説明

非接触半導体集積回路タグ

【課題】情報の書き込みを正確で確実に行えることができる無線ICタグを提供すること。
【解決手段】本発明は、半導体集積回路を配置したプリント基板11とアンテナ12とを備え、半導体集積回路に記録した情報をリーダにて読み取り、プリント基板11とアンテナ12とを内部に配置し、外表面を樹脂部材14にて覆い、樹脂部材14の外表面に複数の凹部15、25又は凸部を形成し、凹部15、25又は凸部によってアンテナ12の方向性を識別することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体中又は液体中に混入することで、これらの粉体や液体に関する情報管理を行うことができる非接触半導体集積回路タグに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触半導体集積回路タグは、一般に微小な無線ICチップと呼ばれ、識別コードなどの情報が記録され、電波を使って情報を送受信する能力をもつ。
この種のICタグは、各分野においてバーコードに代わる商品識別・管理技術として研究が進められている。
例えば、土木関連のコンクリート構造物やビルなどの建築物にあっては、コンクリートの保険や保障の必要や、補修時や地震などの災害時にコンクリートの強度や履歴などの情報を検証する必要がある。
このような目的のために、硬化前のコンクリート内に無線ICチップを混入させることが既に提案されている(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【特許文献1】特開2005−330729号公報
【特許文献2】特開2006−183257号公報
【特許文献3】特開2008−063900号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特に特許文献3では、無線ICタグを、球体、楕円体、多面体等の立体形状とし、ガラスやセラミック等でその外周を被覆し、一緒に混入される砂利等の骨材と同程度の大きさで同程度の比重とすることで、セメント製品の混練時に偏在することなくばらついて混じり合うことができるとともに、混練時に加わる力、そして打設されて加わる応力、コンクリート自身の圧縮力に十分に耐えることができる。
しかし、近年では食品に限らずトレーサビリティーが重要となってきており、コンクリートにあっても、セメントの配合内容や配合・ミキシング日時などの情報をロット毎に管理する必要性が高まっている。
従って、無線ICタグへの情報の書き込みは、無線ICタグの製造現場ではなくセメントの製造時のタイミングとなり、このタイミングで無線ICタグ毎にそれぞれ固有の情報を書き込むことになる。
粉体や流体中に混入する上では、無線ICタグは、特許文献3に記載のように、球体、楕円体、多面体等の立体形状が好ましいが、正確で確実な情報の書き込みのためには、無線ICタグに内蔵されているアンテナの方向性を考慮する必要がある。
【0004】
そこで本発明は、情報の書き込みを正確で確実に行えることができる無線ICタグを提供することを目的とする。
また本発明は、混入する粉体や流体との癒着、接地性の良い無線ICタグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明の非接触半導体集積回路タグは、半導体集積回路を配置したプリント基板とアンテナとを備え、前記半導体集積回路に記録した情報をリーダにて読み取る非接触半導体集積回路タグであって、前記プリント基板と前記アンテナとを内部に配置し、外表面を樹脂部材にて覆い、前記樹脂部材の前記外表面に複数の凹部又は凸部を形成し、前記凹部又は前記凸部によって前記アンテナの方向性を識別することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の非接触半導体集積回路タグにおいて、前記樹脂部材が、外径の等しい筒状の胴部と、前記胴部の両端に位置する端部とからなり、前記胴部に前記凹部又は前記凸部を形成したことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1に記載の非接触半導体集積回路タグにおいて、前記樹脂部材が、外径の等しい筒状の胴部と、前記胴部の両端に位置する端部とからなり、前記胴部に前記凹部を形成し、前記凹部として第1凹部と、前記第1凹部の周囲に配置される第2凹部とを設け、前記第2凹部は前記第1凹部よりも小径であることを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1に記載の非接触半導体集積回路タグにおいて、前記プリント基板の一方の面に前記半導体集積回路を配置し、前記アンテナを、前記プリント基板の外周径以下の径でコイル状に形成し、前記プリント基板の他方の面に配置したことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項4に記載の非接触半導体集積回路タグにおいて、前記プリント基板の他方の面にフェライトコアを配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、アンテナの方向を外形の構造から識別することができ、情報の書き込みを正確で確実に行えるとともに、この凹部又は凸部によって、粉体や流体との癒着、接地性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の第1の実施の形態による非接触半導体集積回路タグは、プリント基板とアンテナとを内部に配置し、外表面を樹脂部材にて覆い、樹脂部材の外表面に複数の凹部又は凸部を形成し、凹部又は凸部によってアンテナの方向性を識別するものである。本実施の形態によれば、アンテナの方向を外形の構造から識別することができ、情報の書き込みを正確で確実に行えるとともに、この凹部又は凸部によって、粉体や流体との癒着、接地性を高めることができる。
本発明の第2の実施は、第1の実施の形態による非接触半導体集積回路タグにおいて、樹脂部材が、外径の等しい筒状の胴部と、胴部の両端に位置する端部とからなり、胴部に凹部又は凸部を形成したものである。本実施の形態によれば、筒状の胴部を形成しているので、書き込み装置に対する非接触半導体集積回路タグの供給に、配管を用いることで、非接触半導体集積回路タグの方向を正確に規制することができる。また、凹部又は凸部を胴部に形成することで、非接触半導体集積回路タグ同士の干渉を少なくすることができ、書き込み装置に対する非接触半導体集積回路タグの供給を安定して行うことができる。
本発明の第3の実施は、第1の実施の形態による非接触半導体集積回路タグにおいて、樹脂部材が、外径の等しい筒状の胴部と、胴部の両端に位置する端部とからなり、胴部に凹部を形成し、凹部として第1凹部と、第1凹部の周囲に配置される第2凹部とを設け、第2凹部は第1凹部よりも小径である。本実施の形態によれば、小径の第2凹部によって粉体や流体との落ち着きを良くするとともに、大径の第1凹部によって粉体や流体との癒着を良くすることができる。
本発明の第4の実施は、第1の実施の形態による非接触半導体集積回路タグにおいて、プリント基板の一方の面に半導体集積回路を配置し、アンテナを、プリント基板の外周径以下の径でコイル状に形成し、プリント基板の他方の面に配置したものである。本実施の形態によれば、プリント基板の一方の面に半導体集積回路を、他方の面にアンテナを配置することで、樹脂封止を行いやすく、封止効率を高めることができる。
本発明の第5の実施は、第4の実施の形態による非接触半導体集積回路タグにおいて、プリント基板の他方の面にフェライトコアを配置したものである。本実施の形態によれば、コイル状に形成したアンテナの内部空間にフェライトコアを配置できるので、磁束・磁界を整流し通信性能を高めることができる。
【実施例】
【0008】
以下本発明の一実施例による非接触半導体集積回路タグについて説明する。
図1は本実施例による非接触半導体集積回路タグの分解斜視図、図2は同非接触半導体集積回路タグの要部分解斜視図、図3は同非接触半導体集積回路タグの正面図、図4は同非接触半導体集積回路タグの上面図、図5は同非接触半導体集積回路タグの側面図である。
図1に示すように、本実施例による非接触半導体集積回路タグ10は、半導体集積回路(図示せず)を配置したプリント基板11とアンテナ12とフェライトコア13とを内部に備え、外表面を樹脂部材14にて覆っている。
プリント基板11の一方の面には図示しない半導体集積回路が配置され、プリント基板11の他方の面にはアンテナ12とフェライトコア13とが配置される。
プリント基板11をその両面から樹脂部材14によって挟むようにして、プリント基板11とアンテナ12とフェライトコア13を封止する。プリント基板11の一方の面に半導体集積回路を、プリント基板11の他方の面にアンテナ12をそれぞれ配置することで、封止効率を高めることができる。
図2に示すように、アンテナ12は、プリント基板11の外周径以下の径でコイル状に形成し、コイル状のアンテナ12の内部にフェライトコア13が配置される。
図3に示すように、樹脂部材14は、外径の等しい筒状の胴部14aと、この胴部14aの両端に位置する端部14bとからなり、胴部14aには複数の凹部15を形成している。端部14bは、ドーム型に形成し凹凸を設けていない。
図4及び図5に示すように、複数の凹部15は、樹脂部材14の外表面の内、対向する面に設けられ、その他の外表面には設けていない。複数の凹部15による凹部形成領域は、図1及び図2に示すアンテナ12の最大利得の方向(図4及び図5における矢印)に形成し、アンテナの方向性を識別している。また、複数の凹部15によって、砂やコンクリート材がまぶされ、コンクリート内での親和性が増し、生コンクリート内で混ざり合う。
なお、本実施例による非接触半導体集積回路タグ10は、長径寸法17mm、短径寸法12mm、比重1.3〜1.7、凹部15の直径2mmで、コンクリート混入用に制作したものである。このような非接触半導体集積回路タグ10は、100mm程度の距離からリーダによって情報を読み取ることができる。
【0009】
次に本発明の他の実施例による非接触半導体集積回路タグについて説明する。
図6は本実施例による非接触半導体集積回路タグの正面図、図7は同非接触半導体集積回路タグの上面図、図8は同非接触半導体集積回路タグの側面図である。
本実施例による非接触半導体集積回路タグ20における内部構造は、上記実施例と同一であるため説明を省略する。
図6に示すように、樹脂部材24は、外径の等しい筒状の胴部24aと、この胴部24aの両端に位置する端部24bとからなり、胴部24aには一対の凹部25を形成している。端部24bは、ドーム型に形成し凹凸を設けていない。
図7及び図8に示すように、凹部25は、樹脂部材24の外表面の内、対向する面に設けられ、その他の外表面には設けていない。一対の凹部25は、図1及び図2に示すアンテナ12の最大利得の方向(図4及び図5における矢印)に形成し、アンテナの方向性を識別している。
【0010】
次に本発明の更に他の実施例による非接触半導体集積回路タグについて説明する。
図9は本実施例による非接触半導体集積回路タグの正面図、図10は同非接触半導体集積回路タグの上面図、図11は同非接触半導体集積回路タグの側面図である。
本実施例による非接触半導体集積回路タグ30における内部構造は、上記実施例と同一であるため説明を省略する。
図9に示すように、樹脂部材34は、外径の等しい筒状の胴部34aと、この胴部34aの両端に位置する端部34bとからなり、胴部34aには、複数の凹部15と一対の凹部25を形成している。凹部15は、凹部25の周囲に配置し、凹部15は凹部25よりも小径である。端部34bは、ドーム型に形成し凹凸を設けていない。
図10及び図11に示すように、凹部15及び凹部25は、樹脂部材34の外表面の内、対向する面に設けられ、その他の外表面には設けていない。凹部15及び凹部25は、図1及び図2に示すアンテナ12の最大利得の方向(図4及び図5における矢印)に形成し、アンテナの方向性を識別している。
【0011】
次に、本実施例による非接触半導体集積回路タグに対する情報の読み書き装置について説明する。
図12は、本発明による非接触半導体集積回路タグに対する情報読み書き装置を示す概略構成図である。
本実施例による情報読み書き装置は、非接触半導体集積回路タグ10を投入するスタッカー41と、非接触半導体集積回路タグ10への情報の読み書きを行うリードライター部42と、スタッカー41からリードライター部42に非接触半導体集積回路タグ10を供給する供給配管43と、リードライター部42に対して対象とする非接触半導体集積回路タグ10だけを近接させる移送部44と、読み書きを終了した非接触半導体集積回路タグ10を排出する排出配管45とを備えている。
非接触半導体集積回路タグ10はスタッカー41に投入され、外部からの振動によって供給配管43に非接触半導体集積回路タグ10が整列状態で導かれる。供給配管43は、非接触半導体集積回路タグ10の短径寸法よりも若干大きな内径の筒で構成されている。非接触半導体集積回路タグ10は、筒状の胴部14a、15aを形成しているので、卵形の形状と比較しても供給配管43内での傾きは非常に小さなものとなる。移送部44は、供給配管43から非接触半導体集積回路タグ10を所定数(ここでは一つ)ずつ導き出す。移送部44は、水平方向へのスライド移動や水平方向での回転移動により、供給配管43から所定数の非接触半導体集積回路タグ10を導出させる。所定数の非接触半導体集積回路タグ10は、移送部44によってリードライター部42との送受信が可能な状態に保持される。なお、図示はしないが、供給配管43又は移送部44に、凹部15、25の形状を検出するセンサー及び非接触半導体集積回路タグ10を所定の向きに回動させる手段を設けることが好ましい。
なお、上記実施例では凹部15、25を設けた場合で説明したが、凹部に代えて凸部を設けてもよく、また凹部と凸部とを形成してもよい。
また、上記実施例では、フェライトコア13を設けて通信性能を高めているが、フェライトコア13を配置しなくてもよい。
【0012】
本実施例によれば、樹脂部材14、24の外表面に複数の凹部15、25を形成することで、アンテナ12の方向を外形の構造から識別することができ、情報の書き込みを正確で確実に行えるとともに、この凹部15、25によって、粉体や流体との癒着、接地性を高めることができる。
また本実施例によれば、樹脂部材14、24、34が、外径の等しい筒状の胴部14a、24a、34aを形成しているので、非接触半導体集積回路タグ10、20、30の供給に、筒状の供給配管43を用いることで、非接触半導体集積回路タグ10、20、30の方向を正確に規制することができる。また、凹部15、25を胴部14a、24a、34aだけに形成して端部14b、24b、34bには設けないことで、スタッカー41や供給配管43内における非接触半導体集積回路タグ10、20、30同士の干渉を少なくすことができ、非接触半導体集積回路タグ10、20、30の供給を安定して行うことができる。
また本実施例によれば、凹部として凹部(第1凹部)25と、凹部(第1凹部)25の周囲に配置される凹部(第2凹部)15を設け、凹部(第2凹部)15は凹部(第1凹部)25よりも小径とすることで、小径の凹部(第2凹部)15によって粉体や流体との落ち着きを良くするとともに、大径の凹部(第1凹部)25によって粉体や流体との癒着を良くすることができる。
また本実施によれば、プリント基板11の一方の面に半導体集積回路を、他方の面にアンテナ12を配置することで、樹脂封止を行いやすく、封止効率を高めることができる。
また本実施例によれば、プリント基板11の他方の面にフェライトコア13を配置することで、コイル状に形成したアンテナ12の内部空間にフェライトコア13を配置できるので磁束・磁界を整流し通信性能を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明の非接触半導体集積回路タグは、コンクリート材以外にも、薬剤や飼料など粉体や流体の情報管理用に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例による非接触半導体集積回路タグの分解斜視図
【図2】同非接触半導体集積回路タグの要部分解斜視図
【図3】同非接触半導体集積回路タグの正面図
【図4】同非接触半導体集積回路タグの上面図
【図5】同非接触半導体集積回路タグの側面図
【図6】本発明の他の実施例による非接触半導体集積回路タグの正面図
【図7】同非接触半導体集積回路タグの上面図
【図8】同非接触半導体集積回路タグの側面図
【図9】本発明の更に他の実施例による非接触半導体集積回路タグの正面図
【図10】同非接触半導体集積回路タグの上面図
【図11】同非接触半導体集積回路タグの側面図
【図12】本発明による非接触半導体集積回路タグに対する情報読み書き装置を示す概略構成図
【符号の説明】
【0015】
10 非接触半導体集積回路タグ
11 プリント基板
12 アンテナ
13 フェライトコア
14 樹脂部材
14a 胴部
14b 端部
15 凹部
20 非接触半導体集積回路タグ
24 樹脂部材
24a 胴部
24b 端部
25 凹部
30 非接触半導体集積回路タグ
34 樹脂部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体集積回路を配置したプリント基板とアンテナとを備え、前記半導体集積回路に記録した情報をリーダにて読み取る非接触半導体集積回路タグであって、前記プリント基板と前記アンテナとを内部に配置し、外表面を樹脂部材にて覆い、前記樹脂部材の前記外表面に複数の凹部又は凸部を形成し、前記凹部又は前記凸部によって前記アンテナの方向性を識別することを特徴とする非接触半導体集積回路タグ。
【請求項2】
前記樹脂部材が、外径の等しい筒状の胴部と、前記胴部の両端に位置する端部とからなり、前記胴部に前記凹部又は前記凸部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の非接触半導体集積回路タグ。
【請求項3】
前記樹脂部材が、外径の等しい筒状の胴部と、前記胴部の両端に位置する端部とからなり、前記胴部に前記凹部を形成し、前記凹部として第1凹部と、前記第1凹部の周囲に配置される第2凹部とを設け、前記第2凹部は前記第1凹部よりも小径であることを特徴とする請求項1に記載の非接触半導体集積回路タグ。
【請求項4】
前記プリント基板の一方の面に前記半導体集積回路を配置し、前記アンテナを、前記プリント基板の外周径以下の径でコイル状に形成し、前記プリント基板の他方の面に配置したことを特徴とする請求項1に記載の非接触半導体集積回路タグ。
【請求項5】
前記プリント基板の他方の面にフェライトコアを配置したことを特徴とする請求項4に記載の非接触半導体集積回路タグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−289226(P2009−289226A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144122(P2008−144122)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(508149412)エンジニアス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】