説明

非接触ICカード用ホルダー

【課題】非接触ICカード自体に異常が発生し交信不能となったことを、利用者が容易に知ることができる非接触ICカード用ホルダーを提供する。
【解決手段】非接触ICカード用ホルダーにおいて、カードリーダーと通信するためのカード側アンテナを有する非接触ICカード1を、収納するカードホルダー4と、前記カードホルダー4に設けられたホルダー側アンテナ5と、前記カードホルダー4に設けられた発光体6と、前記カードホルダー4と前記非接触ICカード1との間での前記ホルダー側アンテナ5及び前記カード側アンテナを介した定期的な交信を制御する交信制御手段と、前記交信の結果に基づいて、前記非接触ICカード1の異常の有無を判定する判定手段と、前記判定手段により前記非接触ICカード1に異常が発生したと判定された場合に、前記発光体6を点灯させる発光制御手段と、を備えた構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、非接触ICカード用ホルダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来における非接触ICカードは、例えば特許文献1に記載されているように、カードリーダーとの間で無線信号を送受信するためのアンテナと、前記カードリーダーとの間での前記アンテナを介した交信動作を制御するためのICモジュールと、を備えたものが知られている。また、このような非接触ICカードを収納するホルダーとしては、例えば特許文献2に記載されているような、非接触ICカードを収納及び出し入れ可能なカードホルダーを備えたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−034562号公報
【特許文献2】特開平2006−031232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるような従来における非接触ICカードにおいては、非接触ICカードを構成する要素に何らかの異常が発生し交信不能となった場合であっても、非接触ICカードの外見上は何ら変化しない。従って、非接触ICカードに故障が発生して交信不能となった状態で、当該非接触ICカードをカードリーダーに対して使用して交信に失敗した場合に、利用者は失敗した原因が判らず困惑してしまうという課題がある。また、いつ、どのような状況で、非接触ICカードに故障が発生したのかを知ることができないため、非接触ICカードの故障要因の分析が困難であるという課題もある。なお、このような事情は従来における非接触ICカード用ホルダーを用いたところで同様である。
【0005】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、非接触ICカード自体に異常が発生し交信不能となったことを、利用者が容易に知ることができる非接触ICカード用ホルダーを得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る非接触ICカード用ホルダーにおいては、カードリーダーと通信するためのカード側アンテナを有する非接触ICカードを、収納するカードホルダーと、前記カードホルダーに設けられたホルダー側アンテナと、前記カードホルダーに設けられた発光体と、前記カードホルダーと前記非接触ICカードとの間での前記ホルダー側アンテナ及び前記カード側アンテナを介した定期的な交信を制御する交信制御手段と、前記交信の結果に基づいて、前記非接触ICカードの異常の有無を判定する判定手段と、前記判定手段により前記非接触ICカードに異常が発生したと判定された場合に、前記発光体を点灯させる発光制御手段と、を備えた構成とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る非接触ICカード用ホルダーにおいては、非接触ICカード自体に異常が発生し交信不能となったことを、利用者が容易に知ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る非接触ICカード用ホルダーに収納される非接触ICカードの構成を模式的に示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る非接触ICカード用ホルダーの構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
この発明を添付の図面に従い説明する。各図を通じて同符号は同一部分又は相当部分を示しており、その重複説明は適宜に簡略化又は省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1及び図2は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1は非接触ICカード用ホルダーに収納される非接触ICカードの構成を模式的に示す図、図2は非接触ICカード用ホルダーの構成を模式的に示す図である。
図1において、1は、非接触ICカードである。この非接触ICカード1は、図示しないカードリーダーと電磁場(電波又は磁束結合)を介して交信することで、所定のデータ授受を行うものである。非接触ICカード1は、カード側アンテナ2及びカード側アンテナ2に接続されたカード側ICモジュール3を備えている。
【0011】
カード側アンテナ2は、カードリーダーとの間で電磁場を介して信号を送受信するためのものである。このカード側アンテナ2は、非接触ICカード1の周縁にほぼ沿ったループ状に形成されている。カード側アンテナ2はカードリーダー側から生成される電磁場によって励磁されて起電力を生じる。そして、このカード側アンテナ2に発生した起電力によってカード側ICモジュール3を駆動することができる。
【0012】
カード側ICモジュール3は、カードリーダーとの間でのカード側アンテナ2を介した交信動作を制御するためのものである。このカード側ICモジュール3はメモリ部や演算処理部を有している。メモリ部には、カードリーダーと非接触ICカード1との間でやり取りされるデータや、非接触ICカード1を動作させるために必要なプログラム等が記憶されている。演算処理部は、カード側アンテナ2に発生した起電力により動作してメモリ部からプログラムを読み出して実行し、例えば、メモリ部内の所定のデータを信号としてカード側アンテナ2から発信させる等の制御を行う。
【0013】
このような非接触ICカードは、カードリーダー等によって生成される外部電磁場によって起動されて、自身に記憶されたデータを応答信号としてカード側アンテナ2から送信することができる。
【0014】
図2に非接触ICカード用ホルダーの構成を模式的に示す。この非接触ICカード用ホルダーは、非接触ICカード1を出し入れ自在に収納するカードホルダー4を備えている。このカードホルダー4には、ループ状のホルダー側アンテナ5が設けられている。このホルダー側アンテナ5は、カードホルダー4内に収納された状態の非接触ICカード1のカード側アンテナ2と対向するように配置されている。
【0015】
カードホルダー4には、例えばLED等からなる発光体6が取り付けられている。この発光体6は、カードホルダー4に備えられた電源7からの電力供給を受けて点灯する。この電源7と発光体6との間にはスイッチ8が介挿されている。そして、このスイッチ8がオン/オフされることで、発光体6の点灯/消灯が制御される。
【0016】
カードホルダー4の動作はホルダー側ICモジュール9によって制御される。このホルダー側ICモジュール9は、カード側ICモジュール3と同じく、メモリ部や演算処理部を有している。メモリ部には、カードホルダー4を動作させるために必要なプログラム等が記憶されている。演算処理部は、メモリ部からプログラムを読み出して情報処理を実行し、カードホルダー4の動作制御に必要な各種手段を実現している。
【0017】
このホルダー側ICモジュール9によって実現される各種の手段としては、具体的には、交信制御手段、判定手段及び発光制御手段がある。交信制御手段は、ホルダー側アンテナ5を用いて行われる、カードホルダー4内に収納された非接触ICカード1との交信を制御するものである。判定手段は、カードホルダー4内に収納された非接触ICカード1との交信における非接触ICカード1からの応答結果に基づいて、通信の成否を判定するとともに、通信に成功した場合には非接触ICカード1は正常であると判定し、通信に失敗した場合には非接触ICカード1に異常が発生したと判定するものである。発光制御手段は、発光体6に通電するためのスイッチ8のオン/オフを制御することにより、発光体6の点灯/消灯を制御するものである。
【0018】
このように構成された非接触ICカードホルダーは、以下のように動作する。
まず、カードホルダー4内に非接触ICカード1が収納されると、ホルダー側ICモジュール9の交信制御手段は、ホルダー側アンテナ5によって電磁場を生成させ、このホルダー側アンテナ5に対向して位置する非接触ICカード1のカード側アンテナ2を励磁する。カード側アンテナ2が励磁されると、カード側ICモジュール3が駆動される。カード側ICモジュール3が駆動されると、非接触ICカード1はカード側アンテナ2から応答信号を発信される。カードホルダー4は、ホルダー側アンテナ5によって、この非接触ICカード1のカード側アンテナ2からの応答信号を受信する。
【0019】
このようにして、カードホルダー4側から非接触ICカード1側を駆動することにより、非接触ICカード1とカードホルダー4との間での交信が行われる。この交信は、ホルダー側ICモジュール9の交信制御手段による制御の下で、非接触ICカード1がカードホルダー4内に収納されている間は所定の一定時間毎に定期的に行われる。
【0020】
このような定期的な交信により得られる非接触ICカード1からの応答信号に基づいて、ホルダー側ICモジュール9の判定手段は、応答信号の内容が正常であって通信に成功しているか否かを判定する。そして、通信成功である場合には、非接触ICカード1は正常であると判定する。非接触ICカード1は正常であると判定された場合には、ホルダー側ICモジュール9の発光制御手段は、スイッチ8をオフにして発光体6を消灯する。なお、発光体6の初期状態は消灯状態である。
【0021】
一方、通信に失敗した場合には、ホルダー側ICモジュール9の判定手段は、非接触ICカード1に異常が発生していると判定する。非接触ICカード1に異常が発生していると判定された場合には、ホルダー側ICモジュール9の発光制御手段は、スイッチ8をオンにして発光体6を点灯する。こうして、非接触ICカード1に異常が発生して交信不能になると、その状態がカードホルダー4によって検出され発光体6が発光する。そして、非接触ICカード1及びカードホルダー4を携帯する利用者は、カードホルダー4の発光体6が発光したことにより、非接触ICカード1に異常が発生したことを知ることができる。
【0022】
また、カードホルダー4内に非接触ICカード1を収納した状態で非接触ICカード1をカードリーダーの通信可能範囲内に近付けた場合、カードホルダー4側でもカードリーダーに近付けられたことを検出する。そして、カードホルダー4に収納された非接触ICカード1がカードリーダーに近付けられたことを検出した場合には、ホルダー側ICモジュール9の交信制御手段は、非接触ICカード1とカードホルダー4との間での定期的な交信を中断させる。
【0023】
そして、カードホルダー4に収納された非接触ICカード1がカードリーダーの通信可能範囲内から範囲外へと遠ざけられたことを検出した場合には、ホルダー側ICモジュール9の交信制御手段は、非接触ICカード1とカードホルダー4との間での定期的な交信を再開させる。こうして、非接触ICカード1とカードリーダーとの間の通信を優先させて、これらの間の通信に干渉することがないようにすることができる。
【0024】
この、カードホルダー4内に収納された状態の非接触ICカード1が、カードリーダーの通信可能範囲に対して近づけられたり遠ざけられたりしたことの検出は、例えば、ホルダー側アンテナ5によってカードリーダーが生成した電磁場を検出することによって実現することができる。
【0025】
なお、ここでは、非接触ICカードはパッシブ型のものである場合について説明したが、アクティブ型の非接触ICカードを用いた場合であっても、ほぼ同様にして本願発明を適用することが可能である。
【0026】
以上のように構成された非接触ICカード用ホルダーは、カードリーダーと通信するためのカード側アンテナを有する非接触ICカードを収納するカードホルダーに、ホルダー側アンテナ及び発光体を設け、交信制御手段によってカードホルダーと非接触ICカードとの間で定期的に交信を行い、この交信結果に基づいて非接触ICカードの異常の有無を判定手段によって判定するものである。そして、この判定の結果、非接触ICカードに異常が発生したと判定された場合には、発光制御手段によって発光体が点灯される。
【0027】
このため、非接触ICカード自体に物理的あるいは静電気的な故障等の異常が発生し交信不能となったことを、利用者が容易に知ることが可能である。そして、また、利用者は、非接触ICカードに故障が発生したタイミングも知ることができるため、その際の状況等から非接触ICカードの故障要因の手がかりを得ることも可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 非接触ICカード
2 カード側アンテナ
3 カード側ICモジュール
4 カードホルダー
5 ホルダー側アンテナ
6 発光体
7 電源
8 スイッチ
9 ホルダー側ICモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードリーダーと通信するためのカード側アンテナを有する非接触ICカードを、収納するカードホルダーと、
前記カードホルダーに設けられたホルダー側アンテナと、
前記カードホルダーに設けられた発光体と、
前記カードホルダーと前記非接触ICカードとの間での前記ホルダー側アンテナ及び前記カード側アンテナを介した定期的な交信を制御する交信制御手段と、
前記交信の結果に基づいて、前記非接触ICカードの異常の有無を判定する判定手段と、
前記判定手段により前記非接触ICカードに異常が発生したと判定された場合に、前記発光体を点灯させる発光制御手段と、を備えたことを特徴とする非接触ICカード用ホルダー。
【請求項2】
前記交信制御手段は、前記カードホルダーに収納された前記非接触ICカードが前記カードリーダーの通信可能範囲内に近付けられた場合に、前記交信を中断させることを特徴とする請求項1に記載の非接触ICカード用ホルダー。
【請求項3】
前記交信制御手段は、前記交信が中断された状態で、前記カードホルダーに収納された前記非接触ICカードが前記カードリーダーの通信可能範囲外に遠ざけられた場合に、前記交信を再開させることを特徴とする請求項2に記載の非接触ICカード用ホルダー。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−146198(P2012−146198A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5079(P2011−5079)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】