説明

静電荷現像用トナー、静電荷現像用現像剤および画像形成装置

【課題】光透過性を損なうことなく、且つ製造性に優れた静電荷像現像用トナー、これを用いた静電荷像現像剤、及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】静電荷現像用トナーは、長径500nm以上1μm以下の着色剤凝集体を含み、粒子体積の50%以上が着色剤で占められるトナー粒子が、全トナー粒子に対して0.01質量%以上1質量%以下で含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷現像用トナー(以下、電子写真トナーともいう)、静電荷現像用現像剤および画像形成装置の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真技術を用いてフィルム上に画像を作成し、これを投影する投影画像では、該フィルム上の定着画像表面の平滑性や、定着画像内の着色剤、離型剤等の分散状態によって、画像を透過する光の散乱及び反射する割合が変化して、色がくすむことが知られている。
【0003】
定着画像内の着色剤の分散状態には、個々のトナー内部の着色剤分散状態が反映されるが、一般に着色剤の一次粒子は数〜数十nmと非常に小さく、トナー内部ではこの一次粒子が数個から数十個、あるいは数百個の凝集体として存在しており、これを着色剤凝集体と呼ぶ。
【0004】
定着画像の表面による散乱・反射を防ぐには、定着画像の平滑性を高めることが重要であるが、着色剤による光の散乱・反射は、トナー内部の着色剤凝集体を小さくすることにより低減することができる。しかし、着色剤凝集体の平均径を小さくするためには、着色剤の添加量を増やすことができず、紙へ定着した際の着色力が低下して、十分な画像濃度を得られない問題が生じ、これを補う為にトナー中の着色剤含有量を高めると、帯電性が悪化する等の二次障害が発生してしまう。
【0005】
着色剤の平均径を小さくする手段としては、混練粉砕トナーにおいては、予め着色剤とトナーの結着樹脂の一部を、最終のトナー組成より着色剤濃度が高い状態で十分に混練してマスターバッチとした後に、改めて残りの樹脂と一緒に混練する方法が一般的であり、この方法によれば極端に大きい着色剤凝集体を殆ど生じさせることなく、トナー内部の着色剤分散状態は細かくなる。
【0006】
一方、湿式製法トナーにおいては、着色剤と樹脂を混合する前に、着色剤だけを溶媒中に分散させておく方法が一般的である。溶媒中への分散は、一般にボールミル等のメディア型分散機によって行われ、より高い分散エネルギーを加えることで、より小さく分散することができるが、有機顔料では一部の粗大凝集体が残留し、トナーの性能を著しく低下させる場合がある。このような粗大凝集体を完全に消失させるには、着色剤の分散処理を十分に実施する必要があるが、それでは分散に多大なエネルギーや工数を要するだけでなく、分散された凝集体の平均径が小さくなり過ぎてしまい、着色剤の表面積が極端に増大して分散状態を安定的に保てなくなる場合がある。また、平均径が極端に小さくなり過ぎると、逆に着色力が低下する場合があるため、品質的にも好ましくない。
【0007】
更に湿式製法では、着色剤の分散工程で比較的大きい着色剤凝集体を残留させてしまうと、トナーの造粒過程で着色剤凝集体を主体成分とする異常トナー粒子が発生する場合があり、このような粒子は他の粒子に比べ結着樹脂の比率が極端に小さく、粒子表面付近に着色剤が存在してしまう、或いは粒子表面に着色剤が露出してしまうことから、他のトナーと同等の帯電性を保持することは困難で、非画像部に現像されてしまったり、現像の過程で飛散して現像機内を汚染したりする場合がある。
【0008】
なお、特許文献1には、少なくとも樹脂成分と着色剤粒子とを含む静電荷像現像用イエロートナーが開示され、該静電荷像現像用イエロートナーは、透過型電子顕微鏡により測定されたトナー内部での着色剤粒子の分散状態が、(i)着色剤粒子の分散平均粒子径が100nm以下、(ii)着色剤粒子全体における400nm以上の粗大側粒子の含有量が5個数%以下、の2つの条件を満たすものであることが記載されている。
【0009】
【特許文献1】特開2001−228653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、光透過性を損なうことなく、且つ製造性に優れた静電荷像現像用トナー、これを用いた静電荷像現像剤、及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の通りである。
【0012】
(1)長径500nm以上1μm以下の着色剤凝集体を含み、粒子体積の50%以上が着色剤で占められるトナー粒子が、全トナー粒子に対して0.01質量%以上1質量%以下で含有する静電荷現像用トナーである。
【0013】
(2)トナー粒子内部に分散された着色剤凝集体の平均径が、100〜300nmである上記(1)に記載の静電荷現像用トナーである。
【0014】
(3)ウェットケーキ顔料を溶媒中に分散した着色剤分散液を用いることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の静電荷現像用トナーである。
【0015】
(4)少なくとも1種以上の樹脂粒子分散液と、1種以上のウェットケーキ顔料を溶媒中に分散した着色剤分散液を混合し、凝集粒子を形成する工程、該凝集粒子を加熱融合させる工程と、を含む静電荷現像用トナーの製造方法である。
【0016】
(5)上記(1)から(3)のいずれか1つに記載の静電荷現像用トナーとキャリアを含有する静電荷現像用現像剤である。
【0017】
(6)潜像担体上に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像を静電荷現像用現像剤を用いて現像する現像手段と、現像されたトナー画像を中間転写体を介してまたは介さずに被転写体上に転写する転写手段と、前記被転写体上のトナー画像を加定着する定着手段と、を含む画像形成装置であり、前記静電荷現像用現像剤が、上記(5)に記載の静電荷現像用現像剤である画像形成装置である。
【発明の効果】
【0018】
本願請求項1に記載発明によれば、画像形成装置に用いた時に、トナー粒子表面に着色剤が露出し易く帯電性が劣化し、また光透過性を低下させる虞のある、長径500nm以上の着色剤凝集体を含み、且つ粒子体積の50%以上が着色剤で占められるトナー粒子が、全トナー粒子に対して0.01質量%以上1質量%以下であるため、トナーの帯電性が向上し且つ光透過性の高い画像が得られる。
【0019】
本願請求項2に記載の発明によれば、トナー粒子内部に分散された着色剤凝集体の平均径が100〜300nmであるため、画像形成装置に用いた時に、トナー粒子表面に着色剤が露出しないので帯電性が向上し、また着色剤凝集体による光の散乱・反射が上記平均粒径の着色剤凝集剤より大きい場合に比べ低くなるため、光透過性の高い画像が得られる。
【0020】
本願請求項3に記載の発明によれば、着色剤がウェットケーキ顔料であるため、ドライ顔料を含む着色剤凝集体に比べ少ない剪断力や衝撃力でサイズの小さい着色凝集体が得られる。
【0021】
本願請求項4に記載の発明によれば、1種以上のウェットケーキ顔料を含む着色剤分散液を用いるため、ドライ顔料を含む着色剤分散液に比べ少ない剪断力や衝撃力で着色凝集体のサイズが小さくなる。
【0022】
本願請求項5に記載の発明によれば、長径500nm以上の着色剤凝集体を含み、且つ粒子体積の50%以上が着色剤で占められるトナー粒子(以下、「異常トナー粒子」ともいう)が、全トナー粒子に対して0.01質量%以上1質量%以下であるトナーとキャリアとを有する現像剤は、画像形成装置に用いた時に、トナー粒子表面に着色剤が露出していないので、着色剤凝集体がトナー粒子表面に露出しているトナーに比べ帯電性が向上し、また上述した異常トナー粒子の含有量が全トナー粒子に対して0.01質量%以上1質量%以下であるため、光透過性の高い画像が得られる。
【0023】
本願請求項6に記載の発明によれば、画像形成装置に用いた時に、長径500nm以上の着色剤凝集体を含み、且つ粒子体積の50%以上が着色剤で占められるトナー粒子が、全トナー粒子に対して0.01質量%以上1質量%以下であるため、トナー粒子表面に着色剤が露出せず、その結果、着色剤凝集体がトナー粒子表面に露出しているトナーに比べ帯電性が向上し、また上述した異常トナー粒子の含有量が全トナー粒子に対して0.01質量%以上1質量%以下であるため、光透過性の高い画像が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
[静電荷現像用トナーおよびその製造方法]
本実施の形態の静電荷現像用トナー(以下「トナー」ともいう)は、長径500nm以上1μm以下の着色剤凝集体を含み、粒子体積の50%以上が着色剤で占められるトナー粒子(以下、「異常トナー粒子」ともいう)が、全トナー粒子に対して0.01質量%以上1質量%以下で含有する。
【0025】
着色剤凝集体を主体的な成分とする異常トナー粒子は、長径500nm以上の着色剤凝集体を含み、その粒子体積の50%以上が着色剤で占められる粒子と定義される。この異常トナー粒子は、他の粒子に比べ結着樹脂の比率が極端に小さく、粒子表面付近に着色剤が存在してしまうことから、他のトナー粒子と同等の帯電性を保持することは困難で、非画像部に現像されてしまったり、現像機内を汚染したりする場合がある。
【0026】
これらの異常トナー粒子が、全トナー量に対して1質量%以上存在すると、非画像部へのかぶりが実用上許容できないレベルに達してしまう。しかし、特に湿式製法トナーにおいて、これらの異常トナーを0.01質量%以下に抑制する為には、着色剤の分散工程で、全ての着色剤凝集体に多大なエネルギーを付与することとなり、着色剤凝集体の平均径が小さくなり過ぎて着色力が低下したり、着色剤分散液の安定性を低下させたりする問題がある。
【0027】
トナー内部に分散する着色剤凝集体の平均径と、長径が500nm以上の着色剤凝集体を含み、粒子体積の50%以上が着色剤で占められるトナー粒子の割合は、透過型電子顕微鏡によるトナー断面の観察画像を撮影し、任意に1000個程度抽出したトナーについて、画像解析することで求める。
【0028】
本発明における異常トナー粒子とは、例えば、図1Aに示すように、長径500nmを超える着色剤凝集体12bを含み、更に500nm以下の着色剤凝集剤12aを含み、且つ粒子体積の50%以上が着色剤で占められるトナー粒子10や、図1Bに示すように、500nm以下の着色剤凝集剤12aを含みつつ、長径500nmを遙かに超える粗大着色剤凝集体12cを更に含み、且つ粒子体積の50%以上が着色剤で占められるトナー粒子20を含み意味である。
【0029】
また、本実施の形態における他の静電荷現像用トナーは、更にトナー粒子内部に分散された着色剤凝集体の平均径が、100〜300nmである。
【0030】
トナーの着色力、光透過性を両立させ、着色剤の分散工程に多大なエネルギーを費消することなく、且つ、着色剤分散液の保管安定性を付与する為には、着色剤凝集体の平均径を100〜300nmに制御することが好ましく、この範囲に調整された着色剤分散液を用いてトナーを造粒することで、比較的容易に異常トナー粒子の全トナー量に対する割合を0.01質量%異常1質量%以下に制御される。
【0031】
着色剤凝集体の好ましい平均径については、多くの着色剤品種おいて、トナー中の着色剤凝集体の平均径と定着画像の画像濃度との相関が明確で、100nm以上の範囲では凝集体の平均径が小さい程高い画像濃度が得られることがわかった。ただし、着色剤凝集体の平均径が100nm以下の範囲では、一部の着色剤で十分な画像濃度を得られず、また湿式製法における着色剤の分散工程において、分散のために多大なエネルギーを要し、環境負荷上、及び製造コスト上好ましくないことが分かった。一方、300nm以上の範囲では、どの着色剤品種においても、トナー内部の分散が不十分で、定着画像の画像濃度が著しく低下し、必要な濃度を達成するために現像量を多くする、あるいはトナーに含有させる着色剤量を増やす必要があることから、いずれも品質上・コスト上問題となることがわかった。
【0032】
また、光透過性については、やはりトナー内部の着色剤凝集体の平均径と相関があるものの、200nm以下の範囲では実用上問題のないレベルであり、300nm以下の範囲であれば、樹脂や離径剤など他のトナー構成材料や現像方法を工夫することにより、光透過性を重視しない用途については使用可能なレベルを維持できることがわかった。しかし、着色剤凝集体の平均径と言う考え方による管理では十分でなく、光透過性を著しく低下させる500nm以上の凝集体を含有するトナーが存在すると、着色剤凝集体の平均径が小さくても、十分な光透過性を得られない場合があった。
【0033】
また、本実施の形態における他の静電荷現像用トナーは、更に着色剤が、ウェットケーキ顔料である。
【0034】
トナー内部の着色剤凝集体の平均径は、着色力の観点から小さい程好ましいが、光の波長に比べて小さ過ぎると十分な着色力を得られない。光透過性の観点からも小さい程好ましいが、こちらは小さ過ぎても特に問題を生じない。ただし、平均径としては十分に小さく分散されていても、極少量の粗大凝集体が混在することで、光透過性が著しく悪化する場合がある。
【0035】
一方、例えば、湿式製法トナーの着色剤分散工程において、有機顔料などの着色剤にせん断力や衝撃力等のエネルギーを加えることで、着色剤凝集体を小さくすることができるが、分散には多大なエネルギーを要することと、過剰な分散によって着色剤分散液の安定性が損なわれたり、平均径が小さ過ぎることによる着色力の低下が懸念されることから、着色剤の分散は、着色力・光透過性を満足する必要最小限の処理に留める必要がある。しかし、この工程で処理できなかった一部の粗大凝集体は、トナー造粒工程でその粗大凝集体を核とした異常トナーを生じる原因となることから、分散工程では平均径を小さくし過ぎずに、且つ粗大凝集体はできるだけ低減しておくことが好ましい。
【0036】
このような目的においては、着色剤の分散工程を行った後、着色剤分散液中の粗大凝集体を遠心沈降処理などで分離することもできるが、粗大凝集体は適切に分散された凝集体より一回り大きい程度で、これを選択的に分離除去することは困難である。わざわざ多大な負荷をかけて遠心沈降処理を行って、好ましい範囲に分散された着色剤の一部も一緒に除去してしまうのはコスト上も好ましくない。
【0037】
従来の方法では、例えば有機顔料などの着色剤を溶媒中に分散する際、分散槽内で溶媒中に着色剤を投入し、必要に応じて分散剤や界面活性剤を添加して攪拌・混合した後、ボールミル等の分散機を着色剤凝集体の平均粒径が所望のサイズになるまで通過させて、着色剤分散液を得ていた。しかし、この方法では、分散初期に着色剤凝集体のダマを十分に解すことができず、一部の粗大凝集体が十分に分散されずに残留してしまう場合がある。着色剤の分散工程で粗大凝集体が残留すると、トナーの調製工程でその粗大凝集体を核に他のトナーと組成や構造の異なる異常トナーを形成する場合があり好ましくない。
【0038】
この問題を解決するためには、分散工程で加える力をできるだけ弱くして、且つ着色剤凝集体の平均径を小さくする必要があり、例えば着色剤に有機顔料を用いる場合、比較的弱い力で分散させるには、ウェットケーキ顔料を用いることが好ましい。一般的に多くの有機顔料は、固有の化学構造に合成された後、水洗、固液分離、乾燥工程を経て、粉体として使用されるが、もともと疎水性に乏しい有機顔料から、凝集体同士の界面に付着する水分を除去してしまうと、有機顔料の凝集体同士が直接接触して強固な凝集体を形成し、再び水に馴染ませるのが比較的困難となる。しかし、ウェットケーキ顔料では、顔料の一次粒子間、あるいは凝集体間の水分を強制的に除去する乾燥工程を経ることなく、水分を保有したまま分散処理が行えるため、凝集体の分散に必要な分散エネルギーを大幅に低減することができる。また、一部の強固な大径の凝集体がもともと少なく、それらを減らすために延々と分散工程を延長する必要がないことから、凝集体の平均径を必要以上に小さくし過ぎずに、粗大側の凝集体を必要なレベルまで分散することができる。
【0039】
更に、より少ない力で分散を達成させるためには、着色剤に強い力を加えて分散する前に、比較的弱いせん断力を長時間に渡って加え、粗大着色剤凝集体を十分に予備解砕しておくことが有効である。この予備解砕は、回転体等による機械的な解砕で、主に数100μm〜数mmの着色剤の塊を、数〜数10μmの大きさに砕く程度の力しかなく、この予備解砕を過剰に行っても、最終的に分散された凝集体の平均径を小さくするには至らない。しかし、この予備解砕を十分に行うことで、メディア型や高圧型の高せん断力・高衝撃力が加わる分散工程の処理回数、もしくは処理時間を、大幅に低減することができ、その結果、平均粒径の過剰な微細化を防ぐことができる。
【0040】
更に、この方法によれば、着色剤分散液中の着色剤凝集体の平均径を従来と同等程度に調製した場合、長径が500nm以上の粗大凝集体が少なく、この着色剤分散液を用いてトナーを調製することによって、トナー中に存在する長径500nm以上の着色剤凝集体を含み、粒子体積の50%以上が着色剤で占められる粒子を従来より少なくすることができる。
【0041】
本実施の形態における静電荷現像トナーの製造方法として、湿式製法が有効である。この場合湿式製法(化学製法)とは、水中に乳化した樹脂を凝集する乳化重合凝集法、着色剤等を分散したモノマー油滴を、水中で重合させる懸濁重合法、有機溶媒中に樹脂を溶解して着色剤等と混合し、分散剤等を用いて水中に油滴を形成させた後に有機溶媒を除去する溶解懸濁法などの製造方法である。
【0042】
本実施の形態における静電荷現像用トナーの製造方法の一例は、例えば、少なくとも1種以上の樹脂粒子分散液と、1種以上の着色剤分散液を混合し、凝集粒子を形成する工程、該凝集粒子を加熱融合させる工程と、を含む。
【0043】
本実施の形態における他の静電荷現像用トナーの製造方法は、上記着色剤分散液に用いられる着色剤がウェットケーキ顔料である。
【0044】
まず、本実施の形態のトナーは、結着樹脂が含まれ、該結着樹脂を構成するラジカル重合性のビニル基を含有するモノマーとしては、例えば、芳香族系ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体、ビニルエステル系単量体、ビニルエーテル系単量体、モノオレフィン系単量体、ジオレフィン系単量体、ハロゲン化オレフィン系単量体等を挙げることができる。芳香族系ビニル単量体としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロロスチレン、p−エチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、3,4−ジクロロスチレン等のスチレン系単量体及びその誘導体が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、β−ヒドロキシアクリル酸エチル、γ−アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。ビニルエステル系単量体としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。ビニルエーテル系単量体としては、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、ビニルフェニルエーテル等が挙げられる。モノオレフィン系単量体としては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられる。ジオレフィン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等が挙げられる。ハロゲン化オレフィン系単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル等が例示する事ができるが、これらに制限される事はなく、またこれらのモノマーは単独または2種類以上併用して用いても良い。
【0045】
更にこれらのモノマーの重合は、乳化重合法、ミニエマルジョン法、懸濁重合法、分散重合法など公知の重合手法、開始剤、乳化剤、安定剤を併用する事が可能であり、なんら本発明を制限するものではない。
【0046】
これら樹脂粒子の乳化または分散液の凝集工程では、水系媒体中で上記樹脂粒子分散液を、必要に応じて着色剤粒子分散液及び離型剤粒子分散液と混合し、更に凝集剤を添加し、これら粒子をヘテロ凝集を生じさせることによりトナー径の凝集粒子を形成することができる。また、このように凝集して第一の凝集粒子形成後、更に別のポリマー微粒子分散液を添加し第一の粒子表面に第2のシェル層を形成することも可能である。なお、この例示においては、着色剤分散液を別に調製しているが、樹脂粒子に予め着色剤が配合されている場合には、着色剤分散液はなくても良い。
【0047】
その後、融合工程において、樹脂粒子を構成する樹脂のガラス転移点以上又は融点以上の温度に加熱して、凝集粒子を融合・合一し、必要に応じて洗浄、乾燥することにより、トナーを得ることができる。なお、トナー形状は不定形から球形までのものが好ましく用いられる。また、凝集剤としては、界面活性剤のほか、無機塩、2価以上の金属塩を好適に用いることができる。特に、金属塩を用いる場合、凝集性制御及びトナー帯電性などの特性において好ましい。
【0048】
また、本実施の形態における静電荷現像用トナーの製造方法の他の例は、例えば、ポリエステルを乳化した樹脂粒子分散液、離型剤分散液と着色剤分散液とを混合し、凝集剤を用いて凝集させる工程と、前記非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)以上の温度で合一融合させる工程と、を有する静電荷現像用トナーの製造方法である。ここで、ポリエステル樹脂は、非結晶性もしくは結晶性単独でも良く、非結晶性と結晶性の両方を用いても良い。
【0049】
上記他の製造方法における融合・合一工程にて、凝集粒子を収容する撹拌槽に、撹拌槽中に凝集粒子が滞留することが抑制され、例えば、撹拌槽の内面と凝集粒子との間に斥力が働くように連続的または間欠的に磁場が形成される。なお、後述する製造装置について、その構成について詳細に説明する。
【0050】
−結晶性ポリエステル樹脂−
ここで、「結晶性ポリエステル樹脂」とは、示差走査結量測定(DSC)において、階段状の吸熱量変化ではなく、明確な吸熱ピークを有するものを指す。明確な吸熱ピークとはJIS K 7121‐1987「プラスチックの転移温度測定方法」に記載のようにDSC曲線がそれまでのベースラインから離れてから再度ベースラインに戻るピークを言う。なお、ここで、静電荷現像用トナーに用いられる『結晶性』とは、示差走査熱量測定(DSC)において、明確な吸熱ピークを有することを指し、具体的には、昇温速度10℃/minで測定した際の吸熱ピークの半値幅が6℃以内であることを意味する。
【0051】
結晶性ポリエステル樹脂としては、具体的には、適度な融点を有し炭素数6以上のアルキル基を側鎖に有する脂肪族系の結晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。炭素数6以上のアルキル基を有するポリエステルは、前記の多価カルボン酸または多価アルコールに炭素数6以上のアルキル基を有するモノマーを用いることで得ることができ、例えば、ドデセニルコハク酸などを用いることができるが、これに限るものではない。
【0052】
結晶性ポリエステル樹脂は、主として多価カルボン酸類と多価アルコール類との縮重合により得られるものである。なお、本発明にでは、前記結晶性ポリエステル主鎖に対して、他成分を50質量%以下の割合で共重合した共重合体も結晶性ポリエステルとする。
【0053】
本実施の形態において用いるポリエステル樹脂の製造に用いる多価カルボン酸類としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェン酸等の芳香族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸、p−(ヒドロキシエトキシ)安息香酸等の芳香族オキシカルボン酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸、ダイマー酸、トリマー 酸、水添ダイマー酸、シクロヘキサンジカルボン酸、 シクロヘキセンジカルボン酸等の不飽和脂肪族及び脂環族ジカルボン酸等を、また多価カルボン酸としては他にトリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の三価以上の多価カルボン酸等を用いることができる。
【0054】
ポリエステル樹脂の製造に用いる多価アルコール類としては脂肪族多価アルコール類、脂環族多価アルコール類、芳香族多価アルコール類等を例示できる。脂肪族多価アルコール類としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジメチロールヘプタン、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ε−カプロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるラクトン系ポリエステルポリオール等の脂肪族ジオール類、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエルスリトール等のトリオール及びテトラオール類等を例示できる。
脂環族多価アルコール類としては1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、スピログリコール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物、トリシクロデカンジオール、トリシクロデカンジメタノール、ダイマージオール、水添ダイマージオール等を例示できる。
【0055】
芳香族多価アルコール類としてはパラキシレングリコール、メタキシレングリコール、オルトキシレングリコール、1,4−フェニレングリコール、1,4−フェニレングリコールのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物及びプロピレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0056】
ポリエステル樹脂末端の極性基を封鎖し、トナー帯電特性の環境安定性を改善する目的において単官能単量体がポリエステル樹脂に導入される場合がある。単官能単量体としては、安息香酸、クロロ安息香酸、ブロモ安息香酸、パラヒドロキシ安息香酸、スルホ安息香酸モノアンモニウム塩、スルホ安息香酸モノナトリウム塩、シクロヘキシルアミノカルボニル安息香酸、n−ドデシルアミノカルボニル安息香酸、ターシャルブチル安息香酸、ナフタレンカルボン酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、サリチル酸、チオサリチル酸、フェニル酢酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、オクタンカルボン酸、ラウリル酸、ステアリル酸、及びこれらの低級アルキルエステル、等のモノカルボン酸類、あるいは脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂環族アルコール等のモノアルコールを用いることができる。
【0057】
結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては、特に制限はなく、酸成分とアルコール成分とを反応させる一般的なポリエステル重合法で製造することができ、例えば、直接重縮合、エステル交換法等が挙げられ、モノマーの種類によって使い分けて製造する。
【0058】
結晶性ポリエステル樹脂の製造は、重合温度180℃から230℃の間で行うことができ、必要に応じて反応系内を減圧にし、縮合時に発生する水やアルコールを除去しながら反応させる。モノマーが反応温度下で溶解又は相溶しない場合は、高沸点の溶剤を溶解補助剤として加え溶解させても良い。重縮合反応においては、溶解補助溶剤を留去しながら行う。共重合反応において相溶性の悪いモノマーが存在する場合は、あらかじめ相溶性の悪いモノマーと、そのモノマーと重縮合予定の酸又はアルコールとを縮合させておいてから主成分と共に重縮合させると良い。
【0059】
結晶性ポリエステル樹脂の製造時に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウム等のアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウム等の金属化合物;亜リン酸化合物、リン酸化合物、及びアミン化合物等が挙げられ、具体的には、以下の化合物が挙げられる。
【0060】
例えば、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、酢酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸マンガン、ナフテン酸マンガン、チタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロキシド、チタンテトラブトキシド、三酸化アンチモン、トリフェニルアンチモン、トリブチルアンチモン、ギ酸スズ、シュウ酸スズ、テトラフェニルスズ、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシド、ジルコニウムテトラブトキシド、ナフテン酸ジルコニウム、炭酸ジルコニール、酢酸ジルコニール、ステアリン酸ジルコニール、オクチル酸ジルコニール、酸化ゲルマニウム、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−t−ブチルフェニル)ホスファイト、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、トリエチルアミン、トリフェニルアミン等の化合物が挙げられる。このような触媒の添加量は、原材料の総量に対して0.01質量%から1.00質量%とすることが好ましい。
【0061】
結晶性樹脂の融点としては、好ましくは50℃から120℃であり、より好ましくは60℃から110℃である。前記融点が50℃より低いとトナーの保存性や、定着後のトナー画像の保存性が問題となる場合がある一方、120℃より高いと従来のトナーに比べて十分な低温定着が得られない場合がある。
【0062】
ここで、結晶性樹脂の融点の測定には、示差走査熱量計(DSC)を用い、室温から150℃まで毎分10℃の昇温速度で測定を行った時の、ASTM D3418−8に示す示差走査熱量測定の融解ピーク温度として求めることができる。後述する非結晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度の測定も同様に測定することができる。
【0063】
また、結晶性の樹脂には、複数の融解ピークを示す場合があるが、本発明においては、最大のピークをもって融点とする。
【0064】
更に、本発明の樹脂融点の測定には、例えばパーキンエルマー社製のDSC−7を用いることができる。この装置の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/minで測定を行う。後述する非結晶性ポリエステル樹脂の軟化点の測定も同様に測定することができる。
【0065】
−非結晶性ポリエステル樹脂−
非結晶性ポリエステル樹脂としては、上記触媒を用い主として上述した多価カルボン酸類と多価アルコール類との縮重合により得られるものである。
【0066】
非結晶性ポリエステル樹脂は、上記多価アルコールと多価カルボン酸を常法に従って縮合反応させることによって製造することができる。例えば、上記多価アルコールと多価カルボン酸、必要に応じて触媒を入れ、温度計、撹拌器、流下式コンデンサを備えた反応容器に配合し、不活性ガス(窒素ガス等)の存在下、150〜250℃で加熱し、副生する低分子化合物を連続的に反応系外に除去し、所定の酸価に達した時点で反応を停止させ、冷却し、目的とする反応物を取得することによって製造することができる。
【0067】
結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステルの樹脂粒子分散液の作成については、樹脂の酸価の調整やイオン性界面活性剤などを用いて乳化分散することにより、調製することが可能である。
【0068】
また、その他の方法で作製した樹脂の場合は油性で水への溶解度の比較的低い溶剤に溶解するものであれば樹脂をそれらの溶剤に解かして水中にイオン性の界面活性剤や高分子電解質と共にホモジナイザーなどの分散機により水中に粒子分散し、その後加熱又は減圧して溶剤を蒸散することにより、樹脂粒子分散液を作製することができる。また、樹脂に界面活性剤を加え、ホモジナイザーなどの分散機により水中にて乳化分散する方法や転相乳化法などにより、樹脂粒子分散液を調製してもよい。
【0069】
このようにして得られた樹脂粒子分散液の粒子径は、例えばレーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700堀場製作所製)で測定することができる。
【0070】
以下、用いるトナーの構成成分について説明する。
【0071】
まず、着色成分としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、ベンガラ、紺青、酸化チタン等の無機顔料、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、ピラゾロンレッド、キレートレッド、ブリリアントカーミン、パラブラウン等のアゾ顔料、銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン顔料、フラバントロンイエロー、ジブロモアントロンオレンジ、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、ジオキサジンバイオレット等の縮合多環系顔料があげられる。クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラロゾンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、デュポンオイルレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカイトグリーンオクサレート、C.I.ピグメント・レッド48:1、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド57:1、C.I.ピグメント・イエロー12、C.I.ピグメント・イエロー97、C.I.ピグメント・イエロー17、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:3などの種々の顔料などが挙げられ、これらは1種又は2種以上を併せて使用することができる。
【0072】
離型剤としては、例えば、カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス、低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、サゾールワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、パラフィンワックス、モンタンワックス等の合成或いは鉱物・石油系ワックス、脂肪酸エステル、モンタン酸エステル等のエステル系ワックスなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。また、これらの離型剤は、1種単独で用いても良く、2種以上併用しても良い。離型剤の融点は、保存性の観点から、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましい。また、耐オフセット性の観点から、110℃以下であることが好ましく、100℃以下であることがより好ましい。
【0073】
その他、必要に応じて内添剤、帯電制御剤、無機粉体(無機微粒子)、有機微粒子等の種々の成分を添加することができる。内添剤としては、例えば、フェライト、マグネタイト、還元鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の金属、合金、又はこれら金属を含む化合物などの磁性体等が挙げられる。帯電制御剤としては、例えば4級アンモニウム塩化合物、ニグロシン系化合物、アルミ、鉄、クロムなどの錯体からなる染料、トリフェニルメタン系顔料などが挙げられる。また、無機粉体は主にトナーの粘弾性調整を目的として添加され、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、燐酸カルシウム、酸化セリウム等の下記に詳細に列挙するような通常、トナー表面の外添剤として使用されるすべての無機微粒子が挙げられる。
【0074】
また、凝集剤としては、界面活性剤のほか、無機塩、2価以上の金属塩を好適に用いることができる。特に、金属塩を用いる場合、凝集性制御及びトナー帯電性などの特性において好ましい。
【0075】
本実施の形態におけるトナーの体積平均粒子径は、3〜10μmであり、3〜9μmが好ましく、3〜8μmがより好ましい。また、本実施の形態のトナーの数平均粒子径は、3〜10μmが好ましく、2〜8μmがより好ましい。粒子径が小さすぎると製造性が不安定になるばかりでなく、帯電性が不十分になり、現像性が低下することがあり、大きすぎると画像の解像性が低下する。
【0076】
[静電荷現像用現像剤]
以上説明した本発明の静電荷現像トナーの製造方法により得られるトナーは、静電荷現像剤として使用される。この現像剤は、この静電荷現像トナーを含有することの外は特に制限はなく、目的に応じて適宜の成分組成をとることができる。静電荷現像トナーを、単独で用いると一成分系の静電荷現像剤として調製され、また、キャリアと組み合わせて用いると二成分系の静電荷現像剤として調製される。
【0077】
キャリアとしては、特に制限はなく、それ自体公知のキャリアが挙げられ、例えば、特開昭62−39879号公報、特開昭56−11461号公報等に記載された樹脂被覆キャリア等の公知のキャリアを使用することができる。
【0078】
キャリアの具体例としては、以下の樹脂被覆キャリアが挙げられる。即ち、該キャリアの核体粒子としては、通常の鉄粉、フェライト、マグネタイト造型物などが挙げられ、その平均粒径は30〜200μm程度である。前記核体粒子の被覆樹脂としては、例えば、スチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のα−メチレン脂肪酸モノカルボン酸類、ジメチルアミノエチルメタクリレート等の含窒素アクリル類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のビニルピリジン類、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類、エチレン、プロピレン等のポリオレフィン類、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等のシリコーン類、フッ化ビニリデン。テトラフルオロエチレンヘキサフルオロエチレン等のビニル系フッ素含有モノマーの共重合体、ビスフェノール、グリコール等を含むポリエステル類、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、などが挙げられる。これらの樹脂は、1種単独で使用してもよいし、あるいは2種以上併用してもよい。該被覆樹脂の量としては、キャリアに対して0.1〜10部程度であり、0.5〜3.0質量部が好ましい。前記キャリアの製造には、加熱型ニーダー、加熱型ヘンシェルミキサー、UMミキサーなどを使用することができ、前記被覆樹脂の量によっては、加熱型流動転動床、加熱型キルンなどを使用することができる。
【0079】
なお、静電荷現像剤における、静電荷現像トナーと、キャリアとの混合比としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0080】
[画像形成装置]
次に、本実施の形態の画像形成装置について説明する。
【0081】
図2は、本実施の形態の画像形成方法により画像を形成するための、画像形成装置の構成例を示す概略図である。図示した画像形成装置200は、ハウジング400内において4つの電子写真感光体401a〜401dが中間転写ベルト409に沿って相互に並列に配置されている。電子写真感光体401a〜401dは、例えば、電子写真感光体401aがイエロー、電子写真感光体401bがマゼンタ、電子写真感光体401cがシアン、電子写真感光体401dがブラックの色からなる画像をそれぞれ形成することが可能である。
【0082】
電子写真感光体401a〜401dのそれぞれは所定の方向(紙面上は反時計回り)に回転可能であり、その回転方向に沿って帯電ロール402a〜402d、現像装置404a〜404d、1次転写ロール410a〜410d、クリーニングブレード415a〜415dが配置されている。現像装置404a〜404dのそれぞれにはトナーカートリッジ405a〜405dに収容されたブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの4色のトナーが供給可能であり、また、1次転写ロール410a〜410dはそれぞれ中間転写ベルト409を介して電子写真感光体401a〜401dに当接している。
【0083】
さらに、ハウジング400内の所定の位置には露光装置403が配置されており、露光装置403から出射された光ビームを帯電後の電子写真感光体401a〜401dの表面に照射することが可能となっている。これにより、電子写真感光体401a〜401dの回転工程において帯電、露光、現像、1次転写、クリーニングの各工程が順次行われ、各色のトナー像が中間転写ベルト409上に重ねて転写される。
【0084】
ここで、帯電ロール402a〜402dは、電子写真感光体401a〜401dの表面に導電性部材(帯電ロール)を接触させて感光体に電圧を均一に印加し、感光体表面を所定の電位に帯電させるものである(帯電工程)。なお本実施形態において示した帯電ロールの他、帯電ブラシ、帯電フィルム若しくは帯電チューブなどを用いて接触帯電方式による帯電を行ってもよい。また、コロトロン若しくはスコロトロンを用いた非接触方式による帯電を行ってもよい。
【0085】
露光装置403としては、電子写真感光体401a〜401dの表面に、半導体レーザー、LED(light emitting diode)、液晶シャッター等の光源を所望の像様に露光できる光学系装置等を用いることができる。これらの中でも、非干渉光を露光可能な露光装置を用いると、電子写真感光体401a〜401dの導電性基体と感光層との間での干渉縞を防止することができる。
【0086】
現像装置404a〜404dには、上述の二成分静電荷像現像剤を接触又は非接触させて現像する一般的な現像装置を用いて行うことができる(現像工程)。そのような現像装置としては、二成分静電荷像現像用現像剤を用いる限り特に制限はなく、目的に応じて適宜公知のものを選択することができる。一次転写工程では、1次転写ロール410a〜410dに、像担持体に担持されたトナーと逆極性の1次転写バイアスが印加されることで、像担持体から中間転写ベルト409へ各色のトナーが順次1次転写される。
【0087】
クリーニングブレード415a〜415dは、転写工程後の電子写真感光体の表面に付着した残存トナーを除去するためのもので、これにより清浄面化された電子写真感光体は上記の画像形成プロセスに繰り返し供される。クリーニングブレードの材質としてはウレタンゴム、ネオプレンゴム、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0088】
中間転写ベルト409は駆動ロール406、バックアップロール408及びテンションロール407により所定の張力をもって支持されており、これらのロールの回転によりたわみを生じることなく回転可能となっている。また、2次転写ロール413は、中間転写ベルト409を介してバックアップロール408と当接するように配置されている。
【0089】
2次転写ロール413に、中間転写体上のトナーと逆極性の2次転写バイアスが印加されることで、中間転写ベルトから記録媒体へトナーが2次転写される。バックアップロール408と2次転写ロール413との間を通った中間転写ベルト409は、例えば駆動ロール406の近傍に配置されたクリーニングブレード416或いは、除電器(不図示)により清浄面化された後、次の画像形成プロセスに繰り返し供される。また、ハウジング400内の所定の位置にはトレイ(被転写媒体トレイ)411が設けられており、トレイ411内の紙などの被転写媒体500が移送ロール412により中間転写ベルト409と2次転写ロール413との間、さらには相互に当接する2個の定着ロール414の間に順次移送された後、ハウジング400の外部に排紙される。
【0090】
<画像形成方法>
本実施の形態における画像形成方法は、少なくとも、像保持体を帯電させる工程と、像保持体上に潜像を形成する工程と、潜像担持体上の潜像を上述した電子写真用現像剤を用いて現像する工程と、現像されたトナー像を中間転写体上に転写する1次転写工程と、前記中間転写体に転写されたトナー像を、記録媒体に転写する2次転写工程と、前記トナー画像を熱と圧力によって定着する工程とを有する。前記現像剤は、少なくとも、本発明の静電潜像現像用トナーを含有する現像剤である。前記現像剤は、一成分系、二成分系のいずれの態様であってもよい。
【0091】
上記の各工程は、いずれも画像形成方法において公知の工程が利用できる。
【0092】
潜像保持体としては、例えば、電子写真感光体及び誘電記録体等が使用できる。電子写真感光体の場合、該電子写真感光体の表面を、コロトロン帯電器、接触帯電器等により一様に帯電した後、露光し、静電潜像を形成する(潜像形成工程)。次いで、表面に現像剤層を形成させた現像ロールと接触若しくは近接させて、静電潜像にトナーの粒子を付着させ、電子写真感光体上にトナー画像を形成する(現像工程)。形成されたトナー画像は、コロトロン帯電器等を利用して紙等の被転写体表面に転写される(転写工程)。さらに、必要に応じて、被転写体表面に転写されたトナー画像は、定着機により熱定着され、最終的なトナー画像が形成される。
【0093】
尚、前記定着機による熱定着の際には、オフセット等を防止するため、通常、前記定着機における定着部材に離型剤が供給される。
【0094】
熱定着に用いる定着部材であるローラあるいはベルトの表面に、離型剤を供給する方法としては、特に制限はなく、例えば、液体離型剤を含浸したパッドを用いるパッド方式、ウエブ方式、ローラ方式、非接触型のシャワー方式(スプレー方式)等が挙げられ、なかでも、ウエブ方式、ローラ方式が好ましい。これらの方式の場合、前記離型剤を均一に供給でき、しかも供給量をコントロールすることが容易な点で有利である。尚、シャワー方式により前記定着部材の全体に均一に前記離型剤を供給するには、別途ブレード等を用いる必要がある。
【0095】
トナー画像を転写する被転写体(記録材)としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、これらにより本発明は限定されるものではない。
【0097】
まず、本実施例において、各測定は次のように行った。
【0098】
−粒度及び粒度分布測定方法−
粒径(「粒度」ともいう。)及び粒径分布測定(「粒度分布測定」ともいう。)について述べる。
【0099】
測定する粒子直径が2μm以上の場合、測定装置としてはコールターマルチサイザー−II型(ベックマン−コールター社製)を用い、電解液はISOTON−II(ベックマン−コールター社製)を使用した。
【0100】
測定法としては、分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液2ml中に測定試料を0.5〜50mg加える。これを前記電解液100ml中に添加した。
【0101】
試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1分間分散処理を行い、前記コールターマルチサイザー−II型により、アパーチャー径として100μmアパーチャーを用いて2〜60μmの粒子の粒度分布を測定して体積平均分布、個数平均分布を求めた。測定する粒子数は50,000であった。
【0102】
また、トナーの粒度分布は以下の方法により求めた。測定された粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、粒度の小さいほうから体積累積分布を描き、累積50%となる累積体積粒径をD50vと定義する。本発明における体積平均粒径は該D50vである。
【0103】
また、測定する粒子直径が2μm未満の場合、レーザー回析式粒度分布測定装置(LA−700:堀場製作所製)を用いて測定した。測定法としては分散液となっている状態の試料を固形分で約2gになるように調整し、これにイオン交換水を添加して、約40mlにする。これをセルに適当な濃度になるまで投入し、約2分待って、セル内の濃度がほぼ安定になったところで測定する。得られたチャンネルごとの体積平均粒径を、体積平均粒径の小さい方から累積し、累積50%になったところを体積平均粒径とした。
【0104】
なお、外添剤などの粉体を測定する場合は、界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの5%水溶液50ml中に測定試料を2g加え、超音波分散機(1,000Hz)にて2分間分散して、試料を作製し、前述の分散液と同様の方法で、測定した。
【0105】
−トナー、樹脂粒子の分子量、分子量分布測定方法−
分子量分布は、以下の条件で行ったものである。GPCは「HLC−8120GPC、SC−8020(東ソー(株)社製)装置」を用い、カラムは「TSKgel、SuperHM−H(東ソー(株)社製、6.0mmID×15cm)」を2本用い、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)を用いた。実験条件としては、試料濃度0.5%、流速0.6ml/min、サンプル注入量10μl、測定温度40℃、IR検出器を用いて実験を行った。また、検量線は東ソー社製「polystylene標準試料TSK standard」:「A−500」、「F−1」、「F−10」、「F−80」、「F−380」、「A−2500」、「F−4」、「F−40」、「F−128」、「F−700」の10サンプルから作製した。
【0106】
−トナー中の異常トナー粒子割合の測定−
トナー内部に分散する着色剤凝集体の平均径と、長径が500nm以上の着色剤凝集体を含み、粒子体積の50%以上が着色剤で占められるトナー粒子の割合は、透過型電子顕微鏡によるトナー断面の観察画像を撮影し、任意に1000個程度抽出したトナーについて、画像解析することで求めた。
【0107】
以下に本発明におけるより具体的比較例および実施例について説明を行うが、以下の実施例は本発明の内容について何ら限定するものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」はすべて「質量部」を意味する。
【0108】
[トナーの製造例および現像剤の評価]
<実施例1>
−樹脂粒子分散液の調製−
重合反応槽にイオン交換水370質量部と界面活性剤0.3質量部を投入し、攪拌混合しながら75℃まで昇温した。一方、乳化槽には下記成分を投入し、十分に攪拌混合して乳化液を作製した。
【0109】
イオン交換水: 200質量部
界面活性剤: 4質量部
スチレン: 300質量部
n−ブチルアクリレート: 90質量部
アクリル酸: 11質量部
ドデカンチオール: 6質量部
1,10−デカンジオールジアクリレート: 1.5質量部
反応槽の温度が安定した時点で、作製した乳化液重量の2%を反応槽へ10分間かけて添加し、その後、過硫酸アンモニウム5質量部をイオン交換水で5倍に希釈して、やはり10分間かけて反応槽へ添加し、20分間保持した。次いで、残りの乳化液を3時間かけて反応槽へ添加し、添加終了後、更に3時間保持して反応を完了させた。得られた樹脂の重量平均分子量は32000、平均粒子径は215nmであった。
【0110】
−離型剤分散液の調製−
POLYWAX725(ベーカーペトロライト社製): 30質量部
カチオン性界面活性剤(サニゾールB50:花王(株)製): 2質量部
イオン交換水: 70質量部
上記成分を120℃に加熱して、高圧型ホモジナイザーで50MPaで処理し、速やかに冷却してワックス分散液を得た。分散したワックスの平均粒径は250nmであった。
【0111】
−着色剤分散液(1)の調製
固形分35%のシアン顔料(大日精化(株)製、Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン))からなるウェットケーキ顔料85質量部と、10%イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬)水溶液20質量部を円筒容器に秤量し、ラボ用ウルトラタラックスで7000rpmのせん断を1時間に渡って加え、予備解砕を行った。これに、イオン交換水を加えて分散に適した粘度に調整した後、0.3mmジルコニアビーズを充填したビーズミルで24時間の分散を行い、体積平均粒径137nmの着色剤分散液1を得た。
【0112】
−トナー1の調製−
反応槽内に下記成分を投入し、十分に攪拌混合した。
イオン交換水: 300質量部
樹脂分散液: 135質量部
着色剤分散液(1): 20質量部
離型剤分散液: 30質量部
その後、ウルトラタラックスでせん断を加えながら、凝集剤としてポリ塩化アルミニウム1%水溶液18質量部を徐々に添加した。凝集剤の添加に連れてスラリーの粘度が上昇したため、ウルトラタラックスの回転数を最大7000rpmまで上昇させて、添加終了後さらに5分間の分散処理を行った。
【0113】
このスラリーを、十分な攪拌下で徐々に昇温し、48℃で2時間保持したところ、凝集粒子の体積平均粒径が5.4μmとなった。ここで、新たに樹脂分散液70質量部を10分間かけて緩やかに添加し、1時間保持したところ、凝集粒子の体積平均粒径は6.0μmであった。次いで、反応槽内のpHを7.0に調整した後、95℃まで緩やかに昇温して4時間保持し、凝集粒子の合一を行った後、40℃まで冷却して体積平均粒径6.1μmのトナー粒子分散液を得た。
【0114】
得られたトナー粒子分散液は、20μmのナイロンメッシュで濾したあと固液分離し、トナー重量の5倍のイオン交換水による10分間のリスラリーと、固液分離を5回繰り返して十分に洗浄した。さらに、トナーケーキを40℃の真空乾燥機で24時間乾燥し、トナー1を得た。
【0115】
このトナーを、透過型電子顕微鏡で観察し、画像解析したところ、長径500nm以上の着色剤凝集体を含み、粒子体積の50%以上が着色剤で占められる粒子の割合は、1/1000個、トナー内部の着色剤凝集体の平均径は153nmであった。
【0116】
<実施例2>
−着色剤分散液(2)の調製−
固形分25%のMagenta顔料(C.I.Pigment Red 122)のウェットケーキ顔料120質量部と、10%ノニオン性界面活性剤(ノニポール400:三洋化成(株)製)水溶液20質量部を円筒容器に秤量し、ラボ用ウルトラタラックスで7000rpmのせん断を20分間加え、予備解砕を行った。これに、イオン交換水を加えて分散に適した粘度に調整した後、0.3mmジルコニアビーズを充填したビーズミルで24時間の分散を行い、体積平均粒径141nmの着色剤分散液2を得た。
【0117】
実施例1で用いた着色剤分散液(1)の代わりに上記着色剤分散液(2)を用いた以外は実施例1と同様にしてトナー2を調製し、透過型電子顕微鏡で観察して画像解析したところ、長径500nm以上の着色剤凝集体を含み、粒子体積の50%以上が着色剤で占められる粒子の割合は、5/1000個、トナー内部の着色剤凝集体の平均径は163nmであった。
【0118】
<実施例3>
−着色剤分散液(3)の調製−
シアン顔料(大日精化(株)製、Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン))からなる顔料粉体30質量部と、10%イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬)水溶液20質量部と、イオン交換水50質量部を円筒容器に秤量し、ラボ用ウルトラタラックスで7000rpmのせん断を20分間加え、予備解砕を行った。これをジルコニアビーズを充填したビーズミルに投入して24時間の分散を行い、体積平均粒径160nmの着色剤分散液(3)を得た。
【0119】
実施例1で用いた着色剤分散液(1)の代わりに上記着色剤分散液(3)を用いた以外は実施例1と同様にしてトナー3を調製し、透過型電子顕微鏡で観察して画像解析したところ、長径500nm以上の着色剤凝集体を含み、粒子体積の50%以上が着色剤で占められる粒子の割合は、8/1000個、トナー内部の着色剤凝集体の平均径は220nmであった。
【0120】
<実施例4>
−着色剤分散液(4)の調製−
固形分35%のシアン顔料(大日精化(株)製、Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン))からなるウェットケーキ顔料85質量部と、10%イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬)水溶液20質量部とを円筒容器に秤量し、これに、0.3mmジルコニアビーズを充填したビーズミルで36時間の分散を行い、体積平均粒径137nmの着色剤分散液(4)を得た。
【0121】
実施例1で用いた着色剤分散液(1)の代わりに上記着色剤分散液(4)を用いた以外は実施例1と同様にしてトナー4を調製し、透過型電子顕微鏡で観察して画像解析したところ、長径500nm以上の着色剤凝集体を含み、粒子体積の50%以上が着色剤で占められる粒子の割合は、8/1000個、トナー内部の着色剤凝集体の平均径は155nmであった。
【0122】
<比較例1>
−着色剤分散液(5)の調製−
シアン顔料(大日精化(株)製、Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン))からなる顔料粉体30質量部と、10%イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬)水溶液20質量部と、イオン交換水50質量部を円筒容器に秤量し、これをジルコニアビーズを充填したビーズミルに投入して24時間の分散を行い、体積平均粒径160nmの着色剤分散液(5)を得た。
【0123】
実施例1で用いた着色剤分散液(1)の代わりに上記着色剤分散液(5)を用いた以外は実施例1と同様にしてトナー5を調製し、透過型電子顕微鏡で観察して画像解析したところ、長径500nm以上の着色剤凝集体を含み、粒子体積の50%以上が着色剤で占められる粒子の割合は、13/1000個、トナー内部の着色剤凝集体の平均径は220nmであった。
【0124】
<実施例5>
−着色剤分散液(6)の調製−
固形分35%のシアン顔料(大日精化(株)製、Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン))からなるウェットケーキ顔料85質量部と、10%イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬)水溶液20質量部を円筒容器に秤量し、ラボ用ウルトラタラックスで7000rpmのせん断を20分間加え、予備解砕を行った。これに、イオン交換水を加えて分散に適した粘度に調製した後、0.3mmジルコニアビーズを充填したビーズミルで8時間の分散を行い、体積平均粒径210nmの着色剤分散液(6)を得た。
【0125】
実施例1で用いた着色剤分散液(1)の代わりに上記着色剤分散液(6)を用いた以外は実施例1と同様にしてトナー6を調製し、透過型電子顕微鏡で観察して画像解析したところ、長径500nm以上の着色剤凝集体を含み、粒子体積の30%以上が着色剤で占められる粒子の割合は、6/1000個、トナー内部の着色剤凝集体の平均径は311nmであった。
【0126】
<比較例2>
−着色剤分散液(7)の調製−
シアン顔料(大日精化(株)製、Pigment Blue 15:3(銅フタロシアニン))からなる顔料粉体30質量部と、10%イオン性界面活性剤ネオゲンRK(第一工業製薬)水溶液20質量部と、イオン交換水50質量部を円筒容器に秤量し、これをジルコニアビーズを充填したビーズミルに投入して36時間の分散を行い、体積平均粒径162nmの着色剤分散液(7)を得た。
【0127】
実施例1で用いた着色剤分散液(1)の代わりに上記着色剤分散液(7)を用いた以外は実施例1と同様にしてトナー7を調製し、透過型電子顕微鏡で観察して画像解析したところ、長径500nm以上の着色剤凝集体を含み、粒子体積の50%以上が着色剤で占められる粒子の割合は、11/1000個、トナー内部の着色剤凝集体の平均径は210nmであった。
【0128】
−現像剤の調製−
上記トナー1からトナー7を用いて、それぞれトナー50質量部に対し疎水性シリカ1質量部を添加し、サンプルミルで30秒間の外添処理を行い、外添トナー1〜5を得た。この外添トナー5質量部を、ポリメチルメタクリレート(綜研化学社製:重量平均分子量80000)を1質量%コートした体積平均粒径50μmのフェライトキャリア95質量部と十分に攪拌混合し、静電荷現像剤1から静電荷現像剤7を得た。
【0129】
−現像剤の評価−
得られた上記静電荷像現像剤1から静電荷像現像剤7を用い、OHPシート上にトナー量4.5g/mの4×4cmの未定着像を富士ゼロックス社製DocuCentre Color A450改造機(定着機をはずしても出力できるようにしたもの)を用いて作製し、富士ゼロックス社製DocuCentre Color A450の定着ユニットにて100mm/秒、定着ロール表面温度が160℃になるようにして定着した。OHP画像の光透過性については、全自動ヘイズメーター(TC−HIII DP型、東京電色社製)を用いて全透過光に対する散乱光の割合をJIS K7105:81「プラスチックの光学的特性試験方法」に準拠して測定した。本発明では、ヘイズ値が20%未満を許容できるものとして評価した。
【0130】
また、異常トナーの多寡が影響する非画像部へのかぶりについては、現像剤1〜5を富士ゼロックス社製DocuCentre Color A450にて、4×4cmのベタ画像を有するA4の用紙(富士ゼロックス社製P紙)を1000枚出力し、画像の背景部に現れるかぶりの量をグレードで確認した。かぶりのグレードについては、1000枚目の出力画像上にある異常トナーのかぶりの数を数え2個までを許容とした。
【0131】
表1に、着色剤分散液中の着色剤凝集体の平均径、トナー内部の着色剤凝集体の平均径、長径500nm以上の着色剤凝集体を含み、粒子体積の50%以上が着色剤で占められる粒子の割合(個/1000個)、ヘイズ値、かぶりの結果を示した。
【0132】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0133】
本発明の静電荷現像用トナーは、特に電子写真法、静電記録法等の用途に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1A】本実施の形態において異常トナーと規定するトナー粒子の構成の一例を示す模式図である。
【図1B】本実施の形態において異常トナーと規定するトナー粒子の構成の他の一例を示す模式図である。
【図2】本実施の形態に用いた画像形成装置の構成例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0135】
200 画像形成装置、400 ハウジング、401,401a〜401d 電子写真感光体、402,402a〜402d 帯電ロール、403 露光装置、404,404a〜404d 現像装置、405a〜405d トナーカートリッジ、409 中間転写ベルト、410,410a〜410d 1次転写ロール、411 トレイ(被転写媒体トレイ)、413 2次転写ロール、414 定着ロール、415a〜415d、416 クリーニングブレード、500 被転写媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長径500nm以上1μm以下の着色剤凝集体を含み、粒子体積の50%以上が着色剤で占められるトナー粒子が、全トナー粒子に対して0.01質量%以上1質量%以下で含有することを特徴とする静電荷現像用トナー。
【請求項2】
トナー粒子内部に分散された着色剤凝集体の平均径が、100〜300nmであることを特徴とする請求項1に記載の静電荷現像用トナー。
【請求項3】
ウェットケーキ顔料を溶媒中に分散した着色剤分散液を用いることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の静電荷現像用トナー。
【請求項4】
少なくとも1種以上の樹脂粒子分散液と、1種以上のウェットケーキ顔料を溶媒中に分散した着色剤分散液を混合し、凝集粒子を形成する工程、該凝集粒子を加熱融合させる工程と、を含むことを特徴とする静電荷現像用トナーの製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の静電荷現像用トナーとキャリアを含有することを特徴とする静電荷現像用現像剤。
【請求項6】
潜像担体上に潜像を形成する潜像形成手段と、前記潜像を静電荷現像用現像剤を用いて現像する現像手段と、現像されたトナー画像を中間転写体を介してまたは介さずに被転写体上に転写する転写手段と、前記被転写体上のトナー画像を加定着する定着手段と、を含む画像形成装置であり、
前記静電荷現像用現像剤が、請求項5に記載の静電荷現像用現像剤であることを特徴とする画像形成装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−60721(P2010−60721A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224998(P2008−224998)
【出願日】平成20年9月2日(2008.9.2)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】