体の5〜15質量%の範囲であることを特徴とする(1)または(2)に記載の静電荷像現像用トナー。
【0017】
(4)
非結晶性樹脂及び着色剤を含有するコア粒子に、結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性樹脂を含有する複合樹脂粒子を付着させコア粒子の表面にシェル層を形成するシェル層形成工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法において、該複合樹脂粒子をミニエマルション重合で作製することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【0018】
(5)
(1)〜(3)の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナーとキャリアとを含むことを特徴とする静電荷像現像剤。
【0019】
(6)
潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、
前記潜像保持体表面上に形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程、
前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体面に転写する転写工程、及び、
前記被転写体面に転写されたトナー像を定着する定着工程を含み、
前記トナーとして(1)〜(3)の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、優れた低温定着性を有し、さらに良好な耐熱保管性とトナー破砕性を兼ね備えた静電荷像現像用トナー及び現像剤、画像形成方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の静電荷像現像用トナーは、非結晶性樹脂及び着色剤を含有するコア層と、該コア層を被覆するシェル層を有するコアシェル構造の静電荷現像用トナーであって、前記シェル層が結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性樹脂を含有する複合樹脂粒子より造られたトナーである。
【0022】
本発明の前記構成とすることにより、60℃程度での耐熱保管性を確保することができる。また結晶性樹脂の融点以上の温度ではコア粒子である非結晶性樹脂も軟化しているため、被覆した結晶性樹脂が溶融すると同時に定着することが可能となり、従来よりも低温で定着することが可能となる。またトナー破砕性も良好な優れたトナーを提供することができる。
【0023】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0024】
〔結晶性ポリエステル樹脂〕
本発明のトナーにおいては、非結晶性樹脂を含有するコア粒子を結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性樹脂を含有する複合樹脂粒子で被覆する必要がある。
【0025】
一般にガラス転移点が60℃以下の非結晶性樹脂を結着樹脂として用いた場合、60℃環境下での保管性を確保することはできないが、本発明のように非結晶性樹脂を結晶性ポリエステル樹脂含有のシェルで被覆することで、60℃環境下での保管性を確保することができる。
【0026】
また定着時に結晶性ポリエステル樹脂が溶融する時には、コア粒子の非結晶性樹脂も低粘度化しており、いわゆるシャープメルト性を有しているため、従来のガラス転移点の高い非結晶性樹脂のみからなるトナーに比べ、低温での定着が可能となる。
【0027】
なお、本発明において、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピーク(吸熱スペクトル曲線が変曲点を経て最高点に至り下降して変曲点に至る形状)を有するポリエステル樹脂を指す。また、前記結晶性ポリエステル主鎖に対して他成分を共重合したポリマーの場合、他成分が50質量%以下の場合、この共重合体も本発明における結晶性ポリエステル樹脂である。
【0028】
前記結晶性ポリエステル樹脂の融点は、65〜100℃の範囲であることが望ましく、70〜95℃の範囲であることが好ましい。融点が65℃より低いと十分なトナー耐熱保管性が得られないこともあり、また、100℃より高いと十分な低温定着性を得ることが困難なこともある。
【0029】
本発明において、前記結晶性樹脂の融点の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、0℃から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時のJIS K−7121:87に示す入力補償示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めることができる。なお、結晶性の樹脂においては、複数の融解ピークを示す場合があるが、本発明においては、最大のピーク温度をもって融点とみなす。
【0030】
シェルを形成する樹脂中の全質量に対する結晶性ポリエステル樹脂の比率は、10質量%から70質量%の範囲が好ましく、30質量%から50質量%がより好ましい。
【0031】
トナー全質量中における前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量としては、耐熱保管性及びトナー破砕性の観点から、3〜20質量%が好ましく、5〜15質量%がより好ましい。3質量%未満では結晶性ポリエステル樹脂で十分にコア粒子を被覆することができず、耐熱保管性が悪化してしまうおそれがある。また20質量%を超えるとトナー破砕性が悪化してしまうおそれがある。
【0032】
結晶性ポリエステル樹脂は、酸(ジカルボン酸)成分とアルコール(ジオール)成分とから合成されるものであり、特に、脂肪族ジカルボン酸(酸無水物及び酸塩化物を含む)と脂肪族ジオールとを反応させて得られる脂肪族ポリエステル樹脂が好ましい。
【0033】
なお、本発明において「酸由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂において、ポリエステル樹脂の合成前には酸成分であった構成部位を呼称し、「アルコール由来構成成分」とは、ポリエステル樹脂の合成前にはアルコール成分であった構成部位を指す。
【0034】
(酸由来構成成分)
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,11−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられる。
【0035】
その他芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等が挙げられ、中でもテレフタル酸が、入手容易性、低融点のポリマーを形成しやすい等の点で好ましい。
【0036】
酸由来構成成分としては、その他として2重結合を持つジカルボン酸由来構成成分、スルホン酸基を持つジカルボン酸由来構成成分等の構成成分を含有していてもよい。
【0037】
なお、本明細書において「構成モル%」とは、ポリエステル樹脂における酸由来構成成分全体中の当該酸由来構成成分、または、アルコール由来構成成分全体中の当該アルコール構成成分を、各1単位(モル)としたときの百分率を指す。
【0038】
(アルコール由来構成成分)
アルコール構成成分である脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ドデカンジオール、1,12−ウンデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、などが挙げられるが、この限りではない。これらの中では、入手容易性やコスト、融点を考慮すると1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオールが好ましい。
【0039】
前記結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等を、モノマーの種類によって使い分けて製造する。前記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、高分子量化するためには通常1/1程度が好ましい。
【0040】
前記結晶性ポリエステル樹脂の製造は、重合温度180〜230℃の間で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。
【0041】
モノマーが、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーとそのモノマーと重縮合予定の酸またはアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0042】
前記ポリエステル樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物等が挙げられる。
【0043】
具体的には、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。
【0044】
結晶性ポリエステル樹脂の分子量(重量平均分子量Mw)は、トナーの機械的強度、及び得られた定着画像の画像強度や製造性、また定着性の観点から、8000〜35000が好ましく、10000〜30000がさらに好ましい。8000より小さい場合は定着時の耐オフセット性が十分でなく、35000を越える場合は安定した樹脂製造が困難となり、コストも増加する場合がある。
【0045】
また、前記同様の観点から数平均分子量(Mn)は、3000〜20000が好ましく、3500〜16000が更に好ましい。
【0046】
本発明における樹脂分子量測定は、GPCによる分子量測定法を用いて測定した。即ち、THF可溶物を、GPC・HLC−8220(東ソー製)、東ソー製カラム「TSKguardcolumnSuperHZ−L+TSKgelSuperHZM−M3連」を使用し、THF溶媒で測定し、単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して分子量を算出したものである。
【0047】
〔非結晶性樹脂〕
本発明では、非結晶性樹脂を含有するコア粒子を前記結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性樹脂を含有する複合樹脂粒子で被覆する必要がある。結晶性ポリエステル樹脂のみでシェル層を形成した場合、シェル層が脆いためトナーの強度が十分でなく、また一般的にコストが増加してしまう。そこで複合樹脂粒子でシェル層を形成することで、トナーの強度を向上することができる。
【0048】
前記非結晶性樹脂としては、スチレン/アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂等、公知の樹脂材料を用いることができる。これらの中では、スチレン/アクリル樹脂、非結晶性ポリエステル樹脂が特に好ましい。
【0049】
尚、本発明において、「非結晶性樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC)において、明確な吸熱ピークを示さない樹脂である。
【0050】
スチレン/アクリル樹脂を得るための重合性単量体としては、例えばスチレン、メチルスチレン、メトキシスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレンなどのスチレン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、などの(メタ)アクリレートエステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸などのカルボン酸系単量体などを使用することができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
また、非結晶性ポリエステル樹脂とは、主として多価カルボン酸類と多価アルコール類との縮重合により得られるものである。
【0052】
前記非結晶性ポリエステル樹脂における多価カルボン酸の例としては、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類;無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類が挙げられ、これらの多価カルボン酸を1種又は2種以上用いることができる。これら多価カルボン酸の中でも、芳香族カルボン酸を用いることが好ましく、また良好なる定着性を確保するために架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジカルボン酸とともに3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用することが好ましい。
【0053】
前記非結晶性ポリエステル樹脂における多価アルコールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール類;シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ジオール類;ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類が挙げられる。これら多価アルコールの1種又は2種以上用いることができる。これら多価アルコールの中でも、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、このうち芳香族ジオールがより好ましい。また、より良好なる定着性を確保するため、架橋構造あるいは分岐構造をとるためにジオールとともに3価以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)を併用することも好ましい。
【0054】
前記非結晶性樹脂のガラス転移点(以下Tg)は60℃以下であることが好ましい。Tgが60℃より高いと、低温での優れた定着ができなくなる。また、トナーブロッキング性の観点から、Tgは30℃以上であることが好ましい。Tgが30℃より低いと、結晶性ポリエステル樹脂と非結晶性樹脂を含有する複合樹脂粒子を用いてシェル化してもトナーブロッキング性が十分でない場合が生じてしまう。
【0055】
本発明におけるTgの測定は、示差走査熱量計「DSC−7(パーキンエルマー製)」、および熱分析装置コントローラー「TAC7/DX(パーキンエルマー製)」を用いて測定されるものである。
【0056】
具体的には、試料4.50mgをアルミニウム製パンに封入し、これを「DSC−7」のサンプルホルダーにセットし、リファレンスの測定には空のアルミニウム製パンを使用し、測定温度0〜200℃で、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分の測定条件で、Heat−Cool−Heatの温度制御を行い、その2nd.Heatにおけるデータを取得する。得られたカーブC2ndの微分曲線を求め、微分曲線の20℃以上の最も低温側のピークトップ温度T(℃)を読み取る。C2ndのTおよびT−20℃における接線の交点をガラス転移点として示す。なお、Tが明確に読み取れない際は、C2ndの20℃以上における最も低温側の吸熱側変曲点または吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1の吸熱ピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線との交点をガラス転移点として示す。
【0057】
〔着色剤〕
本発明のトナーに用いられる着色剤としては、染料であっても顔料であってもかまわないが、耐光性や耐水性の観点から顔料が好ましい。
【0058】
好ましい着色剤としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アニリンブルー、カルコイルブルー、クロムイエロー、ウルトラマリンブルー、デュポンオイルレッド、キノリンイエロー、メチレンブルークロライド、フタロシアンブルー、マラカイトグリーンオキサート、ランプブラック、ローズベンガル、キナクリドン、ベンジシンイエロー、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド185、C.I.ピグメント・レッド238、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・イエロー180、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー74、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3等の公知の顔料が使用できる。
【0059】
本発明の静電荷像現像用トナーにおける、前記着色剤の含有量としては、結着樹脂100質量部に対して、1〜30質量部が好ましく、2〜20質量部がより好ましく、3〜16質量部が特に好ましい。
【0060】
また、必要に応じて表面処理された着色剤を使用することができる。添加形態は特に限定されず、固体状でも液状でもよい。
【0061】
液状としては、例えば、着色剤分散剤を用いて着色剤分散液として使用することも有効である。該着色剤分散剤としては、特に限定されず、公知の分散剤を用いることができる。
【0062】
着色剤分散液は、溶剤に着色剤を公知の分散機を用いて分散することによりえることができる。該溶剤としては、水系溶剤、有機溶剤が挙げられ、水系溶剤としては、後述のトナーの製造方法の項に記載のものが挙げられる。
【0063】
前記分散機としては、後述のトナーの製造方法の項に記載のものを用いることができる。
【0064】
前記着色剤の種類を適宜選択することにより、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナー等を得ることができる。
【0065】
〔その他の添加剤〕
本実施形態におけるトナーには、上記したような成分以外にも、更に必要に応じて離型剤、帯電制御剤、無機微粒子(無機粉体)、有機微粒子等の種々の成分を添加することができる。
【0066】
離型剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラミリステート、ペンタエリスルトールテトラステアレート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンジベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
【0067】
トナー粒子中における離型剤の含有割合としては、トナー全質量に対して2質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0068】
帯電制御剤としては、例えば4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミ、鉄、クロムなどの錯体からなる染料、トリフェニルメタン系顔料などが挙げられる。
【0069】
無機微粒子は、種々の目的のために添加できるが、トナーにおける粘弾性調整のために添加されてもよい。この粘弾性調整により、画像光沢度や紙への染み込みを調整することができる。
【0070】
無機微粒子としては、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、あるいはこれらの表面を疎水化処理した物等、公知の無機微粒子を単独または2種以上を組み合わせて使用することができるが、発色性やOHP透過性等透明性を損なわないという観点から、屈折率が結着樹脂よりも小さいシリカ微粒子が好ましく用いられる。
【0071】
また、シリカ微粒子は種々の表面処理を施されてもよく、例えばシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、シリコーンオイル等で表面処理したものが好ましく用いられる。
【0072】
〔静電荷像現像用トナーの製造方法〕
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法としては、特に限定されないが、公知の湿式製法等が用いることにより、より容易に作製することができる。
【0073】
乾式製法である混練/粉砕法の場合、樹脂と離型剤を混練/粉砕後、分級して所望の粒径のコア粒子を作製後、あらかじめ微粒子化した被膜樹脂粒子をハイブリダイザー等のメカノケミカル表面改質装置を用いて被膜する方法が挙げられる。
【0074】
湿式製法では、乳化凝集法、溶融懸濁法、溶解懸濁法等が挙げられ、いずれの方法でも作製することができる。これらの中で特にコアシェル構造を形成しやすい乳化凝集法が好ましい。
【0075】
以下、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法の一例として、乳化凝集法による製造方法について説明する。
【0076】
乳化凝集法は、トナーを構成する原料を乳化して乳化粒子(液滴)を形成する乳化工程と、該乳化粒子(液滴)の凝集体を形成する凝集工程と、該凝集体の形状を制御する熟成工程とを有する。
【0077】
この場合、モノマーを水系媒体中に微分散して重合させ乳化樹脂粒子を得ることができる。中でも、シェル用樹脂を作製する場合に、結晶性ポリエステル樹脂を非結晶性樹脂用モノマー中に均一に微分散し、これを水系媒体中で重合させて複合樹脂粒子を得る、所謂、ミニエマルション重合法によりシェル用樹脂粒子の製造方法を採ることが望ましい。
【0078】
乳化工程における結晶性ポリエステル樹脂又は非結晶性樹脂の乳化粒子(液滴)を形成する場合には、水系媒体と、例えば結晶性ポリエステル樹脂を混合した溶液に、分散機により剪断力を与えることにより成される。その際、加熱してポリマー液の粘性を下げて粒子を形成することができる。分散した乳化粒子の安定化のため、分散剤を使用することもできる。
【0079】
また、結晶性ポリエステル樹脂が、油性の溶剤で水への溶解度の比較的低い溶剤に溶解するものであれば、それらの溶剤に該樹脂を溶かした後、水中に分散剤や高分子電解質と共に微粒子分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を蒸散することにより、結晶性ポリエステル樹脂粒子分散液を作製することができる。また、非結晶性樹脂の場合も同様にして非結晶性樹脂粒子分散液を作製することができる。
【0080】
前記水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類などが挙げられるが、水以外の溶媒を用いないことが帯電安定性、形状制御性の点で好ましい。
【0081】
上記分散に用いる分散機としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、加圧ニーダー、エクストルーダー、メディア分散機等が挙げられる。
【0082】
乳化工程に使用される分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリメタクリル酸ナトリウムの等の水溶性高分子;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、オクタデシル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等のアニオン性界面活性剤、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミンオキサイド等の両性イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン等のノニオン性界面活性剤等の界面活性剤;リン酸三カルシウム、水酸化アルミニウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等の無機塩;等が挙げられる。
【0083】
乳化粒子(液滴)の大きさとしては、製造安定性及び保管性の観点から、その平均粒子径(体積平均粒径)で0.01〜1μmが好ましく、0.02〜0.8μmがより好ましく、0.03〜0.6μmがさらに好ましい。
【0084】
前記凝集工程においては、まず得られた非結晶性樹脂の乳化粒子、及び着色剤顔料分散液を混合した後、混合液のpHを調整し、凝集してコア粒子を形成する。この際、凝集剤を使用するのも有効である。
【0085】
用いられる凝集剤は、前記分散剤に用いる界面活性剤と逆極性の界面活性剤、無機金属塩の他、2価以上の金属錯体を好適に用いることができる。特に、金属錯体を用いた場合には界面活性剤の使用量を低減でき、帯電特性が向上するため特に好ましい。
【0086】
前記無機金属塩としては、例えば、塩化カルシウム、硝酸カルシウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどの金属塩、および、ポリ塩化アルミニウム、ポリ水酸化アルミニウム、多硫化カルシウム等の無機金属塩重合体などが挙げられる。その中でも特に、アルミニウム塩およびその重合体が好適である。よりシャープな粒度分布を得るためには、無機金属塩の価数が1価より2価、2価より3価、3価より4価の方が、また、同じ価数であっても重合タイプの無機金属塩重合体の方が、より適している。
【0087】
前記コア粒子が所望の粒径になったところで、被覆樹脂である複合樹脂粒子を添加する。この場合さらに凝集剤を添加したり、pH調整を行ってもよい。添加した複合樹脂粒子はコア粒子表面を覆うように付着する。この際、コア粒子を十分に被覆できるよう、複合樹脂粒子の乳化粒子径や添加量を調整する。こうして複合樹脂粒子で被覆されたコアシェル粒子を作製する。
【0088】
前記熟成工程においては、コアシェル粒子の分散液の加熱を行うことによりコアシェル粒子の形状を制御する。前記加熱の時間としては、狙いの形状により調整することができ、0.5〜10時間程度行えばよい。
【0089】
熟成後に冷却し、コアシェル粒子を得る。また冷却の工程で、結晶性ポリエステル樹脂の融点近傍で冷却速度を落とす、いわゆる徐冷をすることで結晶化を促進してもよい。熟成して得たコアシェル粒子はろ過などの固液分離工程や、必要に応じて洗浄工程、乾燥工程を経てトナー母体粒子とすることができる。
【0090】
〔外添剤〕
本発明においては、トナー母体粒子表面に流動化剤や助剤等の外添剤を添加処理してもよい。外添剤としては、表面を疎水化処理したシリカ微粒子、酸化チタン微粒子、アルミナ微粒子、酸化セリウム微粒子、カーボンブラック等の無機微粒子やポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂等のポリマー微粒子等、公知の微粒子が使用できるが、これらのうち少なくとも2種以上の外添剤を使用することが好ましい。
【0091】
〔トナーの特性〕
本発明におけるトナーの体積基準のメジアン径は、帯電性、及び画質の観点から、3.0〜8.0μmの範囲が好ましく、4.0〜7.0μmの範囲がより好ましい。体積基準のメジアン径が3.0μmより小さいと、流動性が低下し各粒子の帯電性が不十分になりやすく、また帯電分布が広がるため、背景へのかぶりや現像器からのトナーこぼれ等が生じやすくなる場合がある。体積基準のメジアン径が8.0μmより大きいと、解像度が低下するため、十分な画質が得られなくなる場合がある。
【0092】
前記体積基準のメジアン径の測定は、例えば、マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)を用いて、50μmのアパチャー径で行うことができる。この時、測定はトナーを電解質水溶液(アイソトン水溶液)に分散させ、超音波により30秒以上分散させた後に行う。
【0093】
〔静電荷像現像剤〕
本発明の静電荷像現像剤(以下、「静電荷像現像用現像剤」、「現像剤」とも言う。)は、前記本発明の静電荷像現像用トナーを含むことを特徴とする。
【0094】
本発明の静電荷像現像剤は、前記静電荷像現像用トナーを含有することにより、良好な帯電性と耐熱保管性とを両立させることができる。
【0095】
本発明の現像剤は、前記トナーを含有することを特徴とするが、前記静電荷像現像用トナーをそのまま一成分を含む一成分現像剤としても、あるいは二成分現像剤としても用いることができる。二成分現像剤として用いる場合にはキャリアと混合して使用されることが好ましい。
【0096】
二成分現像剤に使用し得るキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアを用いることができる。例えば酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物や、これらを芯材として用いて、該芯材表面に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリア、磁性分散型キャリア等を挙げることができる。またマトリックス樹脂に導電材料などが分散された樹脂分散型キャリアであってもよい。
【0097】
キャリアに使用される前記被覆樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂またはその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0098】
またキャリアの芯材としては、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、キャリアを磁気ブラシ法に用いるためには、磁性材料であることが好ましい。キャリアの芯材の体積平均粒径としては、一般的には10〜200μmの範囲にあり、好ましくは25〜100μmの範囲にある。
【0099】
またキャリアの芯材の表面に樹脂被覆するには、前記被覆樹脂、および必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法等が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して適宜選択すればよい。
【0100】
前記二成分現像剤における本発明の前記トナーと上記キャリアとの混合比(質量比)としては、特に限定されないが、帯電性、保存性の観点から、トナー:キャリア=1:100〜30:100の範囲であることが好ましく、3:100〜20:100の範囲がより好ましい。
【0101】
〔画像形成方法〕
本発明の画像形成方法は、潜像保持体表面上に均一な帯電電位を付与する帯電工程、均一な帯電電位が付与された潜像保持体表面上に静電潜像を形成する露光工程、静電潜像をトナーにより現像してトナー像を形成する現像工程、トナー像を被転写体上に転写する転写工程、被転写体上のトナー像を定着する定着工程を少なくとも有する、一般的な電子写真方式の画像形成方法に用いることができる。
【実施例】
【0102】
以下、実施例を挙げて本発明の実施態様を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0103】
〔材料の調製〕
まず、実施例、比較例に係るトナーの作製に必要な材料を調製した。
【0104】
(コア用樹脂粒子1の作製)
(1)第1段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム8質量部をイオン交換水3000質量部に溶解させた溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら内温を80℃に昇温させた。昇温後、過硫酸カリウム10質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた溶液を添加し、再度液温を80℃とし、下記単量体混合液を1時間かけて滴下後、80℃で2時間加熱後、撹拌することにより重合を行い、樹脂粒子〔1H〕を調製した。
【0105】
スチレン 480質量部
n−ブチルアクリレート 250質量部
メタクリル酸 68質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 16質量部
(2)第2段重合
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム7質量部をイオン交換水800質量部に溶解させた溶液を仕込み、98℃に加熱後、上記樹脂粒子〔1H〕260質量部と、下記単量体溶液を90℃で溶解させた溶液を添加し、循環経路を有する機械式分散機「CLEARMIX」(エム・テクニック社製)により1時間混合分散させ、乳化粒子(油滴)を含む分散液を調製した。
【0106】
スチレン 245質量部
n−ブチルアクリレート 120質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 1.5質量部
ペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル 190質量部
次いで、この分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加し、この系を82℃にて1時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行い、樹脂粒子〔1HM〕を得た。
【0107】
(3)第3段重合
さらに、過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた溶液を添加し、82℃の温度条件下に、
スチレン 453質量部
n−ブチルアクリレート 132質量部
メタクリル酸 15質量部
n−オクチル−3−メルカプトプロピオネート 8質量部
からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたって加熱撹拌することにより重合を行った後、28℃まで冷却してコア用樹脂粒子1を得た。
【0108】
このコア用樹脂粒子1の体積基準のメジアン径は190nm、重量平均分子量(Mw)は17,500であった。
【0109】
(結晶性ポリエステル樹脂Aの作製)
フラスコに、1,9−ノナンジオール10質量部及び1,10−ドデカンニ酸10質量部と、触媒Ti(OBu)(結晶性ポリエステル樹脂Aのカルボン酸成分に対し、0.014質量%)とを入れた後、減圧操作により容器内の空気を減圧する。さらに、窒素ガスにより不活性雰囲気下とし、機械撹拌にて180℃で6時間還流を行った。その後、減圧蒸留にて未反応のモノマー成分を除去し、220℃まで徐々に昇温を行って12時間撹拌する。粘稠な状態となったところでサンプリングし、結晶性ポリエステル樹脂Aを得た。
【0110】
得られた結晶性ポリエステル樹脂AをGPC(東ソー社製、HLC−8220GPC)にて分子量を確認したところ、重量平均分子量17,600(スチレン標準物質で換算)であった。また、示差走査熱量計(島津製作所製 DSC−50)にて昇温速度3℃/minで熱特性を測定したところ、最大吸熱ピーク温度すなわち融点は75℃であった。
【0111】
(結晶性ポリエステル樹脂Bの作製)
アルコール成分を1,4−ブタンジオール、酸成分をセバシン酸にした以外は、結晶性ポリエステル樹脂Aと同様に行い、結晶性ポリエステル樹脂Bを得た。
【0112】
得られた結晶性ポリエステル樹脂Bの重量平均分子量は15,800、融点は70℃であった。
【0113】
(結晶性ポリエステル樹脂Cの作製)
アルコール成分を1,5−ペンタンジオール、酸成分をコハク酸にした以外は、結晶性ポリエステル樹脂Aと同様に行い、結晶性ポリエステル樹脂Cを得た。
【0114】
得られた結晶性ポリエステル樹脂Cの重量平均分子量は16,900、融点は73℃であった。
【0115】
(非結晶性ポリエステル樹脂D及びコア用樹脂粒子2の作製)
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに、下記多価カルボン酸モノマー及び多価アルコールモノマーを合計3質量部仕込む。この反応系を1時間かけて190℃まで昇温し、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した後、触媒Ti(OBu)(非結晶性ポリエステル樹脂Dのカルボン酸成分の全量に対し、0.003質量%分)を投入した。
【0116】
(多価カルボン酸モノマー)
テレフタル酸:60mol%
フマル酸:35mol%
トリメリット酸:5mol%
(多価アルコールモノマー)
ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物:70mol%
1,4−ブタンジオール:30mol%
生成される水を留去しながら、同温度から5時間を要して230℃まで昇温し、230℃でさらに7時間、脱水縮合反応を継続して重合を行って、非結晶性ポリエステル樹脂Dを得た。得られた非結晶性ポリエステル樹脂Dの分子量をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ、東ソー社製 HLC−8220GPC)で測定したところ、重量平均分子量(スチレン標準物質で換算)は9400であった。また、示差走査熱量計(島津製作所製 DSC−50、昇温速度3℃/min)にて得られた樹脂の熱特性を測定した結果、ガラス転移点Tgは54℃であった。さらに、得られた樹脂Dの軟化点Tmを、溶融温度測定方法(昇温法)のオフセット法により測定した。具体的には、24℃、50%RH環境下において、フローテスタCFT−500D(島津製作所製)により、成型サンプルを、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、オフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度を、トナーの軟化点Tmとして求めた。樹脂Dの軟化点Tmは98.6℃であった(明確なピークは示さなかった)。
【0117】
次いで、得られた非結晶性ポリエステル樹脂Dを溶融状態のまま、キャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)に毎分100gの速度で移送した。別途準備した水性媒体タンクには試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37質量%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換機で160℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で、上記溶融状態の非結晶性ポリエステル樹脂Dと同時にキャビトロンCD1010に移送した。キャビトロンCD1010を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cm(約50kPa)の条件で運転し、平均粒径(体積基準のメジアン径。以下同じ。)が140nm、固形分量が30質量部のコア用樹脂粒子2の分散液を得た。
【0118】
(シェル用複合樹脂粒子1の作製)
スチレン201.5質量部、n−ブチルアクリレート117.24質量部、メタクリル酸18.31質量部および上記の結晶性ポリエステル樹脂Aを加熱・混合して結晶性ポリエステル樹脂含有単量体溶液を調製した。
【0119】
一方、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム11.3質量部をイオン交換水1107質量部に溶解させた界面活性剤溶液を調製し、温度を80℃に維持した。
【0120】
この界面活性剤溶液中へ上記の結晶性ポリエステル樹脂含有単量体溶液を投入し、「クレアミックス」(エム・テクニック社製)を用いて高速撹拌を行い、モノマー乳化液を調製した。
【0121】
ステンレス製の5L反応器に撹拌装置、冷却管、窒素導入管、温度センサーを装着し、反応器内にイオン交換水1005質量部を加え、内温を70℃に昇温させ、窒素気流下で撹拌しながら、上記のモノマー乳化液を加えた。
【0122】
内温を維持しながら撹拌し、過硫酸カリウム11質量部をイオン交換水216質量部に溶解させた重合開始剤水溶液を加え、さらに5分間にわたってn−オクチルメルカプタン5.2質量部を滴下し、その後、同温度で40分間重合反応を行うことにより、シェル用複合樹脂粒子1を得た。
【0123】
このシェル用複合樹脂粒子1の体積基準のメジアン径は120nm、重量平均分子量(Mw)は13,500であった。
【0124】
(シェル用複合樹脂粒子2の作製)
シェル用複合樹脂粒子1の作製において、結晶性ポリエステル樹脂Aの代わりに結晶性ポリエステル樹脂Bにした以外は、同様に行い、シェル用複合樹脂粒子2を得た。
【0125】
このシェル用複合樹脂粒子2の体積基準のメジアン径は85nm、重量平均分子量(Mw)は12,800であった。
【0126】
(シェル用複合樹脂粒子3の作製)
シェル用複合樹脂粒子1の作製において、結晶性ポリエステル樹脂Aの代わりに結晶性ポリエステル樹脂Cにした以外は、同様に行い、シェル用複合樹脂粒子3を得た。
【0127】
このシェル用複合樹脂粒子3の体積基準のメジアン径は88nm、重量平均分子量(Mw)は14,000であった。
【0128】
(シェル用樹脂粒子11の作製)
撹拌装置、冷却管、窒素導入管、温度センサーを備えた5Lのステンレス製反応器に、ドデシル硫酸ナトリウム2.3質量部をイオン交換水2948質量部に溶解させた界面活性剤溶液を投入し、窒素気流下80℃に維持しながら撹拌を行い、過硫酸カリウム10.2質量部をイオン交換水218質量部に溶解させた重合開始剤水溶液を加えた。さらにスチレン520質量部、n−ブチルアクリレート184質量部、メタクリル酸96質量部、n−オクチルメルカプタン22.1質量部を混合したモノマー溶液を3時間かけて滴下した後、同温度に1時間保持して重合反応を完結させた後、内温を室温まで冷却することにより、シェル用樹脂粒子11のラテックスを得た。このシェル用樹脂粒子11の体積基準のメジアン径は82nm、重量平均分子量(Mw)は13,200であった。
【0129】
(非結晶性ポリエステル樹脂E及びコア用樹脂粒子12の調製)
撹拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに、下記多価カルボン酸モノマー及び多価アルコールモノマーを合計3質量部仕込む。この反応系を1時間かけて190℃まで昇温し、反応系内が均一に撹拌されていることを確認した後、触媒Ti(OBu)(非結晶性ポリエステル樹脂Eのカルボン酸成分の全量に対し、0.003質量%分)を投入した。
【0130】
(多価カルボン酸モノマー)
テレフタル酸:30mol%とフマル酸:70mol%の混合モノマー。
【0131】
(多価アルコールモノマー)
アルキレンオキサイド付加物でない2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン:80mol%とノナンジオール:20mol%の混合モノマー。
【0132】
生成される水を留去しながら、同温度から6時間を要して240℃まで昇温し、240℃でさらに6時間、脱水縮合反応を継続して重合を行って、非結晶性ポリエステル樹脂Eを得た。得られた非結晶性ポリエステル樹脂Eの分子量をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフ、東ソー社製 HLC−8220GPC)で測定したところ、重量平均分子量(スチレン標準物質で換算)は9800であった。また、示差走査熱量計(島津製作所製 DSC−50、昇温速度3℃/min)にて得られた樹脂の熱特性を測定した結果、ガラス転移点Tgは64℃であった。さらに、得られた樹脂Eの軟化点Tmを、溶融温度測定方法(昇温法)のオフセット法により測定した。具体的には、24℃、50%RH環境下において、フローテスタCFT−500D(島津製作所製)により、成型サンプルを、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒、昇温速度6℃/分の条件で、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出し、オフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度を、トナーの軟化点Tmとして求めた。樹脂C1の軟化点Tmは105.7℃であった。
【0133】
次いで、得られた非結晶性ポリエステル樹脂Eを溶融状態のまま、キャビトロンCD1010(株式会社ユーロテック製)に毎分100gの速度で移送した。別途準備した水性媒体タンクには試薬アンモニア水をイオン交換水で希釈した0.37質量%濃度の希アンモニア水を入れ、熱交換機で160℃に加熱しながら毎分0.1リットルの速度で、上記溶融状態の非結晶性ポリエステル樹脂C1と同時にキャビトロンCD1010に移送した。キャビトロンCD1010を、回転子の回転速度60Hz、圧力5kg/cmの条件で運転し、平均粒径(体積基準のメジアン径。以下同じ。)が160nm、固形分量が30質量部のコア用樹脂粒子12の分散液を得た。
【0134】
(シェル用樹脂粒子12の作製)
下記材料を100℃に加熱して、IKA製ウルトラタラックスT50にて十分に分散後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理を1時間行い、平均粒径が200nm、固形分量が30質量部のシェル用樹脂粒子12の分散液を得た。
【0135】
結晶性ポリエステル樹脂A:90質量部
アニオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬社製):1.8質量部
イオン交換水:210質量部
(離型剤分散液Rの調製)
下記材料を95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)を用いて分散させた。その後、マントンゴーリン高圧ホモジナイザー(ゴーリン社製)で分散処理し、平均粒径が230nmである離型剤を分散させてなる離型剤分散液Rを調製した。離型剤分散液Rの離型剤濃度は20質量%である。
【0136】
ペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル:50質量部
ドデシル硫酸ナトリウム:5質量部
イオン交換水:200質量部
(着色剤分散液Tの調製)
下記材料を混合、溶解し、高圧衝撃式分散機アルティマイザー(スギノマシン社製、HJP30006)を用いて約1時間分散することにより、着色剤分散液Tを得た。着色剤分散液Tにおける着色剤粒子の平均粒径は0.15μm、着色剤粒子の濃度は23質量%であった。
【0137】
Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン):100質量部
ドデシル硫酸ナトリウム:15質量部
イオン交換水:900質量部
(実施例1)トナー1の作製
撹拌装置、冷却管、温度センサーを備えた5Lのステンレス製反応器に、コア用樹脂粒子1のラテックス1461質量部、イオン交換水1695質量部、着色剤分散液T147質量部を投入し、撹拌しながら5(モル/リットル)の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを10に調整した。次いで、撹拌下、塩化マグネシウム・六水和物56質量部をイオン交換水56質量部に溶解した塩化マグネシウム水溶液を10分間かけて滴下し、内温を75℃まで昇温させ、マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製、アパチャー径;50μm)を用いて粒径を測定し、平均粒径が5.8μmに到達した時点で、シェル用複合樹脂粒子1のラテックス220.4質量部を5(モル/リットル)の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH4に調整したものを滴下し、シェル用複合樹脂粒子1が凝集粒子表面に付着するまで加熱撹拌を続けた。少量の反応溶液を遠心分離機により遠心分離を行い上澄みが透明になった時点で、塩化ナトリウム73質量部をイオン交換水292質量部に溶解させた塩化ナトリウム水溶液を加え、さらに加熱撹拌を続けてフロー式粒子像測定装置「FPIA−2100」(シスメックス社製)を用い、平均円形度が0.960になった時点で内温を25℃まで冷却し、生成した粒子をイオン交換水で洗浄、濾過を繰り返した後、30℃の温風で乾燥することにより、トナー母体粒子1を得た。
【0138】
得られたトナー母体粒子1を100質量部に対して、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量部および疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、「トナー1」を作製した。
【0139】
このトナー1の体積基準のメジアン径は5.9μm、平均円形度は0.961であった。
【0140】
(実施例2)トナー2の作製
トナー1の作製において、シェル用複合樹脂粒子1の代わりにシェル用複合樹脂粒子2を用いた以外は、同様にしてトナー2を作製した。このトナー2の体積基準のメジアン径は6.0μm、平均円形度は0.963であった。
【0141】
(実施例3)トナー3の作製
トナー1の作製において、シェル用複合樹脂粒子1の代わりにシェル用複合樹脂粒子3を用いた以外は、同様にしてトナー3を作製した。このトナー3の体積基準のメジアン径は6.1μm、平均円形度は0.967であった。
【0142】
(実施例4)トナー4の作製
下記材料を5リットルの円筒ステンレス容器に入れ、ウルトラタラックスにより800rpmで剪断力を加えながら30分間、分散混合した。
【0143】
コア用樹脂粒子2の分散液:800質量部(固形分240質量部)
着色剤分散液T:22.87質量部(固形分5.3質量部)
離型剤分散液R:50質量部(固形分10質量部)
ノニオン性界面活性剤(IGEPA CA897):0.5質量部
次いで、得られた分散液に凝集剤としてポリ塩化アルミニウムの10%硝酸水溶液0.14質量部を滴下した。このとき、必要に応じて0.3モル/Lの硝酸や1モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液を用い、分散液のpHを4.2に調整した。その後、撹拌装置、温度計を備えた重合釜に、上記分散液を移して加熱し、42℃にて付着凝集粒子の成長を促進させ、体積基準のメジアン径が5.7μmになった時点で、シェル用複合樹脂粒子1の100質量部を徐々に添加した。さらに温度を50℃まで昇温し、粒子径を5.9μmとした。
【0144】
次いで、pHを9.0に調整し、92℃まで昇温して92℃で5時間保持した後、pHを徐々に下げた。pHを6.5まで下げると、加熱を止めて放冷した。次いで、45μmのメッシュで篩分し、水洗を繰り返した後、凍結乾燥機で乾燥しトナー母体粒子4を得た。マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製、アパチャー径;50μm)を用いて最終トナー粒子の体積基準のメジアン径を測定したところ6.0μmであった。また、フロー式粒子像測定装置「FPIA−2100」(シスメックス社製)を用いて測定した平均円形度は0.965であった。
【0145】
得られたトナー母体粒子4を100質量部に対して、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量部および疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、「トナー4」を作製した。
【0146】
(比較例1)トナー11の作製
撹拌装置、冷却管、温度センサーを備えた5Lのステンレス製反応器に、コア用樹脂粒子1のラテックス1461.42質量部、イオン交換水1671.4質量部、着色剤分散液T147.31質量部を投入し、撹拌しながら5(モル/リットル)の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを10に調整した。次いで、撹拌下、塩化マグネシウム・六水和物56.66質量部をイオン交換水56.66質量部に溶解した塩化マグネシウム水溶液を10分間かけて滴下し、内温を75℃まで昇温させ、マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製、アパチャー径;50μm)を用いて粒径を測定し、平均粒径が5.8μmに到達した時点で、シェル用樹脂粒子11のラテックス244.18質量部を5(モル/リットル)の水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH4に調整したものを滴下し、シェル用樹脂粒子11が凝集粒子表面に付着するまで加熱撹拌を続けた。少量の反応溶液を遠心分離機により遠心分離を行い上澄みが透明になった時点で、塩化ナトリウム73質量部をイオン交換水291.98質量部に溶解させた塩化ナトリウム水溶液を加え、さらに加熱撹拌を続けてフロー式粒子像測定装置「FPIA−2100」(シスメックス社製)を用い、平均円形度が0.965になった時点で内温を25℃まで冷却し、生成した粒子をイオン交換水で洗浄、濾過を繰り返した後、30℃の温風で乾燥することにより、トナー母体粒子11を得た。
【0147】
得られたトナー母体粒子11を100質量部に対して、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量部および疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、「トナー11」を作製した。
【0148】
このトナー11の体積基準のメジアン径は6.1μm、平均円形度は0.966であった。
【0149】
(比較例2)トナー12の作製
下記材料を5リットルの円筒ステンレス容器に入れ、ウルトラタラックスにより800rpmで剪断力を加えながら30分間、分散混合した。
【0150】
コア用樹脂粒子12の分散液:800質量部(固形分240質量部)
着色剤分散液T:22.87質量部(固形分5.3質量部)
離型剤分散液R:50質量部(固形分10質量部)
ノニオン性界面活性剤(IGEPA CA897):0.5質量部
次いで、得られた分散液に凝集剤としてポリ塩化アルミニウムの10%硝酸水溶液0.14質量部を滴下した。このとき、必要に応じて0.3(モル/リットル)の硝酸や1(モル/リットル)の水酸化ナトリウム水溶液を用い、分散液のpHを4.2に調整した。その後、撹拌装置、温度計を備えた重合釜に、上記分散液を移して加熱し、42℃にて付着凝集粒子の成長を促進させ、体積基準のメジアン径が5.7μmになった時点で、シェル用樹脂粒子12の100質量部を徐々に添加した。さらに温度を50℃まで昇温し、粒子径を6.0μmとした。
【0151】
次いで、pHを9.0に調整し、95℃まで昇温して95℃で6時間保持した後、pHを徐々に下げた。pHを6.5まで下げると、加熱を止めて放冷した。次いで、45μmのメッシュで篩分し、水洗を繰り返した後、凍結乾燥機で乾燥しトナー母体粒子12を得た。
【0152】
得られたトナー母体粒子12を100質量部に対して、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)1質量部および疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)0.3質量部を添加し、ヘンシェルミキサーにより混合して、「トナー12」を作製した。
【0153】
このトナー12の体積基準のメジアン径は6.0μm、平均円形度は0.955であった。
【0154】
上記の如くして作製した本発明内のトナー1〜4、及び本発明外で比較用のトナー11、トナー12の樹脂組成を下記表1に示す。
【0155】
【表1】

【0156】
〔現像剤の作製〕
フェライトコア100質量部とシクロヘキシルメタクリレート/メチルメタクリレート(共重合比5/5)の共重合体樹脂粒子を5質量部とを、撹拌羽根付き高速混合機に投入し、120℃で30分間撹拌混合して機械的衝撃力の作用でフェライトコアの表面に樹脂コート層を形成し、体積基準メジアン径40μmのキャリアを得た。
【0157】
キャリアの体積基準メジアン径は、湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック社製)により測定した。
【0158】
上記キャリアにトナーをそれぞれトナー濃度が7質量%になるように添加し、ミクロ型V型混合機(筒井理化学器株式会社)に投入し、回転速度45rpmで30分間混合し現像剤を作製した。
【0159】
〔評価〕
作製した現像剤1〜4、11、12を用いて、下記評価を行った。
【0160】
1.定着性
コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製のbizhub PRO C6500の定着装置を改造し、定着温度を100℃から160℃まで段階的に上昇させながら画像の定着性を評価した。印刷に用いた用紙は、秤量128g/mの光沢紙である。
【0161】
定着性は、定着画像を荷重(80sN/m)の重りを用いて10秒間折り曲げ、戻した後、折り曲げ部分の画像欠損部分の最大幅が0.2mm以下になる定着温度を最低定着温度とした。低温定着の評価として、低温定着温度が120℃であるかを基準に判定した。
【0162】
○:最低定着温度が120℃以下である
△:最低定着温度が120℃を超えるが140℃までの範囲である
×:最低定着温度が140℃を超える
2.耐ブロッキング性
トナー10gをプロピレン製カップの上に秤量し、50℃、50%RH環境下に15時間放置し、ブロッキング(凝集)状態を以下の基準で評価した。
【0163】
◎:カップを傾けるとトナーがさらさら流れる
○:カップを動かしているとトナーが徐々に崩れ、流れ出す
△:ブロック体が発生しており、先のとがったもので突くと崩れる
×:ブロック体が発生しており、先のとがったもので突いても崩れにくい
3.耐破砕性
コニカミノルタビジネステクノロジーズ社製のbizhub PRO C6500で用いられている現像器に、上記現像剤を投入し、単体駆動機にて600rpmの速度で3.5時間駆動させた。そこで、現像器内の現像剤をサンプリングし、トナーの粒度分布をマルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)にて測定した。現像器投入前のトナーと比較して、2.5μm以下のトナー増加率(質量%)を算出し、耐破砕性を評価した。増加率が高いほど現像器内での破砕が発生しやすいことを表す。
【0164】
評価基準は以下の通りである。
【0165】
◎:増加率が5%以下である
○:増加率が5%を超えるが10%以内である
△:増加率が10%を超えるが20%以内である
×:増加率が20%を超える
実施例1〜4、比較例1、2の評価結果を表2に示す。
【0166】
【表2】

【0167】
表2に示すように、実施例1〜4は全て耐ブロッキング性が良好な結果を示した。これに対し、比較例1は耐ブロッキング性に欠ける。
【0168】
また、耐破砕性においては実施例1〜4は何れも良好であり、比較例2に対し優位であることが確認された。
【0169】
尚、結晶性ポリエステル樹脂をコア用樹脂として用いた場合には、耐ブロッキング性と耐破砕性が極めて劣化し、本発明で用いた基準では評価対象とならなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非結晶性樹脂及び着色剤を含有するコア層と、該コア層を被覆するシェル層を有するコアシェル構造の静電荷現像用トナーであって、
シェル層が結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性樹脂を含有する複合樹脂粒子から造られたことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【請求項2】
前記複合樹脂粒子をミニエマルション重合で作製することを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量が静電荷像現像用トナー全体の5〜15質量%の範囲であることを特徴とする請求項1または2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
非結晶性樹脂及び着色剤を含有するコア粒子に、結晶性ポリエステル樹脂及び非結晶性樹脂を含有する複合樹脂粒子を付着させコア粒子の表面にシェル層を形成するシェル層形成工程を含む静電荷像現像用トナーの製造方法において、該複合樹脂粒子をミニエマルション重合で作製することを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜3の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナーとキャリアとを含むことを特徴とする静電荷像現像剤。
【請求項6】
潜像保持体表面に静電潜像を形成する潜像形成工程、
前記潜像保持体表面上に形成された静電潜像を、トナーを含む現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程、
前記潜像保持体表面に形成されたトナー像を被転写体面に転写する転写工程、及び、
前記被転写体面に転写されたトナー像を定着する定着工程を含み、
前記トナーとして請求項1〜3の何れか1項に記載の静電荷像現像用トナーを用いることを特徴とする画像形成方法。

【公開番号】特開2011−149986(P2011−149986A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8876(P2010−8876)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】