非常時用サインを備える壁面および壁の製造方法
【課題】発光可能な非常時用サインを備える壁面であって、非常時用サインが昼間に周囲の壁面の美観を損なうことがないようにした壁面を提供する。
【解決手段】発光可能な非常時用サインと、この非常時用サインにかぶせて配置され、少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部は透光性を有する壁面装飾シートとを有する壁面及びかかる壁面を有する壁の製造方法を提供する。また、上記の壁面装飾シートに代えて、非常時用サインの表面に少なくともドット部分が透光性を有するドット印刷による装飾を施した壁面及びかかる壁面を有する壁の製造方法を提供する。さらに、非常時用サインが発光可能領域と発光不能領域によってデザインされ、発光可能領域は非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色の蓄光性蛍光体色であり、発光不能領域も非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色である壁面を提供する。
【解決手段】発光可能な非常時用サインと、この非常時用サインにかぶせて配置され、少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部は透光性を有する壁面装飾シートとを有する壁面及びかかる壁面を有する壁の製造方法を提供する。また、上記の壁面装飾シートに代えて、非常時用サインの表面に少なくともドット部分が透光性を有するドット印刷による装飾を施した壁面及びかかる壁面を有する壁の製造方法を提供する。さらに、非常時用サインが発光可能領域と発光不能領域によってデザインされ、発光可能領域は非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色の蓄光性蛍光体色であり、発光不能領域も非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色である壁面を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常時用サインを備え、その上に装飾を施した壁面、及びこのような壁の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
災害などの非常時用の設備の一つである非常時用サインは、蓄光性蛍光体などの発光体を用いて非常口への避難誘導経路などを示すサインを表示し、これにより、停電などの暗闇でも避難者の安全な誘導を行うことなどを可能にするものである。このような非常時用サインは屋内の通路や廊下などに設置されるほか、屋外にこのような非常用サインを多数設置することの重要性も認識され始めている。例えば、地下鉄構内で震災にあった場合に、地上までは避難したものの、夜間でしかも停電のため、あたりが真っ暗でどちらの方向に避難してよいかわからないといった場合に、建物の外壁などに避難場所への誘導のための非常時用サインが設置されていれば極めて有用である。
【0003】
しかし、屋内に非常時用サインを設置した場合には、照明時において非常時用サインが周囲の壁面の色や模様などの装飾と調和せず、美観を損なうおそれがあるという問題がある。同様に、屋外に非常時用サインを設置した場合にも、建物の外壁が景観との調和などのために美観に配慮されている場合が多く、やはり同様に非常時用サインが昼間の美観を損なうおそれがあるという問題がある。
【0004】
この点、非常時用サインが昼間や照明時(以下「昼間」と略す)には周囲の壁面と一体的に見えるようにして目立たなくし、夜間や停電時(以下「夜間」と略す)には光って目立つようにすれば、非常時用サイン本来の役目を果すとともに、昼間の美観も損なわないようにすることができるので、有用である。しかし、このような工夫がなされた壁や壁面は、これまで知られていなかった。
【0005】
なお、昼間と夜間とで見え方の異なる表示をするための技術として、壁面に関するものではないが、特許文献1が知られている。同文献には、立看板の表面にメッシュ材を使用し、当該メッシュ材の表面に文字、絵柄を描いて昼間は太陽光で視認できるようにし、夜間は立看板に内蔵された発光体によりメッシュ材の透過性を利用して光を通過させて発光体によって表される別の文字、絵柄を認識できるようにした昼夜可変看板が記載されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−240385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されている発明は、立看板に関するものであるから当然のことながら、昼間に周囲の壁面と一体的に見えるようにして目立たなくすることで美観を損なわないようにするという発想は全くなく、これを実現するための技術については何ら開示されていない。
【0008】
つまり、壁面の場合には、非常時用サインが配置されている部分が昼間に見える周囲の壁面の美観を損なうことがないようにするという独自の課題が存在し、これを解決するための独自の工夫が必要となる。
【0009】
即ち、本発明の解決すべき課題は、発光可能な非常時用サインを備える壁面であって、非常時用サインが昼間に周囲の壁面の美観を損なうことがないようにした壁面を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するため、第一の発明は、発光可能で避難誘導などに用いられる非常時用サインと、この非常時用サインにかぶせて配置され、少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部は、透光性を有する壁面装飾シートとを有する壁面を提供する。
【0011】
また、第二の発明は、第一の発明を基礎として、非常時用サインは、発光可能領域と、発光不能領域とによってデザインされ、前記壁面装飾シートは、発光不能領域上の部分は透光性が低いか又は透光性を有さない壁面を提供する。
【0012】
また、第三の発明は、第一又は第二の発明を基礎として、前記壁面装飾シートは、非常時用サインの配置されている領域にのみかぶせて配置されている壁面を提供する。
【0013】
また、第四の発明は、第一の発明を基礎として、前記壁面装飾シートは、非常時用サインにかぶせられている領域のみが透光性を有する壁面を提供する。
【0014】
また、第五の発明は、第二の発明又は第二の発明に従属する第三の発明を基礎として、前記壁面装飾シートは、非常時用サインにかぶせられかつ非常時用サインの発光不能領域上の部分を除いた部分のみが透光性を有する壁面を提供する。
【0015】
また、第六の発明は、第三の発明を基礎として、前記非常時用サインが設けられている以外の面に描かれる直接装飾を有し、前記壁面装飾シートの装飾は、前記直接装飾と同一又は類似の装飾である壁面を提供する。
【0016】
また、第七の発明は、非常時用サインを壁面に配置(描く場合を含む)する非常時用サイン配置ステップと、少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部が透光性を有する部分とするように壁面装飾シートをさらに壁面に配置する壁面装飾シート配置ステップとからなる壁の製造方法を提供する。
【0017】
また、第八の発明は、第一から第六のいずれか一の発明を基礎として、前記壁面装飾シートに代えて、前記非常時用サインの表面に少なくともドット部分が透光性を有するドット印刷による装飾を施した壁面を提供する。
【0018】
また、第九の発明は、非常時用サインを壁面に配置(描く場合を含む)する非常時用サイン配置ステップと、前記非常時用サインの表面に少なくともドット部分が透光性を有するドット印刷による装飾を施すドット印刷ステップとからなる壁の製造方法を提供する。
【0019】
また、第十の発明は、発光可能で避難誘導などに用いられる非常時用サインを有する壁面であって、非常時用サインは、発光可能領域と、発光不能領域とによってデザインされ、発光可能領域は非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色の蓄光性蛍光体色であり、発光不能領域も非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色である壁面を提供する。
【0020】
また、第十一の発明は、第十の発明を基礎として、前記発光不能領域は、蓄光性蛍光体の表面に白色層に重ねて前記壁面の非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色の印刷を施すことで形成されている壁面を提供する。
【0021】
また、第十二の発明は、発光可能領域と発光不能領域とでデザインされた非常時用サインを有する壁面の製造方法であって、非常時用サインの領域以外の領域と昼光色で略同色の蓄光性蛍光体からなる非常時用サインのベースを作成するベース作成ステップと、ベース作成ステップにて作成されたベースの発光不能領域とすべき領域に白色の印刷を施して発光不能領域下地を作成する発光不能領域下地作成ステップと、発光不能領域下地作成ステップにて作成された発光不能領域下地上に昼光色で非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色の非発光塗料を用いた印刷をして発光不能領域を作成する発光不能領域作成ステップとを有する壁面の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、発光可能な非常時用サインを備える壁面であって、非常時用サインが昼間に周囲の壁面の美観を損なうことがないようにした壁面を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1の壁面の一部の外観の一例を示す図
【図2】実施例1に係る壁面の構成を説明するための図
【図3】実施例1における非常時用サインの外観の一例を示す図。
【図4】実施例1における壁面装飾シートの一例を示す概念図
【図5】実施例1における壁面装飾シートの一例を示す概念図
【図6】実施例1における壁面を有する壁の製造方法における処理の流れの一例を示す図
【図7】実施例2における壁面装飾シートの配置の一例を示す概念図
【図8】実施例4における壁面の外観の一例を示す図
【図9】実施例5の壁面の非常時用サインの表面にドット印刷による装飾を施した状態の一例を示す図
【図10】部材の背後の光源の明るさと部材の覆い率の関係を示す概念図
【図11】実施例6における壁面の製造方法について説明するための図
【符号の説明】
【0024】
0100、0200 壁面
0110、0210 非常時用サイン
0220 壁面装飾シート
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施例を説明する。実施例と請求項の相互の関係は以下のとおりである。実施例1は主に請求項1、請求項2、請求項7などに関し、実施例2は主に請求項3などに関し、実施例3は主に請求項4、請求項5などに関し、実施例4は主に請求項6などに関し、実施例5は主に請求項8、請求項9などに関し、実施例6は主に請求項10、請求項11、請求項12などに関する。なお、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
【実施例1】
【0026】
<概要>
本実施例の壁面は、非常時用サインにかぶせて配置され、少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部が透光性を有する壁面装飾シートを有する壁面である。また、本実施例の壁面には、上記のような壁面であって、非常時用サインが発光可能領域と発光不能領域とによってデザインされ、壁面装飾シートのうち発光不能領域上の部分が透光性が低いか又は透光性を有さないものが含まれる。
【0027】
<構成>
(全般)
図1は、本実施例の壁面の一部の外観の一例を示す図である。本図に示すものは建造物の内壁(例えば廊下の壁)の例であるが、建造物の外壁であっても以下の説明は同様にあてはまるものである。さらに、本実施例にかかる発明は、壁以外の例えば床や天井、屋根などに非常時用サインを設置する場合にも応用可能である。即ち、本実施例に係る発明は、非常時用サインが配置されている領域が昼間周囲の部分と一体的に見えるようにすることで美観を損なわないようにするために広く用いることができるものである。
【0028】
本図の(a)に示したものは、昼間(本例では照明時)における外観であり、壁面0101には美観を維持するための縞模様が施されている。本図において、(b)で非常時用サイン0110が配置されている部分にあたる領域0120a(破線で囲んだ領域)には、これにかぶせられる形で壁面装飾シートが配置されている。この壁面装飾シートは、非常時用サインが配置されている部分にあたる領域にのみかぶせられていてもよいし、壁面全体にかぶせられていてもよい。壁面装飾シートを非常時用サインが配置されている部分にあたる領域にのみかぶせる場合には、壁と一体的に見える模様を施すことで周囲の壁面の美観を損なわないようにする。従って、昼間壁面を見てもこの壁面装飾シートの存在はほとんど目立たない。一方、(b)に示したものは、同じ室内の夜間(本例では停電時)における外観であり、壁面装飾シートの背後に設置されている非常時用サイン0110が発光している状態を示す。本図に示すように、(a)の状態では、非常時用サインは壁面装飾シートがかぶせられており、しかも壁面装飾シートに壁と同じ模様が施されているので、美観が損なわれることがない。そして、万一火災等で停電になったときは、発光する非常時用サインが目立つので、直ちに安全に避難することが可能となる。
【0029】
以下、このような壁面の具体的な構成について説明する。
【0030】
図2は、本実施例に係る壁面の構成を説明するための図であり、非常時用サインを含む壁面の一部を垂直断面図で示したものである。本図では、右側が壁面の外表面であり、視認者0203は右側から壁面を見る形になる。本図に示すように、本実施例の壁面(一部)0200は、非常時用サイン0210(左上がり斜線で示すサイン本体0211と、右上がり斜線で示す蓄光性蛍光体0212とを合わせた部分)と、壁面装飾シート0220とを有する。
【0031】
(非常時用サイン)
「非常時用サイン」は、避難誘導などに用いられる表示体であり、発光可能に構成されている。非常時用サインの用途としては、地震、火災などの災害発生時の避難誘導用のものが典型であり、図2で示したような非常口の方向を示すものや非常口の位置を示すものがこれにあたる。そのほか、非常時にこれに対応した行動をとる際の指標になったり、行動を促したりするといった非常時用のメッセージを伝達するためのものが広く含まれる。メッセージの表わし方にも特に限定はなく、メッセージをピクトグラム(絵文字)で表わしたもの(非常用ピクトグラム)であってもよいし、文字だけで表わしたものであってもよいし、ピクトグラムと文字を組み合わせたものであってもよい。
【0032】
この非常時用サインは、別途製造したものを壁本体の表面に取り付けるようにしてもよく、その場合には市販のものを利用可能である。あるいは、本発明にかかる壁面用として別途製造してもよい。
【0033】
図3は、本実施例における非常時用サインの外観の一例を示す図である。本図に示す「非常時用サイン」0310は、金属などの板からなるサイン本体0311に、凹凸にて非常時用のマークを形成し、当該マークの凹部に蓄光性蛍光体0312を塗布したものである(図中白で示す部分が凹部に塗布された蓄光性蛍光体である)。また、サイン本体の凸部(図中黒で示す矢印及び非常口のピトグラムの部分0311a)は蓄光性蛍光体とともにサインを形成する部分である。
【0034】
あるいは、本図の例と異なり、非常時用サインは、本体の全面に蓄光性蛍光体を塗布し、その上に矢印及び非常口のピトグラムの部分を不透光性ないし低透光性の塗料を塗布・印刷することで非常用のマークを形成したものであってもよい。
【0035】
非常時用サイン本体の素材には特に限定はないが、好適にはアルミニウムなどの金属が用いられる。
【0036】
非常時用サインの壁本体表面への取り付けには、接着剤を用いればよい。接着剤の種類は壁の材質などによって適宜選択すればよい。例えば、コンクリートの壁に取り付ける場合には、強靭で柔軟性に富むアクリルフォームを用いたものを用いてもよく、その一例として、3M社のVHB(登録商標)アクリルフォーム構造用接合テープが挙げられる。また、屋外の壁に取り付ける場合には、降雨による湿度変化などによる後発的な接着性の低下をあらかじめ防止するため、コンクリートなどの表面にプライマー(下地処理液)を塗布してもよく、上述のVHB(登録商標)アクリルフォーム構造用接合テープを用いる場合の専用プライマーの一例としてクロロプレンゴムを主成分とする3M社製プライマー(品番EC−1368NT)などを利用可能である。あるいは、別の取付方法として、サイン本体の裏面に壁に埋め込んで固定するための突起を設けてもよい。
【0037】
取り付けに際しては、壁面装飾シートをかぶせたときに壁面装飾シートが膨らんで美観を損なわないように、壁本体の表面に非常時用サインを取り付けるための窪みを設けてもよい。あるいは、非常時用サインの厚みが極めて薄いとか、非常時用サインの壁全体に占める面積が極めて小さいなどの理由で、この部分が多少膨らんでいても美観を損なわない場合には、平らな壁本体の表面に非常時用サインを取り付けるようにしてもよい。図2に示したものは壁0201に窪みを設けてそこに非常時用サインを設置した例であり、この場合、本図に現れているように、非常時用サインの表面とその周囲の壁面が単一の平面を形成し、従って、その上に配置されている壁面装飾シートがやはり平面を形成するようになっていることが望ましい。
【0038】
(壁面装飾シート)
「壁面装飾シート」は、非常時用サインにかぶせて配置され、壁面の表面を形成するものである。視認者から見れば、昼間はこれが壁の表面として見えることになる。
【0039】
壁面装飾シートを配置する目的は、壁面の表面を装飾することで美観を損なわないようにすることにある。また合わせて背後の非常時用サインを保護する目的もある。前者の目的に照らし、壁面装飾シートの色彩や模様は、周囲の壁面に合わせて形成される。これにより、昼間は、壁面装飾シートの存在がほとんど目立たず、あたかもそこに一枚の壁があるだけのように見えるようにすることが可能となる。
【0040】
壁面装飾シートは、非常時用サインには必ずかぶせられる必要があるが、それ以外にはかぶせられていてもよい(例えば、壁全体にかぶせられていてもよい)し、かぶせられていなくてもよい。壁面装飾シートが非常時用サインの配置されている領域にのみかぶせて配置される例については、別の実施例にて後述する。
【0041】
(壁面装飾シートの透光性について)
壁面装飾シートのうち、少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部は、透光性を有する。
【0042】
「透光性を有する」とは、光が透過する性質を備えていることをいう。一般に、ある部材が透光性を有するために、光を透過させるためのすき間などを備えている必要がある。特に、本発明における壁面装飾シートの透光性は、夜間は、壁面装飾シートの背面に設置されている非常時用サインが発する光をシートの外側から視認できるが、昼間は非常時用サインが目立たない程度のものである必要がある。一般に、透光性の程度は、部材の背後にある光源の明るさと、部材の覆い率(部材がどの程度不透光部分で覆われているか、言い換えれば部材にどの程度のすき間があるか)との相関関係によって決まると考えられる。
【0043】
図10は、部材の背後の光源の明るさと部材の覆い率の関係を示す概念図である(あくまで概念図であり、示されている数値も、あくまで理解の容易のための設例であって、必ずしも実際に即したものではない)。本図においては、縦軸に単位面積当たりの光束(単位:ルーメン/m2)で表わした光源の明るさをとり、横軸に覆い率をとっている。なお、本図を本発明にあてはめる場合、夜間における非常時用サインの明るさは文字通り発光領域を光源とする明るさであるが、昼間における非常時用サインの明るさは照明や太陽光の反射による明るさである。
【0044】
この場合、本発明に好適な、背後の光源の光が透過する(部材の表側から光を視認できる)状態は、概ね斜線で示したエリア1001になると考えられる。即ち、まず前提として、覆い率が0%(全く覆われていない)のときは、光源の明るさに関係なく光を視認でき、覆い率が100%(完全に覆われている)ときは、どんなに明るい光源の光も視認できない。そして、その中間においては、覆い率が増えるほど視認できるのに必要な最低限の光の明るさが増えていくが、その上昇率は、ある程度の覆い率(概ね50%程度)までは加速度的に増えていき、その後漸減すると考えられる(グラフ参照)。
【0045】
本発明に係る壁面において、非常時用サインの発光領域の発光時の明るさを2500ルーメン/m2程度と仮定し、また、非常時用サインの非発光時において1500ルーメン/m2程度以下の光でも透過してしまうような覆い率とすると非常時用サインが目立ってしまうと仮定する。そうすると、夜間は発光を視認でき、昼間は非常時用サインが目立たないようにすることができる程度の透光性を有するためには、壁面装飾シートの覆い率を概ね50〜90%程度にすればよいといえる。なお、90%という数値は、100%にごく近いところでは夜間の視認が悪くなるので、若干ゆとりを持たせたといった程度の意味である。
【0046】
このような透光性を有する壁面装飾シートの一例としては、例えば、布や和紙などで作られたシートを挙げることができる。この場合、布や和紙には繊維のすき間があり、ここを介して光が透過することができる一方、かなりの割合が繊維で覆われているため背後の非常時用サインが発光しているときは光が透過して視認できるが、そうでないときは光が遮られて、非常時用サインは目立たないことになる。
【0047】
また、別の例として、図4、図5に示すようなものも挙げることができる。即ち、図4、図5は、本実施例における壁面装飾シートの一例を示す概念図であり、このうち、まず図4に示したものは、壁面装飾シート0420に小孔0421(煩雑を避けるため一箇所にのみ符号を付した)を穿ったものである。また、破線で囲んだ部分0410aは、非常時用サインにかぶせられている領域を示す。本図はあくまで概念図であるので、図示の便宜上、小孔の数が比較的少なく、また孔の大きさが非常時用サインの面積に比して相対的に大きくなっているが、実際の一例としては、縦9cm程度×横27cm程度の非常時用サインにかぶせられている領域に直径1mm程度の小孔がほぼ等間隔で縦50個程度×横150個程度穿たれているものが考えられる。本図の例は、非常時用サインにかぶせられている領域がすべて透光性を有する例であるが、本図の例と異なり、非常時用サインにかぶせられている領域の一部にのみ小孔が穿たれていてもよい。なお、本図では、小孔の形状が略円形のものを示したが、小孔の形状には特に限定はなく、例えば、略三角形状、略四角形状、略多角形状などであってもよい。
【0048】
図5に示したものは、壁面装飾シート0520自体が透光性を有する部材で構成したものである。透光性を有する部材としては、例えば、無色透明ないし有色透明や半透明のガラス、ビニール、樹脂などの透明材料に、不透光性あるいは低透光性の塗料を、一部透明部分を残す形で塗布又は印刷したものが考えられる。本図は、ドット部分を透明なまま残して、その他の部分に塗料を塗布した例である。なお、ドットの形状に特に限定がない点は小孔の場合と同様である。
【0049】
これらの例においては、発光領域にかぶせられている領域のうち、小孔又はドットが配置されている部分だけが透光性を有しており、それ以外は透光性を有していないものとなる。このように、非常時用サインのうち発光領域(蓄光性蛍光体が塗布されている部分)にかぶせられている領域は必ず全部が透光性を有する必要はないのであるが、発光領域の形状が発光時に認識できる必要がある(そうでないと発光領域と不発光領域のコントラストによって示そうとしているサインの内容を把握できない)から、これに足りる程度に透光性を有する部分が全体的に配置されている必要がある(例えば、小孔が当該領域の全体にわたってまんべんなく配置されている必要がある)。
【0050】
ところで、非常時用サインの全部を発光領域とするかどうかは、表わそうとするサインの内容などに応じて設計される事柄である。図1、図3に示したようなピトグラムや記号を用いてサインを表わす場合には、発光部分と不発光部分を設け、そのコントラストによって表したいサインを形成するのが通例である。この場合には、非常時用サインは、発光可能領域と発光不能領域とによってデザインされることになる。ここで、「発光可能領域と発光不能領域とによってデザインされる」とは、非常時用サインの表面に発光可能領域と発光不能領域の双方が施され、夜間に発光可能領域だけが発光することで発光不能領域とのコントラストによってサインの内容を表わすようにされていることをいう。一方、非常時用サインの領域全部を発光可能領域としてもよい。例えば非常時用サインの全面に蓄光性蛍光体を塗布した場合にはこのようなデザインとなる。この場合、複数の異なる色で発光する蓄光性蛍光体を塗り分けることでサインの内容を表わすようになっていてもよいし、あるいは全面が単一色で発光するようにしてもよい。全面が単一色で発光する非常時用サインの用途としては、例えば、図2で示したような非常口の方向を示す非常時用サインと併用する形で、そこから非常口までの誘導路に沿って、全面が発光する四角形の非常時用サインを一定間隔で並べていくといった場合が考えられる。
【0051】
以上の例から明らかなように、「透光性を有する」ことの具体的な意味としては、(1)すき間を介して向こう側のものが直視できる場合(小孔のようなケース)、(2)すき間を介して向こう側のものを直視することはできないが、光がすき間を形成している繊維などの部材に反射しつつ部材を抜けていくことで向こう側に光が届く場合(布のシートのようなケース)、さらに(3)何もない空間によって形成される「すき間」ではなく、透明の部材を通じて光が透過する場合(透明ビニールシートの一部を残して不透性塗料を塗布するようなケース)があることにある。
【0052】
なお、「『少なくとも』非常時用サインにかぶせられている領域の一部は、透光性を有する」とは、非常時用サインにかぶせられている領域以外も透光性を有していてもよいという意味である。さらに、「非常時用サインにかぶせられている領域の『一部』は、透光性を有する」とは、非常時用サインにかぶせられている領域の中に透光性を有していない領域があってもよいという意味である。さらに言えば、発光領域にかぶせられている領域の少なくとも一部は必ず透光性を有している必要がある。しかし、発光領域にかぶせられている領域のなかに透光性を有していない部分があってもよい。また、発光領域以外にかぶせられている領域には透光性を有している領域が全くなくてよい。
【0053】
(発光可能領域、発光不能領域によるデザイン例)
ここで、非常時用サインが発光可能領域と発光不能領域とによってデザインされる例について説明する。なお、このようなデザインの場合、壁面装飾シートのうち発光不能領域上の部分は透光性が低いか又は透光性を有さないものとされる。このようにするためには、例えば、透光性が低いか透光性を有しない素材からなる非常時用サイン本体に設けられた凹凸のうち、凸部を発光不能領域とし、凹部に蓄光性蛍光体を塗布するようにしてもよいし、あるいは、本体の全面に蓄光性蛍光体を塗布した上で、発光不能領域とすべき部分に不透光性又は低透光性の塗料を塗布・印刷するようにしてもよい。
【0054】
「発光可能領域」とは、非常時用サインのうち、発光体が配置されて発光可能に構成されている領域をいう。「発光不能領域」はそのような構成が施されておらず発光不能な領域をいう。図2、図3の例で言えば、蓄光性蛍光体0212、0312を塗布した部分が発光可能領域にあたる。また、図2の例で言えば蓄光性蛍光体に挟まれた凸部0211、図3の例で言えば矢印及び非常口のピトグラムの部分0311a)が発光不能領域にあたる。このように非常時用サインを発光可能領域と発光不能領域とよってデザインすることで、夜間の発光時に両者のコントラストによって表示内容を目立つ形で表示することが可能となり、視認性が向上する。
【0055】
(市販の非常時用サインを利用する場合の問題点と解決例)
市販の非常時用サインを利用する場合には、通例、発光可能領域と発光不能領域によってデザインされているので、これをこのまま利用すればよい。例えば、図1、図3に示したような非常口の方向を示すサインの場合には、市販の非常時用サインを利用できる。
【0056】
ところで、市販の非常時用サインの場合、ピトグラムや矢印が描かれた発光不能領域には濃緑色の不発光性塗料が塗られているのが通例である。ここで、壁の色が濃緑色と大きく異なる色(例えば、白、グレー、茶色など)の場合、昼間見たときに、小孔のすき間から背後の発光不能領域の色が透けて見え、周囲の壁面と色合いなどが異なることで一体的に見えず、美観を損なうおそれがあるという問題がある。
【0057】
そこで、発光不能領域にかぶせられる壁面装飾シートの領域は透光性を有しないようにしてもよい。具体的には、図4に示したような非常時用サインにかぶせられている領域に小孔を穿つ場合に、発光不能領域にかぶせられている領域には小孔を穿たないようにする構成が考えられる。また、図5に示したような壁面装飾シート自体が透光性を有する部材で構成する場合に、発光不能領域にはドット部分を透明なまま残す領域を設けず、すべて不透光性の塗料を印刷するといった構成が考えられる。図5の例はまさにこのような例であり、発光不能領域である非常口のピトグラム及び矢印の領域にかぶせられている壁面装飾シートの領域には、ドット部分を透明なまま残す領域が設けられていない例が示されている。図4に示した小孔を穿つ構成の場合も、図5でドット部分が残されている領域に相当する領域にのみ小孔を穿てば、これと同様の構成となる。
【0058】
(本実施例用の非常時用サインを製造して使用する例)
あるいは、市販の非常時用サインを用いずに、本実施例の壁面に利用するための固有の非常時用サインを製造して用いることとし、その際に、非常時用サインの発光不能領域の色を周囲の壁面の色及び壁面装飾シートと略同色にするようにしてもよい。ここで、「略同色」とは、昼光色において完全な同色又は周囲の壁面との色の違いが目立たない程度に似た色をいう。また、周囲の壁面に模様などによる装飾が施されている場合には、非常時用サインの発光不能領域の模様もこれに合わせ、かつ壁面装飾シートにも略同一の模様を施すようにしてもよい。こうすることで、昼間見たときに小孔のすき間から背後の発光不能領域の色や模様が透けて見えたとしても、周囲の壁面や壁面装飾シートと色や模様が異なることで一体的に見えないということがなく、美観を損なうおそれを回避することができる。
【0059】
一方、発光可能領域に蓄光性蛍光体が塗布されている場合、市販の非常時用サインでは蓄光性蛍光体は通例薄黄色である。そこで、壁の色がこれと大きく異なる色(黒、こげ茶など主に濃色系の色)の場合には、上と同様に、昼間見たときに小孔のすき間から背後の発光可能領域の色が透けて見え、周囲の壁面と色合いなどが異なることで一体的に見えず、美観を損なうおそれがあるという問題が生じ得る。そこで、これを防ぐために、固有の非常時用サインを製造して用いることとし、その際に薄黄色の蓄光顔料にカラー蛍光顔料を混ぜて壁の色と略同色になるように着色するようにしてもよい。ただし、蓄光顔料にカラー蛍光顔料を混ぜると蓄光性蛍光体の発光輝度が低下するので、カラー蛍光顔料を混ぜるかどうか、またどの程度混ぜるかは、美観への影響と発光輝度の両者の兼ね合いをみて適宜設計されるべき事柄である。
【0060】
<壁の製造方法>
次に、以上に説明した本実施例における壁面を有する壁の製造方法について説明する。
【0061】
図6は、本実施例における壁面を有する壁の製造方法における処理の流れの一例を示す図である。本図に示すように、まず、非常時用サインの壁面への配置ステップS0601において、非常時用サインを壁面に配置する。配置のしかたとしては、市販の非常時用サイン又は本発明にかかる壁面用として製造した非常時用サインを壁面に取り付ければよい。あるいは、サイン本体を壁面に取り付け、その上に、蓄光性蛍光体および不発光性の塗料を塗布するといった形で壁面上において非常時用サインを製造してもよい。さらに、単に壁面に塗料を塗布することで非常時用サインを配置してもよい。即ち、本実施例にいう「配置」には描く場合が含まれる。次に、壁面装飾シートの壁面への配置ステップS0602において、少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部が透光性を有する部分とするように壁面装飾シートをさらに壁面に配置する。
【0062】
なお、上述の本実施例用の固有の非常時用サインを製造して使用する場合には、さらに詳細な手順として、以下に示すような方法で壁を製造することが望ましい。
【0063】
この場合まず、予め非常時用サインを配置しようとする壁の周囲の壁面のカラー撮影及び色合わせを行っておく。次に、用意された非常時用サインの本体を壁面の所定位置に取り付ける。なお、用意する非常時用サインは、蓄光塗料の顔料色が薄黄色であることに伴う上述の問題を回避するため、サイン本体の凹部に蓄光性蛍光体を塗布する際に、蓄光顔料とカラー蛍光顔料を混ぜて壁の色と略同色に着色したものであってもよい。一方、壁面装飾シートには、その全面に上で撮影した画像を転写する。この場合、塗料(インク)は不透光性ないし低透光性のものを用いる。壁面装飾シートが小孔を穿ったタイプのものの場合はそのまま印刷すればよく、透明シートにドット印刷等をするタイプのものの場合は、ドット部分には塗料が載らず、それ以外の部分に塗料が載るように印刷を行う。なお、壁に模様がある場合には、撮影した画像の模様の位置が周囲の壁面の模様の位置とずれないように印刷することが望ましい。
【0064】
以上の方法によれば、非常時用サインを配置した領域の壁面が周囲の壁面とより一体的に見え、場合によっては周囲の壁面と全く見分けがつかないようにすることも可能となるので、本実施例の壁面の目的をより好適に実現することができる。
【0065】
<効果>
本実施例の発明により、発光可能な非常時用サインを備える壁面であって、非常時用サインが昼間に周囲の壁面の美観を損なうことがないようにした壁面を提供することが可能となる。
【実施例2】
【0066】
<概要>
本実施例の壁面は、実施例1の壁面と基本的に共通する。ただし、本実施例の壁面においては、壁面装飾シートは、非常時用サインの配置されている領域にのみかぶせて配置される点に特徴がある。
【0067】
<構成>
図7は、本実施例における壁面装飾シートの配置の一例を示す概念図であり、壁面装飾シートが配置されている壁面の一部を正面から見た状態を示す。本図に示すように、本実施例における壁面装飾シート0720は、非常時用サインの配置されている領域0710aにのみかぶせて配置されている。
【0068】
本実施例の目的は、特に、既存の壁面に後から非常時用サイン及び壁面装飾シートを配置する場合に適した方法を提供することにある。このように配置しても、壁面装飾シートの色彩や模様は周囲の壁面に合わせて形成されるので、昼間見たときに壁の他の部分と一体的に見え、美観を損なうおそれはない。なお、本図にも現れているように、「非常時用サインの配置されている領域にのみかぶせて配置される」というのは、非常時用サインの配置されている領域を寸分もはみ出してはいけないという意味ではなく、非常時用サインの配置されている位置より若干はみ出して配置されていても構わない。このような許容範囲を設けても、本実施例の目的を阻害するものではなく、むしろ、領域をぴったり合わせるための慎重な作業が不要となるので、非常時用サインの発光を阻害しないように壁面装飾シートを非常時用サインの配置されている領域に確実にかぶせる作業を簡単に行うことができるというメリットがある。
【0069】
<効果>
本実施例の発明により、壁面装飾シートを配置する面積を最小限とすることができるので、特に、既存の壁面に後から非常時用サイン及び壁面装飾シートを配置する場合に適した方法を提供することが可能となる。
【実施例3】
【0070】
<概要>
本実施例の壁面は、実施例1の壁面と基本的に共通する。ただし、本実施例の壁面は、壁面装飾シートのうち非常時用サインにかぶせられている領域のみが透光性を有する点に特徴がある。
【0071】
<構成>
本実施例の壁面は、実施例1の壁面と基本的に共通するが、壁面装飾シートのうち非常時用サインにかぶせられている領域のみが透光性を有するものである。既述のように、壁面装飾シートに透光性を持たせる目的は、非常時用サインの発光が壁面装飾シートによって妨げられないようにすることにあるから、非常時用サインにかぶせられている領域以外は必ずしも透光性を有している必要はないわけである。一方、壁面装飾シートに透光性を持たせるためには、壁面装飾シートに小孔を穿ったり透明シートにドットを残す形で塗装・印刷をしたりといった手間が必要であるからその分のコストがかかる。そこで、本実施例の構成の目的は、必要のない部分に透光性を持たせることを避けることでコストを節約することにある。
【0072】
本実施例においても、非常時用サインのうち少なくとも発光可能領域にかぶせられている領域は透光性を有する必要があるが、発光不能領域にかぶせられている部分は透光性を有しないものであってもよい。即ち、本実施例の壁面における壁面装飾シートは、非常時用サインにかぶせられかつ非常時用サインの発光不能領域上の部分を除いた部分のみが透光性を有するように構成されていてもよい。
【0073】
なお、発光可能領域にかぶせられている領域は透光性を有する必要があるといっても、当該領域の全面が透光性を有する必要はなく、小孔や透明のドット部分を設けてそこから光が漏れるようにしておけばよい点は、実施例1において述べたところと同様である。
【0074】
<効果>
本実施例の発明により、必要のない部分に透光性を持たせることを避けることができるので、発光可能な非常時用サインを備える壁面であって、非常時用サインが昼間に周囲の壁面の美観を損なうことがないようにした壁面を、より少ないコストで提供することが可能となる。
【実施例4】
【0075】
<概要>
本実施例の壁面は、実施例2で述べた壁面と基本的に共通する。ただし、本実施例の壁面は、非常時用サインが設けられている以外の面に描かれる直接装飾を有し、壁面装飾シートの装飾は、前記直接装飾と同一又は類似の装飾である点に特徴がある。
【0076】
<構成>
本実施例の壁面は、実施例2で述べた壁面装飾シートが非常時用サインの配置されている領域にのみかぶせて配置される構成において、壁面が、非常時用サインの設けられている以外の面に描かれる直接装飾を有し、壁面装飾シートの装飾は、前記直接装飾と同一又は類似の装飾であるものである。
【0077】
「直接装飾」は、非常時用サインが設けられている以外の面に描かれる装飾をいい、要するに壁面そのものに施される装飾である。ここで「装飾」とは、壁やこれを含む建物の美観を保つ目的で、壁面に色彩、模様、形状による装飾(例えば凹凸などによる飾り)を施したものをいう。なお、一定のメッセージを伝えるためのサインなどであっても、単にメッセージを伝えるだけの目的ではなく、合わせて美観を保つことに配慮されていれば、ここにいう「装飾」に含まれる。例えば、ビルの外壁面に描かれた広告サインや、建物の廊下の壁に描かれたレストランやトイレの案内表示などは通例美観にも配慮されていると考えられるが、そのようなものであれば本実施例にいう「装飾」に含まれる。本実施例の壁面をこのような別のサインの描かれた壁面に適用すれば、当該別のサインを有する壁面の美観を損なうことがないようにすることができるとともに、当該別のサイン自体が読みづらくなってしまうというおそれも合わせて解消することができる。
【0078】
また、「同一又は類似」は、意匠法における同一又は類似とほぼ同様の範囲となろうが、あくまで壁や建物の美観を損なわないように非常時用サインの配置されている領域とその周囲の壁面の色彩、模様等の統一が保たれているかどうかという観点から判断される。
【0079】
図8は、本実施例における壁面の外観の一例を示す図である。このうち、(a)は、非常時用サインの配置されている領域の色彩を周囲の壁面の色彩と同一にした例である。図中破線で囲んだ領域0810aが非常時用サインの配置されている領域を示す((b)、(c)においても同様である)。(b)は、非常時用サインの配置されている領域の模様を周囲の壁面の模様と同一にし、かつ模様の位置も非常時用サインの配置されている領域がわからないように周囲に合わせた例である。(c)は、廊下の壁にレストランの案内サインが描かれている場合に、非常時用サインの配置されている領域と周囲の壁面を一体としてかかるサインを示すようにした例である。
【0080】
本実施例の構成の目的は、非常時用サインの周囲に装飾が施された壁面が存在する場合に、非常時用サインにかぶせられた領域を占める壁面装飾シートの装飾を周囲と合わせることにより、美観が損なわれることを回避することにある。
【0081】
<効果>
本実施例の発明により、非常時用サインの周囲に装飾が施された壁面が存在する場合に、非常時用サインにかぶせられた領域を占める壁面装飾シートの装飾を周囲と合わせることにより、美観が損なわれることを回避することが可能となる。
【実施例5】
【0082】
<概要>
本実施例の壁面は、実施例1から4の壁面と同様の目的を有するものであるが、実施例1から4の壁面の壁面装飾シートに代えて、非常時用サインの表面にドット印刷による装飾を施したものを用いる点にした点に特徴がある。
【0083】
<構成>
(全般)
本実施例の壁面は、実施例1から4のいずれか一の壁面と基本的に共通するが、実施例1から4の壁面の壁面装飾シートに代えて、非常時用サインの表面にドット印刷による装飾を施すことで実施例1から4の壁面と同様の目的を達成している。即ち、本実施例の壁面は、発光可能で避難誘導などに用いられる非常時用サインを有し、前記非常時用サインの表面に少なくともドット部分が透光性を有するドット印刷による装飾を施した壁面である。
【0084】
(具体的構成)
以下、このような壁面の具体的な構成について説明する。
【0085】
本実施例に係る壁面の構成を説明するための図として、図2を流用して説明する。本実施例に係る壁面は、図2と同様に、壁本体0201とその表面に形成された非常時用サイン0210を有する。また、実施例1ではその表面に壁面装飾シート0220が配置されていたが、本実施例にではこれに代えてドット印刷による装飾を施している。従って、本実施例の壁面は、図2に示したものと外観上はほぼ同様であるが、構成上は、図2のうち壁面装飾シート0220をドット印刷による装飾に代えたものとなる。
【0086】
次に、本実施例におけるドット印刷による装飾の具体的構成について説明する。
【0087】
本実施例において「ドット印刷」とは、不透光性ないし低透光性の塗料を用いた印刷において、印刷面に塗料が載る部分と載らない部分が生じるようにした印刷をいう。塗料が載る部分(あるいは載らない部分)の形状としてドット状(点状ないし小円状)のものが想定されることからドット印刷と呼ぶが、塗料が載る部分(あるいは載らない部分)の形状はこれに限られることなく、印刷面に塗料が載る部分と載らない部分が生じるような印刷であれば広く含まれる。ドット印刷の方法にも特に限定はないが、例えばスクリーン印刷による方法が用いられる。スクリーン印刷は、一般に、絹、ポリエステルなどの繊維で織ったスクリーンを枠に張って固定し、スクリーンのうちで塗料を通したくない部分を樹脂などで被膜し、このスクリーンに被印刷物の印刷面を貼り合わせて、ヘラなどでスクリーンに塗料を塗りつけ、スクリーンのうち被膜されていない部分の繊維のすき間から印刷面に塗料を押し出すことで、塗料を印刷面に転移させるものである。
【0088】
図9は、本実施例の壁面の非常時用サインの表面にドット印刷による装飾を施した状態の一例を示す図であって、一部を拡大して示したものである。本図では、非常時用サイン0910の表面に、略円形の部分0901(煩雑を避けるため一箇所のみ符号を示す)に塗料が載らず、それ以外の部分0902に塗料が載るように印刷を行ったものである。不透光性ないし低透光性の塗料を使用することで、略円形の部分のみが透光性を有し、それ以外の部分は透光性を有しないか低い透光性しか有しないようにすることができる。
【0089】
そこで、このような印刷を、少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部に施せば、実施例1などにおいて少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部が透光性を有する壁面装飾シートを非常時用サインにかぶせて配置したときと同じ効果が得られることになる。
【0090】
また、実施例1などと同様に非常時用サインが発光可能領域と発光不能領域とによってデザインされている場合に、発光不能領域上の部分が透光性が低いか又は透光性を有さないようにするため、上と同様のドット印刷を行ってもよい。
【0091】
また、本実施例の壁面は、ドット印刷を非常時用サインの配置されている領域にのみ施すことで、非常時用サインにかぶせられている領域のみが透光性を有するようにしてもよい。また、本実施例の壁面は、非常時用サインにかぶせられかつ非常時用サインの発光不能領域上の部分を除いた部分のみにドット印刷を行うことで、この部分のみが透光性を有するようにしてもよい。この場合における壁面の非常時用サインにかぶせられている領域は、例えば図5に示したものと同様の外観を呈する。図5では、無色透明な壁面装飾シートに対し、ドット部分以外の部分に塗料が載るように印刷する際に発光不能領域上の部分にはドットを設けないようにした例を示したが、本実施例では、壁面装飾シートに印刷して貼り付けるのではなく、非常時用サインの上に直に印刷を行うようにして、同様の効果が得られるようにしている。
【0092】
さらに、本実施例の壁面は。非常時用サインが設けられている以外の面に描かれる直接装飾を有している場合において、非常時用サイン上にドット印刷を施した面の装飾が前記直接装飾と同一又は類似の装飾であるものであってもよい。
【0093】
(本実施例用の非常時用サインを製造して使用する例)
本実施例においても、実施例1で述べたのと同様に、市販の非常時用サインを利用する場合に生じ得る問題を回避するため、本実施例用の固有の非常時用サインを製造して使用することが考えられる。即ち、非常時用サインの発光不能領域の色や模様を壁の色や模様に合わせ、その上にやはり壁の色や模様でドット印刷を行うようにしてもよい。こうすることで、本実施例においても、たとえ昼間見たときに小孔のすき間から背後の発光不能領域の色が透けて見えたとしても、周囲の壁面や壁面装飾シートと色合いが異なることで一体的に見えないということがなく、美観を損なうおそれを回避することができる。同様に、蓄光性蛍光体の色が壁の色と大きく異なる場合の問題についても、実施例1と同様に、蓄光顔料にカラー蛍光顔料を混ぜて壁の色と略同色になるように着色することで解決可能である。
【0094】
<壁の製造方法>
次に、以上に説明した本実施例における壁面を有する壁の製造方法について説明する。本実施例における壁面を有する壁の製造方法における処理の流れは、基本的に、実施例1において図6を用いて説明した処理の流れと共通する。ただし、本実施例における処理の流れは、壁面装飾シートの壁面への配置ステップに代えて、ドット印刷ステップを有する。ドット印刷ステップは、非常時用サインの表面に少なくともドット部分が透光性を有するドット印刷による装飾を施すステップである。
【0095】
なお、上述の本実施例用の固有の非常時用サインを製造して使用する場合には、さらに詳細な手順として、以下に示すような方法で壁を製造することが望ましい。
【0096】
この場合まず、実施例1で述べたのと同様に、予め非常時用サインを配置しようとする壁の周囲の壁面のカラー撮影及び色合わせを行っておく。次に、用意された非常時用サインの本体を壁面の所定位置に取り付ける。なお、用意する非常時用サインは、蓄光塗料の顔料色が薄黄色であることに伴う上述の問題を回避するため、サイン本体の凹部に蓄光性蛍光体を塗布する際に、蓄光顔料とカラー蛍光顔料を混ぜて壁の色と略同色に着色したものであってもよい。次に、非常時用サインの表面の発光不能領域を白色の不透光性塗料で印刷する。さらに、当該発光不能領域の上に重ねて上で撮影した画像をドット印刷にて転写する。発光不能領域に撮影画像を転写する前にまず白色の不透光性塗料で印刷する理由は、このようにすることで発光不能領域に下地の蓄光性蛍光体の色が透けて周囲の壁面の色と微妙に異なる色になってしまうおそれを防ぐことができるからである。この場合、図10に示したような要領で、ドット(略円形の部分)には塗料が載らず、それ以外の部分に塗料が載るように印刷を行う。なお、壁に模様がある場合には、撮影した画像の模様の位置が周囲の壁面の模様の位置とずれないように印刷することが望ましい。
【0097】
以上の方法によれば、非常時用サインを配置した領域の壁面が周囲の壁面とより一体的に見え、場合によっては周囲の壁面と全く見分けがつかないようにすることも可能となるので、本実施例の壁面の目的をより好適に実現することができる。
【0098】
<効果>
本実施例の発明により、発光可能な非常時用サインを備える壁面であって非常時用サインが昼間に周囲の壁面の美観を損なうことがないようにした壁面を、壁面装飾シートに代えてドット印刷による装飾を施すことによって提供することが可能となる。
【実施例6】
【0099】
<概要>
本実施例の壁面も上記各実施例の壁面と同様の目的を有するものであるが、本実施例では、非常時用サインを覆う形で壁面装飾シートをかぶせたりドット印刷を施すのではなく、非常時用サイン自体が昼間でも周囲の壁面と一体的に見えるようにして目立たなくなるようにした点に特徴があるものである。
【0100】
<構成>
(全般)
【0101】
本実施例の壁面は、発光可能で避難誘導などに用いられる非常時用サインを有する壁面であって、非常時用サインは、発光可能領域と発光不能領域とによってデザインされ、発光可能領域は非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色の蓄光性蛍光体色であり、発光不能領域も非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色であるように構成されたものである。また、これに加えて、発光不能領域が蓄光性蛍光体の表面に白色層に重ねて前記壁面の非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色の印刷を施すことで形成されているものも本実施例の壁面に含まれる。
【0102】
「発光可能領域」、「発光不能領域」の意味、及び「発光可能領域と発光不能領域によってデザインされる」との意味は、いずれも実施例1と同様である。
【0103】
(発光可能領域)
本実施例では、発光可能領域は、非常時用サイン以外の壁面の領域と昼光色で略同色の蓄光性蛍光体色である。発光可能領域に塗布される蓄光性蛍光体は通例薄黄色であるので、周囲の壁面の色がこれと略同色であれば、このような蓄光性蛍光体をそのまま塗布すればよい。
【0104】
一方、周囲の壁面の色が黒やこげ茶といった薄黄色とは大きく異なる色の場合には、かかる蓄光性蛍光体を塗布しただけでは、周囲の壁面との色の違いが目立ってしまい不適切である。そこで、この場合、壁に蓄光性蛍光体を塗布する際に、薄黄色の蓄光顔料にカラー蛍光顔料を混ぜて壁の色と略同色にしたものを塗布することが考えられる。
【0105】
なお、本実施例においても、蓄光顔料にカラー蛍光顔料を混ぜることによる蓄光性蛍光体の発光輝度の低下の問題が生じ得るので、なるべく蓄光顔料にカラー蛍光顔料を混ぜることは避けた方が好ましい。この点、周囲の壁面の色が蓄光性蛍光体の色と蓄光性蛍光体の色が略同色(薄黄色)である場合には、昼間に蓄光性蛍光体の色が直接見えていても周囲の壁面との一体感が阻害されないのでカラー蛍光顔料を混ぜる必要はなく、本実施例の壁面を好適に実施できる。さらに、非常時用サインを配置する壁を新たに設計、設置する場合には、はじめから壁の色を蓄光性蛍光体の色に合わせてもよい。
【0106】
(発光不能領域)
本実施例では、発光不能領域も非常時用サイン以外の壁面の領域と昼光色で略同色であるように構成される。従って、本実施例の非常時用サインは、発光可能領域、発光不能領域の両方、即ち全面が非常時用サイン以外の壁面の領域と昼光色で略同色であることになる。これによって、上記各実施例のように非常時用サインを覆う形で壁面装飾シートをかぶせたりドット印刷を施すことなく、代わりに非常時用サイン自体の色を周囲の壁面と略同色にすることで、昼間でも周囲の壁面と一体的に見えるようにして目立たなくなるようにするという効果を奏することができる。
【0107】
また、発光不能領域は、蓄光性蛍光体の表面に白色層に重ねて前記壁面の非常時用サイン以外の壁面の領域と昼光色で略同色の印刷を施すことで形成されていてもよい。
【0108】
<壁の製造方法>
次に、以上に説明した本実施例における壁面を有する壁の製造方法について説明する。図11は、本実施例における壁の製造方法について説明するための図である。本実施例における壁面を有する壁の製造方法における処理の流れは、以下のステップを有する。
【0109】
まず、ベース作成ステップにおいて、非常時用サインの領域以外の壁面の領域と昼光色で略同色の蓄光性蛍光体からなる非常時用サインのベースを作成する。図11(a)は、本ステップにより作成された非常時用サインのベース1110aの一例を示す。非常時用サインのベースは、全面に蓄光性蛍光体1112が塗布されている。非常時用サインの領域以外の壁面の領域の色が薄黄色であれば蓄光性蛍光体(薄黄色)をそのまま塗布すればよい。非常時用サインの領域以外の壁面の領域の色がそれ以外の色であれば蓄光顔料にカラー蛍光顔料を混ぜて壁面の色と略同色にしたものを塗布すればよい。なお、蓄光性蛍光体の上にさらに蓄光性蛍光体を保護するための樹脂からなる透明保護層を配置してもよい。あるいは、透明保護層は、以下の発光不能領域作成ステップによる印刷を行ってから、非常時用サインの領域全体の上に配置してもよい。
【0110】
次に、発光不能領域下地作成ステップにおいて、ベース作成ステップにて作成されたベースの発光不能領域とすべき領域に白色の印刷を施して発光不能領域下地を作成する。図11(b)は、蓄光性蛍光体1112の一部の上に重ねて、発光不能領域とすべき下地領域1111aに不透光性の塗料を用いて白色の印刷を施した状態を示す。なお、発光不能領域下地作成ステップはなくてもよいが、あることが望ましい。発光不能領域下地作成ステップにおいて白色の印刷を施す理由は前実施例で述べたところと同様である。
【0111】
次に、発光不能領域作成ステップにおいて、発光不能領域下地作成ステップにて作成された発光不能領域下地上に昼光色で非常時用サイン以外の壁面の領域と昼光色で略同色の非発光塗料を用いた印刷をして発光不能領域を作成する。その際、本実施例においても、予め非常時用サインを配置しようとする壁の周囲の壁面のカラー撮影及び色合わせを行っておき、発光不能領域作成ステップにおける印刷は上述の撮影画像を転写することで行うことが望ましい。なお、壁に模様がある場合には、撮影した画像の模様の位置が周囲の壁面の模様の位置とずれないように印刷することが望ましい。図11(c)は、白色の発光不能領域下地1111aの上に重ねて非常時用サインの領域以外の領域の色と略同色の非発光塗料で印刷を施した状態を示す。図11(d)は、このようにして作成された非常時用サイン1110を壁面に取り付けた状態を非常時用サイン以外の壁面の領域の一部1101とともに示したものである。かかる非常時用サインは、発光不能領域も発光可能領域もすべて周囲の壁面の色と略同色となるので、昼間非常時用サインが何ら覆われていない状態であっても、周囲の壁面とほとんど見分けがつかない程度に目立たなくすることができる。なお、本図(c)、(d)では説明の便宜のために発光不能領域の輪郭を実線で示しているが、実際にはこの輪郭はほとんど目立たないものとなる。
【0112】
なお、以上においては、非常時用サインを作成してから壁面に取り付ける例で説明したが、これとは異なり、壁面に描くことにより非常時用サインを壁面上で作成するようにしてもよい。
【0113】
<効果>
本実施例の発明により、発光可能な非常時用サインを備える壁面であって非常時用サインが昼間に周囲の壁面の美観を損なうことがないようにした壁面を、壁面装飾シートやドット印刷に代えて非常時用サイン自体の色を壁に合わせることによって実現することが可能となる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常時用サインを備え、その上に装飾を施した壁面、及びこのような壁の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
災害などの非常時用の設備の一つである非常時用サインは、蓄光性蛍光体などの発光体を用いて非常口への避難誘導経路などを示すサインを表示し、これにより、停電などの暗闇でも避難者の安全な誘導を行うことなどを可能にするものである。このような非常時用サインは屋内の通路や廊下などに設置されるほか、屋外にこのような非常用サインを多数設置することの重要性も認識され始めている。例えば、地下鉄構内で震災にあった場合に、地上までは避難したものの、夜間でしかも停電のため、あたりが真っ暗でどちらの方向に避難してよいかわからないといった場合に、建物の外壁などに避難場所への誘導のための非常時用サインが設置されていれば極めて有用である。
【0003】
しかし、屋内に非常時用サインを設置した場合には、照明時において非常時用サインが周囲の壁面の色や模様などの装飾と調和せず、美観を損なうおそれがあるという問題がある。同様に、屋外に非常時用サインを設置した場合にも、建物の外壁が景観との調和などのために美観に配慮されている場合が多く、やはり同様に非常時用サインが昼間の美観を損なうおそれがあるという問題がある。
【0004】
この点、非常時用サインが昼間や照明時(以下「昼間」と略す)には周囲の壁面と一体的に見えるようにして目立たなくし、夜間や停電時(以下「夜間」と略す)には光って目立つようにすれば、非常時用サイン本来の役目を果すとともに、昼間の美観も損なわないようにすることができるので、有用である。しかし、このような工夫がなされた壁や壁面は、これまで知られていなかった。
【0005】
なお、昼間と夜間とで見え方の異なる表示をするための技術として、壁面に関するものではないが、特許文献1が知られている。同文献には、立看板の表面にメッシュ材を使用し、当該メッシュ材の表面に文字、絵柄を描いて昼間は太陽光で視認できるようにし、夜間は立看板に内蔵された発光体によりメッシュ材の透過性を利用して光を通過させて発光体によって表される別の文字、絵柄を認識できるようにした昼夜可変看板が記載されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−240385号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載されている発明は、立看板に関するものであるから当然のことながら、昼間に周囲の壁面と一体的に見えるようにして目立たなくすることで美観を損なわないようにするという発想は全くなく、これを実現するための技術については何ら開示されていない。
【0008】
つまり、壁面の場合には、非常時用サインが配置されている部分が昼間に見える周囲の壁面の美観を損なうことがないようにするという独自の課題が存在し、これを解決するための独自の工夫が必要となる。
【0009】
即ち、本発明の解決すべき課題は、発光可能な非常時用サインを備える壁面であって、非常時用サインが昼間に周囲の壁面の美観を損なうことがないようにした壁面を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の課題を解決するため、第一の発明は、発光可能で避難誘導などに用いられる非常時用サインと、この非常時用サインにかぶせて配置され、少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部は、透光性を有する壁面装飾シートとを有する壁面を提供する。
【0011】
また、第二の発明は、第一の発明を基礎として、非常時用サインは、発光可能領域と、発光不能領域とによってデザインされ、前記壁面装飾シートは、発光不能領域上の部分は透光性が低いか又は透光性を有さない壁面を提供する。
【0012】
また、第三の発明は、第一又は第二の発明を基礎として、前記壁面装飾シートは、非常時用サインの配置されている領域にのみかぶせて配置されている壁面を提供する。
【0013】
また、第四の発明は、第一の発明を基礎として、前記壁面装飾シートは、非常時用サインにかぶせられている領域のみが透光性を有する壁面を提供する。
【0014】
また、第五の発明は、第二の発明又は第二の発明に従属する第三の発明を基礎として、前記壁面装飾シートは、非常時用サインにかぶせられかつ非常時用サインの発光不能領域上の部分を除いた部分のみが透光性を有する壁面を提供する。
【0015】
また、第六の発明は、第三の発明を基礎として、前記非常時用サインが設けられている以外の面に描かれる直接装飾を有し、前記壁面装飾シートの装飾は、前記直接装飾と同一又は類似の装飾である壁面を提供する。
【0016】
また、第七の発明は、非常時用サインを壁面に配置(描く場合を含む)する非常時用サイン配置ステップと、少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部が透光性を有する部分とするように壁面装飾シートをさらに壁面に配置する壁面装飾シート配置ステップとからなる壁の製造方法を提供する。
【0017】
また、第八の発明は、第一から第六のいずれか一の発明を基礎として、前記壁面装飾シートに代えて、前記非常時用サインの表面に少なくともドット部分が透光性を有するドット印刷による装飾を施した壁面を提供する。
【0018】
また、第九の発明は、非常時用サインを壁面に配置(描く場合を含む)する非常時用サイン配置ステップと、前記非常時用サインの表面に少なくともドット部分が透光性を有するドット印刷による装飾を施すドット印刷ステップとからなる壁の製造方法を提供する。
【0019】
また、第十の発明は、発光可能で避難誘導などに用いられる非常時用サインを有する壁面であって、非常時用サインは、発光可能領域と、発光不能領域とによってデザインされ、発光可能領域は非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色の蓄光性蛍光体色であり、発光不能領域も非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色である壁面を提供する。
【0020】
また、第十一の発明は、第十の発明を基礎として、前記発光不能領域は、蓄光性蛍光体の表面に白色層に重ねて前記壁面の非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色の印刷を施すことで形成されている壁面を提供する。
【0021】
また、第十二の発明は、発光可能領域と発光不能領域とでデザインされた非常時用サインを有する壁面の製造方法であって、非常時用サインの領域以外の領域と昼光色で略同色の蓄光性蛍光体からなる非常時用サインのベースを作成するベース作成ステップと、ベース作成ステップにて作成されたベースの発光不能領域とすべき領域に白色の印刷を施して発光不能領域下地を作成する発光不能領域下地作成ステップと、発光不能領域下地作成ステップにて作成された発光不能領域下地上に昼光色で非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色の非発光塗料を用いた印刷をして発光不能領域を作成する発光不能領域作成ステップとを有する壁面の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、発光可能な非常時用サインを備える壁面であって、非常時用サインが昼間に周囲の壁面の美観を損なうことがないようにした壁面を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1の壁面の一部の外観の一例を示す図
【図2】実施例1に係る壁面の構成を説明するための図
【図3】実施例1における非常時用サインの外観の一例を示す図。
【図4】実施例1における壁面装飾シートの一例を示す概念図
【図5】実施例1における壁面装飾シートの一例を示す概念図
【図6】実施例1における壁面を有する壁の製造方法における処理の流れの一例を示す図
【図7】実施例2における壁面装飾シートの配置の一例を示す概念図
【図8】実施例4における壁面の外観の一例を示す図
【図9】実施例5の壁面の非常時用サインの表面にドット印刷による装飾を施した状態の一例を示す図
【図10】部材の背後の光源の明るさと部材の覆い率の関係を示す概念図
【図11】実施例6における壁面の製造方法について説明するための図
【符号の説明】
【0024】
0100、0200 壁面
0110、0210 非常時用サイン
0220 壁面装飾シート
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施例を説明する。実施例と請求項の相互の関係は以下のとおりである。実施例1は主に請求項1、請求項2、請求項7などに関し、実施例2は主に請求項3などに関し、実施例3は主に請求項4、請求項5などに関し、実施例4は主に請求項6などに関し、実施例5は主に請求項8、請求項9などに関し、実施例6は主に請求項10、請求項11、請求項12などに関する。なお、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施しうる。
【実施例1】
【0026】
<概要>
本実施例の壁面は、非常時用サインにかぶせて配置され、少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部が透光性を有する壁面装飾シートを有する壁面である。また、本実施例の壁面には、上記のような壁面であって、非常時用サインが発光可能領域と発光不能領域とによってデザインされ、壁面装飾シートのうち発光不能領域上の部分が透光性が低いか又は透光性を有さないものが含まれる。
【0027】
<構成>
(全般)
図1は、本実施例の壁面の一部の外観の一例を示す図である。本図に示すものは建造物の内壁(例えば廊下の壁)の例であるが、建造物の外壁であっても以下の説明は同様にあてはまるものである。さらに、本実施例にかかる発明は、壁以外の例えば床や天井、屋根などに非常時用サインを設置する場合にも応用可能である。即ち、本実施例に係る発明は、非常時用サインが配置されている領域が昼間周囲の部分と一体的に見えるようにすることで美観を損なわないようにするために広く用いることができるものである。
【0028】
本図の(a)に示したものは、昼間(本例では照明時)における外観であり、壁面0101には美観を維持するための縞模様が施されている。本図において、(b)で非常時用サイン0110が配置されている部分にあたる領域0120a(破線で囲んだ領域)には、これにかぶせられる形で壁面装飾シートが配置されている。この壁面装飾シートは、非常時用サインが配置されている部分にあたる領域にのみかぶせられていてもよいし、壁面全体にかぶせられていてもよい。壁面装飾シートを非常時用サインが配置されている部分にあたる領域にのみかぶせる場合には、壁と一体的に見える模様を施すことで周囲の壁面の美観を損なわないようにする。従って、昼間壁面を見てもこの壁面装飾シートの存在はほとんど目立たない。一方、(b)に示したものは、同じ室内の夜間(本例では停電時)における外観であり、壁面装飾シートの背後に設置されている非常時用サイン0110が発光している状態を示す。本図に示すように、(a)の状態では、非常時用サインは壁面装飾シートがかぶせられており、しかも壁面装飾シートに壁と同じ模様が施されているので、美観が損なわれることがない。そして、万一火災等で停電になったときは、発光する非常時用サインが目立つので、直ちに安全に避難することが可能となる。
【0029】
以下、このような壁面の具体的な構成について説明する。
【0030】
図2は、本実施例に係る壁面の構成を説明するための図であり、非常時用サインを含む壁面の一部を垂直断面図で示したものである。本図では、右側が壁面の外表面であり、視認者0203は右側から壁面を見る形になる。本図に示すように、本実施例の壁面(一部)0200は、非常時用サイン0210(左上がり斜線で示すサイン本体0211と、右上がり斜線で示す蓄光性蛍光体0212とを合わせた部分)と、壁面装飾シート0220とを有する。
【0031】
(非常時用サイン)
「非常時用サイン」は、避難誘導などに用いられる表示体であり、発光可能に構成されている。非常時用サインの用途としては、地震、火災などの災害発生時の避難誘導用のものが典型であり、図2で示したような非常口の方向を示すものや非常口の位置を示すものがこれにあたる。そのほか、非常時にこれに対応した行動をとる際の指標になったり、行動を促したりするといった非常時用のメッセージを伝達するためのものが広く含まれる。メッセージの表わし方にも特に限定はなく、メッセージをピクトグラム(絵文字)で表わしたもの(非常用ピクトグラム)であってもよいし、文字だけで表わしたものであってもよいし、ピクトグラムと文字を組み合わせたものであってもよい。
【0032】
この非常時用サインは、別途製造したものを壁本体の表面に取り付けるようにしてもよく、その場合には市販のものを利用可能である。あるいは、本発明にかかる壁面用として別途製造してもよい。
【0033】
図3は、本実施例における非常時用サインの外観の一例を示す図である。本図に示す「非常時用サイン」0310は、金属などの板からなるサイン本体0311に、凹凸にて非常時用のマークを形成し、当該マークの凹部に蓄光性蛍光体0312を塗布したものである(図中白で示す部分が凹部に塗布された蓄光性蛍光体である)。また、サイン本体の凸部(図中黒で示す矢印及び非常口のピトグラムの部分0311a)は蓄光性蛍光体とともにサインを形成する部分である。
【0034】
あるいは、本図の例と異なり、非常時用サインは、本体の全面に蓄光性蛍光体を塗布し、その上に矢印及び非常口のピトグラムの部分を不透光性ないし低透光性の塗料を塗布・印刷することで非常用のマークを形成したものであってもよい。
【0035】
非常時用サイン本体の素材には特に限定はないが、好適にはアルミニウムなどの金属が用いられる。
【0036】
非常時用サインの壁本体表面への取り付けには、接着剤を用いればよい。接着剤の種類は壁の材質などによって適宜選択すればよい。例えば、コンクリートの壁に取り付ける場合には、強靭で柔軟性に富むアクリルフォームを用いたものを用いてもよく、その一例として、3M社のVHB(登録商標)アクリルフォーム構造用接合テープが挙げられる。また、屋外の壁に取り付ける場合には、降雨による湿度変化などによる後発的な接着性の低下をあらかじめ防止するため、コンクリートなどの表面にプライマー(下地処理液)を塗布してもよく、上述のVHB(登録商標)アクリルフォーム構造用接合テープを用いる場合の専用プライマーの一例としてクロロプレンゴムを主成分とする3M社製プライマー(品番EC−1368NT)などを利用可能である。あるいは、別の取付方法として、サイン本体の裏面に壁に埋め込んで固定するための突起を設けてもよい。
【0037】
取り付けに際しては、壁面装飾シートをかぶせたときに壁面装飾シートが膨らんで美観を損なわないように、壁本体の表面に非常時用サインを取り付けるための窪みを設けてもよい。あるいは、非常時用サインの厚みが極めて薄いとか、非常時用サインの壁全体に占める面積が極めて小さいなどの理由で、この部分が多少膨らんでいても美観を損なわない場合には、平らな壁本体の表面に非常時用サインを取り付けるようにしてもよい。図2に示したものは壁0201に窪みを設けてそこに非常時用サインを設置した例であり、この場合、本図に現れているように、非常時用サインの表面とその周囲の壁面が単一の平面を形成し、従って、その上に配置されている壁面装飾シートがやはり平面を形成するようになっていることが望ましい。
【0038】
(壁面装飾シート)
「壁面装飾シート」は、非常時用サインにかぶせて配置され、壁面の表面を形成するものである。視認者から見れば、昼間はこれが壁の表面として見えることになる。
【0039】
壁面装飾シートを配置する目的は、壁面の表面を装飾することで美観を損なわないようにすることにある。また合わせて背後の非常時用サインを保護する目的もある。前者の目的に照らし、壁面装飾シートの色彩や模様は、周囲の壁面に合わせて形成される。これにより、昼間は、壁面装飾シートの存在がほとんど目立たず、あたかもそこに一枚の壁があるだけのように見えるようにすることが可能となる。
【0040】
壁面装飾シートは、非常時用サインには必ずかぶせられる必要があるが、それ以外にはかぶせられていてもよい(例えば、壁全体にかぶせられていてもよい)し、かぶせられていなくてもよい。壁面装飾シートが非常時用サインの配置されている領域にのみかぶせて配置される例については、別の実施例にて後述する。
【0041】
(壁面装飾シートの透光性について)
壁面装飾シートのうち、少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部は、透光性を有する。
【0042】
「透光性を有する」とは、光が透過する性質を備えていることをいう。一般に、ある部材が透光性を有するために、光を透過させるためのすき間などを備えている必要がある。特に、本発明における壁面装飾シートの透光性は、夜間は、壁面装飾シートの背面に設置されている非常時用サインが発する光をシートの外側から視認できるが、昼間は非常時用サインが目立たない程度のものである必要がある。一般に、透光性の程度は、部材の背後にある光源の明るさと、部材の覆い率(部材がどの程度不透光部分で覆われているか、言い換えれば部材にどの程度のすき間があるか)との相関関係によって決まると考えられる。
【0043】
図10は、部材の背後の光源の明るさと部材の覆い率の関係を示す概念図である(あくまで概念図であり、示されている数値も、あくまで理解の容易のための設例であって、必ずしも実際に即したものではない)。本図においては、縦軸に単位面積当たりの光束(単位:ルーメン/m2)で表わした光源の明るさをとり、横軸に覆い率をとっている。なお、本図を本発明にあてはめる場合、夜間における非常時用サインの明るさは文字通り発光領域を光源とする明るさであるが、昼間における非常時用サインの明るさは照明や太陽光の反射による明るさである。
【0044】
この場合、本発明に好適な、背後の光源の光が透過する(部材の表側から光を視認できる)状態は、概ね斜線で示したエリア1001になると考えられる。即ち、まず前提として、覆い率が0%(全く覆われていない)のときは、光源の明るさに関係なく光を視認でき、覆い率が100%(完全に覆われている)ときは、どんなに明るい光源の光も視認できない。そして、その中間においては、覆い率が増えるほど視認できるのに必要な最低限の光の明るさが増えていくが、その上昇率は、ある程度の覆い率(概ね50%程度)までは加速度的に増えていき、その後漸減すると考えられる(グラフ参照)。
【0045】
本発明に係る壁面において、非常時用サインの発光領域の発光時の明るさを2500ルーメン/m2程度と仮定し、また、非常時用サインの非発光時において1500ルーメン/m2程度以下の光でも透過してしまうような覆い率とすると非常時用サインが目立ってしまうと仮定する。そうすると、夜間は発光を視認でき、昼間は非常時用サインが目立たないようにすることができる程度の透光性を有するためには、壁面装飾シートの覆い率を概ね50〜90%程度にすればよいといえる。なお、90%という数値は、100%にごく近いところでは夜間の視認が悪くなるので、若干ゆとりを持たせたといった程度の意味である。
【0046】
このような透光性を有する壁面装飾シートの一例としては、例えば、布や和紙などで作られたシートを挙げることができる。この場合、布や和紙には繊維のすき間があり、ここを介して光が透過することができる一方、かなりの割合が繊維で覆われているため背後の非常時用サインが発光しているときは光が透過して視認できるが、そうでないときは光が遮られて、非常時用サインは目立たないことになる。
【0047】
また、別の例として、図4、図5に示すようなものも挙げることができる。即ち、図4、図5は、本実施例における壁面装飾シートの一例を示す概念図であり、このうち、まず図4に示したものは、壁面装飾シート0420に小孔0421(煩雑を避けるため一箇所にのみ符号を付した)を穿ったものである。また、破線で囲んだ部分0410aは、非常時用サインにかぶせられている領域を示す。本図はあくまで概念図であるので、図示の便宜上、小孔の数が比較的少なく、また孔の大きさが非常時用サインの面積に比して相対的に大きくなっているが、実際の一例としては、縦9cm程度×横27cm程度の非常時用サインにかぶせられている領域に直径1mm程度の小孔がほぼ等間隔で縦50個程度×横150個程度穿たれているものが考えられる。本図の例は、非常時用サインにかぶせられている領域がすべて透光性を有する例であるが、本図の例と異なり、非常時用サインにかぶせられている領域の一部にのみ小孔が穿たれていてもよい。なお、本図では、小孔の形状が略円形のものを示したが、小孔の形状には特に限定はなく、例えば、略三角形状、略四角形状、略多角形状などであってもよい。
【0048】
図5に示したものは、壁面装飾シート0520自体が透光性を有する部材で構成したものである。透光性を有する部材としては、例えば、無色透明ないし有色透明や半透明のガラス、ビニール、樹脂などの透明材料に、不透光性あるいは低透光性の塗料を、一部透明部分を残す形で塗布又は印刷したものが考えられる。本図は、ドット部分を透明なまま残して、その他の部分に塗料を塗布した例である。なお、ドットの形状に特に限定がない点は小孔の場合と同様である。
【0049】
これらの例においては、発光領域にかぶせられている領域のうち、小孔又はドットが配置されている部分だけが透光性を有しており、それ以外は透光性を有していないものとなる。このように、非常時用サインのうち発光領域(蓄光性蛍光体が塗布されている部分)にかぶせられている領域は必ず全部が透光性を有する必要はないのであるが、発光領域の形状が発光時に認識できる必要がある(そうでないと発光領域と不発光領域のコントラストによって示そうとしているサインの内容を把握できない)から、これに足りる程度に透光性を有する部分が全体的に配置されている必要がある(例えば、小孔が当該領域の全体にわたってまんべんなく配置されている必要がある)。
【0050】
ところで、非常時用サインの全部を発光領域とするかどうかは、表わそうとするサインの内容などに応じて設計される事柄である。図1、図3に示したようなピトグラムや記号を用いてサインを表わす場合には、発光部分と不発光部分を設け、そのコントラストによって表したいサインを形成するのが通例である。この場合には、非常時用サインは、発光可能領域と発光不能領域とによってデザインされることになる。ここで、「発光可能領域と発光不能領域とによってデザインされる」とは、非常時用サインの表面に発光可能領域と発光不能領域の双方が施され、夜間に発光可能領域だけが発光することで発光不能領域とのコントラストによってサインの内容を表わすようにされていることをいう。一方、非常時用サインの領域全部を発光可能領域としてもよい。例えば非常時用サインの全面に蓄光性蛍光体を塗布した場合にはこのようなデザインとなる。この場合、複数の異なる色で発光する蓄光性蛍光体を塗り分けることでサインの内容を表わすようになっていてもよいし、あるいは全面が単一色で発光するようにしてもよい。全面が単一色で発光する非常時用サインの用途としては、例えば、図2で示したような非常口の方向を示す非常時用サインと併用する形で、そこから非常口までの誘導路に沿って、全面が発光する四角形の非常時用サインを一定間隔で並べていくといった場合が考えられる。
【0051】
以上の例から明らかなように、「透光性を有する」ことの具体的な意味としては、(1)すき間を介して向こう側のものが直視できる場合(小孔のようなケース)、(2)すき間を介して向こう側のものを直視することはできないが、光がすき間を形成している繊維などの部材に反射しつつ部材を抜けていくことで向こう側に光が届く場合(布のシートのようなケース)、さらに(3)何もない空間によって形成される「すき間」ではなく、透明の部材を通じて光が透過する場合(透明ビニールシートの一部を残して不透性塗料を塗布するようなケース)があることにある。
【0052】
なお、「『少なくとも』非常時用サインにかぶせられている領域の一部は、透光性を有する」とは、非常時用サインにかぶせられている領域以外も透光性を有していてもよいという意味である。さらに、「非常時用サインにかぶせられている領域の『一部』は、透光性を有する」とは、非常時用サインにかぶせられている領域の中に透光性を有していない領域があってもよいという意味である。さらに言えば、発光領域にかぶせられている領域の少なくとも一部は必ず透光性を有している必要がある。しかし、発光領域にかぶせられている領域のなかに透光性を有していない部分があってもよい。また、発光領域以外にかぶせられている領域には透光性を有している領域が全くなくてよい。
【0053】
(発光可能領域、発光不能領域によるデザイン例)
ここで、非常時用サインが発光可能領域と発光不能領域とによってデザインされる例について説明する。なお、このようなデザインの場合、壁面装飾シートのうち発光不能領域上の部分は透光性が低いか又は透光性を有さないものとされる。このようにするためには、例えば、透光性が低いか透光性を有しない素材からなる非常時用サイン本体に設けられた凹凸のうち、凸部を発光不能領域とし、凹部に蓄光性蛍光体を塗布するようにしてもよいし、あるいは、本体の全面に蓄光性蛍光体を塗布した上で、発光不能領域とすべき部分に不透光性又は低透光性の塗料を塗布・印刷するようにしてもよい。
【0054】
「発光可能領域」とは、非常時用サインのうち、発光体が配置されて発光可能に構成されている領域をいう。「発光不能領域」はそのような構成が施されておらず発光不能な領域をいう。図2、図3の例で言えば、蓄光性蛍光体0212、0312を塗布した部分が発光可能領域にあたる。また、図2の例で言えば蓄光性蛍光体に挟まれた凸部0211、図3の例で言えば矢印及び非常口のピトグラムの部分0311a)が発光不能領域にあたる。このように非常時用サインを発光可能領域と発光不能領域とよってデザインすることで、夜間の発光時に両者のコントラストによって表示内容を目立つ形で表示することが可能となり、視認性が向上する。
【0055】
(市販の非常時用サインを利用する場合の問題点と解決例)
市販の非常時用サインを利用する場合には、通例、発光可能領域と発光不能領域によってデザインされているので、これをこのまま利用すればよい。例えば、図1、図3に示したような非常口の方向を示すサインの場合には、市販の非常時用サインを利用できる。
【0056】
ところで、市販の非常時用サインの場合、ピトグラムや矢印が描かれた発光不能領域には濃緑色の不発光性塗料が塗られているのが通例である。ここで、壁の色が濃緑色と大きく異なる色(例えば、白、グレー、茶色など)の場合、昼間見たときに、小孔のすき間から背後の発光不能領域の色が透けて見え、周囲の壁面と色合いなどが異なることで一体的に見えず、美観を損なうおそれがあるという問題がある。
【0057】
そこで、発光不能領域にかぶせられる壁面装飾シートの領域は透光性を有しないようにしてもよい。具体的には、図4に示したような非常時用サインにかぶせられている領域に小孔を穿つ場合に、発光不能領域にかぶせられている領域には小孔を穿たないようにする構成が考えられる。また、図5に示したような壁面装飾シート自体が透光性を有する部材で構成する場合に、発光不能領域にはドット部分を透明なまま残す領域を設けず、すべて不透光性の塗料を印刷するといった構成が考えられる。図5の例はまさにこのような例であり、発光不能領域である非常口のピトグラム及び矢印の領域にかぶせられている壁面装飾シートの領域には、ドット部分を透明なまま残す領域が設けられていない例が示されている。図4に示した小孔を穿つ構成の場合も、図5でドット部分が残されている領域に相当する領域にのみ小孔を穿てば、これと同様の構成となる。
【0058】
(本実施例用の非常時用サインを製造して使用する例)
あるいは、市販の非常時用サインを用いずに、本実施例の壁面に利用するための固有の非常時用サインを製造して用いることとし、その際に、非常時用サインの発光不能領域の色を周囲の壁面の色及び壁面装飾シートと略同色にするようにしてもよい。ここで、「略同色」とは、昼光色において完全な同色又は周囲の壁面との色の違いが目立たない程度に似た色をいう。また、周囲の壁面に模様などによる装飾が施されている場合には、非常時用サインの発光不能領域の模様もこれに合わせ、かつ壁面装飾シートにも略同一の模様を施すようにしてもよい。こうすることで、昼間見たときに小孔のすき間から背後の発光不能領域の色や模様が透けて見えたとしても、周囲の壁面や壁面装飾シートと色や模様が異なることで一体的に見えないということがなく、美観を損なうおそれを回避することができる。
【0059】
一方、発光可能領域に蓄光性蛍光体が塗布されている場合、市販の非常時用サインでは蓄光性蛍光体は通例薄黄色である。そこで、壁の色がこれと大きく異なる色(黒、こげ茶など主に濃色系の色)の場合には、上と同様に、昼間見たときに小孔のすき間から背後の発光可能領域の色が透けて見え、周囲の壁面と色合いなどが異なることで一体的に見えず、美観を損なうおそれがあるという問題が生じ得る。そこで、これを防ぐために、固有の非常時用サインを製造して用いることとし、その際に薄黄色の蓄光顔料にカラー蛍光顔料を混ぜて壁の色と略同色になるように着色するようにしてもよい。ただし、蓄光顔料にカラー蛍光顔料を混ぜると蓄光性蛍光体の発光輝度が低下するので、カラー蛍光顔料を混ぜるかどうか、またどの程度混ぜるかは、美観への影響と発光輝度の両者の兼ね合いをみて適宜設計されるべき事柄である。
【0060】
<壁の製造方法>
次に、以上に説明した本実施例における壁面を有する壁の製造方法について説明する。
【0061】
図6は、本実施例における壁面を有する壁の製造方法における処理の流れの一例を示す図である。本図に示すように、まず、非常時用サインの壁面への配置ステップS0601において、非常時用サインを壁面に配置する。配置のしかたとしては、市販の非常時用サイン又は本発明にかかる壁面用として製造した非常時用サインを壁面に取り付ければよい。あるいは、サイン本体を壁面に取り付け、その上に、蓄光性蛍光体および不発光性の塗料を塗布するといった形で壁面上において非常時用サインを製造してもよい。さらに、単に壁面に塗料を塗布することで非常時用サインを配置してもよい。即ち、本実施例にいう「配置」には描く場合が含まれる。次に、壁面装飾シートの壁面への配置ステップS0602において、少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部が透光性を有する部分とするように壁面装飾シートをさらに壁面に配置する。
【0062】
なお、上述の本実施例用の固有の非常時用サインを製造して使用する場合には、さらに詳細な手順として、以下に示すような方法で壁を製造することが望ましい。
【0063】
この場合まず、予め非常時用サインを配置しようとする壁の周囲の壁面のカラー撮影及び色合わせを行っておく。次に、用意された非常時用サインの本体を壁面の所定位置に取り付ける。なお、用意する非常時用サインは、蓄光塗料の顔料色が薄黄色であることに伴う上述の問題を回避するため、サイン本体の凹部に蓄光性蛍光体を塗布する際に、蓄光顔料とカラー蛍光顔料を混ぜて壁の色と略同色に着色したものであってもよい。一方、壁面装飾シートには、その全面に上で撮影した画像を転写する。この場合、塗料(インク)は不透光性ないし低透光性のものを用いる。壁面装飾シートが小孔を穿ったタイプのものの場合はそのまま印刷すればよく、透明シートにドット印刷等をするタイプのものの場合は、ドット部分には塗料が載らず、それ以外の部分に塗料が載るように印刷を行う。なお、壁に模様がある場合には、撮影した画像の模様の位置が周囲の壁面の模様の位置とずれないように印刷することが望ましい。
【0064】
以上の方法によれば、非常時用サインを配置した領域の壁面が周囲の壁面とより一体的に見え、場合によっては周囲の壁面と全く見分けがつかないようにすることも可能となるので、本実施例の壁面の目的をより好適に実現することができる。
【0065】
<効果>
本実施例の発明により、発光可能な非常時用サインを備える壁面であって、非常時用サインが昼間に周囲の壁面の美観を損なうことがないようにした壁面を提供することが可能となる。
【実施例2】
【0066】
<概要>
本実施例の壁面は、実施例1の壁面と基本的に共通する。ただし、本実施例の壁面においては、壁面装飾シートは、非常時用サインの配置されている領域にのみかぶせて配置される点に特徴がある。
【0067】
<構成>
図7は、本実施例における壁面装飾シートの配置の一例を示す概念図であり、壁面装飾シートが配置されている壁面の一部を正面から見た状態を示す。本図に示すように、本実施例における壁面装飾シート0720は、非常時用サインの配置されている領域0710aにのみかぶせて配置されている。
【0068】
本実施例の目的は、特に、既存の壁面に後から非常時用サイン及び壁面装飾シートを配置する場合に適した方法を提供することにある。このように配置しても、壁面装飾シートの色彩や模様は周囲の壁面に合わせて形成されるので、昼間見たときに壁の他の部分と一体的に見え、美観を損なうおそれはない。なお、本図にも現れているように、「非常時用サインの配置されている領域にのみかぶせて配置される」というのは、非常時用サインの配置されている領域を寸分もはみ出してはいけないという意味ではなく、非常時用サインの配置されている位置より若干はみ出して配置されていても構わない。このような許容範囲を設けても、本実施例の目的を阻害するものではなく、むしろ、領域をぴったり合わせるための慎重な作業が不要となるので、非常時用サインの発光を阻害しないように壁面装飾シートを非常時用サインの配置されている領域に確実にかぶせる作業を簡単に行うことができるというメリットがある。
【0069】
<効果>
本実施例の発明により、壁面装飾シートを配置する面積を最小限とすることができるので、特に、既存の壁面に後から非常時用サイン及び壁面装飾シートを配置する場合に適した方法を提供することが可能となる。
【実施例3】
【0070】
<概要>
本実施例の壁面は、実施例1の壁面と基本的に共通する。ただし、本実施例の壁面は、壁面装飾シートのうち非常時用サインにかぶせられている領域のみが透光性を有する点に特徴がある。
【0071】
<構成>
本実施例の壁面は、実施例1の壁面と基本的に共通するが、壁面装飾シートのうち非常時用サインにかぶせられている領域のみが透光性を有するものである。既述のように、壁面装飾シートに透光性を持たせる目的は、非常時用サインの発光が壁面装飾シートによって妨げられないようにすることにあるから、非常時用サインにかぶせられている領域以外は必ずしも透光性を有している必要はないわけである。一方、壁面装飾シートに透光性を持たせるためには、壁面装飾シートに小孔を穿ったり透明シートにドットを残す形で塗装・印刷をしたりといった手間が必要であるからその分のコストがかかる。そこで、本実施例の構成の目的は、必要のない部分に透光性を持たせることを避けることでコストを節約することにある。
【0072】
本実施例においても、非常時用サインのうち少なくとも発光可能領域にかぶせられている領域は透光性を有する必要があるが、発光不能領域にかぶせられている部分は透光性を有しないものであってもよい。即ち、本実施例の壁面における壁面装飾シートは、非常時用サインにかぶせられかつ非常時用サインの発光不能領域上の部分を除いた部分のみが透光性を有するように構成されていてもよい。
【0073】
なお、発光可能領域にかぶせられている領域は透光性を有する必要があるといっても、当該領域の全面が透光性を有する必要はなく、小孔や透明のドット部分を設けてそこから光が漏れるようにしておけばよい点は、実施例1において述べたところと同様である。
【0074】
<効果>
本実施例の発明により、必要のない部分に透光性を持たせることを避けることができるので、発光可能な非常時用サインを備える壁面であって、非常時用サインが昼間に周囲の壁面の美観を損なうことがないようにした壁面を、より少ないコストで提供することが可能となる。
【実施例4】
【0075】
<概要>
本実施例の壁面は、実施例2で述べた壁面と基本的に共通する。ただし、本実施例の壁面は、非常時用サインが設けられている以外の面に描かれる直接装飾を有し、壁面装飾シートの装飾は、前記直接装飾と同一又は類似の装飾である点に特徴がある。
【0076】
<構成>
本実施例の壁面は、実施例2で述べた壁面装飾シートが非常時用サインの配置されている領域にのみかぶせて配置される構成において、壁面が、非常時用サインの設けられている以外の面に描かれる直接装飾を有し、壁面装飾シートの装飾は、前記直接装飾と同一又は類似の装飾であるものである。
【0077】
「直接装飾」は、非常時用サインが設けられている以外の面に描かれる装飾をいい、要するに壁面そのものに施される装飾である。ここで「装飾」とは、壁やこれを含む建物の美観を保つ目的で、壁面に色彩、模様、形状による装飾(例えば凹凸などによる飾り)を施したものをいう。なお、一定のメッセージを伝えるためのサインなどであっても、単にメッセージを伝えるだけの目的ではなく、合わせて美観を保つことに配慮されていれば、ここにいう「装飾」に含まれる。例えば、ビルの外壁面に描かれた広告サインや、建物の廊下の壁に描かれたレストランやトイレの案内表示などは通例美観にも配慮されていると考えられるが、そのようなものであれば本実施例にいう「装飾」に含まれる。本実施例の壁面をこのような別のサインの描かれた壁面に適用すれば、当該別のサインを有する壁面の美観を損なうことがないようにすることができるとともに、当該別のサイン自体が読みづらくなってしまうというおそれも合わせて解消することができる。
【0078】
また、「同一又は類似」は、意匠法における同一又は類似とほぼ同様の範囲となろうが、あくまで壁や建物の美観を損なわないように非常時用サインの配置されている領域とその周囲の壁面の色彩、模様等の統一が保たれているかどうかという観点から判断される。
【0079】
図8は、本実施例における壁面の外観の一例を示す図である。このうち、(a)は、非常時用サインの配置されている領域の色彩を周囲の壁面の色彩と同一にした例である。図中破線で囲んだ領域0810aが非常時用サインの配置されている領域を示す((b)、(c)においても同様である)。(b)は、非常時用サインの配置されている領域の模様を周囲の壁面の模様と同一にし、かつ模様の位置も非常時用サインの配置されている領域がわからないように周囲に合わせた例である。(c)は、廊下の壁にレストランの案内サインが描かれている場合に、非常時用サインの配置されている領域と周囲の壁面を一体としてかかるサインを示すようにした例である。
【0080】
本実施例の構成の目的は、非常時用サインの周囲に装飾が施された壁面が存在する場合に、非常時用サインにかぶせられた領域を占める壁面装飾シートの装飾を周囲と合わせることにより、美観が損なわれることを回避することにある。
【0081】
<効果>
本実施例の発明により、非常時用サインの周囲に装飾が施された壁面が存在する場合に、非常時用サインにかぶせられた領域を占める壁面装飾シートの装飾を周囲と合わせることにより、美観が損なわれることを回避することが可能となる。
【実施例5】
【0082】
<概要>
本実施例の壁面は、実施例1から4の壁面と同様の目的を有するものであるが、実施例1から4の壁面の壁面装飾シートに代えて、非常時用サインの表面にドット印刷による装飾を施したものを用いる点にした点に特徴がある。
【0083】
<構成>
(全般)
本実施例の壁面は、実施例1から4のいずれか一の壁面と基本的に共通するが、実施例1から4の壁面の壁面装飾シートに代えて、非常時用サインの表面にドット印刷による装飾を施すことで実施例1から4の壁面と同様の目的を達成している。即ち、本実施例の壁面は、発光可能で避難誘導などに用いられる非常時用サインを有し、前記非常時用サインの表面に少なくともドット部分が透光性を有するドット印刷による装飾を施した壁面である。
【0084】
(具体的構成)
以下、このような壁面の具体的な構成について説明する。
【0085】
本実施例に係る壁面の構成を説明するための図として、図2を流用して説明する。本実施例に係る壁面は、図2と同様に、壁本体0201とその表面に形成された非常時用サイン0210を有する。また、実施例1ではその表面に壁面装飾シート0220が配置されていたが、本実施例にではこれに代えてドット印刷による装飾を施している。従って、本実施例の壁面は、図2に示したものと外観上はほぼ同様であるが、構成上は、図2のうち壁面装飾シート0220をドット印刷による装飾に代えたものとなる。
【0086】
次に、本実施例におけるドット印刷による装飾の具体的構成について説明する。
【0087】
本実施例において「ドット印刷」とは、不透光性ないし低透光性の塗料を用いた印刷において、印刷面に塗料が載る部分と載らない部分が生じるようにした印刷をいう。塗料が載る部分(あるいは載らない部分)の形状としてドット状(点状ないし小円状)のものが想定されることからドット印刷と呼ぶが、塗料が載る部分(あるいは載らない部分)の形状はこれに限られることなく、印刷面に塗料が載る部分と載らない部分が生じるような印刷であれば広く含まれる。ドット印刷の方法にも特に限定はないが、例えばスクリーン印刷による方法が用いられる。スクリーン印刷は、一般に、絹、ポリエステルなどの繊維で織ったスクリーンを枠に張って固定し、スクリーンのうちで塗料を通したくない部分を樹脂などで被膜し、このスクリーンに被印刷物の印刷面を貼り合わせて、ヘラなどでスクリーンに塗料を塗りつけ、スクリーンのうち被膜されていない部分の繊維のすき間から印刷面に塗料を押し出すことで、塗料を印刷面に転移させるものである。
【0088】
図9は、本実施例の壁面の非常時用サインの表面にドット印刷による装飾を施した状態の一例を示す図であって、一部を拡大して示したものである。本図では、非常時用サイン0910の表面に、略円形の部分0901(煩雑を避けるため一箇所のみ符号を示す)に塗料が載らず、それ以外の部分0902に塗料が載るように印刷を行ったものである。不透光性ないし低透光性の塗料を使用することで、略円形の部分のみが透光性を有し、それ以外の部分は透光性を有しないか低い透光性しか有しないようにすることができる。
【0089】
そこで、このような印刷を、少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部に施せば、実施例1などにおいて少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部が透光性を有する壁面装飾シートを非常時用サインにかぶせて配置したときと同じ効果が得られることになる。
【0090】
また、実施例1などと同様に非常時用サインが発光可能領域と発光不能領域とによってデザインされている場合に、発光不能領域上の部分が透光性が低いか又は透光性を有さないようにするため、上と同様のドット印刷を行ってもよい。
【0091】
また、本実施例の壁面は、ドット印刷を非常時用サインの配置されている領域にのみ施すことで、非常時用サインにかぶせられている領域のみが透光性を有するようにしてもよい。また、本実施例の壁面は、非常時用サインにかぶせられかつ非常時用サインの発光不能領域上の部分を除いた部分のみにドット印刷を行うことで、この部分のみが透光性を有するようにしてもよい。この場合における壁面の非常時用サインにかぶせられている領域は、例えば図5に示したものと同様の外観を呈する。図5では、無色透明な壁面装飾シートに対し、ドット部分以外の部分に塗料が載るように印刷する際に発光不能領域上の部分にはドットを設けないようにした例を示したが、本実施例では、壁面装飾シートに印刷して貼り付けるのではなく、非常時用サインの上に直に印刷を行うようにして、同様の効果が得られるようにしている。
【0092】
さらに、本実施例の壁面は。非常時用サインが設けられている以外の面に描かれる直接装飾を有している場合において、非常時用サイン上にドット印刷を施した面の装飾が前記直接装飾と同一又は類似の装飾であるものであってもよい。
【0093】
(本実施例用の非常時用サインを製造して使用する例)
本実施例においても、実施例1で述べたのと同様に、市販の非常時用サインを利用する場合に生じ得る問題を回避するため、本実施例用の固有の非常時用サインを製造して使用することが考えられる。即ち、非常時用サインの発光不能領域の色や模様を壁の色や模様に合わせ、その上にやはり壁の色や模様でドット印刷を行うようにしてもよい。こうすることで、本実施例においても、たとえ昼間見たときに小孔のすき間から背後の発光不能領域の色が透けて見えたとしても、周囲の壁面や壁面装飾シートと色合いが異なることで一体的に見えないということがなく、美観を損なうおそれを回避することができる。同様に、蓄光性蛍光体の色が壁の色と大きく異なる場合の問題についても、実施例1と同様に、蓄光顔料にカラー蛍光顔料を混ぜて壁の色と略同色になるように着色することで解決可能である。
【0094】
<壁の製造方法>
次に、以上に説明した本実施例における壁面を有する壁の製造方法について説明する。本実施例における壁面を有する壁の製造方法における処理の流れは、基本的に、実施例1において図6を用いて説明した処理の流れと共通する。ただし、本実施例における処理の流れは、壁面装飾シートの壁面への配置ステップに代えて、ドット印刷ステップを有する。ドット印刷ステップは、非常時用サインの表面に少なくともドット部分が透光性を有するドット印刷による装飾を施すステップである。
【0095】
なお、上述の本実施例用の固有の非常時用サインを製造して使用する場合には、さらに詳細な手順として、以下に示すような方法で壁を製造することが望ましい。
【0096】
この場合まず、実施例1で述べたのと同様に、予め非常時用サインを配置しようとする壁の周囲の壁面のカラー撮影及び色合わせを行っておく。次に、用意された非常時用サインの本体を壁面の所定位置に取り付ける。なお、用意する非常時用サインは、蓄光塗料の顔料色が薄黄色であることに伴う上述の問題を回避するため、サイン本体の凹部に蓄光性蛍光体を塗布する際に、蓄光顔料とカラー蛍光顔料を混ぜて壁の色と略同色に着色したものであってもよい。次に、非常時用サインの表面の発光不能領域を白色の不透光性塗料で印刷する。さらに、当該発光不能領域の上に重ねて上で撮影した画像をドット印刷にて転写する。発光不能領域に撮影画像を転写する前にまず白色の不透光性塗料で印刷する理由は、このようにすることで発光不能領域に下地の蓄光性蛍光体の色が透けて周囲の壁面の色と微妙に異なる色になってしまうおそれを防ぐことができるからである。この場合、図10に示したような要領で、ドット(略円形の部分)には塗料が載らず、それ以外の部分に塗料が載るように印刷を行う。なお、壁に模様がある場合には、撮影した画像の模様の位置が周囲の壁面の模様の位置とずれないように印刷することが望ましい。
【0097】
以上の方法によれば、非常時用サインを配置した領域の壁面が周囲の壁面とより一体的に見え、場合によっては周囲の壁面と全く見分けがつかないようにすることも可能となるので、本実施例の壁面の目的をより好適に実現することができる。
【0098】
<効果>
本実施例の発明により、発光可能な非常時用サインを備える壁面であって非常時用サインが昼間に周囲の壁面の美観を損なうことがないようにした壁面を、壁面装飾シートに代えてドット印刷による装飾を施すことによって提供することが可能となる。
【実施例6】
【0099】
<概要>
本実施例の壁面も上記各実施例の壁面と同様の目的を有するものであるが、本実施例では、非常時用サインを覆う形で壁面装飾シートをかぶせたりドット印刷を施すのではなく、非常時用サイン自体が昼間でも周囲の壁面と一体的に見えるようにして目立たなくなるようにした点に特徴があるものである。
【0100】
<構成>
(全般)
【0101】
本実施例の壁面は、発光可能で避難誘導などに用いられる非常時用サインを有する壁面であって、非常時用サインは、発光可能領域と発光不能領域とによってデザインされ、発光可能領域は非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色の蓄光性蛍光体色であり、発光不能領域も非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色であるように構成されたものである。また、これに加えて、発光不能領域が蓄光性蛍光体の表面に白色層に重ねて前記壁面の非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色の印刷を施すことで形成されているものも本実施例の壁面に含まれる。
【0102】
「発光可能領域」、「発光不能領域」の意味、及び「発光可能領域と発光不能領域によってデザインされる」との意味は、いずれも実施例1と同様である。
【0103】
(発光可能領域)
本実施例では、発光可能領域は、非常時用サイン以外の壁面の領域と昼光色で略同色の蓄光性蛍光体色である。発光可能領域に塗布される蓄光性蛍光体は通例薄黄色であるので、周囲の壁面の色がこれと略同色であれば、このような蓄光性蛍光体をそのまま塗布すればよい。
【0104】
一方、周囲の壁面の色が黒やこげ茶といった薄黄色とは大きく異なる色の場合には、かかる蓄光性蛍光体を塗布しただけでは、周囲の壁面との色の違いが目立ってしまい不適切である。そこで、この場合、壁に蓄光性蛍光体を塗布する際に、薄黄色の蓄光顔料にカラー蛍光顔料を混ぜて壁の色と略同色にしたものを塗布することが考えられる。
【0105】
なお、本実施例においても、蓄光顔料にカラー蛍光顔料を混ぜることによる蓄光性蛍光体の発光輝度の低下の問題が生じ得るので、なるべく蓄光顔料にカラー蛍光顔料を混ぜることは避けた方が好ましい。この点、周囲の壁面の色が蓄光性蛍光体の色と蓄光性蛍光体の色が略同色(薄黄色)である場合には、昼間に蓄光性蛍光体の色が直接見えていても周囲の壁面との一体感が阻害されないのでカラー蛍光顔料を混ぜる必要はなく、本実施例の壁面を好適に実施できる。さらに、非常時用サインを配置する壁を新たに設計、設置する場合には、はじめから壁の色を蓄光性蛍光体の色に合わせてもよい。
【0106】
(発光不能領域)
本実施例では、発光不能領域も非常時用サイン以外の壁面の領域と昼光色で略同色であるように構成される。従って、本実施例の非常時用サインは、発光可能領域、発光不能領域の両方、即ち全面が非常時用サイン以外の壁面の領域と昼光色で略同色であることになる。これによって、上記各実施例のように非常時用サインを覆う形で壁面装飾シートをかぶせたりドット印刷を施すことなく、代わりに非常時用サイン自体の色を周囲の壁面と略同色にすることで、昼間でも周囲の壁面と一体的に見えるようにして目立たなくなるようにするという効果を奏することができる。
【0107】
また、発光不能領域は、蓄光性蛍光体の表面に白色層に重ねて前記壁面の非常時用サイン以外の壁面の領域と昼光色で略同色の印刷を施すことで形成されていてもよい。
【0108】
<壁の製造方法>
次に、以上に説明した本実施例における壁面を有する壁の製造方法について説明する。図11は、本実施例における壁の製造方法について説明するための図である。本実施例における壁面を有する壁の製造方法における処理の流れは、以下のステップを有する。
【0109】
まず、ベース作成ステップにおいて、非常時用サインの領域以外の壁面の領域と昼光色で略同色の蓄光性蛍光体からなる非常時用サインのベースを作成する。図11(a)は、本ステップにより作成された非常時用サインのベース1110aの一例を示す。非常時用サインのベースは、全面に蓄光性蛍光体1112が塗布されている。非常時用サインの領域以外の壁面の領域の色が薄黄色であれば蓄光性蛍光体(薄黄色)をそのまま塗布すればよい。非常時用サインの領域以外の壁面の領域の色がそれ以外の色であれば蓄光顔料にカラー蛍光顔料を混ぜて壁面の色と略同色にしたものを塗布すればよい。なお、蓄光性蛍光体の上にさらに蓄光性蛍光体を保護するための樹脂からなる透明保護層を配置してもよい。あるいは、透明保護層は、以下の発光不能領域作成ステップによる印刷を行ってから、非常時用サインの領域全体の上に配置してもよい。
【0110】
次に、発光不能領域下地作成ステップにおいて、ベース作成ステップにて作成されたベースの発光不能領域とすべき領域に白色の印刷を施して発光不能領域下地を作成する。図11(b)は、蓄光性蛍光体1112の一部の上に重ねて、発光不能領域とすべき下地領域1111aに不透光性の塗料を用いて白色の印刷を施した状態を示す。なお、発光不能領域下地作成ステップはなくてもよいが、あることが望ましい。発光不能領域下地作成ステップにおいて白色の印刷を施す理由は前実施例で述べたところと同様である。
【0111】
次に、発光不能領域作成ステップにおいて、発光不能領域下地作成ステップにて作成された発光不能領域下地上に昼光色で非常時用サイン以外の壁面の領域と昼光色で略同色の非発光塗料を用いた印刷をして発光不能領域を作成する。その際、本実施例においても、予め非常時用サインを配置しようとする壁の周囲の壁面のカラー撮影及び色合わせを行っておき、発光不能領域作成ステップにおける印刷は上述の撮影画像を転写することで行うことが望ましい。なお、壁に模様がある場合には、撮影した画像の模様の位置が周囲の壁面の模様の位置とずれないように印刷することが望ましい。図11(c)は、白色の発光不能領域下地1111aの上に重ねて非常時用サインの領域以外の領域の色と略同色の非発光塗料で印刷を施した状態を示す。図11(d)は、このようにして作成された非常時用サイン1110を壁面に取り付けた状態を非常時用サイン以外の壁面の領域の一部1101とともに示したものである。かかる非常時用サインは、発光不能領域も発光可能領域もすべて周囲の壁面の色と略同色となるので、昼間非常時用サインが何ら覆われていない状態であっても、周囲の壁面とほとんど見分けがつかない程度に目立たなくすることができる。なお、本図(c)、(d)では説明の便宜のために発光不能領域の輪郭を実線で示しているが、実際にはこの輪郭はほとんど目立たないものとなる。
【0112】
なお、以上においては、非常時用サインを作成してから壁面に取り付ける例で説明したが、これとは異なり、壁面に描くことにより非常時用サインを壁面上で作成するようにしてもよい。
【0113】
<効果>
本実施例の発明により、発光可能な非常時用サインを備える壁面であって非常時用サインが昼間に周囲の壁面の美観を損なうことがないようにした壁面を、壁面装飾シートやドット印刷に代えて非常時用サイン自体の色を壁に合わせることによって実現することが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光可能で避難誘導などに用いられる非常時用サインと、
この非常時用サインにかぶせて配置され、少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部は、透光性を有する壁面装飾シートと、
を有する壁面。
【請求項2】
非常時用サインは、発光可能領域と、発光不能領域とによってデザインされ、
前記壁面装飾シートは、発光不能領域上の部分は透光性が低いか又は透光性を有さない請求項1に記載の壁面。
【請求項3】
前記壁面装飾シートは、非常時用サインの配置されている領域にのみかぶせて配置されている請求項1又は2に記載の壁面。
【請求項4】
前記壁面装飾シートは、非常時用サインにかぶせられている領域のみが透光性を有する請求項1に記載の壁面。
【請求項5】
前記壁面装飾シートは、非常時用サインにかぶせられかつ非常時用サインの発光不能領域上の部分を除いた部分のみが透光性を有する請求項2又は請求項2に従属する請求項3に記載の壁面。
【請求項6】
前記非常時用サインが設けられている領域以外の領域に描かれる直接装飾を有し、
前記非常時用サインの配置されている領域にのみかぶせて配置されている壁面装飾シートの装飾は、前記直接装飾と同一又は類似の装飾である請求項3に記載の壁面。
【請求項7】
非常時用サインを壁面に配置(描く場合を含む)する非常時用サイン配置ステップと、
少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部が透光性を有する部分とするように壁面装飾シートをさらに壁面に配置する壁面装飾シート配置ステップと、
からなる壁の製造方法。
【請求項8】
前記壁面装飾シートに代えて、前記非常時用サインの表面に少なくともドットが付された領域が透光性を有するドット印刷による装飾を施した請求項1から6のいずれか一に記載の壁面。
【請求項9】
非常時用サインを壁面に配置(描く場合を含む)する非常時用サイン配置ステップと、
前記非常時用サインの表面に少なくともドットを付された領域が透光性を有するドット印刷による装飾を施すドット印刷ステップと、
からなる壁の製造方法。
【請求項10】
発光可能で避難誘導などに用いられる非常時用サインを有する壁面であって、
非常時用サインは、
発光可能領域と、発光不能領域とによってデザインされ、
発光可能領域は非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色の蓄光性蛍光体色であり、
発光不能領域も非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色である壁面。
【請求項11】
前記発光不能領域は、蓄光性蛍光体の表面に白色層に重ねて前記壁面の非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色の印刷を施すことで形成されている請求項10に記載の壁面。
【請求項12】
発光可能領域と発光不能領域とでデザインされた非常時用サインを有する壁面の製造方法であって、
非常時用サインの領域以外の領域と昼光色で略同色の蓄光性蛍光体からなる非常時用サインのベースを作成するベース作成ステップと、
ベース作成ステップにて作成されたベースの発光不能領域とすべき領域に白色の印刷を施して発光不能領域下地を作成する発光不能領域下地作成ステップと、
発光不能領域下地作成ステップにて作成された発光不能領域下地上に昼光色で非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色の非発光塗料を用いた印刷をして発光不能領域を作成する発光不能領域作成ステップと、
を有する壁面の製造方法。
【請求項1】
発光可能で避難誘導などに用いられる非常時用サインと、
この非常時用サインにかぶせて配置され、少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部は、透光性を有する壁面装飾シートと、
を有する壁面。
【請求項2】
非常時用サインは、発光可能領域と、発光不能領域とによってデザインされ、
前記壁面装飾シートは、発光不能領域上の部分は透光性が低いか又は透光性を有さない請求項1に記載の壁面。
【請求項3】
前記壁面装飾シートは、非常時用サインの配置されている領域にのみかぶせて配置されている請求項1又は2に記載の壁面。
【請求項4】
前記壁面装飾シートは、非常時用サインにかぶせられている領域のみが透光性を有する請求項1に記載の壁面。
【請求項5】
前記壁面装飾シートは、非常時用サインにかぶせられかつ非常時用サインの発光不能領域上の部分を除いた部分のみが透光性を有する請求項2又は請求項2に従属する請求項3に記載の壁面。
【請求項6】
前記非常時用サインが設けられている領域以外の領域に描かれる直接装飾を有し、
前記非常時用サインの配置されている領域にのみかぶせて配置されている壁面装飾シートの装飾は、前記直接装飾と同一又は類似の装飾である請求項3に記載の壁面。
【請求項7】
非常時用サインを壁面に配置(描く場合を含む)する非常時用サイン配置ステップと、
少なくとも非常時用サインにかぶせられている領域の一部が透光性を有する部分とするように壁面装飾シートをさらに壁面に配置する壁面装飾シート配置ステップと、
からなる壁の製造方法。
【請求項8】
前記壁面装飾シートに代えて、前記非常時用サインの表面に少なくともドットが付された領域が透光性を有するドット印刷による装飾を施した請求項1から6のいずれか一に記載の壁面。
【請求項9】
非常時用サインを壁面に配置(描く場合を含む)する非常時用サイン配置ステップと、
前記非常時用サインの表面に少なくともドットを付された領域が透光性を有するドット印刷による装飾を施すドット印刷ステップと、
からなる壁の製造方法。
【請求項10】
発光可能で避難誘導などに用いられる非常時用サインを有する壁面であって、
非常時用サインは、
発光可能領域と、発光不能領域とによってデザインされ、
発光可能領域は非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色の蓄光性蛍光体色であり、
発光不能領域も非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色である壁面。
【請求項11】
前記発光不能領域は、蓄光性蛍光体の表面に白色層に重ねて前記壁面の非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色の印刷を施すことで形成されている請求項10に記載の壁面。
【請求項12】
発光可能領域と発光不能領域とでデザインされた非常時用サインを有する壁面の製造方法であって、
非常時用サインの領域以外の領域と昼光色で略同色の蓄光性蛍光体からなる非常時用サインのベースを作成するベース作成ステップと、
ベース作成ステップにて作成されたベースの発光不能領域とすべき領域に白色の印刷を施して発光不能領域下地を作成する発光不能領域下地作成ステップと、
発光不能領域下地作成ステップにて作成された発光不能領域下地上に昼光色で非常時用サイン以外の領域と昼光色で略同色の非発光塗料を用いた印刷をして発光不能領域を作成する発光不能領域作成ステップと、
を有する壁面の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−113053(P2013−113053A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262452(P2011−262452)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(512214579)株式会社インパクト (1)
【出願人】(513039713)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(512214579)株式会社インパクト (1)
【出願人】(513039713)
【Fターム(参考)】
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