説明

非接触式探傷検査装置

【課題】被検部位に供給する物質が充填された複数のタンクに対し、各タンクに適切な被検部位に物質を供給するチューブを正確に接続することのできる構成を有する非接触式探傷検査装置を提供する。
【解決手段】ガイドチューブ10と、ガイドチューブ10内に挿通されるとともに、一端がガイドチューブ10の先端側においてそれぞれ開口され他端がガイドチューブ10の基端側からそれぞれ延出された、一端の開口から被検部位に液体と気体と固体との少なくとも1つを供給する複数本の供給チューブ58b〜58dと、複数本の供給チューブ58b〜58d毎に、それぞれ継手57b〜57dを介して1つずつ接続された、液体と気体と固体とのいずれかが充填された複数のタンク59b〜59dと、複数のタンク59b〜59dにそれぞれ接続される供給チューブ58b〜58dを識別させる識別部と、を具備していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検部位の傷を非接触にて検査する非接触式探傷検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
化学プラントや発電プラント等の配管や、ジェットエンジンの内部の検査を、非接触で行うことのできる液体浸透探傷検査装置等の非接触式探傷検査装置が周知であり、広く検査に用いられている。
【0003】
液体浸透探傷検査装置は、周知のように、被検部位に蛍光染料等が含有された浸透液を供給して被検部位の傷内部に浸透液を浸透させた後、被検部位に洗浄液を供給して傷内部に浸透した浸透液以外の浸透液を除去し、さらに被検部位に現像液を供給することにより、傷表面に蛍光塗料を浮かび上がらせ、最後に暗所にて、被検部位に紫外線(UV光)を照射することにより、蛍光塗料から傷を蛍光観察することのできる装置であり、例えば特許文献1に開示されている。
【0004】
特許文献1には、内視鏡を被検部位へと案内するロッドの内部に、内視鏡の他、浸透液を供給する用のチューブや、洗浄液を供給する用のチューブや、現像液を供給する用のチューブ等の各種液体を被検部位に供給する複数のチューブや、被検部位にエアを供給するチューブが挿通された構成を有する液体浸透探傷検査装置が開示されている。
【0005】
尚、各チューブの先端部位は、ロッドの先端側に固定されているとともに、ロッドの先端側において被検部位に各種液体またはエアを供給できるよう開口されている。また、各チューブの基端部位は、ロッドの基端側から延出されて、浸透液供給用のチューブは、浸透液が充填されたタンクに接続され、洗浄液供給用のチューブは、洗浄液が充填されたタンクに接続され、現像液供給用のチューブは、現像液が充填されたタンクに接続され、エア供給用のチューブは、コンプレッサに接続されている。
【0006】
さらに、各タンク内に充填された各種液体は、各タンクに接続されたコンプレッサから送気されたエアによってタンクから押し出されることにより、各チューブを介して被検部位に供給される構成を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−31665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、各種液体が充填されたタンクは、コスト削減を図るため、全て同じものが用いられるのが一般的である。例えば、浸透液が充填されたタンクと、洗浄液が充填されたタンクと、現像液が充填されたタンクとは、充填される液体が異なるのみで、全て同じ形状、材質のタンクが用いられるのが一般的である。
【0009】
また、各種タンクに接続されるチューブも、コスト削減を図るため、全て同じ形状、材質のものが用いられるのが一般的である。例えば、浸透液が充填されたタンクに接続されるチューブと、洗浄液が充填されたタンクに接続されるチューブと、現像液が充填されたタンクに接続されるチューブとは、全て同じ形状、材質のチューブが用いられるのが一般的である。
【0010】
しかしながら、各種タンクに対するチューブの接続は、作業者により行われるため、例えば、浸透液が充填されたタンクに、洗浄液供給用のチューブまたは現像液供給用のチューブが接続されてしまう、洗浄液が充填されたタンクに、浸透液供給用のチューブまたは現像液供給用のチューブが接続されてしまう、現像液が充填されたタンクに、洗浄液供給用のチューブまたは浸透液供給用のチューブが誤って接続されてしまう場合があった。尚、各タンクに対するチューブの接続は、タンク、チューブを洗浄する毎に行われるため、誤接続の機会が多くなっていた。
【0011】
その結果、例えば作業者が被検部位に浸透液を供給しようと、被検部位に対して浸透液供給チューブの先端開口を正対させたにも関わらず、他の供給チューブの先端開口から浸透液が吐出されてしまい、被検部位に正確に浸透液が供給できないといった問題がある。
【0012】
また、各供給チューブの先端には、通常、液体の供給方向、供給量、供給速度を規定するノズルが装着されているが、装着されるノズルは、供給チューブ毎に異なっている場合がある。即ち、供給速度が速くなるよう先端が絞られているノズルや、供給範囲を広げるため先端が広げられているノズルや、霧状に噴霧する用のノズル等が、それぞれ各供給チューブの先端に装着されている。よって、例えば先端が絞られているノズルを用いて洗浄液を、供給速度を速めて被検部位に供給したい場合であっても、他のノズルから洗浄液が吐出されてしまうと、洗浄液が霧状または広範囲に吐出されてしまう場合があった。
【0013】
以上から、各タンクに対し適切な供給チューブを正確に接続することのできる構成が望まれていた。尚、被検部位に供給する供給物質は、液体に限らず、タンクから粉等の固体または気体を、供給チューブを介して供給する場合もあり、この場合であっても同様であった。また、液体浸透探傷検査装置に限らず、既知の磁粉探傷検査装置等の他の非接触式探傷検査装置であっても同様である。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、被検部位に供給する物質が充填された複数のタンクに対し、各タンクに適切な被検部位に物質を供給するチューブを正確に接続することのできる構成を有する非接触式探傷検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために本発明による非接触式探傷検査装置は、被検部位の傷を非接触にて検査する非接触式探傷検査装置であって、ガイドチューブと、前記ガイドチューブ内に挿通されるとともに、一端が前記ガイドチューブの先端側においてそれぞれ開口され他端が前記ガイドチューブの基端側からそれぞれ延出された、前記一端の開口から前記被検部位に液体と気体と固体との少なくとも1つを供給する複数本の供給チューブと、前記複数本の供給チューブ毎に、それぞれ継手を介して1つずつ接続された、前記液体と前記気体と前記固体とのいずれかが充填された複数のタンクと、複数の前記タンクにそれぞれ接続される前記供給チューブを識別させる識別部と、を具備していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、被検部位に供給する物質が充填された複数のタンクに対し、各タンクに適切な被検部位に物質を供給するチューブを正確に接続することのできる構成を有する非接触式探傷検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態の液体浸透探傷検査装置の構成の概略を示す図
【図2】図1のガイドチューブ及び内視鏡の挿入部の先端を、図1中のII方向からみた正面図
【図3】図1の各タンク、各継手、各供給チューブからなるセット毎に、識別部が設けられた状態を概略的に示す図
【図4】図1のガイドチューブの先端から、内視鏡の挿入部の先端側が突出している状態を概略的に示す部分斜視図
【図5】図4の内視鏡の挿入部の先端側が、ガイドチューブ内に引き込まれた状態を概略的に示す部分斜視図
【図6】図1のガイドチューブの先端側の口金に対し、供給チューブの一端の開口と連通するよう、ノズルが着脱自在な状態を概略的かつ部分的に示す図
【図7】供給チューブ、継手、タンクからなるセット毎に異なる識別部を、指標から構成した変形例を示す図
【図8】供給チューブ、継手、タンクからなるセット毎に異なる識別部を、継手のコネクタ形状を可変することにより構成した変形例を示す図
【図9】ガイドチューブの先端口金の先端面に、内視鏡の挿入部の挿通孔の先端開口に向けてガイドチューブの径方向の外側から傾斜する面を設けた変形例を示す図
【図10】被検部位の傷に対し、自動的に、各種液体及びエアを供給する液体浸透探傷検査装置の構成の概略を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。尚、以下に示す実施の形態においては、非接触式探傷検査装置は、液体浸透探傷検査装置を例に挙げて説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態の液体浸透探傷検査装置の構成の概略を示す図、図2は、図1のガイドチューブ及び内視鏡の挿入部の先端を、図1中のII方向からみた正面図、図3は、図1の各タンク、各継手、各供給チューブからなるセット毎に、識別部が設けられた状態を概略的に示す図である。
【0020】
また、図4は、図1のガイドチューブの先端から、内視鏡の挿入部の先端側が突出している状態を概略的に示す部分斜視図、図5は、図4の内視鏡の挿入部の先端側が、ガイドチューブ内に引き込まれた状態を概略的に示す部分斜視図、図6は、図1のガイドチューブの先端側の口金に対し、供給チューブの一端の開口と連通するよう、ノズルが着脱自在な状態を概略的かつ部分的に示す図である。
【0021】
図1に示すように、液体浸透探傷検査装置100は、ガイドチューブ10を具備しており、該ガイドチューブ10内に、内視鏡1の挿入部2と、複数の供給チューブ58a〜58dと、光供給ラインであるUV光ライトガイド6kとが挿通されている。
【0022】
ガイドチューブ10は、先端口金11と、後端口金13と、先端口金11と後端口金13との間に設けられた網管部12とにより主要部が構成されている。尚、ガイドチューブ10は、硬質なものであっても軟性なものであってもどちらであっても構わない。
【0023】
先端口金11及び後端口金13に、ガイドチューブ10の挿入方向Sに沿って、内視鏡1の挿入部2が挿通される挿通孔10h(後端口金13に形成された挿通孔10hは図示せず)や、複数の供給チューブ58a〜58dがそれぞれ別途に挿通される図示しない4つの挿通孔が形成されている。尚、先端口金11及び後端口金13に形成された供給チューブが挿通される挿通孔の数は、供給チューブの本数に合わせて形成されている。
【0024】
また、後端口金13に、1本のUV光ライトガイド6kが挿通される図示しない1つの挿通孔が形成されているとともに、先端口金11に、1本のUV光ライトガイド6kから4本に分岐した4本のUV光ライトガイド6kが挿通される図示しない4つの挿通孔が形成されている。さらに、網管部12は、内部に空間を有して形成されている。
【0025】
尚、複数の供給チューブ58a〜58dは、後端口金13に形成された図示しない4つの挿通孔にそれぞれ挿通された後、後端口金13の各挿通孔に固定され、網管部12内の空間において、結束バンドや糸等によってまとめられた後、先端口金11に形成された図示しない4つの挿通孔にそれぞれ1本ずつ挿通されて、先端口金11の各挿通孔に固定されている。
【0026】
また、複数の供給チューブ58a〜58dの各先端が固定された先端口金11の各挿通孔の内周面には、図6に示すようにネジ孔11nがそれぞれ形成されており、該各ネジ孔11nに、被検部位の傷へと供給される、液体と気体と固体との少なくとも1つからなる供給物質の供給方向、供給量、供給速度を規定するノズル8a〜8dのネジ8an〜8dn(8bn、8cn、8dnは不図示)がそれぞれ螺合自在となっている。このことにより、各チューブ58a〜58dの一端側の開口に、ノズル8a〜8dが着脱自在となっている。また、各供給チューブの一端側の開口には、複数種類のノズルが着脱自在となっている。
【0027】
具体的には、各供給チューブ58a〜58dの一端側の開口に、被検部位の傷に対して供給される供給物質の供給速度を速めることができる流路の先端側が絞られたノズルや、供給物質の供給範囲を広げることができる流路の先端側が広げられたノズルや、液体を霧状に吐出することのできるノズル等、様々なノズルが、作業者によって任意に着脱自在となっている。
【0028】
尚、装着後、ノズル8a〜8dは、図1に示すように、先端口金11の先端面11sから、挿入方向Sの先端側(以下、単に先端側と称す)に突出して設けられるとともに、図1、図2に示すように、挿通孔10hを囲むように、例えば等間隔で設けられる。
【0029】
また、図2に示すように、先端口金11の先端面11sにおいて、挿通孔10hを囲む、ノズル8aとノズル8bとに挟まれた位置、ノズル8bとノズル8dとに挟まれた位置、ノズル8dとノズル8cとに挟まれた位置、ノズル8cとノズル8aとに挟まれた位置に、UV光照射窓7がそれぞれ設けられている。
【0030】
各UV光照射窓7は、先端口金11の図示しない4つの挿通孔内にそれぞれ挿通された4本のUV光ライトガイド6kの先端にそれぞれ対向するよう位置している。各UV光照射窓7は、各UV光ライトガイド6kを介して伝達されたUV光を、被検部位の傷に照射する機能を有している。
【0031】
内視鏡1の挿入部2内に、可視光光源装置5から延出された可視光用ライトガイド5kが挿通されている。可視光用ライトガイド5kは、可視光光源装置5から供給された可視光を、先端側から被検部位へと照射するものである。作業者は、挿入部2の先端から可視光を被検部位に照射しながら被検部位の観察を行う。
【0032】
尚、可視光用ライトガイド5kと上述したUV光ライトガイド6kとの少なくとも一方、及び可視光光源装置5と後述するUV光光源装置6との少なくとも一方は、先端口金11の先端面11sに、可視光またはUV光を照射するLED等を設けることで不要にすることができる。この場合、LEDに電源を供給する装置と、LEDに電源を伝達するケーブルを用意し、該ケーブルを、ガイドチューブ10内に挿通して、LEDに電気的に接続する構成であれば良い。
【0033】
ガイドチューブ10の後端口金13から、複数の供給チューブ58a〜58dが延出されているとともに、UV光ライトガイド6kが延出されている。
【0034】
UV光ライトガイド6kの他端は、UV光光源装置6に接続されている。また、供給チューブ58aの他端は、分岐マニホールド53に接続されている。尚、供給チューブ58aの他端側には、分岐マニホールド53側から順に、圧力調整弁54a、開閉弁57aが介在されている。
【0035】
供給チューブ58bの他端側には、開閉弁57bが介在されており、供給チューブ58bの他端は、継手59bを介して、例えば現像液Dが充填されたタンク56bに接続されている。
【0036】
また、供給チューブ58cの他端側には、開閉弁57cが介在されており、供給チューブ58cの他端は、継手59cを介して、例えば洗浄液Cが充填されたタンク56cに接続されている。
【0037】
さらに、供給チューブ58dの他端側には、開閉弁57dが介在されており、供給チューブ58dの他端は、継手59dを介して、例えば浸透液Iが充填されたタンク56dに接続されている。
【0038】
尚、本実施の形態においては、各タンク内には、液体が貯留されている例を挙げて示しているが、被検部位への供給物質の用途に応じて、粉末等の固体や気体が貯留されていても構わない。
【0039】
この際、図3に示すように、供給チューブ58b、継手59b、タンク56bの外表面は、識別部を構成する、例えば紫色に着色されており、供給チューブ58c、継手59c、タンク56cの外表面は、識別部を構成する、例えば青色に着色されており、供給チューブ58d、継手59d、タンク56dの外表面は、識別部を構成する、例えば赤色に着色されている。即ち、供給チューブ、継手、タンクのセット毎に、外表面が違う色に着色されている。
【0040】
尚、色は、各タンク内に貯留された液体の色に合わせて設定されていると、作業者が直感的に供給チューブ内を流れる液体を識別できるため好ましいが、タンク内に貯留された液体の色と異なっていても構わないし、セット毎に異なれば、色はどんな色であっても構わない。
【0041】
このことから、作業者は、同色の部材同士を接続すれば良いことから、誤って、紫色の供給チューブ58bを、紫色の継手59b以外の青色の継手59c、赤色の継手59dを介して、青色のタンク56cや赤色のタンク56dに接続してしまうことがない。
【0042】
また、青色の供給チューブ58cを、青色の継手59c以外の紫色の継手59b、赤色の継手59dを介して、紫色のタンク56bや赤色のタンク56dに接続してしまうことがない。
【0043】
さらに、赤色の供給チューブ58dを、赤色の継手59d以外の紫色の継手59b、青色の継手59cを介して、紫色のタンク56bや青色のタンク56cに接続してしまうことがない。即ち、作業者に、各タンクに接続される適切な接続チューブを、色から容易に識別させることができる。
【0044】
タンク56bは、圧力調整弁54bが介在された接続管55bを介して、分岐マニホールド53に接続されており、タンク56cは、圧力調整弁54cが介在された接続管55cを介して、分岐マニホールド53に接続されており、タンク56dは、圧力調整弁54dが介在された接続管55dを介して、分岐マニホールド53に接続されている。
【0045】
分岐マニホールド53は、開閉弁51が介在された連結管52を介して、コンプレッサ50に接続されており、コンプレッサ50から送気されたエアAを、供給チューブ58aと、接続管55b〜55dとに分けて供給する機能を有している。
【0046】
尚、供給チューブ58a、接続管55b〜55dへのエアAの供給量は、圧力調整弁54a〜54dによって、それぞれ、ノズル8a〜8dの形状や各タンク56b〜56d内に貯留された液体の粘度によって、予め規定されている。
【0047】
よって、開閉弁57aが開成されると、エアAは、供給チューブ58aを介して、ノズル8aから被検部位の傷へと供給される。尚、エアAは、被検部位の傷に浸透液Iを供給するに先立って、傷付近の塵埃を吹き飛ばすために用いられる他、浸透液I、洗浄液C、現像液Dの供給後に傷付近に残留する各種液体を吹き飛ばす等に用いられる。
【0048】
また、開閉弁57dが開成されると、エアAの供給により、タンク56d内の浸透液Iがタンク56dから押し出され、浸透液Iは、供給チューブ58dを介して、ノズル8dから被検部位の傷へと供給される。
【0049】
さらに、開閉弁57cが開成されると、エアAの供給により、タンク56c内の洗浄液Cがタンク56cから押し出され、洗浄液Cは、供給チューブ58cを介して、ノズル8cから被検部位の傷へと供給される。
【0050】
また、開閉弁57bが開成されると、エアAの供給により、タンク56b内の現像液Dがタンク56bから押し出され、現像液Dは、供給チューブ58bを介して、ノズル8bから被検部位の傷へと供給される。
【0051】
尚、探傷検査を行う際は、作業者は、開閉弁を、57a、57d、57c、57bの順に各開閉弁57a〜57dをそれぞれ所定時間開閉させることによって、エアA、浸透液I(場合によって、その後エアA)、洗浄液C(場合によって、その後エアA)、現像液D(場合によって、その後エアA)の順番に、供給物質を被検部位の傷へと供給する。
【0052】
また、各種液体を被検部位へと供給する際は、図1に示す内視鏡挿抜装置15を用いて、作業者は、図4に示すように、挿入部2の先端部2s及び湾曲部2wが先端面11sから前方に突出した状態から、先端部2sに設けられた図示しない対物レンズ及び可視光照射窓に、液体が触れないよう、図5に示すように、挿入部2の先端部2s及び湾曲部2wを、挿通孔10hの内部に引きこむ。このことにより、挿入部2に液体が接触してしまうことがないため、鮮明な内視鏡観察が可能となる。
【0053】
内視鏡挿抜装置15は、ガイドチューブ10に対し、挿通孔10h及び網管部12内の空間に挿通された挿入部2の相対位置を可変させるものである。尚、該相対位置の可変は、内視鏡挿抜装置15を用いなくとも、ガイドチューブ10の後端口金13を把持して挿入部2に対してガイドチューブ10の位置を可変させることにより行っても構わない。
【0054】
被検部位の傷に、浸透液I、洗浄液C、現像液Dが、それぞれ供給された後、作業者は、図1に示す内視鏡挿抜装置15を用いて挿入部2のみをガイドチューブ10よりも先端側に押し出すか、ガイドチューブ10のみを挿入部2に対して挿入方向Sの後端側(以下、単に後端側と称す)に移動させることにより、図4に示すように、挿通孔10hの先端側から、挿入部2の先端部2s及び湾曲部2wを突出させる。その結果、湾曲部2wが突出するため、湾曲部2wの湾曲動作が可能となることから、内視鏡1の観察範囲が広くなる。
【0055】
この状態で、挿入部2からの可視光の供給をやめ、被検部位を暗所にした状態で、UV光照射窓7から、UV光光源装置6からUV光ライトガイド6kを介して伝達されたUV光が被検部位の傷に照射され、浸透液Iの供給によって傷に浸透し、現像液Dの供給により傷表面に浮かび上がった蛍光剤の反射を、内視鏡1を用いて観察することにより、作業者は、探傷検査を行う。
【0056】
このように、本実施の形態においては、供給チューブ58b、継手59b、タンク56bの外表面は、識別部を構成する紫色に着色されており、供給チューブ58c、継手59c、タンク56cの外表面は、識別部を構成する青色に着色されており、供給チューブ58d、継手59d、タンク56dの外表面は、識別部を構成する赤色に着色されている、即ち、供給チューブ、継手、タンクのセット毎に違う色が着色されていると示した。
【0057】
このことによれば、作業者は同色の部材同士を接続すれば正確に接続できることから、誤って、供給チューブ58b〜58dを、間違ったタンクに接続してしまうことがない。即ち、作業者に、各タンクに接続される適切な接続チューブを、色から容易に識別させることができる。
【0058】
このため、例えば、被検部位の傷に洗浄液Cを供給しようと、ノズル8cを傷に正対させ、開閉弁57cを開成したにも関わらず、他のノズル8b、8dから洗浄液Cが吐出され、傷に洗浄液Cが正確に供給できなくなってしまうことを防ぐことができる。尚、このことは、浸透液I、現像液Dであっても同様である。
【0059】
また、例えばノズル8cが、先端側の流路が絞られた液体の供給速度を速める形状のノズルであり、例えばノズル8bが、霧状のノズルの場合、本来ノズル8cから供給速度が速められて吐出されるはずの洗浄液Cがノズル8bから霧状に吐出されてしまい、傷に適切に洗浄液Cが供給されなくなってしまうことを防ぐことができる。
【0060】
以上から、被検部位に供給する物質が充填された複数のタンクに対し、各タンクに適切な被検部位に物質を供給するチューブを正確に接続することのできる構成を有する液体浸透探傷検査装置を提供することができる。
【0061】
尚、以下、変形例を、図7、図8を用いて示す。図7は、供給チューブ、継手、タンクからなるセット毎に異なる識別部を、指標から構成した変形例を示す図、図8は、供給チューブ、継手、タンクからなるセット毎に異なる識別部を、継手のコネクタ形状を可変することにより構成した変形例を示す図である。
【0062】
上述した本実施の形態においては、各タンクに接続される適切な接続チューブを、作業者に容易に識別させる識別部を、色から構成すると示した。例えば、供給チューブ58b、継手59b、タンク56bを紫色に着色し、供給チューブ58c、継手59c、タンク56cを青色に着色し、供給チューブ58d、継手59d、タンク56dを赤色に着色することにより、同色の部材同士を接続することによって、タンクに対する供給チューブの接続間違いを防ぐと示した。
【0063】
これに限らず、図7に示すように、識別部は、供給チューブ、継手、タンクからなるセット毎に異なる○、△、×等の指標であっても構わない。尚、指標としては、これらに限らず、文字と記号と印と標章と図案との少なくとも1つから構成されたものが挙げられる。
【0064】
さらに、図8に示すように、識別部は、各タンク56b〜56dに接続される各継手59b〜59dのコネクタ形状を、継手毎に異ならせることにより構成されていても構わない。
【0065】
例えば、継手59bのコネクタ59btの形状を三角状とし、該コネクタ59btが装着されるタンク56bの受け部56bhの形状を、コネクタ59btが嵌合する形状とする。
【0066】
また、継手59cのコネクタ59ctの形状を矩形状とし、該コネクタ59ctが装着されるタンク56cの受け部56chの形状を、コネクタ59btが嵌合する形状とする。
【0067】
さらに、継手59dのコネクタ59dtの形状を半円状とし、該コネクタ59dtが装着されるタンク56dの受け部56dhの形状を、コネクタ59dtが嵌合する形状とする。
【0068】
このことによれば、例えば継手59bのコネクタ59btを、タンク56dの受け部56dhに装着しようとしても、コネクタと受け部の形状が異なるため、装着することができないことから、作業者は、継手59bのコネクタ59btを、確実に、タンク56bの受け部56bhに装着することができる。その結果、タンクに対し、適切な継手、即ちチューブを正確に接続することができる。尚、継手のコネクタの形状は、上述したものに限定されない。
【0069】
また、図7、図8に示した構成に限らず、その他のタンクに対する供給チューブの接続を認識させる構成としては、例えば、継手内に電子チップを設け、継手内を流れる物質の抵抗値から、タンクに対し適切な供給チューブが接続されているかを電気的に識別する構成が考えられる。
【0070】
尚、以下、さらに別の変形例を、図9を用いて示す。図9は、ガイドチューブの先端口金の先端面に、内視鏡の挿入部の挿通孔の先端開口に向けてガイドチューブの径方向の外側から傾斜する面を設けた変形例を示す図である。
【0071】
図9に示すように、ガイドチューブ10の先端口金11の先端面11sに、内視鏡1の挿入部2の挿通孔10hの先端開口に向けてガイドチューブ10の径方向の外側から傾斜する面11kを設けるとともに、傾斜面11kに、各供給チューブの一端側が開口される、または該開口に装着されたノズルが設けられている構成であっても構わない。この場合、内視鏡1の挿入部2は、初めから挿通孔10h内に位置している。
【0072】
このことによれば、被検部位の傷に各種液体を供給する際、内視鏡1の挿入部2を、ガイドチューブ10に対して、挿通孔10h内に引っ込める作業を行わなくても、各供給チューブの一端側の開口または各ノズルから吐出される液体が、内視鏡1に接触してしまうことを防ぐことができる。また、この構成によれば、内視鏡1の挿入部2の先端部2sに設けられた図示しない対物レンズの結像位置に位置する傷に対し、効率よく各種液体を集中して供給することができる。
【0073】
尚、この構成であっても、液体の供給後、内視鏡観察を行うため、内視鏡1の挿入部2を先端口金11よりも先端側に押し出すことは可能である。
【0074】
また、以下、別の変形例を、図10を用いて示す。図10は、被検部位の傷に対し、自動的に、各種液体及びエアを供給する液体浸透探傷検査装置の構成の概略を示す図である。
【0075】
上述した本実施の形態においては、作業者が、開閉弁57a〜57dの開閉を行うとともに、ガイドチューブ10に対して挿入部2を相対的に移動させると示したが、これらを自動的に行っても構わない。
【0076】
具体的には、図10に示すように、液体浸透探傷検査装置100に、図1に示す構成に加え、制御回路70が設けられているとともに、ガイドチューブ10に、挿入部2の進退検出スイッチ71が設けられている。
【0077】
制御回路70は、進退検出スイッチ71から挿入部2の位置を検出してガイドチューブ10に対する挿入部2の進退を行うとともに、各開閉弁57a〜57dの開閉動作を行う。
【0078】
このような構成によれば、制御回路70は、先ず、進退検出スイッチ71から挿入部2の位置を検出して、図4に示す、挿通孔10hから挿入部2が先端側に突出している場合は、図5に示すように、挿入部2を挿通孔10h内に引き込む制御を行う。
【0079】
その後、開閉弁57aを開成して、被検部位の傷にエアAを供給し、次いで、開閉弁57aを閉成するとともに開閉弁57dを開成して、被検部位の傷に浸透液Iを供給する。
【0080】
次いで、開閉弁57dを閉成するとともに開閉弁57cを開成して、被検部位の傷に洗浄液Cを供給し、最後に、開閉弁57cを閉成するとともに開閉弁57bを開成して、被検部位の傷に現像液Dを供給する一連の動作を、自動的に行うことができる。
【0081】
尚、このような構成は、ラインを流れる同一形状を有する複数の検査対象部材に対して液体浸透探傷検査を行う場合、特に有効で、効率良く探傷検査を行うことができる。
【0082】
さらに、本実施の形態においては、図1に示すように、ガイドチューブ10には、直視型の内視鏡1の挿入部2が挿通されていると示したが、これに限らず、側視型の内視鏡1の挿入部2が挿通されていても構わない。
【0083】
この場合、先端口金11の側面に、UV光照射窓7が設けられる他、挿通孔10hが開口され、さらに、各供給チューブ58a〜58dの一端側も開口され、該開口に各種ノズル8a〜8dが装着されることとなる。
【0084】
また、本実施の形態においては、ガイドチューブ10の内部には、内視鏡1の挿入部2の他、浸透液Iの供給用のチューブ58dや、洗浄液Cの供給用のチューブ58cや、現像液Dの供給用のチューブ58bや、エアAの供給用のチューブ58aが挿通されている他、UV光ライトガイド6kが挿通されていると示した。
【0085】
これに限らず、例えば被検部位の傷の近傍に付着した汚れを落とすために被検部位に水を供給する用のチューブや、被検部位の傷の近傍の汚れを取り除くための吸引用のチューブ等、他のチューブが挿通されていても構わない。
【0086】
また、本実施の形態においては、被検部位の傷に対し、浸透液、洗浄液、現像液を供給した後、UV光を照射して傷の観察を行うと示したが、これに限らず、被検部位の傷に可視光を供給して傷の観察を行っても構わない。
【0087】
具体的には、挿入部2の先端部2s内に設けられる撮像素子のゲインを、特定の色に反応するようにしておき、被検部位に可視光を供給して、撮像素子で受光した被検部位の像に対して、被検部位の傷から浮かび上がった浸透液の色を画像処理補正で強調することにより傷の観察を行っても構わない。このことによれば、暗所で観察を行う必要がなくなることから、容易に探傷検査を行うことができる。
【0088】
さらに、本実施の形態においては、非接触式探傷検査装置は、液体浸透探傷検査装置を例に挙げて説明したが、これに限らず、既知の磁粉探傷検査装置等、他の非接触式探傷検査装置であっても適用可能であるということは勿論である。また、上述した実施の形態においては、ガイドチューブに挿通したライトガイドやガイドチューブに設けたLED等を可視光用やUV光用と使い分ける例で説明したが、これに限られるものではなく、内視鏡装置自体の光源による被検部位観察時の光量が不足している場合の補助光として併用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…内視鏡
2…挿入部
6k…UV光ライトガイド(光供給ライン)
8a…ノズル
8b…ノズル
8c…ノズル
8d…ノズル
10…ガイドチューブ
56b…タンク
56c…タンク
56d…タンク
58b…供給チューブ
58c…供給チューブ
58d…供給チューブ
59b…継手
59bt…継手のコネクタ
59c…継手
59ct…継手のコネクタ
59d…継手
59dt…継手のコネクタ
100…液体浸透探傷検査装置(非接触式探傷検査装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検部位の傷を非接触にて検査する非接触式探傷検査装置であって、
ガイドチューブと、
前記ガイドチューブ内に挿通されるとともに、一端が前記ガイドチューブの先端側においてそれぞれ開口され他端が前記ガイドチューブの基端側からそれぞれ延出された、前記一端の開口から前記被検部位に液体と気体と固体との少なくとも1つを供給する複数本の供給チューブと、
前記複数本の供給チューブ毎に、それぞれ継手を介して1つずつ接続された、前記液体と前記気体と前記固体とのいずれかが充填された複数のタンクと、
複数の前記タンクにそれぞれ接続される前記供給チューブを識別させる識別部と、
を具備していることを特徴とする非接触式探傷検査装置。
【請求項2】
前記ガイドチューブ内に、前記被検部位を観察する内視鏡の挿入部がさらに挿通されていることを特徴とする請求項1に記載の非接触式探傷検査装置。
【請求項3】
前記ガイドチューブ内に、前記被検部位に光を供給する光供給ラインがさらに挿通されていることを特徴とする請求項1または2に記載の非接触式探傷検査装置。
【請求項4】
前記ガイドチューブに、前記被検部位に光を供給する第2の光源をさらに備え、
前記ガイドチューブ内に、前記第2の光源に電源を伝達するケーブルを挿通したことを特徴とする請求項1または2に記載の非接触式探傷検査装置。
【請求項5】
前記各供給チューブの一端の開口に、前記被検部位へ供給される前記液体と前記気体と前記固体との少なくとも1つの供給方向、供給量、供給速度を規定するノズルが着脱自在となっていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非接触式探傷検査装置。
【請求項6】
前記識別部は、一の前記タンクに一の前記継手を介して接続される一の前記供給チューブを1セットとした場合、複数のセット毎に色が異なるよう、前記タンクと前記継手と前記供給チューブとに着色されて構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の非接触式探傷検査装置。
【請求項7】
前記識別部の前記色は、前記タンク内に貯留された前記液体と前記気体と前記固体とのいずれかの色に合わせて着色されていることを特徴とする請求項6に記載の非接触式探傷検査装置。
【請求項8】
前記識別部は、一の前記タンクに一の前記継手を介して接続される一の前記供給チューブを1セットとした場合、前記タンクと前記継手と前記供給チューブとに設けられた、複数のセット毎に異なる指標であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の非接触式探傷検査装置。
【請求項9】
前記指標は、文字と記号と印と標章と図案との少なくとも1つから構成されていることを特徴とする請求項8に記載の非接触式探傷検査装置。
【請求項10】
前記識別部は、前記タンクに接続される前記継手のコネクタ形状が前記継手毎に異なることにより構成されていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の非接触式探傷検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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