説明

静電荷現像用トナー、静電荷現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジおよび画像形成装置

【課題】低温定着を満足しつつ高温定着性を向上させクリーニング特性も向上させる静電荷現像用トナーを提供する。
【解決手段】静電荷現像用トナーは、2種類以上の結着樹脂、着色剤、離型剤とを含有し、トナー全体における体積平均粒径をD50T、トナーの重量平均分子量をMwTとし、トナーを分級して体積平均粒径を(1/5)×D50T以上(2/3)×D50T以下の範囲としたトナーの重量平均分子量をMwSとしたとき、MwT及びMwSが以下の式(1)の関係を満たす。
150≦(MwS/MwT)×100≦200 ・・・ 式(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷現像用トナー(以下、電子写真トナーともいう)、金属光沢トナー、静電荷現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真法においては帯電、露光工程により感光体上に静電荷を形成し、トナーを含む現像剤で静電荷を現像してトナー像を形成し、このトナー像を記録媒体に転写、定着して画像を形成する。ここで用いられる現像剤には、トナーとキャリアからなる二成分現像剤と、磁性トナーまたは非磁性トナーを単独で用いる一成分現像剤とがある。トナーの製造には、通常、熱可塑性樹脂を顔料、帯電制御剤、ワックスなどの離型剤とともに溶融混練して、冷却した後、微粉砕し、さらに分級する、いわゆる混練粉砕製法が使用されている。
【0003】
通常の混練粉砕製法で作製されたトナーにおいては、トナー粒子の形状は不定形であり、またトナー粒子の表面構造は、使用材料の粉砕性や粉砕工程の条件により微妙に変化するので、トナー粒子の形状及び表面構造を意図的に制御することは困難である。
【0004】
これに対して、近年、トナーの形状及び表面構造の制御を意図的に行うことが可能な手段として、湿式製法を利用したトナーの製造方法が提案されている。湿式製法としては、形状制御が可能な湿式球形化法、表面組成制御が可能な懸濁造粒法、内部組成の制御が可能な懸濁重合法、凝集・合一法等がある。
【0005】
一方、近年、特に定着性(例えば、低温定着性)、耐オフセット性に優れたトナーが望まれ、以下に示すように、高分子量成分と低分子量成分とを組み合わせたトナーが提案されている。例えば、特許文献1には、(A)スチレン系単量体を60%重量以上含有し重量平均分子量が4万以下のスチレン系重合体50〜94.8重量%、(B)スチレン系単量体を60重量%以上含有し重量平均分子量が10万以上のスチレン系重合体0.2〜10重量%、および(C)(メタ)アクリル酸エステル系単量体を60重量%以上含有し、重量平均分子量が10万以上の(メタ)アクリル酸エステル系重合体または(D)(メタ)アクリル酸エステル系単量体を60重量%以上含有し、ゲル分率が20重量%以上の架橋(メタ)アクリル酸エステル系重合体5〜49.8重量%からなるトナーが提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、少なくとも結着樹脂及び磁性酸化鉄を含有するトナー粒子と、無機微粉体を有する静電荷現像用現像剤において、該結着樹脂が高分子量成分と低分子量成分とを有し、(a)高分子量成分のガラス転移点が、低分子量成分のガラス転移点よりも5〜15℃高く、該高分子量成分のゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)による重量平均分子量(Mw)が70万〜130万であり、ピーク分子量(PMw)が40万〜110万であり、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の値が4.5以下であり、Z平均分子量(Mz)が100万〜1000万であり、MIが実質的に0であり、(b)該低分子量成分はMwが5500〜30000であり、PMwが5000〜25000であり、Mw/Mnの値が4.0以下であり、該無機微粉体が、少なくともシリコーンオイルで処理されているシリカ粒子Aと、少なくともシリコーンオイルで処理されているシリカ粒子Bとを有し、シリカ粒子Bの平均粒径DBがシリカ粒子Aの平均粒径DAよりも10倍以上大きい静電荷現像用現像剤が提案されている。
【0007】
また、特許文献3には、低分子量樹脂、高分子量樹脂、着色剤を含有するトナーであって、トナー粒子の表面近傍に高分子量樹脂からなる樹脂微粒子が偏在し、低分子量樹脂のピーク分子量が1,000〜30,000であり、高分子量樹脂のピーク分子量が50,000〜1,000,000であるトナーが提案されている。
【0008】
なお、特許文献4には、金色を呈するトナーが提案され、少なくとも結着樹脂と着色剤とを含むトナーであって、前記着色剤が、平均厚さ2〜5μm、長手方向平均長15〜500μmの平板状ガラスフレークに銀をコーティングした光輝性顔料である静電荷現像用金色トナーが開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開平8−123082号公報
【特許文献2】特開平9−80796号公報
【特許文献3】特開2000−292978号公報
【特許文献4】特開2003−207941号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、主にその目的とする処は、高温時の定着特性を向上させるとともに、トナー微粉の強度を向上させることによりクリーニング性を向上させ、特に金属箔等を添加した場合の光沢の均一性に厳しい静電荷現像用トナー、静電荷現像用現像剤、トナーカートリッジ、プロセスカートリッジおよび画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の通りである。
【0012】
(1)2種類以上の結着樹脂、着色剤、離型剤とを含有し、トナー全体における体積平均粒径をD50T、トナーの重量平均分子量をMwTとし、トナーを分級して体積平均粒径を(1/5)×D50T以上(2/3)×D50T以下の範囲としたトナーの重量平均分子量をMwSとしたとき、MwT及びMwSが以下の式(1)の関係を満たす静電荷現像用トナーである。
150≦(MwS/MwT)×100≦200 ・・・ 式(1)
【0013】
(2)上記(1)に記載の静電荷現像用トナーにおいて、前記結着樹脂がポリエステル樹脂である静電荷現像用トナーである。
【0014】
(3)上記(1)に記載の静電荷現像用トナーにおいて、小粒径側個数粒度分布指標GSDp−underが1.15以上1.30以下の範囲である静電荷現像用トナーである。
【0015】
(4)上記(1)から(3)に記載の静電荷現像用トナーにおいて、前記着色剤は、膜厚1nm以上10nm以下で、長手方向80nm以上1500nm以下の金属箔であり、転写後に金属光沢を呈する静電荷現像用トナーである。
【0016】
(5)上記(4)に記載の静電荷現像用トナーにおいて、前記金属箔の表面には、離型剤と相溶性のある樹脂がコーティングされ、離型剤の結晶化度が80以上である静電荷現像用トナーである。
【0017】
(6)上記(4)または(5)に記載の静電荷現像用トナーにおいて、前記金属箔が、金、銀、銅のいずれか一種である静電荷現像用トナーである。
【0018】
(7)上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の静電荷現像用トナーと、体積平均粒度分布指標GSDvが1.15〜1.35の範囲であるキャリアと、を含有する静電荷現像用現像剤である。
【0019】
(8)トナーが少なくとも収容され、前記トナーが上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の静電荷現像用トナーであるトナーカートリッジである。
【0020】
(9)現像剤保持体を少なくとも備え、上記(7)に記載の静電荷現像用現像剤を収容するプロセスカートリッジである。
【0021】
(10)潜像保持体と、該潜像保持体上に形成された静電荷を現像剤によりトナー像として現像する現像手段と、潜像保持体上に形成されたトナー像を被転写体上に転写する転写手段と、被転写体上に転写されたトナー像を定着する定着手段と、潜像保持体をクリーニング部材で摺擦して転写残留成分をクリーニングするクリーニング手段と、を有し、前記現像剤が上記(7)に記載の静電荷現像用現像剤である画像形成装置である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、微粉側のトナーの重量平均分子量(MwS)がトナー全体の重量平均分子量MwTより大きくすることにより、例えばクリーニングブレードに挟まれたときのトナーつぶれによる影響を軽減し、クリーニング特性を向上させる。また、高温定着時において、加熱により溶融しやすいのは微粉側のトナーであるが、微粉側のトナーが高分子量の樹脂で構成されているため、微粉側のトナーより低分子で構成されている粗粉側のトナーに比べ溶融しにくい。そのため、微粉側のトナーと粗粉側のトナーの溶融性に差が生じにくくなり、従ってトナー全体の特に高温度領域の定着特性が向上する。
【0023】
特に、請求項4に記載の静電荷現像用トナーによれば、着色剤である金属箔がトナー表面から露出することなく、これにより電荷のリークが発生せず、トナーの帯電性を維持することができる。また、請求項5に記載の静電荷現像用トナーによれば、金属箔の表面に離型剤と相溶性のある樹脂がコーティングされ、且つ離型剤の結晶度を高くすることにより、定着時に低粘度の液体の離型剤が定着像表面に奔流する勢いに乗って金属箔が定着像表面に展開され、これにより、定着トナー内において金属箔が配向するため金属光沢を呈することになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
<静電荷現像用トナー>
本実施の形態の静電荷現像用トナー(以下「トナー」と略す場合がある)は、2種類以上の結着樹脂、着色剤、離型剤とを含有し、トナー全体における体積平均粒径をD50T、トナーの重量平均分子量をMwTとし、トナーを分級して体積平均粒径を(1/5)×D50T以上(2/3)×D50T以下の範囲としたトナーの重量平均分子量をMwSとしたとき、MwT及びMwSが以下の式(1)の関係を満たす。
[数1]
150≦(MwS/MwT)×100≦200 ・・・ 式(1)
【0025】
(MwS/MwT)×100が150より小さいと、微粉側のトナーの分子量が低分子側に移行し、微粉側のトナーの強度が低くなるためトナーがつぶれ易くなり、その結果クリーニング特性が低下する。また、微粉側のトナーと粗粉側のトナーとの分子量が近似するため、高温定着時において、微粉側のトナーがより速く溶融し、これにより、トナー全体の定着性が低下する可能性がある。一方、(MwS/MwT)×100が200を超えると、微粉側のトナーの重量平均分子量MwSがトナー全体の重量平均分子量MwTより大きくなりすぎるため、高温定着時において、微粉側のトナーが粗粉側のトナーより遅れて溶融し、トナー全体の定着性が低下する可能性がある。その結果として、微粉側トナーの溶融不足に起因したまだら模様、特に金属箔を用いたときの画像の不均一が発生する可能性がある。
【0026】
なお、上述した「体積平均粒径を(1/5)×D50T以上(2/3)×D50T以下の範囲」は、分級手段により微粉側の結着樹脂の比率を確認するために有効な範囲として規定した。
【0027】
また、本実施の形態の静電荷現像用トナーは、前記結着樹脂がポリエステル樹脂である。なお、上記ポリエステル樹脂は、後述する非晶性ポリエステルのみを用いてもよく、または、後述する結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂との組み合わせを用いてもよい。
【0028】
また、本実施の形態の静電荷現像用トナーは、小粒径側個数粒度分布指標GSDp−underが1.15以上1.30以下の範囲である。ここで、「小粒径側個数粒度分布指標GSDp−under」は、後述するトナーの粒度分布測定方法により測定された個数粒度分布の小径側から50%の粒径を、同測定方法により測定された個数粒度分布の小径側から16%の粒径で除した値である。
【0029】
小粒径側個数粒度分布指標GSDp−underが、1.15未満の場合のトナーを製造することは難しく、一方、小粒径側個数粒度分布指標GSDp−underが1.30を超えると、トナー全体に対して微粉が多くなるため、クリーニング性が低下し、また高温定着性が低下して転写画像にトナーカブリが発生する可能性があり、また複写機等の機内汚染の可能性もある。
【0030】
結着樹脂の凝析値の範囲として、高分子量樹脂微粒子分散液の凝析値は低分子量樹脂分散液より大きく、凝析価は、1×10−5以上1×10−1以下の範囲であることが好ましい。ここで、ある濃度で分散液が不安定になって凝析が起きる濃度を凝析値という。
【0031】
前記凝析値とは、固形分濃度10質量%、pH7、25℃の乳化液中における1gの樹脂粒子を凝集させるのに必要な最小塩化マグネシウム量(mol/樹脂g)であり、これが大きいほど乳化粒子(樹脂粒子)が分散液中で安定であること(凝集しにくいこと)を示している
【0032】
前記樹脂粒子を凝集させるには、この凝析値をある範囲にする必要があり、1×10−5より小さいと、樹脂粒子の不安定化により粒子を維持することが困難となり、凝集粒子の粒径は制御が極めて困難になる。一方、1×10−1より大きいと、樹脂粒子が非常に安定化し、粒子間における凝集が生じにくくなり、粒度の制御が難しくなる。
【0033】
なお、結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いた場合、転送乳化に用いる水酸化ナトリウム量を変えることによって、凝析値を変更させる。また、上記結着樹脂がポリエステル樹脂であることで、樹脂微粒子の凝析値の制御が可能となった。さらに、凝集・合一法と組み合わせることによって、樹脂微粒子の凝集性を制御することが可能となり、トナー微粉側により高分子である樹脂で構成されるようにトナー作製が行える。
【0034】
また、本実施の形態における他の静電荷現像用トナーは、着色剤が、膜厚1nm以上10nm以下で、長手方向80nm以上1500nm以下の金属箔であり、転写後に金属光沢を呈する静電荷現像用金属光沢トナーであり、必要に応じて、前記金属箔の表面には、離型剤と相溶性のある樹脂がコーティングされ、離型剤の結晶化度は80以上である。
【0035】
上記金属箔としては、如何なる箔でもよいが、例えば金、銀、銅のいずれか一種であることが好ましい。
【0036】
金属箔が、上記膜厚及び長手方向のサイズより大きい場合には、通常のトナー粒径を考慮すると、トナー表面より金属箔の一部が露出して電荷がリークされるため、トナーの帯電性が不安定になる。一方、上記膜厚より小さい金属箔は現状では存在せず、また、長手方向のサイズが上記範囲より小さいものは配向しても金属光沢を呈しない。
【0037】
また、離型剤の結晶化度を80未満の場合には、定着時に低粘度の液体の離型剤が定着像表面に奔流する勢いが弱く、金属箔が定着像表面に展開されにくくなるため、これにより、定着トナー内において金属箔が配向せず、所望の金属光沢を呈しない。
【0038】
更に、金属箔表面に離型剤と相溶性のある樹脂でコーティングすることにより、離型剤の流れに付随して、トナー内部に金属箔は取り残されることを防ぐ。コーティングに用いる樹脂は、離型剤と同種が望ましく、さらに望ましくは同種でかつ結晶化度が20以上低い樹脂が望ましい。例えば、溶融時、樹脂と離型剤の粘度差がないと金属箔が一定方向に展開させるのが難しくなるため、樹脂は高粘度のものを用いるのがより望ましい。
【0039】
以下、本実施の形態のトナーを構成する成分について詳細に説明する。
【0040】
本実施の形態のトナーを構成する成分としては、既述したように、非晶性ポリエステル、着色剤、離型剤が挙げられるが、必要に応じて他の成分を含んでいてもよい。
【0041】
<結着樹脂>
本実施の形態の静電荷現像用トナーでは、低温定着性の観点から、結着樹脂として非晶性ポリエステルを用いてもよく、一方、後述する結晶性樹脂、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂との組み合わせを用いてもよい。
【0042】
[非晶性ポリエステル]
本実施の形態のトナーに用いる非晶性ポリエステルとしては、公知の非晶性ポリエステルが利用できる。
【0043】
非晶性ポリエステルのガラス転移温度(Tg)の範囲は、好ましくは50℃以上80℃以下であり、より好ましくは55℃以上65℃以下である。ガラス転移温度(Tg)が50℃よりも低いとトナーの保存が困難となる場合があり、80℃よりも高いと低温定着性の効果を享受することが出来ない場合がある。
【0044】
また、非晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は8000以上30000以下の範囲であることが好ましいが、低温定着性と機械強度の観点から、重量平均分子量(Mw)は8000以上16000以下の範囲であることがより好ましい。そして、低温定着性、混合性の観点から、第三成分を共重合してもよい。
【0045】
非晶性ポリエステルの製造方法は、酸(ジカルボン酸)成分と、アルコール(ジオール)成分とから合成され、後述する製造方法により、特に制限はなく、一般的なポリエステル重合方法で製造することが出来る。
【0046】
非晶性ポリエステルの合成に用いる酸(ジカルボン酸)成分としては、後述する種々のジカルボン酸を同様に用いることができる。
【0047】
上記酸(ジカルボン酸)成分としては、脂肪族ジカルボン酸が望ましく、特に直鎖型のジカルボン酸が望ましい。例えば、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼリン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、1,10−ウンデカンジカルボン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,13−トリデカンジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、1,16−ヘキサデカンジカルボン酸、1,18−オクタデカンジカルボン酸など、或いはその低級アルキルエステルや酸無水物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0048】
前記酸(ジカルボン酸)成分としては、前述の脂肪族ジカルボン酸成分のほか、二重結合を持つジカルボン酸成分、スルホン酸基を持つジカルボン酸成分等の構成成分が含まれていても良い。尚、前記二重結合を持つジカルボン酸成分には、二重結合を持つジカルボン酸に由来する構成成分のほか、二重結合を持つジカルボン酸の低級アルキルエステルまたは酸無水物等に由来する構成成分も含まれる。また、前記スルホン酸基を持つジカルボン酸成分には、スルホン酸基を持つジカルボン酸に由来する構成成分のほか、スルホン酸基を持つジカルボン酸の低級アルキルエステルまたは酸無水物等に由来する構成成分も含まれる。
【0049】
前記二重結合を持つジカルボン酸は、その二重結合を利用して樹脂全体を架橋させ得る点で、定着時のホットオフセットを防ぐために好適に用いることができる。このようなジカルボン酸としては、例えば、フマル酸、マレイン酸、3−ヘキセンジオイック酸、3−オクテンジオイック酸等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でも、コストの点で、フマル酸、マレイン酸等が好ましい。
【0050】
前記スルホン酸基を持つジカルボン酸は、顔料等の色材の分散を良好にできる点で有効である。また、樹脂全体を水に乳化或いは懸濁して、微粒子を作製する際にスルホン酸基があれば、後述するように、界面活性剤を使用しないで乳化或いは懸濁が可能である。このようなスルホン酸基を持つジカルボン酸としては、例えば、2−スルホテレフタル酸ナトリウム塩、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩、スルホコハク酸ナトリウム塩等が挙げられるがこれらに限定されない。また、これらの低級アルキルエステル、酸無水物等も挙げられる。これらの中でもコストの点で、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩等が好ましい。
【0051】
前記アルコール(ジオール)成分としても、非晶性ポリエステル樹脂の合成に用いる種々のジオールを用いることができる。
【0052】
前記アルコール(ジオール)成分としては脂肪族ジオールが望ましく、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール等が挙げられるが、この限りではない。
【0053】
一方、必要に応じて含まれるその他の成分としては、二重結合を持つジオール成分、スルホン酸基を持つジオール成分等の構成成分が挙げられる。
【0054】
前記二重結合を持つジオールとしては、2−ブテン−1,4−ジオール、3−ブテン−1,6−ジオール、4−ブテン−1,8−ジオール等が挙げられる。一方、前記スルホン酸基を持つジオールとしては、1,4−ジヒドロキシ−2−スルホン酸ベンゼンナトリウム塩、1,3−ジヒドロキシメチル−5−スルホン酸ベンゼンナトリウム塩、2−スルホ−1,4−ブタンジオールナトリウム塩等が挙げられる。
【0055】
これらの直鎖型脂肪族ジオール成分以外のアルコール(ジオール)成分を加える場合、(二重結合を持つジオール成分、および/または、スルホン酸基を持つジオール成分)の、アルコール(ジオール)成分における含有量としては、1〜20構成モル%が好ましく、2〜10構成モル%がより好ましい。前記含有量が、1構成モル%未満の場合には、顔料分散が不良となったり、乳化粒子径が大きくなり、凝集によるトナー径の調整が困難となる場合がある。一方、20構成モル%を超えると、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下して、トナーの保存性が悪くなったり、乳化粒子径が小さ過ぎて水に溶解し、ラテックスが生じない場合がある。
【0056】
さらに、上記脂肪族ジオールに加えて、ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物や水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールSエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールSプロピレンオキサイド付加物等を用いることができるが、トナー製造性・耐熱性・透明性の観点から、ビスフェノールS、ビスフェノールSエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールSプロピレンオキサイド付加物等のビスフェノールS誘導体を用いることが特に好ましい。また、酸(ジカルボン酸)成分、アルコール成分とも複数の成分を含んでもよく、特に、ビスフェノールSは耐熱性を高める効果をもつ。
【0057】
前記非晶性ポリエステル樹脂の製造方法としてはとくに制限はなくカルボン酸成分とアルコール成分を反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等が挙げられ、モノマーの種類によって使い分けて製造する。前記酸成分とアルコール成分とを反応させる際のモル比(酸成分/アルコール成分)としては、反応条件等によっても異なるため、一概には言えないが、通常1/1程度である。
【0058】
前記非晶性ポリエステルの製造は、重合温度180〜230℃の間で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。モノマーが、反応温度下で溶解または相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させてもよい。重縮合反応においては、溶解補助溶剤留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合はあらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合予定のカルボン酸成分またはアルコール成分とを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させるとよい。
【0059】
前記非晶性ポリエステルの製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物、リン酸化合物、およびアミン化合物等が挙げられ、具体的には、以下の化合物が挙げられる。
【0060】
例えば、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。
【0061】
また、非晶性ポリエステルの融点、分子量等の調整の目的で上記の重合性単量体以外に、より短鎖のアルキル基、アルケニル基、芳香環等を有する化合物を使用することもできる。
【0062】
具体例としては、ジカルボン酸の場合、コハク酸、マロン酸、シュウ酸等のアルキルジカルボン酸類、およびフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ホモフタル酸、4,4’−ジ安息香酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類、ジピコリン酸、ジニコチン酸、キノリン酸、2,3−ピラジンジカルボン酸等の含窒素芳香族ジカルボン酸類が挙げられ、ジオール類の場合、コハク酸、マロン酸、アセトンジカルボン酸、ジグリコール酸等の短鎖アルキルのジオール類が挙げられる。これらの重合性単量体は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0063】
また、非晶性ポリエステル末端の極性基を封鎖し、トナー帯電特性の環境安定性を改善する目的において単官能単量体が結晶性ポリエステルに導入される場合がある。
【0064】
単官能単量体としては、安息香酸、クロロ安息香酸、ブロモ安息香酸、スルホ安息香酸モノアンモニウム塩、スルホ安息香酸モノナトリウム塩、シクロヘキシルアミノカルボニル安息香酸、n−ドデシルアミノカルボニル安息香酸、ターシャリーブチル安息香酸、ナフトエ酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、サリチル酸、チオサリチル酸、フェニル酢酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、オクタンカルボン酸、ラウリル酸、ステアリル酸、及びこれらの低級アルキルエステル等のモノカルボン酸類;又は脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂環族アルコール等のモノアルコール;を用いることができる。
【0065】
<着色剤>
本実施の形態のトナーに用いる着色剤としては、公知のものが使用できる。例えば、黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、非磁性フェライト、マグネタイト等があげられる。
【0066】
黄色顔料としては、例えば、黄鉛、亜鉛黄、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、クロムイエロー、ハンザイエロー、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーメネントイエローNCG等があげられる。
【0067】
橙色顔料としては赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジRK、インダスレンブリリアントオレンジGK等があげられる。
【0068】
赤色顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ブリリアンカーミン3B、ブリリアンカーミン6B、デイポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、エオキシンレッド、アリザリンレーキ等があげられる。
【0069】
青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、ファストスカイブルー、インダスレンブルーBC、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレレートナーなどがあげられる。
紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ等があげられる。
【0070】
緑色顔料としては、酸化クロム、クロムグリーン、ピグメントグリーン、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンG等があげられる。
【0071】
白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛等があげられる。
体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト等があげられる。
【0072】
また、染料としては、塩基性、酸性、分散、直接染料等の各種染料、例えば、ニグロシンが挙げられる。更に、これらの単独、もしくは混合し、更には固溶体の状態で使用できる。
【0073】
また、金属光沢を有するトナーを得るためには、上述した金属箔が着色剤として用いられる。
【0074】
これらの着色剤は、公知の方法で分散されるが、例えば、回転せん断型ホモジナイザーやボールミル、サンドミル、アトライター等のメディア式分散機、高圧対向衝突式の分散機等が好ましく用いられる。
【0075】
更に、これらの着色剤は、極性を有する界面活性剤を用い、前記ホモジナイザーによって水系に分散される。
【0076】
本実施の形態の着色剤は、色相角、彩度、明度、耐候性、トナー中での分散性の観点から選択される。該着色剤の添加量は、樹脂100質量部に対して1〜20質量部添加される。
【0077】
黒色着色剤に磁性体を用いた場合は、他の着色剤とは異なり、30〜100質量部添加される。
【0078】
また、トナーを磁性として用いる場合は、磁性粉を含有せしめても良い。このような磁性粉としては、磁場中で磁化される物質が用いられ鉄、コバルト、ニッケルの如き強磁性の粉末、もしくはフェライト、マグネタイト等化合物である。
【0079】
特に、本実施の形態では、水層中でトナーを得るため磁性体の水層移行性や溶解性、酸化性に注意を払う必要があり、好ましくは表面改質、例えば疎水化処理等を施しておくのが好ましい。
【0080】
[離型剤]
トナー中に離型剤があると、定着時の離型性が上がり、定着時の圧力による離型性のばらつきを少なくすることができる。本発明の実施の形態に使用できる離型剤は、特に限定しないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量のポリオレフィン系ワックスやカルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等のような植物系ワックス、ミツロウのごとき動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等のような鉱物、石油系ワックス、及びそれらの変性物などを挙げることができる。好ましくは、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリオレフィンワックスであり、特に好ましくはパラフィンワックス、ポリエチレンワックスである。
【0081】
上記離型剤の結晶化度は、80以上である。離型剤の結晶化度は、例えば、微小高温X線回折装置「RINT−1500V」(理学電機株式会社製)により測定した。
【0082】
上記離型剤は、ASTM D938に準拠して測定された凝固点が50℃以上100℃で以下であることが好ましい。更に好ましくは60℃以上90℃以下である。
【0083】
本発明の実施の形態において使用する離型剤の溶融粘度は、120℃で、1mPa・s以上10mPa・s以下である。より好ましい離型剤の溶融粘度の範囲は、同条件で2mPa・s以上8mPa・s以下である。この範囲であると、繊維と組み合わせたときの離型性が良好であり好ましい。上記離型剤の120℃における粘度はE型粘度計によって測定される。測定に際しては、オイル循環型恒温槽、コーンプレートの備えられたE型粘度計(東京計器製)を用いる。コーンプレートは、コーン角1.34°を用いる。カップ内に試料を投入し、循環装置の温度を120℃にセットし、空の測定カップとコーンを測定装置にセットし、オイルを循環させながら恒温に保つ。温度が安定したところで測定カップ内に試料を1g入れ、コーンを静止状態で10分間静置させる。安定後、コーンを回転させ、測定を行う。コーンの回転速度は60rpmとする。測定は3回行い、その平均値を粘度とする。また、これらの離型剤は、1種単独で用いても良く2種以上併用しても良い。
【0084】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して、3質量部以上20質量部以下の範囲内であることが好ましく、5〜18質量部の範囲内であることがより好ましい。離型剤の含有量が3質量部未満であると離型剤添加の効果がなく、高温でのホットオフセットを引き起こす場合がある。一方、20質量部を超えると、帯電性に悪影響を及ぼす他、トナーの機械的強度が低下する為、現像機内でのストレスで破壊されやすくなり、キャリア汚染などを引き起こす場合がある。
【0085】
<その他の成分―各種添加剤>
本実施の形態におけるトナーに用いられるその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、帯電制御剤等の公知の各種添加剤等を挙げることができる。本実施の形態におけるトナーには、必要に応じて無機微粒子や有機微粒子等、既知の外添剤を添加することが出来る。
【0086】
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、塩化セリウム、ベンガラ、酸化クロム、酸化セリウム、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素等が挙げられる。中でも、シリカ微粒子や酸化チタン微粒子が好ましく、疎水化処理された微粒子が特に好ましい。
【0087】
無機微粒子は、一般に流動性を向上させる目的で使用される。無機微粒子の1次粒子径としては、1nm以上200nm以下の範囲にあることが好ましく、その添加量としては、トナー100質量部に対して、0.01質量部以上20質量部以下の範囲にあることが好ましい。
【0088】
有機微粒子は、一般にクリーニング性や転写性を向上させる目的で使用され、具体的には例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0089】
<トナーの製造方法>
本実施の形態のトナーは、凝集・合一法で製造することができる。
【0090】
本実施におけるトナーの製造方法の一例は、例えば非晶性ポリエステル樹脂微粒子、結晶性ポリエステル樹脂微粒子を分散・混合した樹脂微粒子分散液と、着色剤微粒子を分散した着色剤微粒子分散液と、離型剤微粒子を分散した離型剤微粒子分散液とを混合し、樹脂微粒子、着色剤微粒子及び離型剤微粒子の凝集粒子を形成する凝集工程を有し、さらに凝集系内のpHを調整して凝集成長を停止せしめる停止工程と、凝集粒子を樹脂微粒子のガラス転移温度以上の温度に加熱せしめ融合・合一させる工程とを有する製造方法であり、更に、得られたベーストナーを少なくとも水を用いて洗浄する工程と、洗浄したベーストナーを乾燥する工程とを有してもよい。また、凝集・合一法は、必要に応じて凝集工程の後に、他の樹脂微粒子を添加し凝集粒子の表面に付着せしめるシェル形成工程を有してもよい。
【0091】
以下、上述した凝集・合一法の一例における各工程について詳細に説明する。尚、本実施の形態におけるトナーの製造方法はこれに限定されるものではない。
【0092】
[凝集工程]
凝集工程においては、まず、樹脂微粒子分散液、着色剤微粒子分散液と、離型剤微粒子分散液とを準備する。
【0093】
樹脂微粒子分散液は、公知の転相乳化方法を用いるか、或いは樹脂のガラス転移温度以上に加熱して機械的せん断力によって乳化させる方法を用いる。この際、イオン性界面活性剤が添加されてもよい。
【0094】
また、前記樹脂粒子分散液は、非晶性ポリエステル樹脂を良溶媒と水溶性の貧溶媒の混合液に溶解し、これをアンモニアで中和した後、水を滴下し転相乳化した非晶性ポリエステル樹脂乳化分散液を用いることが好ましい。
【0095】
<転送乳化法>
上述した転送乳化法について以下に説明する。転相乳化法は、少なくとも上述した非晶性ポリエステル樹脂を有機溶媒(良溶媒)と水溶性溶媒(水溶性の貧溶媒)の混合液に溶解させ、必要に応じて中和剤(本実施の形態ではアンモニア)や分散安定剤を添加して、攪拌下にて、水溶性溶媒(例えば水)を滴下して、乳化粒子を得た後、樹脂分散液中の溶媒を除去して、乳化液を得る方法である。このとき、中和剤や分散安定剤の投入順は変更してもよい。
【0096】
非晶性ポリエステル樹脂を溶解させる有機溶媒(樹脂溶解溶媒)としては、例えば、蟻酸エステル類、酢酸エステル類、酪酸エステル類、ケトン類、エーテル類、ベンゼン類、ハロゲン化炭素類が挙げられる。具体的には、蟻酸、酢酸、酪酸等のメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル等エステル類、アセトン、MEK、MPK、MIPK、MBK、MIBK等のメチルケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル類、トルエン、キシレン、ベンゼン等の複素環置換体類、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン等のハロゲン化炭素類などを単独であるいは2種以上組合せて用いることが可能であるが、入手し易さや脱溶剤時の回収容易性、環境への配慮の点から、低沸点溶媒の酢酸エステル類やメチルケトン類、エーテル類が通常好ましく用いられ、特に、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸、酢酸エチル、酢酸ブチルが好ましい。前記有機溶媒は、樹脂微粒子中に残存すると、微量でもVOC原因物質となるため揮発性の比較的高いものを用いることが好ましい。
【0097】
前記水溶性溶媒としては、基本的にはイオン交換水が用いられるが、油滴を破壊しない程度に水溶性有機溶媒を含んでも構わない。水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール等の短炭素鎖アルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル類;エーテル類、ジオール類、THF、アセトン等が挙げられる。これらの水溶性有機溶媒のイオン交換水との混合比は、質量比で1%以上50%以下、好ましくは1%以上30%以下が好ましく選択され水性成分として用いられる。また、水溶性有機溶媒は添加されるイオン交換水に混合するだけでなく、樹脂溶解液中に添加して使用しても構わない。水溶性有機溶媒を添加する場合には、樹脂と樹脂溶解溶媒との濡れ性を調整することができ、また、樹脂溶解後の液粘度を低下させる機能が期待できる。
【0098】
前記乳化液が安定的に分散状態を保つよう、必要に応じて樹脂溶液及び水性成分に分散剤を添加してもよい。前記分散剤としては、水性成分中で親水性コロイドを形成するもので、特にヒドロキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズ、ヒドロキシプロピルセルローズ等のセルローズ誘導体;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩等の合成高分子類、ゼラチン、アラビアゴム、寒天等の分散安定化剤が挙げられる。また、シリカ、酸化チタン、アルミナ、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム等の固体微粉末も用いることができる。これらの分散安定化剤は通常、水性成分中の濃度が0質量%以上20質量%以下、好ましくは0質量%以上10質量%以下となるよう添加される。
【0099】
前記分散剤としては、界面活性剤も用いられる。前記界面活性剤の例としては、後述する着色剤分散液に用いられるものと同様のものを使用することができる。例えば、サポニンなどの天然界面活性成分の他に、アルキルアミン塩酸・酢酸塩類、4級アンモニウム塩類、グリセリン類等のカチオン系界面活性剤、脂肪酸石けん類、硫酸エステル類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、スルホン酸塩類、リン酸、リン酸エステル、スルホコハク酸塩類等のアニオン系界面活性剤などが挙げられ、アニオン界面活性剤、非イオン性界面活性剤が好ましく用いられる。前記乳化液のpHを調整するために、中和剤を添加してもよい。前記中和剤としては、硝酸、塩酸、水酸化ナトリウム、アンモニアなど一般の酸、アルカリを用いることができる。
【0100】
前記乳化液から有機溶媒を除去する方法としては、乳化液を常温もしくは加熱下で有機溶剤を揮発させる方法、これに減圧を組み合わせる方法が好ましく用いられる。
【0101】
着色剤微粒子分散液は、イオン性界面活性剤を用いて、青色、赤色、黄色等の所望の色の着色剤微粒子を溶媒中に分散させることにより調整する。
【0102】
また、離型剤微粒子分散液は、離型剤を、水中に高分子電解質(例えば、イオン性界面活性剤や高分子酸や高分子塩基など)とともに分散し、離型剤の融点以上に加熱するとともに、強い剪断をかけられるホモジナイザーや圧力吐出型分散機により微粒子化することにより調整する。
【0103】
次に、樹脂微粒子分散液と着色剤微粒子分散液と離型剤微粒子分散液とを混合し、樹脂微粒子と着色微剤粒子と離型剤微粒子とをヘテロ凝集させ所望のトナー径にほぼ近い径を持つ凝集粒子(コア凝集粒子)を形成する。ここで、樹脂微粒子の凝析値の差が顕著になるように、pH4.5以上6.0以下が好ましい。pHが4.5未満の場合には、樹脂微粒子の凝集性が均一化し偏在しないため、上述した式(1)の条件を満たすトナーが得られない。一方、pHが6.0を超えると、樹脂微粒子の凝集性が悪くなり、トナーのGSDp−underが大きくなり、トナー微粉が多く存在し、その結果、転写画像のカブリが発生し、クリーニング性も悪くなる。
【0104】
ここで、凝集工程において用いられる、樹脂微粒子、着色剤微粒子、離型剤微粒子の体積平均粒径は、トナー径及び粒度分布を所望の値に調整するのを容易とするために、1μm以下であることが好ましく、100〜300nmの範囲内であることがより好ましい。
【0105】
体積平均粒径は、レーザー回折式レーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700:堀場製作所製)を用いて測定する。測定法としては分散液となっている状態の試料を固形分で約2gになるように調整し、これにイオン交換水を添加して、約40mlにする。これをセルに適当な濃度になるまで投入し、約2分待って、セル内の濃度がほぼ安定になったところで測定する。得られたチャンネルごとの体積平均粒径を、体積平均粒径の小さい方から累積し、累積50%になったところを体積平均粒径とする。
【0106】
[停止工程]
停止工程においては、凝集系内のpHを調整することにより、粒子の凝集成長を停止させる。具体的には凝集系内のpHを6〜9に調整することにより、粒子の成長を停止させる。
【0107】
[融合・合一工程]
融合・合一工程においては、まず、凝集工程および必要に応じて行われたシェル形成工程を経て得られた凝集粒子を含有する溶液中にて、凝集粒子中に含まれる樹脂微粒子のガラス転移温度以上の温度に加熱し、融合・合一することによりベーストナーを得る。
【0108】
[洗浄工程]
洗浄工程においては、融合・合一工程にて得られたベーストナー粒子分散液にイオン交換水による置換洗浄を少なくとも施し、固液分離を行う。固液分離方法に特に制限はないが、生産性の点から、吸引濾過、加圧濾過等が好ましく用いられる。
【0109】
[乾燥工程]
乾燥工程においては、固液分離されたウェットケーキを乾燥しベーストナー粒子を得る。乾燥方法に特に制限はないが、生産性の点から、凍結乾燥、フラッシュジェット乾燥、流動乾燥、振動型流動乾燥等が好ましく用いられる。
【0110】
また、静電荷現像用金属光沢トナーを製造する場合には、着色剤としての金属箔が分散した着色剤微粒子分散液と離型剤微粒子分散液とを用い、予めこれらの凝集粒子である着色離型剤粒子を製造し、後に着色離型剤粒子分散液と樹脂微粒子分散液とを上述した凝集工程に従い凝集させてトナー粒子を製造する。
【0111】
<静電荷現像用現像剤>
本実施の形態の静電荷現像用現像剤は、上述した本実施の形態の静電荷現像用トナーを含有する以外は特に制限はなく、目的に応じて適宜の成分組成をとることができる。本発明の静電荷現像用現像剤は、静電荷現像用トナーを、単独で用いると一成分系の静電荷現像用現像剤となり、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の静電荷現像用現像剤となる。
以下、本実施の形態の静電荷現像用現像剤(以下「現像剤」と略す場合がある)について説明する。
【0112】
キャリアとしては、特に制限はなく、公知のキャリアを用いることができる。キャリアとしては例えば、芯材表面に被覆樹脂を被覆した樹脂被覆層を有する樹脂コートキャリアを挙げることができる。またキャリアは、マトリックス樹脂に導電材料などが分散された樹脂分散型キャリアであってもよい。
【0113】
キャリアに使用される被覆樹脂・マトリックス樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコーン樹脂またはその変性品、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0114】
導電材料としては、金属(例えば、金、銀、銅等)やカーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、酸化スズ、カーボンブラック等を例示することができるが、これらに限定されるのもではない。
【0115】
また、キャリアの芯材としては、磁性金属(例えば、鉄、ニッケル、コバルト等)、磁性酸化物(例えば、フェライト、マグネタイト等)、ガラスビーズ等が挙げられるが、キャリアを磁気ブラシ法に用いるためには、キャリアの芯材は磁性材料であることが好ましい。キャリアの芯材の体積平均粒径としては、10μm以上500μm以下の範囲が好ましく、30μm以上100μm以下の範囲がより好ましい。
【0116】
またキャリアの芯材の表面に樹脂被覆するには、被覆樹脂、及び必要に応じて各種添加剤を適当な溶媒に溶解した被覆層形成用溶液により被覆する方法が挙げられる。溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用する被覆樹脂、塗布適正等を勘案して適宜選択すればよい。
【0117】
具体的な樹脂被覆方法としては、(1)キャリアの芯材を被覆層形成用溶液中に浸漬する浸漬法、(2)被覆層形成用溶液をキャリアの芯材表面に噴霧するスプレー法、(3)キャリアの芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、(4)ニーダーコーター中でキャリアの芯材と被覆層形成溶液とを混合し、溶剤を除去するニーダーコーター法が挙げられる。
【0118】
キャリアの体積平均粒度分布指標GSDvは、1.15〜1.35の範囲である。上記GSDvは、後述するトナーの粒度分布測定方法と同様の測定方法により測定される。
【0119】
キャリアを含んだ現像剤における、トナーとキャリアの混合比(重量比)としては、トナー:キャリア=1:100〜30:100程度の範囲が好ましく、3:100〜20:100程度の範囲がより好ましい。
【0120】
<画像形成装置>
次に、本実施の形態の画像形成装置の一例について説明する。
【0121】
図1は、本実施の形態の画像形成方法により画像を形成するための、画像形成装置の構成例を示す概略図である。図示した画像形成装置200は、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401dが中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。電子写真感光体401a〜401dは、例えば、電子写真感光体401aがイエロー、電子写真感光体401bがマゼンタ、電子写真感光体401cがシアン、電子写真感光体401dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成することが可能である。
【0122】
電子写真感光体401a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール402a〜402d、現像装置404a〜404d、1次転写ロール410a〜410d、クリーニングブレード415a〜415dが配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれにはトナーカートリッジ405a〜405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール410a〜410dはそれぞれ中間転写ベルト409を介して電子写真感光体401a〜401dに当接している。
【0123】
さらに、ハウジング400内の所定の位置には露光装置403が配置されており、露光装置403から出射された光ビームを帯電後の電子写真感光体401a〜401dの表面に照射することが可能となっている。これにより、電子写真感光体401a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
【0124】
ここで、帯電ロール402a〜402dは、電子写真感光体401a〜401dの表面に導電性部材(帯電ロール)を接触させて感光体に電圧を均一に印加し、感光体表面を所定の電位に帯電させるものである(帯電工程)。なお本実施形態において示した帯電ロールの他、帯電ブラシ、帯電フィルム若しくは帯電チューブなどを用いて接触帯電方式による帯電を行ってもよい。また、コロトロン若しくはスコロトロンを用いた非接触方式による帯電を行ってもよい。
【0125】
露光装置403としては、電子写真感光体401a〜401dの表面に、半導体レーザー、LED(light emitting diode)、液晶シャッター等の光源を所望の像様に露光できる光学系装置等を用いることができる。これらの中でも、非干渉光を露光可能な露光装置を用いると、電子写真感光体401a〜401dの導電性基体と感光層との間での干渉縞を防止することができる。
【0126】
現像装置404a〜404dには、上述の二成分静電荷現像用現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行うことができる(現像工程)。そのような現像装置としては、二成分静電荷現像用現像剤を用いる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜公知のものを選択することができる。一次転写工程では、1次転写ロール410a〜410dに、像担持体に担持されたトナーと逆極性の1次転写バイアスが印加されることで、像担持体から中間転写ベルト409へ各色のトナーが順次1次転写される。
【0127】
クリーニングブレード415a〜415dは、転写工程後の電子写真感光体の表面に付着した残存トナーを除去するためのもので、これにより清浄面化された電子写真感光体は上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0128】
中間転写ベルト409は駆動ロール406、バックアップロール408及びテンションロール407により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介してバックアップロール408と当接するように配置されている。
【0129】
2次転写ロール413に、中間転写体上のトナーと逆極性の2次転写バイアスが印加されることで、中間転写ベルトから記録媒体へトナーが2次転写される。バックアップロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409は、例えば駆動ロール406の近傍に配置されたクリーニングブレード416或いは、除電器(不図示)により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。また、ハウジング400内の所定の位置にはトレイ(被転写媒体トレイ)411が設けられており、トレイ411内の紙などの被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。
【0130】
本実施の形態の画像形成方法は、潜像保持体表面に静電荷を形成する潜像形成工程と、現像剤担持体に担持された現像剤を用い、前記潜像保持体表面に形成された静電荷を現像してトナー画像を形成する現像工程と、前記潜像保持体表面に形成されたトナー画像を被転写体表面に転写する転写工程と、前記被転写体表面に転写されたトナー画像を熱定着する定着工程と、を有する画像形成方法であって、前記現像剤は、少なくとも、本発明の静電荷現像用トナーを含有する現像剤である。前記現像剤は、一成分系、二成分系のいずれの態様であってもよい。
【0131】
上記の各工程は、いずれも画像形成方法において公知の工程が利用できる。
【0132】
潜像保持体としては、例えば、電子写真感光体及び誘電記録体等が使用できる。電子写真感光体の場合、該電子写真感光体の表面を、コロトロン帯電器、接触帯電器等により一様に帯電した後、露光し、静電荷を形成する(潜像形成工程)。次いで、表面に現像剤層を形成させた現像ロールと接触若しくは近接させて、静電荷にトナーの粒子を付着させ、電子写真感光体上にトナー画像を形成する(現像工程)。形成されたトナー画像は、コロトロン帯電器等を利用して紙等の被転写体表面に転写される(転写工程)。さらに、被転写体表面に転写されたトナー画像は、定着機により熱定着され、最終的なトナー画像が形成される。
【0133】
尚、前記定着機による熱定着の際には、オフセット等を防止するため、通常、前記定着機における定着部材に離型剤が供給される。
【0134】
熱定着に用いる定着部材であるローラあるいはベルトの表面に、離型剤を供給する方法としては、特に制限はなく、例えば、液体離型剤を含浸したパッドを用いるパッド方式、ウエブ方式、ローラ方式、非接触型のシャワー方式(スプレー方式)等が挙げられ、なかでも、ウエブ方式、ローラ方式が好ましい。これらの方式の場合、前記離型剤を均一に供給でき、しかも供給量をコントロールすることが容易な点で有利である。尚、シャワー方式により前記定着部材の全体に均一に前記離型剤を供給するには、別途ブレード等を用いる必要がある。
【0135】
トナー画像を転写する被転写体(記録材)としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。
【実施例】
【0136】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明を限定するものではない。なお、実施例中において特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を表す。
【0137】
<各種特性の測定方法>
まず、実施例、比較例で用いたトナー等の物性測定方法について説明する。
【0138】
(トナー粒度及び粒度分布測定方法)
本発明におけるトナー粒度及び粒度分布測定は、測定装置としてはマルチサイザーII型(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン−コールター社製)を使用した。
【0139】
測定法としては、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液2ml中に測定試料を0.5〜50mg加える。これを前記電解液100〜150ml中に添加した。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1分間分散処理を行い、前記マルチサイザーII型により、アパーチャー径として100μmアパーチャーを用いて2〜60μmの粒子の粒度分布を測定して、前述のようにして体積平均粒径、GSDv、GSDpを求めた。測定する粒子数は50000であった。
【0140】
(樹脂微粒子、着色剤粒子等の体積平均粒径)
樹脂微粒子、着色剤粒子等の体積平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)で測定した。
【0141】
(樹脂の重量平均分子量、分子量分布測定方法)
本発明において、結着樹脂等の分子量、分子量分布は以下の条件で行ったものである。GPCは「HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)社製)装置」を用い、カラムは「TSKgel、SuperHM−H(東ソー(株)社製6.0mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、IR検出器を用いて実験を行った。また、検量線は東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作製した。
【0142】
(樹脂のガラス転移温度の測定方法)
結晶性ポリエステル樹脂の融点および非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、ASTMD3418−8に準拠して、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製:DSC−7)を用い、測定された主体極大ピークより求めた。この装置(DSC−7)の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/minで昇温し、150℃で5分間ホールドし、150℃から0℃まで液体窒素を用いて−10℃/分で降温し、0℃で5分間ホールドし、再度0℃から150まで10℃/分で昇温して得られた、2度目の昇温時の吸熱曲線から解析したオンセット温度をTgとした。
【0143】
[高分子ポリエステル樹脂分散液(1)の調製]
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物: 38質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物: 27.5質量部
テレフタル酸ジメチルエステル: 25質量部
ドデセニルコハク酸 : 7質量部
トリメリット酸 : 2.5質量部
攪拌装置、窒素導入管、温度センサー、精留塔を備えた内容量5リットルのフラスコに上記のモノマーを仕込み、1時間を要して温度を190℃まで上げ、反応系内が均一に攪拌されていることを確認した後、ジブチル錫オキサイドの1.0質量%を投入した。さらに生成する水を留去しながら同温度から6時間を要して240℃まで温度を上げ、240℃でさらに2時間脱水縮合反応を継続し、ガラス転移点が58℃、酸価が15.0mgKOH/g、重量平均分子量60,000、数平均分子量5,800である非晶質ポリエステル樹脂(1)を得た。
【0144】
次いで非晶質ポリエステル樹脂(1)(Mw:60,000)を用い、高分子ポリエステル樹脂分散液(1)を調整した。非晶質ポリエステル樹脂(1)を160質量部と、酢酸エチルを233部と、水酸化ナトリウム水溶液(0.3N)を0.1部とを用意し、これらを500mlのセパラブルフラスコに入れ、70℃で加熱し、スリーワンモーター(新東科学(株)製)により撹拌して樹脂混合液を調製した。この樹脂混合液をさらに撹拌しながら、徐々にイオン交換水373部を加え、転相乳化させ、脱溶剤することにより高分子ポリエステル樹脂分散液(1)(固形分濃度:30%)を得た。凝析値は2.3×10−2であった。また高分子ポリエステル樹脂分散液(1)中の樹脂粒子の体積平均粒子径は160nmであった。
【0145】
[低分子ポリエステル樹脂分散液(1)の調製]
加熱乾燥した二口フラスコに、アジピン酸ジメチル71部、テレフタル酸ジメチル184部、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物206部、ビフェノール42部、エチレングリコール27部と、触媒としてテトラブトキシチタネート0.036部とを入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち昇温した後、160℃で約10時間共縮重合反応させ、その後、10Torrまで徐々に減圧しながら220℃まで昇温し8時間保持することにより非晶性ポリエステル樹脂(2)を合成した。
【0146】
得られた非晶性ポリエステル(2)のガラス転移温度を、前述の測定方法により示差走査熱量系(DSC)を用いて測定したところ、64℃であった。得られた非晶性ポリエステル2の分子量を前述の測定方法によりGPCを用いて測定したところ、重量平均分子量(Mw)は15000であり、数平均分子量4,400であった。
【0147】
非晶質ポリエステル樹脂(2)(MW:15,000)を160部と、酢酸エチルを233部と、水酸化ナトリウム水溶液(0.3N)0.1部とを用意し、これらを500mlのセパラブルフラスコに入れ、70℃で加熱し、スリーワンモーター(新東科学(株)製)により撹拌して樹脂混合液を調製した。この樹脂混合液をさらに撹拌しながら、徐々にイオン交換水373部を加え、転相乳化させ、脱溶剤することにより低分子ポリエステル樹脂分散液(1)(固形分濃度:30%)を得た。凝析値は3.7×10−4であった。また低分子ポリエステル樹脂分散液(1)中の樹脂粒子の体積平均粒子径は160nmであった。
【0148】
[低分子ポリエステル樹脂分散液(2)の調製]
加熱乾燥した二口フラスコに、アジピン酸ジメチル74部、テレフタル酸ジメチル192部、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物216部、エチレングリコール38部と、触媒としてテトラブトキシチタネート0.037部とを入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち攪拌しながら昇温した後、160℃で約7時間共縮重合反応させ、その後、10Torrまで徐々に減圧しながら220℃まで昇温し4時間保持した。一旦常圧に戻し、無水トリメリット酸9部を加え、再度10Torrまで徐々に減圧し1時間保持することにより非晶性ポリエステル樹脂(3)を合成した。
【0149】
得られた非晶性ポリエステル(3)のガラス転移温度を、前述の測定方法により示差走査熱量系(DSC)を用いて測定したところ、60℃であった。得られた非晶性ポリエステル(3)の分子量を前述の測定方法によりGPCを用いて測定したところ、重量平均分子量(Mw)は12,000であり、数平均分子量3,700であった。
【0150】
非晶質ポリエステル樹脂(3)(MW:12,000)を160部と、酢酸エチルを233部と、水酸化ナトリウム水溶液(0.3N)0.05部とを用意し、これらを500mlのセパラブルフラスコに入れ、70℃で加熱し、スリーワンモーター(新東科学(株)製)により撹拌して樹脂混合液を調製した。この樹脂混合液をさらに撹拌しながら、徐々にイオン交換水373部を加え、転相乳化させ、脱溶剤することにより低分子ポリエステル樹脂分散液(2)(固形分濃度:30%)を得た。凝析値は4.4×10−3であった。また低分子ポリエステル樹脂分散液(2)中の樹脂粒子の体積平均粒子径は160nmであった。
【0151】
[低分子ポリエステル樹脂分散液(3)の調製]
加熱乾燥した二口フラスコに、アジピン酸ジメチル72部、テレフタル酸ジメチル188部、ビスフェノールAエチレンオキシド付加物211部、エチレングリコール37部と、触媒としてテトラブトキシチタネート0.036部とを入れ、容器内に窒素ガスを導入して不活性雰囲気に保ち攪拌しながら昇温した後、160℃で約5時間共縮重合反応させ、その後、10Torrまで徐々に減圧しながら220℃まで昇温し3時間保持した。一旦常圧に戻し、無水トリメリット酸18部を加え、再度10Torrまで徐々に減圧し1時間保持することにより非晶性ポリエステル樹脂(4)を合成した。
【0152】
得られた非晶性ポリエステル(4)のガラス転移温度を、前述の測定方法により示差走査熱量系(DSC)を用いて測定したところ、56℃であった。得られた非晶性ポリエステル(4)の分子量を前述の測定方法によりGPCを用いて測定したところ、重量平均分子量(Mw)は8000であり、数平均分子量2,300であった。
【0153】
非晶質ポリエステル樹脂(4)(MW:8,000)を160部と、酢酸エチルを233部と、水酸化ナトリウム水溶液(0.3N)0.4部とを用意し、これらを500mlのセパラブルフラスコに入れ、70℃で加熱し、スリーワンモーター(新東科学(株)製)により撹拌して樹脂混合液を調製した。この樹脂混合液をさらに撹拌しながら、徐々にイオン交換水373部を加え、転相乳化させ、脱溶剤することにより低分子ポリエステル樹脂分散液(3)(固形分濃度:30%)を得た。凝析値は2.4×10−5であった。また低分子ポリエステル樹脂分散液(3)中の樹脂粒子の体積平均粒子径は155nmであった。
【0154】
[着色剤分散液の調製]
−シアン着色剤分散液の調製−
シアン顔料(大日精化(株)製、Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン))100質量部と、アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンR)5質量部と、イオン交換水300質量部とを混合し、高圧衝撃式分散機アルチマイザー(HJP30006:スギノマシン社製)を用いて、1時間分散させて、シアン着色剤分散液を得た。
【0155】
得られた、シアン着色剤分散液内における着色剤(シアン顔料)の体積平均粒径を、前述の測定方法によりレーザー回折粒度測定器を用いて測定したところ、体積平均粒径は171nmであった。また、シアン着色剤分散液の固形分比率は24.2重量%であった。
【0156】
−イエロー着色剤分散液の調製−
イエロー顔料(C.I.Pigment Yellow 74:大日精化製)100質量部と、アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンR)10質量部と、イオン交換水300質量部とを混合し、高圧衝撃式分散機アルチマイザー(HJP30006:スギノマシン社製)を用いて、1時間分散させて、イエロー着色剤分散液を得た。
【0157】
得られた、イエロー着色剤分散液内における着色剤(イエロー顔料)の体積平均粒径を、前述の測定方法によりレーザー回折粒度測定器を用いて測定したところ、体積平均粒径は189nmであった。また、イエロー着色剤分散液の固形分比率は24.3重量%であった。
【0158】
−マゼンタ着色剤分散液の調製−
マゼンタ顔料(C.I.Pigment Red 122:クラリアント製)100質量部と、アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンR)10質量部と、イオン交換水300質量部とを混合し、高圧衝撃式分散機アルチマイザー(HJP30006:スギノマシン社製)を用いて、1時間分散させて、マゼンタ着色剤分散液を得た。
【0159】
得られた、マゼンタ着色剤分散液内における着色剤(マゼンタ顔料)の体積平均粒径を、前述の測定方法によりレーザー回折粒度測定器を用いて測定したところ、体積平均粒径は168nmであった。また、マゼンタ着色剤分散液の固形分比率は23.8重量%であった。
【0160】
−黒着色剤分散液の調製−
カーボンブラック リーガル330:(キャボット社製)100質量部と、アニオン界面活性剤(第一工業製薬社製:ネオゲンR)10質量部と、イオン交換水300質量部とを混合し、高圧衝撃式分散機アルチマイザー(HJP30006:スギノマシン社製)を用いて、1時間分散させて、黒着色剤分散液を得た。
【0161】
得られた、黒着色剤分散液内における着色剤(カーボンブラック)の体積平均粒径を、前述の測定方法によりレーザー回折粒度測定器を用いて測定したところ、体積平均粒径は228nmであった。また、黒着色剤分散液の固形分比率は23.2重量%であった。
【0162】
[離型剤分散液(1)の調製]
FT100(日本精鑞): 400質量部
上記成分を120℃に加熱し、混合させた後、
ネオゲンSC(第一工業製薬): 20質量部を添加した。
イオン交換水: 1600質量部に入れ、圧力吐出型ホモジナイザーにて、120℃、50MPaの圧力のものと分散を行い、離型剤分散液(1)(固形分濃度:20%)を作成した。
【0163】
<トナーの作製>
[実施例1]
イオン交換水: 450質量部
高分子ポリエステル樹脂分散液(1): 220質量部
低分子ポリエステル樹脂分散液(1): 147質量部
アニオン性界面活性剤: 2.8質量部
(第一工業製薬(株):ネオゲンRK、20質量%)
を、温度計、pH計、攪拌機、を具備した3リットルの反応容器に入れ、外部からマントルヒーターで温度制御しながら、温度30℃、攪拌回転数150rpmにて、30分間保持した。
シアン着色剤分散液: 60質量部
離型剤分散液(1): 100質量部
を投入し、5分間保持した。そのまま、1.0重量%硝酸水溶液を添加し、凝集工程でのpHを5.5に調整した。
【0164】
ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)で分散しながら、ポリ塩化アルミニウム 0.4質量部を添加後、攪拌機しながら、50℃まで昇温し、粒径を測定し、体積平均粒径が5.5μmとした。その後高分子ポリエステル樹脂分散液(1)110質量部、低分子ポリエステル樹脂分散液(1)73質量部を追添加し、前記凝集粒子の表面に樹脂粒子を付着させた。
【0165】
その後、5質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、昇温速度を0.05℃/分にして90℃まで昇温し、90℃で3時間保持した後、冷却、ろ過、これを更にイオン交換水にて再分散し、濾過、ろ液の電気伝導度が20μS/cm以下となるまで繰り返し洗浄を行った後、40℃のオーブン中で5時間真空乾燥して、トナーを得た。
【0166】
得られたトナー100質量部に対して疎水性シリカ(日本アエロジル社製、RY50)を1.5質量部と疎水性酸化チタン(日本アエロジル社製、T805)を1.0質量部とを、サンプルミルを用いて10000rpmで30秒間混合ブレンドした。その後、目開き45μmの振動篩いで篩分してトナー(1)を調製した。得られたトナー(1)の体積平均粒子径は6.1μmであった。さらにエルボージェットにてカットポイント4μmで分級を行ったところ、微粉側の体積平均粒子径は2.8μmであり、微粉側の分子量とトナー全体の分子量については、(MwS/MwT)×100=170であった。
【0167】
[実施例2]
低分子ポリエステル樹脂分散液(1)分散液の代わりに低分子ポリエステル樹脂分散液(2)分散液に替えた以外は、実施例1に準じて、トナー(2)を調製した。得られたトナー(2)は、(MwS/MwT)×100=150であった。
【0168】
[実施例3]
低分子ポリエステル樹脂分散液(1)分散液の代わりに低分子ポリエステル樹脂分散液(3)分散液に替えた以外は、実施例1に準じて、トナー(3)を調製した。得られたトナー(3)は、(MwS/MwT)×100=200であった。
【0169】
[実施例4]
シアン着色剤分散液の代わりに黒着色剤分散液を用いた以外は、実施例1に準じて、トナー(4)を調製した。得られたトナー(4)は、(MwS/MwT)×100=165であった。
【0170】
[実施例5]
シアン着色剤分散液の代わりイエロー着色剤分散液を用いた以外は、実施例1に準じて、トナー(5)を調製した。得られたトナー(5)は、(MwS/MwT)×100=170であった。
【0171】
[実施例6]
シアン着色剤分散液の代わりにマゼンタ着色剤分散液を用いた以外は、実施例1に準じて、トナー(6)を調製した。得られたトナー(6)は、(MwS/MwT)×100=180であった。
【0172】
[比較例1]
上述した非晶質ポリエステル樹脂(1)の乳化条件を推算酸化ナトリウム0.5部として高分子ポリエステル樹脂分散液(2)を得た。高分子ポリエステル樹脂分散液(2)の凝析値は5.3×10−6であった。そして、高分子ポリエステル樹脂分散液(1)分散液の代わりに高分子ポリエステル樹脂分散液(2)分散液を用いた以外は、実施例1に準じて、トナー(7)を調製した。得られたトナー(7)は、(MwS/MwT)×100=90であった。
【0173】
[比較例2]
凝集工程で、pHを6.2で行った以外は、実施例3に準じて、トナー(8)を調製した。得られたトナー(8)は、(MwS/MwT)×100=230であった。
【0174】
[比較例3]
凝集工程で、pHを4.2で行った以外は、実施例1に準じて、トナー(7)を調製した。得られたトナー(9)は、(MwS/MwT)×100=105であり、分子量偏在はなかった。
【0175】
−金属光沢トナーの調製−
[実施例7]
膜厚4nmの金箔をポリプロピレンワックス(結晶化度60、融点68℃)をスプレー塗布した後、アセトンとイオン交換水とからなる水系溶媒中に分散させ、ビーズミルにて粉砕して長手方向650nmの金箔顔料(1)を作製した。
【0176】
金箔顔料分散液(1)(固形分24%): 200質量部
離型剤分散液(1)(固形分45%、離型剤の結晶化度80): 100質量部
カチオン性界面活性剤(花王(株)製、サニゾールB50): 3質量部
イオン交換水: 500質量部
上記各成分を3Lの凝集用攪拌槽にてジャケットより42℃まで攪拌しながら加熱し、42℃で1時間保持して凝集粒子を形成した。得られた凝集粒子の一部を光学顕微鏡で観察したところ、凝集粒子の平均粒径は約2.3μmであった。
【0177】
次いで、この分散液にアニオン性界面活性剤ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(第一工業社製:ネオゲンSC)6質量部を追加して、加熱し63℃で3時間保持し粒子を融合したのち10℃のイオン交換水700質量部部を添加し、50℃まで1.5分で冷却し、濾過、イオン交換水で充分洗浄した後、400メッシュの篩で濾過を行い着色離型剤粒子(1)を得た。得られた粒子の平均粒径は2.4μmであった。
【0178】
着色離型剤粒子分散液(1)(固形分:36%): 100質量部
高分子ポリエステル樹脂分散液(1): 220質量部
低分子ポリエステル樹脂分散液(1): 167質量部
カチオン性界面活性剤(花王社製:サニゾールB50): 3質量部
イオン交換水: 450質量部
上記各成分を温度計、pH計、攪拌機、を具備した3Lの反応容器に入れ、外部からマントルヒーターで温度制御しながら、温度30℃、攪拌回転数150rpmにて、30分間保持した。その後、1.0重量%硝酸水溶液を添加し、凝集工程でのpHを5.5に調整した。
【0179】
ホモジナイザー(IKAジャパン社製:ウルトラタラクスT50)で分散しながら、ポリ塩化アルミニウム0.4質量部を添加後、ジャケットより55℃まで攪拌しながら加熱し、55℃で1時間保持して凝集粒子を形成した。コールターカウンター[TA−II]型(アパーチャー径:50μm、コールター社製)にて粒径を測定したところ、凝集粒子の平均粒径は約7.2μmであった。
【0180】
その後高分子ポリエステル樹脂分散液(1)110質量部、低分子ポリエステル樹脂分散液(1)73質量部を追添加し、前記凝集粒子の表面に樹脂粒子を付着させた。
【0181】
次いで、この分散液にアニオン性界面活性剤ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(第一工業社製:ネオゲンSC)6部を追加して、92℃まで加熱し、92℃にて5時間保持し凝集粒子を融合させた。その後、冷却、ろ過、これを更にイオン交換水にて再分散し、濾過、ろ液の電気伝導度が20μS/cm以下となるまで繰り返し洗浄を行った後、40℃のオーブン中で5時間真空乾燥して、トナー(10)を得た。
【0182】
得られたトナー(10)100質量部に対し、コロイダルシリカ(日本アエロジル社製:R972)3.3質量部を添加し、ヘンシェルミキサーを用いて混合することにより静電荷現像用トナー(10)を得た。得られたトナー(10)は、(MwS/MwT)×100=170であった。金属光沢性について評価を行ったところ、受光角度幅が5°以上あり良好であった。また、帯電量を測定したところ34μC/gであり、帯電性も良好であった。
【0183】
[実施例8]
膜厚1nmの金箔をポリプロピレンワックス(結晶化度60、融点68℃)をスプレー塗布した後、アセトンとイオン交換水とからなる水系溶媒中に分散させ、ビーズミルにて粉砕して長手方向100nmの金箔顔料(2)を作製した。
【0184】
金箔顔料(1)の代わりに上記金箔顔料(2)を用いた以外は、実施例7に準じて、トナー(11)を調製した。得られたトナー(11)は、(MwS/MwT)×100=170であった。金属光沢性について評価を行ったところ、受光角度幅が5°以上あり良好であった。また、帯電量を測定したところ36μC/gであり、帯電性も良好であった。
【0185】
[実施例9]
膜厚9nmの金箔をポリプロピレンワックス(結晶化度60、融点68℃)をスプレー塗布した後、アセトンとイオン交換水とからなる水系溶媒中に分散させ、ビーズミルにて粉砕して長手方向1500nmの金箔顔料(3)を作製した。
【0186】
金箔顔料(1)の代わりに上記金箔顔料(3)を用いた以外は、実施例7に準じて、トナー(12)を調製した。得られたトナー(12)は、(MwS/MwT)×100=170であった。金属光沢性について評価を行ったところ、受光角度幅が5°以上あり良好であった。また、帯電量を測定したところ31μC/gであり、帯電性も良好であった。
【0187】
[比較例4]
膜厚10nmの金箔をポリプロピレンワックス(結晶化度60、融点68℃)をスプレー塗布した後、アセトンとイオン交換水とからなる水系溶媒中に分散させ、ビーズミルにて粉砕して長手方向70nmの金箔顔料(4)を作製した。
【0188】
金箔顔料(1)の代わりに上記金箔顔料(4)を用いた以外は、実施例7に準じて、トナー(13)を調製した。得られたトナー(13)は、(MwS/MwT)×100=175であった。金属光沢性について評価を行ったところ、受光角度幅が4.5°未満であり、金属光沢性がなかった。また、帯電量を測定したところ35μC/gであり、帯電性は良好であった。
【0189】
[比較例5]
膜厚10nmの金箔をポリプロピレンワックス(結晶化度60、融点68℃)をスプレー塗布した後、アセトンとイオン交換水とからなる水系溶媒中に分散させ、ビーズミルにて粉砕して長手方向1800nmの金箔顔料(5)を作製した。
【0190】
金箔顔料(1)の代わりに上記金箔顔料(5)を用いた以外は、実施例7に準じて、トナー(14)を調製した。得られたトナー(14)は、(MwS/MwT)×100=165であった。金属光沢性について評価を行ったところ、受光角度幅が5°以上あり良好であった。ただし、帯電量を測定したところ3μC/gであり、帯電性に問題があった。
【0191】
[キャリアの調整]
フェライト粒子(平均粒径:50μm): 100質量部
トルエン: 14質量部
スチレン/メチルメタクリレート共重合体(共重合比:15/85): 2質量部
カーボンブラック: 0.2質量部
まずフェライト粒子を除く上記成分をサンドミルにて分散し、この分散液をフェライト粒子を真空脱気型ニーダに入れ、攪拌しながら減圧し乾燥させることによりキャリアを得た。キャリアの体積平均粒度分布指標GSDvは1.20であった。
【0192】
[現像剤の調製]
上記キャリア100部に対して、実施例及び比較例の各トナー8部を混合し実施例及び比較例の現像剤を得た。
【0193】
<評価方法>
[高温定着性の評価]
(オフセット性の評価)
得られた現像剤を、図1に示すDocuCentreColor400CP改造機(富士ゼロックス社製、定着温度、プロセススピードを任意に設定できるようにしたもの)の現像器に充填して、定着ロール温度を170〜190℃の範囲を5℃間隔で定着し、得られる画像が一定の射濃度(用紙C2紙、富士ゼロックス社製、X−Rite404濃度計で濃度1.5以上1.8以下)となるように画像を形成し、このようにして得られた画像の折り曲げによる画像欠陥を官能評価して以下の基準で判定した。なお、プロセススピードは160mm/s、250mm/s、370mm/sの3水準で実施した。以下に評価基準を示す。
◎:いずれのプロセススピード、画像濃度で、190℃以上で問題なし(画像欠陥目視で認められない。)。
○:プロセススピード370mm/s、190℃において若干の画像欠陥認められる(実使用上問題ない。)。
△:実用上問題ないが、高画像濃度、高温部(170℃以上190℃以下)で画像欠陥が認められる。
×:高温部(170℃以上190℃以下)で画像欠陥多く該温度範囲では実用に耐えない状態(170℃以下では定着し画像欠陥が見られない。)。
【0194】
[クリーニング性の評価]
(画質カブリ評価)
室温32℃、 湿度85%の環境室にて、得られた現像剤を図2に示す富士ゼロックス(株)社製DocuCentreColor400CP改造機の現像機にセットし、プロセススピード250mm/sにて連続20000枚のプリントアウトを行った。10000枚プリントアウトしたごとに感光体を表面を目視にて確認し、以下の基準にて評価を行った。
◎:20000枚までトナーつぶれによる感光体汚染がない
○:10000枚までトナーつぶれによる感光体汚染がない
△:10000枚において、トナーつぶれによる感光体汚染があるものの実用上問題ない。
×:10000枚において、明らかなトナーつぶれによる感光体汚染がある。
【0195】
[金属光沢性]
得られた現像剤Aを用い、DocuCentreColor400CP改造機(定着機構成はヒートロールとベルト、ニップ幅:16mm)で、単位面積あたりのトナー質量が18.0mg/cmになるよう調整し、Jcoat紙富士ゼロックス オフィスサプライ社製)にトナー画像を3.5mg/cm形成して、定着温度が180℃、プロセススピードが80mm/秒となるように調整して定着を行った。得られた金色定着像について、村上色彩技術研究所製GP200型を用い、入射角を45°とし、40°から80°までを検出角度0.1°ステップで測定した。判定基準を以下に示す。
○:45°時の反射率90%以上でかつ反射率1%以上の受光角度幅が5°以上
△:45°時の反射率85%以上でかつ反射率1%以上の受光角度幅が4.5°以上
×:上記条件を満たさないもの
【0196】
[帯電特性]
得られた現像剤(1)をDocuCentre Color500(富士ゼロックス(株)製)改造機の現像器に充填して、28℃/85%RHの環境下で24時間放置した。その後、現像器の調整モードで現像器を3分間空回しを行い、次いで現像スリーブから現像剤を採取してトナーの帯電量をブローオフ帯電量測定機(東芝社製、TB200)を用いて測定した。評価基準を以下に示す。また結果を表2に表す。
○:30μC/g以上で50μC/g未満、
△:10μC/g以上で 30μC/g未満、
×:10μC/g未満。
【0197】
【表1】

【0198】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0199】
本発明の静電荷現像用トナーは、特に電子写真法、静電記録法等の用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】本実施の形態に用いた画像形成装置の構成例を示す概略図である。示す概略図である。
【符号の説明】
【0201】
200 画像形成装置、400 ハウジング、401,401a〜401d 電子写真感光体、402,402a〜402d 帯電ロール、403 露光装置、404,404a〜404d 現像装置、405a〜405d トナーカートリッジ、409 中間転写ベルト、410,410a〜410d 1次転写ロール、411 トレイ(被転写媒体トレイ)、413 2次転写ロール、414 定着ロール、415a〜415d、416 クリーニングブレード、500 被転写媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類以上の結着樹脂、着色剤、離型剤とを含有し、トナー全体における体積平均粒径をD50T、トナーの重量平均分子量をMwTとし、トナーを分級して体積平均粒径を(1/5)×D50T以上(2/3)×D50T以下の範囲としたトナーの重量平均分子量をMwSとしたとき、MwT及びMwSが以下の式(1)の関係を満たすことを特徴とする静電荷現像用トナー。
150≦(MwS/MwT)×100≦200 ・・・ 式(1)
【請求項2】
前記結着樹脂がポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1の静電荷現像用トナー。
【請求項3】
小粒径側個数粒度分布指標GSDp−underが1.15以上1.30以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷現像用トナー。
【請求項4】
前記着色剤は、膜厚1nm以上10nm以下で、長手方向80nm以上1500nm以下の金属箔であり、転写後に金属光沢を呈することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の静電荷現像用トナー。
【請求項5】
前記金属箔の表面には、離型剤と相溶性のある樹脂がコーティングされ、離型剤の結晶化度が80以上であることを特徴とする請求項4に記載の静電荷現像用トナー。
【請求項6】
前記金属箔が、金、銀、銅のいずれか一種であることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の静電荷現像用トナー。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の静電荷現像用トナーと、体積平均粒度分布指標GSDvが1.15〜1.35の範囲であるキャリアと、を含有することを特徴とする静電荷現像用現像剤。
【請求項8】
トナーが少なくとも収容され、前記トナーが請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の静電荷現像用トナーであることを特徴とするトナーカートリッジ。
【請求項9】
現像剤保持体を少なくとも備え、請求項7に記載の静電荷現像用現像剤を収容することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項10】
潜像保持体と、該潜像保持体上に形成された静電荷を現像剤によりトナー像として現像する現像手段と、潜像保持体上に形成されたトナー像を被転写体上に転写する転写手段と、被転写体上に転写されたトナー像を定着する定着手段と、潜像保持体をクリーニング部材で摺擦して転写残留成分をクリーニングするクリーニング手段と、を有し、前記現像剤が請求項7に記載の静電荷現像用現像剤であることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−217053(P2009−217053A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−61614(P2008−61614)
【出願日】平成20年3月11日(2008.3.11)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】