説明

非接触型データ受送信体

【課題】簡便に温度を感知できる上に、温度感知後も再利用できる非接触型データ受送信体を提供する。
【解決手段】本発明の非接触型データ受送信体10は、基材14、その一方の面14aに設けられ互いに接続されたアンテナ15およびICチップ16からなるインレット11と、熱収縮性基材12と、その一方の面12aに設けられた導電体13と、を備え、アンテナ15と導電体13は、インレット11と熱収縮性基材12が積層された際に厚み方向に重なり合わない位置に配置され、インレット11と熱収縮性基材12が積層された状態で加熱された際に、熱収縮性基材12が面方向に収縮することによって、導電体13がアンテナ15の少なくとも一部と厚み方向において重なるようになっていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency IDentification)用途の情報記録メディアのように、電磁波または電波を媒体として外部から情報を受信し、また外部に情報を送信できるようにした非接触型データ受送信体に関し、特に、温度変化を感知する機能を備えた非接触型データ受送信体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非接触型データ受送信体の一例であるICタグは、基材と、その一方の面に設けられ互いに接続されたアンテナおよびICチップとから構成されるインレットを備えており、情報書込/読出装置からの電磁波または電波を受信すると共振作用によりアンテナに起電力が発生し、この起電力によりICタグ内のICチップが起動し、このICチップ内の情報を信号化し、この信号がICタグのアンテナから発信される。
【0003】
このようなICタグは、信号の受送信により、物品などの存在感知や識別を行うためのものであって、温度変化などの環境変化を感知するものではない。
従来、例えば、温度変化により、ICタグのアンテナ回路の容量成分および/またはインダクタンス成分を変化させて、アンテナ回路の共振周波数を変化させることにより、ICタグの温度変化を把握する技術が開示されている。そのアンテナ回路の共振周波数を変化させる手段としては、キュリー温度を境に不可逆性であるサーモスタット、正特性サーミスタ、負特性サーミスタなどの温度ヒューズが用いられることが開示されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−157485号公報
【特許文献2】特開2007−026145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の不可逆性の温度ヒューズを用いたICタグでは、その温度ヒューズがアンテナ回路に直接組み込まれているため、そのICタグが一端、所定の温度以外の温度に曝されると、アンテナ回路の共振周波数は変化したままとなり、共振周波数を元に戻すことができなかった。したがって、このICタグは、一端、所定の温度以外の温度に曝されると、再利用することができなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、簡便に温度を感知できる上に、温度感知後も再利用できる非接触型データ受送信体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の非接触型データ受送信体は、基材、該基材の一方の面に設けられ互いに接続されたアンテナおよびICチップからなるインレットと、熱収縮性基材と、該熱収縮性基材の一方の面に設けられた導電体と、を備え、前記インレットと前記熱収縮性基材が積層されて用いられる非接触型データ受送信体であって、前記アンテナと前記導電体は、前記インレットと前記熱収縮性基材が積層された際に厚み方向において重なり合わない位置に配置され、前記インレットと前記熱収縮性基材が積層された状態で加熱された際に、前記熱収縮性基材が面方向に収縮することによって、前記導電体が前記アンテナの少なくとも一部と厚み方向において重なるようになっていることを特徴とする。
【0008】
前記インレットと前記熱収縮性基材が積層されて筐体内に収められたことが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の非接触型データ受送信体は、基材、該基材の一方の面に設けられ互いに接続されたアンテナおよびICチップからなるインレットと、熱収縮性基材と、該熱収縮性基材の一方の面に設けられた導電体と、を備え、前記インレットと前記熱収縮性基材が積層されて用いられる非接触型データ受送信体であって、前記アンテナと前記導電体は、前記インレットと前記熱収縮性基材が積層された際に厚み方向において重なり合わない位置に配置され、前記インレットと前記熱収縮性基材が積層された状態で加熱された際に、前記熱収縮性基材が面方向に収縮することによって、前記導電体が前記アンテナの少なくとも一部と厚み方向において重なるようになっているので、熱収縮温度以上で熱収縮性基材が面方向に収縮することによって、熱収縮性基材の導電体がインレットのアンテナと厚み方向において重なるので、アンテナを介して、ICチップに対する情報の書き込みおよび読み出しができなくなる。したがって、非接触型データ受送信体およびこれを適用した物品が熱収縮性基材の熱収縮温度以上の温度環境に曝されたことを把握することができる。また、インレットと熱収縮性基材は完全に一体化されていないので、非接触型データ受送信体が熱収縮性基材の熱収縮温度以上の温度環境に曝されても、インレットから熱収縮性基材を分離すれば、そのインレットを再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の非接触型データ受送信体の第一の実施形態を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は非接触型データ受送信体を構成する2つの基材を重ね合わせた場合に(a)のA−A線に沿う断面図である。
【図2】本発明の非接触型データ受送信体の第一の実施形態の作用を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のB−B線に沿う断面図である。
【図3】本発明の非接触型データ受送信体の第一の実施形態の作用を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線に沿う断面図である。
【図4】本発明の非接触型データ受送信体の第二の実施形態を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は非接触型データ受送信体を構成する2つの基材を重ね合わせた場合に(a)のD−D線に沿う断面図である。
【図5】本発明の非接触型データ受送信体の第二の実施形態の作用を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のE−E線に沿う断面図である。
【図6】本発明の非接触型データ受送信体の第二の実施形態の作用を示す概略図であり、(a)は平面図、(b)は(a)のF−F線に沿う断面図である。
【図7】本発明の非接触型データ受送信体の第三の実施形態を示す概略斜視図である。
【図8】本発明の非接触型データ受送信体の第四の実施形態を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の非接触型データ受送信体の実施の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0012】
(1)第一の実施形態
図1は、本発明の非接触型データ受送信体の第一の実施形態を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は非接触型データ受送信体を構成する2つの基材を積層した場合に(a)のA−A線に沿う断面図である。
この実施形態の非接触型データ受送信体10は、積層されて用いられるインレット11および熱収縮性基材12と、熱収縮性基材12のインレット11と対向する面(以下、「一方の面」という。)12aに設けられた導電体13とから概略構成されている。
インレット11と熱収縮性基材12は、それぞれの長手方向の一端部11b、12bにて、粘着材を介して接合され、その他の部分が接合されずに離隔している。
【0013】
ここで、粘着材によるインレット11と熱収縮性基材12の接合は、強固になされたものではなく、粘着材によって、熱収縮性基材12がインレット11上に仮留めされている程度のものである。すなわち、熱収縮性基材12に外力を加えることにより、インレット11上にて熱収縮性基材12を移動できる程度に、熱収縮性基材12がインレット11に接合されている。
【0014】
インレット11は、平面視長方形状の基材14、基材14の熱収縮性基材12と対向する面(以下、「一方の面」という。)14aに設けられ互いに接続されたアンテナ15およびICチップ16から構成されている。
すなわち、アンテナ15は、インレット11と熱収縮性基材12が積層された際に、導電体13に対向する位置に配置されている。
【0015】
アンテナ15は、互いに対向し、その対向する側にそれぞれ給電点(ICチップ16と接続する部分)を有する一対の放射素子15A,15Bと、放射素子15A,15Bの給電点近傍を短絡する短絡部(図示略)とからなるダイポールアンテナである。
アンテナ15の長さ(全長)は、非接触ICカードなどの非接触ICモジュールに利用できる極超短波帯〈UHF〉やマイクロ波帯の電波帯の周波数(300MHz〜30GHz)の1/2波長に相当する長さとなっている。すなわち、放射素子15A,15Bの長さ(全長)は、1/4波長に相当する長さとなっている。
【0016】
導電体13は、熱収縮性基材12の一方の面12aのうち、一端部12b以外の部分(すなわち、インレット11と接合されていない部分)の周縁に枠状に設けられている。
【0017】
また、導電体13のインレット11と対向する面13aには、上述のインレット11と熱収縮性基材12を接合する粘着材が設けられていることが好ましい。
このように導電体13に粘着材を設けることにより、この粘着材によって、導電体13を基材14の一方の面14aに仮留めすることができる。ここでも、熱収縮性基材12に外力を加えることにより、インレット11上(基材14の一方の面14a上)にて熱収縮性基材12を移動できる程度に、熱収縮性基材12が基材14の一方の面14aに仮留めされる。
【0018】
また、インレット11のアンテナ15と、熱収縮性基材12に設けられた導電体13とは、図1(b)に示すように、インレット11と熱収縮性基材12が積層された際に厚み方向において重なり合わない位置に配置されている。
ここで、アンテナ15と導電体13が厚み方向において重なり合わないとは、アンテナ15の外側面15aと導電体13の内側面13bが厚み方向において、同一面上(同一線上)に存在しないことも含んでいる。
【0019】
熱収縮性基材12としては、70℃以上の温度で収縮する、平面視長方形状のシュリンクフィルムが用いられ、例えば、70℃における熱収縮率が15%以上のポリ塩化ビニルシュリンクフィルム、ポリプロピレンシュリンクフィルム、ポリエチレンシュリンクフィルム、ポリスチレンシュリンクフィルム、ポリオレフィンシュリンクフィルム、ポリエチレンテレフタレートシュリンクフィルムなどが挙げられる。
【0020】
導電体13は、熱収縮性基材12の一方の面12aにポリマー型導電インクを用いて所定のパターン状にスクリーン印刷により形成されてなるものか、もしくは、導電性箔をエッチングしてなるもの、金属メッキしてなるものである。
【0021】
ポリマー型導電インクとしては、例えば、銀粉末、金粉末、白金粉末、アルミニウム粉末、パラジウム粉末、ロジウム粉末、カーボン粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)などの導電微粒子が樹脂組成物に配合されたものが挙げられる。
【0022】
樹脂組成物として熱硬化型樹脂を用いれば、ポリマー型導電インクは、200℃以下、例えば100〜150℃程度で導電体13をなす塗膜を形成することができる熱硬化型となる。導電体13をなす塗膜の電気の流れる経路は、塗膜をなす導電微粒子が互いに接触することによる形成され、この塗膜の抵抗値は10-5Ω・cmオーダーである。
また、本発明におけるポリマー型導電インクとしては、熱硬化型の他にも、光硬化型、浸透乾燥型、溶剤揮発型といった公知のものが用いられる。
【0023】
光硬化型のポリマー型導電インクは、光硬化性樹脂を樹脂組成物に含むものであり、硬化時間が短いので、製造効率を向上させることができる。光硬化型のポリマー型導電インクとしては、例えば、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、導電微粒子が60質量%以上配合され、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、溶剤揮発型かあるいは架橋/熱可塑併用型(ただし熱可塑型が50質量%以上である)のものや、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、架橋型かあるいは架橋/熱可塑併用型のものなどが好適に用いられる。
【0024】
また、導電体13をなす導電性箔としては、銅箔、銀箔、金箔、白金箔、アルミニウム箔などが挙げられる。
さらに、導電体13をなす金属メッキとしては、銅メッキ、銀メッキ、金メッキ、白金メッキなどが挙げられる。
【0025】
基材14としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂からなる基材;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂からなる基材;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレンなどのポリフッ化エチレン系樹脂からなる基材;ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂からなる基材;ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体からなる基材;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂からなる基材;ポリスチレンからなる基材;ポリカーボネート(PC)からなる基材;ポリアリレートからなる基材;ポリイミドからなる基材;上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙などの紙からなる基材などが用いられる。これらの基材の中でも、機械的強度、寸法安定性、耐溶剤性の点からポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などからなる基材が好ましく、透明性、加工適性、コストの点からポリエチレンテレフタレート(PET)またはグリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)からなる基材がより好ましい。
【0026】
アンテナ15は、基材14の一方の面14aに、導電体13と同様にポリマー型導電インクを用いて所定のパターン状にスクリーン印刷により形成されてなるものか、もしくは、導電性箔をエッチングしてなるもの、金属メッキしてなるものである。
【0027】
ICチップ16としては、特に限定されず、アンテナ15を介して非接触状態にて情報の書き込みおよび読み出しが可能なものであれば、非接触型ICタグや非接触型ICラベル、あるいは非接触型ICカードなどのRFIDメディアに適用可能なものであればいかなるものでも用いられる。
【0028】
次に、図1〜図3を参照して、非接触型データ受送信体10の使用方法および作用を説明する。
なお、図2および図3において、説明を簡単にするために、図1に示したインレット11の一端部11bと熱収縮性基材12の一端部12bを省略した。
この非接触型データ受送信体10を使用するには、インレット11と熱収縮性基材12を積層する(重ね合わせる)。この時、導電体13のインレット11と対向する面13aに設けた粘着材により、基材14の一方の面14aに対して、熱収縮性基材12を仮留めすることが好ましい。
また、この時点では、インレット11のアンテナ15と、熱収縮性基材12の導電体13とは、図1(b)に示すように、厚み方向において重なり合わない位置に配置されている。
【0029】
非接触型データ受送信体10は、このようにインレット11と熱収縮性基材12を積層した状態で物品などに貼付され、その存在感知や識別のために用いられる。
【0030】
そして、非接触型データ受送信体10が貼付された物品が70℃以上の温度環境に曝されると、熱収縮性基材12が面方向に収縮し、これに伴って導電体13も面方向に収縮することによって、例えば、図2または図3に示すように、熱収縮性基材12の導電体13がインレット11のアンテナ15と厚み方向において重なる。
ここで、「面方向」とは、熱収縮性基材12の一方の面12aに沿う方向である。
また、導電体13は、熱収縮性基材12の一方の面12aに設けられた薄膜からなるので、熱収縮性基材12の熱収縮に追従して収縮することができる。
【0031】
図2では、アンテナ15の外側面15aに、導電体13の内側面13bが接した状態、すなわち、アンテナ15の外側面15aと導電体13の内側面13bが厚み方向において、同一面上(同一線上)に存在した状態となっている。
図3では、アンテナ15と導電体13が厚み方向において、重なった状態となっている。
【0032】
熱収縮性基材12の導電体13がインレット11のアンテナ15と厚み方向において重なると、非接触型データ受送信体10は、アンテナ15を介して、非接触状態にてICチップ16に対する情報の書き込みおよび読み出しができなくなる。
なぜならば、導電体13とアンテナ15が厚み方向において重なった状態で、基材14の一方の面14a側で、情報書込/読出装置からの電波を受信しようとすると、導電体13がループアンテナとして機能し、情報書込/読出装置からの電波を、その導電体13が受信してしまい、導電体13のみにおいて共振作用による起電力が発生する。したがって、アンテナ15では電波が受信されなくなるため、非接触型データ受送信体10は通信不能となる。
【0033】
一方、導電体13とアンテナ15が厚み方向において重なった状態で、基材14の他方の面14b側で、情報書込/読出装置からの電波を受信しようとすると、アンテナ15が共振する周波数の波長にずれが生じるため、非接触型データ受送信体10は通信不能となる。
【0034】
このように非接触型データ受送信体10によれば、熱収縮温度以上で熱収縮性基材12が面方向に収縮することによって、熱収縮性基材12の導電体13がインレット11のアンテナ15と厚み方向において重なるようになっているので、アンテナ15を介して、ICチップ16に対する情報の書き込みおよび読み出しができなくなる。したがって、非接触型データ受送信体10およびこれを適用した物品が熱収縮性基材12の熱収縮温度以上(例えば、70℃以上)の温度環境に曝されたことを把握することができる。
また、導電体13が設けられた熱収縮性基材12は、粘着材を介して、インレット11に接合されているだけであるから、一旦、非接触型データ受送信体10が熱収縮性基材12の熱収縮温度以上の温度環境に曝されても、インレット11から熱収縮性基材12を剥離すれば、そのインレット11を再利用することができる。
【0035】
なお、この実施形態では、導電体13が、熱収縮性基材12の一方の面12aの周縁に枠状に設けられた非接触型データ受送信体を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、導電体の形状は、インレットと熱収縮性基材が積層された際に、アンテナと厚み方向において重なり合わない形状であり、かつ、熱収縮性基材が面方向に収縮した際に、アンテナの少なくとも一部と厚み方向において重なる形状であれば、いかなる形状であってもよい。
【0036】
また、この実施形態では、一方が三角形の面状をなすダイポールアンテナからなるアンテナ15有するインレット11を備えた非接触型データ受送信体10を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、アンテナは一方が三角形の枠状をなすダイポールアンテナ、メアンダ状のダイポールアンテナであってもよい。
また、この実施形態では、インレット11の基材14および熱収縮性基材12の形状が平面視長方形状である非接触型データ受送信体を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、インレットの基材および熱収縮性基材の形状は、非接触型データ受送信体の用途などに応じて適宜設定される。
【0037】
(2)第二の実施形態
図4は、本発明の非接触型データ受送信体の第二の実施形態を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は非接触型データ受送信体を構成する2つの基材を重ね合わせた場合に(a)のD−D線に沿う断面図である。
図4において、図1に示した非接触型データ受送信体10の構成要素と同じ構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0038】
この実施形態の非接触型データ受送信体20が、上述の第一の実施形態の非接触型データ受送信体10と異なる点は、インレット11の基材14の他方の面14b側において、インレット11と熱収縮性基材12が、それぞれの長手方向の一端部11b、12bにて、粘着材を介して接合されている点である。
すなわち、アンテナ15は、インレット11と熱収縮性基材12が積層された際に、導電体13に対向しない位置に配置されている。
【0039】
この非接触型データ受送信体20においても、導電体13のインレット11と対向する面13aには、上述のインレット11と熱収縮性基材12を接合する粘着材が設けられていることが好ましい。
このように導電体13に粘着材を設けることにより、この粘着材によって、導電体13を基材14の他方の面14bに仮留めすることができる。ここでも、熱収縮性基材12に外力を加えることにより、インレット11上(基材14の他方の面14b上)にて熱収縮性基材12を移動できる程度に、熱収縮性基材12が基材14の他方の面14bに仮留めされる。
【0040】
次に、図4〜図6を参照して、非接触型データ受送信体20の使用方法および作用を説明する。
なお、図5および図6において、説明を簡単にするために、図4に示したインレット11の一端部11bと熱収縮性基材12の一端部12bを省略した。
この非接触型データ受送信体20を使用するには、インレット11と熱収縮性基材12を積層する(重ね合わせる)。この時、導電体13のインレット11と対向する面13aに設けた粘着材により、基材14の他方の面14bに対して、熱収縮性基材12を仮留めすることが好ましい。
また、この時点では、インレット11のアンテナ15と、熱収縮性基材12の導電体13とは、図4(b)に示すように、厚み方向において重なり合わない位置に配置されている。
【0041】
非接触型データ受送信体20は、このようにインレット11と熱収縮性基材12を積層した状態で物品などに貼付され、その存在感知や識別のために用いられる。
【0042】
そして、非接触型データ受送信体20が貼付された物品が70℃以上の温度環境に曝されると、熱収縮性基材12が面方向に収縮し、これに伴って導電体13も面方向に収縮することによって、例えば、図5または図6に示すように、熱収縮性基材12の導電体13がインレット11のアンテナ15と厚み方向において重なる。
【0043】
図5では、アンテナ15の外側面15aと導電体13の内側面13bが厚み方向において、同一面上(同一線上)に存在した状態となっている。
図6では、アンテナ15と導電体13が厚み方向において、重なった状態となっている。
【0044】
熱収縮性基材12の導電体13がインレット11のアンテナ15と厚み方向において重なると、非接触型データ受送信体20は、アンテナ15を介して、非接触状態にてICチップ16に対する情報の書き込みおよび読み出しができなくなる。
なぜならば、導電体13とアンテナ15が厚み方向において重なった状態で、基材14の一方の面14a側で、情報書込/読出装置からの電波を受信しようとすると、アンテナ15が共振する周波数の波長にずれが生じるため、非接触型データ受送信体10は通信不能となる。
【0045】
一方、導電体13とアンテナ15が厚み方向において重なった状態で、基材14の他方の面14b側で、情報書込/読出装置からの電波を受信しようとすると、導電体13がループアンテナとして機能し、情報書込/読出装置からの電波を、その導電体13が受信してしまい、導電体13のみにおいて共振作用による起電力が発生する。したがって、アンテナ15では電波が受信されなくなるため、非接触型データ受送信体10は通信不能となる。
【0046】
一方、導電体13とアンテナ15が厚み方向において重なった状態で、基材14の他方の面14b側で、情報書込/読出装置からの電波を受信しようとすると、アンテナ15が共振する周波数の波長にずれが生じるため、非接触型データ受送信体10は通信不能となる。
【0047】
(3)第三の実施形態
図7は、本発明の非接触型データ受送信体の第三の実施形態を示す概略斜視図である。
図7において、図1に示した非接触型データ受送信体10の構成要素と同じ構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態の非接触型データ受送信体30が、上述の第一の実施形態の非接触型データ受送信体10と異なる点は、インレット11と熱収縮性基材12が積層されて、角筒状の筐体31内に収められている点である。
【0048】
筐体31としては、特に限定されないが、インレット11と熱収縮性基材12の積層体を収納する部分(収納部)31aの形状が、その積層体の外形にほぼ等しいものが用いられる。このようにすれば、インレット11と熱収縮性基材12が変形することなく、その積層された状態を保つことができるので、非接触型データ受送信体30の通信特性が劣化することがなく、また、熱収縮性基材12の熱収縮を妨げることもない。
【0049】
筐体31の材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレンなどのポリフッ化エチレン系樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂;ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂;ポリスチレン;ポリカーボネート(PC);ポリアリレート;ポリイミド;各種の紙などが挙げられる。
【0050】
この非接触型データ受送信体30によれば、インレット11と熱収縮性基材12を積層して筐体31内に収めたので、第一の実施形態のように、粘着材を用いることなく、インレット11に対して熱収縮性基材12を仮留めすることができる。また、インレット11と熱収縮性基材12の間に粘着材が介在しないので、熱収縮性基材12はスムーズに熱収縮することができる。
【0051】
(4)第四の実施形態
図8は、本発明の非接触型データ受送信体の第四の実施形態を示す概略斜視図である。
図8において、図1に示した非接触型データ受送信体10の構成要素と同じ構成要素には同一符号を付して、その説明を省略する。
この実施形態の非接触型データ受送信体40が、上述の第一の実施形態の非接触型データ受送信体10と異なる点は、インレット11と熱収縮性基材12が積層されて、クリップ41,41で仮留めされている点である。
【0052】
この非接触型データ受送信体40によれば、インレット11と熱収縮性基材12を積層してクリップ41,41で仮留めしたので、第一の実施形態のように、インレット11と熱収縮性基材12の間に粘着材が介在しないから、熱収縮性基材12はスムーズに熱収縮することができる。
【0053】
なお、この実施形態では、インレット11と熱収縮性基材12を積層し、これらをクリップ41,41で仮留めした非接触型データ受送信体40を例示したが、本発明の非接触型データ受送信体はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、インレットと熱収縮性基材を積層した状態で、この積層体を、対象となる物品に画鋲や針などで仮固定してもよい。
【符号の説明】
【0054】
10,20,30,40・・・非接触型データ受送信体、11・・・インレット、12・・・熱収縮性基材、13・・・導電体、14・・・基材、15・・・アンテナ、16・・・ICチップ、31・・・筐体、41・・・クリップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材、該基材の一方の面に設けられ互いに接続されたアンテナおよびICチップからなるインレットと、熱収縮性基材と、該熱収縮性基材の一方の面に設けられた導電体と、を備え、前記インレットと前記熱収縮性基材が積層されて用いられる非接触型データ受送信体であって、
前記アンテナと前記導電体は、前記インレットと前記熱収縮性基材が積層された際に厚み方向に重なり合わない位置に配置され、
前記インレットと前記熱収縮性基材が積層された状態で加熱された際に、前記熱収縮性基材が面方向に収縮することによって、前記導電体が前記アンテナの少なくとも一部と厚み方向において重なるようになっていることを特徴とする非接触型データ受送信体。
【請求項2】
前記インレットと前記熱収縮性基材が積層されて筐体内に収められたことを特徴とする請求項1に記載の非接触型データ受送信体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−257420(P2010−257420A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−109892(P2009−109892)
【出願日】平成21年4月28日(2009.4.28)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】