説明

非加熱含水植物油の搾油方法とその含水植物油

【課題】 乾燥した植物の種子を原料とする含水植物油を製造し、界面活性剤を使用せずに水と油を混合させ、生態環境を浄化することと自然環境汚染を防止すること。
【解決手段】 植物油の原料となる乾燥植物種子に含水し搾油することで、含水植物油、或いは、希釈した有機油性水の産業用エネルギー素材を作り出し課題を解決できた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
乾燥した植物の種子を原料とする非加熱含水植物油の製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から伝わる植物油の搾油法は、乾燥させた植物の種子から直接植物油成分を搾り出す手法が取られ、種子に直接圧力を掛け搾油する方法や、又は、種子を破砕して圧力を掛け搾油する方法、或いは又、種子を破砕し遠心分離機に掛け搾油する方法など、その手段は枚挙にいとまないほど多岐にわたる。
更に、植物種子に含水し搾油する方法としては、乾燥させた植物の種子をセイロの中に入れて加熱し、蒸し上げた後に搾油し水分を取り除く方法が取られているが、非加熱含水植物油としては搾油されていない。
【特許文献2】特願2007−261370号
【非特許文献1】1910年刊「佐世保発達史」北島榮助著から「寄稿序文、松浦厚識著」、1959年刊「区別と同一性理論」黒田寛一著、1975年刊「逆転の発想」糸川英夫著などを参考にする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来から、植物油は水と直接混合しないとされることから、有機物としての化粧品や食料品などの製造に必要とされる、水と植物油を混合する場合には、同じ有機性油の植物油や動物油、或いは、無機性油の工業油などから、目的に応じた有効成分を特定し人為的に合成した界面活性剤が用いられてきた。しかしながら、これらの界面活性剤を使用した化粧品などでは、皮膚自体に引き起こされるいろいろな障害や、皮膚から浸透した有害物質が体内に蓄積し、多くの生態にアトピーなどの弊害をもたらしているとされている。又、食料品などに使用される場合においても、界面活性剤の成分が体内に蓄積し多くの疾病などの原因ともなっているとされる。
しかしながら、界面活性剤が生態環境に多くの弊害を起こしているとされるも、作られる目的が多種多様にわたることから、その特定された成分も又多種多様にわたり、アトピーや疾病などの原因を特定することが困難とされている。
【0004】
又一方で、化石燃料等の燃焼が多くの炭酸ガスを発生することから引き起こすとされている、化石燃料を含む工業油の環境汚染問題、地球温暖化問題を解決する方法として、水と工業油を混合させるエマルジョンエネルギーの開発が推奨されている。
然るに、その水と工業油を混合する場合にも、界面活性剤が用いられたエマルジョンエネルギーが作られているが、炭酸ガスの発生量を低減する効果はあるとされるも、すぐに水と油の分離を引き起こす欠点があった。
そこで本発明は、人体に悪影響を与えない有機油の中でも、乾燥した植物種子の原料に水を含浸させ搾油する、含水植物油の搾油方法を開発することで、生態に有害となる界面活性剤を一切使用することのない、安全で安心な生態環境を創造し、合わせて環境汚染問題、地球温暖化問題の解決に寄与することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明1は、乾燥した植物の種子を原料とし、該原料に水を含浸後搾油することを特徴とする非加熱含水植物油の搾油方法およびその含水植物油である。本発明2は、請求項1に記載の乾燥した植物の種子を原料とし、該原料に水を含浸させる装置を付設、或いは内蔵する非加熱搾油装置およびその含水植物油である。本発明3は、上記含水植物油を、水若しくは他の植物油、或いは又、動物油、更には又、工業油と混合することを特徴とする請求項1に記載の使用方法およびその含水植物油である。
【0006】
然るに、この場合において、含水有機油の搾油に使用される原料としては、同じ有機性油である魚類油、或いは、他の動物油でも良いが、循環性があり再生産率も高く、又、極めて含水率が高い乾燥した植物種子を用いる。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、乾燥した植物の種子を原料とし、該原料に水を含浸させ、然る後に、搾油することで含水率の高い含水植物油が製造され、それ自体が水と植物油が、他の油性成分を特定して造られる界面活性剤を使用することなく直接混合していることを意味している。
又、植物油は他の植物油とも容易に混合する性質を持っていることから、含水植物油は、水と他の植物油を混合する必要のある場合の化粧品や食料品を、界面活性剤を使用することなく、安全で安心な製品として製造することができるようになった。
一方で又、植物油は同じ有機油の動物油、或いは、無機油の工業油とも容易に混合する性質を持っていることから、水と工業油との混合の場合においても、界面活性剤を使用することなく、水と油が分離し難い含水工業油エマルジョンエネルギーを製造することができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明では、従来からの植物油の搾油法が、植物の種子を乾燥させることによって直接に、或いは、粉砕して搾油する場合の乾燥の必要性に着目した。
【0009】
一方で、採果直後の植物種子より乾燥した植物種子からの搾油が、より上質な植物油を得られるとされることから、種子を乾燥させる期間、即ち、水分の蒸発期間にも光合成による油成分の生成が行われていると考えられ、乾燥した種子の方が良質の油成分を内蔵し、且つ、もともとから種子自体には含水性があり、内蔵する水分が蒸発した後には多くの空隙が表皮から内部へ形成されていることにも着目した。
【0010】
然るに、従来からの植物油は、もともと乾燥した種子から直接搾油することで製造され、より含水率の低い植物油が良質とされている。
【0011】
しかしながら、本発明の課題が界面活性剤を使用せず植物油と水、或いは又、動物油、更には又、工業油と水とを混合することであるから、乾燥した植物種子の表皮および内部に内蔵する空隙に水を含浸させた後に、即ち、水を内浸した植物の種子から油成分を搾ることで、油成分とより多くの水分の混合態を意味する含水率の高い、即ち、水と植物油が直接混合した含水植物油が得られる。
【0012】
この場合の含水に要する時間は、常温の場合では24時間以上を経過することで、焙煎しない種子は発芽する可能性もあることから、含水の所要時間は24時間以内がよく、又、この含水所要時間の多寡は搾油される含水植物油の含水率に正比例する。
【0013】
又一方で、乾燥種子の含浸能力以上の水量を持ってする、即ち、含水に用いる水共々搾油して水と植物油の混合液とする方法もあるが、この場合は油性より水性の方が内容量として優位となることから、水の油分含有率分野を形成する。
【0014】
又、前記〔0005〕に記述した搾油装置に付設する乾燥種子に水を含浸させる装置は、従来からの搾油装置に組み込んだ含水装置でも良いが、別途に設けた器材で乾燥種子に水を含浸させた原料を用いて、従来からの搾油装置で搾油しても良い。
【0015】
一方で又、重油などの工業油と水とを混合する場合においても、油分同士は容易に混合する性質を持っていることから、前記に記述した方法で搾油した含水植物油を混入し、工業油の含水エマルジョンエネルギーを作ることができる。
以下、本発明に係る実証実験例を説明する。
【実施例】
【0016】
前記に記述した植物油の一種である含水ゴマ油を作るために、焙煎をしない白ゴマの乾燥種子40gを、陶磁器製乳鉢(直径20cm)に入れ、水道水50ccを注ぎ10分間含浸させた後、水を切り(25cc排出)、乳棒で圧力を掛けながら30分間すり潰した。そこには粘性のあるゴマ微粉末の固まりが出来た。
続いて、該粘性のあるゴマ微粉末の固まりを、陶磁器製の皿に置いた布の上に取り出し包み込んで、手で圧力を掛けながら搾ると乳白色のペースト状をした含水ゴマ油約0.5cc程度ができた。
【0017】
更に、前記〔0016〕に記述した内容と同じ方法で、焙煎をしない白ゴマの乾燥種子40gを、陶磁器製乳鉢(直径20cm)に入れ水道水50ccを注ぐ。
更に、20時間含浸させた後水を切り(10cc排出)、乳棒で圧力を掛けながら50分間すり潰した。そこには前記〔0016〕で得られた粘性を持ったゴマ超微粉末の固まりよりも、より粘性が強いゴマ超微粉末の固まりができた。
続いて、該ゴマ超微粉末の固まりを陶磁器製の皿に置いた布の上に取り出し包み込み、手で圧力を掛けながら搾ると乳白色のペースト状をした含水ゴマ油が約1cc程度できた。
【0018】
続いて、別のガラス容器(250cc入り)に入れた水道水20ccの中に、上記〔0016〕により得られた含水ゴマ油約0.5ccを滴下すると、含水ゴマ油は水道水の表面に浮遊するも、撹拌すると上部より下部の方に向かい徐々に乳白色の透明度が高くなる水と混合した含水ゴマ油の溶液約20.5ccができた。
【0019】
又、別の透明なガラス容器(250cc入り)に入れた椿油2ccの中に、上記〔0017〕で得られた含水ゴマ油3滴(約0.3cc)を滴下すると、含水ゴマ油は椿油の中に沈殿浮遊するも、水道水1ccを注ぎ込み撹拌すると直ちに混合し、表面に透明な油性層を持ちながら内蔵されている乳白色の部分とが重層する椿油と含水ゴマ油と水との重層混合溶液ができた。
【0020】
更に、別の透明なガラス容器(250cc入り)に入れたA重油2ccの中に、上記〔0017〕で得られた含水ゴマ油3滴(約0.3cc)を滴下すると、含水ゴマ油はA重油の中に沈殿するも、水道水1ccを注ぎ込み撹拌すると直ちに混合した。その結果は、透明な油性層を表面に持ちながら白色濃淡の層を形成する乳白色ゴマ油の溶液と、そこに内蔵され浮遊する粒状化した物質を含む薄茶色A重油とが重層する、A重油と含水ゴマ油と水との重層混合溶液となった。
【0021】
続いて、上記〔0020〕で得られたA重油と含水ゴマ油と水との混合液を布にしみこませ、ライターで火を付けると布は勢いよく燃え上がり燃え尽きた。
【産業上の利用可能性】
【0022】
前記〔実施例〕の〔0018〕〔0019〕に見る混合例のように、製造される含水植物油が化学的な合成技術とは一切無縁であることから、水と植物油に含まれる成分以外の成分を一切含んでいない。
そのことから、水と含水ゴマ油、或いは、水と含水ゴマ油と椿油との重層混合液は、界面活性剤を使用しない安心で安全な重層する植物油エマルジョンとして理解される。
更に、希釈することも可能であることから、考えられる産業上の利用可能性は、水を必要とする産業および油を必要とする産業の双方向に利用の可能性があり、安心で安全な生態環境の創造や環境汚染問題の解決にも寄与する。
【0023】
又、同様に前記〔実施例〕の〔0018〕〔0019〕に見る混合例のように、化学反応を起こさない理学に基づく方法として、安心で安全な生産増を目的とした農林水産の一次産業から、環境浄化や経済コストを下げることを目的とした二次産業への応用、或いは、安心で安全な環境浄化を目的とした三次産業への応用も利用の可能性があり、界面活性剤を使用しない安全、安心な生態環境を創造することにも寄与する。
【0024】
更には、前記〔実施例〕の〔0020〕〔0021〕に見る混合と燃焼例は、A重油とゴマ油と水の一体化燃焼実験であることから、該混合溶液はエネルギーとなるA重油とゴマ油と水との重層エマルジョンエネルギーとして理解され、地球温暖化問題の解決にも寄与する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥した植物の種子を原料とし、該原料に水を含浸後搾油することを特徴とする植物油の非加熱含水搾油方法およびその含水植物油。
【請求項2】
請求項1に記載の乾燥した植物の種子を原料とし、該原料に水を含浸させる装置を付設、或いは、内蔵することを特徴とする植物油の非加熱含水搾油装置およびその含水植物油。
【請求項3】
上記含水植物油を、水若しくは他の植物油、或いは又、動物油、更には又、工業油と混合することを特徴とする請求項1に記載の含水植物油の使用方法およびその含水植物油。

【公開番号】特開2010−144161(P2010−144161A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−336191(P2008−336191)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(507330741)株式会社エム、エス、ティ創合研究所 (2)
【Fターム(参考)】