説明

非接触ICカードの製造装置

【課題】各対の加熱ローラ間における搬送をスムースにすることができるとともに、厚みを均一にすることができる非接触ICカードの製造装置を提供する。
【解決手段】非接触ICカードの製造装置は、ICカード積層体を挟持して、第1ホットメルト層および第2ホットメルト層を溶融させてインレットシートと表面側基材および裏面側基材を接着させるとともに、所定間隔をおいて配置された少なくとも二対の加熱ローラ27を備えている。また、各対の加熱ローラ27間に、搬送されるICカード積層体の下方に配置された帯状の受けガイド34が幅方向に複数設けられている。さらに、各対の加熱ローラ27間に、搬送されるICカード積層体の上方に配置され、受けガイド34との間でICカード積層体を案内する帯状の抑えガイド35が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップがアンテナとして機能する導電体に接続されて構成されるインレットシートを有する非接触ICカードの厚みを均一に製造することができる非接触ICカードの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リーダ・ライタ等の外部装置と非接触で通信する非接触ICカードが普及しつつある。非接触ICカードの需要は、今後、急速な勢いで拡大していくものと予想されており、これにともなって、高品質の非接触ICカードを低コストで製造することが強く望まれている。
【0003】
非接触ICカードは、第1基材と、第1基材の一方の面に設けられた第1接着剤層とを含む表面側基材と、第2基材と、第2基材の一方の面に設けられた第2接着剤層とを含む裏面側基材とを備えている。また、表面側基材と裏面側基材間に、インレット用基材と、インレット用基材上に設けられたICチップと、ICチップに対応して設けられたアンテナとを含むインレットシートが設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような構成からなる非接触ICカードを製造する場合、まず、表面側基材の一方の面に接着剤が塗布されて第1接着剤層が形成されるとともに、裏面側基材の一方の面に接着剤が塗布されて第2接着剤層が形成される。次に、表面側基材とインレットシートと裏面側基材とを積層してICカード積層体が作製され、少なくとも二対の加熱ローラにより第1接着剤層および第2接着剤層を溶融して、表面側基材とインレットシートおよびインレットシートと裏面側基材とが接着される。その後、冷却加圧することにより、表面側基材の第1接着剤層および裏面側基材の第2接着剤層を硬化させている。
【特許文献1】特開2003−162697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このように各対の加熱ロールによりインレットシートと表面側基材および裏面側基材を接着させる際、各加熱ロールの回転速度が異なる場合、または上方の加熱ロールとICカード積層体との間の摩擦と、下方の加熱ロールとICカード積層体との間の摩擦が異なる場合、または積層体の層構成が中心のアンテナに対して対称ではない場合がある。この場合、この加熱ロールにより第1接着剤層および第2接着剤層は溶融されて流動性を有しているため、インレットシートに対して表面側基材または裏面側基材がずれて、ICカード積層体に反りが発生するという問題がある。
【0006】
例えば、図7(a)に示すように、上方の加熱ロール40の回転速度と下方の加熱ロール40の回転速度とが等しく、かつICカード積層体41の表面と上方の加熱ロール40との間の摩擦と、ICカード積層体41の裏面と下方の加熱ロール40との間の摩擦が等しく積層体の層構成が中央のアンテナに対して対称である場合、一対の加熱ロール40から送り出されるICカード積層体41は反ることがなく、その厚みが均一に保持される。しかしながら、図7(a)に示すように上方および下方の加熱ロール40の回転速度を等しくし、かつICカード積層体41と上方および下方の加熱ロール40との間の各摩擦を等しくすることは困難である。このため、以下に説明するようにICカード積層体41が反ることがある。
【0007】
すなわち、図7(b)に示すように、上方の加熱ロール40の回転速度が下方の加熱ロール40の回転速度よりも大きい場合、またはICカード積層体41の表面と上方の加熱ロール40との間の摩擦が、ICカード積層体41の裏面と下方の加熱ロール40との間の摩擦よりも大きい場合、一対の加熱ロール40から送り出されるICカード積層体41は下方に反る。また、図7(c)に示すように、下方の加熱ロール40の回転速度が上方の加熱ロール40の回転速度よりも大きい場合、またはICカード積層体41の裏面と下方の加熱ロール40との間の摩擦が、ICカード積層体41の表面と上方の加熱ロール40との間の摩擦よりも大きい場合、一対の加熱ロール40から送り出されるICカード積層体41は上方に反る。この問題は、特に、表面側基材の第1基材および裏面側基材の第2基材の厚みが薄い場合、または、第1接着剤層および第2接着剤層を形成する接着剤が高温時に粘度が著しく低下する材料からなっている場合に顕著になる傾向を有している。
【0008】
このようにしてICカード積層体に反りが発生した場合、このICカード積層体を、下流側に配置された次の加熱ロール間に搬送させることは難しく、場合によっては、ICカード積層体の搬送方向側の部分が折り畳まれた状態で下流側の加熱ロール間に搬送されてしまう。このため、各対の加熱ロール間において、ICカード積層体をスムースに搬送させることが困難になる。
【0009】
一方、このような問題に対処するために、図8に示すように、3対の加熱ロール40と、各対の加熱ローラ40間に設けられ、搬送されるICカード積層体41の下方に配置され、ICカード積層体41の幅に対応する幅を有するガイド42とを有する非接触ICカードの製造装置が知られている。このような非接触ICカードの製造装置において、ICカード積層体41を各対の加熱ローラ40間で搬送する場合、ICカード積層体40はガイド42に案内される。しかしながらこの場合、ICカード積層体41は、ICカード積層体41の略全幅に渡ってガイド42と接触する。このことにより、加熱ローラ40により加熱されたICカード積層体41の熱がガイド42に奪われ、ICカード積層体41内の温度が不均一になることがある。
【0010】
ここで、上述したように、加熱ローラにより第1接着剤層および第2接着剤層は加熱されて溶融された状態になっている。このことにより、この溶融された状態でICカード積層体の温度が不均一になると、第1接着剤層および第2接着剤層を形成する接着剤の粘度の一部が大きくなる。この場合、ICカード積層体の厚みが不均一になり、非接触ICカードの厚みを均一にすることが困難になる。
【0011】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、各対の加熱ローラ間における搬送をスムースにすることができるとともに、厚みを均一にすることができる非接触ICカードの製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1基材と、第1基材の一方の面に流動性ホットメルトを塗布して形成された第1ホットメルト層とを含む表面側基材と、第2基材と、第2基材の一方の面に流動性ホットメルトを塗布して形成された第2ホットメルト層とを含む裏面側基材と、この表面側基材と裏面側基材との間に介在されたインレットシートとを有するICカード積層体を挟持して加熱することにより、非接触ICカードを製造する非接触ICカードの製造装置において、ICカード積層体を挟持して、第1ホットメルト層および第2ホットメルト層を溶融させてインレットシートと表面側基材および裏面側基材を接着させるとともに、所定間隔をおいて配置された少なくとも二対の加熱ローラと、各対の加熱ローラ間に、幅方向に複数設けられ、搬送されるICカード積層体の下方に配置された帯状の受けガイドと、各対の加熱ローラ間に、幅方向に複数設けられ、搬送されるICカード積層体の上方に配置され、受けガイドとの間でICカード積層体を案内する帯状の抑えガイドと、を備えたことを特徴とする非接触ICカードの製造装置である。
【0013】
本発明は、インレットシートは、インレット用基材と、インレット用基材上に設けられた複数のICチップと、各ICチップに対応して設けられたアンテナとを有し、各抑えガイドは、インレットシートと表面側基材および裏面側基材が接着されたICカード積層体のうち非接触ICカードに対応する領域以外の領域であって、ICカード積層体の幅方向両端側にそれぞれ配置されることを特徴とする非接触ICカードの製造装置である。
【0014】
本発明は、各受けガイドは、ICカード積層体のうち非接触ICカードに対応する領域以外の領域に配置されることを特徴とする非接触ICカードの製造装置である。
【0015】
本発明は、各受けガイドは、ICカード積層体側の面に、多数の突起が形成されていることを特徴とする非接触ICカードの製造装置である。
【0016】
本発明は、各抑えガイドのICカード積層体側の面に、低摩擦材料がコーティングされていることを特徴とする非接触ICカードの製造装置である。
【0017】
本発明は、各抑えガイドは、ポリエーテルエーテルケトンからなっていることを特徴とする非接触ICカードの製造装置である。
【0018】
本発明は、各対の加熱ローラ間であってICカード積層体の下方に、裏面側基材に転がり接触する複数のコロが設けられたことを特徴とする非接触ICカードの製造装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、各対の加熱ローラ間に、搬送されるICカード積層体の下方に配置された帯状の受けガイドが幅方向に複数設けられるとともに、このICカード積層体の上方に配置された帯状の抑えガイドが幅方向に複数設けられ、各受けガイドと各抑えガイドとの間でICカード積層体が案内される。このため、ICカード積層体が反ることを防止して、ICカード積層体をスムースに搬送させることができる。
【0020】
また、本発明によれば、上述したように、各受けガイドおよび各抑えガイドは帯状に形成されていることにより、各受けガイドおよび各抑えガイドとICカード積層体との接触面積を小さくすることができる。このため、各加熱ローラにより加熱されたICカード積層体の熱が、各受けガイドおよび各抑えガイドに伝わることを抑制することができる。このため、ICカード積層体の温度が不均一になることを抑制することができる。この結果、ICカード積層体の厚みを均一にし、厚みが均一な非接触ICカードを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
発明の実施の形態
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。ここで、図1乃至図6は、本発明による非接触ICカードの製造装置の実施の形態を示す図である。このうち、図1は、本発明の実施の形態における非接触ICカードの製造装置によって製造される非接触ICカードの断面構成を示す図であり、図2は、本発明の実施の形態における非接触ICカードの製造装置によって製造される非接触ICカードのインレットシートの一例を示す斜視図であり、図3は、本発明の実施の形態における非接触ICカードの製造装置を示す概略図である。また、図4(a)は、本発明の実施の形態における非接触ICカードの製造装置のうち接着手段の詳細を示す正面図であり、図4(b)は、図4(a)の上面図である。また、図5は、本発明の実施の形態における非接触ICカードの製造装置において作製されるICカード積層体を示す斜視図であり、図6(a)は、本発明の実施の形態における非接触ICカードの製造装置の接着手段において、ICカード積層体の搬送方向側部分が上流側の一対の加熱ローラ間に搬送された状態を示す図であり、図6(b)は、ICカード積層体が各対の加熱ローラ間において搬送されている状態を示す図である。
【0022】
まず、図1および図2により、本発明における製造装置によって製造される非接触ICカードについて説明する。ここで、非接触ICカードは、リーダ・ライタ等の外部装置と非接触で通信することができるものである。
【0023】
図1に示すように、非接触ICカード1は、第1基材3と、第1基材3の一方の面に流動性ホットメルト14(図3参照)を塗布して形成された第1ホットメルト層4とを含む表面側基材2と、第2基材6と、第2基材6の一方の面に流動性ホットメルト14を塗布して形成された第2ホットメルト層7とを含む裏面側基材5とを備えている。また、図1、図2、および図5に示すように、表面側基材2と裏面側基材5間に、インレット用基材9と、インレット用基材9上に設けられた複数のICチップ11と、各ICチップ11に対応して設けられたアンテナ10とを含むインレットシート8が設けられている。
【0024】
図2に示すように、ICチップ11は直方体状に形成され、ICチップ11の厚さは、例えば150μmから300μmとなっている。また、ICチップ11は、情報を記録するためのメモリを含み、外部装置(リーダ・ライタ等)により、アンテナ10を介してICチップ11に記録された情報を読み出したり、アンテナ10を介してICチップ11に新たな情報を書き込んだりすることができるようになっている。そして、非接触ICカード1のこのような機能を発現するための回路配線がICチップ11に書き込まれている。
【0025】
また、図2に示すように、アンテナ10は、インレット用基材9上で略コイル状に形成され、ICチップ11と電気的に接続されている。なお、本実施の形態においては、アンテナ10が略コイル状に形成された例を示したが、これに限定されるものではない。
【0026】
また、アンテナ10は、例えば、スクリーン印刷機を用いて導電性インキをインレット用基材9上に塗布することにより、あるいはインレット用基材9上に銅やアルミニウム等からなる導電性箔を打ち抜き転写することにより、あるいはインレット用基材9上に積層された銅やアルミニウム等からなる導電性箔にエッチングを施して所望の形状にパターニングすること等により、インレット用基材9上に形成することができる。
【0027】
また、表面側基材2の第1基材3、裏面側基材5の第2基材6、およびインレットシート8のインレット用基材9は、PETフィルムや紙等からなっている。
【0028】
また、第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7は、いずれもインレットシート8のICチップ11の厚さよりも各々厚く形成されている。また、第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7を各々形成する流動性ホットメルト14は、湿気硬化型ウレタン樹脂からなっている。
【0029】
次に、図3により、非接触ICカード1の製造装置20について説明する。非接触ICカード1の製造装置20は、表面側基材2の第1基材3の一方の面に、流動性ホットメルト14を塗布する第1接着剤塗布手段21と、裏面側基材5の第2基材6の一方の面に、流動性ホットメルト14を塗布する第2接着剤塗布手段22とを有している。また、非接触ICカード1の製造装置20は、第1接着剤塗布手段21と第2接着剤塗布手段22の下流側に配置され、表面側基材2と裏面側基材5間にインレットシート8を介在させたICカード積層体12を作製する積層手段23と、積層手段23の下流側に配置され第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7を部分的に接合させてICカード積層体12を仮接合する仮接合手段24とを有している。このうち、仮接合手段24は、超音波ウェルダー25からなっているが、超音波ウェルダー25に限らず、熱圧着機29、接着材塗布機30、または粘着材塗布機31を用いても良い。また、非接触ICカード1の製造装置20は、仮接合手段24の下流側に配置されるとともに、ICカード積層体12を溶融させて表面側基材2とインレットシート8とを接着させ、裏面側基材5とインレットシート8とを接着させる接着手段26を有している。また、この接着手段26の下流側に、接着されたICカード積層体12を冷却加圧する冷却加圧手段32が設けられている。この冷却加圧手段32は、ICカード積層体12を挟持する一対の冷却ブロック33を含んでいる。さらに、冷却加圧手段32の下流側に、接着されたICカード積層体12をICチップ11およびアンテナ10毎に断裁する断裁手段28が設けられている。
【0030】
このうち接着手段26について、詳しく説明する。図3および図4(a)、(b)に示すように、接着手段26は、ICカード積層体12を挟持して、第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7を溶融させてインレットシート8と表面側基材2および裏面側基材5を接着させるとともに、所定間隔をおいて配置された二対の加熱ローラ27を有している。各対の加熱ローラ27は、ICカード積層体12に対して上方および下方にそれぞれ配置されている。また、各対の加熱ローラ27間に、搬送されるICカード積層体12の下方に配置された帯状の受けガイド34が、このICカード積層体12の幅方向に2つ設けられている。さらに、各対の加熱ローラ27間に、搬送されるICカード積層体12の上方に配置された帯状の抑えガイド35が幅方向に2つ設けられている。なお、各受けガイド34および各抑えガイド35は、各対の加熱ローラ27間において、搬送方向を長手方向として帯状に形成されており、ICカード積層体12から熱が伝わることを抑制できる程度の幅を有している。
【0031】
また、各受けガイド34および各抑えガイド35は、図4(a)に示すように、上流側端部34a、35aおよび下流側端部34b、35bにおいて傾斜している。このことにより、上流側の加熱ローラ27間から搬送されてくるICカード積層体12をスムースに案内することができる。なお、各受けガイド34および各抑えガイド35は、下流側端部34b、35b近傍において、傾斜していなくても良い。
【0032】
また、各抑えガイド35は、図4(b)に示すように、インレットシート8と表面側基材2および裏面側基材5が接着されたICカード積層体12のうち断裁手段28により断裁されて得られる非接触ICカード1に対応する領域以外の領域であって、ICカード積層体12の幅方向両端側にそれぞれ配置されている(図6(b)参照)。さらに、各抑えガイド35は、さまざまなICカード積層体12の幅に対応して、幅方向に移動可能に構成されている。このことにより、異なるICカード積層体12の幅に容易に対応することができる。
【0033】
また、各受けガイド34は、ICカード積層体12側の面に、多数の突起が形成されている。とりわけ、各受けガイド34に用いる材料としては、表面に多数の突起が形成された縞鋼板を用いることが好適である。このことにより、ICカード積層体12と各受けガイド34との間の接触面積を低減させて、ICカード積層体12から各受けガイド34に熱が伝わることを抑制することができる。
【0034】
また、各抑えガイド35は、ICカード積層体12側の面に、低摩擦材料がコーティングされている。この低摩擦材料としては、テフロン(登録商標)を用いることが好適である。このことにより、ICカード積層体12と各抑えガイド35との間の摩擦を低減させて、ICカード積層体12を各対の加熱ロール27間においてスムースに搬送させることができる。
【0035】
また、各抑えガイド35に用いる材料としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を用いることが好ましい。ここで、ICカード積層体12は、各対の加熱ローラ27により最大で120℃程度まで加熱される。このため、各抑えガイド35にポリエーテルエーテルケトンを用いることにより、各抑えガイド35は、ICカード積層体12が有する熱に耐えることができる。
【0036】
また、図4(a)、(b)に示すように、各対の加熱ローラ27間であってICカード積層体12の下方に、裏面側基材5に転がり接触する複数のコロ36が設けられている。具体的に説明すると、各コロ36は、対応するコロ軸37を介して固定側部材38に回動自在に連結され、搬送方向に列状に3つのコロが配置され、このコロ36の列が、幅方向に3列形成されている。また、このコロ36に用いる材料としては、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を用いることが好適である。このことにより、各コロ36は、ICカード積層体12が有する熱に耐えることができる。
【0037】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用、すなわち本実施の形態による非接触ICカードの製造装置20を用いた非接触ICカード1の製造方法について説明する。
【0038】
まず、図1および図3に示すように、第1基材3と、第1基材3の一方の面に流動性ホットメルト14を塗布して形成された第1ホットメルト層4とを含む表面側基材2を準備する。この場合、まず図5に示すように、多列で多段の非接触ICカード1を作製することができる大きさの第1基材3を準備する。図5において、第1基材3は、2列×3段=6枚の非接触ICカード1を作製することが可能な大きさを持つ。本実施の形態においては、基材を巻いた巻取コアが回転して、1枚の帯状に延びるシート状の基材を連続的に供給する方法ではなく、所謂枚葉状の第1基材3を準備する。このことにより、小ロットの非接触ICカード1を容易に製造することができる。なお、1枚の表面側基材2に対して作製することができる非接触ICカード1の枚数は6枚に限定されるものではない。
【0039】
次に、第1接着剤塗布手段21により、第1基材3の裏面に湿気硬化型ウレタン樹脂からなる流動性ホットメルト14を塗布する。この場合、流動性ホットメルト14を塗布して形成される第1ホットメルト層4の厚さは、ICチップ11の厚さよりも厚くなるようにする。このことにより、インレットシート8が有する凹凸形状に影響を受けることなく、非接触ICカード1の表面を平坦にすることができる。
【0040】
次に、図1および図3に示すように、第2基材6と、第2基材6の一方の面に流動性ホットメルト14を塗布して形成された第2ホットメルト層7とを含む裏面側基材5を準備する。この場合、まず表面側基材2と同様にして、図5に示すように、多列で多段の非接触ICカード1を作製することが可能な大きさをもつ第1基材3と略同一の大きさの第2基材6を準備する。次に、第2接着剤塗布手段22により、第2基材6の表面に湿気硬化型ウレタン樹脂からなる流動性ホットメルト14を塗布する。この場合、第1ホットメルト層4と同様に、流動性ホットメルト14を塗布して形成される第2ホットメルト層の厚さは、ICチップ11の厚さよりも厚くなるようにする。このことにより、インレットシート8が有する凹凸形状に影響を受けることなく、非接触ICカード1の裏面を平坦にすることができる
【0041】
次に、図2および図3に示すように、インレット用基材9と、インレット用基材9上に設けられた複数のICチップ11と、各ICチップ11に対応して設けられたアンテナ10とを含むインレットシート8を準備する。この場合、まず第1基材3および第2基材6に対応した大きさのインレット用基材9を準備する。次に、図2に示すように、インレット用基材9上にアンテナ10を形成する。この際、6枚の非接触ICカード1を作製することができるよう、インレット用基材9上にはアンテナ10が6箇所に形成される。インレット用基材9上にアンテナ10を形成する手段としては、導電性インキをインレット用基材9上に塗布するスクリーン印刷機、あるいはインレット用基材9上に銅やアルミニウム等からなる導電性箔を転写する転写装置、あるいはインレット用基材9上に積層された銅やアルミニウム等からなる導電性箔にエッチングを施して所望の形状にパターニングするエッチング装置等を用いることができる。これらのアンテナを形成する手段を用いれば、コイル状のアンテナを有するインレットシート8だけでなく、種々の形状を有するアンテナをインレットシート8に形成することができる。その後、インレット用基材9上に形成された各アンテナ10に対応してICチップ11を取り付け、これによりインレット用基材9上にはアンテナ10が6箇所に形成され、かつ6個のICチップ11が設けられる。
【0042】
次に、図3に示すように、表面側基材2の第1ホットメルト層4と、裏面側基材5の第2ホットメルト層7を冷却固化する。ところで、湿気硬化型ウレタン樹脂からなる流動性ホットメルト14は、常温における気中環境下に曝すもしくは急冷した場合、数秒〜数十秒でタック性が喪失されて固化する。このことにより、第1ホットメルト層4と第2ホットメルト層7を気中環境下に数秒〜数十秒曝すもしくは冷却し、第1ホットメルト層4と第2ホットメルト層7とがタック性が喪失されるまで固化させる。
【0043】
次に、図3に示すように、積層手段23により、表面側基材2と裏面側基材5間にインレットシート8を介在させたICカード積層体12を作製する。この場合、表面側基材2と、裏面側基材5と、インレットシート8とを位置合わせする。この間、表面側基材2の第1ホットメルト層4はタック性が喪失されているため、表面側基材2とインレットシート8とが接触しても接合されない。このことにより、表面側基材2とインレットシート8とを位置合わせしながら容易かつ精確にICカード積層体12を作製することができる。同様に、裏面側基材5の第2ホットメルト層7もタック性が喪失されているため、裏面側基材5とインレットシート8とが接触しても接合されない。このことにより、裏面側基材5とインレットシート8とを位置合わせしながら容易かつ精確にICカード積層体12を作製することができる。ところで、図1に示すように、インレット用基材9上に配置されたICチップ11およびアンテナ10は、表面側基材2側に向いているが、裏面側基材5側に向けても良い。
【0044】
次に、図3に示すように、ICカード積層体12に対して仮接合手段24を施して第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7を部分的に接合させて、ICカード積層体12を仮接合する。本実施の形態においては、仮接合手段24は超音波ウェルダー25からなっている。この場合、超音波ウェルダー25は、表面側基材2および裏面側基材5のうち断裁されて得られる非接触ICカード1以外の領域であって、ICカード積層体12の前方に施される。このことにより、ICカード積層体12に仮接合部(図示せず)が形成される。このため、断裁されて得られる非接触ICカード1の領域となる表面および裏面に仮接合により生じる凹凸を残すことはなく、ICカード積層体12を仮接合することができる。
【0045】
次に、図3に示すように、接着手段26を構成する二対の加熱ローラ27間において、仮接合されたICカード積層体12を搬送させて、第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7を溶融させて、表面側基材2とインレットシート8とを接着させるとともに、裏面側基材5とインレットシート8とを接着させる。この場合、まず、図6(a)に示すように、二対の加熱ローラ27のうち上流側の加熱ローラ27間に、仮接合されたICカード積層体12が搬送される。
【0046】
ここで、本実施の形態においては、前述したように、第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7は、タック性が喪失された状態にある。このため、二対の加熱ローラ27により加熱されるまでは、表面側基材2および裏面側基材5とインレットシート8が粘着されることはない。このことにより、第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7は、ICカード積層体12の前方に施された仮接合部分から後方に向けて順次溶融され、表面側基材2および裏面側基材5とインレットシート8とは順次接着されていく。この間、表面側基材2および裏面側基材5と、インレットシート8との間に介在する空気は、後方に抜けていく。このため、表面側基材2および裏面側基材5と、インレットシート8との間に、空気層が形成されることを確実に防止することができる。
【0047】
次に、上流側の加熱ローラ27により加熱されたICカード積層体12は、下流側の加熱ローラ27に搬送される。この間、このICカード積層体12は、各対の加熱ローラ27間に設けられた各受けガイド34、各抑えガイド35、および各コロ36により案内される。次に、このICカード積層体12は、下流側の加熱ローラ27により加熱される。このようにして、インレットシート8と表面側基材2および裏面側基材3が接着される。
【0048】
次に、図3に示すように、冷却加圧手段32により、ICカード積層体12を冷却加圧して、第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7を硬化させる。
【0049】
その後、この冷却加圧されたICカード積層体12が冷却加圧手段32から取り出されて、気中環境下に2日間程度放置される。この場合、湿気硬化型ウレタン樹脂からなる流動性ホットメルト14は、溶融した後、気中の湿気を吸収することにより架橋反応して硬化する。このことにより、ICカード積層体12を気中環境下に2日間程度放置して、第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7を確実に硬化させることができる。このため、非接触ICカード1の使用中に、非接触ICカード1を高温状態においても、非接触ICカード1が軟化することがない。
【0050】
次に、図3に示すように、第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7が完全に硬化した後、ICカード積層体12をICチップ11およびアンテナ10毎に断裁手段28により断裁する。以上のようにして、個々の非接触ICカード1を得ることができる。
【0051】
このように本実施の形態によれば、各対の加熱ローラ27間に、搬送されるICカード積層体12の下方に配置された帯状の受けガイド34が幅方向に複数設けられるとともに、このICカード積層体12の上方に配置された帯状の抑えガイド35が幅方向に複数設けられ、各受けガイド34と各抑えガイド35との間でICカード積層体12が案内される。このため、ICカード積層体12が反ることを防止するとともに、ICカード積層体12の搬送方向側の部分が折り畳まれて下流側の加熱ローラ27へ搬送されることを防止することができる。この結果、ICカード積層体12をスムースに搬送させることができる。
【0052】
また、本実施の形態によれば、上述したように、各受けガイド34および各抑えガイド35は帯状に形成され、各受けガイド34は、表面に多数の突起が形成された縞鋼板からなっている。このことにより、各受けガイド34および各抑えガイド35とICカード積層体12との接触面積を小さくすることができ、各加熱ローラ27により加熱されたICカード積層体12の熱が、各受けガイド34および各抑えガイド35に伝わることを抑制することができる。
【0053】
ここで、加熱ローラ27により加熱された第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7は溶融された状態になっている。このためICカード積層体12の温度が不均一になると、第1ホットメルト層4および第2ホットメルト層7を形成するホットメルトの粘度の一部が大きくなり、ICカード積層体12の厚みが不均一になる。これに対して本実施の形態によれば、上述したように、各加熱ローラ27により加熱されたICカード積層体12の熱が、各受けガイド34および各抑えガイド35に伝わることが抑制される。このことにより、ICカード積層体12の温度が不均一になることを抑制することができる。このため、ICカード積層体12の厚みを均一にして、厚みが均一な非接触ICカード1を製造することができる。
【0054】
また、本実施の形態によれば、各抑えガイド35は、断裁されて得られる非接触ICカード1に対応する領域以外の領域であって、ICカード積層体12の幅方向両端側にそれぞれ配置されている。このことにより、ICカード積層体12のうち非接触ICカード1に対応する領域以外の領域に、各抑えガイド35を接触させることができる。このため、ICカード積層体12のうち非接触ICカード1の領域の温度が低下することを抑制して、非接触ICカード1の厚みを確実に均一にさせることができる。
【0055】
また、本実施の形態によれば、各対の加熱ローラ27間であってICカード積層体12の下方に、裏面側基材5に転がり接触する複数のコロ36が設けられている。このことにより、ICカード積層体12を、上流側の加熱ローラ27から下流側の加熱ローラ27へスムースに搬送させることができる。
【0056】
なお、本実施の形態においては、加熱ローラ27が二対設けられている例について説明した。しかしながら加熱ローラ27は二対設けられることに限られることはなく、三対以上の加熱ローラ27が設けられていても良い。また、本実施の形態においては、受けガイド34が、ICカード積層体12の下方に2つ設けられているが、このことに限られることはなく、例えば、受けガイド34をICカード積層体12の下方に4つ設けても良い。この場合、4つの受けガイド34のうちの2つの受けガイド34を、抑えガイド35に対応させて配置させることが好ましい。このことにより、ICカード積層体12を確実に案内することができる。
【0057】
本発明の変形例
次に、本発明による非接触ICカードの製造装置の変形例について説明する。本変形例は、各受けガイドが、ICカード積層体のうち非接触ICカードに対応する領域以外の領域に配置されるものであり、他の構成は図1乃至図6に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0058】
本変形例によれば、各受けガイド34は、ICカード積層体12のうち断裁されて得られる非接触ICカード1に対応する領域以外の領域に配置される。このことにより、ICカード積層体12のうち非接触ICカード1以外の領域に、各受けガイド34を接触させることができる。このため、ICカード積層体12のうち非接触ICカード1の領域の温度が低下することを抑制して、非接触ICカード1の厚みを確実に均一にさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】図1は、本発明の実施の形態における非接触ICカードの製造装置によって製造される非接触ICカードの断面構成を示す図。
【図2】図2は、本発明の実施の形態における非接触ICカードの製造装置によって製造される非接触ICカードのインレットシートの一例を示す斜視図。
【図3】図3は、本発明の実施の形態における非接触ICカードの製造装置を示す概略図。
【図4】図4(a)は、本発明の実施の形態における非接触ICカードの製造装置のうち接着手段の詳細を示す正面図。図4(b)は、図4(a)の上面図。
【図5】図5は、本発明の実施の形態における非接触ICカードの製造装置において作製されるICカード積層体を示す斜視図。
【図6】図6(a)は、本発明の実施の形態における非接触ICカードの製造装置の接着手段において、ICカード積層体の搬送方向側部分が上流側の一対の加熱ローラ間に搬送された状態を示す図。図6(b)は、ICカード積層体が各対の加熱ローラ間において搬送されている状態を示す図。
【図7】図7(a)は、従来の非接触ICカードの製造装置の加熱ローラ間において、ICカード積層体に反りが形成されない場合を示す図であり、図7(b)は、ICカード積層体が下方に反る場合を示す図であり、図7(c)は、ICカード積層体が上方に反る場合を示す図である。
【図8】従来の非接触ICカードの製造装置の加熱ロール部を示す図。
【符号の説明】
【0060】
1 非接触ICカード
2 表面側基材
3 第1基材
4 第1ホットメルト層
5 裏面側基材
6 第2基材
7 第2ホットメルト層
8 インレットシート
9 インレット用基材
10 アンテナ
11 ICチップ
12 ICカード積層体
20 製造装置
21 第1接着剤塗布手段
22 第2接着剤塗布手段
23 積層手段
24 仮接合手段
25 超音波ウェルダー
26 接着手段
27 加熱ローラ
28 断裁手段
29 熱圧着機
30 接着材塗布機
31 粘着材塗布機
32 冷却加圧手段
33 冷却ブロック
34 受けガイド
34a 上流側端部
34b 下流側端部
35 抑えガイド
35a 上流側端部
35b 下流側端部
36 コロ
37 コロ軸
38 固定側部材
40 加熱ロール
41 ICカード積層体
42 ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基材と、第1基材の一方の面に流動性ホットメルトを塗布して形成された第1ホットメルト層とを含む表面側基材と、第2基材と、第2基材の一方の面に流動性ホットメルトを塗布して形成された第2ホットメルト層とを含む裏面側基材と、この表面側基材と裏面側基材との間に介在されたインレットシートとを有するICカード積層体を挟持して加熱することにより、非接触ICカードを製造する非接触ICカードの製造装置において、
ICカード積層体を挟持して、第1ホットメルト層および第2ホットメルト層を溶融させてインレットシートと表面側基材および裏面側基材を接着させるとともに、所定間隔をおいて配置された少なくとも二対の加熱ローラと、
各対の加熱ローラ間に、幅方向に複数設けられ、搬送されるICカード積層体の下方に配置された帯状の受けガイドと、
各対の加熱ローラ間に、幅方向に複数設けられ、搬送されるICカード積層体の上方に配置され、受けガイドとの間でICカード積層体を案内する帯状の抑えガイドと、を備えたことを特徴とする非接触ICカードの製造装置。
【請求項2】
インレットシートは、インレット用基材と、インレット用基材上に設けられた複数のICチップと、各ICチップに対応して設けられたアンテナとを有し、
各抑えガイドは、インレットシートと表面側基材および裏面側基材が接着されたICカード積層体のうち非接触ICカードに対応する領域以外の領域であって、ICカード積層体の幅方向両端側にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1に記載の非接触ICカードの製造装置。
【請求項3】
各受けガイドは、ICカード積層体のうち非接触ICカードに対応する領域以外の領域に配置されることを特徴とする請求項2に記載の非接触ICカードの製造装置。
【請求項4】
各受けガイドは、ICカード積層体側の面に、多数の突起が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の非接触ICカードの製造装置。
【請求項5】
各抑えガイドのICカード積層体側の面に、低摩擦材料がコーティングされていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の非接触ICカードの製造装置。
【請求項6】
各抑えガイドは、ポリエーテルエーテルケトンからなっていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の非接触ICカードの製造装置。
【請求項7】
各対の加熱ローラ間であってICカード積層体の下方に、裏面側基材に転がり接触する複数のコロが設けられたことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の非接触ICカードの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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