説明

静電荷像現像用結着樹脂、静電荷像現像用透明トナー、静電荷像現像用透明トナーの製造方法、静電荷像現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成方法および画像形成装置

【課題】結着樹脂の透明性を改善する静電荷像現像用結着樹脂、静電荷像現像用透明トナー、静電荷像現像用透明トナーの製造方法、静電荷像現像用現像剤、画像形成方法および画像形成装置を提供する。
【解決手段】静電荷像現像用結着樹脂は、ポリエステル樹脂と蛍光増白剤とを含む静電荷像現像用透明トナーに用いられる結着樹脂であり、蛍光増白剤の蛍光ピークが380nm以上450nm以下にあり、結着樹脂の色相が−0.5<a<1.0かつ−1.0<b<0.5である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用結着樹脂、静電荷像現像用透明トナー、静電荷像現像用透明トナーの製造方法、静電荷像現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法においては帯電、露光工程により感光体上に静電荷像を形成し、トナーを含む現像剤で静電潜像を現像してトナー像を形成し、このトナー像を記録媒体に転写、定着して画像を形成する。ここで用いられる現像剤には、トナーとキャリアからなる二成分現像剤と、磁性トナーまたは非磁性トナーを単独で用いる一成分現像剤とがある。トナーの製造には、通常、熱可塑性樹脂を顔料、帯電制御剤、ワックスなどの離型剤とともに溶融混練して、冷却した後、微粉砕し、さらに分級する、いわゆる混練粉砕製法や、トナーの形状及び表面構造の制御を意図的に行うことが可能な手段として、湿式製法を利用したトナーの製造方法が提案されている。湿式製法としては、形状制御が可能な湿式球形化法、表面組成制御が可能な懸濁造粒法、内部組成の制御が可能な懸濁重合法、凝集・合一法等がある。
【0003】
また、上記熱可塑性樹脂として、ポリエステル樹脂が用いられるが、ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂中のモノマーや開始触媒などに由来する紫外線領域の吸収スペクトルのすそが380nmから450nmの可視光領域まで及ぶことから、黄色味を帯びる場合がある。
【0004】
一方、例えば、特許文献1には、近赤外線吸収剤と蛍光増白剤とを有する電子写真用トナーが開示され、前記近赤外線吸収剤が800nm〜1250nmの範囲に吸収ピークを持ち、該吸収ピークにおける吸光度に対する380nmにおける吸光度が10%以上50%以下、且つ780nmにおける吸光度が10%以上20%以下であり、近赤外線吸収剤に由来する380nm付近の吸収を打ち消すために、前記蛍光増白剤の蛍光ピークが350nm〜450nmの範囲にある電子写真用トナーが提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、結着樹脂、着色剤、赤外線吸収剤及び蛍光増白剤を含むフラッシュ定着用カラートナーが開示され、赤外吸収剤が750nm〜2000nmに吸収ピークを有し、フラッシュ定着時に近赤外線を吸収し発熱する近赤外線吸収剤に由来する380nm付近の吸収を打ち消すために、蛍光増白剤が350nm〜500nmに蛍光の発光ピークを有するフラッシュ定着用カラートナーが提案されている。
【0006】
特許文献3には、イエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーからなるカラートナーを用いた画像形成方法において、少なくとも1種の蛍光強度を減少させる化合物がシアントナーに含有され、マゼンタトナーには、色再現性の向上させるために蛍光増白剤を含有させることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−221891号公報
【特許文献2】特開2006−163300号公報
【特許文献3】特開2008−281830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、主にその目的とする処は、本構成を有しない場合に比べ、黄色味を帯びた結着樹脂の黄色性を消失させ、結着樹脂の透明性を向上させ、さらに下地画像上に該結着樹脂を含有する透明トナー画像を形成した場合に下地画像の色再現性を向上させる静電荷像現像用結着樹脂、静電荷像現像用透明トナー、静電荷像現像用透明トナーの製造方法、静電荷像現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジ、画像形成方法および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の通りである。
【0010】
(1)ポリエステル樹脂と蛍光増白剤とを含む静電荷像現像用透明トナーに用いられる結着樹脂であり、蛍光増白剤の蛍光ピークが380nm以上450nm以下にあり、結着樹脂の色相が−0.5<a<1.0かつ−1.0<b<0.5である静電荷像現像用結着樹脂である。
【0011】
(2)蛍光増白剤の添加量が、結着樹脂に対して0.1質量%以上0.5質量%以下である上記(1)に記載の静電荷像現像用結着樹脂である。
【0012】
(3)少なくとも前記ポリエステル樹脂が非晶性ポリエステル樹脂を含む上記(1)または(2)に記載の静電荷像現像用結着樹脂を含有する静電荷像現像用透明トナーであり、静電荷像現像用透明トナーの量を30g/mとして定着させた後のJIS R 3106に準拠して測定された透過率が400nmから800nmにわたり80%以上である静電荷像現像用透明トナーである。
【0013】
(4)結着樹脂と、離型剤と、蛍光増白剤とを含み、色差ΔEab=[(Δa+(Δb+(ΔL1/2とした場合に、記録媒体上のトナー量を30g/mとして定着させた後の記録媒体とトナー像との色差ΔEabが5以下である静電荷像現像用透明トナーである。
【0014】
(5)結着樹脂と蛍光増白剤を有機溶剤に溶解した後、水を添加して油相と水相を転相させ、その後有機溶剤を除去して樹脂粒子分散液を作製し、離型剤分散液と凝集剤を添加し混合して凝集粒子分散液とした後、凝集粒子を融合してトナー粒子とする上記(3)または(4)に記載の静電荷像現像用透明トナーである。
【0015】
(6)結着樹脂と蛍光増白剤を有機溶剤に溶解した後、水を添加して油相と水相を転相させ、その後有機溶剤を除去して樹脂粒子分散液を作製し、得られた樹脂粒子分散液と離型剤分散液と凝集剤を添加し混合して凝集粒子分散液とした後、凝集粒子を融合してトナー粒子を製造する静電荷像現像用透明トナーの製造方法である。
【0016】
(7)上記(3)から(5)のいずれか1つに記載の静電荷像現像用透明トナーと、キャリアとを含む静電荷像現像用現像剤である。
【0017】
(8)上記(3)から(5)のいずれか1つに記載の静電荷像現像用透明トナーを含むトナーカートリッジである。
【0018】
(9)潜像保持体と、前記潜像保持体を帯電させる帯電手段と、帯電した前記潜像保持体を露光して前記潜像保持体上に静電潜像を形成させる露光手段と、上記(7)に記載の静電荷像現像用現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、前記トナー像を前記潜像保持体から被転写体に転写する転写手段と、前記像保持体の表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、を含むプロセスカートリッジである。
【0019】
(10)少なくとも、像保持体を帯電させる工程と、像保持体上に潜像を形成する工程と、像保持体上の潜像を、上記(7)に記載の静電荷像現像用現像剤を用いて現像する工程と、現像されたトナー像を中間転写体上に転写する1次転写工程と、前記中間転写体に転写されたトナー像を、記録媒体に転写する2次転写工程と、前記トナー画像を少なくとも熱または圧力によって定着する工程とを有する画像形成方法である。
【0020】
(11)像保持体と、該像保持体を帯電させる帯電装置と、前記帯電装置により帯電された像保持体上に静電潜像を形成する露光装置と、前記像保持体上の静電潜像をトナー像に形成する現像装置と、前記トナー像を中間転写体に転写する1次転写装置と、前記中間転写体に転写されたトナー像を、記録媒体に転写する2次転写装置と、前記記録媒体上のトナー像を少なくとも熱または圧力によって定着する定着装置と、を備え、前記トナーが、上記(3)から(5)のいずれか1つに記載の静電荷像現像用透明トナーである画像形成装置である。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、結着樹脂の着色が消され、結着樹脂の透明性が向上する。
【0022】
請求項2に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、結着樹脂の着色が消失し、且つ、該結着樹脂を含有させたトナーの定着性に影響が生じない。
【0023】
請求項3に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、トナー画像の透明性が向上し、下地画像上に透明トナー画像を形成した場合に下地画像の色再現性が向上する。
【0024】
請求項4に記載の発明によれば、本構成を有しない場合に比べ、トナー画像の透明性が向上し、下地画像上に透明トナー画像を形成した場合に下地画像の色再現性が向上する。
【0025】
請求項5に記載の発明によれば、樹脂粒子分散液を作製する際の転相乳化の段階で蛍光増白剤を添加しない場合に比べ、樹脂粒子分散液に対し少量の蛍光増白剤の添加で透明性の高い静電荷像現像用透明トナーが得られ、また、得られた静電荷像現像用透明トナーの定着性に悪影響が生じない。
【0026】
請求項6に記載の発明によれば、樹脂粒子分散液を作製する際の転相乳化の段階で蛍光増白剤を添加しない場合に比べ、樹脂粒子分散液に対し少量の蛍光増白剤の添加で透明性の高い静電荷像現像用透明トナーが製造される。
【0027】
請求項7に記載の発明によれば、画像形成装置に用いた時に、本構成を有しない場合に比べ、トナー定着後のトナー画像の透明性が向上し、下地画像上に透明トナー画像を形成した場合に下地画像の色再現性が向上する。
【0028】
請求項8から請求項10に記載の発明によれば、画像形成装置に用いて画像形成を行う際に、本構成を有しない場合に比べ、トナー画像の透明性が向上し、下地画像上に透明トナー画像を形成した場合に下地画像の色再現性が向上する。
【0029】
請求項11に記載の発明によれば、画像形成装置に用いた時に、本構成を有しない場合に比べ、トナー定着後のトナー画像の透明性が向上し、下地画像上に透明トナー画像を形成した場合に下地画像の色再現性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の画像形成方法に用いる画像形成装置の構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
<静電荷像現像用結着樹脂>
本実施の形態における静電荷像現像用結着樹脂(以下、「結着樹脂」と略す場合がある)は、ポリエステル樹脂と蛍光増白剤とを含む静電荷像現像用透明トナーに用いられる結着樹脂であり、蛍光増白剤の蛍光ピークが380nm以上450nm以下にあり、結着樹脂の色相が−0.5<a<1.0かつ−1.0<b<0.5である。ここで、蛍光増白剤の蛍光波長のピークは、日立製作所製分光光度計「U−4000」を用いて、蛍光増白剤を溶解可能な溶媒に溶解して測定している。
【0032】
蛍光増白剤の蛍光ピークが380nm未満、または450nmを超える場合には、黄色味を帯びたポリエステル樹脂の黄色性が消失せず、静電荷像現像用透明トナーに用いたために予め定められた透明性が得られない。また、結着樹脂の色相がa≦−0.5またはa≧1.0であって、b≦−1.0またはb≧0.5の場合には、上記同様、黄色味を帯びたポリエステル樹脂の黄色性が消失せず、静電荷像現像用透明トナーに用いたために予め定められた透明性が得られない。
【0033】
本実施の形態における静電荷像現像用結着樹脂において、蛍光増白剤の添加量は、結着樹脂に対して0.1質量%以上0.5質量%以下である。蛍光増白剤の添加量が、結着樹脂に対して0.1質量%未満の場合には結着樹脂の着色が消えず、一方、結着樹脂に対して0.5質量%を超える場合には、該結着樹脂を含有させたトナーの定着性に影響が生じる場合がある。
【0034】
本実施の形態における結着樹脂に含有されるポリエステル樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂である。非晶性ポリエステル樹脂の製造時に用いた触媒、特にスズ系触媒及びチタン系触媒に由来する非晶性ポリエステル樹脂の着色、例えば黄色味が現れる。ここで、チタン系触媒としては、例えば、チタンテトラエチキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド等が挙げられる。スズ系触媒としては、例えば、ジブチルスズ、ジブチル錫オキサイド、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジフェニルスズオキシド等が挙げられる。
【0035】
また、非晶性ポリエステル樹脂は、以下に示すビスフェノール骨格を有する場合、紫外線領域の吸収スペクトルのすそが380nmから450nmの可視光領域まで及ぶことから、黄色味を帯びる場合がある。以下の構造を有するビスフェノール骨格は、後述する非晶性ポリエステル樹脂の製造時に用いられるアルコール成分由来の骨格である。また、非晶性ポリエステル樹脂がテレフタル酸を用いて重合される場合、紫外線領域の吸収スペクトルのすそが380nmから450nmの可視光領域まで及ぶことから、黄色味を帯びる場合がある。
【0036】
【化1】

【0037】
[非晶性ポリエステル樹脂]
本実施の形態の非晶性ポリエステル樹脂としては、公知の非晶性ポリエステル樹脂が利用される。
【0038】
静電荷像現像用結着樹脂に用いる非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)の範囲は、好ましくは45℃以上85℃以下であり、より好ましくは50℃以上75℃以下である。ガラス転移温度(Tg)が45℃よりも低いとトナーの保存が困難となる場合があり、85℃よりも高いと定着における消費エネルギーが増加する場合がある。
【0039】
また、静電荷像現像用結着樹脂に用いる非晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は5000以上100000以下の範囲であることが好ましいが、低温定着性と機械強度の観点から、重量平均分子量(Mw)は8000以上50000以下の範囲であることがより好ましい。
【0040】
非晶性ポリエステルは、酸(ジカルボン酸)成分と、アルコール(ジオール)成分とから合成される。
【0041】
非晶性ポリエステル樹脂の合成に用いる酸(ジカルボン酸)成分としては、脂肪族ジカルボン酸が含まれていることが好ましい。例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,10−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
前記酸(ジカルボン酸)成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸成分のほか、二重結合を持つジカルボン酸成分の構成成分が含まれていても良い。尚、前記二重結合を持つジカルボン酸成分には、二重結合を持つジカルボン酸に由来する構成成分のほか、二重結合を持つジカルボン酸の低級アルキルエステルまたは酸無水物等に由来する構成成分も含まれる。
【0043】
前記二重結合を持つジカルボン酸は、その二重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着強度を得るために好適に用いることができる。このようなジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。また脂肪族ジカルボン酸化合物以外にカルボン酸成分に含まれていてもよい2価のカルボン酸成分としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式カルボン酸;及びこれらの酸の無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等が挙げられる。3価以上の多価カルボン酸成分としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸等の脂肪族カルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸等の脂環式カルボン酸;及びこれらの酸無水物、アルキル(炭素数1〜3)エステル等の誘導体等が挙げられる。
【0044】
非晶性ポリエステル樹脂の合成に用いる酸(ジカルボン酸)成分としては、特に、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、マレイン酸等のジカルボン酸、ドデセニルコハク酸、オクチルコハク酸等の炭素数1〜20のアルキル基又は炭素数2〜20のアルケニル基で置換されたコハク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、それらの酸の無水物及びそれらの酸のアルキル(炭素数1〜3)エステル等が好ましく用いられる。
【0045】
一方、前記アルコール(ジオール)成分としては脂肪族ジオールが含まれていることが好ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール等が挙げられるが、この限りではない。
【0046】
一方、必要に応じて、二重結合を持つジオール成分3価以上の多価アルコール等の構成成分が含まれていても良い。
【0047】
前記二重結合を持つジオールとしては、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオール等が挙げられる。3価以上の多価アルコール成分としては、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の芳香族アルコール;ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の脂肪族アルコール;1,4−ソルビタン等の脂環式アルコール等が挙げられる。
【0048】
さらに、上述した脂肪族ジオールに加えて、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等のビスフェノールAのアルキレン(炭素数2〜3)オキサイド(平均付加モル数1〜10)付加物や水素添加ビスフェノールA等が用いられる。また、酸(ジカルボン酸)成分、アルコール成分とも複数の成分を含んでもよい。
【0049】
非晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては特に制限はなくカルボン酸成分とアルコール成分を反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等が挙げられ、モノマーの種類によって使い分けて製造する。前記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、通常1/1程度である。
【0050】
非晶性ポリエステルの製造は、重合温度180〜230℃の間で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。モノマーが、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合はあらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合予定のカルボン酸成分またはアルコール成分とを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0051】
非晶性ポリエステルの製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物、リン酸化合物、およびアミン化合物等が挙げられ、具体的には、以下の化合物が挙げられる。
【0052】
例えば、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム、酢酸ジルコニウム、ステアリン酸ジルコニウム、オチル酸ジルコニウム、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。
【0053】
また、非晶性ポリエステル末端の極性基を封鎖し、トナー帯電特性の環境安定性を改善する目的において単官能単量体が非晶性ポリエステルに導入される場合がある。
【0054】
単官能単量体としては、安息香酸、クロロ安息香酸、ブロモ安息香酸、スルホ安息香酸モノアンモニウム塩、スルホ安息香酸モノナトリウム塩、シクロヘキシルアミノカルボニル安息香酸、n−ドデシルアミノカルボニル安息香酸、ターシャリーブチル安息香酸、ナフトエ酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、サリチル酸、チオサリチル酸、フェニル酢酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、オクタンカルボン酸、ラウリル酸、ステアリル酸、及びこれらの低級アルキルエステル等のモノカルボン酸類;又は脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂環族アルコール等のモノアルコール;が用いられる。
【0055】
また、非晶性ポリエステルの樹脂酸価(AV)は、5mgKOH/g以上50mgKOH/g以下の範囲であることが好ましく、10mgKOH/g以上25mgKOH/g以下の範囲であることがより好ましい。なお、樹脂酸価は、JIS K0070に準拠して測定する。
【0056】
[蛍光増白剤]
本実施の形態における蛍光増白剤は、紫外光を吸収して、蛍光ピークが380nm以上450nm以下における蛍光を発する有機材料粒子、または無機材料であれば特に限定されるものではない。蛍光剤の具体例としては、無機蛍光顔料、例えば、タングステン酸カルシウム、ヒ酸マグネシウムカルシウム、ケイ酸バリウム、リン酸カルシウム及びリン酸カルシウム亜鉛等のアルカリ土類金属の硫化物、ケイ酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩;有機蛍光顔料;蛍光増白剤、例えば、2,5,チオフェンジイル(5−tert−ブチル−1,3ベンゾキサゾール)、 4,4’−ビス(ベンゾオキサゾール−2−ルイス)スチルベン、有機蛍光染料、例えば、4,4’−ビス(4−フェニル−1,2,3−トリアゾール−2−イル)スチルベン−2’,2’−ジスルホン酸ナトリウム、3−フェニル−7−(4−メチル−5−フェニル−1,2,3−トリアゾール−2−イル)クマリン、3−フェニル−7−(2H−ナフト[1,2−d]−トリアゾール−2−イル)クマリン、1−(4−アシドスルホニルフェニル)−3−(4−クロロフェニル)−2−ピラゾリン等のクマリン誘導体、ナフタールイミド誘導体、スチルベン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンジジン誘導体、スチレンビフェニール誘導体、ピラゾロン誘導体等が挙げられ、これらの中ではクマリン誘導体及びナフタールイミド誘導体が好ましく、クマリン誘導体がより好ましい。
【0057】
上述した蛍光増白剤や蛍光剤自体は、やや色を有していてもよいが、電子複写物の模様、色彩等の外観に悪影響を与えないように、少なくとも、トナーにした場合に可視光下では無色ないし白色であることが好ましい。このような観点から、蛍光剤の蛍光波長ピークは、400nm以下が好ましい。なお、蛍光増白剤の蛍光波長のピークは、上述したように日立製作所製分光光度計「U−4000」を用いて、蛍光増白剤を溶解可能な溶媒に溶解して測定した。
【0058】
<静電荷像現像用透明トナー>
本実施の形態の静電荷像現像用透明トナー(以下、「トナー」と略す場合がある)は、少なくとも前記ポリエステル樹脂が非晶性ポリエステル樹脂を含む上述した静電荷像現像用結着樹脂を含有する静電荷像現像用透明トナーであり、静電荷像現像用透明トナーの量を30g/mとして定着させた後のJIS R 3106に準拠して測定された透過率が400nmから800nmにわたり80%以上である。
【0059】
トナー定着後の光の透過率が400nmから800nmにわたり80%未満の場合、視認者が透明画像として認識することに違和感を覚える。
【0060】
また、本実施の形態の静電荷像現像用透明トナーは、結着樹脂と、離型剤と、蛍光増白剤とを含み、色差ΔEab=[(Δa+(Δb+(ΔL1/2とした場合に、記録媒体上のトナー量を30g/mとして定着させた後の記録媒体とトナー像との色差ΔEabが5以下であることが好ましい。
【0061】
トナー定着後の記録媒体におけるトナー(例えば、いわゆる透明トナー)画像領域と記録媒体露出領域との色差ΔEabが5を超えた場合、視認者がトナー画像領域の色調と記録媒体露出領域の色調との差に違和感を覚える場合があるからである。
【0062】
以下、本実施の形態のトナーを構成する成分について詳細に説明する。
【0063】
[離型剤]
離型剤としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類、加熱により軟化点を示すシリコーン類、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等のような脂肪酸アミド類や、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのような動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物系・石油系ワックス、脂肪酸エステル、モンタン酸エステル、カルボン酸エステル等のエステル系ワックス、及びそれらの変性物などを挙げることができる。これらの離型剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本実施の形態における離型剤としては、低分子量の炭化水素系ワックスが好ましい。
【0064】
[外添剤]
さらに、流動性付与やクリーニング性向上の目的で、通常トナーの製造におけると同様に、炭酸カルシウムなどの金属塩、シリカ、アルミナ、チタニア、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物化合物、セラミック等などの無機粒子や、ビニル樹脂、ポリエステル、シリコーンなどの樹脂粒子を乾燥状態で剪断力をかけてトナー表面に添加される。これらの無機粒子は導電性、帯電性等を制御するためにカップリング材等で表面処理することが好ましい。
【0065】
粒子の添加方法としては、トナーの乾燥後、Vブレンダー、ヘンシエルミキサー等の混合機を用いて乾式でトナー表面に付着させてもよいし、粒子を水又は水/アルコールのごとき水系の液体に分散させた後、スラリー状態のトナーに添加し乾燥させトナー表面に外添剤を付着させてもよい。また、乾燥粉体にスラリーをスプレーしながら乾燥してもよい。
【0066】
<静電荷像現像用現像剤>
二成分現像剤に使用し得るキャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアを用いることができる。例えば酸化鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物や、これら芯材表面に樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリア、磁性分散型キャリア等を挙げることができる。またマトリックス樹脂に導電材料などが分散された樹脂分散型キャリアであってもよい。
【0067】
キャリアに使用される被覆樹脂・マトリックス樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂またはその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
導電材料としては、金、銀、銅といった金属やカーボンブラック、更に酸化チタン、酸化亜鉛、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化スズ等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
【0069】
またキャリアの芯材としては、鉄、ニッケル、コバルト等の磁性金属、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、ガラスビーズ等が挙げられるが、キャリアを磁気ブラシ法に用いるためには、磁性材料であることが好ましい。キャリアの芯材の体積平均粒径としては、一般的には10〜500μmであり、好ましくは20〜80μmである。
【0070】
またキャリアの芯材の表面に樹脂被覆するには、前記被覆樹脂、および必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適性等を勘案して適宜選択すればよい。
【0071】
一般に、キャリアは適度な電気抵抗値を有することが必要であり、具体的には10〜1014Ωcm程度の電気抵抗値が求められている。例えば、鉄粉キャリアのように電気抵抗値が10Ωcmと低い場合には、スリーブからの電荷注入によりキャリアが感光体の画像部へ付着したり、潜像電荷がキャリアを介して逃げ、潜像の乱れや画像の欠損等を生じたりする等の問題が生じる。一方、絶縁性の樹脂を厚く被覆してしまうと電気抵抗値が高くなりすぎ、キャリア電荷がリークしにくくなり、その結果エッジの効いた画像にはなるが、反面大面積の画像面では中央部の画像濃度が非常に薄くなるというエッジ効果という問題が生じる。そのためキャリアの抵抗調整のために樹脂被覆層中に導電性微粉末を分散させることが好ましい。
【0072】
キャリア抵抗は、2枚の極板電極の間にキャリア粒子を挟み、電圧を印加した時の電流を測定する、通常の極板間式電気抵抗測定法により求め、103.8V/cmの電界下での抵抗で評価する。
【0073】
導電粉自身の電気抵抗は10Ωcm以下が好ましく、10Ωcm以下がより好ましい。導電粉の具体例としては、金、銀、銅のような金属;カーボンブラック;酸化チタン、酸化亜鉛のような導電性の金属酸化物単体系;酸化チタン、酸化亜鉛、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化スズ等の粒子の表面を導電性の金属酸化物で被覆した複合系などが挙げられる。製造安定性、コスト、電気抵抗の低さという観点からカーボンブラックが特に好ましい。カーボンブラックの種類は特に限定されないが、製造安定性の良いDBP(ジブチルフタレート)吸油量が50〜300ml/100gの範囲のものが好適である。導電粉の体積平均粒径は0.1μm以下が好ましく、分散のためには体積平均一次粒径が50nm以下のものが好ましい。
【0074】
上記樹脂被覆層を、キャリア芯材の表面に形成する方法としては、例えば、キャリア芯材の粉末を被膜層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、被膜層形成用溶液をキャリア芯材の表面に噴霧するスプレー法、キャリア芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被膜層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中でキャリア芯材と被膜層形成用溶液を混合し溶剤を除去するニーダーコーター法、被膜樹脂を粒子化し被膜樹脂の融点以上でキャリア芯材とニーダーコーター中で混合し冷却して被膜させるパウダーコート法が挙げられるが、ニーダーコーター法及びパウダーコート法が特に好ましく用いられる。
【0075】
前記二成分現像剤における本実施の形態の静電荷現像用トナーと上記キャリアとの混合比(重量比)としては、トナー:キャリア=1:100〜30:100程度の範囲であり、3:100〜20:100程度の範囲がより好ましい。
【0076】
<トナーの製造方法>
また、本実施の形態におけるトナーの製造方法としては、トナーの形状および表面構造の制御を意図的に行うことが可能な乳化重合凝集法がより好ましく、特許第2547016号明細書や特開平6−250439号公報等の乳化重合凝集法によりトナーを製造してもよい。乳化重合凝集法は、通常1μm以下の、微粒化された原材料を出発物質とするため原理的に小径トナーを効率的に作製される。この製造方法は、一般に乳化重合などにより樹脂分散液を作成し、一方同じ液体中に着色剤を分散した着色剤分散液を作成し、これらの樹脂分散液と着色剤分散液を混合し、トナー粒径に相当する凝集粒子を形成し、その後加熱することによって凝集粒子を融合合一しトナーが得られる。
【0077】
本実施の形態におけるトナーの製造方法は、上述した結着樹脂と蛍光増白剤を有機溶剤に溶解した後、水を添加して油相と水相を転相させ、その後有機溶剤を除去して樹脂粒子分散液を作製し、得られた樹脂粒子分散液と離型剤分散液と凝集剤を添加し混合して凝集粒子分散液とした後、凝集粒子を融合してトナー粒子を製造する方法である。
【0078】
また、結着樹脂として、ポリエステル樹脂を用いるため、以下に示す乳化工程を行う。
【0079】
−乳化工程−
本実施の形態の乳化工程は、上述した一種類以上の蛍光増白剤と一種類以上の非晶性ポリエステル樹脂を、使用する有機溶剤の沸点以下の温度で溶解し、均一な溶液とした後、これに中和剤として塩基性水溶液を加え、次いで純水を加えながらpH7〜9に保ち攪拌せん断を与えることによって転相させ該樹脂のO/W型の乳化液(エマルション)を得る。ついで、得られた乳化液を減圧蒸留することで溶媒を除去し、樹脂粒子乳化液を得るものである。
【0080】
中和した後のpHは7〜9、好ましくはpH7〜8であり、塩基性水溶液としては、例えばアンモニア水溶液や有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物を用いてもよい。pHが7未満の場合には、乳化液中に粗大な粒子が発生しやすくなるという不具合があり、pHが9を超えると、次工程の凝集で凝集粒度が拡大するという不具合がある。
【0081】
蛍光増白剤と非晶性ポリエステル樹脂が相溶化した粒子を用いることで離型剤粒子はより酸価の低い、樹脂粒子部分と凝集が生じやすくなるため、結果として本願発明の構造体を有するトナーが得られる。
【0082】
〈乳化分散液〉
前記樹脂粒子の平均粒径としては、通常1μm以下であり、0.01〜1μmであるのが好ましい。前記平均粒径が1μmを超えると、最終的に得られる静電荷像現像用透明トナーの粒径分布が広くなったり、遊離粒子の発生が生じ、性能や信頼性の低下を招き易い。一方、前記平均粒径が前記範囲内にあると前記欠点がない上、トナー間の偏在が減少し、トナー中の分散が良好となり、性能や信頼性が向上する点で有利である。なお、前記平均粒径は、例えばコールターマルチサイザー、レーザー散乱粒度測定装置などを用いて測定される。
【0083】
前記分散液における分散媒体としては、例えば水系媒体や有機溶剤などが挙げられる。
【0084】
前記水系媒体としては、例えば、蒸留水、イオン交換水等の水、アルコール類、酢酸エステル、或いはケトン、これらの混合物などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいが、2種以上を併用することが望ましい。
【0085】
本実施の形態においては、前記水系媒体に界面活性剤を添加混合しておいてもかまわない。界面活性剤としては特に限定されるものでは無いが、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系等のアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型等のカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系等の非イオン系界面活性剤などが挙げられる。これらの中でもアニオン界面活性剤、カチオン系界面活性剤が好ましい。前記非イオン系界面活性剤は、前記アニオン界面活性剤又はカチオン系界面活性剤と併用されるのが好ましい。前記界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0086】
なお、前記アニオン界面活性剤の具体例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどが挙げられる。また、前記カチオン界面活性剤の具体例としては、アルキルベンジルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。これらの中でもアニオン界面活性剤、カチオン系界面活性剤等のイオン性界面活性剤が好ましい。
【0087】
前記有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセトン、トルエンとエタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、2-ブチルアルコール、sec−ブチルアルコールのごときアルコールが用いられ、前記結着樹脂に応じて適宜選択して用いる。
【0088】
前記樹脂粒子が、中和によりアニオン型となり得る官能基を含有した自己水分散性をもつ非晶性ポリエステル樹脂である場合、親水性となり得る官能基の一部又は全部が塩基で中和された、水性媒体の作用下で安定した水分散体を形成できる。中和により親水性基と成り得る官能基はカルボキシル基やスルホン基等の酸性基である為、中和剤としては例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等の無機塩基や、ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミンなどの有機塩基が挙げられる。
【0089】
また、結着樹脂として、それ自体水に分散しない、すなわち自己水分散性を有しないポリエステル樹脂を用いる場合には、後述する離型剤と同様、樹脂溶液及び又はそれと混合する水性媒体にイオン性界面活性剤、高分子酸、高分子塩基等の高分子電解質と共に分散し、融点以上に加熱し、強い剪断力を印加可能なホモジナイザーや圧力吐出型分散機を用いて処理すると、容易に1μm以下の粒子にされ得る。このイオン性界面活性剤や高分子電解質を用いる場合には、その水性媒体中における濃度は、0.5質量%から5質量%程度になるようにすることである。
【0090】
非晶性ポリエステル樹脂と蛍光増白剤は、離型剤とブレンドしても良いし、適当な溶剤に溶解してブレンドしても良く、また、お互いに乳化物とした後に、混合凝集した後合一させてブレンドしても良い。この溶融混合ブレンドの場合、トナーは粉砕法で作製されるのが好ましい。溶剤に溶解してブレンドした場合、溶剤と分散安定剤とともに湿式造粒するトナー製法が好ましく、お互いに乳化物として混合する場合は、特に制限はないが、凝集法、懸濁重合法、溶解懸濁法など、水中でトナー粒子を作製する湿式製法が、現像器内でトナー破壊を起こりにくくする形状制御ができるため好ましい。特に形状制御および、樹脂被覆層形成が容易な乳化物の凝集合一法でトナー作製することが望ましい。粒子径制御や、表面被覆層を形成するためには、乳化物の凝集合一法でトナー作製することが望ましい。
【0091】
乳化粒子を形成する際に用いる乳化機としては、例えば、ホモジナイザー、ホモミキサー、キャビトロン、クレアミックス、加圧ニーダー、エクストルーダー、メディア分散機等が挙げられる。
【0092】
<画像形成装置>
次に、本実施の形態の画像形成装置の一例について説明する。
【0093】
図1は、本実施の形態の画像形成方法により画像を形成するための、画像形成装置の構成例を示す概略図である。図示した画像形成装置200は、像担持体201、帯電器202、像書き込み装置203、ロータリー現像装置204、一次転写ロール205、クリーニングブレード206、中間転写体207、複数(図では3つ)の支持ロール208,209,210、二次転写ロール211等を備えて構成されている。
【0094】
像担持体201は、全体としてドラム状に形成されたもので、その外周面(ドラム表面)に感光層を有している。この像担持体201は図1の矢印C方向に回転可能に設けられている。帯電器202は、像担持体201を一様に帯電するものである。像書き込み装置203は、帯電器202によって一様に帯電された像担持体201に像光を照射することにより、静電潜像を形成するものである。
【0095】
ロータリー現像装置204は、それぞれイエロー用、マゼンタ用、シアン用、ブラック用、オーバーコート用のトナーを収容する5つの現像器204Y,204M,204C,204K,204Tを有するものである。本装置では、画像形成のための現像剤にトナーを用いることから、現像器204Yにはイエロー色トナー、現像器204Mにはマゼンタ色トナー、現像器204Cにはシアン色トナー、現像器4Kにはブラック色トナー、現像器204Tにはオーバーコート用の透明トナーがそれぞれ収容されることになる。このロータリー現像装置204は、上記5つの現像器204Y,204M,204C,204K,204Tが順に像担持体201と近接・対向するように回転駆動することにより、それぞれの色に対応する静電潜像にトナーを転移して可視トナー像及びオーバーコートトナー像を形成するものである。
【0096】
ここで、必要とする可視画像に応じて、ロータリー現像装置204内の現像器204T以外の現像器を部分的に除去しても良い。例えば、現像器204Y、現像器204M、現像器204C、現像器204Tといった4つの現像器からなるロータリー現像装置であってもよい。また、可視画像形成用の現像器をレッド、ブルー、グリーン等の所望する色の現像剤を収容した現像器に変換して使用しても良い。
【0097】
一次転写ロール205は、像担持体201との間で中間転写体207を挟持しつつ、像担持体201表面に形成されたトナー像(可視トナー像又はオーバーコートトナー像)をエンドレスベルト状の中間転写体207の外周面に転写(一次転写)するものである。クリーニングブレード206は、転写後に像担持体201表面に残ったトナーをクリーニング(除去)するものである。中間転写体207は、その内周面を、複数の支持ロール208,209,210によって張架され、矢印D方向及びその逆方向に周回可能に支持されている。二次転写ロール211は、図示しない用紙搬送手段によって矢印E方向に搬送される記録用紙(画像出力媒体)を支持ロール210との間で挟持しつつ、中間転写体207外周面に転写されたトナー像を記録用紙に転写(二次転写)するものである。
【0098】
画像形成装置200は、順次、像担持体201表面にトナー像を形成して中間転写体207外周面に重ねて転写するものであり、次のように動作する。すなわち、先ず、像担持体201が回転駆動され、帯電器202によって像担持体201の表面が一様に帯電された後、その像担持体201に像書き込み装置203による像光が照射されて静電潜像が形成される。この静電潜像はイエロー用の現像器204Yによって現像された後、そのトナー像が一次転写ロール205によって中間転写体207外周面に転写される。このとき記録用紙に転写されずに像担持体201表面に残ったイエロー色トナーは、クリーニングブレード206によりクリーニングされる。また、イエロー色のトナー像が、外周面に形成された中間転写体207は、該外周面にイエロー色のトナー像を保持したまま、一旦矢印D方向と逆方向に周回移動し、次のマゼンタ色のトナー像が、イエロー色のトナー画像の上に積層されて転写される位置に備えられる。
【0099】
以降、マゼンタ、シアン、ブラックの各色についても、上記同様に帯電器202による帯電、像書き込み装置203による像光の照射、各現像器204M,204C,204Kによるトナー像の形成、中間転写体207外周面へのトナー像の転写が順次、繰り返される。
【0100】
こうして中間転写体207外周面に対する4色のトナー像の転写が終了すると、これに続いて再び、像担持体201の表面が帯電器202によって一様に帯電された後、像書き込み装置203からの像光が照射されて静電潜像が形成される。この静電潜像は、オーバーコート用の現像器204Tによって現像された後、そのトナー像が一次転写ロール205によって中間転写体207外周面に転写される。これにより、中間転写体207外周面には、4色のトナー像が重ね合わされたフルカラー像(可視トナー像)とオーバーコートトナー像との両方が形成される。このフルカラーの可視トナー像及びオーバーコートトナー像は二次転写ロール211により一括して記録用紙に転写される。これにより、記録用紙の画像形成面には、フルカラーの可視画像とオーバーコート画像とが混在した記録画像が得られる。
【0101】
なお、図1において、トナー像が二次転写ロール211によって記録用紙(画像出力媒体の一例)表面に転写された後に、140℃乃至210℃、好ましくは160℃乃至200℃の温度域で加熱定着させることが望ましい。
【0102】
<画像形成方法>
本実施の形態における画像形成方法は、少なくとも、像保持体を帯電させる工程と、像保持体上に潜像を形成する工程と、潜像担持体上の潜像を上述した静電荷像現像用現像剤を用いて現像する工程と、現像されたトナー像を中間転写体上に転写する1次転写工程と、前記中間転写体に転写されたトナー像を、記録媒体に転写する2次転写工程と、前記トナー画像を熱と圧力によって定着する工程とを有する。
【0103】
上記の各工程は、いずれも画像形成方法において公知の工程が利用される。
【0104】
潜像保持体としては、例えば、電子写真感光体及び誘電記録体等が使用できる。電子写真感光体の場合、該電子写真感光体の表面を、コロトロン帯電器、接触帯電器等により一様に帯電した後、露光し、静電潜像を形成する(潜像形成工程)。次いで、表面に現像剤層を形成させた現像ロールと接触若しくは近接させて、静電潜像にトナーの粒子を付着させ、電子写真感光体上にトナー画像を形成する(現像工程)。形成されたトナー画像は、コロトロン帯電器等を利用して紙等の被転写体表面に転写される(転写工程)。さらに、被転写体表面に転写されたトナー画像は、定着機により熱定着され、最終的なトナー画像が形成される。
【0105】
なお、前記定着機による熱定着の際には、オフセット等を防止するため、通常、前記定着機における定着部材に離型剤が供給される。
【0106】
熱定着に用いる定着部材であるローラあるいはベルトの表面に、離型剤を供給する方法としては、特に制限はなく、例えば、液体離型剤を含浸したパッドを用いるパッド方式、ウエブ方式、ローラ方式、非接触型のシャワー方式(スプレー方式)等が挙げられ、なかでも、ウエブ方式、ローラ方式が好ましい。これらの方式の場合、前記離型剤を均一に供給でき、しかも供給量をコントロールすることが容易な点で有利である。なお、シャワー方式により前記定着部材の全体に均一に前記離型剤を供給するには、別途ブレード等を用いる必要がある。
【0107】
トナー画像を転写する被転写体(記録材)としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。
【実施例】
【0108】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明を限定するものではない。なお、実施例中において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
【0109】
<各種特性の測定方法>
まず、実施例、比較例で用いたトナー等の物性測定方法について説明する。
【0110】
−粒度及び粒度分布測定方法−
粒径(「粒度」ともいう。)及び粒径分布測定(「粒度分布測定」ともいう。)について述べる。
【0111】
測定する粒子直径が2μm以上の場合、測定装置としてはコールターマルチサイザー−II型(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン−コールター社製)を使用した。
【0112】
測定法としては、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液2ml中に測定試料を0.5〜50mg加える。これを前記電解液100ml中に添加した。
【0113】
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1分間分散処理を行い、コールターマルチサイザー−II型により、アパーチャー径として100μmアパーチャーを用いて2〜60μmの粒子の粒度分布を測定して体積平均分布、個数平均分布を求めた。測定する粒子数は50,000であった。
【0114】
また、トナーの粒度分布は以下の方法により求めた。測定された粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、粒度の小さいほうから体積累積分布を描き、累積16%となる累積体積粒径をD16vと定義し、累積50%となる累積体積粒径をD50vと定義する。更に累積84%となる累積体積粒径をD84vと定義する。
【0115】
本発明における体積平均粒径は該D50vであり、体積平均粒度指標GSDvは以下の式によって算出した。
式:GSDv={(D84v)/(D16v)}0.5
【0116】
また、測定する粒子直径が2μm未満の場合、レーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700:堀場製作所製)を用いて測定した。測定法としては分散液となっている状態の試料を固形分で約2gになるように調整し、これにイオン交換水を添加して、約40mlにする。これをセルに適当な濃度になるまで投入し、約2分待って、セル内の濃度がほぼ安定になったところで測定する。得られたチャンネルごとの体積平均粒径を、体積平均粒径の小さい方から累積し、累積50%になったところを体積平均粒径とした。
【0117】
なお、内添剤および外添剤などの粉体を測定する場合は、界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液50ml中に測定試料を2g加え、超音波分散機(1,000Hz)にて2分間分散して、試料を作製し、前述の分散液と同様の方法で、測定した。
【0118】
−トナーの形状係数SF1測定方法−
トナーの形状係数SF1は、トナー粒子表面の凹凸の度合いを示す形状係数SF1であり、以下の式により算出した。
式:SF1=(ML/A)×(π/4)×100
式中、MLはトナー粒子の最大長を示し、Aは粒子の投影面積を示す。形状係数SF1の測定は、まずスライドグラス上に散布したトナーの光学顕微鏡像をビデオカメラを通じて画像解析装置に取り込み、50個以上のトナーについてSFを計算し、平均値を求めた。
【0119】
−ガラス転移温度の測定方法−
トナーのガラス転移温度は、DSC(示差走査型熱量計)測定法により決定し、ASTMD3418−8に準拠して測定された主体極大ピークより求めた。
【0120】
主体極大ピークの測定には、パーキンエルマー社製のDSC−7を用いることができる。この装置の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行った。
【0121】
−トナー、樹脂粒子の分子量、分子量分布測定方法−
分子量分布は、以下の条件で行ったものである。GPCは「HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)社製)装置」を用い、カラムは「TSKgel、SuperHM−H(東ソー(株)社製、6.0mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、IR検出器を用いて実験を行った。また、検量線は東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作製した。
【0122】
−樹脂微粒子の体積平均粒径−
樹脂微粒子、着色剤粒子等の体積平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)で測定した。
【0123】
−樹脂のa、bの測定方法−
樹脂分散液を凍結乾燥機を用いて乾燥し樹脂粉末を得た。この粉末5gを直径4cmのディスク成型機により5トンの荷重をかけてディスクを作製した。これの色域をSpectrophotometer SE6000(日本電色工業社製)を用いて測定を行った。
【0124】
−色相ΔEabと明度Lの測定方法−
富士ゼロックス株式会社製「DCC400」の現像パラメータを調製して、オーバーコート用の透明トナーを用い、記録媒体上のトナー量を30g/mとして定着させた後、トナー定着後の記録媒体におけるトナー(例えば、いわゆる透明トナー)画像領域と記録媒体露出領域との色差ΔEabおよび、各領域の明度Lは、Xrite−939(エックスライト社製)を用いて測定した。測定箇所は、256点であり、以下に示す評価ではその平均値を記載した。
【0125】
−トナー画像の透過率−
富士ゼロックス株式会社製「DocuCentre Color 400」の現像パラメータを調製して、透明トナーを用い、記録媒体上のトナー量を30g/mとして定着させた後、トナー定着後の透明記録媒体におけるトナー(例えば、いわゆる透明トナー)画像領域に対して、JIS R 3106に準拠して400nmから800nmにわたって、分光透過率をSpectrophotometer SE6000(日本電色工業社製)を用いて測定した。
【0126】
−目視によるトナーの色目評価−
直径4cmのアルミ皿にトナー5gを入れて150℃の温風加熱機で加熱溶解した後、冷却して板状のトナー溶融物を作製した。これの色目を観察する事でトナーの色目を目視評価した。
【0127】
<実施例1>
(結着樹脂の作製)
<非晶性ポリエステル樹脂(A)の合成>
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物: 15モル%
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物: 35モル%
テレフタル酸: 30モル%
フマル酸: 15モル%
トリメリット酸: 5モル%
攪拌装置、窒素導入管、温度センサ、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記組成比のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、上記3成分の総量を100質量部として、この100質量部に対してジブチルスズの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2.5時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が63℃、重量平均分子量(Mw)38000、酸価:15mgKOH/gである非晶性ポリエステル樹脂(A)を得た。
【0128】
(結着樹脂分散液(1)の作製)
樹脂(A): 200部
溶媒1:酢酸エチル 80部
溶媒2:2−ブタノール 50部
10重量%アンモニア水溶液 27.2部
蒸留水 800部
温度調節及び窒素置換した容器へ、非晶性ポリエステル樹脂(A)を100部と蛍光増白剤として2,5−チオフェンジイル(5−t−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール(チバ・ジャパン社製「TINOPAL OB」、蛍光ピーク波長;435nm)を0.1部投入し、溶媒1及び溶媒2を添加し45℃に加熱撹拌して溶解させた後、10重量%アンモニア水溶液を添加して30分撹拌した。そこに蒸留水400部を撹拌しながら2部/分の割合で滴下して乳化を行った。
【0129】
滴下終了後、乳化液を室温に戻し、撹拌しつつ48時間乾燥窒素によりバブリングを行うことにより、溶媒1及び溶媒2を1,000ppm以下まで低減させ、樹脂分散液(1)を得た。
【0130】
(離型剤粒子分散液の調製)
パラフィンワックス(日本精蝋社製:HNP−9) 300部
アニオン界面活性剤(第一工業製薬:ネオゲン RK) 13部
イオン交換水 687部
上記成分を混合し90℃に加熱撹拌してワックスを溶解した後、ゴーリンホモジナイザーで加圧分散処理して、平均粒径が220nmである離型剤粒子分散液を調製した。
【0131】
(トナー1の作製)
樹脂分散液(1) 610部
離型剤分散液 60部
イオン交換水 570部
ポリ塩化アルミニウム10%溶液 3部
樹脂分散液をと離型剤分散液とイオン交換液を丸型ステンレス製フラスコ中に投入し、0.5モル/リットルの塩酸を添加してpHを3.5に調整した後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックスT50)で分散を行いながらポリ塩化アルミニウム10%溶液を添加して均一に混合分散した。このスラリーを加熱撹拌しながら45℃まで加熱保持し、凝集粒径が5.0μmに達したところで樹脂分散液(1)に0.5モル/リットルの塩酸を添加してpHを3.5に調整した樹脂分散液(1)300部を緩やかに追加し1時間保持し、1規定の水酸化ナトリウムを添加してpHを8.5に調整した後攪拌を継続しながら80℃まで加熱し、1時間保持した。その後、20℃/minの速度で30℃まで冷却した後、ろ過し、イオン交換水で充分に洗浄し、乾燥させて透明トナー(1)を得た。
【0132】
これらトナー母粒子100質量部と、ジメチルシリコーンオイル処理シリカ微粒子(日本アエロジル社製、商品名:RY200)0.8質量部をヘンシェルミキサーにより混合し外添トナー1を得た。
【0133】
<キャリアの調製>
フェライト粒子(平均粒径:50μm): 100質量部
トルエン: 14質量部
スチレン/メチルメタクリレート共重合体(共重合比:15/85): 2質量部
カーボンブラック: 0.2質量部
まずフェライト粒子を除く上記成分をサンドミルにて分散し、この分散液をフェライト粒子とともに真空脱気型ニーダーに入れ、攪拌しながら減圧し乾燥させることによりキャリアを得た。
【0134】
<現像剤の調製>
上記キャリア100質量部に対して、上記トナー1の5質量部を混合しそれぞれの現像剤1を作製した。
【0135】
<実施例2,3>
実施例1における蛍光増白剤の含有量を、それぞれ0.3部,0.5部に替えた以外は、実施例1に準じ、それぞれトナー2,3を作成し、さらに、上記キャリア100質量部に対して、トナー2,3の5質量部を混合し、実施例2,3のオーバーコート用現像剤2,3を作製した。
【0136】
<比較例1,2,3>
実施例1における蛍光増白剤の含有量を、それぞれ0部,0.05部,0.7部に替えた以外は、実施例1に準じ、それぞれトナー4,5,6を作成し、さらに、上記キャリア100質量部に対して、トナー4,5,6の5質量部を混合し、比較例1,2,3のオーバーコート用現像剤4,5,6を作製した。
【0137】
<実施例4>
(結着樹脂の作製)
<非晶性ポリエステル樹脂(B)の合成>
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物: 15モル%
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物: 35モル%
テレフタル酸: 50モル%
攪拌装置、窒素導入管、温度センサ、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記組成比のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、上記3成分の総量を100質量部として、この100質量部に対してチタンテトラエトキシドの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2.5時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が63℃、重量平均分子量(Mw)17000で、酸価:10mgKOH/gである非晶性ポリエステル樹脂(B)を得た。
【0138】
実施例1における非晶性ポリエステル樹脂(A)を非晶性ポリエステル樹脂(B)に替え、蛍光増白剤として2,5−チオフェンジイルを0.3部用いた以外は、実施例1に準じてトナー7を作成し、さらに、上記キャリア100質量部に対して、トナー7の5質量部を混合し、実施例4のオーバーコート用現像剤7を作製した。
【0139】
<比較例4>
実施例4における蛍光増白剤の含有量を、0部に替え、実施例4の非晶性ポリエステル樹脂(B)を用いた以外は、実施例1に準じ、それぞれトナー8を作成し、さらに、上記キャリア100質量部に対して、トナー8の5質量部を混合し、比較例4のオーバーコート用現像剤8を作製した。
【0140】
<実施例5>
転相乳化時に添加される蛍光増白剤として、実施例1における2,5−チオフェンジイルビス(5−t−ブチル−1,3−ベンゾキサゾールに代えて4,4’−ビス(ベンゾオキサゾール−2−イル)スチルベン(チバ・ジャパン社製「Ciba UVITEX OB-ONE」、蛍光ピーク波長;435nm)を用い、添加量を0.3部とした以外は、実施例1に準じ、トナー9を作成し、さらに、上記キャリア100質量部に対して、トナー9の5質量部を混合し、実施例5のオーバーコート用現像剤9を作製した。
【0141】
<実施例6>
転相乳化時に添加される蛍光増白剤として、実施例1における2,5−チオフェンジイルビス(5−t−ブチル−1,3−ベンゾキサゾールに代えて、4,4’-ビス(2-メトキシスチリル)-1,1’-ビフェニル(チバ・ジャパン社製「Ciba UVITEX FP」、蛍光ピーク波長;425nm)を用い、添加量を0.3部とした以外は、実施例1に準じ、トナー10を作成し、さらに、上記キャリア100質量部に対して、トナー10の5質量部を混合し、実施例6のオーバーコート用現像剤10を作製した。
【0142】
<比較例5>
(結着樹脂分散液(2)の作製)
樹脂(A): 200部
溶媒1:酢酸エチル 80部
溶媒2:2−ブタノール 50部
10重量%アンモニア水溶液 27.2部
蒸留水 800部
温度調節及び窒素置換した容器へ、非晶性ポリエステル樹脂(A)を100部投入し、溶媒1及び溶媒2を添加し45℃に加熱撹拌して溶解させた後、10重量%アンモニア水溶液を添加して30分撹拌した。そこに蒸留水400部を撹拌しながら2部/分の割合で滴下して乳化を行った。
【0143】
滴下終了後、乳化液を室温に戻し、撹拌しつつ48時間乾燥窒素によりバブリングを行うことにより、溶媒1及び溶媒2を1,000ppm以下まで低減させ、そののち、蛍光増白剤として2,5−チオフェンジイル(5−t−ブチル−1,3−ベンゾキサゾール(チバ・ジャパン社製「TINOPAL OB」、蛍光ピーク波長;435nm)を0.3部を添加して樹脂分散液(2)を得た。
【0144】
実施例1における樹脂分散液(1)を樹脂分散液(2)に替えた以外は、実施例1に準じてトナー11を作成し、さらに、上記キャリア100質量部に対して、トナー11の5質量部を混合し、比較例5のオーバーコート用現像剤11を作製した。
【0145】
<実施例7>
(結着樹脂の作製)
<非晶性ポリエステル樹脂(C)の合成>
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物: 15モル%
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物: 35モル%
テレフタル酸: 20モル%
フマル酸: 25モル%
トリメリット酸: 5モル%
攪拌装置、窒素導入管、温度センサ、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記組成比のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、上記3成分の総量を100質量部として、この100質量部に対してジブチルスズの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2.5時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が63℃、重量平均分子量(Mw)17000で、酸価:20mgKOH/gである非晶性ポリエステル樹脂(C)を得た。
【0146】
実施例1における非晶性ポリエステル樹脂(A)を非晶性ポリエステル樹脂(C)に替え、蛍光増白剤として2,5−チオフェンジイルビス(5−t−ブチル−1,3−ベンゾキサゾールを0.3部用いた以外は、実施例1に準じてトナー12を作成し、さらに、上記キャリア100質量部に対して、トナー12の5質量部を混合し、実施例7のオーバーコート用現像剤12を作製した。
【0147】
<比較例6>
実施例7における蛍光増白剤の含有量を、0部に替え、実施例7の非晶性ポリエステル樹脂(C)を用いた以外は、実施例1に準じ、それぞれトナー13を作成し、さらに、上記キャリア100質量部に対して、トナー13の5質量部を混合し、比較例6のオーバーコート用現像剤13を作製した。
【0148】
<実施例8>
(結着樹脂の作製)
<非晶性ポリエステル樹脂(D)の合成>
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物: 15モル%
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物: 35モル%
テレフタル酸: 15モル%
フマル酸: 20モル%
トリメリット酸: 15モル%
攪拌装置、窒素導入管、温度センサ、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記組成比のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内がばらつきなく攪拌されていることを確認した後、上記3成分の総量を100質量部として、この100質量部に対してジブチルスズの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2.5時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が63℃、重量平均分子量(Mw)17000で、酸価:25mgKOH/gである非晶性ポリエステル樹脂(D)を得た。
【0149】
実施例1における非晶性ポリエステル樹脂(A)を非晶性ポリエステル樹脂(D)に替え、蛍光増白剤として2,5−チオフェンジイルビス(5−t−ブチル−1,3−ベンゾキサゾールを0.3部用いた以外は、実施例1に準じてトナー14を作成し、さらに、上記キャリア100質量部に対して、トナー14の5質量部を混合し、実施例8のオーバーコート用現像剤14を作製した。
【0150】
<比較例7>
実施例8における蛍光増白剤の含有量を、0部に替え、実施例8の非晶性ポリエステル樹脂(C)を用いた以外は、実施例1に準じ、それぞれトナー15を作成し、さらに、上記キャリア100質量部に対して、トナー15の5質量部を混合し、比較例7のオーバーコート用現像剤15を作製した。
【0151】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明の画像形成方法および画像形成装置は、特に電子写真法、静電記録法等の用途に有用である。
【符号の説明】
【0153】
200 画像形成装置、201 像担持体、202 帯電器、203 像書き込み装置、204 ロータリー現像装置、204Y,204M,204C,204K,204T 現像器、205 一次転写ロール、206 クリーニングブレード、207 中間転写体、208,209,210 支持ロール、211二次転写ロール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂と蛍光増白剤とを含む静電荷像現像用透明トナーに用いられる結着樹脂であり、
蛍光増白剤の蛍光ピークが380nm以上450nm以下にあり、
結着樹脂の色相が−0.5<a<1.0かつ−1.0<b<0.5であることを特徴とする静電荷像現像用結着樹脂。
【請求項2】
蛍光増白剤の添加量が、結着樹脂に対して0.1質量%以上0.5質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用結着樹脂。
【請求項3】
少なくとも前記ポリエステル樹脂が非晶性ポリエステル樹脂を含む請求項1または請求項2に記載の静電荷像現像用結着樹脂を含有する静電荷像現像用透明トナーであり、
静電荷像現像用透明トナーの量を30g/mとして定着させた後のJIS R 3106に準拠して測定された透過率が400nmから800nmにわたり80%以上であることを特徴とする静電荷像現像用透明トナー。
【請求項4】
結着樹脂と、離型剤と、蛍光増白剤とを含み、色差ΔEab=[(Δa+(Δb+(ΔL1/2とした場合に、記録媒体上のトナー量を30g/mとして定着させた後の記録媒体とトナー像との色差ΔEabが5以下であることを特徴とする静電荷像現像用透明トナー。
【請求項5】
結着樹脂と蛍光増白剤を有機溶剤に溶解した後、水を添加して油相と水相を転相させ、その後有機溶剤を除去して樹脂粒子分散液を作製し、離型剤分散液と凝集剤を添加し混合して凝集粒子分散液とした後、凝集粒子を融合してトナー粒子とすることを特徴とする請求項3または4に記載の静電荷像現像用透明トナー。
【請求項6】
結着樹脂と蛍光増白剤を有機溶剤に溶解した後、水を添加して油相と水相を転相させ、その後有機溶剤を除去して樹脂粒子分散液を作製し、得られた樹脂粒子分散液と離型剤分散液と凝集剤を添加し混合して凝集粒子分散液とした後、凝集粒子を融合してトナー粒子を製造することを特徴とする静電荷像現像用透明トナーの製造方法。
【請求項7】
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用透明トナーと、キャリアとを含むことを特徴とする静電荷像現像用現像剤。
【請求項8】
請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用透明トナーを含むことを特徴とするトナーカートリッジ。
【請求項9】
潜像保持体と、
前記潜像保持体を帯電させる帯電手段と、
帯電した前記潜像保持体を露光して前記潜像保持体上に静電潜像を形成させる露光手段と、
請求項7に記載の静電荷像現像用現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成させる現像手段と、
前記トナー像を前記潜像保持体から被転写体に転写する転写手段と、
前記像保持体の表面に残存したトナーを除去するためのクリーニング手段からなる群より選ばれる少なくとも一種と、
を含むことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項10】
少なくとも、像保持体を帯電させる工程と、像保持体上に潜像を形成する工程と、像保持体上の潜像を請求項7に記載の静電荷像現像用現像剤を用いて現像する工程と、現像されたトナー像を中間転写体上に転写する1次転写工程と、前記中間転写体に転写されたトナー像を、記録媒体に転写する2次転写工程と、前記トナー画像を少なくとも熱または圧力によって定着する工程とを有することを特徴とする画像形成方法。
【請求項11】
像保持体と、該像保持体を帯電させる帯電装置と、前記帯電装置により帯電された像保持体上に静電潜像を形成する露光装置と、前記像保持体上の静電潜像をトナー像に形成する現像装置と、前記トナー像を中間転写体に転写する1次転写装置と、前記中間転写体に転写されたトナー像を、記録媒体に転写する2次転写装置と、前記記録媒体上のトナー像を少なくとも熱または圧力によって定着する定着装置と、を備え、
前記トナーが、請求項3から請求項5のいずれか1項に記載の静電荷像現像用透明トナーであることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2011−47998(P2011−47998A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194212(P2009−194212)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】