説明

非対称的に置換されたビアリールジホスフィンの調製方法

一連のハロゲン-金属交換およびそれに続く反応により、2,2’,6,6’-テトラブロモビフェニルから次式(I)の非対称的に置換されたビアリールジホスフィンリガンドを調製するための方法を提供し;
【化1】


式中のR1は、1以上のハロゲン原子で任意に置換されたC1〜6-アルキルまたはC3〜10-シクロアルキルであり、
R2およびR3は、独立に、アリール、C5〜10-シクロアルキル、およびC1〜6-アルキルからなる群より選択され、ここでの各アリール部分は、任意に、ハロゲン原子、ニトロ、アミノ、C1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、およびジ-C1〜6-アルキルアミノ基からなる群より選択される1以上の置換基で置換され、且つR2およびR3におけるC1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、ジ-C1〜6-アルキルアミノ、およびC5〜10-シクロアルキル基はそれぞれ、1以上のハロゲン原子で任意に置換される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
鏡像異性的に純粋な化合物の調製は、薬学的に活性のある化合物の効果を改善するためおよび「間違った」異性体の望まれない副作用を制限するために重要である。本発明は、錯体を用いて不飽和のプロキラル化合物を水素化するための、非対称的に置換されたビアリールジホスフィンリガンドおよびそれらの遷移金属錯体の調製方法に関する。
【0002】
非対称性の触媒水素化は、広範な鏡像異性的に純粋な化合物を調製するために最も効率的且つ簡便な方法の1つである。薬学的に活性のある化合物の分子のキラリティーを正確にコントロールするための方法およびそれらの化合物を提供することは、合成化学においてますます重要な役割を果たす傾向にある。いくつかのジホスフィンリガンドファミリーは、それらの商品名で一般に知られており、例えばBINAP、CHIRAPHOS、DIOP、DUPHOS、SEGPHOS、およびTUNAPHOSである。
【0003】
BINAP、SEGPHOS、およびTUNAPHOSファミリーのビアリールジホスフィンリガンドの調製方法は、それぞれEP-A-025663、EP-A-850945、およびWO-A-01/21625に開示されている。さらにWO-A-03/029259は、SEGPHOSのフッ素誘導体の合成およびその使用について開示している。
【0004】
Pai, C.-C. et al., Tetrahedron Lett. 2002, 43, 2789-2792には、エチル 4-クロロ-3-オキソブチレートの非対称的な水素化のための、メチレンジオキソおよびエチレンジオキソ置換ビアリールジホスフィンリガンドの使用について記載されている。ビアリールジホスフィンの調製およびビアリールジホスフィンリガンドに由来する触媒を用いた非対称的な水素化反応のさらなる例は、EP-A-0 926 152、EP-A-0 945 457、およびEP-A-0 955 303において開示されている。通常は、対称的および非対称的に置換されたビアリールジホスフィンが両方とも権利請求されるが、対称的に置換されたリガンドの例のみが開示されている。特別な例外がわずかにあるだけで、非対称的に置換されたビアリールジホスフィンおよびそれらに由来する触媒の一般に適用可能な合成経路は開示されていない。
【0005】
ビアリールジホスフィンリガンドは、3つの異なる部分、すなわち、強固なビアリールコア、ビアリールの回転を妨げるための置換基、および通常、遷移金属と錯体を形成するための大きな置換基を有する2つのホスフィン基から成る。リガンドシステムの既知の例は、コアおよび同一のホスフィン基の対称的な置換パターンを有する。まれな例として、WO-A-02/40492は、(S)-6-メトキシ-5’,6’-ベンゾ-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-ビフェニルリガンドを含む触媒を用いたエチル4-クロロ-3-オキソブチレートの非対称性の水素化を開示する。(S)-アルコールは、83%の鏡像体過剰率(ee)で得られる。
【0006】
EP-A-0 647648およびWO-A-02/40492では、非対称的に置換されたビアリールコアを有するジホスフィンを権利請求しているが、開示された合成原理は、広範な異なる非対称的に置換されたビアリールジホスフィンリガンドを製造するのに適切ではない。
【0007】
スキーム1に示したように、本発明の非対称的なビアリールジホスフィンの合成について、主要な障害が克服される必要があった。単一のフッ素、塩素、もしくは臭素原子または単一のメトキシもしくはジメチルアミノ基が6位に結合した場合、中間体として生成した2’-ジフェニルホスフィノ-2-リチオビフェニルは、第二のクロロジオルガニルホスフィン部分との縮合により非対称的に置換されたビアリールジホスフィンを得ることができなかった(Miyamoto, T.K. et al., J. Organomet. Chem. 1989, 373, 8-12; Desponds, O., Schlosser, M., J. Organomet. Chem. 1996, 507, 257)。前記化合物は、1H-ベンゾ[b]ホスフィンドール(9-ホスファフルオレン)を得るために、リン原子での求核置換および環化を受ける。本発明のリガンドに対する既知の失敗したアプローチを、以下のスキーム1に示す。
【0008】
ここでおよび以下において、「鏡像異性的に純粋な化合物」という用語は、少なくとも90%の鏡像体過剰率(ee)を有する光学活性化合物を含む。
【0009】
ここでおよび以下において、「C1〜n-アルキル」という用語は、1〜nの炭素原子を有する直鎖または分枝状のアルキル基を意味する。C1〜6-アルキルは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、およびヘキシルを意味する。
【0010】
ここでおよび以下において、「C1〜n-アルコキシ」という用語は、1〜nの炭素原子を有する直鎖または分枝状のアルコキシ基を意味する。C1〜6-アルコキシは、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ、ペンチルオキシ、およびヘキシルオキシを意味する。
【0011】
スキーム1:非対称的に置換されたジホスフィンリガンドに対する失敗のアプローチ
【化14】

【0012】
X = H, F, Cl, Br, OCH3, N(CH3)2
ここでおよび以下において、「C3〜n-シクロアルキル」という用語は、3〜nの炭素原子を有する脂環式の基を意味する。C5〜10-シクロアルキルは、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、アダマンチル、またはノルボルニルのような単環式および多環式の環構造を意味する。
【0013】
ここでおよび以下において、「C3〜n-シクロアルコキシ」という用語は、3〜nの炭素原子を有するシクロアルコキシ基を意味する。C5〜10-シクロアルキルは、例えば、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ、シクロヘプチルオキシ、シクロオクチルオキシ、またはシクロデシルオキシである。
【0014】
ここでおよび以下において、「ジ-C1〜6-アルキルアミノ」という用語は、独立して1〜6の炭素原子を有する2つのアルキル部分を含んでなるジアルキルアミノ基を意味する。ジ-C1〜6-アルキルアミノは、例えば、N,N-ジメチルアミノ、N,N-ジエチルアミノ、N-エチル-N-メチルアミノ、N-メチル-N-プロピルアミノ、N-エチル-N-ヘキシルアミノ、またはN,N-ジヘキシルアミノを意味する。
【0015】
ここでおよび以下において、「アリール」という用語は、芳香族基であって、好ましくは、1以上のハロゲン原子、ニトロ、および/またはアミノ基、および/または任意に置換されたC1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、もしくはジ-C1〜6-アルキルアミノ基でさらに任意に置換されたフェニルまたはナフチルを意味する。
【0016】
ここでおよび以下において、「C1〜3-アルコール」という用語は、メタノール、エタノール、プロパノール、およびイソプロパノールを意味する。
【0017】
ここでおよび以下において、「C1〜3-アルカン酸」という用語は、ギ酸、酢酸、およびプロピオン酸を意味する。
【0018】
酵素、すなわち天然触媒の高い立体調節および効率的な作用を考慮すると、大きな努力は、特に薬学的に関心のある化合物の製造のための人工触媒の選択性および効率を改善することに費やされる。
【0019】
本発明によって解決されるべき技術的な問題は、一連のビアリールジホスフィンの希望通りの合成のための方法を提供することであった。解決されるべきさらなる問題は、薬学産業に対して適切な量のリガンドを提供するために、強固な方法における前記プロセスを確立することであった。さらに、一般的な概念では、容易に入手可能な化合物から始めるべきであり、且つ少ない反応ステップを含むべきであり、反応手順のみに依存して広範なリガンドの合成を可能にする。
【0020】
前記問題は、請求項1の方法に従って解決することができる。
【0021】
次式の非対称的に置換されたビアリールジホスフィンリガンドの調製方法が提供される:
【化15】

【0022】
ここで、式中のR1は、1以上のハロゲン原子で任意に置換されたC1〜6-アルキルまたはC3〜10-シクロアルキルであり、
R2およびR3は、独立に、アリール、C5〜10-シクロアルキル、およびC1〜6-アルキルからなる群より選択され、ここで各アリール部分は、任意に、ハロゲン原子、ニトロ、アミノ、C1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、およびジ-C1〜6-アルキルアミノ基からなる群より選択される1以上の置換基で置換され、且つ、R2およびR3におけるC1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、ジ-C1〜6-アルキルアミノ、およびC5〜10-シクロアルキル基はそれぞれ、1以上のハロゲン原子で任意に置換される。
【0023】
前記方法は、第1の反応手順であって、2,2’,6,6’-テトラブロモビフェニルの臭素原子の1つがハロゲン-金属交換およびそれに続く金属-ヒドロキシ交換、それに続くアルキル化によってOR1と交換され、
【化16】

【0024】
R1が上記で定義した通りである、次式の化合物を得ることと;
【化17】

【0025】
第2の反応手順であって、式IVの化合物の各アリール部分の1つの臭素原子が、ハロゲン-金属交換およびそれに続く金属-ヨウ素交換によってヨウ素と交換され、次式の化合物を得ることと;
【化18】

【0026】
さらなる反応手順であって、それぞれの反応手順が少なくとも1のハロゲン-金属交換およびそれに続くそれぞれの置換基との金属-置換基交換を含み、それによって、それぞれのハロゲン原子を水素、ジアリールホスフィノ、ジ-C1〜6-アルキルホスフィノ、およびジ-C5〜10-シクロアルキルホスフィノからなる群より選択される置換基と交換すること;
を含んでなる。
【0027】
本発明において述べられている臭素-金属交換は、−40℃以下の温度(「低温臭素-金属交換」)または少なくとも0℃の温度(「高温臭素-金属交換」)で、必要量のそれぞれの有機金属化合物を用いて行われてよい。
【0028】
中心の炭素-炭素結合を中心にして永久にねじれたビアリール骨格を有するキラルビアリールジホスフィンリガンドは、2つのアトロプ異性体を有する。遷移金属錯体を用いた非対称性の水素化は、好ましくはアトロプ異性体の1つおよび任意に、さらなるキラル助剤を用いて行われる。それ故、例えばそれらの陽性(+)または陰性(-)の旋光性を示すことによって他に特定されない場合、次式のリガンドに対する参考文献には、そのアトロプ異性体が暗に含まれるということが認められるべきである。
【化19】

【0029】
式中のR1、R2、およびR3は上記で定義した通りである
【化20】

【0030】
上記のスキーム1において示した望ましくない閉環は、驚くべきことに本発明の方法によって避けることができる。式Iの化合物の調製のための本発明の方法の反応手順をスキーム2に示す。
【0031】
スキーム2:2,2’,6,6’-テトラブロモビフェニル(III)からのリガンドIの調製
【化21】

【0032】
R1、R2、およびR3はここで述べた通りであり、
[a-1]=1当量の低温ハロゲン-金属交換であり;
[a-2]=2当量の低温ハロゲン-金属交換であり;
[a-3]=1〜2当量の高温ハロゲン-金属交換であり;
[b]=ボラン酸化であり;
[c]=アルキル化であり;
[d]=2当量の金属-ヨウ素交換であり;
[e]=水素クエンチングであり;
[f-1]=1当量の金属-アルキルまたは-シクロアルキルホスフィン交換であり;
[f-2]=1当量の金属-アリールホスフィン交換であり;
[f-3]=2当量の金属-アルキルまたは-シクロアルキルホスフィン交換であり;
[f-4]=2当量の金属-アリールホスフィン交換である。
【0033】
スキーム2の合成アプローチは、2,2’,6,6’-テトラブロモ-1,1’-ビフェニル(III)から始まり、ここでIIIの臭素原子の1つは、アルコキシまたはシクロアルコキシ基によって置換される。化合物IIIは、Rajca A. et al., J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 7272-7279に従って、1,3-ジブロモ-2-ヨードベンゼン(II)の縮合により得られる。
【0034】
好ましい実施形態において、式IIIの化合物の最初のハロゲン-金属交換は、極性溶媒中において、−40℃以下の温度で1当量のn-ブチルリチウムを用いて行われ(「1当量の低温ハロゲン-金属交換」)、金属化された中間体を得る。続く金属-ヒドロキシ交換は、金属化された中間体をボランまたはオルガノボラートと反応させ、続いてアルカリおよび/またはアルカリ土類水酸化物の存在下でペルオキシ化合物と反応させることにより行われ、アルキル化は、塩基の存在下でアルキル化剤を用いて行われる。
【0035】
好ましくは、前記ボランまたはオルガノボラートは、フルオロメトキシボランエチルエーテル付加体、トリイソプロピルボラート、またはトリメチルボラートである。特に、好ましくは、ボランまたはオルガノボラートはエーテル溶液中で用いられる。
【0036】
もう1つの実施形態において、ぺルオキシ化合物は、過酸化水素、過酢酸、m-クロロ過安息香酸、およびtert-ブチルヒドロペルオキシドからなる群より選択される。
【0037】
もう1つの実施形態において、ペルオキシ化合物との反応における前記アルカリおよび/またはアルカリ土類水酸化物は、LiOH、NaOH、KOH、Ca(OH)2、およびMg(OH)2からなる群より選択される。
【0038】
さらなる実施形態において、アルキル化反応の塩基は、アルカリおよび/またはアルカリ土類水酸化物であり、LiOH、NaOH、KOH、Ca(OH)2、およびMg(OH)2からなる群より選択される。
【0039】
もう1つの実施形態において、前記アルキル化剤は、C1〜6-ハロゲン化アルキル、C5〜10-ハロゲン化シクロアルキル、または硫酸ジメチルである。好ましくは、前記C1〜6-ハロゲン化アルキルは、C1〜6-臭化アルキルまたはC1〜6-ヨウ化アルキルである。特に好ましいアルキル化剤は、ヨードメタンまたは硫酸ジメチルである。
【0040】
特に好ましい実施形態において、第2の反応手順の金属-ヨウ素交換は、交換される金属の当量当り少なくとも1モルのヨウ素元素を用いて行われる。
【0041】
好ましくは、第2の反応手順のハロゲン-金属交換は、極性溶媒中、−40℃以下の温度で、1当量のn-ブチルリチウムを用いて行われる。続く金属-ヨウ素交換は、交換される金属の当量当り少なくとも1モルのヨウ素元素を用いて行われる。特に好ましい第2の反応手順は、テトラヒドロフラン中、−70℃以下の温度で行われる。
【0042】
好ましい方法において、ここでのさらなる反応手順は、上記式Vの化合物を用いて開始することによって行われ、2つのハロゲン原子を含むアリール部分の1つのヨウ素原子の低温ハロゲン-金属交換およびそれに続く金属-ホスフィン交換により、次式の化合物を得ることと;
【化22】

【0043】
[ここで、式中のR1は上記で定義した通りであり、
R3は、アリール、C5〜10-シクロアルキル、およびC1〜6-アルキルからなる群より選択され、ここでの各アリール部分は、任意に、ハロゲン原子、ニトロ、アミノ、C1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、およびジ-C1〜6-アルキルアミノ基からなる群より選択される1以上の置換基で置換され、且つR3におけるC1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、ジ-C1〜6-アルキルアミノ、およびC5〜10-シクロアルキル基はそれぞれ、1以上のハロゲン原子で任意に置換される]
さらに、式VIの化合物の残りのヨウ素原子が、低温ハロゲン-金属交換およびそれに続く金属-ホスフィン交換において置換され、次式の化合物を得ることと;
【化23】

【0044】
[ここで、式中のR1およびR3は上記で定義した通りであり、
R2およびR3は、独立に、アリール、C5〜10-シクロアルキル、およびC1〜6-アルキルからなる群より選択され、ここでの各アリール部分は、任意に、ハロゲン原子、ニトロ、アミノ、C1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、およびジ-C1〜6-アルキルアミノ基からなる群より選択される1以上の置換基で置換され、R2およびR3におけるC1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、ジ-C1〜6-アルキルアミノ、およびC5〜10-シクロアルキル基はそれぞれ、1以上のハロゲン原子で任意に置換される]
さらに、式VIIの化合物の残りの臭素原子が、高温ハロゲン-金属交換およびそれに続くプロトン供与体との反応によって水素で置換され、次式のリガンドを得ること;
を含んでなる。
【化24】

【0045】
[式中のR1、R2、およびR3は上記の化合物VIIで定義した通りである]
好ましい実施形態において、R2およびR3は同一である。この場合、ハロゲン-金属および金属-ホスフィン交換の手順は、それぞれの試薬の2当量を用いて行うことができる。これは式VIの化合物の分離を回避し、式Vから式VIIへのショートカットによりスキーム2に示されている。
【0046】
さらに好ましい実施形態において、それぞれの低温ハロゲン-金属交換は、n-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、イソプロピルマグネシウムクロリド、またはリチウムトリブチルマグネサートのような有機金属化合物を用いて、−40℃以下の温度、好ましくは−60〜−90℃の範囲で行われる。
【0047】
好ましい実施形態において、それぞれの低温ハロゲン-金属交換は、極性溶媒中、好ましくはテトラヒドロフランを含む溶媒中で行われる。
【0048】
スキーム2に示したように、式VIIの化合物から最後に残った臭素原子を除去することは、ハロゲン-金属交換のための異なる反応条件を必要とする。この反応手順における好ましい実施形態において、ハロゲン-金属交換は、n-ブチルリチウム、イソプロピルマグネシウムクロリド、またはリチウムトリブチルマグネサートのような有機金属化合物を用いて、少なくとも0℃の温度で、好ましくは0〜+40℃の範囲で行われる。有機金属化合物の量(1〜2当量)は、ビアリール部分に結合した置換基に依存する。ほとんどの場合、金属でハロゲン原子を置換するためには1当量の有機金属化合物で十分である。
【0049】
好ましい実施形態において、高温ハロゲン-金属交換は、トルエンおよび/またはテトラヒドロフランを含む溶液中で行われる。
【0050】
好ましい実施形態において、金属-ホスフィン交換は次式のハロホスフィンを用いて行われ、
【化25】

【0051】
ここでのXは塩素、臭素、またはヨウ素であり、置換基Rはともに等しく、R2またはR3であり、ここでのR2およびR3は上記で定義した通りである。
【0052】
意図された置換基に依存して、前記式VIIIのハロホスフィンは、ハロジアリールホスフィン、ハロジ-(C5〜10-シクロアルキル)ホスフィン、およびハロジ-(C1〜6-アルキル)ホスフィンからなる群より選択される。
【0053】
ハロジアリールホスフィンの各アリール部分は、任意に、ハロゲン原子、ニトロ、アミノ、C1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、およびジ-C1〜6-アルキルアミノ基からなる群より選択される1以上の置換基で置換される。任意に、式VIIIのハロホスフィンのC1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、ジ-C1〜6-アルキルアミノ、およびC5〜10-シクロアルキル基はそれぞれ、1以上のハロゲン原子で置換される。好ましい実施形態において、式VIIIのハロホスフィンは、ハロジアリールホスフィンおよびハロジ-(C5〜10-シクロアルキル)ホスフィンからなる群より選択され、より好ましくは、クロロジシクロヘキシルホスフィン、ブロモジシクロヘキシルホスフィン、クロロジフェニルホスフィン、またはブロモジフェニルホスフィンである。
【0054】
好ましい実施形態において、水素供与体は、C1〜3-アルコール、水、非酸化性無機プロトン酸、C1〜3-アルカン酸からなる群より選択される。好ましくは、非酸化性無機プロトン酸はHClである。
【0055】
好ましくは、水素供与体(水素クエンチング)との反応は、−60℃〜−90℃の範囲の温度で行われる。
【0056】
次式の化合物が提供される:
【化26】

【0057】
ここで、式中のR1は、1以上のハロゲン原子で任意に置換されたC1〜6-アルキルまたはC3〜10-シクロアルキルであり、
R2およびR3は、独立に、アリール、C5〜10-シクロアルキル、およびC1〜6-アルキルからなる群より選択され、ここでの各アリール部分は、任意に、ハロゲン原子、ニトロ、アミノ、C1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、およびジ-C1〜6-アルキルアミノ基からなる群より選択される1以上の置換基で置換され、R2およびR3におけるC1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、ジ-C1〜6-アルキルアミノ、およびC5〜10-シクロアルキル基はそれぞれ、1以上のハロゲン原子で任意に置換される。
【0058】
さらに、次式の化合物が提供される:
【化27】

【0059】
ここで、式中のR1は、1以上のハロゲン原子で任意に置換されたC1〜6-アルキルまたはC3〜10-シクロアルキルである。
【0060】
次式の化合物が提供される:
【化28】

【0061】
ここで、式中のR1は、1以上のハロゲン原子で任意に置換されたC1〜6-アルキルまたはC3〜10-シクロアルキルであり、
R3は、アリール、C5〜10-シクロアルキル、およびC1〜6-アルキルからなる群より選択され、ここでの各アリール部分は、任意に、ハロゲン原子、ニトロ、アミノ、C1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、およびジ-C1〜6-アルキルアミノ基からなる群より選択される1以上の置換基で置換され、且つR3におけるC1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、ジ-C1〜6-アルキルアミノ、およびC5〜10-シクロアルキル基はそれぞれ、1以上のハロゲン原子で任意に置換される。
【0062】
さらに次式の化合物が提供される:
【化29】

【0063】
ここで、式中のR1は、1以上のハロゲン原子で任意に置換されたC1〜6-アルキルまたはC3〜10-シクロアルキルであり、
R2およびR3は、独立に、アリール、C5〜10-シクロアルキル、およびC1〜6-アルキルからなる群より選択され、ここでの各アリール部分は、任意に、ハロゲン原子、ニトロ、アミノ、C1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、およびジ-C1〜6-アルキルアミノ基からなる群より選択される1以上の置換基で置換され、R2およびR3におけるC1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、ジ-C1〜6-アルキルアミノ、およびC5〜10-シクロアルキル基はそれぞれ、1以上のハロゲン原子で任意に置換される。
【0064】
好ましくはルテニウム、ロジウム、またはイリジウムである遷移金属の触媒活性を有する錯体を調製するための、次式の化合物の使用を提供する:
【化30】

【0065】
ここで、式中のR1は、1以上のハロゲン原子で任意に置換されたC1〜6-アルキルまたはC3〜10-シクロアルキルであり、
R2およびR3は、独立に、アリール、C5〜10-シクロアルキル、およびC1〜6-アルキルからなる群より選択され、ここでの各アリール部分は、任意に、ハロゲン原子、ニトロ、アミノ、C1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、およびジ-C1〜6-アルキルアミノ基からなる分より選択される1以上の置換基で置換され、且つR2およびR3におけるC1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、ジ-C1〜6-アルキルアミノ、およびC5〜10-シクロアルキル基はそれぞれ、1以上のハロゲン原子で任意に置換される。前記遷移金属の触媒活性を有する錯体は、少なくとも1の不飽和プロキラル系を含む化合物の水素化、好ましくは非対称性の水素化のために用いることができる。好ましくは、前記非対称性の水素化によって得られる生成物は、鏡像異性的に純粋な化合物である。
【0066】
触媒および触媒溶液の調製のための一般的に適用可能な方法のいくつかの例は、Ashworth, T. V. et al. S. Afr. J. Chem. 1987, 40, 183-188, WO 00/29370 およびMashima, K. J. Org. Chem. 1994, 59, 3064-3076に開示されている。
【0067】
好ましい実施形態において、上記で述べた水素化の間の水素圧は、1〜60バールの範囲であり、特に好ましくは2〜35バールの範囲である。
さらに好ましい実施形態において、水素化は、0〜150℃の範囲の温度で行われる。
【0068】
好ましい実施形態において、少なくとも1の不飽和プロキラル系を含む化合物は、プロキラルカルボニル基、プロキラルアルケン基、またはプロキラルイミン基を含む化合物からなる群より選択される。
【0069】
特に好ましい実施形態において、前記少なくとも1の不飽和プロキラルカルボニル、アルケン、またはイミン基を含む化合物は、芳香族ケトンおよびアルデヒドのα-およびβ-ケトエステル、α-およびβ-ケトアミン、α-およびβ-ケトアルコール、アクリル酸誘導体、アシル化エナミン、またはN-置換イミンからなる群より選択される。
【0070】
好ましくは、水素化反応は、C1〜4-アルコール、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(MeCN)、エーテル、またはそれらの混合物のような極性溶媒中における触媒溶液を用いて行われる。好ましくは、前記極性溶媒にはメタノール、エタノール、もしくはイソプロピルアルコール、またはそれらの混合物が含まれる。特に好ましくは、前記溶液にはさらに添加物が含まれる。
【0071】
本発明は、以下の非限定的な例によって示される。
【実施例】
【0072】
例1:1,3-ジブロモ-2-ヨードベンゼン(II)
ジイソプロピルアミン(0.14L, 0.10kg, 1.0mol)および1,3-ジブロモベンゼン(0.12L, 0.24kg, 1.0mol)を、テトラヒドロフラン(2.0L)およびヘキサン(0.64L)中におけるn-ブチルリチウム(1.0mol)の溶液に、−75℃で連続して加えた。2時間後、テトラヒドロフラン(0.5L)中におけるヨウ素 (0.26kg, 1.0mol)の溶液を−75℃で加えた。溶媒を蒸発させ、残留物をジエチルエーテル(1.0L)に溶解した。チオ硫酸ナトリウムの10%水溶液 (2×0.1L)で洗浄した後、有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、乾固させた。エタノール (1.0L)からの結晶化により、無色の板状結晶が得られた;
m.p. 99 〜100℃; 0.33kg (91%);
1H-NMR (CHCl3, 400MHz): δ= 7.55 (d, J= 8.1 Hz, 2 H), 7.07 (t, J = 8.1 Hz, 2 H);
C6H3Br2I (361.80): 計算(%) C 19.92, H 0.84; 実測 C 19.97, H 0.80。
【0073】
例2:2,2’,6,6’-テトラブロモ-1,1’-ビフェニル (III)
−75℃において、ヘキサン(5.6mL)中におけるブチルリチウム(14 mmol)を、ジエチルエーテル(0.18L)中における1,3-ジブロモ-2-ヨードベンゼン(4.3 g, 12 mmol)の溶液に加えた。溶液を2時間、−75℃で撹拌した後、塩化銅(II) (9.7g, 72mmol)を加え、反応混合物を12時間にわたって25℃に到達させた。冷水を反応混合物に加え、有機層を分離した。水槽を酢酸エチル (2×0.10L)で抽出した。混合性の有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させた。−20℃に冷却したヘキサンで残留物を処理することにより、2,2’,6,6’-テトラブロモ-1,1’-ビフェニルを沈殿させる。生成物は、さらなる反応に対して十分に純粋である;
m.p. 214〜215 ℃; 9.0g (33%);
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 7.67 (d, J = 8.3 Hz, 4H), 7.17 (t, J = 8.0 Hz, 2 H)。
【0074】
例3:2,6,6’-トリブロモ-2’-メトキシ-1,1’-ビフェニル (IVa; R1=Me)
ヘキサン(63 mL)中におけるn-ブチルリチウム (0.10 mol)を、−75℃でテトラヒドロフラン (0.50L)中における2,2',6,6'-テトラブロモ-1,1'-ビフェニル (47 g, 0.10 mol)の溶液に加えた。混合物をフルオロジメトキシボランジエチルエーテル付加体 (19mL, 16g, 0.10mol)、水酸化ナトリウムの3.0M水溶液 (36mL)、および30%過酸化水素水(10mL, 3.6 g, 0.10mol)で連続的に処理した。反応混合物を25℃で2.0M 塩酸(0.10L)を用いて中和し、ジエチルエーテル(3×0.10 L)で抽出した。混合性の有機層を硫酸ナトリウムの10%水溶液(0.10L)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させた。油性の残留物をジメチルスルホキシド(0.20L)中に溶解し、ヨードメタン(7.5 mL, 17 g, 0.12 mol)および水酸化カリウム粉末(6.7g, 0.12 mol)を連続して加えた。1時間後、水(0.50L)を加え、生成物をジエチルエーテル(3×0.10 L)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させた。エタノール (0.10L)からの結晶化により、無色の立方体結晶として生成物35g (82%)を得た;
m.p. 184 〜185℃;
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 7.64 (d, J = 8.3 Hz, 2 H), 7.3 (m, 2 H), 7.11 (t, J = 8.1Hz, 1 H), 6.96 (dd, J= 7.2, 2.2 Hz, 1 H), 3.77 (s, 3 H);
C13H9Br3 (420.92): 計算(%) C 37.09, H 2.16; 実測 C 37.10, H2.03。
【0075】
例4:2-ブロモ-2’,6-ジヨード-6’-メトキシ-1,1’-ビフェニル (Va; R1=Me)
ヘキサン(19 mL)中におけるn-ブチルリチウム(30 mmol)を、−75℃において、テトラヒドロフラン(75mL)中における2,6,6’-トリブロモ-2’-メトキシ-1,1’-ビフェニル(6.3g, 15 mmol)の溶液に加えた。45分後、テトラヒドロフラン(20mL)中におけるヨウ素 (7.7 g, 30mmol)の溶液を加えた。25℃において、チオ硫酸ナトリウムの10%水溶液(100mL)を加え、続いて酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、乾固させた。ヘキサン/酢酸エチルの9:1混合物(v/v)(30mL)からの結晶化により、無色の針状結晶6.0g (78%)を得た;
1H-NMR (CHCl3, 300MHz): δ= 7.90 (dd, J= 7.9, 1.1 Hz, 1 H), 7.67 (dd, J= 8.0, 1.1 Hz,1 H), 7.57 (dd, J=7.9, 0.9 Hz, 1 H), 7.13 (t, J= 8.1 Hz, 1 H), 6.99 (d, J = 8.3 Hz, 1 H), 6.93 (t, J = 7.9 Hz, 1H), 3.78 (s, 3H)
例5:2-ブロモ-6-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-2’-ヨード-6’-メトキシ-1,1’-ビフェニル(VIa; R1=Me および R3= シクロヘキシル)
−75℃において、ヘキサン(6.3mL)中におけるn-ブチルリチウム(10mmol)をジエチルエーテル(50mL)中における2-ブロモ-2’,6-ジヨード-6’-メトキシ-1,1’-ビフェニル(5.2 g, 10 mmol)の溶液に加えた。添加が終了した後、混合物をクロロジシクロヘキシルホスフィン(2.2mL, 2.3g, 10 mmol)で処理した。混合物を25℃に到達させ、塩化アンモニウムの飽和水溶液(20mL)で処理した。混合物を酢酸エチル (3×20mL)で抽出し、混合性の有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒の濃縮の後、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル; 9:1; v:v)によって精製し、目的の化合物を黄色がかった油として4.2g (72%)得た。
【0076】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 7.58 (d, J = 7.9 Hz, 1 H), 7.5 (m, 2 H), 7.17 (t, J = 7.7Hz, 1H), 7.01 (t, J = 8.1 Hz, 1 H), 6.80 (d, J = 8.3 Hz, 1 H), 3.62 (s, 3 H), 1.6 (m, 12H), 1.1(m, 10 H);
31P-NMR (CDCl3, 162MHz): δ = −2.1 (s)。
【0077】
例6:2-ブロモ-6-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-2’-ヨード-6’-メトキシ-1,1’-ビフェニル (VIa; R1=Meおよび R3= シクロヘキシル)
テトラヒドロフラン(13mL)中におけるブチルマグネシウムクロリド (5.0 mmol)の溶液に、ヘキサン(6.3mL)中におけるn-ブチルリチウム(10mmol)を0℃で加え、混合物を10分間撹拌した。テトラヒドロフラン(20mL)中における2-ブロモ-2’,6-ジヨード-6’-メトキシ-1,1’-ビフェニル(5.2 g, 10 mmol)の溶液を−75℃で加えた。−75℃で1時間撹拌した後、クロロジシクロヘキシルホスフィン(3.3mL, 3.5g, 15mmol)を加えた。25℃で2時間撹拌した後、混合物を塩化アンモニウムの飽和水溶液(20mL)で処理した。混合物を酢酸エチル (3×20mL)で抽出し、混合性の有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を濃縮した後、残留物をシリカゲルクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル; 9:1; v:v)によって精製し、黄色がかった油として目的の化合物を3.6 g (61%)得た。
【0078】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 7.58 (d, J = 7.9 Hz, 1 H), 7.5 (m, 2 H), 7.17 (t, J = 7.7Hz, 1H), 7.01 (t, J = 8.1 Hz, 1 H), 6.80 (d, J = 8.3 Hz, 1 H), 3.62 (s, 3 H), 1.6 (m, 12H), 1.1(m, 10H);
31P-NMR (CDCl3, 162 MHz): δ = −2.1 (s)。
【0079】
例7:2-ブロモ-6-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-2’-(ジフェニルホスフィノ)-6’-メトキシ-1,1’-ビフェニル (VIIa; R1=Me、R2= フェニル、およびR3 = シクロヘキシル)
−75℃において、ヘキサン(6.3mL)中におけるn-ブチルリチウム(10 mmol)を、ジエチルエーテル(20mL)における2-ブロモ-6-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-2’-ヨード-6’-メトキシ-1,1’-ビフェニル (5.9g, 10mmol)の溶液に加えた。15分後、クロロジフェニルホスフィン(1.8mL, 2.2g, 25mmol)を加えた。混合物を25℃に到達させた。塩化アンモニウムの飽和水溶液(20mL)を加え、有機層を分離した。水相を酢酸エチル (3×20mL)で抽出し、混合性の有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させた。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー (溶離液としてシクロヘキサン)によって精製し、黄色がかった油として目的の化合物を4.1g (63%)得た。
【0080】
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 7.46 (d, J=7.9 Hz, 1 H), 7.39 (d, J = 7.4 Hz, 1 H), 7.33 (dd, J = 7.7, 2.4 Hz, 1H), 7.2 (m, 12H), 6.82 (d, J = 7.4 Hz, 1 H), 3.65 (s, 3 H), 1.6 (m, 12H), 1.0(m, 10 H)。
【0081】
例8:2’-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-2-(ジフェニルホスフィノ)-6-メトキシ-1,1’-ビフェニル(Id; R1=Me、R2= フェニル、およびR3 =シクロヘキシル)
0℃において、ヘキサン(2.9mL)中におけるn-ブチルリチウム(4.6 mmol)を、トルエン(6.0mL)中における2-ブロモ-6-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-2’-(ジフェニルホスフィノ)-6’-メトキシ-1,1’-ビフェニル (2.5g, 3.9mmol)の溶液に加えた。1時間後、0℃において、メタノール(1 mL)を加え、続いて水(10 mL)を加え、有機層を分離した。水相をジクロロメタン(2×20mL)で抽出し、混合性の有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させた。残留物をシリカゲルクロマトグラフィー (ヘキサン:酢酸エチル; 9:1;v:v)によって精製し、 目的の化合物を0.94 g (43%)得た。酢酸エチル(10mL)からの結晶化により、無色の角柱結晶を得た。
【0082】
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 7.50 (d, J =7.8 Hz, 1 H), 7.2 (m, 12 H), 6.98 (t, J = 7.5Hz, 1 H), 8.83 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.66 (ddd, J = 7.7, 3.2, 0.9 Hz, 1 H), 6.57 (ddd, J = 7.5, 3.7, 1.2 Hz, 1 H), 3.64 (s, 3 H), 1.6 (m, 12 H), 1.1(m, 10 H);
31P-NMR (CDCl3, 162MHz): δ = −8.7 (d, J = 13.1 Hz), −13.4 (d, J = 13.2 Hz);
C37H42OP2 (564.27): 計算(%) C 78.70, H 7.50; 実測 C78.42, H 7.65。
【0083】
例9:6-ブロモ-2,6’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-2’-メトキシ-1,1’-ビフェニル(VIIb; R1=Meおよび R2= R3 = フェニル)
−75℃において、ヘキサン(57mL)中におけるn-ブチルリチウム(0.10 mol)を、テトラヒドロフラン(0.25L)中における化合物Va(26 g, 50 mmol)の溶液に加えた。反応混合物をテトラヒドロフラン(50mL)中におけるクロロジフェニルホスフィン (18 mL, 22g, 100mmol)の2.0Mで処理した。混合物を25℃に到達させ、塩化アンモニウムの飽和水溶液(0.20 L)で処理した。反応混合物を酢酸エチル (3×0.10L)で抽出し、混合性の有機層を硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を蒸発させ、酢酸エチル (0.10L)から結晶化することにより、無色の針状結晶を得た;
m.p. 224 〜 226℃ (分解);
1H-NMR (CDCl3, 400MHz): δ = 7.56 (dd, J = 8.0, 1.3 Hz, 1 H), 7.38 (dt, J = 7.0, 1.6 Hz, 2 H), 7.3 (m, 12H), 7.1(m, 6 H), 6.99 (ddd, J = 7.7, 2.9, 1.3 Hz, 1 H), 6.8 (m, 3 H), 6.63 (d, J = 8.6Hz, 1 H), 3.01 (s, 3 H);
31P-NMR (CDCl3, 162 MHz): δ = −10.1 (d, J = 24.6 Hz), −13.9 (d, J =24.9Hz);
C37H29BrOP2 (631.49): 計算 (%) C 70.37, H 4.63; 実測 C69.13, H4.60。
【0084】
例10〜12:
リガンドIb、Ia、およびIcは、スキーム2に従って調製された。
【0085】
例10:2,2’-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)- 6-メトキシ-1,1’-ビフェニル (Ib; R1=Me, R2= R3 = シクロヘキシル)
無色の立方体結晶;m.p. 220 〜 221℃ (分解);
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ= 7.56 (m sym., 1H), 7.4(m, 3 H), 7.16 (d, J = 7.5 Hz, 1H), 7.08 (m sym., 1H), 6.88 (d, J = 7.8 Hz, 1H), 3.66(s, 3 H), 1.7 (m, 24 H), 1.2 (m, 20H);
31P-NMR (CDCl3, 162MHz): δ = −9.9 (d, J =12.1Hz), −11.5 (d, J = 12.2 Hz);
C37H54OP2 (576.79): 計算(%) C 77.05, H9.44; 実測 C77.17, H9.14。
【0086】
例11:2’,6-ビス(ジフェニルホスフィノ)-2-メトキシ-1,1’-ビフェニル (Ia; R1=Me およびR2=R3= フェニル)
無色の角柱結晶; m.p. 227 〜 228℃ (分解);
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz):δ = 7.3 (m, 18 H), 7.15 (dt, J = 6.8, 2.6 Hz, 4H), 7.06 (dt, J = 7.3, 1.7Hz, 2 H), 6.82 (dd, J = 7.6, 4.2 Hz, 1 H), 6.77 (d, J = 8.2 Hz, 1H), 6.66 (dd, J = 7.9 Hz, 3.1, 1 H), 3.22 (s, 3 H);
31P-NMR (CDCl3, 162 MHz): δ = −13.1 (d, J = 17.8 Hz), −13.6 (d, J = 17.8 Hz);
C37H30OP2 (552.59): 計算(%) C80.42, H 5.47; 実測 C80.53, H 5.52。
【0087】
例12:6-ジシクロヘキシルホスファニル-2’-ジフェニルホスファニル-2-メトキシ-1,1’-ビフェニル (Ic; R1=Me、R2=シクロヘキシル、およびR3= フェニル)
m.p. 170 〜 171℃;
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 7.3 (m, 16 H), 6.78 (d, J = 7.9 Hz, 1 H), 3.23 (s, 3H);
31P-NMR (CDCl3, 162 MHz): δ = −11.3 (d, J = 10.7 Hz), −14.0 (d, J= 10.8 Hz);
C37H42OP2 (564.69): 計算(%) C 78.70, H 7.50; 実測 C 78.59, H7.43。
【0088】
例13:(-)- および(+)-6-ジシクロヘキシルホスファニル-2'-ジフェニルホスフィノ-2-メトキシ-1,1'-ビフェニル (Ic; R1 = Me、R2 = シクロヘキシル、およびR3 =フェニル)
ラセミのジホスフィンIcを、キラル固定相を用いた分取クロマトグラフィーによって鏡像異性体に分離した。用いたカラムはキラルセル(CHIRALCEL:登録商標)OD 20μmであり、移動相はn-ヘプタン / EtOH (2000:1; v:v)であった。ラセミの物質360mgから、142mgの(+)-6-ジシクロヘキシルホスファニル-2’-ジフェニルホスファニル-2-メトキシ-1,1’-ビフェニルおよび123mgの(-)-6-ジシクロヘキシルホスファニル-2’-ジフェニルホスファニル-2-メトキシ-1,1’-ビフェニルを分離した。両方の化合物の鏡像異性体純度は100%であり (分析用のキラルセル(CHIRALCEL登録商標)、OD 10 μm カラムを用いたHPLCによって測定)、(-)異性体の旋光度はαD24 (CH2Cl2においてc = 0.5) = −1.4であった。
【0089】
例14〜16:
キラルリガンド(-)- および(+)-Ib、(-)- および(+)-Ia、ならびに(-)- および(+)-Idは、例13に従って、対応するラセミのジホスフィンの分離によって調製される。
【0090】
例14:(-)- および (+)-2’,6-ビスジシクロヘキシルホスフィノ-2-メトキシ-1,1’-ビフェニル (Ib; R1 = Me, R2 = R3 = シクロヘキシル)
鏡像異性体純度は、(-)-異性体について99.2%であり、(+)-異性体について96.9%であり(分析用のキラルセル(CHIRALCEL登録商標)、OD 10 μm カラムを用いたHPLCによって測定)、(+)-異性体の旋光度はαD24 (CH2Cl2においてc=0.5)= 16.4であった。
【0091】
例15:(-)- および (+)-2’,6-ビス(ジフェニルホスフィノ)-2-メトキシ-1,1’-ビフェニル (Ia; R1 = Me, R2 = R3 = フェニル)
(+)-異性体の旋光度は、αD20 (CHCl3においてc=0.5)= 6.0である。
【0092】
例16:(-)- および(+)-2’-(ジシクロヘキシルホスフィノ)-2-(ジフェニルホスフィノ)-6-メトキシ-1,1’-ビフェニル(Id; R1=Me、R2=フェニル、およびR3 = シクロヘキシル)
(-)-異性体の旋光度は、αD20 (CH2Cl2においてc=0.5)= −34.9であった。
【0093】
例17:(S)-エチル 3-ヒドロキシブチレート
150 mLのオートクレーブ中、アルゴン雰囲気下において、RuCl3 (5.3 mg, 0.026 mmol)、(+)-リガンドIa (14.3 mg, 0.026 mmol)、および アセト酢酸エチル(0.65 g, 5.0 mmol)を、脱気したエタノール(30 mL)中に溶解する。アルゴンでオートクレーブを洗浄した後、水素化を50℃、4バールの水素圧で6時間行う。室温まで冷却した後、変換について反応溶液を直接GCによって分析し(カラム: HP-101 25m / 0.2mm)、無水トリフルオロ酢酸を用いた誘導体化の後、鏡像体過剰率を分析する(カラム: Lipodex-E 25 m / 0.25 mm)。99.0%のeeにおいて、変換は99.7%である。
【0094】
例18:(R)-エチル 3-ヒドロキシブチレート
15 mLのオートクレーブ中において、アルゴン雰囲気下で、RuCl3 (1.5 mg, 0.007 mmol)、(-)-リガンドIb (4.3 mg, 0.007 mmol)、およびアセト酢酸エチル(0.15 g, 1.1 mmol)を、脱気したエタノール(7 mL)中に溶解する。オートクレーブをアルゴンで洗浄した後、50℃、4バールの水素圧で15時間、水素化を行う。室温まで冷却した後、変換について反応溶液を直接GCによって分析し(カラム: HP-101 25m / 0.2mm)、無水トリフルオロ酢酸を用いた誘導体化の後、鏡像体過剰率を分析した (カラム: Lipodex-E 25 m / 0.25 mm)。86.7%のeeにおいて、変換は98.3%である。
【0095】
例19:(R)-エチル 4-クロロ-3-ヒドロキシブチレート
150 mLのオートクレーブ中において、アルゴン雰囲気下で、ビス (1-イソプロピル-4-メチルベンゼン)ジクロロルテニウム(7.6 mg, 0.012 mmol)、(+)-リガンドIa (14.0mg, 0.025 mmol)、およびエチル4-クロロ-3-オキソブチレート98.4% (0.83 g, 5.0 mmol)を、脱気したエタノール(30mL)中に溶解する。アルゴンでオートクレーブを洗浄した後、80℃、4バールの水素圧で4時間、水素化を行う。室温まで冷却した後、変換(カラム: HP-101 25m / 0.2mm)およびee(カラム: Lipodex-E 25 m / 0.25 mm)について反応溶液をGCによって直接分析する。88%のeeにおいて、変換は99.9%である。
【0096】
例20:(S)-エチル 4-クロロ-3-ヒドロキシブチレート
150 mLのオートクレーブ中において、アルゴン雰囲気下で、ビス (1-イソプロピル-4-メチルベンゼン)ジクロロルテニウム (7.5 mg, 0.012 mmol)、(+)-リガンドIc (14.4 mg, 0.025 mmol)、およびエチル 4-クロロ-3-オキソブチレート (0.83 g, 5.0mmol)を、脱気したエタノール(30 mL)中に溶解する。アルゴンでオートクレーブを洗浄した後、80℃、4バールの水素圧で3時間、水素化を行う。室温まで冷却した後、変換(カラム: HP-101 25 m / 0.2 mm)およびee (カラム: Lipodex-E 25 m / 0.25 mm)について、直接GCによって分析する。80%のeeにおいて、変換は100%である。
【0097】
例21:N-アセチル-D-フェニルアラニン
15 mLのオートクレーブ中において、アルゴン雰囲気下で、ビス(ベンゼン)ジクロロ-ルテニウム(2.6 mg, 0.005mmol)、(+)-リガンドIa (6.0 mg, 0.011 mmol)、およびN-アセチルアミノケイ皮酸(0.53g, 2.5mmol)を、脱気したメタノール(5 mL)中に溶解する。オートクレーブをアルゴンで洗浄した後、40℃、50バールの水素圧で16時間、水素化を行う。室温まで冷却した後、反応溶液を蒸発させ、変換(カラム: Bischoff Kromasil 100 C8)および鏡像体過剰率(カラム: Nucleodex b-PM)について、残留物をHPLCにより分析する。43%のeeにおいて、変換は100%である。
【0098】
例22:N-アセチル-L-フェニルアラニン
15 mLのオートクレーブ中において、アルゴン雰囲気下で、ビス(ベンゼン)ジクロロ-ルテニウム(2.6 mg, 0.005 mmol), (-)-リガンドIb (3.2 mg, 0.006 mmol)、および2-(N-アセチルアミノ)-ケイ皮酸(0.53g, 2.5mmol)を脱気したメタノール(5 mL)中に溶解する。オートクレーブをアルゴンで洗浄した後、40℃、50バールの水素圧で15時間、水素化を行う。室温まで冷却した後、反応溶液を蒸発させ、変換(カラム: Bischoff Kromasil 100 C8)および鏡像体過剰率(カラム: Nucleodex b-PM)について、残留物をHPLCにより分析する。66%のeeにおいて、変換は34%である。
【0099】
例23:(S)-2-アセチルアミノ-3-フェニル-プロピオン酸メチルエステル
15 mLのオートクレーブ中において、アルゴン雰囲気下で、ビス(1,5-シクロオクタジエン)-ロジウム(I) テトラフルオロボラート(1.9 mg, 0.005mmol)、(+)-リガンドIc (2.8 mg, 0.005 mmol)、およびメチル2-(N-アセチルアミノ)-シンナメート(0.10g, 0.5mmol)を、脱気したメタノール(6 mL)中に溶解する。オートクレーブをアルゴンで洗浄した後、25℃、2バールの水素圧で15時間、水素化を行う。室温まで冷却した後、反応溶液を蒸発させ、変換についてはHPLCによって(カラム: Bischoff Kromasil 100 C8)、鏡像体過剰率についてはGCによって(カラム: Lipodex-E 25 m / 0.25mm)残留物を分析する。93.8%のeeにおいて、変換は100%である。
【0100】
例24:(R)-N-ベンジル-1-フェニルエチルアミン
15 mLのオートクレーブ中において、アルゴン雰囲気下で、ビス(1,5-シクロオクタジエン)-ジ(イリジウム(I)ジクロリド) 98% (6.7 mg, 0.010 mmol)、(+)-リガンドIa (11.0 mg, 0.020 mmol)、ベンジルアミン(5.6 mg, 0.052 mmol)、およびN-ベンジル-N-(1-フェニルエチリデン)アミン(0.21 g, 1.0 mmol)を、脱気したメタノール(5 mL)中に溶解し、室温で1時間撹拌する。オートクレーブをアルゴンで洗浄した後、30℃、50バールの水素圧で17時間、水素化を行う。変換(カラム: HP-101 25 m / 0.2 mm)および鏡像体過剰率(カラム: Macherey-Nagel, Nucleodex Beta-PM CC200/4)について、反応溶液を直接GCによって分析する。29%のeeにおいて、変換は100%である。
【0101】
例25:(S)-N-ベンジル-1-フェニルエチルアミン
15 mLのオートクレーブ中において、アルゴン雰囲気下で、ビス(1,5-シクロオクタジエン)-ジ(イリジウム(I)ジクロリド) 98% (6.7 mg, 0.010 mmol)、(+)-リガンドIc (5.7 mg, 0.010 mmol)、ベンジルアミン(5.6 mg, 0.052 mmol)、およびN-ベンジル-N-(1-フェニルエチリデン)アミン(0.21 g, 1.0 mmol)を、脱気したメタノール(5 mL)中に溶解し、室温で1時間撹拌する。オートクレーブをアルゴンで洗浄した後、30℃、50バールの水素圧で15時間、水素化を行う。変換(カラム: HP-101 25 m/0.2 mm)および鏡像体過剰率(カラム: Macherey-Nagel, Nucleodex Beta-PM CC200/4)について、GCにより反応溶液を直接分析する。10%のeeにおいて、変換は100%である。
【0102】
例26:(R)-ジメチル メチルスクシネート
15mLのオートクレーブ中において、アルゴン雰囲気下で、ビス(1,5-シクロオクタジエン)-ロジウム(I) テトラフルオロボラート (2.1 mg, 0.005 mmol)、およびリガンド(+)-Ic (3.1 mg, 0.005 mmol)を5mLの脱気したメタノール中に溶解する。ジメチルイタコネート(97%, 0.15 g, 0.9 mmol)を、シリンジを用いて加える。オートクレーブをアルゴンで洗浄した後、23℃、2バールの水素圧で15時間、水素化を行う。変換(カラム: HP-101 25 m / 0.2 mm)および鏡像体過剰率(カラム: Macherey-Nagel, Nucleodex Beta-PM CC200/4)について、反応溶液をGCによって直接分析する。30%のeeにおいて、変換は100%である。
【0103】
例27:(R)-ジメチル メチルスクシネート
15mLのオートクレーブ中において、アルゴン雰囲気下で、ビス(1,5-シクロオクタジエン)-ロジウム(I) テトラフルオロボラート(2.1 mg, 0.005 mmol)、および(-)-リガンドIb (3.2 mg, 0.006 mmol)を、脱気したメタノール5mLに溶解する。ジメチルイタコネート (97%, 0.15 g, 0.9mmol)を、シリンジを用いて加える。オートクレーブをアルゴンで洗浄した後、23℃、2バールの水素圧で15時間、水素化を行う。変換(カラム: HP-101 25 m / 0.2mm)および鏡像体過剰率(カラム: Macherey-Nagel, Nucleodex Beta-PM CC200/4)について、反応溶液をGCにより直接分析する。24%のeeにおいて、変換は60%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式の非対称的に置換されたビアリールジホスフィンリガンドの調製方法であって:
【化1】

[ここで、式中のR1は、1以上のハロゲン原子で任意に置換されたC1〜6-アルキルまたはC3〜10-シクロアルキルであり、
R2およびR3は、独立に、アリール、C5〜10-シクロアルキル、およびC1〜6-アルキルからなる群より選択され、ここでの各アリール部分は、任意に、ハロゲン原子、ニトロ、アミノ、C1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、およびジ-C1〜6-アルキルアミノ基からなる群より選択される1以上の置換基で置換され、且つR2およびR3におけるC1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、ジ-C1〜6-アルキルアミノ、およびC5〜10-シクロアルキル基はそれぞれ、1以上のハロゲン原子で任意に置換される]
前記方法は、第1の反応手順であって、以下の2,2’,6,6’-テトラブロモビフェニルの臭素原子の1つがハロゲン-金属交換およびそれに続く金属-ヒドロキシ交換、それに続くアルキル化によってOR1と交換され、
【化2】

R1が上記で定義した通りである次式の化合物を得ることと、
【化3】

第2の反応手順であって、式IVの化合物の各アリール部分の臭素原子の1つが、ハロゲン-金属交換およびそれに続く金属-ヨウ素交換によりヨウ素と交換され、次式の化合物を得ることと、
【化4】

さらなる反応手順であって、それぞれの反応手順が、少なくとも1のハロゲン-金属交換およびそれに続くそれぞれの置換基との金属-置換基交換を含み、それにより、それぞれの臭素原子を水素、ジアリールホスフィノ、ジ-C1〜6-アルキルホスフィノ、およびジ-C5〜10-シクロアルキルホスフィノからなる群より選択される置換基と交換する反応を含んでなる方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記最初のハロゲン-金属交換は、−40℃以下の温度で1当量のn-ブチルリチウムを用いて行われ、金属-ヒドロキシ交換は、金属化された中間体をボランまたはオルガノボラートと反応させること、およびそれに続いてアルカリおよび/またはアルカリ土類水酸化物の存在下でペルオキシ化合物と反応させることにより行われ、アルキル化は、塩基の存在下においてアルキル化剤を用いて行われる方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記ボランまたはオルガノボラートがフルオロメトキシボランエチルエーテル付加体またはトリメチルボラートである方法。
【請求項4】
請求項2または3に記載の方法であって、前記ペルオキシ化合物が、過酸化水素、過酢酸、m-クロロ過安息香酸、およびtert-ブチルペルオキシドからなる群より選択される方法。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の方法であって、前記アルキル化剤が、C1〜6-ハロゲン化アルキル、C5〜10-ハロゲン化シクロアルキル、または硫酸ジメチルである方法。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の方法であって、前記第2の反応手順の金属-ヨウ素交換が、金属の当量当り少なくとも1モルのヨウ素元素を用いて行われる方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法であって、前記さらなる反応手順は、式Vの化合物を用いて開始され、2つのハロゲン原子を含むアリール部分の1つのヨウ素原子のハロゲン-金属交換およびそれに続く金属-ホスフィン交換により、次式の化合物を得ることと、
【化5】

[式中のR1は上記で定義した通りであり、
R3は、アリール、C5〜10-シクロアルキル、およびC1〜6-アルキルからなる群より選択され、ここでのアリール部分は、任意に、ハロゲン原子、ニトロ、アミノ、C1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、およびジ-C1〜6-アルキルアミノ基からなる群より選択される1以上の置換基で置換され、且つR3におけるC1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、ジ-C1〜6-アルキルアミノ、およびC5〜10-シクロアルキル基はそれぞれ、1以上のハロゲン原子で任意に置換される]
さらに、式VIの化合物の残りのヨウ素原子を、低温ハロゲン-金属交換およびそれに続く金属-ホスフィン交換において置換し、次式の化合物を得ることと、
【化6】

[式中のR1は上記で定義した通りであり、
R2およびR3は、独立に、アリール、C5〜10-シクロアルキル、およびC1〜6-アルキルからなる群より選択され、ここでの各アリール部分は、任意に、ハロゲン原子、ニトロ、アミノ、C1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、およびジ-C1〜6-アルキルアミノ基からなる群より選択される1以上の置換基で置換され、且つR2およびR3におけるC1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、ジ-C1〜6-アルキルアミノ、およびC5〜10-シクロアルキル基はそれぞれ、1以上のハロゲン原子で任意に置換される]
さらに、式VIIの残りの臭素原子を、高温ハロゲン-金属交換およびそれに続くプロトン供与体との反応により水素と置換し、次式のリガンドを得ることを含んでなる方法。
【化7】

[式中のR1、R2、およびR3は上記の化合物VIIにおいて定義した通りである]
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、前記ハロゲン-金属交換および金属-ホスフィン交換の手順のそれぞれが、2当量のそれぞれの試薬を用いて行われる方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の方法であって、前記低温ハロゲン-金属交換がそれぞれ、−40℃以下、好ましくは−40〜−90℃の範囲の温度で、n-ブチルリチウムを用いて行われる方法。
【請求項10】
請求項7または8に記載の方法であって、前記高温ハロゲン-金属交換が、少なくとも+0℃、好ましくは+0〜+40℃の範囲の温度で、n-ブチルリチウムまたはtert-ブチルリチウムを用いて行われる方法。
【請求項11】
請求項7または8に記載の方法であって、前記金属-ホスフィン交換が次式のハロホスフィンを用いて行われる方法:
【化8】

ここで、式中のXは、塩素、臭素、またはヨウ素であり、Rは同じであってR2またはR3であり、ここでのR2およびR3は上記で定義した通りである。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、前記式VIIIのハロホスフィンは、ハロジ-(C5〜10-シクロアルキル)ホスフィンおよびハロ-ジアリールホスフィンからなる群より選択され、好ましくはクロロジシクロヘキシルホスフィン、ブロモジシクロヘキシルホスフィン、クロロジフェニルホスフィン、またはブロモジフェニルホスフィンからなる群より選択される方法。
【請求項13】
請求項7〜12のいずれか1項に記載の方法であって、前記水素供与体が、C1〜3-アルコール、水、HCl、およびC1〜3-アルカン酸からなる群より選択される方法。
【請求項14】
次式の化合物:
【化9】

ここで、式中のR1は、1以上のハロゲン原子で任意に置換されたC1〜6-アルキルまたはC3〜10-シクロアルキルであり、
R2およびR3は、独立に、アリール、C5〜10-シクロアルキル、およびC1〜6-アルキルからなる群より選択され、ここでの各アリール部分は、任意に、ハロゲン原子、ニトロ、アミノ、C1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、およびジ-C1〜6-アルキルアミノ基からなる群より選択される1以上の置換基で置換され、且つR2およびR3におけるC1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、ジ-C1〜6-アルキルアミノ、およびC5〜10-シクロアルキル基はそれぞれ、1以上のハロゲン原子で任意に置換される。
【請求項15】
次式の化合物:
【化10】

ここで、式中のR1は、1以上のハロゲン原子で任意に置換されたC1〜6-アルキルまたはC3〜10-シクロアルキルである。
【請求項16】
次式の化合物:
【化11】

ここで、式中のR1は、1以上のハロゲン原子で任意に置換されたC1〜6-アルキルまたはC3〜10-シクロアルキルであり、
R3は、アリール、C5〜10-シクロアルキル、およびC1〜6-アルキルからなる群より選択され、ここでの各アリール部分は、任意に、ハロゲン原子、ニトロ、アミノ、C1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、およびジ-C1〜6-アルキルアミノ基からなる群より選択される1以上の置換基で置換され、且つR3におけるC1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、ジ-C1〜6-アルキルアミノ、およびC5〜10-シクロアルキル基はそれぞれ、1以上のハロゲン原子で任意に置換される。
【請求項17】
次式の化合物:
【化12】

ここで、式中のR1は、1以上のハロゲン原子で任意に置換されたC1〜6-アルキルまたはC3〜10-シクロアルキルであり、
R2およびR3は、独立に、アリール、C5〜10-シクロアルキル、およびC1〜6-アルキルからなる群より選択され、ここでの各アリール部分は、任意に、ハロゲン原子、ニトロ、アミノ、C1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、およびジ-C1〜6-アルキルアミノ基からなる群より選択される1以上の置換基で置換され、且つR2およびR3におけるC1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、ジ-C1〜6-アルキルアミノ、およびC5〜10-シクロアルキル基はそれぞれ、1以上のハロゲン原子で任意に置換される。
【請求項18】
遷移金属、好ましくはルテニウム、ロジウム、またはイリジウムの触媒活性を有する錯体の調製のための、次式Iの化合物の使用:
【化13】

ここで、式中のR1は、1以上のハロゲン原子で任意に置換されたC1〜6-アルキルまたはC3〜10-シクロアルキルであり、
R2およびR3は、独立に、アリール、C5〜10-シクロアルキル、およびC1〜6-アルキルからなる群より選択され、ここでの各アリール部分は、任意に、ハロゲン原子、ニトロ、アミノ、C1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、およびジ-C1〜6-アルキルアミノ基からなる群より選択される1以上の置換基で置換され、且つR2およびR3におけるC1〜6-アルキル、C1〜6-アルコキシ、ジ-C1〜6-アルキルアミノ、およびC5〜10-シクロアルキル基はそれぞれ、1以上のハロゲン原子で任意に置換される。

【公表番号】特表2008−503506(P2008−503506A)
【公表日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517123(P2007−517123)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006063
【国際公開番号】WO2006/002729
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(398075600)ロンザ ア−ゲ− (58)
【Fターム(参考)】