説明

非接触ID識別装置付き容器及びその製造方法

【課題】大きな付属物を付すこととならない非接触ID識別装置付き容器の提供。
【解決手段】外径φ4.0mm、内径φ1.6mm、厚さ0.4mmの45ターン整列巻きアンテナコイル1の内側に一辺□1.0mm、厚さ0.25mmの正方形のICチップ2を配し、アンテナコイル1の両端をそのICチップ2の二つの端子部の金バンプ2a、2a上に載せて加熱加圧し、アンテナコイル1を構成する銅導線と金バンプ2a、2aとの界面にAu−Cu全率固溶体を形成させて接続したICタグ3を用意した。このICタグ3を、上下反転させた、外径φ10mmのポリテトラフルオロエチレン製の平底の試験管4の底の上に載せ、その上から約15ポアズに希釈した接着剤(低温ワニス:GE社製C5-101(商品名))を滴下した。接着剤の滴下量はICタグ3がその中に沈む量とした。滴下後、室温で約15分間乾燥して硬化させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収容物をその種別や容量その他の識別情報により識別する必要のある種々の容器にその収容物の識別のために使用する非接触ID識別装置を取り付けた非接触ID識別装置付き容器及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器に識別を必要とする種々の収容物を収容し、該容器に収容物に応じた情報を保持した識別手段を付して個々の容器の収容物を識別することとしている業務分野には非常に多くの例がある。医学、農学、或いは化学の諸分野で各種の多数のサンプルを試験管のような容器に収容し、これらの容器に内容物の識別手段を施した上で保管し、必要に応じて分類し、或いは、種々のテストを行い、得られた情報を記録する等の処理が行われている。
【0003】
この場合の識別手段として、バーコード等が使用されているが、読み取り速度、識別のために利用される情報の量、識別の確実性その他の観点から、RFIDタグを利用する無線周波数識別タグを備えるサンプル容器(特許文献1)が提案されている
【0004】
この特許文献1のサンプル容器は、「サンプルを保持する保持器と、無線周波数識別器と、該無線周波数識別器用のキャリアとを備えるサンプル容器であって、
前記無線周波数識別器が、無線周波数エネルギーを送受信するアンテナと、該アンテナに接続された集積回路チップとを備え、前記無線周波数識別器が前記キャリア上に配され、かつ前記キャリアが前記保持器に連結されているサンプル容器」である。
【0005】
従ってこの特許文献1のサンプル容器によれば、容器にその内容物であるサンプルの識別情報データが無線周波数識別器に保持されており、外部のリーダにより、高速で、かつ誤りなく読み取り可能であり、バーコードを用いた場合より、これらの点で遥かに高い性能を確保することができる。更に、段階的に行われるテスト等の場合は、集積回路チップの内部の記憶手段を利用して、順次新たなデータを書き込むことも可能であり、新たな高い利便性を確保することも可能である。
【0006】
このようにこの特許文献1のサンプル容器はそれ以前のバーコード等の技術と比較して極めて優れたものであるが、識別情報を保持する無線周波数識別器をキャリアを介してサンプルを保持する保持器(容器)に取り付けるものであり、それ故、サンプル容器に無用に大きな付属物を付すこととなり、これが、サンプル容器の保管や運搬の際、或いは内容物であるサンプルの取り扱いの際に邪魔になる虞がある。
【0007】
【特許文献1】特表2003−535348号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の観点から、特許文献1の有する利点を生かし、その問題点を解決し、容器に大きな付属物を付すこととならない非接触ID識別装置付き容器及びその製造方法を提供することを解決の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1は、収容物の識別のために、マイクロプロセッサを含むICチップ並びに該ICチップと外部のリーダとの間の電力の授受及び情報の交換を行うアンテナコイルで構成した非接触ID識別装置を取り付けた非接触ID識別装置付きの容器であって、
前記非接触ID識別装置が、前記アンテナコイルを整列巻きし、かつ該ICチップを該アンテナコイルの内側に配して構成したものであり、
前記非接触ID識別装置を直接にその任意の部位に接着接合して構成した非接触ID識別装置付き容器である。
【0010】
本発明の2は、本発明の1の非接触ID識別装置付き容器に於いて、前記アンテナコイルの内径を、少なくともその内側に該アンテナコイルを変形させることなく前記ICチップを配し得る限度の小径に構成したものである。
【0011】
本発明の3は、容器に、その収容物の識別のために、マイクロプロセッサを含むICチップ並びに該ICチップと外部のリーダとの間の電力の授受及び情報の交換を行うアンテナコイルで構成した非接触ID識別装置を取り付ける非接触ID識別装置付き容器の製造方法であって、
前記非接触ID識別装置が、前記アンテナコイルを整列巻きし、かつ該ICチップを該アンテナコイルの内側に配して構成したものであり、
前記非接触ID識別装置を直接に前記容器の任意の部位に配して接着接合することにより製造する本発明の1又は2の非接触ID識別装置付き容器の製造方法である。
【0012】
本発明の4は、本発明の3の非接触ID識別装置付き容器の製造方法に於いて、前記アンテナコイルの内径を、少なくともその内側に該アンテナコイルを変形させることなく前記ICチップを配し得る限度の小径に構成したものである。
【0013】
本発明の5は、本発明の3又は4の非接触ID識別装置付き容器の製造方法に於いて、前記アンテナコイルを複数段に巻いたものである。
【0014】
本発明の6は、本発明の3、4又は5の非接触ID識別装置付き容器の製造方法に於いて、前記アンテナコイルの隣接するコイル導体間を接着剤で結合したものである。
【0015】
本発明の7は、本発明の3、4、5又は6の非接触ID識別装置付き容器の製造方法に於いて、前記容器に配した前記非接触ID識別装置を被覆すべく被覆材を施したものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の1の非接触ID識別装置付き容器によれば、非接触ID識別装置自体が、そのアンテナコイルを整列巻きし、その内側にICチップを配し、かつその端子部に該アンテナコイルの両端を接続することとしたものであるため、小型になり、加えてそれ自体の形状が自己保持されるものとなり、それ故、これをキャリアに配することなく、直接に容器に接着接合することが可能となったものである。
【0017】
以上のように、この非接触ID識別装置は非常に小型であり、それ故、非接触ID識別装置付き容器は、該非接触ID識別装置を直接に容器に配して接着接合したものであるから、容器には極めて小型の非接触ID識別装置が付属しているだけと云って良い状態になり、その非接触ID識別装置の存在の故に、該容器の保管上、運搬上その他の取り扱いに不都合が生じる虞は殆ど皆無となったものである。そのため、当然、その内容物であるサンプルその他の物の取り扱い上でも形状・寸法上の不都合が生じる虞は殆どない。また非接触ID識別装置を付属させるキャリアがないので、これを付属させるための工程及び材料が不要となり、経済的でもある。
【0018】
本発明の2の非接触ID識別装置付き容器によれば、アンテナコイルの内径を少なくともその内側に該アンテナコイルを変形させることなくICチップを配置し得る限度の小径に構成したものであるため、アンテナコイル自体が小型となり、それ自体の形状を一層良好に自己保持可能となったものである。その結果、該アンテナコイルとその内側に配したICチップとからなる非接触ID識別装置もその形状の自己保持力が十分に高いものとなり、それ故、これをキャリアに配することなく、直接に容器に接着接合することが良好に行われうるようになったものである。
【0019】
本発明の3の非接触ID識別装置付き容器の製造方法によれば、本発明の1の効果を有する非接触ID識別装置付き容器を、容易かつ確実に製造することができる。
【0020】
本発明の4の非接触ID識別装置付き容器の製造方法によれば、本発明の2の効果を有する非接触ID識別装置付き容器を、容易かつ確実に製造することができる。
【0021】
本発明の5の非接触ID識別装置付き容器の製造方法によれば、アンテナコイルを複数段に巻くことにより、その径を小さくすると共に、形状を自己保持する自己保持力を高めることができる。
【0022】
本発明の6の非接触ID識別装置付き容器の製造方法によれば、アンテナコイルの隣接するコイル導体間に接着剤を配して相互を結合することとしたため、形状を自己保持する自己保持力を更に高めることができる。
【0023】
本発明の5の非接触ID識別装置付き容器の製造方法によれば、容器の任意の位置に配した非接触ID識別装置を接着接合することに加えて、該非接触ID識別装置を被覆材で被覆することにより、一層、その保護を図り、該容器の取り扱いの際等に外部の何物かに接触しても容易に損傷を生じることのないようにしたものである。被覆材は、種々のそれが採用可能であり、例えば、該容器が耐熱ガラスの場合は低融点ガラスを採用し、これで該非接触ID識別装置を被覆することができる。或いは第2の接着剤を採用し、これで該非接触ID識別装置を被覆することもできる。
【0024】
これらの被覆材による保護がなくても、この非接触ID識別装置は、容器との接合固定のために用いた接着剤により、補強され、容器の取り扱いの際に外部の何らかの部材に接触しても容易に損傷を生じることはないが、以上のようにシート材又は第2の接着剤等の被覆材で保護することにより、一層、損傷の虞を少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、基本的に、収容物の識別のために、マイクロプロセッサを含むICチップ並びに該ICチップと外部のリーダとの間の電力の授受及び情報の交換を行うアンテナコイルで構成した非接触ID識別装置を取り付けた非接触ID識別装置付きの容器であって、
前記非接触ID識別装置が、前記アンテナコイルを整列巻きし、かつ該ICチップを該アンテナコイルの内側に配して構成したものであり、
前記非接触ID識別装置を直接にその任意の部位に接着接合して構成した非接触ID識別装置付き容器、及び前記非接触ID識別装置を直接に前記容器の任意の部位に配して接着接合することにより製造するその製造方法である。
【0026】
前記ICチップは、前記したように、前記アンテナコイルを介して外部のリーダとの間で電力の授受及び情報の交換を行う通信機能を備え、かつ交換した情報その他の情報及びプログラムを格納保持する記憶手段を備え、更には、前記のように、保持するプログラムに従ってデータの処理その他の演算処理を行うマイクロプロセッサを備えた要素である。記憶手段の記憶容量は大きい方が好ましいが、そのサイズは特定のそれに限定されない。プログラムもその用途により種々選択され、或いは構成されるべきであり、特定のそれに限定されない。
【0027】
前記アンテナコイルは、前記のように整列巻きで構成されるべきものであるが、その平面から見た形状は、円形、楕円形、或いは多角形等を自由に採用可能である。取付対象の容器との関係を考慮して決定するのが好ましい。また該アンテナコイルは、一段又は一層の渦巻き状に形成することも、これを複数段(複数層)に重ねた状態に形成することも自由である。後者のように複数段(複数層)に構成することによって、アンテナコイルの厚みは増すが径を小さくする利点を得ることができる。或いは、アンテナ形状の自己保持力を高めることにもなる。アンテナコイルを作るためのコイル導体の径は、コイル形状を保持する自己保持力及び直流抵抗を小さくする観点からはできるだけ大径であることが好ましい。これは、全体のサイズをできるだけ小さくする要求との間でバランスを取って決定する。なおアンテナコイルの巻き数は要求される共振周波数を考慮して決定される。
【0028】
前記アンテナコイルは、またその内径を、少なくともその内側に該アンテナコイルを変形させることなく、前記ICチップを配し得る限度の小径に構成するのが適当である。これによってアンテナコイル自体の形状の自己保持力を高める趣旨である。
【0029】
このアンテナコイルを巻くための方法は自由である。通常治具を利用して巻回する。なお、このとき、巻回されるアンテナコイルの隣接するコイル導体間には接着剤を配し相互間を結合するようにするのが好ましい。これは、コイルを巻回形成する際に接着剤を塗布してそのようにすることも可能であるが、熱溶融性の接着剤をコーティングしたコイル導体でアンテナコイルを形成し、その後、コイル導体表面の接着剤を熱風等を利用して加熱溶融し、これによって隣接する相互を接着結合するようにすることも可能である。このようにすることによってアンテナコイルのコイル形状の自己保持力を高めることができることになる。
【0030】
前記ICチップは、以上のようにして作成されたアンテナコイルの内側、例えば、該アンテナコイルの中央部に位置決めし、その端子部に該アンテナコイルの両端を接続して電気的に接続し、かつアンテナコイルの該位置に機械的に固定する。ICチップは小さく軽量であるので、アンテナコイルの形状がこれで崩されるようなことはない。なおアンテナコイルの両端と該ICチップの端子部との接続は既存の種々の技法を自由に選択して行うことが可能である。勿論、強度の高い新たな接続法を採用することも自由である。ICチップとして、最外層が金(Au)で構成された端子部を備えたそれを採用し、銅(Cu)製のコイル導体を用いたアンテナコイルをその端子部上に載せ、かつアンテナコイルの上から加熱しながら加圧し、両者の界面付近にAu/Cu全率固溶体を形成させることにより、直接接合するようにすることも可能である。このようにすれば、両者間の結合は極めて強固になって非常に好ましい。
【0031】
前記容器は特定のそれに限定されない。容器は、当然、その中に収容すべきサンプル等の要求する種々の条件、或いは保管条件等によって、例えば、プラスチックやガラス等の材質、長さや径のサイズ、或いは形状等が決定されるが、それらのいずれでも対応可能である。
【0032】
前記アンテナコイルと前記ICチップとで構成した非接触ID識別装置は、前記のように、容器の任意の部位に配して接着剤で接合固定する。容器の側面、底面、或いは蓋の上面等のいずれの部位に接合固定することも自由である。
【0033】
このような非接触ID識別装置の容器への接着接合は、容器の所定の位置に接着剤を塗布した上で、該部位に該非接触ID識別装置を圧接すること、或いは、該非接触ID識別装置の裏面側に接着剤を塗布した上で、その非接触ID識別装置を容器の所定の位置に圧接すること、若しくは、該非接触ID識別装置を容器の所定の位置に配した上で、その上に粘度の低い接着剤を滴下することにより行うことができる。いずれも若干の乾燥時間の経過後に結合固定が確実なものになる。このような非接触ID識別装置の容器への接着固定作業は、手作業によって行うことは勿論可能であるが、自動的に行うことも当然可能である。
【0034】
この場合は、図4(a)、(b)、(c)、(d)に示すように、リール形状のテープ31、41の長さ方向に定間隔で形成した収納穴32、32…、42、42…に各々前記非接触ID識別装置33、33…、43、43…を入れておき、該テープ31、41を所定の作業位置を通過するように配した上で、該テープ31、41を間欠的にその長さ方向に移動させて、該作業位置で収納穴32、42中の非接触ID識別装置33、43を供給し、他方、同じタイミングで該作業位置に順次運ばれる対象容器の所定の部位に、該非接触ID識別装置33、43を接着接合するようにすることができる。なお、図中34、44は位置決め穴である。
【0035】
上記接着接合は、例えば、所定の作業位置に届いた非接触ID識別装置を、順次、取り出し装置で取り出し、更に接着剤の塗布装置でその裏面側に接着剤の塗布を行い、同様に同じタイミングで届いている前記所定の容器の所定の部位に、該非接触ID識別装置の裏面側を当接し、圧接することで行うことができる。
【0036】
或いは、所定の作業位置に届いた非接触ID識別装置を、順次、取り出し装置で取り出し、他方、同様に同じタイミングで届いている前記所定の容器の所定の部位に、接着剤の塗布装置でその塗布を行い、次いで、該容器の該接着剤の塗布が行われている部位に、該非接触ID識別装置の裏面側を当接し、圧接することで行うことができる。
【0037】
若しくは、所定の作業位置に届いた非接触ID識別装置を、順次、取り出し装置で取り出し、この非接触ID識別装置を、同様に同じタイミングで届いている前記所定の容器の所定の部位に配し、続いてその上から液状の接着剤を滴下することで行うことができる。
【0038】
本発明の非接触ID識別装置は、前記のように、その形状を自己保持することができるものであるから、以上のように、リール形状のテープ31、41の収納穴32、42に配して、以上のような容器への取り付け作業を自動化することも可能となるものである。
また取り付け作業の自動化ばかりでなく、以上のようなテープ31、41に収納して、保管、運搬等に供することができるのも云うまでもない。
【0039】
ところで、このように容器の任意の部位に接合固定する非接触ID識別装置は、裏面側に配した接着剤により結果的に補強されているので、容器に単に接着接合した状態で十分な強度を有しており、外部の種々の物品等に接触してもこれが容易に損傷を生じることはない。しかし、該非接触ID識別装置の外面側を更に低融点ガラス又は第2の接着剤等の被覆材で保護することは好ましい。これによって非接触ID識別装置の外部の物品等と接触した場合に生じうる損傷からの保護を一層確実にする趣旨である。なおこの被覆材として第2の接着剤を採用した場合は、この第2の接着剤を接合固定用の接着剤と分けることなく同質のそれを同時に施しても良いことは云うまでもない。
【0040】
従って本発明の非接触ID識別装置付き容器及びその製造方法によれば、以上のように、非接触ID識別装置自体が、整列巻きしたアンテナコイルの内側にICチップを配して構成したもので、小型であり、更にキャリアを用いることなく、直接に容器に配して接着接合したものであるため、容器は極めて小型の非接触ID識別装置のみが付属している態様となり、その膨らみは極めて小さなものとなる。そのため、その容器の保管上、運搬上その他の取り扱い上に於いて、形状、寸法上の何らかの不都合が生じる虞は殆ど無い。従って、当然、その内容物であるサンプルその他の物の取り扱い上も不都合が生じる虞は殆どない。
【0041】
以上に於いて、前記非接触ID識別装置は、アンテナコイルを整列巻きにより小型に構成し、その内側にICチップを配して、その端子部に該アンテナコイルの両端を接続することによってそれ自体の形状を自己保持できるようにしたものであり、それ故、これを、前記のように、キャリアに配することなく、直接に容器に接着接合することを可能ならしめたものである。
【0042】
前記非接触ID識別装置は、アンテナコイルを複数段(複数層)に巻くことにより、その径を小さくし、同時に形状を自己保持する自己保持力を高めたものでもある。また、前記のように、アンテナコイルの隣接するコイル導体間に接着剤を配して相互を結合することにより、形状を自己保持する自己保持力を更に高めたものである。
【0043】
更に前記したように、容器の任意の位置に配した非接触ID識別装置を接着接合することに加えて、該非接触ID識別装置を被覆材で被覆することにより、その保護を図り、該容器の取り扱いの際等に外部の何物かに接触しても容易に損傷を生じることにないようにしたものでもある。
【実施例1】
【0044】
外径φ4.0mm、内径φ1.6mm、厚さ0.4mmの45ターン整列巻きアンテナコイル(銅導線製)1の内側に一辺□1.0mm、厚さ0.25mmの正方形のICチップ2を配し、該アンテナコイル1の両端(入出力端)を該ICチップ2の二つの端子部の金バンプ2a、2a上に載せて加熱加圧し、アンテナコイル1を構成する銅導線と金バンプ2a、2aとの界面にAu−Cu全率固溶体を形成させて接続したICタグ(非接触ID識別装置)3を用意した。
【0045】
このICタグ3は、図1(a)、(b)に示すように、アンテナコイル1の金バンプ2a、2aまでの延長部であるリード部の寸法が短く、かつICチップ2は、云うまでもなく、軽量であるため、その形状を保持する自己保持性が極めて高い特徴を有する。従ってこのICタグ3は、前記のように、その形状を保持するためのキャリアを必要としない。
【0046】
このICタグ3を、図1(a)、(b)に示すように、上下反転させて位置させた、外径φ10mmのポリテトラフルオロエチレン製の平底の試験管4の底の上に載せ、その後その上から、接着剤(低温ワニス:GE社製C5-101(商品名))をトルエンとエタノールの1:1混合液で約15ポアズに希釈して滴下した。該接着剤の滴下量は該ICタグ3がその中に沈む量とした。滴下後、室温で約15分間乾燥して硬化させた。図1(a)、(b)中、5は硬化した接着剤である。
【0047】
以上のICタグ3付き試験管4を、温度サイクル恒温槽内に配置し、−55℃と150℃の間を往復する温度サイクルを2時間に1回の割合で1000サイクル繰り返し、その試験の終了後に、該試験管4の底部のICタグ3の状態を観察した。その結果、アンテナコイル1を構成する銅線は酸化されて茶褐色になったが、ICタグ3は剥離することなく外観上良好な状態を維持していた。更にマイナスドライバの先端を試験管4の表面と硬化した接着剤5の間に差し込む態様で押しても人力で容易に剥離することはなかった。十分良好な接着力を維持していると考えられる。またICタグ3と通信テストをしたところ、その機能は全く損なわれていなかった。通信テストは、硬化した接着剤5の外面を、前記マイナスドライバのグリップ側で該試験管4が壊れない程度に5回ほど打撃した後に更に行ってみたが、その機能はやはり全く損なわれていなかった。硬化した接着剤5による保護効果も十分である。
【実施例2】
【0048】
外径φ12.5mm、内径φ11mm、厚さ0.25mmの15ターン整列巻きアンテナコイル(銅導線製)11の内側に一辺□1.0mm、厚さ0.25mmの正方形のICチップ2を配し、該アンテナコイル11の両端(入出力端)を該ICチップ2の二つの端子部の金バンプ2a、2a上に載せて加熱加圧し、アンテナコイル11を構成する銅導線と金バンプ2a、2aとの界面にAu−Cu全率固溶体を形成させて接続したICタグ(非接触ID識別装置)13を用意した。
【0049】
このICタグ13は、図2(a)、(b)に示すように、実施例1のICタグ3のそれと同様に、アンテナコイル11の金バンプ2a、2aまでの延長部であるリード部の寸法が短く、かつICチップ2は軽量であるため、その形状を保持する自己保持力が極めて高い。従ってこのICタグ13は、実施例1のICタグ3と同様に、その形状を保持するためのキャリアを必要としない。
【0050】
このICタグ13を、図2(a)、(b)に示すように、外径φ10mmのフルオロエチレンプロピレン製の試験管14の蓋14aの上に載せ、その後その上から接着剤(アロンメルトPES-IIIEHW(商品名、東亜合成株式会社製)を滴下した。該接着剤の滴下量は該ICタグ13がその中に沈む量とした。滴下後、室温で約15分間乾燥して硬化させた。図2(a)、(b)中、15は硬化した接着剤である。
【0051】
以上のICタグ13を蓋14aの上面に固設した試験管14を液体窒素蒸気(−140℃)中に暴露して1か月放置し、その後取り出して、ICタグ13の機能及びICタグ13と試験管14の蓋14aとの結合状態をテストした。ICタグ13の機能は、実施例1と同様に、通信テストを行ったところ、その機能は全く損なわれていなかった。また試験管14の蓋14aとの結合状態のテストは、マイナスドライバの先端を該蓋14aの表面と硬化した接着剤15の間に差し込む態様で押して行ったが、硬化した接着剤15は人力で容易に剥離することはなかった。良好な接着力を維持していると判断できる。更に前記通信テストに加えて、更に、硬化した接着剤15の外面を、前記マイナスドライバのグリップ側で該試験管14が壊れない程度に5回ほど打撃した後に更に通信テストを行ってみたが、その機能はやはり全く損なわれていなかった。硬化した接着剤15による保護効果も十分である。
【実施例3】
【0052】
外径φ10.5mm、内径φ5.0mm、厚さ0.3mmの18ターン整列巻きアンテナコイル(銅導線製)21の内側に一辺□1.0mm、厚さ0.25mmの正方形のICチップ2を配し、該アンテナコイル21の両端(入出力端)を該ICチップ2の二つの端子部の金バンプ2a、2a上に載せて加熱加圧し、アンテナコイル21を構成する銅導線と金バンプ2a、2aとの界面にAu−Cu全率固溶体を形成させて接続したICタグ(非接触ID識別装置)23を用意した。
【0053】
このICタグ23は、図3(a)、(b)に示すように、実施例1、2のICタグ3、13のそれと同様に、アンテナコイル21の金バンプ2a、2aまでの延長部であるリード部の寸法が短く、かつICチップ2は軽量であるため、その形状を保持する自己保持力が極めて高い。従ってこのICタグ23は、実施例1、2のICタグ3、13と同様に、その形状を保持するためのキャリアを必要としない。
【0054】
このICタグ23を、図3(a)、(b)に示すように、上下反転させた、外径φ15mmのポリテトラフルオロエチレン製の試験管24の丸底型の底の上に載せ、その後その上から接着剤(低温ワニス:GE社製C5-101(商品名))をトルエンとエタノールの1:1混合液で約15ポアズに希釈して滴下した。該接着剤の滴下量は該ICタグ23がその中にほぼ沈む量とした。滴下後、室温で約15分間乾燥して硬化させた。その後更にその上に第2の接着剤(シアノアクリレート系接着剤C5-105(商品名、オックスフォード社製))を滴下し、完全にICタグ23を被覆するようにした。滴下後、室温で約15分間乾燥して硬化させた。図3(a)、(b)中、25は硬化した接着剤、35は硬化した第2の接着剤である。
【0055】
以上のICタグ23を底に固設した試験管24を恒温槽中に入れて220℃に保持して1ヶ月間保管した。その後取り出してICタグ23の機能及びICタグ23と試験管24との結合状態をテストした。まず初めに該試験管24の底部のICタグ23の状態を目視により観察した。その結果、アンテナコイル21を構成する銅線は酸化されて黒褐色になったが、ICタグ23は剥離することなく外観上良好な状態を維持していた。次に実施例1、2と同様に通信テストを行ったところ、ICタグ23の機能は全く損なわれていなかった。また試験管24との結合状態のテストを、マイナスドライバの先端を試験管24の表面と硬化した第2の接着剤35との間に差し込む態様で押して行ったが、硬化した第2の接着剤35が人力で剥離することはなかった。良好な接着力を十分に維持していると判断できる。更に前記通信テストに加えて、硬化した第2の接着剤35の外面を、前記マイナスドライバのグリップ側で該試験管24が壊れない程度に5回ほど打撃した後に更に通信テストを行ってみたが、その機能はやはり全く損なわれていなかった。硬化した第2の接着剤35による保護効果も十分である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)は実施例1のICタグの断面図、(b)は該ICタグを配した、上下反転した試験管の底部の断面図。
【図2】(a)は実施例2のICタグを配した蓋付きの試験管の断面図、(b)はICタグを配した蓋の部分の拡大断面図。
【図3】(a)は実施例3のICタグを配した、上下反転した試験管の底部の断面図、(b)は(a)のICタグを配した部分の拡大図。
【図4】(a)はICタグを収納穴に装入したリール形状のテープの一例を示す概略平面図、(b)はその断面図、(c)はICタグを収納穴に装入したリール形状のテープの他の例を示す概略平面図、(d)はその断面図。
【符号の説明】
【0057】
1 アンテナコイル
2 ICチップ
2a 金バンプ
3 ICタグ(非接触ID識別装置)
4 平底の試験管
5 硬化した接着剤
11 アンテナコイル
13 ICタグ(非接触ID識別装置)
14 試験管
14a 試験管の蓋
15 硬化した接着剤
21 アンテナコイル
23 ICタグ(非接触ID識別装置)
24 試験管
25 硬化した接着剤
31、41 テープ
32、42 収納穴
33、43 非接触ID識別装置
34、44 位置決め穴
35 硬化した第2の接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容物の識別のために、マイクロプロセッサを含むICチップ並びに該ICチップと外部のリーダとの間の電力の授受及び情報の交換を行うアンテナコイルで構成した非接触ID識別装置を取り付けた非接触ID識別装置付きの容器であって、
前記非接触ID識別装置が、前記アンテナコイルを整列巻きし、かつ該ICチップを該アンテナコイルの内側に配して構成したものであり、
前記非接触ID識別装置を直接にその任意の部位に接着接合して構成した非接触ID識別装置付き容器。
【請求項2】
前記アンテナコイルの内径を、少なくともその内側に該アンテナコイルを変形させることなく前記ICチップを配し得る限度の小径に構成した請求項1の非接触ID識別装置付き容器。
【請求項3】
容器に、その収容物の識別のために、マイクロプロセッサを含むICチップ並びに該ICチップと外部のリーダとの間の電力の授受及び情報の交換を行うアンテナコイルで構成した非接触ID識別装置を取り付ける非接触ID識別装置付き容器の製造方法であって、
前記非接触ID識別装置が、前記アンテナコイルを整列巻きし、かつ該ICチップを該アンテナコイルの内側に配して構成したものであり、
前記非接触ID識別装置を直接に前記容器の任意の部位に配して接着接合することにより製造する請求項1又は2の非接触ID識別装置付き容器の製造方法。
【請求項4】
前記アンテナコイルの内径を、少なくともその内側に該アンテナコイルを変形させることなく前記ICチップを配し得る限度の小径に構成した請求項3の非接触ID識別装置付き容器の製造方法。
【請求項5】
前記アンテナコイルを複数段に巻いた請求項3又は4の非接触ID識別装置付き容器の製造方法。
【請求項6】
前記アンテナコイルの隣接するコイル導体間を接着剤で結合した請求項3、4又は5の非接触ID識別装置付き容器の製造方法。
【請求項7】
前記容器に配した前記非接触ID識別装置を被覆すべく被覆材を施した請求項3、4、5又は6の非接触ID識別装置付き容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−199353(P2009−199353A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40501(P2008−40501)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(594133858)スターエンジニアリング株式会社 (20)
【出願人】(590002389)静岡県 (173)
【Fターム(参考)】