説明

非接触型無線タグシステム、装置、及び消費電力削減方法

【課題】無線タグがリーダライタから継続的に要求を受け続ける状態においても、無線タグに搭載された電池の電力消費を抑えることが可能な非接触型無線タグシステムを提供する。
【解決手段】非接触型無線タグ装置は、表示部と、表示部へ表示するべき表示データを含む受信データを送信装置から非接触通信により受信する処理部と、処理部へ電力を供給する電池部とを備える。処理部は、第1の低消費電力モードにあるときに非接触通信の開始を検知すると通常モードに移行して非接触通信により受信データを受信して、通常モードにおいて非接触通信の完了を検知すると第2の低消費電力モードへ移行する。さらに処理部は、第2の低消費電力モードでは、非接触通信の開始要求の受信を検知しても通常モードへは移行せずに非接触通信の開始要求を一定時間検知しなかった場合に第1の低消費電力モードへ移行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池を搭載した非接触型無線タグ装置を用いる非接触型無線タグシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
非接触型無線タグ(RFID:Redio Frequency IDentification)システムが広く普及している。非接触型無線タグシステムで用いられる非接触型無線タグ装置(以下、無線タグ)には、無線タグ読み取り/書き込み装置(以下、リーダライタ)からの送信波により電力供給を受けて動作する方式(パッシブタグ)や、リーダライタからの電波の電力に加えて、電池を搭載して電池の電力も用いて動作する方式(アクティブタグ、セミアクティブタグ)が存在する。電池を搭載した無線タグでは、リーダライタとの間の通信処理や、リーダライタからの要求に応じて無線タグ内で行われる処理において電池の電力を用いる。そのため、電池の電力が残量不足になるとこれらの処理を実行できなくなる。そこで、電池の電力消費を抑えて電池の寿命を延ばすことが求められる。
【0003】
特許文献1は、無線タグの電力消費を抑える無線通信システムを開示している。特許文献1の無線通信システムにおいて、リーダライタは、誤り訂正等の冗長データを省いた必要最小限の情報を有するプリアンブルフレームを、所定の回数繰り返し送信した後に実データフレームを送信する。無線タグは、受信されたプリアンブルフレームに含まれるサイクルカウンタに基づいて実データフレームの通信予定時刻を算出して、通信予定時刻に実データフレームを送受信する。特許文献1の無線通信システムによれば、プリアンブルフレームのフォーマットを変更して、無線タグがプリアンブルフレームによりフレーム同期を検出するための受信継続時間を短縮して、消費電力を抑えることができる。
【0004】
しかし、特許文献1のような無線通信システムには、無線タグがリーダライタの送信波を受信可能な範囲内に留まり、リーダライタから継続的に読み取り要求や書き込み要求といった要求を受け続けるような状態にあると、電池の電力を不必要に消費してしまうという課題がある。それは、無線タグがリーダライタから受信される要求に対して継続して応答を行ってしまうためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−136270号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、無線タグがリーダライタから継続的に要求を受け続ける状態においても、無線タグに搭載された電池の電力消費を抑えることが可能な非接触型無線タグシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの観点において、非接触型無線タグ装置が提供される。非接触型無線タグ装置は、表示部と、表示部へ表示するべき表示データを含む受信データを送信装置から非接触通信により受信する処理部と、処理部へ電力を供給する電池部とを備える。処理部は、第1の低消費電力モードにあるときに非接触通信の開始を検知すると通常モードに移行して非接触通信により受信データを受信して、通常モードにおいて非接触通信の完了を検知すると第2の低消費電力モードへ移行する。さらに処理部は、第2の低消費電力モードでは、非接触通信の開始要求の受信を検知しても通常モードへは移行せずに非接触通信の開始要求を一定時間検知しなかった場合に第1の低消費電力モードへ移行する。
【0008】
本発明の他の観点において、非接触型無線タグシステムが提供される。非接触型無線タグシステムは、上述の記載の非接触無線タグ装置を備える。
【0009】
本発明のさらに他の観点において、非接触型無線タグ装置の消費電力削減方法が提供される。非接触型無線タグ装置の消費電力削減方法は、表示部と、表示部へ表示するべき表示データを含む受信データを送信装置から非接触通信により受信する処理部と、処理部へ電力を供給する電池部と、を備える非接触型無線タグ装置の消費電力削減方法である。非接触型無線タグ装置の消費電力削減方法は、第1の低消費電力モードにあるときに非接触通信の開始を検知すると通常モードに移行するステップと、通常モードにおいて非接触通信により受信データを受信するステップと、通常モードにおいて非接触通信の完了を検知すると第2の低消費電力モードへ移行するステップと、第2の低消費電力モードでは、非接触通信の開始要求の受信を検知しても通常モードへは移行せずに非接触通信の開始要求を一定時間検知しなかった場合に第1の低消費電力モードへ移行するステップとを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の非接触型無線タグ装置よれば、無線タグがリーダライタから継続的に要求を受け続ける状態においても、無線タグに搭載された電池の電力消費を抑えることが可能な非接触型無線タグ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施形態における非接触型無線タグシステムの構成を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態における無線タグ1の構成を示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施形態における処理部14の構成を示す機能ブロック図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態における非接触型無線タグシステムの動作を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本発明の実施形態における非接触型無線タグシステムの実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照して、本発明の実施形態による非接触型無線タグシステムを以下に説明する。
【0013】
[構成の説明]
はじめに、本実施形態における非接触型無線タグシステムの構成の説明を行う。図1は、本実施形態における非接触型無線タグシステムの構成を示す図である。本実施形態の非接触型無線タグシステムは、非接触型無線タグ装置(以下、無線タグ)1と、無線タグ読み取り/書き込み装置(以下、リーダライタ)2と、コントローラ3と、パーソナルコンピュータ(以下、PC)4とを備える。
【0014】
まず、無線タグ1は、リーダライタ2と非接触通信を行って、リーダライタ2から受信された読み取りや書き込みといった要求に応じて所定の処理を行う。本実施形態の無線タグ1は、表示部13を備える。表示部13には、文字や数字、あるいはバーコードやQRコード(登録商標)といった情報が、ユーザにより視認可能な状態で表示される。また、無線タグ1は、固有の識別子を付与されており、識別子により個々の特定が可能である。無線タグ1は、リーダライタ2からの読み取り要求に応じて、リーダライタ2へ識別子を応答する。そして、無線タグ1は、リーダライタ2から表示書き換え要求に応じて、表示部13の表示の書き換えを実行する。なお、無線タグ1の構成は、後に詳述する。
【0015】
次に、PC4は、非接触型無線タグシステムの管理者により使用される。PC4は、コントローラ3と通信ケーブルを用いて直接的に、あるいはネットワークを介して接続されている。管理者は、PC4を用いて、無線タグ1の表示部13へ表示するべき表示データを無線タグ1の識別子毎にコントローラ3へ登録する。
【0016】
次に、コントローラ3は、PC4から登録された表示データを無線タグ1の識別子毎に記録している。コントローラ3は、リーダライタ2からの要求に応じて、無線タグ1の識別子に対応する表示データをリーダライタ2へ応答する。コントローラ3は、表示データに加えて表示データのデータ長も含めて応答を送信する。
【0017】
次に、リーダライタ2は、無線タグ1と非接触通信を行う。リーダライタ2は、コントローラ3と直接、あるいはネットワークを介して接続されている。なお、図1では複数のリーダライタ2がネットワークを介してコントローラ3と接続されているが、リーダライタ2は、これより多くとも少なくとも良い。また、リーダライタ2は、PC4と直接接続できるタイプであってもよい。リーダライタ2は、無線タグ1への読み取り要求を非接触通信の送信波により定期的に送信している。リーダライタ2は、無線タグ1から読み取り要求に対する応答を受信すると、この応答に含まれる無線タグ1の識別子を用いてコントローラ3から無線タグ1の識別子に対応する表示データや表示データ長を取得する。リーダライタ2は、この表示データや表示データ長を含めた表示書き換え要求を非接触通信により無線タグ1へ送信する。以上が、図1に示された本実施形態の非接触型無線タグシステムの構成の説明である。
【0018】
続いて、図2を用いて本実施形態における無線タグ1の構成の説明を行う。図2は、本実施形態における無線タグ1の構成を示す図である。本実施形態の無線タグ1は、非接触通信部11と、電池部12と、表示部13と、処理部14とを備える。
【0019】
まず、非接触通信部11は、アンテナを備えてリーダライタ2と非接触通信を行う。非接触通信部11は、リーダライタ2の送信した送信波を受信して、受信信号に対して増幅や復調等の受信処理を行って受信データを再生し、受信データを処理部14へ出力する。また、非接触通信部11は、処理部14から送信データを入力して、送信データに変調や増幅等の送信処理を行って送信信号を生成し、送信信号を送信波としてリーダライタ2へ送信する。
【0020】
次に、電池部12は、処理部14へ電力を供給する。本実施形態において電池部12は、一次電池である。しかし、電池部12は、二次電池であっても良い。この場合、電池部12は、非接触通信部11が受信するリーダライタ2の送信波の電力により充電される構成としても良い。
【0021】
次に、表示部13は、処理部14の制御により表示データを表示する。表示部13は、電子ペーパーであることが好ましい。電子ペーパーは、表示の書き換え時にのみ電圧の印加が必要であり、表示を書き換えた後は電圧を印加しなくとも表示が保たれる。そのため、表示に係る電力が少なくて済み、電池部12の電力の消費を抑えることができる。なお、表示部13は、電子ペーパーに限らず、LCD(Liquid Ctystal Display)で構成してもよい。
【0022】
次に、処理部14は、リーダライタ2から受信された受信データに含まれた要求に応じて所定の処理を行う。処理部14は、リーダライタ2からの読み取り要求に応じて、リーダライタ2へ無線タグ1の識別子を応答する。また、処理部14は、リーダライタ2からの表示書き換え要求に応じて表示部13の表示の書き換えを実行する。処理部14は、MPU(Micro Processing Unit)や不揮発性メモリにより構成される。不揮発性メモリは、無線タグ1の機能を実現するための実行プログラムや、無線タグ1の識別子を含む無線タグ1の機能を実現するためのデータを記録している。MPUは、不揮発性メモリの実行プログラムを実行することで処理部14の機能を実現する。なお、このように、処理部14の機能は、ソフトウェアにより実現されても良いし、ハードウェアにより実現されても良いし、あるいはこれらの組み合わせによって実現されても良い。以上が、図2に示された本実施形態の無線タグ1の構成の説明である。
【0023】
続いて、図3を用いて、本実施形態における処理部14の構成の説明を行う。図3は、本実施形態における処理部14の構成を示す機能ブロック図である。本実施形態の処理部14は、割り込み処理部141と、データ送信部142と、表示コントロール部143と、電池監視部144と、メイン処理部145とを備える。
【0024】
まず、割り込み処理部141は、非接触通信部11に発生する電力量を監視する。非接触通信部11には、リーダライタ2の送信波を受信することにより電力が発生する。割り込み処理部141は、非接触通信部11の電力量が所定のレベル以上になるとメイン処理部145へ割り込み通知を出力する。割り込み処理部141は、非接触通信部11の電力量が所定のレベル以上である間、一定の間隔で割り込み通知を出力し続ける。
【0025】
次に、データ送受信部142は、非接触通信部11から入力した受信データに対して誤り検出及び誤り訂正などの復号化処理を行って、受信データをメイン処理部145へ出力する。また、データ送受信部142は、メイン処理部145から入力した送信データに誤り訂正符号を付与するといった符号化処理を行って、送信データを非接触通信部11へ出力する。
【0026】
次に、表示コントロール部143は、表示部13の表示を制御する表示ドライバである。表示コントロール部143は、メイン処理部145からの命令に応じてリーダライタ2から受信された表示データに基づいて表示部13へ表示を行う。
【0027】
次に、電池監視部144は、電池部12の電力の残量を監視している。電池監視部144は、電池部12の電力の残量が一定レベルより低下すると、メイン処理部145へ通知する。
【0028】
次に、メイン処理部145は、3つのモードに応じて処理を行う。3つのモードは、通常モード、ローパワーモード、及びスリープモードである。以下、各モードにおけるメイン処理部145の処理を説明する。
【0029】
まず、スリープモードにおいてメイン処理部145は、特に処理を行わない。スリープモードは、3つのモードのうちで電池部12の電力消費が最も少ない。メイン処理部145は、後述するローパワーモードであるとき、一定時間の間に割り込み処理部141から割り込み通知の入力を検知しない場合にスリープモードへ移行する。つまり、メイン処理部145は、非接触通信部11に発生する電力量が一定の時間の間に渡って所定のレベル以上とならない場合にスリープモードへ移行する。このような状態は、無線タグ1がリーダライタ2の送信波の受信可能範囲外に位置している状態が考えられる。なお、メイン処理部145は、スリープモードにおいて、電池監視部144から電池残量低下の通知を受けると、その旨を表示コントロール部143に表示部13へ表示させてもよい。これは、以下の各モードにおいても同様である。
【0030】
次に、通常モードにおいてメイン処理部145は、リーダライタからの要求に応じて処理を行う。通常モードは、3つのモードのうちで電池部12の電力消費が最も多い。メイン処理部145は、スリープモードにあるときに割り込み処理部141から割り込み通知を入力すると通常モードへ移行する。つまり、メイン処理部145は、非接触通信部11に発生する電力量が所定のレベル以上となった場合に通常モードへ移行する。このような状態は、リーダライタ2の送信波を受信可能な範囲外に位置していた無線タグ1が送信波を受信可能な範囲内へ移動したような状態が考えられる。
【0031】
メイン処理部145は、通常モードにおいて、リーダライタ2からの読み取り要求に応じて、リーダライタ2へ無線タグ1の識別子をデータ送受信部142及び非接触通信部11を介して応答する。また、メイン処理部145は、リーダライタからの表示書き換え要求に応じて、表示コントロール部143に表示書き換え要求の受信データに含まれる表示データに基づいた表示部13の表示の書き換えを命令する。
【0032】
次に、ローパワーモードにおいてメイン処理部145は、割り込み処理部141からの割り込み通知を入力を監視する。ローパワーモードは、通常モードよりもMPUのクロックレートを落とした低消費電力モードであり、スリープモードよりも電力消費が多いが通常モードより電力消費が少ない。メイン処理部145は、通常モードにあるときに、リーダライタ2から表示書き換え要求の受信を完了すると、ローパワーモードに移行する。
【0033】
メイン処理部145は、ローパワーモードであるときに、割り込み処理部141から割り込み通知を入力しても通常モードへは移行しない。つまり、メイン処理部145は、非接触通信部11に発生する電力量が所定のレベル以上である状態が継続しても通常モードへ移行しない。このような状態は、無線タグ1が、リーダライタ2の送信波を受信可能な範囲内に留まり続けるような状態が考えられる。メイン処理部145は、割り込み処理部141からの割り込み通知の入力を監視して、前述の通り、一定時間の間に割り込み処理部141から割り込み通知の入力を検知しない場合にスリープモードへ移行する。
【0034】
無線タグ1がリーダライタ2の送信波を受信可能な範囲内に留まり続けるような状態では、無線タグ1がリーダライタ2からの要求を受信し続けることになる。そのため、割り込み処理部141は、割り込み通知を出力し続ける。ローパワーモードにおいてメイン処理部145は、スリープモードの場合にように割り込み通知を検出しても通常モードへは移行せず、割り込み処理部141からの割り込み通知の入力を監視する。これにより、メイン処理部145が通常モードに移行してリーダライタ2からの要求に再び応答してしまうことを防いでいる。以上が、図3に示された本実施形態の処理部14の構成を示す機能ブロック図の説明である。
【0035】
[動作の説明]
次に、図4を用いて、本実施形態における非接触型無線タグシステムの動作の説明を行う。図4は、本実施形態における非接触型無線タグシステムの動作を示すフローチャートである。
【0036】
はじめに、無線タグ1は、リーダライタ2から離れた場所に位置しており、メイン処理部145がスリープモードに移行している(ステップS10)。
【0037】
無線タグ1は、リーダライタ2が定期的に送信している読み取り要求を受信可能な範囲へ移動する。これにより、非接触通信部11にはリーダライタ2の送信波による電力が発生する。割り込み処理部141は、非接触通信部11に発生する電力量を監視して、所定のレベル以上であるかを判定する(ステップS20)。所定のレベル以上でない場合(ステップS20のNo)、本ステップで待機する。
【0038】
一方、所定のレベル以上である場合(ステップS20のYes)、割り込み処理部141は、メイン処理部145へ割り込み通知を出力する(ステップS30)。メイン処理部145は、割り込み通知を受信すると、スリープモードから通常モードへ移行する(ステップS40)。また、このとき、非接触通信部11は、受信信号に対する復調処理を行って受信データを再生し、受信データをデータ送受信部142へ出力する。また、データ送受信部142は、受信データに対して誤り訂正等の復号化処理を行って、受信データをメイン処理部145へ出力する。
【0039】
メイン処理部145は、データ送受信部142から受信データを入力すると、リーダライタ2からの読み取り要求に応じて、リーダライタ2へ無線タグ1の識別子を応答する。リーダライタ2は、無線タグ1からの応答に含まれる無線タグ1の識別子を用いて、コントローラ3から無線タグ1の識別子に対応する表示データや表示データ長を取得する。リーダライタ2は、その表示データや表示データ長を含めた表示書き換え要求を無線タグ1へ非接触通信により送信する。
【0040】
メイン処理部145は、非接触通信部11とデータ送受信部142を介して表示書き換え要求の受信する(ステップS50)。メイン処理部145は、表示コントロール部143に、受信データに含まれた表示データを表示部13へ表示するよう命令する。表示コントロール部143は、表示データに基づいて表示部13の表示を書き換える(ステップS60)。
【0041】
メイン処理部145は、表示書き換え要求の受信を完了するとローパワーモードへ移行する(ステップS70)。メイン処理部145は、ローパワーモードにおいて、一定の時間の間に割り込み処理部141から割り込み通知の入力を検出したかを判定する(ステップS80)。割り込み処理部141は、非接触通信部11に発生する電力量が継続して所定のレベル以上である場合、割り込み通知を継続して出力する。メイン処理部145は、一定時間に割り込み通知の入力を検出した場合(ステップS80のNo)、ローパワーモードを維持する。これは、無線タグ1が、リーダライタ2の送信波を受信可能な範囲内に留まっていることを意味するからである。
【0042】
一方、メイン処理部145は、一定時間に割り込み通知の入力を検知しない場合(ステップS80のYes)、スリープモードへ移行する(ステップS90)。これは、無線タグ1が、リーダライタ2の送信波を受信可能な範囲外に移動したことを意味するからである。これにより、本動作フローは終了する。この後、無線タグ1がリーダライタ2の送信波を受信可能な範囲に移動すると、再び本動作フローが開始される。以上が、本実施形態における非接触型無線タグシステムの動作の説明である。
【0043】
なお、上述では、メイン処理部145は、通常モードにおいて、表示部13の表示の書き換えを行った(ステップS60)後に、ローパワーモードへ移行(ステップS70)している。しかし、メイン処理部145は、ローパワーモードへ移行(ステップS70)した後に、ローパワーモードにおいて表示部13の表示の書き換えを(ステップS60)行っても良い。また、メイン処理部145は、ステップS40において、割り込み通知を検出することによりスリープモードから通常モードへ移行しているが、データ送受信部142から入力された受信データが読み取り要求であることを検出することによりスリープモードから通常モードへ移行してもよい。
【0044】
[実施例]
続いて、図5を用いて、本実施形態における非接触型無線タグシステムの具体的な実施例の説明を行う。図5は、本実施形態における非接触型無線タグシステムの実施例を示す図である。
【0045】
図5では、コンテナ100に取り付けられた無線タグ1の表示部13の表示を更新する作業が示されている。コンテナ100は、製品や部品を格納するために用いられる。無線タグ1の表示部13は、コンテナ100に格納された製品や部品の種類や数量、あるいはコンテナの配置といった情報を、文字や、バーコードや、QRコード、あるいはこれらの組み合わせにより表示する。
【0046】
コンテナ100は、コンテナローラ110上を図5に示したコンテナ100の進行方向に向かって、位置A→位置B→位置Cの順に移動する。コンテナローラ110には、リーダライタ2がコンテナ100に取り付けられた無線タグ1と非接触通信が可能なように設けられている。コンテナ100はリーダライタ2の前で一時的に停止するように制御される(なお、コンテナ100は、リーダライタ2の送信波が無線タグ1に届く範囲を通過すれば必ずしも停止しなくても良い)。無線タグ1は、この一時停止中にリーダライタ2と非接触通信を行って、表示部13の表示を更新する。なお、図1に示した、コントローラ3やPC4は、図示を省略している。以下、このような作業を図4のフローチャートを適用して説明する。
【0047】
まず、コンテナ100が、コンテナローラ110上の位置Aにあるとする。この時、コンテナ100に取り付けられた無線タグ1は、リーダライタ2の送信波を受信可能な範囲に位置していない。そのため、無線タグ1のメイン処理部145は、スリープモードとなっている(ステップS10)。
【0048】
コンテナ100が移動してコンテナローラ110上の位置Bに移動すると、無線タグ1は、リーダライタ2の送信波を受信可能な範囲に入る。そのため、非接触通信部11には、リーダライタ2の送信波を受信することにより電力が発生する。割り込み処理部141は、非接触通信部11に発生する電力量が所定のレベル以上となると(ステップS20のYes)、割り込み通知をメイン処理部145へ出力する(ステップS30)。
【0049】
メイン処理部145は、割り込み通知を入力すると通常モードへ移行する(ステップS40)。その後、メイン処理部145は、リーダライタ2の読み取り要求に応答して、リーダライタ2から表示書き換え要求を受信する(ステップS50)。メイン処理部145は、表示コントロール部143に表示部13の表示の書き換えを命令し、表示コントロール部143は、表示書き換え要求に含まれた表示データに基づいて表示部13を書き換える(ステップS60)。メイン処理部145は、表示書き換え要求の受信を完了すると、ローパワーモードへ移行する(ステップS70)。
【0050】
ここで、作業が一時中断するなどして、コンテナ100がコンテナローラ上の位置Bで停止し続ける場合を考える。この場合、無線タグ1は、リーダライタ2の送信波を受信可能な範囲に留まり続ける。そのため、リーダライタ2が継続的に送信する読み取り要求の送信波を受信し続けることになる。もし、メイン処理部145にローパワーモードが無く、通常モードからスリープモードへ移行したとすると、メイン処理部145は、再び割り込み処理部141から割り込み通知を受けて通常モードに移行してしまい、リーダライタに対して応答を返すという動作が繰り返されることになる。
【0051】
しかし、本実施形態の非接触型無線タグシステムでは、メイン処理部145は、ローパワーモードに移行する。メイン処理部145は、ローパワーモードにおいて、割り込み通知を受けたとしても通常モードへは移行しない。そのため、リーダライタ2との間で無駄な通信を繰り返すことが無く、電力の消費を抑えることができる。これにより、電池部12の電力消費も抑えられるため、電池の寿命を延ばす効果がある。
【0052】
図4のフローチャートに戻り、コンテナ100が移動してコンテナローラ110上の位置Cへ移動すると、無線タグ1は、リーダライタ2の送信波の受信可能範囲を外れる。これにより、非接触通信部11に発生する電力量が所定のレベル以上でなくなると、割り込み処理部141は、割り込み通知の出力を停止する。メイン処理部145は、一定時間に割り込み通知の入力を検出しないため(ステップS80のYes)、スリープモードへ移行する(ステップS90)。
【0053】
以上が、本実施形態における非接触型無線タグシステムの具体的な実施例の説明である。なお、上述の実施例に限らず、例えば、PC4に接続されたリーダライタ2の上に無線タグ1を置いたまま放置されてしまうような場合にも、同様の効果をえられる。
【0054】
本発明の非接触型無線タグシステムによれば、メイン処理部145は、通常モードにおいてリーダライタ2からの表示書き込み要求の受信を完了するとローパワーモードに移行する。メイン処理部145は、ローパワーモードにおいて、割り込み処理部141から非接触通信部11に発生する電力量が一定のレベル以上であることを通知する割り込み通知を受けたとしても通常モードへは移行しない。そのため、無線タグ1がリーダライタ2の送信波を継続的に受信し続けるような場合にも、リーダライタ2の要求に対する応答を送信するといった処理を繰り返すことが無く、電池部12の電力消費を抑えることができる。その結果、電池部12の寿命を延ばすという効果を得ることができる。
【0055】
なお、上述した実施形態では、無線タグ1が表示部13を備えて電池部12の電力を用いて表示部13の表示を書き換える場合を説明した。しかし、無線タグ1は、必ずしも表示部13を備えていなければならないわけではない。例えば、無線タグ1が表示部13を備えずに電池部12の電力をリーダライタ2との通信にのみ使用するような場合であっても、本発明を適用可能である。また、無線タグ1が電池部12の電力を使用する表示部13以外の構成を備える場合であっても同様である。
【0056】
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細は、本願発明の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0057】
1 非接触型無線タグ装置
2 非接触型無線読み取り/書き込み装置
3 コントローラ
4 パーソナルコンピュータ
11 非接触通信部
12 電池部
13 処理部
14 表示部
100 コンテナ
110 コンテナローラ
141 割り込み処理部
142 データ送受信部
143 表示コントロール部
144 電池監視部
145 メイン処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
前記表示部へ表示するべき表示データを含む受信データを送信装置から非接触通信により受信する処理部と、
前記処理部へ電力を供給する電池部と
を備え、
前記処理部は、第1の低消費電力モードにあるときに前記非接触通信の開始を検知すると通常モードに移行して前記非接触通信により前記受信データを受信して、前記通常モードにおいて前記非接触通信の完了を検知すると第2の低消費電力モードへ移行し、前記第2の低消費電力モードでは、前記非接触通信の開始要求の受信を検知しても前記通常モードへは移行せずに前記非接触通信の開始要求を一定時間検知しなかった場合に前記第1の低消費電力モードへ移行する
非接触型無線タグ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の非接触型無線タグ装置であって、
前記処理部は、前記通常モードにおいて前記表示部へ前記表示データを表示した後に前記第2の低消費電力モードへ移行する
非接触型無線タグ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の非接触型無線タグ装置であって、
前記処理部は、前記第2の低消費電力モードに移行した後に前記表示データを前記表示部へ表示する
非接触型無線タグ装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載の非接触型無線タグ装置であって、
前記処理部は、前記非接触通信を行うアンテナを具備した非接触通信部を備える
非接触型無線タグ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の非接触型無線タグ装置であって、
前記処理部は、
前記非接触通信部に発生する電力量が所定のレベル以上となると割り込み通知を出力する割り込み通知を出力する割り込み処理部と、
前記第1の低消費電力モードにあるときに前記割り込通知を検知して前記通常モードに移行して前記非接触通信により前記受信データを受信して、前記通常モードにおいて前記非接触通信の完了を検知すると前記第2の低消費電力モードへ移行し、前記第2の低消費電力モードでは、前記割り込み通知を検知しても前記通常モードへは移行せずに前記割り込み通知を一定時間検知しなかった場合に前記第1の低消費電力モードへ移行するメイン処理部と
をさらに備える非接触型無線タグ装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかに記載の非接触型無線タグ装置であって、
前記第2の低消費電力モードは、前記通常モードおり電力消費が少なく、前記第1の低消費電力モードより電力消費が多い
非接触型無線タグ装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかに記載の非接触型無線タグ装置であって、
前記電池は、前記非接触通信の電波の受信により発生する電力により充電される二次電池である
非接触型無線タグ装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれかに記載の非接触型無線タグ装置であって、
前記表示部は、電子ペーパーである
非接触型無線タグ装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8までのいずれかに記載の非接触型無線タグ装置を備えた非接触型無線タグシステム。
【請求項10】
表示部と、
前記表示部へ表示するべき表示データを含む受信データを送信装置から非接触通信により受信する処理部と、
前記処理部へ電力を供給する電池部と
を備える非接触型無線タグ装置の消費電力削減方法であって、
第1の低消費電力モードにあるときに前記非接触通信の開始を検知すると通常モードに移行するステップと、
前記通常モードにおいて前記非接触通信により前記受信データを受信するステップと、
前記通常モードにおいて前記非接触通信の完了を検知すると第2の低消費電力モードへ移行するステップと、
前記第2の低消費電力モードでは、前記非接触通信の開始要求の受信を検知しても前記通常モードへは移行せずに前記非接触通信の開始要求を一定時間検知しなかった場合に前記第1の低消費電力モードへ移行するステップと
を備える非接触型無線タグ装置の消費電力削減方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−32953(P2012−32953A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170971(P2010−170971)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(594057842)株式会社アイオイ・システム (7)
【Fターム(参考)】