非接触電力伝送システム、受電装置、及び送電装置
【課題】非接触通信と非接触による送電を受電するアンテナを搭載した小型の携帯端末装置を提供する。
【解決手段】給電コイル142と磁気共鳴コイル141からなる1次側コイルと、負荷コイル102からなる2次側コイルからなり、コイルの巻き線間の寄生容量とコイルの自己インダクタンスにより決まる前記磁気共鳴コイル141の自己共振周波数で前記給電コイル142より給電し、前記2次側コイルの負荷コイル102から磁気的結合により非接触で給電された電力を取り出す構成の非接触電力伝送システムにおいて、前記給電コイル142と磁気共鳴コイル141の結合と前記磁気共鳴コイル141と負荷コイル102の結合に磁気的結合を利用して非接触で電力を伝送する。
【解決手段】給電コイル142と磁気共鳴コイル141からなる1次側コイルと、負荷コイル102からなる2次側コイルからなり、コイルの巻き線間の寄生容量とコイルの自己インダクタンスにより決まる前記磁気共鳴コイル141の自己共振周波数で前記給電コイル142より給電し、前記2次側コイルの負荷コイル102から磁気的結合により非接触で給電された電力を取り出す構成の非接触電力伝送システムにおいて、前記給電コイル142と磁気共鳴コイル141の結合と前記磁気共鳴コイル141と負荷コイル102の結合に磁気的結合を利用して非接触で電力を伝送する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触データ通信手段および磁気共振を利用した非接触電力伝送手段、装置とそれらの送受を行なうアンテナに関するものであり、非接触ICカードやバッテリを搭載した携帯機器への非接触による充電装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者が検討した技術として、非接触充電システムの従来技術に関しては、たとえば一例として図24に示すような構成のものが考えられる。
【0003】
図24は非接触による充電システムの従来技術の一例を示すブロック図であり、図のシステムは、鉄道の駅や店舗などの電力提供者側に設けられる送電装置701と、利用者が持っている携帯端末装置702とを含んで構成されている。本システムでは、携帯端末装置702が送電装置701により充電される。
【0004】
送電装置701は、RFIDリーダなどの非接触型処理モジュール713と、非接触型送電モジュール712と、送電制御モジュール711とを含んで構成されている。
【0005】
携帯端末装置702は、RFID等の非接触型処理動作のための非接触型処理モジュール723と、充電のための非接触型受電モジュール722と、充電の判断と制御を行なう受電制御モジュール721と、高速に充電可能な大容量蓄電モジュール720とを含んで構成されている。
【0006】
図において、携帯端末702を所有している利用者が、駅や店舗などに設置された送電装置701に搭載されている非接触型処理モジュール713と携帯端末702に搭載されている非接触型処理モジュール723の間で電子決済等を行なうためにデータ伝送を行なっている際に、送電装置701に搭載されている非接触型送電モジュール712より端末側の非接触型送電モジュール722に非接触により電力を送電するとともに、非接触型送電モジュール722では、受電した電力を整流して高速大容量蓄電モジュール720に充電を行なう構成であり、図の送電制御モジュール711と受電制御モジュール721では、これらモジュール間での非接触による送電の制御を行なうとともに、高速大容量蓄電モジュール720に充電を行なう充電の制御を行なっている。
【0007】
以上の構成では、非接触型処理モジュール713、723間で通信を行なっている間に携帯端末装置702の電源の充電を行なう構成であるため、携帯端末装置702の充電時間が減らせる上に、頻繁に非接触型処理モジュール713、723間で通信を行なえば、特に携帯端末装置702を充電しなくとも継続的に端末の利用が可能となる(たとえば、特許文献1参照)。
【0008】
さらに図24で示した非接触による通信や充電のための送電では、数cm以下の比較的近距離での非接触通信や非接触送電には、電磁誘導方式や磁気共鳴方式など磁気的な結合による伝送が一般的である。これは他の伝送方式として有力と考えられる電波による伝送方式は伝送の距離rに反比例するのに対し、電磁結合による伝送の強さは、伝送距離rの2乗に反比例するため、例えば伝送距離が1mよりも小さくなった場合、1/rよりも1/(r2)の項のほうが大きくなるためである。
【0009】
このため、非接触による通信や充電のための送電に用いられる周波数は100kHz帯から10数MHz程度の周波数が用いられ、これらの送受に用いられるアンテナとしては、磁気的な結合を強くするため、図25に示すように、数ターンから数十ターンのコイル状のアンテナを用いるのが一般的であり、図24で示した携帯端末に用いられる非接触通信や非接触による送電のような直径4cm程度のコイル状のアンテナが用いられている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0010】
本発明者が検討したその他の技術として、非特許文献2および特許文献2に記載されたものが知られている。この非接触電力伝送システムに関しては、たとえば一例として図26に示すような構成のものが考えられる。
【0011】
図26は非接触による電力伝送システムの従来技術の一例を示す構成図であり、非接触電力伝送システム730は高周波電源731と、高周波電源731に可変インピーダンス回路737を介して接続された給電コイル732と共鳴コイル733により1次側コイルを構成し、共鳴コイル734と負荷コイル735により2次側コイルを構成し、負荷コイル735に接続された負荷736を備えている。
【0012】
さらに、共鳴コイル733、734にはそれぞれ共鳴容量738、739が接続されており、給電コイル732、共鳴コイル733,734、負荷コイル735は共鳴系740を構成する。また、高周波電源731の出力周波数には、共鳴系740の共鳴周波数に設定されている。
【0013】
インピーダンス可変回路737は、2つの可変容量741、742とインダクタ743から構成されている。一方の可変容量741は高周波電源731に並列に接続され、他方の容量742は給電コイル732に並列に接続されている。インダクタ743は両可変容量741、742の間に接続されている。インピーダンス可変回路737は、可変容量741、742の容量が変換されることでそのインピーダンスが変更される。このインピーダンス可変回路737は共鳴系740の共鳴周波数における入力インピーダンスと高周波電源731側のインピーダンスが合うようにインピーダンスが調整される。可変容量741,742は回転軸がモータにより駆動することで容量を可変する公知の構成で、モータが制御装置744からの駆動信号により駆動される構成となっている。
【0014】
高周波電源731からインピーダンス可変回路737を介して給電コイル732に、共鳴系740の周波数で高周波電圧が出力され、給電コイル732に磁場が発生する。この磁場が共鳴コイル733、734による磁場共鳴により増強される。増強された共鳴コイル734付近の磁場から負荷コイル735により電磁誘導を利用して電力を取り出し負荷736に供給される。
【0015】
このとき、共鳴コイル733、734のコイル間距離が変化すると、共鳴系740の入力インピーダンスも変化する。このため、インピーダンス可変回路737がない場合、共鳴コイル733、734のコイル間距離によっては、インピーダンス整合が取れずに、高周波電源731への反射電力が生じ伝送効率が低下する。また別の見方をすると、コイル間距離により磁気共鳴現象が発生する周波数が変動するため、高周波電源731の出力周波数に対し、磁気共鳴周波数がずれると伝送損失が大きくなる。このため、高周波電源の周波数を伝送損失が最も小さくなる周波数にコイル間距離に対応して調整すればよいが送信周波数を変えると他の通信機器へ影響を与える恐れがあることから一般的ではない。このため、コイル間距離が変動して共鳴系740の入力インピーダンスが変動した場合は制御装置744により、可変容量741、742を調整してインピーダンス整合を取るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006−353042号公報 図1
【特許文献2】特開2010−141976号公報 図1
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】日経ビジネス 2009年1月26日号 78ページ、日経BP社
【非特許文献2】NIKKEI ELECTRONICS 2007.12.3 117項〜128項
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、上記図24で示した従来技術の充電システムでは、非接触通信と非接触による送電を個々に用いられているため、それぞれ、直径4cm程度のコイル状のアンテナが必要となる。このため、特に小型化の要求が高い携帯端末に図24で示したような充電システムを搭載しようとした場合、上述のコイル状のアンテナを2素子内蔵する必要があるため、携帯端末装置の小型化が難しいという課題を有していた。
【0019】
さらに、上記図24で示した従来技術の充電システムでは、非接触による送電では、非接触部の伝送損失が大きいと送電装置の効率が低下し消費電力が増えることから、近距離(数cm以下)で比較的高い効率が得られる電磁誘導方式が一般的であるが、逆に伝送距離がある程度大きくなると(例として1〜2cm程度)伝送効率が急激に劣化するため、携帯端末装置に従来技術の受電装置を搭載しようとした場合、受電装置のアンテナを携帯端末装置の表面に貼り付けるようにするなどして充電の際に送電装置と受電装置間の伝送距離が短くなるようにする必要があるため、搭載位置が限られてしまうという課題があった。
【0020】
さらに、携帯端末装置の通信周波数は800MHz帯や2GHz帯の比較的高い周波数であり、この通信に用いられるアンテナは小型化が進んでおり、通信端末に内蔵するのが可能となっている。しかし、上述の非接触通信や非接触による送電を受電するアンテナを携帯端末に内蔵した場合、内蔵された携帯端末装置の通信アンテナからの電波は、非接触通信や非接触による送電を行なう周波数よりも数百倍程度高いため、非接触通信や非接触による受電を行なうアンテナは金属板のようにしか見えない。このため非接触通信や非接触による受電を行なうアンテナ部で反射が起こるため、携帯端末装置の受信感度に影響を与えるという課題を有していた。
【0021】
また、上記図26で示した従来技術の非接触の電力伝送システムでは、磁気共鳴コイルのコイル間距離の変動により共鳴系の入力インピーダンスが変動することで1次コイル側と2次コイル側の間の周波数特性が変わり伝送効率が劣化する現象は、可変インピーダンス回路の可変容量を調整することにより、高周波電源と共鳴系のインピーダンス整合を図る構成で改善しているが、数W以上の電力を伝送する場合、可変容量に可変容量ダイオード等の半導体を用いることは電力容量や耐圧の問題から難しい。このため、バリアブルコンデンサ等の機械式の可変容量を用いる必要があるので、送電器の小型化が図れない。また、可変容量が機械式であるため耐久性の面で課題がある。
【0022】
さらに、上記図26で示した非接触の電力伝送システムでは、磁気共鳴コイルのコイル間距離が数mm程度のごく近い距離での伝送では、磁気共鳴コイル間の磁場共鳴による伝送に対し、電磁誘導による伝送の割合が増えることが影響し、コイルをより近くするとかえって伝送効率が低下してしまうという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は上記目的を達成するため、上記課題である非接触通信と非接触による送電を受電するアンテナを搭載しようとした場合に携帯端末装置の小型化が難しいという課題は、非接触通信用アンテナと非接触による送電を受電するアンテナを共用化するとともに、共用化したアンテナの受信出力部に切り替え回路を設けることにより、共用化したアンテナが送電装置からの送電電力を受電した場合、切り替え回路を充電側に切り替え、この切り替え回路を介して整流回路において受電信号が整流されバッテリに充電される構成とし、非接触通信信号を受信した場合、切り替え回路はそのまま非接触通信側を保持することで、非接触通信が可能となる。
【0024】
次に、充電を行なう場合、効率が劣化しないように送電装置と受電装置間の伝送距離を短くする必要があるため、搭載位置が限られてしまうという課題については、送電装置において送電に用いられるアンテナとして、送電に用いる周波数に共振する長さのコイル長を有した両端が電気的に接続されない共振コイルと共振コイルに送電電力を磁気的に結合して給電する給電コイルからなる磁気共鳴方式と呼ばれる方式とし、給電コイルより送電装置からの送電電力を給電するとともに、非接触通信信号も送電信号に重畳して送信する構成とした。
【0025】
同様に受電装置においても受電に用いられるアンテナとして、送電に用いる周波数に共振する送電側と等しい長さのコイル長を有した両端が電気的に接続されない共振コイルと共振コイルで受電した受電電力を磁気的に結合した負荷コイルから受電電力を取り出す磁気共鳴方式とした。
【0026】
以上の構成とすることにより、送電側の共振コイルと受信側の共振コイルの共振周波数が等しいことにより、送電側の共振コイルに流れる電流による磁束と受信側の共振コイルに流れる電流による磁束の位相が同相になることにより、これら共振コイル間は強く結合する。この現象は磁気共鳴現象とよばれ、従来の非接触伝送に主に用いられている電磁誘導方式よりもコイル間距離が離れていても効率の低下が少ないという特長を有しているため、送電装置と受電装置間距離が多少離れていても伝送効率の低下が少ないので、携帯端末装置に受電装置を搭載する場合、受電アンテナの搭載位置の制約がより少ない構成とすることができる。
【0027】
非接触通信や非接触による受電を行なうアンテナ部で反射が起こるため、携帯端末装置の受信感度に影響を与えるという課題については、上記の搭載位置が限られてしまうという課題と同様に、送電と受電用アンテナに磁気共鳴方式を用いるとともに、受電側のアンテナの共振コイルを削除する構成とした。
【0028】
この構成では、送電側が磁気共鳴方式、受電側が電磁誘導方式となるがコイル間の伝送距離は受信側が磁気共鳴方式の場合とほぼ同等の伝送距離が得られる構成となっている。
【0029】
以上の構成とすることにより、受電側のアンテナは、負荷コイルのみとなるため、直径3cm程度の1〜数ターンのループ状コイルのみとなり、従来の数十ターンの密に巻かれたコイルに比べ、携帯端末装置の通信に用いる電波の反射は小さくなるので、通信アンテナへの影響をより小さくすることができる。
【0030】
以上は電力伝送周波数と非接触通信が同じ周波数であったが周波数が異なる場合のアンテナを共用化する手段を以下説明する。
【0031】
一般的に磁気共鳴方式による伝送では、共振コイルに給電する給電コイルや共振コイルから受信した電力を取り出す負荷コイルに比べ、共振コイルの巻き数のほうが多く、インダクタンス値も大きい。
【0032】
非接触通信の周波数と非接触による電力伝送の周波数が異なる場合、上記受信側共振コイルと並列に第1の容量を接続するとともに、第2の容量を第1のフィルタ回路を介し直列あるいは並列に接続した後、低い周波数のほうの信号を取り出す構成とするとともに、共振コイルと磁気的に結合するように負荷コイルを受電コイルに近接して設け、負荷コイルに第2のフィルタ回路を介し高い周波数のほうの信号を取り出す構成とし、第1の容量が共振コイルと高い周波数のほうの信号で共振する値とし、第2の容量が共振コイルと低い周波数のほうの信号で共振する値とし、さらに、第1のフィルタ回路は低い周波数のほうの信号を通過させ、高い周波数のほうの信号の通過を阻止し、第2のフィルタ回路は高い周波数のほうの信号を通過させ、低い周波数のほうの信号の通過を阻止する構成とした。
【0033】
以上の構成とすることにより、共振コイルからは共振コイルと第2の容量により共振する低い周波数のほうの信号を出力することが出来るととともに、負荷コイルからは、共振コイルと第1の容量で共振する高い周波数のほうの信号を図26で示した従来技術と同様に磁気共鳴方式により出力することが出来る。
【0034】
ここで、従来の電磁誘導方式による非接触での電力伝送で用いられるコイルの大きさの一例としては、携帯機器等への充電等に用いられる5W程度以下であれば、直径数cmで数10ターン程度の巻き数であり、電気自動車等への充電に用いられる数kWクラスでは、直径数10cmで数10ターン程度の巻き数であり、用いられる周波数は数10kHzから数100kHzであり、伝送距離としては数cm以下が一般的である。また、磁気共鳴方式による非接触での電力伝送で用いられるコイルの大きさとしては、携帯機器等への充電等に用いられる5W程度以下であれば、直径数cmで数10ターン程度の巻き数であり、電気自動車等への充電に用いられる数kWクラスでは、直径数10cmで数ターンから数10ターン程度の巻き数であり、用いられる周波数は数MHzから10数MHzであり、共振コイルに電力を給電する給電コイルおよび共振コイルから電力を取り出す負荷コイルの巻き数は1ターン程度である。また、磁気共鳴方式の伝送距離は数cmから数10cm程度であり、給電コイルと共振コイルおよび共振コイルと負荷コイル間の距離としては1cm以下程度が一般的である。
【0035】
次に磁気共鳴コイル(共振コイル)のコイル間距離の変動による共鳴系の入力インピーダンスの変動を可変インピーダンス回路により調整した場合、送信側の回路も大きくなってしまうという課題については、上述の受信側のコイルが搭載機器と比較して大きくなってしまうという課題と同様に負荷コイルに少なくとも直列接続か並列接続により負荷コイルのインダクタンスと共振する共振容量を付加する構成とした。
【0036】
以上の構成とすることにより、磁気共鳴コイルのコイル間距離の変動による1次コイルと2次コイル間の周波数特性の変動が小さくなる(コイル間距離の変動による入力のインピーダンス変動が小さくなる)という結果が実験的に得られていることから、可変インピーダンス回路を用いなくても、コイル間距離の変動による1次コイルと2次コイル間の周波数特性の変動を小さく抑えることができるので、送信回路についても小型化が可能となる。
【0037】
さらに、磁気共鳴コイルのコイル間距離の変動による1次コイルと2次コイル間の周波数特性の変動を小さくする手段としては、1次コイル側の共鳴コイルを複数設け、それぞれのコイルが負荷コイルとの距離に対応して最も伝送効率が良くなるような巻き数とすることで、1次側の共鳴コイルと負荷コイル間の距離に対応して最も効率のよい共鳴コイルと主に伝送が可能となるため、上記手段によってもコイル間距離の変動による1次コイルと2次コイル間の周波数特性の変動を小さくすることが可能となる。
【0038】
また、磁気共鳴コイルのコイル間距離が数mm程度のごく近い距離で伝送効率が低下してしまうという課題については、給電コイルと1次側の磁気共鳴コイルのコイルの配置構成を入れ替え、1次側の共鳴コイルと負荷コイル間の距離よりも給電コイルと負荷コイル間の距離が近くなるようにした。これにより、1次コイルと2次コイルが数mm程度の磁気共鳴伝送では伝送効率が劣化する、ごく近距離伝送の場合でも伝送効率の低下を抑えることができる。これは、ごく近距離では、給電コイルと負荷コイルが距離的に近くなることで、給電コイルから負荷コイルに直接電磁誘導により電力が伝送できるためである。
【0039】
さらに、非接触電力伝送システムでは、非接触充電に対応しているか確認するための機器の認証や送信電力量の制御等を行うための通信手段として、送信側は送電電力の信号にASK(Amplitude Shift Keying)変調方式等の変調をかけるとともに、受信側では内部に電力を持たなくても受電した信号を利用して通信が可能である負荷変調方式を用いる構成とすることにより、比較的簡易に通信が可能となる非接触電力伝送システムを得ることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明により、非接触通信手段とバッテリへの充電を行なうための非接触による受電装置を携帯端末装置等に搭載した場合でも、これらを搭載したことによる端末の大型化を極力抑えられるとともに、非接触通信や非接触による受電を行なう場合、磁気共鳴方式を用いることにより、伝送距離が大きくなってもアンテナ間の伝送損失が少なく、携帯端末装置等の通信感度への影響が少ない非接触電力伝送システム、受電装置、及び送電装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図2】実施例2に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図3】実施例3に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図4】送信が磁気共鳴方式、受信が電磁誘導方式と従来の電磁誘導方式でのコイル間距離による伝送効率の差を示す実験結果である。
【図5】磁気共鳴方式と従来の電磁誘導方式での伝送効率特性のコイル間距離による依存性の差を示す実験結果である。
【図6】送信が磁気共鳴方式、受信が電磁誘導方式のコイル間距離による依存性の差を示す実験結果である。
【図7a】実施例1に係る磁気共鳴方式のコイルの構成を模式的に示した模式図である。
【図7b】実施例1に係る磁気共鳴方式のコイルの構成を、伝送方向に対し真横から見た模式図である。
【図8】実施例4に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図9】実施例5に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図10】実施例6に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図11】実施例7に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図12】実施例8に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図13】実施例9に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図14】実施例10に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図15】実施例11に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図16a】実施例12に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図16b】実施例12に係る非接触充電システムの1次側の共鳴コイル群の他の例を示す図である。
【図17】実施例13に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図18】実施例14に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図19】実施例15に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図20】実施例16に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図21】実施例17に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図22】実施例12に係る非接触充電システムの周波数特性を模式的に示した模式図である。
【図23】実施例13に係る非接触充電システムの周波数特性を模式的に示した模式図である。
【図24】非接触通信と非接触による送電を行なう場合の従来例を示すブロック図である。
【図25】従来技術で実現される電磁誘導方式のコイル構成を模式的に示した模式図である
【図26】磁気共鳴方式で非接触で電力伝送を行なう場合の従来例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0042】
本発明の非接触による充電システムの第1の実施例を図面によって説明する。
【0043】
図1は、本発明に使用される非接触による充電システムを有した第1の実施例を示した図である。
【0044】
図において、702は携帯端末装置、140は電力を非接触で送電を行なう送電装置、150は非接触通信装置であり、図の携帯端末装置702は、磁気共鳴コイル101、負荷コイル102、切り替えスイッチ110、整流用ダイオード121、122、123、124、125、126、127、128、平滑用容量130、131、非接触データ通信部103、充電制御部104、バッテリ105、端末無線通信部106、検知出力部107より構成され、さらに、切り替えスイッチ110には減衰抵抗111、112が付加されている。また、図の送電装置140は、磁気共鳴コイル141、給電コイル142、増幅部143、発振器144、制御部145、検出部146より構成され、非接触通信装置150は電磁誘導コイル151、共振容量152、発振器153、非接触データ通信部154より構成されている。
【0045】
図において、携帯端末装置702は、両端が接続されていない10数ターン程度の平面形状の磁気共鳴コイル101に対し、数mm程度離れたところに負荷コイル102を設けるとともに、負荷コイル102の出力端には切り替えスイッチ110が接続される。さらに、切り替えスイッチ110の一方の出力が整流用ダイオード121〜124より構成される全波整流回路に入力され、整流出力は非接触データ通信部103に入力される。
【0046】
また、切り替えスイッチ110の他の一方の出力は整流用ダイオード125〜128より構成される全波整流回路に入力され、整流出力が充電制御部104を介しバッテリ105に供給されている。
【0047】
また、図の送電装置140は両端が接続されていない10数ターン程度の平面形状の磁気共鳴コイル141に対し、数mm程度離れたところに給電コイル142を設けるとともに、給電コイル142の入力端には増幅器143を介し発振器144が接続される。
【0048】
さらに、図の非接触通信装置150は、十数ターン以上の電磁誘導コイル151のコイル端に共振容量152とともに発振器153が並列に接続されている。
【0049】
以上の充電システムにおいて、まずは、非接触通信装置150から携帯端末装置702に非接触により通信を行なう場合の動作について説明する。
【0050】
非接触通信装置150にある発振器153では、非接触通信が行なわれる搬送波周波数(例えばRFIDでは13.56MHz等)で発振するとともに、非接触データ通信部154において、送信を行なうデータに対応して発振周波数に変調をかけ、変調された通信信号は、電磁誘導コイル151と共振用容量152の共振周波数が搬送周波数に等しくなるように調整されたアンテナにより、電磁エネルギーとして効率よく放射される。
【0051】
一方、携帯端末装置702では、磁気共鳴コイル101が、非接触通信信号に等しい周波数に共振するように調整されているため、非接触通信装置150からの放射によりコイル101に最も電流が流れることで、負荷コイル102の両端には高い電圧が励起され、この励起された電圧が、切り替えスイッチ110を介してそのまま整流用ダイオード121〜124で構成される整流回路に入力される。入力された非接触通信信号は、平滑用容量130により平滑化され直流電圧となり非接触データ通信部103へ電源として供給されるとともに、変調されたデータも非接触データ通信部103において復調される。一方、非接触データ通信部103から、非接触通信装置150への通信は、磁気共鳴コイル101で受信した信号に対し、送信データに対応させて非接触データ通信部103の入力インピーダンスを変化させることで磁気共鳴コイル101から電磁誘導コイル151への反射量が変動することを非接触通信装置150が検出することにより、逆方向の通信を行なっている。
【0052】
次に、送電装置140から携帯端末装置702に非接触により送電を行なう場合の動作について説明する。
【0053】
送電装置140にある発振器144では、電力を非接触で送電する周波数として、非接触通信装置150で用いられているRFID等と同じ13.56MHzで発振し、増幅部143において電力増幅し、給電コイル142により磁気共鳴コイル141を励振する。磁気共鳴コイル141は、送電周波数と等しい周波数で共振するように調整されているため、送電周波数で最も大きい電流が流れ強い磁界が発生する。
【0054】
一方、携帯端末装置702では、磁気共鳴コイル101は送電周波数に等しい周波数で共振するため、送電信号で最も電流が流れ、負荷コイル102の両端には高い電圧が励起される。この励起された電圧がある一定以上の値になった場合、充電制御部104は、切り替えスイッチ110を電力受電側に切り替えるので、受電した信号は、整流用ダイオード125〜128により構成される整流回路により整流され、平滑用容量131により直流電圧となり充電制御部104に供給される。充電制御部104では供給された直流電圧をバッテリ105に充電を行うとともに、過充電されない等によりバッテリ105が破損しないように充電量の制御を行う。
【0055】
なお、携帯端末装置702の検知出力部107は特定の識別子を出力しており、携帯端末装置702が送電装置140に接近し、検出部146で検知出力部107からの識別子を検知すると制御部145は発振器144をオン状態にして送電を開始する。
【0056】
さらに、送電装置140からの送電を行う場合、切り替えスイッチ110は、受電側に切り替わっているが、このとき、非接触通信側に減衰抵抗111、112を介し非接触通信側にも受電した信号を減衰させて非接触通信側にも入力する構成とした。このような構成とすることで、送電信号に非接触通信信号を重畳した場合、受電と同時に非接触通信も可能となる。ここで、減衰抵抗により受電信号レベルを下げるのは、非接触通信信号に比べ、送電信号のほうがレベルがかなり高いためである。
【0057】
以上の構成とすることにより、送電装置140と携帯端末装置702間の伝送は、磁気共鳴方式による結合のため、従来の電磁誘導方式に比べ、伝送距離が長くなっても損失が少ない充電システムを得ることができ、さらに、非接触通信と非接触による電力の伝送に用いるアンテナを共用化することで、これらを搭載した場合に伴なう携帯端末装置702の実装容積の増加を極力抑えることが可能となる。
【実施例2】
【0058】
図2は本発明に使用される非接触による充電システムの第2の実施例を示した図である。
【0059】
図は、図1で示した第1の実施例と比較して携帯端末装置702に電磁誘導方式のコイル、送電装置220に磁気共鳴方式のコイルを用いたものである。なお、図は、通信装置と送電装置を一体化した送電装置220を用いているが、これに限定するものではない。図1のように、通信装置と送電装置が別体になっている場合にも、携帯端末装置に電磁誘導方式のコイル、送電装置に磁気共鳴方式のコイルを用いても良い。
【0060】
図において、201は2〜3ターン程度のループアンテナコイル、202、203はループアンテナコイル201と送信信号周波数で共振する共振容量、220は非接触通信手段を兼ねた非接触による電力送電装置であり、非接触通信手段を備えた送電装置220は、非接触データ通信部221を備えており、その他、図1に対応する部分については同一符号を付けて説明を省略する。
【0061】
送電装置220は、携帯端末装置702と非接触通信を行なう場合、非接触データ通信部221は発振器144の発振信号を通信データにより変調し、変調された信号を増幅部143により増幅し、給電コイル142と磁気共鳴コイル141より構成される送電アンテナにより送信する。
【0062】
送電装置から送信された信号は、携帯端末装置702のループアンテナコイル201により受信され、切り替えスイッチ110を介し共振容量202の容量値と共振することで、整流用ダイオード121〜124により構成される整流回路に送信周波数において最も高い電圧信号が加わる。そして整流回路より出力された非接触通信信号は、平滑用容量130により平滑化され直流電圧となり、非接触通信部103へ電源として供給されるとともに、変調されたデータも非接触データ通信部103において復調される。
【0063】
次に、送電装置220から携帯端末装置702に送電を行なう場合の動作について説明する。
【0064】
送電装置220にある発振器144の信号を増幅部143において電力増幅し、給電コイル142により磁気共鳴コイル141を励振することで、磁気共鳴コイル141より送電信号が出力される。
【0065】
送電された信号は、携帯端末装置702のループアンテナコイル201により受電されるが、この受電された電圧がある一定以上の値になった場合、充電制御部104は、切り替えスイッチ110を電力受電側に切り替えるので、切り替えスイッチ110を介し共振容量203の容量値と共振することで、整流用ダイオード125〜128により構成される整流回路で送電周波数において最も高い電圧となるとともに、受電した信号は、平滑用容量131により直流電圧となり充電制御部104に供給される。充電制御部104では供給された直流電圧をバッテリ105に充電を行なうとともに、過充電等によりバッテリ105が破損しないように充電量の制御を行なう。
【0066】
さらに、送電装置220からの送電を行う場合、切り替えスイッチ110は、受電側に切り替わっているが、このとき、非接触通信側に減衰抵抗111、112を介し非接触通信側にも受電した信号を減衰させて非接触通信側にも入力する構成のため、送電信号に非接触通信信号を重畳することにより、受電と同時に非接触通信も可能となる。
【0067】
以上の構成とすることにより、第1の実施例と同様の効果が得られる上に、受電用アンテナとして、2〜3ターン程度のループアンテナコイルを用いることができることで、携帯端末装置702をより小型にすることができる。
【0068】
さらに、受電用アンテナとして、2〜3ターン程度のループアンテナコイルを用いることにより、端末無線通信部106の通信に用いる電波の反射は小さくなるので、端末無線通信部106への影響をより小さくすることができる。
【実施例3】
【0069】
図3は本発明に使用される非接触による充電システムの第3の実施例を示した図である。
【0070】
図において、301は共振容量、310は切り替えスイッチ、311は減衰抵抗、312、313、314、315は非接触通信と非接触による電力の受電とで共用化された整流用ダイオードであり、その他、図2に対応する部分については同一符号を付けて説明を省略する。
【0071】
送電装置220では、携帯端末装置702と非接触通信を行なう場合、非接触データ通信部221は発振器144の発振信号を通信データにより変調し、変調された信号を増幅部143により増幅し、給電コイル142と磁気共鳴コイル141より構成される送電アンテナにより送電される。
【0072】
この送信された信号は、携帯端末装置702のループアンテナコイル201と共振容量301により送信周波数信号で共振して最も大きな信号振幅で受信され、共用化された整流用ダイオード312〜315により整流される。このとき充電制御部104で整流された電圧がある一定値以上であると充電のための送電であると判断し、切り替えスイッチ310を充電側に切り替えるので、整流された電圧が平滑用容量131により平滑化され充電制御部104によりバッテリ105に充電のための直流電圧を供給する。
【0073】
以上の実施例では、第2の実施例と同様の効果が得られる上に、非接触通信用と受電用の整流ダイオードを共用化することにより、携帯端末装置702をより小型にすることができる。
【0074】
次に、本発明の実施例における効果を図4、図5および図6を参照して説明する。
【0075】
図4は、図2の非接触による充電システムの第2の実施例で示したように、送信側を磁気共鳴方式、受信側をループ状のアンテナコイルと共振容量により構成される従来の電磁誘導方式としたときの伝送効率特性と、図25に示すように送受信側とも従来の電磁誘導方式を用いた場合のコイル間距離に対する伝送効率の実験結果を示したものであり、図の横軸はコイル間距離、縦軸は伝送効率である。
【0076】
図2の送信側の磁気共鳴コイルの直径は4cmであり、巻き数は約30ターンで共鳴周波数は約20MHzであり、受信側は、直径3cmの約3ターンのループコイルと100pFの共振容量による直列共振型のループアンテナコイルとなっており、図25の電磁誘導方式の送受コイルの直径は4cm、巻き数は約20ターンで伝送周波数は約120kHzであり、共振容量は数μFである。
【0077】
図から図25の従来技術の電磁誘導方式ではコイル間距離が短い場合は伝送効率に優れるが、コイル間距離が4mm程度離れると効率は50%程度に落ちる。これに対し、第2の実施例ではコイル間距離が4mmでも効率は約75%が得られており、コイル間距離が離れても送信が磁気共鳴方式、受信が電磁誘導方式による伝送のほうが、伝送効率の低下が少ないことが分かる。
【0078】
また、図5は、図1で示した第1の実施例の非接触電力伝送方式として送信、受信とも磁気共鳴方式としたときのコイル間距離に対する伝送損失の周波数特性と、送信、受信とも2〜3ターン程度のループ状のコイルと共振容量により構成される従来の電磁誘導方式での伝送損失の周波数特性の実験結果を示したもので、図の横軸は周波数、縦軸は伝送損失である。
【0079】
また、実験に用いたコイルとして、図1の磁気共鳴方式は、磁気共鳴コイルの直径は4cmであり、巻き数は約30ターンで共鳴周波数は約20MHzであり、給電コイルおよび負荷コイルとも直径は3cmで巻き数は1ターンである。一方、従来の電磁誘導方式のループアンテナコイルは、直径4cm、巻き数は約3ターンで伝送周波数は磁気共鳴方式と同じ約20MHzであり、共振容量は百数十pFである。
【0080】
図から図1で示した第1の実施例の磁気共鳴方式を用いた電力伝送方式ではコイル間距離により周波数依存性があるが、従来の電磁誘導方式よりも伝送損失が少ないことが分かる。
【0081】
次に、図6は、図2で示した非接触による充電システムの第2の実施例で非接触通信手段として送信側を磁気共鳴方式、受信側を従来の2〜3ターン程度のループ状のアンテナと共振容量により構成される電磁誘導方式としたときのコイル間距離に対する周波数特性の実験結果を示したものである。実験に用いたコイルは、直径4cm、巻き数は約3ターンであり、共振容量は百数十pFである。
【0082】
図5と図6を比較すると、図5で示した送受信とも磁気共鳴方式を用いるよりも、図2で示した第2の実施例のように、送信側を磁気共鳴方式、受信側を従来の磁界結合型ループアンテナにしたほうがコイル間距離に対する周波数特性変動が少ないことから、送信周波数を例えば13.56MHz等に固定した場合であってもコイル間距離によらず安定した受電電力を得ることができる。
【0083】
また、図7aには、本発明の非接触による充電システムの第1の実施例の磁気共鳴方式のコイルの構成を示した模式図であり、図7bは、図7aを伝送方向に対し真横から見た模式図であり、図1に対応する部分については同一符号を付けて説明を省略する。給電コイル142、磁気共鳴コイル141、101、負荷コイル102のコイル面は互いに平行に配置されており、コイルの中心点が一直線にある図7bの構成でz軸上でのコイル間距離を最適化すれば最もコイル間の伝送効率が高くなる構成であることから、実施の形態としては図7bの配置を基本に以下の実施の形態についても説明する。
【実施例4】
【0084】
図8は本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムの第4の実施例を示した図である。
【0085】
図において、702は携帯端末装置、150は非接触通信装置、420は電磁誘導方式による送電装置より構成され、図の携帯端末装置702は、磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401、負荷コイル402、共鳴容量403、ローパスフィルタ404、共振容量405、整流回路406、電源回路407、負荷回路408、ハイパスフィルタ409、負荷変調回路410、検波、復調回路411、整流回路412、メモリ413、制御回路414を備えている。また、電磁誘導による送電装置420は、電磁誘導コイル421、共振容量422、電力増幅器423、発振器424、制御部425、検出部426を備えており、その他、図1に対応する部分については同一符号を付けて説明を省略する。
【0086】
図において、携帯端末装置702は、磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401と並列に共鳴容量403を接続するとともに、ローパスフィルタ404を介して共振容量405が並列に接続され、整流回路406、電源回路407、負荷回路408が接続される。
【0087】
また、負荷コイル402は磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401と数mm程度の距離に近接して配置し磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401と磁気的に結合している。さらに、負荷コイル402はハイパスフィルタ409を介して負荷変調回路410、検波、復調回路411、整流回路412に接続される。
【0088】
また、電磁誘導方式による送電装置420は、電磁誘導コイル421と並列に共振容量422が接続され、電力増幅器423により増幅された発振回路424からの送電信号周波数と共振する構成となっている。
【0089】
以上の非接触電力伝送システムにおいて、まずは非接触通信装置150から携帯端末装置702に非接触により通信を行う場合の動作について説明する。
【0090】
非接触通信装置150にある発振器153では、非接触通信が行なわれる搬送波周波数(例えばRFIDでは13.56MHz等)で発振するとともに、非接触データ通信部154および変復調回路430において、送信を行なうデータに対応して発振周波数に変調をかけ、変調された通信信号を電磁誘導コイル151と共振容量152の共振周波数が搬送周波数に等しくなるように調整されたアンテナにより、電磁エネルギーとして効率よく放射される。
【0091】
一方、携帯端末装置702では、磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401と共鳴容量403での共振周波数が非接触通信周波数の13.56MHzとなるように調整されているため、磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401には大きな電流が流れ強い磁界が発生する。この強い磁界により、磁気的に結合された負荷コイル402によりハイパスフィルタ409と負荷変調回路410を介し検波、復調回路411に入力され、受信した非接触信号を復調し制御回路414に入力する。制御回路414では受信信号に対応したデータをメモリ413より読み出して負荷変調回路410により負荷変調をかける。これに対し、非接触通信装置150では、負荷変調回路410からの負荷変調に対応して携帯端末装置702の受信インピーダンスが変動するのを変復調回路430により検出して復調し非接触データ通信部154に伝送する構成となっている。このとき、ローパスフィルタ404は受信した信号周波数に対しては通過を阻止するため、ローパスフィルタ404以降の回路は無視することが出来るとともに、ハイパスフィルタ409は受信した信号周波数に対しては通過特性であるため、ここでの損失は無視することができる。また、制御回路414およびメモリ413への電力の供給は非接触通信装置150から受信した信号を整流回路412により整流した電力を用いることでバッテリは不要であるし、また、携帯端末装置702に内蔵しているバッテリから供給してもよい。
【0092】
次に、電磁誘導方式による送電装置420から携帯端末装置702に非接触により送電を行なう場合の動作について説明する。
【0093】
電磁誘導方式による送電装置420では、検出部426により携帯端末装置702が近くに置かれた場合を検出して制御部425により発振器424および電力増幅器423をオン状態とする。これにより、発振器424では、電力を非接触で送電する周波数として、非接触通信装置150で用いられているRFID等の13.56MHzよりも低い、例えば100kHz帯の周波数で発振し、電力増幅器423において電力増幅して電磁誘導コイル421と共振容量422による共振回路に送電電力を供給する。電磁誘導コイル421と共振容量422は、供給された送電電力の周波数である100kHz帯で共振するため、電磁誘導コイル421には、大きな電流が流れ強い磁界が発生する。このとき、電磁誘導コイル421と接近して携帯端末装置702が置かれることにより、磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401と共振容量405による共振回路が送電電力の周波数と等しいため、電磁誘導コイル421と磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401は電磁誘導により強く結合するので、共振容量405から受電した100kHz帯の電力を取り出すことができる。このため、共振容量405に接続された整流回路406により直流電圧に整流され電源回路407により一定の電圧に変換された後、負荷回路408に受電した電力が供給される。このとき、ローパスフィルタ404は受電した電力の周波数に対し通過特性のため、ここでの損失は無視することができる。また、ハイパスフィルタ409は受電した電力の周波数に対し通過を阻止するため、負荷コイル402およびハイパスフィルタ409以降の回路の影響を無視することができる。
【0094】
また、電源回路407を充電制御回路、負荷回路408をバッテリに置き換えることで非接触充電システムを実現することができる。
【0095】
以上の構成とすることにより、100kHz帯の受電電力には電磁誘導方式による非接触電力伝送を行い、13.56MHzの非接触通信では、受電に用いた電磁誘導コイルを磁気共鳴コイルとして用いることにより、図1で示した非接触による充電(電力伝送)システムと同様の効果が得られる上に、非接触通信の周波数と非接触による電力伝送の周波数が異なる場合でも通信および受電が可能な充電(電力伝送)システムを得ることができる。
【実施例5】
【0096】
図9は本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムの第5の実施例を示した図である。
【0097】
図において、441は負荷変調回路、442は検波、復調回路、443は制御回路、444は変復調部であり、その他、図8に対応する部分については同一符号を付けて説明を省略する。
【0098】
図9において、携帯端末装置702では、共振容量405と整流回路406間に負荷変調回路441と検波、復調回路442を付加した構成となっており、電磁誘導方式による送電装置420は、増幅器423と共振容量422間に変復調部444が付加した構成となっている。
【0099】
図において、非接触通信装置150と携帯端末装置702間の非接触通信は、図8で示した第4の実施例と同様であるため説明を省略し、電磁誘導方式による送電装置420から携帯端末装置702に非接触により送電を行なう場合の動作について説明する。
【0100】
電磁誘導方式による送電装置420では、発振器424からの発振信号を電力増幅器423において電力増幅した送電電力信号を変復調部444において変調し、共振コイル421より送電される。この送電電力を携帯端末装置702の磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401により受電する。受電した受電信号は整流回路406により整流され受電を行うとともに、検波、復調回路442により受電した信号を復調し、受信データ信号を制御回路443に入力する。制御回路443では、受信したデータ信号に対応するデータ信号を負荷変調回路441により負荷変調をかける。この負荷変調信号は、電磁誘導方式による送電装置420の変復調部444により復調される。
【0101】
以上の構成とすることにより、図8で示した非接触による充電(電力伝送)システムと同様の効果が得られる上に、非接触による電力伝送においても送電電力信号に対しても変調をかけることにより電力伝送と同時に通信を行うことが可能となるので、たとえば、携帯端末装置702が非接触により電力伝送に対応しているか等の認証や送電電力制御を行う際に必要となる制御のための通信も電力伝送と信号に重畳して行うことが可能となる。
【実施例6】
【0102】
図10は本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムの第6の実施例を示した図である。
【0103】
図において、451はレベル検出回路、452は切り替えおよび電源回路、453、454、455は電界効果トランジスタ、456は整流回路、460は電磁誘導方式による送電装置である。さらに、電磁誘導方式による送電装置460は電磁誘導コイル461、共振容量462、電力増幅器463、発振器464、制御部465、検出部467より構成されており、その他、図8に対応する部分については同一符号を付けて説明を省略する。
【0104】
図において、携帯端末装置702は、共鳴容量403と共振容量405間にレベル検出回路451および電界効果トランジスタ453を設けるとともに、整流回路406は切り替えおよび電源回路452を介して負荷回路408に接続されている。さらに、負荷コイル402には、電界効果トランジスタ454と整流回路456を介し切り替えおよび電源回路452に接続されている。さらに、電磁誘導方式による送電装置460は、電磁誘導コイル461と並列に共振容量462が接続され、電力増幅器463により増幅された発振回路464からの送電信号周波数と共振する構成となっており、電磁誘導方式による送電装置420と同様の構成であるが、電磁誘導コイル461と共振容量462による共振周波数および発振器464の発振周波数が、非接触通信装置150の共振周波数と等しい13.56MHzとなっている。
【0105】
以上の非接触電力伝送システムにおいて、まずは非接触通信装置150から携帯端末装置702に非接触により通信を行う場合について説明する。
【0106】
携帯端末装置702のレベル検出回路451は、信号を何も受信していない状態では電界効果トランジスタ455をオン状態とするとともに、電界効果トランジスタ453、454をオフ状態とすることで 非接触通信装置150より13.56MHzの非接触通信信号を受信した場合は、磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401、共鳴容量403および負荷コイル402により構成される磁気共鳴結合により、負荷変調回路410、検波、復調回路414および整流回路412に受信され通信が行われる。
【0107】
次に、電磁誘導方式による送電装置420からの100kHz帯の非接触による送電電力を受電した場合、レベル検出回路451は、電界効果トランジスタ453をオン状態とするとともに、電界効果トランジスタ454、455をオフ状態とする。これにより、磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401と共振容量405より構成される共振回路により電磁誘導方式により電磁誘導方式による送電装置420からの送電電力を受電し、整流回路406と切り替えおよび電源回路452を介して負荷回路408に電力が供給される。
【0108】
次に、電磁誘導方式による送電装置460から13.56MHzの非接触による送電電力を受電した場合、レベル検出回路451は、電界効果トランジスタ454をオン状態とするとともに、電界効果トランジスタ453、455をオフ状態とする。これにより、磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401、共鳴容量403および負荷コイル402より構成される磁気共鳴結合により、電磁誘導方式による送電装置460からの送電電力を受電し、整流回路456と切り替えおよび電源回路452を介して負荷回路408に電力が供給される。
【0109】
以上の構成とすることにより、図8で示した非接触による充電(電力伝送)システムと同様の効果が得られる上に、非接触による電力伝送については、100kHz帯の送電には電磁誘導による受電を、13.56MHzの電力伝送については磁気共鳴方式による受電を行うことにより、周波数帯が異なる場合でも接触による電力伝送の受電が可能となる。
【実施例7】
【0110】
図11は本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムの第7の実施例を示した図である。
【0111】
図において、470は非接触通信部、471は充電制御回路、472はバッテリ、473はハイパスフィルタ、480は非接触通信装置であり、図の非接触通信部470は、切替え回路474、変復調回路475、発振器476、負荷変調回路477、検波復調回路478より構成され、非接触通信装置480は、電磁誘導コイル481、共振容量482、負荷変調回路483、検波、復調回路484、整流回路485、制御回路486、メモリ487より構成されており、その他、図8に対応する部分については同一符号を付けて説明を省略する。
【0112】
図において、携帯端末装置702は、整流回路406の出力に充電制御回路471、バッテリ472が接続され、負荷コイル402はハイパスフィルタ473と切り替え回路474を介して変復調回路475および発振器476が接続される。さらに切り替え回路474には負荷変調回路477と検波、復調回路478が接続されている。
【0113】
また、非接触通信装置480は、電磁誘導コイル481と並列に共振容量482が接続され、さらに、負荷変調回路483、検波、復調回路484および整流回路485が接続される。
【0114】
図において、電磁誘導方式による送電装置420からの送電電力を受電する場合の動作について説明する。送電装置420より送電された100kHz帯の送電電力信号は、携帯端末装置702の磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401と共振容量405による共振回路により受電し整流回路406および充電制御回路471を介しバッテリ472に充電を行う。
【0115】
次に、非接触通信装置150から携帯端末装置702に非接触により通信を行う場合の動作について説明する。非接触通信装置150から送信された非接触通信信号は、磁気共鳴を兼ねた電磁誘導コイル401、共振容量403および負荷コイル402により構成される磁気共鳴方式により受信し、ハイパスフィルタ473を介して切り替え回路474に入力される。切り替え回路474では、信号が入力されない状態では負荷変調回路477側に切り替わるようにしているため、受信した非接触通信信号は検波、復調回路478および負荷変調回路477により変復調されるので非接触通信が可能となる。
【0116】
次に、非接触通信装置480と通信を行う場合について説明する。非接触通信装置480では発振器は内蔵していないため、例えばRFIDカードのような内部に電源を持たない受動的通信となることから、携帯端末装置702において非接触通信装置480と通信を行いたい場合は、発振器476および変復調回路475をオン状態とするとともに切り替え回路474を変復調回路475側に切り替える。これにより、発振器475からの発振信号を変復調回路475により変調して非接触通信装置480に送信する。非接触通信装置480では受信した携帯端末装置702からの非接触通信信号を検波、復調回路484により復調する。また、非接触通信装置480からの非接触通信信号は負荷変調回路483により負荷変調される。携帯端末装置702では、インピーダンスの変動を変復調回路475より復調することで、非接触通信装置480との通信が可能となる。
【0117】
以上の構成とすることにより、図8で示した非接触による充電(電力伝送)システムと同様の効果が得られる上に、非接触通信装置150は質問器(RFIDにおけるリーダライタ)、非接触通信装置480は応答器(RFIDにおけるRFIDカード)に相当する。また、携帯端末装置702に負荷変調回路477、検波、復調回路478(応答器に相当)に加え変復調回路475、発振器476(質問器に相当)を付加することにより、内部に発振器を持たないRFIDカード等との通信が可能となる。
【実施例8】
【0118】
図12は本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムの第8の実施例を示した図である。
【0119】
図において、携帯端末装置702は図11の第7の実施例で示した携帯端末装置を2台近接して配置した面であり、互いの装置を区別するためにもう一方の携帯端末装置には図番号に、ダッシュ(’)を付す。
【0120】
図において、携帯端末装置702より携帯端末装置702’にあるメモリ413’の内容を読み出す場合の動作について説明する。携帯端末装置702では発振器476および変復調回路475をオン状態とするとともに切り替え回路474を変復調回路475側に切り替える。これにより、発振器475からの発振信号を変復調回路475により変調して携帯端末装置702’に送信する。携帯端末装置702’では通常、負荷変調回路477’側に切り替わっているため、受信した携帯端末装置702からの非接触通信信号を検波、復調回路478’により復調し、制御回路414’では受信データに対応したデータ信号をメモリ413’より読み出して負荷変調回路477’により負荷変調を行う。携帯端末装置702では、インピーダンスの変動を変復調回路475より検出して復調し、携帯端末装置702’からの受信データ信号を受信する。
【0121】
以上の構成とすることにより、図11で示した非接触による充電(電力伝送)システムと同様の効果が得られる上に、携帯端末装置702に質問器に対応する回路(変復調回路475、発振器476)を付加することにより、携帯端末装置間でも非接触通信が可能となる。
【実施例9】
【0122】
図13は、本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムの第9の実施例を示した図である。
【0123】
図において、501は送電器、502は受電器、503は給電コイル、504は1次側共鳴コイル、505は負荷回路、506は高周波電源であり、その他、図8の第4の実施例に対応する部分については同一符号を付けて説明を省略する。
【0124】
図において、送電器501は、高周波電源506と給電コイル503と1次側共鳴コイル504より構成され、給電コイル503に近接して1次側共鳴コイル504が置かれるとともに、給電コイル503に高周波電源506が接続されている。
【0125】
受電器502は、負荷コイル505と整流回路406と電源回路407と負荷回路408より構成され、負荷コイル505に整流回路406と電源回路407を介して負荷回路408が接続されており、送電器501と受電器502により非接触電力伝送システムを構成している。
【0126】
図において、高周波電源506からは、1次側共鳴コイル504の自己インダクタとコイルの巻き線間の浮遊容量(寄生容量)により決まる自己共振周波数に等しい周波数で給電コイル503に給電を行う。給電コイル503は電磁誘導作用により自己共振周波数に等しい周波数で1次側共鳴コイル504を励振することで1次側共鳴コイル504には大きな電流が流れ強い磁界が発生する。
【0127】
ここで、1次側共鳴コイルのインダクタンス値をL、線間の浮遊容量をCとするとコイルの自己共振周波数fは次式で求められる。
【0128】
f=1/(2π√(LC))
ただし、自己共振周波数は給電コイル503と負荷コイル505との結合状態により共振周波数は変動するため、実際の自己共振周波数はシミュレーションや実験による確認が必要となる。
【0129】
以上の構成で、受電器502が送電器501に近接して置かれると、1次側共鳴コイル504からの強い磁界が受電器502の負荷コイル505と磁気的に結合し、負荷コイル505の両端子間に起電力が発生する。発生した起電力は整流回路406により直流電圧に整流され、電源回路407に入力される。電源回路407は、整流回路406より出力される電圧が送電電力や1次側共鳴コイル504と負荷コイル505間の距離により共鳴コイルの自己共振周波数のずれやコイル間距離による伝送効率の変化により変動するため、負荷回路408が必要とする一定の電圧値に変換して負荷回路408に供給する。
【0130】
以上の構成とすることにより、送電器501からの送電電力を受電器502において磁気的な結合により非接触で受電することが可能であるとともに、受電器502に用いるコイルとしては負荷コイル505のみで受電可能であることから、受信器502の小型化が可能となる。
【0131】
なお、図13で示したコイル形状の一般的に用いられる大きさおよび巻き数の一例を示すと、数W程度の小型携帯機器への充電の場合、給電コイル503は直径数cm、巻き数は1ターンから数ターン程度、1次側共鳴コイル504は直径数cm、巻き数は数十ターン程度で自己共振周波数としては、10MHz帯が用いられ、負荷コイル505としては直径数cm、巻き数は1ターンから数ターン程度である。
【0132】
一方、ノート型のパーソナルコンピュータへの給電や充電、電気自動車への充電など数十Wから数百W以上の送電に用いられるコイル形状の一般的に用いられる大きさおよび巻き数の一例を示すと、給電コイル503は直径数十cm、巻き数は1ターンから数ターン程度、1次側共鳴コイル504は直径数十cm、巻き数は数ターン程度で自己共振周波数は、数百Hzから1MHz程度であり、負荷コイル505は直径数十cm、巻き数は1ターンから数ターン程度である。
【0133】
上述の磁気共鳴方式では共鳴コイルの巻き線の抵抗成分による損失が大きいと伝送効率が低下する傾向にあるため、コイルの線材としては直径1mm〜数mm程度の銅線が一般的に用いられているが、導電率が高いものであれば他の線材であってもよい。また、送受のコイルの直径は伝送距離に関係し、直径が大きいほど伝送距離が伸びる傾向にある。また、送受のコイルの直径は互いに等しいほうがより高い効率が得られ易いが、従来の電磁誘導方式よりもコイル間の結合が強いため送受コイルの直径が多少異なっていても比較的高い伝送効率が得られることが磁気共鳴方式の特徴でもある。
【0134】
このことから、各コイルの直径は同一であっても異なってもよいし、各コイルは円筒形のコイルであってもスパイラル状の平面コイルであってもよい。さらに、平面コイルは、基板上に銅パターンとして形成してもよいし、フィルム状の上に銅パターンを形成してもよい。
【実施例10】
【0135】
次に、本発明の非接触による充電(電力伝送)システムの第10の実施例を図面によって説明する。
【0136】
図14は、本発明に使用される非接触による電力伝送システムの第10の実施例を示した図である。
【0137】
図において、511は共振を有した負荷コイル、512は共振容量であり、その他、図13に対応する部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0138】
図14は、図13で示した非接触による充電システムの第9の実施例と比較して、共振を有した負荷コイル511と共振容量512が直列に接続され直列共振回路を形成しており、その共振周波数が、1次共鳴コイル504の自己共振周波数と等しくなるように、共振を有した負荷コイル511と共振容量512の値を定めている。また、共振を有した負荷コイル511のインダクタンス値は、給電コイル503のインダクタンス値よりも大きくしている。
【0139】
以上の構成とすることにより、図13で示した第9の実施例と同様の効果が得られるのに加え、共振を有した負荷コイル511と共振容量512で共振回路を構成しているため、1次共鳴コイル504からの磁束と強く結合するのでコイル間距離を離した場合の伝送効率の低下をより小さくすることができる。言い換えれば、コイル間距離が変動しても入力インピーダンスの変化が少なくなるので、コイル間距離による周波数特性の変動を小さくすることができる。
【0140】
例えば、コイルの直径が数cmの場合の伝送距離は数cm程度、直径数10cmの場合は数10cmから1m程度の伝送距離が得られるので従来の電磁誘導方式の1cmから2cm程度に比べ比較的長い伝送距離を得ることができる。
【実施例11】
【0141】
図15は、本発明に使用される非接触による電力伝送システムを有した第11の実施例を示した図である。
【0142】
図において、521は1次側共鳴コイル、522は共鳴容量、523は励振コイルであり、その他、図14に対応する部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0143】
図において、1次側共鳴コイル521のインダクタンス値と共鳴容量522の容量値で決まる共振周波数に等しい信号を高周波電源506より励振コイル523を介して供給すると、共鳴コイル521と共鳴容量522により共振現象が発生し、大きい電流が流れ強い磁界が発生する。この構成では主に数十W以上の高い電力伝送に用いられ、コイルの大きさや巻き数の一般的な一例を示すと、共鳴コイル521の直径は数十cmから1m程度、コイルの線径は1cm程度、ターン数は1から2ターン程度である。また、励振コイルは線径数mm程度であり、共鳴コイル521に数ターン巻きつけるかフェライトコア等の磁性体を用いて励振する方法が一般的である。
【0144】
図15は、図14で示した非接触電力伝送システムの第10の実施例と比較して、給電コイルの代わりに励振コイル523を用いることにより、1次側の共鳴コイルを局所的な電磁誘導により励振して給電を行うもので、第10の実施例と同様の効果が得られる上に、送電側の共鳴コイルが1ターン程度で構成できるので送電器側の小型化も図ることができる。
【実施例12】
【0145】
図16aは、本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムを有した第12の実施例を示した図である。
【0146】
図において、531は1次側の共鳴コイル群であり、スパイラル形状の共鳴コイル531a、531bより構成され、これらは並行して一定間隔でスパイラル状に巻かれている。ここで、スパイラル形状の共鳴コイル531a、531bはお互いの自己共振周波数が異なるように構成されており、その他、図14に対応する部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0147】
図16aにおいて、受電器502で受電可能な距離内でスパイラル形状の共鳴コイル531aと531bの巻き数をそれぞれ異なる距離で最も効率がよくなるように調整する。例えば、スパイラル形状の共鳴コイル531aが最も効率がよくなる距離を距離a、共鳴コイル531bが最も効率がよくなる距離を距離bとすると、1次側の共鳴コイル531と共振を有した負荷コイル511の距離が距離aのときは、給電コイル503からの給電電力は主にスパイラル形状の共鳴コイル531aを介して共振を有した負荷コイル511に供給され、一方、スパイラル形状の共鳴コイル531bはインピーダンス整合が最適値よりずれることから電力の伝送はほとんど行われない。また、1次側の共鳴コイル531と共振を有した負荷コイル511の距離が距離bのときは、給電コイル503からの給電電力は主にスパイラル形状の共鳴コイル531bを介して共振を有した負荷コイル511に供給される。
【0148】
なお、スパイラル形状の共鳴コイル531a、531bのコイルの巻き線の長さ(巻き数)やコイルの巻き線の線径を変えることで自己共振周波数をそれぞれ変えることが可能である。
【0149】
このとき、コイル間の寄生容量は互いの共鳴コイルが並行して巻かれることにより、給電コイルや負荷コイルの影響に加え互いの結合の影響もあるため、自己共振周波数はシミュレーションや実験により求めることが必要である。
【0150】
以上の構成とすることにより、図14で示した第10の実施例と同様の効果が得られるのに加え、送電器側においても1次側の共鳴コイル531と共振を有した負荷コイル511とのコイル間距離による周波数特性の変動をより小さくすることができる。
【0151】
また、図16bは1次側の共鳴コイル群の531のもう一つの例を示したものである。
【0152】
図において、532は円筒形状の共鳴コイル群であり、円筒形状の共鳴コイル532a、532bより構成され、これらは並行して一定間隔で円筒形状に巻かれており、互いに自己共振周波数が異なっている。なお、円筒形状の共鳴コイル532a、532bのコイルの巻き線の長さ(巻き数)やコイルの巻き線の線径やコイルの内径を変えることにより、それらの自己共振周波数を変えることができる。
【0153】
これらの図では、コイル群は図では2つの構成であったが3つ以上でもよいし、給電コイルで給電が可能であれば並行に巻かなくともそれぞれ独立であってもよいし、一方がスパイラル状の平面コイルで他方が円筒形状のコイルであってもよい。
【0154】
以上の複数の共鳴コイルを用いた場合の送受コイル間の周波数特性について示したものを図22に示す。図では、図16aで示した1次側の共鳴コイルを自己共振周波数が互いに異なる複数のコイルで構成した場合の1次側給電コイルから2次側負荷コイル間の伝送特性について模式的に示した模式図である。図の横軸は周波数、縦軸は伝送損失である。図において自己共振周波数が互いに異なるコイルを共鳴コイルに用いることにより、周波数特性が広がることが分かる。これにより、コイル間距離により周波数特性が変動した場合でも、周波数帯域が広がったことで伝送効率の低下を小さくすることが可能となる。
【実施例13】
【0155】
図17は、本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムの第13の実施例を示した図である。
【0156】
図において、542はレベル検出回路、543は制御回路、541は電界効果トランジスタであり、その他、図14で示した非接触での電力伝送システムの第10の実施例に対応する部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0157】
図は、図14で示した第10の実施例と比較して、共振容量512の両端には電界効果トランジスタ541のドレインとソースが接続される。さらに、整流回路406で整流された直流出力の一部をレベル検出542により検出し、制御回路543に出力するとともに、制御回路543は電源回路407より整流された電源電圧の一部を電源に用いて電界効果トランジスタ541のゲートを制御する構成である。
【0158】
以上の構成において、電界効果トランジスタ541がオフ状態のときは、1次側共鳴コイル504で発生した磁界は、共振を有した負荷コイル511と共振容量512で構成される共振回路と強く結合し、これらの共振回路を通して整流回路406に受信電流が流れる。このとき、制御回路543は電界効果トランジスタ541をオン状態にすると、共振容量512の両端がショート状態となるため、共振を有した負荷コイル511は共振点がなくなる。このため、1次側共鳴コイル504で発生した磁界は、負荷コイル511により2次側では共振を伴わない電磁誘導により整流回路406に受信電力を供給する。制御回路543は、定期的に電界効果トランジスタ541をオンオフすることで、整流回路406から出力される整流電圧を比較し、より受信電力の高いほうに切り替える動作を行う。
【0159】
負荷コイル511と共振容量512による共振状態での受電は、1次側共鳴コイル504と負荷コイル511との距離がある程度離れたとき伝送効率が最も高くなり、逆にコイル間距離が数mm以下のごく近距離になるとインピーダンスの変動により伝送効率がかえって低下する。これに対し、負荷コイル511のみの受電では、受電側は共振回路を持たず、ごく近距離では電磁誘導伝送となるため、受電側は共振回路を持たないほうが伝送効率は高くなる。これは、給電コイルと共鳴コイルの結合と共鳴コイルと負荷コイルとの結合が同じ電磁誘導による伝送と見なせるためである。このため、コイル間距離がある程度離れている場合は、電界効果トランジスタ541をオフ状態にし、ごく近距離では、電界効果トランジスタ541をオン状態にして受電側に共振回路を持たない構成とすることにより、図14で示した実施例10と同様の効果が得られる上に、コイル間距離がごく近距離であっても伝送効率の劣化が小さい非接触電力伝送システムを得ることができる。
【0160】
また、図23に負荷コイルと直列に接続した共振容量を電界効果トランジスタによりオンオフすることの効果を模式的に示した模式図を示す。図の横軸はコイル間距離、縦軸は伝送損失である。図において、電界効果トランジスタをオン状態とした場合、負荷コイルは共振周波数を持たず電磁誘導による伝送となるため、コイル間距離が大きくなると急激に損失が増加する。一方、電界効果トランジスタをオフ状態とした場合、負荷コイルは共振容量により直列共振回路となるため、コイル間距離がある程度離れても伝送損失の増加は小さいが、ごく近距離になるとかえって伝送効率が低下する。このため、ごく近距離では電界効果トランジスタをオン状態として負荷コイルに共振回路を持たないようにすれば、近距離での伝送効率の低下を抑えることができることが分かる。
【実施例14】
【0161】
図18は、本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムを有した第14の実施例を示した図である。
【0162】
図において、551a、551b、551cは電界効果トランジスタ、552a、552b、552cは共振容量、553は共鳴容量であり、図17で示した第13の実施例に対応する部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0163】
図において、図17で示した第13の実施例と比較して、1次側共鳴コイルと並列に共鳴容量553が接続され、共振を有した負荷コイル511には、電界効果トランジスタ551a、551b、551cと共振容量552a、552b、552cがそれぞれ直列接続されたものが並列に接続されている。
【0164】
給電コイル503からは主に1次側共鳴コイル504のインダクタンス値と共鳴容量553により決まる自己共振周波数で電力を給電する。1次側共鳴コイル504は共鳴容量553との自己共振周波数で給電されるため、これら共振回路には大きな電流が流れ、強い磁界が発生する。このとき、1次側共鳴コイル504と並列に共鳴容量553が接続されているため、同一の共振周波数で比較した場合、共振容量がない場合に比べ、1次側共鳴コイル504のインダクタンス値を小さくできるので、送電器501の形状を小さくすることができる。
【0165】
一方、電界効果トランジスタ551a、551b、551cと直列に接続されている共振容量552a、552b、552cは、共振を有した負荷コイル511とそれぞれ並列共振回路を構成するとともに、それぞれの容量は共振周波数が異なるような容量値となっている。このため、1次側共鳴コイル504と共振を有した負荷コイル511とのコイル間距離により伝送効率が最も高くなる容量値を選択する構成となっている。
【0166】
以上の構成において、最適な容量値を選択する手段の一例を以下説明する。
【0167】
1次側共鳴コイル504からの磁界を共振を有した負荷コイル511により受信する場合、制御回路543は最もコイル間距離が遠いときに伝送効率が高くなる共振容量に対応する電界効果トランジスタをオン状態にしておく。そして、電力の受電が開始された場合、制御回路543は定期的に他のオフ状態となっている電界効果トランジスタをオン状態にして、そのときの受電電力をレベル検出542により検出する。そして最も受電電力の大きい共振容量を選択することで、高い伝送効率で受電が可能となる。このとき、制御回路543は定期的に受電電力をレベル検出542より検出して最も伝送効率の高い電界効果トランジスタを選択しオン状態とする。
【0168】
以上の構成では、図17で示した第13の実施例と同様の効果が得られる上に、共振容量を複数設け電界効果トランジスタを用いて切り替えることでコイル間距離により電力の伝送効率の更なる最適化が可能となる。
【0169】
コイル間距離が近い場合(直径数cmのコイルの場合、1cm程度以下)、共鳴コイル504のコイルの巻き線と負荷コイル511のコイルの巻き線の間にも寄生容量が存在するため、コイル間距離が近い場合、共鳴コイルと負荷コイル間の容量が増えることで共鳴コイルの自己共振周波数も下がる。この場合、送電周波数が一定のときは、距離が近づくほど逆に負荷コイルの共振容量を小さくして負荷コイルと共振容量による共振周波数を上げることで、共鳴コイルの自己共振周波数が下がるのを抑えることができるので、コイル間距離による伝送効率の変動を抑えることができる。
【実施例15】
【0170】
図19は、本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムを有した第15の実施例を示した図である。
【0171】
図において、送電装置610は給電コイル611、スパイラル形状の1次側共鳴コイル612、変復調回路613、可変利得電力増幅器614、発振器615、制御回路616より構成され、その他、図17の非接触による電力伝送システムの第13の実施例に対応する部分は同一符号を付し説明を省略する。
【0172】
図のスパイラル形状の1次共鳴コイル612は平面上に巻かれたコイルであり円筒形の立体コイルと同様コイルの巻き線間の寄生容量による自己共振周波数が存在し、その共振周波数は円筒形コイルと同様に求めるられる。
【0173】
また、携帯端末装置702には、共振を有した負荷コイル511と整流回路406の間に負荷変調回路441、検波、復調回路442が付加されており、送電装置610は高周波電源615に可変利得電力増幅器614と変復調回路613を介して給電コイル611に接続される。
【0174】
以上の構成では、送電装置610から携帯端末装置702に非接触で電力を伝送するとともに、電力伝送の際に必要となる送電装置610と携帯端末装置702間の認証や送電電力制御を行う上で必要とされる通信手段を有するものである。
【0175】
まずは、送電装置610から携帯端末装置702に非接触で電力を伝送する動作について説明する。
【0176】
1次側共鳴コイル612の自己共振周波数に等しい周波数で高周波電源615から出力される信号は利得可変電力増幅器614により増幅され変復調回路613を介し給電コイル611に給電される。給電された送電信号は1次側共鳴コイル612の自己共振周波数に等しい周波数であるため、1次側共鳴コイル612からは強い磁界が発生する。
【0177】
一方、共振を有した給電コイル511は共振容量512との共振により、1次側共鳴コイル612からの磁界と強く結合するため、効率よく電力を受電し、負荷変調回路441、検波、復調回路442を介し整流回路406により整流し、電源回路407を介して負荷回路408に供給する。また、制御回路543はレベル検出542の値を参考に電界効果トランジスタ541をオンあるはオフして受電電力がより大きいほうに切り替わる動作を行う。
【0178】
次に非接触で通信を行う場合の動作について、まずは送電装置610から携帯端末装置702にデータを伝送する場合について説明する。
【0179】
図において、利得可変電力増幅器614からの送電信号にASK変調等の変調をかけて給電コイル611に給電する。給電された送電信号は、1次側共鳴コイル612より強い磁界を発生し、共振を有した負荷コイル511と共振容量512により効率よく受信され、負荷変調回路441を介し検波、復調回路442に入力される。入力された送電信号はダイオード等を用いた検波回路により復調され制御回路502に入力される。また、受電電力は整流回路406により整流され、電源回路407により負荷回路408に供給される。
【0180】
次に、携帯端末装置702から受電装置610にデータを伝送する場合について説明する。
【0181】
通信を行う場合、携帯端末装置702は送電装置610より電力を受電していることから、負荷変調回路441にも常に信号振幅が加わっている。このため、負荷変調回路441では、この点におけるインピーダンスを変調信号に対応して変えると磁気的に結合している送電装置610側のインピーダンスも影響を受けて変化する(負荷変調方式)。よって、変復調回路613においてダイオード検波等により、送電信号が負荷変調回路441の負荷変動により発生する送電電力の反射で復調された信号を取り出すことができるので通信が可能となる。
【0182】
以上の構成では、図17の非接触による電力伝送システムの第13の実施例と同様の効果が得られる上に簡易な構成で通信が可能な通信手段を有した非接触電力伝送システムを得ることができる。
【実施例16】
【0183】
図20は、本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムを有した第16の実施例を示した図である。
【0184】
図において、631は1次側の共鳴コイル群、632は給電コイルであり、1次側の共鳴コイル群631は、スパイラル形状の共鳴コイル631a、631bにより構成され、これらは並行して一定間隔でスパイラル状に巻かれており、その他、図18の非接触電力伝送システムの第14の実施例および図19の非接触電力伝送システムの第15の実施例に対応する部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0185】
図において、送電装置610の1次側共鳴コイルにスパイラル形状の共鳴コイル631aと631bの複数のコイルを用いるとともに、互いの自己共振周波数が異なるようにコイルの巻き数等を変えた構成としている。さらに、1次側共鳴コイル群631と給電コイル632の位置的構成を変えており、1次側共鳴コイル群631と共振を有した負荷コイル511間距離よりも給電コイル632と共振を有した負荷コイル511間距離のほうが近くなるようにした。
【0186】
以上の構成とすることにより、図16aの非接触電力伝送システムの第12の実施例、図18の非接触電力伝送システムの第14の実施例および図19の非接触電力伝送システムの第15の実施例と同様の効果が得られる上に、1次側共鳴コイル群631と共振を有した負荷コイル511との距離よりも給電コイル632と共振を有した負荷コイル511との距離のほうが近くなるようすることで、給電コイル632と共振を有した負荷コイル511とのコイル間距離がごく近い場合、1次側共鳴コイル群631を介した磁気共鳴伝送よりも、給電コイル632から共振を有した負荷コイル511に電磁誘導により直接伝送することが可能であるため、ごく近距離での伝送効率の低下を抑えることができる。
【0187】
以上の構成では、コイル間距離が近くなると共鳴コイルの共振周波数は負荷コイルが近づくことにより等価的な寄生容量が増えるため共振周波数が下がるので送電周波数が一定のとき伝送効率が下がってしまう。この場合、共鳴コイルと給電コイルの配置を変えることにより給電コイルと負荷コイルの距離が近くなるとともに、共鳴コイルがこれらの間に入らなくなるため給電コイルと負荷コイル間で電磁誘導による結合が強くなる。このとき、コイル間距離が遠い場合は電磁誘導による伝送は小さいがコイル間距離がごく近い場合、共鳴コイルの共振周波数は低いほうにずれてしまうが給電コイルと負荷コイル間の電磁誘導による伝送が大きくなるので、コイル間距離がごく近い場合の伝送効率の低下が抑えられる。
【実施例17】
【0188】
図21は、本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムを有した第17の実施例を示した図である。
【0189】
図において、641、651はアンテナ、642は負荷変調回路、643は検波、復調回路、652は変復調回路、653は発振回路であり、図19の非接触電力伝送システムの第15の実施例に対応する部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0190】
図の送電装置610には発振回路653が変復調回路652を介しアンテナ651に接続され、携帯端末装置702はアンテナ641が負荷変調回路642を介し検波、復調回路643に接続されている。
【0191】
以上の構成において、送電装置610と携帯端末装置702間で通信を行う動作について説明する。なお、電力の伝送動作については説明を省略する。
【0192】
図において、発振回路653からの送信信号に変復調回路652において、ASK変調等の変調をかけアンテナ651に給電する。給電された送信信号はアンテナ651により電磁波あるいは磁気的にエネルギーとして放射される。放射された送信信号はアンテナ641により受信され負荷変調回路642を介し検波、復調回路643に入力される。入力された送信信号はダイオード検波等の検波回路により復調され制御回路604に入力される。
【0193】
次に、携帯端末装置702から送電装置610にデータを伝送する場合について説明する。携帯端末装置702は送電装置610により信号を受信している状態のときに通信を行う場合を考えると、負荷変調回路642にも常に信号振幅が加わっている。このため、負荷変調回路642では、この点における負荷を変動させることで変調を行う負荷変調方式を用いる構成とした。
【0194】
以上の構成では、図19の非接触電力伝送システムの第15の実施例と同様の効果が得られる上に電力伝送と異なる周波数で通信が行えることから、より高速に通信を行うことも可能となるので、認証や送信電力制御等の電力伝送に必要な制御データのほかに他のデータも伝送することが可能となる。
【符号の説明】
【0195】
101、141、504,521、612…磁気共鳴コイル、102、402、505…負荷コイル、103、154、221、312、…非接触データ通信部、104…充電制御部、105、472…バッテリ、106…端末無線通信部、107…検知出力部、101、210…切り替えスイッチ、111、112,211…減衰抵抗、121、122、123、124、125、126、127、128…整流用ダイオード、130,131…平滑用容量、140、220、310、420、460、610、701…送電装置、142…給電コイル、143…増幅部、144、153、424、464、476、615…発振器、145、425、465…制御部、146…検出部、151、401、421、461、481…電磁誘導コイル、152、301、302、405、422、462、482、512、552a、552b、552c、…共振容量、311…合成器、313…フィルタ、711…送電制御モジュール、712…非接触型送電モジュール、713…非接触型処理モジュール、720…大容量蓄電モジュール、721…受電制御モジュール、722…充電のための非接触型受電モジュール、723…非接触型処理モジュール、150、460、480…非接触通信装置、403、553、738,739…共鳴容量、404…ローパスフィルタ、406、412、456、485…整流回路、407…電源回路、408…負荷回路、409、473…ハイパスフィルタ、410、441、477、483、642…負荷変調回路、411、442、478…検波、復調回路、413、487、…メモリ、414、443、486、543、616…制御回路、430、475、613、652…変復調回路、153…発振器、453、454、455、541、521a、521b、521c、551a、551b、551c…電界効果トランジスタ、452…切り替えおよび電源回路、471…充電制御回路、501…送電器、502…受電器、505、511…負荷コイル、506…高周波電源、523…励振コイル、531、532、631…共鳴コイル群、542…レベル検出回路、614…可変利得電力増幅器、641、651…アンテナ
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触データ通信手段および磁気共振を利用した非接触電力伝送手段、装置とそれらの送受を行なうアンテナに関するものであり、非接触ICカードやバッテリを搭載した携帯機器への非接触による充電装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明者が検討した技術として、非接触充電システムの従来技術に関しては、たとえば一例として図24に示すような構成のものが考えられる。
【0003】
図24は非接触による充電システムの従来技術の一例を示すブロック図であり、図のシステムは、鉄道の駅や店舗などの電力提供者側に設けられる送電装置701と、利用者が持っている携帯端末装置702とを含んで構成されている。本システムでは、携帯端末装置702が送電装置701により充電される。
【0004】
送電装置701は、RFIDリーダなどの非接触型処理モジュール713と、非接触型送電モジュール712と、送電制御モジュール711とを含んで構成されている。
【0005】
携帯端末装置702は、RFID等の非接触型処理動作のための非接触型処理モジュール723と、充電のための非接触型受電モジュール722と、充電の判断と制御を行なう受電制御モジュール721と、高速に充電可能な大容量蓄電モジュール720とを含んで構成されている。
【0006】
図において、携帯端末702を所有している利用者が、駅や店舗などに設置された送電装置701に搭載されている非接触型処理モジュール713と携帯端末702に搭載されている非接触型処理モジュール723の間で電子決済等を行なうためにデータ伝送を行なっている際に、送電装置701に搭載されている非接触型送電モジュール712より端末側の非接触型送電モジュール722に非接触により電力を送電するとともに、非接触型送電モジュール722では、受電した電力を整流して高速大容量蓄電モジュール720に充電を行なう構成であり、図の送電制御モジュール711と受電制御モジュール721では、これらモジュール間での非接触による送電の制御を行なうとともに、高速大容量蓄電モジュール720に充電を行なう充電の制御を行なっている。
【0007】
以上の構成では、非接触型処理モジュール713、723間で通信を行なっている間に携帯端末装置702の電源の充電を行なう構成であるため、携帯端末装置702の充電時間が減らせる上に、頻繁に非接触型処理モジュール713、723間で通信を行なえば、特に携帯端末装置702を充電しなくとも継続的に端末の利用が可能となる(たとえば、特許文献1参照)。
【0008】
さらに図24で示した非接触による通信や充電のための送電では、数cm以下の比較的近距離での非接触通信や非接触送電には、電磁誘導方式や磁気共鳴方式など磁気的な結合による伝送が一般的である。これは他の伝送方式として有力と考えられる電波による伝送方式は伝送の距離rに反比例するのに対し、電磁結合による伝送の強さは、伝送距離rの2乗に反比例するため、例えば伝送距離が1mよりも小さくなった場合、1/rよりも1/(r2)の項のほうが大きくなるためである。
【0009】
このため、非接触による通信や充電のための送電に用いられる周波数は100kHz帯から10数MHz程度の周波数が用いられ、これらの送受に用いられるアンテナとしては、磁気的な結合を強くするため、図25に示すように、数ターンから数十ターンのコイル状のアンテナを用いるのが一般的であり、図24で示した携帯端末に用いられる非接触通信や非接触による送電のような直径4cm程度のコイル状のアンテナが用いられている(たとえば、非特許文献1参照)。
【0010】
本発明者が検討したその他の技術として、非特許文献2および特許文献2に記載されたものが知られている。この非接触電力伝送システムに関しては、たとえば一例として図26に示すような構成のものが考えられる。
【0011】
図26は非接触による電力伝送システムの従来技術の一例を示す構成図であり、非接触電力伝送システム730は高周波電源731と、高周波電源731に可変インピーダンス回路737を介して接続された給電コイル732と共鳴コイル733により1次側コイルを構成し、共鳴コイル734と負荷コイル735により2次側コイルを構成し、負荷コイル735に接続された負荷736を備えている。
【0012】
さらに、共鳴コイル733、734にはそれぞれ共鳴容量738、739が接続されており、給電コイル732、共鳴コイル733,734、負荷コイル735は共鳴系740を構成する。また、高周波電源731の出力周波数には、共鳴系740の共鳴周波数に設定されている。
【0013】
インピーダンス可変回路737は、2つの可変容量741、742とインダクタ743から構成されている。一方の可変容量741は高周波電源731に並列に接続され、他方の容量742は給電コイル732に並列に接続されている。インダクタ743は両可変容量741、742の間に接続されている。インピーダンス可変回路737は、可変容量741、742の容量が変換されることでそのインピーダンスが変更される。このインピーダンス可変回路737は共鳴系740の共鳴周波数における入力インピーダンスと高周波電源731側のインピーダンスが合うようにインピーダンスが調整される。可変容量741,742は回転軸がモータにより駆動することで容量を可変する公知の構成で、モータが制御装置744からの駆動信号により駆動される構成となっている。
【0014】
高周波電源731からインピーダンス可変回路737を介して給電コイル732に、共鳴系740の周波数で高周波電圧が出力され、給電コイル732に磁場が発生する。この磁場が共鳴コイル733、734による磁場共鳴により増強される。増強された共鳴コイル734付近の磁場から負荷コイル735により電磁誘導を利用して電力を取り出し負荷736に供給される。
【0015】
このとき、共鳴コイル733、734のコイル間距離が変化すると、共鳴系740の入力インピーダンスも変化する。このため、インピーダンス可変回路737がない場合、共鳴コイル733、734のコイル間距離によっては、インピーダンス整合が取れずに、高周波電源731への反射電力が生じ伝送効率が低下する。また別の見方をすると、コイル間距離により磁気共鳴現象が発生する周波数が変動するため、高周波電源731の出力周波数に対し、磁気共鳴周波数がずれると伝送損失が大きくなる。このため、高周波電源の周波数を伝送損失が最も小さくなる周波数にコイル間距離に対応して調整すればよいが送信周波数を変えると他の通信機器へ影響を与える恐れがあることから一般的ではない。このため、コイル間距離が変動して共鳴系740の入力インピーダンスが変動した場合は制御装置744により、可変容量741、742を調整してインピーダンス整合を取るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2006−353042号公報 図1
【特許文献2】特開2010−141976号公報 図1
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】日経ビジネス 2009年1月26日号 78ページ、日経BP社
【非特許文献2】NIKKEI ELECTRONICS 2007.12.3 117項〜128項
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、上記図24で示した従来技術の充電システムでは、非接触通信と非接触による送電を個々に用いられているため、それぞれ、直径4cm程度のコイル状のアンテナが必要となる。このため、特に小型化の要求が高い携帯端末に図24で示したような充電システムを搭載しようとした場合、上述のコイル状のアンテナを2素子内蔵する必要があるため、携帯端末装置の小型化が難しいという課題を有していた。
【0019】
さらに、上記図24で示した従来技術の充電システムでは、非接触による送電では、非接触部の伝送損失が大きいと送電装置の効率が低下し消費電力が増えることから、近距離(数cm以下)で比較的高い効率が得られる電磁誘導方式が一般的であるが、逆に伝送距離がある程度大きくなると(例として1〜2cm程度)伝送効率が急激に劣化するため、携帯端末装置に従来技術の受電装置を搭載しようとした場合、受電装置のアンテナを携帯端末装置の表面に貼り付けるようにするなどして充電の際に送電装置と受電装置間の伝送距離が短くなるようにする必要があるため、搭載位置が限られてしまうという課題があった。
【0020】
さらに、携帯端末装置の通信周波数は800MHz帯や2GHz帯の比較的高い周波数であり、この通信に用いられるアンテナは小型化が進んでおり、通信端末に内蔵するのが可能となっている。しかし、上述の非接触通信や非接触による送電を受電するアンテナを携帯端末に内蔵した場合、内蔵された携帯端末装置の通信アンテナからの電波は、非接触通信や非接触による送電を行なう周波数よりも数百倍程度高いため、非接触通信や非接触による受電を行なうアンテナは金属板のようにしか見えない。このため非接触通信や非接触による受電を行なうアンテナ部で反射が起こるため、携帯端末装置の受信感度に影響を与えるという課題を有していた。
【0021】
また、上記図26で示した従来技術の非接触の電力伝送システムでは、磁気共鳴コイルのコイル間距離の変動により共鳴系の入力インピーダンスが変動することで1次コイル側と2次コイル側の間の周波数特性が変わり伝送効率が劣化する現象は、可変インピーダンス回路の可変容量を調整することにより、高周波電源と共鳴系のインピーダンス整合を図る構成で改善しているが、数W以上の電力を伝送する場合、可変容量に可変容量ダイオード等の半導体を用いることは電力容量や耐圧の問題から難しい。このため、バリアブルコンデンサ等の機械式の可変容量を用いる必要があるので、送電器の小型化が図れない。また、可変容量が機械式であるため耐久性の面で課題がある。
【0022】
さらに、上記図26で示した非接触の電力伝送システムでは、磁気共鳴コイルのコイル間距離が数mm程度のごく近い距離での伝送では、磁気共鳴コイル間の磁場共鳴による伝送に対し、電磁誘導による伝送の割合が増えることが影響し、コイルをより近くするとかえって伝送効率が低下してしまうという課題を有していた。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明は上記目的を達成するため、上記課題である非接触通信と非接触による送電を受電するアンテナを搭載しようとした場合に携帯端末装置の小型化が難しいという課題は、非接触通信用アンテナと非接触による送電を受電するアンテナを共用化するとともに、共用化したアンテナの受信出力部に切り替え回路を設けることにより、共用化したアンテナが送電装置からの送電電力を受電した場合、切り替え回路を充電側に切り替え、この切り替え回路を介して整流回路において受電信号が整流されバッテリに充電される構成とし、非接触通信信号を受信した場合、切り替え回路はそのまま非接触通信側を保持することで、非接触通信が可能となる。
【0024】
次に、充電を行なう場合、効率が劣化しないように送電装置と受電装置間の伝送距離を短くする必要があるため、搭載位置が限られてしまうという課題については、送電装置において送電に用いられるアンテナとして、送電に用いる周波数に共振する長さのコイル長を有した両端が電気的に接続されない共振コイルと共振コイルに送電電力を磁気的に結合して給電する給電コイルからなる磁気共鳴方式と呼ばれる方式とし、給電コイルより送電装置からの送電電力を給電するとともに、非接触通信信号も送電信号に重畳して送信する構成とした。
【0025】
同様に受電装置においても受電に用いられるアンテナとして、送電に用いる周波数に共振する送電側と等しい長さのコイル長を有した両端が電気的に接続されない共振コイルと共振コイルで受電した受電電力を磁気的に結合した負荷コイルから受電電力を取り出す磁気共鳴方式とした。
【0026】
以上の構成とすることにより、送電側の共振コイルと受信側の共振コイルの共振周波数が等しいことにより、送電側の共振コイルに流れる電流による磁束と受信側の共振コイルに流れる電流による磁束の位相が同相になることにより、これら共振コイル間は強く結合する。この現象は磁気共鳴現象とよばれ、従来の非接触伝送に主に用いられている電磁誘導方式よりもコイル間距離が離れていても効率の低下が少ないという特長を有しているため、送電装置と受電装置間距離が多少離れていても伝送効率の低下が少ないので、携帯端末装置に受電装置を搭載する場合、受電アンテナの搭載位置の制約がより少ない構成とすることができる。
【0027】
非接触通信や非接触による受電を行なうアンテナ部で反射が起こるため、携帯端末装置の受信感度に影響を与えるという課題については、上記の搭載位置が限られてしまうという課題と同様に、送電と受電用アンテナに磁気共鳴方式を用いるとともに、受電側のアンテナの共振コイルを削除する構成とした。
【0028】
この構成では、送電側が磁気共鳴方式、受電側が電磁誘導方式となるがコイル間の伝送距離は受信側が磁気共鳴方式の場合とほぼ同等の伝送距離が得られる構成となっている。
【0029】
以上の構成とすることにより、受電側のアンテナは、負荷コイルのみとなるため、直径3cm程度の1〜数ターンのループ状コイルのみとなり、従来の数十ターンの密に巻かれたコイルに比べ、携帯端末装置の通信に用いる電波の反射は小さくなるので、通信アンテナへの影響をより小さくすることができる。
【0030】
以上は電力伝送周波数と非接触通信が同じ周波数であったが周波数が異なる場合のアンテナを共用化する手段を以下説明する。
【0031】
一般的に磁気共鳴方式による伝送では、共振コイルに給電する給電コイルや共振コイルから受信した電力を取り出す負荷コイルに比べ、共振コイルの巻き数のほうが多く、インダクタンス値も大きい。
【0032】
非接触通信の周波数と非接触による電力伝送の周波数が異なる場合、上記受信側共振コイルと並列に第1の容量を接続するとともに、第2の容量を第1のフィルタ回路を介し直列あるいは並列に接続した後、低い周波数のほうの信号を取り出す構成とするとともに、共振コイルと磁気的に結合するように負荷コイルを受電コイルに近接して設け、負荷コイルに第2のフィルタ回路を介し高い周波数のほうの信号を取り出す構成とし、第1の容量が共振コイルと高い周波数のほうの信号で共振する値とし、第2の容量が共振コイルと低い周波数のほうの信号で共振する値とし、さらに、第1のフィルタ回路は低い周波数のほうの信号を通過させ、高い周波数のほうの信号の通過を阻止し、第2のフィルタ回路は高い周波数のほうの信号を通過させ、低い周波数のほうの信号の通過を阻止する構成とした。
【0033】
以上の構成とすることにより、共振コイルからは共振コイルと第2の容量により共振する低い周波数のほうの信号を出力することが出来るととともに、負荷コイルからは、共振コイルと第1の容量で共振する高い周波数のほうの信号を図26で示した従来技術と同様に磁気共鳴方式により出力することが出来る。
【0034】
ここで、従来の電磁誘導方式による非接触での電力伝送で用いられるコイルの大きさの一例としては、携帯機器等への充電等に用いられる5W程度以下であれば、直径数cmで数10ターン程度の巻き数であり、電気自動車等への充電に用いられる数kWクラスでは、直径数10cmで数10ターン程度の巻き数であり、用いられる周波数は数10kHzから数100kHzであり、伝送距離としては数cm以下が一般的である。また、磁気共鳴方式による非接触での電力伝送で用いられるコイルの大きさとしては、携帯機器等への充電等に用いられる5W程度以下であれば、直径数cmで数10ターン程度の巻き数であり、電気自動車等への充電に用いられる数kWクラスでは、直径数10cmで数ターンから数10ターン程度の巻き数であり、用いられる周波数は数MHzから10数MHzであり、共振コイルに電力を給電する給電コイルおよび共振コイルから電力を取り出す負荷コイルの巻き数は1ターン程度である。また、磁気共鳴方式の伝送距離は数cmから数10cm程度であり、給電コイルと共振コイルおよび共振コイルと負荷コイル間の距離としては1cm以下程度が一般的である。
【0035】
次に磁気共鳴コイル(共振コイル)のコイル間距離の変動による共鳴系の入力インピーダンスの変動を可変インピーダンス回路により調整した場合、送信側の回路も大きくなってしまうという課題については、上述の受信側のコイルが搭載機器と比較して大きくなってしまうという課題と同様に負荷コイルに少なくとも直列接続か並列接続により負荷コイルのインダクタンスと共振する共振容量を付加する構成とした。
【0036】
以上の構成とすることにより、磁気共鳴コイルのコイル間距離の変動による1次コイルと2次コイル間の周波数特性の変動が小さくなる(コイル間距離の変動による入力のインピーダンス変動が小さくなる)という結果が実験的に得られていることから、可変インピーダンス回路を用いなくても、コイル間距離の変動による1次コイルと2次コイル間の周波数特性の変動を小さく抑えることができるので、送信回路についても小型化が可能となる。
【0037】
さらに、磁気共鳴コイルのコイル間距離の変動による1次コイルと2次コイル間の周波数特性の変動を小さくする手段としては、1次コイル側の共鳴コイルを複数設け、それぞれのコイルが負荷コイルとの距離に対応して最も伝送効率が良くなるような巻き数とすることで、1次側の共鳴コイルと負荷コイル間の距離に対応して最も効率のよい共鳴コイルと主に伝送が可能となるため、上記手段によってもコイル間距離の変動による1次コイルと2次コイル間の周波数特性の変動を小さくすることが可能となる。
【0038】
また、磁気共鳴コイルのコイル間距離が数mm程度のごく近い距離で伝送効率が低下してしまうという課題については、給電コイルと1次側の磁気共鳴コイルのコイルの配置構成を入れ替え、1次側の共鳴コイルと負荷コイル間の距離よりも給電コイルと負荷コイル間の距離が近くなるようにした。これにより、1次コイルと2次コイルが数mm程度の磁気共鳴伝送では伝送効率が劣化する、ごく近距離伝送の場合でも伝送効率の低下を抑えることができる。これは、ごく近距離では、給電コイルと負荷コイルが距離的に近くなることで、給電コイルから負荷コイルに直接電磁誘導により電力が伝送できるためである。
【0039】
さらに、非接触電力伝送システムでは、非接触充電に対応しているか確認するための機器の認証や送信電力量の制御等を行うための通信手段として、送信側は送電電力の信号にASK(Amplitude Shift Keying)変調方式等の変調をかけるとともに、受信側では内部に電力を持たなくても受電した信号を利用して通信が可能である負荷変調方式を用いる構成とすることにより、比較的簡易に通信が可能となる非接触電力伝送システムを得ることができる。
【発明の効果】
【0040】
本発明により、非接触通信手段とバッテリへの充電を行なうための非接触による受電装置を携帯端末装置等に搭載した場合でも、これらを搭載したことによる端末の大型化を極力抑えられるとともに、非接触通信や非接触による受電を行なう場合、磁気共鳴方式を用いることにより、伝送距離が大きくなってもアンテナ間の伝送損失が少なく、携帯端末装置等の通信感度への影響が少ない非接触電力伝送システム、受電装置、及び送電装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図2】実施例2に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図3】実施例3に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図4】送信が磁気共鳴方式、受信が電磁誘導方式と従来の電磁誘導方式でのコイル間距離による伝送効率の差を示す実験結果である。
【図5】磁気共鳴方式と従来の電磁誘導方式での伝送効率特性のコイル間距離による依存性の差を示す実験結果である。
【図6】送信が磁気共鳴方式、受信が電磁誘導方式のコイル間距離による依存性の差を示す実験結果である。
【図7a】実施例1に係る磁気共鳴方式のコイルの構成を模式的に示した模式図である。
【図7b】実施例1に係る磁気共鳴方式のコイルの構成を、伝送方向に対し真横から見た模式図である。
【図8】実施例4に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図9】実施例5に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図10】実施例6に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図11】実施例7に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図12】実施例8に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図13】実施例9に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図14】実施例10に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図15】実施例11に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図16a】実施例12に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図16b】実施例12に係る非接触充電システムの1次側の共鳴コイル群の他の例を示す図である。
【図17】実施例13に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図18】実施例14に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図19】実施例15に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図20】実施例16に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図21】実施例17に係る非接触充電システムの構成を示す構成図である。
【図22】実施例12に係る非接触充電システムの周波数特性を模式的に示した模式図である。
【図23】実施例13に係る非接触充電システムの周波数特性を模式的に示した模式図である。
【図24】非接触通信と非接触による送電を行なう場合の従来例を示すブロック図である。
【図25】従来技術で実現される電磁誘導方式のコイル構成を模式的に示した模式図である
【図26】磁気共鳴方式で非接触で電力伝送を行なう場合の従来例を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0042】
本発明の非接触による充電システムの第1の実施例を図面によって説明する。
【0043】
図1は、本発明に使用される非接触による充電システムを有した第1の実施例を示した図である。
【0044】
図において、702は携帯端末装置、140は電力を非接触で送電を行なう送電装置、150は非接触通信装置であり、図の携帯端末装置702は、磁気共鳴コイル101、負荷コイル102、切り替えスイッチ110、整流用ダイオード121、122、123、124、125、126、127、128、平滑用容量130、131、非接触データ通信部103、充電制御部104、バッテリ105、端末無線通信部106、検知出力部107より構成され、さらに、切り替えスイッチ110には減衰抵抗111、112が付加されている。また、図の送電装置140は、磁気共鳴コイル141、給電コイル142、増幅部143、発振器144、制御部145、検出部146より構成され、非接触通信装置150は電磁誘導コイル151、共振容量152、発振器153、非接触データ通信部154より構成されている。
【0045】
図において、携帯端末装置702は、両端が接続されていない10数ターン程度の平面形状の磁気共鳴コイル101に対し、数mm程度離れたところに負荷コイル102を設けるとともに、負荷コイル102の出力端には切り替えスイッチ110が接続される。さらに、切り替えスイッチ110の一方の出力が整流用ダイオード121〜124より構成される全波整流回路に入力され、整流出力は非接触データ通信部103に入力される。
【0046】
また、切り替えスイッチ110の他の一方の出力は整流用ダイオード125〜128より構成される全波整流回路に入力され、整流出力が充電制御部104を介しバッテリ105に供給されている。
【0047】
また、図の送電装置140は両端が接続されていない10数ターン程度の平面形状の磁気共鳴コイル141に対し、数mm程度離れたところに給電コイル142を設けるとともに、給電コイル142の入力端には増幅器143を介し発振器144が接続される。
【0048】
さらに、図の非接触通信装置150は、十数ターン以上の電磁誘導コイル151のコイル端に共振容量152とともに発振器153が並列に接続されている。
【0049】
以上の充電システムにおいて、まずは、非接触通信装置150から携帯端末装置702に非接触により通信を行なう場合の動作について説明する。
【0050】
非接触通信装置150にある発振器153では、非接触通信が行なわれる搬送波周波数(例えばRFIDでは13.56MHz等)で発振するとともに、非接触データ通信部154において、送信を行なうデータに対応して発振周波数に変調をかけ、変調された通信信号は、電磁誘導コイル151と共振用容量152の共振周波数が搬送周波数に等しくなるように調整されたアンテナにより、電磁エネルギーとして効率よく放射される。
【0051】
一方、携帯端末装置702では、磁気共鳴コイル101が、非接触通信信号に等しい周波数に共振するように調整されているため、非接触通信装置150からの放射によりコイル101に最も電流が流れることで、負荷コイル102の両端には高い電圧が励起され、この励起された電圧が、切り替えスイッチ110を介してそのまま整流用ダイオード121〜124で構成される整流回路に入力される。入力された非接触通信信号は、平滑用容量130により平滑化され直流電圧となり非接触データ通信部103へ電源として供給されるとともに、変調されたデータも非接触データ通信部103において復調される。一方、非接触データ通信部103から、非接触通信装置150への通信は、磁気共鳴コイル101で受信した信号に対し、送信データに対応させて非接触データ通信部103の入力インピーダンスを変化させることで磁気共鳴コイル101から電磁誘導コイル151への反射量が変動することを非接触通信装置150が検出することにより、逆方向の通信を行なっている。
【0052】
次に、送電装置140から携帯端末装置702に非接触により送電を行なう場合の動作について説明する。
【0053】
送電装置140にある発振器144では、電力を非接触で送電する周波数として、非接触通信装置150で用いられているRFID等と同じ13.56MHzで発振し、増幅部143において電力増幅し、給電コイル142により磁気共鳴コイル141を励振する。磁気共鳴コイル141は、送電周波数と等しい周波数で共振するように調整されているため、送電周波数で最も大きい電流が流れ強い磁界が発生する。
【0054】
一方、携帯端末装置702では、磁気共鳴コイル101は送電周波数に等しい周波数で共振するため、送電信号で最も電流が流れ、負荷コイル102の両端には高い電圧が励起される。この励起された電圧がある一定以上の値になった場合、充電制御部104は、切り替えスイッチ110を電力受電側に切り替えるので、受電した信号は、整流用ダイオード125〜128により構成される整流回路により整流され、平滑用容量131により直流電圧となり充電制御部104に供給される。充電制御部104では供給された直流電圧をバッテリ105に充電を行うとともに、過充電されない等によりバッテリ105が破損しないように充電量の制御を行う。
【0055】
なお、携帯端末装置702の検知出力部107は特定の識別子を出力しており、携帯端末装置702が送電装置140に接近し、検出部146で検知出力部107からの識別子を検知すると制御部145は発振器144をオン状態にして送電を開始する。
【0056】
さらに、送電装置140からの送電を行う場合、切り替えスイッチ110は、受電側に切り替わっているが、このとき、非接触通信側に減衰抵抗111、112を介し非接触通信側にも受電した信号を減衰させて非接触通信側にも入力する構成とした。このような構成とすることで、送電信号に非接触通信信号を重畳した場合、受電と同時に非接触通信も可能となる。ここで、減衰抵抗により受電信号レベルを下げるのは、非接触通信信号に比べ、送電信号のほうがレベルがかなり高いためである。
【0057】
以上の構成とすることにより、送電装置140と携帯端末装置702間の伝送は、磁気共鳴方式による結合のため、従来の電磁誘導方式に比べ、伝送距離が長くなっても損失が少ない充電システムを得ることができ、さらに、非接触通信と非接触による電力の伝送に用いるアンテナを共用化することで、これらを搭載した場合に伴なう携帯端末装置702の実装容積の増加を極力抑えることが可能となる。
【実施例2】
【0058】
図2は本発明に使用される非接触による充電システムの第2の実施例を示した図である。
【0059】
図は、図1で示した第1の実施例と比較して携帯端末装置702に電磁誘導方式のコイル、送電装置220に磁気共鳴方式のコイルを用いたものである。なお、図は、通信装置と送電装置を一体化した送電装置220を用いているが、これに限定するものではない。図1のように、通信装置と送電装置が別体になっている場合にも、携帯端末装置に電磁誘導方式のコイル、送電装置に磁気共鳴方式のコイルを用いても良い。
【0060】
図において、201は2〜3ターン程度のループアンテナコイル、202、203はループアンテナコイル201と送信信号周波数で共振する共振容量、220は非接触通信手段を兼ねた非接触による電力送電装置であり、非接触通信手段を備えた送電装置220は、非接触データ通信部221を備えており、その他、図1に対応する部分については同一符号を付けて説明を省略する。
【0061】
送電装置220は、携帯端末装置702と非接触通信を行なう場合、非接触データ通信部221は発振器144の発振信号を通信データにより変調し、変調された信号を増幅部143により増幅し、給電コイル142と磁気共鳴コイル141より構成される送電アンテナにより送信する。
【0062】
送電装置から送信された信号は、携帯端末装置702のループアンテナコイル201により受信され、切り替えスイッチ110を介し共振容量202の容量値と共振することで、整流用ダイオード121〜124により構成される整流回路に送信周波数において最も高い電圧信号が加わる。そして整流回路より出力された非接触通信信号は、平滑用容量130により平滑化され直流電圧となり、非接触通信部103へ電源として供給されるとともに、変調されたデータも非接触データ通信部103において復調される。
【0063】
次に、送電装置220から携帯端末装置702に送電を行なう場合の動作について説明する。
【0064】
送電装置220にある発振器144の信号を増幅部143において電力増幅し、給電コイル142により磁気共鳴コイル141を励振することで、磁気共鳴コイル141より送電信号が出力される。
【0065】
送電された信号は、携帯端末装置702のループアンテナコイル201により受電されるが、この受電された電圧がある一定以上の値になった場合、充電制御部104は、切り替えスイッチ110を電力受電側に切り替えるので、切り替えスイッチ110を介し共振容量203の容量値と共振することで、整流用ダイオード125〜128により構成される整流回路で送電周波数において最も高い電圧となるとともに、受電した信号は、平滑用容量131により直流電圧となり充電制御部104に供給される。充電制御部104では供給された直流電圧をバッテリ105に充電を行なうとともに、過充電等によりバッテリ105が破損しないように充電量の制御を行なう。
【0066】
さらに、送電装置220からの送電を行う場合、切り替えスイッチ110は、受電側に切り替わっているが、このとき、非接触通信側に減衰抵抗111、112を介し非接触通信側にも受電した信号を減衰させて非接触通信側にも入力する構成のため、送電信号に非接触通信信号を重畳することにより、受電と同時に非接触通信も可能となる。
【0067】
以上の構成とすることにより、第1の実施例と同様の効果が得られる上に、受電用アンテナとして、2〜3ターン程度のループアンテナコイルを用いることができることで、携帯端末装置702をより小型にすることができる。
【0068】
さらに、受電用アンテナとして、2〜3ターン程度のループアンテナコイルを用いることにより、端末無線通信部106の通信に用いる電波の反射は小さくなるので、端末無線通信部106への影響をより小さくすることができる。
【実施例3】
【0069】
図3は本発明に使用される非接触による充電システムの第3の実施例を示した図である。
【0070】
図において、301は共振容量、310は切り替えスイッチ、311は減衰抵抗、312、313、314、315は非接触通信と非接触による電力の受電とで共用化された整流用ダイオードであり、その他、図2に対応する部分については同一符号を付けて説明を省略する。
【0071】
送電装置220では、携帯端末装置702と非接触通信を行なう場合、非接触データ通信部221は発振器144の発振信号を通信データにより変調し、変調された信号を増幅部143により増幅し、給電コイル142と磁気共鳴コイル141より構成される送電アンテナにより送電される。
【0072】
この送信された信号は、携帯端末装置702のループアンテナコイル201と共振容量301により送信周波数信号で共振して最も大きな信号振幅で受信され、共用化された整流用ダイオード312〜315により整流される。このとき充電制御部104で整流された電圧がある一定値以上であると充電のための送電であると判断し、切り替えスイッチ310を充電側に切り替えるので、整流された電圧が平滑用容量131により平滑化され充電制御部104によりバッテリ105に充電のための直流電圧を供給する。
【0073】
以上の実施例では、第2の実施例と同様の効果が得られる上に、非接触通信用と受電用の整流ダイオードを共用化することにより、携帯端末装置702をより小型にすることができる。
【0074】
次に、本発明の実施例における効果を図4、図5および図6を参照して説明する。
【0075】
図4は、図2の非接触による充電システムの第2の実施例で示したように、送信側を磁気共鳴方式、受信側をループ状のアンテナコイルと共振容量により構成される従来の電磁誘導方式としたときの伝送効率特性と、図25に示すように送受信側とも従来の電磁誘導方式を用いた場合のコイル間距離に対する伝送効率の実験結果を示したものであり、図の横軸はコイル間距離、縦軸は伝送効率である。
【0076】
図2の送信側の磁気共鳴コイルの直径は4cmであり、巻き数は約30ターンで共鳴周波数は約20MHzであり、受信側は、直径3cmの約3ターンのループコイルと100pFの共振容量による直列共振型のループアンテナコイルとなっており、図25の電磁誘導方式の送受コイルの直径は4cm、巻き数は約20ターンで伝送周波数は約120kHzであり、共振容量は数μFである。
【0077】
図から図25の従来技術の電磁誘導方式ではコイル間距離が短い場合は伝送効率に優れるが、コイル間距離が4mm程度離れると効率は50%程度に落ちる。これに対し、第2の実施例ではコイル間距離が4mmでも効率は約75%が得られており、コイル間距離が離れても送信が磁気共鳴方式、受信が電磁誘導方式による伝送のほうが、伝送効率の低下が少ないことが分かる。
【0078】
また、図5は、図1で示した第1の実施例の非接触電力伝送方式として送信、受信とも磁気共鳴方式としたときのコイル間距離に対する伝送損失の周波数特性と、送信、受信とも2〜3ターン程度のループ状のコイルと共振容量により構成される従来の電磁誘導方式での伝送損失の周波数特性の実験結果を示したもので、図の横軸は周波数、縦軸は伝送損失である。
【0079】
また、実験に用いたコイルとして、図1の磁気共鳴方式は、磁気共鳴コイルの直径は4cmであり、巻き数は約30ターンで共鳴周波数は約20MHzであり、給電コイルおよび負荷コイルとも直径は3cmで巻き数は1ターンである。一方、従来の電磁誘導方式のループアンテナコイルは、直径4cm、巻き数は約3ターンで伝送周波数は磁気共鳴方式と同じ約20MHzであり、共振容量は百数十pFである。
【0080】
図から図1で示した第1の実施例の磁気共鳴方式を用いた電力伝送方式ではコイル間距離により周波数依存性があるが、従来の電磁誘導方式よりも伝送損失が少ないことが分かる。
【0081】
次に、図6は、図2で示した非接触による充電システムの第2の実施例で非接触通信手段として送信側を磁気共鳴方式、受信側を従来の2〜3ターン程度のループ状のアンテナと共振容量により構成される電磁誘導方式としたときのコイル間距離に対する周波数特性の実験結果を示したものである。実験に用いたコイルは、直径4cm、巻き数は約3ターンであり、共振容量は百数十pFである。
【0082】
図5と図6を比較すると、図5で示した送受信とも磁気共鳴方式を用いるよりも、図2で示した第2の実施例のように、送信側を磁気共鳴方式、受信側を従来の磁界結合型ループアンテナにしたほうがコイル間距離に対する周波数特性変動が少ないことから、送信周波数を例えば13.56MHz等に固定した場合であってもコイル間距離によらず安定した受電電力を得ることができる。
【0083】
また、図7aには、本発明の非接触による充電システムの第1の実施例の磁気共鳴方式のコイルの構成を示した模式図であり、図7bは、図7aを伝送方向に対し真横から見た模式図であり、図1に対応する部分については同一符号を付けて説明を省略する。給電コイル142、磁気共鳴コイル141、101、負荷コイル102のコイル面は互いに平行に配置されており、コイルの中心点が一直線にある図7bの構成でz軸上でのコイル間距離を最適化すれば最もコイル間の伝送効率が高くなる構成であることから、実施の形態としては図7bの配置を基本に以下の実施の形態についても説明する。
【実施例4】
【0084】
図8は本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムの第4の実施例を示した図である。
【0085】
図において、702は携帯端末装置、150は非接触通信装置、420は電磁誘導方式による送電装置より構成され、図の携帯端末装置702は、磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401、負荷コイル402、共鳴容量403、ローパスフィルタ404、共振容量405、整流回路406、電源回路407、負荷回路408、ハイパスフィルタ409、負荷変調回路410、検波、復調回路411、整流回路412、メモリ413、制御回路414を備えている。また、電磁誘導による送電装置420は、電磁誘導コイル421、共振容量422、電力増幅器423、発振器424、制御部425、検出部426を備えており、その他、図1に対応する部分については同一符号を付けて説明を省略する。
【0086】
図において、携帯端末装置702は、磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401と並列に共鳴容量403を接続するとともに、ローパスフィルタ404を介して共振容量405が並列に接続され、整流回路406、電源回路407、負荷回路408が接続される。
【0087】
また、負荷コイル402は磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401と数mm程度の距離に近接して配置し磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401と磁気的に結合している。さらに、負荷コイル402はハイパスフィルタ409を介して負荷変調回路410、検波、復調回路411、整流回路412に接続される。
【0088】
また、電磁誘導方式による送電装置420は、電磁誘導コイル421と並列に共振容量422が接続され、電力増幅器423により増幅された発振回路424からの送電信号周波数と共振する構成となっている。
【0089】
以上の非接触電力伝送システムにおいて、まずは非接触通信装置150から携帯端末装置702に非接触により通信を行う場合の動作について説明する。
【0090】
非接触通信装置150にある発振器153では、非接触通信が行なわれる搬送波周波数(例えばRFIDでは13.56MHz等)で発振するとともに、非接触データ通信部154および変復調回路430において、送信を行なうデータに対応して発振周波数に変調をかけ、変調された通信信号を電磁誘導コイル151と共振容量152の共振周波数が搬送周波数に等しくなるように調整されたアンテナにより、電磁エネルギーとして効率よく放射される。
【0091】
一方、携帯端末装置702では、磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401と共鳴容量403での共振周波数が非接触通信周波数の13.56MHzとなるように調整されているため、磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401には大きな電流が流れ強い磁界が発生する。この強い磁界により、磁気的に結合された負荷コイル402によりハイパスフィルタ409と負荷変調回路410を介し検波、復調回路411に入力され、受信した非接触信号を復調し制御回路414に入力する。制御回路414では受信信号に対応したデータをメモリ413より読み出して負荷変調回路410により負荷変調をかける。これに対し、非接触通信装置150では、負荷変調回路410からの負荷変調に対応して携帯端末装置702の受信インピーダンスが変動するのを変復調回路430により検出して復調し非接触データ通信部154に伝送する構成となっている。このとき、ローパスフィルタ404は受信した信号周波数に対しては通過を阻止するため、ローパスフィルタ404以降の回路は無視することが出来るとともに、ハイパスフィルタ409は受信した信号周波数に対しては通過特性であるため、ここでの損失は無視することができる。また、制御回路414およびメモリ413への電力の供給は非接触通信装置150から受信した信号を整流回路412により整流した電力を用いることでバッテリは不要であるし、また、携帯端末装置702に内蔵しているバッテリから供給してもよい。
【0092】
次に、電磁誘導方式による送電装置420から携帯端末装置702に非接触により送電を行なう場合の動作について説明する。
【0093】
電磁誘導方式による送電装置420では、検出部426により携帯端末装置702が近くに置かれた場合を検出して制御部425により発振器424および電力増幅器423をオン状態とする。これにより、発振器424では、電力を非接触で送電する周波数として、非接触通信装置150で用いられているRFID等の13.56MHzよりも低い、例えば100kHz帯の周波数で発振し、電力増幅器423において電力増幅して電磁誘導コイル421と共振容量422による共振回路に送電電力を供給する。電磁誘導コイル421と共振容量422は、供給された送電電力の周波数である100kHz帯で共振するため、電磁誘導コイル421には、大きな電流が流れ強い磁界が発生する。このとき、電磁誘導コイル421と接近して携帯端末装置702が置かれることにより、磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401と共振容量405による共振回路が送電電力の周波数と等しいため、電磁誘導コイル421と磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401は電磁誘導により強く結合するので、共振容量405から受電した100kHz帯の電力を取り出すことができる。このため、共振容量405に接続された整流回路406により直流電圧に整流され電源回路407により一定の電圧に変換された後、負荷回路408に受電した電力が供給される。このとき、ローパスフィルタ404は受電した電力の周波数に対し通過特性のため、ここでの損失は無視することができる。また、ハイパスフィルタ409は受電した電力の周波数に対し通過を阻止するため、負荷コイル402およびハイパスフィルタ409以降の回路の影響を無視することができる。
【0094】
また、電源回路407を充電制御回路、負荷回路408をバッテリに置き換えることで非接触充電システムを実現することができる。
【0095】
以上の構成とすることにより、100kHz帯の受電電力には電磁誘導方式による非接触電力伝送を行い、13.56MHzの非接触通信では、受電に用いた電磁誘導コイルを磁気共鳴コイルとして用いることにより、図1で示した非接触による充電(電力伝送)システムと同様の効果が得られる上に、非接触通信の周波数と非接触による電力伝送の周波数が異なる場合でも通信および受電が可能な充電(電力伝送)システムを得ることができる。
【実施例5】
【0096】
図9は本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムの第5の実施例を示した図である。
【0097】
図において、441は負荷変調回路、442は検波、復調回路、443は制御回路、444は変復調部であり、その他、図8に対応する部分については同一符号を付けて説明を省略する。
【0098】
図9において、携帯端末装置702では、共振容量405と整流回路406間に負荷変調回路441と検波、復調回路442を付加した構成となっており、電磁誘導方式による送電装置420は、増幅器423と共振容量422間に変復調部444が付加した構成となっている。
【0099】
図において、非接触通信装置150と携帯端末装置702間の非接触通信は、図8で示した第4の実施例と同様であるため説明を省略し、電磁誘導方式による送電装置420から携帯端末装置702に非接触により送電を行なう場合の動作について説明する。
【0100】
電磁誘導方式による送電装置420では、発振器424からの発振信号を電力増幅器423において電力増幅した送電電力信号を変復調部444において変調し、共振コイル421より送電される。この送電電力を携帯端末装置702の磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401により受電する。受電した受電信号は整流回路406により整流され受電を行うとともに、検波、復調回路442により受電した信号を復調し、受信データ信号を制御回路443に入力する。制御回路443では、受信したデータ信号に対応するデータ信号を負荷変調回路441により負荷変調をかける。この負荷変調信号は、電磁誘導方式による送電装置420の変復調部444により復調される。
【0101】
以上の構成とすることにより、図8で示した非接触による充電(電力伝送)システムと同様の効果が得られる上に、非接触による電力伝送においても送電電力信号に対しても変調をかけることにより電力伝送と同時に通信を行うことが可能となるので、たとえば、携帯端末装置702が非接触により電力伝送に対応しているか等の認証や送電電力制御を行う際に必要となる制御のための通信も電力伝送と信号に重畳して行うことが可能となる。
【実施例6】
【0102】
図10は本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムの第6の実施例を示した図である。
【0103】
図において、451はレベル検出回路、452は切り替えおよび電源回路、453、454、455は電界効果トランジスタ、456は整流回路、460は電磁誘導方式による送電装置である。さらに、電磁誘導方式による送電装置460は電磁誘導コイル461、共振容量462、電力増幅器463、発振器464、制御部465、検出部467より構成されており、その他、図8に対応する部分については同一符号を付けて説明を省略する。
【0104】
図において、携帯端末装置702は、共鳴容量403と共振容量405間にレベル検出回路451および電界効果トランジスタ453を設けるとともに、整流回路406は切り替えおよび電源回路452を介して負荷回路408に接続されている。さらに、負荷コイル402には、電界効果トランジスタ454と整流回路456を介し切り替えおよび電源回路452に接続されている。さらに、電磁誘導方式による送電装置460は、電磁誘導コイル461と並列に共振容量462が接続され、電力増幅器463により増幅された発振回路464からの送電信号周波数と共振する構成となっており、電磁誘導方式による送電装置420と同様の構成であるが、電磁誘導コイル461と共振容量462による共振周波数および発振器464の発振周波数が、非接触通信装置150の共振周波数と等しい13.56MHzとなっている。
【0105】
以上の非接触電力伝送システムにおいて、まずは非接触通信装置150から携帯端末装置702に非接触により通信を行う場合について説明する。
【0106】
携帯端末装置702のレベル検出回路451は、信号を何も受信していない状態では電界効果トランジスタ455をオン状態とするとともに、電界効果トランジスタ453、454をオフ状態とすることで 非接触通信装置150より13.56MHzの非接触通信信号を受信した場合は、磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401、共鳴容量403および負荷コイル402により構成される磁気共鳴結合により、負荷変調回路410、検波、復調回路414および整流回路412に受信され通信が行われる。
【0107】
次に、電磁誘導方式による送電装置420からの100kHz帯の非接触による送電電力を受電した場合、レベル検出回路451は、電界効果トランジスタ453をオン状態とするとともに、電界効果トランジスタ454、455をオフ状態とする。これにより、磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401と共振容量405より構成される共振回路により電磁誘導方式により電磁誘導方式による送電装置420からの送電電力を受電し、整流回路406と切り替えおよび電源回路452を介して負荷回路408に電力が供給される。
【0108】
次に、電磁誘導方式による送電装置460から13.56MHzの非接触による送電電力を受電した場合、レベル検出回路451は、電界効果トランジスタ454をオン状態とするとともに、電界効果トランジスタ453、455をオフ状態とする。これにより、磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401、共鳴容量403および負荷コイル402より構成される磁気共鳴結合により、電磁誘導方式による送電装置460からの送電電力を受電し、整流回路456と切り替えおよび電源回路452を介して負荷回路408に電力が供給される。
【0109】
以上の構成とすることにより、図8で示した非接触による充電(電力伝送)システムと同様の効果が得られる上に、非接触による電力伝送については、100kHz帯の送電には電磁誘導による受電を、13.56MHzの電力伝送については磁気共鳴方式による受電を行うことにより、周波数帯が異なる場合でも接触による電力伝送の受電が可能となる。
【実施例7】
【0110】
図11は本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムの第7の実施例を示した図である。
【0111】
図において、470は非接触通信部、471は充電制御回路、472はバッテリ、473はハイパスフィルタ、480は非接触通信装置であり、図の非接触通信部470は、切替え回路474、変復調回路475、発振器476、負荷変調回路477、検波復調回路478より構成され、非接触通信装置480は、電磁誘導コイル481、共振容量482、負荷変調回路483、検波、復調回路484、整流回路485、制御回路486、メモリ487より構成されており、その他、図8に対応する部分については同一符号を付けて説明を省略する。
【0112】
図において、携帯端末装置702は、整流回路406の出力に充電制御回路471、バッテリ472が接続され、負荷コイル402はハイパスフィルタ473と切り替え回路474を介して変復調回路475および発振器476が接続される。さらに切り替え回路474には負荷変調回路477と検波、復調回路478が接続されている。
【0113】
また、非接触通信装置480は、電磁誘導コイル481と並列に共振容量482が接続され、さらに、負荷変調回路483、検波、復調回路484および整流回路485が接続される。
【0114】
図において、電磁誘導方式による送電装置420からの送電電力を受電する場合の動作について説明する。送電装置420より送電された100kHz帯の送電電力信号は、携帯端末装置702の磁気共鳴コイルを兼ねた電磁誘導コイル401と共振容量405による共振回路により受電し整流回路406および充電制御回路471を介しバッテリ472に充電を行う。
【0115】
次に、非接触通信装置150から携帯端末装置702に非接触により通信を行う場合の動作について説明する。非接触通信装置150から送信された非接触通信信号は、磁気共鳴を兼ねた電磁誘導コイル401、共振容量403および負荷コイル402により構成される磁気共鳴方式により受信し、ハイパスフィルタ473を介して切り替え回路474に入力される。切り替え回路474では、信号が入力されない状態では負荷変調回路477側に切り替わるようにしているため、受信した非接触通信信号は検波、復調回路478および負荷変調回路477により変復調されるので非接触通信が可能となる。
【0116】
次に、非接触通信装置480と通信を行う場合について説明する。非接触通信装置480では発振器は内蔵していないため、例えばRFIDカードのような内部に電源を持たない受動的通信となることから、携帯端末装置702において非接触通信装置480と通信を行いたい場合は、発振器476および変復調回路475をオン状態とするとともに切り替え回路474を変復調回路475側に切り替える。これにより、発振器475からの発振信号を変復調回路475により変調して非接触通信装置480に送信する。非接触通信装置480では受信した携帯端末装置702からの非接触通信信号を検波、復調回路484により復調する。また、非接触通信装置480からの非接触通信信号は負荷変調回路483により負荷変調される。携帯端末装置702では、インピーダンスの変動を変復調回路475より復調することで、非接触通信装置480との通信が可能となる。
【0117】
以上の構成とすることにより、図8で示した非接触による充電(電力伝送)システムと同様の効果が得られる上に、非接触通信装置150は質問器(RFIDにおけるリーダライタ)、非接触通信装置480は応答器(RFIDにおけるRFIDカード)に相当する。また、携帯端末装置702に負荷変調回路477、検波、復調回路478(応答器に相当)に加え変復調回路475、発振器476(質問器に相当)を付加することにより、内部に発振器を持たないRFIDカード等との通信が可能となる。
【実施例8】
【0118】
図12は本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムの第8の実施例を示した図である。
【0119】
図において、携帯端末装置702は図11の第7の実施例で示した携帯端末装置を2台近接して配置した面であり、互いの装置を区別するためにもう一方の携帯端末装置には図番号に、ダッシュ(’)を付す。
【0120】
図において、携帯端末装置702より携帯端末装置702’にあるメモリ413’の内容を読み出す場合の動作について説明する。携帯端末装置702では発振器476および変復調回路475をオン状態とするとともに切り替え回路474を変復調回路475側に切り替える。これにより、発振器475からの発振信号を変復調回路475により変調して携帯端末装置702’に送信する。携帯端末装置702’では通常、負荷変調回路477’側に切り替わっているため、受信した携帯端末装置702からの非接触通信信号を検波、復調回路478’により復調し、制御回路414’では受信データに対応したデータ信号をメモリ413’より読み出して負荷変調回路477’により負荷変調を行う。携帯端末装置702では、インピーダンスの変動を変復調回路475より検出して復調し、携帯端末装置702’からの受信データ信号を受信する。
【0121】
以上の構成とすることにより、図11で示した非接触による充電(電力伝送)システムと同様の効果が得られる上に、携帯端末装置702に質問器に対応する回路(変復調回路475、発振器476)を付加することにより、携帯端末装置間でも非接触通信が可能となる。
【実施例9】
【0122】
図13は、本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムの第9の実施例を示した図である。
【0123】
図において、501は送電器、502は受電器、503は給電コイル、504は1次側共鳴コイル、505は負荷回路、506は高周波電源であり、その他、図8の第4の実施例に対応する部分については同一符号を付けて説明を省略する。
【0124】
図において、送電器501は、高周波電源506と給電コイル503と1次側共鳴コイル504より構成され、給電コイル503に近接して1次側共鳴コイル504が置かれるとともに、給電コイル503に高周波電源506が接続されている。
【0125】
受電器502は、負荷コイル505と整流回路406と電源回路407と負荷回路408より構成され、負荷コイル505に整流回路406と電源回路407を介して負荷回路408が接続されており、送電器501と受電器502により非接触電力伝送システムを構成している。
【0126】
図において、高周波電源506からは、1次側共鳴コイル504の自己インダクタとコイルの巻き線間の浮遊容量(寄生容量)により決まる自己共振周波数に等しい周波数で給電コイル503に給電を行う。給電コイル503は電磁誘導作用により自己共振周波数に等しい周波数で1次側共鳴コイル504を励振することで1次側共鳴コイル504には大きな電流が流れ強い磁界が発生する。
【0127】
ここで、1次側共鳴コイルのインダクタンス値をL、線間の浮遊容量をCとするとコイルの自己共振周波数fは次式で求められる。
【0128】
f=1/(2π√(LC))
ただし、自己共振周波数は給電コイル503と負荷コイル505との結合状態により共振周波数は変動するため、実際の自己共振周波数はシミュレーションや実験による確認が必要となる。
【0129】
以上の構成で、受電器502が送電器501に近接して置かれると、1次側共鳴コイル504からの強い磁界が受電器502の負荷コイル505と磁気的に結合し、負荷コイル505の両端子間に起電力が発生する。発生した起電力は整流回路406により直流電圧に整流され、電源回路407に入力される。電源回路407は、整流回路406より出力される電圧が送電電力や1次側共鳴コイル504と負荷コイル505間の距離により共鳴コイルの自己共振周波数のずれやコイル間距離による伝送効率の変化により変動するため、負荷回路408が必要とする一定の電圧値に変換して負荷回路408に供給する。
【0130】
以上の構成とすることにより、送電器501からの送電電力を受電器502において磁気的な結合により非接触で受電することが可能であるとともに、受電器502に用いるコイルとしては負荷コイル505のみで受電可能であることから、受信器502の小型化が可能となる。
【0131】
なお、図13で示したコイル形状の一般的に用いられる大きさおよび巻き数の一例を示すと、数W程度の小型携帯機器への充電の場合、給電コイル503は直径数cm、巻き数は1ターンから数ターン程度、1次側共鳴コイル504は直径数cm、巻き数は数十ターン程度で自己共振周波数としては、10MHz帯が用いられ、負荷コイル505としては直径数cm、巻き数は1ターンから数ターン程度である。
【0132】
一方、ノート型のパーソナルコンピュータへの給電や充電、電気自動車への充電など数十Wから数百W以上の送電に用いられるコイル形状の一般的に用いられる大きさおよび巻き数の一例を示すと、給電コイル503は直径数十cm、巻き数は1ターンから数ターン程度、1次側共鳴コイル504は直径数十cm、巻き数は数ターン程度で自己共振周波数は、数百Hzから1MHz程度であり、負荷コイル505は直径数十cm、巻き数は1ターンから数ターン程度である。
【0133】
上述の磁気共鳴方式では共鳴コイルの巻き線の抵抗成分による損失が大きいと伝送効率が低下する傾向にあるため、コイルの線材としては直径1mm〜数mm程度の銅線が一般的に用いられているが、導電率が高いものであれば他の線材であってもよい。また、送受のコイルの直径は伝送距離に関係し、直径が大きいほど伝送距離が伸びる傾向にある。また、送受のコイルの直径は互いに等しいほうがより高い効率が得られ易いが、従来の電磁誘導方式よりもコイル間の結合が強いため送受コイルの直径が多少異なっていても比較的高い伝送効率が得られることが磁気共鳴方式の特徴でもある。
【0134】
このことから、各コイルの直径は同一であっても異なってもよいし、各コイルは円筒形のコイルであってもスパイラル状の平面コイルであってもよい。さらに、平面コイルは、基板上に銅パターンとして形成してもよいし、フィルム状の上に銅パターンを形成してもよい。
【実施例10】
【0135】
次に、本発明の非接触による充電(電力伝送)システムの第10の実施例を図面によって説明する。
【0136】
図14は、本発明に使用される非接触による電力伝送システムの第10の実施例を示した図である。
【0137】
図において、511は共振を有した負荷コイル、512は共振容量であり、その他、図13に対応する部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0138】
図14は、図13で示した非接触による充電システムの第9の実施例と比較して、共振を有した負荷コイル511と共振容量512が直列に接続され直列共振回路を形成しており、その共振周波数が、1次共鳴コイル504の自己共振周波数と等しくなるように、共振を有した負荷コイル511と共振容量512の値を定めている。また、共振を有した負荷コイル511のインダクタンス値は、給電コイル503のインダクタンス値よりも大きくしている。
【0139】
以上の構成とすることにより、図13で示した第9の実施例と同様の効果が得られるのに加え、共振を有した負荷コイル511と共振容量512で共振回路を構成しているため、1次共鳴コイル504からの磁束と強く結合するのでコイル間距離を離した場合の伝送効率の低下をより小さくすることができる。言い換えれば、コイル間距離が変動しても入力インピーダンスの変化が少なくなるので、コイル間距離による周波数特性の変動を小さくすることができる。
【0140】
例えば、コイルの直径が数cmの場合の伝送距離は数cm程度、直径数10cmの場合は数10cmから1m程度の伝送距離が得られるので従来の電磁誘導方式の1cmから2cm程度に比べ比較的長い伝送距離を得ることができる。
【実施例11】
【0141】
図15は、本発明に使用される非接触による電力伝送システムを有した第11の実施例を示した図である。
【0142】
図において、521は1次側共鳴コイル、522は共鳴容量、523は励振コイルであり、その他、図14に対応する部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0143】
図において、1次側共鳴コイル521のインダクタンス値と共鳴容量522の容量値で決まる共振周波数に等しい信号を高周波電源506より励振コイル523を介して供給すると、共鳴コイル521と共鳴容量522により共振現象が発生し、大きい電流が流れ強い磁界が発生する。この構成では主に数十W以上の高い電力伝送に用いられ、コイルの大きさや巻き数の一般的な一例を示すと、共鳴コイル521の直径は数十cmから1m程度、コイルの線径は1cm程度、ターン数は1から2ターン程度である。また、励振コイルは線径数mm程度であり、共鳴コイル521に数ターン巻きつけるかフェライトコア等の磁性体を用いて励振する方法が一般的である。
【0144】
図15は、図14で示した非接触電力伝送システムの第10の実施例と比較して、給電コイルの代わりに励振コイル523を用いることにより、1次側の共鳴コイルを局所的な電磁誘導により励振して給電を行うもので、第10の実施例と同様の効果が得られる上に、送電側の共鳴コイルが1ターン程度で構成できるので送電器側の小型化も図ることができる。
【実施例12】
【0145】
図16aは、本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムを有した第12の実施例を示した図である。
【0146】
図において、531は1次側の共鳴コイル群であり、スパイラル形状の共鳴コイル531a、531bより構成され、これらは並行して一定間隔でスパイラル状に巻かれている。ここで、スパイラル形状の共鳴コイル531a、531bはお互いの自己共振周波数が異なるように構成されており、その他、図14に対応する部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0147】
図16aにおいて、受電器502で受電可能な距離内でスパイラル形状の共鳴コイル531aと531bの巻き数をそれぞれ異なる距離で最も効率がよくなるように調整する。例えば、スパイラル形状の共鳴コイル531aが最も効率がよくなる距離を距離a、共鳴コイル531bが最も効率がよくなる距離を距離bとすると、1次側の共鳴コイル531と共振を有した負荷コイル511の距離が距離aのときは、給電コイル503からの給電電力は主にスパイラル形状の共鳴コイル531aを介して共振を有した負荷コイル511に供給され、一方、スパイラル形状の共鳴コイル531bはインピーダンス整合が最適値よりずれることから電力の伝送はほとんど行われない。また、1次側の共鳴コイル531と共振を有した負荷コイル511の距離が距離bのときは、給電コイル503からの給電電力は主にスパイラル形状の共鳴コイル531bを介して共振を有した負荷コイル511に供給される。
【0148】
なお、スパイラル形状の共鳴コイル531a、531bのコイルの巻き線の長さ(巻き数)やコイルの巻き線の線径を変えることで自己共振周波数をそれぞれ変えることが可能である。
【0149】
このとき、コイル間の寄生容量は互いの共鳴コイルが並行して巻かれることにより、給電コイルや負荷コイルの影響に加え互いの結合の影響もあるため、自己共振周波数はシミュレーションや実験により求めることが必要である。
【0150】
以上の構成とすることにより、図14で示した第10の実施例と同様の効果が得られるのに加え、送電器側においても1次側の共鳴コイル531と共振を有した負荷コイル511とのコイル間距離による周波数特性の変動をより小さくすることができる。
【0151】
また、図16bは1次側の共鳴コイル群の531のもう一つの例を示したものである。
【0152】
図において、532は円筒形状の共鳴コイル群であり、円筒形状の共鳴コイル532a、532bより構成され、これらは並行して一定間隔で円筒形状に巻かれており、互いに自己共振周波数が異なっている。なお、円筒形状の共鳴コイル532a、532bのコイルの巻き線の長さ(巻き数)やコイルの巻き線の線径やコイルの内径を変えることにより、それらの自己共振周波数を変えることができる。
【0153】
これらの図では、コイル群は図では2つの構成であったが3つ以上でもよいし、給電コイルで給電が可能であれば並行に巻かなくともそれぞれ独立であってもよいし、一方がスパイラル状の平面コイルで他方が円筒形状のコイルであってもよい。
【0154】
以上の複数の共鳴コイルを用いた場合の送受コイル間の周波数特性について示したものを図22に示す。図では、図16aで示した1次側の共鳴コイルを自己共振周波数が互いに異なる複数のコイルで構成した場合の1次側給電コイルから2次側負荷コイル間の伝送特性について模式的に示した模式図である。図の横軸は周波数、縦軸は伝送損失である。図において自己共振周波数が互いに異なるコイルを共鳴コイルに用いることにより、周波数特性が広がることが分かる。これにより、コイル間距離により周波数特性が変動した場合でも、周波数帯域が広がったことで伝送効率の低下を小さくすることが可能となる。
【実施例13】
【0155】
図17は、本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムの第13の実施例を示した図である。
【0156】
図において、542はレベル検出回路、543は制御回路、541は電界効果トランジスタであり、その他、図14で示した非接触での電力伝送システムの第10の実施例に対応する部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0157】
図は、図14で示した第10の実施例と比較して、共振容量512の両端には電界効果トランジスタ541のドレインとソースが接続される。さらに、整流回路406で整流された直流出力の一部をレベル検出542により検出し、制御回路543に出力するとともに、制御回路543は電源回路407より整流された電源電圧の一部を電源に用いて電界効果トランジスタ541のゲートを制御する構成である。
【0158】
以上の構成において、電界効果トランジスタ541がオフ状態のときは、1次側共鳴コイル504で発生した磁界は、共振を有した負荷コイル511と共振容量512で構成される共振回路と強く結合し、これらの共振回路を通して整流回路406に受信電流が流れる。このとき、制御回路543は電界効果トランジスタ541をオン状態にすると、共振容量512の両端がショート状態となるため、共振を有した負荷コイル511は共振点がなくなる。このため、1次側共鳴コイル504で発生した磁界は、負荷コイル511により2次側では共振を伴わない電磁誘導により整流回路406に受信電力を供給する。制御回路543は、定期的に電界効果トランジスタ541をオンオフすることで、整流回路406から出力される整流電圧を比較し、より受信電力の高いほうに切り替える動作を行う。
【0159】
負荷コイル511と共振容量512による共振状態での受電は、1次側共鳴コイル504と負荷コイル511との距離がある程度離れたとき伝送効率が最も高くなり、逆にコイル間距離が数mm以下のごく近距離になるとインピーダンスの変動により伝送効率がかえって低下する。これに対し、負荷コイル511のみの受電では、受電側は共振回路を持たず、ごく近距離では電磁誘導伝送となるため、受電側は共振回路を持たないほうが伝送効率は高くなる。これは、給電コイルと共鳴コイルの結合と共鳴コイルと負荷コイルとの結合が同じ電磁誘導による伝送と見なせるためである。このため、コイル間距離がある程度離れている場合は、電界効果トランジスタ541をオフ状態にし、ごく近距離では、電界効果トランジスタ541をオン状態にして受電側に共振回路を持たない構成とすることにより、図14で示した実施例10と同様の効果が得られる上に、コイル間距離がごく近距離であっても伝送効率の劣化が小さい非接触電力伝送システムを得ることができる。
【0160】
また、図23に負荷コイルと直列に接続した共振容量を電界効果トランジスタによりオンオフすることの効果を模式的に示した模式図を示す。図の横軸はコイル間距離、縦軸は伝送損失である。図において、電界効果トランジスタをオン状態とした場合、負荷コイルは共振周波数を持たず電磁誘導による伝送となるため、コイル間距離が大きくなると急激に損失が増加する。一方、電界効果トランジスタをオフ状態とした場合、負荷コイルは共振容量により直列共振回路となるため、コイル間距離がある程度離れても伝送損失の増加は小さいが、ごく近距離になるとかえって伝送効率が低下する。このため、ごく近距離では電界効果トランジスタをオン状態として負荷コイルに共振回路を持たないようにすれば、近距離での伝送効率の低下を抑えることができることが分かる。
【実施例14】
【0161】
図18は、本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムを有した第14の実施例を示した図である。
【0162】
図において、551a、551b、551cは電界効果トランジスタ、552a、552b、552cは共振容量、553は共鳴容量であり、図17で示した第13の実施例に対応する部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0163】
図において、図17で示した第13の実施例と比較して、1次側共鳴コイルと並列に共鳴容量553が接続され、共振を有した負荷コイル511には、電界効果トランジスタ551a、551b、551cと共振容量552a、552b、552cがそれぞれ直列接続されたものが並列に接続されている。
【0164】
給電コイル503からは主に1次側共鳴コイル504のインダクタンス値と共鳴容量553により決まる自己共振周波数で電力を給電する。1次側共鳴コイル504は共鳴容量553との自己共振周波数で給電されるため、これら共振回路には大きな電流が流れ、強い磁界が発生する。このとき、1次側共鳴コイル504と並列に共鳴容量553が接続されているため、同一の共振周波数で比較した場合、共振容量がない場合に比べ、1次側共鳴コイル504のインダクタンス値を小さくできるので、送電器501の形状を小さくすることができる。
【0165】
一方、電界効果トランジスタ551a、551b、551cと直列に接続されている共振容量552a、552b、552cは、共振を有した負荷コイル511とそれぞれ並列共振回路を構成するとともに、それぞれの容量は共振周波数が異なるような容量値となっている。このため、1次側共鳴コイル504と共振を有した負荷コイル511とのコイル間距離により伝送効率が最も高くなる容量値を選択する構成となっている。
【0166】
以上の構成において、最適な容量値を選択する手段の一例を以下説明する。
【0167】
1次側共鳴コイル504からの磁界を共振を有した負荷コイル511により受信する場合、制御回路543は最もコイル間距離が遠いときに伝送効率が高くなる共振容量に対応する電界効果トランジスタをオン状態にしておく。そして、電力の受電が開始された場合、制御回路543は定期的に他のオフ状態となっている電界効果トランジスタをオン状態にして、そのときの受電電力をレベル検出542により検出する。そして最も受電電力の大きい共振容量を選択することで、高い伝送効率で受電が可能となる。このとき、制御回路543は定期的に受電電力をレベル検出542より検出して最も伝送効率の高い電界効果トランジスタを選択しオン状態とする。
【0168】
以上の構成では、図17で示した第13の実施例と同様の効果が得られる上に、共振容量を複数設け電界効果トランジスタを用いて切り替えることでコイル間距離により電力の伝送効率の更なる最適化が可能となる。
【0169】
コイル間距離が近い場合(直径数cmのコイルの場合、1cm程度以下)、共鳴コイル504のコイルの巻き線と負荷コイル511のコイルの巻き線の間にも寄生容量が存在するため、コイル間距離が近い場合、共鳴コイルと負荷コイル間の容量が増えることで共鳴コイルの自己共振周波数も下がる。この場合、送電周波数が一定のときは、距離が近づくほど逆に負荷コイルの共振容量を小さくして負荷コイルと共振容量による共振周波数を上げることで、共鳴コイルの自己共振周波数が下がるのを抑えることができるので、コイル間距離による伝送効率の変動を抑えることができる。
【実施例15】
【0170】
図19は、本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムを有した第15の実施例を示した図である。
【0171】
図において、送電装置610は給電コイル611、スパイラル形状の1次側共鳴コイル612、変復調回路613、可変利得電力増幅器614、発振器615、制御回路616より構成され、その他、図17の非接触による電力伝送システムの第13の実施例に対応する部分は同一符号を付し説明を省略する。
【0172】
図のスパイラル形状の1次共鳴コイル612は平面上に巻かれたコイルであり円筒形の立体コイルと同様コイルの巻き線間の寄生容量による自己共振周波数が存在し、その共振周波数は円筒形コイルと同様に求めるられる。
【0173】
また、携帯端末装置702には、共振を有した負荷コイル511と整流回路406の間に負荷変調回路441、検波、復調回路442が付加されており、送電装置610は高周波電源615に可変利得電力増幅器614と変復調回路613を介して給電コイル611に接続される。
【0174】
以上の構成では、送電装置610から携帯端末装置702に非接触で電力を伝送するとともに、電力伝送の際に必要となる送電装置610と携帯端末装置702間の認証や送電電力制御を行う上で必要とされる通信手段を有するものである。
【0175】
まずは、送電装置610から携帯端末装置702に非接触で電力を伝送する動作について説明する。
【0176】
1次側共鳴コイル612の自己共振周波数に等しい周波数で高周波電源615から出力される信号は利得可変電力増幅器614により増幅され変復調回路613を介し給電コイル611に給電される。給電された送電信号は1次側共鳴コイル612の自己共振周波数に等しい周波数であるため、1次側共鳴コイル612からは強い磁界が発生する。
【0177】
一方、共振を有した給電コイル511は共振容量512との共振により、1次側共鳴コイル612からの磁界と強く結合するため、効率よく電力を受電し、負荷変調回路441、検波、復調回路442を介し整流回路406により整流し、電源回路407を介して負荷回路408に供給する。また、制御回路543はレベル検出542の値を参考に電界効果トランジスタ541をオンあるはオフして受電電力がより大きいほうに切り替わる動作を行う。
【0178】
次に非接触で通信を行う場合の動作について、まずは送電装置610から携帯端末装置702にデータを伝送する場合について説明する。
【0179】
図において、利得可変電力増幅器614からの送電信号にASK変調等の変調をかけて給電コイル611に給電する。給電された送電信号は、1次側共鳴コイル612より強い磁界を発生し、共振を有した負荷コイル511と共振容量512により効率よく受信され、負荷変調回路441を介し検波、復調回路442に入力される。入力された送電信号はダイオード等を用いた検波回路により復調され制御回路502に入力される。また、受電電力は整流回路406により整流され、電源回路407により負荷回路408に供給される。
【0180】
次に、携帯端末装置702から受電装置610にデータを伝送する場合について説明する。
【0181】
通信を行う場合、携帯端末装置702は送電装置610より電力を受電していることから、負荷変調回路441にも常に信号振幅が加わっている。このため、負荷変調回路441では、この点におけるインピーダンスを変調信号に対応して変えると磁気的に結合している送電装置610側のインピーダンスも影響を受けて変化する(負荷変調方式)。よって、変復調回路613においてダイオード検波等により、送電信号が負荷変調回路441の負荷変動により発生する送電電力の反射で復調された信号を取り出すことができるので通信が可能となる。
【0182】
以上の構成では、図17の非接触による電力伝送システムの第13の実施例と同様の効果が得られる上に簡易な構成で通信が可能な通信手段を有した非接触電力伝送システムを得ることができる。
【実施例16】
【0183】
図20は、本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムを有した第16の実施例を示した図である。
【0184】
図において、631は1次側の共鳴コイル群、632は給電コイルであり、1次側の共鳴コイル群631は、スパイラル形状の共鳴コイル631a、631bにより構成され、これらは並行して一定間隔でスパイラル状に巻かれており、その他、図18の非接触電力伝送システムの第14の実施例および図19の非接触電力伝送システムの第15の実施例に対応する部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0185】
図において、送電装置610の1次側共鳴コイルにスパイラル形状の共鳴コイル631aと631bの複数のコイルを用いるとともに、互いの自己共振周波数が異なるようにコイルの巻き数等を変えた構成としている。さらに、1次側共鳴コイル群631と給電コイル632の位置的構成を変えており、1次側共鳴コイル群631と共振を有した負荷コイル511間距離よりも給電コイル632と共振を有した負荷コイル511間距離のほうが近くなるようにした。
【0186】
以上の構成とすることにより、図16aの非接触電力伝送システムの第12の実施例、図18の非接触電力伝送システムの第14の実施例および図19の非接触電力伝送システムの第15の実施例と同様の効果が得られる上に、1次側共鳴コイル群631と共振を有した負荷コイル511との距離よりも給電コイル632と共振を有した負荷コイル511との距離のほうが近くなるようすることで、給電コイル632と共振を有した負荷コイル511とのコイル間距離がごく近い場合、1次側共鳴コイル群631を介した磁気共鳴伝送よりも、給電コイル632から共振を有した負荷コイル511に電磁誘導により直接伝送することが可能であるため、ごく近距離での伝送効率の低下を抑えることができる。
【0187】
以上の構成では、コイル間距離が近くなると共鳴コイルの共振周波数は負荷コイルが近づくことにより等価的な寄生容量が増えるため共振周波数が下がるので送電周波数が一定のとき伝送効率が下がってしまう。この場合、共鳴コイルと給電コイルの配置を変えることにより給電コイルと負荷コイルの距離が近くなるとともに、共鳴コイルがこれらの間に入らなくなるため給電コイルと負荷コイル間で電磁誘導による結合が強くなる。このとき、コイル間距離が遠い場合は電磁誘導による伝送は小さいがコイル間距離がごく近い場合、共鳴コイルの共振周波数は低いほうにずれてしまうが給電コイルと負荷コイル間の電磁誘導による伝送が大きくなるので、コイル間距離がごく近い場合の伝送効率の低下が抑えられる。
【実施例17】
【0188】
図21は、本発明に使用される非接触による充電(電力伝送)システムを有した第17の実施例を示した図である。
【0189】
図において、641、651はアンテナ、642は負荷変調回路、643は検波、復調回路、652は変復調回路、653は発振回路であり、図19の非接触電力伝送システムの第15の実施例に対応する部分については同一符号を付し説明を省略する。
【0190】
図の送電装置610には発振回路653が変復調回路652を介しアンテナ651に接続され、携帯端末装置702はアンテナ641が負荷変調回路642を介し検波、復調回路643に接続されている。
【0191】
以上の構成において、送電装置610と携帯端末装置702間で通信を行う動作について説明する。なお、電力の伝送動作については説明を省略する。
【0192】
図において、発振回路653からの送信信号に変復調回路652において、ASK変調等の変調をかけアンテナ651に給電する。給電された送信信号はアンテナ651により電磁波あるいは磁気的にエネルギーとして放射される。放射された送信信号はアンテナ641により受信され負荷変調回路642を介し検波、復調回路643に入力される。入力された送信信号はダイオード検波等の検波回路により復調され制御回路604に入力される。
【0193】
次に、携帯端末装置702から送電装置610にデータを伝送する場合について説明する。携帯端末装置702は送電装置610により信号を受信している状態のときに通信を行う場合を考えると、負荷変調回路642にも常に信号振幅が加わっている。このため、負荷変調回路642では、この点における負荷を変動させることで変調を行う負荷変調方式を用いる構成とした。
【0194】
以上の構成では、図19の非接触電力伝送システムの第15の実施例と同様の効果が得られる上に電力伝送と異なる周波数で通信が行えることから、より高速に通信を行うことも可能となるので、認証や送信電力制御等の電力伝送に必要な制御データのほかに他のデータも伝送することが可能となる。
【符号の説明】
【0195】
101、141、504,521、612…磁気共鳴コイル、102、402、505…負荷コイル、103、154、221、312、…非接触データ通信部、104…充電制御部、105、472…バッテリ、106…端末無線通信部、107…検知出力部、101、210…切り替えスイッチ、111、112,211…減衰抵抗、121、122、123、124、125、126、127、128…整流用ダイオード、130,131…平滑用容量、140、220、310、420、460、610、701…送電装置、142…給電コイル、143…増幅部、144、153、424、464、476、615…発振器、145、425、465…制御部、146…検出部、151、401、421、461、481…電磁誘導コイル、152、301、302、405、422、462、482、512、552a、552b、552c、…共振容量、311…合成器、313…フィルタ、711…送電制御モジュール、712…非接触型送電モジュール、713…非接触型処理モジュール、720…大容量蓄電モジュール、721…受電制御モジュール、722…充電のための非接触型受電モジュール、723…非接触型処理モジュール、150、460、480…非接触通信装置、403、553、738,739…共鳴容量、404…ローパスフィルタ、406、412、456、485…整流回路、407…電源回路、408…負荷回路、409、473…ハイパスフィルタ、410、441、477、483、642…負荷変調回路、411、442、478…検波、復調回路、413、487、…メモリ、414、443、486、543、616…制御回路、430、475、613、652…変復調回路、153…発振器、453、454、455、541、521a、521b、521c、551a、551b、551c…電界効果トランジスタ、452…切り替えおよび電源回路、471…充電制御回路、501…送電器、502…受電器、505、511…負荷コイル、506…高周波電源、523…励振コイル、531、532、631…共鳴コイル群、542…レベル検出回路、614…可変利得電力増幅器、641、651…アンテナ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電コイルと磁気共鳴コイルからなる1次側コイルと、負荷コイルからなる2次側コイルからなり、コイルの巻き線間の寄生容量とコイルの自己インダクタンスにより決まる前記磁気共鳴コイルの自己共振周波数で前記給電コイルより給電し、前記2次側コイルの負荷コイルから磁気的結合により非接触で給電された電力を取り出す構成の非接触電力伝送システムにおいて、前記給電コイルと磁気共鳴コイルの結合と前記磁気共鳴コイルと負荷コイルの結合に磁気的結合を利用して非接触で電力を伝送することを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項2】
給電コイルと磁気共鳴コイルからなる1次側コイルと、負荷コイルからなる2次側コイルからなり、コイルの巻き線間の寄生容量とコイルの自己インダクタンスにより決まる前記磁気共鳴コイルの自己共振周波数で前記給電コイルより給電し、前記2次側コイルの負荷コイルから磁気的結合により非接触で給電された電力を取り出す構成の非接触電力伝送システムにおいて、前記2次側コイルの負荷コイルに少なくとも直列接続か並列接続により負荷コイルのインダクタンスと共振する共振回路を付加したことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項3】
請求項2記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記給電コイルの給電により前記磁気共鳴コイルが並列共振現象を起こして発生した磁界を前記負荷コイルの直列共振現象か並列共振現象を利用して磁気的に結合して非接触で電力を取り出せるようにしたことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記磁気共鳴コイルは両端が電気的に接続されない構成であって、主に前記磁気共鳴コイルの巻き線間の寄生容量と前記磁気共鳴コイルの自己インダクタンスにより並列共振回路を形成することにより、前記磁気共鳴コイルの共振周波数の前後で前記磁気共鳴コイルより発生する磁界の位相が180度異なるようにしたことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項5】
請求項1乃至3記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記磁気共鳴コイルの両端に共鳴容量を接続し前記磁気共鳴コイルと共鳴容量により並列共振回路を構成することにより、前記磁気共鳴コイルの共振周波数の前後で前記磁気共鳴コイルより発生する磁界の位相が180度異なるようにしたことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項6】
請求項2乃至5記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記2次側コイルの負荷コイルに共振する容量が直列に接続された場合は、共振容量と並列にスイッチ素子を付加し、前記2次側コイルの負荷コイルに共振する容量が並列に接続された場合は、共振容量と直列にスイッチ素子を付加し、スイッチ素子をオンした場合とオフした場合とで受信電力を比較し受信電力が大きいほうにスイッチ素子を切り替えて電力を伝送することを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項7】
給電コイルと磁気共鳴コイルからなる1次側コイルと、少なくとも負荷コイルからなる2次側コイルからなり、コイルの巻き線間の浮遊容量とコイルの自己インダクタンスにより決まる前記磁気共鳴コイルの自己共振周波数で前記給電コイルより給電し、前記2次側コイルの負荷コイルから磁気的結合により非接触で給電された電力を取り出す構成の非接触電力伝送システムにおいて、前記磁気共鳴コイルは、自己共振周波数が異なる少なくとも2つ以上のコイルからなり、前記給電コイルより前記複数の磁気共鳴コイルに給電することを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項8】
請求項7記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記2次側コイルに請求項1乃至5記載の2次側コイルを用いたことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項9】
請求項8記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記負荷コイルと共振容量との共振周波数が、前記複数設けた磁気共鳴コイルの自己共振周波数の最も低い周波数と最も高い周波数の間であることを特徴とした非接触電力伝送システム。
【請求項10】
請求項1乃至9記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記負荷コイルのインダクタンス値が前記磁気共鳴コイルのインダクタンス値よりも小さく、前記給電コイルのインダクタンス値よりも大きくしたことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項11】
請求項1乃至10記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記磁気共鳴コイルと負荷コイル間の距離より前記給電コイルと負荷コイル間の距離が近くなるように配置したことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項12】
請求項1乃至11記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記1次側コイルと2次側コイルにそれぞれ変復調回路を接続し、1次側コイルから2次側コイルに電力を伝送するとともに、前記1次側コイルからの送信電力信号に変調信号を重畳させることにより、1次側コイルと2次側コイル間で通信を行うことを特徴とする通信手段を有した非接触電力伝送システム。
【請求項13】
請求項12記載の通信手段を有した非接触電力伝送システムにおいて、少なくとも前記2次側コイルから1次側コイルへの通信に負荷変調方式を用いたことを特徴とする通信手段を有した非接触電力伝送システム。
【請求項14】
請求項1乃至11記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記1次側コイルと2次側コイルにそれぞれ通信回路を設けることにより、1次側コイルから2次側コイルに電力を伝送するとともに、前記1次側コイルと2次コイル間で通信を行う構成であって、電力を伝送する周波数と通信を行う周波数が異なることを特徴とする通信手段を有した非接触電力伝送システム。
【請求項15】
少なくとも電力を非接触で送電する送電装置と前記送電装置からの非接触で送電された電力を受電する受電装置より構成される非接触電力伝送システムであって、前記受電装置は少なくとも互いが磁気的に結合しあう共振コイルと負荷コイルからなり、前記共振コイルと第1の周波数で共振する第1の共振回路を接続するとともに、フィルタを介し第2の周波数で共振する第2の共振回路を接続し第1の出力端子を設け、前記フィルタは前記第2の周波数の信号を通過させ、前記第1の周波数の信号の通過を阻止する構成であり、前記第1の出力端子からは前記第2の周波数の信号を出力し、前記負荷コイルは、前記共振コイルから磁気的に結合することで前記第1の周波数の信号を出力することを特徴とする受電装置。
【請求項16】
少なくとも電力を非接触で送電する送電装置と前記送電装置からの非接触で送電された電力を受電する受電装置より構成される非接触電力伝送システムであって、前記送電装置は少なくとも互いが磁気的に結合しあう給電コイルと共振コイルからなり、前記共振コイルと第1の周波数で共振する第1の共振回路を接続するとともに、フィルタを介し第2の周波数で共振する第2の共振回路を接続し第1の入力端子を設け、前記フィルタは前記第2の周波数の信号を通過させ、前記第1の周波数の信号の通過を阻止する構成であり、前記第1の入力端子からは前記第2の周波数の信号を給電し、前記給電コイルからは、前記第1の周波数の信号を給電することを特徴とする送電装置。
【請求項17】
認証、データの読み書きを行なうためのデータ伝送を非接触で行なう第1の非接触通信装置と、受電装置に送電するための送電電力を非接触で送電する送電装置と、
前記非接触通信装置と非接触で通信を行なう第2の非接触通信手段と前記送電装置から送電された送電電力を非接触で受電する受電手段と、非接触通信を行うためのアンテナと前記送電装置から送電された電力を受電するためのアンテナコイルを共用化した受電装置からなり、
前記受電装置の受電手段は、送電電力を受電する受電コイルと並列に第1の共振回路を接続するとともに、第2の共振回路を第1のフィルタ回路を介し直列あるいは並列に接続した後、整流手段により整流して電力を取り出す構成であり、前記第2の非接触通信手段は、前記受電コイルと磁気的に結合するように負荷コイルを受電コイルに近接して設け、前記負荷コイルには第2のフィルタ回路を介し、前記第1の非接触通信装置と通信を行うための変復調回路を設けた構成であって、
前記第1の共振回路は前記受電コイルのインダクタンス値と非接触通信を行う信号周波数で共振し、前記第2の共振回路は前記受電コイルと非接触で電力の伝送を行う周波数で共振する容量値の容量であり、前記第1のフィルタ回路は非接触で電力の伝送を行う周波数は通過させ、非接触通信を行う信号周波数は通過を阻止し、前記第2のフィルタ回路は非接触通信を行う信号周波数は通過させ、非接触で電力を伝送を行う周波数では通過を阻止する構成であることを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項18】
請求項17記載の非接触電力伝送システムにおいて、送電電力を非接触で送電する周波数は、非接触通信装置からの通信信号周波数に対して低い周波数であって、前記第1のフィルタ回路にローパスフィルタを、前記第2のフィルタ回路にハイパスフィルタを用いた構成であり、第1の共振回路と第2の共振回路が容量であることを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項19】
請求項11乃至18記載の非接触電力伝送システムにおいて、認証、データの読み書きを行なうためのデータ伝送を非接触で行なう非接触通信装置が質問器であり、前記受電装置に含まれる非接触通信手段が応答器であることを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項20】
請求項11乃至19記載の非接触電力伝送システムにおいて、認証、データの読み書きを行なうためのデータ伝送を非接触で行なう第1の非接触通信装置と、受電装置に送電するための送電電力を非接触で送電する送電装置と、
前記非接触通信装置と非接触で通信を行なう第2の非接触通信手段と前記送電装置から送電された送電電力を非接触で受電する受電手段からなる受電装置からなり、
前記第2の非接触通信手段は、第1の質問器と第1の応答器を兼ね備えた構成であって、前記第1の非接触通信装置が第2の質問器のときは、前記第2の質問器からの信号を受信した場合、前記第1の応答器をオン状態として、第2の質問器からの質問データ信号に対応した応答データ信号を送信し、前記第1の非接触通信装置が第2の応答器のときは、前記第1の質問器をオン状態として、前記第2の応答器に質問データ信号を送信するとともに、第2の応答器からの応答データ信号の受信を行うことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項1】
給電コイルと磁気共鳴コイルからなる1次側コイルと、負荷コイルからなる2次側コイルからなり、コイルの巻き線間の寄生容量とコイルの自己インダクタンスにより決まる前記磁気共鳴コイルの自己共振周波数で前記給電コイルより給電し、前記2次側コイルの負荷コイルから磁気的結合により非接触で給電された電力を取り出す構成の非接触電力伝送システムにおいて、前記給電コイルと磁気共鳴コイルの結合と前記磁気共鳴コイルと負荷コイルの結合に磁気的結合を利用して非接触で電力を伝送することを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項2】
給電コイルと磁気共鳴コイルからなる1次側コイルと、負荷コイルからなる2次側コイルからなり、コイルの巻き線間の寄生容量とコイルの自己インダクタンスにより決まる前記磁気共鳴コイルの自己共振周波数で前記給電コイルより給電し、前記2次側コイルの負荷コイルから磁気的結合により非接触で給電された電力を取り出す構成の非接触電力伝送システムにおいて、前記2次側コイルの負荷コイルに少なくとも直列接続か並列接続により負荷コイルのインダクタンスと共振する共振回路を付加したことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項3】
請求項2記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記給電コイルの給電により前記磁気共鳴コイルが並列共振現象を起こして発生した磁界を前記負荷コイルの直列共振現象か並列共振現象を利用して磁気的に結合して非接触で電力を取り出せるようにしたことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記磁気共鳴コイルは両端が電気的に接続されない構成であって、主に前記磁気共鳴コイルの巻き線間の寄生容量と前記磁気共鳴コイルの自己インダクタンスにより並列共振回路を形成することにより、前記磁気共鳴コイルの共振周波数の前後で前記磁気共鳴コイルより発生する磁界の位相が180度異なるようにしたことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項5】
請求項1乃至3記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記磁気共鳴コイルの両端に共鳴容量を接続し前記磁気共鳴コイルと共鳴容量により並列共振回路を構成することにより、前記磁気共鳴コイルの共振周波数の前後で前記磁気共鳴コイルより発生する磁界の位相が180度異なるようにしたことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項6】
請求項2乃至5記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記2次側コイルの負荷コイルに共振する容量が直列に接続された場合は、共振容量と並列にスイッチ素子を付加し、前記2次側コイルの負荷コイルに共振する容量が並列に接続された場合は、共振容量と直列にスイッチ素子を付加し、スイッチ素子をオンした場合とオフした場合とで受信電力を比較し受信電力が大きいほうにスイッチ素子を切り替えて電力を伝送することを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項7】
給電コイルと磁気共鳴コイルからなる1次側コイルと、少なくとも負荷コイルからなる2次側コイルからなり、コイルの巻き線間の浮遊容量とコイルの自己インダクタンスにより決まる前記磁気共鳴コイルの自己共振周波数で前記給電コイルより給電し、前記2次側コイルの負荷コイルから磁気的結合により非接触で給電された電力を取り出す構成の非接触電力伝送システムにおいて、前記磁気共鳴コイルは、自己共振周波数が異なる少なくとも2つ以上のコイルからなり、前記給電コイルより前記複数の磁気共鳴コイルに給電することを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項8】
請求項7記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記2次側コイルに請求項1乃至5記載の2次側コイルを用いたことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項9】
請求項8記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記負荷コイルと共振容量との共振周波数が、前記複数設けた磁気共鳴コイルの自己共振周波数の最も低い周波数と最も高い周波数の間であることを特徴とした非接触電力伝送システム。
【請求項10】
請求項1乃至9記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記負荷コイルのインダクタンス値が前記磁気共鳴コイルのインダクタンス値よりも小さく、前記給電コイルのインダクタンス値よりも大きくしたことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項11】
請求項1乃至10記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記磁気共鳴コイルと負荷コイル間の距離より前記給電コイルと負荷コイル間の距離が近くなるように配置したことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項12】
請求項1乃至11記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記1次側コイルと2次側コイルにそれぞれ変復調回路を接続し、1次側コイルから2次側コイルに電力を伝送するとともに、前記1次側コイルからの送信電力信号に変調信号を重畳させることにより、1次側コイルと2次側コイル間で通信を行うことを特徴とする通信手段を有した非接触電力伝送システム。
【請求項13】
請求項12記載の通信手段を有した非接触電力伝送システムにおいて、少なくとも前記2次側コイルから1次側コイルへの通信に負荷変調方式を用いたことを特徴とする通信手段を有した非接触電力伝送システム。
【請求項14】
請求項1乃至11記載の非接触電力伝送システムにおいて、前記1次側コイルと2次側コイルにそれぞれ通信回路を設けることにより、1次側コイルから2次側コイルに電力を伝送するとともに、前記1次側コイルと2次コイル間で通信を行う構成であって、電力を伝送する周波数と通信を行う周波数が異なることを特徴とする通信手段を有した非接触電力伝送システム。
【請求項15】
少なくとも電力を非接触で送電する送電装置と前記送電装置からの非接触で送電された電力を受電する受電装置より構成される非接触電力伝送システムであって、前記受電装置は少なくとも互いが磁気的に結合しあう共振コイルと負荷コイルからなり、前記共振コイルと第1の周波数で共振する第1の共振回路を接続するとともに、フィルタを介し第2の周波数で共振する第2の共振回路を接続し第1の出力端子を設け、前記フィルタは前記第2の周波数の信号を通過させ、前記第1の周波数の信号の通過を阻止する構成であり、前記第1の出力端子からは前記第2の周波数の信号を出力し、前記負荷コイルは、前記共振コイルから磁気的に結合することで前記第1の周波数の信号を出力することを特徴とする受電装置。
【請求項16】
少なくとも電力を非接触で送電する送電装置と前記送電装置からの非接触で送電された電力を受電する受電装置より構成される非接触電力伝送システムであって、前記送電装置は少なくとも互いが磁気的に結合しあう給電コイルと共振コイルからなり、前記共振コイルと第1の周波数で共振する第1の共振回路を接続するとともに、フィルタを介し第2の周波数で共振する第2の共振回路を接続し第1の入力端子を設け、前記フィルタは前記第2の周波数の信号を通過させ、前記第1の周波数の信号の通過を阻止する構成であり、前記第1の入力端子からは前記第2の周波数の信号を給電し、前記給電コイルからは、前記第1の周波数の信号を給電することを特徴とする送電装置。
【請求項17】
認証、データの読み書きを行なうためのデータ伝送を非接触で行なう第1の非接触通信装置と、受電装置に送電するための送電電力を非接触で送電する送電装置と、
前記非接触通信装置と非接触で通信を行なう第2の非接触通信手段と前記送電装置から送電された送電電力を非接触で受電する受電手段と、非接触通信を行うためのアンテナと前記送電装置から送電された電力を受電するためのアンテナコイルを共用化した受電装置からなり、
前記受電装置の受電手段は、送電電力を受電する受電コイルと並列に第1の共振回路を接続するとともに、第2の共振回路を第1のフィルタ回路を介し直列あるいは並列に接続した後、整流手段により整流して電力を取り出す構成であり、前記第2の非接触通信手段は、前記受電コイルと磁気的に結合するように負荷コイルを受電コイルに近接して設け、前記負荷コイルには第2のフィルタ回路を介し、前記第1の非接触通信装置と通信を行うための変復調回路を設けた構成であって、
前記第1の共振回路は前記受電コイルのインダクタンス値と非接触通信を行う信号周波数で共振し、前記第2の共振回路は前記受電コイルと非接触で電力の伝送を行う周波数で共振する容量値の容量であり、前記第1のフィルタ回路は非接触で電力の伝送を行う周波数は通過させ、非接触通信を行う信号周波数は通過を阻止し、前記第2のフィルタ回路は非接触通信を行う信号周波数は通過させ、非接触で電力を伝送を行う周波数では通過を阻止する構成であることを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項18】
請求項17記載の非接触電力伝送システムにおいて、送電電力を非接触で送電する周波数は、非接触通信装置からの通信信号周波数に対して低い周波数であって、前記第1のフィルタ回路にローパスフィルタを、前記第2のフィルタ回路にハイパスフィルタを用いた構成であり、第1の共振回路と第2の共振回路が容量であることを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項19】
請求項11乃至18記載の非接触電力伝送システムにおいて、認証、データの読み書きを行なうためのデータ伝送を非接触で行なう非接触通信装置が質問器であり、前記受電装置に含まれる非接触通信手段が応答器であることを特徴とする非接触電力伝送システム。
【請求項20】
請求項11乃至19記載の非接触電力伝送システムにおいて、認証、データの読み書きを行なうためのデータ伝送を非接触で行なう第1の非接触通信装置と、受電装置に送電するための送電電力を非接触で送電する送電装置と、
前記非接触通信装置と非接触で通信を行なう第2の非接触通信手段と前記送電装置から送電された送電電力を非接触で受電する受電手段からなる受電装置からなり、
前記第2の非接触通信手段は、第1の質問器と第1の応答器を兼ね備えた構成であって、前記第1の非接触通信装置が第2の質問器のときは、前記第2の質問器からの信号を受信した場合、前記第1の応答器をオン状態として、第2の質問器からの質問データ信号に対応した応答データ信号を送信し、前記第1の非接触通信装置が第2の応答器のときは、前記第1の質問器をオン状態として、前記第2の応答器に質問データ信号を送信するとともに、第2の応答器からの応答データ信号の受信を行うことを特徴とする非接触電力伝送システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16a】
【図16b】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7a】
【図7b】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16a】
【図16b】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【公開番号】特開2012−196031(P2012−196031A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57375(P2011−57375)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】
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