説明

非接触給電装置

【課題】自励式の発振回路を用いた簡単な回路構成をもとに、送電側から高効率な電力供給を可能とする受電側への伝達距離の延長を可能とする。
【解決手段】送電側共振部1からトランス3を経由して受電側共振部2に非接触で電力供給を行うにあたり、送電側共振部の自励式発振回路10は、トランスを構成する送電側一次コイルL1の第1の(+)端子T1a及び第1の(−)端子T1b間に並列接続されたコンデンサCが有する共振周波数の電圧が生成され、この電圧をもとに送電側二次コイルL2の第1の(+)端子T2a及び第2の(−)端子T2b間に誘導電圧が発生し、第1、第2のスイッチング素子FET1、FET2のゲート側にフィードバックで印加することにより、この誘起電圧を増幅したドレイン電圧を発生させ、送電側一次コイルの第1の(+)端子及び第1の(−)端子間に印加するまでの動作を繰り返す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気共鳴型の非接触給電装置に係り、特に、自励式の発振回路を有する非接触給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の非接触給電装置として、例えば、特許文献1に記載の電磁誘導型の非接触電源装置によれば、電力供給側で磁気結合されるコイルとして、共振特性を表すQ値が低いコア・トランスを使用している。
【0003】
また、特許文献2に記載の電磁誘導の磁気共鳴現象を用いた非接触電力伝送装置によれば、給電側磁気共鳴コイルの共振周波数と受電側コイル磁気共鳴コイルの共振周波数とを正確に一致させるための他励式の発振回路を使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−175379号公報
【特許文献2】特開2010−154700号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、背景技術に記載した特許文献1に記載の非接触電源装置においては、電力供給側で磁気結合されるコイルが有するQ値が低いため、給電(送電)側から高効率な電力供給を可能とする受電側への伝達距離が短くなる難点があった。
【0006】
一方、特許文献2に記載の非接触電力伝送装置においては、例えば、図3のブロック図に示すように、給電(送電)側で必要とされる各種の回路501、502、503、504、505のうち、発振回路501の発振周波数と共振回路504の共振周波数とを正確に一致させるための制御回路505が必要となり、回路構成が複雑となるばかりでなく、このような制御が行われないと、給電(送電)側から受電側への電力供給の効率が低下する難点があった。
【0007】
本発明は、これらの難点を解消するためになされたもので、自励式の発振回路を用いた簡単な回路構成をもとに、送電側から高効率な電力供給を可能とする受電側への伝達距離を延長させた磁気共鳴型の非接触給電装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の目的を達成するため、本発明の第1の態様である非接触給電装置は、送電側共振部からトランスを経由して受電側共振部に非接触で電力供給を行う非接触給電装置である。トランスは、磁気結合される送電側一次コイル及び送電側二次コイルと、送電側一次コイルから伝達される電源を受電するための受電側コイルとを有している。送電側共振部は、直流電圧を分圧するための第1、第2の分圧抵抗と、トランスのリファレンスを確保するために送電側一次コイルの中点端子に直流電圧を印加するためのリファレンス回路と、第1、第2の分圧抵抗の出力電圧がゲート側に印加され、送電側一次コイルの第1の(+)端子及び中点端子間、第1の(−)端子及び中点端子間のそれぞれの印加電圧を増幅してドレイン電圧を生成するための第1、第2のスイッチング素子、送電側一次コイルの第1の(+)端子及び第1の(−)端子間に並列接続されるコンデンサで構成される自励式発振回路とを備えている。自励式発振回路を構成するコンデンサにより発生する電圧をもとに送電側二次コイルの第2の(+)端子及び第2の(−)端子間に誘導電圧を発生させ、誘電電圧を第1、第2のスイッチング素子のゲート側にフィードバックで印加することにより、送電側一次コイルの第1の(+)端子及び第2の(−)端子間にドレイン電圧を印加するものである。
【0009】
また、本発明の第2の態様である非接触給電装置は、本発明の第1の態様において、送電側一次コイル及び送電側二次コイルは、空芯コイルで形成されるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の非接触給電装置によれば、発振周波数と共振周波数を正確に一致させるような所定の調整工程が不要な自励式の発振回路を用いた簡単な回路をもとに送電側共振部を構成することにより、送電側共振部から高効率な電力供給を可能とする受電側共振部への伝達距離を延長できる。
【0011】
また、本発明の非接触給電装置によれば、送電側共振部を構成する自励式の発振回路として、コア・トランスが不要な磁気結合型の空芯コイルを用いることにより、共振特性を表すQ値を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施例による非接触給電装置の具体的な構成を示す電気回路図である。
【図2】本発明の実施例による非接触給電装置において適用されるコイルをプリント基板上に実実装させた具体的なパターンを示す図であり、図2(A)は、プリント基板の一方の面側であるA面のパターン図、図2(B)は、プリント基板の他方の面側であるB面のパターンをA面側から透視した図である。
【図3】図3は、従来例において適用される周波数(発振周波数、共振周波数)制御のためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の非接触給電装置を適用した実施の形態例について、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施例による非接触給電装置の具体的な構成を示す電気回路図である。この非接触給電装置は、送電側共振部1からトランス3を経由して受電側共振部2に非接触で電力供給を行うものである。
【0015】
トランス3は、磁気結合される送電側一次コイルL1及び送電側二次コイルL2と、送電側一次コイルL1から伝達される電源を受電するための受電側コイルL2とを有しており、送電側一次コイルL1及び送電側二次コイルL2は、空芯コイルで形成されている。
【0016】
送電側共振部1には、第1の分圧抵抗R1、R2、第2の分圧抵抗R3、R4及びリファレンス回路RFCと、第1、第2のスイッチング素子FET1、FET2、(共振)コンデンサCを有する自励式発振回路10とが備えられている。
【0017】
この送電側共振部10において、第1の分圧抵抗R1、R2及び第2の分圧抵抗R3、R4はそれぞれ、直流電圧V0を分圧するためのものであり、直列接続された第1の分圧抵抗R1、R2間には、自励式発振回路10を構成する第1のスイッチング素子FET1のゲートが接続されている。また、同様に直列接続された第2の分圧抵抗R3、R4間には、自励式発振回路10を構成する第2のスイッチング素子FET2のゲートが接続されている。
【0018】
また、送電側共振部1のリファレンス回路RFCは、例えば、チョークコイルで形成されており、トランス3のリファレンスを確保するために当該トランスを構成する送電側一次コイルL1の中点端子T1cに直流電圧V0を印加するものである。
【0019】
送電側共振部1の自励式発振回路10において、第1のスイッチング素子FET1は、第1の分圧抵抗R1、R2の出力電圧がゲート側に印加され、トランス3を構成する送電側一次コイルL1の第1の(+)端子T1a及び中点端子T1c間の印加電圧を増幅してドレイン電圧を生成するためのものであり、そのソースは基準電位点に、そのドレインは送電側一次コイルL1の第1の(+)端子T1aにそれぞれ接続されている。また、第2のスイッチング素子FET2は、第2の分圧抵抗R3、R4の出力電圧がゲート側に印加され、送電側一次コイルL1の第1の(−)端子T1b及び中点端子T1c間の印加電圧を増幅してドレイン電圧を生成するためのものであり、そのソースは基準電位点に、そのドレインは送電側一次コイルL1の第1の(−)端子T1bにそれぞれ接続されている。
【0020】
また、送電側共振部1の自励式発振回路10において、コンデンサCは、トランス3を構成する送電側一次コイルL1の第1の(+)端子T1a及び第1の(−)端子T1b間に並列接続されており、送電側二次コイルL2の第2の(+)端子T2a及び第2の(−)端子T2b間に誘導電圧を発生させ、この誘電電圧を第1、第2のスイッチング素子FET1、FET2のゲート側にフィードバックで印加するためのものである。
【0021】
このような構成の非接触給電装置によれば、送電側共振部1において、第1の分圧抵抗R1、R2を経由して直流電圧V0を分圧させた出力電圧V1は第1のスイッチング素子FET1のゲートに印加され、この出力電圧V1を増幅したドレイン電圧V10を発生させることにより、トランス3を構成する送電側一次コイルL1の第1の(+)端子T1a及び第1の中点端子T1c間には、所定のドレイン電圧(V11=)V10−V0が印加される。一方、第2の分圧抵抗R3、R4を経由して直流電圧V0を分圧させた出力電圧V2は第2のスイッチング素子FET2のゲートに印加され、この出力電圧V2を増幅したドレイン電圧V20を発生させることにより、送電側一次コイル30の第1の(−)端子T1b及び第1の中点端子T1c間には、所定のドレイン電圧(V21=)V20−V0が印加される。
【0022】
また、送電側共振部1の自励式発振回路10によれば、トランス3を構成する送電側一次コイルL1の第1の(+)端子T1a及び第1の(−)端子T1b間に並列接続されたコンデンサCが有する共振周波数の電圧が生成され、この電圧をもとに送電側二次コイルL2の第1の(+)端子T2a及び第2の(−)端子T2b間に誘導電圧が発生し、第1、第2のスイッチング素子FET1、FET2のゲート側にフィードバックで印加することにより、送電側一次コイルL1の第1の(+)端子T1a及び第1の(−)端子T1b間に前述のドレイン電圧V11、V21を印加することができ、このような動作を繰り返すことにより、安定した自励式の発振動作が可能となる。
【0023】
前述までの説明から明らかな構成の自励式発振回路10を送電側共振部1に備え、トランス3を構成する送電側一次コイルL1及び送電側二次コイルL2を空芯コイルで形成することにより、共振特性を表すQ値を高めることができるばかりでなく、図3に示すような送電側において発振周波数と共振周波数とを正確に一致させるための制御機能(制御回路505)を必要とせず簡単な回路構成をもとに、送電側共振部1からトランス3を経由して受電側共振部2に非接触で高効率な電力供給を可能する際の伝達距離を延長させることができる。
【0024】
また、コンデンサCは、送電側一次コイルL1の第1の(+)端子T1a及び第1の(−)端子T1b間に並列接続されるため、共振特性を表すQ値を高めたまま任意の共振周波数を選択することができる。
【0025】
なお、前述のようなトランス3を構成する送電側一次コイルL1及び送電側二次コイルL2は、図2(A)、(B)に示すパターンでプリント基板P1上に実装される空芯コイルで形成され、図2(A)は、プリント基板P1の一方の面であるA面のパターン図、図2(B)は、プリント基板P1の他方の面であるB面のパターンをA面側から透視した図である。
【0026】
図2(A)に示すプリント基板P1のA面には、第1の(+)端子T1a及び第1の(−)端子T1b間が電気接続される送電側一次コイルL1が実装されており、具体的には、第1の(+)端子T1aを始点として同心の外周から半周毎に内周に向かって当該コイル線路長の第1の中間点T10まで展開し、第1の中間点T10から同心に半周展開される第1のターンと、第1の(−)端子T1bを始点として同心の外周から半周毎に内周に向かって展開しながら配線されて第1の中間点T10に接続される第2のターンとを備える第1のパターンを有している。
【0027】
この送電側一次コイルL1が有する第1のパターンにおいて、第1の(+)端子T1aを始点とする線路と第1の(−)端子T1bを始点とする線路とがクロスオーバーする部分は、スルーホールH1を経由してプリント基板P1の他方の面側であるB面に設けられており、前述のように送電側一次コイルL1の巻き数がターン数に対応させた「2」で形成されているため、第1の(+)端子T1aと第1の(−)端子T1bを近接した位置に実装することができ、第1のパターンの展開に伴い変化する共振特性を表すQ値の劣化を容易に防止可能となる。
【0028】
また、送電側一次コイルL1が有する第1のパターンによれば、プリント基板P1のA面のような片面のみでパターン展開されているため、浮遊容量を小さく抑えることができ、自己共振周波数を高くすることで使用可能な周波数の範囲を広く設定できる。
【0029】
また、送電側一次コイルL1は、第1の(+)端子T1aから第1の中間点T10までの距離と第1の(−)端子T1bから第1の中間点T10までの距離が等長で当該第1の(+)端子及び第1の(−)端子の第1の中間点T10と同心を結ぶ線Lnによって対称構造で形成されているため、抵抗成分及びインダクタンス成分がそれぞれ等価となる電気的な中点端子T1cを設けることができる。
【0030】
なお、送電側一次コイルL1において、前述の第1の中間点T10及び中点端子T1c間は、スルーホールH2を経由してプリント基板P1のB面にパターン形成されている。
【0031】
一方、図2(B)に示すプリント基板P1のB面には、第2の(+)端子T2a及び第2の(−)端子T2b間が電気接続される送電側二次コイルL2が実装されており、具体的には、第2の(+)端子T2aを始点として同心の外周から半周毎に内周に向かって当該コイル線路長の第2の中間点T20まで展開し、第2の中間点T20から同心に半周展開される第3のターンと、第2の(−)端子T2bを始点として同心の外周から半周毎に内周に向かって展開しながら配線されて第2の中間点T20に接続される第4のターンとを備える第2のパターンを有しており、このリンクコイルL2によれば、前述の第3、第4のターンの当該ターン数に起因した巻き数「2」で形成されている。
【0032】
この送電側二次コイルL2が有する第2のパターンにおいて、第2の(+)端子T2aを始点とする線路と第2の(−)端子T2bを始点とする線路とがクロスオーバーする部分は、スルーホールH3を経由してプリント基板P1のA面に設けられており、前述のように送電側二次コイルL2の巻き数がターン数に対応させた「2」で形成されているため、第2の(+)端子T2aと第2の(−)端子T2bを近接した位置に実装することができ、第2のパターンの展開に伴い変化する共振特性を表すQ値の劣化を容易に防止可能となる。
【0033】
また、送電側二次コイルL2が有する第2のパターンによれば、プリント基板P1のB面のような片面のみでパターン展開されているため、浮遊容量を小さく抑えることができ、自己共振周波数を高くすることで使用可能な周波数の範囲を広く設定できる。
【0034】
なお、前述までの説明から明らかなように、第1のパターンを有する送電側一次コイルL1と第2のパターンを有する送電側二次コイルL2をそれぞれ、プリント基板P1のA面、B面にクロスオーバーしない位置に実装することができるため、このプリント基板P1を1層2面の当該基板で実現可能であって、低い製造コストによりコイル実装が可能となる。
【0035】
本発明の非接触給電装置においては、特定の実施の形態をもって説明してきたが、この形態に限定されるものでなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られた如何なる構成の当該装置であっても採用できるということはいうまでもないことである。
【0036】
例えば、本発明の実施例によれば、(プリント基板P1のA面に実装される)送電側一次コイルL1の巻き数として、「2」の巻き数の当該コイルを適用したが、この態様に限定されるものではなく、その巻き数を2以上の偶数で形成することもできる。
【符号の説明】
【0037】
1……送電側共振部
10……自励式発振回路
C……コンデンサ
R1、R2……第1の分圧抵抗
R3、R4……第2の分圧抵抗
RFC……リファレンス回路
FET1……第1のスイッチング素子
FET2……第2のスイッチング素子
2……受電側共振部
3……トランス
L1……送電側一次コイル
T1a……第1の(+)端子
T1b……第1の(−)端子
T1c……中点端子
L2……送電側二次コイル
T2a……第2の(+)端子
T2b……第2の(−)端子
L3……受電側トランス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電側共振部(1)からトランス(3)を経由して受電側共振部(2)に非接触で電力供給を行う非接触給電装置であって、
前記トランスは、磁気結合される送電側一次コイル(L1)及び送電側二次コイル(L2)と、前記送電側一次コイルから伝達される電源を受電するための受電側コイル(L3)とを有し、
前記送電側共振部は、直流電圧(V0)を分圧するための第1、第2の分圧抵抗(R1、R2、R3、R4)と、前記トランスのリファレンスを確保するために前記送電側一次コイルの中点端子(T1c)に前記直流電圧を印加するためのリファレンス回路(RFC)と、前記第1、第2の分圧抵抗の出力電圧がゲート側に印加され、前記送電側一次コイルの第1の(+)端子(T1a)及び前記中点端子間、第1の(−)端子(T1b)及び前記中点端子間のそれぞれの印加電圧を増幅してドレイン電圧を生成するための第1、第2のスイッチング素子(FET1、FET2)、前記送電側一次コイルの前記(+)端子及び前記(−)端子間に並列接続されるコンデンサ(C)で構成される自励式発振回路(10)とを備え、
前記自励式発振回路を構成する前記コンデンサにより発生する電圧をもとに前記送電側二次コイルの第2の(+)端子(T2a)及び第2の(−)端子(T2b)間に誘導電圧を発生させ、前記誘電電圧を前記第1、第2のスイッチング素子のゲート側にフィードバックで印加することにより、前記送電側一次コイルの前記(+)端子及び前記(−)端子間に前記ドレイン電圧を印加することを特徴とする非接触給電装置。
【請求項2】
前記送電側一次コイル及び前記送電側二次コイルは、空芯コイルで形成されることを特徴とする請求項1記載の非接触給電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−175880(P2012−175880A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38105(P2011−38105)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】