説明

非対称積層製剤製造方法

【課題】基材上にインクジェットヘッドで材料を順次滴下・乾燥を繰り返して作製するマイクロカプセルでは、少なくともバリア層と薬剤層と腸溶層の3層を順次積層して完成させる。しかし、積層の工程中、最終的には体外に排出されるバリア層に薬剤層の一部が溶けると、予定していた薬用効果が発揮できないおそれがあるという課題があった。
【解決手段】基材に直接接触する第一層目にバリア層を配設させ、バリア層が乾燥してから薬剤層を塗布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に少なくとも2層の液滴層を積層状に吐出形成して乾燥させて非対称積層製剤を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬効を示す薬剤には、経口投与後の消化管からの吸収が悪い、若しくは胃で分解されるなどの理由で、バイオアベイラビリティが低いものがある。このような薬物を効率よく摂取するために、小腸粘膜付着性貼付剤(以下「GI−MAPS」と呼ぶ。)が提案されている(特許文献1、2参照)。
【0003】
GI−MAPSは、pH感受性(以後「腸溶性」という。)ポリマーフィルムで構成された基底層と、水不溶性ポリマーで構成された表層で袋状の容器を構成し、その中に薬剤を注入する。
【0004】
基底層と表層は液密にシールをしなければ、内容物である薬剤が漏れたり、また胃酸などが容器内に浸漬し、薬剤が失活する。そこで、基底層と表層は熱でシールされていた。
【0005】
ところが、熱でシールすると加熱された熱によって容器中の薬剤が失活するおそれがあるという課題があった。特許文献1はこの課題に対して、腸溶性ポリマーフィルムと、水不溶性ポリマーフィルムを合わせて、腸溶性ポリマー濃厚液若しくは水不溶性ポリマー濃厚液を伸展し、表層と基底層を溶融接着する技術が開示されている。
【0006】
特許文献1はまた、先に表層と基底層を熱でシールしておき、一か所に作っておいた穴から薬剤を注入し、その穴を接着剤か加熱圧着する技術が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、水不溶性のミニカプセルやマイクロカプセルを半分に割って、中に薬物を充填し、腸溶性ポリマーのフィルムで蓋をする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−338456号公報
【特許文献2】特表2002−531394号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載された製剤の製造は大きさが直径6mm、深さが2mmというミニカプセルを対象にしている技術である。大きさが50μmから2mmといったマイクロカプセルにした時は、腸溶性ポリマーおよび水不溶性ポリマーで構成された容器を熱でシールするのは、非常に困難である。
【0010】
また、特許文献2に記載された製剤の製造方法では、水不溶性ポリマーの半球状のお椀の中に薬剤を入れ、腸溶性ポリマーで蓋をするため、やはり大きさがマイクロオーダーの大きさのカプセルを作製するのは困難である。
【0011】
一方、マイクロオーダーのカプセルを作製するには、インクジェットを用いた塗布技術を用い、腸溶性ポリマー、薬剤、および水不溶性ポリマーを順に重ねて塗布して作製することが考えられる。ここで、製剤は、人体に入るものであるので、安全性が重要である。すなわち、人体に無害であって、しかもポリマーや薬剤を溶解できる溶媒が必要である。すると、腸溶性ポリマー、薬剤、水不溶性ポリマーに対して用いる溶剤は、類似している場合が多い。
【0012】
この事は、積層する処理を行うと、事前に塗布した層を、その上に塗布した層が溶かす現象を生じさせることを意味する。すると、薬剤を含む層を塗布した後に、バリア層を塗布すると、バリア層中に薬剤の一部が溶け込んでしまう。バリア層は、体内に入った後は、どの器官でも溶けずに最終的に排出される部分であるので、このバリア層に薬剤の一部が溶け込んでしまうことは、予定した薬剤の量が腸の中で放出されないという課題につながった。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題に鑑み想到されたものであり、基材上に直接接する第1層をバリア層とし、バリア層乾燥後に薬剤層を塗布して、バリア層に溶け込む薬剤量を少なくした製剤とその製造方法を提供するものである。
【0014】
具体的には、本発明は、
基材上に少なくとも1種類の薬剤溶液を含む複数種類の溶液を順次、滴下・乾燥し、積層化する非対称積層製剤の製造方法であって、
前記基材に直接接する第1層目にバリア層を塗布する工程と、
前記バリア層の塗布後に薬剤層を塗布する工程と、
前記薬剤層の次に腸溶層を塗布する工程を含む非対称積層製剤の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明の非対称積層製剤の製造方法は、前記バリア層を形成するための溶液と前記基材との接触角θが30度≦θ≦95度の範囲であるのが望ましい。
【0016】
この場合には、簡単に積層体を基材から剥離することができる。ここで、接触角θを30度≦θ≦95度の範囲の所定の値に設定するのは、接触角が30度未満であれば基材から非対称積層製剤を剥離させることが困難であり、接触角が95度より大きければ基材に非対称積層製剤を適度に付着させることができず、積層化の段階で剥離してしまい積層化できないからである。
【0017】
すなわち、必要とする工程数を大幅に少なくすることができ、しかも、ウェット環境での処理を不要にすることができる。そして、切断装置などを不要にすることができるので、非対称積層製剤を製造するための装置全体としての構成を簡素化することができる。
【0018】
また、本発明の非対称積層製剤の製造方法は、前記バリア層の液滴を構成する溶液の表面張力γを、20mN/m≦γ≦70mN/mの範囲の所定の値に設定することが好ましい。ここで、表面張力γを、20mN/m≦γ≦70mN/mの範囲に設定するのは、20mN/mよりも低いと界面張力の低い基材を用いても簡単に積層体を基材から剥離することができないからである。また、70mN/mよりも高いと界面張力の高い基材を用いても積層体が適度に付着しない為、積層させることが困難であるからである。
【0019】
また、本発明の非対称積層製剤の製造方法は、前記非対称積層製剤の各層液滴を構成する溶液の粘度μを、溶液の温度が20℃〜40℃の範囲で1mPa・s≦μ≦200mPa・sの範囲の所定の値に設定することが好ましい。吐出機構により適正な粘度範囲があるが、圧電素子またはサーマル方式による方式では1mPa・s〜20mPa・sが適正な粘度範囲であり、加圧バルブ開閉方式では200mPa・sが吐出可能な上限粘度範囲であるからである。また、粘度を上記のように設定することにより、常温において吐出状態を安定化することも可能となり、簡単に積層体を基材から剥離することができる。
【0020】
また、本発明の非対称積層製剤製造方法は、バリア層の基材への着弾液滴直径が50μmから2mmの範囲で好適に利用することができる。本発明は、製剤が微小になった際の課題を解決するために想到されたものだからである。
【0021】
また、本発明の非対称積層製剤の製造方法は、バリア層と腸溶層の何れか一方、若しくは両方の層に0.05wt%以上8wt%以下の可塑剤を含んでよい。
【0022】
また、本発明は、
酸若しくはアルカリ溶液に溶解しなく、平面状に形成されたバリア層と、
前記バリア層上に形成された薬剤層と、
前記薬剤層を覆い、前記バリア層と周囲を液密に溶着し、弱アルカリ溶液に溶解する腸溶層を有する非対称積層製剤を提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の非対称積層製剤製造方法では、微小な薬剤カプセルを作製する際に、バリア層を最初に形成しておき、バリア層の上に薬剤層を塗布する事としたので、薬剤層はバリア層に溶け込まず、予定した薬剤量が全て腸内で放出されるという効果を得ることができる。
【0024】
さらに、積層した際に基底層となるバリア層と、最終層となる最外層(腸溶層)のいずれか、または両方の層に可塑剤を含めることでバリア層と腸溶層の密着性はさらに高まり、より薬剤層の液密性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の非対称積層製剤製造装置の一実施形態を示す概略正面図である。
【図2】同上の斜視図である。
【図3】同上の平面図である。
【図4】本発明の非対称積層製剤製造方法の一実施形態を説明する概略図である。
【図5】4層構造の非対称積層製剤を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して、本発明の非対称積層製剤の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0027】
図1は本発明の非対称積層製剤の製造方法が適用される非対称積層製剤の製造装置の一例を示す概略正面図、図2は同斜視図、図3は同平面図である。
【0028】
この非対称積層製剤製造装置は、金属ベルト、例えばステンレスの表面にフッ素樹脂が施されたもの、またはポリエステルシート、PTFE、FEP、PFA、ETFEなどからなる基材2を基材搬送機構1により所定方向に間欠的に移動させ、基材2の上方に設けられた吐出ヘッド3a、3b、3cにより順次液滴を吐出させ、基材表面上に基材2の移動方向(X方向)及び基材2の幅方向(Y方向)に間欠的に移動停止を繰り返しながら格子状の交点上に非対称積層製剤を製造する装置である。
【0029】
なお、基材は、金属やプラスチックシートの表面にシリコン、または、剥離性を調整する薄膜等をコーティングしたもの、または、プラズマ処理を施し剥離性を調整したものを基材として使用しても良い。
【0030】
各々異なる吐出液を備えた吐出ヘッド3a、3b、3cの各々は基材2の表面より所定の高さだけ上方に吐出ヘッド先端が配置されており、各々が基材2の表面に向かってそれぞれ異なる種類の溶液を順次吐出する様になっている。なお、基材2の表面と吐出ヘッドの先端との距離は、各吐出ヘッド位置での液滴吐出完了後の積層液滴の未乾燥状態での高さより大きくし、吐出ヘッドの先端が積層液滴と接触しない様にすることが重要である。
【0031】
更に、吐出ヘッド3は基材2の幅方向(Y方向)に移動可能な様に、従来公知の駆動機構4を備えている。順次製造された非対称積層製剤6は基材搬送機構1により搬送され、剥離機構5により基材2と非対称積層製剤6とに離形され、捕集機構7により各々の非対称積層製剤6が回収される。
【0032】
前記剥離機構5は、例えば、スクレイパーにより直接非対称積層製剤を離形させているが、非対称積層製剤6の剥離部分の直下に超音波振動を印加させる機構や、エアシャワーの様な非接触による剥離機構を用いても良く、種々の構成のものが採用可能であるが、出来る限りエネルギーが少なくて済む簡単なスクレイパー方式が適当である。
【0033】
また、必要に応じて吐出ヘッド3a、3b、3cの間、さらに吐出ヘッド3cの後段に、積層液滴を乾燥させるための機構を備えて乾燥させても良く、捕集機構7にて回収された非対称積層製剤6をバッチにより乾燥させることも可能である。基材搬送方向に設置される前記吐出ヘッドの個数は、非対称積層製剤6の層数と等しい個数に設定されている。
【0034】
そして、基材2から剥離された非対称積層製剤6は、捕集機構7によって捕集される。捕集機構7によって捕集された非対称積層製剤6は、必要に応じて、カプセルなどの容器に所定量ずつ収容することにより、定量ずつの使用を簡単に達成することができる。
【0035】
以上の説明から分かるように、全工程をドライ環境下で行うことができ、基材を溶剤などで溶解させて非対称積層製剤を分離させ、次いで捕集、乾燥などを行う場合と比較して、全体としての工程数を減少させ、かつ作業を容易にすることができる。
【0036】
ここで示した一例は連続生産であるが、枚葉式で各工程がバッチ生産による方式でも良い。また製剤の乾燥は温度や、波長による失活の可能性があるため真空乾燥が好ましい。
【0037】
図4は本発明の非対称積層製剤製造方法の一実施形態を説明する概略図である。以下、図4を参照して、定常状態に入った後の実施形態を述べる。
【0038】
搬送機構1および駆動機構4により基材2は間欠的に移動、停止を繰り返す。基材が停止した際に、基材の走行方向に配置された吐出ヘッド3a、3b、3cから第1層目、第2層目、第3層目を構成するための溶液が滴下される。
【0039】
基材上に滴下される最初の溶液は、吐出ヘッド3aから吐出され、第1層目であるバリア層6aを構成する溶液である(図4(A))。次に滴下される溶液は、吐出ヘッド3bから吐出され、第2層目の薬物層6bを構成する溶液である(図4(B))。最後に滴下される溶液は、吐出ヘッド3cから吐出され、腸溶層6cを構成する溶液である(図4(C))。
【0040】
次に、基材2と基材上に形成された非対称積層製剤6を真空、ヒーター、赤外線、温風等を用いた乾燥機構を通すことにより、乾燥させる(図4(D))。更に、剥離機構5を通すことにより、基材2から非対称積層製剤6を剥離させ、捕集機構7により捕集する(図4(E))。
【0041】
本発明では、吐出ヘッドとして超音波駆動式のインクジェットノズルを好適に利用することができる。しかしこれに限定されるものではなく、空気圧駆動・バルブ開閉式のジェットディスペンサー、空気圧駆動・ソレノイド開閉式のジェットディスペンサー等の微小液滴吐出ヘッドも好適に利用でき、対象とする溶液の液滴を安定的に吐出できるものであれば良い。更に、液滴を1秒間の液滴飛翔速度が数十センチメートルから10メートルで飛翔させることのできる吐出ヘッドであることが好ましい。
【0042】
次に、図5を参照して非対称積層製剤の構成について説明する。非対称積層製剤6eは、少なくともバリア層6a、薬物層6b、腸溶層6cをこの順に積層してなるものである。腸溶層6cと薬物層6bの間に粘着層6dがあってもよい。またこの非対称積層製剤6eの断面は、積層方向に非対称である。
【0043】
ここで、非対称とは独立した機能、又は材料を有する個別の層を順次積層化させた物であり、形状について非対称性だけを意味するものではない。またこのように非対称にすることで、本発明の非対称積層製剤はバリア層6a面にて消化酵素や胆汁による攻撃から薬物層6bの失活を防ぎながら腸溶層6c面から小腸に薬物層6bを効率よく吸収させる働きを持っている。
【0044】
最初に塗布される基底層であるバリア層6aは、基材に直接接触するため、積層過程中では基材から剥がれず、完成後は基材から剥離できることが求められる。また、腸溶層とバリア層は液密に接着してなければ、マイクロカプセル中に胃液などが漏れるため内部の薬剤が失活する虞がある。従って、バリア層は基材からの剥離性と共に、最外層(最終層)である腸溶層との接着性も要求される。バリア層との接着性を向上させるために、本発明はバリア層と腸溶層の何れか若しくは両方の層に可塑剤を含有させてもよい。
【0045】
基底層となるバリア層と腸溶層の間の接着が不十分であると、マイクロカプセル内に胃液などが侵入し、薬剤が失活する虞がある。一方、可塑剤を添加しすぎると、基材が粘着性を有し、他のマイクロカプセルと接着する。結果、マイクロカプセルが凝集してしまい、腸内で適度に分散した配置がとれず、薬効が効果的に発揮できない。従って、可塑剤の添加量は腸溶層及びバリア層溶液のいずれに含有させたとしても、それぞれの層に対して0.05wt%以上8wt%以下の範囲内がよい。
【0046】
可塑剤としては、エステル類若しくはグリコール類が好適に利用できる。特にクエン酸トリエチルやポリエチレングリコールは、滴下し乾燥した後の表面も滑らかに作製することができるので、好ましい。
【0047】
また、可塑剤を含んだ基底層(バリア層)を形成する溶液は、基材との剥離性を確保するために基材2との接触角θを30度≦θ≦95度の範囲の所定値になる様に設定する。更に、前記基底層用溶液の表面張力γを、20mN/m≦γ≦70mN/mの範囲に設定すること、および、20℃〜40℃の温度範囲で前記基底層用溶液の粘度μを1mPa・s≦μ≦200mPa・sの範囲に設定することが好ましい。
【0048】
例えば、基材2としてポリエステルシートを採用し、これに接する基底層用溶液として20℃〜40℃の温度範囲で20mPa・sの粘度を有するとともに、33mN/mの表面張力を有するものを採用することにより、接触角を40度にすることができる。
【0049】
第一層目になるバリア層6aは、クメンにアミノアルキルメタクリレートコポリマーを20wt%、可塑剤であるポリエチレングリコール400を0.05wt%になるように調整したバリア層液が好適に使用できる。しかし、エチルアルコール、2−プロパノール、メチルアルコール、1−アセトキシ−2−メトキシエタン、塩化メチレン等の溶媒を用いても良い。
【0050】
バリア層の上に形成されるに第二層目である薬物層6bは、本実施例の場合はエリスロポエチンであるが、タンパク薬、高分子薬、カルシトニン、インターフェロン、成長ホルモンバソプレシンおよびその誘導体等の各種蛋白、ペプチド薬物が用いられる。
【0051】
第三層目となる腸溶層に用いる溶媒としては、水酸化ナトリウム水溶液(pH5.5以上)、アンモニア水溶液(pH5.5以上)、2−プロパノール、2―ブタノール、1−プロパノール、メチルアルコール、エチルアルコール等が挙げられ、医薬品又は食品に通常用いられる、揮発後の残留溶媒が少ない溶媒を用いることができる。溶媒は乾燥が早い溶媒が好ましく、また毒性の無いものが望まれるので、エタノール若しくはプロパノール類が好適に利用できる。
【0052】
なお、腸溶層、薬物層、バリア層の大きさの関係は、バリア層の基材上への着弾直径Da、薬物層の着弾直径Db、腸溶層の着弾直径Dcとすると、Db<Da、Db<Dcの関係が成立する様に吐出ヘッドからの吐出液滴量および吐出条件を設定することが必要である。薬物層を包みこむためである。
【実施例】
【0053】
(実施例)
バリア層にはエタノールにアミノアルキルメタクリレートコポリマーを20wt%、ポリエチレングリコール400を0.05wt%になるように調製した溶液を使用した。
【0054】
薬物層には、ラウリル硫酸ナトリウムを19wt%、蒸留水を45wt%、ラブラゾール(GATTEFOSSE社製)を36wt%になるように調製した溶液を使用した。
【0055】
腸溶層には、エタノールにメタクリル酸コポリマーを12wt%、ポリエチレングリコール400を5wt%になるように調製した溶液を使用した。
【0056】
前記調製液を用いて、FEP基材に第1層目としてバリア層を塗布し、温度25℃、相対湿度50%常圧環境下で3時間乾燥させた後、同様に順次薬物層、腸溶層を塗布し、薬物層をバリア層及び腸溶層にてリークしないようにカプセル化させた。
【0057】
前記カプセルをpH7〜8の水溶液中にて薬物層及び腸溶層を溶解し、洗浄した後、不溶層のバリア層を蛍光X線にて分析を行った。その結果、バリア層から硫黄及びナトリウム源が検出されず薬物層に添加したラウリル硫酸ナトリウムがバリア層に溶解していない事が確認された。
【0058】
(比較例)
前記調製液を用いて、FEP基材に第1層目として腸溶層を塗布し、温度25℃、相対湿度50%常圧環境下で3時間乾燥させた後、同様に順次薬物層、バリア層を塗布し、薬物層をバリア層及び腸溶層にてリークしないようにカプセル化させた。
【0059】
実施例同様に、前記カプセルをpH7〜8の水溶液中にて薬物層及び腸溶層を溶解、洗浄した後、不溶層のバリア層を蛍光X線似て分析を行った。その結果、バリア層から硫黄及びナトリウム源が検出され、薬物層に添加したラウリル硫酸ナトリウムがバリア層に溶解している事が確認された。
【0060】
以上より、腸溶層、薬物層、バリア層の順で塗布積層化したカプセルは薬物層の一部がバリア層に溶解し、有効な薬物の利用効率が悪くなるが、バリア層、薬物層、腸溶層の順で塗布積層化したカプセルは不溶層であるバリア層に有効な薬物を溶かすことなく積層化でき、安定して、無駄なく薬物を腸溶層及びバリア層でカプセル化できる製造方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
上記のようにして捕集される非対称積層製剤は、薬物を含む関係上、薬剤である。ただし、薬物に代えて乳酸菌やビタミン剤、栄養補助食品を採用することにより、飲食物などを用途とすることができる。
【符号の説明】
【0062】
1 基材搬送機構
2 基材
3、3a、3b、3c 吐出ヘッド
4 駆動機構
5 剥離機構
6、6e、6f 非対称積層製剤
6a バリア層
6b 薬物層
6c 腸溶層
6d 粘着層
6g 腸溶薬物層
7 捕集機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に少なくとも1種類の薬剤溶液を含む複数種類の溶液を順次、滴下・乾燥し、積層化する非対称積層製剤の製造方法であって、
前記基材に直接接する第1層目にバリア層を塗布する工程と、
前記バリア層の塗布後に薬剤層を塗布する工程と、
前記薬剤層の次に腸溶層を塗布する工程を含む非対称積層製剤の製造方法。
【請求項2】
前記第1層目を形成するための溶液と前記基材との接触角θが30度≦θ≦95度の範囲である請求項1に記載された非対称積層製剤製造方法。
【請求項3】
前記第1層目を形成するための溶液の表面張力γが、20mN/m≦γ≦70mN/mの範囲である請求項1または2のいずれか1の請求項に記載された非対称積層製剤の製造方法。
【請求項4】
前記非対称積層製剤の各層を形成するための溶液の粘度μは、溶液の温度が20℃〜40℃の範囲において、1mPa・s≦μ≦200mPa・sの範囲である請求項1乃至3のいずれか1の請求項に記載された非対称積層製剤の製造方法。
【請求項5】
前記第1層目の着弾液滴直径は、50μm〜2mmである請求項1乃至4のいずれか1の請求項に記載された非対称積層製剤の製造方法。
【請求項6】
前記非対称積層製剤の最終層または基底層を形成する溶液に0.05wt%以上8wt%以下の可塑剤を含む請求項1及び至5のいずれかの請求項に記載された非対称積層製剤の製造方法。
【請求項7】
酸若しくはアルカリ溶液に溶解しなく、平面状に形成されたバリア層と、
前記バリア層上に形成された薬剤層と、
前記薬剤層を覆い、前記バリア層と周囲を液密に溶着し、弱アルカリ溶液に溶解する腸溶層を有する非対称積層製剤。
【請求項8】
前記腸溶層と前記薬剤層の間に粘着層を有する請求項6に記載された非対称積層製剤。
【請求項9】
前記バリア層は直径が50μm〜2mmであり、前記腸溶層は前記バリア層より直径が大きい請求項6又は7のいずれかの請求項に記載された非対称積層製剤。
【請求項10】
前記腸溶層に可塑剤を含む請求項7及至9の何れか1の請求項に記載された非対称積層製剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−235486(P2010−235486A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84021(P2009−84021)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】