説明

非増殖性糖尿病網膜症の進行を防止しまたはその進行速度を低下させる非外科的方法および眼の他の症状を治療する非外科的方法

非増殖性糖尿病網膜症の増殖型糖尿病網膜症への進行を防止しまたはその進行速度を低下させる非外科的方法であって、非増殖性糖尿病網膜症に罹患している患者の硝子体中に、手術なしで、後部硝子体を剥離させて、前記患者の増殖性糖尿病網膜症への進行を防止または低下させるのに十分有効な量のセリンプロテアーゼ酵素を前記患者の硝子体中に投与することからなる方法。網膜虚血、網膜の炎症、網膜浮腫、牽引性網膜剥離、牽引性網膜症、硝子体出血および牽引性黄斑症などの眼疾病のうち一種または二種以上に罹患している患者の硝子体中に、その特定の眼疾病を軽減または治療するのに有効な量のセリンプロテアーゼ酵素を投与することによって、前記疾病を非外科的に治療する方法も開示する。プラスミン、マイクロプラスミンおよびミニプラスミンが好ましいセリンプロテアーゼ酵素であり、プラスミンが最も好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の硝子体中に、外科手術なしで後部硝子体を剥離させるのに十分有効な量のセリンプロテアーゼ酵素を投与することによって、非増殖性糖尿病網膜症の増殖型糖尿病網膜症への進行を防止しまたはその進行速度を低下させる非外科的方法および眼の他の症状例えば網膜虚血、網膜の炎症、網膜浮腫、黄斑円孔、牽引性網膜剥離、牽引性網膜症、硝子体出血および牽引性黄斑症を治療する非外科的方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスミン、マイクロプラスミンおよびミニプラスミンを含むセリンプロテアーゼ酵素類は古くから知られている。米国特許第2,624,691号および同第3,234,106号はプラスミンの血液からの精製法を開示している。米国特許第4,774,087号は、高pHにおけるプラスミン/プラスミノーゲンの作用によって産生されるマイクロプラスミンとマイクロプラスミノーゲンを開示している。
【0003】
米国特許第5,304,118号は、プラスミンを硝子体液中に導入して後部硝子体を剥離させ、その硝子体を取り出し次いで代わりに滅菌食塩水を入れることによって、眼の硝子体を除く方法を開示している。
【0004】
米国特許第5,637,299号は、脱グルコシル化型のプラスミノーゲンによって、血栓溶解療法を強化する方法を開示している。米国特許第5,722,428号は、IV型コラーゲンおよびフィブロネクチンを特異的に分解して部分的または完全な後部硝子体剥離を促進する酵素を使用して、後部硝子体を剥離させる方法を開示している。米国特許第6,355,243号は、カテーテルによって、活性プラスミンを血餅部位に直接投与することによって行う血栓溶解療法を開示している。米国特許第6,585,972号には、眼の硝子体のコラーゲンを架橋させて後部硝子体を網膜から分離させる方法が開示されている。米国特許第6,733,750号は、プラスミノーゲンおよびプラスミノーゲンアクチベーター酵素を含有する組成物を眼の眼腔に導入することによって、後部硝子体を剥離させて硝子体中の血餅を溶解する方法を開示している。上記組成物は、処置不能なまたは重篤な網膜の炎症を起こすことなく、後部硝子体を網膜から実質的に完全に剥離させかつ硝子体中の血餅を溶解すると報告されている。米国特許第6,787,135号は、硝子体の後部を剥離させるのに十分な量のプラスミンを、硝子体中に導入し、その硝子体を眼から機械的に剥離させ、代わりの流体を眼内に導入し次いで硝子体中の全メタロプロテアーゼ活性を低下させるのに十分な量のプラスミンを眼内に導入する方法を開示している。
【0005】
米国公開特許願第2002/0042652号は、後部硝子体を剥離させる組成物を眼に導入することによって、血管の増殖を阻止する方法を開示している。その組成物は、プラスミノーゲン、コラーゲン架橋剤および少なくとも一種のプラスミノーゲンアクチベーターを含有している。その組成物は、硝子体を架橋させかつ網膜の炎症を起こすことなく後部ガラス体を網膜から実質上完全にまたは部分的に剥離させるのに有効な量を硝子体中に導入される。米国公開特許願第2002/0139378号は、後部皮質性硝子体を眼の網膜から分離する方法を開示している。この方法は、プラスミンを、眼の硝子体液中に導入するステップを含んでいる。そのプラスミンは注射または徐放装置によって導入できる。米国公開特許願第2002/0192794号には、血栓溶解療法を実施する際に使用できる可逆的に不活化された酸性化プラスミンの製造法が開示されている。米国公開特許願第2003/0026798号は、可逆的に不活化された酸性化プラスミンを含有する繊維素溶解性組成物を使用して、プラスミンを、血管の血栓閉塞部に局所送達できる血栓溶解法を開示している。米国公開特許願第2003/0113313号は、眼に成分を別個に導入して、硝子体-網膜の界面には皮質性硝子体の残渣が存在することなく後部硝子体を完全に剥離させる量のプラスミンを、眼中に生成させることによって血管の増殖を阻害する方法を開示している。この方法では、リジン-プラスミノーゲン、少なくとも一種の組換えプラスミノーゲンアクチベーターとサーモリシンおよび硝子体に空腔を生成させる気体のアジュバントの混合物を投与する。米国公開特許願第2003/0147877号は、眼の硝子体液を液化する方法を開示している。この方法は、プラスミンを眼の硝子体中に送達し次いでその硝子体とプラスミンを所定の期間インキュベートするステップを含んでいる。プラスミンは、注射または徐放装置によって導入することができかつ糖尿病網膜症、黄斑円孔、黄斑のしわ、眼内感染症、眼内異物および網膜剥離などの眼の症状を治療するのに使用できる。
【0006】
米国公開特許願第2003/0175263号(‘263)は、眼の硝子体中の全マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の活性を修飾する方法を開示している。酵素介助硝子体切除法も開示しており、その方法は、硝子体の後部を剥離させるのに十分な量のプラスミンを硝子体中に導入し、その硝子体を眼から機械的に切除し、代わりの流体を眼中に導入し次いでその眼中の代わりの流体中に、硝子体中の全メタロプロテアーゼの活性を低下させるのに十分な量のプラスミンを導入するステップを含んでいる。米国公開特許願(‘263)のパラグラフ6には、Fribergerの刊行物を引用して、色素基質化S-2251の加水分解反応によって1単位のプラスミン活性が測定されることが記述されそして好ましくは硝子体切除手術を実施した後の硝子体中のMMP活性を阻害するのに使用するプラスミンの量は1単位未満であると記述されている。‘263の要約には、その発明が、増殖性糖尿病網膜症を含む各種疾病の進行を阻害する方法を提供すると記述されている。高濃度を使用してPVD(後部硝子体の剥離)を起こさせ続いて短時間(30分間-2時間)のうちに内部制限膜(inner limiting membrane)を外科手術で除いた後に、1単位未満のプラスミンを使用して、増殖性糖尿病網膜症の進行を阻止している。したがって、この濃度のプラスミンは、PVDが薬剤や外科手術ですでに完了しているので、この例ではPVDを起こすことはできない。‘263のパラグラフ20には、この特許の米国特許第5,304,118号に記載の硝子体切除術を実施する方法において、硝子体を外科切除する前に、ガラス体の後部剥離を行うのに必要なプラスミンの量は、1単位と3単位の間のプラスミンであると記述されている。予想外のことであるが、本願出願人は、プラスミンを、硝子体中に注射し続いて外科手術を行うことなく硝子体中に保持させると、はるかに少量のプラスミンでPVDを起こさせることができることを発見したのである。本願出願人は、硝子体中に注射するプラスミンの量として、約0.5-約1000μgを使用し、好ましくは約1.0-500μg、より好ましくは約10-400μgそして最も好ましくは約50-200μを使用して、外科手術なしでPVDを起こさせることによって、非増殖性糖尿病網膜症の増殖型糖尿病網膜症への進行を防止するかまたはその進行速度を低下させる。‘263法による1単位は4.7国際単位(異なる基質)に等しい。したがって、<1「単位」は、4.7 IU未満と等しい。出願人のプラスミンは22.5μg/IUでありしたがって出願人の0.5-1000μgの範囲は0.02 IU-約44.4 IUに等しくまたは‘263の単位では、0.005-9.45 IUに等しい。本願出願人は、硝子体中に存在するMMPを不活化することによらずにPVDを起こすことによって非増殖性糖尿病網膜症の進行を防止またはその進行速度を低下させる。米国特許第5,304,118号(‘118)によれば、PVDを起こすには、1-3単位の間のプラスミンが必要である。‘263によれば、外科手術による硝子体切除の後、増殖性糖尿病網膜症の進行を阻害するため、眼内の代替流体中に注射するプラスミンは1単位未満である。‘263に関連して、本願出願人は、1単位未満のプラスミンを使用して、しかも外科手術なしでPVDを起こすことによって、非増殖糖尿病網膜症の進行を防止しまたはその進行速度を低下させる。
【0007】
米国特許願公開第2004/0081643号には、眼に組成物を導入して後部硝子体剥離を起こすことによって、血管の新生を阻害する方法が開示されている。その組成物は、少なくともとりわけプラスミンおよびサーモライシンからなる群から選択される少なくとも二種の化合物を、網膜の炎症を起こすことなく後部硝子体の網膜からの剥離を事実上完全にまたは部分的に起こさせかつ硝子体中の血餅を溶解するのに十分な量で含有している。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、外科手術なしで後部硝子体の剥離を起こさせるのに十分有効な量のセリンプロテアーゼ酵素を、非増殖性糖尿病網膜症に罹患している患者の硝子体中に投与することによって、非増殖性糖尿病網膜症から増殖型糖尿病網膜症への進行を防止しまたはその進行速度を低下させる非外科的方法を提供するものである。好ましくは、前記セリンプロテアーゼ酵素は、プラスミン、マイクロプラスミンおよびミニプラスミンから選択される。より好ましくは、セリンプロテアーゼ酵素はプラスミンであり、そしてこのプラスミンはヒトの血液から分画されたプラスミノーゲンから得られる。そのセリンプロテアーゼ酵素は、硝子体中に注射されるプラスミンの約0.5 -1000μgに等価の量で、好ましくは約1.0-500μgに等価の量で、より好ましくは約10-400μgに等価の量でおよび最も好ましくは約50-200μgに等価の量で、硝子体中に投与される。この方法は、硝子体を取り出す(例えば硝子体切除法)こと無く実行されしかもMMPを不活化する必要もない。
【0009】
また、本発明は、眼の疾病すなわち網膜虚血、網膜の炎症、網膜浮腫、黄斑円孔、牽引性網膜剥離、牽引性網膜症、硝子体出血および牽引性黄斑症の内一つ以上に罹患している患者の硝子体に、これらの疾病を軽減するのに有効な量のセリンプロテアーゼ酵素を投与することによって、これら疾病を治療する非外科的方法も提供するものである。前記セリンプロテアーゼは、最も好ましくは、ヒトの血液から分画されたプラスミノーゲンから得られるプラスミンである。この方法に使用されるセリンプロテアーゼ酵素は、糖尿病網膜症の場合と同じ濃度範囲と方法で投与される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、非増殖性糖尿病網膜症に罹患している患者の硝子体に、外科手術なしで後部硝子体を剥離させるのに十分有効な量のセリンプロテアーゼ酵素を投与することによって、非増殖性糖尿病網膜症から増殖型糖尿病網膜症への進行を、非外科的に防止しまたはその進行速度を低下させるのに有用である。
【0011】
本発明に使用されるセリンプロテアーゼ酵素は、プラスミン、マイクロプラスミンもしくはミニプラスミン、または単独でまたは組織プラスミノーゲンアクチベーター(tpa)以外の活性化剤と組み合わせて投与され、別の方式で、眼の硝子体中で、活性のプラスミン、マイクロプラスミンまたはミニプラスミンを放出できるどんな形態のプラスミンでもよい。より好ましくは、このプラスミン、マイクロプラスミンまたはミニプラスミンは、ヒトのプラスミン、マイクロプラスミンまたはミニプラスミンから誘導すべきであるかまたはヒトのプラスミン、マイクロプラスミンまたはミニプラスミンと構造および機能が同一でなければならない。最も好ましくは、本発明に使用されるセリンプロテアーゼ酵素は、ヒトの血液から誘導されるかまたはヒトのプラスミンもしくはプラスミノーゲン(生の不活性前駆体)を産生するように遺伝子組換えがなされた酵母、細菌または単細胞植物または哺乳類の細胞中にヒトプラスミンを発現することによって誘導されるヒトプラスミンでなければならない。好ましい方法では、このセリンプロテアーゼ酵素は、硝子体中に注射されるプラスミンの約0.5-約1000μgの量で、好ましくは約1.0-500μgの量で、より好ましくは約10-400μgの量でそして最も好ましくは約50-200μgの量で投与されて、PVDを起こすはずである。
【0012】
本発明の方法は、注射によってまたはカニューレを通じてセリンプロテアーゼ酵素を、硝子体に投与することによって実行できる。硝子体内投与の好ましい方式は、硝子体腔内の複数部位への注射である。硝子体内投与より好ましい方式は、標的組織のごく近くへの注射である。硝子体内投与の最も好ましい方式は、患者の頭部を上方に向けて行う硝子体中央への注射である。
【0013】
非増殖性糖尿病網膜症の進行を防止しまたはその進行速度を低下させる方法に加えて、セリンプロテアーゼ酵素は、眼の疾病すなわち網膜虚血、網膜の炎症、網膜浮腫、黄斑円孔、牽引性網膜剥離、牽引性網膜症、硝子体出血および牽引性黄斑症の内の一つ以上に罹患している患者の硝子体に、その特定の眼の疾病を治療するのに有効な量のセリンプロテアーゼ酵素を投与することによって、これら疾病を非外科的に治療するのに使用することもできる。非増殖性糖尿病網膜症の進行を防止しまたはその進行速度を低下させる方法の場合と同様に、セリンプロテアーゼ酵素、その濃度、投与方法は、これら疾病を治療する場合、同じ方式で変更することができる。
【0014】
本発明の方法は、この酵素を含有する溶液の注射;この酵素およびpHを制御するための追加の添加剤を含有する溶液の注射;この酵素および浸透圧重量モル濃度を制御するための追加の添加剤を含有する溶液の注射;この酵素およびpHとイオン強度と浸透圧重量モル濃度を制御するための追加の添加剤を含有する溶液の注射;この酵素、およびJensen(米国特許第3,950,513号)が教示しているような、pHが変化している間、該酵素に安定性を付与する追加の添加剤を含有している溶液の注射;この酵素、ならびに凍結乾燥ケークの外観、水もしくは水と非水溶媒の混合物もしくは非水溶媒のみを使う再構成の時間および酵素の活性の保存を含むセリンプロテアーゼ酵素の最適の凍結乾燥を行う追加の添加剤を含有する溶液の注射によって、セリンプロテアーゼ酵素を硝子体中に投与することによって実行できる。
【0015】
本発明の方法は、拡散剤(spreading agent)(すなわちVitrase(登録商標)、ヒアルロニダーゼなど)を硝子体中に注射してから30分間-2時間後に実施する、セリンプロテアーゼ酵素を含有する溶液の注射;この酵素およびpHを制御するための追加の添加剤を含有する溶液の注射;この酵素および浸透圧重量モル濃度を制御するための追加の添加剤の注射;この酵素およびpHとイオン強度と浸透圧重量モル濃度を制御するための追加の添加剤を含有する溶液の注射;この酵素、およびJensen(米国特許第3,950,513号)が教示しているような、pHが変化している間、該酵素に安定性を付与する追加の添加剤を含有している溶液の注射;この酵素、ならびに凍結乾燥ケークの外観、水もしくは水と非水溶媒の混合物もしくは非水溶媒のみを使う再構成の時間および酵素の活性の保存を含むセリンプロテアーゼ酵素の最適の凍結乾燥を行う追加の添加剤を含有する溶液の注射によって、セリンプロテアーゼ酵素を硝子体中に投与することによって実行できる。
【0016】
本発明の方法は、さらに、対象の酵素を含有するミセル溶液の注射;対象の酵素およびpHとイオン強度を制御する添加剤を含有するミセル溶液の注射;対象の酵素およびJensenが教示しているような(米国特許第3,950,513号)pHの変化に対して酵素を安定化する添加剤を含有するミセル溶液の注射;ミセルの界面活性剤組成物が、好ましくは正電荷のミセルを提供し、より好ましくは負電荷のミセル生成しそして最も好ましくは非電荷(すなわち中性)のミセルをもたらす対象の酵素を含有するミセル溶液の注射;ミセルの界面活性剤組成物が主としてモノマーの界面活性剤分子である対象の酵素を含有するミセル溶液の注射;ミセルの組成物が主として一種もしくは複数種の非イオンポリマー界面活性剤(例えばTween系、Span系、pluronic系、Tetronic系、Myj、Brijおよびポリエチレングリコール(PEG))である対照の酵素を含有するミセル溶液の注射によって、セリンプロテアーゼ酵素を、硝子体中に投与することによって実行できる。
【0017】
本発明の方法は、さらに、酵素が固体の懸濁された粒子でもよくもしくは粒子懸濁液の溶液相中に溶解して存在していてもよい酵素を含有する懸濁液またはその酵素だけの懸濁液の注射;酵素が固体の懸濁された粒子でもよくもしくは粒子懸濁液の溶液相中に溶解して存在していてもよい酵素を含有する懸濁液またはその酵素だけの懸濁液およびその懸濁液の溶液相のpHを制御する添加剤の注射;酵素が固体の懸濁された粒子でもよくもしくは粒子懸濁液の溶液相中に溶解して存在していてもよい酵素を含有する縣濁液またはその酵素だけの懸濁液およびその懸濁液の溶液相の浸透圧重量モル濃度を制御する添加剤の注射;酵素が固体の懸濁された粒子でもよくもしくは粒子懸濁液の溶液相中に溶解して存在していてもよい酵素を含有する懸濁液またはその酵素だけの懸濁液およびその懸濁液の溶液相のpHとイオン強度と浸透圧モル濃度を制御する添加剤の注射;酵素が固体の懸濁された粒子でもよくもしくは粒子懸濁液の溶液相中に溶解して存在していてもよい酵素を含有する懸濁液またはその酵素だけの懸濁液およびJensen(米国特許第3,950,513号)が教示しているような、pHが変化している間、該酵素に安定性を付与する追加の添加剤の注射;酵素が固体の懸濁された粒子でもよくもしくは粒子縣濁液の溶液相中に溶解して存在していてもよい酵素を含有する懸濁液またはその酵素だけの懸濁液ならびに凍結乾燥ケークの外観、水もしくは水と非水溶媒の混合物もしくは非水溶媒のみを使う再構成の時間および酵素の活性の保存を含むセリンプロテアーゼ酵素の最適の凍結乾燥を行う添加剤の注射によって、セリンプロテアーゼ酵素を硝子体中に投与することによって実行できる。さらに、用語「懸濁液」は、固体粒子が連続液体相中に分散している分散液を意味するものである。またこれら分散液は、懸濁液を物理的に安定させかつその粒径を制御する特別な添加剤例えば当該技術分野で公知の界面活性剤やポリマーを必要とするものである。かような懸濁液の製造方法は当該技術分野で公知であり、各種教科書(すなわち、Remington,Martindale)、規則ガイドライン(すなわちUSP、EP、JP)および本願に引用されているすべての特許および刊行物を含む文献に記載されている。
【0018】
本発明の方法は、さらに、酵素を含有する凍結リポソーム溶液または酵素を含有する凍結乾燥リポソーム溶液から得られる活性酵素を含有するリポソーム溶液の注射;酵素を含有する凍結リポソーム溶液または酵素を含有する凍結乾燥リポソーム溶液から得られる活性酵素を含有するリポソームならびに内側水性相のpHが外側連続溶液相のpHと異なっていてもよいリポソーム溶液の水性相のpHを制御する添加剤の注射;酵素を含有する凍結リポソーム溶液または酵素を含有する凍結乾燥リポソーム溶液から得られる活性酵素を含有するリポソームならびにリポソーム溶液の浸透圧重量モル濃度を制御する添加剤の注射;、酵素を含有する凍結リポソーム溶液または酵素を含有する凍結乾燥リポソーム溶液から得られる活性酵素を含有するリポソームならびに凍結乾燥ケークの外観、水または水と非水溶媒の混合物または非水溶媒のみを使用する再構成の時間および酵素の保存を含むセリンプロテアーゼ酵素の溶液の最適の凍結乾燥を行う添加剤の注射;酵素を含有する凍結リポソーム溶液または酵素を含有する凍結乾燥リポソーム溶液から得られる活性酵素を含有するリポソームならびにpHの変化(Jansenが米国特許第3,950,513号に教示している)、イオン強度の変化および浸透圧重量モル濃度の変化に対して酵素を安定化する添加剤の注射;ならびに活性セリンプロテアーゼの不活性前駆体を含有するリポソームの注射によって、セリンプロテアーゼ酵素を硝子体中に投与することによって実行できる。各場合において、酵素は、リポソーム内に、リポソームの排除体積の外側に、またはリポソームの二重層の中と外側の両方に存在し、そしてさらに用語「リポソーム」は単一ラメラベシクル、マルチラメラベシクル、chocleateおよび「ニオソーム」ベシクル(ニオソームは、当該技術分野で、リン脂質の一般的な二重層ではなくてリン脂質の単層で安定化された非水性コアとして当該技術分野で知られている)を意味する。さらに、リポソーム溶液中の二重層の組成はこれらのセリンプロテアーゼ酵素を硝子体に送達する際にも要求される。さらに、リポソーム溶液の個々の粒子の大きさは80 nm未満から1000 nmを超える大きさまで変化してもよいと解される。最後に、この説明のリポソームは表面電荷が正電荷、負電荷または相対的に中性でもよいと解される。電荷を有するリポソームの場合、個々のリン脂質の部分は、プラスミンと十分に複合しているので、硝子体に注射するため、プラスミンを、pH、浸透圧重量モル濃度および/またはトニシティ(tonicity)の変化に対して安定化すると考えられる。
【0019】
本発明の方法はさらに、対象の酵素を含有する水中油型乳濁液の注射;対象の酵素を含有する水中乳濁液ならびにpH、イオン強度および浸透圧重量モル濃度を制御する添加剤の注射;対象の酵素を含有する水中油型乳濁液ならびにJensen(米国特許第3,950,513号)が教示しているようなpHの変化に対する酵素の安定化およびイオン強度の変化に対する酵素の安定化を行う添加剤の注射;油相が対象の酵素をpHの変化に対して安定化する、対象の酵素を含有する水中油型乳濁液の注射によって、セリンプロテアーゼ酵素を硝子体内に投与することによって実行できる。酵素は、これら水中油型乳濁液の連続水性相中におそらく存在していると解される。しかし、当業者は、酵素が油中水型乳濁液にも添加することができ、酵素は連続非水性相中に懸濁された水ポケット中に存在しているであろうことが分かるであろう。その場合、各種の添加剤が、水性ポケットまたは連続非水性相中に存在していることも、本願に開示してある。
【0020】
本発明の方法は、さらに、対象の酵素を含有し迅速に溶解する錠剤の硝子体中への挿入;対象の酵素ならびに錠剤を製造する際に重要な特性すなわち圧縮性、潤滑性、硬度および密度を提供する添加剤を含有し迅速に溶解する錠剤の硝子体中への挿入;対象の酵素ならびにpHおよびイオン強度の変化に対して酵素を安定化する添加剤を含有し迅速に溶解する錠剤の硝子体中への挿入;対象の酵素ならびに活性酵素の放出期間を数分間から数時間まで制御する添加剤を含有し迅速に溶解する錠剤の硝子体中への挿入によって、セリンプロテアーゼ酵素を硝子体中に投与することによって実行できる。このような錠剤は、当該技術分野では知られており、寸法が、0.5 mm<直径<4 mmでありより好ましくは1.0 mm<直径<2 mmであり最も好ましくは1.25 mm<直径<1.75 mmであり長さは錠剤混合物中の薬剤量(酵素の濃度)で決まるMini Tabletがある。一般に、長さは10 mm未満であり、より好ましくは5 mm未満であり、最も好ましくは2 mm未満である。
【0021】
本発明の方法は、さらに、粉末として;pHおよびイオン強度を制御する添加剤を混合した粉末として;添加剤を混合しかつ非水性溶媒(例えば鉱油、ビタミンE、シリコーン油、ペルフルオロカーボン油、植物油、落花生油、サフラワー油、グリセリン)中に懸濁された粉末として;添加剤を混合しかつ眼に投与するため顆粒化された粉末として;添加剤を混合しかつエーロゾルで眼に投与するため顆粒化して篩かけするかまたは前記溶媒中に懸濁された粉末として、セリンプロテアーゼ酵素を硝子体中に投与することによって実行できる。
【0022】
上記実行方法はいずれも好ましい実行方法である。より好ましい実行方法は、透明溶液を眼に注射する方法であり、最も好ましい実行方法は、酵素をpHの変化に対して安定にする添加剤を含有する透明溶液を眼に注射する方法である。このような添加剤としては、限定されないが、ε-アミノカプロン酸、リジン、アルギニン、アルブミン、ヒト血清アルブミン、炭酸アンモニウムおよびそのほかJensenが教示しているもの(米国特許第3,950,513号)がある。
【0023】
上記製剤について興味深い追加事項は、注射した後に網膜を標的として進むように高密度の製剤を使用することである。例えば、仰向けに横臥している患者の場合、対象のセリンプロテアーゼ酵素を上記のどの製剤で注射しても、その溶液が周囲の硝子体液より有意に密度が高ければ、注射された溶液は網膜のほうに「沈降」するであろう。密度を容易に増大できる薬剤としては、可溶性X線造影剤(例えばイオヘキソール、イオジキサノール、イオメプロール、イオベルソルなど)、濃縮糖溶液(例えばスクロース)およびヒトに注射しても安全であることが分かっている重金属錯体(例えばMRI造影剤)がある。これら薬剤は注射用製剤の密度を増大することができ、そして本願の開示は、上記薬剤の使用に限定しているわけではなく、かような密度付加物質すべてを含むものである。
【0024】
上記製剤についてさらに興味深い追加事項は、注射したのち網膜に対して遅延拡散させるように粘性製剤を使用することである。例えば、仰向けに横臥している患者の場合、対象のセリンプロテアーゼ酵素を上記のどの製剤で注射しても、その溶液が周囲の硝子体液より有意に粘度が高ければ、注射された溶液は網膜の方に遅延拡散するであろう。粘度を容易に増大できる薬剤としては、可溶性X線造影剤(例えばイオヘキソール、イオジキサノール、イオメプロール、イオベルソルなど)、濃縮糖溶液(例えばスクロース)、可溶性ポリマー(例えばPVP、PVA、PEGなど)およびTetronicsやPluronicsなどのポリマー表面活性剤がある。これら薬剤は注射用製剤の粘度を増大することができ、そして本願の開示は、上記薬剤の使用に限定しているわけではなく、かような粘度付加物質すべてを含むものである。
【0025】
特にポリマー表面活性剤の場合、高濃度のこれら物質は、逆熱ゲル作用(reverse thermal gel effect)を起こすことができることが知られている。したがって、硝子体中に注射されて室温から体温(例えば37℃)に移行したとき、製剤は「ゲル化」して、酵素が硝子体内で速く拡散するのを阻害することができる。遅延拡散は、酵素が注射部位(すなわち注射針の通過跡)から移行せずに注射された部位に留まって、網膜および眼の中の他の表面に拡散することを保証するために重要である。
【0026】
上記実行方法の諸実施例として、セリンプロテアーゼ酵素は、下記表に示すように配合できる。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
【表3】

【0030】
【表4】

【0031】
【表5】

【0032】
【表6】

【0033】
【表7】

【0034】
【表8】

【0035】
【表9】

【0036】
【表10】

【0037】
【表11】

【0038】
【表12】

【0039】
【表13】

【0040】
【表14】

【0041】
【表15】

【0042】
表1-15は上記方法を実行するために許容できる製剤の詳細を示す。さらに、固体の錠剤を利用する製剤も本発明を実行するのに利用することができ、以下の表に示す。
【0043】
【表16】

【0044】
【表17】

【0045】
【表18】

【0046】
【表19】

【0047】
【表20】

表16-20に示す錠剤は、眼の硝子体に投与してから30分以内に活性酵素を放出する迅速溶解性錠剤である。
【実施例】
【0048】
以下の諸実施例は、本発明が、どのようにして、非増殖性糖尿病網膜症の進行を非外科手的方法で防止しまたはその進行速度を低下させおよび他の眼の疾病を治療できるかを例証している。
【0049】
例1
3.0<pH<8.0にて、少量の緩衝剤(例えば酢酸塩、クエン酸塩)を含む5%の糖(例えばトレハロース、マンノース、デキストロース、フラクトース、キシロース、ガラクトース)および約2.0 mg/mlの量のプラスミン(この量は眼の容積によって変化する)を含有しならびに随意選択的にプラスミン安定剤(例えばε-アミノカプロン酸などの二塩基性アミノ酸またはその誘導体)を含有する製剤を、27 gaの針を使って、非増殖性糖尿病網膜症に罹患している患者の毛様体輪を通じて硝子体中に注射する。プラスミンの濃度は、外科手術なしで一回の注射によって後部硝子体の剥離(PVD)を起こさせるのに十分な濃度である。このPVDは、通常の眼検査、光干渉断層法、βscan ultrasoundまたはこれらの組合せによって確認される。PVDが確認できない場合は、続いて一回または二回以上の追加の注射を行う。PVDが起こると、非増殖性糖尿病網膜症が増殖性糖尿病網膜症に進行する危険性を防止するかまたは低下させる。
【0050】
例2
3.0<pH<8.0にて、少量の緩衝剤(例えば酢酸塩、クエン酸塩)を含む5%の糖(例えばトレハロース、マンノース、デキストロース、フラクトース、キシロース、ガラクトース)および約2.0 mg/mlの量のプラスミン(この量は眼の容積によって変化する)を含有しならびに随意選択的にプラスミン安定剤(例えばε-アミノカプロン酸などの二塩基性アミノ酸またはその誘導体)を含有する製剤を、糖尿病患者の手術後黄斑浮腫の予防法としてPVDを起こさせるため、白内障手術を行う前に、27 gaの針を使って、毛様体輪を通じて硝子体中に注射する。この予防法は、手術を受ける前に臨床的に有意な黄斑浮腫を示している糖尿病患者または白内障の手術を受ける一般的な糖尿病患者に適用できる。プラスミンの濃度は、外科手術なしで一回の注射によって後部硝子体の剥離(PVD)を起こさせるのに十分な濃度である。このPVDは、通常の眼検査、光干渉断層法、βscan ultrasoundまたはこれらの組合せによって確認される。PVDが確認できない場合は、続いて一回または二回以上の追加の注射を行う。PVDが起こると、白内障の手術を受けている患者に手術後黄斑浮腫が起こるのを防止しその危険性が低下する。
【0051】
白内障手術の前に、予防的PVDを起こすために行うプラスミンの注射は、白内障の手術、清浄レンズの交換または眼球屈折率の処置を必要とする強度近視の患者にも適用できる。
【0052】
例3
患者に網膜剥離の危険性があるという診断がなされた後(例えば、臨床的に有意な硝子体-網膜膜と牽引または硝子体-網膜変性障害と網膜剥離が他方の眼にすでに起こっていた)、例1に記載の製剤と方法を使って、手術なしで網膜剥離を防止しながら、硝子体-網膜膜を酵素によって開裂しかつ硝子体の辺縁部網膜を剥離させるのに十分な投与量で、プラスミンを硝子体中に注射する。
【0053】
例4
黄斑症または網膜症をおこす硝子体-網膜の牽引という診断がなされた後、例1に記載の製剤と方法を使って、手術なしで、後部硝子体の辺縁部網膜を剥離させるのに十分な投与量で、プラスミンを後部硝子体中に注射して牽引性黄斑症または牽引性網膜症を治療する。
【0054】
例5
例1に記載の製剤は、当該技術分野で公知の条件下で凍結乾燥されると、注射用の水、生理食塩水またはリン酸緩衝食塩水によって再構成して硝子体中に注射する透明溶液を提供できる安定な固体ケークを提供する。再構成の容積は、本願に開示した疾患を治療するのに必要な最終濃度および治療すべき眼の大きさによって決まる。しかし、好ましくは、プラスミン25 mgを含有するケークに対して、十分な溶媒を添加し再構成してプラスミンの濃度を5 mg/mlにし、より好ましくは、十分な溶媒を添加して2 mg/ml濃度のプラスミン溶液を作製する。凍結乾燥されたケークを再構成するため、多種類の溶媒を使用できるが、注射用の水、生理食塩水またはリン酸緩衝食塩水が好ましい。より好ましいのは注射用の水と生理食塩水であり、最も好ましいのは生理食塩水である。同時に、硝子体中に注射したときのpHの変化に対してプラスミンを保護するため、プラスミンの安定剤が凍結乾燥ケークまたは溶媒の中に含まれていてもよいことは明らかである。
【0055】
例6
化学的拡散剤、例えばVitrase(登録商標)またはヒアルロニダーゼを硝子体内に注射した後、プラスミンを、後部硝子体の辺縁網膜剥離を起こすのに十分な投与量で、例1に記載の製剤と方法を使って、手術なしで、プラスミンを硝子体内に注射して、牽引性黄斑症または牽引性網膜症を治療する。
【0056】
本発明を各種の好ましい実施態様と関連させて説明してきたが、本発明には、本発明の精神と前掲の特許請求の範囲の範囲から逸脱することのない多くの変形があることは本願の説明を受けた当業者にとって明らかであろう。例えば、本発明が異なる眼疾病に使用される場合または本発明が異なる製剤に使用される場合、好ましい実施態様が変形されることは明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非増殖性糖尿病網膜症の増殖型糖尿病網膜症への進行を防止しまたはその進行速度を低下させる非外科的方法であって、非増殖性糖尿病網膜症に罹患している患者の硝子体中に、外科手術なしで、後部硝子体を剥離させて、前記患者の増殖性糖尿病網膜症への進行を防止しまたはその進行速度を低下させるのに十分有効な量のセリンプロテアーゼ酵素を投与するステップを含んでなる方法。
【請求項2】
前記セリンプロテアーゼ酵素が、特に、ヒト血漿からまたは組換え技術から誘導されるプラスミン、マイクロプラスミンおよびミニプラスミンからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記セリンプロテアーゼ酵素がプラスミンである請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記セリンがヒト血液から分画されたプラスミノーゲンから得られる請求項3に記載の方法。
【請求項5】
硝子体中に注射される前記有効量のセリンプロテアーゼ酵素が約0.5-約1000μgのプラスミンである請求項1または3に記載の方法。
【請求項6】
硝子体中に注射される前記有効量のセリンプロテアーゼ酵素が約1-約500μg のプラスミンである請求項1または3に記載の方法。
【請求項7】
硝子体中に注射される前記有効量のセリンプロテアーゼ酵素が約10-400μgのプラスミンである請求項1または3に記載の方法。
【請求項8】
硝子体中に注射される前記有効量のセリンプロテアーゼ酵素が約20-300μgのプラスミンである請求項1または3に記載の方法。
【請求項9】
硝子体中に注射される前記有効量のセリンプロテアーゼ酵素が約50-200μgのプラスミンである請求項1または3に記載の方法。
【請求項10】
前記硝子体中への投与が硝子体中への注射で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記硝子体中への投与が、25ゲージ以上の針を使って硝子体中に注射することによって行われる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記硝子体中への投与が、25ゲージ以上の針を使って注射して10- 200μLの容積を投与することによって行われる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記硝子体中への投与が、25ゲージ以上の針を使って注射して50- 100μLの容積を投与することによって行われる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記セリンプロテアーゼ酵素がプラスミンであり、前記有効量が約50-200μgのプラスミンでありおよび前記プラスミンが注射によって硝子体中に投与される請求項1に記載の方法。
【請求項15】
網膜虚血、網膜の炎症、網膜浮腫、牽引性網膜剥離、黄斑円孔、牽引性網膜症、硝子体出血および牽引性黄斑症のうち一種または二種以上に罹患している患者の硝子体中に、外科手術なしで後部硝子体を剥離させて前記眼疾病を予防または軽減させるのに十分な有効量のセリンプロテアーゼ酵素を投与するステップを含んでなる前記眼疾病の非外科的治療方法。
【請求項16】
前記硝子体の剥離に続いて異なる外科手術が行われる請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記セリンプロテアーゼ酵素が、特にプラスミン、マイクロプラスミンおよびミニプラスミンからなる群から選択される請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記セリンプロテアーゼ酵素がプラスミンである請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記プラスミンが、ヒト血液から分画されたプラスミノーゲンから得られる請求項18に記載の方法。
【請求項20】
硝子体中に注射されるセリンプロテアーゼ酵素の前記有効量がプラスミンの約0.5-1000μgである請求項15または18に記載の方法。
【請求項21】
硝子体中に注射されるセリンプロテアーゼ酵素の前記有効量がプラスミンの約1-500μgである請求項15または18に記載の方法。
【請求項22】
硝子体中に注射されるセリンプロテアーゼ酵素の前記有効量がプラスミンの約10-400μgである請求項15または18に記載の方法。
【請求項23】
硝子体中に注射されるセリンプロテアーゼ酵素の前記有効量がプラスミンの約20-300μgである請求項15または18に記載の方法。
【請求項24】
硝子体中に注射されるセリンプロテアーゼ酵素の前記有効量がプラスミンの約50-200μgである請求項15または18に記載の方法。
【請求項25】
前記硝子体中への投与が硝子体中に注射することによる投与である請求項15に記載の方法。
【請求項26】
前記ガラス体への投与が、25ゲージ以上の針を使って硝子体中に注射することによる投与である請求項15に記載の方法。
【請求項27】
前記セリンプロテアーゼ酵素がプラスミンであり、前記有効量が約50-200μgのプラスミンであり、および前記プラスミンを硝子体中に注射することによって投与される請求項15に記載の方法。
【請求項28】
前記硝子体中への投与が、セリンプロテアーゼ酵素を含有する溶液を、硝子体中に注射することによる投与である請求項10に記載の方法。
【請求項29】
前記硝子体中への投与が、セリンプロテアーゼ酵素を含有するミセル溶液を、硝子体中に注射することによる投与である請求項10に記載の方法。
【請求項30】
前記硝子体中への投与が、セリンプロテアーゼ酵素を含有する固体粒子の懸濁液または粒子としての酵素を含有する固体粒子の懸濁液を、硝子体中に注射することによる投与である請求項10に記載の方法。
【請求項31】
前記硝子体中への投与が、セリンプロテアーゼ酵素がリポソームの水性コア中に存在しているか、またはリポソーム溶液の排除体積中に存在しているかまたはその両者の中に存在しているリポソーム溶液を硝子体中へ注射することによる投与である請求項10に記載の方法。
【請求項32】
前記硝子体中への投与が、セリンプロテアーゼ酵素が乳濁液の油滴に吸着されて存在しているかまたは懸濁液の連続水性相中に存在している水中油型乳濁液を、硝子体中に注射することによる投与である請求項10に記載の方法。
【請求項33】
前記硝子体中への投与が、非水性媒体中に分散されたセリンプロテアーゼ酵素の粉末を、硝子体中に注射することによる投与である請求項10に記載の方法。
【請求項34】
前記硝子体中への投与が、セリンプロテアーゼ酵素および関連する添加剤を含有して迅速に溶解するミニ錠剤を、硝子体中に注射することによる投与である請求項10に記載の方法。
【請求項35】
前記硝子体中への投与が、UPSの指針に従って滅菌されかつ内毒素を含有していない製剤を、硝子体中に注射することによる投与である請求項28-34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記硝子体中への投与が、UPSの指針に従って滅菌されかつ内毒素を含有せずかつ安定剤を含有する製剤を、硝子体中に注射することによる投与である請求項28-34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記安定剤が、特に、ε-アミノカプロン酸、リジン、アルギニン、血清アルブミンおよび重炭酸アンモニウムからなる群から選択される請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記安定剤がε-アミノカプロン酸である請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記硝子体中への投与が、セリンプロテアーゼ酵素を含有する溶液を硝子体中に注射することによる投与である請求項25に記載の方法。
【請求項40】
前記硝子体中への投与が、セリンプロテアーゼ酵素を含有するミセル溶液を硝子体中に注射することによる投与である請求項25に記載の方法。
【請求項41】
前記硝子体中への投与が、セリンプロテアーゼ酵素を含有する固体粒子の懸濁液または酵素を粒子として含有する固体粒子の懸濁液を硝子体中に注射することによる投与である請求項25に記載の方法。
【請求項42】
前記硝子体中への投与が、セリンプロテアーゼ酵素がリポソームの水性コア中に存在しているか、リポソーム溶液の排除体積中に存在しているかまたはこれら両者の中に存在しているリポソーム溶液を硝子体中に注射することによる投与である請求項25に記載の方法。
【請求項43】
前記硝子体中への投与が、セリンプロテアーゼ酵素が油滴に吸着されて存在しているかまたは乳濁液の連続水性相中に存在している水中油型乳濁液を硝子体中に注射することによる投与である請求項25に記載の方法。
【請求項44】
前記硝子体中への投与が、非水性媒体中に分散されたセリンプロテアーゼ酵素の粉末を硝子体中に注射することによる投与である請求項25に記載の方法。
【請求項45】
前記硝子体中への投与が、セリンプロテアーゼ酵素および関連する添加剤を含有して迅速に溶解するミニ錠剤を硝子体中に注射することによる投与である請求項25に記載の方法。
【請求項46】
前記硝子体中への投与が、UPSの指針に従って滅菌されかつ内毒素を含有せずおよび安定剤を含有する製剤を硝子体中に注射することによる投与である請求項38-45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記安定剤が、ε-アミノカプロン酸、リジン、アルギニン、血清アルブミンまたは重炭酸アンモニウムである請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記硝子体中への投与が、対象のセリンプロテアーゼ酵素、および患者が仰向けに横臥しているとき、注射した後、製剤が患者の網膜の方に沈降するよう製剤の密度を増大するように設計された追加の成分を含む薬学的に通常許容される添加剤を含有する溶液を注射することによる投与である請求項10に記載の方法。
【請求項49】
前記安定剤がε-アミノカプロン酸である請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記硝子体中への投与が、対象のセリンプロテアーゼ酵素、および患者が仰向けに横臥しているとき、注射した後、製剤が患者の網膜の方に沈降するよう製剤の密度を増大するように設計された追加の成分を含む薬学的に通常許容される添加剤を含有する溶液を注射することによる投与である請求項25に記載の方法。
【請求項51】
密度を増大させる物質が、特に、イオヘキソール、イオジキサノール、ジアトリゾ酸、イオパミドール、イオメプロール、イオジキサノール、トリ-ヨウ化ベンゼンおよびリピオドールを含む可溶性ヨウ化X線造影剤、高濃度のスクロースなどの糖類ならびにomniscan(登録商標)を含むMRI造影剤などの身体に使用して安全であることが知られている重金属錯体からなる群から選択される請求項48に記載の方法。
【請求項52】
密度を増大させる物質が、特に、イオヘキソール、イオジキサノール、ジアトリゾ酸、イオパミドール、イオメプロール、イオジキサノール、トリ-ヨウ化ベンゼンおよびリピオドールを含む可溶性ヨウ化X線造影剤、高濃度のスクロースなどの糖類ならびにomniscan(登録商標)を含むMRI造影剤などの身体に使用して安全であることが知られている重金属錯体からなる群から選択される請求項49に記載の方法。
【請求項53】
a) 約0.01-約10 mg/lのプラスミン、
b) 約0.10 mg-約100 mg/mlの糖類または糖類誘導体、
c) 緩衝剤
d) 約2-約5のpH、および
e) 眼用プラスミンを製剤中または硝子体内に注射中、pHが変化している間にプラスミンの物理的安定性が急速に変化するのを防止するのに有効な量のプラスミン安定剤
を含有する再構成用の安定化された眼用プラスミン製剤。
【請求項54】
前記プラスミンが約0.02-約10 mg/mlのプラスミンである請求項53に記載の安定化された眼用プラスミン製剤。
【請求項55】
前記プラスミンが約0.03-約5 mg/mlのプラスミンである請求項53に記載の安定化された眼用プラスミン製剤。
【請求項56】
前記プラスミンが約0.03-約4 mg/mlのプラスミンである請求項53に記載の安定化された眼用プラスミン製剤。
【請求項57】
前記プラスミンが約2 mg/mlのプラスミンである請求項53に記載の安定化された眼用プラスミン製剤。
【請求項58】
前記糖類が、トレハロース、ラクトース、スクロース、マンノース、デキストロース、フラクトース、キシロース、ガラクトースまたは糖類誘導体を含む群から選択される請求項53に記載の安定化された眼用プラスミン製剤。
【請求項59】
前記糖類がトレハロースである請求項53に記載の安定化された眼用プラスミン製剤。
【請求項60】
前記糖類誘導体が、マンニトール、ソルビトールまたはキシリトールを含む群から選択される請求項53に記載の安定化された眼用プラスミン製剤。
【請求項61】
前記緩衝剤が、酢酸塩、クエン酸塩およびリン酸塩を含む群から選択される請求項53に記載の安定化された眼用プラスミン製剤。
【請求項62】
前記緩衝剤が酢酸塩である請求項53に記載の安定化された眼用プラスミン製剤。
【請求項63】
前記pHが約3-5である請求項53に記載の安定化された眼用プラスミン製剤。
【請求項64】
前記pHが約3.5-5である請求項53に記載の安定化された眼用プラスミン製剤。
【請求項65】
前記pHが約3-4である請求項53に記載の安定化された眼用プラスミン製剤。
【請求項66】
プラスミン安定剤の前記有効量が約1 mM-約100 mMである請求項53に記載の安定化された眼用プラスミン製剤。
【請求項67】
前記プラスミン安定剤が二塩基性アミノ酸またはその誘導体である請求項53または66に記載の安定化された眼用プラスミン製剤。
【請求項68】
前記プラスミン安定剤が、ε-アミノカプロン酸、リジン、アルギニン、グリシルグリシンを含む群から選択される請求項53または66に記載の安定化された眼用プラスミン製剤。
【請求項69】
前記プラスミン安定剤がε-アミノカプロン酸である請求項53または66に記載の安定化された眼用プラスミン製剤。
【請求項70】
a. 約0.01-約10 mg/mlのプラスミン、
b. 約10 mg-約50 mgのトレハロース、
c. 酢酸塩またはクエン酸塩の緩衝剤、
d. 約3から約5までのpH、および
e. 眼用プラスミンを製剤中または硝子体中に注射中にpHが変化している間、プラミンの物理的安定性が急速に変化するのを防止するための約1 mM-約100 mMの二塩基性アミノ酸またはその誘導体
を含有する安定化された眼用プラスミン製剤。
【請求項71】
a. 約2.0 mg/mlのプラスミン、
b. 約20 mgのトレハロース、
c. 酢酸塩の緩衝剤、
d. 約3から約5までのpH、および
e. 眼用プラスミンを製剤中または硝子体中に注射中にpHが変化している間、プラミンの物理的安定性が急速に変化するのを防止するための約3 mMのε-アミノカプロン酸
を含有する安定化された眼用プラスミン製剤。
【請求項72】
網膜剥離の危険性がある患者に、後部硝子体を剥離させるのに十分有効な量のセリンプロテアーゼ酵素を投与するステップを含む、網膜剥離を防止またはその危険性を減らす方法。
【請求項73】
前記セリンプロテアーゼ酵素が、特にプラスミン、マイクロプラスミンおよびミニプラスミンからなる群から選択される請求項72に記載の方法。
【請求項74】
前記セリンプロテアーゼ酵素がプラスミンである請求項72に記載の方法。
【請求項75】
前記セリンプロテアーゼ酵素を、化学的拡散剤、例えばVitrase(登録商標)またはヒアルロニダーゼを注射した後に注射する請求項10に記載の方法。
【請求項76】
前記セリンプロテアーゼ酵素を、化学的拡散剤、例えばVitrase(登録商標)またはヒアルロニダーゼを注射した後に注射する請求項25に記載の方法。
【請求項77】
粘度増強剤を前記製剤に添加する請求項53、70または71に記載の方法。

【公表番号】特表2008−540561(P2008−540561A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−511360(P2008−511360)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【国際出願番号】PCT/US2006/018251
【国際公開番号】WO2006/122249
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(506076640)ボーシュ アンド ローム インコーポレイティド (99)
【Fターム(参考)】