説明

非接触ICカード及び無線システム

【課題】リーダライタに返信する際に、返信レベルを大きくしてキャリア振幅が小さくなっても、キャリア抽出を確実に行える非接触ICカード及び無線システムを提供することである。
【解決手段】非接触ICカード10Aは、電磁波を受信し、交流信号が誘起されるアンテナ10-1と、アンテナからの交流信号を整流する整流回路11と、整流回路からの整流信号より受信データを復調する復調回路12と、交流信号又は整流信号からキャリアを抽出し、動作クロックを生成するキャリア抽出回路13Aと、キャリア抽出回路からの動作クロックで動作し、復調回路からの受信データを受けた後、リーダライタへの返信データを出力する返信データ生成部151と、交流信号のキャリアを返信データにて負荷変調する変調部14と、リーダライタへの返信期間中は、キャリア抽出回路のキャリア抽出感度を上げるように制御する感度制御部152とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触ICカード及び無線システムに係り、特に電磁界を媒介として非接触通信するモバイル機器に搭載される非接触ICカードなどにおいてキャリア抽出及びクロック生成を確実に行えるようした非接触ICカード及び無線システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電磁界や電波を用いた近距離の無線通信によって情報をやり取りする無線通信手段として、ICカードやRFタグが各方面で使用されている。
電磁界を媒介として通信する非接触型のICカード及びRFタグには、電力を電磁界から得るパッシブ型と、電池などから電力の供給を受けるアクティブ型がある。
【0003】
なお、以下の説明では、説明を簡略にするために、非接触ICカード及びRFタグのうち非接触ICカードについて説明するが、非接触ICカードに代えて非接触RFタグを用いても構成及び作用効果は同様である。
【0004】
パッシブ型の非接触ICカードでは、無線周波部(RF I/F)は、リーダライタから搬送波(キャリア)として放出される電磁界をループアンテナで受信し、整流後、データ、クロック、電源電圧(電力)に変換し、主たる処理を行う処理部(ロジック及びメモリ)に供給する。従って、パッシブ型の非接触ICカードでは、その動作に必要な条件として、ループアンテナで発生する搬送波電圧振幅が電源電圧以上であることが必要となる。例外的ではあるが、整流出力を昇圧したり、整流回路に倍電圧整流回路を使用する等の方法で動作に必要な電圧を得ることも行われるが、それらは効率が悪いため一般的には使用されない。
【0005】
一方、最近の動向として、携帯電話などのモバイル機器に非接触ICカードの機能を搭載する動きが活発であり、この様な場合はアクティブ型が採用される。この背景には、モバイル機器が元々電力源を備えていることもあるが、パッシブ型では機器内の金属部が電磁界に影響を与え、電力を得にくいと言う理由がある。
【0006】
アクティブ型は、アンテナで得られる電力と動作電力に直接的な関係は薄く、データとクロックのみを得られれば良いので、それらに対する感度を回路的に向上させることによって良好な通信特性を得ることが可能となる。言い換えれば、データとクロックに対する抽出感度をパッシブ型に比べて飛躍的に向上させることによって、電磁界の状態が悪い状態であっても、パッシブ型よりも優れた通信特性を得られる可能性が出てくる。
【0007】
一方、アクティブ型のICカードにおいて、自身の感度をいくら高めても、リーダライタに対して返信できなければ通信としては成立せず、結局は通信特性の向上に繋がらない。従って、ICカード自身のデータ復調、キャリア抽出感度を高めつつ、送信能力も向上させる必要がある。
【0008】
ICカードがリーダライタ側に返信する手段は、負荷変調と呼ばれる方法で行われる。これは、リーダライタ側のループアンテナとICカード側のループアンテナが相互インダクタンスで結合している状態の下で、ICカード側のインピーダンスを変化させると、リーダライタ側のループアンテナで発生している搬送波電圧振幅も変化することを利用している。なお、一般的には、リーダライタ側での変調も、ICカード側での負荷変調も、搬送波の振幅を二値的に変化させるASK変調が採用されている。
【0009】
従って、ICカードからリーダライタ側へより強いレベルで返信させる場合、返信データに応じて大きなインピーダンス変化をさせることになる。これは、インピーダンスが下がる状態の時に、ICカード側のループアンテナで発生する搬送波電圧振幅が抑圧されて非常に小さくなることを意味する。従って、返信レベルをより高めるために、搬送波電圧振幅が非常に小さいレベルにまで抑圧される(変調が深くなる)期間が生じる結果、キャリア抽出も難しくなる。そこで、アクティブ型ICカードでは、ICカード自身のループアンテナで発生する搬送波電圧振幅に対するキャリア抽出感度も飛躍的に向上させることが必要である。
【0010】
従来の非接触型のICカードに関しては、例えば特許文献1〜3に示すような技術が開示されている。
特許文献1は、RFIDタグにおいて、アンテナとRFIDタグ用ICの間に抵抗を挿入可能な構成とすることにより、受信感度を調整できるようにしている。
特許文献2は、無線タグ情報読み取り装置(リーダライタ)において、コマンド種別やノイズレベルに応じて、復調回路の閾値を可変とし、受信感度を調整できるようにしている。
【0011】
特許文献3は、非接触ICカードにおいて、リーダライタから受けたRFレベルに応じて、非接触ICカード内の同調コンデンサの容量を可変とし、受信感度を調整できるようにしている。
上述のように、特許文献1〜3は、何れも受信感度を調整できるようにして、データ復調を改善するものであり、キャリア抽出感度を調整してキャリア抽出及びクロック生成を改善するものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−31473号公報
【特許文献2】特開2007−148957号公報
【特許文献3】特開平5−128319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は、上述した問題に鑑み、リーダライタに対して返信する場合に、返信レベルを大きくすることによってキャリア振幅が小さくなっても、キャリア抽出を確実に行うことができる非接触ICカード及び無線システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一態様によれば、電磁波を受信し、交流信号が誘起されるアンテナと、前記アンテナからの交流信号を整流する整流回路と、前記整流回路からの整流信号より受信データを復調する復調回路と、前記交流信号又は整流信号からキャリアを抽出し、動作クロックを生成するキャリア抽出回路と、前記キャリア抽出回路からの動作クロックで動作し、前記復調回路からの受信データを受けた後、リーダライタへの返信データを生成して出力する返信データ生成部と、前記交流信号のキャリアを前記返信データにて負荷変調する変調部と、前記キャリア抽出回路からの動作クロックで動作し、リーダライタへの返信期間中は、感度制御信号を出力して、前記キャリア抽出回路のキャリア抽出感度を上げるように制御する感度制御部と、を具備したことを特徴とする非接触ICカードが提供される。
【0015】
本発明の他の態様によれば、上述した非接触ICカードと、第2のアンテナを備え、前記交流信号に含まれる前記非接触ICカードからの負荷変調された返信データを読み取るリーダライタと、を具備したことを特徴とする無線システム提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、リーダライタに対して返信する場合に、返信レベルを大きくすることによってキャリア振幅が小さくなっても、キャリア抽出を確実に行うことができる非接触ICカード及び無線システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る非接触ICカードを備えた無線システムを示すブロック図。
【図2】リーダライタ側から送信される交流信号のキャリアに対してリーダライタ側及びICカード側で変調をかけた状態を示す波形図。
【図3】図2におけるリーダライタのデータ送信休止期間においてICカード側から返信する際に負荷変調に用いる変調信号と、負荷変調時にキャリア抽出回路に供給する感度制御制御信号を示す図。
【図4】図1の第1の実施形態の非接触ICカードの一構成例を示す回路図。
【図5】図4のキャリア抽出の動作原理を説明するタイミング図。
【図6】図4の負荷変調時のキャリア抽出感度切替えを説明するタイミング図。
【図7】図1の第1の実施形態の非接触ICカードの他の構成例を示す回路図。
【図8】図7におけるシュミットトリガ回路の構成を示す回路図。
【図9】図7及び図8のキャリア抽出の動作原理を説明するタイミング図。
【図10】図7及び図8の負荷変調時のキャリア抽出感度切替えを説明するタイミング図。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る非接触ICカードを備えた無線システムを示すブロック図。
【図12】一般的なパッシブ型のICカードを備えた無線システムを示すブロック図。
【図13】図12のパッシブ型ICカードにおいてリーダライタ側からの搬送波(キャリア)をICカード側で負荷変調したアンテナ波形を示す図。
【図14】一般的なアクティブ型のICカードを備えた無線システムを示すブロック図。
【図15】図14のアクティブ型ICカードにおいてリーダライタ側からの搬送波(キャリア)をICカード側で負荷変調したアンテナ波形を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1乃至図11で本発明の実施形態を説明する前に、図12乃至図15を参照して一般的な非接触ICカード及び無線システムについて簡単に説明する。
図12及び図13は一般的なパッシブ型の非接触ICカードを備えた無線システムを示している。図12は構成を、図13は搬送波(キャリア)をICカード側で二値的に負荷変調したアンテナ波形を示している。なお、ICカードに代えてRFタグを用いてもよいことは前述した通りである。
【0019】
図12において、符号10'はパッシブ型の非接触ICカード、11は整流回路、12は復調回路、13はキャリア抽出回路、14は負荷変調トランジスタで構成される変調部、15はロジック及びメモリで構成される処理部、16'は定電圧回路、20はリーダライタ、21は制御用PC(パーソナルコンピュータ)、20-1はループアンテナで構成される一次側アンテナ、10-1はループアンテナで構成される二次側アンテナである。
【0020】
図12に示すパッシブ型の非接触ICカードでは、無線周波部(RF I/F)は、リーダライタ20に接続したループアンテナ20-1から搬送波(キャリア)として放出される電磁界をループアンテナ10-1で受信し、整流回路11を経て、データ、クロック、電力に変換し、主たる処理を行う処理部15に供給する。整流回路11の後段には、定電圧回路16'が配設され、受信したキャリアを整流して得られる整流電圧を用いて定電圧を生成している。従って、パッシブ型の非接触ICカード10'の動作に必要な条件として、ループアンテナ10-1で発生する搬送波電圧振幅が電源電圧(VDD)以上であることが必要となる。そのため、変調信号による変調度は、図13に示すように必要な電源電圧VDDのレベルを維持できる程度の深さとされている。例外的ではあるが、整流出力を昇圧したり、整流回路に倍電圧整流回路を使用する等の方法で動作に必要な電圧を得ることも行われるが、それらは効率が悪いため一般的には使用されない。
【0021】
一方、近年の動向として、携帯電話などのモバイル機器に非接触ICカードの機能を搭載する傾向があり、このような機器搭載の仕様の場合はアクティブ型が採用されていることは前述した通りである。
図14及び図15は一般的なアクティブ型のICカードを備えた無線システムの形態を示している。図12と同一部分には同一符号を付してある。図14は構成を、図15は搬送波(キャリア)をICカード側で二値的に負荷変調したアンテナ波形を示している。
【0022】
図14において、符号10は非接触ICカード、11は整流回路、12は復調回路、13はキャリア抽出回路、14は負荷変調トランジスタで構成される変調部、15はロジック及びメモリで構成される処理部、16は定電圧回路、20はリーダライタ、21は制御用PC、20-1はループアンテナで構成される一次側アンテナ、10-1はループアンテナで構成される二次側アンテナ、10-2及び10-3は電池(バッテリー)等の外部電源に接続する外部電源供給端子である。
【0023】
図14に示すアクティブ型の非接触ICカード10は、アンテナ10-1で得られる電力と回路部分の動作電力とは直接的な関係は薄いので、データとクロックに対する感度を回路的に向上させることによって良好な通信特性を得ることが可能である。ICカード10は、電池等の外部電源を接続するための外部電源供給端子10-2,10-3を備えている。変調信号による変調度は、図15に示すようにグランド(GND)レベル近くまで深くすることが可能となる。更に言えば、データとクロックに対する抽出感度をパッシブ型に比べて大きく向上させることによって、電磁界の状態が悪い状態であっても、パッシブ型よりも優れた通信特性を得られる可能性が出てくる。
【0024】
一方、アクティブ型の非接触ICカードにおいては、前述したとおり、ICカード自身のデータ復調、及びキャリア抽出感度を高めつつ、返信能力も向上させる必要がある。
【0025】
ICカードがリーダライタ側に返信する手段は、前述したように負荷変調方法である。これは、リーダライタ側のループアンテナ20-1とICカード側のループアンテナ10-1が相互インダクタンスで結合している状態で、ICカード側のインピーダンスを変化させることによって、リーダライタ側のループアンテナ20-1で発生している搬送波電圧振幅も変化させるものである。
【0026】
従って、より強いレベルでICカードから返信させる場合、返信データに応じて大きなインピーダンス変化をさせることになる。これは、インピーダンスが下がる状態の時に、ICカード側ループアンテナ10-1で発生する搬送波電圧振幅が抑圧されて非常に小さくなることを意味する。従って、ICカード側において返信レベルをより高めるために、搬送波電圧振幅が非常に小さいレベルにまで抑圧される期間が生じる結果として、その期間、キャリア抽出も難しくなる。それ故、ICカード自身のループアンテナ10-1で発生する搬送波電圧振幅に対するキャリア抽出感度を飛躍的に向上させる必要となる。
以下に示す実施形態では、例えば、電磁界を媒介として非接触通信するモバイル機器に搭載される非接触ICカード及びそれを用いた無線システムについて説明する。なお、RFタグ及びそれを用いた無線システムに対しても同様に適用できることは、前述したとおりである。
【0027】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態に係る非接触ICカードを備えた無線システムを示している。図14と同一部分には同一符号を付して説明する。本実施形態は、アクティブ型の非接触RFタグを備えた無線システムについても同様に適用することができる。
【0028】
図1に示す非接触ICカード10Aは、図14に示した非接触ICカード10とは異なり、図14の処理部15に対して感度制御機能を追加した処理及び制御部15Aを備えている。処理及び制御部15Aは、ロジック,メモリ及びマイコンを組み合わせたICで構成され、ロジック及びメモリを備えた処理機能にマイコンなどによる制御機能が付加された構成となっている。具体的には、処理及び制御部15Aは、キャリア抽出回路13Aからの動作クロックで動作し、復調回路12からの受信データを受けてこれを解読した後、リーダライタへの返信データを生成して出力する返信データ生成部151と、キャリア抽出回路13Aからの動作クロックで動作し、ICカードの返信期間に対応した負荷変調期間においては感度制御信号を生成してキャリア抽出回路13Aに供給し、キャリア抽出回路13Aのキャリア抽出感度を上げるように制御する感度制御部152とを備える。感度制御部152は、負荷変調期間以外の期間においてはキャリア抽出感度を下げるように制御する。実際には、キャリア抽出感度は、負荷変調期間では、負荷変調期間以外の期間での標準レベル(第1のレベル)からそれよりも高い第2のレベルに上げるように制御され、負荷変調期間以外の期間では、再び第1のレベルに戻すように制御される。
【0029】
従って、キャリア抽出回路13Aは、処理及び制御部15Aからの感度制御信号によってキャリア抽出感度が上げ下げ(制御)されるようになっている。これにより、例えばアクティブ型の非接触ICカードにおいて負荷変調時にキャリア振幅が小さくなっても、キャリア抽出感度を上げることによってキャリア抽出が確実に行われ、常に確実にクロック生成することが可能となる。
図1に示す無線システムは、非接触ICカード10Aと、ホスト機器である制御用PC21に接続されたリーダライタ20と、を備えている。
【0030】
リーダライタ20は、非接触ICカード10Aとの間でデータの授受を行う。リーダライタ20と非接触ICカード10Aとの間のデータの授受は、互いにアンテナ20-1,10-1を介して非接触の状態で行われる。
非接触ICカード10Aは、二次側アンテナ10-1に接続された整流回路11と、整流回路11からの整流出力が供給される復調回路12と、整流回路11の入力側と同じ信号が供給されるキャリア抽出回路13Aと、負荷変調トランジスタで構成される変調部14と、ロジック及びメモリ並びにマイコンを備えた処理及び制御部15Aと、定電圧回路16と、図示しない電池(バッテリー)の正負の各電極が接続される外部電源供給端子10-2,10-3とを備えている。定電圧回路16には、電池等の外部電源からの電源電圧が供給される。
【0031】
二次側アンテナ10-1は、一次側アンテナ20-1から送信される電磁波を受信し、交流信号(例えば13.56MHzのRF信号)が誘起され、この交流信号は整流回路11へ供給される。ここで、交流信号とは、データを含んだ搬送波(キャリア)の信号、即ち搬送波(キャリア)をリーダライタ側の送信データ又はICカード側の返信データの変調信号で変調した信号、或いは、無変調の搬送波(キャリア)のみの信号を言う。
【0032】
非接触ICカード10Aとしては、カード型の形状に限らず、箱型、円筒型、円盤型、スティック型、又はラベル型等の形状を採用可能である。アンテナ10-1は、基板実装上は、例えばICカード10Aを取り囲むようにして形成される。
整流回路11は、例えばダイオードブリッジによる全波整流回路で構成されており、アンテナ10-1からの交流信号を整流して、その整流信号を復調回路12に出力する。
キャリア抽出回路13Aは、リーダライタ20から送信された電磁波のキャリア成分を抽出し、処理及び制御部15Aの動作クロックとして用いられるクロックCLKを生成する。
【0033】
なお、キャリア抽出回路13AによるクロックCLKを生成するための動作については、本出願人が特許出願した特開2007-142873号公報に一例が記載されている。
定電圧回路16は、外部電源供給端子10-2,10-3からの直流電圧を定電圧安定化することによって内部動作電圧VDDを生成する。生成された内部動作電圧VDDは、復調回路12、キャリア抽出回路13A、並びに、処理及び制御部15Aの電源電圧として用いられる。
復調回路12は、整流回路11から出力される整流信号の包絡線検波電圧から受信データを復調し、復調した受信データを処理及び制御部15Aへ供給する。
【0034】
処理及び制御部15Aは、マイクロプロセッサ(MPU)、論理回路(ロジック)、ROM及びRAMのメモリを備えている。ROMは論理回路及びMPUにおいて実行される処理及び制御等を実行するためのプログラムを格納している。RAMは、論理回路及びMPUにおけるプログラム実行処理及び制御中に利用されるデータ等の格納領域及び作業領域として利用される。機能的には、処理及び制御部15Aは、前述したように、キャリア抽出回路13Aからの動作クロックで動作し、リーダライタへの返信データを出力する返信データ生成部151と、キャリア抽出回路13Aからの動作クロックで動作し、返信期間は、キャリア抽出回路13Aのキャリア抽出感度を上げるように制御する感度制御部152とを備える。
【0035】
リーダライタ20に対するデータ送信(返信)時においては、負荷変調(ロードスイッチング)方式が利用される。負荷変調方式は、ICカード10Aのアンテナ10-1のインピーダンスを変化させることによって、リーダライタ20側のアンテナ20-1の負荷を増減させるものである。この結果、リーダライタ20側のアンテナ20-1において生じるキャリア振幅の変動が、ICカード10Aからの返信データとして検出されることになる。
【0036】
変調部14は、負荷変調トランジスタである例えばNチャンネルMOSトランジスタで構成されており、そのMOSトランジスタのドレインが整流回路11の入力端側の一方のラインに接続され、ソースが整流回路11の入力端側の他方のラインに接続され、ゲートにはリーダライタ20側への返信期間に処理及び制御部15Aから返信データとして送出される送信データが入力される。これによって、負荷変調トランジスタは、そのゲートに入力される送信データとしての変調信号(図3参照)における例えばハイレベル(以下、Hレベル)時には整流回路11の入力端側の2つのライン間の抵抗値が非常に低くなり、ローレベル(以下、Lレベル)時にはライン間は高抵抗となる結果、図15で示したように返信時のキャリアが送信データ(変調信号)に応じて変調されることになる。
【0037】
以下に、図2及び図3を参照して、図1の動作を説明する。
図2は、リーダライタ側から送信する交流信号(例えば13.56MHzのRF信号)のキャリアがそのリーダライタ送信期間に送信データで変調されてリーダライタ側から送信データとして送信される。そして、リーダライタ側から送信データを送信する送信期間と次の送信期間との間のデータ送信休止期間には、リーダライタ側から無変調のキャリアのみが送信されるが、このデータ休止期間にICカード側から負荷変調によって返信データが送信される。従って、通信方式は、送信側と受信側がデータの伝送を交互に行う半二重通信方式となっている。但し、無変調のキャリアの送信は、リーダライタ側から常時行われており、またリーダライタ送信期間には、リーダライタ側から送信データによるキャリア変調が行われ、ICカード10Aのアンテナがリーダライタ20のアンテナに近づき相互インダクタンス結合した状態となっているとき、リーダライタのデータ送信休止期間に入るとICカード10Aからの返信データによるキャリア変調が行われる。
【0038】
なお、図2中の符号Aで示す期間は、リーダライタ20からリーダライタ送信期間において送信された送信データによって要求された処理が、ICカード10A側において終わるまでの期間に相当し、この期間Aが終了した時点でICカード10Aは負荷変調による返信データの送信を開始することになる。
【0039】
図3は図2におけるリーダライタのデータ送信休止期間において負荷変調によって変調信号(返信データ)をリーダライタへ送信する際にICカード内の感度制御部152が生成する感度アップのための感度制御信号の開始/終了と、変調信号(返信データ)の開始/終了とのタイミング関係を示している。感度制御信号は、負荷変調期間(カード側返信期間)にキャリア抽出感度を上げ、それ以外の期間に感度を下げる(即ち標準的な感度とする)ための制御を行う制御信号である。
【0040】
図3の変調信号のHレベルが実際に一定振幅のキャリアに対して負荷変調レベルを与える期間であり、このHレベル期間が図15に示すキャリアの振幅を凹状に抑圧している期間に対応している。
なお、図3のタイミングチャートでは、キャリア抽出感度の制御信号の開始/終了のタイミングと、変調信号の開始/終了のタイミングが全く同時のタイミングとなっているが、感度制御信号のパルス幅(図示の感度制御期間)を負荷変調期間よりも若干長くとり、感度制御期間を実際の負荷変調期間に対して時間的に広目に設定する(図示点線にて示す)ことによって感度制御の幅に余裕を持たせて感度制御が確実に行えるようにしてもよい。
【0041】
図4及び図5は第1の実施形態における一構成例及びその動作例を示している。
図4は図1に示した外部電源供給端子及び定電圧回路は省略し、本発明の技術的な特徴部分及びその関連部分を示している。図5は図4の構成例に対応した整流信号、及びキャリア抽出回路13Aで生成されるクロックCLKを示している。
【0042】
アンテナ10-1は、例えば、コイルLとコンデンサCからなる並列共振回路で構成される。整流回路11は、例えば、第1〜第4のダイオードD1〜D4からなるダイオードブリッジによる全波整流回路で構成されている。整流回路11の全波整流出力は、平滑コンデンサC1にて平滑され、包絡線検波電圧となって復調回路12に入力される。復調回路12でデジタル復調された受信データは処理及び制御部15Aに供給される。
整流回路11から出力される半波の整流信号はキャリア抽出回路13Aに供給されている。キャリア抽出回路13Aは、整流信号を閾値を用いて二値化することによって、キャリア周波数と同じ周波数のクロックCLKを生成する。
【0043】
キャリア抽出回路13Aは、コンパレータ回路で構成されている。コンパレータ回路は、非反転入力端子(+)に整流回路11からの整流電圧が入力され、反転入力端子(−)に閾値となる電圧が入力されるコンパレータCOMと、コンパレータCOMの反転入力端子(−)に接続されて、この反転入力端子に対して電圧源の電圧Vを抵抗R1,R2で分圧した電圧を閾値として与える分圧回路と、この分圧回路の基準電位点GND側の抵抗R2に並列に接続されて、抵抗R2の両端を開放又は短絡させるスイッチSWと、を備えている。スイッチSWは、処理及び制御部15Aからの感度制御信号に応じてオンオフが制御される。なお、スイッチSWに直列に小抵抗を接続した構成としてもよい。
【0044】
処理及び制御部15Aは、キャリア抽出回路15AからのクロックCLKにて動作され、ICカード10Aをリーダライタ20に近づけ、アンテナ10-1でリーダライタ20からの送信データを受信した後に、その返信データとしての送信データを変調部14へ送出すると共に、感度制御信号CTLをキャリア抽出回路15Aへ送出する機能を有している。
【0045】
次に、図5及び図6を参照して、図4の動作を説明する。
図5において、(a)の実線はアンテナ10-1の一方の端子、即ち整流回路11におけるダイオードD3とダイオードD4との接続点での電圧波形を示し、点線の波形はアンテナ10-1のもう一方の端子、即ち整流回路11におけるダイオードD1とダイオードD2との接続点での電圧波形を示している。なお、点線の波形は実線の波形に対して180°位相がずれた波形となっいる。また、図5(a)の波形で、電位の下位側のレベルはグランドレベルGNDよりもダイオードのVF(順方向降伏電圧:一般的には0.7V程度)分低くなっている。
【0046】
図5(b)は、図5(a)の整流信号をキャリア抽出回路13Aを構成するコンパレータ回路の非反転入力端子(+)に入力し、反転入力端子(−)に閾値として高い電位の閾値Vth1を与えた状態で生成されるクロックCLK1を示している。また、図5(c)は、図5(a)の整流信号をキャリア抽出回路13Aを構成するコンパレータ回路の非反転入力端子(+)に入力し、閾値を切り替えて反転入力端子(−)に閾値として低い電位の閾値Vth2を与えた状態で生成されるクロックCLK2を示している。閾値がVth1の場合に比べて、閾値がVth2の場合の方が半波整流信号(整流キャリア)のより広い幅の波形部分を検出することになり、キャリア検出がより確実に行われるので、キャリア抽出感度を上げた状態と言うことができる。
【0047】
リーダライタ20からの電磁波をアンテナ10-1で受信し、整流回路11で整流し、復調回路12で受信データを復調する。これと同時に、整流回路11で整流された整流信号は、キャリア抽出回路13Aに送られ、コンパレータCOMで構成されるコンパレータ回路はスイッチSWの開放状態では整流信号を閾値Vth1に対して比較し、閾値Vth1を超えた整流信号期間をHレベルとするクロックCLK1を生成する。このクロックCLK1は、キャリアの周波数と同じ周波数のクロックである。そして、前述の復調データとクロックCLK1は、処理及び制御部15Aへ送られる。処理及び制御部15Aは、クロックCLK1を動作クロックとして用いて復調データの判定を行い、リーダライタ20からの受信データであると判定した後に、感度制御信号CTLを生成してキャリア抽出回路13Aを構成するコンパレータ回路へ送出すると同時にメモリ内に予め用意された返信データを送信データとして変調部14へ送出する。
【0048】
キャリア抽出回路13Aへ送られた感度制御信号CTL(図3参照)は、変調部14による負荷変調期間と同じ時間幅かそれより若干広い時間幅に形成されており、その感度制御信号のHレベル期間においてキャリア抽出回路13Aに設けられたスイッチSWをオン状態にする。スイッチSWのオンによって、コンパレータCOMの反転入力端子(−)に与えられる閾値は図5に示すVth1から基準電位点GNDの電位又はそれに近い電位の閾値Vth2へ下降する。この閾値Vth2への下降によってコンパレータCOMによるキャリア抽出感度が向上されることになる。この閾値の切替えによって、これとほぼ同時に変調部14による負荷変調が開始されて図6(及び図15)に示すように半波整のキャリアの振幅が負荷変調によって抑圧されてW1からW2へ小さくされる。このようにキャリア振幅が極端に小さくされても、その小さい振幅のキャリアを基準電位点GNDと同じ(又はそれに近い)閾値Vth2を用いることによって抽出でき、図5(c)に示すようにクロックCLK2を生成することができる。このクロックCLK2は、キャリアの周波数と同じ周波数である。
【0049】
なお、アンテナの片側端子での波形は図6のようになっています。図示Aの波形が変調をかけていないときの振幅が大きい状態、図示Bの波形が負荷変調を掛けて振幅が小さくなった状態である。何れも基準電位点GNDからダイオードブリッジの1つダイオードの順方向降伏電圧VFだけ下がった電位が基準となっている。従いまして、閾値を下方へシフトすることによって、見かけ上の感度が上がったように見える。但し、キャリア抽出回路13Aに対して、図7に示すような入力カップリングコンデンサC2が無いことが前提となる。
【0050】
図7乃至図10は第1の実施形態における他の構成例及びその動作例を示している。
図7は図1に示した外部電源供給端子及び定電圧回路は省略し、本発明の技術的な特徴部分及びそれに関連した部分を示している。図8は図7におけるシュミットトリガ回路の構成を示し、図9は図7の構成例に対応した整流信号及びキャリア抽出回路13Aで生成されるクロックCLKを示し、図10は図7における無変調時の半波整流信号と閾値VH1,VL1、及び、負荷変調時の半波整流信号と閾値VH2,VL2を示している。
【0051】
アンテナ10-1は、例えば、コイルLとコンデンサCからなる並列共振回路で構成される。整流回路11は、例えば、第1〜第4のダイオードD1〜D4からなるダイオードブリッジによる全波整流回路で構成されている。整流回路11の全波整流出力は、平滑コンデンサC1にて平滑されて、包絡線検波電圧となって復調回路12に入力される。復調回路12でデジタル復調された受信データは処理及び制御部15Aに供給される。
【0052】
整流回路11から出力される半波整流信号は直流カット用コンデンサC2を介してキャリア抽出回路13Aに供給される。キャリア抽出回路13Aは、シュミットトリガ回路で構成され、入力される半波整流信号を、ヒステリシス幅を規定する2つの閾値と比較し、二値化することによって、キャリア周波数と同じ周波数のクロックCLKを生成する。
【0053】
キャリア抽出回路13Aを構成するシュミットトリガ回路は、入力される整流信号が低電位側から高電位側へ変化するとき(立上り時)と、高電位側から低電位側へ変化するとき(立下り時)とでコンパレータCOMの閾値が異なる特性(ヒステリシス)を有するもので、その2つの閾値の差に相当するヒステリシス幅(範囲)を、感度制御部からの感度制御信号CTLのHレベル及びLレベルに応じて変えることが可能とされる。
【0054】
シュミットトリガ回路は、図8に示すように、コンパレータCOMを備え、反転入力端子(−)と、直流バイアスV/2が与えられる端子との間に、入力交流信号(キャリア信号)Eiが供給され、非反転入力端子(+)には直流電位V/2が抵抗R12を介して供給される一方コンパレータCOMの出力が抵抗R11を介して供給され、抵抗R12の両端に抵抗R12の両端を開放、又は短絡若しくは短絡に近い小抵抗が並列接続された状態にさせるスイッチSWが接続された構成となっている。図8では、入力端子間に入力される入力信号Eiは直流バイアスV/2が与えられており、この直流電位V/2が抵抗R12のGND側に与えられる。V/2はICカード10Aの電源電圧VとGND間の中点電圧を与えるものである。なお、図9及び図10の波形図と論理を合わせる場合は、出力端子側にインバータINVを入れて反転させる必要がある。
【0055】
この構成では、シュミットトリガ回路における2つの閾値VH1,VL1は、抵抗R12の両端に発生する電圧をER2とすると、VH1=(V/2)+ER2,VL1 =(V/2)−ER2と表され、ヒステリシス幅(=VH1−VL1)は電圧ER2の2倍と表されるので、ヒステリシス幅を変える(言い換えればキャリア抽出感度を変える)には抵抗R12の値を変えればよい。中間電位V/2を中心として交流信号の振幅の中間位置が中点電位V/2とされるので、図10に示すように負荷変調時にキャリア振幅の振幅がW11からW12へ抑圧された場合でも、V/2を中心とする2つの閾値VH2,VL2の差であるヒステリシス幅が狭いほど2つの閾値が接近して閾値VH2,VL2がキャリア信号の振幅外に外れることがなく、小振幅のキャリアに対してもキャリア抽出が可能である(即ちキャリア抽出感度が高くなる)。逆に、ヒステリシス幅が広いほど2つの閾値がV/2を中心として離間し、閾値がキャリア信号の振幅外に外れる事態も生じる可能性が大きく、感度が悪くなると言うことができる。
【0056】
従って、シュミットトリガ回路内の抵抗R12の両端に並列に、小抵抗を直列接続した小抵抗付きのスイッチSWを接続し、抵抗R12の両端を開放又は短絡させる構成とすれば、抵抗R12の両端の開放時は閾値が(V/2)+ER2と(V/2)−ER2の2つ存在し、ヒステリシス幅が2×ER2と表される或る程度の広い幅を有する。また、抵抗R12の両端の短絡時はER2の値が小さくなり即ちヒステリシス幅が非常に狭くなる。或いは、ヒステリシス幅が殆ど0となり、2つの閾値が中間電位V/2の1つのみに近い状態となる。
【0057】
次に、図9及び図10を参照して、図7及び図8の動作を説明する。
リーダライタ20からの電磁波をアンテナ10-1で受信し、整流回路11で全波整流し、復調回路12で受信データをデジタル復調する。これと同時に、整流回路11のダイオードD3及びD4の接続点からの整流された半波の整流信号は、キャリア抽出回路13Aに送られる。シュミットトリガ回路で構成されるキャリア抽出回路13AはスイッチSWの開放状態では広いヒステリシス幅とされ、ノイズに強い(ノイズの影響の受けにくい)状態とされているが、広いヒステリシス幅のためにキャリア抽出感度は良好とは言えない。しかしながら、2つの異なった閾値VH1,VL1において整流信号と比較し、閾値VH1を超えた高いレベルの整流信号期間をHレベルとし閾値VL1を超えた低いレベルの整流信号期間をLレベルに置き換えた二値化パルスであるクロックCLKaを生成する。このクロックCLKaは、キャリアの周波数と同じ周波数である。
【0058】
そして、前述の復調データとクロックCLKaは、処理及び制御部15Aへ送られる。処理及び制御部15Aは、クロックCLKaを用いて復調データを判定し、リーダライタ20からの受信データであることが判った後に、感度制御信号CTLを生成してキャリア抽出回路13Aへ供給すると同時にメモリ内に予め用意された返信データを送信データとして変調部14へ送出する。変調部14は、返信データが変調信号(図3参照)として変調トランジスタのゲートに加えられることによって、返信データのHレベルの期間において半波整流のキャリアの振幅を図10のようにW11からW12に抑圧する。キャリア抽出回路13Aへ送られた感度制御信号CTL(図3参照)は変調部14の負荷変調期間と同じか負荷変調期間より若干広い時間幅に形成されており、その感度制御期間においてキャリア抽出回路13Aであるシュミットトリガ回路に設けられたスイッチSWをオン状態にする。即ち、処理及び制御部15Aは、リーダライタからの送信データを受信後、その送信データによって要求された処理が終わった時点で、負荷変調による返信データの送信開始の前にキャリア抽出回路13Aへ感度制御信号を送ってスイッチSWをオンにする。このスイッチSWのオンによってキャリア抽出回路13Aであるシュミットトリガ回路に与えられるヒステリシス幅は図10に示すように2つの閾値VH1,VL1による広いヒステリシス幅aから、2つの閾値VH2,VL2による狭いヒステリシス幅bへ切り替わる。これによって、これとほぼ同時に変調部14による負荷変調が開始され、図15に示したようにキャリアが負荷変調によってその振幅が極端に小さくされても、その小さい振幅のキャリアを狭いヒステリシス幅を形成する2つの閾値VH2,VL2を用いて抽出し、二値化パルス即ちクロックCLKb(図9参照)として検出することができる。そして、クロックCLKbは処理及び制御部15Aへ供給される。このクロックCLKbは、キャリアの周波数と同じ周波数である。
【0059】
なお、キャリア抽出回路としては、比較器(コンパレータ)のほかに、バッファアンプやインバータを用いて構成することも可能であり、それらの閾値を変えることによってキャリア抽出感度を制御することもできる。
以上に述べた第1の実施形態では、電力が電池などの電源から供給されるアクティブ型非接触ICカードであって、動作クロックをアンテナ端子に誘起する交流電圧又はその整流電圧からキャリアを抽出し、動作クロックを生成するキャリア抽出回路13Aを有し、ICカード自身が負荷変調(ロードスイッチング)で送信する場合にキャリア抽出回路の感度を向上させ、確実にキャリア抽出及びクロック生成を行うことができる。即ち、非接触ICカードが負荷変調をするタイミングは、ICカード自身で既知であり、負荷変調期間のみキャリア抽出感度を向上させ、それ以外のときは感度を下げるという制御を容易に行うことができる。
【0060】
しかしながら、このように非接触ICカードにおいて負荷変調で送信する場合に、キャリア抽出感度を向上させることに伴って、一般的には、次のような問題が考えられる。第1には、アンテナに誘起するキャリア以外の電磁界ノイズを抽出してしまう点である。しかし、ループアンテナはキャリアに同調して使われるため、そのフィルタ効果により電磁界ノイズは通常は問題とならない。第2は、ロジック動作に伴う過渡電圧変動がグランドGNDを介して整流回路に周り込んでアンテナ端子のノイズとして現れる点であるが、この点も通常はキャリア電圧振幅の方がノイズに比して大きいため特に問題とはならない。従って、負荷変調による返信レベルを大きくしても、キャリア抽出回路の感度向上に伴うキャリアの誤抽出が生じにくいので、結果として通信品質を向上させることができる。
【0061】
第1の実施形態によれば、非接触ICカードからリーダライタに対して返信する場合に、返信レベルを大きくすることによってキャリア振幅が小さくなっても、キャリア抽出感度を自動的に上げて、キャリア抽出及びクロック生成を確実に行うことが可能となる。特に、アクティブ型の非接触ICカードや非接触RFタグ及びこれらを用いた無線システムに用いて有用である。
【0062】
[第2の実施形態]
図11は本発明の第2の実施形態に係る非接触ICカードを備えた無線システムを示している。本実施形態は、アクティブ型の非接触RFタグを備えた無線システムについても同様に適用できるものである。
図11に示す非接触ICカード10Bにおいて、処理部15は図14の場合と同様に感度制御機能はなく主たる処理機能としての返信データ生成部151のみを有するものとする。図14の非接触ICカード10と異なる点は、負荷変調期間において処理部15から送出される返信データを変調部14に供給すると同時に、その返信データ自体を感度制御信号CTLとしてキャリア抽出回路13Aの感度切替えスイッチSW(図4又は図8参照)の制御端子に供給することにより、負荷変調期間において返信データの送信シンボル毎にキャリア抽出回路13Aのキャリア抽出感度を上げるように制御し、負荷変調期間の送信シンボル以外の期間ではキャリア抽出感度を下げるように制御する。ここで、送信シンボルとは、1つの符号(1シンボル)として送ることができる1ビット以上の情報をいう。すなわち、変調信号自体における変調(図3参照)を与えるHレベルの期間でキャリア抽出回路13Aの感度を上げるように制御する。
【0063】
返信データは図3に示す変調信号のように送信シンボル毎に変調を与える期間(例えばHレベル期間)を有するので、そのHレベルの期間毎にキャリア抽出回路13Aのキャリア抽出感度を上げる。これによって、例えばアクティブ型の非接触ICカードにおいて負荷変調時に返信レベルを大きくして図15に示したようにキャリア振幅が小さくなっても、送信シンボル毎にキャリア抽出感度が向上して確実にキャリア抽出を行いクロック生成を行うことができる。
【0064】
第2の実施形態によれば、ICカードからリーダライタに対して返信する場合に、返信レベルを大きくすることによってキャリア振幅が小さくなっても、キャリア抽出及びクロック生成を確実に行うことが可能な非接触ICカード及び無線システムを実現することができる。
本発明によれば、負荷変調による返信レベルを大きくしても、キャリア抽出回路の感度向上に伴うキャリアの誤抽出が起きにくいので、通信品質を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0065】
10A,10B…非接触ICカード
10-1…アンテナ
11…整流回路
12…復調回路
13A…キャリア抽出回路
14…変調部
15…処理部
15A…処理及び制御部
20…リーダライタ
20-1…アンテナ
151…返信データ生成部
152…感度制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を受信し、交流信号が誘起されるアンテナと、
前記アンテナからの交流信号を整流する整流回路と、
前記整流回路からの整流信号より受信データを復調する復調回路と、
前記交流信号又は整流信号からキャリアを抽出し、動作クロックを生成するキャリア抽出回路と、
前記キャリア抽出回路からの動作クロックで動作し、前記復調回路からの受信データを受けた後、リーダライタへの返信データを出力する返信データ生成部と、
前記交流信号のキャリアを前記返信データにて負荷変調する変調部と、
前記キャリア抽出回路からの動作クロックで動作し、前記リーダライタへの返信期間中は、感度制御信号を出力して、前記キャリア抽出回路のキャリア抽出感度を上げるように制御する感度制御部と、
を具備したことを特徴とする非接触ICカード。
【請求項2】
前記感度制御部は、前記返信期間のうちの返信シンボルの期間毎にキャリア抽出感度を上げるように制御することを特徴とする請求項1に記載の非接触ICカード。
【請求項3】
前記キャリア抽出感度を制御する期間は、前記返信期間又は前記返信シンボルの期間の前後を超えて広く設定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触ICカード。
【請求項4】
前記感度制御部によるキャリア抽出感度の制御は、前記キャリア抽出回路に設けられる比較器、バッファ又はインバータの閾値を変えることによって行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の非接触ICカード。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1つに記載の非接触ICカードと、
第2のアンテナを備え、前記交流信号に含まれる前記非接触ICカードからの負荷変調された返信データを読み取るリーダライタと、
を具備したことを特徴とする無線システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−22923(P2011−22923A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−169221(P2009−169221)
【出願日】平成21年7月17日(2009.7.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】