説明

非接触通信部内蔵型金属製筐体

【課題】ICチップおよびアンテナを具備してなる非接触通信部が外力により損傷、破壊されるのを防止するとともに、その非接触通信部が金属製の筐体内に配置された状態で通信可能とし、さらには、非接触通信部のアンテナの指向性を広くして、全ての方向からの通信を可能とした非接触通信部内蔵型金属製筐体を提供する。
【解決手段】本発明の非接触通信部内蔵型金属製筐体10は、金属製のフレーム16Gを有し、絶縁性の表装材17,18が外周面を形成するとともに、内部に収納空間21が形成された筐体11と、収納空間21内に配置された非接触型ICタグ12とを備え、非接触型ICタグ12を構成するアンテナから延出させた導電体13の先端部13aが、金属製のフレーム16Gに対向するように配置されたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFID(Radio Frequency IDentification)用途の情報記録メディアのように、電磁波または電波を媒体として外部から情報を受信し、また、外部に情報を送信できるようにするために、ICチップおよびアンテナを具備してなる非接触通信部を内蔵した非接触通信部内蔵型金属製筐体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ICタグは、基材と、その一方の面に設けられ互いに接続されたアンテナおよびICチップとから構成されるインレットを備えており、情報書込/読出装置からの電磁波または電波を受信すると共振作用によりアンテナに起電力が発生し、この起電力によりICタグ内のICチップが起動し、このICチップ内の情報を信号化し、この信号がICタグのアンテナから発信される。
このようなICタグは、例えば、重要な物品を収納したり、保管したりするために用いられる箱、容器、入れ物などを構成する筐体に取り付けられ、筐体内に物品を収納したまま、その物品に関する情報をICチップに記録することによって、正確に物品の管理を行うことを目的として、利用されつつある。
【0003】
ICタグが作動するためには、情報読取/書込装置から発信された電磁波または電波がICタグのアンテナに十分取り込まれて、ICチップの作動起電力以上の起電力が誘導されなければならない。しかしながら、ICタグを金属製の筐体の表面(外面)に取り付けた場合、電磁波を媒体とした情報通信では、金属製の筐体の表面では、磁束が筐体の表面に平行になるため、ICタグのアンテナを横切る磁束が減少して誘導起電力が低下し、ICチップの作動起電力を下回り、ICチップが作動しなくなるという問題があった。また、ICタグを金属製の筐体の表面(外面)に取り付けた場合、電波を媒体とした情報通信では、アンテナの共振周波数がずれるため、ICタグのアンテナに生じる誘導起電力が低下し、ICチップの作動起電力を下回り、ICチップが作動しなくなるという問題があった。
【0004】
そこで、磁性体を介して、ICタグを金属製の筐体の表面に取り付けることが検討されているが、この場合、ICタグのアンテナの指向性の調整が非常に難しく、ICタグの配置によっては、情報書込/読出装置からの電波を受信することができないという問題があった。そのため、ICタグが取り付けられた筐体、あるいは、情報書込/読出装置の向きを変えて、通信可能な状態にする必要が生じる場合があり、作業効率を向上することや、筐体内に収納した物品の管理を正確に行うことが難しくなることがあった。したがって、物品の管理を目的として、金属製の筐体の表面に取り付けられるICタグには、アンテナの指向性を広く(指向性を弱く)して、全ての方向からの通信を可能とすることが望まれている。
【0005】
アンテナの指向性を広くしたICタグとしては、例えば、アンテナと通信モジュールとから構成される個別タグを複数個用い、基材の一面において、これらの個別タグをそれぞれ異なる向きに配置することにより、全ての方向に通信可能としたマルチタグが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−094474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されているマルチタグは、複数の個別タグが必要である上に、その個別タグを設けるスペースが必要であるため、製造コストが嵩む上に、マルチタグの指向性を広くするために、それぞれの個別タグのアンテナの配置を調節することが難しいという問題があった。
【0008】
また、ICタグが筐体の表面(外面)に取り付けられた場合、外力によりICチップが損傷したり、破壊されたりして、ICチップに書き込まれた情報が損なわれたりするおそれがあった。さらに、ICチップに書き込まれ、筐体内に収納されている物品に関する情報が改ざんされたり、ICタグを偽造されたりするおそれがあった。
【0009】
そこで、このような問題が生じるのを防止するために、ICタグを筐体内に配置して、ICタグを外部に露出させないようにする必要があった。
ところが、ICタグを金属製の筐体内に配置した場合、静電遮蔽の効果により、筐体内には電波が入ってこないため、情報読取/書込装置から発信された電波がICタグのアンテナに取り込まれず、電波を介して筐体の外部との情報通信を行うことができないという問題があった。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ICチップおよびアンテナを具備してなる非接触通信部が外力により損傷、破壊されるのを防止するとともに、その非接触通信部が金属製の筐体内に配置された状態で通信可能とし、さらには、非接触通信部のアンテナの指向性を広くして、全ての方向からの通信を可能とした非接触通信部内蔵型金属製筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の非接触通信部内蔵型金属製筐体は、少なくとも1つの金属製のフレームを有し、絶縁性の表装材が外周面を形成するとともに、内部に収納空間が形成された筐体と、前記収納空間内に配置され、ICチップおよびアンテナを具備してなる非接触通信部とを備えた非接触通信部内蔵型金属製筐体であって、前記アンテナから延出させた導電体の先端部が、前記金属製のフレームに対向するように配置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の非接触通信部内蔵型金属製筐体によれば、少なくとも1つの金属製のフレームを有し、絶縁性の表装材が外周面を形成するとともに、内部に収納空間が形成された筐体と、前記収納空間内に配置され、ICチップおよびアンテナを具備してなる非接触通信部とを備えた非接触通信部内蔵型金属製筐体であって、前記アンテナから延出させた導電体の先端部が、前記金属製のフレームに対向するように配置されたので、アンテナと金属製の筐体の間には、直接接触により、直接、電流が流れるか、あるいは、非接触により、電磁誘導または静電結合により電流が流れるようになり、筐体は、アンテナの延長部として機能するから、金属製の筐体の収納空間内に非接触通信部を配置したまま、金属製の筐体を介して、非接触通信部のICチップに対する情報の読取りまたは書込みを行うことができる。また、非接触通信部のアンテナの延長部として機能する筐体により、アンテナの指向性を広くすることができるので、全ての方向、すなわち、筐体に対して360°の全方向から、情報読取/書込装置による非接触通信部のICチップに対する情報の読取りまたは書込みを行うことができるようになる。ゆえに、この非接触通信部内蔵型金属製筐体内に収納された物品を正確に管理することができるとともに、その作業効率を向上することができる。
また、本発明の非接触通信部内蔵型金属製筐体によれば、非接触通信部が、筐体の収納空間内に配置されているので、外力によりICチップが損傷したり、破壊されたりして、ICチップに書き込まれた情報が損なわれたりするのを防止することができるとともに、ICチップに書き込まれ、筐体内に収納されている物品に関する情報が改ざんされたり、非接触通信部が偽造されるのを防止できるから、より効果的に非接触通信部を保護することができ、ひいては、ICチップに書き込まれた物品に関する情報を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の非接触通信部内蔵型金属製筐体の一実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】本発明の非接触通信部内蔵型金属製筐体の一実施形態を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の非接触通信部内蔵型金属製筐体の筐体内に配置された非接触型ICタグの第一の例を示す概略斜視図である。
【図4】本発明の非接触通信部内蔵型金属製筐体の筐体内に配置された非接触型ICタグの第二の例を示す概略斜視図である。
【図5】本発明の非接触通信部内蔵型金属製筐体の筐体内に配置された非接触型ICタグの第三の例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の非接触通信部内蔵型金属製筐体の実施の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0015】
図1は、本発明の非接触通信部内蔵型金属製筐体の一実施形態を示す概略斜視図である。図2は、本発明の非接触通信部内蔵型金属製筐体の一実施形態を示す概略斜視図である。
この実施形態の非接触通信部内蔵型金属製筐体10は、筐体11と、筐体11内に配置された非接触型ICタグ12と、非接触型ICタグ12を構成するアンテナから延出させた導電体13とから概略構成されている。
【0016】
筐体11は、外形が直方体状をなしており、その蓋をなす第一筐体14と、その本体をなす第二筐体15とから概略構成されている。
第一筐体14および第二筐体15は、平底の凹状の筐体であり、一方の面(平底をなす外表面14e,15eと対向する面)の全面が開口した形態の筐体である。
また、第一筐体14と第二筐体15は、ヒンジ20によって連結されて、第二筐体15が第一筐体14に対して開閉自在となっている。これら第一筐体14と第二筐体15は、それぞれの開口している側が合わせられることにより一体となり、その内部に1つの収納空間21を形成する。
【0017】
第一筐体14は、金属製のフレーム組立体16と、このフレーム組立体16の各フレームの間に介装された絶縁性の表装材17とから概略構成されている。より詳細には、複数の金属製のフレーム16A,16B,16C,16D,16E,16F,16G,16Hが直方体状に組立てられてなるフレーム組立体16の各フレームの間に、外側面14aを形成する表装材17A、外側面14bを形成する表装材17B、外側面14cを形成する表装材17C、外側面14dを形成する表装材17D、および、外表面14eを形成する表装材17Eが介装されている。
本発明では、フレーム組立体16と表装材17が、第一筐体14の外周面を形成している。
【0018】
一方、第二筐体15は、金属製のフレーム組立体18と、このフレーム組立体18の各フレームの間に介装された絶縁性の表装材19とから概略構成されている。より詳細には、複数の金属製のフレーム18A,18B,18C,18D,18E,18F,18G,18Hが直方体状に組立てられてなるフレーム組立体18の各フレームの間に、外側面15aを形成する表装材19A、外側面15bを形成する表装材19B、外側面15cを形成する表装材19C、外側面15dを形成する表装材19D、および、外表面15eを形成する表装材19Eが介装されている。
本発明では、フレーム組立体18と表装材19が、第二筐体15の外周面を形成している。
【0019】
また、第一筐体14の外側面14aには、可倒式の持ち手22が設けられている。
さらに、第一筐体14の外側面14a、および、第二筐体15の外側面15aには、第二筐体15を第一筐体14に係止するための係止具23が設けられている。
【0020】
非接触型ICタグ12は、図3、4に示すように、平面視長方形状をなすフィルム状またはシート状の基材31と、ICチップ32と、アンテナ33とから概略構成されている。また、ICチップ32およびアンテナ33は、基材31の一方の面31aに設けられ、互いに電気的に接続されている。また、アンテナ33は、互いに対向し、その対向する側にそれぞれ給電点(ICチップ32と接続する部分)を有し、三角形の面状をなす一対の放射素子34,34とから構成されるダイポールアンテナである。
【0021】
この非接触型ICタグ12が、平面視長方形状をなすフィルム状またはシート状の磁性基材41を介して、第一筐体14の底面14f(第一筐体14の内側の底面)に配置されている。
これにより、非接触型ICタグ12は、筐体11の収納空間21内に配置される。
【0022】
さらに、非接触型ICタグ12のアンテナ33を構成する放射素子34の一方から導電体13が延出され、この導電体13の先端部13aが、フレーム組立体16を構成する金属製のフレーム16Gに対向するように配置されている。ここで、導電体13は、アンテナ33を構成する放射素子34の一方と連続して設けられている。
より詳細には、図3に示す第一の例または図4に示す第二の例のように、導電体13の先端部13aが、フレーム組立体16を構成するフレーム16Gに対向するように配置される。なお、導電体13は、その先端部13aのみがフレーム16Gに対向するように配置されているのであり、その他の部分は、フレーム16Gとは直接、接触しないように配置されるか、あるいは、図示略の絶縁材を介して、第一筐体14の底面14fに配置されている。
【0023】
第一の例では、図3に示すように、導電体13の先端部13aが、金属製のフレーム16Gの内側面16aに直接接続されている。この場合、導電体13の先端部13aが、はんだや導電性接着材などにより、フレーム16Gの内側面16aに接続される。
これにより、第二筐体15を第一筐体14に係止し、これらの筐体を一体化した状態で、アンテナ33の放射素子34と、金属製のフレーム組立体16およびフレーム組立体18の間に、直接接触により、直接、電流が流れるようになり、フレーム組立体16およびフレーム組立体18は、アンテナ33の一部、すなわち、アンテナ33を延長した延長部として機能する。したがって、アンテナ33のみでは、筐体11の収納空間21内に配置された非接触型ICタグ12は通信できなかったが、アンテナ33の延長部をなす金属製のフレーム組立体16およびフレーム組立体18を介して、非接触型ICタグ12が通信可能となる。また、フレーム組立体16およびフレーム組立体18全体が、アンテナ33を延長した延長部として機能するので、フレーム組立体16およびフレーム組立体18を介して、アンテナ33の指向性を広く(指向性を弱く)することができる。
【0024】
第二の例では、図4に示すように、導電体13の先端部13aが、フィルム状またはシート状の絶縁基材42を介して、金属製のフレーム16Gの内側面16aに対向するように配置されている。
これにより、第二筐体15を第一筐体14に係止し、これらの筐体を一体化した状態で、アンテナ33の放射素子34と、金属製のフレーム組立体16およびフレーム組立体18の間には、非接触により、電磁誘導または静電結合により電流が流れるようになり、フレーム組立体16およびフレーム組立体18は、アンテナ33の一部、すなわち、アンテナ33を延長した延長部として機能する。したがって、アンテナ33のみでは、筐体11の収納空間21内に配置された非接触型ICタグ12は通信できなかったが、アンテナ33の延長部をなす金属製のフレーム組立体16およびフレーム組立体18を介して、非接触型ICタグ12が通信可能となる。また、フレーム組立体16全体が、アンテナ33を延長した延長部として機能するので、フレーム組立体16およびフレーム組立体18を介して、アンテナ33の指向性を広く(指向性を弱く)することができる。
【0025】
すなわち、筐体11は、第一筐体14と第二筐体15を一体化した状態(筐体11を閉じた状態)でアンテナ33の延長部として機能するように設計されており、第一筐体14と第二筐体15が離隔した状態(筐体11が開いた状態)ではアンテナ33の延長部として機能しないように設計されている。
【0026】
導電体13としては、銅線、アルミニウム線、鉄線などの金属線、絶縁材を介して表装材17Eの底面14fおよびフレーム16Gの内側面16aに形成されたポリマー型導電インクからなる導電体、絶縁材を介して表装材17Eの底面14fおよびフレーム16Gの内側面16aに配置された銅箔、銀箔、金箔、白金箔、アルミニウム箔などの導電性箔が挙げられる。
【0027】
表装材17A,17B,17C,17D,17E、および、表装材19A,19B,19C,19D,19Eの材質としては、木材、硬質樹脂、ガラスなどが挙げられる。
【0028】
非接触型ICタグ12の基材31としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂からなる基材;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂からなる基材;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレンなどのポリフッ化エチレン系樹脂からなる基材;ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂からなる基材;ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体からなる基材;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂からなる基材;ポリスチレンからなる基材;ポリカーボネート(PC)からなる基材;ポリアリレートからなる基材;ポリイミドからなる基材;上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙などの紙からなる基材などが用いられる。
【0029】
ICチップ32としては、特に限定されず、アンテナ33を介して非接触状態にて情報の書き込みおよび読み出しが可能なものであれば、非接触型ICタグや非接触型ICラベル、あるいは非接触型ICカードなどのRFIDメディアに適用可能なものであればいかなるものでも用いられる。
【0030】
非接触型ICタグ12のアンテナ33は、基材31の一方の面31aに、ポリマー型導電インクを用いて所定のパターンにスクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成されてなるものか、もしくは、導電性箔をエッチングしてなるもの、金属メッキしてなるものである。
【0031】
ポリマー型導電インクとしては、例えば、銀粉末、金粉末、白金粉末、アルミニウム粉末、パラジウム粉末、ロジウム粉末、カーボン粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)などの導電微粒子が樹脂組成物に配合されたものが挙げられる。
【0032】
樹脂組成物として熱硬化型樹脂を用いれば、ポリマー型導電インクは、200℃以下、例えば、100〜150℃程度でアンテナ33をなす塗膜を形成することができる熱硬化型となる。アンテナ33をなす塗膜の電気の流れる経路は、塗膜をなす導電微粒子が互いに接触することによる形成され、この塗膜の抵抗値は10-5Ω・cmオーダーである。
また、本発明におけるポリマー型導電インクとしては、熱硬化型の他にも、光硬化型、浸透乾燥型、溶剤揮発型といった公知のものが用いられる。
【0033】
光硬化型のポリマー型導電インクは、光硬化性樹脂を樹脂組成物に含むものであり、硬化時間が短いので、製造効率を向上させることができる。光硬化型のポリマー型導電インクとしては、例えば、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、導電微粒子が60質量%以上配合され、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、溶剤揮発型かあるいは架橋/熱可塑併用型(ただし熱可塑型が50質量%以上である)のものや、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特にポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、架橋型かあるいは架橋/熱可塑併用型のものなどが好適に用いられる。
【0034】
また、アンテナ33をなす導電性箔としては、銅箔、銀箔、金箔、白金箔、アルミニウム箔などが挙げられる。
さらに、アンテナ33をなす金属メッキとしては、銅メッキ、銀メッキ、金メッキ、白金メッキなどが挙げられる。
【0035】
この非接触通信部内蔵型金属製筐体10によれば、第一筐体14と第二筐体15から構成される筐体11の収納空間21内に非接触型ICタグ12が配置され、非接触型ICタグ12のアンテナ33の放射素子34から延出させた導電体13の先端部13aが、第一筐体14を構成する金属製のフレーム16Gに対向するように配置されているので、第一筐体14と第二筐体15を一体化した状態で、放射素子34とフレーム組立体16およびフレーム組立体18の間には、直接接触により、直接、電流が流れるか、あるいは、非接触により、電磁誘導または静電結合により電流が流れるようになり、フレーム組立体16およびフレーム組立体18は、アンテナ33の延長部として機能するから、筐体11の収納空間21内に非接触型ICタグ12を配置したまま、アンテナ33の延長部(フレーム組立体16およびフレーム組立体18)を介して、非接触型ICタグ12のICチップ32に対する情報の読取りまたは書込みを行うことができる。また、非接触型ICタグ12のアンテナ33の延長部として機能するフレーム組立体16およびフレーム組立体18により、アンテナ33の指向性を広くすることができる。したがって、全ての方向、すなわち、筐体11に対して360°の全方向から、情報読取/書込装置による非接触型ICタグ12のICチップ32に対する情報の読取りまたは書込みを行うことができるようになる。ゆえに、この非接触通信部内蔵型金属製筐体10内に収納された物品を正確に管理することができるとともに、その作業効率を向上することができる。
【0036】
また、この非接触通信部内蔵型金属製筐体10によれば、非接触型ICタグ12が、筐体11の収納空間21内に配置されているので、外力によりICチップ32が損傷したり、破壊されたりして、ICチップ32に書き込まれた情報が損なわれたりするのを防止することができるとともに、ICチップ32に書き込まれ、筐体11内に収納されている物品に関する情報が改ざんされたり、非接触型ICタグ12が偽造されるのを防止できるから、より効果的に非接触型ICタグ12を保護することができ、ひいては、ICチップ32に書き込まれた物品に関する情報を保護することができる。
【0037】
なお、この実施形態では、非接触通信部として、基材31と、ICチップ32と、アンテナ33とを具備してなる非接触型ICタグ12を内蔵した場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、非接触通信部が、非接触型ICラベルであってもよく、あるいは、筐体内に直接設けられたICチップおよびアンテナを具備してなるものであってもよい。
また、この実施形態では、外形が直方体状の筐体11を用いた場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、筐体の形状は、その内部に収納される物品の形状などに応じて適宜決定される。
【0038】
また、この実施形態では、フレーム組立体16を構成するフレーム16A,16B,16C,16D,16E,16F,16G,16H、および、フレーム組立体18を構成するフレーム18A,18B,18C,18D,18E,18F,18G,18Hが全て金属製である場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、筐体を構成するフレームの少なくとも1つが金属製であり、その金属製のフレームに、非接触型ICタグを構成するアンテナから延出させた導電体の先端部が対向するように配置されていればよい。
【0039】
また、この実施形態では、筐体11が、ヒンジ20によって連結された第一筐体14と第二筐体15から構成された場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、筐体をなす表装材の一部が着脱可能に設けられ、その部分を取外すことにより、内部に物品を収納できるものであればいかなるものであってもよい。例えば、筐体としては、表装材の一部が観音開き可能に設けられているもの、表装材の一部がスライド移動可能に設けられているもの、表装材の一部にねじ込み式の蓋が設けられて、開閉可能となっているものなどであってもよい。
【0040】
また、この実施形態では、非接触型ICタグ12が、磁性基材41を介して、第一筐体14の底面14f(第一筐体14の内側の底面)に配置された場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、非接触型ICタグが筐体内に配置されていれば、筐体内のどの部分に配置されていてもよい。さらに、筐体内に配置された非接触型ICタグは、損傷したり、破壊されることを防止するために、被覆材などにより被覆されていてもよい。
【0041】
また、本発明では、図5に示すように、非接触型ICタグ12が、弾性および可撓性を有するシリコーンゴムまたは加硫ゴムからなる被覆材43で被覆されたものを用いてもよい。このようにすれば、磁性基材41を介在させることなく、非接触型ICタグ12を、金属製の第一筐体14の底面14f(第一筐体14の内側の底面)に直接、配置することができる。
【0042】
被覆材43は、弾性および可撓性を有するシリコーンゴムまたは加硫ゴムから構成されるが、耐候性、耐熱性、耐薬品性、柔軟性などに優れる点から、シリコーンゴムが好ましい。
シリコーンゴムとしては、ミラブル型タイプの何れでもよく、例えば、東レ・ダウコーニング社製の熱加硫型のシリコーンコンパウンドが用いられ、その製品名としては、「SH831U」、「SH841U」、「SH851U」、「SH861U」、「SH871U」、「SH881U」、「SH35U」、「SH55UA」、「SH75UN」、「SE4705U」、「SE4706U」、「SE1185U」、「SE1186U」、「SE1187U」、「SH502U A/B」、「DY32−1005U」、「DY32−1000U」、「DY32−5013U」、「DY32−6014U」、「DY32−7040U」、「DY32−8013U」、「SH745U」、「SH746U」、「SH747U」などが挙げられる。
【0043】
加硫ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン・プロピレンゴム(EPM、EPDM)、ウレタンゴム(U)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、塩素化ポリエチレン(CM)、アクリルゴム(ACM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、フッ素ゴム(FKM)などのゴムを加硫したものが挙げられる。
【0044】
また、この実施形態では、アンテナ33を構成する放射素子34の一方と連続して設けられ導電体13の先端部13aが、金属製のフレーム16Gの内側面16aに対向するように配置された場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、図5に示すように、非接触型ICタグ12の一端部の外周に、導電体44が巻き付けられて、放射素子34の一端部に導電体44の一端部が対向するように配置され、導電体44の他端部(先端部)44aが、金属製のフレーム16Gの内側面16aに対向するように配置されていてもよい。この場合、導電体44としては、金属線が用いられる。
【0045】
また、この実施形態では、非接触型ICタグ12のアンテナ33の放射素子34から延出させた導電体13の先端部13aが、第一筐体14を構成する金属製のフレーム16Gの内側面16aに対向するように配置された場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、非接触型ICタグのアンテナから延出させた導電体の先端部が、筐体を構成する金属製のフレームのどの部分に対向するように配置されていてもよい。
【0046】
また、この実施形態では、三角形の面状をなす一対の放射素子34,34から構成されるダイポールアンテナからなるアンテナ33を有する非接触型ICタグ12を備えた場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、アンテナは一方が三角形の枠状をなすダイポールアンテナ、メアンダ状のダイポールアンテナ、モノポールアンテナであってもよい。
【0047】
次に、図1、図2および図4を参照して、非接触通信部内蔵型金属製筐体10を用いた物品の管理方法を説明する。
まず、筐体11を開いて、第一筐体14内に物品を収納する。
次いで、第一筐体14内に物品を収納した状態で、係止具23により、第二筐体15を第一筐体14に係止し、これらの筐体を一体化する。
【0048】
これにより、放射素子34とフレーム組立体16およびフレーム組立体18の間には、電磁誘導または静電結合により電流が流れるようになり、フレーム組立体16およびフレーム組立体18は、アンテナ33の延長部として機能するようになる。
【0049】
この状態で、フレーム組立体16およびフレーム組立体18が、アンテナ33の延長部として用いられ、この延長部(フレーム組立体16およびフレーム組立体18)を介して、情報読取/書込装置(図示略)による非接触型ICタグ12のICチップ32に対する情報の読取りまたは書込みが非接触にて行われ、筐体11内に収納された物品が個別に管理される。
【0050】
非接触型ICタグ12のICチップ32に書き込まれる情報としては、非接触通信部内蔵型金属製筐体10の識別番号、製造者、製造場所、製造年月日、所有者、保管場所、筐体11内に収納された物品の種類、物品の識別番号、製造者、製造場所、製造年月日、所有者、保管場所などが挙げられる。
【0051】
このように、非接触通信部内蔵型金属製筐体10を用いた物品の管理方法によれば、フレーム組立体16およびフレーム組立体18が、アンテナ33の延長部として機能するので、筐体11の収納空間21内に非接触型ICタグ12を配置したまま、非接触型ICタグ12のICチップ32に対する情報の読取りまたは書込みを行うことができる。また、フレーム組立体16およびフレーム組立体18を介して、非接触型ICタグ12のアンテナ33の指向性を広くすることができるので、全ての方向、すなわち、筐体11に対して360°の全方向から、情報読取/書込装置によるICチップ32に対する情報の読取りまたは書込みを行うことができるようになる。したがって、筐体11内に収納された物品を正確に管理することができるとともに、その作業効率を向上することができる。特に、非接触通信部内蔵型金属製筐体10を用いた物品の管理方法によれば、外観がほぼ等しく、一見しただけでは見分けのつき難い筐体を多数重ね置きした場合にも、それぞれの筐体を確実に識別して、筐体内に収納された物品を個別に管理することができる。
【符号の説明】
【0052】
10・・・非接触通信部内蔵型金属製筐体、11・・・筐体、12・・・ICタグ、13・・・導電体、14・・・第一筐体、15・・・第二筐体、16・・・フレーム組立体、16A,16B,16C,16D,16E,16F,16G,16H・・・フレーム、17・・・表装材、18・・・フレーム組立体、18A,18B,18C,18D,18E,18F,18G,18H・・・フレーム、19・・・表装材、20・・・ヒンジ、21・・・収納空間、22・・・持ち手、23・・・係止具、31・・・基材、32・・・ICチップ、33・・・アンテナ、34・・・放射素子、41・・・磁性基材、42・・・絶縁基材、43・・・被覆材、44・・・導電体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの金属製のフレームを有し、絶縁性の表装材が外周面を形成するとともに、内部に収納空間が形成された筐体と、前記収納空間内に配置され、ICチップおよびアンテナを具備してなる非接触通信部とを備えた非接触通信部内蔵型金属製筐体であって、
前記アンテナから延出させた導電体の先端部が、前記金属製のフレームに対向するように配置されたことを特徴とする非接触通信部内蔵型金属製筐体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−39984(P2011−39984A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189268(P2009−189268)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【出願人】(000110217)トッパン・フォームズ株式会社 (989)
【Fターム(参考)】