説明

非接触式カードのスキミング防止装置

【課題】開閉手段の開閉によりICカードの読み取りを可又は不可にする。
【解決手段】非接触式ICカードのスキミング防止装置1であって、基板1aと、基板1a上に配置され、非接触式カード5と重ねたときにそのループアンテナ10を隠蔽できる形状を有するループ状の導電性部材2と、前記導電性部材2の両端間を開閉自在に接続する開閉手段3と、を有し、非接触式カード5と重ねたときに、前記開閉手段3の開閉に応じて前記非接触式カードリーダからの磁界を通過または相殺し、前記非接触式ICカード5とカードリーダとの通信を可又は不可にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非接触式カードのスキミング防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触式ICカードリーダの普及に伴い、多くの人がICカードを持ち歩いている。このような状況において、例えば、混雑したバス車内で走行中にICカードを偶然運賃箱のICカードリーダに近づけてしまうと、運賃が複数回引き落とされてしまうことがある。
そこで、このような不都合を防止するための工夫がなされているが、その1例として図7に示されたカードホルダが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
図6は、従来のスキミング防止装置の1例としてのカードホルダを示す模式図である。カード21は金属薄板とその表裏のラミネート加工された化粧板とから構成されてスキミング防止機能を持つようにされている。このカード21は常に非接触ICカード24とあわせて携帯して用いられる。
カードリーダ25が非接触ICカード24に記録されている情報を読み取ろうとするとき、つまり、非接触ICカード24がカードリーダ25が発生した磁界28を受けた時は、金属薄板に渦電流29が発生し、この渦電流29により発生する反磁界27がリーダ25からの磁界を打ち消し、非接触ICカード24が起動されないようになっている。
また、この非接触ICカード24をカードホルダに収容することにより、携帯時にはスキミングを防止することができる。
【0004】
しかしながら、このスキミング防止ホルダは、非接触ICカードを使用するときには、その都度ホルダから非接触ICカードを飛び出させ、カード単体にして読み取らせなければならない。
これでは、パスケースごとカードを読み取らせることができるという、非接触ICカードの大きな特長の一つを犠牲にすることになり、カード利用者に不便を強いることになる。
【特許文献1】特開2006−268883号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、非接触式カードを使用するときに、開閉手段を手動または自動で操作するだけで、非接触式カードの読み取りを可または不可(禁止)とすることができるようにし、非接触式カード読み取り時にカードをその都度収納ケースから取り出す必要をなくすことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は非接触式カードのスキミング防止装置であって、非接触式カードのスキミング防止装置であって、基板と、基板上に配置され、非接触式カードと重ねたときにそのループアンテナを隠蔽できる形状を有するループ状の導電性部材と、前記導電性部材の両端間を開閉自在に接続する開閉手段と、を有し、非接触式カードと重ねたときに、前記開閉手段の開閉に応じて非接触式カードリーダからの磁界を通過または相殺し、前記非接触式カードリーダとの通信を可又は不可にすることを特徴とする。
請求項2の発明は、請求項1に記載された非接触カードのスキミング防止装置において、前記開閉手段は、機械的又は電気的スイッチ手段であることを特徴とする。
請求項3の発明は、請求項1ないし2のいずれかに記載されたスキミング防止装置において、非接触カード関連情報を表示する表示手段を備えたことを特徴とする。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかに記載された非接触式カードのスキミング防止装置において、中に非接触式カードを挿入するケースと一体に形成したことを特徴とする。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載された非接触式カードのスキミング防止装置において、前記開閉手段の制御を行う制御部と、時刻を検出する時計手段と、前記開閉手段の制御を行う切替時間を設定する設定手段と、を有し、前記制御部は前記設定手段からの切替時間に応じて前記開閉手段の切替の制御を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
カードを使用するときは、開閉手段を操作するだけで非接触式カードの読み取りを可または不可にすることができ、非接触式カードの読み取りに際して、その都度非接触式カードを取り出す不便を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の実施形態に係るスキミング防止装置を図面を参照して説明する。
図1は、本スキミング防止装置の分解斜視図である。
図中、非接触式ICカード5は、非接触式ICカードリーダの送信アンテナコイル4から送信される高周波電力信号(交流磁界)を受信するループアンテナ10を有し、受信した高周波電力信号をその電力回路でICカード駆動電力に変換すると共に、受信データからICカードリーダに応答信号を発生する。
【0009】
従って、非接触式ICカード5を不用意にICカードリーダに近づけると、非接触式ICカード5は、ICカードリーダからの交流磁界に感応して、そのICカードリーダに対してデータを送信してしまう。そのため前述のように、例えば、ICカードリーダが運賃支払い機であると、近づけた非接触式ICカード5から運賃が徴収されることになる。
【0010】
そこで、本願発明は、非接触式ICカード5を不用意にICカードリーダに近づけても、非接触式ICカード5のデータが引き出されないように、常に非接触式ICカード5に重ねて配置しておき、ICカードリーダから上記交流磁界を受けたときに、この交流磁界に対する反磁界を発生させて、ICカードに対するICカードリーダの影響を打ち消すためのスキミング防止装置1を提供する。
【0011】
本実施形態に係るスキミング防止装置は、図示のように、絶縁材料でできた基板1a上に配置され、その両端が開放したループ状の導電性部材、例えば1巻きまたは複数巻きのコイル2から成り、その開放した端部同士を開閉手段3で開閉できるようにしている。
【0012】
スキミング防止装置1の開閉手段3を開いたときは、そのコイル2にはICカードリーダから上記交流磁界を受けても渦電流は流れないため、この状態にある非接触式ICカード5をICカードリーダに近づけると、非接触式ICカード5はICカードリーダと交信してデータの授受を行うことができる。
他方、開閉手段3を閉じたときは、閉じた導電性ループが形成される結果、ICカードリーダからの交流磁界によりコイル2に渦電流が流れ、この電流によりICカードリーダからの上記交流磁界とは逆向きの反磁界が生じる。そのため、非接触式ICカード5側(正確にはスキミング防止装置1の上下側)では磁界が互いに打ち消し合うため、非接触式ICカード5をICカードリーダに近づけても、非接触式ICカード5とICカードリーダとは交信を行うことはない。
ここで、ループコイル2は、ICカードリーダ側からみて、幅が広いと磁界を打ち消す効果が大きくなるため、幅が広いことが望ましい。
【0013】
次に、本実施形態のスキミング防止装置を用いて、非接触式ICカード5を使用する場合の処理について、図1を参照して説明する。
まず、スキミング防止装置1の開閉手段3を開放しておく。これにより磁界6の誘導起電力により、非接触式ICカード5のループアンテナ10に電流8が流れ、非接触式ICカード5はデータの送信等を行うことができる状態になる。
【0014】
これに対し、非接触式ICカード5を使用したくない、つまり不用意なアクセスやスキミングを防止したいときは、本スキミング防止装置1の開閉手段3を閉じておく。これにより、非接触式ICカード5をICカードリーダに近づけたとき、スキミング防止装置1にはICカードリーダからの磁界6の誘導起電力、即ち、ループコイル2及び開閉手段3を経由して周回する渦電流9が流れ、これにより磁界6を打ち消す方向の反磁界7が発生する。
つまり、磁界6と反磁界7とが互いに打ち消し合うことにより、非接触式ICカード5は著しく弱い磁界中に存在することなるため、その動作に必要な電力を得ることができず動作不能となる。したがって、不用意なアクセスやスキミングを防止することができる。
【0015】
このように、本スキミング防止装置1は、非接触式ICカード5と重ねて例えばパスケースに挿入しておくことで、その開閉手段3を開にした状態では、非接触式ICカード5をパスケースから抜き出すことなく、そのままICカードリーダにかざして電力の授受やデータの送信ができ、また、開閉手段3を閉にした状態では、ICカードリーダに接近しても非接触式ICカード5のデータがICカードリーダに読み取られることはない。
【0016】
図2は、パスケース20と一体に形成された本スキミング防止装置1を示し、図2Aはその斜視図、図2Bは断面図である。
図2Aに示すように、パスケース20は窓となる開口22を上面に設けた、底面側にはスキミング防止装置1が設けられている。スキミング防止装置1と窓22が設けられた表面との間に、非接触式ICカード5を挿入する挿入部24が設けられている。なお、非接触式ICカード5の30で示す部分は後述する表示手段である。また、図2Bに示すようにスキミング防止装置1はパスケース20と一体に形成されているが、必要に応じてパスケースと別体に形成することもできる。
上記非接触式ICカード5を使用するときは、非接触式ICカード5をICカードリーダにかざすことでデータの読み取りが行われる。
なお、ICカードリーダにかざす面は図示上記面に限らず、反対側の面であってもよい。
【0017】
次に、本実施形態のスキミング防止装置の他の配置構造について説明する。
図3は、本スキミング防止装置を斜め上からみた斜視図である。
本実施形態に係るスキミング防止装置は、複数のスキミング防止装置111〜116を同一面上に配置し、それぞれに対応する非接触式ICカード51〜56を配置して構成している。なお、各スキミング防止装置の基板を大きくして共用することもできる。
図示のように、ICカードリーダのアンテナ4は、非接触式ICカード51〜56に同時に磁界を与えるため、ICカードリーダと非接触式ICカード51〜56が対応していれば、複数の開閉手段3を同時に開くことにより、複数の非接触式ICカード51〜56を同時に使用することができる。開閉手段3は、手動以外に図示しない制御装置により開閉させることができる。
【0018】
次に、本願発明の第2の実施形態に係るスキミング防止装置と組み合わせた非接触カードについて説明する。
図4は、本願発明の第2の実施形態に係るスキミング防止装置と組み合わせた非接触カードを斜め上からみた斜視図である。
本実施形態においては、第1及び第2のスキミング防止装置1a、1bが、磁界を遮蔽する隔壁部となる磁性体11を挟んで配置されている。
非接触式ICカード5aは隔壁部11よりもスキミング防止装置1a側に、また、非接触式ICカード5bは隔壁部11よりもスキミング防止装置1b側にそれぞれ配置されている。
図5はパスケースを示し、図5Aはその斜視図であり、図5Bはその断面図である。パスケース20は、以上のような配置構成を持った非接触式ICカード5a、5bを内部に収納するようになっている。
なお、非接触式ICカード5a、5bをスキミング防止装置1a、1bと磁性体11の間に位置するように構成しても同様の効果がある。
【0019】
本実施形態によれば、カード利用者は、非接触ICカード5a及び5bのいずれのICカードも使用しなくないときは、開閉手段3a、3bの両方を閉じておく。また、非接触ICカード5aを使用したいときは、スキミング防止装置1aの開閉手段3aを開き、非接触ICカード5a側をICカードリーダのアンテナ4に対向させる。
非接触ICカード5bを使用したいときは、開閉手段3bを開くと共に、非接触ICカード5b側をICカードリーダのアンテナ4に対向させる。
このように、所望の一方のICカードをICリーダのアンテナ4に対応させると共に、そのカード側の開閉手段を開くことにより、カード利用者の目的とする一方のカードのみを使用可能にすることができる。
【0020】
さらに、スキミング防止装置1a、1bの開閉手段3a,3bは、制御手段による自動制御で開閉させてもよい。
図6は、スキミング防止装置1a、1bの開閉手段3a,3bを自動制御する制御手段のブロック図である。
制御手段は、開閉手段の制御を行う制御部40と、時刻を検出する時計手段を備えた時計部42と、前記開閉手段3a,3bのオン/オフさせる時間を設定する設定手段を備えた時刻設定部44と、電気スイッチ等で制御部40からの信号に基づき開閉手段3a,3bの切替を可能とする切替部46と、これらを駆動する電源である電池45で構成されており、制御部40は上記設定手段からの切替時間に応じて前記開閉手段3a,3bの切替の制御を行う。
上記制御手段は一定の規則に基づき、決められたカードのみを使用可能とすることができる。ここでいう一定の規則としては、図示しないICカードの検出手段または時計手段などにより前回使用したカードまたは前回利用からの経過時間または現在時刻などから導き出される情報に従ってカード使用の可否を決定する規則を定めておくことができる。
これによれば、利用者が開閉手段3a,3bを操作する手間を軽減させた上で、目的とする一方のカードのみを上記一定の規則、例えば所定の時間内だけ使用を許可することができる。
【0021】
さらに、非接触ICカード5a、5bのどちらの側が使用されたのかが容易に分かるように、非接触ICカード又は非接触ICカードを収納したケースに表示手段30を設け、この表示手段30で乗車中または、使用中等のカード使用状態を表示するように構成してもよく、また、磁気センサを設けて意図しない使用による磁界を検出した場合には、スキミング行為が試みられたとして、表示手段にその旨を表示すると共に、記憶手段にその旨を記憶するように構成してもよい。
ここで、非接触ICカードについて表示手段30に表示する情報を総称してカード関連情報という。
また、非接触ICカードの表示手段30は、例えば、液晶表示装置或いは有機EL(Electro-Luminescence)から成る表示装置であって、例えばICカード又はカードケースに設けた充電可能な二次電池や二重層コンデンサなどからなる電源によってCPUを作動し、記憶部に記憶された画像を読み出する共に表示制御部を制御して表示を行う。
【0022】
以上で説明したように、本スキミング防止装置1は、非接触ICカード5と近接して使用し、その形状をパスケース型にして、中にICカードを入れるように構成することができる。このように構成することにより非接触式ICカード5とスキミング防止装置1は常に一体にして使用することができる。
また、開閉手段3は機械スイッチに限らず、例えば半導体を応用した電気的スイッチであってもよい。また、スイッチは一カ所に限らない。また、本スキミング防止装置はリーダとICカード間に位置するようにしてもよいし、或いはリーダ、ICカード、スキミング防止装置の順に配置してもよい。
【0023】
非接触ICカード5のループアンテナ10の形状がその外形に対して非対称である場合、考えられるカード方向の全てを包含し、それを遮蔽するループコイル形状にすることが好ましい。
なお、開閉手段3は、必ずしも完全にオン・オフする必要はなく、非接触ICカード5を動作不能にできる程度の反磁界が発生可能であればオン抵抗を持ってもよい。また、非接触ICカード5が動作不能とならない程度であれば、反磁界が発生してしまうオフ抵抗を持ってもよい。
さらに、ループコイル2は、非接触ICカード5のループアンテナ10を完全に遮蔽する形状を持つのが理想であるが、非接触ICカード5が動作に至らない電流が流れる程度であれば、開閉手段3のため分断された部分など、ループアンテナ10を完全には遮蔽できない形状であってもよい。
したがって、本願発明において開または閉というときは、非接触ICカードが実質的に動作可又は動作不可の状態であればよく、必ずしも全開又は前閉であることを要しない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本スキミング防止装置の分解斜視図である。
【図2】パスケースと一体に形成された本スキミング防止装置を示し、図2Aはその斜視図、図2Bは断面図である。
【図3】本実施形態のスキミング防止装置を斜め上からみた斜視図である。
【図4】本願発明の第2の実施形態に係るスキミング防止機能付きICカードを斜め上からみた斜視図である。
【図5】パスケースを示し、図5Aはその斜視図であり、図5Bはその断面図である。
【図6】スキミング防止装置の開閉手段を自動制御する制御手段のブロック図である。
【図7】従来のスキミング防止装置の1例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0025】
1(1a、1b)、111〜116・・・スキミング防止装置、3・・・開閉手段、4・・・送信アンテナコイル(ICカードリーダ)、5(5a、5b)、51〜56・・・非接触式ICカード、10・・・ループ状アンテナ(ICカード)、11・・・隔壁部(磁性体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触式カードのスキミング防止装置であって、
基板と、基板上に配置され、非接触式カードと重ねたときにそのループアンテナを隠蔽できる形状を有するループ状の導電性部材と、
前記導電性部材の両端間を開閉自在に接続する開閉手段と、を有し、
非接触式カードと重ねたときに、前記開閉手段の開閉に応じて非接触式カードリーダからの磁界を通過または相殺し、前記非接触式カードリーダとの通信を可又は不可にすることを特徴とする非接触式カードのスキミング防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載された非接触カードのスキミング防止装置において、
前記開閉手段は、機械的又は電気的スイッチ手段であることを特徴とする非接触式カードのスキミング防止装置。
【請求項3】
請求項1ないし2のいずれかに記載されたスキミング防止装置において、
非接触カード関連情報を表示する表示手段を備えたことを特徴とする非接触式カードのスキミング防止装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載された非接触式カードのスキミング防止装置において、
中に非接触式カードを挿入するケースと一体に形成したことを特徴とする非接触式カードのスキミング防止装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載された非接触式カードのスキミング防止装置において、
前記開閉手段の制御を行う制御部と、
時刻を検出する時計手段と、
前記開閉手段の制御を行う切替時間を設定する設定手段と、
を有し、
前記制御部は前記設定手段からの切替時間に応じて前記開閉手段の切替の制御を行うことを特徴とする非接触式カードのスキミング防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−245142(P2009−245142A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−90658(P2008−90658)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】