説明

非晶質医薬組成物を用いる経皮送達速度調節

【課題】生理活性物質および皮膚浸透促進物質が生理活性物質の経皮放出の程度および/またはプロフィールを調節するために揮発性担体の蒸発時に非晶質沈殿物を形成する組成物の提供。
【解決手段】生理活性物質および皮膚浸透促進物質が揮発性担体の蒸発により非晶質沈殿物を形成し、該非晶質沈殿物が角質層内でリザーバーを形成する、(A)投与間隔にわたる生理活性物質の最高濃度(Cmax)の平均濃度(Cavg)に対する比が1〜10の範囲内になるような生理活性物質の放出速度プロフィールを有する、1またはそれ以上の生理活性物質、1またはそれ以上の皮膚浸透促進物質、および揮発性溶媒を含む医薬的に許容される揮発性担体を含む経皮送達用医薬組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理活性物質の経皮送達のための組成物、該組成物の使用、および生理活性物質の経皮送達のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生理活性物質の安全で有効な投与方法が絶えず求められ続けている。多くの薬物療法では患者のコンプライアンスを高レベルに維持するため投与方法はできるだけ単純かつ非侵襲性であることが重要である。経口投与は、従う方法が比較的簡単であるため一般に用いられる一投与方法である。しかしながら、経口投与経路も胃腸刺激および肝臓の薬物代謝に関連する合併症のため複雑である。
【0003】
皮膚を通した生理活性物質の投与(「経皮薬物送達」)は、比較的単純な投与方法を提供するだけでなく生理活性物質を全身循環に放出するための比較的遅い制御された経路も提供するため注目が増してきた。しかしながら、皮膚が天然のバリアーとして働き、皮膚を通した薬物の輸送メカニズムが複雑であることが経皮薬物送達を困難にしている。
【0004】
構造的に、皮膚は2つの基本部分、すなわち比較的薄い最外層(「表皮」)および厚い内部領域(「真皮」)からなる。表皮の最外層(「角質層」)はケラチンで満たされた扁平な死細胞からなる。角質層の扁平な死細胞間の領域は皮膚の天然のバリアー特性を担うラメラ相を形成する脂質で満たされている。
【0005】
皮膚表面に適用される(「局所適用」)生理活性物質の有効な経皮送達では、該物質は最初ビークルから角質層に分配され、次いで典型的には角質層内に拡散し、次いで角質層から生表皮、真皮、および血流内に分配される必要がある。
【0006】
皮膚層を横切る輸送(「経皮吸収」)に関連する経皮送達の問題のいくつかを克服するには、生理活性物質を1またはそれ以上の薬物浸透促進(増強)物質と組み合わせて製剤化することができる。例えば、水性エタノールは、局所適用用の製剤にビークルとして用いることができる。エタノールは、溶媒の引っ張り(drag)効果により皮膚を横切る活性物質の流量を増すことができる浸透促進物質として働くことができる(Berner et al.、1989、J. Pharm. Sci、78 (5)、402-406)。Padimate O、サリチル酸オクチル(米国特許No. 6,299,900)およびAzone(登録商標)は、経皮吸収を改善することが示されている浸透促進物質のさらなる例である。
【0007】
in situ形成組成物は、すでに開放皮膚外傷に対するバリアー表面を形成するための生体分解性in situ形成フィルムドレッシング(米国特許No.5,792,469)としての使用がみいだされている。
【0008】
しかしながら、今日まで進歩した薬物送達システムへの非晶質組成物の使用は、主として固体の薬物送達システム、例えば;経口カプセル剤、例えばWO 99/16440に開示の非晶質パロキセチン組成物;または米国特許No.5,662,923、米国特許No.4,409,206、米国特許No. 6,264,980、およびWO 95/18603に開示されているようなドラッグインアドヘシブ(drug-in-adhesive)熱溶解型経皮パッチに制限されてきた。これら従来の非晶質送達システムには、その品質保持期限にわたり保存中に安定性が低い傾向があるという特定の欠点があり、多くの場合、薬物放出の変動および/または物理的外見の劇的変化(例えば、drug-in-adhesive経皮パッチ送達システムにおける結晶化および過飽和)が生じた。他の研究者は、皮膚の上に薬剤リザーバーを形成するフィルム形成組成物を用いる経皮スプレー組成物の使用(米国特許No.6,010,716)についても記載しており、該システムはin situ形成drug-in-adhesiveパッチと類似している。
【0009】
したがって、非晶質医薬組成物の利点を増大させながら、改良されたデザインと安定を有する新規非晶質薬物送達システムを開発する必要がある。
【0010】
一方で、非晶質医薬組成物の一時的形成は従来のアルコールベースの揮発性:非揮発性ビークル、例えばベンジルアルコールを皮膚浸透促進物質として用いる二相担体系に開示のもの(米国特許No.4,820,724)、またはDMSO、DMACを浸透促進物質として用いるそれらアセトンベースの揮発性:非揮発性ビークル(Feldmann、R. J.; Maibach, H. I. Percutaneous penetration of 14C hydrocortisone in man. II. Effect of certain bases and pre-treatments. Arch. Derm. 1966,94、649-651)から生じさせることも可能である。これら従来の揮発性:非揮発性送達システムは、皮膚に対する実体性(substantivity)が乏しく、皮膚の洗い流される傾向により送達期間にわたり皮膚内に安定な非晶質組成物が維持される信頼性がない水溶性皮膚浸透促進物質を用いる制限に悩まされている。さらに、これら従来技術のシステムには、そのような従来技術のシステム(生表皮内への該促進物質の有意な浸透を生じる)内で用いる浸透促進物質の溶媒の性質により皮膚への刺激傾向がある。
【0011】
経皮吸収を改善するための他の熱力学的促進方法は、
−過飽和(Coldman、M. F.; Pulsen、B. J.; Higuchi、T. Enhancement of percutaneous absorption by the use of volatile: nonvolatile systems as vehicles. J. Pharm. Sci. 1969, 58、1098-1102)、または
−特定のエナンチオマーの慎重な選択を用いる分散剤の融点低下(米国特許No.5,114,946)、または
−共晶混合物の慎重な選択を用いる融点低下(Touitou E.、Chow、D. D.、Lawter、J. R. Chiral β-blockers for transdermal delivery. Int. J. Pharm. 1994, 104、19-28; Kaplun-Frischoff、Y; Touitou、E. Testosterone skin permeation enhancement by menthol through formation of eutectic with drug and interaction with skin lipids. J. Pharm. Sci. 1997, 86、1394-1399.; Stott、P. W.、Williams、A. C.、Barry、B. W. Mechanistic study into the enhanced transdermal permeation of a model β-blocker、propranolol、by fatty acids: a melting point pression effect. Int. J. Pharm. 2001, 219、161-176.)。
【0012】
これら方法はすべて経皮吸収の改善を目的としたが、いずれも従来技術のシステムおよび組成物に見られる皮膚刺激を避けながら皮膚内からの生理活性物質の経皮放出の程度および/またはプロフィールを調節することができる安定な非晶質組成物を形成する課題を解決していない。
【0013】
さらに、皮膚内の放出速度を調節するための安定なin situ形成非晶質医薬組成物の利点は、宿主の皮膚上に存在する、経皮薬物送達のプロフィールの慎重な修飾に対する経皮マトリックスについて記載されたもののような皮膚上に存在する薬物リザーバーの修飾による放出速度の調節にたよる従来の送達システムから予測されない(その例は米国特許No.5,091,186、表題、Biphasic transdermal drug delivery device、または米国特許No.5,613,958、表題、Transdermal delivery systems for the modulated administration of drugs、またはWO 93/00058、表題、Solubility parameter based drug delivery system and methods for altering drug saturation concentrationに記載されている。)。
【0014】
本明細書に記載のあらゆる特許または特許文献を含むいかなる参考文献も先行技術を構成することを承認しない。具体的には、特記しない限り本明細書中のあらゆる文献に対する参照はこれらあらゆる文献がオーストラリアまたはあらゆる他の国において一般技術常識の部分を形成することの承認を構成しないと理解されよう。参考文献の考察ではその著者が主張することを記載し、本出願人は本明細書に記載のあらゆる文献の正確さと妥当性を疑う権利を保留する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許No.6,299,900
【特許文献2】米国特許No.5,792,469
【特許文献3】WO 99/16440
【特許文献4】米国特許No.5,662,923
【特許文献5】米国特許No.4,409,206
【特許文献6】米国特許No.6,264,980
【特許文献7】WO 95/18603
【特許文献8】米国特許No.6,010,716
【特許文献9】米国特許No.5,091,186
【特許文献10】米国特許No.5,613,958
【特許文献11】WO 93/00058
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】Berner et al.、1989、J. Pharm. Sci、78 (5)、402-406
【非特許文献2】Feldmann、R. J. et al.、Arch. Derm. 1966,94、649-651
【非特許文献3】Coldman、M. F. et al.、J. Pharm. Sci. 1969, 58、1098-1102
【非特許文献4】Touitou E. et al.、Int. J. Pharm. 1994, 104、19-28
【非特許文献5】Kaplun-Frischoff, Y. et al.、J. Pharm. Sci. 1997, 86、1394-1399
【非特許文献6】Stott、P. W. et al.、Int. J. Pharm. 2001, 219、161-176
【非特許文献7】Morgan et al.、J. Pharm. Sci、1998、87 (10)、1213-1218
【非特許文献8】Fujita、Chem. Pharm. Bull (Tokyo) 2: 163 (1954)
【非特許文献9】Hori et al, J. Pharm. Pharmacol (1990) 42: 71-72
【非特許文献10】Hori et al、J. Pharm. Pharmacol 1990 42: 71-72
【非特許文献11】Fujita A Chem. Pharm. Bull (Tokyo) 2: 173 (1954)
【非特許文献12】Kubota、K. J. Pharm. Sci. 1991, 80、502-504
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
(発明の要約)
本発明は、本発明者らの浸透促進物質の研究、具体的には有限用量製剤では、生理活性物質の経皮吸収のあらゆる促進(増強)がおそらく(a)薬剤含有ビークルから角質層への薬剤の分配の増加、(b)薬剤の角質層内への拡散の増加、および(c)角質層から生表皮への薬剤の分配の増加の1またはそれ以上から生じるという認識から生じている。
【0018】
以前の研究は、分配の速度および程度(a)が浸透促進物質を加えるかまたは加えずにすでに全く十分であることを示した(Morgan et al.、1998、J. Pharm. Sci、87 (10)、1213-1218)。本発明者らおよび他の研究者による他の研究は、角質層における拡散性の増加(b)は試験した浸透促進物質に用量依存性であり、(b)について最大効果が達成されたらさらなる浸透促進は生じないようであることを示した。
【0019】
本発明の少なくとも一部は、角質層から生表皮への分配係数の増加および/または調節(c)が該薬剤が生表皮内で増加した水溶性を有するようにin situで非晶質薬剤を意図的に形成することにより達成することができるかもしれないとの認識から生じた。本発明を実施するため、本発明者らは生理活性物質および浸透促進物質のある組み合わせは局所に適用するとin situで非晶質固体を形成し、該組み合わせを生理活性物質の経皮放出の程度および/またはプロフィールの調節に使用できることを見いだした。
【課題を解決するための手段】
【0020】
したがって、第一の形において本発明は、
- 1またはそれ以上の生理活性物質、
- 1またはそれ以上の皮膚浸透促進物質、および
- 医薬的に許容される溶媒を含む揮発性担体を含む
生理活性物質および皮膚浸透促進物質が生理活性物質の経皮放出の程度および/またはプロフィールを調節するために揮発性担体の蒸発時に非晶質沈殿物を形成する組成物を提供する。
【0021】
本発明の組成物を用いて形成される非晶質沈殿物は揮発性担体の蒸発により皮膚にin situで形成されるため、固体沈渣(例えば薬物の塩誘導体)または結晶多形体と区別することができる。このように該生理活性物質を角質層から生表皮内に急速に分配することができる。反対に、本発明者らは、典型的には結晶沈殿物の形成が高い皮膚刺激傾向および経皮吸収効率の低下をもたらすことをみいだした(拡散輸送前に結晶を溶解するにはより大きなエネルギーが必要であることによる)。この問題はより高融点の結晶沈殿物で深刻さを増す。
【0022】
本発明組成物は、非晶質沈殿物は、それを皮膚にすり込むときの皮膚の感触や手触りが良いため他の局所用組成物より消費者に受け入れられるかもしれない。
【0023】
改善された経皮吸収効率が得られるのに加え、本発明の組成物は、活性物質の送達に用いる揮発性および非揮発性賦形剤の種類およびその容量の比較的低いことにより皮膚の刺激レベルがより低くなるためベンジルアルコールスプレーのようなある他の送達システムより刺激性が低いかもしれない。また、本発明組成物は、従来の非晶質組成物、例えば非晶質型経皮パッチで遭遇する結晶化および/または過飽和の問題を避けることができよう。本発明では非晶質沈殿物はin situで形成されるためこれを克服することができる。
【0024】
したがって、特に好ましい態様において、本発明はさらに、1またはそれ以上の生理活性物質;1またはそれ以上の皮膚浸透促進物質;および医薬的に許容される揮発性溶媒を含む揮発性担体を含む、局所適用により生理活性物質の経皮放出の程度および/またはプロフィールを調節するために、揮発性担体の蒸発により生理活性物質および皮膚浸透促進物質の非晶質沈殿物の形成をもたらす、生理活性物質の経皮送達のためのエアロゾル組成物を提供する。
【0025】
さらなる態様において、本発明は、担体がヒドロフルオロカーボンプロペラントを含み、該組成物のエアロゾルとしての局所適用が揮発性担体の蒸発により非晶質沈殿物をもたらす医薬組成物を提供する(ここで、ヒドロフルオロカーボンプロペラントはHFC-134aである)。
【0026】
さらなる態様において、本発明は、エアロゾルアプリケーターがエアロゾル組成物を含むためのチャンバー、エアロゾル組成物を送達するためのバルブ、および定量のスプレーをノズルから提供する手段を含む、生理活性物質の経皮投与用のエアロゾルアプリケーター装置を提供する。該エアロゾルアプリケーターはさらにアプリケーターノズルにスプレーが供給される対象の皮膚から予め決定した距離をとらせる手段を含んでよい。
【0027】
さらに、本発明組成物の使用により従来のフィルム形成スプレーまたはエアロゾルで経験されるスプレーノズルの詰まりに関する欠点を避けることができよう。
【0028】
さらなる局面において、本発明は、宿主に非晶質薬物製剤を送達する方法であって、1またはそれ以上の生理活性物質、1またはそれ以上の皮膚浸透促進物質、および医薬的に許容される揮発性溶媒を含む局所スプレー組成物を宿主の皮膚に適用し、揮発性溶媒が蒸発して該活性物質および皮膚浸透促進物質を含む非晶質沈殿物が形成される工程を含む方法を提供する。
【0029】
本明細書で用いている用語「非晶質」は実質的に非結晶を意味する。潜在的組成物における非晶質組成物の形成を評価するのに用いることができる方法は、示差走査熱量測定法(DCS)および明視野顕微鏡である。本発明者らは、本明細書の実施例に記載のこれら技術によりin situで非晶質残留物を形成する組成物の傾向を容易に決定することができることをみいだした。
【0030】
本発明の生理活性物質および皮膚浸透促進物質の組み合わせは機能的に非晶質沈殿物を一緒に形成する物に限定される。このため、活性物質および皮膚浸透促進物質は共に、宿主の皮膚に該組成物を適用すると揮発性溶媒だけが生理学的温度で蒸発するように揮発性溶媒に対して非揮発性であることが好ましい。
【0031】
実際に、生理活性物質は、分子量600ダルトン以下および融点200℃以下の範囲の脂溶性生理活性物質から選ぶことができることがわかってきた。適切な生理活性物質のリストには、限定されるものではないがアポモルフィン、ブトルファノール、オキシブチニン、ロピニロール、リバスチグミン、ブスピロン、リザトリプチン、トルテロジン、ゾルミトリプタン、ラシジピン、トロピセトロン、オランザピンおよびメチルフェニデート、または前記のあらゆる医薬的に許容される塩または誘導体が含まれる。最も好ましくは、生理活性物質は分子量400ダルトン以下で融点200℃以下である。
【0032】
同じ理由で、該皮膚浸透促進物質は、蒸気圧が大気圧10mmHg以下および正常皮膚温度32℃である脂溶性非揮発性の液体の促進物質のクラスから選ぶことができよう。好ましくは皮膚浸透促進物質は分子量200〜400ダルトンの範囲内である。
【0033】
本発明に従って用いる好ましい促進物質は、その有機および無機特性のバランスにより確認することができよう。本発明に従って用いる各浸透促進物質の有機および無機価(value)は、Fujita、「Production of organic compounds by a Conceptional Diagram」Chem. Pharm. Bull (Tokyo) 2: 163 (1954)に記載の方法により決定することができよう。よって領域1および領域2は異なる物理化学的特性を有し、領域1は溶媒ベースの促進物質である。好ましい浸透促進物質はHori et al J. Pharm. Pharmacol (1990) 42: 71-72提唱の概念的ダイアグラムの領域2から得られる。好ましい領域は、無機価約0〜約200および有機価約200〜約400にわたる。
【0034】
好ましい皮膚浸透促進物質には、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪アルコール、グリコールおよびグリコールエステル、1,3-ジオキソランおよび1,3-ジオキサン、炭素数が少なくとも12の大環状ケトン、オキサゾリジノンおよびオキサゾリジノン誘導体、アルキル-2-(N,N-二置換アミノ)-アルカノエートエステル、(N,N-二置換アミノ)-アルカノールアルカノエート、およびその混合物が含まれる。最も好ましくは、皮膚浸透促進物質は、オレイン酸、オレイルアルコール、シクロペンタデカノン(CPE-218(登録商標))、ソルビタンモノオレエート、グリセロモノオレエート、プロピレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノラウレート、2-n-ノニル1,3-ジオキソラン(SEPA(登録商標))、ドデシル2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロピオネート(DDAIP)またはその塩誘導体、2-エチルヘキシル2-エチルヘキサノエート、イソプロピルミリステート、ジメチルイソソルバイド、4-デシルオキサゾリジノン-2-オン(SR-38(登録商標)、TCPI、Inc.)、3-メチル-4-デシルオキサゾリジノン-2-オン、およびその混合物を含むリストから選ばれる。
【0035】
好ましくは、揮発性溶媒は蒸気圧が大気圧35mmHg以上で、正常皮膚温度が32℃である。本発明の特に好ましい形において、該溶媒はエタノールまたはイソプロパノール、またはその混合物である。
【0036】
生理活性物質の皮膚浸透促進物質に対するモル比は1:100〜100:1であってよい。より好ましいモル比は1:20〜20:1である。最も好ましいモル比は1:1である。
【0037】
好都合なことに、該組成物は、生理活性物質、薬物浸透促進物質、および揮発性溶媒を含む局所スプレー組成物であり、該方法は宿主の皮膚上に組成物をスプレーし、生理活性物質を含む非晶質沈殿物を形成させる工程を含む。
【0038】
上記の各場合において、非晶質沈殿物は好ましくは宿主の表皮に形成されるか、または宿主の生表皮または真皮中の滞留時間が短縮されている。「生表皮」は、角質層の下の水分豊富な組織を意味する。
(発明の詳細な説明)
【0039】
本発明の利点は、該組成物がその医薬的保存期限の間に過飽和または結晶化する傾向がないという意味で安定であることである。これは活性物質の結晶化が過去に問題となっていた経皮パッチと対照的かもしれない。すなわち、本発明の組成物は従来技術の経皮パッチの保存期限問題に遭遇することなく保存期限の間第一容器中に保持することができる。
【0040】
本発明の組成物は、約0.1%〜約10%の生理活性物質、約0.1%〜約10%の皮膚浸透促進物質、および約85%〜約99.8%(重量)の揮発性溶媒を含むことができよう。
【0041】
好ましくは皮膚浸透促進物質はレシピエントの皮膚に非刺激性である。すなわち、テルペン、ベンジルアルコール、および他の溶媒ベースの促進物質は、かなりの量が皮膚の生領域内に浸透することにより皮膚を刺激するため、本発明組成物での使用に適さないかもしれない。
【0042】
所望により、該ビークルはさらなる医薬的賦形剤、例えばゲル化剤、例えばカルボポールおよびセルロース誘導体を有するかもしれない。
【0043】
非晶質沈殿物から全身循環への生理活性物質の放出速度プロフィールを全身循環内の生理活性物質の送達プロフィールを調製するために慎重に修飾し、所望の治療効果を達成することができよう。
【0044】
ゼロ次放出速度プロフィールは、生理活性物質に対して高い割合の皮膚浸透促進物質を有する非晶質沈殿物を形成し、そして/または生理活性物質がより高い飽和溶解性を有する皮膚浸透促進物質または皮膚浸透促進物質の組み合わせを選ぶことにより達成される。このように、生理活性物質の非晶質沈殿物からの放出傾向が修飾され、皮膚を横切る生理活性物質のイニシャルブーストが限定される。生理活性物質の絶対量も投与間隔の後半に向かって放出速度プロフィールのプラトーの程度を低下させるように皮膚リザーバー中で増加させることもできる。非晶質沈殿物に対する結晶の相対量を修飾し、所望の放出速度プロフィールを達成することもできよう。
【0045】
生理活性物質の非晶質沈殿物からの全身循環への放出速度プロフィールは、投与間隔にわたり生理活性物質の最大濃度(Cmax)の平均濃度(Cavg)に対する比を減少させるために事実上ゼロ次に近づくことが好ましい。このように、CmaxのCavgに対する比の上昇に関連する潜在的副作用を減少させる可能性がある。例えば、CmaxのCavgに対する比は2以下、より好ましくは1.5以下である。
【0046】
反対に、一次放出速度プロフィールは、生理活性物質が低飽和溶解性であり、非晶質沈殿物から生理活性物質が離脱する傾向が増し、皮膚を横切る生理活性物質のイニシャルバーストが増す皮膚浸透促進物質または皮膚浸透促進物質の組み合わせを選ぶことにより達成することができる。単位面積当たりの生理活性物質の絶対量は、投与間隔の後半にむかって放出速度プロフィールのプラトーの程度を増加させるために皮膚リザーバーにおいて減少させることもできる。非晶質沈殿物に対する結晶の相対量を修飾し、所望の放出速度プロフィールを達成することもできよう。
【0047】
好ましくは、生理活性物質の非晶質沈殿物からの全身循環への放出速度プロフィールは、投与間隔にわたり、生理活性物質のCmaxのCavgに対する比を増大し、最高全身濃度時間(tmax)を減少させるように事実上実質的に一次である。このように、単回投与間隔後の治療反応が始まるまでの時間を減少させるかまたは治療効果を増大させることができる。例えば、CmaxのCavgに対する比は1.5以上、より好ましくは2以上であり、tmaxは4〜6時間以下、より好ましくは2〜3時間以下である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の組成物に用いるための促進物質の無機および有機価の好ましい範囲を「領域2」に示すグラフである。
【図2】種々の浸透促進物質を含む本発明の純粋なブスピロンおよびブスピロン組成物のDSCプロフィールである。
【図3】多くのブスピロン組成物の融点を示す棒チャートである。
【図4】ブスピロンを含むコントロールおよび異なる割合のブスピロンおよび2-n-ノニル1,3-ジオキソラン浸透促進物質を含む組成物からの経時的なヒト表皮を通して拡散するブスピロンの累積量を示すグラフである。
【図5】ブスピロンを含むコントロールおよびブスピロンおよびサリチル酸オクチル浸透促進物質を含む組成物からの経時的なヒト表皮を通して拡散するブスピロンの累積量を示すグラフである。
【図6a】皮膚を横切って拡散するブスピロンの累積量を示すグラフである。
【図6b】6aに示す該送達プロフィールに従って経皮送達後のブスピロンの血漿中濃度を示すグラフである。
【図7】フェンタニルを含むコントロールおよびフェンタニルおよびサリチル酸オクチル浸透促進物質を含む組成物からの経時的なヒト表皮を通して拡散するフェンタニルの累積量を示すグラフである。
【図8】フェンタニル(5%)およびサリチル酸オクチル(5%、OS)浸透促進物質を含む経皮スプレー組成物(95%エタノール)およびさらにフェンタニル(5%)およびシクロペンタデカノリド(5%、CPDL)浸透促進物質を含む組成物を適用後のヒト表皮を通して拡散するフェンタニルの累積量を示すグラフである。
【図9】グラニセトロンを含むコントロールおよびグラニセトロンおよびサリチル酸オクチル浸透促進物質を含む組成物からの経時的なヒト表皮を通して拡散するグラニセトロンの累積量を示すグラフである。
【図10】グラニセトロンを含むコントロールおよびグラニセトロンおよびパディメートO浸透促進物質を含む組成物からの経時的なヒト表皮を通して拡散するグラニセトロンの累積量を示すグラフである。
【図11】2つの異なる皮膚浸透促進物質(パディメートOまたはサリチル酸オクチル)を用いてゼロ次または一次送達速度をもたらす本発明組成物からの経時的に送達されるテストステロンの累積量を示すグラフである。
【図12】サリチル酸オクチル(ACROSS(登録商標))を皮膚浸透促進物質として含む経皮スプレー組成物からの定常状態の閉経後の女性における遊離テストステロンの血漿中濃度を示すグラフである。
【図13】同じ対象への経口用量15mgの経口ブスピロン(Buspar)の単回用量と比較した、サリチル酸オクチル(ACROSS(登録商標))を皮膚浸透促進物質として含む経皮スプレー組成物を用いる単回用量からの定常状態の健康ヒトボランティアにおけるブスピロンの血漿中濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明を以下の実施例により説明する。該実施例は本発明の例示のために示し、本発明の範囲を何ら限定するものではないと理解すべきである。
【実施例】
【0050】
ヒト皮膚を横切る種々の生理活性物質のin vitro拡散方法を、経皮薬物送達において種々の皮膚浸透促進物質を添加する効果を評価するために本発明に従って使用した。
【0051】
示差走査熱量測定法(DSC)および明視野顕微鏡検査法を本発明に従って用い、組成物が揮発性の液体の蒸発後に非晶質であるか否か、ならびに必要であれば存在する非晶質物質の量を評価した。
拡散試験
【0052】
in vitro拡散実験は、32℃で維持したヒト表皮を用い、ステンレススチール流入拡散セルを用いて行った。レセプター溶液は0.002%アジ化ナトリウム中の各10%エタノールからなった。非密封組成物を1セルあたり5μlの限定用量で各4セルに加えた。試料を適切な時点で回収し、逆相高速液体クロマトグラフィ(RP-HPLC)で分析した。
表1.レセプター溶液分析用のHPLC条件

示差走査熱量測定法(DSC)
【0053】
DSCを用い、揮発性の液体の蒸発後の皮膚浸透促進物質と組み合わせた化合物の物理化学的特性の変化を測定する。これは、経皮吸収を促進する(すなわち、経皮薬物送達を促進する)変化した非晶質型を生じる薬剤の促進物質に対する最適比の決定することができる。
【0054】
化合物混合物の非晶質性状は、該混合物の個々のあらゆる成分の融点に比べて低下した該化合物混合物の融点で明らかである。さらに、融解転移温度の拡大と共にエンタルピーのピークの高さと熱の低下も非晶質化合物に固有の特性である。
【0055】
第一に、示した生理活性物質と皮膚浸透促進物質のモル比混合物は示した組成物のとおり95%エタノールを用いて調製した。10μlアルミニウムミクロDSCパンを50μl DSCアルミニウムパン中に置き、各製剤の5μl部分標本を10μl DSCパン中にピペットで入れた。 揮発性の液体(95%エタノール)を蒸発させ、さらに部分標本を生理活性物質および皮膚浸透促進物質の十分な量の残留物が残存するまで再度適用した。該パンを周囲温度および相対湿度33%に24時間維持し(典型的な現在使用中の一日用量間隔を促進した)、次いで該パンを覆い密封した。次に、DSCを窒素流下、薬剤が依存する温度範囲内の10℃/分で実施した。
明視野顕微鏡検査
【0056】
明視野顕微鏡検査を用い揮発性の液体(95%エタノール)の蒸発後の皮膚浸透促進物質と組み合わせた種々の生理活性物質の結晶/非晶質固体能力を測定した。これはDSCと併せて薬剤の促進物質に対する最適比の決定を可能にする。
【0057】
各製剤の5μlの部分標本を32℃/周囲相対湿度で清浄なガラススライド上にピペットでのせた。揮発性の液体ビークル(95% v/vエタノール)を蒸発させた後、スライドをSPOT診断カメラと連結したLeica Wild顕微鏡下で1および24時間に観察した。24時間後に残る混合物の性状を評価し、非晶質物質の容量比を可視的に評価することができよう。
実施例1
【0058】
図1は、本発明にしたがって使用できる典型的浸透促進物質の有機および無機価を示す(Fujita、「Production of organic compounds by a Conceptional Diagram」、Chem. Pharm. Bull、Tokyo 1954 2: 163に記載の方法により決定した)。非密封経皮または経皮薬物送達システムを用いた時に皮膚を刺激するかまたは蒸発する傾向がある溶媒ベースの皮膚浸透促進物質である領域1。好ましい浸透促進物質は概念的ダイアグラム(Horiら、J. Pharm. Pharmacol 1990 42: 71-72により最初に提唱された)の領域2から選ばれる。好ましい領域は無機価約0〜約200および有機価約200〜約400にわたる。
実施例2
【0059】
本実施例は、ある範囲の有機および無機特性を有するある範囲の浸透促進物質とブスピロンの混合物により形成された本発明組成物を試験する。ブスピロンの物理化学特性を以下の表に示す。

【0060】
本実施例で試験した浸透促進物質は、2-n-ノニル、1,3-ジオキソラン(SEPA)、ドデシル2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロピオネート(DDAIP)、およびシクロペンタデカノン(CPL)であった。
【0061】
図1には潜在的浸透促進物質に関する有機指数に対する無機指数のプロットを示す。有機および無機価はFujita A Chem. Pharm. Bull (Tokyo) 2: 173 (1954)の方法にしたがって決定される。化合物2-n-ノニル, 1,3-ジオキソラン、ドデシル2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロピオネート(DDAIP)、およびシクロペンタデカノンは、一般に有機指数0〜200および有機指数200〜400で定義される領域2のある範囲の有機、無機指数を示す。
【0062】
すべての製剤は容量フラスコ内で適切な量の生理活性物質および浸透促進物質を正確に計量し、エタノール(95%v/v)で容積を持たせた。
【0063】
コントロール製剤:
ブスピロンベース、および
被検製剤:
(被検)製剤を含むすべての促進物質を特記しない限り薬物:促進物質のモル比で1:1および4:1に調製した。
ブスピロン: イソプロピルミリステート(IPM)
ブスピロン: ドデシル 2-(N,N-ジメチルアミノ)-プロピオネート(DDAIP)
ブスピロン: 2-n-ノニル, 1,3-ジオキソラン(SEPA)
ブスピロン: ラウロカプラム(Azone(登録商標)、AZ)
ブスピロン: ミリスチン酸(MA)
ブスピロン: 酢酸2-エチル(EA)。
【0064】
分子量88.1Daおよび沸点77.1℃の酢酸2-エチル(EA)は、非密封経皮または経皮薬物送達システムを用いる時に蒸発するかまたは皮膚を刺激する傾向があるため本発明での使用に好ましくない溶媒ベースの皮膚浸透促進物質の例として含める。
【0065】
DSCプロフィールをコントロールおよび被検製剤すなわち純粋なブスピロンおよびモル比1:1のブスピロン:数種の特定促進物質について測定した。各製剤について溶媒を蒸発させると融点の低下がみられた。図2は、非晶質化合物の固有の特性、例えば融点、ΔHおよびピークの高さの低下、および融解転移温度の拡大を示す。モル比1:1および4:1のブスピロン:各促進物質のDSC分析は融点の低下を示し、油状物のままである比1:1のブスピロン:アゾンは融点がみられなかった(図3)。
【0066】
図3は溶媒ベースの促進物質(酢酸2-エチル)がブスピロンの融点を確実に低下させることができないことも示す。この欠点は皮膚を刺激する傾向と共に溶媒ベースの促進物質が本発明の非密封経皮送達システムのために好ましくない理由である。
【0067】
各2成分混合物の顕微鏡検査はブスピロンの部分的非晶質状態を確認した。ほとんどの場合で、時々小数の小結晶が存在する不均一に塗布された油状フィルムが観察され、またいくつかの組成物ではいくつかの針状結晶が突出していた。
【0068】
拡散実験(表2)は、ブスピロンおよび2-n-ノニル, 1,3-ジオキソランを含む種々の95%エタノール製剤を用いて実施した。
【0069】
ヒト皮膚(表皮)を通したブスピロンの拡散は2-n-ノニル, 1,3-ジオキソランとのモル比1:1でブスピロンの透過性の2.6の増加を確認する。しかしながら、4:1の比では有意な促進はみられなかった(表2、図4)。
表2.種々の製剤に関する24時間のヒト表皮を横切って浸透した平均累積量(Q24h)(μg/cm2)のまとめ

実施例3
【0070】
図5は、揮発性の液体(95%エタノール)中のブスピロンを含むコントロール、および同じ揮発性の液体中のブスピロンおよびサリチル酸オクチル浸透促進物質を含む組成物からの経時的なヒト表皮を横切って拡散したブスピロンの累積量を示す。サリチル酸オクチルの経皮スプレー製剤への添加は、24時間にわたる皮膚を横切るブスピロンの拡散量の顕著な増加を生じた(p<0.05)。
実施例4
【0071】
実施例2および3の組成物によりin situで形成された非晶質沈殿物は、皮膚を横切るブスピロンの送達の促進をもたらす。これら促進された非晶質組成物に対する皮膚を横切る送達プロフィールはゼロ次送達プロフィールまたは一次送達プロフィールであり得、これら状況のいずれも特定の薬理学的療法に望ましい。該促進物質を含まない該組成物は、皮膚を横切る浸透の促進に乏しく、皮膚を横切って浸透する薬剤は低量である。図6aは、本発明に従ってブスピロンの経皮ゼロおよび一次投与により得ることができる拡散プロフィールを示し、図6bは図6aに示す各送達速度プロフィールに対応する近似血漿中濃度プロフィールを示す。観察された非晶質沈殿物の拡散プロフィールは皮膚を横切る活性物質の送達の増大を確認する。送達速度は該組成物に用いる皮膚浸透促進物質を変更するかまたは該組成物中の薬剤の促進物質に対する比を変更することにより所望の薬理療法に適するように修飾することができよう。
実施例5
【0072】
図7および8は浸透促進物質を変更することによりフェンタニル送達速度を修飾することができることを示す。したがって、離脱傾向を修飾して所望の送達速度に適応させることができよう。フェンタニルの場合における安定なゼロ次送達速度は慢性痛の治療に望ましいであろう。
実施例6
【0073】
図9および10は浸透促進物質および/または該組成物中の薬剤の促進物質に対する比を変更することによりグラニセトロン送達速度を修飾することができることを示す。
実施例7
【0074】
薬剤の促進物質に対する比を変化させ、経皮スプレービークルを用いるin vitroのテストステロン送達速度を調節した。テストステロン(Tes)および皮膚浸透促進物質サリチル酸オクチル(Osal)またはパディメートO(PadO)の濃度を変化させてin vivo投与に似るように設計した限定ビークル容量(5μl/cm2)からin vitroでヘビの抜け殻(shed snake skin)に適用した。薬剤の浸透速度および程度を一次速度定数を有する単一コンパートメントモデルにモデル化した(Kubota、K. J. Pharm. Sci. 1991, 80、502-504)。in vitro拡散モデルは、3パラメーターのみ、総吸収%(A、単位μg)、速度定数(α、単位h-1)および遅延時間(l、単位h)を用いる拡散プロフィールの正確および急速な特徴付けを可能にする。Tes/Osal比の変更はAおよびlを有意に変化させ(p<.001)、PadO製剤におけるTesローディングの増加は図11に示すように48時間にわたるin vitroゼロ次送達をもたらした(該促進物質への薬剤の溶解性は薬剤放出に役割を果たすことを示唆する)。実用的製剤開発のために、単一コンパートメント拡散モデルを用いて薬剤/促進物質比を最適化し皮膚を横切る薬剤浸透性を調節することができる。
実施例8
【0075】
遊離テストステロンの血漿中濃度を95%エタノール中のテストステロン5%w/vおよびサリチル酸オクチル8%w/vを含む経皮スプレー組成物からの定常期の閉経後の女性において測定した。ゼロ次送達プロフィールが得られ、図12に示す。
実施例9
【0076】
図13は、6名の健常男性ボランティアにおける薬物動態試験の結果を示す。ここでは単回経皮スプレー用量を試験し、次いでウォッシュアウト期間後、ブスピロン15mg(3x5mg錠; BuSpar)の単回経口用量を投与し、次いでウォッシュアウト期間後、定常期が達成されるまでボランティアに複数経皮用量を投与した。適用した一日経皮用量は、4%w/vブスピロンおよび5%w/vサリチル酸オクチル含有ブスピロン定量経皮スプレー(MDTS(登録商標))の4x91μlスプレーを前腕に適用した。
【0077】
経口ブスピロン錠(15mg)の単回用量では平均半減期は2時間であり、平均tmaxは0.9時間であった。平均Cavgは0.15ng/ml、平均Cmaxは1.3ng/mLであり、Cmax/Cavg比の理論値は8.7であった。対照的に、本発明のブスピロン経皮スプレーを1日1回投与した後の平均Cavgは0.32ng/ml、平均Cmaxは0.49ng/mLであり、Cmax/Cavg比の理論値は1.5、平均tmaxは9.3時間であった。本実施例のブスピロン組成物は、全般性不安障害および注意欠陥多動性障害を治療するためにヒトまたは動物で使用するのに特に利点があり、本発明により提供される薬剤の安定なゼロ次経皮送達および高Cmax濃度の回避は副作用、例えば胃腸障害、眠気、運転能力または運動機能障害、および/または認識機能障害の減少に有益である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
・0.1%〜10重量%の、テストステロンである生理活性物質、
・0.1%〜10重量%の、サリチル酸オクチルおよびパディメートOからなる群から選ばれる1またはそれ以上の皮膚浸透促進物質、および
・85%〜99.8重量%の、エタノール、イソプロパノール、またはその混合物からなる群から選ばれる揮発性溶媒を含む医薬的に許容される揮発性担体、
を含む経皮送達用非密封医薬組成物であって、
生理学的温度で揮発性溶媒を蒸発させて明視野顕微鏡検査法で検査すると該組成物が生理活性物質と皮膚浸透促進物質を含む非晶質相を含む非晶質沈殿物を形成するものである非密封医薬組成物。
【請求項2】
・0.1%〜10重量%の、テストステロンである生理活性物質、
・0.1%〜10重量%の、サリチル酸オクチルおよびパディメートOからなる群から選ばれる1またはそれ以上の皮膚浸透促進物質、および
・85%〜99.8重量%の、エタノール、イソプロパノール、またはその混合物からなる群から選ばれる揮発性溶媒を含む医薬的に許容される揮発性担体、
からなる請求項1記載の非密封医薬組成物。
【請求項3】
溶媒が95%エタノールを含む請求項1記載の非密封医薬組成物。
【請求項4】
皮膚浸透促進剤がサリチル酸オクチルである請求項1記載の非密封医薬組成物。
【請求項5】
生理活性物質化合物と皮膚浸透促進物質のモル比が1:20〜20:1である請求項1記載の非密封医薬組成物。
【請求項6】
生理活性物質化合物と皮膚浸透促進物質のモル比が1:1〜4:1である請求項1記載の非密封医薬組成物。
【請求項7】
チャンバーから組成物を送達するためのバルブ、組成物をエアロゾルとして分散させるためのノズル、およびノズルから定量のエアロゾルを供給する手段を含むスプレーアプリケーター装置のチャンバー中に含まれる請求項1記載の非密封医薬組成物。
【請求項8】
スプレーの形であり、対象の皮膚に適用し、揮発性溶媒を蒸発させて生理活性物質と皮膚浸透促進物質の非晶質沈殿物を形成させることにより角質層から生表皮への生理活性物質の分配を促進することにより経皮吸収を増強することを特徴とする請求項1記載の非密封医薬組成物。
【請求項9】
皮膚浸透促進物質が5%〜10重量%の量で存在する請求項1記載の非密封医薬組成物。
【請求項10】
テストステロンが0.1%〜6重量%の量で存在する請求項9記載の非密封医薬組成物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−162557(P2012−162557A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−90664(P2012−90664)
【出願日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【分割の表示】特願2004−514440(P2004−514440)の分割
【原出願日】平成15年6月24日(2003.6.24)
【出願人】(503196558)アクルックス・ディ・ディ・エス・プロプライエタリー・リミテッド (12)
【氏名又は名称原語表記】ACRUX DDS PTY LTD
【Fターム(参考)】